攪拌用回転体および攪拌装置
【課題】用途を問わずに安全且つ効率的な攪拌を行うことが可能な攪拌用回転体および攪拌装置を提供する。
【解決手段】上記各実施形態に係る攪拌用回転体1は、回転軸(中心軸C)を中心に回転する本体10と、本体10の表面に設けられる吸入口12と、本体10の表面に設けられる吐出口14と、吸入口12と吐出口14を繋ぐ流通路16と、を備え、吸入口12は、吐出口14よりも回転軸に近い位置に配置され、吐出口14は、吸入口12よりも回転軸から遠心方向外側の位置に配置され、吸入口12または吐出口14の少なくとも一方は、長孔に構成されている。
【解決手段】上記各実施形態に係る攪拌用回転体1は、回転軸(中心軸C)を中心に回転する本体10と、本体10の表面に設けられる吸入口12と、本体10の表面に設けられる吐出口14と、吸入口12と吐出口14を繋ぐ流通路16と、を備え、吸入口12は、吐出口14よりも回転軸に近い位置に配置され、吐出口14は、吸入口12よりも回転軸から遠心方向外側の位置に配置され、吸入口12または吐出口14の少なくとも一方は、長孔に構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体その他の各種流体を攪拌し、混合、分散等を行うための攪拌用回転体および攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば2種類以上の流体を混合したり、流体中に添加した各種粉末等を均一に分散させたりする場合には、流体中で羽根車を回転させる攪拌機が使用されている。この羽根車には一般的にプロペラ翼やタービン翼が設けられており、回転することで流体を流動させて攪拌を行う。
【0003】
このような攪拌機は、流体を収容するタンクに恒常的に設置されて使用されるものが多いが、この他にも、例えば塗料等を使用直前に現場で攪拌するためのハンディタイプのものがよく使用されている。このハンディタイプの攪拌機は、一般的にハンドドリル型の駆動装置の駆動軸の先端に羽根車を設けて構成されている。そして、使用者は、駆動装置を両手に持ち、先端の羽根車を塗料等の被攪拌物が収容された容器内に挿入して回転させ、攪拌を行う。
【0004】
しかしながら、このハンディタイプの攪拌機では、鋭利な翼端を持つ羽根車を高速で回転させることから非常に危険であり、取扱に注意を要するという問題があった。また、突起の多い羽根車を容器にぶつけてしまった場合や、羽根車が疲労破壊を起こした場合に、羽根車の先端や容器の一部が欠けて、または削れて被攪拌物内に混入しやすいという問題があった。
【0005】
また、羽根車は被攪拌物と衝突することによって被攪拌物を流動させるため、羽根車を備える攪拌機では、回転する羽根車を被攪拌物内に投入する際、または被攪拌物内で羽根車の回転を開始する際に、反動によって羽根車が振られやすいという問題があった。このため、使用者が攪拌機の操作になれていない場合には、羽根車を容器にぶつけたり、被攪拌物を容器外に飛散させたりといったような事態が頻発していた。
【0006】
また、羽根車では、被攪拌物に沈降物が含まれるような場合に、羽根車を容器の底壁に接触させながら攪拌を行わなければ沈降物をうまく分散させることができないため、羽根車と容器の壁面の接触により発生する破片や削りカスが被攪拌物内に混入しやすいという問題があった。
【0007】
また、羽根車を備える攪拌機では、被攪拌物内に混入された粉末粒子が羽根車との衝突により粉砕される場合があるという問題があった。このため、例えばメタリック塗料のように、混入された粉末粒子を微細化したくないような場合には、十分な攪拌を行うことが困難であった。
【0008】
一方、プロペラ翼やタービン翼を使用するのではなく、外形が六角柱状の筒体から羽根車を構成すると共に、側面に複数の孔を設けた高粘性流体用ミキサー等も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−154368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載の高粘性流体用ミキサーでは、羽根車の外形が六角柱状であり、主として羽根車の外壁を被攪拌物に衝突させることによって被攪拌物を流動させるものであるため、上述した回転開始時の反動の問題、および被攪拌物内の粉末粒子の粉砕の問題を解消するものではなかった。
【0011】
また、側面の孔から被攪拌物を流出させるようにしているものの、側面の孔に対して羽根車内部の容積が大きいため、羽根車内部の流速が低く、長時間使用した場合に滞留物が羽根車の内側に付着して堆積し、攪拌能力が低下しやすいという問題があった。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなされたものであって、用途を問わずに安全且つ効率的な攪拌を行うことが可能な攪拌用回転体および攪拌装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明は、回転軸を中心に回転する本体と、前記本体の表面に設けられる吸入口と、前記本体の表面に設けられる吐出口と、前記吸入口と前記吐出口を繋ぐ流通路と、を備え、前記吸入口は、前記吐出口よりも前記回転軸に近い位置に配置され、前記吐出口は、前記吸入口よりも前記回転軸から遠心方向外側の位置に配置され、前記吸入口または前記吐出口の少なくとも一方は、長孔であることを特徴とする、攪拌用回転体である。
【0014】
(2)本発明はまた、前記吐出口は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、前記回転軸方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、上記(1)に記載の攪拌用回転体である。
【0015】
(3)本発明はまた、前記吐出口は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、前記回転軸に対して角度を有する方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、上記(1)に記載の攪拌用回転体である。
【0016】
(4)本発明はまた、前記吐出口は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、前記回転軸に対して直交する方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、上記(3)に記載の攪拌用回転体である。
【0017】
(5)本発明はまた、前記吸入口は、前記回転軸方向から見た場合に、前記回転軸の遠心方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の攪拌用回転体である。
【0018】
(6)本発明はまた、前記吸入口は、前記回転軸方向から見た場合に、前記回転軸を中心とする円周の接線方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の攪拌用回転体である。
【0019】
(7)本発明はまた、前記吸入口は、前記回転軸方向から見た場合に、前記回転軸を中心とする円周の接線方向に対して角度を有する方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の攪拌用回転体である。
【0020】
(8)本発明はまた、前記吸入口または前記吐出口の少なくとも一方は、湾曲した長孔であることを特徴とする、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の攪拌用回転体である。
【0021】
(9)本発明はまた、前記吸入口または前記吐出口に対応する開口を備えると共に、前記本体の表面に沿ういずれかの方向にスライド可能に配置され、スライドによって前記吸入口または前記吐出口の開口面積を変更するスライド部材を備えることを特徴とする、上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の攪拌用回転体である。
【0022】
(10)本発明はまた、上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の攪拌用回転体を、前記回転軸方向に複数配置して構成されることを特徴とする、攪拌装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、用途を問わずに安全且つ効率的な攪拌を行うことが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)本発明の第1の実施形態に係る攪拌用回転体の一例を示した平面図である。(b)同攪拌用回転体の一例を示した正面図(側面図も同一)である。(c)同攪拌用回転体の一例を示した底面図である。
【図2】(a)攪拌用回転体の作動を示した平面図である。(b)攪拌用回転体の作動を示した正面図である。(c)吐出口を拡大して示した図である。
【図3】(a)および(b)攪拌用回転体の使用例を示した概略図である。
【図4】(a)〜(c)流通路を吐出口に向けて漸次拡大または縮小するように構成した例を示した図である。
【図5】(a)〜(c)吐出口を中心軸に直交する方向を長手方向とする長孔に構成した例を示した図である。
【図6】(a)〜(c)吐出口を中心軸に直交する方向を長手方向とする長孔に構成した例を示した図である。
【図7】(a)〜(c)吐出口のその他の形態の例を示した正面図(側面図)である。
【図8】(a)駆動軸側に吸入口を設けた例を示した正面図(側面図)である。(b)攪拌用回転体を異物の捕獲が可能に構成した例を示した正面図(側面図)である。(c)本体を球状に構成した例を示した正面図(側面図)である。
【図9】(a)第2の実施形態に係る攪拌用回転体の一例を示した平面図である。(b)は、同攪拌用回転体の一例を示した正面図(側面図)である。(c)同攪拌用回転体の一例を示した底面図である。
【図10】(a)〜(c)吸入口のその他の形態を示した底面図である。
【図11】(a)〜(c)吸入口のその他の形態を示した底面図である。
【図12】(a)第3の実施形態に係る攪拌用回転体の一例を示した平面図である。(b)同攪拌用回転体の一例を示した正面図(側面図)である。(c)同攪拌用回転体の一例を示した底面図である。
【図13】(a)第4の実施形態に係る攪拌用回転体の一例を示した正面図(側面図)である。(b)同攪拌用回転体の一例を示した底面図である。(c)スライド部材をスライド回転させた状態を示した正面図(側面図)である。
【図14】(a)攪拌用回転体のもう1つの例を示した正面図(側面図)である。(b)攪拌用回転体のもう1つの例を示した底面図である。(c)攪拌用回転体のその他の形態の例を示した正面図(側面図)である。
【図15】第5の実施形態に係る攪拌装置の一例を示した正面図(側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0026】
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態に係る攪拌用回転体1の構造について説明する。図1(a)は、攪拌用回転体1の一例を示した平面図であり、同図(b)は、攪拌用回転体1の一例を示した正面図(側面図も同一)であり、同図(c)は、攪拌用回転体1の一例を示した底面図である。これらの図に示されるように、攪拌用回転体1は、略砲弾形状の本体10と、本体10の表面に設けられた複数の吸入口12と、本体10の表面に設けられた複数の吐出口14と、吸入口12と吐出口14を繋ぐように本体10の内部に形成された流通路16から構成されている。
【0027】
本体10は、この例では、略砲弾形状、詳細には円柱の一方の底面10bを球面状に構成した形状、換言すれば円柱と半球を組み合わせた形状となっている。本体10の他方の底面10aの中心には、モータ等の駆動装置の駆動軸20が接続される接続部18が設けられている。従って、攪拌用回転体1は、本体10の中心軸Cを回転軸として回転するように構成されている。なお、駆動軸20と接続部18の接続方法は、例えばネジや係合等、既知のいずれの方法であってもよい。
【0028】
本実施形態では、本体10を流通路16以外の部分を中実に構成することで、本体10の強度を高めるようにしている。本体10を構成する材質は、特に限定されるものではなく、例えば金属やセラミックス、樹脂、ゴム、木材等、使用条件に応じた適宜の材質を採用することができる。本実施形態の本体10は、シンプルで加工しやすい形態となっているため、製造方法に制限されることなく、多種多様な材質から本体10を構成することが可能となっている。
【0029】
また、本体10をこのようにシンプルな形状に構成することより、回転軸に対する不釣合いの発生を少なくすることができる。このため、本実施形態では、不釣合いの発生しやすい羽根車等とは異なり、回転時の振動や振れ回り等を略解消することが可能となっている。
【0030】
吸入口12は、本体10における接続部18の反対側の底面10b(すなわち、本体10の先端部)に設けられている。本実施形態では、4つの吸入口12を中心軸Cを中心とする円周上に等間隔で並べて配置すると共に、中心軸Cと同一方向に形成している。吐出口14は、本体10の側面10cに設けられている。本実施形態では、4つの吐出口14を、各吸入口12に対して本体10の半径方向(遠心方向)外側となる位置(中心軸Cから中心軸Cに垂直な方向に離れた位置)にそれぞれ配置している。また、中心軸Cに対して直交する方向に吐出口14を形成している。
