説明

支持体不織布に対するセラミックの改善された付着性を有するセラミックの柔軟な膜

本発明は、実施に応じてバッテリー、特にリチウムバッテリー用のセパレータとして適当である柔軟なセラミック膜並びに該膜の製造法に関する。セラミック膜又はハイブリッド膜は、既に現在達成されている柔軟性にも関わらず、折り畳んだ際にセラミック被覆が剥離する傾向にあるという欠点を有する。前記欠点は本発明による膜を用いて防止され、前記膜はポリマー不織布の上及び中に硬化されたセラミック被覆を有し、前記セラミック被覆は、種々のサイズの金属酸化物粒子の2つのフラクションから構成されており、かつ2種の異なる定着剤により構成されたネットワークによってポリマー不織布に付着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体不織布に対するセラミックの改善された付着性を有するセラミックの柔軟な膜、該膜の製造及び、セパレータとしての、又は液体濾過適用における濾過膜としての該膜の使用に関する。セラミックで被覆されたポリマーテキスタイルをベースとするセラミック膜は、強度の機械的応力の際にもセラミック被覆の剥離を示さない。
【0002】
電気セパレータは、バッテリー、及び、電極が例えばイオン伝導性の保持下に互いに分離されねばならない他の装置において使用される膜である。
【0003】
セパレータは、通常、高いイオン透過性、良好な機械強度及び系中で、例えばバッテリーの電解質中で使用された化学薬品及び溶剤に対する長時間安定性を有する、薄く多孔質である電気絶縁性の材料である。セパレータは、バッテリー中でカソードとアノードとを電気的に完全に絶縁すべきであるが、電解質に対しては透過性であるべきである。更に、セパレータは弾性を持続しなければならず、かつ系中で、例えば電極パッケージ中で、充電及び放電の際の動きに追従しなければならない。
【0004】
セパレータは、セパレータが使用される装置、例えばバッテリーセルの寿命を特に決定する。従って、再充電可能なバッテリーの開発は、適当なセパレータ材料の開発によって影響を受ける。
【0005】
電気セパレータ及びバッテリーに関する一般的な情報は、例えばJ.O. Besenhard著 ”Handbook of Battery Materials” (VCH-Verlag, Weinheim 1999)に供覧されている。
【0006】
現在使用されているセパレータは、主に多孔質有機ポリマーフィルムもしくは無機不織布材料、例えばガラス材料又はセラミック材料からなる不織布又はセラミックペーパーからなる。これらは、様々な企業により製造されている。重要な製造元は、ここではCelgard、Tonen、Ube、Asahi、Binzer、Mitsubishi、Daramic等である。典型的な有機セパレータは、例えばポリプロピレンからなるか、又はポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン−複合体からなる。
【0007】
現在頻繁に使用されているリチウムバッテリーは、水性の電解質を有する系、例えばNiCdバッテリー又はニッケル−金属水素化物バッテリーと比較して、例えば比エネルギー密度が高く、自己放電がなくかつメモリー効果がないといった多くの利点を特徴とする。しかしながら、リチウムバッテリーは、可燃性の電解質を含有し、この電解質が更に極めて強力に水と反応できるという欠点を有する。高エネルギーバッテリー、つまり多くの活材料を含有するバッテリーは、従って、事故の場合に及びその事故に伴うセルの加熱の場合にバッテリー中の電気回路が遮断されることが極めて重要である。この遮断は、通常では、ポリプロピレン(PP)−ポリエチレン(PE)−PPから成る複合材料から成る特別なセパレータによって行われる。所定の温度、遮断温度(シャットダウン温度)から、PEは溶融し、セパレータの細孔は閉鎖され、電流回路は遮断される。
【0008】
このセパレータの欠点は、限定的な熱安定性であり、それというのもセルが更に加熱された場合にはポリプロピレンも溶融し、その結果、この焼き切れ温度(メルトダウン温度)でセパレータ全体が溶融し、それにより大面積の内部短絡が生じ、この大面積の内部短絡は、しばしば閃光を発しながら又はそれどころか爆発しながらバッテリーセルの破壊を招くためである。確かに、焼き切れ(メルトダウン)作用を示さないセラミックセパレータ、例えばセラミックペーパー又はセラミック不織布又はセラミック織物は公知であるが、これらのセパレータは、残念ながら、特に高エネルギーの適用のためには不可欠でありかつバッテリー生産元によって要求される遮断(シャットダウン)作用も示さない。
【0009】
セラミックセパレータ又は半セラミック(ハイブリッド)セパレータ又はセパレータとして使用可能なセラミック膜は、例えばWO99/15262から十分に公知である。前記文献から、セパレータ又はセパレータとして適している膜の製造を引用することもできる。有利に、本発明によるセパレータ用の多孔質支持体として、もちろん導電性の支持体、例えば金属織物は使用されず、それというのも、このような支持体を使用した場合には、支持体のセラミック被覆が不完全な場合に内部短絡が生じかねないためである。本発明によるセパレータは、従って有利に非導電性材料から成る支持体を有する。
【0010】
最近では、セラミックとポリマーとを有するハイブリッドのセパレータが開発されている。DE10208277では、多孔質の電気絶縁性のセラミック被覆を有するポリマー基材材料、例えばポリマー不織布をベースとするセパレータが製造された。例えばバッテリーの製造の際にしばしば生じるような機械的応力の場合、このセパレータの場合、その柔軟性にもかかわらずしばしばセラミック被覆が部分的に剥離してしまう。従って、このセパレータから製造されたバッテリーは比較的高い欠陥割合を示す。
【0011】
従って、本発明の課題は、例えば膜の後加工の際に生じるような機械的応力の際にセラミック被覆の剥離を示さない、セパレータとして適当な膜を提供することであった。
【0012】
意外にも、アルキルトリアルコキシシランをベースとする少なくとも2種の異なる定着剤の組み合わせを用い、その際、一方の定着剤のアルキル基が、他方の定着剤のアルキル基の置換基と反応によって共有結合を形成し得る置換基を有することによって、セラミック被覆の製造の際に、明らかに改善された付着性が特徴的である被覆が得られることが見出された。意外にも、このように製造されたセラミック被覆は更に水の作用に対して極めて安定であり、それというのも、このように製造された膜はセパレータとしてのみならず液体濾過適用における濾過膜としても使用することができるためである。
【0013】
従って、本発明の対象は、ポリマー不織布をベースとする膜であって、不織布が不織布の上及び中にセラミック被覆を有し、前記のセラミック被覆が、Al、TiO、ZrO又はSiOから選択された少なくとも1種の酸化物を有する、ポリマー不織布をベースとする膜において、前記被覆の中に、Al、ZrO、TiO及び/又はSiOから選択された酸化物の少なくとも2つのフラクションが存在しており、その際、第一のセラミックフラクションはゾルから得られ、第二のフラクションは200nm〜5μmの平均粒径を有する粒子を有し、第一のフラクションは層として第二のフラクションの粒子の上に存在しており、第一のフラクションは被覆に対して1〜30質量部の割合でセラミック被覆中に存在しており、第二のフラクションは被覆に対して5〜94質量部の割合でセラミック被覆中に存在しており、更に、ケイ素を有するネットワークが存在しており、その際、ネットワークのケイ素は酸素原子を介してセラミック被覆の酸化物に結合しており、有機基を介してポリマー不織布に結合しており、炭素原子を有する少なくとも1つの鎖を介してもう1つのケイ素に結合していることを特徴とする、ポリマー不織布をベースとする膜である。
【0014】
同様に、本発明の対象は、膜、特に本発明による膜の製造法であって、ポリマー不織布に不織布の中及び上にセラミック被覆を備え、そのために、ポリマー不織布の上及び中に懸濁液を施与し、前記懸濁液を少なくとも1回の加熱により不織布の上及び中で硬化させ、その際、懸濁液がゾル、及び元素Al、Zr、Ti及び/又はSiの酸化物から選択された酸化物粒子の少なくとも1つのフラクションを有する膜の製造法において、懸濁液が、施与の前に、それぞれ一般式I
−Si(OR)4−x (I)
[式中、
x=1又は2であり、
R=有機基であり、その際、基Rは同じか又は異なっていてよい]
