説明

攪拌混合装置

【課題】攪拌効率や混合効率をより向上できる撹拌混合装置を提供する。
【解決手段】内部に流体が流通する流路6が設けられたケーシング2と、ケーシング2内に配置されて軸部7と軸部7の周囲に取り付けられた羽根8とを有した撹拌体3と、軸部7に接続して攪拌体3を軸方向に振動させる駆動源9とを備えた撹拌混合装置1において、軸方向に所定周期で配される溝部21をケーシング2の内壁面に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を流通しながら撹拌混合する撹拌混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を攪拌混合する従来の攪拌混合装置は特許文献1、2に開示される。この攪拌混合装置は筒状のケーシング内に振動源に接続された螺旋状の羽根が設けられる。ケーシング内には複数の流体が供給され、軸方向に振動する羽根によって流体が攪拌混合される。これにより、エマルションの製造、pH調整や酸化還元反応等の化学反応を行う装置の攪拌機、抽出装置の攪拌機等に上記攪拌混合装置を利用することができる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−51557号公報(第3頁−第4頁、第2図)
【特許文献2】特開平11−57441号公報(第3頁−第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、バイオテクノロジーの発展に伴って生物化学的分野において撹拌混合処理が行われるようになり、撹拌混合処理の必要性もその応用範囲も拡大する傾向にある。このため、産業界の要請に応えて撹拌効率や混合効率をより向上した撹拌混合装置が必要になっている。
【0005】
本発明は、攪拌効率や混合効率をより向上できる撹拌混合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、内部に流体が流通する流路が設けられたケーシングと、前記ケーシング内に配置されて軸部と該軸部の周囲に取り付けられた羽根とを有した撹拌体と、前記軸部に接続して前記攪拌体を軸方向に振動させる駆動源とを備えた撹拌混合装置において、軸方向に所定周期で配される溝部を前記ケーシングの内壁面に設けたことを特徴としている。
【0007】
この構成によると、一または複数の流体や固体粒子を含む流体がケーシング内に供給されると駆動源によって攪拌体が軸方向に振動する。ケーシングの内壁面には螺旋状や環状に形成された溝部が軸方向に所定周期で配される。ケーシングに沿って流通する流体の一部は溝部内に流入し、溝部内に渦が形成される。攪拌体が軸方向に振動することにより回転方向が逆方向の渦が溝部内に形成されるため、直前の渦が破壊されて流体に大きなせん断力が働く。これにより、一または複数の流体や固体粒子を含む流体が攪拌混合され、エマルションが作成される。溝部の軸方向の周期は一定であっても一定でなくてもよい。
【0008】
また本発明は、上記構成の攪拌混合装置において、前記溝部の側壁を軸方向に対して垂直に形成したことを特徴としている。
【0009】
また本発明は、上記構成の攪拌混合装置において、前記羽根及び前記溝部を捩れ方向が同じ螺旋状に形成したことを特徴としている。
【0010】
また本発明は、上記構成の攪拌混合装置において、前記撹拌体は捩れ方向が異なる複数の螺旋状の前記羽根を有し、前記溝部は対向する前記羽根と同じ方向に捩れた螺旋状に形成されることを特徴としている。この構成によると、回転面が異なる複数の渦が生成される。
【0011】
また本発明は、上記構成の攪拌混合装置において、前記羽根の表面に凹部及び凸部を設けたことを特徴としている。この構成によると、羽根に設けた凹部及び凸部が駆動源の振動によって流体に衝突し、更に流体にせん断力が加わる。
【0012】
また本発明は、上記構成の攪拌混合装置において、前記羽根は両面に前記凹部及び前記凸部を有して流体に接するとともに、一方の面に形成される前記凹部と裏面の前記凹部とが共通の側壁を有し、前記凹部を所定の角度間隔で放射状に配置したことを特徴としている。
【0013】
この構成によると、羽根は薄い金属や樹脂等を屈曲して形成され、一方の面に形成される凹部の裏側に凸部が配されるとともに一方の面に形成される凸部の裏側に凹部が形成される。凹部及び凸部は放射状に形成され、駆動源による振動によって凹部内に渦が生成される。また、螺旋状の羽根の場合は羽根の傾斜に沿った流体の流れによって凹部内に強い渦が生成される。
【0014】
