攪拌具
【課題】複数の線材で構成される攪拌部とその各線材の端部が固定される柄部を備えた攪拌具として、攪拌部の重量の増加や柔軟性の低下を招くことなく攪拌部の攪拌性能を向上させることができ、しかも使用後における攪拌部の洗浄がしやすくなる攪拌具を提供する。
【解決手段】攪拌部3Aを構成する複数の線材2の柄部4Aに近い側の領域となる根元側領域E1に存在する全部を、断面円形状の線材部分21として形成し、複数の線材の頭部側領域に存在する一部又は全部を、その少なくとも一部分について断面長方形状の線材部分22として形成し、かつ、その断面長方形状における長辺をその長辺に沿う延長線が柄部の取り付け部位の取り付け領域からほぼ垂直に立ち上がる筒状の仮想空間と交わる方向に向く状態になるよう配置し、断面長方形状の線材部分22を形成していない線材部分や線材を、断面円形状の線材部分21として形成している。
【解決手段】攪拌部3Aを構成する複数の線材2の柄部4Aに近い側の領域となる根元側領域E1に存在する全部を、断面円形状の線材部分21として形成し、複数の線材の頭部側領域に存在する一部又は全部を、その少なくとも一部分について断面長方形状の線材部分22として形成し、かつ、その断面長方形状における長辺をその長辺に沿う延長線が柄部の取り付け部位の取り付け領域からほぼ垂直に立ち上がる筒状の仮想空間と交わる方向に向く状態になるよう配置し、断面長方形状の線材部分22を形成していない線材部分や線材を、断面円形状の線材部分21として形成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の線材を組み合わせて構成される攪拌部を備えた攪拌具に関し、例えば、食材を攪拌する際に使用することができる攪拌具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の攪拌具は、一般に、その攪拌部が、金属等の材料からなる複数の線材を折り返す形状に曲げるとともにその各線材を互いにずらした状態で配置し、しかもその各線材の端部を取り付け領域に集めた状態で棒状等の形状からなる柄の取り付け部位に固定することにより構成されている。このような攪拌部を備えた攪拌具は、例えば、水等の液体と種々の食材をかき混ぜる、泡立てる等の攪拌作業を行う際に使用する、いわゆる調理用の攪拌具として多用されている。
【0003】
このような攪拌具は、その攪拌部を構成する複数の線材として、一般に断面形状が円形状である線材を使用している。このため、かかる断面形状の線材で構成される攪拌部は、攪拌対象の食材等の攪拌物のなかで移動するときの攪拌物に対する抵抗が小さくなるので、その攪拌性能が小さくなる傾向にある。
【0004】
この攪拌性能を向上させるためには、例えば、その線材の太さを太くする、その本数を増やす、複数の屈曲部を形成する等の対策が考えられる。しかし、このような対策では、線材を太くしたり或いはその本数を増やす場合には、攪拌部が重くなり、その柔軟性も損なわることになるので、取り扱い性の悪い攪拌具になってしまうという問題がある。また、複数の屈曲部を形成する場合には、屈曲部が増えるにつれて線材の全長が長くなって攪拌部が重くなることに加えて、その屈曲部に食材等が付着しやすくなって屈曲部の洗浄が困難になるという問題がある。
【0005】
従来においても、攪拌具として、例えば、非円形の断面形状を有する弾性被覆材で被覆された細長素子を有するキッチン用具が知られている(特許文献1)。このキッチン用具は、ハンドルと、少なくとも一端がハンドルに固定されている少なくとも1つのワイヤ状の可撓性細長部材とからなり、その細長部材が、細い可撓性素子と、食品や食品を含む表面と接触する非円形の周縁断面形状を有する被覆とからなるものである。特許文献1には、非円形断面形状が、一連の周縁の凸部及び凹部を含むものであり、V字形、花びら形、星形、正方形、歯車形及びそれらの組合せのうちから選択されるものであることが示されている。また、特許文献1には、このキッチン用具によれば、利用者の労力の増大を強いることなく、用具と容器または容器内の食品との接触度を高められることが示されている。
【0006】
また、攪拌具として、平板金をねじり螺旋状のループとして柄に複数本取り付けた泡立て器が知られている(特許文献2)。特許文献2には、この泡立て器によれば、攪拌すると、螺旋に沿って複雑な流れが起きて混ざり合い、また螺旋の裏側で空気が多く取り入られるようになり、きめ細かい混ぜ合わせができることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4035110号公報
【特許文献2】実用新案登録第3131949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のキッチン用具では、攪拌部の全体が非円形の断面形状を有する被覆がされた線材を用いて構成されているため、攪拌作業により食材が攪拌部全体にわたって付着しやすくなり、使用後における洗浄作業を線材の全体にわって細かく行う必要があり、その洗浄作業が煩雑なものになる。しかも、その線材の被覆材における非円形の断面形状がV字形、花びら形、星形、正方形、歯車形及びそれらの組合せという形状であるため、細かな凹部が存在する形状が多いものとなり、これにより線材には食材等の材料の一部が残存しやすくなり、衛生面で不安が残る。
【0009】
一方、特許文献2に記載の泡立て器では、攪拌部の全体が平板金の部材で構成されており、しかも、その部材の柄から離れた部分(実際の攪拌部)が螺旋状にねじられた形状になっているため、攪拌作業により食材が攪拌部全体の平板金に付着しやすくなり、使用後の洗浄作業を平板金の全体にわって細かく行う必要があり、その洗浄作業が煩雑なものになる。また、攪拌部を構成する部材が平板金であるため、その角部がほぼ直角で角張った形状になっている可能性が高く、その角部が泡立て時に食材などを入れた容器の内面等に接触したときにその内面等を傷付けやすくなる。なお、平板金の角部を研削して丸めることも可能であるが、その場合には、製造上の煩雑さやコストの増大を招いてしまう。
【0010】
そこで、この発明は、複数の線材で構成される攪拌部とその各線材の端部が固定される柄部を備えた攪拌具として、主に、攪拌部の重量の増加や柔軟性の低下を招くことなく攪拌部の攪拌性能を向上させることができ、しかも使用後における攪拌部の洗浄がしやすくなる攪拌具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明(A1)の攪拌具は、
複数の線材を折り返す形状にするとともにその各線材を互いにずらした状態で配置して構成される攪拌部と、前記攪拌部を構成する複数の線材の端部が取り付け領域内に集められて固定される取り付け部位を有する柄部とを備えた攪拌具であって、
前記複数の線材の前記柄部に近い側の領域となる根元側領域に存在する全部を、断面円形状の線材部分として形成し、
前記複数の線材の前記根元側領域を除く領域となる頭部側領域に存在する一部又は全部を、その少なくとも一部分について断面長方形状の線材部分として形成し、かつ、その断面長方形状における長辺をその長辺に沿う延長線が前記柄部の取り付け部位の取り付け領域からほぼ垂直に立ち上がる筒状の仮想空間と交わる方向に向く状態になるよう配置し、
前記頭部側領域に存在して前記断面長方形状の線材部分が形成されている線材のうち当該断面長方形状の線材部分が形成されていない残りの線材部分と前記頭部側領域に存在して前記断面長方形状の線材部分が形成されていない線材とを、断面円形状の線材部分として形成しているものである。
【0012】
上記線材は、その断面円形状の線材部分と断面長方形状の線材部分が中実の構造(内部に空洞がない構造)であるものに限らず、その線材部分の一方又は双方が管状等の中空構造のものであってもよい。また、上記断面長方形状は、例えば、後述するように断面長方形状における短辺等が丸みを帯びた辺で形成されて全体として長方形に近い形状を含むものである。
【0013】
この発明(A2)の攪拌具は、上記発明A1の攪拌具において、前記断面長方形状の線材部分は、その断面長方形状における長辺が直線状の辺であり、その断面長方形状における短辺が外側に突出する円弧状の辺であるものである。
【0014】
この発明(A3)の攪拌具は、上記発明A1又はA2の攪拌具において、前記断面長方形状の線材部分は、その断面長方形状における長辺どうしの間隔に相当する厚さが前記断面円形状の線材部分の断面円形状における外径よりも小さく、かつ、その断面長方形状における短辺どうしの間隔に相当する幅が前記断面円形状の線材部分の断面円形状における外径よりも大きくなるように形成されているものである。
【0015】
この発明(A4)の攪拌具は、上記発明A3の攪拌具において、前記断面長方形状の線材部分は、断面円形状からなる線材の一部を扁平させるよう加圧成形して形成されているものである。
【0016】
この発明(A5)の攪拌具は、上記発明A1からA4のいずれかの攪拌具において、前記断面長方形状の線材部分が形成されている線材は、前記折り返す形状の折り返し部分が前記断面円形状の線材部分として形成されているものである。
【0017】
この発明(A6)の攪拌具は、上記発明A1からA5のいずれかの攪拌具において、前記攪拌部は、前記複数の線材として前記頭部側領域に存在して前記折り返す形状の最も外側に離れた部分どうしを結ぶ直線の長さが異なる複数種の線材を混在させて配置して構成されているものである。
【0018】
この発明(A7)の攪拌具は、上記発明A1からA6のいずれかの攪拌具において、前記複数の線材の端部が、前記柄部の取り付け部位の取り付け領域内において、間隔をあけた2つの列を形成する状態に並べて配置されているものである。
【0019】
上記間隔をあけた2つの列を形成する状態とは、複数の線材の端部が柄部の取り付け部位において2つの列をなすよう配列された状態である。より具体的には、各線材の端部が例えば直線状、曲線状、ジグザグ状等に連なる列状に並べられ、しかもそのような列状に並べられた各線材の端部(群)が間隔をあけて対向する2つの列をなすように配分された状態である。
【0020】
上記間隔は、その間隔をあけて対向する2列状の線材端部の間に例えば歯ブラシ等の洗浄具や手指などを差し入れてその線材の端部等の洗浄作業を行うことを可能にするために必要となる。また、上記間隔は、2列のうち互いに最も接近する線材どうしの離間距離が少なくとも10mm以上、好ましくは12mm以上、更に好ましくは14mm以上の値になる間隔が好ましい。この間隔が10mm以上の場合は、2列状の線材端部の間に歯ブラシ(のブラシ毛が設けられている部分)を挿入することが可能となる。この間隔が12mm以上の場合は、挿入した歯ブラシを2列状の線材端部の間で回転させるように動かした洗浄作業を行うことが容易になる。この間隔が14mm以上の場合は、2列状の線材端部の間に手指などを入れることができるようになる。
【0021】
また、上記対向する2つの列の各列を形成する隣り合う線材の端部どうしの間隔は、適宜設定することができるが、例えば歯ブラシ等を洗浄具として使用して隣接する線材どうしの間を洗浄することができる観点からすると、0.5mm以上であることが好ましい。また、この隣り合う線材の端部どうしの間隔は、1〜2.5mm程度の範囲がより好ましく、更に、使用する線材の外形(前記断面円形状の線材部分における断面円形状の外形)の寸法に近似する寸法に設定することがより一層好ましい。このような寸法に各列の隣り合う線材の端部どうしの間隔を設定することによって、線材部分の内側の洗浄や柄部の取付け部位の洗浄がより行い易くなる。さらに、各列の隣り合う線材の端部どうしの間隔については、線材として比較的細い線材を使用する場合には比較的狭い寸法に設定し、また、線材として比較的太い線材を使用する場合には比較的大きい寸法に設定する。このような条件でその間隔の設定をした場合は、線材を取り付けるべき限られた領域である柄部の取付け部位の取り付け領域に対して、線材の取付け強度を維持しつつ線材の密度が高い配列を実現することができる。
【0022】
一方、上記対向する2つの列を形成する状態で柄部の取付け部位に配置するときの複数の線材は、その各線材の両端部のうち一方の端部が前記対向する2つの列の一方の列に配置され、その他方の端部が前記2つの列の他方の列に配置され、かつ、その各線材の両端部が前記2つの列の間における中心を挟んで対向する位置に存在する状態で配置されるように構成することが好ましい。このように構成した場合は、複数の線材における一部の線材の両端部を同じ列に配置する場合に比べて、1本の線材の折り返す形状に曲げる部分(ループ)が他の全ての線材に対して交差する状態になる攪拌部を形成することができる。この結果、その攪拌部の攪拌作業時に動かすべき方向性が特に限定されなくなって攪拌効果の高い攪拌具にすることができるほか、攪拌部の頭部の形状をほぼ半球に見える形態に形成することができる。さらに、前記2つの列の間における中心の上方の位置を通過するとともに互いにほぼ等しい角度で交差して放射状に広がる状態になるよう配置して形成することで、各線材の端部を2列の状態に配置する場合でも、従来の攪拌具における攪拌部の形態に近づけて違和感をなくすことができる。
【発明の効果】
【0023】
上記発明A1の攪拌具によれば、攪拌部の頭部側領域に存在する線材の一部又は全部が少なくとも一部に断面形状がほぼ長方形状であってそのほぼ長方形状の長辺が所定の方向に向く状態になるよう配置された断面長方形状の線材部分として形成され、攪拌部の根元側領域に存在する線材の全部がその断面円形状の線材部分として形成され、それ以外の線材部分や線材が断面円形状の線材部分として形成されているので、攪拌部の攪拌作業に主に必要となる部位に上記した構成からなる断面長方形状の線材部分が存在していることになり、これにより攪拌部の攪拌性能を向上させることができる。この攪拌部については、それを構成する線材について太くしたり、本数を増やしたり、あるいは複数の屈曲部を形成するという対策をとる必要がないので、攪拌部の重量の増加や柔軟性の低下を招くことがなく、その攪拌部の攪拌性能を向上させることができる。
【0024】
また、発明A1の攪拌具によれば、攪拌部の根元側領域に存在する線材のすべてが断面円形状の線材部分であるとともに、攪拌部の頭部側領域に存在する線材についても断面長方形状の線材部分を形成していない線材部分又は線材が断面円形状の線材部分であり、しかも、断面長方形状の線材部分の外観が単純な平板状の形状であるので、攪拌作業を行うときに線材全体にわたって食材などが付着しにくくなり、その使用後における攪拌部の洗浄作業がしやすくなる。
【0025】
上記発明A2の攪拌具では、攪拌部における断面長方形状の線材部分が上記した断面形状で構成されているので、その攪拌部の断面長方形状の線材部分の存在によって攪拌性能が向上することに加え、その断面長方形状の線材部分の長辺と短辺が交差する角部が攪拌時に食材等を入れる容器の内面や縁部等に接触しても傷つけないか又は傷つけにくくなる。この他にも、断面長方形状の線材部分に、食材などがさらに付着しにくくなり、使用後における断面長方形状の洗浄部分の洗浄作業がさらにしやすくなる。
【0026】
上記発明A3の攪拌具では、攪拌部における断面長方形状の線材部分が断面円形状の線材部分と対比して上記した断面形状の関係になるよう構成されているので、例えば断面長方形の線材部分の断面積を例えば断面円形状の線材部分の断面積に近づけることができるので、全体が断面円形状だけからなる線材で構成された攪拌部と比較してほぼ近い重量とすることができ、この結果、ほぼ近い重量を保持したままで攪拌部の攪拌性能をさらに向上させることができる。
【0027】
上記発明A4の攪拌具では、発明A3の攪拌具における攪拌部を構成する線材の断面長方形状の線材部分を比較的容易かつ安価に形成することができる。また、断面円形状からなる線材(原材料)を加圧成形して、断面長方形状の例えば板状の扁平な線材に加工するため、その断面長方形状の線材部分の断面積が原材料の線材の断面積とほぼ同等となり、全体が断面円形状の線材だけで構成される攪拌具とほぼ同じ重量にすることができ、また、その攪拌部の攪拌性能をさらに向上させることができる。
【0028】
上記発明A5の攪拌具では、複数の線材をその折り返し形状の折り返す部分で互いに上下方向にずらして交差させた状態で配置して攪拌部を構成する場合、その各線材の折り返す部分が交差する部位で最上位に位置する線材と最下位に位置する線材との間隔(距離)を短く抑えることができるとともに、重なり合う線材どうしが不要に引っ掛かりあうことがなく攪拌部の頭部側領域における線材部分の柔軟性を確保することができる。また、攪拌部の折り返す部分が断面円形状の線材部分であるため、攪拌作業において攪拌対象物を入れる容器の底面などに折り返す部分の一部が引っ掛かってしまうおそれがほとんどない。この結果、攪拌部による攪拌作業を良好に行うことが可能になり、またその線材の折り返し部分が交差する部位における洗浄がしやすくなる。
【0029】
上記発明A6の攪拌具では、攪拌部の頭部側領域に存在する線材部分の折り返す形状の最も外側に離れた部分どうしの間隔(距離)が異なった複数種の線材を混在させて配置しているため、攪拌部の頭部側領域を構成する線材が三次元的に多様な位置に存在して攪拌作業時に攪拌対象物と様々な位置で接触するようになる。これによっても、攪拌部の攪拌性能を向上させることができる。
【0030】
上記発明A7の攪拌具では、複数の線材の端部が柄部の取り付け部位に間隔をあけた2つの列を形成する状態で並べて配置されているので、その各線材の柄部に近い根元部分(付け根部分)の洗浄作業や、柄部の取り付け部位の取り付け領域内の洗浄作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態1に係る攪拌具を示す正面図である。
【図2】図1の攪拌具を示す右側面図である。
【図3】図1の攪拌具を示す上面図である。
【図4】(a)は図1の攪拌具のA−A線で切断したときの状態を示す一部断面説明図、(b)はその攪拌具のB−B線で切断したときの状態を示す一部断面説明図である。
【図5】図1の攪拌具で使用する第一線材を示し、(a)はその正面図、(b)は(a)のA−A線に沿う拡大断面図、(c)は(a)のB−B線に沿う拡大断面図、(d)は(a)のC−C線に沿う拡大断面図、(e)は(a)のD−D線に沿う拡大断面図である。
【図6】図4(b)の一部断面説明図における切断端面部を拡大して示す説明図である。
【図7】線材の板状の線材部分を拡大して示す断面図である。
【図8】線材の板状の線材部分の形成方法を示し、(a)は板状の線材部分の断面の状態について原材料の断面円形の線材と併せて示す説明図、(b)は板状の線材部分の形成方法の原理を示す説明図である。
【図9】図5の第一線材の製造方法を示し、(a)はその製造方法である加圧成形法の構成を示す説明図、(b)は加圧成形している状態を上面側から見たときの状態を示す説明図、(c)は(b)のN−N線に沿う概略断面図である。
【図10】(a)は図9の製造方法に用いる原材料としての線材の状態を示す正面図、(b)はその製造方法で得られた線材の状態を示す説明図、(c)は(b)の線材における板状の線材部分の棒状の線材部分に対する寸法関係を示す説明図である。
【図11】実施の形態2に係る攪拌具を示す右側面図である。
