説明

支柱の設置構造

【課題】太陽光発電装置を構成する太陽電池パネルを地上の所定高さ位置に安定して設置できる構造及び方法を提供する。
【解決手段】地上に立設される支柱11の設置構造であって、下部に複数のスリット12を備え、かつスリットの始端部分においてスリット間の帯片13が開く方向に屈曲可能とした筒状の支柱と、支柱の下部に位置して上端開口部分の周囲に上向きにつぼまる傾斜面22を形成した筒状の埋設構造体21とを備えており、所定の径の縦孔31を地面に設けて縦孔に埋設構造体を収納し、埋設構造体上端の傾斜面の上から支柱を押し込んで、支柱の下部に設けた帯片を傾斜面に沿うように押し拡げるとともに、帯片の先端を縦孔の壁面に向かって押し込んだ上、筒状の支柱の上部からコンクリートを流し込み、上端開口部分から筒状の埋設構造体、および縦孔にもコンクリートを充填するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は支柱の設置構造に関し、さらに詳しくは、太陽光発電装置用支柱の設置構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電装置が環境破壊のない代替エネルギー源として注目され、例えば、建物の屋根に設置される光景が多く見受けられるようになっている。
この太陽光発電装置を遊休地等の屋外に設置する態様としては、太陽電池パネルを地上に直接設置することが多かった。
しかしながらこの場合には、太陽電池パネルの設置領域が土地の有効利用を狭めてしまう、という不都合をもたらす。このような不都合は、例えば、特許文献1および2に示されているように、地上に支柱を立設し、当該支柱の上部に太陽電池パネルを支持させることで解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−88389号公報
【特許文献2】特開2011−108854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された太陽光発電装置は、太陽電池パネルを支持する支柱の下端部にブロックを設け、当該ブロックを地中に埋設して設置する構造となっている。
しかしながら、特許文献1記載の太陽光発電装置における設置構造は、ブロックを地中に埋設するだけの構造であって、ブロックの埋設強度自体を堅牢にする構成とはなっていない。
【0005】
また、特許文献2に記載された太陽光発電装置の設置構造及び設置方法は、支柱と、支柱の下部に位置する埋設構造体と、この埋設構造体の上部と支柱の下部とを連結する締結具とを備え、前記埋設構造体は、少なくとも外周側がコンクリートを介して地中に埋設されたものである。
したがって、支柱と埋設構造体とが別体であり、両者が連結固定具具を介して連結される構造であるため、それぞれの大きさを一体型よりも小さくでき、搬送時や設置時の取り扱いに伴う作業負担を軽減することができる。
しかしながら、外周側がコンクリートを介して地中に埋設されているとはいえ、地番との連結はコンクリートのみで行われていて安定を欠くものであり、前記埋設構造体を長くしないと安定的に地中に設置することはできない。
【0006】
[発明の目的]
この発明の目的は、太陽光発電装置を構成する太陽電池パネル等を地上の所定高さ位置に設置するにあたり、強風下においても十分な耐久性を発揮することのできる支柱の設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、この発明の支柱の設置構造は、地上に立設される支柱の設置構造であって、
下部に複数のスリットを備え、かつスリットの始端部分においてスリット間の帯片が開く方向に屈曲可能とした筒状の支柱と、該支柱の下部に位置して上端開口部分の周囲に上向きにつぼまる傾斜面を形成した筒状の埋設構造体とを備えており、
所定の径の縦孔を地面に設けて該縦孔に前記埋設構造体を収納し、前記埋設構造体上端の傾斜面の上から支柱を押し込んで、支柱の下部に設けた帯片を前記傾斜面に沿うように押し拡げるとともに、該帯片の先端を前記縦孔の壁面に向かって押し込んだ上、
前記筒状の支柱の上部からコンクリートを流し込み、前記上端開口部分から筒状の埋設構造体、および前記縦孔にもコンクリートを充填するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
この発明の支柱の設置構造において、前記筒状の支柱は、前記スリットの始端部分に該スリットの幅以上のサイズの小孔を設け、前記筒状の支柱の上部から流し込まれたコンクリートが、前記小孔から前記縦孔に流出して、縦孔内部にも容易にコンクリートが打設できるようにしたことをも特徴とするものである。
