説明

操作ノブの取付構造

【課題】操作ノブをアーム部材に対して容易に着脱できるようにする。
【解決手段】例えば収納状態にあるル−フ部材6をロックしておくためのロック装置Rが,アンロック用のアーム部(アーム部材)34を有して,その先端部の操作部(操作ノブ)35が着脱自在に取付けられる。操作部35には,左右一対のガイド用突部51が形成され,ガイド用突部51に係止凹部55が形成される。アーム部34の先端部側面には,ガイド用突部51がスライド式に嵌合されるガイド用溝部61が形成されている。アーム部34には,係止爪部65を有する左右一対の解除用レバー部70が突出形成される。ガイド用突部51をガイド用溝部61に嵌合させて,係止爪部65を係止凹部55に係合させたときが取付状態となる(図28)。取付状態から左右一対の解除用レバー部70をつまし操作して弾性変形させて,係止爪部65の係止凹部55に対する係合を解除した状態で,操作部35をアーム部34から引き抜くことができる(図29)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,操作ノブをアーム部材に対して着脱自在に取付けるようにしてなる操作ノブの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マニュアル操作によって揺動される操作部材は,アーム部材とその先端部に設けた操作ノブとを有して,操作ノブをマニュアル操作することによりアーム部材が揺動されることになり,このような操作部材は種々の分野で利用されている。例えば車両特に自動車においては,ドア,ボンネット,トランクリッド等の開閉用や,オープンカーにおける折りたたみ式ル−フ部材を収納状態でロックしておくためのロック機構のアンロック操作用等として利用されている。
【0003】
アーム部材と操作ノブとを一体成形することも行われているが,操作ノブをアーム部材とは別体に形成することが望まれる場合も多々ある。例えば,車両用として操作ノブが車室内に位置される場合は,操作ノブは操作性の観点からかなり大きく形成されると共に外観上の見栄えが強く要求される一方,アーム部材は,もっぱら機能的な面が要求されると共に,車室内外に亘って伸ばす関係からトリム材等に形成される小さな開口部を貫通できるようにその最大幅は極力小さくすることが要求される。このようなことから,アーム部材と操作ノブとを別体に形成して,後にねじ止めや接着等により一体化することが行われている。
【0004】
ところで,マニュアル操作される操作ノブは汚損されやすくまた破損も考えられることから,操作ノブのみを交換することが要求される場合がある。また,トリム材を取外して種々のメンテナンス(例えばトリム材で覆われたスピーカの交換や折りたたみ式ル−フ部材の破損による交換)が行われるが,このトリム材の取外しの際に操作ノブが邪魔にならないように,操作ノブをアーム部材から取外し可能にすることが望まれることになる。アーム部材と操作ノブとの一体化を接着で行った場合は操作ノブの交換が実質的に困難であり,ねじ止めで行った場合は取付作業および交換作業共に極めて面倒となる。特許文献1には,アーム部材と操作ノブとを嵌合形式によって一体化して,嵌合外れの防止を逆止爪でもって行うようにしたものが開示されている。この特許文献1に開示のものは,操作ノブの取外しについては特に意図されておらず,操作ノブの取付けは容易であっても操作ノブの取外しが事実上困難である。
【特許文献1】特開平07−164972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、操作ノブをアーム部材に対して容易に取付けることができ,しかも容易に取外しできるようにした操作ノブの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
アーム部材の先端部にマニュアル操作される操作ノブを着脱自在に取付けてなる操作ノブの組付構造であって,
前記アーム部材と操作ノブとの一方にガイド用溝部が形成されると共に,他方に該ガイド用溝部に所定方向からスライド式に嵌合されるガイド用突部が形成され,
前記ガイド用溝部に対して前記ガイド用突部を嵌合させたときに,前記操作ノブが前記アーム部材から引き抜かれるのを規制する規制手段が設けられ,
前記アーム部材と操作ノブとのいずれか一方に,前記規制手段による規制を解除する規制解除手段が設けられている,
ようにしてある。
【0007】
上記第1の解決手法によれば,操作ノブのアーム部材に対する取付けは,ガイド用溝部とガイド用突部とを所定方向からスライド式に嵌合させるだけでよいので,極めて簡単かつ容易に行うことができる。また,嵌合された後は,規制手段によって操作ノブのアーム部材からの嵌合外れが防止されて,操作ノブのアーム部材からの脱落つまり嵌合外れが確実に防止されることになる。そして,規制解除手段を操作することにより,操作ノブをアーム部材から容易に取外すことができる。
