説明

擁壁ブロック

【課題】基本的に2種類の擁壁ブロックを使用し、現場の条件に応じて自在に且つ容易に所望する連結角度に調整し敷設することができる擁壁ブロックを提供する。
【解決手段】連結する両擁壁ブロック1,11の下方部を、嵌合する突出部6と切欠凹部15の部分で縦軸7で回動可能となるように枢着し、上方部で、一端を一方の擁壁ブロック1に固定し、他端をこれと連結する他方の擁壁ブロック11に仮締めのボルト24で仮固定した連結プレート18を介して連結してなり、連結角度の調整後に前記ボルトの本締めで一体に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーナー部または曲線部に擁壁を構築する際に使用して最適な擁壁ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
プレキャストコンクリート製品は、現場打ちコンクリートに較べ品質管理が容易でかつ工期短縮が図れることから多くの構造物に採用されている。水路や擁壁では、L型ないし逆T型のプレキャストコンクリート部材を連続的に敷設して構築しているが、敷設箇所によってはその箇所に特有の曲線部またはコーナー部がある。
【0003】
このような敷設箇所に特有な曲線部またはコーナー部に対応した擁壁を構築する場合には、規格品であるプレキャストコンクリート製品を斜切りにしたり、その部分のみ現場打ちコンクリート部にして調整する必要があった。
【0004】
例えば、宅地造成用のL型擁壁の場合ではコーナー部が、道路造成用のL型擁壁でも曲線部が必要となる場合が多く、敷地条件に応じ様々なコーナー角度ないし突き合わせ角度となるよう調整して部材を供給する必要があった。こうした規格外の製品を製造することは、型枠に流し込んで成形するプレキャストコンクリート製品の特性上、不都合なことが多い。
【0005】
そこで、一対の部材を所定角度に配置した後、ボルト連結等によって固定する従来の方法の他、工場において予め所定のコーナー角度ないし突き合わせ角度となるよう調整して製品とするのではなく、現場にて所定のコーナー角度ないし突き合わせ角度となるよう調整のできる製品として供給する提案が見られる。
【0006】
これには、一対の部材を所定角度に配置した後、ボルト連結等によって固定する従来の方法のほかに、特開平2−210121号公報では、L型擁壁の垂直擁壁のいずれか片方の側端面を外側より内側に窪ませるように形成し、垂直擁壁の突き合せ間に円柱状のコーナー部材を介在せしめ、必要に応じこの継合部分にモルタルを充填して一体に構成する提案がある。
【0007】
また特開平5−132958号公報では、基底部の一端を切り欠いた一対の擁壁用ブロックの側壁部端面に支柱ブロックを当接し、この支柱ブロックの形状のみを変えて様々な角度に対応しようとする提案がみられる。或いは、特開平7−317084号公報では、全体を柱状に形成し、上下方向に、各擁壁の端部が係合するとともに上記の角度関係に位置して成形される一対の係合溝を設けたことを特徴とするコーナ擁壁が開示されている。
【0008】
その他、底版の対向面を斜めに形成し、縦壁の一方端に、中央に貫通孔を有する接合部を設けた1対の一方ブロックと他方ブロックの前記接合部を軸棒で軸着して蝶番構造としたことを特徴とするL型擁壁のコーナーブロック(特開平9−296461号公報)や、相接する立面板をそれぞれ金属製の蝶番数個で連結し、施工現場に設置して角度設定を行った後、該蝶番の回転部をロックしてなることを特徴とする擁壁コーナーブロック(実用新案第3138182号公報)。
【0009】
更には、一方の垂直辺の下半部に垂直な貫通孔を有する円筒部を突設した第一ブロックと、これに対向する垂直辺の上半部に垂直な貫通孔を有する円筒部を突設した第二ブロックとを蝶番構造で連結したもの(特開平4−360917号公報,実公平7−6200号公報)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平2−210121号公報
【特許文献2】特開平5−132958号公報
【特許文献3】特開平7−317084号公報
【特許文献4】特開平9−296461号公報
【特許文献5】実用新案第3138182号公報
【特許文献6】特開平4−360917号公報
