説明

操作部固定ボルトおよび浴槽の排水装置

【課題】軽量で、製造コストも削減でき、かつ外観上の不具合の発生を抑制できる操作部固定ボルトおよびそれを有する浴槽の排水装置を提供する。
【解決手段】樹脂製の操作部固定ボルト1が浴槽の上部フランジ部50aに取付けられている。操作部固定ボルト1のフランジ部1aは、浴槽の上部フランジ部50aの上面に取付けるためのものである。筒状の固定部1bは、機構部9に固定するためのものである。筒状の接続部1cは、フランジ部1aと固定部1bとの間に位置し、かつフランジ部1aおよび固定部1bの双方と一体的に形成されている。接続部1cの外周面にスリット状の溝1dが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部固定ボルトおよび浴槽の排水装置に関し、特に、樹脂製の操作部固定ボルトおよびそれを有する浴槽の排水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴槽の底面に設置される排水栓を遠隔操作により開閉するための装置は、たとえば特開2002−188197号公報(特許文献1)に開示されている。この特開2002−188197号公報に記載された排水栓の遠隔操作装置は枠とコイルバネとを含んでおり、この枠とコイルバネとにより遠隔操作装置は浴槽のフランジ部に対して吊り下げた状態で設置されている。
【0003】
従来、このような遠隔操作装置を浴槽のフランジ部に取付けるための枠(たとえば操作部固定ボルト)は、金属成形品から構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−188197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の操作部固定ボルトを金属成形品で構成した場合、操作部固定ボルトの重量が重くなる。また操作部固定ボルトを金属成形品で構成した場合、金属を鍛造した後に切削し、その後に金属メッキを施す必要があり、製造コストも高くなる。そこで軽量化するとともに製造コストを削減するために上記操作部固定ボルトを樹脂により形成することが考えられる。
【0006】
しかしながら上記の操作部固定ボルトを樹脂により形成する場合、樹脂成形の際の樹脂流動の関係から操作部固定ボルトの外観面にシワやウェルドライン(weld line)が現れて、外観不良を生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量で、製造コストも削減でき、かつ外観上の不具合の発生を抑制できる操作部固定ボルトおよびそれを有する浴槽の排水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の操作部固定ボルトは、浴室内の取付け対象に取付けられ、かつ取付け対象に取付られた機能部品を動作させるための機構部に固定される樹脂製の操作部固定ボルトであって、フランジ部と、筒状の固定部と、筒状の接続部とを備えている。フランジ部は、浴室内の取付け対象に取付けるためのものである。筒状の固定部は、機構部に固定するためのものである。筒状の接続部は、フランジ部と固定部との間に位置し、かつフランジ部および固定部の双方と一体的に形成されている。接続部の外周面および内周面の少なくとも一方にスリット状の溝が形成されている。
【0009】
本発明の他の操作部固定ボルトは、浴槽の上部フランジ部に取付けられ、かつ浴槽の底部に設置された排水栓を開閉するための機構部に固定される樹脂製の操作部固定ボルトであって、フランジ部と、筒状の固定部と、筒状の接続部とを備えている。フランジ部は、浴槽の上部フランジ部の上面に取付けるためのものである。筒状の固定部は、機構部に固定するためのものである。筒状の接続部は、フランジ部と固定部との間に位置し、かつフランジ部および固定部の双方と一体的に形成されている。接続部の外周面および内周面の少なくとも一方にスリット状の溝が形成されている。
【0010】
本発明の一および他の操作部固定ボルトによれば、操作部固定ボルトが樹脂製であるため、金属成形体に比較して軽量化できるとともに製造コストを削減することができる。
【0011】
またフランジ部と固定部との間に位置する接続部にスリット状の溝が形成されている。このため、操作部固定ボルトの樹脂成形の際にフランジ部から接続部を通して固定部に樹脂を流動させる場合、スリット状の溝が形成された接続部において樹脂流動の抵抗が大きくなる。これにより、樹脂成形の際にフランジ部に入った樹脂は固定部に入り難くなって、先にフランジ部を充填する。これによりフランジ部へのシワやウェルドラインの発生が抑制され、外観上の不具合の発生を抑制することができる。
【0012】
上記一および他の操作部固定ボルトにおいては、スリット状の溝は、フランジ部の接続部よりも外周方向に張り出した部分の下面から所定距離だけ離隔した位置に形成されている。
