説明

操縦用通信装置、被操縦体用通信装置及び操縦用通信システム

【課題】操縦用通信装置において、パソコンや設定用専用機を用いずに、機体に搭載された機器のパラメータを送信機の側から遠隔的に変更する。
【解決手段】 通信装置1は、操縦モードとパラメータモードを選択でき、表示部10を備えた操縦用通信装置4(送信機)と、機体2に搭載された機器3に接続された被操縦体用通信装置5(受信機)を有する。パラメータモードでは送信機4の操作でパラメータ信号を受信機に送信し、表示部を見ながら機器のパラメータの変更を無線で遠隔的に行なう。受信機5からの返信のパラメータ信号で変更の結果を知ることができる。機器が複数種類、複数個あっても、機器を被操縦体から取り外す必要がなく、容易に変更できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばヘリコプター、飛行機、自動車、船舶等の各種模型又は無人操作される産業用機械等のような被操縦体の無線操縦に用いられる操縦用通信システムに係り、特に操縦者が操作する操縦用通信装置と、被操縦体に搭載した被操縦体用通信装置との間で相互通信を行うことにより、被操縦体に搭載した機器のパラメータを操縦用通信装置の側から遠隔的に設定・確認することができる操縦用通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、無線操縦される被操縦体としてのヘリコプターや飛行機等には、被操縦体を操縦するために、ラダー、エレベータ、エンジンスロットル、エルロン等を操作するサーボモータやジャイロ等の機器が搭載されている。送信機側において操縦者が操作用スティック等を操作すると、その操作量に対応した操縦データを含む操縦信号が被操縦体に向けて送信される。被操縦体に搭載された受信機がこれを受信すると、前記操縦データがサーボモータ等に与えられて操作部位はサーボモータ等によって必要な量だけ正確に駆動され、操縦者による送信機側の操作に対応して被操縦体が操縦されることとなる。
【0003】
ところで、このような被操縦体を遠隔操作するための操縦用通信装置を所有するユーザは、使用環境(天候や路面状態)への対応や所望の操作感を得る等の目的で、前述したサーボモータやジャイロ等の機器のパラメータを必要に応じて変更し、送信機における操作用スティック等の操作量に対する操縦データをパラメータに応じて変更する場合がある。
【0004】
上述したような被操縦体に搭載したサーボモータやジャイロ等の機器のパラメータを変更する手段としては、下記特許文献1に記載の発明が知られている。この発明は、ラジオコントロール用モータ制御装置に係るものであり、送信機を利用して機器のパラメータの設定値の変更を行なうために、ラジオコントロールシステムにおける複数の操作チャンネルのうち、少なくとも一つのチャンネルをパラメータ設定用に使用し、このチャンネルを通じて送信機から受信機の側へ設定すべきパラメータのデータを送っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−312065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の発明では、送信機と受信機の間で通信を行なうラジオコントロールシステムが有する限られた数の操作チャンネルのうち、少なくとも一つの操作チャンネルが、被操縦体に搭載されたサーボモータ等の機器のパラメータを変更するために占有されてしまうという問題があった。近年では、被操縦体に搭載する機器の種類・数等も増加する傾向にあり、操作チャンネル数には決して余裕がある状況ではないため、機器のパラメータを変更するために一つのチャンネルが占有されてしまうことは望ましいことではなく、適切な解決手段が求められていた。
【0007】
また、ラジオコントロールシステムにおいて、被操縦体に搭載したサーボモータ等のパラメータの変更を行なう手段としては、前述した特許文献1に記載の発明のように送信機から信号を送る装置の他、専用のソフトウェアを読み込んだパソコンや、専用機であるプログラミングボックスが知られている。
【0008】
図6は、パソコンを用いてジャイロのパラメータを変更する場合に使用される「USB−シリアル変換アダプター」(以後、変換アダプター20と略称する。)と呼ばれる装置である。この変換アダプター20の差し込み口21をパソコンのUSBポートに接続するとともに、変換アダプター20の接続コード22を、被操縦体から取り外したジャイロ30に接続し、電源コード23は受信機用バッテリー又は5Vの電源に接続する。ジャイロのパラメータを変更するためのソフトウェアは、予め入手してパソコンにインストールしておき、必要な操作を行なってソフトウェアをパソコン上で起動させれば、図7に示すようにパソコンの表示画面40には、ジャイロ30のパラメータの設定画面が表示される。同図に示すように、ジャイロ30のパラメータとしては、フライトモード、サーボモード、ジャイロリバースその他多数の項目があり、これらについて表示画面40上で所望の値又は選択を行なってパラメータの編集作業を行なっていく。そして、編集が完了したところで、表示画面40中の書き込みボタン41を押せば、編集されたパラメータのデータが変換アダプター20を介してジャイロ30に書き込まれる。なお、表示画面40中の読み込みボタン42を押せば、ジャイロ30内にすでに設定されている各パラメータが読み出されてパソコンの表示画面40上に表示される。
