説明

支持碍子

【課題】樹脂ボルトの締め付け手段を容易にして作業性を改善する。
【解決手段】上部碍子12bと取り付け部13の下部にボルト孔15と連通する樹脂ナット17が差し込めるナットと同形状の座グリ穴部21を穿設する。次に、主回路導体を上部碍子12a,12bの凹部14a,14bに挿通した後、座グリ穴部21に樹脂ナット17を嵌め込み、上部碍子12a,12bのボルト孔15に樹脂ボルト16を挿入し、樹脂ボルト16を締め付けると、樹脂ボルト16は樹脂ナット17に自動的に螺合されて、主回路導体の締め付けが、樹脂ボルト16のみの作業で行うことができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中低容量の気中絶縁型スイッチギアの絶縁支持碍子に係わり、特にスイッチギアの縮小化を図る目的として主回路導体を絶縁電線(絶縁導体)としたときの支持碍子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、中低容量の気中絶縁型スイッチギアは、小型化が進められ、機器内部の絶縁補強方法に関する技術が極めて重要となっている。機器内部における耐電圧は、絶縁距離と比例関係にあるため、耐電圧の上昇は、絶縁距離の増加、すなわち機器全体の大型化につながる。小型化に最も大きく影響する部位としては、主回路導体の絶縁補強が挙げられ、導体を高分子絶縁材料で被覆することで絶縁距離を大幅に縮小することが可能である。
【0003】
また、この主回路導体は、機器内部において、支持碍子により固定されており、その固定手段は、金属製ボルトによる締め付け固定が一般的である。このため、絶縁電線を支持碍子で固定する場合は、支持碍子で固定する箇所の導体には絶縁被覆を施さず、上述のボルト締め付けにより導体の金属部を固定する手段が採られている。最近では、ボルト締め付け機構を持たず、絶縁電線の被覆を施した状態のままで固定可能とする支持碍子が開発されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−322961号公報。
【0004】
また、スイッチギアの小型化を図る目的から上記支持碍子とは異なる支持碍子も開発されている。この支持碍子は、図3に示すように下部碍子11と2分割された上部碍子12a,12bから構成され、下部碍子11は複数の鍔部11aを有し、かつ下部碍子11の頂部には、2分割された上部碍子12a,12bが嵌め込まれるU字形状の取り付け部13が設けられている。
【0005】
2分割された上部碍子12a,12bは、中央部に絶縁電線などからなる主回路導体を通す凹部14a,14bが形成されていて、主回路導体(図示省略)が、その凹部14a,14bに通された後、上部碍子12a,12bにより挟持し、上部碍子12a,12bに穿設されたボルト孔15に樹脂ボルト16を挿入し、取り付け部13の下面から突出したボルト16の先端に樹脂ナット17をねじ込んで、主回路導体を挟持固定する手段が採られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3に示した主回路導体の挟持固定手段は、樹脂ボルト16と樹脂ナット17による締め付けにより行われる。このような作業を行うに当たっては、上述したように上部碍子12a,12bのボルト孔15に樹脂ボルト14を挿入し、取り付け部13の下面から突出したボルト15の先端にナット17をねじ込んだ後、樹脂ボルト16と樹脂ナット17の両方を、スパナなどの工具を使用して、締め付け固定する手段を採用している。
【0007】
しかし、下部碍子11の鍔部11aとの狭い間隙にナット17を配置したり、また、スイッチギア内部も狭い空間であるために、上記のような工具を使用してボルト、ナットを締め付ける手段は、作業が困難で、締め付け手段に多大な時間と手間がかかる問題があった。
【0008】
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、ボルトの締め付け手段を容易にして作業性を改善した支持碍子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の課題を達成するために、第1発明は、下部碍子と、主回路導体を挟持固定する2分割された上部碍子とからなり、前記下部碍子の頂部に上部碍子取り付け部を設け、前記2分割された上部碍子と前記上部碍子取り付け部にボルト孔を穿設し、そのボルト孔にボルトを挿入してボルトを前記取り付け部の下面にてナットと螺合させて、前記上部碍子をボルトとナットにて締め付けて主回路導体を固定した支持碍子において、
前記2分割された上部碍子の一方と取り付け部とにナット形状に合わせた座グリ穴部を形成し、その座グリ穴部にナットを嵌め込んだことを特徴とするものである。
【0010】
第2発明は、前記座グリ穴部の位置に、予めナットを埋め込んだことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、この発明によれば、ナット(樹脂ナット)が座グリ穴形状により固定されるので、樹脂ボルトと樹脂ナットの両方を工具により上部碍子を締め付ける作業が必要なく、樹脂ボルトのみの締め付け作業のみであるから、狭い空間内でも容易に作業ができる。
【0012】
また、上部碍子の下部と取り付け部に樹脂ナットを一体成型したので、樹脂ボルトのみの締め付け作業のみであるから、部品点数を減らすとともに作業が容易になり、狭い空間内でも容易に作業が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下この発明の実施の形態を図面に基づいて説明するに、図3と同一部分には同一符号を付して述べる。
[実施の第1形態]
図1において、上部碍子12bと取り付け部13の下部にボルト孔15と連通する樹脂ナット17が差し込めるナットと同形状の座グリ穴部21を穿設する。
【0014】
次に、主回路導体を上部碍子12a,12bで挟持した後、上記のように形成された座グリ穴部21に樹脂ナット17を嵌め込み、上部碍子12a,12bのボルト孔15に樹脂ボルト16を挿入し、樹脂ボルト16を締め付けると、樹脂ボルト16は樹脂ナット17に自動的に螺合されて、主回路導体の締め付けが、樹脂ボルト16のみの作業で行うことができる。このため、狭い空間であるスイッチギア内部での作業も容易にでき、作業時間の短縮と、作業が容易にできる利点がある。
[実施の第2形態]
図2は、第1形態で示した座グリ穴部の位置に予めナットを埋め込み、埋め込みナット22として上部碍子12bと取り付け部13とともに一体成型したもので、この場合も主回路導体の締め付け固定手段は、ボルト孔15に樹脂ボルト16を挿入して、樹脂ボルト16を埋め込みナット22に螺合するだけの作業ですむので、狭い空間内での作業性が著しく改善できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の第1形態を示す正面図。
【図2】実施の第2形態を示す要部の正面図。
【図3】従来例を示す正面図。
【符号の説明】
【0016】
11…下部碍子
12a,12b…上部碍子
13…上部碍子取り付け部
14a,14b…凹部
15…ボルト孔
16…樹脂ボルト
17…樹脂ナット
21…座グリ穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部碍子と、主回路導体を挟持固定する2分割された上部碍子とからなり、前記下部碍子の頂部に上部碍子取り付け部を設け、前記2分割された上部碍子と前記上部碍子取り付け部にボルト孔を穿設し、そのボルト孔にボルトを挿入してボルトを前記取り付け部の下面にてナットと螺合させて、前記上部碍子をボルトとナットにて締め付けて主回路導体を固定した支持碍子において、
前記2分割された上部碍子の一方と取り付け部とにナット形状に合わせた座グリ穴部を形成し、その座グリ穴部にナットを嵌め込んだことを特徴とする支持碍子。
【請求項2】
前記座グリ穴部の位置に、予めナットを埋め込んだことを特徴とする請求項1記載の支持碍子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−71674(P2008−71674A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250573(P2006−250573)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】