【図12】図11の攪拌具を示す上面図である。
【図13】図11の攪拌具で使用する第二線材を示し、(a)はその正面図、(b)は(a)のA−A線に沿う拡大断面図、(c)は(a)のB−B線に沿う拡大断面図、(d)は(a)のC−C線に沿う拡大断面図である。
【図14】図13の第二線材の製造方法を示し、(a)はその製造方法である加圧成形法の構成を示す説明図、(b)は加圧成形している状態を上面側から見たときの状態を示す説明図、(c)は(b)のN−N線に沿う概略断面図である。
【図15】(a)は図14の製造方法に用いる原材料としての線材の状態を示す正面図、(b)はその製造方法で得られた第二線材の状態を示す説明図である。
【図16】実施の形態3に係る攪拌具を示す右側面図である。
【図17】(a)は図16の攪拌具を示す上面図、(b)は図16のB−B線で切断した端面部などの状態を示す説明図である。
【図18】(a)は図16の攪拌具の攪拌部を構成する第三線材を示す説明図、(b)は図16の攪拌具の攪拌部を構成する第四線材を示す説明図である。
【図19】実施の形態4に係る攪拌具を示す正面図である。
【図20】図19の攪拌具を示す右側面図である。
【図21】図19の攪拌具を示す上面図である。
【図22】(a)は図19の攪拌具のA−A線で切断したときの状態を示す一部断面説明図、(b)はその攪拌具のB−B線で切断したときの状態を示す一部断面説明図である。
【図23】図22(b)の一部断面説明図における切断端面部を拡大して示す説明図である。
【図24】実施の形態5に係る攪拌具を示す右側面図である。
【図25】図24の攪拌具を示す上面図である。
【図26】(a)は図24の攪拌具のA−A線で切断したときの状態を示す一部断面説明図、(b)は図24の攪拌具のB−B線で切断したときの切断端面部を拡大して示す説明図である。
【図27】線材の板状の線材部分における断面形状の厚さと幅の比率の代表例を示す説明図である。
【図28】攪拌具を構成する他の線材(第六線材)の構成例を示し、(a)はその正面図、(b)は(a)のA−A線に沿う拡大断面図、(c)は(a)のB−B線に沿う拡大断面図、(d)は(a)のC−C線に沿う拡大断面図である。(a)はその攪拌具の要部(柄部と線材端部の取付け構造部分)を示す概略断面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図29】図28の第六線材の製造方法を示し、(a)はその製造方法である加圧成形法の構成を示す説明図、(b)は加圧成形している状態を上面側から見たときの状態を示す説明図、(c)は(b)のN−N線に沿う概略断面図である。
【図30】(a)は図30の製造方法に用いる原材料としての線材の状態を示す正面図、(b)はその製造方法で得られた第六線材の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」という)について添付の図面を参照しながら説明する。
【0033】
[実施の形態1]
図1から図4は、実施の形態1に係る攪拌具を示す。図1はその攪拌具を正面側から見たときの状態を示し、図2はその攪拌具を右側面側から見たときの状態を示し、図3は図1の攪拌具を上面から見たときの状態を示し、図4はその攪拌具におけるA−A線及びB−B線で切断した部分からそれぞれ見たときの状態を示し、図5はその攪拌具の攪拌部を構成する1つの線材及びその線材のA−A線、B−B線、C−C線及びD−D線でそれぞれ切断した端面部分をそれぞれ示している。
【0034】
実施の形態1に係る攪拌具1Aは、複数本の線材2で構成される攪拌部3Aと、各線材2の端部を固定する取り付け部位42Aを有する柄部4Aとを備えたものであり、例えば食材の攪拌、泡立て等の調理用攪拌具として使用される。攪拌部3Aは実際に攪拌作業に使用される予定の部分であり、柄部4Aは攪拌具1Aを使用する人が手でもつ柄の部分である。
【0035】
攪拌部3Aは、図1〜図3に示すように、複数の線材2を折り返す形状に曲げるとともに攪拌作用を発揮させるよう互いに交差させて上下にずらした状態で配置し、また各線材2の両端部を柄部4Aの取付け部位42Aの取り付け領域S(図4(a)参照)内に集めて埋没させた状態で固定することで形成されている。取り付け領域Sは、取付け部位42Aのうち攪拌部3Aを構成する複数の線材2の端部を実際に固定するために配置することが可能な領域である。
【0036】
攪拌部3Aでは、複数の線材2として、図4、図5等に示すように、柄部4に近い領域となる根元側領域E1に存在する部分の全域を断面形状が円形状である断面円形状の線材部分(換言すれば、棒状の線材部分)21として形成し、その根元側領域E1を除く領域となる頭部側領域E2に存在する部分の全域を断面形状がほぼ長方形状である断面長方形状の線材部分(換言すれば、板状の線材部分)22として形成してなる第一線材23が8本使用されている。図5(b)、(c)は断面長方形状の線材部分22の断面形状であるほぼ長方形状を示し、図5(d)は断面円形状の線材部分21の断面形状である円形状を示している。
【0037】
この8本の第一線材23A〜23Hはいずれも、その根元側領域E1になる断面円形状の線材部分21が、柄部4Aの取り付け部位42Aの表面42aからほぼ垂直に立ち上がって所定の距離L1だけ延びた後に外側に広がるように屈曲して互いに離れるよう直線状に延びる形状に成形されている。また、この第一線材23A〜23Hはいずれも、その頭部側領域E2になる断面長方形状の線材部分22が、断面円形状の線材部分21と接続されて互いに離れるように直線状に延びた後にほぼ半円弧状に湾曲させられた形状に成形されている。線材2の根元側領域E1とは、例えば、図1や図5に示すように、攪拌部3Aの全体の高さH(柄部4Aの上端部から頂点Pまでの距離)に対して柄部4Aの取り付け部位42Aの表面42aから約1/3前後の高さで設定されている領域である。
【0038】
ここで、攪拌部3Aにおける線材2の根元側領域E1の寸法については、攪拌部3Aの全体の高さHに対して、概ね1/5乃至4/5の範囲の高さで設定することができる。これは、根元側領域E1が全体の高さHの1/5未満となる高さでは、攪拌部3Aの全体の柔軟性が高すぎ攪拌操作がしづらくなるおそれがあり、また、根元側領域E1が攪拌部3Aの全体の高さHの1/5を超える高さの場合には、目的とする攪拌部3Aの攪拌、泡立て等の性能の向上効果が期待できなくなるからである。
【0039】
一方、攪拌部3Aの攪拌、泡立て等の効果(性能)を向上させる観点からは、攪拌部3Aにおける線材2の断面長方形状の線材部分となる頭部側領域E2については、例えば、攪拌部3Aの頂点Pからの距離が、攪拌部3Aの全体の高さHに対して、概ね1/5乃至2/3の範囲の領域に設定することで攪拌部3Aの攪拌、泡立て等の効果を向上させることができる。
【0040】
また、攪拌部3Aでは、図6に示すように、その第一線材23における断面長方形状の線材部分22の断面長方形状における長辺を、その長辺に沿う延長線(図中に点線で示す線)が柄部4Aの取り付け部位42Aの取り付け領域Sからほぼ垂直に立ち上がる(攪拌部3Aの頂点Pに向かって延びる)筒状の仮想空間Kと交わる方向に向く状態になるよう配置している。図6中の符号Saは、取り付け領域Sのほぼ中心点を示す。換言すれば、第一線材23における断面長方形状の線材部分22の断面長方形状における長辺22aのほとんどは、その長辺22aに沿う延長線が、取り付け領域Sの中心点Saから延びる放射線に対してほぼ平行する方向に向く状態で配置されているとも言える。
【0041】
線材23における断面長方形状の線材部分22は、図7に示すように、その断面形状であるほぼ長方形状における長辺22aが直線状の辺になっており、また、そのほぼ長方形状における短辺22bが外側に突出する円弧状の辺になっている。このように短辺22bが直線状の辺になっていないため、ここでは断面長方形状の線材部分22の断面形状について長方形状に近い形状であるという意味で「ほぼ長方形状」と称している。また、長辺22aと短辺22bの一方又は双方が例えば上記の円弧状の辺になっていたとしても、長辺及び短辺を有して全体としての断面形状が長方形に近い形状を呈していれば、その形状について「ほぼ長方形状(断面長方形状)」と称する。一方、根元側領域E1を構成する断面円形状の線材部分21についても、断面形状が必ずしも真円に近い円形である場合に限らず、断面形状が円形に近い楕円形状、多角形状等であっても、その周上の外径がほぼ同等に近い寸法であって全体として円形に近い形状を呈していれば、その断面形状を「断面円形状」と称する。
【0042】
このような断面長方形状の線材部分22は、図8に示すように、断面円形状の線材2の所要部分を、成形面が平面の1対の加圧板90,91の間において所要の圧力Fをかけて扁平させるように押しつぶして加圧成形することにより製作することができる。このように加圧成形することにより、断面形状が円形状の線材2は、その加圧板90,91の平面が接触して加圧される線材部分が平面状に成形され、その加圧板90,91が接触しない残りの線材部分が断面形状の円形状の一部である円弧状の形状が残されて曲面状に成形され、これにより、全体として扁平した状態に押し潰されて断面形状がほぼ長方形状である板状の形態になる。このとき平面状に成形された部分が断面長方形状の線材部分22の断面形状であるほぼ長方形状における長辺22aになり、その円弧状に残った状態に成形された部分が断面長方形状の線材部分22の断面形状であるほぼ長方形状における短辺22bになる。
【0043】
また、線材23における断面長方形状の線材部分22は、図7に示すように、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aどうしの間隔に相当する厚さ(d)とその断面形状のほぼ長方形状における短辺22bどうしの間隔に相当する幅(w)の比率(d:w)が約1:2(=d:w)となる断面形状になるよう設定されている。
【0044】
実施の形態1では、線材23として、直線状の形状のときの全長が約46cmである8本のステンレス製線材23A〜23Hを使用している。そして、各線材23はいずれも、その断面円形状の線材部分21が外径1.6mmの円形状からなる断面形状であり、その断面長方形状の線材部分22が長辺22aの間隔である厚さdが1.1mm、短辺22bの間隔である幅wが約2.2mmとなり全体としてほぼ長方形状からなる断面形状であるものを使用している。また、この第一線材23で構成される攪拌部3Aは、その全高さHが約19cmに設定され、第一線材23の根元側領域E1の高さが約7〜9cmに設定されている。
【0045】
柄部4Aは、所要の長さからなる棒状の柄本体41Aと、柄本体41Aの一端部に形成される線材2の端部を埋没させた状態で固定するための取付け部位42Aとで構成されている。
【0046】
実施の形態1では、柄部4Aとして、断面がほぼ楕円形である棒体からなる柄本体41Aと、その柄本体41Aの一端部を少し外側に広げて端部形状がほぼ長方形状となる取り付け部位42Aを有する構造のものを用いている。柄本体41Aは、例えば長辺が28mm×短辺が21mmのほぼ楕円形の断面形状からなり、長さが約11cmの棒状の形態のものを使用している。この柄本体41Aは、中空構造でなく、空洞がない中実構造である。取り付け部位42Aは、例えば、窪みと、線材2の端部を固定するよう取り付けたうえでその窪みに嵌め入れて固着する嵌合体で構成されている。取り付け部位42Aは、例えば長辺と短辺が共に曲線状であって長辺約33mm×短辺約30mmという寸法であるほぼ長方形状の断面形状からなり、長さが約2.5cmの外観の形態からなるものを使用している。取り付け部位42Aの取り付け領域Sは、その断面形状とほぼ同じ寸法及び形状になっている。柄部4Aは、その全体が例えばナイロン、ABS、ポリプロピレン等の合成樹脂を用いて成形することで作製される。ただし、柄部4Aの材質、寸法等については、その用途、使用環境等の条件に応じて任意に選定することができ、特に限定されるものでない。
【0047】
また、攪拌部3Aを構成する各線材23A〜23Hの両端部は、図4等に示すように、柄部4Aの取り付け部位42Aの取り付け領域S内において、間隔Lをあけた2つの直線状の列を形成する状態に並べて配置されている。なお、同じ列に配置される線材23どうしも間隔nをあけて配置されているが、その間隔nは2列の間隔Lに比べると小さい(n<L)。2列の間隔Lについては、各線材23の根元側領域(さらにその付け根部分)の内側や、柄部4Aの取り付け部位42Aの取り付け領域Sにおける列の間となる部分等を洗浄するための既製の歯ブラシ等の洗浄具(の洗浄作業部分)が少なくとも通過できる寸法にするとよい。実施の形態1では、間隔Lを12〜16mmの範囲内で設定している。
【0048】
根元側領域E1が断面円形状の線材部分21として、頭部側領域E2が断面長方形状の線材部分22として形成されている第一線材23は、例えば、次のようにして製造される。
【0049】
すなわち、この線材23は、図9(a)に示すように、原材料として断面形状が円形状の線材20(図10(a)参照)を使用し、その線材20のうち頭部側領域E2にすべき部分を、加圧成形金型9A,9Bの間に挟んで加圧成形することにより製造される。加圧成形金型9A,9Bは、成形面92が平面になっており、その端部の一部(線材2の根元側領域E1と頭部側領域E2の境界部分に相当する位置となる端部部分)に傾斜する切り欠き面(加圧調整成形部)93が形成されている。
【0050】
この製造は、図9(b)、(c)に示すように、原材料としての線材20を前記した折り曲げ形状などに予め成形したものを、加圧成形金型9A,9Bの間に頭部側領域E2となる部分が存在する状態に挟んで所要の圧力Fで加圧することで行う。これにより、その線材20の加圧成形金型9A,9Bの成形面92で加圧された部分が、図10(b)等に示すように、断面形状がほぼ長方形状になった断面長方形状の線材部分22として形成される。また、線材2の根元側領域E1と頭部側領域E2の境界部分24は、加圧成形金型9A,9Bの切り欠き面93により断面形状が円形状からほぼ長方形状に徐々に扁平して広がった形状として形成される(図5(e)参照)。なお、線材20の根元側領域E1に相当する部分は、加圧成形されないため、図10(b)等に示すように、断面形状が円形状である断面円形状の線材部分21となる。
【0051】
この結果、図5や図10(b)に示すような断面円形状の線材部分21と断面長方形状の線材部分22が混在する形状の線材23を比較的容易に得ることができる。また、断面長方形状の線材部分22については、その角部を丸めるための研削等の作業が不要であり、コスト的にも安価に形成することができる。このようにして製造された線材23の断面長方形状の線材部分22は、図10(c)に示すように、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aの間隔である厚さdが断面円形状の線材部分21の断面形状の円形状の外径Dよりも小さくなり、そのほぼ長方形状における短辺22bの間隔である幅wが断面円形状の線材部分21の外径Dよりも大きくなるという寸法関係になる。さらに、このように加圧成形により断面長方形状の線材部分22を形成した場合は、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aどうしの間隔に相当する厚さdとその断面形状のほぼ長方形状における短辺22bどうしの間隔に相当する幅wを比較的容易に調節することができ、厚さdと幅wの比率(d:w)を所要の値に設定した断面長方形状の線材部分22を容易に形成することが可能になる。
【0052】
そして、実施の形態1に係る攪拌具1Aは、次のようにして使用される。
【0053】
すなわち、攪拌具1Aは、例えば調理対象の食材を水等の液体と混ぜて攪拌する際に、その柄部4A(の柄本体41A)が使用者の手で持たれ、その攪拌部3Aの第一線材23のうち主に頭部側領域E2の部分が容器に収容された攪拌対象物である食材等のなかに入れられ、その状態において任意のかき混ぜる方向に動かされることによって使用される。これにより、食材等の攪拌対象物が攪拌部3Aの攪拌作用を受けて攪拌される。
【0054】
この攪拌作業では、攪拌部3Aの第一線材23の頭部側領域E2に存在する部分が断面長方形状の線材部分22として形成されているため、断面形状が円形状の線材で攪拌する場合に比べて、攪拌対象物に対する抵抗が大きくなり、しかも空気の取り込み量も増えるので、攪拌性能(泡立て性能を含む)が高まり、効率よく攪拌(泡立て)を行うことができる。
【0055】
また、複数の線材23における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aが攪拌部3Aの内部側に存在する筒状の仮想空間Kと交わる方向に向く状態で配置されているので、攪拌対象物のなかで柄部4Aをほぼ中心(軸)にして攪拌部3Aをほぼ円軌道を描くように回転移動させると、その断面長方形状の線材部分22の長辺22aが移動する後方に小さな渦(例えばカルマン渦)が発生しやすくなり、これによっても攪拌性能が高まり、効率のよい攪拌を行うことが可能になる。
【0056】
さらに、複数の線材23における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状がほぼ長方形状になるよう形成されているため、前記した攪拌性能が向上することに加え、そのほぼ長方形状における長辺22aと短辺22bが交差する角部が丸みを帯びた形状となっていて直角の形状になっていないので、その角部が攪拌対象物を入れた容器の内面や縁部にたとえ接触した場合であっても、その内面や縁部などを傷つけることがないか又は傷つけにくくなる。
【0057】
また、攪拌具1Aは、その使用した後に攪拌部3A等が洗浄される。
【0058】
この際、攪拌具1Aにおいては、その攪拌部3Aの根元側領域E1に存在する第一線材23のすべてが断面円形状の線材部分21として形成されており、その頭部側領域E2に存在する線材23のすべてが平板状で単純な断面長方形状の線材部分22として形成されているため、線材23の全体にわたって食材等の攪拌対象物が付着しにくく、しかも、その使用後における洗浄作業がしやすく、その付着した攪拌対象物を容易に取り除くこともできる。さらに、断面長方形状の線材部分22は、その断面形状のほぼ長方形状における短辺が外側に突出した円弧状の形状になっているので、それによっても断面長方形状の線材部分22に攪拌対象物が付着しにくく、しかも、付着した攪拌対象物を容易に取り除くこともできる。
【0059】
また、この攪拌具1Aでは、攪拌部3Aの第一線材23の端部が柄部4Aの取り付け部位42Aにおいて、間隔Lをあけた直線状の2つの列を形成する状態で配置されているので、その2つの列を形成するように配置された線材23の端部どうしの間に間隔Lに対応して貫通する空間Qが存在する。このため、攪拌部3Aにおける各線材23(A〜H)の根元側領域E1における部分の洗浄に際しては、その空間Qに対して歯ブラシ、洗浄スポンジ等の洗浄具の洗浄作業部分(例えば歯ブラシの場合はそのブラシ毛が設けられた部分)を差し入れた状態で洗浄作業を行うことができる。また、その線材23の端部が形成する2つの列の間となる柄部4Aの取り付け部位42Aの表面42aについても、洗浄具の洗浄作業部を差し入れた状態で洗浄作業を行うことができる。