【0031】
吸入口12および吐出口14の形状(断面形状)は特に限定されるものではないが、本実施形態の攪拌用回転体1は、吐出口14を長孔に構成することを特徴としている。詳細には、この例の吐出口14は、同図(b)に示されるように、吐出口14の断面に垂直な方向から見た場合に、中心軸C方向(または、中心軸C方向と平行な方向)を長手方向とする長円形状に形成されている。詳細は後述するが、このように吐出口14を長孔に構成することにより、攪拌能力を向上または調整することが可能となっている。なお、本実施形態では、吸入口12を円形に構成しているが、長孔以外の形状であればその他の形状であってもよい。
【0032】
流通路16は、1つの吸入口12と1つの吐出口14を繋ぐ通路として形成されている。従って、本体10の内部には、4つの流通路16が形成されている。各流通路16は、吸入口12から中心軸C方向に沿って直進した後に直角に曲がり、本体10の遠心方向に向けて直進して吐出口14に到達するように形成されている。すなわち、本実施形態の流通路16は、中心軸C方向の軸方向部分16aおよび遠心方向の遠心方向部分16bから構成されている。
【0033】
本実施形態では、流通路16をこのように構成することで、ドリル等による穴加工で容易に吸入口12、吐出口14および流通路16を形成できるようにしている。具体的には、吸入口12の位置から中心軸C方向に沿った穴加工、および吐出口14の位置から中心軸Cに向けた穴加工によって容易に吸入口12、吐出口14および流通路16を形成することができる。
【0034】
なお、流通路16の断面形状は、特に限定されるものではなく、吸入口12および吐出口14の形状(断面形状)や位置、または加工方法等に応じて適宜の形状に構成することができる。
【0035】
また、本実施形態では、加工のしやすさから流通路16を略直角に曲折するL字状に構成しているが、これに限定されるものではなく、滑らかに湾曲した曲線状の通路として流通路16を構成してもよいし、吸入口12と吐出口14を一直線状に繋ぐように流通路16を構成してもよい。流通路16をこのように構成することで、流通路16内の流動抵抗を減少させることができるため、攪拌用回転体1が引き起こす流動をさらに強力にし、攪拌能力を向上させることができる。
【0036】
次に、攪拌用回転体1の作動について説明する。図2(a)は攪拌用回転体1の作動を示した平面図であり、同図(b)は攪拌用回転体1の作動を示した正面図である。また、同図(c)は、吐出口14を拡大して示した図である。攪拌用回転体1は、流体である被攪拌物内において、駆動軸20に駆動されて中心軸Cを中心に回転することにより、被攪拌物を攪拌する。
【0037】
流体中に攪拌用回転体1を浸漬して回転させると、流通路16内に進入した流体も攪拌用回転体1と共に回転することとなる。すると、流通路16内の流体に遠心力が作用し、これらの図に示されるように、流通路16内の流体は攪拌用回転体1の半径方向外側に向けて流動する。吐出口14は、吸入口12よりも本体10の半径方向外側に設けられているため、吐出口14では吸入口12よりも強い遠心力が働くこととなる。従って、流体は、攪拌用回転体1が回転している限り吸入口12から吐出口14に向けて流動する。すなわち、流通路16内の流体が吐出口14から噴出すると共に、外部の流体が吸入口12から流通路16内に吸引される。これにより、攪拌用回転体1の周囲の流体には、吐出口14のある側面10cから放射状に広がる流動と、吸入口12のある攪拌用回転体1の先端部に向かう流動が発生することとなる。なお、攪拌用回転体1の先端部に向かう流動は、吸入口12の回転により旋回流となる。
【0038】
また、流体中に攪拌用回転体1を浸漬して回転させると、攪拌用回転体1の表面近傍の流体が粘性の影響により攪拌用回転体1と共に回転することとなる。従って、攪拌用回転体1の表面近傍の流体にも遠心力が働き、これらの図に示されるように、表面近傍の流体は攪拌用回転体1の表面に沿って側面10cまで流動し、吐出口14からの噴流の随伴流となる。
【0039】
本実施形態では、底面10bを球面状に構成することにより、本体10の形状を中心軸C方向の厚みが半径方向外側に向けて漸次減少する形状としているため、攪拌用回転体1の底面10b近傍の流動を、側面10cから放射状に広がる流動にスムーズに合流させることを可能としている。また、底面10bをこのような形状にすることで、攪拌用回転体1の先端に向かう流動の一部を、底面10bに沿って側面10cまでスムーズに流動させて、側面10cから放射状に広がる流動に合流させることを可能としている。この結果、攪拌用回転体1は、周囲の流体に強力な流動を発生させ、効率的な攪拌を行うことが可能となっている。
【0040】
さらに、本実施形態では、吐出口14を、中心軸C方向を長手方向とする長孔とすることにより、中心軸C方向の広い範囲にわたって放射状の流動を発生させることを可能としている。すなわち、吐出口14から中心軸C方向に幅広い噴流を発生させることにより、攪拌用回転体1から放射状に広がる流動の中心軸C方向の範囲を広げることが可能となっている。
【0041】
吐出口14からの噴流の幅を広げるためには、吐出口14を拡大すればよいが、単に拡大しただけでは、吐出口14からの噴流の流速が低下してしまうため、攪拌能力が低下してしまう場合がある。そこで、本実施形態では、吐出口14を長孔に構成することにより、噴流の幅を広げながらも、流速が低下しないようにしている。すなわち、同図(c)に示されるように、噴流の範囲に応じて吐出口14の長手方向寸法Lを設定した後に、短手方向寸法Sによって吐出口14の断面積を調整することで、適宜の流速を保つようにしている。
【0042】
このようにすることで、流速を低下させることなく攪拌用回転体1から放射状に広がる流動の範囲を広げることが可能となるため、従来以上に攪拌能力を向上させることができる。また、吐出口14の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sを調整することにより、攪拌能力を適宜に調整することが可能となる。
【0043】
なお、吸入口12に対して吐出口14を回転方向にずらして配置し、流通路16の吐出口14へ繋がる部分を攪拌用回転体1の遠心方向に対して角度を有するように構成してもよい。また、吐出口14を中心軸C方向にずらして配置し、流通路16の吐出口14へ繋がる部分を本体10の先端側(接続部18の反対側)、または駆動軸側(接続部18側)に向けるようにしてもよい。このようにして、吐出口14からの噴出方向を適宜に設定することにより、効率的な攪拌に最も適した流動を得ることができる。また、複数の吐出口14に対して1つの吸入口12を設け、流通路16を1つの吸入口12から複数の吐出口14に分岐するように構成してもよい。
【0044】
図3(a)および(b)は、攪拌用回転体1の使用例を示した概略図である。これらの図に示されるように、攪拌用回転体1は、モータ等の駆動装置30に繋がる駆動軸20に接続され、容器40内に収容された流体である被攪拌物50内に浸漬された状態で使用される。駆動装置30は、容器40や架台等に固定されるものであってもよいし、使用者が保持して操作するものであってもよい。
【0045】
駆動装置30によって攪拌用回転体1を回転させることにより、上述のように攪拌用回転体1から放射状に広がる流動、および攪拌用回転体1の先端部に向かう旋回流(渦)が発生する。これにより、同図(a)および(b)に示されるように、被攪拌物50内に複雑な循環流が発生し、この循環流により被攪拌物50は十分に攪拌される。
【0046】
容器40の底に滞留している滞留物を分散させる場合には、攪拌用回転体1の先端部を容器40の底に近づければよい。このようにすることで、吸入口12から滞留物を吸い上げて吐出口14から噴出し、滞留物を被攪拌物50内に十分に分散させることができる。また、容器40の角部に滞留している滞留物を分散させる場合には、攪拌用回転体1の先端部を容器40の角部に近づければよい。本実施形態では、本体10を略砲弾形状に構成しているため、狭隘な角部にも吸入口12を十分に近づけることができる。
【0047】
本実施形態では、本体10を略砲弾形状に構成することにより、回転時に被攪拌物50と衝突しないようにしているため、回転開始時の反動がほとんど生じないようになっている。また、羽根車等とは異なり、本体10に鋭利な突起物を備えていないことから、攪拌用回転体1を容器40の壁面にぶつけた場合にも攪拌用回転体1または容器40が破損したり削れたりする可能性が低くなっている。このため、安心して攪拌用回転体1を容器40の壁面に近づけることができ、容器40の隅々まで十分に攪拌を行うことが可能であると共に、攪拌用回転体1または容器40の破片や削りカス等が被攪拌物50に混入し難いようになっている。
【0048】
また、本実施形態では、攪拌用回転体1の先端部中心(回転軸である中心軸C)のやや外側に吸入口12を配置することにより、攪拌用回転体1の先端部を容器40の壁面に接触させた場合にも吸入口12が塞がれないようにしている。このため、容器40の壁面近くにおいても安定して攪拌用回転体1を操作することができる。
【0049】
次に、攪拌用回転体1のその他の形態について説明する。まず図4(a)〜(c)は、流通路16を吐出口14に向けて漸次拡大または縮小するように構成した例を示した図である。なお、同図(a)は、正面図(側面図)であり、同図(b)および(c)は、底面図である。
【0050】
本実施形態では、吐出口14を吸入口12とは異なる形状の長孔に構成しているため、流通路16の断面形状を途中で変化させる必要がある。この場合に、吐出口14の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sに合わせて、流通路16の少なくとも一部を漸次拡大または縮小するように構成することにより、流通路16内のよどみを解消し、流動をスムーズにすることができる。
【0051】
ここで、同図(a)は、吐出口14の長手方向寸法Lに合わせて、流通路16の遠心方向部分16bを漸次拡大した例を示している。また、同図(b)は、吐出口14の短手方向寸法Sに合わせて流通路16の遠心方向部分16bを漸次拡大した例を、同図(c)は、吐出口14の短手方向寸法Sに合わせて流通路16の遠心方向部分16bを漸次縮小した例を示している。なお、流通路16の軸方向部分16aを、漸次拡大または縮小するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0052】
図5(a)〜(c)および図6(a)〜(c)は、吐出口14を中心軸Cに直交する方向を長手方向とする長孔に構成した例を示した図である。なお、図5(a)および(c)ならびに図6(a)および(b)は、正面図(側面図)であり、図5(b)ならびに図6(c)は、底面図である。
【0053】
この例の吐出口14は、詳細には図5(a)に示されるように、吐出口14の断面に垂直な方向から見た場合に、中心軸Cに直交する方向を長手方向とする長円形状に形成されている。攪拌用回転体1の用途によっては、吐出口14をこのような長孔に構成することにより、効率的な攪拌を行うことができる。
【0054】
例えば、被攪拌物50の液面を波立たせることなく効率的な攪拌を行う必要がある場合、攪拌用回転体1の先端部(すなわち吸入口12)に向かう旋回流の強さを維持しつつ、攪拌用回転体1から放射状に広がる流動を弱めることが効果的である。
【0055】
このような場合、吐出口14を、中心軸Cに直交する方向を長手方向とする長孔に構成すれば、吐出口14を攪拌用回転体1の回転方向に拡大(延長)することとなるため、攪拌用回転体1から放射状に広がる流動の中心軸C方向の範囲を広げることなく、流速を低下させることができる。そして、吸入口12と吐出口14の断面積比を適宜に設定すれば、攪拌用回転体1の先端部に向かう旋回流の強さを維持することができる。
【0056】
この例においても、攪拌用回転体1から放射状に広がる流動の強さおよび範囲は、吐出口14の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sを適宜に設定することにより、調整することができる。また、図5(b)および(c)ならびに図6(a)に示されるように、吐出口14の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sに合わせて、流通路16の少なくとも一部を漸次拡大または縮小するように構成することにより、流通路16内の流動をスムーズにすることができる。
【0057】
なお、図5(b)は、吐出口14の長手方向寸法Lに合わせて、流通路16の遠心方向部分16bを漸次拡大した例を示している。また、図5(c)は、吐出口14の短手方向寸法Sに合わせて流通路16の遠心方向部分16bを漸次拡大した例を、図6(a)は、吐出口14の短手方向寸法Sに合わせて流通路16の遠心方向部分16bを漸次縮小した例を示している。
【0058】
図6(b)および(c)は、吸入口12の位置に対する吐出口14の位置を回転方向にずらして配置した例を示している。このように吐出口14の位置をずらすことにより、吐出口14からの噴流の方向を適宜に変化させることができるため、攪拌用回転体1から放射状に広がる流動の状態を、より細かく調整することができる。
【0059】