【0009】
なお、前述したプログラミングボックスは、機器のパラメータを変更するためのソフトウェアが予めインストールされているパラメータ変更専用の装置であって、使用時には被操縦体から取り外したジャイロ等に接続して表示画面上でパラメータの設定等を行なう。
【0010】
しかしながら、被操縦体を使用している飛行場やサーキット等の現場で機器のパラメータの設定変更を行ないたい場合に、上述した変換アダプター20やプログラミングボックスを使用するとすれば、まず、これらパソコン及び変換アダプター20又はプログラミングボックスを現場に持ち込む必要があり、運搬や現場での準備が煩雑であるという問題があった。また、パソコンに接続した変換アダプター20又はプログラミングボックスを、被操縦体から取り外した機器に有線で接続する必要があるため、被操縦体の組み立てが済んだ後に飛行や走行をさせながら機器の調整を行なう場合には、作業が非常に煩雑になる。すなわち、操縦されている被操縦体の状態を見て機器のパラメータに必要な変更を見きわめたうえで、被操縦体を操縦者の近傍まで移動させ、さらに被操縦体から目的となる機器を取り外してパソコンに接続した変換アダプター20等に接続し、上述したようにパラメータの変更作業を行い、その後、再び機器を被操縦体に搭載し直す必要がある。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、パラメータの設定が可能な機器が搭載された被操縦体を操縦するために、被操縦体側に搭載した通信装置と、操縦者が操作する通信装置とを備えた操縦用通信装置において、特にパソコンや設定用専用機を使用しなくとも、被操縦体に搭載された機器のパラメータを、操縦者の通信装置の側からの遠隔的な操作で設定・確認できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載された操縦用通信装置は、
パラメータの設定が可能な機器を搭載した被操縦体の前記機器を操作して前記被操縦体を操縦する操縦モードと前記機器のパラメータの管理を行うパラメータモードから所望の制御モードが選択可能な制御部と、
前記制御部の制御により、前記操縦モードでは前記被操縦体に操縦信号を送信し、前記パラメータモードでは前記被操縦体との間でパラメータ信号を送受信する送受信部と、
前記制御部が前記パラメータモードにある場合に前記パラメータ信号に係るパラメータ情報の表示を行う表示部と、
を有することを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載された操縦用通信装置は、請求項1記載の操縦用通信装置において、
前記パラメータ信号が、前記被操縦体の前記機器に設定する前記パラメータ情報を前記被操縦体に送信するライト信号と、前記被操縦体の前記機器に設定されている前記パラメータ情報を前記被操縦体から受信するリード信号を含むことを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載された被操縦体用通信装置は、
パラメータの設定が可能な機器を搭載した被操縦体に設けられて前記機器に接続された被操縦体用通信装置において、
前記被操縦体を操縦するための操縦データと前記機器のパラメータ情報を識別して前記被操縦体の操縦又は前記機器のパラメータの管理を行なう制御部と、
前記制御部の制御により、前記操縦データを含む操縦信号を受信し、前記機器のパラメータ情報を含むパラメータ信号を送受信する送受信部と、
を有することを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載された被操縦体用通信装置は、請求項3記載の被操縦体用通信装置において、
前記パラメータ信号が、前記被操縦体の前記機器に設定する前記パラメータ情報を受信するライト信号と、前記被操縦体の前記機器に設定されている前記パラメータ情報を送信するリード信号を含むことを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載された操縦用通信システムは、
被操縦体に搭載されたパラメータの設定が可能な機器を操作して前記被操縦体を操縦する操縦用通信システムにおいて、