【0060】
さらに、空間Qは、図2に示すように、柄部4Aの取付け部位42Aの表面42aから少なくとも攪拌部3Aを構成する各第一線材23(A〜H)の折り返す形状に曲げる最も外側となる部分(23e)に至るまでの範囲において、2列の間隔Lを保持してほぼ直線状に立ち上がる形状の隙間空間Q´として存在している。また、この直線状に長く延びる隙間空間Q´は、2つの直線状の列を形成する線材23(A〜H)のうち各列の両端部に配置されて対峙する線材23(A,H)が、2列の間隔Lを保ちつつほぼ平行に立ち上がる形状に設定されていることで形成されている。この隙間空間Q´は、洗浄具を用いた洗浄作業を行うための作業空間としても利用することができ、その洗浄作業をより一層行い易くする。
【0061】
この他にも、攪拌部1Aにおいては、線材23の断面長方形状の線材部分22の断面形状(厚さdと幅w)が断面円形状の線材部分21の断面形状(外径D)と対比して前述したような特定の寸法関係にあるため、断面長方形状の線材部分22の柔軟性を確保することができ、これによっても良好な攪拌性能が得られる。また、線材23の断面円形状の線材部分21と断面長方形状の線材部分22との境界部24は、厚さがなめらかに変化して切り替わるような形状(図5(e))で形成されているため、その境界部24が急に厚さが異なる断面長方形状の線材部分22になる形状に形成された場合に比べて、応力集中が緩和されて曲がり難くなり、これにより機械的な強度が保たれ、耐久性も確保される。
【0062】
[実施の形態2]
図11から図13は、実施の形態2に係る攪拌具を示す。図11はその攪拌具の右側面側から見たときの状態を示し、図12はその攪拌具の上面側から見たときの状態を示し、図13はその攪拌具の攪拌部を構成する線材の構成を示している。
【0063】
実施の形態2に係る攪拌具1Bは、その攪拌部3を構成する線材2として異なる構成の線材25を適用している。これ以外については、前記した実施の形態1に係る攪拌具1Aと同じ構成になっている。このため、図11に示す攪拌具1BのA−A線で切断したときの状態とそのB−B線で切断したときの状態は、図示していないが、実施の形態1に係る攪拌具1AのA−A線及びB−B線でそれぞれ切断したときの状態(図4)とほぼ同じ内容(図4の各分図を右方向に90°回転させた状態)になる。
【0064】
線材25は、図13等に示すように、頭部側領域E2に存在する部分のうち折り返す形状の折り返し部分26を前記した断面形状が円形状である断面円形状の線材部分21として形成している点で実施の形態1における第一線材23と大きく異なっており、それ以外についてはほぼ同じ構成になっている。つまり、この第二線材25は、その根元側領域E1に存在する部分を断面円形状の線材部分21として形成し、その頭部側領域E2に存在する部分(折り返し部分26を除く)を断面長方形状の線材部分22として形成し、その頭部側領域E2に存在する部分のうち折り返し部分26を断面円形状の線材部分21として形成している。
【0065】
また、実施の形態2では、8本のステンレス製の第二線材25A〜25Hを使用している。その各線材25はすべて、その断面円形状の線材部分21がいずれも直径1.8mmの円形状からなる断面形状であり、その板状の線材部分22が長辺22aの間隔である厚さdが1.1mm、短辺22bの間隔である幅wが2.8mmとなり、全体としてほぼ長方形状からなる断面形状であるものを使用している。このため、線材25における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状の厚さd及び幅wの比率(d:w)が約1:2.6となる断面形状になっている。
【0066】
このような第二線材25A〜25Hで構成される攪拌部3Bは、図11と図12に示すように、その各線材25を折り返す形状の折り返し部分26で互いに交差させて上下にずらした状態で配置し、またその各線材25の両端部を柄部4Aの取付け部位42Aの取り付け領域S内に間隔Lをあけた2つの直線状の列を形成するように集めて埋没させた状態で固定することによって形成されている。
【0067】
この攪拌部3Bでは、その各線材25の折り返す部分26が互いに交差する部位において最上位に位置する線材25h(この例では線材25H)とその最下位に位置する線材25k(この例では線材25D)との間隔(交差部の高低差)J2を、実施の形態1における攪拌部3Aのように断面長方形状の線材部分22が互いに交差することになる交差部の高低差J1(図2)に比べて小さくすること(J2<J1)ができる。
【0068】
また、この攪拌部3Bでは、その各線材25の折り返す部分26が断面円形状の線材部分21どうしで交差するので、実施の形態1における攪拌部3Aのように断面長方形状の線材部分22どうしが交差する場合のように線材どうしが不要に引っ掛かってしまうことがなく、頭部側領域E2における線材部分の柔軟性を確保することができる。また、攪拌部3Bの最高位である頂点Pとその周辺部分(要するに折り返し部分26)に断面円形状の線材部分21が存在するので、その頂点Pとその周辺部分に断面長方形状の線材部分22が存在する場合に比べて、頂点Pやその周辺部分に存在する線材部分21が攪拌具1Bの取り扱い中に他のものに引っ掛かることが少なくなり、引っ掛かることで曲げられて変形させられてしまうおそれも少なくなる。
【0069】
さらに、この攪拌部3Bは、その折り返す部分26の最上位に位置する線材25hなどが断面円形状の線材部分21であるため、攪拌対象物を入れた容器の底部などに不要に引っ掛かるおそれがない。このため、この攪拌部3Bによれば、攪拌作業を良好に行うことができ、また、その折り返し部分26の交差する部位における洗浄も行いしやすい。
【0070】
そして、実施の形態2に係る攪拌具1Bによる攪拌作業では、実施の形態1に係る攪拌具1Aの場合とほぼ同様に、攪拌部3Bの第二線材25の頭部側領域E2に存在する主な部分(折り返し部分26を除く部分)が断面長方形状の線材部分22として形成されているため、攪拌性能(泡立て性能を含む)が高まり、効率よく攪拌(泡立て)を行うことができる。
【0071】
また、複数の線材25における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aが実施の形態1の場合と同様に特定の方向に向く状態で配置されているので、これによっても攪拌性能が高まり、効率のよい攪拌を行うことが可能になる。
【0072】
さらに、複数の線材25における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状がほぼ長方形状になるよう形成されているため、前記した攪拌性能が向上することに加え、そのほぼ長方形状における長辺22aと短辺22bが交差する角部が攪拌対象物を入れた容器の内面や縁部にたとえ接触した場合であっても、その内面や縁部などを傷つけることがないか又は傷つけにくくなる。
【0073】
また、攪拌具1Bは、その使用した後に攪拌部3B等が洗浄される。
【0074】
この際、攪拌具1Bにおいては、その攪拌部3Bの根元側領域E1に存在する第二線材25のすべてが断面円形状の線材部分21として形成されており、その頭部側領域E2に存在する線材25の主な部分(折り返し部分26を除く部分)が平板状で単純な断面長方形状の線材部分22として形成されており、その折り返し部分26のすべてが断面円形状の線材部分21として形成されている。このため、第二線材25の全体にわたって食材等の攪拌対象物が付着しにくく、しかも、その使用後における洗浄作業がしやすく、その付着した攪拌対象物を容易に取り除くこともできる。
【0075】
また、攪拌具1Bの攪拌部3Bにおける他の攪拌性能の向上や洗浄のしやすさは、実施の形態1の攪拌部3Aついて説明した同じ理由により、ほぼ同様に得られる。
【0076】
実施の形態2における第二線材25は、例えば、次のようにして製造される。
【0077】
すなわち、線材25は、図14(a)に示すように、原材料として断面形状が円形状の線材20(図15(a)参照)を使用し、その線材20のうち折り返し部分26を除く頭部側領域E2になる部分を、加圧成形金型9C,9Dの間に挟んで加圧成形することにより製造される。加圧成形金型9C,9Dは、その成形面92が平面になっており、その端部の一部(線材2の根元側領域E1と頭部側領域E2の境界部分及び頭部側領域E2と折り返し部分26の境界部分にそれぞれ相当する位置となる端部部分)に傾斜する切り欠き面93が形成されている。
【0078】
この製造は、図14(b)、(c)に示すように、原材料としての線材20を前記した折り曲げ形状などに予め成形したものを、加圧成形金型9C,9Dの間に折り返し部分26を除く頭部側領域E2となる部分が存在する状態に挟んで所要の圧力Fで加圧することで行う。これにより、その線材20の加圧成形金型9C,9Dの成形面92で加圧された部分が、図15(b)等に示すように、ほぼ長方形状の断面形状になった断面長方形状の線材部分22として形成される。また、線材2の根元側領域E1と頭部側領域E2の境界部分24と頭部側領域E2と折り返し部分26の境界部分は、加圧成形金型9C,9Dの切り欠き面93により断面形状が円形状からほぼ長方形状に徐々に扁平して広がった形状として形成される(図5(e)参照)。なお、線材20の根元側領域E1に相当する部分は、加圧成形されないため、図15(b)等に示すように、断面形状が円形状である断面円形状の線材部分21となる。この結果、図13や図15(b)に示すような形状の第二線材25を比較的容易に得ることができる。
【0079】
[実施の形態3]
図16及び図17は、実施の形態3に係る攪拌具を示す。図16はその攪拌具の右側面側から見たときの状態を示し、図17はその攪拌具の上面から見たときの状態などを示している。
【0080】
実施の形態3に係る攪拌具1Cは、その攪拌部3を構成する線材2として異なる構成の線材27,28を適用している。これ以外については、前記した実施の形態1に係る攪拌具1Aと同じ構成になっている。このため、図16に示す攪拌具1BのA−A線で切断したときの状態は、実施の形態1に係る攪拌具1AのA−A線で切断したときの状態(図4(a))とほぼ同じ内容(図4の分図(a)を右方向に90°回転させた状態)になる。
【0081】
攪拌具1Cにおける攪拌部3Cは、2種類の線材27,28(第三線材27と第四線材28)を用いて構成している。この第三線材27と第四線材28は、基本的に、実施の形態1における線材23と同様に根元側領域E1に存在する部分のすべてを断面円形状の線材部分21として形成し、頭部側領域E2に存在する部分のすべてを断面長方形状の線材部分22として形成したものであるが、その折り返し形状の最も外側に位置する部分26eどうし及び部分27eどうしをそれぞれ結ぶ直線の長さ(折り返し形状の最大幅)M1,M2が異なる寸法に設定されている点で相違するものである。つまり、第三線材27は、その折り返し形状の最大幅M1が、第四線材28の折り返し形状の最大幅M2よりも広い寸法(M1>M2)になるように設定したものである。
【0082】
また、実施の形態3では、第三線材27として4本(26A〜26D)使用し、第四線材28として4本(27A〜27D)使用している。第三線材27と第四線材28はいずれも、実施の形態1における第一線材23と同様に、その断面円形状の線材部分21が直径1.6mmの円形状からなる断面形状であり、その断面長方形状の線材部分22が長辺22aの間隔である厚さd=1.1mm、短辺22bの間隔である幅w=2.2mmとなって全体としてほぼ長方形状からなる断面形状であるものであるが、第三線材27の折り返し形状の最大幅M1が約80mmに設定され、第四線材28の折り返し形状の最大幅M2が約60mmに設定されている。
【0083】
このような第3線材27A〜27D及び第四線材28A〜28Dで構成される攪拌部3Cは、図16と図17に示すように、その2種類の線材27,28を交互に並べて配置するとともに、その各折り返す形状の折り返し部分で互いに交差させて上下に適宜配分してずらした状態で配置することで形成されている。また、その各線材27,28の両端部を柄部4Aの取付け部位42Aの取り付け領域S内に間隔Lをあけた2つの直線状の列を形成するように集めて埋没させた状態で固定することによって形成されている。
【0084】
この攪拌部3Cでは、4本の第三線材27A〜27Dの各折り返し部分の最外部27eを通過するように形成される第一仮想円T1と、4本の第四線材28A〜28Dの各折り返し部分の最外部28eを通過するように形成される第二仮想円T2が存在する形態になる。第一仮想円T1の直径は、第三線材27の折り返し形状の最大幅M1にほぼ相当する。第二仮想円T2の直径は、第四線材28の折り返し形状の最大幅M2にほぼ相当する。
【0085】
このため、この攪拌部3Cは、例えば、柄部4Aの取り付け領域Sの中心点Saを中心(回転軸)にして回転させた場合、各線材27,28の頭部側領域E2に存在して折り返し形状の最外部27e、28eとその前後に存在する断面長方形状の線材部分22が、前記第一仮想円T1と第二仮想円T2に沿った2種類の円軌道をそれぞれ別々に移動するよう動くことになるので、その断面長方形状の線材部分22が1つの円軌道のみを移動する攪拌部(実施の形態1〜2のような攪拌部3A,3B)に比べて、攪拌することができる幅がおよそ2倍に広がるようになり、この結果、その攪拌性能が大幅に向上するようになる。
【0086】
そして、実施の形態3に係る攪拌具1Cによる攪拌作業では、基本的に、実施の形態1に係る攪拌具1Aの場合とほぼ同様に、攪拌部3Cを構成する第三線材27及び第四線材28の頭部側領域E2にそれぞれ存在する部分が断面長方形状の線材部分22として形成されているため、攪拌性能(泡立て性能を含む)が高まり、効率よく攪拌(泡立て)を行うことができる。この攪拌性能の向上に加えて、上記したような各線材27,28の断面長方形状の線材部分22が2つの円軌道を別々に移動するようになることで、その攪拌性能が大幅に向上するようになる。
【0087】
また、2種類の線材27,28における断面長方形状の線材部分22はいずれも、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aが実施の形態1の場合と同様に特定の方向に向く状態で配置されているので(図17(b)参照)、これによっても攪拌性能が高まり、効率のよい攪拌を行うことが可能になる。
【0088】
さらに、2種類の線材27,28における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状がほぼ長方形状になるよう形成されているため、前記した攪拌性能が向上することに加え、そのほぼ長方形状における長辺22aと短辺22bが交差する角部が攪拌対象物を入れた容器の内面や縁部にたとえ接触した場合であっても、その内面や縁部などを傷つけることがないか又は傷つけにくくなる。
【0089】
また、攪拌具1Cは、その使用した後に攪拌部3B等が洗浄される。
【0090】
この際、攪拌具1Cにおいては、その攪拌部3Cの根元側領域E1に存在する第三線材27及び第四線材28の部分のすべてが断面円形状の線材部分21として形成されており、その頭部側領域E2に存在する線材27,28のすべての部分が平板状で単純な断面長方形状の線材部分22として形成されているため、線材27,28の全体にわたって食材等の攪拌対象物が付着しにくく、しかも、その使用後における洗浄作業がしやすく、その付着した攪拌対象物を容易に取り除くこともできる。
【0091】
また、攪拌具1Cの攪拌部3Cにおける他の攪拌性能の向上や洗浄のしやすさは、実施の形態1の攪拌部3Aについて説明した同じ理由により、ほぼ同様に得られる。
【0092】
[実施の形態4]
図19から図21は、実施の形態4に係る攪拌具を示す。図19はその攪拌具を正面側から見たときの状態を示し、図20はその攪拌具を右側面側から見たときの状態を示し、図21は図19又は図20の攪拌具を上面側から見たときの状態を示している。
【0093】
実施の形態4に係る攪拌具1Dは、その柄部4として異なる構成の柄部4Bを適用しているとともに、その柄部4Bに対応して攪拌部3を構成する複数の線材2の配置について一部異ならせている。これ以外については、前記した実施の形態1に係る攪拌具1Aと同じ構成になっている。攪拌具1Dの攪拌部3Dは、実施の形態1における攪拌部3Aと同様に、8本の第一線材23(図5から図7等を参照)で構成されている。
【0094】
攪拌具1Dの柄部4Bは、断面が約25mmの円形であって長さが約11cmの棒体からなる柄本体41Bと、その柄本体41Bの一端部を少し外側に広げて端部形状が円形となる取り付け部位42Bを有する構造のものを用いている。取り付け部位42Bは、例えば、窪みと、線材23の端部を固定するよう取り付けたうえでその窪みに嵌め入れて固着する嵌合体で構成されている。取り付け部位42Bは、例えば直径28mmの円形状の断面形状からなり、長さが約2.5cmである外観の形態からなるものを使用している。取り付け部位42Bの取り付け領域Sは、その断面形状とほぼ同じ寸法及び形状になっている。
【0095】
攪拌部3Dは、図19と図22に示すように、8本の第一線材23A〜23Hを折り返す形状の折り返し部分で互いに交差させて上下にずらした状態で配置し、またその各線材23の両端部を柄部4Bの取付け部位42Bの円形状の取り付け領域S内に円を形成するよう集めて埋没させた状態で固定することによって形成されている。各線材23の端部は、図22(a)に示すように、互いに同じ間隔をあけて円形を形成するように並べた状態で配置されている。
【0096】
そして、実施の形態4に係る攪拌具1Dによる攪拌作業では、基本的に、実施の形態1に係る攪拌具1Aの場合とほぼ同様に、攪拌部3Dの線材23の頭部側領域E2に存在する部分のすべてが断面長方形状の線材部分22として形成されているため、攪拌性能(泡立て性能を含む)が高まり、効率よく攪拌(泡立て)を行うことができる。
【0097】
また、攪拌部3Dを構成する第一線材23はいずれも、図23に示すように、その断面長方形状の線材部分22の断面形状であるほぼ長方形状における長辺を、その長辺に沿う延長線(点線)が柄部4Bの取り付け部位42Bにおける円形の取り付け領域Sからほぼ垂直に立ち上がる円筒状の仮想空間K2と交わる方向に向く状態になるように配置している。換言すれば、第一線材23における断面長方形状の線材部分22の断面長方形状における長辺22aのすべては、その長辺22aに沿う延長線が、円形の取り付け領域Sの中心点Saから延びる放射線に対してほぼ平行する方向に向く状態で配置されているとも言える。このため、この攪拌部3Dにおいても、その断面長方形状の線材部分22の断面形状であるほぼ長方形状における長辺22aが実施の形態1の場合と同様に特定の方向に向く状態で配置されているので(図23参照)、これによっても攪拌性能が高まり、効率のよい攪拌を行うことが可能になる。
【0098】