【0008】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2〜請求項5に記載のとおりである。すなわち,
前記規制手段が,前記アーム部材と操作ノブとの一方に形成された係止凹部と,他方に形成されて該係止凹部に係合される係止爪部とによって形成されている,ようにすることができる(請求項2対応)。この場合、係止凹部と係止爪部との係合を利用して,操作ノブのアーム部材からの脱落防止を確実に行って,操作ノブをアーム部材に対してしっかりと取付けておくことができる。
【0009】
前記アーム部材と操作ノブとのいずれか一方に,弾性変形可能でマニュアル操作される解除用レバー部が突出形成され,
前記解除用レバー部に前記係止凹部または係止爪部が形成されて,該係止凹部と係止爪部とが嵌合されている状態から該解除用レバー部を弾性変形させることにより,該係止凹部と係止爪部との係合が解除される,
ようにすることができる(請求項3対応)。この場合、解除用レバー部を弾性変形させるという極めて簡単な操作によって,規制手段による規制を解除して,操作ノブをアーム部材から極めて容易に取外すことができる。
【0010】
前記解除用レバー部が,ほぼ平行となるようにして一対形成されており,
前記一対の解除用レバー部の先端部同士を近接させる方向に該左右一対の解除用レバー部を弾性変形させたときに,前記係止凹部と係止爪部との係合が解除される,
ようにすることができる(請求項4対応)。この場合、係止凹部と係止爪部とを一対設けることにより,操作ノブのアーム部材への取付けをよりしっかりと確保しつつ,一対の解除用レバー部の先端部を片手の手指でつまむだけで,この一対の解除用レバー部をそれぞれ弾性変形させて規制解除することができるので,操作ノブの取外しを極めて容易に行うことができる。
【0011】
前記ガイド用溝部とガイド用突部との少なくとも一方には,該ガイド用溝部とガイド用突部との若干の位置ずれを吸収して嵌合案内するためのガイド部が形成されいてる,ようにすることができる(請求項5対応)。この場合、ガイド部による案内作用によって,ガイド用溝部とガイド用突部との嵌合を容易に行う上で好ましいものとなる。
【0012】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第2の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項2に記載のように、
アーム部材の先端部にマニュアル操作される操作ノブを着脱自在に取付けてなる操作ノブの組付構造であって,
前記操作ノブの背面側に,所定方向に開口された収納凹部が形成され,
前記アーム部材の先端部には,前記収納凹部に対してスライド式に嵌合される嵌合突起部が形成され,
前記収納凹部の内面と前記嵌合突起部の外面との一方に係止凹部が形成されると共に,他方に該係止凹部に係合される係止爪部が形成されて,前記収納凹部に対して前記嵌合突起部を嵌合させたときに該係止凹部に対して該係止爪部が係合されるように設定され,
前記アーム部材と操作ノブとのいずれか一方に,弾性変形されると共にマニュアル操作される解除用レバー部が突出形成されて,該解除用レバー部に前記係止凹部または係止爪部が形成されており,
前記係止凹部と係止爪部とが係合されている状態で前記解除用レバー部を弾性変形させることにより,該係止凹部と係止爪部との係合が解除される,
ようにしてある。
【0013】
上記第2の解決手法によれば,収納凹部に対して嵌合突起部を嵌合させることにより係止凹部に対して係止爪部が係合されて,操作ノブのアーム部材に対する取付けが簡単かつ容易に行われることになる。また,解除用レバー部を弾性変形させることにより,係止凹部に対する係止爪部の係合が解除されて,操作ノブをアーム部材から容易に取外すことができる。以上に加えて,操作ノブに対して収納凹部を形成するので,アーム部材側に収納凹部を形成する場合に比して,アーム部材の先端部付近の最大幅を極力小さくする上でも好ましいものとなり,とりわけ,例えば車室内壁材に形成されるアーム部材貫通用の開口部を極力小さくする上で好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載された発明によれば,操作ノブのアーム部材への取付け,取外しを容易に行うことができる。
