説明

改善された、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブの近赤外光活性デバイス

光活性デバイスは、2つの電極の間に配置され、かつ2つの電極と電気的に接続された光活性領域を含み、光活性領域は、第一のドナー物質を含む第一の有機光活性層と、第一のアクセプター物質を含む第二の有機光活性層とを含む。第一のドナー物質は、光活性ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブを含み、光活性領域は、第一のドナー物質層とアクセプター物質層との間に配置される、1つまたは複数の追加の有機光活性物質層を含む。光活性領域は、約400nmから1450nmの範囲の光の吸収で励起子を作る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
本発明は、米国夜間視界および電子センサー理事会(United states army night vision and electronic sensors Directorate)の契約番号DAAB07-01-D-G602から政府の支援を受けた。米国政府は本発明の一定の権利を有する。
【0002】
関連出願との相互参照
本出願は、2008年5月1日に出願された米国仮出願第61/049594号および2008年10月31日に出願された米国仮出願第61/110220号の優先権を米国特許法第35編第119条で主張し、これらの開示はその全体が参照により本明細書に援用される。本出願は、2005年11月2日に出願された米国特許出願第11/263865号および2009年1月9日に出願された米国特許出願第12/351378号の一部継続出願であり、これらの開示はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0003】
本開示は、有機半導体、カーボンナノチューブ、および光活性デバイスに関する。
【背景技術】
【0004】
光電子工学デバイスは、物質の光学的および電子的特性に依存して、電子的に電磁放射を生成または検出するか、あるいは周囲の電磁放射から電気を発生する。
【0005】
感光性光電子工学デバイスは、電磁放射を電気信号または電気に転換する。光起電力(「PV」)デバイスとも呼ばれる太陽電池は、感光性光電子工学デバイスの一種であり、特に電力を発生するために使用される。光伝導体電池は、感光性光電子工学デバイスの一種であり、吸収された光による変化を検出するために、デバイスの抵抗をモニターする、信号検出電気回路と併せて使用される。印加されたバイアス電圧を受け取る光検出器は、感光性光電子工学デバイスの一種であり、光検出器が電磁放射に曝された場合に発生する電流を測定する、電流検出電気回路と併せて使用される。
【0006】
これらの3つの分類の感光性光電子工学デバイスは、以下で定義される整流接合(rectifying junction)が存在するかどうか、また、デバイスがバイアスまたはバイアス電圧として知られている外部印加電圧で動作するかどうかによって区別されてもよい。光伝導体電池は、整流接合を有さず、通常バイアスで動作する。PVデバイスは、少なくとも1つの整流接合を有し、バイアスなしで動作する。光検出器は、整流接合を有してもよく、通常、しかし常にではないが、バイアスで動作する。
【0007】
適切なエネルギーの電磁放射が有機半導体物質に入射する場合、光子が吸収され得、励起された分子状態を生成する。有機光伝導性物質において、励起された分子状態は、一般的に、「励起子」、つまり準粒子として輸送される束縛状態の電子-正孔対であると考えられる。励起子は、対再結合(「消光」)前にかなりの寿命を有し、これは、お互いに再結合する元の電子および正孔を表す(他の対からの正孔または電子との再結合とは対照的に)。光電流を生成するために、励起子を形成する電子-正孔は、典型的には、整流接合で分離されている。
【0008】
感光性デバイスの場合において、整流接合は、光起電力ヘテロ接合として表される。有機光起電力へテロ結合の種類には、ドナー物質とアクセプター物質との界面で形成される、ドナー-アクセプターヘテロ接合、および光伝導性物質と金属の界面で形成される、ショットキー-バリア(Schottky-barrier)ヘテロ接合が含まれる。
【0009】
有機物質に関連して、用語「ドナー」および「アクセプター」は、2つの接触しており、しかし異なる有機物質の、最高被占軌道(「HOMO」)および最低空軌道(「LUMO」)エネルギーレベルの相対的な位置を表す。別の物質と接触するある物質のHOMOおよびLUMOエネルギーレベルが低いとき、その物質はアクセプターである。別の物質と接触するある物質のHOMOおよびLUMOエネルギーレベルが高い場合、その物質はドナーである。外部バイアスの不存在下において、電子がドナー-アクセプター接合においてアクセプター物質に移動することは、エネルギー的に有利である。
【0010】
本明細書において使用されるとき、第一のエネルギーレベルが真空エネルギーレベルにより近い場合、第一のHOMOまたはLUMOエネルギーレベルは、第二のHOMOまたはLUMOエネルギーレベルより「大きい」または「高い」。高いHOMOエネルギーレベルは、真空レベルと比較してより小さい絶対エネルギーを有する、イオン化ポテンシャル(「IP」)に対応する。同様に、高いLUMOエネルギーレベルは、真空レベルと比較してより小さい絶対エネルギーを有する、電子親和力(「EA」)に対応する。
【0011】
物質内の光子の吸収後、励起子が作られ、励起子は整流接合において解離する。ドナー物質は正孔を輸送し、アクセプター物質は電子を輸送する。
【0012】
有機半導体における重要な特性は、キャリア移動度である。移動度は、電界に応じて、電荷キャリアが伝導する物質を通しての移動することの容易さを測定する。有機感光性デバイスに関連して、高い電子移動度により優先的に電子を伝導する物質は、電子輸送物質として表されてもよい。高い正孔移動度により優先的に正孔を伝導する物質は、正孔輸送物質として表されてもよい。デバイスにおける移動度および/または位置により優先的に電子を伝導する層は、電子輸送層(「ETL」)として表されてもよい。デバイスにおける移動度および/または位置により優先的に正孔を伝導する層は、正孔輸送層(「HTL」)として表されてもよい。好ましくは、しかし必要ではないが、アクセプター物質は電子輸送物質であり、ドナー物質は正孔輸送物質である。
【0013】
キャリア移動度および相対的なHOMOならびにLUMOレベルに基づいて、光起電力ヘテロ接合において、ドナーおよびアクセプターとして働く2つの有機光伝導性物質を組み合わせる方法は、当分野でよく知られており、本明細書では詳説しない。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語「有機」には、ポリマー物質と同様に小分子の有機物質が含まれ、これは有機光-電子デバイスを作るために使用されてもよい。「小分子」は、ポリマーではない任意の有機物質を表し、「小分子」は、実際には非常に大きくてもよい。小分子には、いくつかの状況において、繰り返し単位が含まれてもよい。例えば、置換基として長鎖のアルキル基を使用することは、「小分子」の分類から分子を除外しない。小分子は、例えばポリマー骨格のペンダント基としてまたは骨格の一部としてポリマーに組み込まれてもよい。小分子は、コア部分に基づいて作られる一連の化学シェル(chemical shell)からなる、デンドリマーのコア部分として働いてもよい。デンドリマーのコア部分は、蛍光または燐光の小分子発光体である。デンドリマーは「小分子」であってもよい。一般的には、小分子は、分子ごとに同じである分子量で定義された化学式を有し、一方、ポリマーは、分子ごとに変化してもよい分子量で定義された化学式を有する。本明細書において使用される場合、「有機」には、ヒドロカルビルおよびヘテロ原子で置換されたヒドロカルビル配位子の金属錯体が含まれる。
【0015】
有機感光性デバイスは、光が吸収されて励起子を形成し、続けて電子および正孔に解離してもよい、少なくとも1つの光活性領域を含む。光活性領域は、典型的には、ドナー-アクセプターヘテロ接合を含み、電磁放射を吸収して、電流を発生するために解離してもよい励起子を発生する感光性デバイスの一部である。
【0016】
有機感光性デバイスは、励起子ブロッキング層(EBL)を組み込んでもよい。EBLは、Forrestらに対する米国特許第6451415号に記載されており、EBLに関連するその開示は、参照により本明細書に援用される。(他のものの中で)EBLは、励起子がドナーおよび/またはアクセプター物質から移動することを防ぐことによって、消光を低減する。一般的には、EBLは、励起子がブロックされる、隣接する有機半導体より実質的に大きいLUMO-HOMOエネルギーギャップを有することから、その励起子ブロッキング特性が得られると考えられている。したがって、閉じ込められた励起子は、エネルギー的考察によりEBL中に存在することを邪魔される。励起子をブロックすることはEBLにとって望ましいが、全ての電荷をブロックすることはEBLにとって望ましくない。しかし、隣接するエネルギーレベルの性質により、EBLは電荷キャリアの1つのサインをブロックしてもよい。設計によって、EBLは2つの他の層、通常は有機感光性半導体層と電極または電荷輸送層との間に存在する。隣接する電極または電荷輸送層は、本明細書中、カソードまたはアノードのどちらかである。それゆえ、デバイス中の所定の位置におけるEBLのための物質は、電極または電荷輸送層への輸送において、キャリアの所望のサインを妨げるように選択される。適切なエネルギーレベルの調整は、電荷輸送のバリアが存在しないことを確実にし、直列抵抗の増加を防ぐ。
【0017】
当然、物質の励起子をブロックする性質は、そのHOMO-LUMOエネルギーギャップの固有の特性ではない。所定の物質が励起子のブロッカーとして働くかどうかは、隣接する有機感光性物質の相対的なHOMOおよびLUMOエネルギーレベルと同様、物質のキャリア移動度およびキャリア伝導性に依存する。それゆえ、本明細書中において使用されるデバイスを考慮することなしに、励起子ブロッカーとして分離して、化合物の分類を特定することは不可能である。しかし、当業者は、選択された一連の物質と使用され、有機PVデバイスを作る場合、所定の物質が励起子ブロッキング層として機能するかどうかを特定する。EBLのさらなる背景の説明は、2008年1月3日に2008/0001144 A1として公開された、Barry P. Randらの米国特許出願第11/810782号中に見つけることができ、この開示は参照により本明細書に援用され、および、Peumansら、「Efficient photon harvesting at high optical intensities in ultrathin organic double-heterostructure photovoltaic diodes」、Applied Physics Letters 76、2650-52(2000年)中に見つけることができる。
【0018】
用語「電極」および「接点」は、本明細書において、外部電流回路に光発生電流(photo-generated current)を伝達する、またはデバイスにバイアス電流あるいは電圧を提供するための媒体を提供する層を表すために、交換可能で使用される。電極は、金属または「金属基材」から構成されてもよい。本明細書において、用語「金属」は、元素的に純粋な1種の金属から構成された物質、および元素的に純粋な2つ以上の金属から構成された物質の両方を包含するために使用される。用語「金属基材」は、通常の定義内の金属ではなく、金属のような特性、例えば伝導性を有する物質、例えばドープされた広バンドギャップ半導体、縮退半導体、伝導性酸化物、および伝導性ポリマーを表す。電極は、単独の層または多層(「化合物」電極)を含んでもよく、透明、半透明、あるいは不透明であってもよい。電極および電極物質の例は、Bulovicらに対する米国特許第6352777号、およびParthasarathyらに対する米国特許第6420031号に開示されたものを含み、これらのそれぞれの特性の開示は、参照により本明細書にそれぞれ援用される。本明細書において使用されるとき、関連する波長における周囲の電磁放射の少なくとも50%を透過する場合、層は「透明」と言われる。
【0019】
有機感光性デバイスの機能性成分は、通常、非常に薄く、機械的に弱く、それゆえデバイスは典型的には基材の表面で組み立てられる。基材は、所望の構造的特性を備える、任意の好適な基材であってもよい。基材は柔軟性または剛性であってもよく、平面または非平面であってもよい。基材は透明、半透明または不透明であってもよい。剛性プラスチックおよびガラスは、好ましい剛性基材物質の例である。柔軟性プラスチックおよび金属箔は、好ましい柔軟性基材物質の例である。
【0020】
光活性領域における使用のための有機ドナーおよびアクセプター物質には、シクロ金属化(cyclometallated)有機金属化合物を含む、有機金属化合物を含んでもよい。本明細書において使用される、用語「有機金属」は、一般的に、当業者によって理解されるもの、および例えば、Gary L. Miessler and Donald A. Tarr、「Inorganic Chemistry」(第2編)、Prentice Hall(1999年)の第13章において与えられるものである。
【0021】
有機層は、真空蒸着、スピンコーティング、有機気相蒸着、有機気相ジェット蒸着(organic vapor jet deposition)、インクジェットプリンティングおよび当分野において知られている他の方法を使用して作られてもよい。
【0022】
光活性領域は、光伝導性層が金属層とショットキー接点を形成する、ショットキー-バリアヘテロ接合の一部であってもよい。光伝導性層がETLである場合、高ワーク機能金属(high work function metal)、例えば金が使用されてもよく、一方、光伝導性層がHTLである場合、低ワーク機能金属(low work function metal)、例えばアルミニウム、マグネシウム、またはインジウムが使用されてもよい。ショットキー-バリア電池において、ショットキーバリアに関連した内蔵式の電場は、離れた励起子中の電子および正孔を吸引する。一般的には、この場で補助された励起子の解離は、ドナー-アクセプター界面における解離ほど有効ではない。
【0023】
デバイスは、電力を消費または貯蔵する、負荷抵抗と接続されてもよい。デバイスが光検出器である場合、デバイスは、光検出器が光に曝された場合に発生した電流を測定し、バイアスをデバイスに印加してもよい(例えばForrestらの2005年5月26日に公開された米国特許出願2005/0110007 A1において記載される)、電流検出電気回路をと接続される。整流接合がデバイスから除去される場合(例えば光活性領域として単独の光伝導性物質を使用して)、得られる構造は光伝導性電池として使用されてもよく、この場合、デバイスは、光の吸収によるデバイスを横切る抵抗内の変化をモニターするために、単独の検出電気回路に接続される。他に記載されない場合、これらの配置および変更のそれぞれは、本明細書において開示される図および実施形態のそれぞれにおけるデバイスのために使用されてもよい。
【0024】
有機感光性光電子工学デバイスは、透明の電荷輸送層、電極、または電荷再結合区域を含んでもよい。電荷輸送層は、有機または無機であってもよく、光伝導性的活性であってもなくてもよい。電荷輸送層は電極と同様であるが、デバイスと外部に電気的接合を有さず、光電子工学デバイスの小区分から隣接する小区分に電荷キャリアを運ぶだけである。電荷再結合区域は、電荷輸送層と同様であるが、光電子工学デバイスの隣接する小区分間の、電子および正孔の再結合をすることができる。電荷再結合区域には、例えばForrestらに対する米国特許第6657378号、2006年2月16日に出願された、Randらによる「Organic Photosensitive Devices」というタイトルの米国特許出願第2006-0032529 A1、および2006年2月9日に出願された、Forrestらによる「Stacked Organic Photosensitive Devices」というタイトルの米国特許出願第2006-0027802 A1に記載される(再結合区域の物質および構造のその開示は、参照により本明細書に援用される)、ナノクラスター、ナノ粒子、ならびに/またはナノロッドを含む、半透明金属あるいは金属基材再結合中心が含まれてもよい。電荷再結合区域は、再結合中心が埋め込まれた透明マトリクス層を、含んでも含まなくてもよい。電荷輸送層、電極、または電荷再結合区域は、光電子工学デバイスの小区分のカソードおよび/またはアノードとして働く。電極または電荷輸送層は、ショットキー接点として働く。
