擁壁の施工方法
【課題】任意の配置が可能な高強度の擁壁を施工できる擁壁の施工方法を提供する。
【解決手段】擁壁の施工方法は、溝を掘削し、溝に沿った所定の位置に、縦筋を配置し、縦筋で保持されるように、予め成形された上方に延びる壁面を有するコンクリート製の擁壁35を載置し、その後、壁面に対してその下部で水平方向に延びる底盤部分を現場でコンクリート41を打設することによって施工する。
【解決手段】擁壁の施工方法は、溝を掘削し、溝に沿った所定の位置に、縦筋を配置し、縦筋で保持されるように、予め成形された上方に延びる壁面を有するコンクリート製の擁壁35を載置し、その後、壁面に対してその下部で水平方向に延びる底盤部分を現場でコンクリート41を打設することによって施工する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、擁壁の施工方法に関し、特に、高品質のPC擁壁を形成できる擁壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の擁壁の施工方法が、たとえば、下記の特許文献1に開示されている。そこには、L型のPC(Pre Cast)コンクリートで形成された擁壁が横方向に複数連続して並べられ、連続して隣接する擁壁部材間に透水性の透水壁面を構築する擁壁の施工方法が開示されている。
【特許文献1】特開2005−36641号公報(要約書)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の高強度の擁壁の施工方法は上記のような行なわれていた。L型のPC擁壁を使用するため、まっすぐに延びる擁壁については、所定の強度が得られるが、水平に延びる底盤が存在するため、これが重なるような施工ができなかった。したがって、角度をもった擁壁の施工ができないという問題があった。また、L型であるため、搬送にもスペースを要し、コストがかかるという問題があった。
【0004】
この発明は、上記のような従来の問題点に鑑みてなされたもので、任意の配置が可能な高強度の擁壁を施工できる擁壁の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
擁壁の施工方法は、溝を掘削し、溝に沿った所定の位置に、縦筋を配置し、縦筋で保持されるように、予め成形された上方に延びる壁面を有するコンクリート製の擁壁を載置し、その後、壁面に対してその下部で水平方向に延びる底盤部分を現場でコンクリートを打設することによって施工する。
【0006】
予め成形された上方に延びる壁面を有するコンクリート製の擁壁を載置し、その後、壁面に対してその下部で水平方向に延びる底盤部分を現場でコンクリートを打設することによって施工するようにしたため、擁壁の配列が斜めになっても、L型の擁壁が傾斜していても、施工が可能になる。
【0007】
その結果、任意の配置が可能な高強度の擁壁を施工できる擁壁の施工方法を提供できる。
【0008】
好ましくは、溝の所定の位置に杭を設け、杭と、縦筋とを接続する。
【0009】
さらに好ましくは、擁壁は、その内部に上下方向に貫通する貫通孔を有し、縦筋は貫通孔を通る。
【0010】
さらに、杭はかんざし筋を有し、縦筋はその下部で水平方向に曲げられ、縦筋の水平方向に曲げられた部分がかんざし筋と接続されるのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の擁壁の施工方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図6は、この発明の一実施の形態にかかる擁壁の施工方法の施工手順を示す図である。
【0012】
ここでは、図1に示すように、隣地の地面(GL)より斜めに立ち上がった法面(図中現況線で示す)11を取り去って、そこにPC(Pre Cast)コンクリート製の擁壁(以下、「PC擁壁」という)を設ける場合について説明する。まず、擁壁を建造する法面11を取り去って、そこに、例えば、深さ約200〜400mm程度の溝12を掘削する。溝12は、隣地境界側の壁部12bと、敷地内側の壁部12aと、底隣地境界側および敷地内の壁部12aと12bとの下部とを結ぶ底盤13とからなる。
【0013】