請求項6に記載された発明によれば,操作ノブのアーム部材への取付け,取外しを容易に行うことができる。また,アーム部材の先端部付近の最大幅を極力小さくなるように設定する上で好ましいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の実施形態について説明するが,実施形態では,オープンカーにおいて,折りたたみ式のル−フ部材を収納状態にロックしておくロック機構が有するアーム部材に対して操作ノブを着脱自在に取付けた場合を示してある。以上のことを前提として,まずロック機構部分について説明し,その後,アーム部材に対して操作ノブを着脱自在に取付ける構造の詳細について説明する。
【0016】
図1において,オープンカーとされた車両Sは,車室1内に運転席2と助手席3とを有する2シータ式とされて,この運転席2と助手席3の直後方に,トランクルーム4との隔壁となる車室後壁部5が配置されている。図1では,折りたたみ式のル−フ部材6が折りたたまれた状態で車室後壁部5の上端部付近に収納された収納状態とされて,車室1の上方および後方が開放されたオープン状態となっている。このオープン状態から,収納状態にあるル−フ部材6の先端部を持ち上げつつ前方へ移動させることにより,図2に示すように,車室1の上方および後方がル−フ部材6によって覆われたクローズ状態とされる(ル−フ部材6の使用状態)。ル−フ部材6は,実施形態では幌部材を骨組み材に組み付けて折りたたみ式としたいわゆるソフトトップ式とされているが,硬質のパネル材を複数枚組み合わせて折りたたみ式としたハードトップ式であってもよい。
【0017】
ル−フ部材6を収納状態でもってロックしておくためのロック装置Rが,車室後壁部5の上端部付近に設けられる。このロック装置Rの概要について,図3,図4を参照しつつ説明する。まず,ロック装置Rは,大別して,本体部材10と,係止部材20と,操作部材30とを有する他,リターンスプリング40および揺動軸構成用のピン部材41を有する。本体部材10は,硬質合成樹脂によって形成されて,その底壁部分に形成された複数の取付孔11を利用して,固定具43によって車体に固定される。より具体的には,本体部材10は,全体的に車幅方向に伸びていて,車室後壁部5の上端部を構成する強度部材としてのクロスメンバ7の上面に着座された状態で,クロスメンバ9に固定されている。
【0018】
本体部材10は,前後方向に伸びると共に後方に向けて開口されたシリンダ状の収納部12を有し,この収納部12内に,前記係止部材20が前後方向にスライド可能に収納,保持されている。この係止部材20は,本体部材10から後方へ大きく突出したロック位置と,ロック位置から本体部材10側に退出したアンロック位置とをとり得るようになっている。係止部材20は,ロック位置のときに,収納状態にあるル−フ部材6の先端部に固定されたフック部材7の上方に位置される。これにより,フック部材7の上方への変位が規制されて,ル−フ部材6が収納状態に保持されるロック状態となる。係止部材20がアンロック位置とされたときは,係止部材20によるフック部材7の上方への変位規制が解除されて,ル−フ部材6を図2に示す使用状態に向けて作動させることが可能になる。このような係止部材20は,収納部12の奥部に配設されたリターンスプリング40によって,常時ロック位置に向けて付勢されている。
【0019】
前記操作部材30は,本体部材10の上端部に対して,ピン部材41を利用して,車幅方向に伸びる揺動軸線αを中心に揺動自在に保持されている。操作部材30は,車幅方向に伸びる中間連結部31と,中間連結部31の長手方向各端部において上方及び後方に向けて短く突出された一対の突起部32を有し,各突起部32の略中間部において,ピン部材41を利用して本体部材10に対して揺動自在に連結されている。各突起部32の先端部からは,下方に向けて短く伸びる係合部33が延設されている。また,上記中間連結部31の一方側の端部からは,長く伸びるアーム部34が延設されている。このアーム部34は,車室後壁部5を覆うトリム材8を貫通してその先端部が車室1内に延設されており,アーム部34の先端部に,マニュアル操作される操作部35が設けられている。このアーム部34がアーム部材に相当し,操作部35が操作ノブに相当する。
【0020】
操作部材30における前記係合部33が,後述するように係止部材20に対して作用するように設定されて,前記操作部35をほぼ上方へ持ち上げて操作部材30を揺動させることにより,ロック位置にある係止部材20が係合部33によって前方へ押圧されて,リターンスプリング40の付勢力に抗してアンロック位置に向けて移動されることになる。操作部35に対する上方への持ち上げ力を解放すると,リターンスプリング40によって,係止部材20がロック位置へと復帰することになる。
【0021】