【0025】
Forrestらに対する米国特許第6972431号、第6657378号および第6580027号、ならびにBulovicらに対する米国特許第6352777号の、一般的な構造、特性、物質、および特徴を含む、有機光感光性デバイスのための、背景の説明および最先端の記載は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0026】
1992年における共役ポリマーおよびフラーレン間の光誘起電荷輸送の発見(N. S. Sariciftciら、Proc. SPLE、1852: 297-307(1993年))は、光起電力および光検出器デバイスにおけるフラーレンの可能な使用への、かなりの研究の動機付けとなった。これはポリマーおよびフラーレンの組合せを用いるいくつかの光起電力システムの作製を導いた。フラーレンが光酸化の影響を受けやすいことがわかった。多層カーボンナノチューブと共役ポリマーの界面における光誘起電子輸送の観察(H. Agoら、Phys. Rev. B、61: 2286(2000年))は、光起電力デバイスにおける電子アクセプター物質として、カーボンナノチューブ(CNT)、特に単層カーボンナノチューブ(SWNT)を使用するための試みの動機付けとなった。
【0027】
バルク-ヘテロ接合光起電力電池における、電子アクセプターとしてのCNTの最初に報告された使用は、2桁の光電流における増加が観察された、ポリチオフェンとSWNTとのブレンドである(E. Kymakis、G. A. J. Amaratunga、Appl. Phys, Lett. 80: 112(2002年))。2005年に、1.5μm(0.8eV)放射で照射された、単離されたSWNTにおいて、光起電力効果が観察された(J. U. Li、Appl. Phys. Lett. 87: 073101(2005年))。
【0028】
Kymakis(E. Kymakis and G. Amaratunga、Rev. Adv. Mat. Sci. 10: 300-305(2005年))は、ポリ(3-オクチルチオフェン)に基づくポリマー光起電力システムにおける、電子アクセプターとしてのカーボンナノチューブの使用を記載した。このシステムにおいて、ナノチューブは、電子アクセプターおよび電子伝導体として働く; 約1%を超えるCNT濃度において光電流は減少し、著者らは、ナノチューブは光電流に貢献しないと結論付けた。
【0029】
Ajayanら(米国特許出願第2006/0272701号)は、光反応性成分として共有結合で結合した有機染料を使用する、光起電力デバイスにおける電子輸送成分としてのSWNTの使用を記載した。より最近、Mitraらは、C60-有機半導体ヘテロ接合に基づく光起電力デバイスにおいて、電子輸送成分としてSWNTを同様に用いた(C. Liら、J. Mater. Chem. 17, 2406(2007年); C. Li and S. Mitra、Appl. Phys. Lett. 91、253112(2007年))。これらのデバイスは、電子受容および電子伝導成分としてSWNTを用いる。以前の研究者らは、これらのデバイスにおける金属性SWNTは、正孔および電子の再結合のための短絡回路経路を提供し、単離された半導電性SWNTを用いた場合、デバイスはより効率的になると考えている(E. Kymakisら、J. Phys. D: Appl. Phys. 39、1058-1062(2006年); M. Vignaliら、http://re.jrc.cec.eu.int/solarec/publications/paris_polymer.pdf(日付なし))。しかし、このような設計における半導電性SWNTの使用は、光発生励起子の供給源としてではなく、電子受容および電子伝導成分としてのみSWNTを用いている。存在するおよび提案されたデバイスは、半導電性SWNTの光電(つまり光伝導または光起電力)特性をうまく利用していない。
【0030】
現在、SWNTを成長させるための全ての合成方法は、構造的パラメータ(長さ、直径、およびカイラル角)が変化し、それゆえその電子的および光学的特性(例えば伝導性、電気的バンドギャップ、および光学的バンドギャップ)の変化を有する、SWNTの異種混合物をもたらす(M. S. Arnold、A. A. Green、J. F. Hulvatら、NatureNanotech. 1(1)、60(2006年); M. S. Arnold、S. I. Stupp、and M. C. Hersam、Nano Letters 5(4)、713(2005年); R. H. Baughman、A. A. Zakhidov、and W. A. de Heer、Science 297(5582)、787(2002年))。全ての報告されたCNTベースの光起電力デバイスは、これらの混合物の使用から始めることを報告した。
【0031】
最近の進歩には、様々な基材、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ガラス、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、およびシリコン上の、CNTの薄いフィルムのための製造方法が含まれる(Y. Zhou、L. Hu、G. Griiner、Appl. Phys. Lett. 88: 123109(2006年))。この方法は、移動-プリンティング技術とCNTマットの真空濾過発生を組合せ、制御された蒸着および大面積のパターニング、高伝導性CNTフィルムを、高い均一性で可能にする。このようなフィルムは、一般的に使用される正孔収集電極物質、高価でロールツーロール(roll-to-roll)製造方法と両立しない、酸化インジウムスズ(ITO)の潜在的な代替品である。
【0032】
カーボンナノチューブの特性は、チューブの直径およびねじれの程度によって主に影響を受ける。整列したチューブおよびねじれたチューブの両方は、周方向のエネルギー状態がフェルミ点と呼ばれるものを通るかどうかに応じて、金属性または半伝導性であり得る。フェルミ点において、価電子および伝導バンドが合い、チューブの周方向における伝導を可能にする。直径およびキラリティの正しい組合せを有するチューブは、チューブの長さを通してその格子型構造の周囲の一連のフェルミ点を有する。これらのチューブは、金属性のような伝導性を示す。直径およびキラリティが一連のフェルミ点を発生しない場合、チューブは、半導電性の挙動を示す(P. Avouris、Chemical Physics、281: 429-445(2002年))。
【0033】
フェルミ点の一致に加え、チューブの円筒形の形状および直径は、量子状態がチューブの周囲に存在する経路を通る電子輸送に影響を与える。小さい直径のチューブは、少ない数の利用可能なエネルギー状態を備える、周方向の高いバンドギャップを有する。チューブの直径が大きくなるにつれて、エネルギー状態の数が増加し、周方向のバンドギャップが減少する。一般的に、バンドギャップは、チューブの直径に反比例する。
【0034】
さらに、電子の波長特性として、定在波がカーボンナノチューブの半径方向に生じ得る。これらの定在波、小さい直径のチューブにおける伝導状態の欠如、およびグラファイトシートの単層の厚みは、チューブの周囲方向の電子の動きを抑制し、電子をチューブの軸に沿って輸送させるために組み合わされる。
【0035】
しかし、フェルミ点の一致が存在する場合、電子輸送はチューブの周囲に発生し、さらに軸方向の伝導は、増加した電子の輸送の選択および金属性伝導特性を可能にする。チューブの直径が増加するにつれて、チューブの周囲のより大きなエネルギー状態が可能になり、これはバンドギャップを下げる傾向がある。したがって、軸方向の伝導のみが可能な場合、チューブは半伝導性挙動を示す。軸方向および周方向の伝導が両方可能な場合、チューブは金属性伝導を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】米国特許第6451415号
【特許文献2】米国特許出願第11/810782号
【特許文献3】米国特許第6352777号
【特許文献4】米国特許第6420031号
【特許文献5】米国特許出願2005/0110007 A1
【特許文献6】米国特許第6657378号
【特許文献7】米国特許出願第2006-0032529 A1
【特許文献8】米国特許出願第2006-0027802 A1
【特許文献9】米国特許第6972431号
【特許文献10】米国特許第6580027号
【特許文献11】米国特許出願第2006/0272701号
【特許文献12】米国特許出願第2008/0116536号
【非特許文献】
【0037】
【非特許文献1】Peumansら、「Efficient photon harvesting at high optical intensities in ultrathin organic double-heterostructure photovoltaic diodes」、Applied Physics Letters 76、2650-52(2000年)
【非特許文献2】Gary L. Miessler and Donald A. Tarr、「Inorganic Chemistry」(第2編)、Prentice Hall(1999年)
【非特許文献3】N. S. Sariciftciら、Proc. SPLE、1852: 297-307(1993年)
【非特許文献4】E. Kymakis、G. A. J. Amaratunga、Appl. Phys, Lett. 80: 112(2002年)
【非特許文献5】J. U. Li、Appl. Phys. Lett. 87: 073101(2005年)
【非特許文献6】E. Kymakis and G. Amaratunga、Rev. Adv. Mat. Sci. 10: 300-305(2005年)
【非特許文献7】C. Liら、J. Mater. Chem. 17, 2406(2007年)
【非特許文献8】C. Li and S. Mitra、Appl. Phys. Lett. 91、253112(2007年)
【非特許文献9】E. Kymakisら、J. Phys. D: Appl. Phys. 39、1058-1062(2006年)
【非特許文献10】M. Vignaliら、http://re.jrc.cec.eu.int/solarec/publications/paris_polymer.pdf
【非特許文献11】M. S. Arnold、A. A. Green、J. F. Hulvatら、NatureNanotech. 1(1)、60(2006年)
【非特許文献12】M. S. Arnold、S. I. Stupp、and M. C. Hersam、Nano Letters 5(4)、713(2005年)
【非特許文献13】R. H. Baughman、A. A. Zakhidov、and W. A. de Heer、Science 297(5582)、787(2002年)
【非特許文献14】P. Avouris、Chemical Physics、281: 429-445(2002年)
【非特許文献15】R. B. Weismanら、NANO LETT 3(2003年)
【非特許文献16】V. Barone、J. E. Peralta、J. Uddinら、J. Chem. Phys. 124(2)(2006年)
【非特許文献17】P. C. Collins、M. S. Arnold、and P. Avouris、Science 292(5517)、706(2001年)
【非特許文献18】G. Y. Zhang、P. F. Qi、X. R. Wangら、Science 314(5801); 974(2006年)
【非特許文献19】H. Q. Peng、N. T. Alvaret、C. Kittrellら、J. Amer. Chem. Soc. 128(26)、8396(2006年)
【非特許文献20】M. Zheng、A. Jagota、M. S. Stranoら、Science 302(5650)、1545-1548(2003年)
【非特許文献21】Spataruら、Excitonic effects and optical spectra of single-walled carbon nanotubes、PHYSICAL REVIEW LETTERS 92(7) (2004年)
【非特許文献22】Baroneら、Screened exchange hybrid density-functional study of the work function of pristine and doped single-walled carbon nanotubes、JOURNAL OF CHEMICAL PHYSICS 124(2)(2006年)
【非特許文献23】M. S. Arnold、A. A. Green、J. F. Hulvatら、Nature Nanotech. 1(1)、60(2006年)
【非特許文献24】M. S. Arnold、S. I. Stupp、and M. C. Hersam、Nano Letters 5(4)、713(2005年)
【非特許文献25】Yang, F.、Lunt, R. R.、and Forrest S. R.、Simultaneous heterojunction organic solar cells with broad spectral sensitivity、APPL. PHYS. LETT. 92(5)(2008年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
存在する有機光起電力デバイスの発電量は、従来のシリコンベースの光起電力デバイスとの競争力がまだない。さらに、効率が悪く、他の薄いフィルムの取り組みのように、これらは、空気に曝された場合、酸化分解の影響を受けやすく、カプセル化の必要がある。シリコン太陽電池の費用および脆性、および簡単に製造でき、安価な有機等量物の期待があるが、より効率的かつより安定な有機光起電力および光検出デバイスの必要性が存在する。また、有機物質のIRおよび近IR放射の低い感度により、IRおよびNIR放射による照射で、効率的に励起子を生成することができる有機光起電力物質の必要が存在する。
【0039】
半伝導性CNTは、その強い近IRバンドギャップ吸収にも関わらず、光発生電子と正孔対の強い結合エネルギーにより、光電子工学デバイスの光学的な吸収性成分として、限られた影響しか有さなかった。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本開示は、光活性デバイス、例えば光検出器および光起電力デバイスを提供し、その中で半伝導性カーボンナノチューブは有機光伝導性物質として、つまり集光性成分として働く。特に、本開示は、薄いフィルムのデバイス構造におけるIR放射の検出のための物質としてのカーボンナノチューブの使用を記載する。これらのデバイスにおいて、半伝導性カーボンナノチューブは、電子ドナーとして働き、光発生電荷の分離が、半伝導性カーボンナノチューブと有機半導体との間のヘテロ接合において起きる。半伝導性カーボンナノチューブの直径および光学的バンドギャップの適切な選択は、スペクトルの可視から近赤外領域までの光活性デバイスの応答性を変化させるために用いられてもよい。代表的な物質、デバイス構造、および構造の製造手順を、本明細書において概説する。
【0041】
本開示の実施形態によると、光活性デバイスの光活性領域における有機アクセプターおよびドナー層のうちの少なくとも1つまたは両方には、カーボンナノチューブが含まれる。本開示は、大面積の光電子工学デバイスの、光学的に活性な成分としてのカーボンナノチューブの使用を記載する。
【0042】
