説明

支持細胞を用いない赤血球の生産方法

本明細書では、特に胎盤灌流液由来の造血細胞と、臍帯血由来の造血細胞とを組み合わせた造血細胞から赤血球を生産する方法を提供し、上記方法によって、造血細胞の増殖および分化を加速させ、投与可能な赤血球をより効率的に生産することができる。さらに、本明細書では、造血細胞の増殖および分化を行うことができるバイオリアクターを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、米国特許仮出願第61/222,930号(出願日2009年7月2日)に基づいて優先権を主張し、該特許仮出願の内容は全て参照によって本明細書中に引用されるものとする。
【0002】
〔1.技術分野〕
本明細書では、全体として、造血細胞集団(例えばCD34細胞集団)を増殖させる方法、および当該細胞集団から投与可能な赤血球のユニット(units)を生産する方法を提供する。また、本明細書では、上記増殖および分化を達成するバイオリアクターを提供する。
【0003】
〔2.背景技術〕
米国では毎年、およそ1300万ユニットの血液が、輸血、または血小板等の救命用血液製剤の生産のために用いられている。赤十字および他の機関によって、約500mL〜約1000mLの全血サンプルを得るために、自発的な献血が利用される。HIVおよび他の外来病原体(adventitious pathogen)の発生率が比較的低い米国および西欧では、自発的な献血のセルフスクリーニングは比較的安全かつ効果的である。しかし、HIVおよび肝炎が蔓延している国では、輸血用の安全な血液の獲得は、大いに問題になり得る。自発的な献血に代わるものとして、多くのグループが、長期の保存に耐えうる安全な人工代用血液を発達させようと試みている。これらの人工代用血液のいくつかは、外傷性失血の応急手当において大いに有望である一方、長期にわたって赤血球の機能の代わりになるようには作られていない。戦場または世界中に設置されている民間の病院の患者に投与可能である、安全かつ豊富な赤血球の供給を発達させる必要性が高まっている。
【0004】
従来の赤血球の生産方法は、非効率であまりに規模が小さいか、または、赤血球の継続的な現地での生産を可能にするにはあまりに面倒であるかのどちらかである。従来のディッシュまたはフラスコをベースとした培養系は、断続的な培地の交換がつきものであり、一般的なディッシュベースの培養系は、10個を超える細胞を1バッチ(single batches)として扱うために用いることはできない。ディッシュからの論理的なさらなる発展は、バッグ技術(例えば、ウェーブバイオリアクター)である。バッグ技術においては、バッグを用いることで培地の体積を大幅に増加させ、浮遊性担体を用いることで細胞の付着面積を増加させることができる。しかし、バッグ型のリアクターは、一般的に2×10〜約6×10細胞/ml培地で運転され、培養中の大幅な培地の希釈および煩雑な10〜100倍のデバルキング(debulking)が必要である。さらに、バッグ技術、および一般的な全ての大型攪拌槽型バイオリアクターは、「通常の」細胞増殖および分化を促す組織のような生理的環境を提供するものではない。
【0005】
〔3.発明の概要〕
本明細書において、増殖した造血細胞を投与可能な赤血球に分化させるため、および赤血球を含む細胞の投与可能なユニットの生産のために、造血細胞(例えば造血幹細胞または造血前駆細胞)を増殖する方法を提供する。
【0006】
一つの側面では、本明細書は、赤血球を生産する方法を提供する。一実施形態では、上記方法は、ヒト胎盤灌流液由来の造血細胞を赤血球に分化させることを含み、上記方法は、支持細胞層の非存在下で造血細胞集団を増殖させること;および造血細胞を赤血球または赤血球前駆体に分化させることを含む。
【0007】
別の側面では、本明細書は、造血細胞の増殖および上記造血細胞の赤血球への分化のためのバイオリアクターを提供する。上記バイオリアクターは、バッチ法に比べて継続的な赤血球の生産を容易にすることで、現在の赤血球生産方法と同等の多数の赤血球を、より小さい体積で生産することができる。特定の実施形態では、上記バイオリアクターは、細胞培養部材、細胞分離部材、ガス供給部材、および/または培地供給部材を備える。上記バイオリアクターの特定の実施形態では、赤血球は、磁気ビーズによる分離によって集められる。上記方法の別の側面では、赤血球は、上記赤血球中のヘモグロビンを部分的または完全に脱酸素化し、磁場を用いて赤血球を表面に引き寄せることで集められる。
【0008】
別の側面では、本明細書に記載されるバイオリアクターを用いて赤血球を生産する方法が、本明細書中で提供される。特定の実施形態では、本明細書に記載される複数のバイオリアクターを用いて赤血球を生産することを含む、赤血球の生産方法が本明細書中で提供される。
【0009】
一つの側面では、本明細書では、支持細胞が存在しない培地中で、造血細胞集団を増殖させる工程であって、当該増殖させる工程の間に、上記造血細胞集団中の複数の造血細胞が赤血球へ分化する工程と、上記培地から上記赤血球を単離する工程と、を含む、赤血球を生産する方法であって、上記培地は、約10〜約10,000ng/mLの濃度であるSCF、約0.01〜約500ng/mLの濃度であるIL−3、および、約0.1〜約10IU/mLの濃度であるEpoを含み、上記SCF、IL−3およびEpoは、上記培地の定義されていない成分(例えば血清)の中には含まれていないことを特徴とする、赤血球を生産する方法を提供する。上記方法の特定の実施形態では、上記培地は、Flt−3L、IL−11、トロンボポエチン(Tpo)、ホメオボックス−B4(HoxB4)またはメチルセルロースのうち、1つ以上、またはいずれも含まない。他の特定の実施形態では、上記培地は、約20〜約2000ng/mL;約50〜約1000ng/mL;または約100ng/mLの濃度でSCFを含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約0.1〜約100ng/mL;約1〜約50ng/mL;または約5ng/mLの濃度でIL−3を含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約1〜約5IU/mL;または約2〜約3IU/mLの濃度でEpoを含む。
【0010】
上記方法の別の特定の実施形態では、上記培地はさらに約1〜約1000ng/mLの濃度であるインスリン様増殖因子1(IGF−1)、および、約1〜約1000μg/mLの濃度である脂質を含み、上記脂質はたんぱく質とコレステロールとの混合物を含み;上記培地は、約0.01〜約100μMの濃度であるヒドロコルチゾン、または、約0.01〜約100μMの濃度であるデキサメタゾンを含む。さらに特定の実施形態では、上記培地は、約10〜約500ng/mL;または約20〜約100ng/mLの濃度でIGF−1を含む。他のさらに特定の実施形態では、上記培地は、約10〜約500ng/mL;または約20〜約100ng/mLの濃度で脂質を含む。他のさらに特定の実施形態では、上記培地は、約0.1〜約50μM;または約0.5〜約10μMの濃度でヒドロコルチゾンを含む。他のさらに特定の実施形態では、上記培地は、約0.05〜約20μM;または約0.1〜約10μMの濃度でデキサメタゾンを含む。
【0011】
さらに特定の実施形態では、上記培地は、約100ng/mLのSCF、約3U/mLのEpo、約40ng/mLのIGF−1、約5ng/mLのIL−3、約1μMのデキサメタゾン、および40μg/mLの脂質を含み、上記脂質は、たんぱく質とコレステロールとの混合物を含む。別のさらに特定の実施形態では、上記培地は、約100ng/mLのSCF、約2U/mLのEpo、約40ng/mLのIGF−1、約5ng/mLのIL−3、約1μMのヒドロコルチゾン、および50ng/mLの脂質を含み、上記脂質は、たんぱく質とコレステロールとの混合物を含む。
【0012】
ある他の実施形態では、造血細胞は、ある実施形態で、SCF;Epo;IGF−1;脂質;並びに、ヒドロコルチゾンまたはデキサメタゾンのどちらかを含む培地中において、継続的な方法で増殖および分化し、上記脂質は、たんぱく質とコレステロールとの混合物(例えば、Lipids Cholesterol Rich from adult bovine serum;Cat.No.C7305−1G, Sigma, St Louis, MO)を含む。特定の実施形態では、上記培地は、約10〜約10,000ng/mL;約20〜約2000ng/mL;約50〜約1000ng/mL;約100ng/mL;または約100ng/mLの濃度であるSCFを含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約1〜約5IU/mL;または約2〜約3IU/mLの濃度であるEpoを含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約1〜約1000ng/mL;約10〜約500ng/mL;約20〜約100ng/mL;または約40ng/mLの濃度であるIGF−1を含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約1〜約1000μg/mL;約10〜約500ng/mL;約20〜約100ng/mL;または約40ng/mLの濃度である脂質を含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約0.1μM〜約10μM;約0.5μM〜約5μM;または約1μMの濃度であるヒドロコルチゾンを含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約0.1μM〜約10μM;約0.5μM〜約5μM;または約1μMの濃度であるデキサメタゾンを含む。
【0013】
別の特定の実施形態では、上記培地は、免疫調節化合物を含み、上記免疫調節化合物は、上記免疫調節化合物が存在しない状態で増殖した複数の造血細胞に比べて、造血細胞の数を増加させるものである。
【0014】
上記のあらゆる培地の特定の実施形態では、培地は血清を含まない。
【0015】
上記方法の別の特定の実施形態では、上記造血細胞は、CD34である。上記方法の別の特定の実施形態では、上記造血細胞は、Thy−1、CXCR4、CD133またはKDRである。別の特定の実施形態では、上記造血細胞は、CD34CD133またはCD34CD117である。別の特定の実施形態では、上記造血細胞は、CD45である。別の特定の実施形態では、造血細胞は、CD2、CD3、CD11b、CD11c、CD14、CD16、CD19、CD24、CD56、CD66bおよび/またはグリコフォリンAである。
【0016】
別の特定の実施形態では、上記造血細胞は、臍帯血、胎盤血、末梢血、骨髄、胚性幹細胞または誘導された多能性細胞から得られる。別の特定の実施形態では、上記造血細胞は、胎盤灌流液から得られる。別の特定の実施形態では、上記造血細胞は、臍帯血および胎盤灌流液から得られる。さらに特定の実施形態では、上記胎盤灌流液は、胎盤の脈管構造のみを通る灌流液のパッセージ(passage)によって得られる。別の特定の実施形態では、上記造血細胞は、ヒトの造血細胞である。
【0017】
上記方法のある実施形態では、上記造血細胞のうちの複数は、A型、O型、AB型、O型の血液型;Rh陽性またはRh陰性;M型、N型、S型、またはs型の血液型;P1型の血液型;Lua型、Lub型、またはLu(a)型の血液型;K(Kell)型、k(cellano)型、Kpa型、Kpb型、K(a+)型、Kp(a−b−)型またはK−k−Kp(a−b−)型の血液型;Le(a−b−)型、Le(a+b−)型またはLe(a−b+)型の血液型;Fy a型、Fy b型またはFy(a−b−)型の血液型;Jk(a−b−)型、Jk(a+b−)型、Jk(a−b+)型またはJk(a+b+)型の血液型である。さらに特定の実施形態では、上記造血細胞は、O型、Rh陽性;O型、Rh陰性;A型、Rh陽性;A型、Rh陰性;B型、Rh陽性;B型、Rh陰性;AB型、Rh陽性またはAB型、Rh陰性である。上記方法の他の特定の実施形態では、上記造血細胞のうちの90%、95%、98%もしくは99%を超える割合、またはそれぞれがA型、O型、AB型、O型の血液型;Rh陽性またはRh陰性;M型、N型、S型、またはs型の血液型;P1型の血液型;Lua型、Lub型、またはLu(a)型の血液型;K(Kell)型、k(cellano)型、Kpa型、Kpb型、K(a+)型、Kp(a−b−)型またはK−k−Kp(a−b−)型の血液型;Le(a−b−)型、Le(a+b−)型またはLe(a−b+)型の血液型;Fy a型、Fy b型またはFy(a−b−)型の血液型;Jk(a−b−)型、Jk(a+b−)型、Jk(a−b+)型またはJk(a+b+)型の血液型である。さらに特定の実施形態では、上記造血細胞は、O型、Rh+;O型、Rh陰性;A型、Rh陽性;A型、Rh陰性;B型、Rh陽性;B型、Rh陰性;AB型、Rh陽性またはAB型、Rh陰性である。
【0018】
さらに、上述したあらゆる方法によって作られた組成物、例えば、赤血球を含む組成物が、本明細書中で提供される。上記組成物の特定の実施形態では、上記組成物中の、ヘモグロビンを有する細胞の総数に対する胎児型ヘモグロビンを有する細胞の割合が約70〜約99%である。特定の実施形態では、ヘモグロビンを有する細胞の総数に対する成体型ヘモグロビンを有する細胞の割合が約5〜約40%である。
【0019】
ある実施形態では、赤血球が分化する培地から赤血球を単離する工程が、継続的に行われる。他の特定の実施形態では、赤血球を単離する工程が、上記造血細胞が増殖および分化する工程の間に、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、もしくは60分ごと、または、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24時間ごと、またはそれ以上で、定期的に行われる。別の特定の実施形態では、例えば、特定の細胞密度での培養の達成;1ミリリットルあたりの特定の細胞数が、ある赤血球マーカー(例えばCD36もしくはグリコフォリンA)を発現する培養の達成等、1つ以上の培養条件が満たされた場合に、上記赤血球の単離が定期的に行われる。
【0020】
別の側面では、約10〜約10,000ng/mLの濃度である幹細胞刺激因子SCF、約0.01〜約500ng/mLの濃度であるIL−3、および約0.1〜約10IU/mLの濃度であるEpoを含む、造血細胞の成長または分化のための培地であって、上記SCF、IL−3およびEpoは、上記培地の定義されていない成分の中に含まれていないことを特徴とする培地が、本明細書中で提供される。特定の実施形態では、上記培地は、Flt−3L、IL−11、トロンボポエチン(Tpo)、ホメオボックス−B4(HoxB4)またはメチルセルロースのうち、1つ以上を含まない。他の特定の実施形態では、上記培地は、約20〜約2000ng/mL;約50〜約1000ng/mL;または約100ng/mLの濃度であるSCFを含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約0.1〜約100ng/mL;約1〜約50ng/mL;または約5ng/mLの濃度であるIL−3を含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約1〜約5IU/mL;約2〜約3IU/mLの濃度であるEpoを含む。
【0021】
別の特定の実施形態では、上記培地は、さらに約1〜約1000ng/mLの濃度であるインスリン様増殖因子1(IGF−1)、および、約1〜約1000μg/mLの濃度である脂質を含み、上記脂質は、たんぱく質とコレステロールとの混合物を含み、上記培地は、約0.01〜約100μMの濃度であるヒドロコルチゾン、または、約0.01〜約100μMの濃度であるデキサメタゾンを含む。さらに特定の実施形態では、上記培地は、約10〜約500ng/mL;または約20〜約100ng/mLの濃度であるIGF−1を含む。さらに特定の実施形態では、上記培地は、約10〜約500ng/mL;または約20〜約100ng/mLの濃度である脂質を含む。他のさらに特定の実施形態では、上記培地は、約0.1〜約50μM;約0.5〜約10μMの濃度であるヒドロコルチゾンを含む。他のさらに特定の実施形態では、上記培地は、約0.05〜約20μM;約0.1〜約10μMの濃度であるデキサメタゾンを含む。
【0022】
特定の実施形態では、上記培地は、約100ng/mLのSCF、約3U/mLのEpo、約40ng/mLのIGF−1、約5ng/mLのIL−3、約1μMのデキサメタゾン、および40μg/mLの脂質を含み、上記脂質は、たんぱく質とコレステロールとの混合物を含む。別のさらに実施形態では、上記培地は、約100ng/mLのSCF、約2U/mLのEpo、約40ng/mLのIGF−1、約5ng/mLのIL−3、約1μMのヒドロコルチゾン、および50ng/mLの脂質を含み、上記脂質は、たんぱく質とコレステロールとの混合物を含む。
【0023】
別の特定の実施形態では、上記培地は、イスコフ改変ダルベッコ培地またはRPMIを含み、さらに、1%ウシ血清アルブミン;10μg/mLの組み換えヒトインスリン;100μg/mLのヒトトランスフェリン(鉄飽和);および0.1μMの2−メルカプトエタノール;2mMのL−グルタミンが追加されている。
【0024】
ある他の実施形態では、上記培地は、SCF;Epo;IGF−1;脂質;並びに、ヒドロコルチゾンまたはデキサメタゾンのどちらかを含み、上記脂質は、たんぱく質とコレステロールとの混合物(例えば、Lipids Cholesterol Rich from adult bovine serum;Cat.No.C7305−1G, Sigma, St Louis, MO)を含む。特定の実施形態では、上記培地は、約10〜約10,000ng/mL;約20〜約2000ng/mL;約50〜約1000ng/mL;約100ng/mL;または約100ng/mLの濃度であるSCFを含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約1〜約5IU/mL;または約2〜約3IU/mLの濃度であるEpoを含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約1〜約1000ng/mL;約10〜約500ng/mL;約20〜約100ng/mL;または約40ng/mLの濃度であるIGF−1を含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約1〜約1000μg/mL;約10〜約500ng/mL;約20〜約100ng/mL;または約40ng/mLの濃度である脂質を含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約0.1μM〜約10μM;約0.5〜約5μM;または約1μMの濃度であるヒドロコルチゾンを含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約0.1μM〜約10μM;約0.5μM〜約5μM;または約1μMの濃度であるデキサメタゾンを含む。
