説明

改善されたヘイズを有するシリコン薄膜太陽電池及びその製造方法

化学気相成長コーティング・プロセスを用いて、トップ層18及びアンダーコーティング層16を有するコーティング・スタックのヘイズを増大させる方法が、前駆体の流速を高めるステップ、キャリア・ガスの流速を低減させるステップ、基板の温度を高めるステップ、水の流速を高めるステップ、排気の流速を低減させるステップ、及びトップ層又はアンダーコーティング層の少なくとも一方の厚さを増大させるステップの少なくとも1つを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に太陽電池に関し、特定の一実施例において、改善されたヘイズ特性を有するアモルファス・シリコン薄膜太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアモルファス・シリコン薄膜太陽電池は、通常はガラス基板を含み、ガラス基板の上に、透明導電性酸化物(TCO)のコンタクト層及びpn接合を有するアモルファス・シリコン薄膜の活性層が設けられる。背面の金属層は、リフレクタ及び裏面コンタクトとして働く。TCOは、光散乱を増大させるために不規則な面を有する。太陽電池では、光散乱又は「ヘイズ」を用いてセルの活性領域に光を閉じ込める。セルに閉じ込められる光が多いほど、高い効率を得ることができる。しかしながら、ヘイズは、TCOを通る光の透過性に悪影響を及ぼすほど大きくすることはできない。したがって、太陽電池の効率を改善しようとするとき、光の閉じ込めは重要な問題であり、薄膜セルの設計では特に重要である。しかしながら、薄膜デバイスの場合、層の厚さがこれまでに知られている単結晶デバイスの厚さよりずっと薄いため、この光の閉じ込めはより困難である。膜の厚さを減少させると、ほとんど平行な面を有するコーティングになる傾向がある。そうした平行な面では通常、有効な光散乱がもたらされない。このことは、従来の化学気相成長(CVD)コーティング法によって堆積させたコーティングの場合に特に顕著である。従来のCVDコーティング法は、スループット及びコストにおける利点をもたらすと同時に、従来のCVDの堆積は、基板上に0.5%未満のヘイズを有する滑らかで均質なコーティング層を形成する傾向がある。そうした滑らかなコーティング層は通常、太陽電池の効率を著しく高める十分な光散乱を有する層を形成しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,746,347号
【特許文献2】米国特許第4,792,536号
【特許文献3】米国特許第5,030,593号
【特許文献4】米国特許第5,030,594号
【特許文献5】米国特許第5,240,886号
【特許文献6】米国特許第5,385,872号
【特許文献7】米国特許第5,393,593号
【特許文献8】米国特許第4,853,257号
【特許文献9】米国特許第4,971,843号
【特許文献10】米国特許第5,536,718号
【特許文献11】米国特許第5,464,657号
【特許文献12】米国特許第5,714,199号
【特許文献13】米国特許第5、599、387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、改善された光散乱特性を有する太陽電池、及び特にCVD法による太陽電池の製造方法を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例えば、コーティング・スタックのヘイズの増減を制御する方法が提供される。トップ層及びアンダーコーティング層を有するコーティング・スタックのヘイズを増大させる方法は、ある表面粗さを有するアンダーコーティング層を堆積させること、及び化学気相成長によってアンダーコーティング層の上にトップ層を、トップ層がアンダーコーティング層より大きい表面粗さを有するように堆積させることを含む。
【0006】
化学気相成長コーティング・プロセスを用いて、トップ層及びアンダーコーティング層を有するコーティング・スタックのヘイズを増大させる他の方法は、前駆体の流速を高めること、キャリア・ガスの流速を低減させること、基板の温度を高めること、水の流速を高めること、排気の流速を低減させること、及びトップ層又はアンダーコーティング層の少なくとも一方の厚さを増大させることの少なくとも1つを含む。
【0007】
薄膜太陽電池は、少なくとも1つの主面を有する透明基板を含む。主面の少なくとも一部の上に第1のコーティングが形成され、第1のコーティングは、シリコン、チタン、アルミニウム、スズ、ジルコニウム及び/又はリンから選択される1つ又は複数の酸化物を含む。第1のコーティングの少なくとも一部の上に第2のコーティングが形成され、第2のコーティングは、Zn、Fe、Mn、Al、Ce、Sn、Sb、Hf、Zr、Ni、Zn、Bi、Ti、Co、Cr、Si若しくはInの1つ又は複数の酸化物、或いはこれらの材料の2つ以上の合金の酸化物から選択される1つ又は複数の酸化物材料を含む。
【0008】