本発明者らは、CNTにおける励起子(結合された電子-正孔対)が、電子アクセプター、例えばC60とCNTが相互作用することによって、効率的に解離され得ることを発見した。この2つのフラーレンベースの物質は、CNTからC60への十分な電子輸送をもたらす、バンド/軌道のオフセットでドナー-アクセプターヘテロ接合を形成する。有機半導体の可視吸収性とCNTの近IR吸収性との組合せは、波長で400〜1450nmの範囲の、電磁照射に対する広範囲の感度をもたらす。C60を、真空熱蒸発(「VTE」)、有機気相蒸着(「OVPD」)および他の方法によって堆積することができる。好ましい実施形態において、C60のVTE蒸着が望ましい。
【0043】
本開示には、近IRスペクトルにおける性能のさらなる改善を示す、光活性デバイス構造も含まれる。一実施形態によると、このような光活性デバイスは、第一の電極と、第二の電極と、第一の電極と第二の電極との間に配置され、かつ第一の電極および第二の電極と電気的に接続された光活性領域とを含む。光活性領域は、第一の電極の上部に形成される、第一のドナー物質を含む第一の有機光活性層、および第一の有機光活性層の上部に形成される、第一のアクセプター物質を含む第二の有機光活性層を含む。第一のドナー物質は、光活性ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブを含む。デバイスには、第一と第二の有機光活性物質層との間に配置される、1つまたは複数の追加の有機光活性物質が含まれ、追加の有機光活性物質は、第一のアクセプター物質に対するドナーとして、または第一のドナー物質に対するアクセプターとして働く。この改善された光活性デバイスの光活性領域は、約400nmから1450nmの範囲における光の吸収で励起子を作る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】図1Aは、本開示の平面のヘテロ接合の実施形態の構造を例示する。
【図1B】図1Bは、本開示の平面のヘテロ接合の実施形態の構造を例示する。
【図2A】図2Aは、本開示のバルクのヘテロ接合の実施形態の構造を例示する。
【図2B】図2Bは、本開示のバルクのヘテロ接合の実施形態の構造を例示する。
【図2C】図2Cは、本開示のバルクのヘテロ接合の実施形態の構造を例示する。
【図2D】図2Dは、本開示のバルクのヘテロ接合の実施形態の構造を例示する。
【図3A】図3Aは、本開示の追加のバルクのヘテロ接合の実施形態の構造を例示する。
【図3B】図3Bは、本開示の追加のバルクのヘテロ接合の実施形態の構造を例示する。
【図4】図4は、PTCDA(3,4,9,10-ペリレン-テトラカルボキシル-ビス-二無水物)上にカーボンナノチューブを堆積することによって形成された、平面のヘテロ接合の構造を示す。
【図5】図5は、暗闇の中および太陽の近IR放射を模擬した照明におけるヘテロ接合の電流-電圧曲線を示す。
【図6】図6は、異なる吸収波長のためのCNTの伝導バンド(CB)および価電子バンド(VB)エネルギー、同様に許容可能なドナーまたはアクセプターのために必要なエネルギーを示す。
【図7】図7は、トルエン中に懸濁され、650nmにおいて励起される、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブのフォトルミネッセンスを示す。
【図8】図8は、トルエン溶液からドクターブレードされた、PFOおよびCNTを含む厚いフィルムのフォトルミネッセンス強度を示す。
【図9A】図9Aは、ナノチューブに対するMDMO-PPVの質量比が1:1の、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブ/C60ヘテロ接合ダイオードの構造の例を示す。
【図9B】図9Bは、図9Aのデバイスの電流-電圧特性を示す。
【図9C】図9Cは、図9Aのデバイスのスペクトル的に分解された光応答性を示す。
【図9D】図9Dは、図9Aのデバイスの内部量子効率(IQE)およびポリマーで被覆されたカーボンナノチューブの吸収性を示す。
【図10A】図10Aは、本開示の実施形態による、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブ/C60ヘテロ接合の、エネルギーレベルの図である。
【図10B】図10Bは、対照デバイスのエネルギーレベルの図である。
【図10C】図10Cは、対照デバイスのエネルギーレベルの図である。
【図11A】図11Aは、ナノチューブに対するMDMO-PPVの質量比が1:1の、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブ/C60ヘテロ接合ダイオードの構造の別の例を示す。
【図11B】図11Bは、図11Aのデバイスの電流-電圧特性を示す。
【図11C】図11Cは、図11Aのデバイスのスペクトル的に分解された光応答性を示す。
【図11D】図11Dは、図11Aのデバイスの内部量子効率(IQE)およびポリマーで被覆されたカーボンナノチューブの吸収性を示す。
【図12A】図12Aは、異なるC60厚みを有する、図9Aの模擬光起電力デバイス構造のための、計算された光場プロットを示す。
【図12B】図12Bは、異なるC60厚みを有する、図9Aの模擬光起電力デバイス構造のための、計算された光場プロットを示す。
【図12C】図12Cは、異なるC60厚みを有する、図9Aの模擬光起電力デバイス構造のための、計算された光場プロットを示す。
【図12D】図12Dは、異なるC60厚みを有する、図9Aの模擬光起電力デバイス構造のための、計算された光場プロットを示す。
【図13】図13は、異なるC60厚みの、図9Aの光起電力デバイス構造のための応答性プロットを示す。
【図14A】図14Aは、CNTベースのドナー層とアクセプター層との間に備えられた、追加の有機光活性物質層の例の平面図を例示する。
【図14B】図14Bは、CNTベースのドナー層とアクセプター層との間に備えられた、追加の有機光活性物質層の別の例の平面図を例示する。
【図15A】図15Aは、ドナーとして追加の有機光活性物質層を含む、エネルギーレベルの図を例示する。
【図15B】図15Bは、アクセプターとして追加の有機光活性物質層を含む、エネルギーレベルの図を例示する。
【図15C】図15Cは、1つまたは複数の追加の有機光活性物質層を含む、エネルギーレベルの図を例示する。
【図16A】図16Aは、本開示の実施形態による光起電力デバイスを含む、様々な物質、MDMO、CNT、SnPcおよびC60のためのエネルギーレベルの図である。
【図16B】図16Bは、2つの異なるSnPc厚みのための、溶融石英ガラス基材上に成長した、CuPc、C60およびSnPcフィルムの吸収係数、およびITO/CuPc/SnPc/C60/BCP/Ag太陽電池の外部量子効率を示すプロットである。
【図17A】図17Aは、実施形態による光活性デバイス構造を示す。
【図17B】図17Bは、図17Aの光活性デバイスの応答性のプロットを示す。
【図17C】図17Cは、図17Aの光活性デバイスの比検出能(specific detectivity)のプロットを示す。
【図18A】図18Aは、別の実施形態による光活性デバイス構造を示す。
【図18B】図18Bは、図18Aの光活性デバイスの応答性のプロットを示す。
【図18C】図18Cは、図18Aの光活性デバイスの比検出能のプロットを示す。
【図19A】図19Aは、電子ブロッキング層としてのSiO2およびPFOの効果を示す、電流-電圧プロットである。
【図19B】図19Bは、電子ブロッキング層としてのSiO2およびPFOの効果を示す、応答性および比検出能のプロットを示す。
【図20】図20は、受け取ったままの商業的なITO、約300度における空気中で15分間、および30分間のアニール後に取り出した、商業的なITOの吸収のプロットを示す。
【図21A】図21Aは、別の実施形態による光活性デバイス構造を示す。
【図21B】図21Bは、特定の物質の減衰係数を示す。
【図21C】図21Cは、図21Aのデバイスのための電流-電圧プロットである。
【図21D】図21Dは、図21Aのデバイスの比検出能のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
上記で参照された図において示された特徴は、図式で例示され、縮尺を描くことを意図しておらず、正確な位置関係を示すことを意図していない。同様の参照数は、同様の成分数を示していない。
【0046】
好ましい実施形態の以下の詳細な記載において、参照は、本明細書の一部を形成する添付した図でされており、これは本発明が実行されてもよい特定の実施形態の例示により示される。他の実施形態が利用されてもよく、本発明の範囲から離れることなく、構造の変化がされてもよいことが理解される。
【0047】
本開示の実施形態による有機感光性光電子工学デバイスを、例えば、入射電磁放射、特にIRおよび近IRスペクトルにおける電磁放射を検出するため、または電力を発生する太陽電池として使用することができる。本発明の実施形態は、アノード、カソード、およびアノードとカソードとの間の光活性領域を含んでもよく、半伝導性のポリマーで被覆されたカーボンナノチューブおよび有機半導体は、光活性領域中でヘテロ接合を形成する。光活性領域は、電磁放射を吸収して、電流を発生するために解離してもよい励起子を発生する、感光性デバイスの一部である。有機感光性光電子工学デバイスには、入射放射がデバイスによって吸収されることを可能にする、少なくとも1つの透明電極が含まれてもよい。
【0048】
カーボンナノチューブから形成される、効率的な感光性光電子工学デバイスは、カーボンナノチューブによる光子の吸収によって作られた励起子が、自由電子と自由正孔に分裂される、適切なエネルギーを有する化合物を含む。効率的に励起子を分裂するために、ドナー物質のHOMOは、カーボンナノチューブベースのアクセプターの価電子バンド(VB)より、エネルギーが高くあるべき(より負ではない)である。反対に、アクセプター物質のLUMOは、カーボンナノチューブベースのドナーの伝導バンド(CB)より、低く(より負で)なければならない。CBおよびVBエネルギーと同様に許容可能なドナーまたはアクセプターのために必要なエネルギーは、図6に示される(R. B. Weismanら、NANO LETT 3(2003年)参照)。
【0049】
本明細書において使用される場合、用語「整流」は、とりわけ、界面が非対称な伝導特性を有する、つまり界面が、好ましくは一方向の電子電荷輸送を支援することを示す。用語「半導体」は、電荷キャリアが熱的または電磁的励起子によって誘起される場合、電気を伝導することができる物質を示す。用語「光伝導性」は、一般的に、電磁放射エネルギーが吸収され、これにより、キャリアが物質中の電荷を伝導(つまり輸送)することができるように、電荷キャリアの励起エネルギーに転換される方法に関する。用語「光伝導性物質」は、電磁放射を吸収して、電荷キャリアを発生する特性のために利用される半導体物質を表す。本明細書において使用される場合、「最上部」は、基材から最も離れることを意味し、一方、「底部」は、基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層に「物理的に接触」または「直接上に」存在することが明白な場合を除いて、介在する層(例えば、第一の層が第二の層の「上」または「上部」に存在する場合)が存在してもよいが、これは表面処理(例えば第一の層の水素プラズマへの曝露)を除外しない。
【0050】
図1Aおよび1Bを参照すると、光起電力デバイス100Aおよび100Bのための、2つの平面のヘテロ接合の実施形態の構造が開示される。光起電力デバイス100Aは、伝導性アノード層110Aと、アノード層110Aの上部に形成される電子ドナー層120Aと、ドナー層120Aの上部に形成される電子アクセプター層130Aと、電子アクセプター層130Aの上部に形成される伝導性カソード層150Aとを含む。この実施形態において、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブの薄いフィルムは、電子ドナー層120Aを形成する。平面のヘテロ接合は、電子ドナー層120Aと電子アクセプター層130Aとの間に形成される。電子ドナー層120Aおよび電子アクセプター層130Aは、デバイス100Aの光活性領域122Aを形成する。好ましくは、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブ(PW-CNT)は、実質的に半伝導性の、ポリマーで被覆された単層カーボンナノチューブ(PW-SWNT)である。PW-SWNTが好ましいが、多層カーボンナノチューブを含む、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブは、本明細書で開示される本発明の範囲内である。それゆえ、本明細書において提示される様々な実施形態において、PW-SWNTがPVデバイスと結びつけて言及される場合、これらの実施形態は例にすぎず、PW-CNTを使用する他の実施形態は、一般的に、ポリマーで被覆された多層カーボンナノチューブを含み、本開示の範囲内である。
【0051】
PW-CNTが電子ドナーとして使用される場合、電子アクセプター層130Aを形成するための好適な有機半導体には、これに限定されないが、-4.0eVのLUMOを有するC60、-4.1eVのLUMOを有する[84]PCBM([6,6]-フェニルC84酪酸メチルエステル)、-4.4eVのLUMOを有するF16-CuPc、-4.0eVのLUMOを有するPTCBI(3,4,9,10ペリレンテトラカルボン酸ビスベンズイミダゾール)、-4.7eVのLUMOを有するPTCDA(3,4,9,10ペリレン-テトラカルボン酸二無水物)、または-4.5eVのLUMOを有するポリ(ベンズイミダゾベンゾフェナントロリン)、3.9eVのLUMOを有するTCNQ(7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)、5.2eVのLUMOを有するF4-TCNQ(テトラフルオロテトラシアノキノジメタン)、および同類のものが含まれる。
【0052】
電子アクセプター層130Aのための有機半導体は、好ましくは、カソード150A、または電子輸送層に電子を効率的に運ぶことができる。電子アクセプター層130Aのための、これらの好適な有機半導体は、典型的には、照射されたカーボンナノチューブ(好ましくはPW-SWNT)からの電子輸送が、迅速かつ不可逆であるように、カーボンナノチューブのLUMOより低いエネルギーのLUMOを有する。
【0053】
半伝導性PW-CNTと整流ヘテロ接合を形成することができる、たくさんの異なる有機半導体が存在し、これらは電荷の分離および光発生電荷の電荷輸送ならびに光起電力効果をもたらす。1eVの光学的バンドギャップおよび0.5eVの励起子結合エネルギーを有するCNTにとって、予想されるHOMO-LUMOまたは電気的バンドギャップは、1.5eVである。p-タイプのドーピングを仮定し、仕事関数として4.6eVを要するとすると(V. Barone、J. E. Peralta、J. Uddinら、J. Chem. Phys. 124(2)(2006年)の計算を参照)、LUMOまたは伝導バンドは、真空に対する参照で3.5eVであり、一方、HOMOまたは価電子バンドは、真空で5.0eVである。したがって、このような半伝導性PW-CNTは、電子アクセプターとしてのC60と、整流ヘテロ接合を形成する。
【0054】
上記で述べた通り、半伝導性CNTの正確なバンドエネルギーレベルは、その直径、カイラルねじれ、電気的バンドギャップ、光学的バンドギャップ、局所的な誘電環境、およびドーピングに依存する。したがって、半伝導性CNTは、別の有機半導体とのヘテロ接合において、ナノチューブの構造および有機半導体の特性に応じて、電子を受容する物質または電子を供与する物質のどちらかとして働く。小分子の有機半導体に加えて、伝導性ポリマーが電子を許容するまたは電子を供与する物質のどちらかとして、同様に利用される。
【0055】
図1Bに示された実施形態において、光起電力デバイス100Bは、伝導性アノード層110Bと、アノード層110Bの上部に形成される電子ドナー層120Bと、電子アクセプター層130Bと、伝導性カソード層150Bとを含む。この実施形態において、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブの薄いフィルムは、電子アクセプター層130Bを形成する。平面のヘテロ接合は、電子ドナー層120Bと電子アクセプター層130Bとの間に形成される。電子ドナー層120Bおよび電子アクセプター層130Bは、デバイス100Bの光活性領域122Bを形成する。
【0056】
