説明

操作ノブ

【課題】特に潤滑剤を使用しなくても、合成樹脂製の動作体との擦れ合いに起因した押操作の引っ掛かり感や異音を低減することのできる操作ノブを提供することである。
【解決手段】押操作されるべき操作面12の形成された操作部11と、操作部11の一端に形成され、操作部11の押操作方向に沿う回動を許容するように固定支持される支点部14と、操作部11の前記操作面12と逆側の面から突出する突出部151とを有し、突出部151の先端部に、先端面が湾曲形状となる金属製の部材152が設けられた構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に設けられ、スイッチ素子のステム等の動作体を押操作するように配置される操作ノブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器等に設けられ、スイッチ素子のステム(動作体)を押動するように配置される操作ノブが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この操作ノブは例えば図4に示すように構成される。
【0003】
図4において、操作ノブ10は、釦部12及びその外周に形成された枠部13により構成される操作部11を有している。操作部11の一端部には支点部14が形成されており、支点部14が固定板20にて固定支持される。これにより、釦部12の表面(操作面)を押操作すると、支点部14を中心にして操作部11がその押操作方向に沿って回動するようになる。
【0004】
操作部11の支点部14が形成された側と逆側の端部には前記操作面(釦部12の表面)と逆側の面から突出する突出部15が形成されている。そして、操作部11の背面側には、基板100に装着されたスイッチ素子30が設けられ、そのスイッチ素子30のステム31(動作体)が突出部15に当接するように操作ノブ10が配置されている。
【0005】
このような操作ノブ10によれば、釦部12の表面を押操作すると、操作部11がその押操作方向に沿って回動し、それに伴って突出部15の先端がスイッチ素子30のステム31を押動する。そして、釦部12の表面の押操作を止めると、支点部14の捩り戻しにより、操作部11が元の位置に戻り、それに伴って突出部15の先端も元の位置に戻ってスイッチ素子30のステム31の押し状態が解除される。
【特許文献1】特開平9−320394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した操作ノブ10は合成樹脂(例えば、PC(ポリカボネート))で一体的に成型され、また、スイッチ素子30のステム31も合成樹脂(例えば、PA(ポリアミド))で形成されている。このため、操作部11が押操作されると、それぞれ合成樹脂にて形成された突出部15の先端とステム31(動作体)の表面とが擦れ合って、前記押操作に引っ掛かり感が生じたり、異音が発生したりする場合がある。
【0007】
このような押操作の引っ掛かり感や、異音を防止するために突出部15とステム31との接触面に潤滑剤を塗布することが考えられる。しかしながら、操作部11の押操作が繰り返される過程で、その潤滑剤がスイッチ素子30内にステム31との隙間から侵入し、電気接点部に付着して導通の障害となるおそれがあり、また、その潤滑剤を塗布することによるコストアップ及び機器の組立て作業効率の低下をきたしてしまう。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、特に潤滑剤を使用しなくても、合成樹脂製の動作体との擦れ合いに起因した押操作の引っ掛かり感や異音を低減することのできる操作ノブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る操作ノブは、押操作されるべき操作面の形成された操作部と、該操作部の一端に形成され、該操作部の押操作方向に沿う回動を許容するように固定支持される支点部と、前記操作部の前記操作面と逆側の面から突出する突出部とを有し、前記突出部の先端部に、先端面が湾曲形状となり当該突出部の材質と異なる材質の先端部材が設けられた構成となる。
【0010】
このような構成により、突出部の先端部に設けられた先端部材の先端面が合成樹脂製の動作体に当接するように操作ノブを配置した状態で操作部を操作すると、支点部を軸とした操作部の回動に伴った突出部の移動によって、動作体が前記先端部材の湾曲形状となる先端面と当接しつつ押動されるようになるので、前記操作部が押操作される間、動作体を押動する突出部の先端部に設けられた先端部材と当該動作部材との接触状態が比較的滑らかに維持されるようになる。また、操作ノブの一部となる前記突出部と前記先端部材とが異なる材質となることから、突出部が動作体の材質(合成樹脂)に対して押操作の引っ掛かり感や異音の観点から不利な材質(例えば、同種の合成樹脂)であっても、実際に動作体に当接する先端部材は、当該動作体の材質に対して押操作の引っ掛かり感や異音の観点から有利な材質とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る操作ノブにおいて、前記先端部材は、金属製にすることができる。
【0012】
このような構成により、突出部が動作体の材質(合成樹脂)に対して押操作の引っ掛かり感や異音の観点から不利な材質(例えば、同種の合成樹脂)であっても、実際に動作体に当接する先端部材が合成樹脂より硬く、滑らかな表面を得やすい金属製となるので、合成樹脂製となる動作体に対して押操作の引っ掛かり感や異音を低減させることのできる操作ノブを実現することができるようになる。
【0013】
また、本発明に係る操作ノブにおいて、前記先端部材は、エンジニアリングプラスチック製にすることができる。
【0014】