【特許文献7】実公平7−6200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、コーナー支柱を現場で形成したり、コーナー支柱の角度によって様々な角度に対応する手段においては、現場で支柱部を打設する必要があったり、異なった形状の支柱を製造しなければならないといった問題点がある。蝶番構造とすればこうした問題はなくなるが、蝶番部をコンクリートで形成した場合、蝶番部に掛かる負荷によりひび割れが生じ、これを避けるために鋼製部材を組み合わせた場合は、構造が複雑となる他、コスト的に不利となる。
【0012】
一方、一対の部材を所定角度に配置した後、ボルト連結等によって固定する従来の方法は単純ではあるが、突き合せ部が離間して一体性が損なわれるといった問題や、連結部が露出して外観や耐久性に問題を残す結果となる。
【0013】
本発明は、上記のような従来の諸問題点を解決するためになされたもので、予め所定のコーナー角度乃至突き合わせ角度となるように調整して製品を製造する必要がなく、基本的に、2種類の擁壁ブロックを使用し、現場の条件に応じて自在に且つ容易に所望するコーナー角度や曲線に調整し敷設することができる擁壁ブロックを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1に係る擁壁ブロックは、コーナー部又は曲線部に立設する擁壁ブロックであって、一方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面の下方部に突出部が連設され、他方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面に、前記一方の擁壁ブロックの前記突出部と嵌合し、縦軸を介して前記一方の擁壁ブロックと回動可能となるよう軸結合する切欠凹部が形成され、更に、前記両擁壁ブロックの連結側の側壁端部の上面部を、一端部を前記一方の擁壁ブロックに固定し、他端部を前記他方の擁壁ブロックにボルトで仮固定した連結プレートにより連結してなり、前記両擁壁ブロックを、前記仮固定のボルト軸および前記縦軸を中心に回動して連結角度を調整した後、前記仮固定したボルトの本締めで固定した前記連結プレートを介して一体に連結するように構成したことを特徴とする。
【0015】
また、上記の目的を達成するため、本願の請求項2に記載の発明は、前記両擁壁ブロックの連結側の側壁端部の上面部を、一端部を前記一方の擁壁ブロックに固定し、他端部を前記他方の擁壁ブロックにボルトで仮固定した連結プレートによる前記の連結が、前記両擁壁ブロックの連結側の側壁端部の上面部にそれぞれ形成した側壁の内面側に連通する板厚方向の凹溝と、該両凹溝内に両端部をそれぞれ設置して一端部を固定した平面視がほゞコ字形,U字形又はC字形の連結プレートのうちいずれか一つの連結プレートからなる構成としたことを特徴とする。
【0016】
そして、上記の目的を達成するため、本願の請求項3に記載の発明は、前記仮固定したボルトの本締めで前記両擁壁ブロックを前記連結プレートを介して一体に連結した後、前記両凹溝内に硬化性充填材を充填してなり、前記凹溝内に設置固定した前記連結プレートの両端部の上面をそれぞれ覆う構成としたことを特徴とするものである。
【0017】
更に、上記の目的を達成するため、本願の請求項4に記載の発明は、前記一方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面を垂直な平面で、他方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面を円弧面でそれぞれ形成するとゝもに、垂直な平面で形成した前記一方の側壁端面の外側位置に、他方の擁壁ブロックの前記円弧面で形成した側壁端面との連結位置に現れる間隙を覆う突条部を、前記一方の側壁端面の長手方向に沿って設けたことを特徴とする。
【0018】
また、上記の目的を達成するため、本願の請求項5に記載の発明は、前記擁壁ブロックは、垂直な側壁部と、該側壁部の下端縁から内側へ水平に延びる底版部とからなるL字形の擁壁ブロックであって、両擁壁ブロックの連結側の側壁端面の突き合わせによる連結角度をほゞ90度とした際に、前記底版部の接続側の側端面が互いに面接する傾斜面で形成するとゝもに、前記底版部の前端面に、現場打ちコンクリートと一体化するための鉄筋を複数本突出せしめたことを特徴とする。
【0019】