本発明の完全な理解は、添付図面に関連付けて以下の記述から得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の構成を組み込んだ太陽電池の側面断面図(縮尺通りではない)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において使用されるとき、「左」、「右」、「内側」、「外側」、「上」、「下」などの空間又は方向に関する用語は、図面に示されるように本発明に関連している。しかしながら、本発明は、様々な別の向きをとることが可能であり、したがってそうした用語は限定するものとはみなされないことを理解されたい。さらに、本明細書において使用されるとき、明細書及び特許請求の範囲で用いられる寸法、物理的特性、処理パラメータ、成分の量、反応条件などを表すすべての数は、すべての場合に「約」という用語によって修飾されるものと理解されたい。したがって、そうではないことが示されない限り、以下の明細書及び特許請求の範囲に示す数値は、本発明によって見つけられ得られる所望の特性に応じて異なってもよい。少なくとも均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとするのではなく、各数値は、少なくとも報告される有効桁数を考慮し、通常の丸めの手法を適用することによって解釈すべきである。さらに、本明細書において開示されるすべての範囲は、始め及び終わりの範囲の値、並びにそれに包含されるすべての部分範囲を含むものと理解されたい。例えば明記された「1〜10」という範囲は、最小値1と最大値10の間の(及びそれらを含めた)すべての部分範囲、すなわち、最小値1又はそれより大きい値で始まり、最大値10又はそれより小さい値で終わるすべての部分範囲、例えば1〜3.3、4.7〜7.5、5.5〜10などを含むとみなすべきである。さらに本明細書において使用されるとき、「〜の上に形成される」、「〜の上に堆積される」又は「〜の上に設けられる」という用語は、面の上に形成される、堆積される又は設けられるが、必ずしも面に直接接しているわけではないことを意味する。例えば、基板の「上に形成された」コーティング層は、形成されたコーティング層と基板との間に位置する、同じ若しくは異なる組成の1つ又は複数の他のコーティング層若しくは膜の存在を排除するものではない。本明細書において使用されるとき、「ポリマー」又は「ポリマーの」という用語は、オリゴマー、ホモポリマー、コポリマー及びターポリマー、例えば2つ以上のタイプのモノマー又はポリマーから形成されたポリマーを含む。「可視領域」又は「可視光」という用語は、380nm〜760nmの範囲の波長を有する電磁放射を指す。「赤外領域」又は「赤外放射」という用語は、760nm超〜100,000nmの範囲の波長を有する電磁放射を指す。「紫外領域」又は「紫外放射」という用語は、200nm〜380nm未満の範囲の波長を有する電磁エネルギーを意味する。「マイクロ波領域」又は「マイクロ波放射」という用語は、300メガヘルツ〜300ギガヘルツの範囲の周波数を有する電磁放射を指す。さらに、それだけに限らないが、本明細書において参照される発行済みの特許及び特許出願などのすべての文書は、その全体を「参照によって援用される」ものとみなされたい。以下の議論において、屈折率の値は、550ナノメートル(nm)の基準波長に対するものである。「膜」という用語は、所望の又は選択された組成物を有するコーティングの領域を指す。「層」は、1つ又は複数の「膜」を含む。「コーティング」又は「コーティング・スタック」は、1つ又は複数の「層」からなる。
【0011】
本発明の特徴を組み込んだ例示的な太陽電池10を、図1に示す。太陽電池10は、少なくとも1つの主面14を有する基板12を含む。主面14の少なくとも一部の上に、本発明の第1のコーティング16(アンダーコーティング層)が形成される。第1のコーティング16の少なくとも一部の上に、第2のコーティング18(透明導電性酸化物又は「TCO」)が形成される。第2のコーティング18の少なくとも一部の上に、アモルファス・シリコンの層20が形成される。アモルファス・シリコン層20の少なくとも一部の上に、金属又は金属を含有する層22が形成される。
【0012】
本発明の広範な実施において、基板12は、任意の所望の特性を有する任意の所望の材料を含むことができる。例えば基板は、可視光に対して透明又は半透明にすることができる。「透明」とは0%超から100%までの可視光の透過率を有することを意味する。或いは、基板12は半透明でもよい。「半透明」とは、電磁エネルギー(例えば可視光)を通過させるが、見る人の反対側の物体ははっきり見えないようにこのエネルギーを拡散させることを意味する。適切な材料の実例には、それだけに限らないが、プラスチック基板(ポリアクリルレートなどのアクリル・ポリマー;ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレートなどのポリアルキルメタクリレート;ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキルテレフタレート;ポリシロキサン含有ポリマー;又はこれらを調製するための任意のモノマーのコポリマー、若しくはこれらの任意の混合物)、ガラス基板、又は前述の任意のものの混合物若しくは組み合わせが含まれる。例えば基板12は、従来のソーダ・ライム・シリケート・ガラス、ホウケイ酸塩ガラス又は鉛ガラスを含むことができる。ガラスは、透明なガラスとすることができる。「透明なガラス」とは、着色されていない又は無色のガラスを意味する。