のアルキルアルコキシシランをベースとする少なくとも2種の異なる定着剤から成る混合物を有し、その際、定着剤は、双方の定着剤が、少なくともそれぞれ1つの反応性基を置換基として有するアルキル基を有するように選択され、その際、一方の定着剤のアルキル基上の反応性基と、他方の定着剤の反応性基とが、少なくとも1回の加熱の間に反応して共有結合を形成するか、又は、UV線の作用下に反応して共有結合を形成する反応性基を有する式Iによる1種以上の定着剤を添加し、その際、定着剤を添加した際にUV線の作用下に反応し、懸濁液をポリマー不織布の上に施与した後に、少なくとも1つのUV線での処理を行うことを特徴とする膜の製造法である。
【0015】
更に、本発明の対象は、セパレータとして使用される膜がチタン化合物を有しない、濾過膜としての、又は電気セパレータとしての、本発明による膜又はセパレータの使用、並びに、このような本発明による膜をセパレータとして有するバッテリー自体である。
【0016】
本発明による膜は、定着剤間で共有結合の形成が行われない1種のみか又はそれ以上の定着剤を用いて製造された膜よりも、水中で本質的により高い耐久性を有するという利点を有する。水に対する膜のより高い安定性により、本発明による膜は、もはやセパレータとしてのみならず、水を有する液体の液体濾過においても使用することができる。
【0017】
特定の定着剤を用いた本発明による膜の製造は、方法に対しても有利な影響を及ぼす。本発明による方法の場合、被覆の硬化を比較的低い温度(乾燥温度ないし硬化温度)で行うことができるため、少なくとも120〜150℃の溶融点又は軟化点を有するポリマー基材、例えばポリアミド、ポリプロピレン又はポリエチレンをベースとする堅固なセラミック被覆を有する膜を製造することも可能である。
【0018】
傑出した耐水性により、本発明による膜を、例えば高めた圧力下で120℃の温度であっても、セラミック被覆を損傷することなく水蒸気で滅菌することができる。本発明による膜は、一方ではポリマー不織布に対する被覆の良好な付着性のために、他方では滅菌可能性のために、食料品の濾過の分野においても使用することができる。
【0019】
特定の実施態様で記載される金属酸化物の少なくとも3つのフラクションを有するような膜が製造される場合、このような膜は更に、このような膜が、不織布上でのセラミック被覆の硬化の後に、折曲げ、折畳み又はしわにすることによってもはや破壊されないという利点を有する。従って、この膜を実質的に0mmの曲げ半径まで曲げることができる。従って、本発明による膜は、先行技術から公知であるセラミック膜又はハイブリッド膜よりも劇的に良好な機械的安定性を有する。これによって、例えば巻回又はスタックされたバッテリーの製造の際のみならず加工の際にも、この膜の取扱いは決定的に改善される。本発明による膜をセパレータとして用いて製造されたバッテリーは、極めて低い欠陥割合を有する。
【0020】
本発明による膜は、セパレータとして、この不織布の上及び中に存在する多孔質の無機の非導電性被覆を有するポリマー不織布を有し、かつ、卓越した安全特性を有するという利点を有する。いわゆるメルトダウン(焼き切れ)は本発明によるセパレータの場合には生じることができず、それというのも、比較的高い温度であっても無機層はバッテリーの内部での大面積の短絡を防止するためである。
【0021】
例えば事故により引き起こされるであろう内部短絡の場合にも、本発明によるセパレータは極めて安全である。例えば釘がバッテリーに貫通した場合、セパレータに応じて次のことが生じる:ポリマーセパレータは、貫通箇所で(短絡流が釘の上を流れ、かつこれを加熱する)溶融し、収縮すると考えられる。これにより、短絡箇所は益々大きくなり、かつ反応は制御不能になる。本発明によるセパレータの場合、ポリマー不織布は溶融するが、無機セパレータ材料は溶融しない。よって、このような事故の後に、バッテリーセルの内部の反応は、極めて緩やかに進行する。従って、このバッテリーは、ポリマーセパレータを有するものよりも明らかに安全である。これは、特に自動車の分野で用いられる。
【0022】
リチウムイオンバッテリー中で使用するためのセパレータとしての本発明による膜の利点を、以下のようにまとめることができる:
・高い多孔率
・理想的な孔径
・薄い厚さ
・わずかな面積重量
・極めて良好な湿潤特性
・高い安全性、つまりメルトダウン効果を生じない。
・極めて良好な撓曲性/屈曲性、従って、本発明による膜を、極めて密に巻回されたリチウムバッテリー、特にいわゆるクラッシュセル(gecrashten Zellen)において特に良好に使用することができる。
【0023】
本発明による膜及びその製造法を、本発明をこの実施態様に限定することなく以下に記載する。
【0024】
不織布が不織布の上及び中に少なくとも1つのセラミック被覆を有し、前記のセラミック被覆が、Al、TiO、ZrO又はSiOから選択された少なくとも1種の酸化物を有する、ポリマー不織布をベースとする本発明による膜は、前記被覆の中に、Al、ZrO、TiO及び/又はSiOから選択された酸化物の少なくとも2つのフラクションが存在しており、その際、第一のセラミックフラクションはゾルから得られ、第二のフラクションは200nm〜5μmの平均粒径を有する粒子を有し、第一のフラクションは層として第二のフラクションの粒子の上に存在しており、第一のフラクションは被覆に対して1〜30質量部の割合でセラミック被覆中に存在しており、第二のフラクションは被覆に対して5〜94質量部の割合でセラミック被覆中に存在しており、更に、ケイ素を有するネットワークが存在しており、その際、ネットワークのケイ素は酸素原子を介してセラミック被覆の酸化物に結合しており、有機基を介してポリマー不織布に結合しており、炭素原子を有する少なくとも1つの鎖を介してもう1つのケイ素に結合していることを特徴とする。炭素原子を有する鎖は有利に更に少なくとも1つの窒素原子を有する。有利に、本発明による膜はケイ素を有するネットワークを有しており、その際、炭素原子を介してケイ素原子を相互に結合している鎖は、窒素を有する鎖により結合されたケイ素原子によって、グリシジル基へのアミノ基の付加によって得られたものである。
【0025】
ケイ素原子間のこの鎖によって、Si−酸素架橋ないし金属−酸素架橋を介して生じる無機ネットワークの他に、これと架橋した第二の有機ネットワークが存在する場合、この第二の有機ネットワークによって、特に水に対する膜の安定性が著しく強化される。本発明による膜がセパレータとして使用される場合、膜はチタン化合物(TiO)を含有せず、粒子又はゾルとしてSiO、Al及び/又はZrOのみを有する。
【0026】
本発明による膜の実施態様に応じて、本発明による膜は第一のセラミックフラクションとして、粒子、特に20nm未満の平均粒径を有する粒子を有することができる。このようなセラミックフラクションは、例えば粒状のゾルを介して製造されていてよい。本発明による膜の他の実施態様において、セラミックフラクションは、粒子か、又はポリマーのゾルを介して製造されたポリマー状無機ネットワークを含有する。セラミックフラクションは、第二のフラクションの粒子の表面上で有利に100nm未満、有利に50nm未満の層厚を有する。粒子の第二のフラクションは有利に5m/g未満のBET表面積を有する。
【0027】
有利に、本発明による膜は、柔軟でありかつ有利に50μm未満の厚さ並びに25g/m未満の面積重量を有するポリマー不織布を有する。不織布の柔軟性により、本発明による膜も柔軟であり得ることが保証される。
【0028】
本発明による膜の高い柔軟性によって、本発明による膜を、0.5mm未満の小さな巻回半径を有する巻回型セル中のセパレータとして使用することもできる。
【0029】
不織布の厚さは、膜の特性、特にセパレータとして使用される膜の特性に大きな影響を及ぼし、それというのも、一方では柔軟性が、更には電解質で含浸されたセパレータの面積抵抗が、不織布の厚さに依存しているためである。従って、有利に、本発明による膜は30μm未満、特に10〜20μmの厚さを有する不織布を有する。特に有利に、本発明による膜は、20g/m未満、特に5〜15g/mの面積重量を有する不織布を有する。特にリチウムイオンバッテリーの場合に、バッテリーの十分に高い性能を達成するために、本発明による膜が、有利に50%より高い多孔率、有利に50〜97%の多孔率、特に有利に60〜90%の多孔率、極めて特に有利に70〜90%の多孔率を有する支持体を有する場合が有利であることが判明した。多孔率は、この場合に、不織布の体積(100%)−不織布の繊維の体積として定義され、つまり材料が充填されていない不織布の体積の割合として定義される。不織布の体積は、この場合に、不織布の寸法から計算することができる。繊維の体積は、観察された不織布の測定された重量と、ポリマー繊維の密度とから得られる。不織布中でのできる限り均一な細孔半径分布は、本発明による膜、特にセパレータにおいて使用するために重要である。不織布中でのできる限り均一な細孔半径分布は、所定のサイズの最適に調整された酸化物粒子との関連で、特にセパレータとしての使用の観点から、本発明による膜の最適化された多孔率をもたらす。従って、有利に、本発明による膜、特にセパレータとして使用することができる膜は、細孔の少なくとも50%が100〜500μmの細孔半径を有する細孔半径分布を有する不織布を有する。