【0013】
これにより、操作部固定ボルトの接続部にパッキンを嵌めた場合、そのパッキンが上記下面とスリット状の溝との間に位置することになり、スリット状の溝に嵌り込むことを防止することができる。
【0014】
上記一および他の操作部固定ボルトにおいては、スリット状の溝に、そのスリット状の溝を周方向に分割する補強リブが形成されている。
【0015】
これにより仮に接続部に嵌めたパッキンの位置がスリット状の溝側へずれたとしても、パッキンがスリット状の溝に嵌り込むことを補強リブにより防止することができる。また補強リブにより接続部の強度の向上を図ることができる。
【0016】
上記一および他の操作部固定ボルトにおいては、スリット状の溝が形成された部分の接続部の厚みが、スリット状の溝の高さ寸法よりも小さい。
【0017】
これにより樹脂流動時にスリット状の溝が形成された接続部を樹脂流動の抵抗としてより効果的に機能させることができる。
【0018】
本発明の浴槽の排水装置は、上記いずれかの操作部固定ボルトと、操作スイッチと、機構部とを備えている。操作スイッチは、排水栓を開閉操作するためのものである。機構部は、操作部固定ボルトの固定部に固定され、かつ操作スイッチの信号に基づいて排水栓を遠隔操作により開閉するためのものである。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、製造コストも削減でき、かつ外観上の不具合の発生を抑制できる操作部固定ボルトおよびそれを有する浴槽の排水装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態における浴槽の排水装置が浴槽に設置された様子を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態における浴槽の排水装置の構成を概略的に示す模式図である。
【図3】本発明の一実施の形態における浴槽の排水装置に用いられる操作部固定ボルト付近の構成を概略的に示す部分断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態における操作部固定ボルトの構成を上方から概略的に示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態における操作部固定ボルトの構成を下方から概略的に示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施の形態における操作部固定ボルトの構成を概略的に示す断面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う概略断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態における操作部固定ボルトを形成するための金型の構成を概略的に示す断面図である。
【図9】図8に示す金型においてフランジ部キャビティの内周側から樹脂を注入する場合の樹脂の流れを説明するための平面図である。
【図10】本発明の一実施の形態における操作部固定ボルトの製造方法の第1工程を示す概略的断面図である。
【図11】本発明の一実施の形態における操作部固定ボルトの製造方法の第2工程を示す概略的断面図である。
【図12】第1の比較例における操作部固定ボルトを形成するための金型の構成を概略的に示す断面図である。
【図13】図12に示す金型においてフランジ部キャビティの外周側から樹脂を注入する場合の樹脂の流れを説明するための平面図である。
【図14】第2の比較例における操作部固定ボルトを形成するための金型の構成を概略的に示す断面図である。
【図15】操作部固定ボルトの内周側にスリット状の溝が形成された構成を概略的に示す断面図である。
【図16】本発明の一実施の形態におけるジェットバスの構成を概略的に示す斜視図である。
【図17】本発明の一実施の形態における操作部固定ボルトがジェットバスの機構部に固定された様子を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
まず浴室に設置される排水装置の構成について図1〜図3を用いて説明する。
【0022】
図1を参照して、排水装置40は、排水栓20と、遠隔操作装置10と、ケーブル30とを主に有している。排水栓20は浴槽50の底部に設置されており、排水口を開閉することにより浴槽50内の湯水を排水、貯留するためのものである。遠隔操作装置10は浴槽50の上部フランジ部50aに設置されており、排水栓20を開閉操作するためのものである。ケーブル30は排水栓20と遠隔操作装置10との間に架設されており、遠隔操作装置10における開閉操作に応じて排水栓20を開閉操作するための開閉力を排水栓20へ伝達するためのものである。