次に図2に示すように、底盤13を転圧した後に、捨てコンクリート14を打ち、溝12の壁部12a側に杭頭補強用の穴15を掘削する。なお、捨てコンクリート14が硬化後にPC擁壁の割付を行うための地墨を打つ。
【0014】
次に、図3に示すように、穴15の内部に、鋼管杭21を打ち込む。鋼管杭21を図8に示す。図8を参照して、鋼管杭21は、上部に開口21aを有し、その中央部に図示のない金具が設けられる。上部の近傍にはかんざし筋24が設けられている。かんざし筋24は複数設けても良い。また、下端部21bは尖塔型を有している。このように配置された鋼管杭21の内部に、金具によって保持して後に説明する鉄筋を挿入し、流動性のよいモルタルまたはグラウト剤を充填して、鉄筋と鋼管杭とを一体化する。
【0015】
上記の割付にしたがって、PC擁壁の位置決めを行うための縦筋22を所定の位置に設ける。縦筋22は、垂直方向に延びる垂直部分22aと、下端部の捨てコンクリート14の上部で水平方向に曲げられた水平部22bとからなる。水平部22bは鋼管杭21の方向に延び、縦筋22の水平部22bの端部は鋼管杭21のかんざし筋24に接続されている。なお、この縦筋22の水平部22bの端部は鋼管杭21を貫通させてもよい。
【0016】
鋼管杭21の内部には鉄筋23が設けられている。この鉄筋23は、鋼管杭21の上端部で水平方向に曲げられた水平部23aを含む。水平部23aの先端部は、縦筋22の垂直部22aまで延在して、垂直部22aに接続される。この水平部23aの先端部も、縦筋22の垂直部22aを越えて延在してもよい。
【0017】
縦筋22の水平部22bと鉄筋23の水平部23aには溝方向に延在する横筋25a〜25d、および26a〜26dが設けられている。
【0018】
次に、図4に示すように、縦筋22の垂直部22aにPC擁壁30の貫通孔31を通すことによって、予め成形された上方に延びる壁面を有するコンクリート製の擁壁(PC擁壁)30を据え付ける。そして、PC擁壁30の貫通孔31にグラウト剤を充填して縦筋22とPC擁壁30とを一体化する。なお、PC擁壁30の貫通孔31の下部には、横方向に開口部32が設けられており、この開口部32を通って水平部22bや23aの鉄筋が通過する。また、後に説明するように、PC擁壁30の正面側には化粧が施され、背面側には化粧は施されていない。
【0019】
次に、図5に示すように、穴15の内部においてPC擁壁30の下部にL型の底盤部分としてコンクリート41を打設する。
【0020】
この後、図6に示すように、コンクリート41の上に土43を埋め戻す。なお、このとき、PC擁壁30の土43を埋め戻す側には、栗石、または、不織布42を設け、透水性を保持する。
【0021】
次に、図1から図6のようにして施工された複数のPC擁壁30からなる擁壁について説明する。図7は、PC擁壁30を複数連続して配置したときの状態を示す図である。図7(A)は平面図であり、図7(B)は図7(A)において矢印B−Bで示す部分の矢視図(正面図)であり、図7(C)は図7(A)において矢印C−Cで示す部分の矢視図(背面図)である。なお、図7においては、土や、コンクリート等については図示を省略している。図7(C)においては、PC擁壁30の貫通孔31の内部に設けられる縦筋22aのみを表示している。
【0022】
図7を参照して、PC擁壁30の正面には化粧が施されており、中央部には、上下方向に貫通する4つの貫通孔31が設けられている。PC擁壁30の貫通孔31の下端部には、開口部32が設けられており、上記したように、この開口部32を通って水平部22bや23aの鉄筋が通過している。複数のPC擁壁30は、その間を水抜きが可能な、砂利をバインダで固めた透水性の接続部34で接続する。なお、この接続部34の寸法を調整することによって、PC擁壁全体の長さを調整することができる。
【0023】
図9は、この接続部34の変形例を示す図である。(A)は、正面部が背面部よりも狭くなった接続部34aを示す図であり、(B)は、中央部が広がった接続部34bを示す図である。このように接続部を形成することにより、土圧で接続部が押し出されるのを防ぐことができる。
【0024】
以上のように、この実施の形態によれば、PC擁壁30のL型の下部を現場でコンクリートを打設することによって形成するようにしたため、現場へのPC擁壁の搬送や、現場での据付を容易に行えるため、高品質のL型のPC擁壁を、容易に建造することができる。