さらに、第一線材23における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状がほぼ長方形状になるよう形成されているため、前記した攪拌性能が向上することに加え、そのほぼ長方形状における長辺22aと短辺22bが交差する角部が攪拌対象物を入れた容器の内面や縁部にたとえ接触した場合であっても、その内面や縁部などを傷つけることがないか又は傷つけにくくなる。
【0099】
また、攪拌具1Dは、その使用した後に攪拌部3D等が洗浄される。
【0100】
この際、攪拌具1Dにおいては、その攪拌部3Dの根元側領域E1に存在する線材23の部分のすべてが断面円形状の線材部分21として形成されており、その頭部側領域E2に存在する線材23のすべての部分が平板状で単純な断面長方形状の線材部分22として形成されているため、線材23の全体にわたって食材等の攪拌対象物が付着しにくく、しかも、その使用後における洗浄作業がしやすく、その付着した攪拌対象物を容易に取り除くこともできる。
【0101】
[実施の形態5]
図24と図25は、実施の形態5に係る攪拌具を示す。図24はその攪拌具の右側面側から見たときの状態を示し、図25はその攪拌具の上面側から見たときの状態を示している。
【0102】
実施の形態5に係る攪拌具1Eは、その攪拌部3を構成する線材2として実施の形態1における第一線材23と全域の断面形状が円形状からなる第五線材20とを組み合わせて適用しているとともに、その攪拌部3を構成する複数の線材2の端部の柄部4に対する配置について一部異ならせている。これ以外については、前記した実施の形態1に係る攪拌具1Aの攪拌部3Aや実施の形態4に係る攪拌具1Dの柄部4Bと同じ構成になっている。
【0103】
第五線材20は、例えば、実施の形態1における第一線材23を製造するときに使用する原材料としての線材20(図10(a)参照)である。この線材20は、その根元側領域E1と頭部側領域E2に存在する部分のすべてを前記したような断面円形状の線材部分21として形成したものである。実施の形態5では、第五線材20として断面形状が直径1.6mmの円形状のステンレス製の線材を使用している。
【0104】
攪拌具1Eの攪拌部3Eは、6本の第一線材23A〜23Fと2本の第五線材20A,20Bを用いて構成されている。具体的には、図24、図25、図26(a)等に示すように、その第五線材20Aと6本の第一線材23A〜23Fと第五線材20Bをこの順に並べて、その各線材23,20を折り返す形状の折り返し部分で互いに交差させて上下にずらした状態で配置したうえで、その各線材23,20の両端部を、柄部4Bの取付け部位42Bの円形の取り付け領域S内に間隔L2をあけた2つの円弧曲線状の列が形成されるように集めた状態にして最後に柄部4Bの取り付け部位42Bに埋没させた状態で固定することによって形成されている。
【0105】
この攪拌部3Eでは、柄部4Bの取り付け部位42Bの円形の取り付け領域S内において、2本の第五線材20A,20Bの両端部が間隔L2をあけて対峙するような状態に配置され、残りの6本の第一線材23A〜23Fの両端部が第五線材20A,20Bの両端部をそれぞれ起点にして外側に膨らむ円弧の曲線を描くような2つの列を形成するように並べた状態で配置されている(図26(a))。また、攪拌部3Eでは、2本の第五線材20A,20Bが、間隔L2をあけて柄部4Bの取り付け部位42Bからほぼ垂直の状態で平行に立ち上がった後、頭部側領域E2の最高位の頂点P付近で交差するような状態で取り付けられている(図24、図25)。上記間隔L2は約10mmであり、各線材23,20の両端部が円弧曲線状に配置されている円弧の半径は約12mmである。
【0106】
そして、実施の形態5に係る攪拌具1Eによる攪拌作業では、実施の形態1に係る攪拌具1Aの場合とほぼ同様に、攪拌部3Eを構成する6本の第一線材23の頭部側領域E2に存在する部分のすべてが断面長方形状の線材部分22として形成されているため、攪拌性能(泡立て性能を含む)が高まり、効率よく攪拌(泡立て)を行うことができる。
【0107】
また、攪拌部3Eを構成する6本の第一線材23における断面長方形状の線材部分22は、図26(b)に示すように、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aを、実施の形態4の場合(図23)と同様に特定の方向に向く状態で配置されているので、これによっても攪拌性能が高まり、効率のよい攪拌を行うことが可能になる。
【0108】
さらに、6本の第一線材23における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状がほぼ長方形状になるよう形成されているため、前記した攪拌性能が向上することに加え、そのほぼ長方形状における長辺22aと短辺22bが交差する角部が攪拌対象物を入れた容器の内面や縁部にたとえ接触した場合であっても、その内面や縁部などを傷つけることがないか又は傷つけにくくなる。
【0109】
また、攪拌部3Eは、それを構成する2本の第五線材20A,20Bが攪拌部3Eの頂点Pになる部分で断面円形状の部分どうしを交差させているので、実施の形態1や実施の形態4における攪拌部3A、3Dのように各線材の断面長方形状の線材部分22どうしを交差させている場合と比較して、線材どうしが不要に引っ掛かってしまうことを防止できる。また、攪拌部3Eは、その最高部位である頂点Pの周辺部分に第五線材20A,20Bの断面円形状の部分が存在するので、攪拌対象物を入れた容器の底部などに不要に引っ掛ったり傷つけたりするおそれがなくなる。
【0110】
また、攪拌具1Eは、その使用した後に攪拌部3E等が洗浄される。
【0111】
この際、攪拌具1Eにおいては、その攪拌部3Eの根元側領域E1に存在する線材23,20のすべてが断面円形状の部分の線材部分21として形成されており、その頭部側領域E2に存在する線材20を除く線材23の部分のすべてが平板状で単純な断面長方形状の線材部分22として形成されているため、各線材23,20の全体にわたって食材等の攪拌対象物が付着しにくく、しかも、その使用後における洗浄作業がしやすく、その付着した攪拌対象物を容易に取り除くこともできる。
【0112】
また、攪拌具1Eの攪拌部3Eにおける他の攪拌性能の向上や、線材の取付け部位42Bの空間Q及び直線状に立ち上がる形状の隙間空間Q´の存在等による洗浄のしやすさは、実施の形態1の攪拌部3Aについて前述した理由と同じ理由により、ほぼ同様に得られる。特に、攪拌部3Eを構成する線材23,20の両端部を柄部4Bの円形の取り付け領域Sに対して間隔L2をあけた円弧曲線状の2つの列を形成するように配置しているため、実施の形態4に係る攪拌具1Dの攪拌部3Dに比べて、その各線材23,28の根元側領域E1に存在する部分の清浄作業がしやすくなり、その部分に付着した攪拌対象物を容易に取り除くことが可能になる。
【0113】
[他の実施の形態]
攪拌部3を構成する線材2のうち頭部側領域E2に存在する部分の少なくとも一部分に形成する断面長方形状の線材部分22については、図27に例示するように、前記した厚さdと幅wの比率(扁平度)である「d:w」が概ね1:1.4乃至1:3.0の範囲内になる断面形状で形成することが好ましい。
【0114】
この比率が1:1.4よりも小さい場合は、線材部分22の断面形状が円形に近くなるので、その断面長方形状の線材部分22による攪拌性能の向上が期待できない。また、この比率が1:3.0よりも大きい場合は、その断面長方形状の線材部分22による攪拌性能が向上するものの、その断面長方形状の線材部分22が外力により曲がりやすくなり耐久性に劣るものとなる。この比率については、断面長方形状の線材部分22による攪拌性能の向上とその耐久性の確保を両立させる観点からすると、1:2.0前後の比率が好ましい。また、この比率については、断面長方形状の線材部分22による攪拌性能の向上、その線材部分22の耐久性の確保、その線材部分22の製造の容易性、さらにその線材部分22の材質などの観点から適宜選定すればよい。
【0115】
攪拌部3を構成する複数の線材2としては、例えば、図28に例示する第六線材29を適用することができる。
【0116】
図28に示す第六線材29は、頭部側領域E2に存在する部分のうち折り返し形状の折り返し部分26を断面円形状の線材部分21として形成することに加え、複数の部分に断面円形状の線材部分21を形成して頭部側領域E2に存在する断面長方形状の線材部分22を細分化して配置させるように形成したものである。換言すれば、第六線材29は、頭部側領域E2に存在する部分が、断面円形状の線材部分21と断面長方形状の線材部分22を交互に配置されるように形成したものである。ちなみに、この第六線材29における断面長方形状の線材部分22も、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aを前記した各実施の形態における断面長方形状の線材部分22の場合と同様に、特定の方向に向く状態になるよう配置している。また、根元側領域E1に存在する断面円形状の線材部分21の直径と頭部側領域E2に存在する断面円形状の線材部分21の外径とは、互いに等しいが、必要に応じて異ならせても構わない。
【0117】
第六線材29の頭部側領域E2に存在する部分になる断面長方形状の線材部分22及び断面円形状の線材部分21は、折り返した状態の線材29における中心線(柄部4の取り付け領域の中心点Saと折り返し部分26の頂点Pを結ぶ一点鎖線)を境にしてみた場合、左右対称に存在するように形成するほか、左右非対称に存在するように形成してもよい。つまり、その頭部側領域E2に存在する部分における断面長方形状の線材部分22と断面円形状の線材部分21は、中心線を挟んだ左右において、その数、長さ(線材の長さ方向の寸法)、位置等の組合せを異ならせて左右非対称の関係で存在するように形成することも可能である。特に左右非対称になるよう形成した第六線材29により形成した攪拌部3では、その断面長方形状の線材部分22が複数の異なった位置に点在するようになるため、攪拌部3を回転させるように移動させた場合には、その攪拌部3による攪拌性能が向上するようになる。
【0118】
第六線材29は、例えば、次のようにして製造される。
【0119】
すなわち、この線材29は、図29(a)に示すように、原材料として断面形状が円形状の線材20(図30(a)参照)を使用し、その線材20のうち頭部側領域E2になる部分を、加圧成形金型9E,9Fの間に挟んで加圧成形することにより製造される。加圧成形金型9E,9Fは、平面状の成形面部92と凹部状の非成形部94とが組み合わせて形成されており、また、その成形面部92の端部や非成形部94の端部(線材2の根元側領域E1と頭部側領域E2の境界部分に相当する位置となる端部部分や、断面円形状の線材部分21と断面長方形状の線材部分22の境界部分に相当する位置となる端部)に傾斜する切り欠き面(加圧調整成形部)93が形成されている。
【0120】
この製造は、図29(b)、(c)に示すように、原材料としての線材20を前記した折り曲げ形状などに予め成形したものを、加圧成形金型9E,9Fの間に頭部側領域E2となる部分(折り返し部分26を除く)が存在する状態に挟んで所要の圧力Fで加圧することで行う。これにより、その線材20の加圧成形金型9E,9Fの成形面部92で加圧された部分が、図30(b)等に示すように、ほぼ長方形状の断面形状になった断面長方形状の線材部分22として形成される。また、線材20の断面円形状の線材部分21と断面長方形状の線材部分22の境界部分24はいずれも、加圧成形金型9E,9Fの切り欠き面93により断面形状が円形状からほぼ長方形状に徐々に扁平して広がった形状として形成される(図5(e)参照)。なお、線材20の頭部側領域E2における例外領域Ecとなる部分と根元側領域E1に相当する部分は、加圧成形されないため、図10(b)等に示すように、断面形状が円形状である断面円形状の線材部分21となる。
【0121】
この結果、図28や図30(b)に示すような断面円形状の線材部分21と断面長方形状の線材部分22が混在する形状の第六線材29を比較的容易に、しかも安価に得ることができる。なお、この加圧成形においては、加圧成形金型9E,9Fに形成する非成形部94の数や位置や寸法を変更することで、前記したように断面円形状の線材部分21と断面長方形状の線材部分22が左右非対称の状態で存在する第六線材29をも製造することができる。
【0122】
攪拌部3は、それを構成する線材2の本数について適宜変更することができる。線材2の本数については、適宜変更することができるが、例えば5〜10本の範囲で選定することが好ましく、より好ましくは6〜8本という範囲で選定するとよい。また、攪拌部3は、線材2として前記した第一線材23(図5など)、第二線材25(図13など)、第三線材27(図18など)、第四線材28(図18など)、第五線材20(図10(a)など)、第六線材29(図28など)を適宜組み合わせて使用することで構成することができる。その組み合わせる場合の各線材の配置位置や順番なども適宜選定することができる。なお、攪拌部3は、全域が断面円形状の線材として形成されている第五線材20のみで構成されることはない。
【0123】
また、攪拌部3を構成する線材2の端部の配置についても、適宜変更することができる。例えば、円形、四角形等の連続した形状を形成するように配置することもできるが、線材2の根元部分を適切に洗浄できる間隔(L)を確保できる配置にすることが好ましい。また、このような間隔(L)をあけて対向する2列を形成する状態で配置する以外にも、例えば円形の一部が間隔をあけたような形状(例えばアルファベットの「C」のような形状)になるように配置するようにしてもよい。
【0124】
また、攪拌部3を構成する金属製の線材2としては、ステンレスの他にも、チタン合金、アルミニウム合金等の他の金属材料からなる線材を使用することもできる。また、線材2は、金属材料以外の材料(例えば、合成樹脂、複合材料等)からなる線材であってもよい。例えば、線材2としては、金属製の線材の周囲を例えばウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等の合成樹脂を焼付け塗装した被覆線材や、金属製の線材にウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等の合成樹脂をチューブ状に被覆形成した線材などを使用してもよい。この他にも、ポリプロピレン、ポリイミド、ジュラコン等の合成樹脂からなるプラスチック線材を使用することも可能であるが、これを使用する場合には、断面長方形状の線材部分22を形成する際の加圧成形時に加熱処理する必要がある。また、プラスチック線材において断面長方形状の線材部分22を形成する場合には、例えばインジェクション成形法を利用して形成することができる。
【0125】
さらに、攪拌部3を構成する線材2の折り返す形状については、半円弧になるよう湾曲させた形状以外の形状としてもよく、例えば、屈曲させた形状や、湾曲させた形状と屈曲させた形状等を組み合わせた複合型の形状とすることもできる。また、線材2の折り返す形状に曲げる部分(26)の形状については、その曲げる部分の先端付近(又は中央部)で、例えば、ループ形状、半円形状、楕円形状、8の字形状、めがね枠形状、4角形状、多角形状等の形状にすることも可能である。
【0126】
柄部4としては、金属、木材、合成樹脂、複合材料等の材料からなるものを使用することもできる。その全体の形状については、棒状のものに限らず、攪拌部3の線材2の端部を取り付け領域Sに集めた様態で固定することができる取り付ける部位42を備えた形状のものであればよい。また、柄部4の取り付け部位42の取り付け領域Sの形状は、概ね長方形、正方形、円形、楕円形、及びこれらを組み合わせた任意の形状とすることも可能である。
【0127】
この発明の攪拌具は、調理用の攪拌具として使用する以外にも、他の分野における攪拌具として使用することが可能である。また、攪拌具は、上記の実施形態で説明した内容(構成)について、種々組み合わせて構成するようにしても構わない。
【符号の説明】
【0128】
1 …攪拌具
2 …線材
3 …攪拌部
4 …柄部
20…第五線材(断面長方形状の線材部分が形成されていない線材。全体が断面円形状からなる線材)
21…断面円形状の線材部分
22…断面長方形状の線材部分
22a…長辺
22b…短辺
23…第一線材
25…第二線材
26…折り返し部分
27…第三線材
27e…最も外側に位置する部分
28…第四線材
28e…最も外側に位置する部分
29…第六線材
42…取り付け部位
S …取り付け領域
E1…根元側領域
E2…頭部側領域
K、K2…筒状の仮想空間
d …厚さ(長辺どうしの間隔に相当する厚さ)
w …幅(短辺どうしの間隔に相当する幅)
D …直径(断面円形状の線材部分の外径)
M1,M2…折り返し形状の最大幅(最も外側に位置する部分どうしを結ぶ直線の長さ)
L,L2…間隔
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の線材を組み合わせて構成される攪拌部を備えた攪拌具に関し、例えば、食材を攪拌する際に使用することができる攪拌具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の攪拌具は、一般に、その攪拌部が、金属等の材料からなる複数の線材を折り返す形状に曲げるとともにその各線材を互いにずらした状態で配置し、しかもその各線材の端部を取り付け領域に集めた状態で棒状等の形状からなる柄の取り付け部位に固定することにより構成されている。このような攪拌部を備えた攪拌具は、例えば、水等の液体と種々の食材をかき混ぜる、泡立てる等の攪拌作業を行う際に使用する、いわゆる調理用の攪拌具として多用されている。
【0003】
このような攪拌具は、その攪拌部を構成する複数の線材として、一般に断面形状が円形状である線材を使用している。このため、かかる断面形状の線材で構成される攪拌部は、攪拌対象の食材等の攪拌物のなかで移動するときの攪拌物に対する抵抗が小さくなるので、その攪拌性能が小さくなる傾向にある。
【0004】
この攪拌性能を向上させるためには、例えば、その線材の太さを太くする、その本数を増やす、複数の屈曲部を形成する等の対策が考えられる。しかし、このような対策では、線材を太くしたり或いはその本数を増やす場合には、攪拌部が重くなり、その柔軟性も損なわることになるので、取り扱い性の悪い攪拌具になってしまうという問題がある。また、複数の屈曲部を形成する場合には、屈曲部が増えるにつれて線材の全長が長くなって攪拌部が重くなることに加えて、その屈曲部に食材等が付着しやすくなって屈曲部の洗浄が困難になるという問題がある。
【0005】
従来においても、攪拌具として、例えば、非円形の断面形状を有する弾性被覆材で被覆された細長素子を有するキッチン用具が知られている(特許文献1)。このキッチン用具は、ハンドルと、少なくとも一端がハンドルに固定されている少なくとも1つのワイヤ状の可撓性細長部材とからなり、その細長部材が、細い可撓性素子と、食品や食品を含む表面と接触する非円形の周縁断面形状を有する被覆とからなるものである。特許文献1には、非円形断面形状が、一連の周縁の凸部及び凹部を含むものであり、V字形、花びら形、星形、正方形、歯車形及びそれらの組合せのうちから選択されるものであることが示されている。また、特許文献1には、このキッチン用具によれば、利用者の労力の増大を強いることなく、用具と容器または容器内の食品との接触度を高められることが示されている。