また本発明は、上記構成の攪拌混合装置において、前記撹拌体が前記駆動源の駆動によって前記軸部を中心に回転することを特徴としている。この構成によると、攪拌体の回転によって羽根の表面に沿って流通する流体の一部は放射状の凹部内に流入し、凹部内に渦が形成される。
【0015】
また本発明は、上記構成の攪拌混合装置において、前記撹拌体が正回転と逆回転を周期的に繰り返すことを特徴としている。この構成によると、攪拌体の正回転によって凹部内渦が生成され、攪拌体の逆回転により回転方向が逆方向の渦が凹部内に形成される。これにより、凹部内の直前の渦が破壊されて流体に大きなせん断力が働く。
【0016】
また本発明は、上記構成の攪拌混合装置において、前記溝部の幅と深さとを略同じにしたことを特徴としている。
【0017】
また本発明は、上記構成の攪拌混合装置において、前記溝部の側壁は開放側の端部の曲率半径が1mm以下に形成されることを特徴としている。
【0018】
また本発明は、上記構成の攪拌混合装置において、前記駆動源による前記攪拌体の振動の振幅が前記溝部の幅よりも大きいことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、ケーシングの軸方向に所定周期で配される溝部を設けたので、攪拌体を軸方向に振動させることによって回転方向が逆方向の渦が溝部内に形成され、直前の渦が破壊されて流体に大きなせん断力が働く。従って、攪拌効率や混合効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の撹拌混合装置を示す正面断面図である。撹拌混合装置1は流体が流通する流路6を有した略円筒形のケーシング2を備えている。ケーシング2は断面多角形の筒状に形成してもよい。ケーシング2の流路6の一端には流体が流入する流入口4が設けられ、他端には流体が流出する流出口5が設けられる。
【0021】
ケーシング2の流路6内には軸部7の周囲に螺旋状の羽根8が取り付けられた攪拌体3が配される。羽根8には撹拌体3の軸方向に被混合流体10(図5参照)が流通可能な貫通孔(不図示)が必要に応じて複数設けられる。貫通孔は羽根8の周縁をU字状に切り欠いたものや羽根8の面に穿孔した丸穴状のもの等、いずれの形状でもよい。軸部7は駆動源9に接続され、駆動源9の駆動によって攪拌体6に対して軸方向の振動や回転が加えられる。
【0022】
図2はケーシング2の内面の一部を示す斜視図である。図3(a)はケーシング2の一部の展開図を示しており、図3(b)は図3(a)のA−A断面図を示している。ケーシング2の内壁面には複数の環状の溝部21が所定の周期Tで軸方向に並設されている。周期Tは一定であってもよく、一定でなくてもよい。溝部21の側壁は軸方向に対して垂直に形成される。尚、図3(a)において、溝部21の凹となる部分を斜線で表している。
【0023】
撹拌混合装置1が稼動すると流入口4からケーシング2内の流路6に被混合流体10(図4参照)が流入し、駆動源9が駆動される。図4は駆動源9を駆動した状態を示している。駆動源9によって攪拌体3は矢印B1、B2に示すように軸方向に振動する。流路6内に満たされた被混合流体10は攪拌体3の羽根8と衝突し、せん断力が与えられる。これにより、被混合流体10の攪拌や混合が行われる。
【0024】
図5、図6は図4のC部詳細図であり、攪拌体3がそれぞれ矢印B1、B2の方向に移動した場合を示している。攪拌体3が矢印B1の方向に移動すると、図5に示すようにケーシング2に沿って流通する被混合流体10の一部は溝部21内に流入する。これにより、溝部21内には図中、時計回りに回転する渦21aが形成される。
【0025】
その直後に攪拌体3が矢印B2の方向に移動すると、図6に示すように、溝部21内には図中、反時計回りの渦21bが形成される。即ち、溝部21に流入する被混合流体10は直前に形成された渦21aを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、溝部21内に逆方向に回転する渦21bが発達する。
【0026】
その直後に攪拌体3が矢印B1の方向に移動すると、上記と同様に溝部21内に渦21aが形成される。即ち、溝部21に流入する被混合流体10は直前に形成された渦21bを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、溝部21内に逆方向に回転する渦21aが発達する。以降、これらの動作が繰り返される。
【0027】
渦21a、21bが破壊されて消滅する際には被混合流体10に大きなせん断が発生する。溝部21は複数段にわたって設けられるため、被混合流体10は各溝部21で大きなせん断が加わって攪拌される。被混合流体10に対して与えるせん断が大きくなるに従って攪拌混合の能力が高められる。また、渦21a、21bは撹拌体3の振動に伴う流体の随伴により生ずるため、ほとんど動力を必要とせずに生成することができる。従って、攪拌混合の効率も高められる。