【0025】
図10は、この発明の他の実施の形態を示す図7に対応する図である。ここでは、PC擁壁のL型の下部コンクリート41も示している。この実施の形態においては、L型の下部コンクリート41を現場で打設することによって形成するようにしたため、図に示すように、途中で折れ曲がったPC擁壁35a〜35dも容易に建造できる。なお、この場合も接続部36は図9に示したものと同じである。
【0026】
次に、この発明のさらに他の実施の形態について説明する。この実施の形態においては、PC擁壁30の直下にも鋼管杭を設ける。図11は、この実施の形態を示す図であり、先の実施の形態における、図4に対応する。
【0027】
図11を参照して、この実施の形態においては、PC擁壁30の直下においても穴15bを設け、その内部に鋼管杭27を設けている。この鋼管杭27も図8同様の構成を有している。この実施の形態においては、鋼管杭27に設けられた鉄筋の水平部23bは鋼管杭21の方向へ延び、鋼管杭21の鉄筋23を支持する横筋26b,26cと接続される。それ以外の部分については、先の実施の形態と同様であるので、同一部分に同一符号を付してその説明は省略する。
【0028】
この実施の形態によれば、L型のPC擁壁が複数の鋼管杭によって支持されるとともに、底盤部分がさらに補強されるため、強度の高いL型PC擁壁が得られる。
【0029】
なお、上記実施の形態においては、L型のPC擁壁を杭で支持する場合について説明したが、これに限らず、杭は設けなくてもよい。
【0030】
また、上記実施の形態においては、コンクリートの底盤部分の寸法や、杭頭補強の穴の径等について具体的に述べなかったが、これらは、地盤の許容応力度に応じて調整できる。
【0031】
また、上記実施の形態においては、L型のPC擁壁の擁壁は垂直方向に延在する場合について説明したが、L型擁壁の底盤部を現場施工するようにしたため、傾斜した擁壁の施工も可能である。
【0032】
また、上記実施の形態においては、L型のPC擁壁の一方面のみが化粧され、他方は化粧されていない場合について説明したが、これに限らず、両面が化粧された壁の施工に適用してもよい。
【0033】
図面を参照してこの発明の一実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の一実施の形態にかかる、PC擁壁の施工手順を示す図である。
【図2】この発明の一実施の形態にかかる、PC擁壁の施工手順を示す図である。
【図3】この発明の一実施の形態にかかる、PC擁壁の施工手順を示す図である。
【図4】この発明の一実施の形態にかかる、PC擁壁の施工手順を示す図である。
【図5】この発明の一実施の形態にかかる、PC擁壁の施工手順を示す図である。
【図6】この発明の一実施の形態にかかる、PC擁壁の施工手順を示す図である。
【図7】PC擁壁を示す図である。
【図8】鋼管杭を示す図である。
【図9】接続部を示す図である。
【図10】この発明の他の実施の形態を示す図である。
【図11】この発明のさらに他の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
11 法面、12 溝、13 底盤、14 捨てコンクリート、15 穴、21 鋼管杭、22 縦筋、23 鉄筋、24 かんざし筋、25,26 横筋、30 PC擁壁、32 開口部、41コンクリート。
【技術分野】
【0001】
この発明は、擁壁の施工方法に関し、特に、高品質のPC擁壁を形成できる擁壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の擁壁の施工方法が、たとえば、下記の特許文献1に開示されている。そこには、L型のPC(Pre Cast)コンクリートで形成された擁壁が横方向に複数連続して並べられ、連続して隣接する擁壁部材間に透水性の透水壁面を構築する擁壁の施工方法が開示されている。
【特許文献1】特開2005−36641号公報(要約書)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の高強度の擁壁の施工方法は上記のような行なわれていた。L型のPC擁壁を使用するため、まっすぐに延びる擁壁については、所定の強度が得られるが、水平に延びる底盤が存在するため、これが重なるような施工ができなかった。したがって、角度をもった擁壁の施工ができないという問題があった。また、L型であるため、搬送にもスペースを要し、コストがかかるという問題があった。