【0030】
ポリマー繊維として、不織布は有利にポリマーの非導電性の繊維を有し、この繊維は、有利にポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアミド(PA)、例えばポリアミド12又はポリオレフィン、例えばポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)から選択される。特に有利に、不織布は、ポリエステル、特にPET及び/又はポリアミド、特にポリアミド12から成るポリマー繊維を有するか、又は完全に前記ポリマー繊維から成る。この不織布のポリマー繊維は、有利に0.1〜10μm、特に有利に1〜5μmの直径を有する。
【0031】
本発明による膜の有利な実施態様において、被覆中に、Al、ZrO、TiO及び/又はSiOから選択された酸化物の少なくとも3つのフラクションが存在しており、その際、第三のフラクションは、10nm〜199nmの平均一次粒径を有する粒子を有し、第一のフラクションは層として第二及び第三のフラクションの粒子上に存在し、第一のフラクションは被覆に対して1〜30質量部の割合でセラミック被覆中に存在しており、第二のフラクションは被覆に対して30〜94質量部の割合でセラミック被覆中に存在しており、第三のフラクションは被覆に対して5〜50質量部の割合でセラミック被覆中に存在している。
【0032】
この有利な実施態様の場合、大きな粒子(第二のフラクション)は、支持体中に存在する大きなメッシュのための充填材料として役立つ。第一のセラミックフラクションは無機バインダーとして役立ち、この無機バインダーは粒子を相互に並びに不織布上(ないし定着剤により形成されるケイ素を有する無機ネットワーク上)に固定させる。無機ネットワークはポリマー不織布に対するセラミック被覆の特に良好な付着性を保証する。平均粒径を有する第三のフラクションの粒子が、恐らく特に良好な柔軟性の要因である。
【0033】
特に有利に、本発明による膜は、第三のフラクションが30nm〜60nmの平均一次粒径を有する粒子を有し、第二のフラクションが1〜4μmの平均粒径を有する粒子を有し、第一のフラクションが被覆に対して10〜20質量部の割合でセラミック被覆中に存在しており、第三のフラクションが被覆に対して10〜30質量部の割合でセラミック被覆中に存在しており、第二のフラクションが被覆に対して40〜70質量部の割合でセラミック被覆中に存在している被覆を有する。
【0034】
第三の粒子フラクションが、1〜25μmの平均凝集体サイズ又は平均凝結体サイズを有する粒子を含有する場合が有利である。有利に、第三の(粒子)フラクションは、10〜1000m/g、有利に40〜100m/gのBET表面積を有する粒子を含む。
【0035】
本発明による膜の特に高い柔軟性は、第三のフラクションの粒子が酸化ジルコニウム粒子又は有利に酸化ケイ素粒子であり、第二のフラクションの粒子が酸化アルミニウム粒子であり、セラミックフラクションが酸化ケイ素から形成される場合に達成することができる。平均的な粒子(第三のフラクション、例えばSipernat、Aerosil又はVP酸化ジルコニウム、全てDegussa AG)及び大きな粒子(第二のフラクション、例えば酸化アルミニウムCT800SG、AlCoA及びMZS、Martinswerke)は市販の粒子である。第一のセラミックフラクションは、同様に市販されているか又は自ら製造しなければならないゾルに由来する。
【0036】
本発明による膜は、有利に50m、有利に10cm、特に有利に5mmまでの各半径まで、それにより被覆内に欠陥が生じることなく損傷なしに曲げられる。本発明による膜は、更に少なくとも1N/cm、有利に少なくとも3N/cm、極めて特に有利に6N/cmより大きい引裂強さを有することができることを特徴とする。
【0037】
本発明による膜が上記の3つのフラクションを指示された質量範囲で有する場合、本発明による膜は更に大きな柔軟性を有することができる。
【0038】
本発明による膜は、有利に100mまでの各半径まで、有利に100m〜5mmの半径まで、特に有利に5mm〜0.5mmの半径まで、有利に0.1mmの半径まで、極めて特に有利に0.01mmの半径まで、それにより欠陥が生じることなく損傷なしに曲げられる。特に、本発明による膜は、例えば布の場合に可能であるように、セラミック被覆が剥離することなく折り畳むことができる。本発明による膜の高い引裂強さ及び良好な屈曲性は、この膜をセパレータとして使用した場合、バッテリーの充電及び放電の際に生じる電極の形状の変化が、セパレータを損傷することなしに、セパレータによって引き受けられるという利点を有する。この屈曲性は、更に、このセパレータを用いて市販の規格化された巻回型のセルを生産できるという利点を有する。このセルの場合に、電極/セパレータ層は規格化されたサイズで、相互に渦巻状に巻き取り、接続される。
【0039】
セパレータとして使用するために、本発明による膜が30〜80%の多孔率を有する場合が有利である。この多孔率はこの場合に連絡可能な細孔、つまり連続細孔に当てはまる。この多孔率はこの場合に公知の水銀多孔度測定法を用いて測定することができるか、又は連続細孔だけが存在することを前提とした場合に、使用した材料の体積及び密度から計算することができる。平均孔径及び多孔率とは、水銀多孔度測定法の公知の方法により、例えばCarlo Erba Instruments社製のPorosimeter 4000を用いて測定することができる平均孔径及び多孔率であると解釈すべきである。水銀多孔度測定法はウォッシュバーン(Washburn)の式に基づく(E. W. Washburn, ”Note on a Method of Determining the Distribution of Pore Sizes in a Porous Material”, Proc. Natl. Acad. Sci., 7, 115-16(1921))。
【0040】
更に、膜をセパレータとして使用する場合、遮断機能が存在するのが有利である。この目的のために、セラミック層上に遮断粒子ないし遮断粒子から成る層が存在してよい。このような遮断粒子は、例えば天然又は人工のロウ、(低融点)ポリマー、例えばポリオレフィン又はその混合物であってよく、その際、この遮断粒子の材料は、この粒子が所望の遮断温度で溶融し、かつセパレータ(膜)の細孔を閉塞することで、更なるイオン流が抑制されるように選択される。特に有利に、本発明による膜は遮断機能を有するセパレータとして使用するために、ポリエチレン(ロウ)から成る遮断粒子を有する。
【0041】
遮断粒子のサイズは、無機層の細孔が本発明によるセパレータ(膜)の製造の際に閉塞されないことが保証されている限りは原則的に任意である。有利に、遮断粒子は、無機層の細孔の平均孔径(d)よりも大きな平均粒径(D)を有する。有利に、遮断粒子は平均孔径(d)より大きくかつ5dより小さい、特に有利に2dより小さい平均粒径(D)を有する。このことは、特に、イオン流の減少、ひいてはセパレータの伝導率の低下及びバッテリーの性能の低下を引き起こしかねない無機層の細孔の侵入及び閉塞が防止されるために有利である。遮断粒子層の厚さは、厚すぎる層がバッテリー系中の抵抗を不必要に高めない限り重要ではない。確実な遮断を達成するために、この遮断粒子層は、遮断粒子の平均粒径(D)とほぼ同じ〜10D、有利に2D未満〜1Dを上回る厚さ(z)を有するのが好ましい。
【0042】
遮断機能を有する本発明による膜/セパレータは、有利に50μm未満の厚さ、有利に40μmの厚さ、特に有利に5〜35μmの厚さを有する。遮断粒子なしで、本発明によるセパレータは有利に15〜50μm、有利に20〜30μmの厚さを有する。セパレータの厚さはセパレータの特性に大きな影響を及ぼし、それというのも、一方では柔軟性が、更には電解質で含浸されたセパレータの面積抵抗が、セパレータの厚さに依存するためである。わずかな厚さにより、電解質との適用でセパレータの特に低い電気抵抗が達成される。このセパレータ自体は、当然のことながら極めて高い電気抵抗を有しており、それというのもセパレータ自体は絶縁特性を有していなければならないためである。更に、より薄いセパレータはバッテリースタック中での高められた充填密度を可能にするため、同じ体積でより大きなエネルギー量を蓄えることができる。