前記機器を操作して前記被操縦体を操縦する操縦モードと前記機器のパラメータの管理を行うパラメータモードから所望の制御モードが選択可能な操縦側制御部と、前記操縦側制御部の制御により、前記操縦モードでは前記被操縦体に操縦信号を送信し、前記パラメータモードでは前記被操縦体との間でパラメータ信号を送受信する操縦側送受信部と、前記操縦側制御部が前記パラメータモードにある場合に前記パラメータ信号に係るパラメータ情報の表示を行う表示部とを有する操縦用通信装置と、
前記操縦信号に係る被操縦体の操縦データと前記パラメータ信号に係るパラメータ情報を識別して前記被操縦体の操縦又は前記機器のパラメータの管理を行なう被操縦体側制御部と、前記被操縦体側制御部の制御により、前記操縦用通信装置から前記操縦信号を受信し、前記操縦用通信装置との間で前記パラメータ信号を送受信する被操縦体側送受信部とを有することを特徴とする被操縦体用通信装置と、
を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、3、5に記載された操縦用通信システム、又は同システムの送信機を構成する操縦用通信装置、又は同システムの受信機を構成する被操縦体用通信装置によれば、被操縦体を操縦する操縦モードと、被操縦体に搭載した機器のパラメータの管理を行なうパラメータモードの何れかを、操縦用通信装置の側で任意に選択することができる。
【0018】
操縦モードが選択された場合には、操縦用通信装置の操作によって被操縦体用通信装置に操縦信号を送信して被操縦体の機器を操作し、被操縦体を操縦することができる。
【0019】
パラメータモードが選択された場合において、被操縦体に搭載した機器のパラメータの管理作業(変更や確認等)を行ないたい場合には、操縦用通信装置の操作によってパラメータ信号を被操縦体用通信装置との間で必要に応じて送受信し、操縦用通信装置の表示部に表示されたパラメータを見ながら、前記機器のパラメータの管理作業を無線で遠隔的に行なえる。従って、被操縦体に搭載されている機器が複数種類、複数個であっても、各機器を被操縦体から取り外して有線で個々に接続する煩雑さがなく、対象となる機器及び対象となるパラメータを操縦用通信装置の側において表示部で確認しながら管理することができ、例えば変更や確認等といったパラメータの管理作業が容易になるという効果が得られる。
【0020】
請求項2、4に記載された操縦用通信システムの送信機を構成する操縦用通信装置、又は同システムの受信機を構成する被操縦体用通信装置によれば、パラメータモードにおいて、被操縦体に搭載した機器のパラメータを管理する作業として、パラメータの新たな値への変更と、現に設定されているパラメータの読み出し及び確認を、いずれも操縦用通信装置の操作によって操縦用通信装置の側で行なうことができる。
【0021】
すなわち、パラメータの管理作業として、パラメータの変更を行なう場合には、操縦用通信装置の操作によって表示部でパラメータ情報を表示して編集を行い、このパラメータを含むパラメータ信号を被操縦体用通信装置に送信する。被操縦体用通信装置は、受信したパラメータ信号に含まれるパラメータによって機器のパラメータを変更し、さらに変更作業の結果を操縦用通信装置に送信して操作者に変更作業の結果を確認させることができる。
【0022】
また、パラメータの管理作業として、パラメータの送信機への読み出し行なう場合には、操縦用通信装置の操作によって機器のパラメータの読み出しを命令するパラメータ信号を被操縦体用通信装置に送信する。被操縦体用通信装置は、受信したパラメータ信号に基づいて指定された機器のパラメータを読み出し、これをパラメータ信号として操縦用通信装置に送信する。操作者は、読み出した機器のパラメータを操縦用通信装置の表示部で確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る操縦用通信システムのブロック構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る操縦用通信システムにおいて機器のパラメータを変更する作業を行なう場合に、操縦用通信装置と被操縦体用通信装置との間で行なわれるパラメータ信号の送受信及びパラメータの変更の状態を模式的に示す概念図である。
【図3】本発明の実施形態に係る操縦用通信システムにおいてサーボモータのパラメータを変更する作業を行なう場合に、操縦用通信装置の表示部に表示されるパラメータの設定画面を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る操縦用通信システムにおいてジャイロのパラメータを変更する作業を行なう場合に、操縦用通信装置の表示部に表示されるパラメータの設定画面を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る操縦用通信システムがパラメータモードに設定されている場合において、機器のパラメータを変更する作業を行なう場合の各部における動作手順を示すフロー図である。