【0004】
この発明は、上記のような従来の問題点に鑑みてなされたもので、任意の配置が可能な高強度の擁壁を施工できる擁壁の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
擁壁の施工方法は、溝を掘削し、溝に沿った所定の位置に、縦筋を配置し、縦筋で保持されるように、予め成形された上方に延びる壁面を有するコンクリート製の擁壁を載置し、その後、壁面に対してその下部で水平方向に延びる底盤部分を現場でコンクリートを打設することによって施工する。
【0006】
予め成形された上方に延びる壁面を有するコンクリート製の擁壁を載置し、その後、壁面に対してその下部で水平方向に延びる底盤部分を現場でコンクリートを打設することによって施工するようにしたため、擁壁の配列が斜めになっても、L型の擁壁が傾斜していても、施工が可能になる。
【0007】
その結果、任意の配置が可能な高強度の擁壁を施工できる擁壁の施工方法を提供できる。
【0008】
好ましくは、溝の所定の位置に杭を設け、杭と、縦筋とを接続する。
【0009】
さらに好ましくは、擁壁は、その内部に上下方向に貫通する貫通孔を有し、縦筋は貫通孔を通る。
【0010】
さらに、杭はかんざし筋を有し、縦筋はその下部で水平方向に曲げられ、縦筋の水平方向に曲げられた部分がかんざし筋と接続されるのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の擁壁の施工方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図6は、この発明の一実施の形態にかかる擁壁の施工方法の施工手順を示す図である。
【0012】
ここでは、図1に示すように、隣地の地面(GL)より斜めに立ち上がった法面(図中現況線で示す)11を取り去って、そこにPC(Pre Cast)コンクリート製の擁壁(以下、「PC擁壁」という)を設ける場合について説明する。まず、擁壁を建造する法面11を取り去って、そこに、例えば、深さ約200〜400mm程度の溝12を掘削する。溝12は、隣地境界側の壁部12bと、敷地内側の壁部12aと、底隣地境界側および敷地内の壁部12aと12bとの下部とを結ぶ底盤13とからなる。
【0013】
次に図2に示すように、底盤13を転圧した後に、捨てコンクリート14を打ち、溝12の壁部12a側に杭頭補強用の穴15を掘削する。なお、捨てコンクリート14が硬化後にPC擁壁の割付を行うための地墨を打つ。
【0014】
次に、図3に示すように、穴15の内部に、鋼管杭21を打ち込む。鋼管杭21を図8に示す。図8を参照して、鋼管杭21は、上部に開口21aを有し、その中央部に図示のない金具が設けられる。上部の近傍にはかんざし筋24が設けられている。かんざし筋24は複数設けても良い。また、下端部21bは尖塔型を有している。このように配置された鋼管杭21の内部に、金具によって保持して後に説明する鉄筋を挿入し、流動性のよいモルタルまたはグラウト剤を充填して、鉄筋と鋼管杭とを一体化する。
【0015】
上記の割付にしたがって、PC擁壁の位置決めを行うための縦筋22を所定の位置に設ける。縦筋22は、垂直方向に延びる垂直部分22aと、下端部の捨てコンクリート14の上部で水平方向に曲げられた水平部22bとからなる。水平部22bは鋼管杭21の方向に延び、縦筋22の水平部22bの端部は鋼管杭21のかんざし筋24に接続されている。なお、この縦筋22の水平部22bの端部は鋼管杭21を貫通させてもよい。
【0016】
鋼管杭21の内部には鉄筋23が設けられている。この鉄筋23は、鋼管杭21の上端部で水平方向に曲げられた水平部23aを含む。水平部23aの先端部は、縦筋22の垂直部22aまで延在して、垂直部22aに接続される。この水平部23aの先端部も、縦筋22の垂直部22aを越えて延在してもよい。
【0017】
縦筋22の水平部22bと鉄筋23の水平部23aには溝方向に延在する横筋25a〜25d、および26a〜26dが設けられている。
【0018】