係止部材20が,図5〜図10に示される。以下,係止部材20の詳細について,全体関係を示す図3,図4および本体部材10を示す図11〜図15をも参照しつつ説明する。まず,係止部材20は,前後方向に伸びる形状とされて,全体として硬質合成樹脂による一体成形品とされている。係止部材20は,その後端部上面が,後方に向かうつれて徐々に下方に向かう傾斜面21とされる一方,後端部下面は略水平な平坦面22とされている。係止部材20の各側面には,前後方向に伸びるガイド用突起部23,24が上下方向に隔置して形成されている。また,係止部材20の前端部の各側面には,上下のガイド用突起部23と24との間において,前後方向に短く設定された突部25が形成されている。
【0022】
係止部材20の上下一対のガイド用突起部23,24に対応させて,本体部材10に形成されている収納部12の内側面には,それぞれ前後方向に伸びる上下一対のガイド溝13,14が形成されている。また,収納部12の内面には,上下一対のガイド溝13と14との間において,係止部材20の突部25に対応させて,前後方向に伸びる凹部15が形成されている。係止部材20のガイド用突起部23,24は収納部12のガイド溝13あるいは14にスライド可能に嵌合され,係止部材20の突部25が収納部12の凹部15内にスライド可能に嵌合される。なお,ガイド用突起部23,24とガイド溝13,14との嵌合部分の形状設定例が,図15に示される。このような突起部(突部)と溝(凹部)とを利用したガイド機能によって,係止部材20は収納部12に対してがたつきなく円滑にスライドされることになる。そして,収納部12内には,係止部材20の前端面と収納部12の前端面(奥壁面)との間に位置するように,コイルスプリングからなるリターンスプリング40が配設されている。なお,係止部材20の前端面には,,リターンスプリング40の後端部ががたつきなく嵌合される突起部26が突出形成されている。
【0023】
係止部材20の前後方向中間部から後端部にかけて,上下方向に貫通する貫通孔27が形成されて,この貫通孔27の後壁部が係合面27aとされている。本体部材10の上壁部には,貫通孔27の位置に対応させて開口部10aが形成されている。操作部材30の前述した係合部33が,開口部10aを通して貫通孔27内に伸びて,係合面27aに対して後方から当接可能に臨んでいる。つまり,操作部材30の係合部33を前方へ変位させることにより,係止部材20がアンロック位置に向けて変位されることになる。
【0024】
操作部材30が,図16,図17に示される。以下,操作部材30の詳細について,全体関係を示す図3,図4および本体部材10を示す図11〜図14をも参照しつつ説明する。まず,操作部材30の前述した一対の突起部32にはそれぞれ,その略中間部において取付孔36が形成されている。操作部材30を揺動自在に保持するため,本体部材10には,その上壁部に,上方に向けて突出する4個の支持部16a〜16dが車幅方向に直列に形成されている。各支持部16a〜16dにはそれぞれ,取付孔17が形成されている。隣合う一方の支持部16aと16bとの間に操作部材30の一方の突起部32を位置させ,隣り合う他方の支持部16cと16dとの間に他方の突起部32を位置させた状態で,ピン部材41を各取付孔17,36に貫通させることにより,操作部材30が本体部材10に対して揺動自在に保持されることになる(一方のピン部材41は図4では図示を略す)。
【0025】
操作部材30のアーム部34は,実施形態では二又状とされて,中間連結部31のうち,係止部材20が位置する側とは反対側の端部から延設されている。このアーム部34は,ほぼ下方に,より具体的には下方に向かうにつれてわずかに前方へ位置するように伸びて,本体部材10の下端部付近において前方へ向かうように曲げられており,全体的に略J字形状として形成されている。図3から明らかなように,車室後壁部5を覆うトリム材8によって本体部材10も上方から覆われているが,アーム部34のうち下方に伸びる部分はトリム材8によって覆われており,前方へ曲げられた部分の先端部のみがトリム材8を貫通して車室1内に位置するに設定されている。そして,アーム部34の先端部に取付けた操作部35は,トリム材8の直前方に位置されている。
【0026】
操作部35は,車室後壁部5の上端部付近に位置されるが,車幅方向においては,図1に示すように運転席2と助手席3との間に位置される。このような操作部35の前面つまり車室1内に臨む側の面が,ほぼ上下方向,より具体的にはトリム材8の伸びる方向に沿って伸びるように設定されて,実質的にトリム材8の一部を構成するように配置されている。そして,トリム材8には,操作部35の下方に手指Fを入れることのできる凹部37が形成されている。操作部材30は,操作部35を除いて一体成形品とされていて,操作部35が圧入やねじ止め等の適宜の手法によってアーム部34の先端部に固定されるようになっている。また,操作部35の前端部には,下方に若干突出された突出部35aが形成されて,手指Fが引っ掛け易いようにされている。換言すれば,操作部35の下面は,上記突出部35aを形成することにより,上方に向けて凹となる形状に設定されている。