【0025】
本明細書で用いられる場合、用語「造血細胞」は造血幹細胞および造血前駆細胞、すなわち赤血球に分化することができる血球を包含する。
【0026】
本明細書で用いられる場合、特定の細胞マーカーの存在を示すために用いられる「+」は、細胞マーカーが、蛍光活性化セルソーターにおいて、アイソタイプコントロールを超えて検出可能に存在する、または、定量的もしくは半定量的RT−PCRにおいて、バックグラウンドを超えて検出可能である、ということを意味する。
【0027】
本明細書で用いられる場合、特定の細胞マーカーの存在を示すために用いられる「−」は、細胞マーカーが、蛍光活性化セルソーターにおいて、アイソタイプコントロールを超えて検出可能には存在しない、または、定量的もしくは半定量的RT−PCRにおいて、バックグラウンドを超えて検出可能ではない、ということを意味する。
【0028】
〔4.図面の簡単な説明〕
図1:HPP由来のCD34/CD45およびCD34/CD45細胞のフローサイトメトリー分析。
【0029】
図2A、図2B:CD34細胞のフローサイトメトリー分析。(A):単離前のCD34細胞;(B)単離後のCD34細胞。
【0030】
図3A、図3B:ポマリドマイドが追加されたIMDM培地中での細胞の増殖。図3A:全有核細胞(TNC)の増殖倍率。図3B:CD34細胞の増殖倍率。
【0031】
図4A−4C:CD34培養物の増殖能力。図4A:TNCの増殖倍率。図4B:CD34細胞の増殖倍率。図4C:細胞数で表したCD34細胞の増殖。「化合物1」はポマリドマイドである。
【0032】
図5:培地組成CおよびE1中での細胞増殖。
【0033】
図6:培地の最適化−E1、E2、E3およびE4。エラーバーは3人のドナーの集団平均(population mean)に対して計算した標準偏差を表す。
【0034】
図7:細胞増殖における細胞密度の効果。
【0035】
図8:BM由来およびCB由来のCD34細胞の増殖ポテンシャルの比較。標準偏差は3人のドナーの集団平均に対して計算した。
【0036】
図9A、9B:E3培地中での長期培養。(A)細胞増殖倍率;(B)集団倍加。
【0037】
図10A、10B:HbFおよびHbA産物のELISA分析。(A)HbF産物;(B)HbA産物。標準偏差は3反復の平均に対して計算した。
【0038】
図11:SCF、EpoおよびIL−3間の相互作用を表す3水準実験計画(DOE:design of experiment)。全要因実験計画。
【0039】
図12A−12C:SCF、EpoおよびIL−3間の相互作用を表す3水準DOE。細胞分化への要因の効果を示すキューブプロット(図12A);細胞増殖および分化におけるSCF(図12B)およびEpo(図12C)の相互作用プロット。
【0040】
図13A−13C:SCF、Epoおよび細胞密度間の相互作用を表す3水準DOE。図13A:細胞増殖および分化への因子の効果を示すキューブプロット;低細胞密度、高SCF濃度(図13B)または高細胞密度、低SCF濃度(図13C)での細胞増殖および分化におけるSCFおよび細胞密度の相互作用プロット。
【0041】
図14:細胞サイズによって選別した赤血球。赤血球集団(P1)は前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)を用いて他の未熟な集団(P2およびP3)と区別できる。
【0042】
図15:DRAQ染色によって選別した赤血球。
【0043】
〔5.発明の詳細な説明〕
本明細書では、増殖した造血細胞(例えば、造血幹細胞および/または造血前駆細胞)から赤血球を生産する方法を提供する。一実施形態では、造血細胞は、例えば胎盤灌流液、臍帯血、胎盤血、末梢血、および/または骨髄等の細胞供給源から集められる。上記造血細胞は、支持細胞を用いることなしに、継続的に増殖および分化される。当該単離、増殖および分化は中央施設内で行われ、当該中央施設は、使用する場所で増殖および分化が行えるように輸送するために、増殖された造血細胞を提供する。上記使用する場所とは、例えば、病院、軍隊の基地、軍隊の前線等である。上記方法で生産された赤血球の採集は、例えば分化の間に、継続的または定期的に行われる。上記方法において継続的または定期的に分離できることにより、例えばバッチ法を用いる場合に比べ、実質的により小さな空間で赤血球の生産を行うことができる。造血細胞の採集および増殖にかかる時間は、およそ5〜10日であり、典型的には約7日であった。上記造血細胞の増殖および赤血球への分化にかかる時間は、およそ21〜28日であった。ある実施形態では、赤血球はその後、その場で精製され、投与可能なユニットに包装される。
【0044】
一つの側面では、本明細書では、支持細胞が存在しない培地中で造血細胞集団を増殖させ、上記造血細胞集団中の複数の造血細胞が上記増殖の間に赤血球へと分化すること、および上記培地から上記赤血球を単離することを含み、上記培地は約10〜約10,000ng/mLの濃度であるSCF、約0.01〜約500ng/mLの濃度であるIL−3、および約0.1〜約10IU/mLの濃度であるEpoを含み、上記SCF、IL−3およびEpoは上記培地の定義を与えられていない成分(例えば血清)中には含まれないことを特徴とする、赤血球を生産する方法を提供する。特定の実施形態では、ステップ(c)における上記赤血球の単離は継続的に行われる。他の特定の実施形態では、ステップ(c)における上記赤血球の単離は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55もしくは60分ごとに、または1、1.5、2、2.5、3、3・5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24時間ごと、またはそれ以上で、定期的に行われる。別の特定の実施形態では、ステップ(c)における上記赤血球の単離は、1つ以上の培養条件が満たされたときに、定期的に行われる。当該培養条件とは、例えば、特定の細胞密度での培養の達成、ある赤血球マーカー(例えば、CD36またはグリコフォリンA)で表現されるミリリットルあたりの特定の細胞数の培養の達成、等である。造血細胞の増殖および分化の方法は、後述のセクション5.2.2でより詳細に記載される。
【0045】
<5.1.造血細胞>
本明細書で開示される方法に役立つ造血細胞は、赤血球に分化することができるあらゆる造血細胞を含み、例えば、前駆細胞、造血前駆細胞、造血幹細胞等が挙げられる。造血細胞は、骨髄、臍帯血、胎盤血、末梢血等、またはそれらの組み合わせの組織供給源から得られる。造血細胞は胎盤からも得ることができる。特定の実施形態では、上記造血細胞は胎盤灌流液から得られる。胎盤灌流液由来の造血細胞は、胎児の造血細胞と母体の造血細胞との混合物を含み得る。当該混合物は、例えば母体の造血細胞を造血細胞の総数の5%よりも多く含んでいる。胎盤灌流液由来の造血細胞は少なくとも約90%、95%、98%、99%または99.5%の胎児型細胞を含んでいることが好ましい。
【0046】
ある実施形態では、上記造血細胞はCD34である。CD34造血細胞は、ある実施形態では、細胞マーカーCD38を発現または欠失していてもよい。従って、特定の実施形態では、本明細書で開示される方法に役立つ造血細胞は、CD34CD38またはCD34CD38である。さらに特定の実施形態では、上記造血細胞はCD34CD38Linである。別の特定の実施形態では、上記造血細胞は、CD2、CD3、CD11b、CD11c、CD14、CD16、CD19、CD24、CD56、CD66bおよびグリコフォリンAのうちの1つ以上である。別の特定の実施形態では、上記造血細胞は、CD2、CD3、CD11b、CD11c、CD14、CD16、CD19、CD24、CD56、CD66bおよびグリコフォリンAである。別の特定の実施形態では、上記造血細胞はCD34およびCD133;CD34およびCD133;CD34およびCD117;またはCD34およびCD117である。別のさらに特定の実施形態では、上記造血細胞はCD34CD38CD33CD117である。別のさらに特定の実施形態では、上記造血細胞はCD34CD38CD33CD117CD235CD36である。
【0047】
別の実施形態では、上記造血細胞はCD45である。特定の実施形態では、上記造血細胞はCD34CD45である。別の特定の実施形態では、上記造血細胞はCD34CD45である。
【0048】
別の実施形態では、上記造血細胞はThy−1である。特定の実施形態では、上記造血細胞はCD34Thy−1である。別の実施形態では、上記造血細胞はCD133である。特定の実施形態では、上記造血細胞はCD34CD133またはCD133Thy−1である。別の特定の実施形態では、上記CD34造血細胞はCXCR4である。別の特定の実施形態では、上記CD34造血細胞はCXCR4である。別の実施形態では、上記造血細胞はKDR(血管増殖因子受容体2)に対して陽性である。特定の実施形態では、上記造血細胞はCD34KDR、CD133KDRまたはThy−1KDRである。ある他の実施形態では、上記造血細胞はアルデヒド脱水素酵素に対して陽性(ALDH)であり、例えばCD34ALDHである。
【0049】
ある実施形態では、上記造血細胞はCD34である。
【0050】
上記造血細胞は、分化系列決定を示すあるマーカーを欠失していてもよい。または発達の自由さ(developmental naivete)を欠く。例えば、別の実施形態では、上記造血細胞はHLA−DRである。特定の実施形態では、上記造血細胞はCD34HLA−DR、CD133HLA−DR、Thy−1HLA−DRまたはALDHHLA−DRである。別の実施形態では、上記造血細胞は細胞系統マーカーCD2、CD3、CD11b、CD11c、CD14、CD16、CD24、CD56、CD66bおよびグリコフォリンAのうちの1つ以上、好ましくは全て、に対して陰性である。
【0051】
従って、造血細胞集団は、未分化状態を示すマーカーが存在することに基づいて、または少なくともいくつかの系列分化が起こることを示す細胞系統マーカーが存在しないことに基づいて、本明細書で開示される方法に使用するために選択されてもよい。特定のマーカーの存在または非存在に基づいて細胞を単離する方法は、例えば、後述するセクション5.1.2で詳細に述べる。
【0052】
本明細書で提供される方法で用いられる造血細胞は、ほぼ均一な集団、例えば単一の組織供給源由来の造血細胞を少なくとも約95%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%含む集団、または同一の造血細胞関連細胞マーカーを示す造血細胞を含む集団であってもよい。例えば、種々の実施形態では、上記造血細胞は、骨髄、臍帯血、胎盤血、末梢血、または胎盤(例えば胎盤灌流液)に由来する造血細胞を、少なくとも約95%、98%、99%含んでいてもよい。
【0053】
本明細書で提供される方法で用いられる造血細胞は、単一の個体(例えば、単一の胎盤)、もしくは複数の個体から得たものであってもよく、または、例えば、プールされたものであってもよい。上記造血細胞を複数の個体から得てプールした場合、上記造血細胞は同じ組織供給源から得ることが好ましい。従って、種々の実施形態では、上記プールされた造血細胞は、全て胎盤由来(例えば胎盤灌流液由来)、全て胎盤血由来、全て臍帯血由来、全て末梢血由来等である。
【0054】
本明細書で提供される方法で用いられる造血細胞は、2つ以上の組織供給源由来の造血細胞を含んでいてもよい。好ましくは、2つ以上の組織供給源由来の造血細胞を本明細書の方法で用いるために組み合わせる場合、赤血球を生産するために用いられる上記造血細胞の複数は、胎盤(例えば胎盤灌流液)由来の造血細胞を含む。種々の実施形態では、赤血球を生産するために用いられる上記造血細胞は、胎盤由来および臍帯血由来;胎盤由来および末梢血由来;胎盤由来および胎盤血由来、または胎盤由来および骨髄由来の造血細胞を含む。好ましい実施形態では、上記造血細胞は、臍帯血由来の造血細胞と組み合わせられた胎盤灌流液由来の造血細胞を含み、上記臍帯血および胎盤は同一の個人由来である。すなわち、上記灌流液および臍帯血は相性がよい。上記造血細胞が2つの組織供給源由来の造血細胞を含む実施形態では、上記供給源由来の造血細胞は例えば、1:10、2:9、3:8、4:7、5:6、6:5、7:4、8:3、9:2、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1または9:1の割合で組み合わせてもよい。
【0055】
好ましくは、本明細書で提供される方法に従って造血細胞から生産された赤血球は、血液型に関して同一である。例えば当該赤血球は、細胞表面マーカーまたは抗原等に関して同一である。当該同質性は、例えば、所望の血液型を有する単一の個体から造血細胞を得ることによって達成できる。造血細胞が複数の個体からプールされる実施形態では、それぞれの個体が少なくとも1つ、少なくとも2つ、もしくは少なくとも3つ、またはそれ以上の抗原血液決定基を共有することが好ましい。種々の実施形態では、例えば、上記造血細胞を得た個体、または上記造血細胞を得た複数の個体のそれぞれは、O型、A型、B型、またはAB型の血液型である。他の実施形態では、上記造血細胞を得た個体、または上記造血細胞を得た複数の個体のそれぞれは、Rh陽性またはRh陰性である。特定の実施形態では、上記造血細胞を得た個体、または上記造血細胞を得た複数の個体のそれぞれは、O陽性かつRh陰性である。さらに特定の実施形態では、上記造血細胞を得た個体、または上記造血細胞を得た複数の個体のそれぞれは、O陽性、O陰性、A陽性、A陰性、B陽性、B陰性、AB陽性、またはAB陰性である。他の特定の実施形態では、上記造血細胞を得た個体、または上記造血細胞を得た複数の個体のそれぞれは、M型、N型、S型、またはs型の血液型である。他の特定の実施形態では、上記造血細胞を得た個体、または上記造血細胞を得た複数の個体のそれぞれは、P1型の血液型である。他の特定の実施形態では、上記造血細胞を得た個体、または上記造血細胞を得た複数の個体のそれぞれは、Lua型、Lub型、またはLu(a)型の血液型である。他の特定の実施形態では、上記造血細胞を得た個体、または上記造血細胞を得た複数の個体のそれぞれは、K(Kell)型、k(cellano)型、Kpa型、Kpb型、K(a+)型、Kp(a−b−)型またはK−k−Kp(a−b−)型の血液型である。他の特定の実施形態では、上記造血細胞を得た個体、または上記造血細胞を得た複数の個体のそれぞれは、Le(a−b−)型、Le(a+b−)型またはLe(a−b+)型の血液型である。他の特定の実施形態では、上記造血細胞を得た個体、または上記造血細胞を得た複数の個体のそれぞれは、Fy a型、Fy b型またはFy(a−b−)型の血液型である。他の特定の実施形態では、上記造血細胞を得た個体、または上記造血細胞を得た複数の個体のそれぞれは、Jk(a−b−)型、Jk(a+b−)型、Jk(a−b+)型またはJk(a+b+)型の血液型である。他の特定の実施形態では、上記造血細胞を得た個体は、Diego、Cartwright、Xgm Scianna、Bombrock、Colton、Lansteiner−Weiner、Chido/Rogers、Hh、Kx、Gergich、Cromer、Knops、Indian、Ok、Raph、またはJMHの血液型に分類することができる。他の特定の実施形態では、上記造血細胞を得た複数の個体のそれぞれは、血液分類系または抗原決定基のグループが同一の血液型であり、上記血液分類系または抗原決定基のグループは、Diego、Cartwright、Xgm Scianna、Bombrock、Colton、Lansteiner−Weiner、Chido/Rogers、Hh、Kx、Gergich、Cromer、Knops、Indian、Ok、Raph、またはJMHである。
【0056】
<5.1.1.胎盤造血幹細胞>
ある実施形態では、本明細書で提供される方法に用いられる造血細胞は、胎盤造血細胞である。本明細書で用いられる場合、「胎盤造血細胞」は胎盤血または臍帯血ではなく、胎盤そのものから得られた造血細胞を意味する。一実施形態では、胎盤造血細胞はCD34である。特定の実施形態では、上記胎盤造血細胞は、大部分(例えば、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%)がCD34CD38細胞である。別の特定の実施形態では、上記胎盤造血細胞は、大部分(例えば、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%)がCD34CD38細胞である。胎盤造血細胞は、当業者に公知のあらゆる方法、例えば灌流によって、分娩後の哺乳類(例えばヒト)の胎盤から得られるものであってもよい。
【0057】
別の実施形態では、上記胎盤造血細胞はCD45である。特定の実施形態では、上記胎盤造血細胞はCD34CD45である。他の特定の実施形態では、上記胎盤造血細胞はCD34CD45である。
【0058】
<5.1.1.1.灌流によって胎盤造血細胞を得る>
胎盤造血細胞は灌流を利用して得てもよい。胎盤造血細胞を含む細胞を得るために哺乳類の胎盤を灌流する方法は、米国特許第7,045,148号(タイトル「Method of Collecting placental Stem Cells」)、米国特許第7,255,879号(タイトル「Post−Partum Mammalian Placenta, Its Use and Placental Stem Cells Therefrom」)、および米国特許出願第2007/0190042号(タイトル「Improved Medium for Collecting Placental Stem Cells and Preserving Organs」)に開示されており、開示の内容は全て参照によって本明細書中に引用されるものとする。
【0059】