【図6】ジャイロのパラメータを変更するためのソフトウェアがインストールされたパソコンとジャイロとを接続する変換アダプターがジャイロに接続されている状態を示す外観図である。
【図7】ジャイロのパラメータを変更するためのソフトウェアがインストールされたパソコンとジャイロを図6に示す変換アダプターで接続し、パソコンのソフトウェアを起動させた場合に表示画面に表示されるジャイロのパラメータの設定画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態を図1〜図5を参照して説明する。
図1は本実施形態に係る操縦用通信システム1のブロック構成図である。
図1に示す本実施形態の操縦用通信システム1は、被操縦体2の一例であるヘリコプターを無線で遠隔操縦する送信機と受信機からなる装置である。なお、被操縦体2は、ヘリコプターや飛行機であれば機体と呼んでもよいが、自動車であれば車体、船舶であれば船体とも呼ぶことができる。被操縦体2としてのヘリコプターに搭載された機器3の例としては、後述するようにジャイロ、サーボモータの他、GPS・気圧・気温等の各種センサ等がある。これらの機器3は、その作動特性を規定する各種のパラメータを有しており、これは使用環境(天候や路面状態)への対応や所望の操作感を得る等の目的で任意の値に設定し、変更することが可能である。具体的なパラメータの種類は後に詳述するが、例えばサーボモータの場合にはスピードコントロールや舵角調整等があり、ジャイロの場合にはフライトモードやジャイロリバース等があり、センサの場合には感度設定やキャリブレーション等がある。そして、この操縦用通信システム1は、これらの機器3に対して操縦データやパラメータ情報を供給し、またこれらの機器3からパラメータ情報を含むその他の制御情報を得ることにより、ヘリコプターの操縦乃至制御を実行している。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の操縦用通信システム1は、操縦用通信装置4と被操縦体用通信装置5から構成されている。操縦用通信装置4は操作者が手に持って操作する。被操縦体用通信装置5は被操縦体2に搭載されている。被操縦体用通信装置5は、これと同様に被操縦体2に搭載された複数種類の機器3にそれぞれ接続されており、後述するように操縦用通信装置4からの信号を受けて各機器3を制御するように構成されている。なお、図1では複数の機器3は一括して単一のブロックで表している。また、この被操縦体2には電源6も搭載されており、電源6は各機器3と被操縦体用通信装置5に接続されており、これらに電力を供給するようになっている。
【0026】
図1に示すように、操縦用通信装置4は操縦側制御部7を有している。この操縦側制御部7は、操縦用通信装置4の各部を統括して制御するとともに、被操縦体用通信装置5を介して前記各機器3を遠隔的に操作し、被操縦体2を操縦する操縦モードと、被操縦体用通信装置5を介して前記各機器3のパラメータの管理を行うパラメータモードの2つの制御モードから、制御の目的に応じた所望のモードに選択的に設定できるように構成されている。操縦側制御部7には、制御に必要なプログラムや各種データが記憶された操縦側記憶部8と、制御に必要な情報を入力するスティックやスイッチ等の操作部9と、制御に必要な情報の表示を行なう表示部10が接続されている。後述するように、この表示部10には、操縦側制御部7が操縦モードにある場合には、被操縦体2の状態を示す各種情報や操縦に必要な情報等を表示する操縦画面が表示され、また操縦側制御部7がパラメータモードにある場合には、各機器3に設定する各種パラメータ情報を編集し、又は各機器3に現に設定されている各種パラメータ情報を表示するパラメータ画面が表示される。なお、表示部10に表示されるタッチスイッチは、データやコマンドの入力を行なうための操作部9としても機能する。
【0027】
図1に示すように、操縦側制御部7には、アンテナ11aを有する操縦側送受信部11が接続されている。操縦側送受信部11は、操作部9からの入力を受けた操縦側制御部7の制御により、操縦モードでは被操縦体2に操縦信号を送信するとともに、被操縦体2から送信された被操縦体2の状態を示す各種情報を受信し、またパラメータモードでは、被操縦体2との間でパラメータ信号を送受信することができる。
【0028】