【0006】
また、攪拌具として、平板金をねじり螺旋状のループとして柄に複数本取り付けた泡立て器が知られている(特許文献2)。特許文献2には、この泡立て器によれば、攪拌すると、螺旋に沿って複雑な流れが起きて混ざり合い、また螺旋の裏側で空気が多く取り入られるようになり、きめ細かい混ぜ合わせができることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4035110号公報
【特許文献2】実用新案登録第3131949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のキッチン用具では、攪拌部の全体が非円形の断面形状を有する被覆がされた線材を用いて構成されているため、攪拌作業により食材が攪拌部全体にわたって付着しやすくなり、使用後における洗浄作業を線材の全体にわって細かく行う必要があり、その洗浄作業が煩雑なものになる。しかも、その線材の被覆材における非円形の断面形状がV字形、花びら形、星形、正方形、歯車形及びそれらの組合せという形状であるため、細かな凹部が存在する形状が多いものとなり、これにより線材には食材等の材料の一部が残存しやすくなり、衛生面で不安が残る。
【0009】
一方、特許文献2に記載の泡立て器では、攪拌部の全体が平板金の部材で構成されており、しかも、その部材の柄から離れた部分(実際の攪拌部)が螺旋状にねじられた形状になっているため、攪拌作業により食材が攪拌部全体の平板金に付着しやすくなり、使用後の洗浄作業を平板金の全体にわって細かく行う必要があり、その洗浄作業が煩雑なものになる。また、攪拌部を構成する部材が平板金であるため、その角部がほぼ直角で角張った形状になっている可能性が高く、その角部が泡立て時に食材などを入れた容器の内面等に接触したときにその内面等を傷付けやすくなる。なお、平板金の角部を研削して丸めることも可能であるが、その場合には、製造上の煩雑さやコストの増大を招いてしまう。
【0010】
そこで、この発明は、複数の線材で構成される攪拌部とその各線材の端部が固定される柄部を備えた攪拌具として、主に、攪拌部の重量の増加や柔軟性の低下を招くことなく攪拌部の攪拌性能を向上させることができ、しかも使用後における攪拌部の洗浄がしやすくなる攪拌具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明(A1)の攪拌具は、
複数の線材を折り返す形状にするとともにその各線材を互いにずらした状態で配置して構成される攪拌部と、前記攪拌部を構成する複数の線材の端部が取り付け領域内に集められて固定される取り付け部位を有する柄部とを備えた攪拌具であって、
前記複数の線材の前記柄部に近い側の領域となる根元側領域に存在する全部を、断面円形状の線材部分として形成し、
前記複数の線材の前記根元側領域を除く領域となる頭部側領域に存在する一部又は全部を、その少なくとも一部分について断面長方形状の線材部分として形成し、かつ、その断面長方形状における長辺をその長辺に沿う延長線が前記柄部の取り付け部位の取り付け領域からほぼ垂直に立ち上がる筒状の仮想空間と交わる方向に向く状態になるよう配置し、
前記頭部側領域に存在して前記断面長方形状の線材部分が形成されている線材のうち当該断面長方形状の線材部分が形成されていない残りの線材部分と前記頭部側領域に存在して前記断面長方形状の線材部分が形成されていない線材とを、断面円形状の線材部分として形成しているものである。
【0012】
上記線材は、その断面円形状の線材部分と断面長方形状の線材部分が中実の構造(内部に空洞がない構造)であるものに限らず、その線材部分の一方又は双方が管状等の中空構造のものであってもよい。また、上記断面長方形状は、例えば、後述するように断面長方形状における短辺等が丸みを帯びた辺で形成されて全体として長方形に近い形状を含むものである。
【0013】
この発明(A2)の攪拌具は、上記発明A1の攪拌具において、前記断面長方形状の線材部分は、その断面長方形状における長辺が直線状の辺であり、その断面長方形状における短辺が外側に突出する円弧状の辺であるものである。
【0014】
この発明(A3)の攪拌具は、上記発明A1又はA2の攪拌具において、前記断面長方形状の線材部分は、その断面長方形状における長辺どうしの間隔に相当する厚さが前記断面円形状の線材部分の断面円形状における外径よりも小さく、かつ、その断面長方形状における短辺どうしの間隔に相当する幅が前記断面円形状の線材部分の断面円形状における外径よりも大きくなるように形成されているものである。
【0015】
この発明(A4)の攪拌具は、上記発明A3の攪拌具において、前記断面長方形状の線材部分は、断面円形状からなる線材の一部を扁平させるよう加圧成形して形成されているものである。
【0016】
この発明(A5)の攪拌具は、上記発明A1からA4のいずれかの攪拌具において、前記断面長方形状の線材部分が形成されている線材は、前記折り返す形状の折り返し部分が前記断面円形状の線材部分として形成されているものである。
【0017】
この発明(A6)の攪拌具は、上記発明A1からA5のいずれかの攪拌具において、前記攪拌部は、前記複数の線材として前記頭部側領域に存在して前記折り返す形状の最も外側に離れた部分どうしを結ぶ直線の長さが異なる複数種の線材を混在させて配置して構成されているものである。
【0018】
この発明(A7)の攪拌具は、上記発明A1からA6のいずれかの攪拌具において、前記複数の線材の端部が、前記柄部の取り付け部位の取り付け領域内において、間隔をあけた2つの列を形成する状態に並べて配置されているものである。
【0019】
上記間隔をあけた2つの列を形成する状態とは、複数の線材の端部が柄部の取り付け部位において2つの列をなすよう配列された状態である。より具体的には、各線材の端部が例えば直線状、曲線状、ジグザグ状等に連なる列状に並べられ、しかもそのような列状に並べられた各線材の端部(群)が間隔をあけて対向する2つの列をなすように配分された状態である。
【0020】
上記間隔は、その間隔をあけて対向する2列状の線材端部の間に例えば歯ブラシ等の洗浄具や手指などを差し入れてその線材の端部等の洗浄作業を行うことを可能にするために必要となる。また、上記間隔は、2列のうち互いに最も接近する線材どうしの離間距離が少なくとも10mm以上、好ましくは12mm以上、更に好ましくは14mm以上の値になる間隔が好ましい。この間隔が10mm以上の場合は、2列状の線材端部の間に歯ブラシ(のブラシ毛が設けられている部分)を挿入することが可能となる。この間隔が12mm以上の場合は、挿入した歯ブラシを2列状の線材端部の間で回転させるように動かした洗浄作業を行うことが容易になる。この間隔が14mm以上の場合は、2列状の線材端部の間に手指などを入れることができるようになる。
【0021】
また、上記対向する2つの列の各列を形成する隣り合う線材の端部どうしの間隔は、適宜設定することができるが、例えば歯ブラシ等を洗浄具として使用して隣接する線材どうしの間を洗浄することができる観点からすると、0.5mm以上であることが好ましい。また、この隣り合う線材の端部どうしの間隔は、1〜2.5mm程度の範囲がより好ましく、更に、使用する線材の外形(前記断面円形状の線材部分における断面円形状の外形)の寸法に近似する寸法に設定することがより一層好ましい。このような寸法に各列の隣り合う線材の端部どうしの間隔を設定することによって、線材部分の内側の洗浄や柄部の取付け部位の洗浄がより行い易くなる。さらに、各列の隣り合う線材の端部どうしの間隔については、線材として比較的細い線材を使用する場合には比較的狭い寸法に設定し、また、線材として比較的太い線材を使用する場合には比較的大きい寸法に設定する。このような条件でその間隔の設定をした場合は、線材を取り付けるべき限られた領域である柄部の取付け部位の取り付け領域に対して、線材の取付け強度を維持しつつ線材の密度が高い配列を実現することができる。
【0022】
一方、上記対向する2つの列を形成する状態で柄部の取付け部位に配置するときの複数の線材は、その各線材の両端部のうち一方の端部が前記対向する2つの列の一方の列に配置され、その他方の端部が前記2つの列の他方の列に配置され、かつ、その各線材の両端部が前記2つの列の間における中心を挟んで対向する位置に存在する状態で配置されるように構成することが好ましい。このように構成した場合は、複数の線材における一部の線材の両端部を同じ列に配置する場合に比べて、1本の線材の折り返す形状に曲げる部分(ループ)が他の全ての線材に対して交差する状態になる攪拌部を形成することができる。この結果、その攪拌部の攪拌作業時に動かすべき方向性が特に限定されなくなって攪拌効果の高い攪拌具にすることができるほか、攪拌部の頭部の形状をほぼ半球に見える形態に形成することができる。さらに、前記2つの列の間における中心の上方の位置を通過するとともに互いにほぼ等しい角度で交差して放射状に広がる状態になるよう配置して形成することで、各線材の端部を2列の状態に配置する場合でも、従来の攪拌具における攪拌部の形態に近づけて違和感をなくすことができる。
【発明の効果】
【0023】
上記発明A1の攪拌具によれば、攪拌部の頭部側領域に存在する線材の一部又は全部が少なくとも一部に断面形状がほぼ長方形状であってそのほぼ長方形状の長辺が所定の方向に向く状態になるよう配置された断面長方形状の線材部分として形成され、攪拌部の根元側領域に存在する線材の全部がその断面円形状の線材部分として形成され、それ以外の線材部分や線材が断面円形状の線材部分として形成されているので、攪拌部の攪拌作業に主に必要となる部位に上記した構成からなる断面長方形状の線材部分が存在していることになり、これにより攪拌部の攪拌性能を向上させることができる。この攪拌部については、それを構成する線材について太くしたり、本数を増やしたり、あるいは複数の屈曲部を形成するという対策をとる必要がないので、攪拌部の重量の増加や柔軟性の低下を招くことがなく、その攪拌部の攪拌性能を向上させることができる。
【0024】
また、発明A1の攪拌具によれば、攪拌部の根元側領域に存在する線材のすべてが断面円形状の線材部分であるとともに、攪拌部の頭部側領域に存在する線材についても断面長方形状の線材部分を形成していない線材部分又は線材が断面円形状の線材部分であり、しかも、断面長方形状の線材部分の外観が単純な平板状の形状であるので、攪拌作業を行うときに線材全体にわたって食材などが付着しにくくなり、その使用後における攪拌部の洗浄作業がしやすくなる。
【0025】
上記発明A2の攪拌具では、攪拌部における断面長方形状の線材部分が上記した断面形状で構成されているので、その攪拌部の断面長方形状の線材部分の存在によって攪拌性能が向上することに加え、その断面長方形状の線材部分の長辺と短辺が交差する角部が攪拌時に食材等を入れる容器の内面や縁部等に接触しても傷つけないか又は傷つけにくくなる。この他にも、断面長方形状の線材部分に、食材などがさらに付着しにくくなり、使用後における断面長方形状の洗浄部分の洗浄作業がさらにしやすくなる。
【0026】
上記発明A3の攪拌具では、攪拌部における断面長方形状の線材部分が断面円形状の線材部分と対比して上記した断面形状の関係になるよう構成されているので、例えば断面長方形の線材部分の断面積を例えば断面円形状の線材部分の断面積に近づけることができるので、全体が断面円形状だけからなる線材で構成された攪拌部と比較してほぼ近い重量とすることができ、この結果、ほぼ近い重量を保持したままで攪拌部の攪拌性能をさらに向上させることができる。
【0027】
上記発明A4の攪拌具では、発明A3の攪拌具における攪拌部を構成する線材の断面長方形状の線材部分を比較的容易かつ安価に形成することができる。また、断面円形状からなる線材(原材料)を加圧成形して、断面長方形状の例えば板状の扁平な線材に加工するため、その断面長方形状の線材部分の断面積が原材料の線材の断面積とほぼ同等となり、全体が断面円形状の線材だけで構成される攪拌具とほぼ同じ重量にすることができ、また、その攪拌部の攪拌性能をさらに向上させることができる。
【0028】
上記発明A5の攪拌具では、複数の線材をその折り返し形状の折り返す部分で互いに上下方向にずらして交差させた状態で配置して攪拌部を構成する場合、その各線材の折り返す部分が交差する部位で最上位に位置する線材と最下位に位置する線材との間隔(距離)を短く抑えることができるとともに、重なり合う線材どうしが不要に引っ掛かりあうことがなく攪拌部の頭部側領域における線材部分の柔軟性を確保することができる。また、攪拌部の折り返す部分が断面円形状の線材部分であるため、攪拌作業において攪拌対象物を入れる容器の底面などに折り返す部分の一部が引っ掛かってしまうおそれがほとんどない。この結果、攪拌部による攪拌作業を良好に行うことが可能になり、またその線材の折り返し部分が交差する部位における洗浄がしやすくなる。
【0029】
上記発明A6の攪拌具では、攪拌部の頭部側領域に存在する線材部分の折り返す形状の最も外側に離れた部分どうしの間隔(距離)が異なった複数種の線材を混在させて配置しているため、攪拌部の頭部側領域を構成する線材が三次元的に多様な位置に存在して攪拌作業時に攪拌対象物と様々な位置で接触するようになる。これによっても、攪拌部の攪拌性能を向上させることができる。
【0030】
上記発明A7の攪拌具では、複数の線材の端部が柄部の取り付け部位に間隔をあけた2つの列を形成する状態で並べて配置されているので、その各線材の柄部に近い根元部分(付け根部分)の洗浄作業や、柄部の取り付け部位の取り付け領域内の洗浄作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態1に係る攪拌具を示す正面図である。
【図2】図1の攪拌具を示す右側面図である。
【図3】図1の攪拌具を示す上面図である。
【図4】(a)は図1の攪拌具のA−A線で切断したときの状態を示す一部断面説明図、(b)はその攪拌具のB−B線で切断したときの状態を示す一部断面説明図である。
【図5】図1の攪拌具で使用する第一線材を示し、(a)はその正面図、(b)は(a)のA−A線に沿う拡大断面図、(c)は(a)のB−B線に沿う拡大断面図、(d)は(a)のC−C線に沿う拡大断面図、(e)は(a)のD−D線に沿う拡大断面図である。
【図6】図4(b)の一部断面説明図における切断端面部を拡大して示す説明図である。
【図7】線材の板状の線材部分を拡大して示す断面図である。
【図8】線材の板状の線材部分の形成方法を示し、(a)は板状の線材部分の断面の状態について原材料の断面円形の線材と併せて示す説明図、(b)は板状の線材部分の形成方法の原理を示す説明図である。
【図9】図5の第一線材の製造方法を示し、(a)はその製造方法である加圧成形法の構成を示す説明図、(b)は加圧成形している状態を上面側から見たときの状態を示す説明図、(c)は(b)のN−N線に沿う概略断面図である。
【図10】(a)は図9の製造方法に用いる原材料としての線材の状態を示す正面図、(b)はその製造方法で得られた線材の状態を示す説明図、(c)は(b)の線材における板状の線材部分の棒状の線材部分に対する寸法関係を示す説明図である。
【図11】実施の形態2に係る攪拌具を示す右側面図である。
【図12】図11の攪拌具を示す上面図である。
【図13】図11の攪拌具で使用する第二線材を示し、(a)はその正面図、(b)は(a)のA−A線に沿う拡大断面図、(c)は(a)のB−B線に沿う拡大断面図、(d)は(a)のC−C線に沿う拡大断面図である。
【図14】図13の第二線材の製造方法を示し、(a)はその製造方法である加圧成形法の構成を示す説明図、(b)は加圧成形している状態を上面側から見たときの状態を示す説明図、(c)は(b)のN−N線に沿う概略断面図である。
【図15】(a)は図14の製造方法に用いる原材料としての線材の状態を示す正面図、(b)はその製造方法で得られた第二線材の状態を示す説明図である。
【図16】実施の形態3に係る攪拌具を示す右側面図である。
【図17】(a)は図16の攪拌具を示す上面図、(b)は図16のB−B線で切断した端面部などの状態を示す説明図である。
【図18】(a)は図16の攪拌具の攪拌部を構成する第三線材を示す説明図、(b)は図16の攪拌具の攪拌部を構成する第四線材を示す説明図である。
【図19】実施の形態4に係る攪拌具を示す正面図である。
【図20】図19の攪拌具を示す右側面図である。
【図21】図19の攪拌具を示す上面図である。
【図22】(a)は図19の攪拌具のA−A線で切断したときの状態を示す一部断面説明図、(b)はその攪拌具のB−B線で切断したときの状態を示す一部断面説明図である。
【図23】図22(b)の一部断面説明図における切断端面部を拡大して示す説明図である。
【図24】実施の形態5に係る攪拌具を示す右側面図である。
【図25】図24の攪拌具を示す上面図である。
【図26】(a)は図24の攪拌具のA−A線で切断したときの状態を示す一部断面説明図、(b)は図24の攪拌具のB−B線で切断したときの切断端面部を拡大して示す説明図である。
【図27】線材の板状の線材部分における断面形状の厚さと幅の比率の代表例を示す説明図である。
【図28】攪拌具を構成する他の線材(第六線材)の構成例を示し、(a)はその正面図、(b)は(a)のA−A線に沿う拡大断面図、(c)は(a)のB−B線に沿う拡大断面図、(d)は(a)のC−C線に沿う拡大断面図である。(a)はその攪拌具の要部(柄部と線材端部の取付け構造部分)を示す概略断面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図29】図28の第六線材の製造方法を示し、(a)はその製造方法である加圧成形法の構成を示す説明図、(b)は加圧成形している状態を上面側から見たときの状態を示す説明図、(c)は(b)のN−N線に沿う概略断面図である。
【図30】(a)は図30の製造方法に用いる原材料としての線材の状態を示す正面図、(b)はその製造方法で得られた第六線材の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」という)について添付の図面を参照しながら説明する。
【0033】
[実施の形態1]
図1から図4は、実施の形態1に係る攪拌具を示す。図1はその攪拌具を正面側から見たときの状態を示し、図2はその攪拌具を右側面側から見たときの状態を示し、図3は図1の攪拌具を上面から見たときの状態を示し、図4はその攪拌具におけるA−A線及びB−B線で切断した部分からそれぞれ見たときの状態を示し、図5はその攪拌具の攪拌部を構成する1つの線材及びその線材のA−A線、B−B線、C−C線及びD−D線でそれぞれ切断した端面部分をそれぞれ示している。
【0034】
実施の形態1に係る攪拌具1Aは、複数本の線材2で構成される攪拌部3Aと、各線材2の端部を固定する取り付け部位42Aを有する柄部4Aとを備えたものであり、例えば食材の攪拌、泡立て等の調理用攪拌具として使用される。攪拌部3Aは実際に攪拌作業に使用される予定の部分であり、柄部4Aは攪拌具1Aを使用する人が手でもつ柄の部分である。
【0035】