好ましくは、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブは、実質的に半伝導性のPW-SWNTである。カーボンナノチューブは、単層または多層であってもよい。多層ナノチューブは、チューブ中に同心円状に配置されたグラファイトの多層を含む。一般的に、SWNTは、多層ナノチューブより優れた電気特性を示す。バルク量で商業的に利用可能なSWNTは、一般的に、高圧一酸化炭素(HiPCO(登録商標))法(例えばUnidym of Menlo Park、California、U.S.Aから入手可能なHiPCO(登録商標)ナノチューブ)またはアーク放電法(例えば親水性カルボキシル基と結合した2つの開放端を有する、精製されたアーク放電ナノチューブである、Carbon Solutions Inc.からのP3ナノチューブ)のどちらかを使用して製造される。
【0057】
本明細書において使用される場合、「実質的に半伝導性のPW-SWNT」は、少なくとも80質量%のナノチューブが半伝導性種、つまり非金属性である、PW-SWNTの集団を表す。当然、伝導性ナノチューブの割合が減少するにつれて、光検出デバイスの光活性領域中のナノチューブの密度は増加し、一方、浸透する伝導性経路の非常に低い可能性は維持される。したがって、好ましい実施形態において、少なくとも90%のナノチューブは半伝導性種であり、より好ましい実施形態において、少なくとも95%のナノチューブは半伝導性種である。最も好ましい実施形態において、少なくとも99%のナノチューブは半伝導性種である。
【0058】
典型的なCNT混合物において、3分の1のCNTは自然に金属性であり、一方、3分の2は半伝導性であり、光学的および電気的バンドギャップは、大体直径に反比例して変化する。この不均質は、金属性CNTの存在に伴う励起子の消光および非整流電気経路により、製造されたままのCNT混合物からの効率的な光起電力太陽電池の製造の障壁となる。単離された半伝導性カーボンナノチューブの調製が、効率的な有機半導体-半伝導性カーボンナノチューブヘテロ接合起電力太陽電池を作るために必要である。現在、半伝導性SWNTを単離する唯一の方法は、合成後の処理方法を介する。
【0059】
現在、実験室規模で半伝導性CNTを濃縮または単離するための、いくつかのこのような処理方法が存在する。これらの方法には、「建設的破壊(constructive destruction)」(P. C. Collins、M. S. Arnold、and P. Avouris、Science 292(5517)、706(2001年)); 単層の薄いフィルム中の金属性CNTの選択的エッチング(G. Y. Zhang、P. F. Qi、X. R. Wangら、Science 314(5801); 974(2006年)); 誘電泳動に基づく流動場分画(field-flow fractionation)(H. Q. Peng、N. T. Alvaret、C. Kittrellら、J. Amer. Chem. Soc. 128(26)、8396(2006年)); およびDNAで被覆されたCNTのアニオン交換クロマトグラフィー(M. Zheng、A. Jagota、M. S. Stranoら、Science 302(5650)、1545-1548(2003年))を含む。しかし、多くのこれらの技術の有効性(半伝導性である得られたCNTの割合)は、限られているか、または不明確であり、これらの技術に対して半伝導性CNTの使用可能な量を製造するために実用的でなくする、重大な欠点が存在する。
【0060】
PW-CNTが電子アクセプターとして使用される場合、電子ドナー層120Bを形成するための好適な有機半導体には、これに限定されないが、-4.97eVのHOMOを有するBTEM-PPV(ポリ(2,5-ビス(1,4,7,10-テトラオキサウンデシル)-1,4-フェニレンビニレン))、-4.5eVのHOMOを有するポリ(3-デシルオキシチオフェン)、5.3eVのHOMOを有するCuPc(銅フタロシアニン)、5.4eVのHOMOを有するNPD(4,4’-ビス(N-(1-ナフチル)フェニルアミノ)ビフェニル)、5.0eVのHOMOを有するペンタセン、5.4eVのHOMOを有するテトラセン、および同類のものが含まれる。電子ドナー層120Bのための有機半導体は、アノード110Bまたは正孔輸送層に正孔を効率的に運ぶことができるべきである。電子ドナー層120Bのための好適な有機半導体は、照射されたCNTからの正孔輸送(照射されたCNTへの電子輸送)が迅速かつ不可逆であるように、好ましくはカーボンナノチューブのHOMOより高いエネルギーのHOMOを有するものである。
【0061】
100Aおよび100Bの両方の実施形態において、任意の励起子ブロッキング層140A、140Bを、光活性領域122A、122Bとカソード層150A、150Bとの間に、それぞれ備えることができる。さらに、任意の励起子ブロッキング層115A、115Bを、光活性領域112A、112Bとアノード層110A、110Bとの間に、それぞれ備えることができる。アノードを平滑にする層は、Forrestらに対する米国特許第6657378号に記載されており、この特徴に関連するその開示は、参照により本明細書に援用される。
【0062】
ポリマーの被覆
製造されたままのカーボンナノチューブは、非常に凝集しており、束になっている。効率的な光学吸収および励起子の分裂を得るために、ならびに励起子消光を防ぐために、チューブはばらばらになっていなくてはならない。これは、知られているポリマーで被覆する方法を通してなされる。カーボンナノチューブをポリマーおよび適切な溶媒の溶液中に入れ、カーボンナノチューブを高電力ホーンソニケーター(horn sonicator)(セルディスメンブレータ(cell dismembrator))を使用して分離する。適切なポリマーが使用される場合(他にもある中で、様々なポリ-チオフェンポリマー、ポリ-フェニレンビニレンポリマー、およびポリ-フルオレンポリマー誘導体)、ポリマーは、カーボンナノチューブとポリマーの可溶な複合体を作る、ポリマーの可溶性側基で被覆する。ポリマーの被覆の主な目的は、個々のナノチューブを懸濁させることである。PW-CNTとドナー-アクセプターヘテロ接合を形成できる別の物質がデバイス中に存在する限り、励起子の分裂を行うために、カーボンナノチューブとドナー-アクセプターヘテロ接合を形成するポリマーが、被覆物質のために必要なわけではない。
【0063】
カーボンナノチューブがポリマーで被覆され可溶化された後、光起電力デバイスは、これらをドナーまたはアクセプター分子あるいはポリマーに組み込み、必要な場合、デバイスにキャスティングすることによって作られることができる。適切な量の光を吸収するために十分なカーボンナノチューブで光起電力デバイスを作るためには、十分な濃度のカーボンナノチューブが必要であり、これは浸透するネットワークを作る(フィルム内に〜1質量%を超えるカーボンナノチューブ)。これは、半伝導性カーボンナノチューブに接触する任意の金属性カーボンナノチューブが、励起子消光中心として働き、光起電力デバイスの効率を劇的に下げることを意味する。また、金属性カーボンナノチューブは、低下したシャント抵抗を導く、全体の電池の厚みを越える金属繊維を作ることによって、デバイスをショートするために働くことができる。この現象を避けるために、カーボンナノチューブは、ほとんど全ての金属性カーボンナノチューブが除去され、励起子消光が十分に低減するように、密度勾配超遠心分離法などの方法によって分類される。
【0064】
いくつかの実施形態において、光活性ポリマー、例えばポリ[2-メトキシ-5-(3’,7’-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン](MDMO-PPV)、ポリ[2-メトキシ-5-(2’-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン](MEH-PPV)およびポリ(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)(PFO)を、カーボンナノチューブを被覆および可溶化するために使用することができる。このような実施形態において、CNTを被覆する光活性ポリマーは、被覆するポリマーとカーボンナノチューブ、または被覆するポリマーと有機(ドナーあるいはアクセプター)の、CNTから独立した界面において分離される励起子を作る光を吸収する。
【0065】
SWNTを被覆するために使用することができる、光活性ポリマーの他の例は、PFO: ポリ(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)および同じ骨格かつ異なる可溶化基を有するポリマー、例えばPFH-ポリ(9,9-ジヘキシルフルオレニル-2,7-ジイル)またはポリ[9,9-ジ-(2-エチルヘキシル)-フルオレニル-2,7-ジイル]である。別の拡張は、ときどきコポリマーを使用することができる(PFOと別のモノマーとを繰り返す、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-(1,4-ビニレンフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-(ビニレンアントラセン)]、またはポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(1,4-ベンゾ-{2,1’-3}-チアジアゾール)])。
【0066】
別の例は、フェニレンビニレンに基づくポリマー: 例えば、MDMO-PPV--ポリ[2-メトキシ-5-(3,7-ジメチル-オクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]またはMEH-PPV--ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチル-ヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]および同じ骨格かつ異なる可溶化基を有するポリマー、例えばポリ[2,5-ビス(3,7-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]である。ときどきコポリマーなどの繰り返し骨格を使用することができる(PFOと別のモノマーとを繰り返す、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-(1,4-ビニレンフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-(ビニレンアントラセン)]、またはポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(1,4-ベンゾ-{2,1’-3}-チアジアゾール)])。
【0067】
P3HTなどのチオフェンベースのポリマーまたは他の可溶化基を使用するものを使用することができる: P3BT--ポリ(3-ブチル-チオフェン-2,5-ジイル); P3HT--ポリ(3-ヘキシル-チオフェン-2,5-ジイル); P3OT--ポリ(3-オクタル-チオフェン-2,5-ジイル); P3DT--ポリ(3-デシル-チオフェン-2,5-ジイル)など。ときどきコポリマーなどの繰り返し骨格を使用することができる(PFOと別のモノマーとを繰り返す、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-(1,4-ビニレンフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-(ビニレンアントラセン)]、またはポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(1,4-ベンゾ-{2,1’-3}-チアジアゾール)])。同じ付加および低バンドギャップポリマー、例えばポリ[2,6-(4,4-ビス-(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[2,1-b;3,4-b]-ジチオフェン)-alt-4,7-(2,1,3-ベンゾチアジアゾール)](PCPDTBT)と一緒に他の伝導性ポリマー骨格、例えばPPEポリマー: ポリ(2,5-ジオクチル-1,4-フェニレン)も好適である。変化例は、骨格または繰り返し単位に対してなされる。
【0068】
図7は、トルエン中に懸濁され、650nmで励起された、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブのフォトルミネッセンスを示し、MDMO-PPVでの被覆がよく機能し、特定のカーボンナノチューブのキラリティでは、PFOが非常に明るいフォトルミネッセンスを与えることを示す。信号強度は、個々に分散されたカーボンナノチューブの量の指標である。凝集したおよび束になったナノチューブは、半伝導性ナノチューブと接触する金属性ナノチューブによる消光のため、フォトルミネッセンス信号を示さない。これは、MDMO-PPVが、そのトルエン中のカーボンナノチューブを安定化させる能力において、MEH-PPVに匹敵することを示す。これは、側基に対する小さな変化は、被覆効率を十分に変えず、多くの同様のポリマーを使用してもよいことを示している。
【0069】
MDMO-PPVの被覆は、カーボンナノチューブに有機溶媒中の可溶性を与え、したがって溶液ベースの処理を容易にする。MDMO-PPVは、お互いにカーボンナノチューブを効率的に単離し、したがって光学的に活性な半伝導性ナノチューブと任意の消光金属性ナノチューブとの間の直接の電子的結合を最小化することが期待される。
【0070】
本発明者らの実験において、カーボンナノチューブは、まず半伝導性ポリマー、ポリ[2-メトキシ-5-(3’,7’-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン](MDMO-PPV)によって被覆された。高圧一酸化炭素(HiPCO)で成長させた、直径0.7〜1.0nmで変化するナノチューブを、波長で1400nmまで及ぶスペクトル応答性を確実にするために、利用した。MDMO-PPVで被覆されたナノチューブを、ナノチューブの束および不溶な物質を除去するため、遠心分離によって精製した。ポリマーとナノチューブの混合物を、不活性窒素雰囲気中で、ドクターブレードを介して、熱い酸化インジウムスズ(ITO)でコートされたガラス基材の上に広げた。C60の薄いフィルムをポリマーとナノチューブの混合物の最上部に堆積して、ドナー-アクセプター界面を形成し、続けて2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)の10nmのバッファー層、その後Agカソードを形成した。好ましい実施形態において、C60はVTEによって堆積される。
【0071】
図8は、図6に記載されたエネルギーレベルによる理論的消光が、比較的正確であることを実証する、[84]PCBMの本発明者らの実験結果を示す。図8において示されるデータは、トルエン溶液からドクターブレードした厚いフィルムから得た。PFOおよびCNTを含むフィルムは、フラーレン添加剤を加える効果のための参照である。[84]PCBMの添加は、調べた波長(650nmにおいて励起された場合、950から1350nm)における全てのナノチューブの発光を完全に消光し、[84]PCBMエネルギーレベルがLUMOから励起子結合エネルギーを引いたものより深く、CNT中の励起子の効率的な分裂をもたらすことを示す。これは、[84]PCBMがCNT上の励起子を分裂するための効果的な物質であることを示す。それゆえ、[84]PCBMは、光伝導性物質として使用される、実質的に半伝導性のPW-CNTとの接合において使用されるための、効果的な電子アクセプター物質である。
【0072】
図9A〜9Dを参照すると、図9Aに示した、ナノチューブに対するMDMO-PPVの質量比が1:1のPW-CNT/C60ヘテロ接合ダイオードの、電流-電圧特性(図9B)およびスペクトル的に分解された光応答性(図9C)が描かれている。デバイス中の層の厚みは、図9A中で提供される。ダイオードは、暗闇条件下で、4桁以上の整流比を有する(図9B)。順方向バイアス電流-電圧特性は、2.5のダイオード理想係数および120Ωの直列抵抗を有するショットキーダイオード式に従う。図9Cを参照すると、0Vのバイアス(プロット線92)および-0.5Vのバイアス(プロット線93)におけるダイオードの近IR応答性は、脱イオンH2O(プロット線94)中のコール酸ナトリウムの水性界面活性剤溶液中の単離された半伝導性CNTの吸収スペクトルと比較される。光応答性は、溶液吸収スペクトルから約40meV赤方遷移するが、同じ形状に従う。0V(プロット線92)および-0.5V(プロット線93)における、1155nmのデバイスのピークの光応答性は、それぞれ約10および17mA/Wであった。比較において、カーボンナノチューブなしの対照デバイスの応答性は、近赤外(<0.1μA/W)で測定できなかった。