【0009】
この発明の支柱の設置構造において、前記筒状の支柱は、前記スリットの上部に適宜間隔の通孔を設け、この通孔を介して、縦孔内部にも容易にコンクリートが打設できるようにしたことをも特徴とするものである。
【0010】
この発明の支柱の設置構造において、前記埋設構造体は、底部が閉じた容器構造であり、当該埋設構造体の内部にもコンクリートが充填されることをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、筒状の支柱および筒状の埋設構造体がコンクリートを介して地中に埋設される構造であるから、支柱および埋設構造体の設置強度を高めることができるとともに、支柱の支持を安定した状態に保つことができる。
また、支柱と埋設構造体とが別体であり、両者が連結固定具具を介して連結される構造であるため、それぞれの大きさを一体型よりも小さくでき、搬送時や設置時の取り扱いに伴う作業負担を軽減することができる。
【0012】
しかも、支柱の下端にスリットを介して形成した帯片を埋設構造体の傾斜面に沿って外向きに押し拡げ、その先端が縦孔の壁面に差し込まれるようにしてあるので、支柱を縦孔に対して一体的に固定することができるようになり、非常に安定した支柱の設置構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の支柱の設置構造の1実施例を示し、組み立て方を示す説明図である。
【図2】組み立て状態を示す立面図である。
【図3】組み立て状態を示す斜視図である。
【図4】この発明の支柱の設置構造の他の実施例を示し、組み立て方を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の支柱の設置構造の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1ないし図3において、11はその上部に太陽電池パネル等の各種の機器(図示せず)を支えて地上に立設される筒状の支柱である。
該筒状の支柱11は、下部に複数のスリット12を備え、かつスリット12の始端部分においてスリット間の帯片13が開く方向に屈曲可能に構成されている。
【0016】
そして、前記筒状の支柱11は、前記スリット12の始端部分に、該スリット12の幅以上のサイズを有する好ましくは円形の小孔(拡径部)14を設けてある。
したがって、前記筒状の支柱11の上部から流し込まれたコンクリートが行き場を失っても、前記小孔14から設置面に形成した後述の縦孔31に流出して、縦孔31内部にも容易にコンクリートが打設できるようになっている。
【0017】
なお、前記筒状の支柱11には、該支柱11の上部に適宜間隔の通孔15が設けてある。したがって、この通孔を介しても縦孔31内部に容易にコンクリートが打設できるようになっている。
なお、太陽電池パネル等の各種の機器は、その脚部を前記支柱11に簡易迅速に取り付けられるように構成されている。取り付けに際しては、前記支柱11の上端に設けたフランジ部16に、各種の機器の脚部の下端に設けたフランジ部をボルトナット等を用いて連結、固定することが望ましい
【0018】
前記筒状の支柱11の下部には、筒状でかつ平らな底面の埋設構造体21が配置されている。そして、前記埋設構造体21の上端開口部分の周囲には、上向きにつぼまる傾斜面22が形成してある。
すなわち、前記埋設構造体21は底部が閉じた容器構造であり、当該埋設構造体21の内部にもコンクリートが充填されるようになっており、コンクリートの充填後は非常に重い支柱用の基礎となって前記支柱11を確実に支持することができる。
【0019】
このように各部が構成された支柱の設置構造においては、次のように設置場所における設置作業が進行する。
a)図1に示すように、所定の径の縦孔31を地盤に設けて該縦孔31に前記埋設構造体21を収納する。
b)次に、図2および図3に示すように、前記埋設構造体21の上部から支柱11を下降させ、前記埋設構造体21の上端の上向きにつぼまる傾斜面22の上から支柱11を押し込んで、支柱11の下部に設けた帯片13を前記傾斜面22に沿うように押し拡げる。
【0020】
この作業は、前記スリット12およびスリット12の始端部分に設けた小孔(拡径部)14の存在によって、比較的大きな力を要しないで行うことができる。
また、図2に示すように、前記支柱11の下部に設けた帯片13は、前記傾斜面22に沿うように押し拡げられると同時に、その先端を前記縦孔31の壁面に向かって押し込まれる。それゆえ、前記支柱11を縦孔31に対して一体的に固定することができるようになり、非常に安定した支柱の設置構造を得ることができる。
【0021】