【0043】
本発明によるセパレータは有利に本発明による方法により得ることができる。ポリマー不織布に不織布の中及び上にセラミック被覆を備え、そのために、ポリマー不織布の上及び中に懸濁液を施与し、前記懸濁液を少なくとも1回の加熱により不織布の上及び中で硬化させ、その際、懸濁液がゾル、及び元素Al、Zr、Ti及び/又はSiの酸化物から選択された酸化物粒子の少なくとも1つのフラクションを有する、膜、特に本発明による膜の製造法は、懸濁液が、施与の前に、それぞれ一般式I
−Si(OR)4−x (I)
[式中、
x=1又は2であり、
R=有機基であり、その際、基Rは同じか又は異なっていてよい]
のアルキルアルコキシシランをベースとする少なくとも2種の異なる定着剤から成る混合物を有し、その際、定着剤は、双方の定着剤が、少なくともそれぞれ1つの反応性基を置換基として有するアルキル基を有するように選択され、その際、一方の定着剤のアルキル基上の反応性基と、他方の定着剤の反応性基とが、少なくとも1回の加熱の間に反応して共有結合を形成するか、又は、UV線の作用下に反応して共有結合を形成する反応性基を有する式Iによる1種以上の定着剤を添加し、その際、定着剤を添加した際にUV線の作用下に反応し、懸濁液をポリマー不織布の上に施与した後に、UV線での処理を行うことが特徴的である。UV線での処理は、例えばUVランプにより行うことができ、その際、照射されたエネルギー量は、定着剤の架橋が生じるような大きさに選択されねばならない。相応する処理は、例えば254nmの波長での0.1〜24時間、有利に1〜4時間に亘る水銀灯を用いた処理により行うことができる。UV線での処理は、少なくとも1回の加熱の前又は後に行うことができる。有利に、UV処理は、懸濁液をポリマー不織布に施与した後に、及び懸濁液を硬化のために1回加熱する前に行われる。特に有利に、UV線での処理は、ポリマー不織布の上に施与された懸濁液の第一の加熱(これは懸濁液の初期乾燥(前乾燥)に役立つ)の後で、かつ、第二の加熱(これにより懸濁液が硬化される)の前に行われる。前乾燥は、例えば50〜90℃、有利に60〜85℃の温度で、有利に0.1〜3時間の期間に亘って、有利に0.5〜1.5時間の期間に亘って行うことができる。
【0044】
少なくとも2種の上記の定着剤の使用により、恐らく膜の製造の間にケイ素を有するネットワークが生じ、その際、このネットワークのケイ素は酸素原子を介してセラミック被覆の酸化物に結合しており、有機基を介してポリマー不織布に結合しており、炭素原子を有する少なくとも1つの鎖を介してもう1つのケイ素に結合している。恐らく、UV活性定着剤が懸濁液に添加される場合には、少なくとも1回のUV線での処理によって同様の効果が達成される。ケイ素原子間のこの鎖によって、Si−酸素架橋ないし金属−酸素架橋を介して生じる無機ネットワークの他に、これと架橋した第二の有機ネットワークが存在し、この第二の有機ネットワークによって、特に水に対する膜の安定性が著しく強化される。
【0045】
定着剤として、原則的に、上記の式Iを満たし、その際、少なくとも2種の定着剤がそれぞれ他方の定着剤のアルキル基と化学反応して共有結合を形成し得るアルキル基を有する、全ての定着剤を使用することができる。原則的に全ての化学反応が該当するが、有利にこの化学反応は付加反応又は縮合反応である。この場合定着剤はそれぞれ2つ又は1つのアルキル基を有する(式Iにおけるxは1又は2である)。有利に、本発明による方法において使用される、アルキル基上に反応性基を有する定着剤は、アルキル基を1つだけ有する(x=1)。本発明による方法において、少なくとも2種の定着剤として、例えばアルキル基上のアミノ基及びアルキル基上のグリシジル基を有する定着剤を使用することができる。特に有利に、本発明による方法において、定着剤として、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(AMEO)及び3−グリシジルオキシトリメトキシシラン(GLYMO)が使用される。有利に、2種の定着剤のモル比は相互に100:1〜1:100、有利に2:1〜1:2、極めて特に有利に約1:1である。UV線の作用下で定着剤分子間に共有結合を形成するUV活性剤定着剤として、有利にメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)が使用される。定着剤は例えば Degussa AG社から購入することができる。
【0046】
十分に安定なネットワークを得るために、本発明による懸濁液は有利に0.1〜20質量%、有利に2〜10質量%の定着剤の割合を有する。上記の「反応性」定着剤の他に、懸濁液は有機官能性シランから選択された更に他の定着剤を有してよい。この定着剤は懸濁液中で同様に0.1〜20質量%、有利に2〜10質量%の割合で存在してよい。
【0047】
本発明による方法を用いて製造された膜をセパレータとして使用する場合、導電性化合物、特にチタン化合物は膜の製造の際に使用されない。
【0048】
懸濁液は本発明による方法において例えば印刷、圧縮、圧入、ローラ塗布、ブレード塗布、刷毛塗り、浸漬塗布、吹き付け塗布又は流延塗布により不織布の上及び中に施与することができる。
【0049】
使用される不織布は有利に30μm未満の厚さ、有利に20μm未満の厚さ、特に有利に10〜20μmの厚さを有する。特に有利に、本発明による膜の説明の際に記載されたような不織布が使用される。ポリマー繊維が0.1〜10μm、有利に1〜5μmの直径を有する場合が有利である。特に有利に、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン及び/又はポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポリプロピレンから選択された繊維を有するポリマー不織布が使用される。特に、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタラート及び/又はポリアミド、特にポリアミド12から選択された繊維を有するポリマー不織布が使用される。
【0050】
被覆の製造のために使用される懸濁液は、少なくとも、アルミニウム、ケイ素、チタン及び/又はジルコニウムの少なくとも1種の酸化物の上記のフラクションと、元素Al、Zr、Ti及び/又はSiの少なくとも1種のゾルとを有し、かつ第二のフラクションの少なくとも1種の粒子を少なくとも1種の前記ゾル中に懸濁させることにより製造される。この懸濁液は粒状又はポリマーのゾルを有してよい。有利に、この懸濁液はポリマーのゾル、特にケイ素化合物のポリマーのゾルを有する。
【0051】
ゾルは、元素Zr、Al、Ti及び/又はSiの少なくとも1種の前駆体化合物を、水又は酸又は前記化合物の組合せを用いて加水分解することにより得られる。同様に、加水分解すべき化合物を加水分解の前にアルコール又は酸又はこれらの液体の組み合わせに添加することが有利である。有利に、加水分解すべき化合物は水不含の溶剤、有利にアルコール中に溶解されて存在しており、かつ0.1〜100倍、有利に1〜5倍のモル比の水を用いて加水分解される。
【0052】
加水分解すべき化合物として、有利に元素Zr、Al及び/又はSi、有利にSiの少なくとも1種の硝酸塩、ハロゲン化物(塩化物)、炭酸塩又はアルコラート化合物が加水分解される。加水分解すべき化合物として、アルコキシシラン、特にテトラエトキシシラン(TEOS)は特に有利である。この加水分解は、有利に水、水蒸気、氷又は酸又はこれらの化合物の組み合わせの存在下に行われる。
【0053】
本発明による方法の実施変法において、加水分解すべき化合物の加水分解により粒状のゾルが製造される。この粒状のゾルは、ゾルの中に、加水分解により生じた化合物が粒状で存在することを特徴とする。この粒状のゾルは、上記のように、又はWO99/15262に記載されているように製造することができる。このゾルは、通常では極めて高い含水量を有し、この含水量は有利に50質量%より多い。加水分解すべき化合物を加水分解の前にアルコール又は酸又はこれらの液体の組み合わせに添加することが有利である。この加水分解された化合物は、解膠のために、少なくとも1種の有機又は無機酸を用いて、有利に10〜60%の有機酸又は無機酸を用いて、特に有利に、硫酸、塩酸、過塩素酸、リン酸及び硝酸又はこれらの酸の混合物から選択される鉱酸を用いて処理することができる。
【0054】