【0073】
図9Dは、図9Aのデバイスの内部量子効率(IQE)のプロットである(実線95参照)。IQEは、-0.5Vバイアス下(図9C中のプロット線93)のデバイスの光応答性の、PW-CNTの近IR吸収(図9D中の破線97)に対する比である。PW-CNTの近IR吸収(破線97)を、デバイスのスペクトル的に分解された反射率を測定し、その後、ITOによる吸収を差し引くことによって定量化した。示された通り、近IR中のピークのIQEは、1000nmから1350nmの広いスペクトル範囲にわたって、約20%上回る。実質的に大きなIQEは、デバイス中の励起子の解離のための好ましいメカニズムが存在することを示す。
【0074】
本発明者らのデバイスにおける活性/解離する界面が、PW-CNT/C60界面であるという仮説を試験するために、本発明者らは、PW-CNT/C60界面が壊れた、2つの対照デバイス構造を作った。これらの構造のエネルギー図を、図10Bおよび10Cに示す。図10Bに示される第一の対照デバイス構造において、40nmの層のサブフタロシアニン(SubPc)14を、PW-CNT層11とC60層13との間に挿入して、PW-CNT/C60界面を壊した。SubPcのHOMOおよびLUMOエネルギーは、MDMO-PPVにおけるものと同様である。第二の対照デバイス構造は、MDMO-PPVで被覆されたカーボンナノチューブ層中の励起子の解離のための試験をするために作った。この構造において、C60層13を除去し、PFOのバッファー層15を、ITOとPW-CNT層11との間の正孔輸送層として挿入し、ナノチューブが直接アノードとカソードの橋かけすることを防いだ。第二の対照デバイス構造のための対応するエネルギー図を、図10Cに示す。
【0075】
PW-CNTから生じる近IR応答性は、対照デバイスのどちらでも観察されず(応答性<0.1μA/W)、これは、PW-CNT/ITO、PW-CNT/SubPc、およびPW-CNT/MDMO-PPV界面における励起子の解離のための、不十分な駆動力が存在することを示した。近赤外照明に対する測定可能な光電流は、PW-CNT/C60界面が損なわれていないままの場合にのみ観察された。
【0076】
図10A〜10Cは、様々な有機半導体と(8,4)半伝導性PW-CNTとの間の、予想されるエネルギー配置を示す。(8,4)ナノチューブは、0.84nmの直径および1155nmにおけるポリマーマトリクス中で予想される光学的バンドギャップを有する。ナノチューブの電子親和力(EA)およびイオン化ポテンシャル(IP)は、Spataruら、Excitonic effects and optical spectra of single-walled carbon nanotubes、PHYSICAL REVIEW LETTERS 92(7) (2004年)によるナノチューブの電子的バンド構造、およびBaroneら、Screened exchange hybrid density-functional study of the work function of pristine and doped single-walled carbon nanotubes、JOURNAL OF CHEMICAL PHYSICS 124(2)(2006年)による仕事関数の第一原理計算から決定された。C60の電子的構造の第一原理計算は、ナノチューブのEAとC60のLUMOとの間の0.2eVのオフセット(offset)が予想されることを示す(図10Aおよび10B参照)。比較のために、相対的に3.5の誘電体の誘電率を有する、(8,4)半伝導性PW-CNT中の励起子の結合エネルギーは、0.1eVと予想される。それゆえ、エネルギーオフセットは、励起子の解離およびカーボンナノチューブからC60への電荷輸送をもたらすために十分である。
【0077】
対照的に、MDMO-PPVとカーボンナノチューブとの界面における励起子の解離は予想されるべきではない。むしろ、これらの2つの物質は、カーボンナノチューブのIPおよびEAの両方が、MDMO-PPVのHOMOおよびLUMOレベル内にある、ストラドリングタイプI(straddling type I)ヘテロ接合を形成することが期待される。MDMO-PPVとカーボンナノチューブとの間のストラドリングタイプIヘテロ接合の存在は、実験的に、フォトルミネッセンススペクトロスコピーによって支持されており、ポリマー吸収バンドの直接的な光学的励起子に対するナノチューブの光学的バンドギャップにおいて、ポリマーで被覆された半伝導性カーボンナノチューブから、強いフォトルミネッセンスが観察されている。
【0078】
上記で記載された平面のヘテロ接合を、CNTの浸透するネットワークの最上部に、直接有機半導体の薄いフィルムを堆積することによって形成することができる。電子輸送および/または励起子ブロッキング層140Aが、場合によって追加されてもよく、続けてカソード層150Aが堆積されて、図1Aに示した光起電力デバイス構造100Aを生成する。代わりに、アノード上に堆積された有機ドナー物質の薄いフィルムの上に、CNTの薄いフィルムを押し付けることができる。任意の電子輸送および/または励起子ブロッキング層140B、続けてカソード層150Bの堆積は、図1Bに示される光起電力デバイス構造100Bを生成する。
【0079】
CNTの浸透するネットワークの薄いフィルムを、直接成長、多孔質膜を通した真空濾過、スプレーベースの堆積戦略(spray-based deposition strategy)、スピンコーティング、層ごとの堆積法(layer-by-layer deposition approach)、誘電泳動、および蒸発によって調製することができる。
【0080】
図2A〜2Bは、光起電力デバイス200Aおよび200Bのための、2つのハイブリッド平面-バルクのヘテロ接合の実施形態を示す。図2Aを参照すると、光起電力デバイス200Aは、伝導性アノード層210A、および上記アノード層210Aの上部に形成される有機電子ドナー物質中に配置される、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブを含むバルクのへテロ接合層220Aを含む。電子アクセプター層230Aは、バルクのヘテロ接合層220Aの上部に形成され、伝導性カソード層250Aは、電子アクセプター層230Aの上部に形成される。バルクのヘテロ接合層220Aおよび電子アクセプター層230Aは、デバイス200Aの光活性領域222Aを形成する。代わりに、層220Aおよび230Aを、層220A中のポリマーで被覆されたカーボンナノチューブ、および層230Aの電子アクセプター物質がバルクのヘテロ接合を形成するように、配置することができる。
【0081】
バルクのヘテロ接合層220Aを形成するための、好適な有機半導体ドナー物質には、これに限定されないが、BTEM-PPV(ポリ(2,5-ビス(1,4,7,10-テトラオキサウンデシル)-1,4-フェニレンビニレン))、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、CuPc(銅フタロシアニン)、NPD(4,4’-ビス(N-(1-ナフチル)フェニルアミノ)ビフェニル)、ペンタセン、テトラセン、および同類のものが含まれる。電子アクセプター層230Aのための好適な有機半導体には、これに制限されないが、C60、[84]PCBM([6,6]-フェニルC84酪酸メチルエステル)、F16-CuPc、PTCBI(3,4,9,10ペリレンテトラカルボン酸ビスベンズイミダゾール)、PTCDA(3,4,9,10ペリレン-テトラカルボン酸二無水物)、またはポリ(ベンズイミダゾベンゾフェナントロリン)、TCNQ(7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)、F4-TCNQ(テトラフルオロテトラシアノキノジメタン)、および同類のものが含まれる。
【0082】
図2Bを参照すると、光起電力デバイスの実施形態200Bは、伝導性アノード層210Bおよびアノード層210Bの上部に形成される電子ドナー層220Bを含む。ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブを含む、バルクのヘテロ接合層230Bは、ドナー層220Bの上部に形成される有機電子アクセプター物質内に配置され、伝導性カソード層250Bはバルクのヘテロ接合層230Bの上部に形成される。バルクのヘテロ接合層230Bおよび電子ドナー層220Bは、デバイス200Bの光活性領域222Bを形成する。
【0083】
バルクのヘテロ接合層230Bを形成するための好適な有機半導体アクセプターには、これに限定されないが、C60、[84]PCBM([6,6]-フェニルC84酪酸メチルエステル)、F16-CuPc、PTCBI(3,4,9,10ペリレンテトラカルボン酸ビスベンズイミダゾール)、PTCDA(3,4,9,10ペリレン-テトラカルボン酸二無水物)、またはポリ(ベンズイミダゾベンゾフェナントロリン)、TCNQ(7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)、F4-TCNQ(テトラフルオロテトラシアノキノジメタン)、および同類のものが含まれる。電子ドナー層220Bのための好適な有機半導体には、これに限定されないが、BTEM-PPV(ポリ(2,5-ビス(1,4,7,10-テトラオキサウンデシル)-1,4-フェニレンビニレン))、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、CuPc(銅フタロシアニン)、NPD(4,4’-ビス(N-(1-ナフチル)フェニルアミノ)ビフェニル)、ペンタセン、テトラセン、および同類のものが含まれる。
【0084】
図2Cに例示した別の実施形態によると、光活性領域222C中の電子アクセプター層230Cおよび電子ドナー層220Cの両方は、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブおよびそれぞれアクセプタータイプまたはドナータイプの有機半導体物質を含む、バルクのヘテロ接合であり得る。
【0085】
図2Dにおいて、別の実施形態によるバルクのヘテロ接合のPVデバイス200Dを示す。デバイス200Dは、伝導性アノード層210D、伝導性カソード層250Dおよび2つの電極の間に備えられ、かつ電気的に接続したバルクのヘテロ接合層220Dを含む。バルクのヘテロ接合層220Dは、本明細書において開示された、有機電子アクセプターまたは電子ドナー物質のどちらかである、有機半導体物質中に配置された、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブを含む。この実施形態において、バルクのヘテロ接合層220Dは、デバイス200Dの光活性領域を形成する。場合によって、1つまたは複数の励起子ブロッキング層をデバイス中に備えることができる。励起子ブロッキング層215Dは、アノード層210Dとバルクのヘテロ接合層220Dとの間に備えることができる。別の励起子ブロッキング層240Dを、第一の励起子ブロッキング層215Dとともに、または第一の励起子ブロッキング層215Dとは独立のどちらかで、カソード層250Dとバルクのヘテロ接合層220Dとの間に備えることができる。
【0086】
200A、200B、200Cおよび200Dのデバイスにおいて、好ましくは、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブは、実質的に半伝導性のPW-SWNTである。任意の励起子ブロッキング層240A、240B、240Cを、光活性領域222A、222B、222Cとカソード層250A、250B、250Cとの間にそれぞれ備えることができる。さらに、任意の励起子ブロッキング層215A、215B、215Cを、光活性領域222A、222B、222Cとアノード層210A、210B、210Cとの間にそれぞれ備えることができる。アノードを平滑にする層が、アノードとドナーとの間に位置していてもよい。
【0087】
図3A〜3Bは、光起電力デバイス300Aおよび300Bのための、追加のハイブリッド平面-バルクのヘテロ接合の実施形態を示す。図3Aを参照すると、光起電力デバイスの実施形態300Aは、伝導性アノード層310Aと、アノード層310Aの上部に形成される電子ドナー層320Aとしてのポリマーで被覆されたカーボンナノチューブと、ドナー層320Aの上部に形成される有機電子アクセプター物質中に配置される、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブを含む、バルクのヘテロ接合層325Aとを含む。電子アクセプター層330Aは、バルクのヘテロ接合層325Aの上部に形成され、伝導性カソード層350Aは、アクセプター層330Aの上部に形成される。電子ドナー層320A、バルクのヘテロ接合層325Aおよび電子アクセプター層330Aは、デバイス300Aの光活性領域322Aを形成する。
【0088】
バルクのヘテロ接合層325Aおよび電子アクセプター層330Aを形成するための、好適な有機半導体アクセプター物質は、図1Aの実施形態とともに議論したものと同じである。
【0089】
図3Bを参照すると、光起電力デバイスの実施形態300Bは、伝導性アノード層310Bと、アノード層310Bの上部に形成される電子ドナー層320Bと、ドナー層320Bの上部に形成される有機電子ドナー物質中に配置される、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブを含む、バルクのヘテロ接合層325Bとを含む。電子アクセプター層330Bとしての、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブの薄いフィルムは、バルクのヘテロ接合層325Bの上部に形成され、伝導性カソード層350Bは、バルクのヘテロ接合層325Bの上部に形成される。電子ドナー層320B、バルクのヘテロ接合層325B、および電子アクセプター層330Bは、デバイス300Bの光活性領域322Bを形成する。
【0090】
実施形態300Aにおいて、バルクのヘテロ接合層325Bを形成するための好適な有機半導体アクセプター物質は、図1Aの実施形態とともに議論したものと同じである。電子ドナー層320Bのための可能な有機半導体物質は、図1Bの実施形態とともに議論したものと同じである。
【0091】
300Aおよび300Bの両方の実施形態において、バルクのヘテロ接合層325Aおよび325Bを、有機半導体物質およびポリマーで被覆されたカーボンナノチューブの両方の混合されたフィルムを堆積することによって、またはポリマーで被覆されたカーボンナノチューブの薄いマット(mat)の上に有機半導体の気相蒸着をすることによって形成することができる。このバルクのヘテロ接合層は、したがって、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブの層(320A、320B)と、有機半導体の層(330A、330B)との間に挟まれてもよい。
【0092】
300Aおよび300Bの両方の実施形態において、好ましくは、ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブは、実質的に半伝導性のPW-SWNTである。任意の励起子ブロッキング層340A、340Bを、光活性領域322A、322Bとカソード層350A、350Bとの間にそれぞれ接続することができる。さらに、任意の励起子ブロッキング層315A、315Bを、光活性領域322A、322Bとアノード層310A、310Bとの間にそれぞれ接続することができる。アノードを平滑にする層は、アノードとドナーの間に位置していてもよい。
【0093】
