説明

擬似見本の製造方法

【課題】
煎餅やウエハース等、略平板状の食品などを模擬する擬似見本において、経時的に反り返るのを防止し、長期に亘って形状変化が少ない擬似見本を得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明の擬似見本Aの製造方法は、熱可塑性または熱硬化性を有する同一の樹脂を用い、同一の製造条件で形成された同一または略同一形状の略平板状の中間成形体1であって、少なくとも一方の面が平面であるものを二枚用い、二枚の中間成形体11、12の対応する平面11a、12aどうしを面対称となるように突き合わせ、平面11a、12aどうしを、接着部材2により接着するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性または熱硬化性を有する樹脂を用いた擬似見本の製造方法に係り、特に、製造後における経時的な反り返りを防止し、長期に亘って形状変化が少ない擬似見本を得ることができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図11に示したような煎餅やウエハース等、略平板状の食品などを模擬する擬似見本Bにあっては、例えば、熱可塑性または熱硬化性を有する樹脂を、成形型を用いて加熱成形し、成形した単品そのものを、そのまま擬似見本として使用し、ショーウィンドに陳列したり、ストラップを取り付けてアクセサリーとしての用に供していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような方法で製造された擬似見本Bにあっては、その形状が略平板状であるため、成形型に樹脂を充填して加熱成形する際、擬似見本Bの厚さ方向における成形条件が微妙に異なり、不均一な密度分布になったり、樹脂の融解または/および凝固時において残留応力が生じたりするため、例えば、成形後にショーウィンドに陳列した場合、図12(a)、(b)に示したように、経時的に徐々に反り返ってしまい、見本としての役割を果たせなくなるという問題点があった。
【0004】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、熱可塑性または熱硬化性を有する同一の樹脂を用い、同一の製造条件で形成された同一または略同一形状の略平板状の中間成形体であって、少なくとも一方の面が平面であるものを二枚用い、前記二枚の中間成形体の対応する平面どうしを面対称となるように突き合わせ、前記平面どうしを、接着部材により接着する擬似見本の製造方法である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の擬似見本の製造方法において、同一の製造条件は、成形型が、同一の型であるか、または、略同一の型を用い、同じ条件で加熱し、冷却し、離型したものである。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の擬似見本の製造方法において、接着部材は、接着性樹脂であるものである。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3記載の擬似見本の製造方法において、擬似見本は、擬似食品であるものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の擬似見本の製造方法によれば、熱可塑性または熱硬化性を有する同一の樹脂を用い、同一の製造条件で形成された同一または略同一形状の略平板状の中間成形体であって、少なくとも一方の面が平面であるものを二枚用い、前記二枚の中間成形体の対応する平面どうしを面対称となるように突き合わせ、前記平面どうしを、接着部材により接着するため、略平板状の中間成形体に内在する残留応力を打ち消し合うことができ、全体として経時的に反り返るのを防止し、長期に亘って形状変化が少ない擬似見本を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1記載の擬似見本の製造方法の効果に加え、同一の製造条件は、成形型が、同一の型であるか、または、略同一の型を用い、同じ条件で加熱し、冷却し、離型したものであるため、略平板状の中間成形体に内在する残留応力を打ち消し合うことができ、全体として経時的に反り返るのを防止し、長期に亘って形状変化が少ない擬似見本を得ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2記載の擬似見本の製造方法の効果に加え、接着部材は、接着性樹脂であるため、接着性樹脂を挟み込んで、積層感を出すことができ、例えば、クリームを挟み込んだビスケットなど、趣のある擬似見本を得ることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3記載の擬似見本の製造方法の効果に加え、擬似見本は、擬似食品であるため、例えば、煎餅やウエハース等、平板状あるいは積層状の食品を模擬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の製造方法により作製された擬似見本の概略的斜視図であり、一部を捲ると共に破断して示したものである。
【図2】図1の製造過程を示した概略的断面図であり、樹脂充填中のものである。
【図3】図1の製造過程を示した概略的断面図であり、樹脂充填後のものである。
【図4】図1の製造過程を示した概略図であり、加熱時のものである。
【図5】図1の製造過程を示した概略的断面図であり、離型時のものである。
【図6】図1の製造過程を示した概略的斜視図であり、接着部材塗布時のものである。
【図7】図1の製造過程を示した概略的断面図であり、接着部材塗布時のものである。
【図8】図1の製造過程を示した概略的断面図であり、接着後のものである。
【図9】図1の変形例の製造過程を示した概略的断面図であり、接着部材塗布時のものである。
【図10】図1の変形例の製造過程を示した概略的断面図であり、接着後のものである。
【図11】従来例に係る擬似見本を示した概略的斜視図である。
【図12】図11のX−X線で切断した概略的断面図であり、図11(a)は製造直後のものを、図11(b)は相当時間経過後のものを、それぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施例を、図1〜図10を参照して説明する。図1において、Aは、本発明に係る擬似見本の製造方法により製造された擬似見本であり、擬似見本Aは、概略的に、二枚の略平板状の中間成形体1、すなわち、第1の中間成形体11および第2の中間成形体12と、接着部材2とにより構成されている。
【0015】