図1に示すように、被操縦体2に搭載された被操縦体用通信装置5は被操縦体側制御部12を有している。この被操縦体側制御部12には、制御に必要なプログラムや各種データが記憶された被操縦体側記憶部13が接続されている。この被操縦体側制御部12は、被操縦体用通信装置5の各部を統括して制御するとともに、操縦用通信装置4から送られたデータを用いて前記各機器3の制御を行なう。被操縦体側制御部12は識別フラグ判定部14を有している。この識別フラグ判定部14は、操縦用通信装置4から送られたデータを構成するパケット中の識別フラグを識別し、そのデータが操縦データとパラメータ情報のいずれであるかを判定する。被操縦体側制御部12は、操縦用通信装置4から送信されたデータが入力された場合には、識別フラグ判定部14によって当該データの種類を判定し、それが操縦データである場合には、この操縦データを当該機器3に与えて被操縦体2の操縦を行なわせ、それがパラメータ情報である場合には、このパラメータ信号を当該機器3に与えてパラメータを変更し又は当該機器3に設定されているパラメータを読み出すパラメータの管理制御を行なう。
【0029】
図1に示すように、被操縦体側制御部12には、アンテナ15aを有する被操縦体側送受信部15が接続されている。被操縦体側送受信部15は、被操縦体側制御部12の制御により、操縦用通信装置4の操縦側送受信部11から送られた操縦信号やパラメータ信号を受信して被操縦体側制御部12に入力し、また操縦用通信装置4の操縦側送受信部11に被操縦体2の状態を示す各種情報を含む信号やパラメータ信号を送信する。
【0030】
図2は、操縦用通信装置4がパラメータモードに設定された前記操縦用通信システム1において、操縦用通信装置4と被操縦体用通信装置5の間でパラメータ信号を送受信することにより、特定のサーボモータの特定のパラメータを書き換える作業を行なう場合の信号及び情報の流れを説明する図である。以下、この図2及び図1を参照してパラメータモードにおけるパラメータの変更(ライト)及びパラメータの読み出し(リード)について説明する。
【0031】
図2に示すように、被操縦体用通信装置5には機器3として複数のサーボモータ3a、ジャイロ3b、複数のセンサ3cが、複数個の分岐部16を介してツリー状に分岐した配線17によって用途・機能等に応じた分類で接続されている。
【0032】
図2中に一部示すように、パラメータモードにおいて操縦用通信装置4から被操縦体用通信装置5に送信されるパラメータ信号は、ID情報と、識別フラグと、機器3の固有情報(CH/ID)と、コマンド情報と、パラメータ情報から構成されている。なお、図2においては、これらの内、固有情報(CH/ID)と、コマンド情報と、パラメータ情報のみを示し、その他の情報等については省略している。ID情報は、対応する被操縦体用通信装置5に固有のデータであって、操縦用通信装置4が正規に対応する被操縦体用通信装置5を特定して送受信を行なうための情報である。識別フラグは、操縦信号とパラメータ信号を区別するためのデータである。機器3の固有情報は、パラメータ信号を与える対象となる機器3を特定するデータであって、その対象となる機器3を特定する情報としてのチャンネルデータ(CH)又は対象とする機器3の識別番号(ID)から構成される。コマンド情報は、命令の内容を示すデータであるリードコマンド又はライトコマンドであって、リードコマンドでは固有情報で指定された機器3からパラメータ又はデータを読み出し、ライトコマンドでは固有情報で指定された機器3にパラメータを書き込む。パラメータ情報は、ライトコマンドにおいて特定の機器3に実際に設定する(書き込む)パラメータ情報そのものである。
【0033】
図2に示すように、パラメータモードに設定された操縦用通信装置4において、操縦者は表示部10に表示されたパラメータ画面を見ながら、パラメータの変更を行なう機器3を特定し、次に変更するパラメータの種類を指定し、さらに変更するパラメータの数値等を入力する。図2の例では、複数個のサーボモータ3aのうち、ある特定のサーボモータ3a1に関して特定のパラメータの変更を行なっている。
【0034】
図3は、サーボモータ3aのパラメータを変更する作業を行なう場合に、操縦用通信装置4の表示部10に表示されるパラメータの設定画面を示す図である。この表示画面に示されているように、サーボモータ3aのパラメータには、パラメータを設定するサーボモータを特定するIDと、サーボモータに割り当てられたチャンネル(CH)と、サーボモータの回転方向を変更するサーボリバース(Reverse)と、サーボが所定時間停止した場合に保持電流がなくなるとともに操作信号が入ると通常の動作モードに復帰するサーボタイプ(Servo Type)と、電源投入時の瞬時に指定位置に動く動作を制限するソフトスタート(Soft Start)と、サーボの入力信号が途絶えた時のサーボの状態を指定する停止モード(Stop Mode)と、サーボの動きを滑らかにするスムーサー(Smoother)と、ニュートラル位置を変更するためのニュートラル調整(Neutral Offset)と、動作速度を設定するスピードコントロール(Speed Control)と、不感帯の角度を指定するデッドバンド(Dead Band)と、ニュートラルを中心とした左右の最大舵角を独立して設定する舵角調整(Travel Adjust)と、サーボを駆動する時に内部のモータにかける最小電流を設定するブースト(Boost)等がある。