次に、図4に示すように、縦筋22の垂直部22aにPC擁壁30の貫通孔31を通すことによって、予め成形された上方に延びる壁面を有するコンクリート製の擁壁(PC擁壁)30を据え付ける。そして、PC擁壁30の貫通孔31にグラウト剤を充填して縦筋22とPC擁壁30とを一体化する。なお、PC擁壁30の貫通孔31の下部には、横方向に開口部32が設けられており、この開口部32を通って水平部22bや23aの鉄筋が通過する。また、後に説明するように、PC擁壁30の正面側には化粧が施され、背面側には化粧は施されていない。
【0019】
次に、図5に示すように、穴15の内部においてPC擁壁30の下部にL型の底盤部分としてコンクリート41を打設する。
【0020】
この後、図6に示すように、コンクリート41の上に土43を埋め戻す。なお、このとき、PC擁壁30の土43を埋め戻す側には、栗石、または、不織布42を設け、透水性を保持する。
【0021】
次に、図1から図6のようにして施工された複数のPC擁壁30からなる擁壁について説明する。図7は、PC擁壁30を複数連続して配置したときの状態を示す図である。図7(A)は平面図であり、図7(B)は図7(A)において矢印B−Bで示す部分の矢視図(正面図)であり、図7(C)は図7(A)において矢印C−Cで示す部分の矢視図(背面図)である。なお、図7においては、土や、コンクリート等については図示を省略している。図7(C)においては、PC擁壁30の貫通孔31の内部に設けられる縦筋22aのみを表示している。
【0022】
図7を参照して、PC擁壁30の正面には化粧が施されており、中央部には、上下方向に貫通する4つの貫通孔31が設けられている。PC擁壁30の貫通孔31の下端部には、開口部32が設けられており、上記したように、この開口部32を通って水平部22bや23aの鉄筋が通過している。複数のPC擁壁30は、その間を水抜きが可能な、砂利をバインダで固めた透水性の接続部34で接続する。なお、この接続部34の寸法を調整することによって、PC擁壁全体の長さを調整することができる。
【0023】
図9は、この接続部34の変形例を示す図である。(A)は、正面部が背面部よりも狭くなった接続部34aを示す図であり、(B)は、中央部が広がった接続部34bを示す図である。このように接続部を形成することにより、土圧で接続部が押し出されるのを防ぐことができる。
【0024】
以上のように、この実施の形態によれば、PC擁壁30のL型の下部を現場でコンクリートを打設することによって形成するようにしたため、現場へのPC擁壁の搬送や、現場での据付を容易に行えるため、高品質のL型のPC擁壁を、容易に建造することができる。
【0025】
図10は、この発明の他の実施の形態を示す図7に対応する図である。ここでは、PC擁壁のL型の下部コンクリート41も示している。この実施の形態においては、L型の下部コンクリート41を現場で打設することによって形成するようにしたため、図に示すように、途中で折れ曲がったPC擁壁35a〜35dも容易に建造できる。なお、この場合も接続部36は図9に示したものと同じである。
【0026】
次に、この発明のさらに他の実施の形態について説明する。この実施の形態においては、PC擁壁30の直下にも鋼管杭を設ける。図11は、この実施の形態を示す図であり、先の実施の形態における、図4に対応する。
【0027】
図11を参照して、この実施の形態においては、PC擁壁30の直下においても穴15bを設け、その内部に鋼管杭27を設けている。この鋼管杭27も図8同様の構成を有している。この実施の形態においては、鋼管杭27に設けられた鉄筋の水平部23bは鋼管杭21の方向へ延び、鋼管杭21の鉄筋23を支持する横筋26b,26cと接続される。それ以外の部分については、先の実施の形態と同様であるので、同一部分に同一符号を付してその説明は省略する。
【0028】
この実施の形態によれば、L型のPC擁壁が複数の鋼管杭によって支持されるとともに、底盤部分がさらに補強されるため、強度の高いL型PC擁壁が得られる。
【0029】
なお、上記実施の形態においては、L型のPC擁壁を杭で支持する場合について説明したが、これに限らず、杭は設けなくてもよい。
【0030】
また、上記実施の形態においては、コンクリートの底盤部分の寸法や、杭頭補強の穴の径等について具体的に述べなかったが、これらは、地盤の許容応力度に応じて調整できる。