本発明による方法の他の実施変法において、加水分解すべき化合物の加水分解によりポリマーのゾルが製造される。このポリマーのゾルは、ゾルの中に、加水分解により生じた化合物がポリマーで(つまり、大きな空間にわたって鎖状に架橋して)存在することを特徴とする。このポリマーのゾルは、通常では水及び/又は水性の酸を50質量%より少なく、有利に20質量%よりはるかに少なく有する。有利な割合の水及び/又は水性の酸にするために、加水分解すべき化合物を、加水分解可能な化合物の加水分解可能な基に対して0.5〜10倍のモル比、有利に半分のモル比の水、水蒸気又は氷で加水分解するというように加水分解を実施するのが有利である。10倍までの量の水は、極めて緩慢に加水分解する化合物の場合に、例えばテトラエトキシシランの場合に使用することができる。有利な量よりも少ない量の水、水蒸気又は氷を用いた加水分解も、同様に良好な結果をもたらす。その際に、半分のモル比の有利な量を、50%よりも多く下回ることも可能であるが、極めて有利であるとは言えず、それというのもこの値を下回る場合には加水分解はもはや完全ではなく、このようなゾルをベースとする被覆は極めて安定とは言えないためである。
【0055】
ゾル中に所望の極めて僅かな割合の水及び/又は酸を有するこのゾルの製造のために、本来の加水分解が行われる前に、加水分解すべき化合物を、有機溶剤、特にエタノール、イソプロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル及びこれらの化合物の混合物中に溶解させる場合が有利である。こうして製造されたゾルは、本発明による懸濁液の製造のために、又は前処理工程での定着剤としても使用することができる。
【0056】
粒状のゾルも、ポリマーのゾルも、懸濁液の製造方法においてゾルとして使用することができる。前記のように得ることができるゾルの他に、原則として市販のゾル、例えばシリカゾル(例えばLevasil, Bayer AG)を使用することもできる。有利に本発明による方法で使用可能な膜を支持体への懸濁液の施与及び硬化により製造する方法自体は、DE10142622及び類似した形でWO99/15262から公知であるが、全てのパラメータもしくは使用物質を、本発明による方法で製造される膜の製造に転用できるわけではない。WO99/15262に記載されたプロセスは、この形で、特に擦り付けることなしにポリマーの不織布材料に転用することはできず、それというのも、該刊行物に記載された著しい水含有量のゾル系は、しばしば通常の疎水性のポリマー不織布を深部において一貫して湿潤させることができないためであり、それというのもこの著しい水含有量のゾル系は、大抵のポリマー不織布を湿潤させないか又は湿潤させるのが困難であるためである。不織布材料中で湿潤されていない箇所が極めて小さくとも、欠陥(例えば孔又は亀裂)を有するために使用不可能である膜もしくはセパレータが得られてしまいかねないことが確認された。
【0057】
湿潤特性がポリマーに適合されたゾル系もしくは懸濁液は、支持体材料、特に不織布材料を完全に含浸し、ひいては欠陥のない被覆が得られることが見出された。従って、この方法の場合に、ゾルもしくは懸濁液の湿潤特性の適合を行うのが有利である。この適合は、有利にポリマーのゾルもしくはポリマーのゾルからの懸濁液の製造により行われ、その際、このゾルは1種又は数種のアルコール、例えばメタノール、エタノール又はプロパノール、又は1種又は数種のアルコール並びに有利に脂肪族炭化水素を有する混合物を含む。しかしながら、湿潤特性を使用された不織布に適合させるために、ゾルもしくは懸濁液に添加することができる他の溶剤混合物も考慮できる。
【0058】
ゾル系及びそれにより生じた懸濁液の根本的な変更が、ポリマーの不織布材料の上及び中でのセラミック成分の付着特性の明らかな改善をもたらすことが確認された。このような良好な付着強度は、粒状のゾル系を用いた場合には通常では得られない。従って有利に、ポリマー繊維を有する本発明により使用される不織布は、ポリマーのゾルをベースとする懸濁液を用いて被覆される。
【0059】
特に有利に、懸濁された成分の質量割合が、ゾルから成る使用されたフラクションの1.5〜150倍、特に有利に5〜20倍である懸濁液が使用される。懸濁された成分として、特に、例えばMartinswerke社からMZS 3及びMZS 1の商品名で、及びAlCoA社からCT3000 SG、CL3000 SG、CT1200 SG、CT800 SG及びHVA SGの商品名で販売されている酸化アルミニウム粒子を使用することができる。
【0060】
本発明による方法の有利な実施変法において、ゾル及び元素Al、Zr、Ti及び/又はSiの酸化物から選択された酸化物粒子の少なくとも2つのフラクションを有する懸濁液が使用され、かつ少なくとも1つの第一のフラクションは200nm〜5μmの平均粒径及び懸濁液に対して30〜94質量部の割合を有する一次粒子を有し、かつ少なくとも1つの第二のフラクションは、10nm〜199nmの平均一次粒径及び懸濁液に対して5〜50質量部の割合を有する。第一のフラクションの粒子は有利に酸化アルミニウム粒子であり、例えばMartinswerke社からMZS 3及びMZS 1の商品名で、及びAlCoA社からCT3000 SG、CL3000 SG、CT1200 SG、CT800 SG及びHVA SGの商品名で販売されている。第二のフラクションの酸化アルミニウム粒子、酸化ケイ素粒子又は酸化ジルコニウム粒子は例えばDegussa AG社からSipernat、Aerosil、Aerosil P25又は酸化ジルコニウムVPの商品名で市販されている。
【0061】
市販の酸化物粒子の使用は、場合により不十分な結果をもたらすことが判明し、それというのも、頻繁に極めて広い粒径分布が存在するためである。従って、有利に、慣用の方法、例えば空気分級及び湿式分級により分級された金属酸化物粒子が使用される。
【0062】
ポリマー繊維もしくはポリマー不織布への無機成分の付着性の改善のため、また、後で施与すべき遮断粒子の付着性の改善のためにも、使用された懸濁液に、他の定着剤、例えば有機官能性シラン、例えばDegussa−シランAMEO(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、GLYMO(3−グリシジルオキシトリメトキシシラン)、MEMO(3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン)、Silfin(ビニルシラン+開始剤+触媒)、VTEO(ビニルトリエトキシシラン)を添加することが有利である。この場合、定着剤の添加は、ポリマーのゾルをベースとする懸濁液の場合に有利である。定着剤として、一般に言えば特にオクチルシラン、ビニルシラン、アミン官能化シラン及び/又はグリシジル官能化シランから選択される化合物が使用可能である。ポリアミドのための特に有利な定着剤はアミン官能性シランであり、ポリエステルのための特に有利な定着剤はグリシジル官能化シランである。他の定着剤も使用可能であるが、それぞれのポリマーに適合させなければならない。この定着剤は、この場合に、この硬化温度が基材として使用されたポリマーの融点又は軟化点を下回りかつその分解温度を下回るように選択されねばならない。有利に、本発明による懸濁液は、定着剤として機能することができる化合物を25質量%よりはるかに少なく、有利に10質量%よりも少なく有する。定着剤の最適な割合は、定着剤の単分子層で繊維及び/又は粒子が被覆されることから得られる。このために必要な定着剤のグラムで示す量は、使用した酸化物、もしくは繊維の量(g)に材料の比表面積(m−1)を乗じて、引き続き定着剤の比所要量(m−1)で除すことにより得ることができ、その際、この比所要量はしばしば300〜400m−1のオーダーである。
【0063】
施与によってポリマー不織布の上及び中に存在する懸濁液は、例えば50〜350℃に加熱することにより硬化されることができる。ポリマーの材料を使用する場合にこの最大許容温度はこの材料の軟化温度/溶融温度により設定されるため、この温度を相応して適合させねばならない。この方法の実施変法に応じて、不織布の上及び中に存在する懸濁液は、100〜350℃に加熱することにより、極めて特に有利に200〜280℃に加熱することにより硬化される。加熱を150〜350℃の温度で1秒〜60分間行う場合が有利である。特に有利に、硬化のための懸濁液の加熱は110〜300℃の温度で、極めて特に有利に170〜220℃の温度で、有利に0.5〜10分間行われる。硬化は、懸濁液をポリエステル、特にPETから成る繊維を有するポリマー不織布上で有利に200〜220℃の温度で0.5〜10分間加熱することにより行われ、懸濁液をポリアミド、特にポリアミド12から成る繊維を有するポリマー不織布上で130〜180℃の温度で0.5〜10分間加熱することにより行われ、懸濁液をポリエチレンから成る繊維を有するポリマー不織布上で100〜140℃の温度で0.5〜10分間加熱することにより行われる。複合材料の加熱は、加熱された空気、熱風、赤外線照射又は先行技術による他の加熱方法により行うことができる。