【0035】
図4は、ジャイロ3bのパラメータを変更する作業を行なう場合に、操縦用通信装置4の表示部10に表示されるパラメータの設定画面を示す図である。この表示画面に示されているように、ジャイロ3bのパラメータには、パラメータを設定するジャイロを特定するIDと、受信機に接続されるラダーチャンネルとゲインチャンネルの番号を指定するチャンネル(Rudder CH,Gain CH)と、F3Cと3Dの動作モードを設定するフライトモード(Flight Mode)と、デジタル、アナログ等のサーボタイプを選択するサーボモード(Servo Mode)と、ジャイロの動作方向を設定するジャイロリバース(Gyro Reverse)と、ジャイロの搭載方向を入力するジャイロ搭載面(Mounting Surface)と、ラダーの反応速度を選択するレスポンスモード(Response Mode)と、ラダー操作のディレーを設定するコントロールレスポンス(Control Response)と、テール操作の反応速度の調整を行なうAVCSレスポンス(AVCS Response)と、ラダー操作時の操作感覚を選択するピルエット感覚(Pirouette)と、ラダースティックのニュートラル付近の操作感覚の設定を行なうEXPと、テールの回転速度を設定するヨーレート、AVCS感度の設定を行なうゲイン、AVCS動作範囲を設定するレンジを設定するAVCS設定(AVCS Response)等がある。
【0036】
パラメータの編集が終わったら、操作者は操作部9を操作して図2に示すようにパラメータ信号を操縦側送受信部11によりアンテナ11aから送信する。このパラメータ信号は、被操縦体用通信装置5の被操縦体側送受信部15に受信され、被操縦体側制御部12において識別フラグ判定部14によりパラメータ信号であることが確認される。そして、被操縦体側制御部12はパラメータ信号をすべての機器3(サーボモータ3a、ジャイロ3b、センサ3c)に送る。図示はしないが、各機器3は制御部及び記憶部を含む制御装置を各々有しており、この制御装置により、被操縦体側制御部12から送られたパラメータ信号を用いて必要な処理を行い、返信信号としてのパラメータ信号を生成して被操縦体側制御部12に出力することができる。各機器3では、パラメータ信号に含まれる機器3の固有情報(CH、ID)と自らの固有情報が一致するか否かが判断され、一致した機器3のみにおいて、パラメータ信号に含まれるライトコマンドがパラメータ情報を用いて実行される。すなわち、パラメータ信号に含まれる機器3の固有情報で指定されたサーボモータ3aにおいて、指定されたパラメータが、パラメータ信号に含まれたパラメータ情報の通りに変更される。なお、その固有情報がパラメータ信号の固有情報と一致しない機器3においては、パラメータ信号の入力を受けても命令動作は行なわれない。
【0037】
さらに、図2に示すように、変更がコマンド通りに行なわれた場合、前記サーボモータ3a1に設けられた制御装置は、変更したパラメータ情報を含む返信のパラメータ信号を生成し、これを被操縦体側制御部12に与えて被操縦体側送受信部15から操縦用通信装置4に送信する。この返信のパラメータ信号には、コマンドの成功又は失敗を示す情報と、サーボモータの固有情報(ID)と、成功した場合に書き込んだパラメータ情報とが含まれている。
【0038】
そして、図2に示すように、操縦用通信装置4が返信された前記パラメータ信号を受信すると、その内容が表示部10に表示されるので、操作者はこれを見て直ちにコマンドの成否及び実際に設定されたパラメータの数値等を確認することができる。
【0039】
以上、図2及び図1を参照して、ライトコマンドで特定サーボモータ3a1の特定パラメータを書き換える際の信号等の流れを説明した。これとはコマンドが異なる場合、すなわちコマンドがリードコマンドの場合には、操縦用通信装置4から被操縦体用通信装置5に送信されるパラメータ信号には、対応する被操縦体用通信装置5に固有のID情報と、信号種類の識別フラグと、対象となる機器3の固有情報(CH/ID)と、リードコマンド情報が含まれる。パラメータ信号を受けた被操縦体用通信装置5では、被操縦体側制御部12がパラメータ信号をすべての機器3に送信する。各機器3のうち、パラメータ信号に含まれる機器3の固有情報(CH、ID)と自らの固有情報とが一致した機器3のみが、パラメータ信号に含まれるリードコマンドを実行し、固有情報で指定された機器3の指定されたパラメータを読み出す。そして、返信のパラメータ信号には、指定された機器3から読み出されたパラメータと、当該機器3の固有情報が含まれる。返信のパラメータ信号は、被操縦体用通信装置5から操縦用通信装置4へ送信され、操縦用通信装置4の表示部10に表示されるので、操作者はこれを見て直ちにコマンドの成否及び指定した機器3に現在設定されている特定パラメータの数値等を確認することができる。