そして更に、上記の目的を達成するため、本願の請求項6に記載の発明は、擁壁ブロックの左側又は右側の側壁端面および側壁端部の上面に、前記一方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面および側壁端部の上面にそれぞれ形成した前記突出部および凹溝を、前記擁壁ブロックの右側又は左側の側壁端面および側壁端部の上面に、前記他方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面および側壁端部の上面にそれぞれ形成した前記切欠凹部および凹溝をそれぞれ形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1に記載の擁壁ブロックは、上記のように、連結する両擁壁ブロックの下方部を、嵌合する突出部と切欠凹部の部分で縦軸で回動可能となるように枢着し、上方部で、一端を一方の擁壁ブロックに固定し、他端をこれと連結する他方の擁壁ブロックに仮締めのボルトで仮固定した連結プレートを介して連結してなり、前記両擁壁ブロックを前記仮固定のボルト軸および前記縦軸を中心に回動して連結角度を調整し、前記ボルトの本締めで固定した連結プレートを介して一体に連結する構成としたので、予め所定のコーナー角度乃至突き合わせ角度となるように調整して製品を製造する必要がなく、基本的に2種類の擁壁ブロックを使用し、現場の条件に応じて自在に且つ容易に所望のコーナー角度や曲線に調整した擁壁を構築することができる
【0021】
更に、連結する両擁壁ブロックの下方部を、嵌合する突出部と切欠凹部の部分で縦軸で回動可能となるように枢着し、上方部で、一端を一方の擁壁ブロックに固定し、他端をこれと連結する他方の擁壁ブロックにボルトで仮固定した連結プレートを介して連結する構成であるから、現場の条件に応じた角度調整を行う際に、両擁壁ブロックを上方の仮固定のボルト軸と下方の縦軸を中心軸として回動することで容易に連結角度の調整を行うことができる。
【0022】
また、本願の請求項2に記載の発明は、上記のように、前記両擁壁ブロックの連結側の側壁端部の上面部を、一端部を前記一方の擁壁ブロックに固定し、他端部を前記他方の擁壁ブロックにボルトで仮固定した連結プレートによる連結が、前記両擁壁ブロックの連結側の側壁端部の上面部にそれぞれ形成した側壁の内面側に連通する板厚方向の凹溝と、該両凹溝内に両端部をそれぞれ設置する平面視がほゞコ字形,U字形又はC字形の連結プレートのうちいずれか一つの連結プレートで連結する構成としたことで、連結プレートを設置する際の位置決めが容易であり、かつ角度調整を行う際の両擁壁ブロックの回転中心軸(縦軸,仮固定したボルト軸)のぶれを抑えることができ、角度調整作業を能率よく行うことができる。
【0023】
そして、本願の請求項3に記載の発明は、上記のように、前記仮固定したボルトの本締めで前記両擁壁ブロックを前記連結プレートを介して一体に連結した後、前記両凹溝内に硬化性充填材を充填してなり、前記凹溝内に設置固定した前記連結プレートの両端部の上面をそれぞれ覆う構成とすることで、前記凹溝内に設置固定した前記連結プレートの両端部の上面が硬化性充填材で覆われ、擁壁構造物の上面から見えないように隠されるとゝもに、前記凹溝は側壁の内面側に連通する板厚方向の凹溝であるから擁壁構造物の外面側からも見えないように隠され、景観を損ねることがない。
【0024】
更に、本願の請求項4に記載の発明は、上記のように、前記一方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面を垂直な平面で、他方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面を円弧面でそれぞれ形成するとゝもに、垂直な平面で形成した前記一方の側壁端面の外側位置に、他方の擁壁ブロックの前記円弧面で形成した側壁端面との連結位置に現れる間隙を覆う突条部を、前記一方の側壁端面の長手方向に沿って設けた構成とすることで、両擁壁ブロックの突き合わせ部の間隙が前記突条部で覆われ、擁壁構造物の外面から見えないように隠されて景観を損ねることがない。
【0025】
また、本願の請求項5に記載の発明は、上記のように、前記擁壁ブロックは、垂直な側壁部と、該側壁部の下端縁から内側へ水平に延びる底版部とからなるL字形の擁壁ブロックであって、両擁壁ブロックの連結側の側壁端面の突き合わせによる連結角度を90度とした際に、前記底版部の接続側の側端面が互いに面接する傾斜面で形成するとゝもに、前記底版部の前端面に、現場打ちコンクリートと一体化するための鉄筋を複数本突出せしめてなる構成とすることで、底版部と現場打ちコンクリートとの一体化を容易に図ることができるとゝもに、構造強度において優れた擁壁を構築できる。