胎盤造血細胞は、例えば食塩水(例えばリン酸緩衝塩、または0.9%NaCl溶液等)、培地または器官保存溶液を灌流溶液として用いて、例えば胎盤脈管構造(placental vasculature)を介して灌流によって集めてもよい。一実施形態では、哺乳類の胎盤は、臍帯動脈および臍帯静脈の両方またはどちらかに灌流溶液を通過させることで灌流される。胎盤を通る灌流溶液の流れは、例えば重力による胎盤への流れを利用して達成される。好ましくは、灌流溶液は、ポンプ(例えば蠕動ポンプ)を用いて胎盤へと流される。臍帯静脈は、例えばカニューレ(例えばTEFLON(登録商標)またはプラスチック製のカニューレ)が挿入されていてもよい。当該カニューレは、例えば滅菌された管等の滅菌された接続装置と接続されており、もう一方の端部は灌流連結管(perfusion manifold)と接続されている。
【0060】
灌流のための準備において、胎盤は、臍帯動脈および臍帯静脈が胎盤の最も高い位置に位置するように配向される(例えば吊るされる)ことが好ましい。胎盤は胎盤脈管構造および周囲の組織に灌流液を通過させることによって灌流されてもよい。また、胎盤は、臍帯静脈および複数の臍帯動脈に灌流液を通過させること、または臍帯動脈および複数の臍帯静脈に灌流液を通過させることによって灌流されてもよい。
【0061】
一実施形態では、例えば臍帯動脈および臍帯静脈は、例えば可撓性の接続装置を介して灌流溶液の貯蔵部と接続されたピペットに同時に接続されている。灌流溶液は臍帯動脈および臍帯静脈を通過する。灌流溶液は、血管の壁から胎盤の周囲の組織へと滲出および/または通過して、妊娠期間中に母体の子宮と接着している胎盤表面から、適切な開放された容器(例えば滅菌された皿)の中に集められる。灌流溶液は、臍帯の開口部を介して導入されてもよく、母体の子宮の壁と連結している胎盤の壁中の開口部から流出または浸透させることができる。「パン」法と呼ばれる上記方法によって集められた胎盤細胞は、一般的に胎児の細胞と母体の細胞との混合物である。
【0062】
別の実施形態では、灌流溶液は、臍帯静脈および複数の臍帯動脈中を、または臍帯動脈および複数の臍帯静脈中を通過する。「閉鎖循環」法と呼ばれる上記方法によって集められた胎盤細胞は、一般的にほぼ全て胎児由来のものである。
【0063】
閉鎖循環灌流方式は、一実施形態として以下のように行ってもよい。分娩後の胎盤は、産後約48時間以内に得られる。臍帯はクランプし、クランプの上部で切断する。臍帯は廃棄してもよく、または、例えば臍帯幹細胞を得るため、および/もしくは生体適合材料の生産のために臍帯膜を加工するために処理してもよい。羊膜は灌流の間保持されていてもよく、または、例えば指による鈍的切開(blunt dissection)によって絨毛膜から分離してもよい。灌流前に羊膜が絨毛膜から分離される場合、羊膜は、例えば廃棄されてもよく、または例えば酵素の消化作用によって幹細胞を得るため、もしくは例えば羊膜生体適合材料を生産するために処理されてもよい。例えば上記生体適合材料は米国特許出願公報第2004/0048796号に開示されており、開示の内容は全て参照によって本明細書中に引用されるものとする。
【0064】
例えば滅菌されたガーゼを用いて、認識できる全ての血塊および残った血液を胎盤から取り除いた後、例えば臍帯の断面を露出させるために臍帯膜を部分的に切ることで、臍帯の管を露出させる。例えば閉じたわに口クランプを管の切断した一端から挿入することで、管は確認され、開かれる。その後、装置(例えば、灌流装置または蠕動ポンプに接続されたプラスチック製の管)がそれぞれの胎盤動脈に挿入される。ポンプは目的に適していればいずれのポンプであってもよく、例えば蠕動ポンプが挙げられる。その後、滅菌された採集貯蔵器(例えば、250mL採集バッグ等の血液バッグ)に接続された管が胎盤静脈に挿入される。または、ポンプに接続された管が胎盤静脈に挿入され、貯蔵器に接続された管が胎盤動脈のうちの一つもしくは両方に挿入される。その後、胎盤には、一定量の灌流溶液(例えば、約750mLの灌流溶液)が灌流される。その後、灌流液中の細胞は、例えば遠心分離によって採集される。
【0065】
一実施形態では、臍帯の基部は灌流の間、クランプされており、より好ましくは、臍帯が胎盤に入り込んだ4〜5cm(センチメートル)の部位の中でクランプされる。
【0066】
全採血処理の間、哺乳類の胎盤からの灌流液の最初の採集は、一般的に臍帯血および/または胎盤血の残った赤血球で染まる。灌流が進行し、残りの臍帯血の赤血球が胎盤から取り除かれるにつれて、灌流液はより無色に近くなる。一般的に30から100ml(ミリリットル)の灌流液が、最初に胎盤から全採血を行うために適切であるが、観察結果によって用いられる灌流液の量が多くなったり少なくなったりしてもよい。
【0067】
胎盤造血細胞を採集するために用いられる灌流液の体積は、採集する造血細胞の数、胎盤のサイズ、一つの胎盤から作られるコレクションの数に応じて変化してもよい。種々の実施形態で灌流液の体積は、50mL〜5000mL、50mL〜4000mL、50mL〜3000mL、100mL〜2000mL、250mL〜2000mL、500mL〜2000mL、750mL〜2000mL、であってもよい。一般的に、全採血後に700mL〜800mLの灌流液で胎盤に灌流を行う。
【0068】
胎盤造血細胞を得るために、数時間または数日にわたって複数回、胎盤に灌流を行ってもよい。胎盤に複数回の灌流を行う場合、胎盤は、コンテナまたは他の適切な容器中に無菌状態で維持または培養されてもよい。上記胎盤は、幹細胞集合組成物(stem cell colleciton composition)(米国特許出願公報第2007/0190042号参照。開示の内容は全て参照によって本明細書中に引用されるものとする。)、または標準灌流溶液(例えば、リン酸緩衝塩(PBS)等の通常の塩溶液)を用いて灌流される。上記標準灌流溶液は、抗凝血薬(例えばヘパリン、ワルファリンナトリウム、クマリン、ビスヒドロキシクマリン)および/または抗真菌薬(例えばβ−メルカプトエタノール(0.1mM);ストレプトマイシン(例えば40〜100μg/ml)、ペニシリン(例えば40U/ml)、アンフォテリシンB(例えば0.5μg/ml))とともに用いてもよいし、ともに用いなくてもよい。一実施形態では、単離された胎盤は灌流液を採集せずに、ある期間維持または培養される。上記胎盤は、例えば灌流および灌流液の採集の前に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24時間、または、2、3日、もしくはそれ以上の期間、維持または培養される。灌流された胎盤は、さらに追加で1回以上維持されてもよく、時間は例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、またはそれ以上の時間であり、二回目は例えば700〜800mLの灌流液を用いて灌流される。胎盤は、1、2、3、4、5、またはそれ以上の回数で灌流されてもよく、例えば1、2、3、4、5または6時間ごとに1回灌流されてもよい。好ましい実施形態では、胎盤の灌流、および、灌流溶液(例えば幹細胞集合組成物)の採集は、回収される有核細胞の数が100細胞/ml以下に低下するまで繰り返される。異なる時点での灌流液は、さらに、時間に依存する細胞集団(例えば胎盤造血細胞集団)を回収するために、個別に処理される。また、異なる時点での灌流液はプールされてもよい。
【0069】
<5.1.1.2.組織破壊によって胎盤造血細胞を得る>
造血細胞は、1つ以上のプロテアーゼまたは他の組織破壊酵素(例えばトリプシン、コラゲナーゼ、パパイン、キモトリプシン、サブチリシン、ヒアルロニダーゼ;カテプシン、カスパーゼ、カルパイン、キモシン、プラズメプシン、またはペプシン等)を含む溶液を灌流することによって胎盤から単離されてもよい。特定の実施形態では、胎盤または胎盤の一部(羊膜の膜、羊膜および絨毛膜、胎盤小葉または胎盤葉、臍帯、または上記のあらゆる組み合わせ)を25℃〜37℃の状態にし、1つ以上の組織破壊酵素とともに200mLの培地中で30分間培養する。灌流液由来の細胞を採集し、4℃の状態にし、5mMのEDTA、2mMのジチオスレイトールおよび2mMのベータ−メルカプトエタノールを含む冷たい阻害因子混合物で洗浄する。幹細胞は数分後、冷たい(例えば4℃)幹細胞採集組成物で洗浄する。
【0070】
一実施形態では、胎盤は、造血細胞を得るために機械的に(例えば、破砕する、混和する、さいの目に切る、または切り刻む等の方法によって)破壊されてもよい。胎盤は、全体を用いてもよいし、または、物理的破壊および/もしくは酵素による消化、並びに造血細胞の回収の前に構成要素に解剖してもよい。例えば、造血細胞は、羊膜の膜、絨毛膜、臍帯、胎盤葉、または上記のあらゆる組み合わせから得てもよい。
【0071】
また、胎盤造血細胞は、例えばトリプシン、コラゲナーゼ、パパイン、キモトリプシン、サブチリシン、ヒアルロニダーゼ;カテプシン、カスパーゼ、カルパイン、キモシン、プラスメプシン、またはペプシン等の組織破壊酵素を用いて胎盤を破壊することによって得てもよい。酵素による消化では、好ましくは酵素の組み合わせ、例えばマトリックスメタロプロテアーゼと中性プロテアーゼとの組み合わせ、例えばコラゲナーゼとディスパーゼとの組み合わせ、を用いる。一実施形態では、酵素による胎盤組織の消化には、ヒアルロン酸を消化するためにマトリックスメタロプロテアーゼ、中性プロテアーゼおよびムコ多糖類加水分解酵素(mucolytic enzyme)の組み合わせを用いる。上記組み合わせは、例えばコラゲナーゼ、ディスパーゼおよびヒアルロニダーゼの組み合わせ、または、LIBERASE(Boehringer Mannheim Corp., Indianapolis, Ind.)およびヒアルロニダーゼの組み合わせである。胎盤組織を破壊するために用いることができる他の酵素には、パパイン、デオキシリボヌクレアーゼ、セリンプロテアーゼ(トリプシン、キモトリプシンまたはエラスターゼ)が挙げられる。セリンプロテアーゼは、血清中のアルファ2ミクログロブリンによって阻害され得るので、消化に用いる培地には通常、血清は含まれない。EDTAおよびDNaseは、細胞回収効率を上げるため、酵素消化処理に一般的に用いられる。粘性のある消化物中に幹細胞が捉えられることを避けるために、消化物は希釈されることが好ましい。
【0072】
組織消化酵素はいかなる組み合わせで用いてもよい。組織消化酵素の一般的な濃度としては、例えばコラゲナーゼIおよびコラゲナーゼIVは50〜200U/mL、ディスパーゼは1〜10U/mL、並びにエラスターゼは10〜100U/mLが含まれる。プロテアーゼは組み合わせて、すなわち2つ以上のプロテアーゼを同一の消化反応で用いてもよいし、または胎盤幹細胞を遊離するために連続して用いてもよい。例えば、一実施形態では、胎盤または胎盤の一部を、まず約2mg/mlのコラゲナーゼIを用いて30分間消化し、次に0.25%のトリプシンを用いて37℃で10分間消化を行う。セリンプロテアーゼは、好ましくは他の酵素の使用後に連続して用いる。
【0073】
別の実施形態では、例えばエチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)またはエチレンジアミン四酢酸を、幹細胞を含む幹細胞採集組成物、または、胎盤造血細胞の単離前に組織を破壊および/もしくは消化した溶液に加えることで、組織をさらに破壊してもよい。
【0074】
胎盤全体または胎盤の一部が胎児および母体の細胞を両方含んでいる場合(例えば胎盤の一部が絨毛膜または胎盤葉を含む場合)、採集された胎盤造血細胞は、胎児および母体の両方の供給源に由来する胎盤幹細胞の混合物であることが好ましい。胎盤の一部が母体の細胞(例えば羊膜)を全く含んでいない、またはごくわずかな数しか含んでいない場合、採集された胎盤幹細胞は、ほぼ胎児由来の胎盤幹細胞のみを含んでいる。
【0075】
<5.1.2.細胞の単離、選別、および特定>
あらゆる供給源(例えば哺乳類の胎盤)に由来する造血細胞を含む細胞は、初めに、例えばフィコール密度勾配遠心分離法、ヘタスターチ処理または塩化アンモニウム処理によって他の細胞から精製(すなわち、単離)されていてもよい。遠心分離機、例えばフィコール遠心分離機(例えばGE Healthcare製、Cat.No.17−1440−03)は、遠心分離速度等について、いかなる標準プロトコルに従ってもよい。一実施形態では、例えば、胎盤から採集された細胞は、室温で15分、150 x gで遠心分離を行うことで灌流液から回収される。当該遠心分離は、例えば混入している残骸および血小板から細胞を分離する。別の実施形態では、胎盤灌流液は約200mlに濃縮され、緩やかにフィコール上に層を形成する。そして約22℃で20分間、約1100 × gで遠心分離され、低密度の細胞の中間層が更なる工程のために採集される。
【0076】
特定の制限されない実施形態では、ヘタスターチ(たとえばHetaSep、Stem Cell Technologies製、カタログ No.07906)処理は、1部(1 part)のヘタスターチ溶液を5部(5 parts)の、例えば適切なサイズのチューブ中のヒト胎盤灌流液(HPP:human placental perfusate)または臍帯血に加えることで行ってもよい。十分に混合した後、サンプルを、血漿/RBCの界面が総量のおよそ50%になるまで安定させる。任意で、当該ステップのためにチューブを37℃のインキュベーター中に設置して沈降速度を増加させる。明確な界面が、RBC画分とRBCが消耗された(有核細胞が豊富な)画分との間に、ヘタスターチ溶液を介してRBC沈殿物として形成される。その後、白血球が豊富な層を回収し、50mLのチューブ中に入れる。当該画分は、例えば少なくとも4倍の体積の適切な培地によって、一度洗浄される。血小板を除去するために、例えば室温(15〜25℃)で10分間、120 × gでブレーキなしで遠心分離することによって、ゆっくりしたスピンを行う。ある他の実施形態では、塩化アンモニウム(例えばStem Cell Technologies製、カタログ No.07850)処理を、例えば緩衝化した塩化アンモニウム溶液をHPPまたは臍帯血に、例えば体積の割合が4:1になるように加えることで行ってもよい。細胞懸濁液をボルテックスにかけ、赤血球を溶解させるために10分間氷上に置く。細胞は、使用する前に任意で、適切な培地で二度洗浄される。
【0077】
細胞沈殿物を、例えば未使用の食塩水、または、幹細胞維持に適した培地(例えば2U/mlのヘパリンおよび2mMのEDTA(GibcoBRL、NY)を含むIMDM無血清培地)の中で再び懸濁してもよい。全ての単核細胞画分を、例えばLYMPHOPREP(登録商標)(Nycomed Pharma、Oslo、Norway)を用いて、製造者の推奨する処理に従って、単離してもよい。
【0078】
本明細書で用いられる場合、胎盤細胞、例えば胎盤造血細胞または胎盤幹細胞を含む細胞を「単離する」とは、単離された細胞が実際の組織(例えば哺乳類の胎盤)の中で通常結合している細胞の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%を除去することを意味する。細胞が、幹細胞が実際の器官中で通常結合している細胞の50%よりも少ない数を含む細胞集団中に存在する場合、組織由来の細胞が「単離された」といえる。
【0079】
哺乳類の胎盤から採集された細胞の数および型は、例えば形態の変化、および、例えばフローサイトメトリー、セルソーティング、免疫細胞化学的方法(例えば組織特異的または細胞マーカー特異的な抗体を用いた染色)、蛍光活性化セルソーティング(FACS:fluorescence activated cell sorting)、磁気活性化細胞選別(MACS:magnetic activated cell sorting)等の標準的な細胞検出技術を用いた細胞表面マーカーの測定、光学顕微鏡もしくは共焦点顕微鏡を用いた細胞の形態の検査、並びに/または、例えばPCRおよび遺伝子発現プロファイル等の当業者によく知られた技術を用いた遺伝子発現の変化の測定によって、観察することができる。これらの技術は、1つ以上の特定のマーカーに対して陽性である細胞を特定するためにも、用いることができる。例えば、CD34を用いれば、上述の技術を用いて、ELISA、もしくはRIA等のアッセイで、またはFACSによって、細胞がCD34を検出可能の量で含んでいるかどうか測定することができ、検出可能であればCD34であると判断できる。同様に、細胞が、例えばOCT−4をコードするRNAを、RT−PCRによって検出するために十分な量で含んでいれば、当該細胞はOCT−4である。細胞表面マーカー(例えばCD34等のCDマーカー)に対する抗体、および、OCT−4等の幹細胞に特異的な配列は、当業者にとって周知である。
【0080】
胎盤細胞、特に、例えばフィコール分離、ヘタスターチ処理、塩化アンモニウム処理、差次接着法(differential adherence)、またはそれらの組み合わせによって単離される細胞は、蛍光活性化セルソーティング(FACS:fluorescence activated cell sorting)を用いて選別することができる。FACSは、細胞を含む粒子を、当該粒子の蛍光特性に基づいて分離する、周知の方法である(Kamarch,1987, Methods Enzymol, 151:150−165)。個々の粒子の蛍光成分をレーザー励起することで、小さな電荷が生み出され、混合物から正の粒子および負の粒子を電磁分離することができる。一実施形態では、細胞表面マーカーに特異的な抗体またはリガンドは、識別できる蛍光ラベルによって標識されている。細胞を細胞選別器によって処理することで、使用した抗体と結合する能力に基づいて、細胞の分離を行うことができる。FACSによって選別した粒子は、分離およびクローニングを促進するために、96ウェルプレートまたは384ウェルプレートの個々のウェルに直接配置されてもよい。
【0081】
一実施形態では、胎盤由来の幹細胞が、CD34、CD38、CD44、CD45、CD73、CD105、CD117、CD200、OCT−4および/またはHLA−Gのうち、一つ以上のマーカーの発現に基づいて、選別され、例えば、単離される。
【0082】
別の実施形態では、例えば、CD34、CD133、KDRまたはThy−1である造血細胞は、未分化の造血細胞のマーカー特性に基づいて、選別され、例えば、単離される。当該選別工程は、例えば、選別されていない細胞集団であって、例えば、灌流液または組織消化物に由来する細胞集団であって、CD34細胞が集団に存在する細胞の中で少数である細胞集団に対して、行われてもよい。また、上記選別工程は、大半(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%を超える数)が造血細胞である細胞集団に対して、例えば精製工程において行われてもよい。例えば、特定の実施形態では、CD34細胞、KDR細胞、Thy−1細胞、および/またはCD133細胞は、未分化造血細胞集団を生産するために、選抜工程の間、維持される。