【0028】
ここで、被混合流体10は少なくとも1種類の流体が含まれる。即ち、1種類の流体の場合、複数種類の流体が混合されている場合、複数種類の流体が複数層に分離した場合のいずれであってもよい。また、被混合流体10が気液、固液、固気による多相の流体でもよい。即ち、気液が混合した流体の場合、気体に粒体や粉体の固体粒子が混入する場合、液体に粒体や粉体の固体粒子が混入する場合等であってもよい。
【0029】
また、駆動源9は軸方向に小刻みに進退を繰り返す微振動モードと、軸方向に所定のストローク及び周期で進退を繰り返す往復モードとを有している。往復モードでは溝部21の幅Wよりも大きい振幅を有している。これにより、確実に溝部21内に強い渦21a、21bを発生させることができる。特に、被混合流体10の粘性が比較的大きい場合には往復モードを用いると望ましい。被混合流体10の粘性が比較的小さい場合には渦21a、21bが発生し易くなるため、微振動モードであってもよい。
【0030】
本実施形態によると、ケーシング2の軸方向に所定周期で配される溝部21を設けたので、攪拌体3を軸方向に振動させることによって回転方向が逆方向の渦21a、21bが溝部21内に形成され、直前の渦が破壊されて被混合流体10に大きなせん断力が働く。従って、攪拌効率や混合効率を向上することができる。
【0031】
また、溝部21の側壁を軸方向に対して垂直に形成したので、撹拌体3の振動の際の往復運動に随伴する被混合流体10の流れと溝部21の側壁とが垂直になる。このため、往復運動に随伴する被混合流体10の流れが溝部21の側壁で効率よく剥離し、溝部21に被混合流体10が効率よく回り込む。これにより、溝部21内に強い渦21a、21bを生成することができる。生成される渦21a、21bの強度が強いほど被混合流体10に対して与えるせん断が大きくなるため、攪拌混合の能力及び攪拌効率をより高めることができる。
【0032】
尚、攪拌体3は他の形状であってもよい。例えば図7に示すように、攪拌体3の羽根8を軸部7に垂直な円板状に形成し、所定周期で複数並設してもよい。しかしながら、羽根8を螺旋状に形成すると被混合流体10が撹拌体3の移動方向だけでなく羽根8に沿った方向にも移動する。このため、螺旋状の羽根8によってより強いせん断が被混合流体10に与えられ、さらに効率よく攪拌混合を行うことができる。
【0033】
また、図8に示すように、捩れ方向が異なる複数の螺旋状の羽根8b、8cを互い違いに設けてもよい。これにより、被混合流体10がより多くの方向に移動し、さらに強いせん断が被混合流体10に与えられてより効率よく攪拌混合を行うことができる。加えて、図9に示すように、ピッチの異なる複数の螺旋状の羽根8c、8dを互い違いに設けてもよい。更に、これらの羽根8を組み合わせて攪拌体3を形成してもよい。
【0034】
また、駆動源9によって攪拌体3に対して軸方向の振動だけでなく回転を与えてもよい。この時、軸部7を回転軸にして一方向に回転する回転モードを設けてもよく、軸部7を回転軸にして正回転と逆回転を周期的に繰り返す正逆回転モードを設けてもよい。軸方向の振動に加えて回転を加えることにより、より攪拌混合の効率を高めることができる。
【0035】
また、溝部21の幅Wに対して深さDが著しく小さい場合や大きい場合は溝部21内に渦21a、21bが生じにくくなる。このため、被混合流体10に働くせん断力が大幅に低下して充分分散させることができない。従って、溝部21の幅Wと深さDとを略同じにするとより望ましい。
【0036】
また、溝部21の側壁は開放側の端部の曲率半径が大きいと被混合流体10の流れが円滑に溝部21内に流入し、強い渦が生成されない。このため、溝部21の側壁は開放側の端部の曲率半径が1mm以下に形成される。これにより、被混合流体10の流れがより効率よく剥離して強い渦を発生させることができ、攪拌混合の効率をより向上することができる。
【0037】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の撹拌混合装置1について説明する。本実施形態はケーシング2の内壁面に設けられる溝部21が第1実施形態と異なっている。その他の部分は第1実施形態と同様である。図10、図11はケーシング2の内面の一部を示す斜視図及び展開図である。説明の便宜上、前述の図1〜図9に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。尚、図11において、溝部21の凹となる部分を斜線で表している。