【0064】
本発明による膜の製造方法は、例えば、不織布を、1m/h〜2m/sの速度で、有利に0.5m/min〜20m/minの速度で、極めて特に有利に1m/min〜5m/minの速度でロールから巻き出し、懸濁液を不織布の上及び中に施与する少なくとも1つの装置、例えばローラ、噴霧器又はブレード、及び前記の懸濁液を不織布の上及び中で加熱により硬化させることができる少なくとも1つの他の装置、例えば電気加熱炉を通過させて、こうして製造された膜を第二のロールに巻き取ることにより実施することができる。この方法で、膜を連続法で製造することができる。
【0065】
本発明による膜をセパレータとして使用し、かつ本発明による膜が遮断機能を有する場合、多孔質セラミック層上に、所定の所望の溶融温度を有する粒子を遮断粒子として施与し、固定させることができる。
【0066】
本発明による方法の実施変法において、多孔質無機層を遮断粒子の施与の前に疎水化することが有利であることが判明した。本発明によるセパレータの製造のための出発材料として利用可能な疎水性膜の製造は、例えばWO99/62624に記載されている。有利に、多孔質無機層は、例えばDegussa社からDynasilanの商標名で市販されているようなアルキル−、アリール−又はフルオロアルキルシランを用いた処理により疎水化される。この場合に、例えば、特にテキスタイルに対して適用される公知の疎水化方法(D. Knittel ; E. Schollmeyer ; Melliand Textilber. (1998) 79(5), 362-363)を、配合をわずかに変更させて、例えばPCT/EP98/05939に記載された方法により製造された多孔質の物質透過性の複合材料のために適用することもできる。この目的で、物質透過性の複合材料(膜又はセパレータ)は、少なくとも1つの疎水性物質を有する溶液で処理される。溶液は、溶剤として、有利に酸、有利に酢酸又は塩酸でpH値1〜3に調節された水、及び/又はアルコール、有利にエタノールを有するのが有利である。溶剤に対する、酸で処理された水もしくはアルコールの割合は、それぞれ0〜100体積%であることができる。有利に、溶剤中の水の割合は0〜60体積%であり、アルコールの割合は40〜100体積%である。溶液の製造のために、溶剤中に疎水性物質0.1〜30質量%、有利に1〜10質量%が添加される。疎水性物質として、例えば上記のシランを使用することができる。意外にも、著しく疎水性である化合物、例えばトリエトキシ(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−トリデカフルオロオクチル)シランを用いた場合にのみ良好な疎水化が生じるわけでなく、所望の効果を達成するためには、メチルトリエトキシシラン又はi−ブチルトリエトキシシランを用いた処理で完全に十分である。この溶液は、溶液中での疎水性物質の均質な分布のために、室温で撹拌され、引き続き多孔質無機層上に施与され、乾燥される。乾燥を25〜100℃の温度での処理により促進させることができる。
【0067】
本発明による方法のもう1つの実施変法において、遮断粒子の施与の前に、多孔質無機層を他の定着剤で処理することもできる。上記の定着剤を用いた処理は前記の方法と同様に行うことができ、つまり多孔質無機層を、定着剤としてシランを有するポリマーのゾルで処理することにより行うことができる。特に、この処理は、セパレータの製造の際に上記したような定着剤を使用して行うことができる。
【0068】
遮断粒子から成る層は、有利に、ゾル、水又は溶剤、例えばアルコール、炭化水素、エーテル又はケトン又は溶剤混合物から選択された懸濁剤中の遮断粒子の懸濁液の施与により製造される。懸濁液中に存在する遮断粒子の粒径は、原則的に任意である。しかしながら、懸濁液中に、多孔質無機層の細孔の平均孔径(d)より大きい平均粒径(D)を有する遮断粒子が存在する場合が有利であり、それというのも、無機層の細孔が本発明によるセパレータの製造の際に遮断粒子により閉塞されないことが保証されるためである。有利に、使用される遮断粒子は平均孔径(d)より大きくかつ5dより小さい、特に有利に2dより小さい平均粒径(D)を有する。
【0069】
有利に、分散液のための溶剤として水が使用される。この水性分散液はポリマー含分ないしロウ含分が1〜60質量%、有利に5〜50質量%、極めて特に有利に20〜40質量%となるように調節される。溶剤として水を使用する場合、本発明によるセパレータのために極めて好適であるように、分散液中に1〜10μmの有利な平均粒径を極めて容易に得ることができる。
【0070】
非水性溶剤をロウ分散液又はポリマー分散液の製造のために使用する場合、有利に分散液中で1μm未満の平均粒径を得ることができる。非水性溶剤と水との混合物を使用することもできる。
【0071】
多孔質無機層の細孔の孔径よりも小さな粒径を有する遮断粒子を使用することが望ましい場合には、多孔質無機層の細孔中に粒子が侵入するのを回避しなければならない。このような粒子の使用の理由は、例えば大きな価格差並びにこのような粒子の入手性にあることがある。多孔質無機層の細孔中に遮断粒子が侵入するのを防ぐための方法は、外部剪断力の不在で、無機層の細孔中への懸濁液の侵入が行われないように懸濁液の粘度を調節することである。懸濁液のこのように高い粘度は、例えば懸濁液に、流動性に影響を及ぼす助剤、例えばケイ酸(Aerosil, Degussa)を添加することにより達成することができる。助剤、例えばAerosil 200を使用した場合、懸濁液の十分に高い粘度を達成するためには、しばしば、懸濁液に対して、ケイ酸0.1〜10質量%、有利に0.5〜50質量%の割合で既に十分である。助剤の割合は、それぞれ簡単な予備試験により決定することができる。
【0072】
使用された遮断粒子を有する懸濁液が定着剤を有する場合が有利である。このような定着剤を有する懸濁液は、膜/セパレータが施与の前に疎水化されていない場合でも、これらの膜/セパレータに直接施与することができる。もちろん、定着剤を有する懸濁液は、疎水化された膜に、又は製造時に定着剤が使用された膜にも施与することができる。遮断粒子を有する懸濁液中の定着剤として、有利に、アミノ−、ビニル−又はメタクリル側鎖基を有するシランが使用される。このようなシランは例えばDegussa社から純粋な生成物として又は加水分解されたシランの水溶液として例えばDynasilan 2926、2907又は2781の商品名で入手可能である。懸濁液中での最大10質量%の定着剤の割合は、多孔質無機被覆への遮断粒子の十分に大きな付着性を保証するために十分であることが判明した。有利に、遮断粒子の定着剤含有懸濁液は、懸濁液に対して、0.1〜10質量%、有利に1〜7.5質量%、極めて特に有利に2.5〜5質量%の定着剤を有する。
【0073】
遮断粒子として、定義された融点を有する全ての粒子を使用することができる。この粒子の材料は、この場合所望の遮断温度に応じて選択される。大抵のバッテリーの場合には比較的低い遮断温度が望ましいため、ポリマー、ポリマー混合物、天然及び/又は人工のロウから成る粒子から選択された遮断粒子を使用するのが有利である。特に有利に、遮断粒子としてポリプロピレンロウ又はポリエチレンロウから成る粒子が使用される。
【0074】
遮断粒子を有する懸濁液の施与は、多孔質無機層への、印刷、圧縮、圧入、ローラ塗布、ブレード塗布、刷毛塗り、浸漬塗布、吹き付け塗布又は流延塗布により行うことができる。遮断層は有利に、施与した懸濁液を室温から100℃、有利に40〜60℃の温度で乾燥させることにより得られる。この乾燥は、遮断粒子が溶融しないように実施しなければならない。
【0075】
粒子を多孔質セラミック被覆上への施与の後にガラス転移温度を上回る温度に少なくとも1回加熱することにより、本来の形状を変化させることなく粒子の溶融を達成し、固定させる場合が有利である。この方法で、遮断粒子を特に良好に多孔質無機層に付着させることを達成できる。
【0076】
懸濁液の施与及び引き続く乾燥並びに場合によるガラス転移温度を上回る加熱は、連続的又はほぼ連続的に、セパレータ自体の製造と同様に行われ、その際、セパレータは再度ロールから巻き出され、被覆装置、乾燥装置及び場合により加熱装置に導通され、引き続き再度巻き取られる。
【0077】