【0026】
そして更に、本願の請求項6に記載の発明は、上記のように、擁壁ブロックの左側又は右側の側壁端面および側壁端部の上面に、前記一方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面および側壁端部の上面にそれぞれ形成した前記突出部および凹溝を、前記擁壁ブロックの右側又は左側の側壁端面に、前記他方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面および側壁端部の上面にそれぞれ形成した前記切欠凹部および凹溝をそれぞれ形成した構成とすることで、一種類の擁壁ブロックを使用し、その右側の側壁端面に、これと接続する同一構造の擁壁ブロックの左側の側壁端面と突き合わせ、前記の連結構造を繰り返し連続して敷設することで、所望の曲線状の擁壁を自在にかつ容易に構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る一対の擁壁ブロックの組立前の斜視図である。
【図2】同組立後の一対の擁壁ブロックの斜視図である。
【図3】同組立時の連結端部の上面部の拡大平面部分図である。
【図4】図3のAーA線断面図であって、一部を省略した図である。
【図5】連結角度を90度とした一対の擁壁ブロックの斜視図である。
【図6】同組立時の連結端部の条面部の拡大平面部分図である。
【図7】本発明に係る他の実施例の擁壁ブロックの斜視図である。
【図8】本発明で使用する連結プレートの異なる実施例の平面図である。
【図9】図7に示す擁壁ブロックを連結し、外側に向け凸状に湾曲して敷設した擁壁の平面部分図である。
【図10】図7に示す擁壁ブロックの連結による擁壁と、他の実施例の擁壁ブロックの連結により外側に向け凹状に湾曲して敷設した擁壁とからなる曲線状擁壁の平面部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を図1乃至図5に示す一実施例に基づき詳細に説明する。図において、1は本発明に係るL字形の擁壁ブロックで、矩形状の垂直な平面で形成した側壁部2と、該側壁部2の下端縁から内方へ向け水平に延びた平面視がほゞ台形状の底壁部3とから主に構成されている。なお、図中4は前記底壁部3の前端面から突出する鉄筋である。
【0029】
5は前記擁壁ブロック1の連結側の側壁端面で、垂直な平面で形成されたこの側壁端面5の下方部には外壁面が半円形の円弧面とした突出部6が形成されており、該突出部6の上面中央には縦軸7が立設している。8は前記側壁端面5に設けた突条部で、前記側壁部2の外壁面に寄った位置にあって前記側壁部2の上端から前記突出部6迄延びている。
【0030】
11は前記擁壁ブロック1と連結してコーナー部の擁壁を構築する他方の擁壁ブロックで、前記一方の擁壁ブロック1と同様に、矩形状の垂直な平面で形成した側壁部12と、該側壁部12の下端縁から内方へ向け水平に延びた平面視がほゞ台形状の底壁部13とから主に構成されている。14は前記擁壁ブロック1と連結する際の連結側の側壁端面で、外壁面が半円形の円弧面で形成されており、該側壁端面14の下方部には、前記擁壁ブロック1の突出部6と嵌合する垂直な平面で形成された切欠凹部15が設けられている。
【0031】
16は前記側壁端面14の下端部に埋設した円筒状のスリーブで、前記切欠凹部15の天井面に開口しており、前記擁壁ブロック1の突出部6と他方の前記擁壁ブロック11の切欠凹部15とを嵌合によって組み立てる際に、前記突出部6の上面に立設した縦軸7を前記切欠凹部15の天井面に開口する前記スリーブ16内に挿入することで、前記両擁壁ブロック1,11は前記縦軸6を中心として回動可能となるように連結される。なお、図中17は前記底壁部13の前端面から突出する鉄筋である。
【0032】
18は前記両擁壁ブロック1,11を連結するための連結プレートで、図8に示すように、(イ)縦コ字形、(ロ)U字形、(ハ)横C字形とした異なる形状のものがあり、これらの連結プレート18のうち、前記縦コ字形の連結プレート18AおよびU字形の連結プレート18Bは、両擁壁ブロック1,11の連結角度(内角)が180°より小さい角度で連結する場合に使用し、前記横C字形の連結プレート18Cは連結角度(内角)が180°より大きい角度で連結する場合に使用するものである。