【0083】
別の実施形態では、細胞(例えば造血細胞)は、系統分化細胞のマーカーに基づいて選別され、例えば排除される。例えば、CD2、CD3、CD11b、CD14、CD16、CD19、CD24、CD56、CD66bおよび/またはグリコフォリンAである、造血細胞集団中の細胞は、未分化造血細胞集団を生産するために、造血細胞集団から選別する工程の間、排除される。
【0084】
別の実施形態では、造血細胞は、例えば細胞系統マーカーの発現がないことに基づいて選別され、例えば単離される。特定の実施形態では、造血細胞(例えばCD34細胞)は、例えば、細胞がCD2、CD3、CD11b、CD11c、CD14、CD16、CD19、CD24、CD56、CD66bおよび/またはグリコフォリンAのうちの1つ以上であるという判定に基づいて、単離されてもよい。
【0085】
別の実施形態では、磁気ビーズ(例えばDYNABEADS(登録商標)(Invitrogen))を、細胞を分離するために用いてもよい。上記細胞が磁気ビーズ(直径0.5〜100μm)と結合する能力に基づいて、粒子を選別する方法である、磁気活性化細胞選別(MACS)技術を用いて選別してもよい。磁気ミクロスフェアにおいて、種々の有用な修正が行われてもよく、上記修正には、特定の細胞表面分子またはハプテンを特異的に認識する抗体の共有結合付加が含まれる。上記ビーズはその後、結合のために細胞と混合される。その後、細胞は磁場を通過し、特定の細胞マーカーを有する細胞が分離される。一実施形態では、その後、上記細胞を単離し、さらなる細胞表面マーカーに対する抗体と結合している磁気ビーズと再度混合してもよい。上記細胞は、再度、磁場を通過し、両方の抗体と結合している細胞が単離される。上記細胞を、その後、クローン単離のためのマイクロタイター皿等の分離皿に希釈してもよい。
【0086】
別の実施形態では、胎盤幹細胞(例えば胎盤造血細胞または付着胎盤幹細胞)を、コロニー形成ユニットアッセイによって識別および特定してもよい。コロニー形成ユニットアッセイは当業者に一般的に知られており、MECENCULTTM培地(Stem Cell Technologies, Inc., Vancouver British Columbia)等が挙げられる。
【0087】
胎盤幹細胞を、当業者に知られた標準的な技術を用いて、生存率、増殖力、または寿命について評価してもよい。上記技術には、トリパンブルー排除アッセイ、フルオレセイン二酢酸取り込みアッセイ、ヨウ化プロビジウム取り込みアッセイ(生存率を評価する);およびチミヂン取り込みアッセイ、MTT細胞増殖アッセイ(増殖を評価する)等が挙げられる。寿命は、増殖した培養物における集団倍加(population doubling)の最大数を測定すること等の、当業者によく知られた方法によって測定してもよい。
【0088】
胎盤幹細胞は、当業者に知られた他の技術を用いて、他の胎盤細胞から分離してもよい。上記技術には、例えば、所望の細胞の選択的増殖(正の選択)、不要な細胞の選択的破壊(負の選択);例えば、大豆凝集素を用いた、混合集団において区別できる細胞凝集能に基づく分離;凍結融解処理;ろ過;従来のゾーン遠心分離;遠心溶出法(逆流遠心分離);単位重力分離;向流分配;電気泳動等が挙げられる。
【0089】
<5.2.造血細胞の増殖>
一度、造血細胞集団を得られれば、集団を増殖させることができる。赤血球の一つのユニットは、約1〜2×1012個の赤血球を含むとされる。造血幹細胞の集団倍加には、およそ36時間が必要である。従って、標準の方法に従って、約5×10個の造血細胞から開始し、増殖および分化における効率が100%であると仮定すると、赤血球のユニットの生産には、およそ14回の造血細胞の集団倍加、すなわち、およそ3週間が必要である。以下で詳細に説明する方法は、造血細胞の培養条件を改善し、増殖の間の、単位時間あたりの造血細胞の数を増加させることで、標準の方法を改善するものである。
【0090】
<5.2.1.短縮された造血細胞の増殖時間>
造血細胞を含む細胞は、細胞周期調節機構を備えており、当該機構は、細胞分裂の速度を調節するサイクリンおよびサイクリン依存性キナーゼ(CDK)を含んでいる。細胞では、細胞周期の進行を監視および制御するために、細胞周期チェックポイントが用いられている。細胞が、ある段階での要件を満たさなければ、当該要件を満たされるまでは次の段階に進行することができない。細胞が、細胞周期の異なる段階に進行する条件に関連する過程(チェックポイント制御)は比較的ゆっくりであり、最適なin vitro培養条件下でさえ哺乳類の細胞で観察される、比較的穏やかな細胞分裂速度の一因となっている。
【0091】
赤血球の生産方法の一実施形態では、上記方法には、低減された集団倍加時間を有する造血細胞が用いられる。特定の実施形態では、上記造血細胞は、細胞周期活性化因子を通常より高いレベルで発現するように、または、細胞周期阻害因子を通常より低いレベルで発現するように改変されており、上記設計された細胞は、改変されていない造血細胞に比べて、検出可能な程度に短い倍加時間を有する。さらに特定の実施形態では、上記造血細胞は、細胞周期活性化因子であるサイクリンT2(CCNT2)、サイクリンT2B(CCNT2B)、CDC7L1、CCN1、サイクリンG(CCNG2)、サイクリンH(CCNH)、CDKN2C、CDKN2D、CDK4、サイクリンD1、サイクリンA、サイクリンB、Hes1、Hox遺伝子および/またはFoxOのうち1つ以上を通常より高いレベルで発現するように改変されている。
【0092】
別のさらに特定の実施形態では、上記造血細胞は、CDK阻害因子p21、p27および/またはTReP−132を通常より低いレベルで発現する。CDK阻害因子の発現の低減は、当業者に知られたあらゆる方法によって達成できる。上記方法には、例えば、低分子阻害剤、p21、p27および/またはTReP−132のDNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNA前駆体またはmRNA配列、RNAi等の使用が挙げられる。
【0093】
赤血球を生産する本方法と関連した、造血前駆細胞の改変は、赤血球は除核されており、複製することができないので、治療上安全であると考えられる。
【0094】
別の特定の実施形態では、上記造血細胞は、細胞周期活性化因子を通常より高いレベルで発現するように改変されており、上記設計された細胞は、改変されていない造血細胞に比べて、検出可能な程度に短い倍加時間、または検出可能な程度に増加した増殖速度を有し、上記細胞周期活性化因子の発現の増加は誘導可能である。上記改変された造血細胞を構築するために、当業者に知られたあらゆる誘導性プロモーターを用いることができ、上記誘導性プロモーターには、CMVプロモーターの制御下で安定的に発現する、リバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA)を用いたテトラサイクリン誘導遺伝子発現系(例えばREVTET−ON(登録商標)System、Clontech Laboratories, Palo Alto, Calif.);米国特許出願公報第2007/0166366号「Autologous Upregulation Mechanism Allowing Optimized Cell Type−Specific and Regulated Gene Expression Cells」;および米国特許出願公報第2007/0122880号「Vector for the Inducible Expression of Gene Sequences」が挙げられ、それぞれの開示の内容は全て参照によって本明細書中に引用されるものとする。
【0095】
細胞周期阻害因子または負の細胞周期制御因子をコードする遺伝子の発現を、例えば、標準的方法を用いた相同組み換え、または非相同組み換えによって、造血細胞中で阻害してもよい。細胞周期阻害因子または負の細胞周期制御因子の発現の阻害は、例えばp21、p27および/またはTReP−132に対するアンチセンス分子を用いて、行ってもよい。
【0096】
別の実施形態では、赤血球を生産するために用いる造血細胞を、ノッチ1リガンド(notch 1 ligand)を発現するように改変する。上記ノッチ1リガンドの発現によって、上記造血細胞の老化が、改変されていない造血細胞に比べて、検出可能な程度に低減される。Berstein et al.,米国特許出願第2004/0067583「Methods for Immortalizing Cells」を参照されたい。開示の内容は全て参照によって本明細書中に引用されるものとする。
【0097】
別の特定の実施形態では、上記造血細胞が増殖する培地は、正確なDNAの複製を促進する。例えば、上記培地は、一つ以上の酸化防止剤を含む。
【0098】
好ましい実施形態では、上記赤血球を生産する方法は、本明細書で開示される方法で生産され、単離された赤血球の最終的な集団から、あらゆる改変された造血細胞、または前赤血球前駆体を排除する工程を含む。上記分離は、本明細書にあらゆる箇所に開示されるように、赤血球に十分に分化していない造血細胞を特徴づける、一つ以上のマーカーに基づいて、達成することができる。上記排除工程は、赤血球特異的マーカー(例えばCD36および/またはグリコフォリンA)に基づいて赤血球を選択する単離工程に続いて行われる。
【0099】
<5.2.2.指示細胞に依存しない造血細胞の増殖および分化>
ある実施形態では、本明細書で提供される方法に用いられる造血細胞(例えば幹細胞、または前駆細胞)は、支持細胞を用いない培地で増殖および分化する。本明細書で提供される造血細胞の培養によって、造血細胞の継続的な増殖、および上記細胞からの赤血球の分化がもたらされる。
【0100】
支持細胞に依存しない造血細胞の増殖および分化は、細胞培養および増殖に適合した、あらゆる容器中で行うことができ、当該容器には、例えば、フラスコ、試験管、ビーカー、シャーレ、複数のウェルを有するプレート、バッグ等が挙げられる。特定の実施形態では、支持細胞に依存しない造血細胞の増殖は、バッグ(例えば、柔軟性を有するガス透過性のフルオロカーボン培養バッグ(例えば、American Fluoroseal製))中で行われる。特定の実施形態では、上記造血細胞が増殖する容器は、例えば病院または戦地等の場所への輸送に好適であり、上記増殖した造血細胞は、例えば後述するバイオリアクターを用いることで、さらに増殖および分化する。
【0101】
ある実施形態では、造血細胞は、ある実施形態では、幹細胞因子(SCF)、エリスロポエチン(Epo)、およびインターロイキン−3(IL−3)を含む培地において、継続的な方法で増殖および分化する。
【0102】
従って、一つの側面では、支持細胞が存在しない培地中で、造血細胞集団を増殖および分化させる工程であって、当該増殖させる工程の間に、上記造血細胞集団中の複数の造血細胞が赤血球へ分化する工程と、上記培地から上記赤血球を単離する工程と、を含む、赤血球を生産する方法であって、上記培地は、約10〜約10,000ng/mLの濃度であるSCF、約0.01〜約500ng/mLの濃度であるIL−3、および、約0.1〜約10IU/mLの濃度であるEpoを含み、上記SCF、IL−3およびEpoは、上記培地の定義されていない成分(例えば、血清)の中には含まれていないことを特徴とする、赤血球を生産する方法が、本明細書で提供される。上記方法の特定の実施形態では、上記培地は、Flt−3L、IL−11、トロンボポエチン(Tpo)、ホメオボックス−B4(HoxB4)またはメチルセルロースのうち、1つ以上、またはいずれも含まない。他の特定の実施形態では、上記培地は、約20〜約2000ng/mL;約50〜約1000ng/mL;または約100ng/mLの濃度でSCFを含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約0.1〜約100ng/mL;約1〜約50ng/mL;または約5ng/mLの濃度でIL−3を含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約1〜約5IU/mL;または約2〜約3IU/mLの濃度でEpoを含む。
【0103】
ある実施形態では、上記培地は、培地中の造血幹細胞、例えばCD34造血幹細胞の増殖を促進し、上記細胞は5×10個/mL以下、2.75×10個/mL以下、または5×10個/mL以下で播種され、Epoは5IU/mL以下、3IU/mL以下、または1IU/mL以下で存在し(例えば、培地に含まれる)、SCFは1ng/mL以上、50ng/mL以上、または100ng/mL以上で存在する(例えば、培地に含まれる)。特定の実施形態では、上記細胞は5×10個/mL以下で播種され、上記培地は、1IU/mL以下のEpoおよび100ng/mL以上のSCFを含む。
【0104】
上記方法の別の特定の実施形態では、上記培地はさらに約1〜約1000ng/mLの濃度であるインスリン様増殖因子1(IGF−1)、および、約1〜約1000μg/mLの濃度である脂質を含み、上記脂質はたんぱく質とコレステロールとの混合物(例えば、Lipids Cholesterol Rich from adult bovine serum;Cat.No.C7305−1G, Sigma, St Louis, MO)を含み;上記培地は、約0.01〜約100μMの濃度であるヒドロコルチゾン、または、約0.01〜約100μMの濃度であるデキサメタゾンを含む。さらに特定の実施形態では、上記培地は、約10〜約500ng/mL;または約20〜約100ng/mLの濃度でIGF−1を含む。他のさらに特定の実施形態では、上記培地は、約10〜約500ng/mL;または約20〜約100ng/mLの濃度で脂質を含む。他のさらに特定の実施形態では、上記培地は、約0.1〜約50μM;または約0.5〜約10μMの濃度でヒドロコルチゾンを含む。他のさらに特定の実施形態では、上記培地は、約0.05〜約20μM;または約0.1〜約10μMの濃度でデキサメタゾンを含む。
【0105】
上記方法のさらに特定の実施形態では、上記培地は、約100ng/mLのSCF、約3U/mLのEpo、約40ng/mLのIGF−1、約5ng/mLのIL−3、約1μMのデキサメタゾン、および40μg/mLの脂質を含み、上記脂質は、たんぱく質とコレステロールとの混合物を含む。上記方法の別のさらに特定の実施形態では、上記培地は、約100ng/mLのSCF、約2U/mLのEpo、約40ng/mLのIGF−1、約5ng/mLのIL−3、約1μMのヒドロコルチゾン、および50ng/mLの脂質を含み、上記脂質は、たんぱく質とコレステロールとの混合物を含む。
【0106】
ある他の実施形態では、造血細胞は、ある実施形態で、SCF;Epo;IGF−1;脂質;並びに、ヒドロコルチゾンまたはデキサメタゾンのどちらかを含む培地中において、継続的な方法で増殖および分化し、上記脂質は、たんぱく質とコレステロールとの混合物(例えば、Lipids Cholesterol Rich from adult bovine serum;Cat.No.C7305−1G, Sigma, St Louis, MO)を含む。特定の実施形態では、上記培地は、約10〜約10,000ng/mL;約20〜約2000ng/mL;約50〜約1000ng/mL;約100ng/mL;または約100ng/mLの濃度であるSCFを含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約1〜約5IU/mL;または約2〜約3IU/mLの濃度であるEpoを含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約1〜約1000ng/mL;約10〜約500ng/mL;約20〜約100ng/mL;または約40ng/mLの濃度であるIGF−1を含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約1〜約1000μg/mL;約10〜約500ng/mL;約20〜約100ng/mL;または約40ng/mLの濃度である上記脂質を含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約0.1μM〜約10μM;約0.5μM〜約5μM;または約1μMの濃度であるヒドロコルチゾンを含む。他の特定の実施形態では、上記培地は、約0.1μM〜約10μM;約0.5μM〜約5μM;または約1μMの濃度であるデキサメタゾンを含む。
【0107】
上記方法に加えて、組成物として上述したあらゆる培地が、本明細書で提供される。本明細書で提供されるあらゆる方法または組成物のある実施形態では、上記培地は、無血清培地、例えばSTEMSPAN(登録商標)(Cat.No.09650,Stem Cell Technologies, Vancouver, Canada)であってもよい。
【0108】
別の実施形態では、造血細胞は、免疫調節化合物(例えばTNF−α阻害化合物)と接した状態で、当該細胞を培養することで、増殖する。当該細胞は、免疫調節化合物と接していない同数の造血細胞と比べて、与えられた時間内の造血細胞の増殖が検出可能な程度で増加するために十分な時間および量で、免疫調節化合物と接する。例えば、米国特許出願公報第2003/0235909号を参照されたい。当該開示の内容は全て参照によって本明細書中に引用されるものとする。好ましい実施形態では、上記免疫調節化合物は、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロイソインドル−2−yl)−ピペリジン−2,6−ジオン;3−(4’アミノイソリンドリン−1’−オン)−1−ピペリジン−2,6−ジオン;4−(アミノ)−2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−イソインドリン−1,3−ジオン;4−アミノ−2−[(3RS)−2,6−ジオキソピペリジン−3−イル]−2H−イソインドール−1,3−ジオン;α−(3−アミノフタルイミド)グルタルイミド;ポマリドマイド、レナリドマイド、またはサリドマイドである。別の実施形態では、上記免疫調節化合物は、以下の構造を有し、
【0109】
【化1】