【0023】
図2および図3を参照して、排水栓20は、弁体21と、口金22と、昇降機構部24とを主に有している。口金22は排水口23の開口部を構成しており、その開口部を開閉可能なように弁体21が口金22上に配置されている。弁体21は昇降機構部24により昇降可能に構成されており、弁体21が昇降することにより排水口23が開閉可能である。
【0024】
遠隔操作装置10は、操作部固定ボルト1と、雌ネジ部材2と、操作ボタン4と、操作スイッチ5と、制御回路基板6と、機構部9とを主に有している。
【0025】
操作部固定ボルト1は浴槽50の上部フランジ部50aに取付けられている。この操作部固定ボルト1は、排水栓20を開閉するための機構部9などに固定されている。雌ネジ部材2は、操作部固定ボルト1と雌ネジ部材2との間で浴槽50の上部フランジ部50aを挟み込むためのものである。この雌ネジ部材2は、操作部固定ボルト1の外周面に設けられた雄ネジ部に螺合可能に構成されている。操作部固定ボルト1と雌ネジ部材2との間で浴槽50の上部フランジ部50aを挟み込んだ状態においては、操作部固定ボルト1と上部フランジ部50aとの間にパッキン3(図3)が配置されている。このパッキン3は、操作部固定ボルト1のフランジ部1aと上部フランジ部50aとの間に湯水が入ることを防止するためのものである。
【0026】
操作ボタン4は操作部固定ボルト1から露出するように配置されており、操作スイッチ5は操作ボタン4の下方に配置されている。これにより、操作ボタン4を押圧することで、操作スイッチ5の押圧操作が可能である。操作スイッチ5は、この押圧操作によって排水栓20の開閉操作のための信号を生じるよう構成されている。制御回路基板6は操作スイッチ5の信号に基づいて機構部9の動作を制御する信号を生じるように構成されている。
【0027】
機構部9は、モータ7と、ケーブル可動機構部8とを主に有している。モータ7は、制御回路基板6からの信号を受けてロータが回転可能なように構成されている。ケーブル可動機構部8は、そのロータの回転動力を直線推進力に変換してケーブル30に伝達可能に構成されている。
【0028】
ケーブル30は、ケーブル可動機構部8と昇降機構部24とを互いに接続している。このケーブル30は、ケーブル可動機構部8から直進推進力を受けて、昇降機構部24に弁体21を昇降させるための力を付与するように設けられている。
【0029】
上記の排水装置40における排水栓20の開動作においては、まず遠隔操作装置10の操作ボタン4が押されて操作スイッチ5がオンすると、モータ7が駆動されてロータがたとえば上から見て時計方向に回転する。このロータの回転動力がケーブル可動機構部8により直線推進力に変換されてケーブル30に伝達される。これによりケーブル30に接続された昇降機構部24が弁体21を押し上げて、排水口23が開放される。
【0030】
また排水栓20の閉動作においては、遠隔操作装置10の操作ボタン4が再度押されて操作スイッチ5がオンすると、モータ7が駆動されてロータがたとえば上から見て反時計方向に回転する。このロータの回転動力がケーブル可動機構部8により直線推進力に変換されてケーブル30に伝達される。これによりケーブル30に接続された昇降機構部24が弁体21を下降させて、排水口23が閉塞される。
【0031】
次に、上記の排水装置に用いられる操作部固定ボルト1の構成について図4〜図7を用いて説明する。
【0032】
主に図4〜図6を参照して、操作部固定ボルト1は、フランジ部1aと、固定部1bと、接続部1cとを有している。フランジ部1a、固定部1b、および接続部1cは一体的に形成されており、それら全体が樹脂よりなっている。
【0033】
フランジ部1aは、接続部1cよりも外周方向に張り出している。このフランジ部1aは、中心に円形の貫通孔1a1を有する環形状(たとえば円環形状)を有している。固定部1bは、上述の機構部9(図2)に固定するための部分である。この固定部1bは、筒形状(たとえば円筒形状)を有しており、その外周部に雄ネジ部を有している。接続部1cは、フランジ部1aと固定部1bとの間に位置して、フランジ部1aと固定部1bと接続している。この接続部1cは、筒形状(たとえば円筒形状)を有している。
【0034】
主に図6を参照して、ここでフランジ部1aと接続部1cとの境界は、フランジ部1aの接続部1cよりも外周方向に張り出した部分の下面1a2の内周側端部1fである。また接続部1cと固定部1bとの境界は、雄ネジ部(不完全ネジ部を含む)の下面1a2側の終端部分1gである。つまり下面1a2の内周側端部1fと雄ネジ部の終端部分1gとに挟まれる部分が接続部1cである。この接続部1cの外周面には、その周方向に沿って延在するスリット状の溝(凹部)1dが形成されている。
【0035】
