説明

攪拌具

【課題】 水平回転操作時の攪拌抵抗を軽減し、空気混入を防ぎ周囲への生地飛散を抑えて均一に練り溶くことを可能とし、更に、攪拌具への生地付着が少なく、使用後の洗浄が容易な攪拌具を提供する。
【解決手段】 手動攪拌具の先端機能部の輪郭形状を、前方が開放され水平方向へ両腕をなす逆馬蹄形状とし、水平回転時の抵抗を軽減し空気の取り込みを抑え、攪拌対象物が凹湾曲内面形状の容器中心低部Eに集まる低速回転流動の特性を応用し、前方に開放口Gを有する逆馬蹄型の両腕形状により、流下集合する攪拌対象物を停滞させる事なくその両腕で取り込み攪拌をなし、抵抗を抑えた低速回転攪拌操作によって均一な攪拌を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水平回転時の攪拌抵抗を抑えた手動攪拌具の形状機能に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手動攪拌に使用される攪拌具においては、複数の硬線を半楕円形に歪曲させ、その端部をグリップ(握り柄)に収束させたホイッパー(泡立て具)に代表されるように、攪拌操作方向に対し直交する抵抗値を攪拌能力として期待する構造となっており、多くはそのせん断抵抗によって空気混入を促し泡立て攪拌を可能とするため、そのせん断細分力を機能評価の判断基準としている。
尚、電動回転翼等を利用した自動攪拌機やミキサー及びジュサーにおける機能評価も同様であり、回転方向に直交する抵抗数値が大きく係わってくる。
【0003】
一方、一般家庭や業務用厨房における粉状食材の適量攪拌時や調色作業における見本等の少量攪拌においては、上述する泡立て攪拌とは異なって周囲への飛散と泡立ちを避け、均一に且つ繊細な操作で練り溶くことを条件として求められることも多く、この場合は凹状湾曲内面を有する攪拌容器(ボール)及び凹状の受け皿等を用いて手動攪拌を強いられるが、その条件用途に即した抵抗を抑えた形状の専用攪拌具がないため、箸や細身の棒状攪拌具及びヘラ等を代用して同一方向へ滑らかな回転攪拌を行う方法が一般的となっている。
しかし、棒状攪拌具を使用した場合は容器の底部に沈殿する原料の均一混合が不完全になり易く、また、攪拌操作を急ぐあまり周囲への飛散と空気混入を招く結果となり、これらの方法での均一な混合攪拌には細心の要注が必要であった。
【0004】
このような、手動操作によって空気混入を制限し周囲への飛散を抑え、且つ均一混合を成す回転攪拌時の作動とその効力との関係は、手動操作によって容器内の攪拌対象物が一定範囲の低速回転を保持する条件下において、攪拌容器内面が凹面形状を有し擂り鉢状であることから、攪拌具の回転操作で容器底辺部の対象物が一旦は凹状湾曲面に添って外方向に押し上げられ、やがて外辺部の回転速度の低下によって自重に係る流動特性により容器底辺部へ流下集合し、その集合攪拌物を手動回転の任意操作で再度外方向に押し上げる調整連続運動といえる。
【0005】
よって、攪拌容器の内面形状が凹状湾曲面を有することに加え、一定範囲の低速による回転攪拌とその主体作動をなす攪拌機能部構造(以下、「攪拌機能部」という)の抵抗形状とが重要な要素となり、これら主要条件の中で攪拌容器形状と回転速度とについては現場調整の範囲としても、上述するように、水平回転時に生地への抵抗を抑えることを目的としつつも攪拌力を発揮する矛盾構造の専用攪拌具が必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、凹状湾曲内面を有する攪拌容器(ボール)又は凹形状の受け皿等を用いた攪拌操作において、粉状食材の適量を水で練り溶く際や少量の調色顔料を混合する際に使用する攪拌具先端の機能構造を、従来は性能評価の基準とされていた直交抵抗値を可能な限り抑え、抵抗の少ない機能構造とすることで空気混入と周囲への飛散を軽減し、且つ万遍なく均一な粒度及び含水量となる様に練り溶くと同時に、攪拌具先端部への生地付着が少なく使用後の洗浄が容易となる、逆馬蹄型両腕形状の攪拌具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