【0110】
式中、XおよびYの一方はC=Oであり、XおよびYのもう一方はC=OまたはCHであり、Rは水素もしくは低級アルキルである化合物であり、またはそれらの薬学的に許容可能な塩、水和物、溶媒和物、クラスレート、光学異性体、ジアステレオマー、ラセミ化合物、もしくは立体異性体の混合物である。別の実施形態では、上記免疫調節化合物は、以下の構造を有し、
【0111】
【化2】

【0112】
式中、XおよびYの一方はC=Oであり、もう一方はCHまたはC=Oであり、
は、水素、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロシクロアルキル、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロアリール、C(O)R、C(S)R、C(O)OR、(C−C)アルキル−N(R、(C−C)アルキル−OR、(C−C)アルキル−C(O)OR、C(O)NHR、C(S)NHR、C(O)NR’、C(S)NR’、または(C−C)アルキル−O(CO)Rであり、
は、H、F、ベンジル、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、または(C−C)アルキニルであり、
およびR’は独立して、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロシクロアルキル、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロアリール、(C−C)アルキル−N(R、(C−C)アルキル−OR、(C−C)アルキル−C(O)OR、(C−C)アルキル−O(CO)R、またはC(O)ORであり、
は、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、(C−C)アルキル−OR、ベンジル、アリール、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロシクロアルキル、または(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロアリールであり、
は、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ベンジル、アリール、または(C−C)ヘテロアリールであり、
それぞれに存在するRは独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C−C)ヘテロアリール、もしくは(C−C)アルキル−C(O)ORであるか、または、上記R基はヘテロシクロアルキル基を形成していてもよく、
nは0または1であり、
*は不斉炭素中心を表す、化合物、
または、それらの薬学的に許容可能な塩、水和物、溶媒和物、クラスレート、光学異性体、ジアステレオマー、ラセミ化合物、もしくは立体異性体の混合物である。別の実施形態では、上記免疫調節化合物は、以下の構造を有し、
【0113】
【化3】

【0114】
式中、XおよびYの一方はC=Oであり、もう一方はCHまたはC=Oであり、
Rは、HまたはCHOCOR’であり、
(i)R、R、R、またはRのそれぞれは、他とは独立して、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、もしくは炭素原子数1〜4のアルコキシであるか、または(ii)R、R、R、またはRのうちの一つがニトロ、もしくは−NHRであり、残りのR、R、R、またはRが水素であり、
は、水素、または炭素原子数1〜8のアルキルであり、
は、水素、炭素原子数1〜8のアルキル、ベンゾ、クロロ、またはフルオロであり、
R’は、R−CHR10−N(R)であり、
は、m−フェニレンもしくはp−フェニレン、または−(C2n)−であって、nは0〜4の値であり、
およびRのそれぞれは、他方とは独立して、水素、もしくは炭素原子数1〜8のアルキルであるか、または、RおよびRはともに、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、または−CHCHCHCH−であって、Xは−O−、−S−、または−NH−であり、
10は、水素、炭素原子数8までのアルキル、またはフェニルであり、
*は不斉炭素中心を表す、化合物、
または、それらの薬学的に許容可能な塩、水和物、溶媒和物、クラスレート、光学異性体、ジアステレオマー、ラセミ化合物、もしくは立体異性体の混合物である。
【0115】
特定の実施形態では、造血細胞の増殖は、20%BITS(BSA、組み換えヒトインスリンおよびトランスフェリン)、SCF、Flt−3リガンド、IL−3、4−(アミノ)−2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−イソインドリン−1,3−ジオン(0.05%DMSO中で10μM)が追加されたIMDM中で行われる。さらに特定の実施形態では、約5×10個の造血細胞(例えばCD34細胞)は、培地中で、約5×1010個〜約5×1012個に増殖し、増殖された造血細胞集団を生産するために、100mLのIMDM中に再び懸濁される。増殖された造血細胞集団は、好ましくは輸送を容易にするために低温保存される。
【0116】
上述した方法および培地による赤血球の生産は、好ましくは、バイオリアクター(例えば本明細書中のあらゆる箇所で実証されているバイオリアクター)の中で行われる。
【0117】
種々の特定の実施形態では、造血細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%は、赤血球および/または多染赤血球に分化する。
【0118】
一実施形態では、造血細胞(例えば上述の増殖された造血細胞)の分化を、免疫調節化合物(例えば上述したTNF−α阻害化合物)と接した状態で、当該細胞を培養することで、達成してもよい。当該細胞は、免疫調節化合物と接していない同数の造血細胞と比べて、与えられた時間内の造血細胞の増殖が検出可能な程度で増加するために十分な時間および量で、免疫調節化合物と接する。例えば、米国特許出願公報第2003/0235909号を参照されたい。当該開示の内容は全て参照によって本明細書中に引用されるものとする。
【0119】
ある実施形態では、上記造血細胞の増殖および分化の方法は、本明細書で記載されるように、増殖および分化の間に、1ミリリットルあたり約2×10個から約2×10個の間で細胞が維持されるように上記造血細胞を含む細胞集団を維持する工程を含む。ある他の実施形態では、上記造血細胞の増殖および分化の方法は、本明細書で記載されるように、1ミリリットルあたり約1×10個以下の細胞が維持されるように上記造血細胞を含む細胞集団を維持する工程を含む。
【0120】
上記造血細胞から赤血球への分化は、例えばフローサイトメトリーによって、赤血球特異的マーカーを検出することで、評価することができる。赤血球特異的マーカーは、限定されるものではないが、CD36およびグリコフォリンAが挙げられる。分化は、顕微鏡下での細胞の目視検査によって評価してもよい。典型的な両凹面(biconcave)の細胞の存在によって、赤血球の存在を確認できる。赤血球(網状赤血球を含む)の存在は、Hoechst 33342、TO−PRO(登録商標)−3、DRAG5等の、デオキシリボ核酸(DNA)の染色によって確認できる。赤血球の有核前駆体は、DNA検出染色で一般的に陽性であるが、一方、赤血球および網状赤血球は、一般的に陰性である。造血細胞から赤血球への分化は、分化の間の、トランスフェリン受容体(CD71)の発現、および/または色素レーザースチリル染色の進行的消失によって評価することもできる。例えば、Bessis M and Mohandas N, “A Diffractometric Method for the Measurement of Cellular Deformability,” Blood Cells 1:307(1975);Mohandas N. et al., “Analysis of Factors Regulating Erythrocyte Deformability,” J. Clin. Invest. 66:563(1980);Groner W et al., “New Optical Technique for Measuring Erythrocyte Deformability with the Ektacytometer,” Clin. Chem. 26:1435(1980)を参照されたい。十分に分化した赤血球は、約80〜約108fL(フェムトリットル)の平均赤血球容積(MCV)、約17〜約31pgの平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、および約23%〜約36%の平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)を有する。
【0121】
造血細胞から赤血球への分化に要する時間は、約3日から約120日である。一実施形態では、上記分化時間は、約7日〜約35日である。別の実施形態では、上記分化時間は、約14日〜約28日である。
【0122】
<5.3.前駆体からの赤血球の分離>
上述した方法によって生産された赤血球は、好ましくは、造血細胞から分離され、ある実施形態では、赤血球の前駆体から分離される。上記分離は、例えば、CD36および/またはグリコフォリンAに対する抗体を用いることで、達成することができる。分離は、既知の方法によって達成してもよく、例えば、抗体を介した磁気ビーズ分離、蛍光活性化セルソーティング、CD36および/またはグリコフォリンAに対する抗体を含む表面またはカラムに対する細胞の通過等が挙げられる。別の実施形態では、赤血球を含む培地から酸素を除去し、続いて脱酸素された赤血球を他の細胞から磁気分離することで、赤血球の分離を達成する。
【0123】
赤血球は、細胞集団(例えば上述したような二番目の増殖された造血細胞集団)から継続的に分離することができ、または、周期的に分離することができる。ある実施形態では、例えば、赤血球の単離は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、もしくは60分ごと、または、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24時間ごと、またはそれ以上、または例えば、特定の細胞密度での培養の達成;1ミリリットルあたりの特定の細胞数が、ある赤血球マーカー(例えばCD36、もしくはグリコフォリンA)を発現する培養の達成等、1つ以上の培養条件が満たされた場合に、行われる。細胞集団からの赤血球の分離は、好ましくは、後述するようなバイオリアクターを用いて行われる。
【0124】
<5.4.バイオリアクターによる赤血球の生産>
赤血球の生産方法の別の側面では、造血細胞は、支持細胞の存在しないバイオリアクター中で増殖および分化する。造血細胞が分化するバイオリアクターは、造血細胞が増殖するバイオリアクターと同じであってもよいし、または別のバイオリアクターでもよい。別の実施形態では、上記バイオリアクターは、造血細胞の増殖を完全にバイオリアクター中で促進するように構築される。別の実施形態では、上記バイオリアクターは、支持細胞を用いずに造血細胞の増殖を行えるように構築される。
【0125】
別の実施形態では、上記バイオリアクターは、培地中における細胞の継続的な流れを実現し、分化した赤血球をバイオリアクター中の残りの細胞から継続的に分離することを可能にするように構築される。上記継続的な流れおよび細胞の分離によって、上記バイオリアクターを、赤血球を生産するバッチ法を用いるバイオリアクターと比べて、大幅に小さい体積で構築することができる。別の実施形態では、上記バイオリアクターは、培地中の細胞の、周期的な流れ(例えば断続的な流れ)を実現し、分化した赤血球をバイオリアクター中の残りの細胞から周期的に分離することを可能にするように構築される。上記周期的な流れおよび細胞の分離によって、上記バイオリアクターを、赤血球を生産するバッチ法を用いるバイオリアクターと比べて、大幅に小さい体積で構築することが好ましい。特定の実施形態では、赤血球の単離は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、もしくは60分ごと、または、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24時間ごと、またはそれ以上で行われる。別の特定の実施形態では、例えば、特定の細胞密度での培養の達成;1ミリリットルあたりの特定の細胞数が、ある赤血球マーカー(例えばCD36、もしくはグリコフォリンA)を発現する培養の達成等、1つ以上の培養条件が満たされた場合に、赤血球の単離が行われる。
【0126】
ある実施形態では、上記バイオリアクターは使い捨てである。
【0127】
一実施形態では、上記バイオリアクターは、培養部材および細胞分離部材を備える。別の実施形態では、上記バイオリアクターは、培地ガス供給部材を備える。別の実施形態では、上記バイオリアクターは、一つ以上の生物活性化合物を含む細胞因子部材を備える。別の実施形態では、上記バイオリアクターの部材は、モジュール式であり、例えば、お互いから分離することができ、および/または、独立して使用できる。一実施形態では、上記バイオリアクターの容量は、約100mL、200mL、300mL、400mL、500mL、600mL、700mL、800mL、もしくは約900mL、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、もしくは50リットルである。別の実施形態では、上記バイオリアクターは、全ての部品を含むと、約47立方フィート以下である。別の実施形態では、上記バイオリアクターは、例えば造血細胞を、約1010個、1011個、または約1012個、培養することができる。
【0128】
一実施形態では、上記培養部材は、培地(例えば造血細胞を培養する培地)を受容することができる区画を備える。上記培養部材は、培養のために、培地および/または造血細胞を導入することができるポートを備える。上記ポートは、上記装置のための、技術的に許容可能なポートであれば、いかなるポートであってもよく、例えばルアーロックシールポートが挙げられる。また、上記培養部材は、培地を上記細胞分離部材へと通すために一つ以上のポートを備える。上記培養部材は、任意でさらに、生物活性化合物を上記培養部材の内部に導入するためのポートを備えており、当該ポートには、例えば、上記細胞因子部材と上記培養部材との接続を容易にするポートが挙げられる。特定の実施形態では、分化している造血細胞を含む、上記培養部材中の造血細胞は、赤血球、および/または網状赤血球、および/または他の赤血球前駆体を単離するために、細胞分離部材(下記参照)へと培地中で継続的に循環される。
【0129】
上記培養部材は、特定の実施形態では、複数の内部表面または内部構造を備え、当該内部表面または内部構造には、例えば、チューブ、シリンダー、中空糸、多孔性物質等が挙げられる。上記表面は、細胞の培養に好適なあらゆる材料から構築することができ、当該材料には、例えば、組織培養プラスチック、可塑医薬品グレードプラスチック、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸共重合体(PLGA)、ポリウレタン、ポリヒドロキシエチルメタクリル樹脂等が挙げられる。中空糸は、一般的に直径約10μm〜約1000μmであり、一般的に、約5kDa、10kDa、15kDa、20kDa、30kDa、40kDa、50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、90kDa、100kDa、125kDa、150kDa、175kDa、200kDa、150kDa、300kDa、350kDa、400kDa、450kDa、または500kDa以下の分子を通過させることができる孔を備える。
【0130】
上記細胞分離部材は、上記培養部材から、細胞を含む培地を受容するために、少なくとも一つのポートを備える。上記細胞分離部材は、少なくとも一つの種類の細胞(例えば赤血球)を、上記培養部材由来の培地中の細胞から分離することを容易にする、または可能にする、一つ以上の部品を備える。当該分離は、例えば、CD36および/またはグリコフォリンAに対する抗体を用いることで達成される。分離は、既知の方法によって達成してもよく、例えば、抗体を介した磁気ビーズ分離、蛍光活性化セルソーティング、CD36および/またはグリコフォリンAに対する抗体を含む表面またはカラムに対する細胞のパッセージ等が挙げられる。分離は、細胞サイズまたは細胞密度に基づいて達成してもよい。特定の実施形態では、上記細胞分離部材は、上記細胞培養部材と接続されており、培地は造血細胞を含み、分化している造血細胞および赤血球は、細胞(例えば赤血球)を上記培地から継続的に取り除くために、上記細胞分離部材を継続的に通過する。
【0131】
別の実施形態では、赤血球の分離は、赤血球を含む培地から酸素を除去し、続いて磁気を用いて、脱酸素された赤血球を、例えば採集物の表面または他の部分へ引き寄せることで、達成される。
【0132】
別の実施形態では、上記バイオリアクターは、細胞分離部材を備える。上記細胞分離部材は、培地中の赤血球から、一つ以上の非赤血球系細胞(例えば、未分化の、または、分化が終わっていない造血細胞)を分離することができる部品を備えていてもよい。ある実施形態では、上記細胞分離部材は、生産された赤血球のおよその数を計算することができるか、または、ユーザーが事前に設定したパラメータに従って、あるユニットを構成するために十分な数の赤血球が生産されたことをユーザーに知らせることができる。
【0133】
上記バイオリアクターは、別の実施形態では、さらに、培地環境に適切なガスを供給するガス供給部材を備え、例えば、当該ガス供給部材は、上記培地を、80%の空気と15%のOと5%のCOとの混合物、または、空気中の5%のCO等に接触させる。別の実施形態では、上記バイオリアクターは、上記培地、上記バイオリアクター、またはその両方を、一定の温度(例えば、約35℃〜約39℃、または約37℃)に維持する、温度部材を備える。別の実施形態では、上記バイオリアクターは、上記培地を、一定のpH(例えば約pH7.2〜pH7.6、または約pH7.4)に維持する、pHモニタリング部材を備える。特定の実施形態では、上記温度部材および/またはpHモニタリング部材は、温度および/またはpHが、設定されたパラメータを超えるか、または設定されたパラメータ以下になったときに作動する警報装置を備える。他の特定の実施形態では、上記温度部材および/またはpHモニタリング部材は、ある範囲から外れた温度および/またはpHを補正することができる。
【0134】
特定の実施形態では、上記バイオリアクターが、細胞分離部材、および上記培養環境にガスを供給するガス供給部材を備えることによって、上記ガス供給部材が、赤血球の部分的または完全な脱酸素化を可能にし、赤血球に含まれるヘモグロビンの磁気的特性に基づいた赤血球の分離を可能にする。さらに特定の側面では、上記バイオリアクターは、当該バイオリアクター中で生産された赤血球を規則的に、または、繰り返し脱酸素化することができる部材を備え、上記赤血球の磁気的採集を容易にする。
【0135】
別の実施形態では、上記バイオリアクターの機能は自動化され、例えば、コンピューターで制御される。上記コンピューターは例えば、デスクトップパーソナルコンピューター、ラップトップコンピューター、Handspring、PALM(登録商標)、または同様の手持ちサイズの装置、ミニコンピューター、メインフレームコンピューター等であってもよい。
【0136】
<5.5.造血細胞から生産される赤血球のユニット>
上記のように詳細に説明した方法に従って生産された赤血球のユニットは、あらゆる利用しやすい数の遺伝的背景、または遺伝的背景の組み合わせを含んでいてもよい。
【0137】
種々の実施形態では、本明細書で提供される方法によって生産された赤血球のユニットは、少なくとも、多くとも、または約1×10、5×10、1×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011、1×1012個の赤血球である。種々の他の実施形態では、上記赤血球のユニットは、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、または99%の完全に分化した赤血球を含む。種々の他の実施形態では、上記赤血球のユニットは、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%、または1%より少ない、あらゆる種類の赤血球前駆体を含む。ある実施形態では、本明細書で提供される方法によって生産された赤血球のユニットは、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約14%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%より少ない、網状赤血球、または他の非赤血球系造血細胞を含む。別の実施形態では、上記ユニットは、単一の個体に由来する造血細胞に由来する赤血球を含む。別の実施形態では、上記ユニットは、複数の個体に由来する造血細胞から分化した赤血球を含む。別の実施形態では、上記ユニットは、調和したヒト胎盤灌流液および臍帯血に由来する造血細胞に由来する赤血球を含む。別の実施形態では、赤血球のユニット中の赤血球のほぼ全て(例えば99%を超える)は、O型である。別の実施形態では、赤血球のユニット中の赤血球のほぼ全て(例えば99%を超える)は、A型である。別の実施形態では、赤血球のユニット中の赤血球のほぼ全て(例えば99%を超える)は、B型である。別の実施形態では、赤血球のユニット中の赤血球のほぼ全て(例えば99%を超える)は、AB型である。別の実施形態では、赤血球のユニット中の赤血球のほぼ全て(例えば99%を超える)は、Rh陽性である。別の実施形態では、赤血球のユニット中の赤血球のほぼ全て(例えば99%を超える)は、Rh陰性である。
【0138】
天然に存在する赤血球は、血液が毛細血管を流れることを可能にする、ある特性を有している。例えば、凝集体中の赤血球は、非ニュートン流動を示し、例えば、血液の粘性は、せん断速度に大きく依存する。通常の赤血球は、変形しやすく、凝集体/連銭を形成する。赤血球の変形能は、血液中の寿命(約100〜120日)に関連していると考えられ、血液からの赤血球の除去には、変形能の喪失が関連していると考えられる。赤血球の通常の凝集能は、毛細血管における細胞の流れを容易にするが、一方、異常に増加または減少した凝集能は、流れを低減させる。従って、好ましい実施形態では、本明細書で開示される方法によって生産された赤血球のユニットは、品質管理の一部として、例えば、天然由来の赤血球の一つ以上の特性について、分析される。ある実施形態では、本明細書で開示される方法によって生産された赤血球のサンプルを、天然または人工の血漿中に懸濁し、粘性、粘弾性、緩和時間、変形能、凝集能、血液/赤血球懸濁液降伏応力、および機械的脆弱性について、通常の血液または通常の赤血球をコントロールまたはコンパレーター(comparator)として用いて測定する。ある他の実施形態では、酸素運搬容量および酸素放出容量について、本明細書で開示される方法によって生産された赤血球のサンプルを、通常の血液または同数の天然の赤血球をコントロールとして分析する。
【0139】
〔6.実施例〕
<6.1.実施例1:ヒト胎盤灌流液(HPP)および臍帯血(UCB)由来のCD34細胞の特性>
臍帯血(UCB)を、インフォームドコンセントの下で、分娩後の胎盤から除去した。その後、放血した胎盤を灌流し、HPPを得た。当該方法は、米国特許第7,045,148号に記載されており、開示の内容は全て参照によって本明細書中に引用されるものとする。赤血球(RCB)を除去した後、全有核細胞(TNC)を採集し、凍結した。UCBから単離されるTNCが約5億個であるのに対し、当該方法によれば、一般的には、約1〜2.5×10個のTNCが採集できる。
【0140】
放血した胎盤から単離されたTNCのフローサイトメトリー分析によって、従来の臍帯血(UCB)から得られた細胞産物に比べ、高い割合のCD34細胞集団が示される。UCB中のTNCでは、約0.3%〜1%のCD34細胞を含むのに対し、上記の方法で採集した、HPP由来のTNCは、約2%〜6%のCD34細胞を含む。
【0141】
HPPから単離されたTNCのフローサイトメトリー分析によって、高い割合のCD34細胞集団は、CD45であることが示される(図1)。
【0142】
HPP由来のCD34細胞をコロニー形成ユニットアッセイによって培養し、赤芽球コロニー形成細胞(CFU−E)に対する赤芽球バースト形成細胞(BFU−E)の割合(%)を、顆粒球マクロファージコロニー形成細胞(CFU−GM)、および顆粒球、赤血球、単球コロニー形成細胞(CFU−GEMM)とともに測定した(表1)。また、コロニー形成能についても評価した(表1)。
【0143】
【表1】