【0038】
第1実施形態と同様に羽根8(図1参照)は螺旋状に形成され、溝部21は羽根8と同じ捩れ方向の螺旋状に形成されている。これにより、溝部21は軸方向に所定周期で形成される。
【0039】
駆動源9の駆動によって攪拌体3が軸方向に振動すると、被混合流体10は軸方向に往復運動する。この時、被混合流体10は螺旋状の羽根8の表面に沿う移動も行われるため、羽根8の表面に略垂直な方向に往復運動する。このため、往復運動に随伴する流体の流れと溝部21の側壁とがより垂直に近づく。これにより、第1実施形態よりも更に被混合流体10に対して大きなせん断を与えることができ、攪拌混合の能力および効率が高められる。
【0040】
尚、羽根8のピッチと溝部21のピッチとを同じにするとより望ましい。また、前述の図9に示すようにピッチの異なる複数の螺旋状の羽根8c、8dを互い違いに設けてもよい。この時、各羽根8c、8dに対向する溝部21をそれぞれ羽根8c、8dと同じピッチにするとよい。
【0041】
また、第1実施形態と同様に、溝部21の幅Wと深さDとを略同じにするとよい。加えて、溝部21の側壁が開放側の端部の曲率半径を1mm以下に形成されると、攪拌混合の効率をより向上することができる。
【0042】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態の撹拌混合装置1について説明する。本実施形態はケーシング2の内壁面に設けられる溝部21及び羽根8が第1実施形態と異なっている。その他の部分は第1実施形態と同様である。図12はケーシング2の内面の一部を示す展開図である。説明の便宜上、前述の図1〜図9に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。尚、溝部21の凹の部分を斜線で表している。
【0043】
撹拌体3は前述の図8に示す捩れ方向が異なる複数の螺旋状の羽根8a、8bを有し、溝部21は対向する羽根8a、8bと同じ方向に捩れた螺旋状に形成される。これにより、溝部21は軸方向に所定周期で形成される。
【0044】
駆動源9の駆動によって攪拌体3が軸方向に振動すると、被混合流体10は軸方向に往復運動する。この時、被混合流体10は螺旋状の羽根8の表面に沿う移動も行われるため、羽根8の表面に略垂直な方向に往復運動する。このため、往復運動に随伴する流体の流れと溝部21の側壁とがより垂直に近づく。
【0045】
従って、羽根8a、8bによって被混合流体10がより多くの方向に移動して強いせん断が被混合流体10に与えられるとともに、流体の流れと溝部21の側壁とを垂直に近づけてより強いせん断を与えることができる。これにより、第1実施形態よりも更に攪拌混合の能力及び効率が高められる。尚、羽根8a、8bのピッチと溝部21のピッチとを同じにするとより望ましい。
【0046】
また、第1実施形態と同様に、溝部21の幅Wと深さDとを略同じにするとよい。加えて、溝部21の側壁が開放側の端部の曲率半径を1mm以下に形成されると、攪拌混合の効率をより向上することができる。
【0047】
<第4実施形態>
次に、図13は第4実施形態の攪拌混合装置1の攪拌体3の斜視図を示している。説明の便宜上、前述の図1〜図9に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は螺旋状の羽根8に凹凸部22を設けている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0048】
凹凸部22は凹部23、25及び凸部24、26が放射状に所定の角度間隔で連続して形成される。羽根8は薄板状の金属や樹脂等の部材を屈曲して形成され、一方の面に形成される凹部23と裏面の凹部25とは共通の側壁を有している。これにより、一方の面に形成される凹部23の裏側に凸部26が形成され、他方の面に形成される凹部25の裏側に凸部24が形成される。
【0049】
また、駆動源9は軸部7に軸方向の振動を加えるとともに、軸部7に正逆の回転を加える。即ち、微振動モードまたは往復モードと、正逆回転モードとが組み合わせて行われる。
【0050】
撹拌混合装置1が稼動すると流入口4からケーシング2内の流路6に被混合流体10が流入し、駆動源9が駆動される。図14、図15は駆動源9を駆動した状態を示している。駆動源9によって攪拌体3は矢印B1、B2示すように軸方向に振動するとともに、矢印B3、B4に示すように往復回転する。この時、攪拌体3の上昇時(B2)に羽根8の捩れが上昇する方向に攪拌体3が回転し(B3)、攪拌体3の下降時(B1)に羽根8の捩れが下降する方向に攪拌体3が回転する(B4)。
【0051】