図7(a)〜(c)は、吐出口14のその他の形態の例を示した正面図(側面図)である。同図(a)は、吐出口14を、吐出口14の断面に垂直な方向から見た場合に、中心軸Cに対して角度を有する方向を長手方向とする長円形状に形成した例を示している。このように、吐出口14を中心軸Cに対して斜めに配置することにより、攪拌用回転体1の回転と相俟って吐出口14からの噴流をより複雑な流れにすることが可能となるため、攪拌能力を向上させることができる。すなわち、本実施形態では、長孔に構成した吐出口14の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sと共に、長手方向の向きを調整することによって、攪拌能力を適宜に調整することが可能となっている。
【0060】
同図(b)は、吐出口14を長方形状に構成した例を示している。また、同図(c)は、吐出口14を円弧状に湾曲した長円形状に構成した例を示している。このように、吐出口14の形状は、上述の例で示した長円形状以外にも、長方形状や楕円形状、多角形状等、長孔となる種々の形状を採用することができる。また、吐出口14の形状は、長円形や長方形等が湾曲した形状であってもよい。なお、吐出口14を湾曲した形状とする場合、円弧状の他に、U字状、V字状、W字状、またはS字状等に湾曲した形状であってもよい。
【0061】
図8(a)は、駆動軸側に吸入口12を設けた例を示した正面図(側面図)である。同図は、4つの吸入口12のうち、2つの吸入口12を駆動軸側の底面10aに設けた例を示している。吸入口12は、このように複数の吸入口12の一部を先端側に配置し、残りの一部を駆動軸側に配置するようにしてもよい。また、用途によっては、全ての吸入口12を駆動軸側に設けるようにしてもよい。
【0062】
吸入口12の配置を適宜に設定することで、用途に応じた最適な流動を発生させるようにすることができる。また、駆動軸側の吸入口12を流体の液面に近づけて流体外部の気体を吸引するようにすれば、流体中に積極的に外部の気体を取り込むことができる。これにより、流体中に気体を溶け込ませたり、流体中に気泡を混入させたりすることができる。
【0063】
なお、本体10に被攪拌物50の外部の気体を吸引するための専用の吸気口を設けると共に、この吸気口と吐出口14を繋ぐ通気路を設けるようにしてもよい。このように、本体10に吸気口および通気路を設けた場合、吸気口を流体外部に露出させた状態または流体外部の気体に触れる状態で攪拌用回転体1を回転させることにより、容易に流体中に気体を溶け込ませたり、流体中に気泡を混入させたりすることができる。
【0064】
図8(b)は、攪拌用回転体1を異物の捕獲が可能に構成した例を示した正面図(側面図)である。同図では、流通路16の吐出口14近傍にゴミ等の異物捕獲用のフィルタ60を設けた例を示している。このように、流通路16の途中にフィルタ60を設けることにより、被攪拌物50中に含まれる異物の除去を攪拌と同時に行うことが可能となる。フィルタ60は、例えば金網やスポンジ等、用途に応じた材質から構成すればよい。なお、フィルタ60を配置する位置は、同図(a)に示す位置に限定されるものではなく、その他の位置であってもよい。
【0065】
本実施形態では、吐出口14を長孔に構成しているため、吐出口14の長手方向寸法L、短手方向寸法S、および長手方向の向きを適宜に設定することにより、本体10の大きさや形状によらず、吐出口14およびその近傍の流通路16の断面積を、効率的な異物の捕獲に必要な断面積にすることが可能となっている。すなわち、本実施形態によれば、上述したような攪拌能力の向上や調整だけではなく、異物捕獲能力も向上させることができる。
【0066】
図8(c)は、本体10を球状に構成した例を示した正面図(側面図)である。このように、本体10の形状は、上述の例で示した略砲弾形状に限定されるものではなく、球状、部分球状、楕円体状、部分楕円体状、円柱状、円盤状、円錐状、または円錐台状等であってもよいし、これらの立体を組み合わせて構成される形状であってもよい。
【0067】
また、本体10の形状は、安全性や容器等への衝突の点からは、回転軸(中心軸C)に垂直な断面が円形となる上記したような形状であることが好ましいが、本体10の形状はこれに限定されるものではなく、回転軸(中心軸C)に垂直な断面が円形以外となる形状であってもよい。すなわち、本体10の形状は、例えば多角柱状、多角錐状、または多角錐台状等であってもよいし、種々の立体を組み合わせて構成される形状であってもよい。さらに、本体10の表面に複数の凸部や凹部を設けるようにしてもよい。
【0068】
このように、本体10を適宜の凹凸を備えた形状に構成することで、攪拌用回転体1の周囲に適度な渦流を発生させることが可能となり、これにより、攪拌能力をさらに向上させることができる場合がある。さらに、本体10の形状の設定に加えて、本体10表面の粗さや、より細かい凹凸形状を適宜に設定することによって、攪拌用回転体1の周囲の流動をより精密に制御するようにしてもよい。また、本体10の表面に各種の彩色を施して意匠性を向上させるようにしてもよい。
【0069】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る攪拌用回転体2について説明する。本実施形態の攪拌用回転体2は、吸入口12を長孔に構成することを特徴としており、その他の基本的な構成および作動は、第1の実施形態と同一である。従って、同一部分については、図中において同一符号を付すと共にその説明を省略し、以下、第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0070】
図9(a)は、攪拌用回転体2の一例を示した平面図であり、同図(b)は、攪拌用回転体2の一例を示した正面図(側面図)であり、同図(c)は、攪拌用回転体2の一例を示した底面図である。上述のように、本実施形態の攪拌用回転体2は、吸入口12を長孔に構成することを特徴としている。詳細には、この例の吸入口12は、同図(a)または(c)に示されるように、中心軸C(回転軸)方向から見た場合に、中心軸Cの遠心方向(半径方向)を長手方向とする、長円形状に形成されている。
【0071】
被攪拌物50中において、攪拌用回転体2の先端部に向かう流動は、吸入口12が本体10と共に回転することによって旋回流となるが、本実施形態では、吸入口12を、中心軸Cの遠心方向を長手方向とする長孔とすることにより、この旋回流を拡大することが可能となっている。
【0072】
すなわち、吸入口12をこのような長孔に構成し、長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sを適宜に調整することで、吸入口12に向かう流動の範囲を遠心方向に広げながらも、吸入口12における流速、すなわち吸引力を低下させないようにすることが可能となる。これにより、本実施形態では、被攪拌物50中において、攪拌用回転体2の先端部から先の領域に大きく強い旋回流を発生させることができるため、攪拌能力を向上させることが可能となっている。
【0073】
また、吸入口12をこのような長孔に構成することで、吸入口12の長手方向両端部における周速および作用する遠心力に差を生じさせることができる。これにより、流通路16内の流動および吐出口14からの噴流に乱れを生じさせることが可能となるため、さらに攪拌能力を向上させることができる。
【0074】
なお、本実施形態では、吸入口12を円形に構成しているが、長孔以外の形状であればその他の形状であってもよい。また、流通路16は、吸入口12および吐出口14の寸法に応じて、適宜に漸次拡大または縮小させるようにすることができる。
【0075】
次に、攪拌用回転体2のその他の形態について説明する。図10(a)〜(c)および図11(a)〜(c)は、吸入口12のその他の形態を示した底面図である。図10(a)は、吸入口12を8つ設けた例を示している。作用する遠心力の大きさを考慮すると、吸入口12は、なるべく回転軸である中心軸Cに近づけて配置することが好ましいが、吸入口12を、中心軸Cの遠心方向を長手方向とする長孔とすることにより、中心軸C近傍の狭いスペースに、より多くの吸入口12を配置することが可能となる。すなわち、より多くの吸入口12を、断面積を減少させることなく中心軸Cに近づけて配置すると共に、吸入口12の個数に応じて吐出口14の個数も増やすことが可能となるため、攪拌能力を向上させることができる。
【0076】
同図(b)は、吸入口12を、中心軸C方向から見た場合に、中心軸Cを中心とする円周の接線方向を長手方向とする長円形状に構成した例を示している。また、同図(c)は、吸入口12を、中心軸C方向から見た場合に、中心軸Cを中心とする円周の接線方向に対して角度を有する方向を長手方向とする長円形状に構成した例を示している。
【0077】
このように、長孔に構成した吸入口12の長手方向の向きを調整することにより、攪拌用回転体1の回転と相俟って吸入口12に向かう旋回流の状態を適宜に調整することができる。また、吐出口14からの噴流の乱れの状態を調整することも可能となるため、攪拌能力を調整することができる。すなわち、本実施形態では、長孔に構成した吸入口12の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sと共に、長手方向の向きを調整することによって、攪拌能力を適宜に調整することが可能となっている。
【0078】
図11(a)は、吸入口12を長方形状に構成した例を示している。また、同図(b)および(c)は、吸入口12を円弧状に湾曲した長円形状に構成した例を示している。このように、吸入口12の形状は、長円形状以外にも、長方形状や楕円形状、多角形状等、長孔となる種々の形状を採用することができる。また、吸入口12の形状は、長円形や長方形等が湾曲した形状であってもよく、円弧状の他に、U字状、V字状、W字状、またはS字状等に湾曲した形状であってもよい。
【0079】
ここで、同図(b)に示されるように、吸入口12を円弧状に湾曲した形状に構成すると共に、長手方向が中心軸Cを中心とする円周の接線方向となるように配置することにより、断面積を減少させることなく吸入口12を中心軸Cに近づけることができる。また、同図(c)に示されるように、吸入口12を、長手方向が中心軸Cを中心とする円周の接線方向に対して角度を有する方向となるように配置すると共に、適宜に湾曲させることにより、吸入口12に向かう旋回流の状態、および吐出口14からの噴流の乱れの状態をより細かく調整することができる。
【0080】
また、図示は省略するが、吸入口12を長孔に構成することにより、吸入口12を中心軸Cに近づけながらも断面積を大きくすることができるため、吸入口12の近傍に異物捕獲用のフィルタ60を設けた場合にも、異物捕獲能力を向上させることができる。
【0081】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係る攪拌用回転体3について説明する。本実施形態の攪拌用回転体3は、吸入口12および吐出口14をそれぞれ長孔に構成することを特徴としており、その他の基本的な構成および作動は、第1および第2の実施形態と同一である。従って、同一部分については、図中において同一符号を付すと共にその説明を省略し、以下、第1および第2の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0082】
図12(a)は、攪拌用回転体3の一例を示した平面図であり、同図(b)は、攪拌用回転体3の一例を示した正面図(側面図)であり、同図(c)は、攪拌用回転体3の一例を示した底面図である。上述のように、本実施形態の攪拌用回転体3は、吸入口12および吐出口14をそれぞれ長孔に構成することを特徴としている。
【0083】
同図(a)〜(c)に示す例では、吸入口12は、中心軸C(回転軸)方向から見た場合に、中心軸Cの遠心方向を長手方向とする、長円形状に形成されており、吐出口14は、吐出口14の断面に垂直な方向から見た場合に、中心軸C方向(または、中心軸C方向と平行な方向)を長手方向とする長円形状に形成されているが、吸入口12および吐出口14の形状は、長孔であればその他の形状であってもよい。すなわち、吸入口12および吐出口14の形状は、第1および第2の実施形態で示したような種々の形状を採用することができる。
【0084】
このように、吸入口12および吐出口14をそれぞれ長孔に構成し、それぞれの長手方向寸法L、短手方向寸法S、および長手方向の向きを適宜に設定することで、攪拌用回転体3の先端部に向かう流動、および攪拌用回転体3から放射状に広がる流動の状態を調整することができる。すなわち、本実施形態では、攪拌用回転体3の攪拌能力を、用途等に応じてより細かく調整することが可能となっている。
【0085】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態に係る攪拌用回転体4について説明する。本実施形態の攪拌用回転体4は、第1〜3の実施形態の攪拌用回転体1〜3にスライド部材70、80、90を適用したものであり、その他の基本的な構成および作動は、第1〜3の実施形態と同一である。従って、同一部分については、図中において同一符号を付すと共にその説明を省略し、以下、第1〜3の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0086】
図13(a)は、攪拌用回転体4の一例を示した正面図(側面図)であり、同図(b)は、攪拌用回転体4の一例を示した底面図である。これらの図に示されるように、この例の攪拌用回転体4は、4つの吐出口14が中心軸Cに直交する方を長手方向とする長孔にそれぞれ構成されると共に、本体10の側面10cを覆うように配置される円筒状のスライド部材70を備えている。
【0087】