このような構成により、突出部が動作体の材質(合成樹脂)に対して押操作の引っ掛かり感や異音の観点から不利な材質(例えば、同種の合成樹脂)であっても、実際に動作体に当接する先端部材が通常の合成樹脂より硬く、滑らかな表面を得やすいうえに潤滑性能を有するPOM等のエンジニアリングプラスチック製となるので、通常の合成樹脂製となる動作体に対して押操作の引っ掛かり感や異音を低減させることのできる操作ノブを実現することができるようになる。
【0015】
また、本発明に係る操作ノブにおいて、前記先端部材は、前記突出部の先端に埋め込み固定された球形体となるように構成することができる。
【0016】
このような構成により、動作体に当接する先端部材の表面が球面となるので、操作部が押操作される間、動作体を押動する突出部の先端に設けられた先端部材と当該動作体との接触状態が比較的滑らかに維持されるようになる。
【0017】
また、本発明に係る操作ノブにおいて、前記先端部材は、前記突出部の先端に回転自在に埋め込まれた球形体となるように構成することができる。
【0018】
このような構成により、動作体に当接する先端部材の表面が球面となり、更にその先端部材が回転可能となるので、操作部が押操作される間、動作体を押動する突出部の先端に設けられた先端部材と当該動作体との接触状態が更に滑らかに維持されるようになる。
【0019】
更に、本発明に係る操作ノブにおいて、前記先端部材は、前記突出部の先端に回転自在に設けられたローラ体であるように構成することができる。
【0020】
このような構成により、動作体に当接する先端部材の表面が回転可能なローラ面となるので、操作部が押操作される間、動作体を押動する突出部の先端に設けられた先端部材と当該動作体との接触状態が滑らかに維持されるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る操作ノブによれば、操作部の操作面と逆側の面から突出する突出部の先端部に先端面が湾曲形状となる先端部材が設けられ、その先端部材の材質が前記突出部と異なるように構成されることから、前記操作部が押操作される間、動作体を押動する突出部の先端に設けられた前記先端部材と当該動作体との接触状態が比較的滑らかに維持されるようになり、また、前記突出部が動作体の材質(合成樹脂)に対して押操作の引っ掛かり感や異音の観点から不利な材質(例えば、同種の合成樹脂)であっても、実際に動作体に当接する先端部材が当該動作体の材質に対して押操作の引っ掛かり感や異音の観点から有利な材質とすることができるので、特に潤滑剤を使用しなくても、合成樹脂製の動作体との擦れ合いに起因した押操作の引っ掛かり感や異音を低減させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0023】
本発明の実施の一形態に係るノブは、図1に示すように構成される。なお、図1は、初期状態を表す側面図(a)及び押操作がなされた状態を示す側面図である(b)。
【0024】
図1(a)において、この操作ノブ10(例えば、PC(ポリカボネート)製)は、従来のもの(図4参照)と同様に、釦部12及びその外周に形成された枠部13により構成される操作部11を有している。操作部11の一端部には支点部14が形成されており、支点部14が固定板20にて固定支持される。これにより、釦部12の表面(操作面)をA矢印方向に押操作すると、支点部14を中心にして操作部11がその押操作方向に沿って回動するようになる。
【0025】
操作部11の支点部14が形成された側と逆側の端部には前記操作面(釦部12の表面)と逆側の面から突出する突出部151が形成されている。突出部151の先端部分には、突出部151の材質(例えば、PC(ポリカボネート))と異なる材質である金属製(例えば、SUS(ステンレス)製)で球形体となる先端部材152が設けられている。即ち、図2に示すように、突出部151の先端面には金属製球体となる先端部材152の径より小さい径の開口151aが形成され、その開口151aから内方に受け凹部151bが形成されている。そして、先端部材152は、突出部151の先端部分に形成された受け凹部151bに回転自在に収容され、開口151aの縁部151cからその表面(先端面)が突出するようになっている。また、突出部151内には先端面が球面状となる押え棒153が設けられており、この押え棒153にて先端部材152が開口151aに付勢されている。なお、前述した押え棒153の先端部材152(金属製球形体)に当接する面は、前記球面状に限られず、平面状であってもよい。
【0026】
突出部151の先端部分に一対の割り孔151dが形成されており、この一対の割り孔151dの両側部分を拡張した状態で先端部材152が受け凹部151bにセットされ、その後、先端部分を元の状態に戻すことにより球形状の先端部材152が突出部151内に回転自在に収納されるようになる。
【0027】
操作部11の背面側には、基板100に装着されたスイッチ素子30が設けられている。そのスイッチ素子30のステム31(動作体:例えば、PA(ポリアミド)製)が突出部151の先端に設けられた金属製球形体152に当接するように操作ノブ10が配置されている。
【0028】
このような構造の操作ノブ10では、釦部12の表面(操作面)を押操作すると、図1(b)に示すように、支点部14を中心にして操作部11がその押操作方向に沿って回動する(図1(b)における破線の状態から実線の状態への回動)。この操作部11の回動に伴った突出部151の移動によって、スイッチ素子30のステム31(動作体)が先端部材152の球面状となる表面と当接しつつ押動される。操作部11が押操作される間、ステム31を押動する突出部151の先端部分に設けられた先端部材152は回転可能となり、その回転可能となる先端部材152とステム31との接触状態が滑らかに維持される。また、操作ノブ10の一部となる突出部151がステム31の材質(PA(ポリアミド))に対して押操作の引っ掛かり感や異音の観点から不利な材質(例えば、同種の合成樹脂のPC(ポリカボネート))であっても、実際にステム31に当接する先端部材152は、合成樹脂に比べて硬質であり、かつ滑らかな表面(例えば、鏡面)となる金属製(例えば、SUS(ステンレス)製)であるので、先端部材152の先端面とステム31の表面とが擦れ合うことに起因した引っ掛かり感や異音を低減させることができる。