流路6内に満たされた被混合流体10は攪拌体3の羽根8と衝突し、せん断力が与えられる。また、攪拌体3の矢印B1、B2方向の振動によって上記と同様に、ケーシング2の溝部21内に渦21a、21bが形成されて被混合流体10により大きなせん断力が加わる。
【0052】
図16、図17はそれぞれ図14のE部詳細図及び図15のF部詳細図になっている。攪拌体3の振動及び回転に伴い、被混合流体10は矢印D1、D2に示すように羽根8に沿って移動する。図16に示すように矢印D1の方向に移動する被混合流体10は凹部23、25内に流入する。これにより、凹部23内には図中、反時計回りに回転する渦23aが形成され、凹部25内には図中、時計回りに回転する渦25aが形成される。
【0053】
その直後に攪拌体3が反転すると図17に示すように被混合流体10は矢印D2の方向に移動して凹部23、25内に流入する。これにより、凹部23内には図中、時計回りに回転する渦23bが形成され、凹部25内には図中、反時計回りに回転する渦25bが形成される。即ち、凹部23、25に流入する被混合流体10は直前に形成された渦23a、25aを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、凹部23、25内に逆方向に回転する渦23b、25bが発達する。
【0054】
その直後に攪拌体3が反転すると、上記と同様に凹部23、25内に渦23a、25aが形成される。即ち、凹部23、25に流入する被混合流体10は直前に形成された渦23b、25bを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、凹部23、25内に逆方向に回転する渦23a、25aが発達する。以降、これらの動作が繰り返される。
【0055】
渦23a、23b、25a、25bが破壊されて消滅する際には被混合流体10に大きなせん断力が発生する。溝部23、25は所定の角度周期で複数設けられるため、被混合流体10は各溝部23、25でさらに大きなせん断力が加わって攪拌される。被混合流体10に対して与えるせん断が大きくなるに従って攪拌混合の能力が高められる。また、渦23a、23b、25a、25bは撹拌体3の振動及び回転に伴う流体の随伴により生ずるため、ほとんど動力を必要とせずに生成することができる。従って、攪拌混合の効率も高められる。
【0056】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、羽根8の表面に凹凸部22を設けたので、被混合流体10の流れを更に乱して強いせん断を与えることができる。従って、より効率よく攪拌混合を行うことができる。
【0057】
また、第1実施形態と同様に、溝部21の幅Wと深さDとを略同じにするとよい。加えて、溝部21の側壁が開放側の端部の曲率半径を1mm以下に形成されると、攪拌混合の効率をより向上することができる。同様に、凹部23、25の幅と深さを略等しくするとより望ましく、凹部23、25の側壁が開放側の端部の曲率半径を1mm以下に形成されると更に望ましい。
【0058】
本実施形態において、前述の図7〜図9に示す攪拌体3の羽根8の表面に同様の凹凸部22を設けてもよい。
【0059】
また、攪拌体3に対して軸方向の振動及び軸部7を中心とする回転を与えているが、軸部7を中心として回転のみを与えてもよい。これにより、従来よりも攪拌混合を効率よく行うことができる。また、攪拌体3が振動しないため、攪拌混合装置1の振動や騒音を大幅に低減することができる。この時、ケーシング2の溝部21を省いてもよい。
【0060】
また、ケーシング2に設けられた溝部21と羽根8との捩れ方向を逆にして、羽根8と溝部21とがX字状に交差するように配置してもよい。この時、軸部7を正逆に交互に高速回転させると、より高い効果を得ることができる。即ち、羽根8に導かれて上下に移動する流体と溝部21とが交差するので、溝部21に強い渦が発生する。これにより、羽根8の表面の凹凸部22及びケーシング2の溝部21の両方に強い渦が発生するため、より高い効果を得ることができる。尚、羽根8の斜面と溝部21の斜面とが交差する角度を直角にすると最も高い効果を得ることができる。
【0061】
以上により、本発明に係る攪拌混合装置1を第1〜第4実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定される訳ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によると、エマルションの製造装置、pH調整や酸化還元反応等の化学反応を行う装置の攪拌機、抽出装置の攪拌機、生物化学的分野における攪拌機等の、流体を流通しながら撹拌混合する撹拌混合装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1実施形態の攪拌混合装置を示す正面断面図