先ず、本攪拌具先端の攪拌機能部を構成する素材を弾性硬線Fとした場合、握り柄(グリップ)Aから所定の角度を有して発する単一線の連続曲線加工とし、その弾性硬線Fが水平方向へ湾曲加工されてなる輪郭形状が前方に開口部Gを有する両腕状をなし、再び握り柄(グリップ)A内に収束される水平方向へ展開する曲線加工による両腕形状とすることで、水平方向への回転操作による攪拌抵抗を軽減し、周囲への生地飛散を防ぐと共に、空気の取り込みによる泡立ちを抑える機能を有する。
【0008】
更に、凹状湾曲内面Iを有する攪拌容器を用いた低速回転攪拌操作において、攪拌対象物が容器の中心低部Eに集合する流動特性に対し、左右に展開し前方が開放する両腕を内方向に湾曲させて逆馬蹄型となすことで、回転方向を問わず容器底部における掻き込み回転攪拌を可能とする。
尚、連続する弾性硬線からなる本攪拌具の攪拌機能部は、攪拌対象物に適融した弾性と剛性とを共有することを含め、その底面輪郭外形を攪拌容器の凹状湾曲内面Eに倣う緩やかな半球面形状Jとし、容器底部での水平回転操作に対する抵抗値を極力抑えた構造とすると共に、その半球面倣い形状により容器底面における生地停滞に係る偏りを阻害する倣い効果が発揮される。図1、2参照
【0009】
尚、本攪拌具の攪拌機能部は主に弾性硬線Fの曲線加工で形成されるが、本発明の趣旨に沿う範囲で一定の攪拌効果を求める場合、硬線以外の樹脂及び金属版を素材とした成型加工によって前方に開口部Gを有し、水平方向に左右両腕が内方向に湾曲し逆馬蹄形状をなし、攪拌容器底辺部Eの凹状湾曲面に添う範囲で底辺部外面を半球面形状Jとすることで、例えば素材が弾性樹脂Hであっても、上述する左右両腕の内方向への湾曲形状と底部の凹状半球形状Jとの相乗効果により、攪拌具左右の両椀は十分な構造的強度が得られ、攪拌諸条件への対応範囲が拡大し本発明の趣旨とする機能成果が達成される。図3参照
【0010】
請求項1に記載するように、本攪拌具の構成素材を問わず、水平方向に展開される左右両腕を内方向に湾曲させて逆馬蹄型に形成された攪拌機能部は、握り柄(グリップ)Aの延長方向との所定角度を有し、その逆馬蹄型からなる攪拌機能部の開口部Gは握り柄(グリップ)A側より前方へ向って開放され、左右対称の両腕先端が内方向へ湾曲していることによって、その攪拌機能部が容器底辺部にあって回転作動をするにあたり、容器底辺部Eに集合する流動対象物に対する掻き込み混合の攪拌機能を発揮する。図1,3参照
【0011】
請求項2に記載するように、逆馬蹄型両腕形状からなる攪拌機能部の底部外面の全体輪郭形状を、攪拌容器底辺部Eの凹状湾曲内面に倣う半球面形状Jとし、その両腕形状からなる攪拌機能部の回転攪拌によって、低速の回転運動に伴う容器中心底辺部Eの生地停滞とその偏りを許さず、対象物に対する掻き込み機能が促進されて均一に攪拌混合する事が可能となる。
【0012】
尚、本攪拌具の構成素材が単一硬線による湾曲線加工の場合は、図2に示すように、両腕部をなす内側湾曲線Cと外側湾曲線Bとで構成する底部外面形状とが、両腕先端の折り返し部を基点に手元方向に向って上下に開放離間しつつ、全体の輪郭形状として容器の凹状湾曲内面に倣う曲線をもって形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本攪拌具の構成素材に係らず、先端形状が一方に開口部Gを有して水平方向に形成される逆馬蹄型の両腕形状であることは、回転方向及びその速度を問わず両腕形状の特性によって、容器最下部の底面Eに沈下停滞する対象物への掻き込み回転攪拌をなし、周囲への攪拌物の飛散を抑えて均一な攪拌機能を発揮する。
尚、本攪拌具の構成素材が単一硬線Fによる連続湾曲加工の場合、攪拌機能部は拌容器の最下部にあって生地に埋没した状態で回転作動し、硬線の弾力特性により凹状内面への倣い性能が発揮され、米等の粒状攪拌においても対象物を傷めずに良好な結果を得る事が出来る。
【0014】
更に、本攪拌具先端の逆馬蹄型両腕形状が、攪拌対象物の中に沈下した状態で容器底辺形状に添って水平方向への回転攪拌運動をする場合、容器底辺部にあっては攪拌機能部の手動回転により対象物の回転流動を任意に操作しつつ、露出して生地表層の抵抗を受けるのは2本の硬線Fまたは細身の支持アームKのみであり、例えば、回転攪拌作動が性急な条件下であっても攪拌物表層への抵抗が軽微のため、空気混入を抑えて良好な攪拌結果が得られる。