攪拌部3Aは、図1〜図3に示すように、複数の線材2を折り返す形状に曲げるとともに攪拌作用を発揮させるよう互いに交差させて上下にずらした状態で配置し、また各線材2の両端部を柄部4Aの取付け部位42Aの取り付け領域S(図4(a)参照)内に集めて埋没させた状態で固定することで形成されている。取り付け領域Sは、取付け部位42Aのうち攪拌部3Aを構成する複数の線材2の端部を実際に固定するために配置することが可能な領域である。
【0036】
攪拌部3Aでは、複数の線材2として、図4、図5等に示すように、柄部4に近い領域となる根元側領域E1に存在する部分の全域を断面形状が円形状である断面円形状の線材部分(換言すれば、棒状の線材部分)21として形成し、その根元側領域E1を除く領域となる頭部側領域E2に存在する部分の全域を断面形状がほぼ長方形状である断面長方形状の線材部分(換言すれば、板状の線材部分)22として形成してなる第一線材23が8本使用されている。図5(b)、(c)は断面長方形状の線材部分22の断面形状であるほぼ長方形状を示し、図5(d)は断面円形状の線材部分21の断面形状である円形状を示している。
【0037】
この8本の第一線材23A〜23Hはいずれも、その根元側領域E1になる断面円形状の線材部分21が、柄部4Aの取り付け部位42Aの表面42aからほぼ垂直に立ち上がって所定の距離L1だけ延びた後に外側に広がるように屈曲して互いに離れるよう直線状に延びる形状に成形されている。また、この第一線材23A〜23Hはいずれも、その頭部側領域E2になる断面長方形状の線材部分22が、断面円形状の線材部分21と接続されて互いに離れるように直線状に延びた後にほぼ半円弧状に湾曲させられた形状に成形されている。線材2の根元側領域E1とは、例えば、図1や図5に示すように、攪拌部3Aの全体の高さH(柄部4Aの上端部から頂点Pまでの距離)に対して柄部4Aの取り付け部位42Aの表面42aから約1/3前後の高さで設定されている領域である。
【0038】
ここで、攪拌部3Aにおける線材2の根元側領域E1の寸法については、攪拌部3Aの全体の高さHに対して、概ね1/5乃至4/5の範囲の高さで設定することができる。これは、根元側領域E1が全体の高さHの1/5未満となる高さでは、攪拌部3Aの全体の柔軟性が高すぎ攪拌操作がしづらくなるおそれがあり、また、根元側領域E1が攪拌部3Aの全体の高さHの1/5を超える高さの場合には、目的とする攪拌部3Aの攪拌、泡立て等の性能の向上効果が期待できなくなるからである。
【0039】
一方、攪拌部3Aの攪拌、泡立て等の効果(性能)を向上させる観点からは、攪拌部3Aにおける線材2の断面長方形状の線材部分となる頭部側領域E2については、例えば、攪拌部3Aの頂点Pからの距離が、攪拌部3Aの全体の高さHに対して、概ね1/5乃至2/3の範囲の領域に設定することで攪拌部3Aの攪拌、泡立て等の効果を向上させることができる。
【0040】
また、攪拌部3Aでは、図6に示すように、その第一線材23における断面長方形状の線材部分22の断面長方形状における長辺を、その長辺に沿う延長線(図中に点線で示す線)が柄部4Aの取り付け部位42Aの取り付け領域Sからほぼ垂直に立ち上がる(攪拌部3Aの頂点Pに向かって延びる)筒状の仮想空間Kと交わる方向に向く状態になるよう配置している。図6中の符号Saは、取り付け領域Sのほぼ中心点を示す。換言すれば、第一線材23における断面長方形状の線材部分22の断面長方形状における長辺22aのほとんどは、その長辺22aに沿う延長線が、取り付け領域Sの中心点Saから延びる放射線に対してほぼ平行する方向に向く状態で配置されているとも言える。
【0041】
線材23における断面長方形状の線材部分22は、図7に示すように、その断面形状であるほぼ長方形状における長辺22aが直線状の辺になっており、また、そのほぼ長方形状における短辺22bが外側に突出する円弧状の辺になっている。このように短辺22bが直線状の辺になっていないため、ここでは断面長方形状の線材部分22の断面形状について長方形状に近い形状であるという意味で「ほぼ長方形状」と称している。また、長辺22aと短辺22bの一方又は双方が例えば上記の円弧状の辺になっていたとしても、長辺及び短辺を有して全体としての断面形状が長方形に近い形状を呈していれば、その形状について「ほぼ長方形状(断面長方形状)」と称する。一方、根元側領域E1を構成する断面円形状の線材部分21についても、断面形状が必ずしも真円に近い円形である場合に限らず、断面形状が円形に近い楕円形状、多角形状等であっても、その周上の外径がほぼ同等に近い寸法であって全体として円形に近い形状を呈していれば、その断面形状を「断面円形状」と称する。
【0042】
このような断面長方形状の線材部分22は、図8に示すように、断面円形状の線材2の所要部分を、成形面が平面の1対の加圧板90,91の間において所要の圧力Fをかけて扁平させるように押しつぶして加圧成形することにより製作することができる。このように加圧成形することにより、断面形状が円形状の線材2は、その加圧板90,91の平面が接触して加圧される線材部分が平面状に成形され、その加圧板90,91が接触しない残りの線材部分が断面形状の円形状の一部である円弧状の形状が残されて曲面状に成形され、これにより、全体として扁平した状態に押し潰されて断面形状がほぼ長方形状である板状の形態になる。このとき平面状に成形された部分が断面長方形状の線材部分22の断面形状であるほぼ長方形状における長辺22aになり、その円弧状に残った状態に成形された部分が断面長方形状の線材部分22の断面形状であるほぼ長方形状における短辺22bになる。
【0043】
また、線材23における断面長方形状の線材部分22は、図7に示すように、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aどうしの間隔に相当する厚さ(d)とその断面形状のほぼ長方形状における短辺22bどうしの間隔に相当する幅(w)の比率(d:w)が約1:2(=d:w)となる断面形状になるよう設定されている。
【0044】
実施の形態1では、線材23として、直線状の形状のときの全長が約46cmである8本のステンレス製線材23A〜23Hを使用している。そして、各線材23はいずれも、その断面円形状の線材部分21が外径1.6mmの円形状からなる断面形状であり、その断面長方形状の線材部分22が長辺22aの間隔である厚さdが1.1mm、短辺22bの間隔である幅wが約2.2mmとなり全体としてほぼ長方形状からなる断面形状であるものを使用している。また、この第一線材23で構成される攪拌部3Aは、その全高さHが約19cmに設定され、第一線材23の根元側領域E1の高さが約7〜9cmに設定されている。
【0045】
柄部4Aは、所要の長さからなる棒状の柄本体41Aと、柄本体41Aの一端部に形成される線材2の端部を埋没させた状態で固定するための取付け部位42Aとで構成されている。
【0046】
実施の形態1では、柄部4Aとして、断面がほぼ楕円形である棒体からなる柄本体41Aと、その柄本体41Aの一端部を少し外側に広げて端部形状がほぼ長方形状となる取り付け部位42Aを有する構造のものを用いている。柄本体41Aは、例えば長辺が28mm×短辺が21mmのほぼ楕円形の断面形状からなり、長さが約11cmの棒状の形態のものを使用している。この柄本体41Aは、中空構造でなく、空洞がない中実構造である。取り付け部位42Aは、例えば、窪みと、線材2の端部を固定するよう取り付けたうえでその窪みに嵌め入れて固着する嵌合体で構成されている。取り付け部位42Aは、例えば長辺と短辺が共に曲線状であって長辺約33mm×短辺約30mmという寸法であるほぼ長方形状の断面形状からなり、長さが約2.5cmの外観の形態からなるものを使用している。取り付け部位42Aの取り付け領域Sは、その断面形状とほぼ同じ寸法及び形状になっている。柄部4Aは、その全体が例えばナイロン、ABS、ポリプロピレン等の合成樹脂を用いて成形することで作製される。ただし、柄部4Aの材質、寸法等については、その用途、使用環境等の条件に応じて任意に選定することができ、特に限定されるものでない。
【0047】
また、攪拌部3Aを構成する各線材23A〜23Hの両端部は、図4等に示すように、柄部4Aの取り付け部位42Aの取り付け領域S内において、間隔Lをあけた2つの直線状の列を形成する状態に並べて配置されている。なお、同じ列に配置される線材23どうしも間隔nをあけて配置されているが、その間隔nは2列の間隔Lに比べると小さい(n<L)。2列の間隔Lについては、各線材23の根元側領域(さらにその付け根部分)の内側や、柄部4Aの取り付け部位42Aの取り付け領域Sにおける列の間となる部分等を洗浄するための既製の歯ブラシ等の洗浄具(の洗浄作業部分)が少なくとも通過できる寸法にするとよい。実施の形態1では、間隔Lを12〜16mmの範囲内で設定している。
【0048】
根元側領域E1が断面円形状の線材部分21として、頭部側領域E2が断面長方形状の線材部分22として形成されている第一線材23は、例えば、次のようにして製造される。
【0049】
すなわち、この線材23は、図9(a)に示すように、原材料として断面形状が円形状の線材20(図10(a)参照)を使用し、その線材20のうち頭部側領域E2にすべき部分を、加圧成形金型9A,9Bの間に挟んで加圧成形することにより製造される。加圧成形金型9A,9Bは、成形面92が平面になっており、その端部の一部(線材2の根元側領域E1と頭部側領域E2の境界部分に相当する位置となる端部部分)に傾斜する切り欠き面(加圧調整成形部)93が形成されている。
【0050】
この製造は、図9(b)、(c)に示すように、原材料としての線材20を前記した折り曲げ形状などに予め成形したものを、加圧成形金型9A,9Bの間に頭部側領域E2となる部分が存在する状態に挟んで所要の圧力Fで加圧することで行う。これにより、その線材20の加圧成形金型9A,9Bの成形面92で加圧された部分が、図10(b)等に示すように、断面形状がほぼ長方形状になった断面長方形状の線材部分22として形成される。また、線材2の根元側領域E1と頭部側領域E2の境界部分24は、加圧成形金型9A,9Bの切り欠き面93により断面形状が円形状からほぼ長方形状に徐々に扁平して広がった形状として形成される(図5(e)参照)。なお、線材20の根元側領域E1に相当する部分は、加圧成形されないため、図10(b)等に示すように、断面形状が円形状である断面円形状の線材部分21となる。
【0051】
この結果、図5や図10(b)に示すような断面円形状の線材部分21と断面長方形状の線材部分22が混在する形状の線材23を比較的容易に得ることができる。また、断面長方形状の線材部分22については、その角部を丸めるための研削等の作業が不要であり、コスト的にも安価に形成することができる。このようにして製造された線材23の断面長方形状の線材部分22は、図10(c)に示すように、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aの間隔である厚さdが断面円形状の線材部分21の断面形状の円形状の外径Dよりも小さくなり、そのほぼ長方形状における短辺22bの間隔である幅wが断面円形状の線材部分21の外径Dよりも大きくなるという寸法関係になる。さらに、このように加圧成形により断面長方形状の線材部分22を形成した場合は、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aどうしの間隔に相当する厚さdとその断面形状のほぼ長方形状における短辺22bどうしの間隔に相当する幅wを比較的容易に調節することができ、厚さdと幅wの比率(d:w)を所要の値に設定した断面長方形状の線材部分22を容易に形成することが可能になる。
【0052】
そして、実施の形態1に係る攪拌具1Aは、次のようにして使用される。
【0053】
すなわち、攪拌具1Aは、例えば調理対象の食材を水等の液体と混ぜて攪拌する際に、その柄部4A(の柄本体41A)が使用者の手で持たれ、その攪拌部3Aの第一線材23のうち主に頭部側領域E2の部分が容器に収容された攪拌対象物である食材等のなかに入れられ、その状態において任意のかき混ぜる方向に動かされることによって使用される。これにより、食材等の攪拌対象物が攪拌部3Aの攪拌作用を受けて攪拌される。
【0054】
この攪拌作業では、攪拌部3Aの第一線材23の頭部側領域E2に存在する部分が断面長方形状の線材部分22として形成されているため、断面形状が円形状の線材で攪拌する場合に比べて、攪拌対象物に対する抵抗が大きくなり、しかも空気の取り込み量も増えるので、攪拌性能(泡立て性能を含む)が高まり、効率よく攪拌(泡立て)を行うことができる。
【0055】
また、複数の線材23における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aが攪拌部3Aの内部側に存在する筒状の仮想空間Kと交わる方向に向く状態で配置されているので、攪拌対象物のなかで柄部4Aをほぼ中心(軸)にして攪拌部3Aをほぼ円軌道を描くように回転移動させると、その断面長方形状の線材部分22の長辺22aが移動する後方に小さな渦(例えばカルマン渦)が発生しやすくなり、これによっても攪拌性能が高まり、効率のよい攪拌を行うことが可能になる。
【0056】
さらに、複数の線材23における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状がほぼ長方形状になるよう形成されているため、前記した攪拌性能が向上することに加え、そのほぼ長方形状における長辺22aと短辺22bが交差する角部が丸みを帯びた形状となっていて直角の形状になっていないので、その角部が攪拌対象物を入れた容器の内面や縁部にたとえ接触した場合であっても、その内面や縁部などを傷つけることがないか又は傷つけにくくなる。
【0057】
また、攪拌具1Aは、その使用した後に攪拌部3A等が洗浄される。
【0058】
この際、攪拌具1Aにおいては、その攪拌部3Aの根元側領域E1に存在する第一線材23のすべてが断面円形状の線材部分21として形成されており、その頭部側領域E2に存在する線材23のすべてが平板状で単純な断面長方形状の線材部分22として形成されているため、線材23の全体にわたって食材等の攪拌対象物が付着しにくく、しかも、その使用後における洗浄作業がしやすく、その付着した攪拌対象物を容易に取り除くこともできる。さらに、断面長方形状の線材部分22は、その断面形状のほぼ長方形状における短辺が外側に突出した円弧状の形状になっているので、それによっても断面長方形状の線材部分22に攪拌対象物が付着しにくく、しかも、付着した攪拌対象物を容易に取り除くこともできる。
【0059】
また、この攪拌具1Aでは、攪拌部3Aの第一線材23の端部が柄部4Aの取り付け部位42Aにおいて、間隔Lをあけた直線状の2つの列を形成する状態で配置されているので、その2つの列を形成するように配置された線材23の端部どうしの間に間隔Lに対応して貫通する空間Qが存在する。このため、攪拌部3Aにおける各線材23(A〜H)の根元側領域E1における部分の洗浄に際しては、その空間Qに対して歯ブラシ、洗浄スポンジ等の洗浄具の洗浄作業部分(例えば歯ブラシの場合はそのブラシ毛が設けられた部分)を差し入れた状態で洗浄作業を行うことができる。また、その線材23の端部が形成する2つの列の間となる柄部4Aの取り付け部位42Aの表面42aについても、洗浄具の洗浄作業部を差し入れた状態で洗浄作業を行うことができる。
【0060】
さらに、空間Qは、図2に示すように、柄部4Aの取付け部位42Aの表面42aから少なくとも攪拌部3Aを構成する各第一線材23(A〜H)の折り返す形状に曲げる最も外側となる部分(23e)に至るまでの範囲において、2列の間隔Lを保持してほぼ直線状に立ち上がる形状の隙間空間Q´として存在している。また、この直線状に長く延びる隙間空間Q´は、2つの直線状の列を形成する線材23(A〜H)のうち各列の両端部に配置されて対峙する線材23(A,H)が、2列の間隔Lを保ちつつほぼ平行に立ち上がる形状に設定されていることで形成されている。この隙間空間Q´は、洗浄具を用いた洗浄作業を行うための作業空間としても利用することができ、その洗浄作業をより一層行い易くする。
【0061】
この他にも、攪拌部1Aにおいては、線材23の断面長方形状の線材部分22の断面形状(厚さdと幅w)が断面円形状の線材部分21の断面形状(外径D)と対比して前述したような特定の寸法関係にあるため、断面長方形状の線材部分22の柔軟性を確保することができ、これによっても良好な攪拌性能が得られる。また、線材23の断面円形状の線材部分21と断面長方形状の線材部分22との境界部24は、厚さがなめらかに変化して切り替わるような形状(図5(e))で形成されているため、その境界部24が急に厚さが異なる断面長方形状の線材部分22になる形状に形成された場合に比べて、応力集中が緩和されて曲がり難くなり、これにより機械的な強度が保たれ、耐久性も確保される。
【0062】
[実施の形態2]
図11から図13は、実施の形態2に係る攪拌具を示す。図11はその攪拌具の右側面側から見たときの状態を示し、図12はその攪拌具の上面側から見たときの状態を示し、図13はその攪拌具の攪拌部を構成する線材の構成を示している。
【0063】
実施の形態2に係る攪拌具1Bは、その攪拌部3を構成する線材2として異なる構成の線材25を適用している。これ以外については、前記した実施の形態1に係る攪拌具1Aと同じ構成になっている。このため、図11に示す攪拌具1BのA−A線で切断したときの状態とそのB−B線で切断したときの状態は、図示していないが、実施の形態1に係る攪拌具1AのA−A線及びB−B線でそれぞれ切断したときの状態(図4)とほぼ同じ内容(図4の各分図を右方向に90°回転させた状態)になる。
【0064】
線材25は、図13等に示すように、頭部側領域E2に存在する部分のうち折り返す形状の折り返し部分26を前記した断面形状が円形状である断面円形状の線材部分21として形成している点で実施の形態1における第一線材23と大きく異なっており、それ以外についてはほぼ同じ構成になっている。つまり、この第二線材25は、その根元側領域E1に存在する部分を断面円形状の線材部分21として形成し、その頭部側領域E2に存在する部分(折り返し部分26を除く)を断面長方形状の線材部分22として形成し、その頭部側領域E2に存在する部分のうち折り返し部分26を断面円形状の線材部分21として形成している。
【0065】
また、実施の形態2では、8本のステンレス製の第二線材25A〜25Hを使用している。その各線材25はすべて、その断面円形状の線材部分21がいずれも直径1.8mmの円形状からなる断面形状であり、その板状の線材部分22が長辺22aの間隔である厚さdが1.1mm、短辺22bの間隔である幅wが2.8mmとなり、全体としてほぼ長方形状からなる断面形状であるものを使用している。このため、線材25における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状の厚さd及び幅wの比率(d:w)が約1:2.6となる断面形状になっている。
【0066】