【0033】
19,20は前記両擁壁ブロック1,11の連結側の側壁部上面にそれぞれ形成した凹溝で、それぞれの側壁部2,12の板厚方向に延びる各凹溝19,20の開口部は、前記側壁部2,12の内壁面側と連通している。なお、図中21,22は前記凹溝19,20の底部に埋設したアンカーナットであり、23,24は前記アンカーナット21,22と螺合するボルトである。
【0034】
次に、上記構成から成る両擁壁ブロック1,11を使用し、これらの連結角度(内角)が90°とした図5に示すようなコーナー擁壁を構築する場合の組立順序を説明すると、先ず、両擁壁ブロック1,11を図1に示すように一列に配設し、擁壁ブロック1の突出部6の上面に他方の擁壁ブロック11の切欠凹部15の天井面を乗せ、突出部6の上面から立設する縦軸7の先端部を切欠凹部15の天井面に開口するスリーブ16内に挿入することで、両擁壁ブロック1,11の下方部を組み立てる。
【0035】
両擁壁ブロック1,11の下方部を、前記突出部6と切欠凹部15との嵌合と、縦軸7のスリーブ16内への挿入によって組立ることで、両擁壁ブロック1,11の上方部は、図2及び図3に示すように、連結側の側壁端面5,14が当接するとゝもに、連結側の側壁端部2,12の上面にそれぞれ形成した凹溝19,20は、その開口部が内壁面側に位置した平行状態に配置される。
【0036】
凹溝19,20が上記のように平行する配置となった時点で、縦コ字形の連結プレート18A或いはU字形の連結プレート18Bの両端部18a,18bを、両側壁部2,12の内壁面側から前記凹溝19,20に挿入し設置する。
【0037】
つぎに、連結プレート18の一端部18aをアンカーナット21に螺合せしめたボルト23により締め付け、連結プレート18の一端部18aを擁壁ブロック1の凹溝19内に固定するとゝもに、擁壁ブロック11の凹溝20内に設置した連結プレート18の他端部18bをアンカーナット22に螺合せしめたボルト24により仮固定する。
【0038】
これにより、前記両擁壁ブロック1,11の上方部は、図2,図3および図4に示すように、一端部18aがボルト23締めにより固定され、他端部18bがボルト24により仮固定された連結プレート18により連結される。すなわち、図4に示すように、両擁壁ブロック1,11の上方部における仮固定したボルト24のボルト軸と、両擁壁ブロック1,11の下方部における縦軸7の軸とが同一の直線上に位置して組立が完了する。
【0039】
つぎに、図2乃至図4に示す状態で組み立てられた両擁壁ブロック1,11のうち、他方の擁壁ブロック11の連結側とは反対側の側壁端部、すなわち、図2において側壁部12の右端部を時計方向に押圧することで、擁壁ブロック1の突出部6の上面で前記切欠凹部15の天井面の部分が支持されている擁壁ブロック11は、同一軸線上にあるボルト24のボルト軸と縦軸7を中心軸として同方向(時計方向)に回動する。
【0040】
前記擁壁ブロック11の側壁部12の右端部を更に押圧し、図中時計方向に回動させることで、両擁壁ブロック1,11の側壁端面5,14の突き合わせによる連結角度が、例えば90度となった時に、前記底版部3,13の接続側の側端面3a,13aが互いに面接し、擁壁ブロック11の回動が停止して擁壁ブロック1に対する擁壁ブロック11の位置決めが完了する。このとき、擁壁ブロック11の連結側の側壁端部は、ボルト24を回転中心として図3に示す状態から矢印方向に回動するので、連結プレート18の他端部18bはその下面が凹溝20の上面を滑動し、凹溝20内で図6に示す状態で納まることになる。
【0041】
連結プレート18の両端部18a,18bが、凹溝19,20内に図6に示す状態に納まった状態、すなわち、図示の実施例では、両擁壁ブロック1,11の側壁端面5,14の突き合わせによる連結角度が90度となった時点で、仮締めしていたボルト24を本締めをすることで、両擁壁ブロック1,11が連結プレート18により一体に連結された、図5に示すような連結角度90度のコーナー擁壁Rが構築される。
【0042】