【0027】
揺動軸線αから操作部35(特に手指Fの引っ掛け部となる突出部35a)までの長さ(アーム長)は,揺動軸線αから係合部33と係合面27aとの当接部までの長さよりも十分に(実施形態では3倍程度)長くされている。これにより,操作部35へ加えた揺動の外力は,係合部33に対して倍力されて伝達されることになる(てこの原理)。なお,操作部材30は,操作部35を除いて,硬質合成樹脂による一体成形品とされており,操作部35も硬質合成樹脂によって形成されている。
【0028】
ここで,本体部材10には,アーム部34に対応した車幅方向位置において,底壁部から前方へ向けて突出された係止用突起部18が延設されている。この係止用突起部18の上面は,特許請求の範囲における受け面を構成するもので,図3に示すロック位置とされた状態において,アーム部34に沿ってその直下方に位置するようにされている。係止用突起部18は,十分な曲げ強度を有するもので,その上面からはさらに上方に向けて突起部18aが形成され,この突起部18aの上面に,ゴム等の弾性部材からなる平板状のクッション材19が固定されている。ロック位置において,アーム部34は,係止用突起部18には当接しないものの,クッション材19には軽く当接するような位置関係とされている。そして,アーム部34がロック位置よりもさらにロック方向へと揺動されたときに,クッション材19がつぶれ変形されて,アーム部34が係止突起部18に当接されて,それ以上の揺動が規制されるようになっている。
【0029】
係止部材20がロック位置にある図3,図18の状態から,操作部35を手指Fによってほぼ上方へ持ち上げることにより,操作部材30の係合部33が係止部材20の係合面を前方へ押圧することとなり,リターンスプリング40の付勢力に抗して係止部材20がアンロック位置へ移動されて,フック部材7に対するロックが解除される。これにより,ル−フ部材6を図2に示す使用位置へと移動(展開)させることができる。アンロックの操作を行う場合,運転席2あるいは助手席3に着座している乗員が,手のひらを上向にした状態で腕を後方へ伸ばして,手指Fを操作部35の突出部35aに引っ掛けた状態で上方へと持ち上げる操作となり,かなり窮屈な体勢を強いられることになる。しかしながら,てこの原理による倍力作用により,アンロックさせるのに操作部35の持ち上げ力が小さくてすみ,また前方へ引き操作するよりも上方への力を発揮し易い体勢でもあるので,容易にアンロックさせることが可能となる。また,上記突出部35aを利用した引っ掛け作用によって,手指Fが操作部35から滑ることなく効果的にアンロック操作することができ,より容易にアンロック操作することが可能となる。以上に加えて,アンロック方向となる操作部35の上方への変位は,折りたたまれたル−フ部材6を使用位置へと移動させる際の当初の動き方向と一致するために,アンロック方向というものを乗員に間違いなく明確に認識させる上でも好ましいものとなる。
【0030】
ル−フ部材6を使用状態にしたときは,係止部材20はリターンスプリング40によってロック位置に復帰されている。したがって,次にル−フ部材6を収納してロックするときは,フック部材7が下方へと変位しつつ,図3,図18に示す位置となるが,このとき,収納状態にするために下方へと押圧されるフック部材7は係止部材20の傾斜面21に沿って係止部材20をアンロック位置に向けて変位させ,係止部材20がアンロック位置となった状態で係止部材20よりも下方位置となり,その直後に係止部材20がリターンスプリング40によってロック位置へと復帰される(図3,図18に示すロック状態となる)。勿論,係止部材20の下面は略水平な平坦面22とされているので,フック部材7を確実に係止部材20の下方に位置させて,確実なロック状態が確保される。
【0031】
係止部材20がアンロック位置からロック位置に復帰するとき,操作部材30は,その操作部35が下方へ向かうような揺動作用,つまりアーム部34が係止用突起部18に当接する方向へと揺動されることになるが,クッション材19によって,緩衝されることになる。そして,乗員によって不用意に操作部35を後方へ押圧するような大きな力を受けたときは,クッション材19がつぶれ変形されて,アーム部34が係止用突起部18に当接して,乗員からの大きな押圧力を強度的に優れた係止用突起部18で受け止めて,アーム部34の折損等が防止される。
【0032】