本明細書において議論される小分子の有機半導体は、真空熱蒸発(VTE)、有機気相蒸着(OVPD)、または溶液ベースの処理方法によって堆積することができる。背景の成長圧力、基材の温度、成長速度、有機半導体の分子構造、および基材の粗さに応じて、様々な形態および結晶秩序度を得ることができ、これは電荷輸送および界面の形態に影響を与える。有機半導体がCNTの浸透するネットワークの最上部に直接堆積した例において、CNTネットワークの固有の粗さは、粗さで誘起される結晶化、またはデバイス特性を改善するための結晶成長を引き起こすために使用されてもよい。
【0094】
現在有機半導体-半伝導性CNTヘテロ接合光起電力太陽電池の製作に適している、バンドギャップ、直径、および電子タイプによってカーボンナノチューブを分類するための1つの技術は、密度勾配超遠心分離法(DGU)(M. S. Arnold、A. A. Green、J. F. Hulvatら、Nature Nanotech. 1(1)、60(2006年); M. S. Arnold、S. I. Stupp、and M. C. Hersam、Nano Letters 5(4)、713(2005年))である。DGUを使用すると、最大99%の単独の電子タイプ(半伝導性または金属性のどちらか)のバルクのサンプル(グラム規模)をすぐに生成できる。さらに、DGUは、直径、光学的バンドギャップ、および電気的バンドギャップによって同様に分類することができる。
【0095】
マトリクスへのナノチューブのネットワークの組み込みは、これに制限されないが、マトリクス物質の気相蒸着およびポリマーとナノチューブのブレンドのスピンキャスティングを含む、当分野において知られているいくつかの方法によって実行することができる。(例えば米国特許第7341774号参照、その内容およびその中の参照は、参照により本明細書に援用される)
【0096】
上記で議論した通り、カーボンナノチューブの特性は、チューブの直径およびそのキラリティによって影響を受ける。これは図11A〜11Dに例示され、ここで、図11AのPW-CNT/C60ヘテロ接合ダイオード400のための、電流-電圧特性およびスペクトル的に分解された光応答性が示される。ダイオード400は、ITOアノード層410、PW-CNT層420、C60アクセプター層430、および任意のBCP励起子ブロッキング層440ならびにAgカソード450を含む。層の厚みは図11Aで提供される。PW-CNTは、1:1の質量比でMDMO-PPVポリマーで被覆され、PW-CNT/C60の界面はヘテロ接合を形成する。ダイオード400は、±1Vにおいて>103の暗電流整流比を有し(図11B参照)、これは、PW-CNT層420が、その存在が大きなシャント電流をもたらすことが予想される高密度の金属性チューブからなる場合に、特に注目される。金属チューブからのこのような寄生効果の不存在は、さらに、被覆されたポリマーによって、半伝導性チューブから、電気的およびエネルギー的に単離されることを示唆している。
【0097】
図11Bを参照すると、前のバイアス電流-電圧特性(実線)との一致は、2.0の理想係数および0.99Ω-cm2の特定の直列抵抗を有する理想的なダイオード式に従う。ここで、〜2の理想係数は、キャリア再結合が暗電流の支配的な供給源であり、十分なシャント電流を導く高密度の金属性チューブを再び注目して考えることを示唆する(したがって、抵抗で制限された輸送)。
【0098】
0Vおよび-0.7Vにおけるダイオードの近IR応答性を、図11Cで比較した。ナノチューブの直径の不均質により、光活性応答は、λ = 500nmにおけるピークのポリマーの応答を有する、E11(λ≒900〜1450nm)およびE22(λ≒550〜900nm)の両方の広い範囲の吸収の特徴が観察される。それぞれの吸収の特徴に応答可能なナノチューブのキラリティ(n, m)は、デバイスのポリマーおよび小分子成分の吸収領域であるとして、図11Cにおいてラベルを付けられる。非常に広いスペクトルの範囲は、集団で550nmから1600nmのスペクトルに及ぶ、SWNTの直径の多分散性の直接の結果である。
【0099】
図11Cを参照すると、0Vおよび-0.7Vのバイアスにおける、λ = 1155nmにおけるダイオードの応答性は、それぞれ12mA/Wおよび21mA/Wであり、ピークEQE = 2.3%に対応する。λ = 1300nmにおいて、検出器の応答性は、それぞれ11および21mA/W(EQE = 2.0%)であり、一方、これらの波長におけるCNTを欠くデバイスの応答は、測定できなかった(<0.1μA/W)。近IR(図11D)におけるSWNTのIQEは、λ = 1000とλ = 1400との間で>20%であり、非常に高いEQEを有するSWNTベースのデバイスが達成可能なことを示唆している。
【実施例】
【0100】
I. 物質
密度勾配超遠心分離法を使用する、Arnoldら、Nature Nanotech、1: 60-65(2006年)の方法を、半伝導性CNTを単離するために使用する。商業的に利用可能なCNTパウダーを、1:4のドデシル硫酸ナトリウムとコール酸ナトリウム(2%界面活性剤)との混合物と一緒に、超音波処理によって水中に懸濁する。ナノチューブの懸濁液を、その後、イオジキサノール(iodixanol)密度勾配に載せ、遠心分離し、浮遊密度によってナノチューブを分類する。密度勾配の分画後、イオジキサノールを、界面活性剤溶液中の透析によって除去する。好適な有機半導体は、当分野においてよく知られており、数多くの供給業者から商業的に入手可能である。
【0101】
II. 近IR感度を有する、平面のヘテロ接合
0.7〜1.1nmの範囲の直径を有する、原料のHiPCO単層カーボンナノチューブ(Carbon Nanotechnologies Inc.から)(10mg)を、10mlの2%(w/v)コール酸ナトリウム(Sigma-Aldrich、995)と水中で混合した。混合物を、ホーンプローブウルトラソニケーター(horn probe ultrasonicator)を使用して、15分間超音波バスで均質化した。単層カーボンナノチューブの粗い凝集体および大きな束を、その後、超遠心分離(15000g、12時間)を介して除去した。得られた懸濁液(100μl)の一定分量を、Al2O3膜(0.02μmの細孔、Whatman Inc.)上の真空濾過を介して濾過した。ナノチューブフィルムを、その後、指圧で膜中にPDMSを押圧することによって、平面のPDMSのスタンプに移動した。フィルムを、その後、AgでコートされたITO(酸化インジウムスズ)上の100nmのPTCDA(3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物)からなる基材の上に押し付けた(100N-cm2、60秒、室温、大気圧)。PTCDAおよびAgを、0.15nm/sの速度で、1×10-7Torr真空中のVTEによって堆積した。試験を周囲中で行い、AM1.5Gフィルターを付加したキセノンランプを、太陽のスペクトルを近似するために利用した。較正されたフォトダイオードを、光強度を決定するために利用した。
【0102】
得られたデバイス(図4)の電流密度-電圧曲線を、SWNTネットワークの表面に金の導体パッドを押圧し、電圧を印加することによって得た。図5のx軸におけるポテンシャルは、ITO/Ag電極のポテンシャルに対する、カーボンナノチューブフィルムのポテンシャルを示す。暗闇中において、デバイスは典型的なダイオードの挙動を示したが、模擬近IRの太陽放射(AM1.5Gスペクトル、950nmカットオフの誘電性ロングパスフィルターを通してフィルターした)で照射した場合、光電(つまり、光起電力または光検出)効果が観察された(図5)。
【0103】
IV. バルクのヘテロ接合
一実施形態において、実質的に半伝導性または混合されたSWNTの層を、透明アノードにPDMSを押し付けることによって移動する。有機アクセプターの溶液中の、実質的に半伝導性のSWNTの懸濁液を、SWNT層の上にスピンキャストする。アクセプター層、および任意の電子輸送ならびに/または励起子ブロッキング層を、その後、堆積し、続けてカソード層を堆積する。
【0104】
別の実施形態において、有機ドナー層をアノード基材の上に堆積し、有機アクセプターの溶液中の、実質的に半伝導性のSWNTの懸濁液を、ドナー層の上にスピンキャストする。実質的に半伝導性または混合されたSWNTを、PDMSを押し付けることによって塗布し、続けて任意の電子輸送および/または励起子ブロッキング層を堆積する。カソード層を、その後堆積する。
【0105】
上記で議論した通り、カーボンナノチューブ内の励起子を、有機アクセプター、C60と相互作用させることによって分裂することができ、1150nmにおいて約44%の大きさの内部量子効率が得られた(図9D参照)。カーボンナノチューブ/有機ハイブリッド光起電力デバイスのスペクトル範囲は、より広い直径のカーボンナノチューブを使用することによって、さらに近IRに拡張できることが予想される。
【0106】
本開示の別の実施形態によると、本明細書において開示されるPW-CNTベースの光活性領域を有する光起電力デバイスの近IR性能を、さらに改善することができる。一つとして、光場を管理することができ、PW-CNTベースの光活性領域における吸収を促進することができ、ITOアノードにおける吸収を低減することができる。これは、ITOは一般的に近IR範囲(>1000nm)において部分的に吸収するため、有益である。異なる波長における光起電力デバイスの感度は、約35nmのC60アクセプターの薄いバッファー層を堆積することによって変更できる。C60アクセプター層の薄いバッファー層は、CNTと金属Agカソード接点との間の接触の可能なショートを取り除き、したがって、暗(漏れ)電流を低減する。さらに、C60の厚みを変えることによって、光場を、AgカソードとPW-CNTベースの光活性領域との間の距離を変えることによって、変更することができる。したがって、C60の厚みは、PW-CNTの薄い層が光学的に最大値最小値または間のどこになるかどうかを決定する。
【0107】
PW-CNTベースの光活性領域およびITOの両方が近IRにおいて吸収し、かつお互いに非常に近いため、C60層の厚みは、光場の最大値が、ITOではなくPW-CNT層またはC60にあるように制御される。本発明者らは、0.7〜1.1nmの範囲の直径を有するHiPCOのCNTにとって、100〜150nmが、近IR光場最大値がPW-CNT層にあるために、理想的なC60厚みであることが分かった。これは、どの波長を対象にするかに応じて変化する。
【0108】
C60のより厚い層は、ITOの代わりにPW-CNT層内に光場を入れる。図9Aで示されるPW-CNTベースの光起電力デバイス90の全体の構造を参照すると、C60アクセプター層93は、好ましくは100から140nmの厚みであり、近IR光場におけるピークをPW-CNTベースの光活性層92に移動する。図12A〜12Dは、4つの異なるC60厚みを有する、模擬光起電力デバイス構造のための、計算された光場プロットを示す。全ての4つの模擬構造において、ITO層は140nmの厚みであり、PW-CNTベースの光活性層は50nmの厚みであり、BCP励起子ブロッキング層は10nmの厚みであり、Agカソード層は100nmの厚みである。C60層の厚みは、35nm(図12A)、70nm(図12B)、105nm(図12C)および140nm(図12D)である。図12A〜12Dにおける垂直の破線は、ITO、PW-CNTベースの光活性層、C60/BCP、およびAgカソード接点との間の境界を示す。近IR光場の強度は、35nmのC60ではITOにおいて示されるが、104nmおよび140nmでは主としてPW-CNTベースの光活性層において示される。
【0109】
図13は、C60アクセプターの異なる厚みでの光起電力デバイス90の応答性を示す。応答性は、70nm、105nmおよび140nmのC60厚みでは増加し、図12A〜12Dの光場プロットと相関がある。長波長における最も高いEQEは、C60の〜100または140nmの厚みで観察され、これは図12A〜12Dと相関する。例示した実施例において、C60は、PW-CNTベースの光活性層に対するアクセプター物質として使用されるが、C60と同様の好適なLUMOレベルを有する、他の有機物質を使用することができる。いくつかの例は、-4.0eVのLUMOを有するPTCBI(3,4,9,10ペリレンテトラカルボン酸ビスベンズイミダゾール)、-4.1eVのLUMOを有する[84]PCBM([6,6]-フェニルC84酪酸メチルエステル)、-4.4eVのLUMOを有するF16-CuPc、-4.0eVのLUMOを有するPTCBI(3,4,9,10ペリレンテトラカルボン酸ビスベンズイミダゾール)、-4.7eVのLUMOを有するPTCDA(3,4,9,10ペリレン-テトラカルボン酸二無水物)、-4.5eVのLUMOを有するポリ(ベンズイミダゾベンゾフェナントロリン)、3.9eVのLUMOを有するTCNQ(7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)、および同類のものである。
【0110】
使用されるC60アクセプター層93の厚みに関わらず、およそ700nmから1000nmの間の範囲のPW-CNTベースの光活性層92の応答性における正孔は、改善される必要がある。応答性におけるこの正孔は図11Cに示され、ここで、図11AのPW-CNT/C60ヘテロ接合ダイオード400のためのスペクトル的に分解された光応答が示される。図13を参照すると、部分的にはE22ピークの低減された吸収性により、E22範囲(λ ≒ 550〜900nm)における応答性は、E11範囲(λ ≒ 900〜1450nm)における応答性よりもかなり低いことに気付く。正孔は、このエネルギー範囲におけるE11またはE22遷移でのナノチューブの低減された数による、吸収の不足によってもたらされ、低減された応答性および検出能を有する範囲を作る。700から1000nmの間の応答性におけるこの正孔は、光場によらない。C60の全ての厚みで、これらの波長における光場が大きい場合でさえ(つまりC60が35nmまたは75nm)、本発明者らは〜900nm付近の低い応答性を見る。
【0111】
正孔、PW-CNTベースの光活性層92の低減された応答性の範囲は、PW-CNTベースのドナー層とアクセプター層との間の有機光活性物質の追加の層を備えることによって、満たされることができ、ここで、追加の有機光活性物質は、光活性デバイスにおいて、アクセプター物質に対する第二のドナー物質、および/またはPW-CNTベースのドナー物質に対する第二のアクセプターとして働く。この追加の有機光活性物質は、PW-CNTベースの光活性層92の応答性において正孔が存在する波長範囲における適切なエネルギーレベルおよび吸収を有する、小分子の物質またはポリマーであることができる。好ましい実施形態において、追加の有機光活性物質層は、好ましくは、600nmから900nmの波長バンドにわたって、少なくとも5×104cm-1の吸収係数を有する、小分子の物質またはポリマーであることができる。第一のドナー物質層(つまりPW-CNTベースのドナー物質)、追加の有機光活性物質層、およびアクセプター物質のそれぞれは、異なる吸収スペクトルを有していてもよい。
【0112】
図14Aに示される好ましい実施形態において、PW-CNTベースのドナー層とC60アクセプター層との間の有機光活性物質の追加の層980を、そこを通る開口部(opening)1001を有する単一の層として備えることができる。この実施形態において、PW-CNTベースのドナー層は、開口部1001を通してC60アクセプター層と直接接触する。代わりに、PW-CNTベースのドナー層とC60アクセプター層との間の有機光活性物質の追加の層980を、追加の有機光活性物質を含む複数の島1002を有する、不連続層として備えることができる。この場合、PW-CNTベースのドナー層は、島1002の中間のC60アクセプター層と直接接触する。どちらかの場合において、有機光活性物質の追加の層は、PW-CNT/C60ドナー-アクセプターヘテロ接合に加えて、追加の(新しい有機光活性物質)/C60ドナー-アクセプターヘテロ接合を形成する。
【0113】