【0040】
図5は、操縦用通信システム1がパラメータモードに設定されている場合において、操縦用通信装置4の側から機器3のパラメータを管理する作業、すなわち機器3のパラメータを変更し又はパラメータを読み出す作業を行なう場合の動作手順を示すフロー図であって、操縦用通信装置4と被操縦体用通信装置5と機器3においてそれぞれ行なわれる各動作ステップの順序と、各ステップ間で授受される信号乃至情報の流れを示した図である。図2及び図1を参照して説明したライトコマンド及びリードコマンドによるパラメータの変更及び読み出しについて、以下、この図5を参照して再度具体的に説明する。なお、装置各部の構成については図1に示す参照符号も参照されたい。
【0041】
操縦用通信装置4をパラメータモードに設定し(S10)、表示部10のパラメータ画面で特定機器3の特定パラメータについての編集を行なった後、操縦側制御部7が操縦側送受信部11を制御してパラメータ信号を送信する(S11)。
【0042】
被操縦体用通信装置5において、被操縦体側送受信部15が前記パラメータ信号を受信すると(S20)、被操縦体側制御部12が前記パラメータ信号をすべての機器3に出力する(S21)。
【0043】
各機器3にパラメータ信号が入力されると(S30)、各機器3はそのパラメータ信号が自己に対するものか否かを固有情報(CH又はID)の一致・不一致によって判別する(S31)。パラメータ信号が自己に対するものであると判断した機器3は、パラメータ信号を実行する(S32)。すなわち、パラメータ信号に含まれるコマンド情報とコマンドに応じて含まれるパラメータ情報を用い、ライト又はリード等のコマンドを実行する。パラメータを変更するライトコマンドの場合、指定された機器3は、コマンド実行後に当該機器3に設定したパラメータ情報を制御装置の記憶部に記憶して保存する(S33)。さらに、当該機器3は返信信号としてのパラメータ信号を制御装置において生成し(S34)、これを被操縦体用通信装置5の被操縦体側制御部12に出力する(S35)。
【0044】
コマンド情報がライトコマンドである場合には、この返信信号としてのパラメータ信号には、コマンドの成功又は失敗を示す情報と、機器3を特定する固有情報と、成功した場合に書き込んだパラメータ情報とが含まれている。コマンド情報がリードコマンドである場合には、この返信信号としてのパラメータ信号には、指定された機器3から読み出されたパラメータと、当該機器3を特定する固有情報が含まれている。
【0045】
そして、被操縦体用通信装置5に入力された返信信号としてのパラメータ信号は、被操縦体用通信装置15の被操縦体側制御部12に入力され(S22)、被操縦体側送受信部15から操縦用通信装置4へ送信される(S23)。
【0046】
そして返信信号としてのパラメータ信号は、操縦用通信装置4の操縦側送受信部11で受信され(S12)、操縦側制御部7はこのパラメータ信号のパラメータ情報を表示部10に表示する(S13)。
【0047】
以上説明した実施形態によれば、操作者が操作する操縦用通信装置4と機体に搭載した被操縦体用通信装置5との無線通信により機体2を操縦する操縦用通信システム1において、操縦用通信装置4側の操作により、機体2に搭載した多種類の機器3のパラメータの変更や確認を無線で簡単に行なうことができる。このような機能に加え、操縦用通信装置4の側に機器3と有線で接続するための専用接続端子を設け、操縦用通信装置4と機器3を有線で接続し、操縦用通信装置4での操作によって機器3のパラメータを変更したり、設定されているパラメータを読み出して確認する操作を行なえるようにしてもよい。このようにすれば、電波の受信状態が良くない場合や、対象とする機器3が限られている場合等には、パソコンやプログラミングボックスを使用せずに有線接続によって操縦用通信装置4だけで機器3のパラメータ管理を行なうことができるので、操縦用通信システム1としての使い勝手が良くなり、使用方法の選択肢が豊富になるため、使用上の利便性が一層向上するという効果が得られる。
【0048】