このスライド部材70は、吐出口14の開口面積を変更するものである。従って、スライド部材70は、4つの吐出口14のそれぞれに対応する位置に、吐出口14と略同形状の開口72が形成されている。また、スライド部材70は、既知の適宜の手法により、本体10の表面(側面10c)に沿って、本体10の円周方向に(すなわち、中心軸Cを中心として)スライド回転可能に配置されている。
【0088】
同図(c)は、スライド部材70をスライド回転させた状態を示した正面図(側面図)である。同図に示されるように、この例では、スライド部材70をスライド回転させて吐出口14と開口72の相対的位置を変化させ、吐出口14の一部をスライド部材70で閉塞することにより、吐出口14の開口面積を変更可能となっている。
【0089】
このように、吐出口14の開口面積を変更することで、吐出口14からの噴流の状態および流速を適宜に調節することができる。なお、スライド部材70は、本体10の表面に沿って中心軸C方向にスライド移動可能に配置されるものであってもよい。
【0090】
図14(a)は、攪拌用回転体4のもう1つの例を示した正面図(側面図)であり、同図(b)は、攪拌用回転体4のもう1つの例を示した底面図である。これらの図に示されるように、この例の攪拌用回転体4は、吸入口12および吐出口14をそれぞれ3つ備えており、3つの吸入口12は、中心軸Cを中心とする円周に沿って円弧状に湾曲した長孔にそれぞれ構成されている。そして、この例の攪拌用回転体4は、本体10の底面10bを覆うように配置される略半球のカップ状のスライド部材80を備えている。
【0091】
このスライド部材80は、吸入口12の開口面積を変更するものである。従って、スライド部材80は、3つの吸入口12のそれぞれに対応する位置に、吸入口12と略同形状の開口82が形成されている。また、スライド部材80は、既知の適宜の手法により、本体10の表面(底面10b)に沿って、本体10の円周方向に(すなわち、中心軸Cを中心として)スライド回転可能に配置されている。
【0092】
従って、この例では、同図(b)に示されるように、スライド部材80をスライド回転させて吸入口12と開口82の相対的位置を変化させ、吸入口12の一部をスライド部材80で閉塞することにより、吸入口12の開口面積を変更可能となっている。このように、吸入口12の開口面積を変更することで、吸入口12に向かう流動の状態および流速を適宜に調節することができる。
【0093】
なお、本実施形態の攪拌用回転体4は、吐出口14の開口面積を変更するスライド部材70、および吸入口12の開口面積を変更するスライド部材80の両方を備えるものであってもよい。また、この場合、スライド部材70およびスライド部材80を一体的に構成するようにしてもよい。
【0094】
また、スライド部材70およびスライド部材80の形状は、特に限定されるものではなく、本体10の形状や、吸入口12および吐出口14の形状および配置に応じた適宜の形状を採用することができる。また、スライド部材70およびスライド部材80の材質は、特に限定されるものではないが、例えば各種ゴムや樹脂等の軟質の材料から構成すれば、攪拌用回転体4の安全性を高めることも可能となる。すなわち、スライド部材70およびスライド部材80は、安全カバーとしても機能させることができる。
【0095】
また、吸入口12および吐出口14の形状および長手方向の向きは、特に限定されるものではなく、種々の形状および向きを採用することができる。また、吸入口12および吐出口14の形状とは異なる形状の開口72、82を対応させるようにしてもよい。
【0096】
同図(c)は、攪拌用回転体4のその他の形態の例を示した正面図(側面図)である。この例の攪拌用回転体4は、吐出口14ごとに個別にスライド部材90を備えている。このスライド部材90は、複数の吐出口14のうちのいずれか1つの吐出口14に対応する開口92が形成され、この吐出口14に対応する位置に配置されている。そして、スライド部材90は、ガイド部材94等の既知の手法により、本体10の表面に沿って所定の方向にスライド移動可能に配置され、吐出口14と開口92の相対的位置を変化させることによって吐出口14の開口面積を変更可能に構成されている。
【0097】
このように、吐出口14ごとに個別にスライド部材90を設けることにより、吐出口14の開口面積を個別に変更することが可能となる。なお、スライド部材90のスライド移動の方向は、特に限定されるものではなく、吐出口14の形状等に応じた方向とすることができる。また、同様の構成により、吸入口12の開口面積を個別に変更可能なスライド部材を設けてもよいことは言うまでもない。
【0098】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態に係る攪拌装置5について説明する。本実施形態の攪拌装置5は、第1〜4の実施形態の攪拌用回転体1〜4を回転軸方向に複数連結したものである。図15は、攪拌装置5の一例を示した正面図(側面図)であり、駆動軸20を介して3つの攪拌用回転体3を連結した例を示している。
【0099】
このように、複数の攪拌用回転体3を回転軸方向に連結することで、攪拌能力をさらに向上させることができる。特に、攪拌する流体の深さが深い場合に効果的である。なお、攪拌装置5は、攪拌用回転体1、2、4を複数連結したものであってもよく、攪拌用回転体1〜4を適宜に組み合わせて連結したものであってもよい。
【0100】
以上説明したように、上記各実施形態に係る攪拌用回転体1〜4は、回転軸(中心軸C)を中心に回転する本体10と、本体10の表面に設けられる吸入口12と、本体10の表面に設けられる吐出口14と、吸入口12と吐出口14を繋ぐ流通路16と、を備え、吸入口12は、吐出口14よりも回転軸に近い位置に配置され、吐出口14は、吸入口12よりも回転軸から遠心方向外側の位置に配置され、吸入口12または吐出口14の少なくとも一方は、長孔に構成されている。
【0101】
このような構成とすることで、用途を問わずに安全且つ効率的な攪拌を行うことができる。具体的には、長孔に構成した吸入口12または吐出口14の長手方向寸法L、短手方向寸法S、および長手方向の向きを適宜に設定することで、攪拌用回転体1〜4の先端部に向かう流動、および攪拌用回転体1〜4から放射状に広がる流動の状態を調整することができる。これにより、被攪拌物50の性質や攪拌用回転体1〜4の使用状態等に応じて、攪拌用回転体1〜4の攪拌能力を調整することができるため、安全且つ効率的な攪拌を行うことが可能となる。
【0102】
また、吐出口14は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、回転軸(中心軸C)方向を長手方向とする長孔に構成することができる。この場合、流速を低下させることなく吐出口14からの噴流の範囲を回転軸方向に広げることが可能となるため、攪拌能力を適宜に調整することができる。
【0103】
また、吐出口14は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、回転軸(中心軸C)に対して角度を有する方向を長手方向とする長孔に構成することができる。この場合、吐出口14の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sと共に、長手方向の向きを調整することによって吐出口14からの噴流の状態を変化させ、攪拌能力を適宜に調整することができる。
【0104】
また、吐出口14は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、回転軸(中心軸C)に対して直交する方向を長手方向とする長孔に構成することができる。この場合、吐出口14からの噴流の回転軸方向の範囲を広げることなく、流速を低下させることが可能となるため、攪拌能力を適宜に調整することができる。
【0105】
また、吸入口12は、回転軸(中心軸C)方向から見た場合に、回転軸の遠心方向を長手方向とする長孔に構成することができる。この場合、吸入口12に向かう流動の範囲を遠心方向に広げながらも、吸入口12における流速、すなわち吸引力を低下させないようにすることが可能となるため、攪拌能力を適宜に調整することができる。また、吸入口12の長手方向両端部における周速および作用する遠心力に差を生じさせることが可能となるため、流通路16内の流動および吐出口14からの噴流に乱れを生じさせることができる。また、回転軸近傍の狭いスペースに、より多くの吸入口12を配置することが可能となる。
【0106】
また、吸入口12は、回転軸(中心軸C)方向から見た場合に、回転軸を中心とする円周の接線方向を長手方向とする長孔に構成することができる。また、吸入口12は、回転軸(中心軸C)方向から見た場合に、回転軸を中心とする円周の接線方向に対して角度を有する方向を長手方向とする長孔に構成することができる。このように、吸入口12の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sと共に、長手方向の向きを調整することによって吸入口12に向かう流動の状態を変化させ、攪拌能力を適宜に調整することができる。
【0107】
また、吸入口12または吐出口14の少なくとも一方は、湾曲した長孔に構成することができる。この場合、吸入口12に向かう旋回流の状態、および吐出口14からの噴流の乱れの状態を細かく調整することが可能となるため、攪拌能力を適宜に調整することができる。
【0108】
また、上記第4の実施形態に係る攪拌用回転体4は、吸入口12または吐出口14に対応する開口72、82、92を備えると共に、本体10の表面に沿ういずれかの方向にスライド可能に配置され、スライドによって吸入口12または吐出口14の開口面積を変更するスライド部材70、80、90を備えている。このようにすることで、1つの攪拌用回転体4において攪拌能力を変化させることができるため、汎用性を高めることができる。
【0109】
また、上記第5の実施形態に係る攪拌装置5は、攪拌用回転体1〜4を、回転軸(中心軸C)方向に複数配置して構成されている。このため、攪拌能力をさらに高めることができる。
【0110】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の攪拌用回転体および攪拌装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の攪拌用回転体および攪拌装置は、各種流体の攪拌または気泡混入の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
1、2、3、4 攪拌用回転体
5 攪拌装置
10 本体
12 吸入口
14 吐出口
16 流通路
70、70、90 スライド部材
72、82、92 開口
C 中心軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体その他の各種流体を攪拌し、混合、分散等を行うための攪拌用回転体および攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば2種類以上の流体を混合したり、流体中に添加した各種粉末等を均一に分散させたりする場合には、流体中で羽根車を回転させる攪拌機が使用されている。この羽根車には一般的にプロペラ翼やタービン翼が設けられており、回転することで流体を流動させて攪拌を行う。
【0003】
このような攪拌機は、流体を収容するタンクに恒常的に設置されて使用されるものが多いが、この他にも、例えば塗料等を使用直前に現場で攪拌するためのハンディタイプのものがよく使用されている。このハンディタイプの攪拌機は、一般的にハンドドリル型の駆動装置の駆動軸の先端に羽根車を設けて構成されている。そして、使用者は、駆動装置を両手に持ち、先端の羽根車を塗料等の被攪拌物が収容された容器内に挿入して回転させ、攪拌を行う。
【0004】
しかしながら、このハンディタイプの攪拌機では、鋭利な翼端を持つ羽根車を高速で回転させることから非常に危険であり、取扱に注意を要するという問題があった。また、突起の多い羽根車を容器にぶつけてしまった場合や、羽根車が疲労破壊を起こした場合に、羽根車の先端や容器の一部が欠けて、または削れて被攪拌物内に混入しやすいという問題があった。
【0005】
また、羽根車は被攪拌物と衝突することによって被攪拌物を流動させるため、羽根車を備える攪拌機では、回転する羽根車を被攪拌物内に投入する際、または被攪拌物内で羽根車の回転を開始する際に、反動によって羽根車が振られやすいという問題があった。このため、使用者が攪拌機の操作になれていない場合には、羽根車を容器にぶつけたり、被攪拌物を容器外に飛散させたりといったような事態が頻発していた。
【0006】
また、羽根車では、被攪拌物に沈降物が含まれるような場合に、羽根車を容器の底壁に接触させながら攪拌を行わなければ沈降物をうまく分散させることができないため、羽根車と容器の壁面の接触により発生する破片や削りカスが被攪拌物内に混入しやすいという問題があった。
【0007】
また、羽根車を備える攪拌機では、被攪拌物内に混入された粉末粒子が羽根車との衝突により粉砕される場合があるという問題があった。このため、例えばメタリック塗料のように、混入された粉末粒子を微細化したくないような場合には、十分な攪拌を行うことが困難であった。
【0008】