スリット状の溝1dは、下面1a2の内周側端部1fから所定距離L1だけ離隔した位置に形成されている。この所定距離L1は、接続部1cに嵌め込まれたパッキン3(図3)の厚み以上の長さを有することが好ましく、たとえば1mm〜2mmの長さであることが好ましい。またスリット状の溝1dが形成された部分の径方向の厚みL3は、スリット状の溝1dの高さ寸法L2よりも小さい。
【0036】
主に図7を参照して、スリット状の溝1dには、スリット状の溝1dを周方向に分割する補強リブ1eが形成されている。つまり、スリット状の溝1dは、補強リブ1eにより周方向に分割された複数の溝部を有している。この補強リブ1eの径方向の厚みL5は、スリット状の溝1dが設けられていない接続部1cの径方向の厚みL6(図6)と同じであり、スリット状の溝1dが設けられた部分の径方向の厚みL3よりも大きい。
【0037】
次に、本実施の形態の操作部固定ボルト1の樹脂成型方法について図8〜図11を用いて説明する。
【0038】
図8を参照して、本実施の形態の樹脂成型方法に用いられる金型は、たとえば、上金型61と、その上金型61の下方に位置する下金型63と、横方向にスライド移動する横金型62a、62bとを有している。これらの上金型61、下金型63および横金型62a、62bにより、金型内部に操作部固定ボルト1を形成するためのキャビティ71が構成されている。
【0039】
この操作部固定ボルト1のキャビティ71は、フランジ部1aに対応するフランジ部キャビティ71aと、固定部1bに対応する固定部キャビティ71bと、接続部1cに対応する接続部キャビティ71cとを有している。横金型62a、62bの各々には、外周側から内周側へ突き出した凸部62a1、62b1が形成されている。この凸部62a1、62b1により、接続部キャビティ71cにはスリット状の溝となる凹部が形成されている。
【0040】
図9を参照して、環状のフランジ部キャビティ71aの内周側全周に接続されるように円形のランナー66が設けられており、いわゆるディスクゲートが採用されている。平面視においてその円形のランナー66の中心部に樹脂注入部(ランナーもしくはスプルー)65が接続されている。
【0041】
図10を参照して、樹脂成型時には、樹脂80は樹脂注入部65から円形のランナー66に注入され、円形のランナー66を通って中心部から外周方向へ流動してフランジ部キャビティ71a内に流入する。フランジ部キャビティ71a内に流入した樹脂80は、接続部キャビティ71cを通って、下方の固定部キャビティ71b内へ流入しようとする。
【0042】
しかし、接続部キャビティ71cの領域P1には凸部62a1、62b1が形成されており、これにより接続部キャビティ71cの領域P1において樹脂80の流路が狭くなっている。このため、この領域P1において樹脂流動の抵抗が大きくなり、フランジ部キャビティ71aに入った樹脂80は固定部キャビティ71bに入り難くなって、先にフランジ部キャビティ71aを充填する。
【0043】
図11を参照して、上記により樹脂80は、フランジ部キャビティ71a内を完全に充填した後に、接続部キャビティ71cを通って固定部キャビティ71bに流入する。そして樹脂80が固定部キャビティ71b内を完全に充填することにより、樹脂80の注入が完了する。
【0044】
この後、上金型61が上方へ移動、もしくは下金型63が下方へ移動すると共に、横金型62a、62bが横方向にスライド移動することにより金型内から樹脂成型体が取り出され、ランナー部分の除去、バリ取りなどが行なわれて図6に示される操作部固定ボルト1が製造される。
【0045】
次に、本実施の形態の作用効果について第1の比較例(図12、図13)および第2の比較例(図14)と対比して説明する。
【0046】
図12および図13を参照して、第1の比較例のように、フランジ部キャビティ71aの外周側から樹脂を注入する場合(いわゆるサイドゲートの場合)、樹脂はフランジ部キャビティ71a内を矢印に沿って両側から進行する。この場合には、図13に示すようにフランジ部キャビティ71aへの樹脂注入部と反対側で樹脂同士が衝突して、その部分にウェルドライン81が発生する。特に、フランジ部は操作部固定ボルトの外観面であるため、この部分にウェルドライン81が発生すると外観不良が生じる。
【0047】
そこで図14に示す第2の比較例のように、フランジ部キャビティ71aの内周側全周から樹脂を注入する、いわゆるディスクゲートを採用することが考えられる。この場合には、第1の比較例のようなフランジ部キャビティ71a内での樹脂の衝突が生じない。しかしながら、フランジ部キャビティ71a内へ入った樹脂は、接続部キャビティ71cを通って固定部キャビティ71b内に充填されてゆく。そして樹脂は、固定部キャビティ71b内を完全に充填した後に、その上のフランジ部キャビティ71a内を充填する。
【0048】