【0144】
コロニー形成ユニットアッセイは、製造者のプロトコルに従って行った(StemCell Technologies,Inc.)。端的に言えば、幹細胞因子(SCF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン6(IL−6)、およびエリスロポエチン(Epo)を追加したメチルセルロース培地に、プレートあたり細胞100個、300個、および1000個で、CD34細胞懸濁液を加えた。それぞれの細胞密度において、3反復のアッセイを行い、その後、2〜3週間培養した。コロニーの評価および計数は、光学顕微鏡を用いて行った。
【0145】
別の実験では、HPPおよびUCB由来のCD34細胞に対する(BFU−E)/(CFU−E)の割合は、それぞれ46%および30%であった(3人のドナーに対する平均値に基づいている)。
【0146】
これらの結果は、UCB由来の幹細胞に比べて、HPP由来の幹細胞は、赤血球生成活性が増加した、多数のCD34細胞を含むことを示唆している。
【0147】
<6.2.実施例2:造血幹細胞(HSC)の回収>
HPPおよびUCB由来の細胞は、一般的に、全有核細胞(TNC)を得るために、フィコール、ヘタスターチ、または塩化アンモニウムのいずれかを用いて、実施例1に記載したように精製される。その後、TNCを用いて、CD34細胞を単離するための正の選択処理を行った。当該処理には、製造者(StemCell Technologies,Inc.)によって提供されるプロトコルに従って、抗CD34ビーズおよびRobosepを用いた。当該実験では、CD34細胞が、90%を超える精製度で単離された(図2)。また、EASYSEP(登録商標)Human Progenitor Cell Enrichment Kit(StemCell Technologies,Inc.)を用いて、負の選択処理を行い、Human Progenitor Cell Enrichment Cocktailをモノクローナル抗体とともに用いて、系列決定済みの細胞を除去した。上記モノクローナル抗体は以下のヒト細胞表面抗原に対する抗体である:CD2、CD3、CD11b、CD11c、CD14、CD16、CD19、CD24、CD56、CD66bおよび/またはグリコフォリンA。負の選択工程を利用して、90%のCD34細胞を原料から回収した。回収したHSCの細胞組成を、表2に要約する。
【0148】
単離されたCD34細胞のコロニー形成ユニットアッセイによって、負の選択をされたHSCのコロニー形成頻度は、正の選択をされたHSCと同程度であり、負の選択をされたHSCのBFU−E形成頻度は、正の選択されたHSCの形成頻度より高いことが示された。
【0149】
【表2】

【0150】
<6.3.実施例3:CD34造血細胞集団の増殖>
ヒト臍帯血(UCB)ユニットにおけるCD34細胞の含有量は、多くの場合、成人患者に対して造血細胞の移植を行うには十分ではない。UCB由来のCD34細胞のex−vivoでの増殖は、上記のCD34細胞の投与の制限を克服するための一つのアプローチである。本実施例では、特定の免疫調節薬剤、4−(アミノ)−2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−イソインドリン−1,3−ジオン(本実施例では、ポマリドマイドと呼ぶ)を用いたCD34細胞の増殖について、実証する。
【0151】
短期間の無血清サイトカイン追加培養系において、ポマリドマイド(pomalidomide)がヒトUCB由来CD34細胞の増殖を促進する能力を評価した。CD34前駆細胞を、低温保存したUSBユニットから90%を超える精製度で濃縮し、SCF(50ng/mL)、Flt−3リガンド(50ng/mL)、およびIL−3(10ng/mL)の存在下で、1mLの培地中に播種した(104個のCD34細胞)。当該培地は、IMDMおよび代替血清BIT(BSA、組み換えヒトインスリン、およびトランスフェリン、20%)を含む。ポマリドマイドは、DMSO中に溶解させ、2.7μg/mLで追加した。上記培養物を37℃、5%COで12日間培養し、7日目に新鮮な培地を加えた。DMSO(0.05%v/v)とポマリドマイドとを含む培養物、および、DMSOを含まず、かつポマリドマイドを含まない培養物、をコントロールとして用いた。
【0152】
一実施形態では、ポマリドマイドの追加によって、全有核細胞の増殖に影響を与えることなく、増殖した集団中でのCD34の発現を大幅に高めることができた(200〜350倍)。CD34の表現型は、コントロールでは10〜30%であったのに比べて、ポマリドマイドを加えて増殖した集団中では、40〜60%であった。さらに、ポマリドマイドは、培養細胞におけるCD38の発現を抑制すると考えられた。ポマリドマイドを加えて増殖したCD34細胞は、主にCD38に対して陰性であり(95%)、CD133を低レベルで発現した(コントロールで40%であったのに対し、15%)。ポマリドマイドを加えて増殖したCD34細胞は、増殖したコントロールと比較して、累積コロニー形成ユニットにおいて十分な改善が見られることが証明された。別の同様な実験では、ポマリドマイドの追加によって、全有核細胞の増殖に影響を与えることなく、増殖した集団中でのCD34の発現を大幅に高めることが確かめられた。(200〜350倍)。CD34の表現型は、コントロールでは10〜30%であったのに比べて、ポマリドマイドを加えて増殖した集団中では、40〜60%であった(図3)。さらに、ポマリドマイドは、培養細胞におけるCD38の発現を抑制すると考えられた。ポマリドマイドを加えて増殖したCD34細胞は、主にCD38に対して陰性であり(97%)、CD133を低レベルで発現した(コントロールで32.3%であったのに対し、11.5%)。ポマリドマイドを加えて増殖したCD34細胞は、増殖したコントロールと比較して、累積コロニー形成ユニットにおいて十分な改善が見られることが証明された。
【0153】
より多くのCD34細胞の生産を実証するため、ポマリドマイドに基づくCD34細胞の増殖工程の規模を拡大した。CD34細胞を、柔軟性を有するガス透過性のフルオロカーボン培養バッグ(例えば、American Fluoroseal製)中で、10/mLのポマリドマイド追加培地中に播種した。7日間培養した後、当該培養物を遠心分離し、当初の体積になるように未使用のポマリドマイド追加培地と3回交換した。12日目までのTNCおよびCD34の増殖は、それぞれ350倍(幅:250〜700)および200倍(幅:100〜450)であった(図4)。トリパンブルーによって評価した生存率は86%(幅:80〜90%)であった。全部で2000万個のCD34細胞を採集した。これらの結果から、ポマリドマイドは、胎盤由来のCD34前駆体のex−vivoでの増殖を大幅に促進すること、および、上記工程により、赤血球の分化に十分な量のCD34細胞を生産できることが証明された。
【0154】
<6.4.実施例4:支持細胞を用いない造血幹細胞の増殖および造血幹細胞の赤血球への分化>
本実施例では、SCF、IL−3、およびEpoを含み、Fms様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT−3L)、トロンボポエチン(Tpo)、およびIL−11を含まない培地を用いた、造血幹細胞または前駆細胞の継続的な増殖、および造血幹細胞または前駆細胞の赤血球への継続的な分化について実証する。
【0155】
CD34臍帯血細胞を、下記の組成の培地中で培養し、細胞のアリコート(aliquots)を、細胞計数、細胞生存率、および赤血球分化の評価に用いた。
【0156】
C培地:1%脱イオンBSA(Cat# A4919, Sigma)、120μg/mLの鉄飽和ヒトトランスフェリン(Cat# T0665, Sigma)、900ng/mLの硫酸鉄(Cat# F8048, Sigma)、90ng/mLの硝酸酸化鉄(Cat# F8508, Sigma)および10μg/mLのインスリン(Cat# I0908, Sigma)、100ng/mLのSCF、1μMのヒドロコルチゾン(Cat# H0135, Sigma)、5ng/mLのIL−3、および3IU/mLのEpo(Cat# 287−TC, R&D System)を追加したIMDM培地。
【0157】
E1培地:2IU/mLのEpo、1μMの合成糖質コルチコイドデキサメタゾン(Dex Cat# D4902, Sigma, St Louis, MO)、40ng/mLのインスリン様増殖因子1(IGF−1 Cat# 291−G1−250, R&D System,Minneapolis, MN)、100ng/mLのSCF、および40μg/mLの脂質(コレステロールに富んだ脂質混合物、Cat# C7305−1G, Sigma, St Louis, MO)を追加した無血清培地(STEMSPAN(登録商標)、Cat# 09650,Stem Cell Technologies, Vancouver,Canada)。
【0158】
E2培地:2IU/mLのEpo、1μMのヒドロコルチゾン、40ng/mLのIGF−1、100ng/mLのSCF、および40μg/mLの脂質を追加した無血清培地STEMSPAN(登録商標)。
【0159】
E3培地:3IU/mLのEpo、1μMのDex、40ng/mLのIGF−1、100ng/mLのSCF、5ng/mLのIL−3、および40μg/mLの脂質を追加した無血清培地STEMSPAN(登録商標)。
【0160】
E4培地:3IU/mLのEpo、1μMのヒドロコルチゾン、40ng/mLのIGF−1、100ng/mLのSCF、5ng/mLのIL−3、および40μg/mLの脂質を追加した無血清培地STEMSPAN(登録商標)。
【0161】
図5は、培地組成CおよびE1における、21日目の細胞増殖を示す。要約すると、C培地における細胞増殖のレベルは、最高2.5×10倍であり、平均7.0×10倍であった(n=13)。また、C培地におけるCD235A細胞のレベルは、最高37.6%であり、除核のレベルは、最高28.1%であった。E培地における細胞増殖のレベルは、最高2.6×10倍であり、平均1.0×10倍であった(n=10)。また、E培地におけるCD235A細胞のレベルは、最高92.9%であり、除核のレベルは、最高48.2%であった。C培地およびE培地において増殖した細胞は、全て90%を超える生存率を示した。E1培地において増殖した細胞は、CD235A細胞および除核細胞の高い割合で示されるように、最も大幅な赤血球の分化を示した。
【0162】
三つのさらなる培地組成E2、E3、およびE4における細胞増殖を調べた(図6)。培養物が21日目に達し、さらに28日目に達した時、E1培地およびE2培地中の細胞は、増殖安定期(growth plateau)を示しており、一方、E3培地およびE4培地においては、大幅な細胞増殖が見られた。21日間培養した細胞について、免疫表現型の特性、FACSに基づいた、除核(TO−PRO−3、Cat# T3605、Invitrogen)、並びに、胎児型ヘモグロビン(HbF−PE、Cat# 560041、BD Biosciences)および成体型ヘモグロビン(HbA−FITC、Cat# sc−21757、Santa Cruz)の生産の分析を行った(表3)。
表3A、3B。21日間培養された細胞の特性。(A)免疫表現型の特性、(B)除核、HbFおよびHbAの特性。標準偏差は3人のドナーの母集団平均に対して計算された。
【0163】
【表3】