一方、プロペラ翼やタービン翼を使用するのではなく、外形が六角柱状の筒体から羽根車を構成すると共に、側面に複数の孔を設けた高粘性流体用ミキサー等も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−154368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載の高粘性流体用ミキサーでは、羽根車の外形が六角柱状であり、主として羽根車の外壁を被攪拌物に衝突させることによって被攪拌物を流動させるものであるため、上述した回転開始時の反動の問題、および被攪拌物内の粉末粒子の粉砕の問題を解消するものではなかった。
【0011】
また、側面の孔から被攪拌物を流出させるようにしているものの、側面の孔に対して羽根車内部の容積が大きいため、羽根車内部の流速が低く、長時間使用した場合に滞留物が羽根車の内側に付着して堆積し、攪拌能力が低下しやすいという問題があった。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなされたものであって、用途を問わずに安全且つ効率的な攪拌を行うことが可能な攪拌用回転体および攪拌装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明は、回転軸を中心に回転する本体と、前記本体の表面に設けられる吸入口と、前記本体の表面に設けられる吐出口と、前記吸入口と前記吐出口を繋ぐ流通路と、を備え、前記吸入口は、前記吐出口よりも前記回転軸に近い位置に配置され、前記吐出口は、前記吸入口よりも前記回転軸から遠心方向外側の位置に配置され、前記吸入口または前記吐出口の少なくとも一方は、長孔であることを特徴とする、攪拌用回転体である。
【0014】
(2)本発明はまた、前記吐出口は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、前記回転軸方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、上記(1)に記載の攪拌用回転体である。
【0015】
(3)本発明はまた、前記吐出口は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、前記回転軸に対して角度を有する方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、上記(1)に記載の攪拌用回転体である。
【0016】
(4)本発明はまた、前記吐出口は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、前記回転軸に対して直交する方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、上記(3)に記載の攪拌用回転体である。
【0017】
(5)本発明はまた、前記吸入口は、前記回転軸方向から見た場合に、前記回転軸の遠心方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の攪拌用回転体である。
【0018】
(6)本発明はまた、前記吸入口は、前記回転軸方向から見た場合に、前記回転軸を中心とする円周の接線方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の攪拌用回転体である。
【0019】
(7)本発明はまた、前記吸入口は、前記回転軸方向から見た場合に、前記回転軸を中心とする円周の接線方向に対して角度を有する方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の攪拌用回転体である。
【0020】
(8)本発明はまた、前記吸入口または前記吐出口の少なくとも一方は、湾曲した長孔であることを特徴とする、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の攪拌用回転体である。
【0021】
(9)本発明はまた、前記吸入口または前記吐出口に対応する開口を備えると共に、前記本体の表面に沿ういずれかの方向にスライド可能に配置され、スライドによって前記吸入口または前記吐出口の開口面積を変更するスライド部材を備えることを特徴とする、上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の攪拌用回転体である。
【0022】
(10)本発明はまた、上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の攪拌用回転体を、前記回転軸方向に複数配置して構成されることを特徴とする、攪拌装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、用途を問わずに安全且つ効率的な攪拌を行うことが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)本発明の第1の実施形態に係る攪拌用回転体の一例を示した平面図である。(b)同攪拌用回転体の一例を示した正面図(側面図も同一)である。(c)同攪拌用回転体の一例を示した底面図である。
【図2】(a)攪拌用回転体の作動を示した平面図である。(b)攪拌用回転体の作動を示した正面図である。(c)吐出口を拡大して示した図である。
【図3】(a)および(b)攪拌用回転体の使用例を示した概略図である。
【図4】(a)〜(c)流通路を吐出口に向けて漸次拡大または縮小するように構成した例を示した図である。
【図5】(a)〜(c)吐出口を中心軸に直交する方向を長手方向とする長孔に構成した例を示した図である。
【図6】(a)〜(c)吐出口を中心軸に直交する方向を長手方向とする長孔に構成した例を示した図である。
【図7】(a)〜(c)吐出口のその他の形態の例を示した正面図(側面図)である。
【図8】(a)駆動軸側に吸入口を設けた例を示した正面図(側面図)である。(b)攪拌用回転体を異物の捕獲が可能に構成した例を示した正面図(側面図)である。(c)本体を球状に構成した例を示した正面図(側面図)である。
【図9】(a)第2の実施形態に係る攪拌用回転体の一例を示した平面図である。(b)は、同攪拌用回転体の一例を示した正面図(側面図)である。(c)同攪拌用回転体の一例を示した底面図である。
【図10】(a)〜(c)吸入口のその他の形態を示した底面図である。
【図11】(a)〜(c)吸入口のその他の形態を示した底面図である。
【図12】(a)第3の実施形態に係る攪拌用回転体の一例を示した平面図である。(b)同攪拌用回転体の一例を示した正面図(側面図)である。(c)同攪拌用回転体の一例を示した底面図である。
【図13】(a)第4の実施形態に係る攪拌用回転体の一例を示した正面図(側面図)である。(b)同攪拌用回転体の一例を示した底面図である。(c)スライド部材をスライド回転させた状態を示した正面図(側面図)である。
【図14】(a)攪拌用回転体のもう1つの例を示した正面図(側面図)である。(b)攪拌用回転体のもう1つの例を示した底面図である。(c)攪拌用回転体のその他の形態の例を示した正面図(側面図)である。
【図15】第5の実施形態に係る攪拌装置の一例を示した正面図(側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0026】
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態に係る攪拌用回転体1の構造について説明する。図1(a)は、攪拌用回転体1の一例を示した平面図であり、同図(b)は、攪拌用回転体1の一例を示した正面図(側面図も同一)であり、同図(c)は、攪拌用回転体1の一例を示した底面図である。これらの図に示されるように、攪拌用回転体1は、略砲弾形状の本体10と、本体10の表面に設けられた複数の吸入口12と、本体10の表面に設けられた複数の吐出口14と、吸入口12と吐出口14を繋ぐように本体10の内部に形成された流通路16から構成されている。
【0027】
本体10は、この例では、略砲弾形状、詳細には円柱の一方の底面10bを球面状に構成した形状、換言すれば円柱と半球を組み合わせた形状となっている。本体10の他方の底面10aの中心には、モータ等の駆動装置の駆動軸20が接続される接続部18が設けられている。従って、攪拌用回転体1は、本体10の中心軸Cを回転軸として回転するように構成されている。なお、駆動軸20と接続部18の接続方法は、例えばネジや係合等、既知のいずれの方法であってもよい。
【0028】
本実施形態では、本体10を流通路16以外の部分を中実に構成することで、本体10の強度を高めるようにしている。本体10を構成する材質は、特に限定されるものではなく、例えば金属やセラミックス、樹脂、ゴム、木材等、使用条件に応じた適宜の材質を採用することができる。本実施形態の本体10は、シンプルで加工しやすい形態となっているため、製造方法に制限されることなく、多種多様な材質から本体10を構成することが可能となっている。
【0029】
また、本体10をこのようにシンプルな形状に構成することより、回転軸に対する不釣合いの発生を少なくすることができる。このため、本実施形態では、不釣合いの発生しやすい羽根車等とは異なり、回転時の振動や振れ回り等を略解消することが可能となっている。
【0030】
吸入口12は、本体10における接続部18の反対側の底面10b(すなわち、本体10の先端部)に設けられている。本実施形態では、4つの吸入口12を中心軸Cを中心とする円周上に等間隔で並べて配置すると共に、中心軸Cと同一方向に形成している。吐出口14は、本体10の側面10cに設けられている。本実施形態では、4つの吐出口14を、各吸入口12に対して本体10の半径方向(遠心方向)外側となる位置(中心軸Cから中心軸Cに垂直な方向に離れた位置)にそれぞれ配置している。また、中心軸Cに対して直交する方向に吐出口14を形成している。
【0031】
吸入口12および吐出口14の形状(断面形状)は特に限定されるものではないが、本実施形態の攪拌用回転体1は、吐出口14を長孔に構成することを特徴としている。詳細には、この例の吐出口14は、同図(b)に示されるように、吐出口14の断面に垂直な方向から見た場合に、中心軸C方向(または、中心軸C方向と平行な方向)を長手方向とする長円形状に形成されている。詳細は後述するが、このように吐出口14を長孔に構成することにより、攪拌能力を向上または調整することが可能となっている。なお、本実施形態では、吸入口12を円形に構成しているが、長孔以外の形状であればその他の形状であってもよい。
【0032】
流通路16は、1つの吸入口12と1つの吐出口14を繋ぐ通路として形成されている。従って、本体10の内部には、4つの流通路16が形成されている。各流通路16は、吸入口12から中心軸C方向に沿って直進した後に直角に曲がり、本体10の遠心方向に向けて直進して吐出口14に到達するように形成されている。すなわち、本実施形態の流通路16は、中心軸C方向の軸方向部分16aおよび遠心方向の遠心方向部分16bから構成されている。
【0033】
本実施形態では、流通路16をこのように構成することで、ドリル等による穴加工で容易に吸入口12、吐出口14および流通路16を形成できるようにしている。具体的には、吸入口12の位置から中心軸C方向に沿った穴加工、および吐出口14の位置から中心軸Cに向けた穴加工によって容易に吸入口12、吐出口14および流通路16を形成することができる。
【0034】
なお、流通路16の断面形状は、特に限定されるものではなく、吸入口12および吐出口14の形状(断面形状)や位置、または加工方法等に応じて適宜の形状に構成することができる。
【0035】
また、本実施形態では、加工のしやすさから流通路16を略直角に曲折するL字状に構成しているが、これに限定されるものではなく、滑らかに湾曲した曲線状の通路として流通路16を構成してもよいし、吸入口12と吐出口14を一直線状に繋ぐように流通路16を構成してもよい。流通路16をこのように構成することで、流通路16内の流動抵抗を減少させることができるため、攪拌用回転体1が引き起こす流動をさらに強力にし、攪拌能力を向上させることができる。
【0036】
次に、攪拌用回転体1の作動について説明する。図2(a)は攪拌用回転体1の作動を示した平面図であり、同図(b)は攪拌用回転体1の作動を示した正面図である。また、同図(c)は、吐出口14を拡大して示した図である。攪拌用回転体1は、流体である被攪拌物内において、駆動軸20に駆動されて中心軸Cを中心に回転することにより、被攪拌物を攪拌する。
【0037】
流体中に攪拌用回転体1を浸漬して回転させると、流通路16内に進入した流体も攪拌用回転体1と共に回転することとなる。すると、流通路16内の流体に遠心力が作用し、これらの図に示されるように、流通路16内の流体は攪拌用回転体1の半径方向外側に向けて流動する。吐出口14は、吸入口12よりも本体10の半径方向外側に設けられているため、吐出口14では吸入口12よりも強い遠心力が働くこととなる。従って、流体は、攪拌用回転体1が回転している限り吸入口12から吐出口14に向けて流動する。すなわち、流通路16内の流体が吐出口14から噴出すると共に、外部の流体が吸入口12から流通路16内に吸引される。これにより、攪拌用回転体1の周囲の流体には、吐出口14のある側面10cから放射状に広がる流動と、吸入口12のある攪拌用回転体1の先端部に向かう流動が発生することとなる。なお、攪拌用回転体1の先端部に向かう流動は、吸入口12の回転により旋回流となる。
【0038】
また、流体中に攪拌用回転体1を浸漬して回転させると、攪拌用回転体1の表面近傍の流体が粘性の影響により攪拌用回転体1と共に回転することとなる。従って、攪拌用回転体1の表面近傍の流体にも遠心力が働き、これらの図に示されるように、表面近傍の流体は攪拌用回転体1の表面に沿って側面10cまで流動し、吐出口14からの噴流の随伴流となる。