【0029】
従って、前述した構造の操作ノブ10によれば、特に潤滑剤を使用しなくても、スイッチ素子30の合成樹脂製のステム31との擦れ合いに起因した押操作の引っ掛かり感や異音を低減させることができるようになる。
【0030】
なお、金属製の球形体となる先端部材152は、前述したように突出部151の先端部分に回転自在に設けられるものに限られない。先端が球面となる金属製の先端部材152を突出部151の先端部分に回転することなく固定的に設けることも可能である。この場合、合成樹脂製のステム31が滑らかな金属球面にて押動されるようになるので、従来のように合成樹脂製の突出部15にてステム31が直接押動される場合に比べて、引っ掛かり感及び異音を低減できるようになる。
【0031】
また、スイッチ素子30のステム31等の動作体に当接する先端部材152は、前述したような金属製球形体でなくてもよい。例えば、図3に示すように、金属製ローラ体156とすることも可能である。この場合、突出部155の先端部分に割り孔155aが形成され、その割り孔155a内に軸体157にて回転自在に支持される金属製ローラ体156が先端部材として設けられる。軸体157の延びる向きは操作体11の回動方向を横切る方向(略直交する方向)に設定される。
【0032】
この場合、操作部11が押操作される間、ステム31を押動する突出部155の先端部分に設けられた金属製ローラ体156は回転可能となり、その回転可能となる金属製ローラ体156とステム31との接触状態が滑らかに維持される。このため、特に潤滑剤を使用しなくても、スイッチ素子30の合成樹脂製のステム31との擦れ合いに起因した押操作の引っ掛かり感や異音を低減することができるようになる。
【0033】
更に、突出部151(155)の先端部に設けるべき先端部材は、他の態様のものでもよい。例えば、先端面が球状、筒状等の湾曲状となった金属製柱状体を先端部材として突出部151(155)の先端面に埋め込むこともできる。この場合、インサート成型によって操作ノブ10を製造する際に突出部151(155)に直接金属製柱状体を埋め込むことができる。また、先端面が湾曲状となる合成樹脂製部材の当該先端面に金属メッキ層を形成したものであってもよい。この場合、金属メッキ層が金属製の部材となってスイッチ素子30のステム31との擦れ合いに起因した押操作の引っ掛かり感や異音を低減することができるようになる。
【0034】
また、前述した例では、操作ノブ10の突出部151(155)の先端部にはステンレス等の金属にて形成され、先端面が球面等の湾曲面となる金属製部材が先端部材として設けられたが、このような金属製部材に代えて、高い摺動性を有し、硬度が高く耐摩耗性の優れたエンジニアリングプラスチック(POM)製の部材を先端部剤として用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上、説明したように、本発明に係るノブは、特に潤滑剤を使用しなくても、押操作の引っ掛かり感や異音を低減することができるという効果を有し、電子機器等に設けられ、スイッチ素子のステム等の動作体を押操作するように配置される操作ノブとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態に係る操作ノブの構造を示す側面図(a)及び該操作ノブ体が操作された状態を示す側面図(b)である。
【図2】突出部の先端部分の詳細構造を示す図である。
【図3】突出部の先端部分の詳細構造の他の例を示す図である。
【図4】従来の操作ノブの構造例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 操作ノブ
11 操作部
12 釦部
13 枠部
14 支点部
15、151、155 突出部
151a 開口部
151b 受け凹部
151c 止め部
151d 窓部
152 先端部材
153 押え部材
156 ローラ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押操作されるべき操作面の形成された操作部と、
該操作部の一端に形成され、該操作部の押操作方向に沿う回動を許容するように固定支持される支点部と、
前記操作部の前記操作面と逆側の面から突出する突出部とを有し、
前記突出部の先端部に、先端面が湾曲形状となり当該突出部の材質と異なる材質の先端部材が設けられたことを特徴とする操作ノブ。
【請求項2】
前記先端部材は、金属製であることを特徴とする請求項1記載の操作ノブ。
【請求項3】
前記先端部材は、エンジニアリングプラスチック製であることを特徴とする請求項1記載の操作ノブ。
【請求項4】
前記先端部材は、前記突出部の先端に埋め込み固定された球形体となることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の操作ノブ。
【請求項5】
前記先端部材は、前記突出部の先端に回転自在に埋め込まれた球形体となることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の操作ノブ。
【請求項6】
前記先端部材は、前記突出部の先端に回転自在に設けられたローラ体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の操作ノブ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−214063(P2007−214063A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34675(P2006−34675)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】