この場合、フランジ部キャビティ71aの上部が樹脂によって最後に充填されることになる。このため、フランジ部キャビティ71aの上面に、折畳んだような模様のシワやウェルドラインが発生し、外観不良が生じる。
【0049】
これに対して本実施の形態では、図6に示すようにフランジ部1aと固定部1bとの間に位置する接続部1cにスリット状の溝1dが形成されている。つまり図8に示すように、横金型62a、62bの各々に凸部62a1、62b1が形成されて、接続部キャビティ71cにおける樹脂流路が狭くされている。このため、操作部固定ボルト1の樹脂成形の際にフランジ部1aから接続部1cを通して固定部1bに樹脂を流動させる場合、スリット状の溝1d(図8の領域P1)により樹脂流動の抵抗が大きくなる。これにより、樹脂成形の際にフランジ部キャビティ71aに入った樹脂は固定部キャビティ71bに入り難くなって、先にフランジ部キャビティ71a内を充填し、その後に固定部キャビティ71bを充填する。これにより樹脂がフランジ部キャビティ71a内を最後に充填することがなくなるため、フランジ部1aにシワやウェルドラインの発生することが抑制され、フランジ部1aの外観上の不具合の発生を抑制することができる。
【0050】
また操作部固定ボルト1が樹脂製であるため、金属成形体に比較して軽量化できるとともに製造コストを削減することができる。
【0051】
また本実施の形態においては、スリット状の溝1dは、下面1a2の内周側端部1fから所定距離L1だけ離隔した位置に形成されている。これにより、図3に示すように操作部固定ボルト1の接続部1cにパッキン3を嵌めた場合、そのパッキン3が上記下面1a2とスリット状の溝1dとの間に位置することになり、スリット状の溝1dに嵌り込むことを防止することができる。
【0052】
また本実施の形態においては、スリット状の溝1dに、そのスリット状の溝1dを周方向に分割する補強リブ1eが形成されている。これにより仮に接続部1cに嵌めたパッキン3の位置がスリット状の溝1d側へずれたとしても、パッキン3がスリット状の溝1dに嵌り込むことを補強リブ1eにより防止することができる。また補強リブ1eにより接続部1cの強度の向上を図ることができる。
【0053】
また本実施の形態においては、スリット状の溝1dが形成された部分の接続部1cの径方向の厚みL3が、スリット状の溝1dの高さ寸法L2よりも小さい。これにより図10に示すように樹脂流動時にスリット状の溝1dを樹脂流動の抵抗としてより効果的に機能させることができる。
【0054】
なお上記の本実施の形態においては、スリット状の溝1dが接続部1cの外周面に設けられた構成について説明したが、スリット状の溝1dは接続部1cの外周面および内周面の少なくともいずれかに形成されていればよい。つまりスリット状の溝1dは、図6に示すように接続部1cの外周面に設けられていてもよく、図15に示すように接続部1cの内周面に形成されていてもよく、かつ外周面および内周面の双方に形成されていてもよい。
【0055】
またスリット状の溝1dに形成される補強リブ1eの個数は1つであってもよく、複数であってもよい。補強リブ1eが複数形成される場合には、図7に示すように周方向に等間隔で各補強リブ1eが配置されることが好ましい。これにより、パッキン3がスリット状の溝1dに嵌り込むことが効果的に防止される。
【0056】
またスリット状の溝1dの周方向における長さ(スリット状の溝1dが補強リブ1eにより分割された複数の溝部よりなる場合には各溝部の周方向長さの合計)は、接続部1cの周長の80%以上であることが好ましい。つまりスリット状の溝1dの周方向における長さは、補強リブ1eの周方向における長さ(複数の補強リブ1eがある場合には各補強リブ1eの周方向長さの合計)の4倍以上であることが好ましい。これにより、スリット状の溝1dにより樹脂流動時の抵抗を効果的に与えることができる。
【0057】
またスリット状の溝1dが補強リブ1eにより周方向に分割されて、複数の溝部を有する場合、そのスリット状の溝1dは図7に示すように中心Cを通る仮想の直線A−Aに対して線対称の形状を有していることが好ましく、また中心Cに対して点対称の形状を有していることが好ましい。これによりスリット状の溝1d内へのパッキン3の嵌り込みをバランスよく防止することができる。
【0058】
また本実施の形態の操作部固定ボルト1および排水装置40は、自動お湯張り時に連動して自動で開閉動作する排水栓20を有する排水装置に特に適している。また本実施の形態の操作部固定ボルト1および排水装置40は、自動お風呂洗浄機能と連動する自動排水機能を有する排水装置40に特に適している。
【0059】