【0039】
本実施形態では、底面10bを球面状に構成することにより、本体10の形状を中心軸C方向の厚みが半径方向外側に向けて漸次減少する形状としているため、攪拌用回転体1の底面10b近傍の流動を、側面10cから放射状に広がる流動にスムーズに合流させることを可能としている。また、底面10bをこのような形状にすることで、攪拌用回転体1の先端に向かう流動の一部を、底面10bに沿って側面10cまでスムーズに流動させて、側面10cから放射状に広がる流動に合流させることを可能としている。この結果、攪拌用回転体1は、周囲の流体に強力な流動を発生させ、効率的な攪拌を行うことが可能となっている。
【0040】
さらに、本実施形態では、吐出口14を、中心軸C方向を長手方向とする長孔とすることにより、中心軸C方向の広い範囲にわたって放射状の流動を発生させることを可能としている。すなわち、吐出口14から中心軸C方向に幅広い噴流を発生させることにより、攪拌用回転体1から放射状に広がる流動の中心軸C方向の範囲を広げることが可能となっている。
【0041】
吐出口14からの噴流の幅を広げるためには、吐出口14を拡大すればよいが、単に拡大しただけでは、吐出口14からの噴流の流速が低下してしまうため、攪拌能力が低下してしまう場合がある。そこで、本実施形態では、吐出口14を長孔に構成することにより、噴流の幅を広げながらも、流速が低下しないようにしている。すなわち、同図(c)に示されるように、噴流の範囲に応じて吐出口14の長手方向寸法Lを設定した後に、短手方向寸法Sによって吐出口14の断面積を調整することで、適宜の流速を保つようにしている。
【0042】
このようにすることで、流速を低下させることなく攪拌用回転体1から放射状に広がる流動の範囲を広げることが可能となるため、従来以上に攪拌能力を向上させることができる。また、吐出口14の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sを調整することにより、攪拌能力を適宜に調整することが可能となる。
【0043】
なお、吸入口12に対して吐出口14を回転方向にずらして配置し、流通路16の吐出口14へ繋がる部分を攪拌用回転体1の遠心方向に対して角度を有するように構成してもよい。また、吐出口14を中心軸C方向にずらして配置し、流通路16の吐出口14へ繋がる部分を本体10の先端側(接続部18の反対側)、または駆動軸側(接続部18側)に向けるようにしてもよい。このようにして、吐出口14からの噴出方向を適宜に設定することにより、効率的な攪拌に最も適した流動を得ることができる。また、複数の吐出口14に対して1つの吸入口12を設け、流通路16を1つの吸入口12から複数の吐出口14に分岐するように構成してもよい。
【0044】
図3(a)および(b)は、攪拌用回転体1の使用例を示した概略図である。これらの図に示されるように、攪拌用回転体1は、モータ等の駆動装置30に繋がる駆動軸20に接続され、容器40内に収容された流体である被攪拌物50内に浸漬された状態で使用される。駆動装置30は、容器40や架台等に固定されるものであってもよいし、使用者が保持して操作するものであってもよい。
【0045】
駆動装置30によって攪拌用回転体1を回転させることにより、上述のように攪拌用回転体1から放射状に広がる流動、および攪拌用回転体1の先端部に向かう旋回流(渦)が発生する。これにより、同図(a)および(b)に示されるように、被攪拌物50内に複雑な循環流が発生し、この循環流により被攪拌物50は十分に攪拌される。
【0046】
容器40の底に滞留している滞留物を分散させる場合には、攪拌用回転体1の先端部を容器40の底に近づければよい。このようにすることで、吸入口12から滞留物を吸い上げて吐出口14から噴出し、滞留物を被攪拌物50内に十分に分散させることができる。また、容器40の角部に滞留している滞留物を分散させる場合には、攪拌用回転体1の先端部を容器40の角部に近づければよい。本実施形態では、本体10を略砲弾形状に構成しているため、狭隘な角部にも吸入口12を十分に近づけることができる。
【0047】
本実施形態では、本体10を略砲弾形状に構成することにより、回転時に被攪拌物50と衝突しないようにしているため、回転開始時の反動がほとんど生じないようになっている。また、羽根車等とは異なり、本体10に鋭利な突起物を備えていないことから、攪拌用回転体1を容器40の壁面にぶつけた場合にも攪拌用回転体1または容器40が破損したり削れたりする可能性が低くなっている。このため、安心して攪拌用回転体1を容器40の壁面に近づけることができ、容器40の隅々まで十分に攪拌を行うことが可能であると共に、攪拌用回転体1または容器40の破片や削りカス等が被攪拌物50に混入し難いようになっている。
【0048】
また、本実施形態では、攪拌用回転体1の先端部中心(回転軸である中心軸C)のやや外側に吸入口12を配置することにより、攪拌用回転体1の先端部を容器40の壁面に接触させた場合にも吸入口12が塞がれないようにしている。このため、容器40の壁面近くにおいても安定して攪拌用回転体1を操作することができる。
【0049】
次に、攪拌用回転体1のその他の形態について説明する。まず図4(a)〜(c)は、流通路16を吐出口14に向けて漸次拡大または縮小するように構成した例を示した図である。なお、同図(a)は、正面図(側面図)であり、同図(b)および(c)は、底面図である。
【0050】
本実施形態では、吐出口14を吸入口12とは異なる形状の長孔に構成しているため、流通路16の断面形状を途中で変化させる必要がある。この場合に、吐出口14の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sに合わせて、流通路16の少なくとも一部を漸次拡大または縮小するように構成することにより、流通路16内のよどみを解消し、流動をスムーズにすることができる。
【0051】
ここで、同図(a)は、吐出口14の長手方向寸法Lに合わせて、流通路16の遠心方向部分16bを漸次拡大した例を示している。また、同図(b)は、吐出口14の短手方向寸法Sに合わせて流通路16の遠心方向部分16bを漸次拡大した例を、同図(c)は、吐出口14の短手方向寸法Sに合わせて流通路16の遠心方向部分16bを漸次縮小した例を示している。なお、流通路16の軸方向部分16aを、漸次拡大または縮小するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0052】
図5(a)〜(c)および図6(a)〜(c)は、吐出口14を中心軸Cに直交する方向を長手方向とする長孔に構成した例を示した図である。なお、図5(a)および(c)ならびに図6(a)および(b)は、正面図(側面図)であり、図5(b)ならびに図6(c)は、底面図である。
【0053】
この例の吐出口14は、詳細には図5(a)に示されるように、吐出口14の断面に垂直な方向から見た場合に、中心軸Cに直交する方向を長手方向とする長円形状に形成されている。攪拌用回転体1の用途によっては、吐出口14をこのような長孔に構成することにより、効率的な攪拌を行うことができる。
【0054】
例えば、被攪拌物50の液面を波立たせることなく効率的な攪拌を行う必要がある場合、攪拌用回転体1の先端部(すなわち吸入口12)に向かう旋回流の強さを維持しつつ、攪拌用回転体1から放射状に広がる流動を弱めることが効果的である。
【0055】
このような場合、吐出口14を、中心軸Cに直交する方向を長手方向とする長孔に構成すれば、吐出口14を攪拌用回転体1の回転方向に拡大(延長)することとなるため、攪拌用回転体1から放射状に広がる流動の中心軸C方向の範囲を広げることなく、流速を低下させることができる。そして、吸入口12と吐出口14の断面積比を適宜に設定すれば、攪拌用回転体1の先端部に向かう旋回流の強さを維持することができる。
【0056】
この例においても、攪拌用回転体1から放射状に広がる流動の強さおよび範囲は、吐出口14の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sを適宜に設定することにより、調整することができる。また、図5(b)および(c)ならびに図6(a)に示されるように、吐出口14の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sに合わせて、流通路16の少なくとも一部を漸次拡大または縮小するように構成することにより、流通路16内の流動をスムーズにすることができる。
【0057】
なお、図5(b)は、吐出口14の長手方向寸法Lに合わせて、流通路16の遠心方向部分16bを漸次拡大した例を示している。また、図5(c)は、吐出口14の短手方向寸法Sに合わせて流通路16の遠心方向部分16bを漸次拡大した例を、図6(a)は、吐出口14の短手方向寸法Sに合わせて流通路16の遠心方向部分16bを漸次縮小した例を示している。
【0058】
図6(b)および(c)は、吸入口12の位置に対する吐出口14の位置を回転方向にずらして配置した例を示している。このように吐出口14の位置をずらすことにより、吐出口14からの噴流の方向を適宜に変化させることができるため、攪拌用回転体1から放射状に広がる流動の状態を、より細かく調整することができる。
【0059】
図7(a)〜(c)は、吐出口14のその他の形態の例を示した正面図(側面図)である。同図(a)は、吐出口14を、吐出口14の断面に垂直な方向から見た場合に、中心軸Cに対して角度を有する方向を長手方向とする長円形状に形成した例を示している。このように、吐出口14を中心軸Cに対して斜めに配置することにより、攪拌用回転体1の回転と相俟って吐出口14からの噴流をより複雑な流れにすることが可能となるため、攪拌能力を向上させることができる。すなわち、本実施形態では、長孔に構成した吐出口14の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sと共に、長手方向の向きを調整することによって、攪拌能力を適宜に調整することが可能となっている。
【0060】
同図(b)は、吐出口14を長方形状に構成した例を示している。また、同図(c)は、吐出口14を円弧状に湾曲した長円形状に構成した例を示している。このように、吐出口14の形状は、上述の例で示した長円形状以外にも、長方形状や楕円形状、多角形状等、長孔となる種々の形状を採用することができる。また、吐出口14の形状は、長円形や長方形等が湾曲した形状であってもよい。なお、吐出口14を湾曲した形状とする場合、円弧状の他に、U字状、V字状、W字状、またはS字状等に湾曲した形状であってもよい。
【0061】
図8(a)は、駆動軸側に吸入口12を設けた例を示した正面図(側面図)である。同図は、4つの吸入口12のうち、2つの吸入口12を駆動軸側の底面10aに設けた例を示している。吸入口12は、このように複数の吸入口12の一部を先端側に配置し、残りの一部を駆動軸側に配置するようにしてもよい。また、用途によっては、全ての吸入口12を駆動軸側に設けるようにしてもよい。
【0062】
吸入口12の配置を適宜に設定することで、用途に応じた最適な流動を発生させるようにすることができる。また、駆動軸側の吸入口12を流体の液面に近づけて流体外部の気体を吸引するようにすれば、流体中に積極的に外部の気体を取り込むことができる。これにより、流体中に気体を溶け込ませたり、流体中に気泡を混入させたりすることができる。
【0063】
なお、本体10に被攪拌物50の外部の気体を吸引するための専用の吸気口を設けると共に、この吸気口と吐出口14を繋ぐ通気路を設けるようにしてもよい。このように、本体10に吸気口および通気路を設けた場合、吸気口を流体外部に露出させた状態または流体外部の気体に触れる状態で攪拌用回転体1を回転させることにより、容易に流体中に気体を溶け込ませたり、流体中に気泡を混入させたりすることができる。
【0064】
図8(b)は、攪拌用回転体1を異物の捕獲が可能に構成した例を示した正面図(側面図)である。同図では、流通路16の吐出口14近傍にゴミ等の異物捕獲用のフィルタ60を設けた例を示している。このように、流通路16の途中にフィルタ60を設けることにより、被攪拌物50中に含まれる異物の除去を攪拌と同時に行うことが可能となる。フィルタ60は、例えば金網やスポンジ等、用途に応じた材質から構成すればよい。なお、フィルタ60を配置する位置は、同図(a)に示す位置に限定されるものではなく、その他の位置であってもよい。
【0065】
本実施形態では、吐出口14を長孔に構成しているため、吐出口14の長手方向寸法L、短手方向寸法S、および長手方向の向きを適宜に設定することにより、本体10の大きさや形状によらず、吐出口14およびその近傍の流通路16の断面積を、効率的な異物の捕獲に必要な断面積にすることが可能となっている。すなわち、本実施形態によれば、上述したような攪拌能力の向上や調整だけではなく、異物捕獲能力も向上させることができる。
【0066】
図8(c)は、本体10を球状に構成した例を示した正面図(側面図)である。このように、本体10の形状は、上述の例で示した略砲弾形状に限定されるものではなく、球状、部分球状、楕円体状、部分楕円体状、円柱状、円盤状、円錐状、または円錐台状等であってもよいし、これらの立体を組み合わせて構成される形状であってもよい。
【0067】