ここで、両擁壁ブロック1,11を、その連結側の側壁端面5,14の突き合わせ角度を調整して連結固定することで、例えば図5および図6に示すような所望のコーナー角度としたコーナー擁壁Rを構築するが、このコーナー擁壁Rには、図6に示すように、側壁端面5,14間の突き合わせ部分に間隔Dが形成され、これがコーナー擁壁Rの表側に露出するが、本発明では、前記側壁端面5に前記間隔Dを覆う突条部8を備えているので、擁壁Rの外面から見えないように隠され、景観を損ねることがない。
【0043】
つぎに、両擁壁ブロック1,11の凹溝19,20内にコンクートモルタル等の硬化性充填材25を充填し、前記凹溝19,20内に固定されている連結プレート18の両端部18a,18bを被覆する。また、底版部3,13の前端面から突出する鉄筋4,17がそれぞれ上下の位置関係で直交した状態で露出するので、底版部3,13の前端面で形成される空間部にコンクリートを打設することで、コンクリートは鉄筋4,17と一体となったコンクリートにより鉄筋で補強された底版部が構築される。
【0044】
上記図1乃至図6に示す擁壁ブロックは、一対の擁壁ブロック1,11をその連結角度を調整して連結することで、内角が90°以下の連結角度としたコーナー擁壁を構築できるが、図7,図9及び図10に示すものは、一種類の擁壁ブロック30を使用し、その左右にこれと同一構造の擁壁ブロック30を配設し、対向する側壁端面を所望角度で突き合わせて連続して連結することで曲線状の擁壁を構築できる擁壁ブロックであり、前記図1乃至図6に示す擁壁ブロック1,11とは次の点で相違するのみである。
【0045】
詳述すると、前記擁壁ブロック30は、図7,図9及び図10に示すように、前記擁壁ブロック1,11がそれぞれ側壁部2,12の片方の連結側の側壁端部にのみ備えていた諸構造部を、側壁部の両端部にそれぞれ備えた構造とした点でのみ前記擁壁ブロック1,11と相違するものである。したがって、各連結部の構造は前記図1乃至図6に示す擁壁ブロック1,11のそれと同一の構造であるので、同一部材,同一構造については同一の符号を付して詳細な説明は省略し、相違する点についてのみ以下に詳述する。
【0046】
図7,図9及び図10において、30はL字形の擁壁ブロックで、矩形状の垂直な平面で形成した側壁部31と、該側壁部31の下端縁から内方へ向け水平に延びた平面視が等脚台形状の底壁部32とから主に構成されており、33は前記底壁部32の前端面から突出する鉄筋である。前記側壁部31はその右端側に垂直な平面からなる側壁端面(以下、右側の側壁端面という)5を備え、該側壁端面5の下方部には外壁面が半円形の円弧面とした突出部6が形成され、該突出部6の上面中央には縦軸7が立設している。
【0047】
8は前記右側の側壁端面5に設けた突条部で、前記側壁部31の外壁面に寄った位置にあって前記側壁部31の上端から前記突出部6まで延びている。14は前記側壁部31の左端側に設けた側壁端面(以下、左側の側壁端面という)で、外壁面が半円形の円弧面で形成されており、該左側の側壁端面14の下方部には、右側の側壁端面5に設けた突出部6と嵌合する垂直な平面で形成された切欠凹部15が設けられている。
【0048】
16は前記左側の側壁端面14の下端部に埋設した円筒状のスリーブで、前記切欠凹部15の天井面に開口しており、前記擁壁ブロック30の突出部6とこれと連結する他方の擁壁ブロック30の切欠凹部15とを嵌合によって組み立てる際に、前記突出部6の上面に立設した縦軸6を前記切欠凹部15の天井面に開口する前記スリーブ16内に挿入することで、前記両擁壁ブロック30,30は前記縦軸6を中心として回動可能となるように連結される。
【0049】
18は擁壁ブロック30,30を連結するための連結プレートで、図9に示すように、両擁壁ブロック30,30の連結角度(内角)が90°以下で連結する場合には、図8の(イ)に示す縦コ字形の連結プレート8A又は(ロ)に示すU字形の連結プレート8Bにより連結する。また、図10に図示する擁壁ブロック40,40のように、連結角度(内角)が90°以上で連結する場合には、図8の(ハ)に示す横C形の連結プレート8Cを使用して連結する。なお、擁壁ブロック30,40の連結プレート8による連結方法は前記図1乃至図6に示す擁壁ブロック1,11の場合と同じである。
【符号の説明】
【0050】
1,11 擁壁ブロック
2.12 側壁部
3,13 底壁部
4,17 鉄筋
5,14 連結側の側壁端面
6 突出部
7 縦軸
8 突条部
15 切欠部
16 スリーブ
18 連結プレート
18a,18b 同端部
