説明

支保工

【課題】支保工の構築作業および撤去作業を容易、且つ迅速にできるようにする。
【解決手段】水に対して浮力を生じさせるための中空部4を備えた密閉管状に形成してなる支保工材から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桟橋等の水上構築物を構築するのに用いる支保工に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する先行技術文献情報として、たとえば、次の特許文献1がある。
【特許文献1】特開平8−277514号公報
【0003】
特許文献1には、杭頭部に垂下され、支保工や型枠を支持する吊り支保工装置であって、杭頭部に載置された水平杆と、該水平杆に垂下され、大引材を横架させて支持する複数の垂下装置からなる吊り支保工装置が開示されている。また、前記大引材上に横構を架け渡すことにより支保工が構成され、該支保工を利用してコンクリートを打設して梁を構築する。そして、前記梁の構築後に、前記横構・大引材・垂下装置・水平杆等の構成部材を解体撤去するようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、支保工を構築するための前記構成部材の組立て作業、および解体撤去作業は、すべて水上・水中での作業であるため、作業中に該構成部材が水中に沈まないように各構成部材を吊下げるクレーン等の重機を備えた台船が必要であり、更に、該台船を曳航するための曳船も必要であって、作業が大掛かりになる上に、相当の作業時間を要していた。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものである。すなわち、支保工の構築作業および撤去作業を容易、且つ迅速にできるようにすることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明に係る支保工は、次の構成を少なくとも具備する。
【0007】
すなわち、水上構築物の一部を構成する杭に対して着脱可能に連結固定される支保工において、該支保工は、水に対して浮力を生じさせるための中空部を備えた密閉管状に形成してなる支保工材から構成していることを特徴とする。
【0008】
前記支保工材の中空部には、大気中の空気又は該空気よりも比重が低い不燃性又は難燃性の気体が充填されていることを特徴とする。
【0009】
前記支保工材の中空部には、発泡材が充填されていることを特徴とする。
【0010】
前記支保工材を並列させるとともに、隣り合う支保工材同士を該支保工材と同構造の支保工材を介して連結してなる支保工材を備えていることを特徴とする。
【0011】
前記支保工材を並列させるとともに、並列した支保工材の一端部同士を該支保工材と同構造の支保工材を介して連結してなる支保工材を備えていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る支保工を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は、本発明に係る支保工の第1実施例を示す概略構成図であり、図4は、本発明に係る支保工の第2実施例を示す概略構成図である。図中、符号1は支保工、符号2は杭、符号3は、前記支保工1を前記杭2に対して吊持状に連結固定するための連結体である。なお、本実施例では、杭2を4本1列として2列配した形態を示しているが、本発明においてこの形態を限定するものではない。また、以下では、前記杭2の列を、第1列A,第2列Bとして説明する。また、本実施例の支保工には、この上部に型枠や型枠を支持する支持材等が載置される(図示せず)。
【0013】
前記支保工1は、長手方向が前記第1列Aおよび第2列Bに沿う方向とする4本の支保工材10,11,12,13を並列状に有し、支保工材10と支保工材11が第1列Aを挟むようにして配され、支保工材12と支保工材13が第2列Bを挟むようにして配されている。また、前記第1列Aと第2列Bとの間で隣り合う支保工材11と支保工材12は、長手方向を該支保工材11と支保工材12の長手方向と直交する方向とする多数(図示では12本)の支保工材14で連結してある。そして、この支保工1は、各支保工材10,11,12,13を、前記連結体3を介して杭2に対して連結固定することにより構築される。
【0014】
前記支保工材11,12は、前記支保工材14で連結されたことにより、図示において梯子状の支保工材(以下、符号1Aを付す)が構成される。すなわち、この支保工材1Aによれば、前記第1列Aと第2列Bとの間に支保工1の一部を構築する作業において、前記各支保工材11,12,14同士を1本々連結する作業を行うことなく、支保工1の一部を構築することができる。
【0015】
前記各支保工材10〜14は、水に対して浮力を生じさせるための中空部4を備えた密閉角管状の鋼材から構成されている。前記中空部4は、各支保工材10〜14の厚みを除いてその全域に亘るように形成されている。また、前記中空部4には、大気中の空気が充填されている。この構成により、支保工材10,13および支保工材1Aに浮力を備えさせて、水上に浮くようにすることができる。
【0016】
すなわち、前記支保工材10,13および支保工材1Aが水上に浮くものであるため、構築された支保工1を解体して撤去する際に、支保工材10,13および支保工材1Aが沈まないように支持するクレーン等の重機を用いる必要がない。たとえば、ワイヤロープ等を(図示せず)、水上に浮いている各支保工材10,13および支保工材1Aに連結して、該ワイヤロープを曳船等で曳くことにより、撤去することができる。また、前記支保工材1Aに、支保工1の上部に設置される型枠(図示せず)や、該型枠を支持する支持材(図示せず)等の構成部材等を載せることができるので、これらの構成部材の撤去も同時に行なうことができる。
【0017】
したがって、本実施例の支保工1は、該支保工1の構築および解体・撤去作業を迅速、且つ容易に行なうことができ、これにより、工期を短縮できるとともに、作業コストを削減することができる。
【0018】