また、本体10の形状は、安全性や容器等への衝突の点からは、回転軸(中心軸C)に垂直な断面が円形となる上記したような形状であることが好ましいが、本体10の形状はこれに限定されるものではなく、回転軸(中心軸C)に垂直な断面が円形以外となる形状であってもよい。すなわち、本体10の形状は、例えば多角柱状、多角錐状、または多角錐台状等であってもよいし、種々の立体を組み合わせて構成される形状であってもよい。さらに、本体10の表面に複数の凸部や凹部を設けるようにしてもよい。
【0068】
このように、本体10を適宜の凹凸を備えた形状に構成することで、攪拌用回転体1の周囲に適度な渦流を発生させることが可能となり、これにより、攪拌能力をさらに向上させることができる場合がある。さらに、本体10の形状の設定に加えて、本体10表面の粗さや、より細かい凹凸形状を適宜に設定することによって、攪拌用回転体1の周囲の流動をより精密に制御するようにしてもよい。また、本体10の表面に各種の彩色を施して意匠性を向上させるようにしてもよい。
【0069】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る攪拌用回転体2について説明する。本実施形態の攪拌用回転体2は、吸入口12を長孔に構成することを特徴としており、その他の基本的な構成および作動は、第1の実施形態と同一である。従って、同一部分については、図中において同一符号を付すと共にその説明を省略し、以下、第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0070】
図9(a)は、攪拌用回転体2の一例を示した平面図であり、同図(b)は、攪拌用回転体2の一例を示した正面図(側面図)であり、同図(c)は、攪拌用回転体2の一例を示した底面図である。上述のように、本実施形態の攪拌用回転体2は、吸入口12を長孔に構成することを特徴としている。詳細には、この例の吸入口12は、同図(a)または(c)に示されるように、中心軸C(回転軸)方向から見た場合に、中心軸Cの遠心方向(半径方向)を長手方向とする、長円形状に形成されている。
【0071】
被攪拌物50中において、攪拌用回転体2の先端部に向かう流動は、吸入口12が本体10と共に回転することによって旋回流となるが、本実施形態では、吸入口12を、中心軸Cの遠心方向を長手方向とする長孔とすることにより、この旋回流を拡大することが可能となっている。
【0072】
すなわち、吸入口12をこのような長孔に構成し、長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sを適宜に調整することで、吸入口12に向かう流動の範囲を遠心方向に広げながらも、吸入口12における流速、すなわち吸引力を低下させないようにすることが可能となる。これにより、本実施形態では、被攪拌物50中において、攪拌用回転体2の先端部から先の領域に大きく強い旋回流を発生させることができるため、攪拌能力を向上させることが可能となっている。
【0073】
また、吸入口12をこのような長孔に構成することで、吸入口12の長手方向両端部における周速および作用する遠心力に差を生じさせることができる。これにより、流通路16内の流動および吐出口14からの噴流に乱れを生じさせることが可能となるため、さらに攪拌能力を向上させることができる。
【0074】
なお、本実施形態では、吸入口12を円形に構成しているが、長孔以外の形状であればその他の形状であってもよい。また、流通路16は、吸入口12および吐出口14の寸法に応じて、適宜に漸次拡大または縮小させるようにすることができる。
【0075】
次に、攪拌用回転体2のその他の形態について説明する。図10(a)〜(c)および図11(a)〜(c)は、吸入口12のその他の形態を示した底面図である。図10(a)は、吸入口12を8つ設けた例を示している。作用する遠心力の大きさを考慮すると、吸入口12は、なるべく回転軸である中心軸Cに近づけて配置することが好ましいが、吸入口12を、中心軸Cの遠心方向を長手方向とする長孔とすることにより、中心軸C近傍の狭いスペースに、より多くの吸入口12を配置することが可能となる。すなわち、より多くの吸入口12を、断面積を減少させることなく中心軸Cに近づけて配置すると共に、吸入口12の個数に応じて吐出口14の個数も増やすことが可能となるため、攪拌能力を向上させることができる。
【0076】
同図(b)は、吸入口12を、中心軸C方向から見た場合に、中心軸Cを中心とする円周の接線方向を長手方向とする長円形状に構成した例を示している。また、同図(c)は、吸入口12を、中心軸C方向から見た場合に、中心軸Cを中心とする円周の接線方向に対して角度を有する方向を長手方向とする長円形状に構成した例を示している。
【0077】
このように、長孔に構成した吸入口12の長手方向の向きを調整することにより、攪拌用回転体1の回転と相俟って吸入口12に向かう旋回流の状態を適宜に調整することができる。また、吐出口14からの噴流の乱れの状態を調整することも可能となるため、攪拌能力を調整することができる。すなわち、本実施形態では、長孔に構成した吸入口12の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sと共に、長手方向の向きを調整することによって、攪拌能力を適宜に調整することが可能となっている。
【0078】
図11(a)は、吸入口12を長方形状に構成した例を示している。また、同図(b)および(c)は、吸入口12を円弧状に湾曲した長円形状に構成した例を示している。このように、吸入口12の形状は、長円形状以外にも、長方形状や楕円形状、多角形状等、長孔となる種々の形状を採用することができる。また、吸入口12の形状は、長円形や長方形等が湾曲した形状であってもよく、円弧状の他に、U字状、V字状、W字状、またはS字状等に湾曲した形状であってもよい。
【0079】
ここで、同図(b)に示されるように、吸入口12を円弧状に湾曲した形状に構成すると共に、長手方向が中心軸Cを中心とする円周の接線方向となるように配置することにより、断面積を減少させることなく吸入口12を中心軸Cに近づけることができる。また、同図(c)に示されるように、吸入口12を、長手方向が中心軸Cを中心とする円周の接線方向に対して角度を有する方向となるように配置すると共に、適宜に湾曲させることにより、吸入口12に向かう旋回流の状態、および吐出口14からの噴流の乱れの状態をより細かく調整することができる。
【0080】
また、図示は省略するが、吸入口12を長孔に構成することにより、吸入口12を中心軸Cに近づけながらも断面積を大きくすることができるため、吸入口12の近傍に異物捕獲用のフィルタ60を設けた場合にも、異物捕獲能力を向上させることができる。
【0081】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係る攪拌用回転体3について説明する。本実施形態の攪拌用回転体3は、吸入口12および吐出口14をそれぞれ長孔に構成することを特徴としており、その他の基本的な構成および作動は、第1および第2の実施形態と同一である。従って、同一部分については、図中において同一符号を付すと共にその説明を省略し、以下、第1および第2の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0082】
図12(a)は、攪拌用回転体3の一例を示した平面図であり、同図(b)は、攪拌用回転体3の一例を示した正面図(側面図)であり、同図(c)は、攪拌用回転体3の一例を示した底面図である。上述のように、本実施形態の攪拌用回転体3は、吸入口12および吐出口14をそれぞれ長孔に構成することを特徴としている。
【0083】
同図(a)〜(c)に示す例では、吸入口12は、中心軸C(回転軸)方向から見た場合に、中心軸Cの遠心方向を長手方向とする、長円形状に形成されており、吐出口14は、吐出口14の断面に垂直な方向から見た場合に、中心軸C方向(または、中心軸C方向と平行な方向)を長手方向とする長円形状に形成されているが、吸入口12および吐出口14の形状は、長孔であればその他の形状であってもよい。すなわち、吸入口12および吐出口14の形状は、第1および第2の実施形態で示したような種々の形状を採用することができる。
【0084】
このように、吸入口12および吐出口14をそれぞれ長孔に構成し、それぞれの長手方向寸法L、短手方向寸法S、および長手方向の向きを適宜に設定することで、攪拌用回転体3の先端部に向かう流動、および攪拌用回転体3から放射状に広がる流動の状態を調整することができる。すなわち、本実施形態では、攪拌用回転体3の攪拌能力を、用途等に応じてより細かく調整することが可能となっている。
【0085】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態に係る攪拌用回転体4について説明する。本実施形態の攪拌用回転体4は、第1〜3の実施形態の攪拌用回転体1〜3にスライド部材70、80、90を適用したものであり、その他の基本的な構成および作動は、第1〜3の実施形態と同一である。従って、同一部分については、図中において同一符号を付すと共にその説明を省略し、以下、第1〜3の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0086】
図13(a)は、攪拌用回転体4の一例を示した正面図(側面図)であり、同図(b)は、攪拌用回転体4の一例を示した底面図である。これらの図に示されるように、この例の攪拌用回転体4は、4つの吐出口14が中心軸Cに直交する方を長手方向とする長孔にそれぞれ構成されると共に、本体10の側面10cを覆うように配置される円筒状のスライド部材70を備えている。
【0087】
このスライド部材70は、吐出口14の開口面積を変更するものである。従って、スライド部材70は、4つの吐出口14のそれぞれに対応する位置に、吐出口14と略同形状の開口72が形成されている。また、スライド部材70は、既知の適宜の手法により、本体10の表面(側面10c)に沿って、本体10の円周方向に(すなわち、中心軸Cを中心として)スライド回転可能に配置されている。
【0088】
同図(c)は、スライド部材70をスライド回転させた状態を示した正面図(側面図)である。同図に示されるように、この例では、スライド部材70をスライド回転させて吐出口14と開口72の相対的位置を変化させ、吐出口14の一部をスライド部材70で閉塞することにより、吐出口14の開口面積を変更可能となっている。
【0089】
このように、吐出口14の開口面積を変更することで、吐出口14からの噴流の状態および流速を適宜に調節することができる。なお、スライド部材70は、本体10の表面に沿って中心軸C方向にスライド移動可能に配置されるものであってもよい。
【0090】
図14(a)は、攪拌用回転体4のもう1つの例を示した正面図(側面図)であり、同図(b)は、攪拌用回転体4のもう1つの例を示した底面図である。これらの図に示されるように、この例の攪拌用回転体4は、吸入口12および吐出口14をそれぞれ3つ備えており、3つの吸入口12は、中心軸Cを中心とする円周に沿って円弧状に湾曲した長孔にそれぞれ構成されている。そして、この例の攪拌用回転体4は、本体10の底面10bを覆うように配置される略半球のカップ状のスライド部材80を備えている。
【0091】
このスライド部材80は、吸入口12の開口面積を変更するものである。従って、スライド部材80は、3つの吸入口12のそれぞれに対応する位置に、吸入口12と略同形状の開口82が形成されている。また、スライド部材80は、既知の適宜の手法により、本体10の表面(底面10b)に沿って、本体10の円周方向に(すなわち、中心軸Cを中心として)スライド回転可能に配置されている。
【0092】
従って、この例では、同図(b)に示されるように、スライド部材80をスライド回転させて吸入口12と開口82の相対的位置を変化させ、吸入口12の一部をスライド部材80で閉塞することにより、吸入口12の開口面積を変更可能となっている。このように、吸入口12の開口面積を変更することで、吸入口12に向かう流動の状態および流速を適宜に調節することができる。
【0093】
なお、本実施形態の攪拌用回転体4は、吐出口14の開口面積を変更するスライド部材70、および吸入口12の開口面積を変更するスライド部材80の両方を備えるものであってもよい。また、この場合、スライド部材70およびスライド部材80を一体的に構成するようにしてもよい。
【0094】
また、スライド部材70およびスライド部材80の形状は、特に限定されるものではなく、本体10の形状や、吸入口12および吐出口14の形状および配置に応じた適宜の形状を採用することができる。また、スライド部材70およびスライド部材80の材質は、特に限定されるものではないが、例えば各種ゴムや樹脂等の軟質の材料から構成すれば、攪拌用回転体4の安全性を高めることも可能となる。すなわち、スライド部材70およびスライド部材80は、安全カバーとしても機能させることができる。
【0095】
また、吸入口12および吐出口14の形状および長手方向の向きは、特に限定されるものではなく、種々の形状および向きを採用することができる。また、吸入口12および吐出口14の形状とは異なる形状の開口72、82を対応させるようにしてもよい。
【0096】
同図(c)は、攪拌用回転体4のその他の形態の例を示した正面図(側面図)である。この例の攪拌用回転体4は、吐出口14ごとに個別にスライド部材90を備えている。このスライド部材90は、複数の吐出口14のうちのいずれか1つの吐出口14に対応する開口92が形成され、この吐出口14に対応する位置に配置されている。そして、スライド部材90は、ガイド部材94等の既知の手法により、本体10の表面に沿って所定の方向にスライド移動可能に配置され、吐出口14と開口92の相対的位置を変化させることによって吐出口14の開口面積を変更可能に構成されている。