アーム部34を略J字形状として形成することにより,操作部材30の揺動軸線αから操作部35までの直線状に連結する場合に比して,アーム部34の車室1側への突出量を小さくすることができ,この分車室1の空間をより十分に確保する上で好ましいものとなる。なお,ロック装置Rは,あらかじめ本体部材10に対して係止部材20,操作部材30,リターンスプリング40等が組み込まれたセット化された組立体として用意されて,本体部材10を車体に固定するだけで,図3の取付状態が得られることになり,車両の組立行程において容易に後付けすることが可能である。
【0033】
なお,図18,図19に示すように,本体部材10のうち,収納部12の上壁部後端部に,ゴム等の弾性部材からなるクッション材44を設けておくのが好ましい(クッション材44は図3では図示を略す)。すなわち,折りたたまれたル−フ部材6を収納状態にするときに,クッション材44によってル−フ部材6の前端部が本体部材10に直接当接するのを防止して,緩衝や異音発生防止の上で好ましいものとなる。
【0034】
次に,図20〜図29を参照しつつ,アーム部材としてのアーム部34に対して,操作ノブとしての操作部35を着脱自在に取付ける構造について説明する。
【0035】
まず,図20〜図22に示すように,操作部35の背面側(車室側から見たときの裏面側)には,収納凹部50が形成されている。この収納凹部50の内面のうち左右壁面にはそれぞれ,斜め上方に向けて直線的に伸びる複数(実施形態では2本)のガイド用突部51,52が形成されている。すなわち,ガイド用突部51が左右一対形成されると共に(図23をも参照),このガイド用突部51と平行にガイド用突部52(図24をも参照)が左右一対形成されている。なお,操作部35の内面には,左右一対の外側壁面から若干離間させて左右一対の内側壁部57を形成して,この内側壁部57の内面側に上記ガイド用突部51,52を突出形成してあり,これにより,外観上の見栄えが要求される操作部35の外表面側に,成形時のヒケの問題が生じないものとなっている。なお,上記内側壁部57と操作部35の外壁面との間には複数のリブ部58によって連結して,内側壁部57の強度が十分に確保されている。
【0036】
アーム部34の先端部には,前記収納凹部50に対応させて,嵌合突起部60が形成されている。この嵌合突起部60は,前記収納凹部50内に位置されるもので,この嵌合突起部60の外面のうち左右の壁面にはそれぞれ,直線的に伸びる複数(実施形態では2本)のガイド用溝部61,62が形成されている。すなわち,ガイド用溝部61が左右一対形成されると共に(図26をも参照),このガイド用溝部61と平行に左右一対のガイド用溝部62(図27をも参照)が左右一対形成されている。
【0037】
上記ガイド用溝部61,62の開口幅は,ガイド用突部51,52ががたつきなくスムーズにスライドできるように,ガイド用突部51,52の厚さよりも若干大きい程度とされている。ただし,ガイド用溝部61,62の先端部には,その開口幅が先端に向かうにつれて徐々に大きくなるようにされたガイド部(ガイド面)63とされて,ガイド部63の先端の開口幅はガイド用突部51,52の厚さよりも十分に大きくなるようにされている。このガイド部63の案内作用によって,ガイド用突部51,52とガイド用溝部61,62との多少の位置ずれ,特にガイド用突部51,52の厚さ方向の位置ずれを吸収しつつ,ガイド用突部51,52がガイド用溝部61,62にスムーズに嵌合させることが可能となる。
【0038】
ガイド用突部51をガイド用溝部61に嵌合させ,ガイド用突部52をガイド用溝部62に嵌合させつつ,嵌合突起部60を収納凹部50に対して所定深さにまで挿入させることにより,アーム部34に対して操作部35が所定の取付位置とされる。所定の取付位置でもって操作部35がアーム部34から嵌合外れするのを規制するための規制手段として,係止凹部と係止爪部とが形成される。すなわち,実施形態では,左右一対のガイド用突部51の内面側の一部を切り欠くことにより,左右一対の係止凹部55が形成される(図23参照)。他方のガイド用突部62には係止凹部55が形成されていない(図24参照)。
【0039】
上記係止凹部55に対応して,嵌合突起部60には,左右一対の係止爪部65が形成される(図25,図26参照)。実施形態では,嵌合突起部60に,ガイド用溝部61の延長方向に伸びる左右一対の解除用レバー部70が形成されて,この解除用レバー部70の外側面に係止爪部65が形成されている(図20,図25,図26参照)。
【0040】