なお、前記中空部4に充填する気体は、例示した大気中の空気に限られず、たとえば、空気よりも比重が低い不燃性又は難燃性の気体(たとえば、ヘリウムガス等)としてもよい。また、前記各気体に換えて、発泡スチロール等の発泡材を充填してもよい(図示せず)。
【0019】
本実施例の連結体3は、図1および図2に示すように、杭2の杭頭部側(上端側)の周面に、径方向外側に向けて突出状に固着したブラケット31と、該ブラケット31に対して垂設された吊りボルト32とから構成されている。また、連結体3は、一本の杭2に対して4個設けられており、各杭2において、2個の連結体3の吊りボルト32を前記支保工材10,13に連結して吊持するとともに、2個の連結体3の吊りボルト32を前記支保工材1Aを連結して吊持するようにしている。このように、前記支保工材10,13および支保工材1Aを各杭2において吊持することによって前記支保工1を構築することができる。
【0020】
前記連結体3を杭2に対して取付ける作業、および連結体3に対して前記支保工材10,13および支保工材1Aを吊持する作業は、たとえば、仮設支保工20を設置し、該仮設支保工20を足場として行なうことができる。前記仮設支保工20は、図に示すように、あらかじめ杭2に、前記支保工材10,13および支保工材1Aを仮置きする仮設ブラケット5を取付けておき、該仮設ブラケット5に前記支保工材10,13および支保工材1Aを載置することにより設置できる。そして、この仮設支保工20上で前記連結体3を杭2に対して取付ける作業を行うことができるとともに、連結体3に対して前記支保工材10,13および支保工材1Aを吊持する作業を行なうことができる。また、この仮支保工20は、連結体3で吊持された時点で支保工1となる。
【0021】
すなわち、前記連結体3を設置する作業、および支保工1を構築する作業のほとんどを、前記仮設支保工20上で行なうことができるため、海上および海中での作業工程を大幅に削減することができる。しかも、該仮設支保工20と支保工1が兼用であるため、支保工1を構築する作業スペースを別部材によるもので設置する作業、および設置した際に生じる解体・撤去する作業を省くことができる。支保工1の構築および解体・撤去作業を迅速、且つ容易に行なうことができ、これにより、工期を短縮できるとともに、各種部材の削減ができ、かつ作業コストを削減することができる。
【0022】
なお、前記連結体3の構成は、実施例で示した構成に限られず、前記支保工材10,13および支保工材1Aを吊持して支保工1を構築できる構成であればよい(図示せず)。また、本発明の場合、前記杭2に対して前記支保工材10,13および支保工材1Aを連結固定することで前記支保工1を構築する構成であればよく、ただし、好ましい構成としては、前記の実施例で示した構成である。
【0023】
次に、本発明に係る支保工の第2実施例を説明する。本実施例の支保工1’は、第1実施例と同構造の支保工材10〜13の一端部(図示において右端部)同士を、これら支保工材10〜13と同構造の支保工材15を介して連結されてなるものである。すなわち、本実施例の支保工1’は、支保鋼材10,13および支保工材1Aが一体となった支保工材1Bを前記連結体3で吊持することで構築することができる。また、この支保工1’を撤去する際には、支保工材1Bにワイヤロープを連結して該ワイヤロープを曳船等で曳くことにより、撤去することができる。なお、第1実施例と重複する部位についての説明は、同符号を付すことにより省略する。
【0024】
したがって、本実施例の支保工1’は、該支保工1’の構築および解体・撤去作業を迅速、且つ容易に行なうことができ、これにより、工期を短縮できるとともに、作業コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施例の支保工の設置状態を示す平面図。
【図2】図1の(2)-(2)線断面図。
【図3】仮支保工状態を示す断面図。
【図4】第2実施例の支保工の設置状態を示す平面図。
【符号の説明】
【0026】
1:支保工
2:杭
3:連結体
4:中空部
10:支保工材
11:支保工材
12:支保工材
13:支保工材
14:支保工材
15:支保工材
1A:支保工材
1B:支保工材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上構築物の一部を構成する杭に対して着脱可能に連結固定される支保工において、該支保工は、水に対して浮力を生じさせるための中空部を備えた密閉管状に形成してなる支保工材から構成していることを特徴とする支保工。
【請求項2】
前記支保工材の中空部には、大気中の空気又は該空気よりも比重が低い不燃性又は難燃性の気体が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の支保工。
【請求項3】
前記支保工材の中空部には、発泡材が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の支保工。
【請求項4】
前記支保工材を並列させるとともに、隣り合う支保工材同士を該支保工材と同構造の支保工材を介して連結してなる支保工材を備えていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の支保工。
【請求項5】
前記支保工材を並列させるとともに、並列した支保工材の一端部同士を該支保工材と同構造の支保工材を介して連結してなる支保工材を備えていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の支保工。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−13822(P2010−13822A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173411(P2008−173411)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(508200067)弘徳建設株式会社 (2)
【Fターム(参考)】