【0015】
本攪拌具の内側湾曲線Cと外側湾曲線Bとが、両腕先端を基点に手元方向へ上下に開放し離間をなすことから、その底部外面の離間部を挟持機能として利用することで、茹で麺等を絡め上げる麺掬いの機能が付加される。
尚、本攪拌具の攪拌機能部が平面展開の単純曲線形状であって、水切りが良く生地の付着が少なく、使用後の洗浄整理が容易となる特性を有することから、天婦羅などの揚げ物掬いとしても利便性を発揮することになる。
また、本発明の趣旨を遵守する攪拌機能部の構造条件であれば、その容器形状との倣い作動と抵抗軽減によって、手動攪拌具以外の自動設備においても同様の効果を発揮する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本攪拌具の試作実証によれば、素材構成をステンレス硬線とし、線径1.6ミリと2ミリとの二通りを湾曲加工して輪郭形状の直径を約7センチ程度とした結果、米研ぎや天婦羅生地用に小麦粉を練り溶く等の家庭調理用具として、その攪拌操作に良好な結果が得られた。
尚、本発明の趣旨に添う構成であれば素材を硬線に限定するものでなく、例えば、弾性フッソ樹脂を素材とする既存のお玉を逆馬蹄型両腕形状となる様に改良試作した結果、その両腕の先端が内方向へ湾曲し底辺部外面が半球曲面状となる攪拌機能部の形状構成によって、お好み焼等の流動性のある生地溶きにおいても良好な成果が得られ剛性不足の懸念も払拭されている。図3参照
【0017】
また、攪拌対象物と用途によって本攪拌具を構成する素材剛性の適用範囲が定まり、形状サイズと共に適応可能な範囲のアイテムを必要とし、例えば、線径0.8ミリのステンレス硬線を製品直径2.5センチとした試作実証において、少量の調色見本混合時に良好な結果を得ており、よって、線径0.5ミリ程度の硬線を製品直径約1センチ程度の極小寸法とした場合、各種研究室における少量溶液の混合実験等においても同様の結果が期待される。図4参照
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】硬線加工による本攪拌具の全体イメージ図
【図2】容器凹状底面と硬線加工本攪拌具の倣い形状断面イメージ図
【図3】弾性樹脂形成による本攪拌具の全体イメージ図
【図4】極小本攪拌具の全体イメージ図
【符号の説明】
【0019】
A グリップ(握り柄)
B 外側湾曲線
C 内側湾曲線
E 容器底辺部
F 硬線
G 開口部
H 弾性樹脂
I 攪拌容器
J 底部凹状半球形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状湾曲内面を有する容器(ボール)、又は、緩やかな凹形状の受け皿等を用いた攪拌操作時に使用する攪拌具であって、握り柄(グリップA)の先端に所定の角度を有して付設される攪拌機能部の形状構成において、その輪郭形状が握り柄側手元より前方に向って開口部(G)を有し、水平方向に展開して形成される左右両腕がそれぞれ内側に湾曲し、逆馬蹄型両腕形状を有していることを特徴とする攪拌具。
【請求項2】
前記攪拌具の逆馬蹄型両腕状を形成する攪拌機能部の底辺輪郭構造において、その底辺部全体の輪郭線が、攪拌容器の凹状湾曲内面に倣う曲線及び曲面加工が施され、半球曲面形状(J)を有していることを特徴とする請求項1に記載する攪拌具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−63851(P2010−63851A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262250(P2008−262250)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【特許番号】特許第4360561号(P4360561)
【特許公報発行日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(308013632)
【Fターム(参考)】