操作部35をアーム部34に取付けるには,ガイド用突部51に対してガイド用溝部61を,またガイド用突部52に対してガイド用溝部62をスライド式に嵌合させて,嵌合突起部60を収納凹部50内に所定深さにまで深く挿入していけばよい。この嵌合の際,ガイド部63の案内作用によって,上記嵌合がスムーズに行われることになる。上記嵌合が所定深さにまで進行すると,係止爪部65が係止凹部55に係合されて,取付完了状態となる。すなわち,係止爪部65が係止凹部55に係合されていることによって,操作部35のアーム部34からの抜けが規制されることになる(図28参照)。なお,係止爪部65は,係止凹部55に係合される前の段階では,ガイド用突部51に押圧されて,左右一対の解除用レバー部70の先端部同士が互いに接近した状態となるように弾性変形した状態で嵌合が進行され,係止凹部55に対して係止爪部65が整合したときに,上記弾性変形された解除用レバー部70が弾性復帰されて,係止爪部65が係止凹部55に係合されることになる。
【0041】
図28に示す取付完了状態から,操作部35を交換する等のためにアーム部34から取外す場合は,次のような手順で行えばよい。まず,操作部35の背面側から手指を接近させて,例えば親指と人差し指でもって左右一対の解除用レバー部70の先端部をつまみ操作する。より具体的には,左右一対の解除用レバー部70の先端部同士が互いに接近する方向に弾性変形するようにつまみ操作する。これにより,図29に示すように,係止爪部65が係止凹部55から係合解除された状態となる。この図29の状態で,解除用レバー部70をつまみ操作している側の手とは反対側の手でもって操作部35を把持して,ガイド用突部51,52とガイド用溝部61,62との嵌合を解除する方向に操作部35を引っ張り操作すれば,操作部35がアーム部34から取外されることになる。
【0042】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。アーム部材としてのアーム部34と操作ノブとしての操作部35は,ロック機構用のものに限らず,例えば車両におけるドア,ボンネット,トランクリッド等の開閉操作用として利用されるものであってもよく,車両用以外の各種の操作用として利用されるものであってもよい。
【0043】
係止凹部55をアーム部34側に形成する一方,係止爪部65を操作部35側に形成するようにしてもよい。解除用レバー部70は,係止凹部55あるいは係止爪部65の形成用として利用される場合に限らず,係止凹部55あるいは係止爪部65が形成されていないで,その係合を解除する方向の外力付与用としてのみ機能するように設定してもよい。また,係止凹部55(係止爪部65)を左右一対設けることなく,1つのみ設ける場合であってもよく,また3以上設ける場合であってもよい。解除用レバー部70は,係止凹部55(係止爪部65)の数に応じた数だけ設定すればよい。左右一対のガイド用突部51,52(ガイド用溝部61,62)の数は,一対のみあるいは3対以上とすることができ,さらには単に1つのみとすることもできる。
【0044】
収納凹部50を例えばシリンダ状とする一方,嵌合突起部60を例えば収納凹部50にがたつきなくスライド式に嵌合されるピストン形式とすると共に(別途ガイド用突部51,52やガイド用溝部61,62を形成しない),係止凹部55と係止爪部65とによってその抜けを規制するようにしてもよい。この場合,解除用レバー部70を利用した係止凹部55と係止爪部65との係合解除を行うように設定することができる。なお,操作部35は,外観上の見栄え向上という観点から,複雑な機能部分は極力アーム部35側に形成しておくのが好ましく,このため,解除用レバー部70はアーム部34側に形成しておくのが好ましい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明が適用される車両の一例を示すもので,ル−フ部材が収納状態にあるときの状態を示す要部斜視図。
【図2】ル−フ部材を使用位置としたときの状態を示す要部斜視図。
【図3】ロック装置によって収納状態にあるル−フ部材をロックしている状態を示す側面断面図。
【図4】本発明が適用されたアーム部材と操作部とを有するロック装置の分解斜視図。
【図5】係止部材の一例を示す斜視図。
【図6】係止部材の平面図。
【図7】係止部材の側面図。
【図8】図6のX8−X8線相当断面図。
【図9】図7の右側面図
【図10】図7の左側面図。
【図11】本体部材の平面図。
【図12】図11を下方(車両前方側)から見た図。
【図13】図11のX13−X13線相当断面図。
【図14】図11を上方(車両後方側)から見た図。
【図15】係止部材と本体部材に形成された収納部とのガイド部分の関係を示すもので,係止部材のスライド方向から見た要部拡大断面図。
【図16】操作部材の側面図。
【図17】操作部材の平面図。
【図18】ロック位置のときの係止部材と操作部材との関係を示すもので,図13に相当する部分の断面図。