19,20 凹溝
21,22 アンカーナット
23,24 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーナー部又は曲線部に立設する擁壁ブロックであって、一方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面の下方部に突出部が連設され、他方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面に、前記一方の擁壁ブロックの前記突出部と嵌合し、縦軸を介して前記一方の擁壁ブロックと回動可能となるよう軸結合する切欠凹部が形成され、更に、前記両擁壁ブロックの連結側の側壁端部の上面部を、一端部を前記一方の擁壁ブロックに固定し、他端部を前記他方の擁壁ブロックにボルトで仮固定した連結プレートにより連結してなり、前記両擁壁ブロックを、前記仮固定のボルト軸および前記縦軸を中心に回動して連結角度を調整した後、前記仮固定したボルトの本締めで固定した前記連結プレートを介して一体に連結するように構成したことを特徴とする擁壁ブロック。
【請求項2】
前記両擁壁ブロックの連結側の側壁端部の上面部を、一端部を前記一方の擁壁ブロックに固定し、他端部を前記他方の擁壁ブロックにボルトで仮固定した連結プレートによる前記の連結が、前記両擁壁ブロックの連結側の側壁端部の上面部にそれぞれ形成した側壁の内面側に連通する板厚方向の凹溝と、該両凹溝内に両端部をそれぞれ設置して一端部を固定した平面視がコ字形,U字形又はC字形の連結プレートのうちいずれか一つの連結プレートからなる構成としたことを特徴とする請求項1記載の擁壁ブロック。
【請求項3】
前記仮固定したボルトの本締めで前記両擁壁ブロックを前記連結プレートを介して一体に連結した後、前記両凹溝内に硬化性充填材を充填してなり、前記凹溝内に設置固定した前記連結プレートの両端部の上面をそれぞれ覆う構成としたことを特徴とする請求項2記載の擁壁ブロック。
【請求項4】
前記一方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面を垂直な平面で、他方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面を円弧面でそれぞれ形成するとゝもに、垂直な平面で形成した前記一方の側壁端面の外側位置に、他方の擁壁ブロックの前記円弧面で形成した側壁端面との連結位置に現れる間隙を覆う突条部を、前記一方の側壁端面の長手方向に沿って設けたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の擁壁ブロック。
【請求項5】
前記擁壁ブロックは、垂直な側壁部と、該側壁部の下端縁から内側へ水平に延びる底版部とからなるL字形の擁壁ブロックであって、両擁壁ブロックの連結側の側壁端面の突き合わせによる連結角度をほゞ90度とした際に、前記底版部の接続側の側端面が互いに面接する傾斜面で形成するとゝもに、前記底版部の前端面に、現場打ちコンクリートと一体化するための鉄筋を複数本突出せしめたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の擁壁ブロック。
【請求項6】
擁壁ブロックの左側又は右側の側壁端面および側壁端部の上面に、前記一方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面および側壁端部の上面にそれぞれ形成した前記突出部および凹溝を、前記擁壁ブロックの右側又は左側の側壁端面および側壁端部の上面に、前記他方の擁壁ブロックの連結側の側壁端面および側壁端部の上面にそれぞれ形成した前記切欠凹部および凹溝を、それぞれ形成したことを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の擁壁ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−270473(P2010−270473A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121877(P2009−121877)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(308025923)前田製品販売株式会社 (16)
【Fターム(参考)】