【0031】
また、上記実施の形態においては、L型のPC擁壁の擁壁は垂直方向に延在する場合について説明したが、L型擁壁の底盤部を現場施工するようにしたため、傾斜した擁壁の施工も可能である。
【0032】
また、上記実施の形態においては、L型のPC擁壁の一方面のみが化粧され、他方は化粧されていない場合について説明したが、これに限らず、両面が化粧された壁の施工に適用してもよい。
【0033】
図面を参照してこの発明の一実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の一実施の形態にかかる、PC擁壁の施工手順を示す図である。
【図2】この発明の一実施の形態にかかる、PC擁壁の施工手順を示す図である。
【図3】この発明の一実施の形態にかかる、PC擁壁の施工手順を示す図である。
【図4】この発明の一実施の形態にかかる、PC擁壁の施工手順を示す図である。
【図5】この発明の一実施の形態にかかる、PC擁壁の施工手順を示す図である。
【図6】この発明の一実施の形態にかかる、PC擁壁の施工手順を示す図である。
【図7】PC擁壁を示す図である。
【図8】鋼管杭を示す図である。
【図9】接続部を示す図である。
【図10】この発明の他の実施の形態を示す図である。
【図11】この発明のさらに他の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
11 法面、12 溝、13 底盤、14 捨てコンクリート、15 穴、21 鋼管杭、22 縦筋、23 鉄筋、24 かんざし筋、25,26 横筋、30 PC擁壁、32 開口部、41コンクリート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝を掘削し、溝に沿った所定の位置に、縦筋を配置し、前記縦筋で保持されるように、予め成形された上方に延びる壁面を有するコンクリート製の擁壁を載置し、その後、前記壁面に対してその下部で水平方向に延びる底盤部分を現場でコンクリートを打設することによって施工する、擁壁の施工方法。
【請求項2】
前記溝の前記所定の位置に杭を設け、前記杭と、前記縦筋とを接続する、請求項1に記載の擁壁の施工方法。
【請求項3】
前記擁壁は、その内部に上下方向に貫通する貫通孔を有し、前記縦筋は前記貫通孔を通る、請求項1または2に記載の擁壁の施工方法。
【請求項4】
前記杭はかんざし筋を有し、前記縦筋はその下部で水平方向に曲げられ、前記縦筋の水平方向に曲げられた部分が前記かんざし筋と接続される、請求項2または3に記載の擁壁の施工方法。
【請求項1】
溝を掘削し、溝に沿った所定の位置に、縦筋を配置し、前記縦筋で保持されるように、予め成形された上方に延びる壁面を有するコンクリート製の擁壁を載置し、その後、前記壁面に対してその下部で水平方向に延びる底盤部分を現場でコンクリートを打設することによって施工する、擁壁の施工方法。
【請求項2】
前記溝の前記所定の位置に杭を設け、前記杭と、前記縦筋とを接続する、請求項1に記載の擁壁の施工方法。
【請求項3】
前記擁壁は、その内部に上下方向に貫通する貫通孔を有し、前記縦筋は前記貫通孔を通る、請求項1または2に記載の擁壁の施工方法。
【請求項4】
前記杭はかんざし筋を有し、前記縦筋はその下部で水平方向に曲げられ、前記縦筋の水平方向に曲げられた部分が前記かんざし筋と接続される、請求項2または3に記載の擁壁の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−332735(P2007−332735A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169021(P2006−169021)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(391026014)株式会社フジアウテック (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(391026014)株式会社フジアウテック (10)
【Fターム(参考)】
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