さらに、追加の有機光活性物質層の形態は、記載された2つのタイプの組合せであることができる。言い換えると、有機光活性物質の追加の層は、そこを通る開口部を有する単一の層である1つまたは複数の領域を有することができ、複数の島を有する1つまたは複数の不連続領域を有することができる。さらには、追加の有機光活性物質層は、第二のドナー物質とC60アクセプター物質との混合物を含むことができる。この2つの物質は、分子レベルで混合されることができ、および/または小さな凝集において混合されることができ、2つの物質が共堆積(co-deposit)されて、励起子の解離を促進するためのバルクのへテロ接合領域を備える。OVPDによるバルクのヘテロ接合を形成するための方法の例は、2008年5月22日に出願された、米国特許出願第2008/0116536号に記載されており、その開示は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0114】
図15Aのエネルギー図を参照すると、追加の有機光活性物質層980がC60アクセプター層982に対するドナーとして働く実施形態において、追加の有機光活性物質のHOMOは、好ましくは、PW-CNTベースのドナー物質のHOMO(ΔE1として示す)より高い0.16eVを超えず、追加の有機光活性物質のバンドギャップは、好ましくは、PW-CNTベースのドナー物質984のバンドギャップより小さい。追加の有機光活性物質は、1×10-9cm2/Vs未満の正孔移動度を有していてもよい。
【0115】
図15Bのエネルギー図を参照すると、追加の有機光活性物質層980がPW-CNTベースのドナー層984に対するアクセプターとして働く実施形態において、追加の有機光活性物質のLUMOは、好ましくは、C60アクセプターのLUMO(ΔE2として示す)より低い0.16eVを超えず、追加の有機光活性物質のバンドギャップは、好ましくは、C60アクセプター物質982のバンドギャップより小さい。
【0116】
図15Cのエネルギー図を参照すると、別の実施形態において、複数の追加の有機光活性物質層(例えば、980a、980b、980c、980d)を、PW-CNTベースのドナー層984とアクセプター層982との間に備えることができる。この実施例において、層980aおよび980bは、アクセプター982に対するドナーとして働く、第一および第二の追加の有機光活性物質層を表し、層980cおよび980dは、PW-CNTベースのドナー984に対するアクセプターとして働く、第三および第四の追加の有機光活性物質層を表す。好ましくは、電荷キャリアのトラップを避けるため、第一の追加の有機光活性ドナー層980aのHOMOは、PW-CNTベースのドナー層984のHOMO(ΔE1,1により示す)より高い5kTを超えず; 第二の追加の有機光活性ドナー層980bは、追加の有機光活性ドナー層980aのHOMO(ΔE1,2により示す)より高い5kTを超えず; 第三の追加の有機光活性アクセプター層980cは、第四の追加の光活性アクセプター層980dのLUMO(ΔE2,1により示す)より低い5kTを超えず; 第四の追加の光活性アクセプター層980dは、アクセプター層982のLUMO(ΔE2,2により示す)より低い5kTを超えない。
【0117】
C60アクセプターに対するドナーとして働くことができる、追加の光活性物質層980のための小分子の物質の例には、スズ(II)フタロシアニン(SnPc)および鉛フタロシアニン(PbPc)が含まれる。例えば、SnPcは、SnPc/C60の界面における迅速かつ効果的な励起子の解離で、モノマーおよび凝集体の吸収の組合せを通して、波長領域(600nmから900nm)にまたがるスペクトル的応答を広げることができる。Yang, F.、Lunt, R. R.、and Forrest S. R.、Simultaneous heterojunction organic solar cells with broad spectral sensitivity、APPL. PHYS. LETT. 92(5)(2008年)を参照し、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0118】
図16Aのエネルギー図に示す通り、本開示の実施形態による光活性デバイスにとって、HOMOレベルがドナー層中のCNTとほぼ並び、SnPc層が上記で議論した所望の形態で成長することができる(つまり、複数の開口部を有する単一の層および/またはSnPcの島を含む不連続層を形成する)ため、SnPcは、C60アクセプターに対するドナーとして働く、好適な追加の有機光活性物質である。SnPcを、OVPD、VTE、インクジェットプリンティング、蒸気ジェット(vaporjet)プリンティング、ドクターブレード、または他の好適な方法によって表面上に堆積することができる。これは、アクセプターC60が成長することを可能にし、PW-CNT/C60のドナー-アクセプターヘテロ接合界面およびSnPc/C60のドナー-アクセプターヘテロ接合界面の両方からの応答性が得られる。SnPc層は、SnPcのダイマーに関連する、900nmにおける吸収ピークを備える。代わりに、SnPcは、C60と一緒に共堆積されることができ、SnPcのモノマーからの吸収と関連する、〜750nmのピークを作る。
【0119】
図16Bは、(a) 溶融石英ガラス基材上に成長した、CuPc、C60、およびSnPcフィルムの吸収係数α、(b) 関心のあるスペクトル範囲の700〜1000nmにおける、異なるSnPc厚みのITO/CuPc(15nm)/SnPc(tSnPc)/C60(40nm)/BCP/Ag太陽電池の、外部量子効率(EQE)、ηEQEを示す。
【0120】
図17Aは、アクセプターに対するドナーとして働く追加の有機光活性物質層として、SnPcのニート層(neat layer)527Aを組み込む本開示の実施形態による、改善された光活性デバイス構造500Aを示す。光活性デバイス500Aは、アノード層510Aと、カソード接点550Aと、アノード層510Aとカソード接点550Aと間に配置され、かつアノード層510Aおよびカソード接点550Aと電気的に接続された光活性領域520Aとを含む。好ましい実施形態において、アノード層510Aは、ITOなどの透明な金属基材から形成され、カソード接点550Aは、Agから形成される。
【0121】
光活性領域520Aは、ITO層510Aの上に形成される第一のドナー物質層525Aと、第一のドナー物質層525Aの上に形成されるアクセプター物質層530Aとを含む。第一のドナー物質層525Aは、PW-CNTを含む物質を含む。アクセプター物質層530Aに対する第二のドナー物質として働く、SnPcの薄い層527A(5nmの厚み)は、第一のドナー物質層525Aとアクセプター物質層530Aとの間に配置される。この実施形態におけるSnPcの第二のドナー物質層527Aは、上記で議論した通り、島を含む不連続層および/または複数の開口部を有する単一の層のどちらかであり、第一のドナー物質層525A中のPW-CNTと、アクセプター物質層530Aとの間の直接の接触を可能にし、したがって2つの平行なドナー-アクセプターヘテロ接合界面を形成する。好ましくは、アクセプター物質層530Aは、約100〜150nmの厚みを有するC60から形成される。好ましくは、アクセプター物質層530Aは、C60の150nmの厚みの層である。C60を、OVPD、VTE、インクジェットプリンティング、蒸気ジェットプリンティング、ドクターブレード、または他の好適な方法によって堆積することができる。好ましい実施形態において、C60はVTEによって堆積される。
【0122】
PW-CNTを含む物質層525Aを、HiPCOのCNT(0.1% wt./vol.)を、クロロホルム中の被覆するポリマー、MDMO-PPV(0.312% wt./vol.)の溶液中に入れ、その後高電力ホルンソニケーターを使用してCNTを分離し(30分間)、5時間、14000gにおいて遠心分離して、束、凝集体、および触媒粒子を除去することによって形成することができる。PW-CNTは、その後、PCBM(1.2% wt./vol.)中で可溶化され、熱いITOでコートされたガラス基材の上に、不活性窒素雰囲気中のドクターブレードを介して広げられる。
【0123】
図17Bおよび17Cは、それぞれ、光活性デバイス500Aの応答性および比検出能D*のプロットを示す。SnPcダイマーに関連する900nmにおけるピークは、それぞれのプロットにおいて特定される。比検出能D*は、
【数1】

を使用して計算し、ここで、Rはデバイス応答性(アンペア/ワット)であり、Aは面積(cm2)であり、およびSNは電流スペクトルノイズ密度(A・Hz-1/2)であり、ここで、SN2は全ての雑音電力の合計である(例えば熱的、ショットおよび過剰雑音)。ゼロバイアス下で、熱的(Johnson-Nyquist)雑音が支配的であり、これは、
【数2】

で与えられ、ここで、kBはボルツマン定数であり、Tは温度であり、およびRDはダイオードのゼロ-バイアス微分抵抗である。
【0124】
図18Aは、追加の有機光活性物質層527Bが、共堆積された第二のドナー物質およびアクセプター物質、C60を含む、別の実施形態による、改善された光活性デバイス構造500Bを示す。光活性デバイス500Bは、ITOアノード層510Bと、ITOアノード層510Bの上に形成される任意のEBL 515Bと、EBL 515Bの上に形成される光活性領域520Bと、光活性領域520Bの上に形成される任意のEBL 540B(10nmの厚み)と、Agカソード接点550Bとを含む。EBL 540Bを、BCP物質から作ることができる。
【0125】
光活性領域520Bは、ITO層510Bの上に形成される第一のドナー物質層525Bと、第一のドナー物質層525Bの上に形成されるアクセプター物質層530B(C60の約100〜150nm)とを含む。第一のドナー物質層525Bは、PW-CNTを含む物質を含む。アクセプター物質と第二のドナー物質を共堆積することによって形成される、追加の有機光活性物質層527Bは、PW-CNTを含む物質層525Bとアクセプター物質層530Bとの間に配置される。この実施例において、第二のドナー物質はSnPcであり、アクセプター物質はC60であり、得られる層527Bは約10nmの厚みである。
【0126】
共堆積されるSnPc+C60層527Bは、2つの物質の均質な混合物ではなく、SnPcおよびC60はバルクのヘテロ接合を形成し、好ましくは励起子の解離が発生できる大きな体積を有する。しかし、このような層は、純粋なドナー物質層または純粋なアクセプター物質層より低い伝導性を有し、低い伝導性は、光活性デバイス中の光電流を促進するためには望ましくない。伝導性の問題は、より厚い層で悪化するため、妥当な伝導性を望む場合には、このようなドナー+アクセプター層が有してもよい厚みに制限が存在する。
【0127】
共堆積されるSnPc+C60層527Bは、追加の有機光活性物質層中で発生する、全てまたはほとんどの光発生励起子に接近可能な、空間的に分布されたドナーとアクセプターの界面を提供する。共堆積されるSnPc+C60層527B中で形成される、バルクのヘテロ接合は、2つの物質の複数のドメインを有する結果として、多数のドナー-アクセプター界面を有することができる。いくつかのドメインは、反対のタイプの物質によって取り囲まれていてもよく(例えばアクセプター物質によって取り囲まれた第二のドナー物質のドメイン、または第二のドナー物質によって取り囲まれたアクセプター物質のドメイン)、および電気的に単離されてもよく、これらのドメインは光電流に貢献しない。しかし、浸透経路によって接続される十分多くの数のドメインが存在し(それぞれの2つの物質のドメインによって形成される、連続的な光電流経路)、これらの他のドメインは、光電流に寄与する。SnPcのドメインは、正孔輸送のための浸透経路を提供し、C60のドメインは、電子輸送のための浸透する経路を提供する。それゆえ、追加の有機光活性物質層527Bのための好ましい微細構造には、追加の有機光活性物質層527Bを通る、正孔および電子輸送のための浸透する経路が含まれる。好ましくは、経路の広さは5分子の広さ以下であり、より好ましくは3分子の広さ以下である。光発生電荷は、これらの対電荷と十分な再結合をすることなく、このような経路に沿って、それぞれの電極に効率的に輸送される。共堆積されるドナーおよびアクセプター物質は、効率的な励起子の拡散および続けて解離のために、空間的に分布したドナーとアクセプターの界面を形成する。
【0128】
共堆積されるSnPc+C60層527B中のC60は、PW-CNTを含む第一のドナー物質層525Bからアクセプター物質層530B中のC60へ、連続的な浸透経路を提供し、したがって、2つの平行なヘテロ接合を形成する: (1) 共堆積されるSnPc+C60層527B中で形成される、バルクのヘテロ接合、および(2) PW-CNTを含む第一のドナー物質層525Bと、層527Bおよび530B中のC60との間に形成される、ヘテロ接合。好ましくは、アクセプター物質層530Bは、C60の150nmの厚みの層である。
【0129】
結果は、実施形態500Aおよび500Bの両方において、第一のドナー物質(PW-CNT)は、第一のドナー物質層525A、525Bと、追加の有機光活性物質層527A、527Bとの間の界面において、アクセプター物質C60と直接接触する。両方の実施形態において、PW-CNTは、SnPc物質の領域またはドメインの間で、C60と接触した。
【0130】
追加の有機光活性物質層527Bは、PW-CNTを含む層525Bの上に近IRを吸収するSnPcとC60を共堆積することによって形成される。SnPcおよびC60を、VTE、OVPD、インクジェットプリンティング、蒸気ジェットプリンティング、溶液処理、または他の好適な方法によって共堆積することができる。好ましい一実施形態において、SnPcおよびC60物質は、VTEによって、1:3(体積、10nmの全体の厚み)の混合物で共堆積される。別の実施形態によって、アクセプター物質層530Bが、C60以外の好適なアクセプター物質から形成される場合、SnPcを含む追加の有機光活性物質層527Bは、その後、そのアクセプター物質と一緒にSnPcを共堆積することによって形成される。
【0131】
図18Bおよび18Cは、それぞれ、光活性デバイス500Bの応答性および比検出能のプロットを示す。SnPcモノマーに関連する750nmにおけるピークは、それぞれのプロットにおいて特定される。
【0132】
上記で議論した通り、C60と同様のLUMOレベルを有し、これらの波長において適切な吸収を有する、他の好適なアクセプター物質、例えばF16-CuPcまたはPTCBIを、C60の代わりに使用することができる。
【0133】
本開示において議論される様々な実施形態と一致する、SnPcまたはPbPcなどの第二のドナー物質を含む有機光活性層は、図2Aおよび3Aに示した実施形態において、アクセプター層と、PW-CNTを含むバルクのヘテロ接合層との間に備えることができる。
【0134】
好ましい一実施形態において、任意のEBLを、光活性領域520A、520Bと、これらのそれぞれの電極510A、550A(アノード)および510B、550B(カソード)との間に備えることができる。例えば、光活性デバイス500Aにおいて、第一の任意のEBL 515Aを、アノード510Aとドナー物質層525Aとの間に備えることができ、第二の任意のEBL 540Aを、カソード接点550Aとアクセプター物質層530Aとの間に備えることができる。カソード側に備えられたEBL 540A、540Bは、BCPなどの物質から形成され、アクセプター物質層530A、530Bに対する適切なHOMO-LUMOエネルギーギャップを有し、EBLと同様に正孔ブロッカーとして機能する。
【0135】
アノード側のEBLの目的は、ITOアノード層上で励起子を消光から防ぎ、ITOとPW-CNTとの間の電子輸送を防ぐことである。理想的には、ITOとCNTの界面は、CNT価電子バンドとITOの間で正孔輸送のみを有する。しかし、CNTの伝導バンドとITOとの間の電子輸送の障壁は小さい。好ましい実施形態において、アノード側に備えられたEBL 515A、515Bは、ドナー物質層525A、525Bに対する適切なHOMO-LUMOエネルギーギャップを有する物質から形成され、EBLと同様に暗電流を低減するための電子ブロッカーとして機能し、したがって、PW-CNTベースの光活性デバイス500Aおよび500Bの比検出能を増加させる。このような電子をブロックするEBLは、数多くの物質、例えばSiO2、PFO、またはNiOから、より好ましくは、NiOが〜3.5eVの広いバンドギャップおよび〜5.4eVの価電子バンドエネルギーを有するため、NiOから形成される。仕事関数は、電子輸送を阻害する一方、正孔輸送を容易にする、CNT価電子バンドと同様のエネルギーで約5eVである。これは、暗電流を低減し、デバイスの検出能を増加させ、デバイスの安定性を改善する。図19Aは、電流-電圧曲線への、電子ブロッキング層物質としてのSiO2およびPFOの効果を示す。図19Bは、応答性および比検出能を示す。電子ブロッキング層は、一般的に、応答性を低下させるが、暗電流の低下が比検出能を増加させるために十分である。それゆえ、EBLがデバイスのアノード側に備えられる、本明細書において記載される光活性デバイスの実施形態において、EBL層は、電子ブロッキングEBLまたは励起子をブロックしない電子ブロッキング層と交換可能である。