c)そして、前記筒状の支柱11の上部からコンクリートCを流し込み、前記上端開口部分から筒状の埋設構造体21、および前記縦孔31にもコンクリートCを充填する。
その際、前記埋設構造体21は底部が閉じた容器構造であり、当初は埋設構造体21の内部にコンクリートCが充填される。埋設構造体21の内部にコンクリートCが完全に充填され、コンクリートCが行き場を失っても、前記スリット12上端の小孔14から前記縦孔31に流出し、縦孔31内部にも容易にコンクリートCが打設される。
同様に、前記支柱11の上部に適宜間隔に設けた通孔15を介して、縦孔31内部にコンクリートCが打設できる。
【0022】
d)最後に、太陽電池パネル等の各種の機器は、その脚部の下端に設けたフランジ部を前記支柱11の上端に設けたフランジ部16に、ボルトナット等を用いて連結、固定する。
もちろん、この発明は上記開示のごとくに構成されているが、この発明は上記実施例に限定されるものではない。
【0023】
次に、図4はこの発明の支柱の設置構造の他の実施例を示すものであり、筒状の支柱41の下部には、筒状でかつ先端が例えば45°の尖頭状断面53に形成された埋設構造体51が配置されている。そして、前記埋設構造体51の上端開口部分の周囲には、上向きにつぼまる傾斜面52が形成してあり、前記実施例と同様にして筒状の支柱41を取り付けることができる。
また、前記埋設構造体51は底部が45°の尖頭状断面53を備えた容器構造であり、地盤に設けた縦孔31に打ち込むことができ、より強固に地盤内に設置することができる。
もちろん、筒状の支柱41から前記埋設構造体51の内部にもコンクリートCが充填されるようになっており、コンクリートCの充填後は非常に重い支柱用の基礎となって前記支柱41を確実に支持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明は以上のように構成されているが、この発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、材料、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができることはいうまでもない。
【0025】
さらに、上記説明においては太陽電池パネルの設置について述べているが、その他各種機器の。重量物の指示を必要とする場面において適宜利用することができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0026】
11 支柱
12 スリット
13 帯片
14 小孔
15 通孔
16 フランジ部
21 埋設構造体
22 傾斜面
31 縦孔
41 支柱
51 埋設構造体
52 傾斜面
53 尖頭状断面
C コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に立設される支柱の設置構造であって、
下部に複数のスリットを備え、かつスリットの始端部分においてスリット間の帯片が開く方向に屈曲可能とした筒状の支柱と、該支柱の下部に位置して上端開口部分の周囲に上向きにつぼまる傾斜面を形成した筒状の埋設構造体とを備えており、
所定の径の縦孔を地面に設けて該縦孔に前記埋設構造体を収納し、前記埋設構造体上端の傾斜面の上から支柱を押し込んで、支柱の下部に設けた帯片を前記傾斜面に沿うように押し拡げるとともに、該帯片の先端を前記縦孔の壁面に向かって押し込んだ上、
前記筒状の支柱の上部からコンクリートを流し込み、前記上端開口部分から筒状の埋設構造体、および前記縦孔にもコンクリートを充填するようにしたことを特徴とする支柱の設置構造。
【請求項2】
前記筒状の支柱は、前記スリットの始端部分に該スリットの幅以上のサイズの小孔を設け、前記筒状の支柱の上部から流し込まれたコンクリートが、前記小孔から前記縦孔に流出して、縦孔内部にも容易にコンクリートが打設できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の支柱の設置構造。
【請求項3】
前記筒状の支柱は、前記スリットの上部に適宜間隔の通孔を設け、この通孔を介して、縦孔内部にも容易にコンクリートが打設できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の支柱の設置構造。
【請求項4】
前記埋設構造体は、底部が閉じた容器構造であり、当該埋設構造体の内部にもコンクリートが充填されることを特徴とする請求項1記載の支柱の設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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