本発明による膜ないし本発明により製造された膜は、特に液体濾過適用における濾過膜として、又は電気セパレータとして使用することができ、その際、セパレータとして使用される膜は、導電性化合物、特にチタン化合物を有してはならない。本発明による膜は、特に、バッテリー中のセパレータとして、特にリチウムバッテリー、有利にリチウム高出力バッテリー及び高エネルギーバッテリー中のセパレータとして使用することができる。このようなリチウムバッテリーは、電解質として大きなアニオンを有するリチウム塩を、溶剤としてのカーボナート中に有することができる。適当なリチウム塩は、例えばLiClO、LiBF、LiAsF又はLiPFであり、その際、LiPFが特に有利である。溶剤として適した有機カーボナートは、例えばエチレンカーボナート、プロピレンカーボナート、ジメチルカーボナート、エチルメチルカーボナート又はジエチルカーボナート又はこれらの混合物である。
【0078】
本発明の対象は、更に、本発明による、又は本発明により製造された膜を有するバッテリー、特にリチウムバッテリー又はこれと類似の非水性バッテリー系である。本発明による膜の良好な屈曲性により、このようなバッテリーは、特にリチウムバッテリー、また、0.5mm未満の最小巻回の巻回半径を有する巻回型セルであることができる。本発明による膜により、極めて密に巻回された巻回型セル、例えばクラッシュバッテリーにおいても、セラミックないし半セラミック膜をセパレータとして使用することができ、かつこのセパレータと結びついた利点を利用することができる。クラッシュバッテリーとは、通常、完成の後に大きな外部応力の作用によって所定の、大抵は楕円形か又は少なくとも円形でない形状にされる巻回型バッテリー(巻回型セル)であると解釈される。
【0079】
同様に、本発明の対象は、本発明による膜を有する濾過装置である。このような装置は、例えばクロスフロー濾過装置であってよい。
【0080】
本発明は以下の実施例により説明されるが、請求項及び発明の詳細な記載から明らかである特許保護範囲は実施例により限定されない。
【0081】
実施例
参照例:先行技術によるセラミック膜の製造
水130g及びエタノール15gにまず5質量%のHNO水溶液30g、テトラエトキシシラン10g、メチルトリエトキシシラン2.5g及びDynasilan GLYMO7.5gを添加した。まず初めに数時間撹拌したこのゾルの中に、酸化アルミニウムMartoxid MZS-1及びMartoxid MZS-3それぞれ125gを懸濁させた。このスラリーを少なくとも更に24時間に亘ってマグネットスターラーで均質化し、その際、溶剤損失を生じさせないために撹拌容器を密閉しなければならなかった。
【0082】
厚さ約100μm、面積重量30g/m、幅56cmのポリアミド不織布(PA不織布、Freudenberg)を、連続的巻き取り法で、ベルト速度約30m/hで移動する不織布にブレードを用いてスラリーを施与し、長さ1m、温度150℃の炉に導通させることによって、このスラリーで被覆した。最後に平均孔径450nmの膜が得られたが、この膜は不織布に対するセラミックの極めて劣悪な付着性を有していた。(室温で)水中で24時間貯蔵した後、実質的にセラミック全体が剥離した。
【0083】
実施例1:本発明によるセラミック膜の製造
水130g及びエタノール15gにまず5質量%のHNO水溶液30g、テトラエトキシシラン10g、Dynasilan AMEO10g及びDynasilan GLYMO10g(全てのシラン:Degussa AG)を添加した。まず初めに数時間撹拌したこのゾルの中に、酸化アルミニウムMartoxid MZS-1及びMartoxid MZS-3 (双方の酸化物ともMartinswerke)それぞれ125gを懸濁させた。このスラリーを少なくとも更に24時間に亘ってマグネットスターラーで均質化し、その際、溶剤損失を生じさせないために撹拌容器を密閉しなければならなかった。
【0084】
厚さ約100μm、面積重量約30g/m、幅56cmのPA不織布(Freudenberg)を連続的巻き取り法(ベルト速度約30m/h、T=150℃)で、比較実験に記載したように、このスラリーで被覆した。最後に平均孔径450nmの膜が得られ、この膜は不織布に対するセラミックの抜群に良好な付着性を有していた。(室温で)水中で24時間貯蔵した後、セラミックの剥離は認められなかった。このセラミックは耐圧反応器中での120℃での水での処理にも耐えるため、蒸気滅菌が可能である。バブルポイントは120℃での蒸気滅菌の後に変わらずに約1.7バールであり、水流は変わらずに5800 l/mhバールである。
【0085】
バブルポイント(BP)は、気泡が、完全に湿潤された膜(セパレータ)を通過する際の圧力(バール)である。これは膜内の最大の細孔ないし欠陥箇所のサイズに関する1つの尺度である。BPが小さいほど最大の細孔ないし最大の欠陥(孔)は大きい。
【0086】
バブルポイントの測定のために、膜を直径30mmのサイズにカットした。カットした膜を湿潤液体(脱塩水)中で少なくとも1日放置した。このように準備した膜を、装置内で、支持材料として役立つ約0バールのBP(膜なしでの測定)を有する円形の焼結金属板とシリコーンゴムパッキングとの間に組み込み、その際、装置は膜の上方で上方に向かって開放された容器を有し、この容器は膜と同一の横断面を有しかつ脱塩水で2cm充填されており、かつ、膜の下方には第二の容器を有し、この第二の容器は同様に膜と同一の横断面を有しかつ空気吸込口を備えており、この吸込口を介して圧力空気を減圧バルブを介して容器中に導入することができた。膜はこの場合焼結金属板の下方に組み込まれていたため、焼結金属板は上方の容器の底部を形成し、かつ膜は下方の容器を密閉していた。引き続き、0.1バールずつ圧力を下方の容器内で高め、その際、各圧力上昇の間は30秒間である。各圧力上昇の後に、上方の容器内の水の表面を約30秒間観察した。水表面上に最初の小さな気泡が発生した際に、BPの圧力が達成され、測定を中断した。
【0087】
実施例2:
本発明によるセラミック膜の製造
水130g及びエタノール15gにまず5質量%のHNO水溶液30g、テトラエトキシシラン10g、Dynasilan MEMO 50g(全てのシラン:Degussa AG)を添加した。まず初めに数時間撹拌したこのゾルの中に、その都度酸化アルミニウムCT1200SG(AlCoA)280gを懸濁させた。このスラリーを少なくとも更に24時間に亘ってマグネットスターラーで均質化し、その際、溶剤損失を生じさせないために撹拌容器を密閉しなければならなかった。
【0088】
厚さ約100μm、面積重量30g/m、幅56cmのPA不織布(Freudenberg)を、ブレード塗布装置を用いてスラリーで被覆した。その後、なお湿潤している膜を80℃で熱風を用いて5分間前乾燥させ、その後、まだわずかに湿潤している膜を1時間に亘って水銀灯を用いて254nmの波長で処理した。引き続き、膜を再度210℃で30分間に亘って後硬化させた。最後に平均孔径240nmの膜が得られ、この膜は不織布に対するセラミックの抜群に良好な付着性を有していた。(室温で)水中で24時間貯蔵した後、セラミックの剥離は認められなかった。このセラミックは耐圧反応器中での120℃での水での処理にも耐えたため、蒸気滅菌が可能である。バブルポイントは120℃での蒸気滅菌の後に変わらずに約3.5バールであり、水流は変わらずに2100 l/mhバールであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー不織布をベースとする膜であって、不織布が不織布の上及び中にセラミック被覆を有し、前記のセラミック被覆が、Al、TiO、ZrO又はSiOから選択された少なくとも1種の酸化物を有する、ポリマー不織布をベースとする膜において、前記被覆の中に、Al、ZrO、TiO及び/又はSiOから選択された酸化物の少なくとも2つのフラクションが存在しており、その際、第一のセラミックフラクションはゾルから得られ、第二のフラクションは200nm〜5μmの平均粒径を有する粒子を有し、第一のフラクションは層として第二のフラクションの粒子の上に存在しており、第一のフラクションは被覆に対して1〜30質量部の割合でセラミック被覆中に存在しており、第二のフラクションは被覆に対して5〜94質量部の割合でセラミック被覆中に存在しており、更に、ケイ素を有するネットワークが存在しており、その際、ネットワークのケイ素は酸素原子を介してセラミック被覆の酸化物に結合しており、有機基を介してポリマー不織布に結合しており、炭素原子を有する少なくとも1つの鎖を介してもう1つのケイ素に結合していることを特徴とする、ポリマー不織布をベースとする膜。
【請求項2】
請求項14から26までのいずれか1項記載の方法により得られる、請求項1記載の膜。
【請求項3】
第一のセラミックフラクションが20nm未満の平均粒径を有する粒子を有し、かつ粒状のゾルを介して製造されたものである、請求項1又は2記載の膜。