【0136】
図21Aを参照すると、別の実施形態による構造を有する、改善された光活性デバイス600が示される。光活性デバイス600は、ITOアノード層610と、ITOアノード層610の上に形成される任意の電子ブロッキングEBL 615と、電子ブロッキングEBL 615の上に形成される光活性領域620と、光活性領域620の上に形成される任意のBCP励起子ブロッキング層640(10nmの厚み)と、Agカソード接点650とを有する。
【0137】
光活性領域620は、ITOアノード物質層610の上に形成されるドナー物質層と、ドナー物質層の上に形成されるアクセプター物質層630とを含む。光活性デバイス500Bにおいて、ドナー物質層は、PW-CNTを含む層625と、PW-CNTを含む層625とアクセプター物質C60層630との間に配置される、追加の有機光活性物質層627とを含む。追加の有機光活性物質層627は、10nmの厚みのフィルムに共堆積することによって形成される、SnPcおよびC60の両方を含む。アクセプター物質層630はC60から形成され、約100〜150nmの厚みである。光活性デバイス500Bにおいて、2つの平行なヘテロ接合が形成される: (1) 追加の有機光活性物質層627におけるSnPcおよびC60によって形成される、バルクのヘテロ接合; および(2) PW-CNTを含む第一のドナー物質層625と、層627および630中のC60との間に形成される、ヘテロ接合。追加の有機光活性物質層627は、PW-CNTを含む層625の上に、近IRを吸収するSnPcとC60(体積で1:3、10nmの厚み)とを共堆積することによって形成される。この実施例において、PW-CNTは、MDMO-PPVよりも、P3HTなどのチオフェンベースのポリマーで被覆される。P3HTのCNTに対する比は、1mg/mlのCNTに対して、3.2mg/mlのP3HTである。図21Bは、本発明者らのデバイスにおいて使用される、様々な物質のための減衰係数を示す。実線700はPW-CNT溶液であり、破線710はSnPcであり、一点鎖線720はC60であり、二点鎖線730はP3HTであり、点線740はMDMO-PPVである。
【0138】
図21Cは、図21Aのデバイス600のための電流-電圧プロットを示す。P3HTベースのデバイスの10-6A/cm2の暗電流は、MDMO-PPVに基づくものより約2桁低く、これはおそらく前者の構造におけるPW-CNT濃度の約50%の低下による。さらに、データとの一致は、比較的高い2.45Ω-cm2の特定の直列抵抗、および1.34の理想係数を与え、これは、非常に高いCNT濃度でデバイス中に広く行き渡っている、浸透するシャント電流が、光活性デバイス600において、実質的に低下したことを示す。
【0139】
暗電流特性に基づいて、0VにおけるPW-CNT:P3HT/C60+SnPcの形成された光活性領域620の比検出能(D*)を、ダイオードの雑音が主に熱由来であると仮定することによって計算した。図21Dは、0.32%の被覆するポリマー(P3HT)と、超音波分解され、5時間、14000gで遠心分離された0.1%のHiPCOのCNTとを含む、PW-CNT層を有する、図19Aにおけるデバイスの比検出能(D*)を示す。サンプルを、1:3の比で共堆積したSnPc+C60層627の10nmの層と一緒に、アニールしたITOの上に作製し、C60の厚みを100nmとした。光活性デバイス600は、λ<400nmからλ = 1450nmで、D*>1010cmHz1/2W-1を示す。λ<600nm、λ = 600nm〜950nm、およびλ>950nmの範囲における応答は、主に、それぞれC60およびP3HT、SnPc、ならびにPW-CNTの存在によるものであった。応答性は、〜1.1nm範囲のCNTの直径の上限値に対応する吸収の欠如により、λ>1450nmにおいて大きく低下する。
【0140】
本発明者らは、λ = 1000nmを超えて広がるD*を有し、かつλ>1200nmにおいて適切な応答性を有する、有機光活性デバイスを知らない。
【0141】
最後に、適切なITO物質が望ましい。商業的なITOは、典型的には、可視の波長における使用のために最適化されるため、1000nmを超える波長で増加する吸収を有する。これは、CNTを含む層が、吸収を最大化するために大きな光場を有さねばならいため、およびITOがCNTを含む層の隣に直接存在するため、本開示の近IR光活性デバイスにおいて望ましくなく、光場が、ITOにおいて小さく、隣接するCNTを含む層において大きくなるように、光場を調整することは難しい。本発明者らは、1000nmを超える波長での吸収が、空気中でITOをアニールすることによって低減され、ITO吸収に関与するプラズモンの波長を増加させる、キャリア濃度を低減できることを見出した。約250〜400℃で、好ましくは約300℃で、最低10分間、および最大30分間、空気中でITOをアニールすることによって、図20に見られる通り、吸収プロファイルを変更することができ、近IR応答のために最適化される。吸収は、プラズモン吸収によるものであり、したがって吸収のエネルギーは、キャリア濃度の平方根に比例する。空気中の軽いアニールは、ITOのキャリア濃度を低下させ、プラズモン共鳴の波長を増加させる。図20は、そのまま、空気中、300℃で15分間、30分間アニールした、商業的なITOの吸収を示す。
【0142】
他の実施形態において、透明ポリマー電極物質などの他の透明電極物質を、光活性デバイスのアノードのために使用することができる。光活性デバイスにおいて、正孔注入アノードとして使用することができる透明伝導性ポリマーのいくつかの例は、ポリアニリン(PAni)およびポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)である。これらのポリマーを、好適な伝導性ポリマー、例えばポリスチレンスルホン酸(PSS)でドープして使用することができる。
【0143】
結論として、本発明者らは、真空熱的蒸発で堆積された分子、SnPcおよびC60とともに、PW-CNTベースからなる、不均質な物質システムを用いる光活性デバイスを実証した。得られた光活性デバイスは、λ = 1155nmにおけるピークEQE = 2.3%の、λ = 1450nmまで拡張した応答を有した。λ = 2000nm近くまでのスペクトル応答性の拡張は、小さな光学的バンドギャップを有する大きな直径のカーボンナノチューブを用いることによって、達成することができると予想される。カーボンナノチューブ、有機ポリマー、および低分子量の有機半導体の組合せは、半導体デバイスのファミリーの、光電子工学的用途の前例のない範囲における有用性を実現するための潜在性を示す。特に、広い吸収スペクトル、周囲環境における化学的安定性、および優れた電荷輸送特性を有する半伝導性CNTは、溶液処理が可能な、高効率の光活性デバイス、例えば光起電力電池および光検出器における使用のための潜在性を有する。さらに、ナノチューブの直径方向に多分散したフィルムから得られる、非常に広いスペクトル範囲は、特徴として低い電力変換効率を導く、従来の有機光起電力デバイスの比較的狭い励起子の吸収ラインから、大きく脱却している。
【0144】
真空蒸着された小分子の物質、例えばSnPcおよびC60を伴う、PW-CNTからなる不均質な物質システムを用いる光活性デバイスにおいて、PW-CNTは、好ましくは、実質的に半伝導性のPW-CNTであり、より好ましくは、その中のCNTはSWNTである。
【0145】
光活性領域中に、第二のドナー物質層、例えばSnPcを含む層が組み込まれる、本明細書において記載される光活性デバイスの実施形態は、電子および励起子ブロッキング層ならびに改善されたITO電極は、SnPcの利用によって備えられるλ = 600から950nmの間の光応答性の改善とともに、400〜1450nmのスペクトルにわたって増加した広範囲の光応答性を有する。
【0146】
本発明は、特定の実施例および好ましい実施形態に対して記載されるが、本発明はこれらの実施例および実施形態に制限されないことが理解される。それゆえ、請求された本発明は、当業者にとって明らかである、本明細書において記載された特定の実施例および好ましい実施形態からの変形例を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電極;
第二の電極;
以下:
第一の電極の上部に形成される、光活性ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブを含む第一のドナー物質を含む、第一の有機光活性層;
第一の有機光活性物質層の上部に形成される、第一のアクセプター物質を含む、第二の有機光活性層; および
第一と第二の有機光活性物質層の間に配置される、1つまたは複数の追加の有機光活性物質であって、第一のアクセプター物質に対するドナーとして、または第一のドナー物質に対するアクセプターとして働く、追加の有機光活性物質;
を含む、第一の電極と第二の電極との間に配置され、かつ第一の電極および第二の電極と電気的に接続された光活性領域;
を含むデバイス。
【請求項2】
前記1つまたは複数の追加の有機光活性物質層が、そこを通る複数の開口部を有する単一の層を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第一の有機光活性物質層が、前記開口部を通して、第二の有機光活性物質層と直接接触する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記1つまたは複数の追加の有機光活性物質層が、複数の島を有する不連続層を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第一の有機光活性物質層が、島の中間で、第二の有機光活性物質層と直接接触する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記1つまたは複数の追加の有機光活性物質層が、小分子の物質を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記小分子の物質が、600nmから900nmの波長帯にわたって、少なくとも5×104cm-1の吸収係数を有する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記小分子の物質のHOMOが、第一のドナー物質のHOMOより高い0.16eVを超えない、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記小分子の物質のバンドギャップが、第一のドナー物質のバンドギャップより小さい、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記小分子の物質が、1×10-9cm2/Vs未満の正孔移動度、および600nmから900nmの波長帯にわたって、少なくとも5×104cm-1の吸収係数を有する、請求項7に記載のデバイス。
【請求項11】
前記小分子の物質が、スズ(II)フタロシアニン(SnPc)および鉛フタロシアニン(PbPc)から選択される物質を含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記1つまたは複数の有機光活性物質層のうちの少なくとも1つが、小分子の物質および第一のアクセプター物質の共堆積された層を含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第一の電極が、透明ポリマー電極物質から形成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第一の電極が、酸化インジウムスズである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記酸化インジウムスズが、250から400℃の間で、空気中でアニールされた、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記酸化インジウムスズが、300℃で、約10〜30分間、空気中でアニールされた、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記アクセプター物質が、約100〜140nmの厚みを有するC60である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブが、実質的に半伝導性の、ポリマーで被覆された単層カーボンナノチューブである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記ポリマーで被覆された単層カーボンナノチューブが、光活性ポリマーで被覆される、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記ポリマーで被覆された単層カーボンナノチューブが、約400nmから1400nmの範囲の光の吸収で励起子を作る、請求項18に記載のデバイス。
【請求項21】
第二の有機光活性物質層と第二の電極との間に備えられる、励起子ブロッキング層をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
第一の有機光活性物質層と第一の電極との間に備えられる、励起子ブロッキング層をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
第一の有機光活性物質層と第一の電極との間に備えられる、電子ブロッキング層をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
前記電子ブロッキング層が、SiO2、PFOまたはNiOのうちの1つから形成される、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記第一のアクセプター物質層が、C60、[84]PCBM([6,6]-フェニルC84酪酸メチルエステル)、F16-CuPc、PTCBI、PTCDA、ポリ(ベンズイミダゾベンゾフェナントロリン)、TCNQ(7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)、およびF4-TCNQ(テトラフルオロテトラシアノキノジメタン)のうちの1つから形成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項26】
前記第一の有機光活性物質層が、バルクのヘテロ接合である、請求項1に記載のデバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図19A】
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【図19B】
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【図21C】
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【図21D】
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【公表番号】特表2011−520262(P2011−520262A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507555(P2011−507555)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/041797
【国際公開番号】WO2010/036397
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(509119061)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン (14)
【Fターム(参考)】