また、以上説明した実施形態では、被操縦体2としてヘリコプターを例示したが、パラメータ設定可能な機器3としてサーボモータを搭載する被操縦体2としては飛行機も対象となるし、さらに電動モータで駆動される模型自動車等を被操縦体2とした場合には、パラメータ設定可能な機器3としては、操作部9の操作量とモータの回転数の対応関係を設定する電動モータコントローラ(ESC,electric speed controller )なども対象となる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の操縦用通信システム1によれば、機体2の操縦モードと、機体2に搭載した機器3のパラメータを管理するパラメータモードとを、操縦用通信装置4の側で自由に選択できるようになっており、パラメータモードに設定することにより、機体2に機器3を搭載したままの状態で、特に有線での接続も必要なく、操縦用通信装置4側の表示部10で必要な情報を見ながら多種類の機器3のパラメータの変更や確認を簡単に行なうことができる。従って、機器3のパラメータを変更する場合に、パソコンや専用のプログラミングボックスが不要であり、機器3を機体2から下ろしたり、取り外したりする必要がなくなり、従来のような作業上の煩雑さが解消される。
【符号の説明】
【0050】
1…操縦用通信システム
2…被操縦体(機体)
3…機器
3a…機器としてのサーボモータ
3b…機器としてのジャイロ
3c…機器としてのセンサ
4…操縦用通信装置
5…被操縦体用通信装置
7…操縦側制御部
11…操縦側送受信部
12…被操縦体側制御部
15…被操縦体側送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラメータの設定が可能な機器を搭載した被操縦体の前記機器を操作して前記被操縦体を操縦する操縦モードと前記機器のパラメータの管理を行うパラメータモードから所望の制御モードが選択可能な制御部と、
前記制御部の制御により、前記操縦モードでは前記被操縦体に操縦信号を送信し、前記パラメータモードでは前記被操縦体との間でパラメータ信号を送受信する送受信部と、
前記制御部が前記パラメータモードにある場合に前記パラメータ信号に係るパラメータ情報の表示を行う表示部と、
を有することを特徴とする操縦用通信装置。
【請求項2】
前記パラメータ信号は、前記被操縦体の前記機器に設定する前記パラメータ情報を前記被操縦体に送信するライト信号と、前記被操縦体の前記機器に設定されている前記パラメータ情報を前記被操縦体から受信するリード信号を含むことを特徴とする請求項1記載の操縦用通信装置。
【請求項3】
パラメータの設定が可能な機器を搭載した被操縦体に設けられて前記機器に接続された被操縦体用通信装置において、
前記被操縦体を操縦するための操縦データと前記機器のパラメータ情報を識別して前記被操縦体の操縦又は前記機器のパラメータの管理を行なう制御部と、
前記制御部の制御により、前記操縦データを含む操縦信号を受信し、前記機器のパラメータ情報を含むパラメータ信号を送受信する送受信部と、
を有することを特徴とする被操縦体用通信装置。
【請求項4】
前記パラメータ信号は、前記被操縦体の前記機器に設定する前記パラメータ情報を受信するライト信号と、前記被操縦体の前記機器に設定されている前記パラメータ情報を送信するリード信号を含むことを特徴とする請求項3記載の被操縦体用通信装置。
【請求項5】
被操縦体に搭載されたパラメータの設定が可能な機器を操作して前記被操縦体を操縦する操縦用通信システムにおいて、
前記機器を操作して前記被操縦体を操縦する操縦モードと前記機器のパラメータの管理を行うパラメータモードから所望の制御モードが選択可能な操縦側制御部と、前記操縦側制御部の制御により、前記操縦モードでは前記被操縦体に操縦信号を送信し、前記パラメータモードでは前記被操縦体との間でパラメータ信号を送受信する操縦側送受信部と、前記操縦側制御部が前記パラメータモードにある場合に前記パラメータ信号に係るパラメータ情報の表示を行う表示部とを有する操縦用通信装置と、
前記操縦信号に係る被操縦体の操縦データと前記パラメータ信号に係るパラメータ情報を識別して前記被操縦体の操縦又は前記機器のパラメータの管理を行なう被操縦体側制御部と、前記被操縦体側制御部の制御により、前記操縦用通信装置から前記操縦信号を受信し、前記操縦用通信装置との間で前記パラメータ信号を送受信する被操縦体側送受信部とを有することを特徴とする被操縦体用通信装置と、
を備えたことを特徴とする操縦用通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−67279(P2013−67279A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207560(P2011−207560)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000201814)双葉電子工業株式会社 (201)