【請求項4】
第一のセラミックフラクションが、粒子か、又は、ポリマーのゾルを介して製造されたセラミック材料の無機ネットワークを含む、請求項1又は2記載の膜。
【請求項5】
第一のセラミックフラクションが第二のフラクションの粒子上で100nm未満の層厚を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の膜。
【請求項6】
第二の粒子フラクションが5m/g未満のBET表面積を有する粒子を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の膜。
【請求項7】
ポリマー不織布が、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリアミド及び/又はポリエステルの繊維から選択されたポリマー繊維を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の膜。
【請求項8】
被覆中に、Al、ZrO、TiO及び/又はSiOから選択された酸化物の少なくとも3つのフラクションが存在しており、その際、第三のフラクションは、10nm〜199nmの平均一次粒径を有する粒子を有し、第一のフラクションは層として第二及び第三のフラクションの粒子上に存在し、第一のフラクションは被覆に対して1〜30質量部の割合でセラミック被覆中に存在しており、第二のフラクションは被覆に対して30〜94質量部の割合でセラミック被覆中に存在しており、第三のフラクションは被覆に対して5〜50質量部の割合でセラミック被覆中に存在している、請求項1から7までのいずれか1項記載の膜。
【請求項9】
第三の粒子フラクションが10〜1000m/gのBET表面積を有する粒子を含む、請求項8記載の膜。
【請求項10】
第三の粒子フラクションが、1〜25μmの平均凝集体サイズ又は平均凝結体サイズを有する粒子を含む、請求項8又は9記載の膜。
【請求項11】
第二のフラクションが30nm〜60nmの平均一次粒径を有する粒子を有し、第三のフラクションが1〜4μmの平均粒径を有する粒子を有し、第一のフラクションが被覆に対して10〜20質量部の割合でセラミック被覆中に存在しており、第二のフラクションが被覆に対して10〜30質量部の割合でセラミック被覆中に存在しており、第三のフラクションが被覆に対して40〜70質量部の割合でセラミック被覆中に存在している、請求項8から10までのいずれか1項記載の膜。
【請求項12】
第三のフラクションの粒子が酸化ジルコニウム粒子又は有利に酸化ケイ素粒子であり、第二のフラクションの粒子が酸化アルミニウム粒子であり、第一のセラミックフラクションが酸化ケイ素から形成されている、請求項8から11までのいずれか1項記載の膜。
【請求項13】
5mmまでの半径まで、それにより欠陥が生じることなく曲げられる、請求項1から12までのいずれか1項記載の膜。
【請求項14】
膜の製造法であって、ポリマー不織布に不織布の中及び上にセラミック被覆を備え、そのために、ポリマー不織布の上及び中に懸濁液を施与し、前記懸濁液を少なくとも1回の加熱により不織布の上及び中で硬化させ、その際、懸濁液がゾル、及び元素Al、Zr、Ti及び/又はSiの酸化物から選択された酸化物粒子の少なくとも1つのフラクションを有する膜の製造法において、懸濁液が、施与の前に、それぞれ一般式I
−Si(OR)4−x (I)
[式中、
x=1又は2であり、
R=有機基であり、その際、基Rは同じか又は異なっていてよい]
のアルキルアルコキシシランをベースとする少なくとも2種の異なる定着剤から成る混合物を有し、その際、定着剤は、双方の定着剤が、少なくともそれぞれ1つの反応性基を置換基として有するアルキル基を有するように選択され、その際、一方の定着剤のアルキル基上の反応性基と、他方の定着剤の反応性基とが、少なくとも1回の加熱の間に反応して共有結合を形成するか、又は、UV線の作用下に反応して共有結合を形成する反応性基を有する式Iによる1種以上の定着剤を添加し、その際、定着剤を添加した際にUV線の作用下に反応し、懸濁液をポリマー不織布の上に施与した後に、少なくとも1つのUV線での処理を行うことを特徴とする膜の製造法。
【請求項15】
ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン及び/又はポリアミドから選択された繊維を有するポリマー不織布を使用する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
懸濁液が元素Al、Si、Ti又はZrの化合物の少なくとも1種のゾルを有し、酸化物粒子のフラクションを少なくとも1種の前記ゾル中に懸濁させることにより製造する、請求項14又は15記載の方法。
【請求項17】
懸濁液がケイ素の化合物のポリマーのゾルを有する、請求項14から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
元素Al、Zr、Ti又はSiの前駆体化合物を、水又は酸又は前記化合物の組合せを用いて加水分解することによりゾルを得る、請求項14から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
懸濁された粒子フラクションの質量割合が、ゾルから成る使用される第一のフラクションの1.5〜150倍に相当する、請求項14から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
加熱の際に共有結合を形成する定着剤として、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(AMEO)及び3−グリシジルオキシトリメトキシシラン(GLYMO)を使用する、請求項14から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
UV線の作用下に共有結合を形成する定着剤としてメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)を使用する、請求項14から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
UV線での処理を、少なくとも1回の加熱の前又は後に行う、請求項21記載の方法。
【請求項23】
ポリマー不織布の上及び中に存在する懸濁液を50〜350℃に加熱することにより硬化させる、請求項14から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
ポリエステルから成る繊維を有するポリマー不織布上での懸濁液の加熱を、200〜220℃の温度で0.5〜10分間行う、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ポリアミドから成る繊維を有するポリマー不織布上での懸濁液の加熱を、130〜180℃の温度で0.5〜10分間行う、請求項23記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1種のゾル、及び元素Al、Zr、Ti及び/又はSiの酸化物から選択された酸化物粒子の少なくとも2つのフラクションを有する懸濁液を使用し、少なくとも1つのフラクションが10nm〜199nmの平均一次粒径及び懸濁液に対する5〜50質量部の割合を有し、少なくとも1つのフラクションが200nm〜5μmの平均粒径を有する一次粒子及び懸濁液に対する30〜94質量部の割合を有する、請求項14から25までのいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
セパレータとして使用される膜がチタン化合物を有しない、濾過膜としての、又は電気セパレータとしての、請求項1から13までのいずれか1項記載の膜の使用。
【請求項28】
請求項1から13までのいずれか1項記載の膜をセパレータとして有するリチウムバッテリー。
【請求項29】
請求項1から13までのいずれか1項記載の膜を有する濾過装置。

【公表番号】特表2007−508669(P2007−508669A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534731(P2006−534731)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051842
【国際公開番号】WO2005/038959
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa AG
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】