第1および第2の中間成形体11、12は、熱可塑性または熱硬化性を有する同一の樹脂を用い、同一の製造条件で形成された同一または略同一形状の略平板状のものである。
【0016】
すなわち、第1および第2の中間成形体11、12に使用される樹脂は、同一であって、例えば、熱可塑性樹脂にあっては、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエチレン(PE)、熱可塑性ポリエステル、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネイト(PC)ポリスルホン(PSF)などであり、熱硬化性樹脂にあっては、シリコーンゴム、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂(EP)、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂(UP)などである。
【0017】
また、第1および第2の中間成形体11、12の形状は、図1に示したように、それぞれ、少なくとも一方の面が平面(第1の中間成形体11にあっては平面11a、第2の中間成形体12にあっては平面12a)である略平板状であり、同一または略同一形状に形成されている。ここで、略同一形状とは、図柄等の僅かな凹凸形状を除いた他の部分の形状(厚さや外形など)が同一であることをいう。
【0018】
また、第1および第2の中間成形体11、12は、同一の製造条件で形成されているもので、具体的には、成形型が、同一の型であるか、または、図柄等の僅かな凹凸形状を除いた他の部分の形状が同一である略同一の型を用い、この型に樹脂を充填したものを、同じ条件で加熱し、冷却し、離型して形成される。
【0019】
接着部材2は、擬似見本Aの製造に際し、第1の中間成形体11と第2の中間成形体12との間に介在して、これらを接着するもので、セメダイン(登録商標)などの公知の接着剤や、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネイト(PC)ポリスルホン(PSF)、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂(EP)、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂(UP)などの接着性樹脂が用いられる。
【0020】
次に、上述した構成の擬似見本Aの製造方法について、図2〜図10を参照して説明する。まず、図2、図3は、樹脂Rとして熱可塑性樹脂の粉末を用いた例を示しており、同図に示したように、室温で固体である樹脂Rの適量を、成形型K内に満遍なく充填する。
【0021】
そして、図4に示したように、樹脂Rが充填された成形型Kを加熱炉F内に入れ、樹脂Rが融解して十分に流動する温度まで加熱をした後、加熱炉Fから成形型Kを取り出し、室温になるまで冷却する。なお、加熱および冷却時の経時的温度プロファイルは、擬似見本Aの製造工程を繰り返し行っても正確に再現できるように管理をする。
【0022】
そして、図5に示したように、冷却された成形型Kから形成された中間成形体1を離型して取り出し、これを第1の中間成形体11とする。
【0023】
次に、第2の中間成形体12にあっても、第1の中間成形体11と同様の操作により製造するものであるが、加熱炉F内の各所における経時的温度プロファイルが同じであれば、図4に示したように、複数の成形型K、K、・・・を用い、中間成形体1、1、・・・を一度にまとめて製造するようにしてもよい。
【0024】
そして、例えば図6〜図8に示したように、第1の中間成形体11の平面11a上に、接着剤などの接着部材2を塗布し、その上から第1および第2の二枚の中間成形体11、12の対応する平面11a、12aどうしを面対称となるように突き合わせ、この平面11a、12aどうしを接着部材2により接着して擬似見本Aを完成させる。
【0025】
ところで、図9、図10に示したように、接着部材2は、成形後に所定の厚さとなるように、接着性樹脂21であってもよく、図9に示したように、平面11aと平面12aとの間に接着性樹脂21を介在させて挟み込み、図10に示したように、第1の中間成形体11、接着性樹脂21、第2の中間成形体12の順に積層した構成とするようにしてもよい。
【0026】
また、本実施例にあっては、中間成形体1を成形する際、成形時の中間成形体1の上面が平面となるものについて例示したが、成形型Kの上面を平面(不図示)として中間成形体1の下面を平面に形成し、この平面どうしを接着部材2により接着するようにしてもよい。
【0027】
また、本実施例にあっては、中間成形体1を成形する際、上方が開放された成形型Kを用いたものを例示したが、図示していない上型を併用したり、射出成形のような密閉した成形型を用いるようにしてもよい。
【0028】
また、本実施例にあっては、樹脂Rとして、熱可塑性のものを用いた例について示したが、熱硬化性のものであってもよく、かかる場合、図2、図3で図示した粉末に代えて液状物(例えば、重合性モノマーに硬化剤(架橋剤)を配合したもの)を成形型Kに投入するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
A 擬似見本
K 成形型
R 樹脂
1 中間成形体
11 第1の中間成形体
12 第2の中間成形体
2 接着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性または熱硬化性を有する同一の樹脂を用い、同一の製造条件で形成された同一または略同一形状の略平板状の中間成形体であって、少なくとも一方の面が平面であるものを二枚用い、
前記二枚の中間成形体の対応する平面どうしを面対称となるように突き合わせ、前記平面どうしを、接着部材により接着することを特徴とする擬似見本の製造方法。
【請求項2】
同一の製造条件は、成形型が、同一の型であるか、または、略同一の型を用い、同じ条件で加熱し、冷却し、離型したものであることを特徴とする請求項1記載の擬似見本の製造方法。
【請求項3】
接着部材は、接着性樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の擬似見本の製造方法。
【請求項4】
擬似見本は、擬似食品であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の擬似見本の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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