このような第二線材25A〜25Hで構成される攪拌部3Bは、図11と図12に示すように、その各線材25を折り返す形状の折り返し部分26で互いに交差させて上下にずらした状態で配置し、またその各線材25の両端部を柄部4Aの取付け部位42Aの取り付け領域S内に間隔Lをあけた2つの直線状の列を形成するように集めて埋没させた状態で固定することによって形成されている。
【0067】
この攪拌部3Bでは、その各線材25の折り返す部分26が互いに交差する部位において最上位に位置する線材25h(この例では線材25H)とその最下位に位置する線材25k(この例では線材25D)との間隔(交差部の高低差)J2を、実施の形態1における攪拌部3Aのように断面長方形状の線材部分22が互いに交差することになる交差部の高低差J1(図2)に比べて小さくすること(J2<J1)ができる。
【0068】
また、この攪拌部3Bでは、その各線材25の折り返す部分26が断面円形状の線材部分21どうしで交差するので、実施の形態1における攪拌部3Aのように断面長方形状の線材部分22どうしが交差する場合のように線材どうしが不要に引っ掛かってしまうことがなく、頭部側領域E2における線材部分の柔軟性を確保することができる。また、攪拌部3Bの最高位である頂点Pとその周辺部分(要するに折り返し部分26)に断面円形状の線材部分21が存在するので、その頂点Pとその周辺部分に断面長方形状の線材部分22が存在する場合に比べて、頂点Pやその周辺部分に存在する線材部分21が攪拌具1Bの取り扱い中に他のものに引っ掛かることが少なくなり、引っ掛かることで曲げられて変形させられてしまうおそれも少なくなる。
【0069】
さらに、この攪拌部3Bは、その折り返す部分26の最上位に位置する線材25hなどが断面円形状の線材部分21であるため、攪拌対象物を入れた容器の底部などに不要に引っ掛かるおそれがない。このため、この攪拌部3Bによれば、攪拌作業を良好に行うことができ、また、その折り返し部分26の交差する部位における洗浄も行いしやすい。
【0070】
そして、実施の形態2に係る攪拌具1Bによる攪拌作業では、実施の形態1に係る攪拌具1Aの場合とほぼ同様に、攪拌部3Bの第二線材25の頭部側領域E2に存在する主な部分(折り返し部分26を除く部分)が断面長方形状の線材部分22として形成されているため、攪拌性能(泡立て性能を含む)が高まり、効率よく攪拌(泡立て)を行うことができる。
【0071】
また、複数の線材25における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aが実施の形態1の場合と同様に特定の方向に向く状態で配置されているので、これによっても攪拌性能が高まり、効率のよい攪拌を行うことが可能になる。
【0072】
さらに、複数の線材25における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状がほぼ長方形状になるよう形成されているため、前記した攪拌性能が向上することに加え、そのほぼ長方形状における長辺22aと短辺22bが交差する角部が攪拌対象物を入れた容器の内面や縁部にたとえ接触した場合であっても、その内面や縁部などを傷つけることがないか又は傷つけにくくなる。
【0073】
また、攪拌具1Bは、その使用した後に攪拌部3B等が洗浄される。
【0074】
この際、攪拌具1Bにおいては、その攪拌部3Bの根元側領域E1に存在する第二線材25のすべてが断面円形状の線材部分21として形成されており、その頭部側領域E2に存在する線材25の主な部分(折り返し部分26を除く部分)が平板状で単純な断面長方形状の線材部分22として形成されており、その折り返し部分26のすべてが断面円形状の線材部分21として形成されている。このため、第二線材25の全体にわたって食材等の攪拌対象物が付着しにくく、しかも、その使用後における洗浄作業がしやすく、その付着した攪拌対象物を容易に取り除くこともできる。
【0075】
また、攪拌具1Bの攪拌部3Bにおける他の攪拌性能の向上や洗浄のしやすさは、実施の形態1の攪拌部3Aついて説明した同じ理由により、ほぼ同様に得られる。
【0076】
実施の形態2における第二線材25は、例えば、次のようにして製造される。
【0077】
すなわち、線材25は、図14(a)に示すように、原材料として断面形状が円形状の線材20(図15(a)参照)を使用し、その線材20のうち折り返し部分26を除く頭部側領域E2になる部分を、加圧成形金型9C,9Dの間に挟んで加圧成形することにより製造される。加圧成形金型9C,9Dは、その成形面92が平面になっており、その端部の一部(線材2の根元側領域E1と頭部側領域E2の境界部分及び頭部側領域E2と折り返し部分26の境界部分にそれぞれ相当する位置となる端部部分)に傾斜する切り欠き面93が形成されている。
【0078】
この製造は、図14(b)、(c)に示すように、原材料としての線材20を前記した折り曲げ形状などに予め成形したものを、加圧成形金型9C,9Dの間に折り返し部分26を除く頭部側領域E2となる部分が存在する状態に挟んで所要の圧力Fで加圧することで行う。これにより、その線材20の加圧成形金型9C,9Dの成形面92で加圧された部分が、図15(b)等に示すように、ほぼ長方形状の断面形状になった断面長方形状の線材部分22として形成される。また、線材2の根元側領域E1と頭部側領域E2の境界部分24と頭部側領域E2と折り返し部分26の境界部分は、加圧成形金型9C,9Dの切り欠き面93により断面形状が円形状からほぼ長方形状に徐々に扁平して広がった形状として形成される(図5(e)参照)。なお、線材20の根元側領域E1に相当する部分は、加圧成形されないため、図15(b)等に示すように、断面形状が円形状である断面円形状の線材部分21となる。この結果、図13や図15(b)に示すような形状の第二線材25を比較的容易に得ることができる。
【0079】
[実施の形態3]
図16及び図17は、実施の形態3に係る攪拌具を示す。図16はその攪拌具の右側面側から見たときの状態を示し、図17はその攪拌具の上面から見たときの状態などを示している。
【0080】
実施の形態3に係る攪拌具1Cは、その攪拌部3を構成する線材2として異なる構成の線材27,28を適用している。これ以外については、前記した実施の形態1に係る攪拌具1Aと同じ構成になっている。このため、図16に示す攪拌具1BのA−A線で切断したときの状態は、実施の形態1に係る攪拌具1AのA−A線で切断したときの状態(図4(a))とほぼ同じ内容(図4の分図(a)を右方向に90°回転させた状態)になる。
【0081】
攪拌具1Cにおける攪拌部3Cは、2種類の線材27,28(第三線材27と第四線材28)を用いて構成している。この第三線材27と第四線材28は、基本的に、実施の形態1における線材23と同様に根元側領域E1に存在する部分のすべてを断面円形状の線材部分21として形成し、頭部側領域E2に存在する部分のすべてを断面長方形状の線材部分22として形成したものであるが、その折り返し形状の最も外側に位置する部分26eどうし及び部分27eどうしをそれぞれ結ぶ直線の長さ(折り返し形状の最大幅)M1,M2が異なる寸法に設定されている点で相違するものである。つまり、第三線材27は、その折り返し形状の最大幅M1が、第四線材28の折り返し形状の最大幅M2よりも広い寸法(M1>M2)になるように設定したものである。
【0082】
また、実施の形態3では、第三線材27として4本(26A〜26D)使用し、第四線材28として4本(27A〜27D)使用している。第三線材27と第四線材28はいずれも、実施の形態1における第一線材23と同様に、その断面円形状の線材部分21が直径1.6mmの円形状からなる断面形状であり、その断面長方形状の線材部分22が長辺22aの間隔である厚さd=1.1mm、短辺22bの間隔である幅w=2.2mmとなって全体としてほぼ長方形状からなる断面形状であるものであるが、第三線材27の折り返し形状の最大幅M1が約80mmに設定され、第四線材28の折り返し形状の最大幅M2が約60mmに設定されている。
【0083】
このような第3線材27A〜27D及び第四線材28A〜28Dで構成される攪拌部3Cは、図16と図17に示すように、その2種類の線材27,28を交互に並べて配置するとともに、その各折り返す形状の折り返し部分で互いに交差させて上下に適宜配分してずらした状態で配置することで形成されている。また、その各線材27,28の両端部を柄部4Aの取付け部位42Aの取り付け領域S内に間隔Lをあけた2つの直線状の列を形成するように集めて埋没させた状態で固定することによって形成されている。
【0084】
この攪拌部3Cでは、4本の第三線材27A〜27Dの各折り返し部分の最外部27eを通過するように形成される第一仮想円T1と、4本の第四線材28A〜28Dの各折り返し部分の最外部28eを通過するように形成される第二仮想円T2が存在する形態になる。第一仮想円T1の直径は、第三線材27の折り返し形状の最大幅M1にほぼ相当する。第二仮想円T2の直径は、第四線材28の折り返し形状の最大幅M2にほぼ相当する。
【0085】
このため、この攪拌部3Cは、例えば、柄部4Aの取り付け領域Sの中心点Saを中心(回転軸)にして回転させた場合、各線材27,28の頭部側領域E2に存在して折り返し形状の最外部27e、28eとその前後に存在する断面長方形状の線材部分22が、前記第一仮想円T1と第二仮想円T2に沿った2種類の円軌道をそれぞれ別々に移動するよう動くことになるので、その断面長方形状の線材部分22が1つの円軌道のみを移動する攪拌部(実施の形態1〜2のような攪拌部3A,3B)に比べて、攪拌することができる幅がおよそ2倍に広がるようになり、この結果、その攪拌性能が大幅に向上するようになる。
【0086】
そして、実施の形態3に係る攪拌具1Cによる攪拌作業では、基本的に、実施の形態1に係る攪拌具1Aの場合とほぼ同様に、攪拌部3Cを構成する第三線材27及び第四線材28の頭部側領域E2にそれぞれ存在する部分が断面長方形状の線材部分22として形成されているため、攪拌性能(泡立て性能を含む)が高まり、効率よく攪拌(泡立て)を行うことができる。この攪拌性能の向上に加えて、上記したような各線材27,28の断面長方形状の線材部分22が2つの円軌道を別々に移動するようになることで、その攪拌性能が大幅に向上するようになる。
【0087】
また、2種類の線材27,28における断面長方形状の線材部分22はいずれも、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aが実施の形態1の場合と同様に特定の方向に向く状態で配置されているので(図17(b)参照)、これによっても攪拌性能が高まり、効率のよい攪拌を行うことが可能になる。
【0088】
さらに、2種類の線材27,28における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状がほぼ長方形状になるよう形成されているため、前記した攪拌性能が向上することに加え、そのほぼ長方形状における長辺22aと短辺22bが交差する角部が攪拌対象物を入れた容器の内面や縁部にたとえ接触した場合であっても、その内面や縁部などを傷つけることがないか又は傷つけにくくなる。
【0089】
また、攪拌具1Cは、その使用した後に攪拌部3B等が洗浄される。
【0090】
この際、攪拌具1Cにおいては、その攪拌部3Cの根元側領域E1に存在する第三線材27及び第四線材28の部分のすべてが断面円形状の線材部分21として形成されており、その頭部側領域E2に存在する線材27,28のすべての部分が平板状で単純な断面長方形状の線材部分22として形成されているため、線材27,28の全体にわたって食材等の攪拌対象物が付着しにくく、しかも、その使用後における洗浄作業がしやすく、その付着した攪拌対象物を容易に取り除くこともできる。
【0091】
また、攪拌具1Cの攪拌部3Cにおける他の攪拌性能の向上や洗浄のしやすさは、実施の形態1の攪拌部3Aについて説明した同じ理由により、ほぼ同様に得られる。
【0092】
[実施の形態4]
図19から図21は、実施の形態4に係る攪拌具を示す。図19はその攪拌具を正面側から見たときの状態を示し、図20はその攪拌具を右側面側から見たときの状態を示し、図21は図19又は図20の攪拌具を上面側から見たときの状態を示している。
【0093】
実施の形態4に係る攪拌具1Dは、その柄部4として異なる構成の柄部4Bを適用しているとともに、その柄部4Bに対応して攪拌部3を構成する複数の線材2の配置について一部異ならせている。これ以外については、前記した実施の形態1に係る攪拌具1Aと同じ構成になっている。攪拌具1Dの攪拌部3Dは、実施の形態1における攪拌部3Aと同様に、8本の第一線材23(図5から図7等を参照)で構成されている。
【0094】
攪拌具1Dの柄部4Bは、断面が約25mmの円形であって長さが約11cmの棒体からなる柄本体41Bと、その柄本体41Bの一端部を少し外側に広げて端部形状が円形となる取り付け部位42Bを有する構造のものを用いている。取り付け部位42Bは、例えば、窪みと、線材23の端部を固定するよう取り付けたうえでその窪みに嵌め入れて固着する嵌合体で構成されている。取り付け部位42Bは、例えば直径28mmの円形状の断面形状からなり、長さが約2.5cmである外観の形態からなるものを使用している。取り付け部位42Bの取り付け領域Sは、その断面形状とほぼ同じ寸法及び形状になっている。
【0095】
攪拌部3Dは、図19と図22に示すように、8本の第一線材23A〜23Hを折り返す形状の折り返し部分で互いに交差させて上下にずらした状態で配置し、またその各線材23の両端部を柄部4Bの取付け部位42Bの円形状の取り付け領域S内に円を形成するよう集めて埋没させた状態で固定することによって形成されている。各線材23の端部は、図22(a)に示すように、互いに同じ間隔をあけて円形を形成するように並べた状態で配置されている。
【0096】
そして、実施の形態4に係る攪拌具1Dによる攪拌作業では、基本的に、実施の形態1に係る攪拌具1Aの場合とほぼ同様に、攪拌部3Dの線材23の頭部側領域E2に存在する部分のすべてが断面長方形状の線材部分22として形成されているため、攪拌性能(泡立て性能を含む)が高まり、効率よく攪拌(泡立て)を行うことができる。
【0097】
また、攪拌部3Dを構成する第一線材23はいずれも、図23に示すように、その断面長方形状の線材部分22の断面形状であるほぼ長方形状における長辺を、その長辺に沿う延長線(点線)が柄部4Bの取り付け部位42Bにおける円形の取り付け領域Sからほぼ垂直に立ち上がる円筒状の仮想空間K2と交わる方向に向く状態になるように配置している。換言すれば、第一線材23における断面長方形状の線材部分22の断面長方形状における長辺22aのすべては、その長辺22aに沿う延長線が、円形の取り付け領域Sの中心点Saから延びる放射線に対してほぼ平行する方向に向く状態で配置されているとも言える。このため、この攪拌部3Dにおいても、その断面長方形状の線材部分22の断面形状であるほぼ長方形状における長辺22aが実施の形態1の場合と同様に特定の方向に向く状態で配置されているので(図23参照)、これによっても攪拌性能が高まり、効率のよい攪拌を行うことが可能になる。
【0098】
さらに、第一線材23における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状がほぼ長方形状になるよう形成されているため、前記した攪拌性能が向上することに加え、そのほぼ長方形状における長辺22aと短辺22bが交差する角部が攪拌対象物を入れた容器の内面や縁部にたとえ接触した場合であっても、その内面や縁部などを傷つけることがないか又は傷つけにくくなる。
【0099】
また、攪拌具1Dは、その使用した後に攪拌部3D等が洗浄される。
【0100】
この際、攪拌具1Dにおいては、その攪拌部3Dの根元側領域E1に存在する線材23の部分のすべてが断面円形状の線材部分21として形成されており、その頭部側領域E2に存在する線材23のすべての部分が平板状で単純な断面長方形状の線材部分22として形成されているため、線材23の全体にわたって食材等の攪拌対象物が付着しにくく、しかも、その使用後における洗浄作業がしやすく、その付着した攪拌対象物を容易に取り除くこともできる。
【0101】
[実施の形態5]
図24と図25は、実施の形態5に係る攪拌具を示す。図24はその攪拌具の右側面側から見たときの状態を示し、図25はその攪拌具の上面側から見たときの状態を示している。
【0102】
実施の形態5に係る攪拌具1Eは、その攪拌部3を構成する線材2として実施の形態1における第一線材23と全域の断面形状が円形状からなる第五線材20とを組み合わせて適用しているとともに、その攪拌部3を構成する複数の線材2の端部の柄部4に対する配置について一部異ならせている。これ以外については、前記した実施の形態1に係る攪拌具1Aの攪拌部3Aや実施の形態4に係る攪拌具1Dの柄部4Bと同じ構成になっている。
【0103】
第五線材20は、例えば、実施の形態1における第一線材23を製造するときに使用する原材料としての線材20(図10(a)参照)である。この線材20は、その根元側領域E1と頭部側領域E2に存在する部分のすべてを前記したような断面円形状の線材部分21として形成したものである。実施の形態5では、第五線材20として断面形状が直径1.6mmの円形状のステンレス製の線材を使用している。
【0104】
攪拌具1Eの攪拌部3Eは、6本の第一線材23A〜23Fと2本の第五線材20A,20Bを用いて構成されている。具体的には、図24、図25、図26(a)等に示すように、その第五線材20Aと6本の第一線材23A〜23Fと第五線材20Bをこの順に並べて、その各線材23,20を折り返す形状の折り返し部分で互いに交差させて上下にずらした状態で配置したうえで、その各線材23,20の両端部を、柄部4Bの取付け部位42Bの円形の取り付け領域S内に間隔L2をあけた2つの円弧曲線状の列が形成されるように集めた状態にして最後に柄部4Bの取り付け部位42Bに埋没させた状態で固定することによって形成されている。
【0105】
この攪拌部3Eでは、柄部4Bの取り付け部位42Bの円形の取り付け領域S内において、2本の第五線材20A,20Bの両端部が間隔L2をあけて対峙するような状態に配置され、残りの6本の第一線材23A〜23Fの両端部が第五線材20A,20Bの両端部をそれぞれ起点にして外側に膨らむ円弧の曲線を描くような2つの列を形成するように並べた状態で配置されている(図26(a))。また、攪拌部3Eでは、2本の第五線材20A,20Bが、間隔L2をあけて柄部4Bの取り付け部位42Bからほぼ垂直の状態で平行に立ち上がった後、頭部側領域E2の最高位の頂点P付近で交差するような状態で取り付けられている(図24、図25)。上記間隔L2は約10mmであり、各線材23,20の両端部が円弧曲線状に配置されている円弧の半径は約12mmである。
【0106】
そして、実施の形態5に係る攪拌具1Eによる攪拌作業では、実施の形態1に係る攪拌具1Aの場合とほぼ同様に、攪拌部3Eを構成する6本の第一線材23の頭部側領域E2に存在する部分のすべてが断面長方形状の線材部分22として形成されているため、攪拌性能(泡立て性能を含む)が高まり、効率よく攪拌(泡立て)を行うことができる。
【0107】