また本実施の形態の操作部固定ボルト1は、ジェットバスなどの機構部に固定されてもよい。図16および図17に示すように、ジェットバスは、操作部90からの信号により、ポンプ91を駆動し浴槽50内の湯水を吸込口92から吸い込んでジェットノズル93から吐出させるものである。操作部90は、操作ボタン4と、操作スイッチ5と、制御回路基板6とを有しており、かつジェットバスの機構部に該当する。この操作部は、機能部品(ポンプ91、吸込口92、ジェットノズル93)を動作させる信号を発生し、その信号を信号線94を通じてポンプ91へ入力できるように構成されている。このポンプ91には、電源線95が接続されており、電源線95はたとえば壁を伝って天井に配線されている。
【0060】
操作部固定ボルト1は、ジェットバスの機構部に固定されるものに限定されず、浴室内の、たとえば浴槽50の上部フランジ部50aや浴室カウンターなどの取付け対象に取付けられた機能部品を動作させるための機構部に固定されるものであればよい。
【0061】
また操作部固定ボルト1には、たとえば金属調樹脂やパール入り樹脂を用いることが好ましい。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、浴槽の上部フランジ部に取付けられ、かつ浴槽の底部に配置された排水栓を開閉するための機構部に固定される樹脂製の操作部固定ボルトおよびそれを有する浴槽の排水装置に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0064】
1 操作部固定ボルト、1a フランジ部、1a1 貫通孔、1a2 下面、1b 固定部、1c 接続部、1d スリット状の溝、1e 補強リブ、1f 内周側端部、1g 終端部分、2 雌ネジ部材、3 パッキン、4 操作ボタン、5 操作スイッチ、6 制御回路基板、7 モータ、8 ケーブル可動機構部、9 機構部、10 遠隔操作装置、20 排水栓、21 弁体、22 口金、23 排水口、24 昇降機構部、30 ケーブル、40 排水装置、50a 上部フランジ部、50 浴槽、61 上金型、62a1 凸部、62a,62b 横金型、63 下金型、65 樹脂注入部、66 ランナー、71 キャビティ、71a フランジ部キャビティ、71b 固定部キャビティ、71c 接続部キャビティ、80 樹脂、90 操作部、91 ポンプ、92 吸込口、93 ジェットノズル、94 信号線、95 電源線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内の取付け対象に取付けられ、かつ前記取付け対象に取付られた機能部品を動作させるための機構部に固定される樹脂製の操作部固定ボルトであって、
前記浴室内の前記取付け対象に取付けるためのフランジ部と、
前記機構部に固定するための筒状の固定部と、
前記フランジ部と前記固定部との間に位置し、かつ前記フランジ部および前記固定部の双方と一体的に形成された筒状の接続部とを備え、
前記接続部の外周面および内周面の少なくとも一方にスリット状の溝が形成されている、操作部固定ボルト。
【請求項2】
浴槽の上部フランジ部に取付けられ、かつ前記浴槽の底部に設置された排水栓を開閉するための機構部に固定される樹脂製の操作部固定ボルトであって、
前記浴槽の前記上部フランジ部の上面に取付けるためのフランジ部と、
前記機構部に固定するための筒状の固定部と、
前記フランジ部と前記固定部との間に位置し、かつ前記フランジ部および前記固定部の双方と一体的に形成された筒状の接続部とを備え、
前記接続部の外周面および内周面の少なくとも一方にスリット状の溝が形成されている、操作部固定ボルト。
【請求項3】
前記スリット状の溝は、前記フランジ部の前記接続部よりも外周方向に張り出した部分の下面から所定距離だけ離隔した位置に形成されている、請求項1または2に記載の操作部固定ボルト。
【請求項4】
前記スリット状の溝には、前記スリット状の溝を周方向に分割する補強リブが形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の操作部固定ボルト。
【請求項5】
前記スリット状の溝が形成された部分の前記接続部の厚みが、前記スリット状の溝の高さ寸法よりも小さい、請求項1〜4のいずれかに記載の操作部固定ボルト。
【請求項6】
請求項2に記載の前記操作部固定ボルトと、
前記排水栓を開閉操作するための操作スイッチと、
前記操作部固定ボルトの前記固定部に固定され、かつ前記操作スイッチの信号に基づいて前記排水栓を遠隔操作により開閉するための前記機構部とを備えた、浴槽の排水装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2013−40516(P2013−40516A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178889(P2011−178889)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】