【0164】
【表4】

【0165】
さらに、HSCマーカー(CD34、CD117、およびCD133を含む)および赤血球マーカー(CD235A、CD36、およびCD71を含む)のFACS分析を、E3培地中の培養物において連続的な時間間隔で、培養物のアリコートを用いて行った。赤血球の系列決定は、7日目までに、CD117およびCD133細胞集団とともに、CD34細胞集団における未熟な前駆体マーカーの発現が減少し、一方、増殖した細胞の56%はCD235Aであったことから、明らかになった。続く最終分化は、7日目、14日目、21日目および28日目を通してのCD235Aの発現の継続的な増加、特に14日目と21日目との間における除核細胞の存在の増加、並びに、7日目、14日目、21日目および28日目を通してのHbFおよびHbAの両方の生産の増加によって、実証された。21日目の培養物において、増殖した細胞の50%近くが除核されており、80%がHbF、30%がHbAであった。
【0166】
正の選択処理および負の選択処理によって単離された細胞について、B培地における増殖性および分化を調べた(表4)。正の選択を受けた細胞は、2.2×10±2.0×10の平均増殖倍率を示し、CD235細胞の割合は、32.2%±14.8%であり、除核細胞の割合は23.9%±7%であった。負の選択を受けた細胞は、4.0×10±3.8×10の平均増殖倍率を示し、CD235細胞の割合は、40.9%±11.0%であり、除核細胞の割合は19.1%±4.8%であった。上記の結果に基づくと、正の選択処理および負の選択処理に由来する細胞間では、増殖倍率および分化について大きな差異は観察されなかった。
【0167】
【表5】

【0168】
<6.5.実施例5:HSCの増殖における細胞密度の効果>
HSCは、実施例1に記載したように、臍帯血から得た。HSCの培養は、実施例4に記載したように、濃縮したCB由来のHSCを含むE3培地を培養することによって開始した。3〜4日ごとに、培養細胞について、細胞計数および特性付けを行った。その後、培養細胞を、新鮮な培地を用いて、所望の密度になるまで希釈した。
【0169】
6段階の細胞密度について、E3培地中での26日間の培養を通した細胞増殖への効果を調べた(図7および表5)。2〜5×10個/mLの範囲で維持された細胞は、最も大幅な増殖を示した。5×10個/mLを超える値で保たれた細胞は、緩やかな増殖を示した。
【0170】
【表6】

【0171】
<6.6.実施例6:増殖および赤血球への分化における、胎盤および骨髄に由来するCD34細胞>
本実施例では、E3培地中で、CB由来のCD34細胞と骨髄(BM)由来のCD34細胞との間の、細胞増殖および分化ポテンシャルの比較を行った。実施例1に記載されているように、BMまたはCBの3ユニットに由来する細胞を、評価実験に用いた。CB由来のCD34細胞は、BM由来のCD34細胞に比べて、高い増殖ポテンシャルを示したが(図8)、一方、分化ポテンシャルは同等であった(表6A)。成体型ヘモグロビン(HbA)および胎児型ヘモグロビン(HbF)を含む細胞の割合を表6Bに示す(ヘモグロビンを含む細胞の総数と比較した)。
表6A、6B。BM由来のCD34細胞とCB由来のCD34細胞における分化ポテンシャルの比較。標準偏差は3人のドナーの母集団平均に対して計算された。
【0172】
【表7】

【0173】
【表8】

【0174】
<6.7.実施例7:長期にわたる増殖および赤血球への分化>
本実験では、E3培地(上述の実施例4参照)、並びに、単一のドナーおよび混合ドナーに由来するCD34細胞を用いて、長期にわたる細胞増殖を行った。高いRBC成熟効率を伴う、最高63日間にわたる継続した細胞増殖が実証された(図9)。63日目には、混合ドナー細胞では1×10倍の増殖、単一ドナー細胞では1.8×10倍の増殖が、それぞれ観察され、単一ドナーでは、77%のCD235A、および56%の除核が達成された(表7)。
【0175】
【表9】

【0176】
図10は、単一ドナーに由来する長期の培養物におけるHbFおよびHbAの生産のELISA分析を、末梢血(PB)RBCにおけるHbFおよびHbAの生産と比較して示している。本実験では、示された時点において採集された2×10個の細胞を、PBSで洗浄し、2500 × gで10分間、スピンさせた。細胞の沈殿物を、100LM−PER Mammalian Protein Extraction Reagent(Cat# 78501、Thermo Scientific)を用いて溶解させ、混合物を10分間穏やかに混合し、続いて、14,000 × gで15分間遠心分離させた。その後、ELISAキットを用いたヘモグロビン分析のために、上清を新しいチューブに移した。ELISAキットには、ヒトヘモグロビンELISA定量セット(Cat# E80−135)およびヒト胎児型ヘモグロビンELISA定量セット(Cat# E80−136)が含まれる。100万個のPB赤血球から245ngのHbAが生産された一方、培養細胞は、培養14日目から開始して、1.3μgHbAを生産した。
【0177】
表8は、単一ドナーに由来する長期の培養物における、いくつかの遺伝子の定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)分析を示している。細胞のアリコートを様々な時点で採集し、qRT−PCR分析を行った。qRT−PCR分析には、7900HT Fast Real−Time PCR System(Applied Biosystems)およびTaqMan(登録商標)Gene Expression Assays of EKLF(Applied Biosystems、Cat# Hs00610592_m1)、GATA1(Applied Biosystems、Cat# Hs00231112_m1)、GATA2、HBβ(Applied Biosystems、Cat# Hs00758889_s1)、HBγ(Applied Biosystems、Cat# Hs00361131_g1)、LMO2(Applied Biosystems、Cat# Hs00277106_m1)、およびZFPM1(Applied Biosystems、Cat# Hs00419119_m1)を用いた。qRT−PCR分析の結果によって、継続的な増殖および赤血球への分化は、HBβ、HBγ、並びに、EKLF、GATA1、LMO2およびZFPM1を含む、赤血球の分化に重要ないくつかの転写因子の発現の増加と相関があることが示された。
表8。単一ドナーに由来する長期の培養物におけるqRT−PCR分析。(A)遺伝子発現の変化倍率。(B)遺伝子の説明。標準偏差は2反復の変化倍率の平均に対して計算された。
【0178】
【表10】

【0179】
【表11】

【0180】
<6.8.実施例8:E3培地の最適化>
本実施例では、HSCの増殖および赤血球への分化を改善するために、3水準(3要因:SCF、Epo、およびIL−3)全要因実験計画(3-level full factorial experiment design)を用いて、E3培地をさらに最適化した(図11)。CD34細胞を、図1で記載したように得て、E3培地には、表9に示すSCF、IL−3およびEpoを追加した。細胞計数、生存率、CD235A細胞の割合、および除核細胞の割合について、表10に示す時点で調べた。一つの組成(#7、65ng/mLのSCF、7ng/mLのIL−3、および3IU/mLのEpo)では、E3培地組成に比べて、CD235A細胞の割合の増加、および除核細胞の割合の増加が見られた。
【0181】
【表12】

【0182】
【表13】

【0183】
本研究によって、21日間の細胞増殖実験での、HSCの増殖および赤血球への分化における、SCFおよびEpoの異なる効果が特定された(図12A−12C)。Epoは、SCFが高レベルである場合、初期の増殖を増加させるように相乗的に働くが、SCFが低レベルである場合、増殖を抑制させる。SCFが低レベルである場合、Epoは、CD235Aの発現の増加に対してより効果的であり、一方、SCFが高レベルである場合、Epoは、赤血球の分化を抑制させる。
【0184】
二番目のDOE試験では、細胞播種密度のSCFおよび/またはEpoに対する相互作用を評価するために、3水準(SCF、Epo、および細胞密度)全要因実験計画を利用した(図13A)。CD34細胞を、図1で記載したように得て、E3培地には、表11に示す異なる細胞密度で、SCFおよびEpoを追加した。低Epo条件(最高3倍)、低細胞密度、および高SCF濃度において、増殖の大幅な促進(約10倍)が達成されることが実証された(図13B)。さらに、赤血球の分化は、高細胞播種密度および低SCF濃度で、改善されることが実証された(図13C)。
【0185】
【表14】

【0186】
<6.9.実施例9:赤血球のユニットを生産するための方法およびバイオリアクター>
本実施例では、赤血球の生産方法、および、成熟した赤血球のユニットの生産を可能にするバイオリアクターを提供する。特定の実施例では、バイオリアクターは、5段階の工程によって、投与可能な赤血球のユニットの生産を可能にする。最初の工程では、造血細胞(例えばCD34細胞)を単離する。二番目の工程では、CD34細胞を、免疫調節化合物(例えばポマリドマイド)を用いて、増殖させる。三番目の工程では、本明細書に例示するバイオリアクター中で、付着胎盤幹細胞との共培養で、系列決定済み細胞の除去と同時に、CD34細胞を増殖させる。四番目には、残った未分化の造血細胞を赤血球に分化させる。最後に、五番目の工程で、赤血球を単離し、投与可能なユニットに採集する。
【0187】
工程1および2、すなわち造血細胞の単離および初期の増殖は、上述の実施例3および4に記載されたように達成される。
【0188】
工程3および4は、バイオリアクターによって達成される。上記バイオリアクターは、胎盤幹細胞(2)が播種された中空糸チャンバー(1)、および培地へのガス供給のための部材(3)を備える。上記バイオリアクターは、さらに、系列決定済の造血細胞、完全に分化した赤血球、またはその両方を継続的に分離することができる、連結した細胞選別/分離部材(4)を備える。上記細胞分離部材は、例えば、磁気細胞分離または蛍光活性化セルソーティング技術を用いて、細胞を造血細胞から分離することができる。
【0189】
細胞の培養を始めるために、およそ5×10個の造血細胞(例えばCD34造血細胞)を、上記バイオリアクターに植えつける。
【0190】
<6.10.赤血球の採集>
本実施例では、赤血球を他の系列決定済み細胞から分離する、いくつかの方法を例示する。
【0191】
方法1:赤血球(例えば、本明細書で例示したバイオリアクターの細胞分離部材から採集された赤血球)およびヘタスターチ溶液をバクスター採集バッグ中で3:1(v/v)で混合し、血漿抽出器(plasma extractor)上に直立位置で配置する。赤血球は50〜70分後に堆積する。堆積していない細胞は、血漿抽出器によって強制排出する。バッグに残った堆積した赤血球を、さらに、400 × gで10分間の遠心分離によって採集する。上清を取り除いた後、赤血球を適切な量の所望の培地に再び懸濁する。
【0192】
方法2−免疫磁気的分離:グリコフォリンA細胞(例えば、本明細書で例示したバイオリアクターの細胞分離部材から採集された赤血球)を、グリコフォリンA(CD235a)マイクロビーズ(Miltenyi Biotech)によって磁気的に標識する。その後、細胞懸濁液をチューブに入れ、EASYSEP(登録商標)マグネットの磁場の中に配置する。磁気的に標識されたグリコフォリンA細胞はチューブの内側に残り、一方、標識されていない細胞は、チューブの外へ流れ出る。チューブを磁場から取り除いた後、磁気的に維持されたグリコフォリンA細胞を磁気ビーズから分離し、適切な量の所望の培地に再び懸濁することができる。
【0193】
方法3−フローサイトメトリー細胞分離:赤血球(例えば、本明細書で例示したバイオリアクターの細胞分離部材から採集された赤血球)を、1μLのFc Block(1/500)を含む500μLのPBS/FBSに加える。150μLの細胞懸濁液を、96ウェルV底ディッシュの各ウェルに加える。50μLの1°Ab Master Mix(当該混合物は、PBS/FBSにそれぞれの一次Abを1/25で希釈したものである。)を上記細胞に加える。1つのウェルには、補正を設定するための単一のポジティブコントロールとしてそれぞれの一次Abが含まれるのと同様に、電圧を設定するためのアイソタイプコントロールの組み合わせが含まれる。上記細胞を4℃で60分間培養し、その後、1500RPMで2分間遠心分離する。上清は捨てる。ウェルはそれぞれ、200μLのPBS/FBSで洗浄し、ピペットを用いて混合する。その後、上記細胞を即座に、1500RPMで2分間スピンさせ、上清を捨てる。150μLの二次Ab(すなわち、ストレプトアビジン−TC)Master Mixを加え、4℃で30分間培養し、その後、1500RPMで5分間遠心分離する。堆積物は、200〜500μLのPBS/FBSに再び懸濁し、5mLの流管に移す。その後、細胞を、フローサイトメーターを用いて分離する。
【0194】
方法4:赤血球を含む培地を、細胞培養部材と細胞分離部材との間の継続的な流れの中で、ガス供給部材からの酸素の供給を低減または停止させることによって、脱酸素化し、細胞分離部材中で磁石を作動させる。培地を、細胞分離部材を介して、十分な時間、磁石の磁場を通過させ、細胞分離部材の表面に赤血球を集める。一旦、所定の数の赤血球が集まるか、または採集が所定の時間行われれば、培地に酸素が送り込まれ、赤血球は表面から解放される。
【0195】
方法5:堆積に基づいた、赤血球の濃縮。赤血球の濃縮は、3000rpmで15分間遠心分離を行い、中断することで行うことができる。白血球(一番上の白い層)、未熟な赤血球(中間のピンクの層)、および赤血球(一番下の赤い層)を分離できる。その後、赤血球を底から採集し、適切な量の所望の培地に再び懸濁する。
【0196】
<6.11.赤血球の採集>
本実施例では、フローサイトメトリーを用いた、赤血球の採集を実証する。
【0197】
赤血球の濃縮は、FACSAriaを用いた細胞選別法によって行われる。FACSAriaを用いた細胞選別法では、光散乱を利用した細胞サイズによる赤血球の選択(前方散乱および側方散乱、図14および表12)、またはDRAQ5標識を利用した除核の選択(リニアAPCチャンネル蛍光、図15および表13)を行う。
【0198】
FACSAriaによる細胞選別の後、P1、P2およびP3によってゲート(gated)された細胞について、フローサイトメトリーによってHbA、除核、およびCD235Aの割合を評価した。最も小さい細胞サイズを示すP1細胞が、HbA、除核、およびCD235Aについて最も高い割合を示し、そのため、大部分が赤血球であった。
【0199】
【表15】