【図2】本発明の第1実施形態の攪拌混合装置のケーシングの一部の内面側を示す斜視図
【図3】本発明の第1実施形態の攪拌混合装置のケーシングの一部を示す展開図及び断面図
【図4】本発明の第1実施形態の攪拌混合装置の駆動源を駆動した状態を示す正面断面図
【図5】攪拌体が下降した際の図4のC部詳細図
【図6】攪拌体が上昇した際の図4のC部詳細図
【図7】本発明の第1実施形態の攪拌混合装置の他の攪拌体を示す正面図
【図8】本発明の第1実施形態の攪拌混合装置の他の攪拌体を示す正面図
【図9】本発明の第1実施形態の攪拌混合装置の他の攪拌体を示す正面図
【図10】本発明の第2実施形態の攪拌混合装置のケーシングの一部の内面側を示す斜視図
【図11】本発明の第2実施形態の攪拌混合装置のケーシングの一部を示す展開図
【図12】本発明の第3実施形態の攪拌混合装置のケーシングの一部を示す展開図
【図13】本発明の第4実施形態の攪拌混合装置の攪拌体の一部を示す斜視図
【図14】本発明の第4実施形態の攪拌混合装置の駆動源を駆動した状態を示す正面断面図
【図15】本発明の第4実施形態の攪拌混合装置の駆動源を駆動した状態を示す正面断面図
【図16】図14のE部詳細図
【図17】図15のF部詳細図
【符号の説明】
【0064】
1 攪拌混合装置
2 ケーシング
3 攪拌体
4 流入口
5 流出口
6 流路
7 軸部
8、8a、8b、8c、8d 羽根
10 被混合流体
21 溝部
22 凹凸部
23、25 凹部
24、26 凸部
21a、21b、23a、23b、25a、25b 渦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が流通する流路が設けられたケーシングと、前記ケーシング内に配置されて軸部と該軸部の周囲に取り付けられた羽根とを有した撹拌体と、前記軸部に接続して前記攪拌体を軸方向に振動させる駆動源とを備えた撹拌混合装置において、軸方向に所定周期で配される溝部を前記ケーシングの内壁面に設けたことを特徴とする撹拌混合装置。
【請求項2】
前記溝部の側壁を軸方向に対して垂直に形成したことを特徴とする請求項1に記載の撹拌混合装置。
【請求項3】
前記羽根及び前記溝部を捩れ方向が同じ螺旋状に形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撹拌混合装置。
【請求項4】
前記撹拌体は捩れ方向が異なる複数の螺旋状の前記羽根を有し、前記溝部は対向する前記羽根と同じ方向に捩れた螺旋状に形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撹拌混合装置。
【請求項5】
前記羽根の表面に凹部及び凸部を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の撹拌混合装置。
【請求項6】
前記羽根は両面に前記凹部及び前記凸部を有して流体に接するとともに、一方の面に形成される前記凹部と裏面の前記凹部とが共通の側壁を有し、前記凹部を所定の角度間隔で放射状に配置したことを特徴とする請求項5に記載の撹拌混合装置。
【請求項7】
前記撹拌体が前記駆動源の駆動によって前記軸部を中心に回転することを特徴とする請求項6に記載の撹拌混合装置。
【請求項8】
前記撹拌体が正回転と逆回転を周期的に繰り返すことを特徴とする請求項7に記載の撹拌混合装置。
【請求項9】
前記溝部の幅と深さとを略同じにしたことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の撹拌混合装置。
【請求項10】
前記溝部の側壁は開放側の端部の曲率半径が1mm以下に形成されることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の攪拌混合装置。
【請求項11】
前記駆動源による前記攪拌体の振動の振幅が前記溝部の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の攪拌混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−247990(P2009−247990A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99136(P2008−99136)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】