また、攪拌部3Eを構成する6本の第一線材23における断面長方形状の線材部分22は、図26(b)に示すように、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aを、実施の形態4の場合(図23)と同様に特定の方向に向く状態で配置されているので、これによっても攪拌性能が高まり、効率のよい攪拌を行うことが可能になる。
【0108】
さらに、6本の第一線材23における断面長方形状の線材部分22は、その断面形状がほぼ長方形状になるよう形成されているため、前記した攪拌性能が向上することに加え、そのほぼ長方形状における長辺22aと短辺22bが交差する角部が攪拌対象物を入れた容器の内面や縁部にたとえ接触した場合であっても、その内面や縁部などを傷つけることがないか又は傷つけにくくなる。
【0109】
また、攪拌部3Eは、それを構成する2本の第五線材20A,20Bが攪拌部3Eの頂点Pになる部分で断面円形状の部分どうしを交差させているので、実施の形態1や実施の形態4における攪拌部3A、3Dのように各線材の断面長方形状の線材部分22どうしを交差させている場合と比較して、線材どうしが不要に引っ掛かってしまうことを防止できる。また、攪拌部3Eは、その最高部位である頂点Pの周辺部分に第五線材20A,20Bの断面円形状の部分が存在するので、攪拌対象物を入れた容器の底部などに不要に引っ掛ったり傷つけたりするおそれがなくなる。
【0110】
また、攪拌具1Eは、その使用した後に攪拌部3E等が洗浄される。
【0111】
この際、攪拌具1Eにおいては、その攪拌部3Eの根元側領域E1に存在する線材23,20のすべてが断面円形状の部分の線材部分21として形成されており、その頭部側領域E2に存在する線材20を除く線材23の部分のすべてが平板状で単純な断面長方形状の線材部分22として形成されているため、各線材23,20の全体にわたって食材等の攪拌対象物が付着しにくく、しかも、その使用後における洗浄作業がしやすく、その付着した攪拌対象物を容易に取り除くこともできる。
【0112】
また、攪拌具1Eの攪拌部3Eにおける他の攪拌性能の向上や、線材の取付け部位42Bの空間Q及び直線状に立ち上がる形状の隙間空間Q´の存在等による洗浄のしやすさは、実施の形態1の攪拌部3Aについて前述した理由と同じ理由により、ほぼ同様に得られる。特に、攪拌部3Eを構成する線材23,20の両端部を柄部4Bの円形の取り付け領域Sに対して間隔L2をあけた円弧曲線状の2つの列を形成するように配置しているため、実施の形態4に係る攪拌具1Dの攪拌部3Dに比べて、その各線材23,28の根元側領域E1に存在する部分の清浄作業がしやすくなり、その部分に付着した攪拌対象物を容易に取り除くことが可能になる。
【0113】
[他の実施の形態]
攪拌部3を構成する線材2のうち頭部側領域E2に存在する部分の少なくとも一部分に形成する断面長方形状の線材部分22については、図27に例示するように、前記した厚さdと幅wの比率(扁平度)である「d:w」が概ね1:1.4乃至1:3.0の範囲内になる断面形状で形成することが好ましい。
【0114】
この比率が1:1.4よりも小さい場合は、線材部分22の断面形状が円形に近くなるので、その断面長方形状の線材部分22による攪拌性能の向上が期待できない。また、この比率が1:3.0よりも大きい場合は、その断面長方形状の線材部分22による攪拌性能が向上するものの、その断面長方形状の線材部分22が外力により曲がりやすくなり耐久性に劣るものとなる。この比率については、断面長方形状の線材部分22による攪拌性能の向上とその耐久性の確保を両立させる観点からすると、1:2.0前後の比率が好ましい。また、この比率については、断面長方形状の線材部分22による攪拌性能の向上、その線材部分22の耐久性の確保、その線材部分22の製造の容易性、さらにその線材部分22の材質などの観点から適宜選定すればよい。
【0115】
攪拌部3を構成する複数の線材2としては、例えば、図28に例示する第六線材29を適用することができる。
【0116】
図28に示す第六線材29は、頭部側領域E2に存在する部分のうち折り返し形状の折り返し部分26を断面円形状の線材部分21として形成することに加え、複数の部分に断面円形状の線材部分21を形成して頭部側領域E2に存在する断面長方形状の線材部分22を細分化して配置させるように形成したものである。換言すれば、第六線材29は、頭部側領域E2に存在する部分が、断面円形状の線材部分21と断面長方形状の線材部分22を交互に配置されるように形成したものである。ちなみに、この第六線材29における断面長方形状の線材部分22も、その断面形状のほぼ長方形状における長辺22aを前記した各実施の形態における断面長方形状の線材部分22の場合と同様に、特定の方向に向く状態になるよう配置している。また、根元側領域E1に存在する断面円形状の線材部分21の直径と頭部側領域E2に存在する断面円形状の線材部分21の外径とは、互いに等しいが、必要に応じて異ならせても構わない。
【0117】
第六線材29の頭部側領域E2に存在する部分になる断面長方形状の線材部分22及び断面円形状の線材部分21は、折り返した状態の線材29における中心線(柄部4の取り付け領域の中心点Saと折り返し部分26の頂点Pを結ぶ一点鎖線)を境にしてみた場合、左右対称に存在するように形成するほか、左右非対称に存在するように形成してもよい。つまり、その頭部側領域E2に存在する部分における断面長方形状の線材部分22と断面円形状の線材部分21は、中心線を挟んだ左右において、その数、長さ(線材の長さ方向の寸法)、位置等の組合せを異ならせて左右非対称の関係で存在するように形成することも可能である。特に左右非対称になるよう形成した第六線材29により形成した攪拌部3では、その断面長方形状の線材部分22が複数の異なった位置に点在するようになるため、攪拌部3を回転させるように移動させた場合には、その攪拌部3による攪拌性能が向上するようになる。
【0118】
第六線材29は、例えば、次のようにして製造される。
【0119】
すなわち、この線材29は、図29(a)に示すように、原材料として断面形状が円形状の線材20(図30(a)参照)を使用し、その線材20のうち頭部側領域E2になる部分を、加圧成形金型9E,9Fの間に挟んで加圧成形することにより製造される。加圧成形金型9E,9Fは、平面状の成形面部92と凹部状の非成形部94とが組み合わせて形成されており、また、その成形面部92の端部や非成形部94の端部(線材2の根元側領域E1と頭部側領域E2の境界部分に相当する位置となる端部部分や、断面円形状の線材部分21と断面長方形状の線材部分22の境界部分に相当する位置となる端部)に傾斜する切り欠き面(加圧調整成形部)93が形成されている。
【0120】
この製造は、図29(b)、(c)に示すように、原材料としての線材20を前記した折り曲げ形状などに予め成形したものを、加圧成形金型9E,9Fの間に頭部側領域E2となる部分(折り返し部分26を除く)が存在する状態に挟んで所要の圧力Fで加圧することで行う。これにより、その線材20の加圧成形金型9E,9Fの成形面部92で加圧された部分が、図30(b)等に示すように、ほぼ長方形状の断面形状になった断面長方形状の線材部分22として形成される。また、線材20の断面円形状の線材部分21と断面長方形状の線材部分22の境界部分24はいずれも、加圧成形金型9E,9Fの切り欠き面93により断面形状が円形状からほぼ長方形状に徐々に扁平して広がった形状として形成される(図5(e)参照)。なお、線材20の頭部側領域E2における例外領域Ecとなる部分と根元側領域E1に相当する部分は、加圧成形されないため、図10(b)等に示すように、断面形状が円形状である断面円形状の線材部分21となる。
【0121】
この結果、図28や図30(b)に示すような断面円形状の線材部分21と断面長方形状の線材部分22が混在する形状の第六線材29を比較的容易に、しかも安価に得ることができる。なお、この加圧成形においては、加圧成形金型9E,9Fに形成する非成形部94の数や位置や寸法を変更することで、前記したように断面円形状の線材部分21と断面長方形状の線材部分22が左右非対称の状態で存在する第六線材29をも製造することができる。
【0122】
攪拌部3は、それを構成する線材2の本数について適宜変更することができる。線材2の本数については、適宜変更することができるが、例えば5〜10本の範囲で選定することが好ましく、より好ましくは6〜8本という範囲で選定するとよい。また、攪拌部3は、線材2として前記した第一線材23(図5など)、第二線材25(図13など)、第三線材27(図18など)、第四線材28(図18など)、第五線材20(図10(a)など)、第六線材29(図28など)を適宜組み合わせて使用することで構成することができる。その組み合わせる場合の各線材の配置位置や順番なども適宜選定することができる。なお、攪拌部3は、全域が断面円形状の線材として形成されている第五線材20のみで構成されることはない。
【0123】
また、攪拌部3を構成する線材2の端部の配置についても、適宜変更することができる。例えば、円形、四角形等の連続した形状を形成するように配置することもできるが、線材2の根元部分を適切に洗浄できる間隔(L)を確保できる配置にすることが好ましい。また、このような間隔(L)をあけて対向する2列を形成する状態で配置する以外にも、例えば円形の一部が間隔をあけたような形状(例えばアルファベットの「C」のような形状)になるように配置するようにしてもよい。
【0124】
また、攪拌部3を構成する金属製の線材2としては、ステンレスの他にも、チタン合金、アルミニウム合金等の他の金属材料からなる線材を使用することもできる。また、線材2は、金属材料以外の材料(例えば、合成樹脂、複合材料等)からなる線材であってもよい。例えば、線材2としては、金属製の線材の周囲を例えばウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等の合成樹脂を焼付け塗装した被覆線材や、金属製の線材にウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等の合成樹脂をチューブ状に被覆形成した線材などを使用してもよい。この他にも、ポリプロピレン、ポリイミド、ジュラコン等の合成樹脂からなるプラスチック線材を使用することも可能であるが、これを使用する場合には、断面長方形状の線材部分22を形成する際の加圧成形時に加熱処理する必要がある。また、プラスチック線材において断面長方形状の線材部分22を形成する場合には、例えばインジェクション成形法を利用して形成することができる。
【0125】
さらに、攪拌部3を構成する線材2の折り返す形状については、半円弧になるよう湾曲させた形状以外の形状としてもよく、例えば、屈曲させた形状や、湾曲させた形状と屈曲させた形状等を組み合わせた複合型の形状とすることもできる。また、線材2の折り返す形状に曲げる部分(26)の形状については、その曲げる部分の先端付近(又は中央部)で、例えば、ループ形状、半円形状、楕円形状、8の字形状、めがね枠形状、4角形状、多角形状等の形状にすることも可能である。
【0126】
柄部4としては、金属、木材、合成樹脂、複合材料等の材料からなるものを使用することもできる。その全体の形状については、棒状のものに限らず、攪拌部3の線材2の端部を取り付け領域Sに集めた様態で固定することができる取り付ける部位42を備えた形状のものであればよい。また、柄部4の取り付け部位42の取り付け領域Sの形状は、概ね長方形、正方形、円形、楕円形、及びこれらを組み合わせた任意の形状とすることも可能である。
【0127】
この発明の攪拌具は、調理用の攪拌具として使用する以外にも、他の分野における攪拌具として使用することが可能である。また、攪拌具は、上記の実施形態で説明した内容(構成)について、種々組み合わせて構成するようにしても構わない。
【符号の説明】
【0128】
1 …攪拌具
2 …線材
3 …攪拌部
4 …柄部
20…第五線材(断面長方形状の線材部分が形成されていない線材。全体が断面円形状からなる線材)
21…断面円形状の線材部分
22…断面長方形状の線材部分
22a…長辺
22b…短辺
23…第一線材
25…第二線材
26…折り返し部分
27…第三線材
27e…最も外側に位置する部分
28…第四線材
28e…最も外側に位置する部分
29…第六線材
42…取り付け部位
S …取り付け領域
E1…根元側領域
E2…頭部側領域
K、K2…筒状の仮想空間
d …厚さ(長辺どうしの間隔に相当する厚さ)
w …幅(短辺どうしの間隔に相当する幅)
D …直径(断面円形状の線材部分の外径)
M1,M2…折り返し形状の最大幅(最も外側に位置する部分どうしを結ぶ直線の長さ)
L,L2…間隔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線材を折り返す形状にするとともにその各線材を互いにずらした状態で配置して構成される攪拌部と、前記攪拌部を構成する複数の線材の端部が取り付け領域内に集められて固定される取り付け部位を有する柄部とを備えた攪拌具であって、
前記複数の線材の前記柄部に近い側の領域となる根元側領域に存在する全部を、断面円形状の線材部分として形成し、
前記複数の線材の前記根元側領域を除く領域となる頭部側領域に存在する一部又は全部を、その少なくとも一部分について断面長方形状の線材部分として形成し、かつ、その断面長方形状における長辺をその長辺に沿う延長線が前記柄部の取り付け部位の取り付け領域からほぼ垂直に立ち上がる筒状の仮想空間と交わる方向に向く状態になるよう配置し、
前記頭部側領域に存在して前記断面長方形状の線材部分が形成されている線材のうち当該断面長方形状の線材部分が形成されていない残りの線材部分と前記頭部側領域に存在して前記断面長方形状の線材部分が形成されていない線材とを、断面円形状の線材部分として形成していることを特徴とする攪拌具。
【請求項2】
前記断面長方形状の線材部分は、その断面長方形状における長辺が直線状の辺であり、その断面長方形状における短辺が外側に突出する円弧状の辺である請求項1に記載の攪拌具。
【請求項3】
前記断面長方形状の線材部分は、その断面長方形状における長辺どうしの間隔に相当する厚さが前記断面円形状の線材部分の断面円形状における外径よりも小さく、かつ、その断面長方形状における短辺どうしの間隔に相当する幅が前記断面円形状の線材部分の断面円形状における外径よりも大きくなるように形成されている請求項1又は2に記載の攪拌具。
【請求項4】
前記断面長方形状の線材部分は、断面円形状からなる線材の一部を扁平させるよう加圧成形して形成されている請求項3に記載の攪拌具。
【請求項5】
前記断面長方形状の線材部分が形成されている線材は、前記折り返す形状の折り返し部分が前記断面円形状の線材部分として形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の攪拌具。
【請求項6】
前記攪拌部は、前記複数の線材として前記頭部側領域に存在して前記折り返す形状の最も外側に離れた部分どうしを結ぶ直線の長さが異なる複数種の線材を混在させて配置して構成されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の攪拌具。
【請求項7】
前記複数の線材の端部が、前記柄部の取り付け部位の取り付け領域内において、間隔をあけた2つの列を形成する状態に並べて配置されている請求項1乃至6のいずれか1項に記載の攪拌具。
【請求項1】
複数の線材を折り返す形状にするとともにその各線材を互いにずらした状態で配置して構成される攪拌部と、前記攪拌部を構成する複数の線材の端部が取り付け領域内に集められて固定される取り付け部位を有する柄部とを備えた攪拌具であって、
前記複数の線材の前記柄部に近い側の領域となる根元側領域に存在する全部を、断面円形状の線材部分として形成し、
前記複数の線材の前記根元側領域を除く領域となる頭部側領域に存在する一部又は全部を、その少なくとも一部分について断面長方形状の線材部分として形成し、かつ、その断面長方形状における長辺をその長辺に沿う延長線が前記柄部の取り付け部位の取り付け領域からほぼ垂直に立ち上がる筒状の仮想空間と交わる方向に向く状態になるよう配置し、
前記頭部側領域に存在して前記断面長方形状の線材部分が形成されている線材のうち当該断面長方形状の線材部分が形成されていない残りの線材部分と前記頭部側領域に存在して前記断面長方形状の線材部分が形成されていない線材とを、断面円形状の線材部分として形成していることを特徴とする攪拌具。
【請求項2】
前記断面長方形状の線材部分は、その断面長方形状における長辺が直線状の辺であり、その断面長方形状における短辺が外側に突出する円弧状の辺である請求項1に記載の攪拌具。
【請求項3】
前記断面長方形状の線材部分は、その断面長方形状における長辺どうしの間隔に相当する厚さが前記断面円形状の線材部分の断面円形状における外径よりも小さく、かつ、その断面長方形状における短辺どうしの間隔に相当する幅が前記断面円形状の線材部分の断面円形状における外径よりも大きくなるように形成されている請求項1又は2に記載の攪拌具。
【請求項4】
前記断面長方形状の線材部分は、断面円形状からなる線材の一部を扁平させるよう加圧成形して形成されている請求項3に記載の攪拌具。
【請求項5】
前記断面長方形状の線材部分が形成されている線材は、前記折り返す形状の折り返し部分が前記断面円形状の線材部分として形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の攪拌具。
【請求項6】
前記攪拌部は、前記複数の線材として前記頭部側領域に存在して前記折り返す形状の最も外側に離れた部分どうしを結ぶ直線の長さが異なる複数種の線材を混在させて配置して構成されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の攪拌具。
【請求項7】
前記複数の線材の端部が、前記柄部の取り付け部位の取り付け領域内において、間隔をあけた2つの列を形成する状態に並べて配置されている請求項1乃至6のいずれか1項に記載の攪拌具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
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【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2012−115538(P2012−115538A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269008(P2010−269008)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(500529838)ハセガワ株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(500529838)ハセガワ株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
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