【図19】アンロック位置のときの係止部材と操作部材との関係を示すもので,図13に相当する部分の断面図。
【図20】アーム部材としてのアーム部と操作ノブとしての操作部との結合関係を示す分解断面図。
【図21】操作部を下方および背面側から見た斜視図。
【図22】操作部をアーム部の嵌合方向から見た図。
【図23】図20のX23−X23線相当断面図。
【図24】図20のX24−X24線相当断面図。
【図25】アーム部に形成された嵌合突起部をその正面側から見た図。
【図26】図20のX26−X26線相当断面図。
【図27】図20のX27−X27線相当断面図。
【図28】係止凹部と係止爪部とが係合された状態を示すもので,図23,図26に対応した断面図。
【図29】係止凹部と係止爪部とが係合解除された直後の状態を示すもので,図28に対応した断面図。
【符号の説明】
【0046】
S:車両
R:ロック装置
α:揺動軸線
F:手指
1:車室
6:ル−フ部材
30:操作部材
34:アーム部(アーム部材)
35:操作部(操作ノブ)
50:収納凹部
51:ガイド用突部
52:ガイド用突部
55:係止凹部
60:嵌合突起部
61:ガイド用溝部
62:ガイド用溝部
65:係止爪部
70:解除用レバー部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム部材の先端部にマニュアル操作される操作ノブを着脱自在に取付けてなる操作ノブの取付構造であって,
前記アーム部材と操作ノブとの一方にガイド用溝部が形成されると共に,他方に該ガイド用溝部に所定方向からスライド式に嵌合されるガイド用突部が形成され,
前記ガイド用溝部に対して前記ガイド用突部を嵌合させたときに,前記操作ノブが前記アーム部材から引き抜かれるのを規制する規制手段が設けられ,
前記アーム部材と操作ノブとのいずれか一方に,前記規制手段による規制を解除する規制解除手段が設けられている,
ことを特徴とする操作ノブの取付構造。
【請求項2】
請求項1において,
前記規制手段が,前記アーム部材と操作ノブとの一方に形成された係止凹部と,他方に形成されて該係止凹部に係合される係止爪部とによって形成されている,ことを特徴とする操作ノブの取付構造。
【請求項3】
請求項2において,
前記アーム部材と操作ノブとのいずれか一方に,弾性変形可能でマニュアル操作される解除用レバー部が突出形成され,
前記解除用レバー部に前記係止凹部または係止爪部が形成されて,該係止凹部と係止爪部とが嵌合されている状態から該解除用レバー部を弾性変形させることにより,該係止凹部と係止爪部との係合が解除される,
ことを特徴とする操作ノブの取付構造
【請求項4】
請求項3において,
前記解除用レバー部が,ほぼ平行となるようにして一対形成されており,
前記一対の解除用レバー部の先端部同士を近接させる方向に該左右一対の解除用レバー部を弾性変形させたときに,前記係止凹部と係止爪部との係合が解除される,
ことを特徴とする操作ノブの取付構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において,
前記ガイド用溝部とガイド用突部との少なくとも一方には,該ガイド用溝部とガイド用突部との若干の位置ずれを吸収して嵌合案内するためのガイド部が形成されいてる,ことを特徴とする操作ノブの取付構造。
【請求項6】
アーム部材の先端部にマニュアル操作される操作ノブを着脱自在に取付けてなる操作ノブの組付構造であって,
前記操作ノブの背面側に,所定方向に開口された収納凹部が形成され,
前記アーム部材の先端部には,前記収納凹部に対してスライド式に嵌合される嵌合突起部が形成され,
前記収納凹部の内面と前記嵌合突起部の外面との一方に係止凹部が形成されると共に,他方に該係止凹部に係合される係止爪部が形成されて,前記収納凹部に対して前記嵌合突起部を嵌合させたときに該係止凹部に対して該係止爪部が係合されるように設定され,
前記アーム部材と操作ノブとのいずれか一方に,弾性変形されると共にマニュアル操作される解除用レバー部が突出形成されて,該解除用レバー部に前記係止凹部または係止爪部が形成されており,
前記係止凹部と係止爪部とが係合されている状態で前記解除用レバー部を弾性変形させることにより,該係止凹部と係止爪部との係合が解除される,
ことを特徴とする操作ノブの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2006−233629(P2006−233629A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51244(P2005−51244)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)