【0097】
このように、吐出口14ごとに個別にスライド部材90を設けることにより、吐出口14の開口面積を個別に変更することが可能となる。なお、スライド部材90のスライド移動の方向は、特に限定されるものではなく、吐出口14の形状等に応じた方向とすることができる。また、同様の構成により、吸入口12の開口面積を個別に変更可能なスライド部材を設けてもよいことは言うまでもない。
【0098】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態に係る攪拌装置5について説明する。本実施形態の攪拌装置5は、第1〜4の実施形態の攪拌用回転体1〜4を回転軸方向に複数連結したものである。図15は、攪拌装置5の一例を示した正面図(側面図)であり、駆動軸20を介して3つの攪拌用回転体3を連結した例を示している。
【0099】
このように、複数の攪拌用回転体3を回転軸方向に連結することで、攪拌能力をさらに向上させることができる。特に、攪拌する流体の深さが深い場合に効果的である。なお、攪拌装置5は、攪拌用回転体1、2、4を複数連結したものであってもよく、攪拌用回転体1〜4を適宜に組み合わせて連結したものであってもよい。
【0100】
以上説明したように、上記各実施形態に係る攪拌用回転体1〜4は、回転軸(中心軸C)を中心に回転する本体10と、本体10の表面に設けられる吸入口12と、本体10の表面に設けられる吐出口14と、吸入口12と吐出口14を繋ぐ流通路16と、を備え、吸入口12は、吐出口14よりも回転軸に近い位置に配置され、吐出口14は、吸入口12よりも回転軸から遠心方向外側の位置に配置され、吸入口12または吐出口14の少なくとも一方は、長孔に構成されている。
【0101】
このような構成とすることで、用途を問わずに安全且つ効率的な攪拌を行うことができる。具体的には、長孔に構成した吸入口12または吐出口14の長手方向寸法L、短手方向寸法S、および長手方向の向きを適宜に設定することで、攪拌用回転体1〜4の先端部に向かう流動、および攪拌用回転体1〜4から放射状に広がる流動の状態を調整することができる。これにより、被攪拌物50の性質や攪拌用回転体1〜4の使用状態等に応じて、攪拌用回転体1〜4の攪拌能力を調整することができるため、安全且つ効率的な攪拌を行うことが可能となる。
【0102】
また、吐出口14は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、回転軸(中心軸C)方向を長手方向とする長孔に構成することができる。この場合、流速を低下させることなく吐出口14からの噴流の範囲を回転軸方向に広げることが可能となるため、攪拌能力を適宜に調整することができる。
【0103】
また、吐出口14は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、回転軸(中心軸C)に対して角度を有する方向を長手方向とする長孔に構成することができる。この場合、吐出口14の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sと共に、長手方向の向きを調整することによって吐出口14からの噴流の状態を変化させ、攪拌能力を適宜に調整することができる。
【0104】
また、吐出口14は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、回転軸(中心軸C)に対して直交する方向を長手方向とする長孔に構成することができる。この場合、吐出口14からの噴流の回転軸方向の範囲を広げることなく、流速を低下させることが可能となるため、攪拌能力を適宜に調整することができる。
【0105】
また、吸入口12は、回転軸(中心軸C)方向から見た場合に、回転軸の遠心方向を長手方向とする長孔に構成することができる。この場合、吸入口12に向かう流動の範囲を遠心方向に広げながらも、吸入口12における流速、すなわち吸引力を低下させないようにすることが可能となるため、攪拌能力を適宜に調整することができる。また、吸入口12の長手方向両端部における周速および作用する遠心力に差を生じさせることが可能となるため、流通路16内の流動および吐出口14からの噴流に乱れを生じさせることができる。また、回転軸近傍の狭いスペースに、より多くの吸入口12を配置することが可能となる。
【0106】
また、吸入口12は、回転軸(中心軸C)方向から見た場合に、回転軸を中心とする円周の接線方向を長手方向とする長孔に構成することができる。また、吸入口12は、回転軸(中心軸C)方向から見た場合に、回転軸を中心とする円周の接線方向に対して角度を有する方向を長手方向とする長孔に構成することができる。このように、吸入口12の長手方向寸法Lおよび短手方向寸法Sと共に、長手方向の向きを調整することによって吸入口12に向かう流動の状態を変化させ、攪拌能力を適宜に調整することができる。
【0107】
また、吸入口12または吐出口14の少なくとも一方は、湾曲した長孔に構成することができる。この場合、吸入口12に向かう旋回流の状態、および吐出口14からの噴流の乱れの状態を細かく調整することが可能となるため、攪拌能力を適宜に調整することができる。
【0108】
また、上記第4の実施形態に係る攪拌用回転体4は、吸入口12または吐出口14に対応する開口72、82、92を備えると共に、本体10の表面に沿ういずれかの方向にスライド可能に配置され、スライドによって吸入口12または吐出口14の開口面積を変更するスライド部材70、80、90を備えている。このようにすることで、1つの攪拌用回転体4において攪拌能力を変化させることができるため、汎用性を高めることができる。
【0109】
また、上記第5の実施形態に係る攪拌装置5は、攪拌用回転体1〜4を、回転軸(中心軸C)方向に複数配置して構成されている。このため、攪拌能力をさらに高めることができる。
【0110】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の攪拌用回転体および攪拌装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の攪拌用回転体および攪拌装置は、各種流体の攪拌または気泡混入の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
1、2、3、4 攪拌用回転体
5 攪拌装置
10 本体
12 吸入口
14 吐出口
16 流通路
70、70、90 スライド部材
72、82、92 開口
C 中心軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転する本体と、
前記本体の表面に設けられる吸入口と、
前記本体の表面に設けられる吐出口と、
前記吸入口と前記吐出口を繋ぐ流通路と、を備え、
前記吸入口は、前記吐出口よりも前記回転軸に近い位置に配置され、
前記吐出口は、前記吸入口よりも前記回転軸から遠心方向外側の位置に配置され、
前記吸入口または前記吐出口の少なくとも一方は、長孔であることを特徴とする、
攪拌用回転体。
【請求項2】
前記吐出口は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、前記回転軸方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、
請求項1に記載の攪拌用回転体。
【請求項3】
前記吐出口は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、前記回転軸に対して角度を有する方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、
請求項1に記載の攪拌用回転体。
【請求項4】
前記吐出口は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、前記回転軸に対して直交する方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、
請求項3に記載の攪拌用回転体。
【請求項5】
前記吸入口は、前記回転軸方向から見た場合に、前記回転軸の遠心方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の攪拌用回転体。
【請求項6】
前記吸入口は、前記回転軸方向から見た場合に、前記回転軸を中心とする円周の接線方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の攪拌用回転体。
【請求項7】
前記吸入口は、前記回転軸方向から見た場合に、前記回転軸を中心とする円周の接線方向に対して角度を有する方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の攪拌用回転体。
【請求項8】
前記吸入口または前記吐出口の少なくとも一方は、湾曲した長孔であることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれかに記載の攪拌用回転体。
【請求項9】
前記吸入口または前記吐出口に対応する開口を備えると共に、前記本体の表面に沿ういずれかの方向にスライド可能に配置され、スライドによって前記吸入口または前記吐出口の開口面積を変更するスライド部材を備えることを特徴とする、
請求項1乃至8のいずれかに記載の攪拌用回転体。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の攪拌用回転体を、前記回転軸方向に複数配置して構成されることを特徴とする、
攪拌装置。
【請求項1】
回転軸を中心に回転する本体と、
前記本体の表面に設けられる吸入口と、
前記本体の表面に設けられる吐出口と、
前記吸入口と前記吐出口を繋ぐ流通路と、を備え、
前記吸入口は、前記吐出口よりも前記回転軸に近い位置に配置され、
前記吐出口は、前記吸入口よりも前記回転軸から遠心方向外側の位置に配置され、
前記吸入口または前記吐出口の少なくとも一方は、長孔であることを特徴とする、
攪拌用回転体。
【請求項2】
前記吐出口は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、前記回転軸方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、
請求項1に記載の攪拌用回転体。
【請求項3】
前記吐出口は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、前記回転軸に対して角度を有する方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、
請求項1に記載の攪拌用回転体。
【請求項4】
前記吐出口は、自身の断面に垂直な方向から見た場合に、前記回転軸に対して直交する方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、
請求項3に記載の攪拌用回転体。
【請求項5】
前記吸入口は、前記回転軸方向から見た場合に、前記回転軸の遠心方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の攪拌用回転体。
【請求項6】
前記吸入口は、前記回転軸方向から見た場合に、前記回転軸を中心とする円周の接線方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の攪拌用回転体。
【請求項7】
前記吸入口は、前記回転軸方向から見た場合に、前記回転軸を中心とする円周の接線方向に対して角度を有する方向を長手方向とする長孔であることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の攪拌用回転体。
【請求項8】
前記吸入口または前記吐出口の少なくとも一方は、湾曲した長孔であることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれかに記載の攪拌用回転体。
【請求項9】
前記吸入口または前記吐出口に対応する開口を備えると共に、前記本体の表面に沿ういずれかの方向にスライド可能に配置され、スライドによって前記吸入口または前記吐出口の開口面積を変更するスライド部材を備えることを特徴とする、
請求項1乃至8のいずれかに記載の攪拌用回転体。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の攪拌用回転体を、前記回転軸方向に複数配置して構成されることを特徴とする、
攪拌装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−139610(P2012−139610A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291987(P2010−291987)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(510183165)株式会社エディプラス (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(510183165)株式会社エディプラス (8)
【Fターム(参考)】
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