【0200】
表12では、細胞を、細胞透過性DNA相互作用試薬DRAQ5(Cell Signaling、カタログNo.#4084)によって染色し、その後、FACSAriaを用いた細胞選別を行い、Q1およびQ2によってゲートされた細胞について、フローサイトメトリーによってHbA、除核、およびCD235Aの割合を評価する。DRAQ染色では陰性であったQ1細胞は、Q2細胞に比べて、HbA、除核、およびCD235Aについて高い割合を示し、そのため、大部分が赤血球であった。
【0201】
【表16】

【0202】
表13で示したように、細胞を、細胞透過性DNA相互作用試薬DRAQ5によって染色した。FACSAriaによる細胞選別の後、QP1、P2およびQP3によってゲートされた細胞について、フローサイトメトリーによってHbA、除核、およびCD235Aの割合を評価した。DRAQ染色では陰性であり、最も小さい細胞サイズを示すQP1細胞は、Q2細胞に比べて、HbA、除核、およびCD235Aについて高い割合を示し、そのため、大部分が赤血球であった。
【0203】
<6.12.実施例11:赤血球を生産するためのバイオリアクター>
本実施例では、造血細胞からの赤血球の生産を改善することができるバイオリアクターの設計について説明する。上記バイオリアクターは、造血細胞を培養する中空糸を有する培養部材を備える。造血細胞(例えば造血前駆細胞)を、5×10個/投与量でバッグ中に追加する。上記1回の投与量は、1ユニットの血液をもたらす。上記細胞を、第一のポートを介して加えられた50ng/mLのSCF、3units/mLのEpo、50ng/mLのIGF−1を含むIMDM培地の存在下で増殖させる。造血細胞が培養されている上記培地に、2.7μg/mLのポマリドマイドを追加する。培養の間、培養部材中のガス、培地の代謝産物、および培地のpHを継続的にモニタリングし、必要に応じて、プログラム可能な制御装置を用いて、補充または交換できる。培養部材中の培地のpHはおよそ7で維持され、培養温度は約37℃で維持される。系列決定済みの細胞(例えば分化した細胞)は、細胞分離部材を用いて、培地から継続的に分離および回収される。上記バイオリアクターは、遠隔地、例えば、造血細胞を初めに得る場所から離れた場所において動作できるように、独立した電源を備えている。
【0204】
装置、組成物、および方法を含む本開示は、本明細書に記載された特定の実施形態の範囲に限定されるものではない。実際には、本明細書の記載に加えて種々の変更が可能であることが、当業者であれば上記の説明から理解できるであろう。そのような変更も、添付の特許請求の範囲内に含まれるものである。
【0205】
本明細書で引用された全ての参照文献は、個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的に、かつ個別に、全ての目的について全体が参照によって引用されるのと同じ程度に、全ての目的について全体が参照によって本明細書中に引用されるものとする。
【0206】
いずれの刊行物の引用も、出願日に先行して開示されていたためであり、先行発明を理由として、本開示が上記刊行物に先行する資格がないことを認めたと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】HPP由来のCD34/CD45およびCD34/CD45細胞のフローサイトメトリー分析。
【図2】CD34細胞のフローサイトメトリー分析。(A):単離前のCD34細胞;(B)単離後のCD34細胞。
【図3A】ポマリドマイドが追加されたIMDM培地中での細胞の増殖。全有核細胞(TNC)の増殖倍率。
【図3B】ポマリドマイドが追加されたIMDM培地中での細胞の増殖。CD34細胞の増殖倍率。
【図4A】CD34培養物の増殖能力。TNCの増殖倍率。「化合物1」はポマリドマイドである。
【図4B】CD34培養物の増殖能力。CD34細胞の増殖倍率。「化合物1」はポマリドマイドである。
【図4C】CD34培養物の増殖能力。細胞数で表したCD34細胞の増殖。「化合物1」はポマリドマイドである。
【図5】培地組成CおよびE1中での細胞増殖。
【図6】培地の最適化−E1、E2、E3およびE4。エラーバーは3人のドナーの集団平均に対して計算した標準偏差を表す。
【図7】細胞増殖における細胞密度の効果。
【図8】BM由来およびCB由来のCD34細胞の増殖ポテンシャルの比較。標準偏差は3人のドナーの集団平均に対して計算した。
【図9A】E3培地中での長期培養。(A)細胞増殖倍率。
【図9B】E3培地中での長期培養。(B)集団倍加。
【図10A】HbFおよびHbA産物のELISA分析。(A)HbF産物。標準偏差は3反復の平均に対して計算した。
【図10B】HbFおよびHbA産物のELISA分析。(B)HbA産物。標準偏差は3反復の平均に対して計算した。
【図11】SCF、EpoおよびIL−3間の相互作用を表す3水準実験計画(DOE:design of experiment)。全要因実験計画。
【図12A】SCF、EpoおよびIL−3間の相互作用を表す3水準DOE。細胞分化への要因の効果を示すキューブプロット。
【図12B】SCF、EpoおよびIL−3間の相互作用を表す3水準DOE。細胞増殖および分化におけるSCFの相互作用プロット。
【図12C】SCF、EpoおよびIL−3間の相互作用を表す3水準DOE。細胞増殖および分化におけるEpoの相互作用プロット。
【図13A】SCF、Epoおよび細胞密度間の相互作用を表す3水準DOE。細胞増殖および分化への因子の効果を示すキューブプロット。
【図13B】SCF、Epoおよび細胞密度間の相互作用を表す3水準DOE。低細胞密度、高SCF濃度(図13B)での細胞増殖および分化におけるSCFおよび細胞密度の相互作用プロット。
【図13C】SCF、Epoおよび細胞密度間の相互作用を表す3水準DOE。高細胞密度、低SCF濃度での細胞増殖および分化におけるSCFおよび細胞密度の相互作用プロット。
【図14】細胞サイズによって選別した赤血球。赤血球集団(P1)は前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)を用いて他の未熟な集団(P2およびP3)と区別できる。
【図15】DRAQ染色によって選別した赤血球。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持細胞が存在しない培地中で、1つ以上の因子と接した状態で造血細胞集団を増殖させる工程であって、当該増殖させる工程の間に、上記造血細胞集団中の複数の造血細胞が赤血球へ分化する工程と、
上記培地から上記赤血球を単離する工程と、を含む、赤血球を生産する方法であって、
上記因子は、約10〜約10,000ng/mLの濃度であるSCF、約0.01〜約500ng/mLの濃度であるIL−3、および、約0.1〜約10IU/mLの濃度であるEpoを含み、
上記SCF、IL−3およびEpoは、上記培地の定義されていない成分の中には含まれていないことを特徴とする、赤血球を生産する方法。
【請求項2】
上記培地は、Flt−3L、IL−11、トロンボポエチン(Tpo)、ホメオボックス−B4(HoxB4)またはメチルセルロースのうち、1つ以上を含まないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記SCFは、約20〜約2000ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記SCFは、約50〜約1000ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記SCFは、約100ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記IL−3は、約0.1〜約100ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記IL−3は、約1〜約50ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記IL−3は、約5ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記Epoは、約1〜約5IU/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記Epoは、約2〜約3IU/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記培地は、免疫調節化合物を含み、
上記免疫調節化合物は、上記免疫調節化合物が存在しない状態で増殖した複数の造血細胞に比べて、造血細胞の数を増加させるものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
上記造血細胞が、CD34であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
上記造血細胞が、Thy−1、CXCR4、CD133またはKDRであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上記造血細胞が、CD34CD133またはCD34CD117であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
上記造血細胞が、CD45であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
上記造血細胞が、HLA−DR、CD71、CD2、CD3、CD11b、CD11c、CD14、CD16、CD24、CD56、CD66bおよび/またはグリコフォリンAであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
上記造血細胞は、臍帯血、胎盤血、末梢血、骨髄、胚性幹細胞または誘導された多能性細胞から得られることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記造血細胞は、胎盤灌流液から得られることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
上記造血細胞は、臍帯血および胎盤灌流液から得られることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
上記胎盤灌流液は、胎盤の脈管構造のみを通る灌流液のパッセージによって得られることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
上記胎盤灌流液は、胎盤の脈管構造のみを通る灌流液のパッセージによって得られることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
上記造血細胞は、ヒトの造血細胞であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
上記培地は、さらに約1〜約1000ng/mLの濃度であるインスリン様増殖因子1(IGF−1)、および、約1〜約1000μg/mLの濃度である脂質を含み、
上記脂質は、たんぱく質とコレステロールとの混合物を含み、
上記培地は、約0.01〜約100μMの濃度であるヒドロコルチゾン、または、約0.01〜約100μMの濃度であるデキサメタゾンを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
上記IGF−1は、約10〜約500ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
上記IGF−1は、約20〜約100ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
上記脂質は、約10〜約500ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項27】
上記脂質は、約20〜約100ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項28】
上記ヒドロコルチゾンは、約0.1〜約50μMの濃度で存在することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項29】
上記ヒドロコルチゾンは、約0.5〜約10μMの濃度で存在することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項30】
上記デキサメタゾンは、約0.05〜約20μMの濃度で存在することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項31】
上記デキサメタゾンは、約0.1〜約10μMの濃度で存在することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項32】
上記培地は、約100ng/mLのSCF、約3U/mLのEpo、約40ng/mLのIGF−1、約1μMのデキサメタゾン、および40μg/mLの脂質を含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項33】
上記培地は、約100ng/mLのSCF、約2U/mLのEpo、約40ng/mLのIGF−1、約1μMのヒドロコルチゾン、および50ng/mLの脂質を含み、
上記脂質は、たんぱく質とコレステロールとの混合物を含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項34】
上記造血細胞のうちの複数は、A型、O型、AB型、O型の血液型;Rh陽性またはRh陰性;M型、N型、S型、またはs型の血液型;P1型の血液型;Lua型、Lub型、またはLu(a)型の血液型;K(Kell)型、k(cellano)型、Kpa型、Kpb型、K(a+)型、Kp(a−b−)型またはK−k−Kp(a−b−)型の血液型;Le(a−b−)型、Le(a+b−)型またはLe(a−b+)型の血液型;Fy a型、Fy b型またはFy(a−b−)型の血液型;Jk(a−b−)型、Jk(a+b−)型、Jk(a−b+)型またはJk(a+b+)型の血液型を作る能力を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項35】
上記造血細胞は、O型、Rh陽性;O型、Rh陰性;A型、Rh陽性;A型、Rh陰性;B型、Rh陽性;B型、Rh陰性;AB型、Rh陽性またはAB型、Rh陰性を作る能力を有することを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項1に記載の工程によって作られる組成物。
【請求項37】
ヘモグロビンを有する細胞の総数に対する胎児型ヘモグロビンを有する細胞の割合が約70〜約99%であるとともに、ヘモグロビンを有する細胞の総数に対する成体型ヘモグロビンを有する細胞の割合が約5〜約40%であることを特徴とする請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
約10〜約10,000ng/mLの濃度であるSCF、約0.01〜約500ng/mLの濃度であるIL−3、および約0.1〜約10IU/mLの濃度であるEpoを含む、造血細胞の成長または分化のための培地であって、
上記SCF、IL−3およびEpoは、上記培地の定義されていない成分の中に含まれていないことを特徴とする培地。
【請求項39】
上記組成物は、Flt−3L、IL−11、トロンボポエチン(Tpo)、ホメオボックス−B4(HoxB4)またはメチルセルロースのうち、1つ以上を含まないことを特徴とする請求項38に記載の培地。
【請求項40】
上記SCFは、約20〜約2000ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項38に記載の培地。
【請求項41】
上記SCFは、約50〜約1000ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項38に記載の培地。
【請求項42】
上記SCFは、約100ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項38に記載の培地。
【請求項43】
上記IL−3は、約0.1〜約100ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項38に記載の培地。
【請求項44】
上記IL−3は、約1〜約50ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項38に記載の培地。
【請求項45】
上記IL−3は、約5ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項38に記載の培地。
【請求項46】
上記Epoは、約1〜約5IU/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項38に記載の培地。
【請求項47】
上記Epoは、約2〜約3IU/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項38に記載の組成物。
【請求項48】
上記培地は、さらに約1〜約1000ng/mLの濃度であるインスリン様増殖因子1(IGF−1)、および、約1〜約1000μg/mLの濃度である脂質を含み、
上記脂質は、たんぱく質とコレステロールとの混合物を含み、
上記培地は、約0.01〜約100μMの濃度であるヒドロコルチゾン、または、約0.01〜約100μMの濃度であるデキサメタゾンを含むことを特徴とする請求項38に記載の培地。
【請求項49】
上記IGF−1は、約10〜約500ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項48に記載の培地。
【請求項50】
上記IGF−1は、約20〜約100ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項48に記載の培地。
【請求項51】
上記脂質は、約10〜約500ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項48に記載の培地。
【請求項52】
上記脂質は、約20〜約100ng/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項48に記載の組成物。
【請求項53】
上記ヒドロコルチゾンは、約0.1〜約50μMの濃度で存在することを特徴とする請求項48に記載の培地。
【請求項54】
上記ヒドロコルチゾンは、約0.5〜約10μMの濃度で存在することを特徴とする請求項48に記載の培地。
【請求項55】
上記デキサメタゾンは、約0.05〜約20μMの濃度で存在することを特徴とする請求項48に記載の培地。
【請求項56】
上記デキサメタゾンは、約0.1〜約10μMの濃度で存在することを特徴とする請求項48に記載の培地。
【請求項57】
上記培地は、約100ng/mLのSCF、約3U/mLのEpo、約40ng/mLのIGF−1、約1μMのデキサメタゾン、および40μg/mLの脂質を含むことを特徴とする請求項48に記載の培地。
【請求項58】
上記培地は、約100ng/mLのSCF、約2U/mLのEpo、約40ng/mLのIGF−1、約1μMのヒドロコルチゾン、および50ng/mLの脂質を含み、
上記脂質は、たんぱく質とコレステロールとの混合物を含むことを特徴とする請求項48に記載の培地。
【請求項59】
上記培地は、イスコフ改変ダルベッコ培地またはRPMIを含み、
さらに、1%ウシ血清アルブミン;10μg/mLの組み換えヒトインスリン;100μg/mLのヒトトランスフェリン(鉄飽和);および0.1μMの2−メルカプトエタノール;2mMのL−グルタミンが追加されていることを特徴とする請求項38に記載の培地。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−531916(P2012−531916A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518604(P2012−518604)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/040707
【国際公開番号】WO2011/002959
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(512002921)アンソロジェネシス コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】ANTHROGENESIS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】7 Powder Horn Drive,Warren,New Jersey 07059 United States of America
【Fターム(参考)】