或いはガラスは、着色された又は色付きのガラスとすることができる。ガラスは、焼きなまし又は熱処理が施されたガラスとすることができる。本明細書において使用されるとき、「熱処理された」という用語は、焼き入れされること、又は少なくとも部分的に焼き入れされることを意味する。ガラスは、従来のフロート・ガラスなど任意のタイプのものとすることができ、また例えば可視透過、紫外透過、赤外透過及び/又はすべての太陽エネルギーの透過に関する任意の値など、任意の光学的特性を有する任意の組成のものとすることができる。「フロート・ガラス」とは、溶融ガラスを溶融金属浴の上に堆積させ、制御可能に冷却してフロート・ガラス・リボンを形成する、従来のフロート・プロセスによって形成されるガラスを意味する。本発明を限定するものではないが、基板に適したガラスの実例が、米国特許第4,746,347号、第4,792,536号、第5,030,593号、第5,030,594号、第5,240,886号、第5,385,872号及び第5,393,593号に記載されている。本発明の実施に用いることができるガラスの非限定的な実例には、Solargreen(登録商標)、Solextra(登録商標)、GL−20(登録商標)、GL−35(商標)、Solarbronze(登録商標)、Starphire(登録商標)、Solarphire(登録商標)、Solarphire PV(登録商標)及びSolargray(登録商標)というガラスが含まれ、それらはすべて、ペンシルバニア州ピッツバーグのPPG Industries Inc.から市販されている。
【0013】
基板12は、例えば長さ、幅、形状又は厚さなど、任意の所望の寸法のものとすることができる。例えば基板12は、平坦にすること、湾曲させること、又は平坦な部分と湾曲した部分の両方を有することができる。非限定的な一実施例において、基板12は、1mm〜5mm、2mm〜4mm、3mm〜4mmなど、1mm〜10mmの範囲の厚さを有することができる。
【0014】
基板12は、550ナノメートル(nm)の基準波長において、高い可視光透過率を有することができる。「高い可視光透過率」とは、550nmにおける、87%以上、90%以上、91%以上、92%以上など、85%以上の可視光透過率を意味する。
【0015】
本発明の実施では、以下に記述するように、第1のコーティング16(アンダーコーティング層)を用いて、後で塗布される第2のコーティング18の粗さ(「ヘイズ」)に影響を及ぼすこと、例えばそれを増大させることができる。アンダーコーティング層16にわずかなヘイズ又は粗さ(例えば表面粗さ)を意図的に導入することによって、第2のコーティング層18の表面でこのヘイズが増幅されることが分かっている。これは、アンダーコーティング層16に対する第2の層18の結晶構造の不整合によるものと考えられる。
【0016】
以下では、第1のコーティング16及び/又は第2のコーティング18の粗さを増大させるための方法について記述する。非限定的な一実施例において、第1のコーティング16は、シリコン、チタン、アルミニウム、スズ、ジルコニウム及び/又はリンの酸化物から選択される1つ又は複数の酸化物を含む。酸化物は、任意の所望の割合で存在することができる。例えば、第1のコーティング16はシリカを含むことができる。或いは、第1のコーティング16は、シリカが0.1重量パーセント(重量%)〜99.9重量%の範囲で存在し、チタニアが99.9重量%〜0.1重量%の範囲で存在するシリカとチタニアの混合物を含むことができる。第1のコーティング16は、均質なコーティングとすることができる。或いは、第1のコーティング16は、例えばシリカとチタニアなどの成分の相対的な割合がコーティングを通して変化する、勾配のあるコーティングとすることができる。例えば第1のコーティング16は、基板12の面に隣接する領域では主にシリカ、第1のコーティング16の外側の領域(すなわち、基板12から離れた面)では主にチタニアとすることができる。例えば第1のコーティング16は、80nm〜90nmの範囲の厚さを有するシリカとすることができる。
【0017】
これまでに論じたように、第1のコーティング16は、シリコン、チタン、アルミニウム、スズ、ジルコニウム及び/又はリンから選択される元素を有する少なくとも2つの酸化物の混合物を含むことができる。そうした混合物には、それだけに限らないが、チタニアと酸化リン;シリカとアルミナ;チタニアとアルミナ;シリカと酸化リン;チタニアと酸化リン;シリカと酸化スズ;酸化スズと酸化リン;チタニアと酸化スズ;アルミナと酸化スズ;シリカとジルコニア;チタニアとジルコニア;アルミナとジルコニア;アルミナと酸化リン;ジルコニアと酸化リン;又は前述の材料の任意の組み合わせが含まれる。酸化物の相対的な割合は、一方の材料が0.1重量%〜99.9重量%、他方の材料が99.9重量%〜0.1重量%など、任意の所望の量とすることができる。
【0018】
さらに、第1のコーティング16は、それだけに限らないが、シリコン、チタン、アルミニウム、スズ、ジルコニウム及び/又はリンから選択される元素を有する3つ以上の酸化物など、少なくとも3つの酸化物の混合物を含むことができる。実例には、それだけに限らないが、シリカ、チタニア及び酸化リン;シリカ、酸化スズ及び酸化リン;シリカ、チタニア及びアルミナ;並びにシリカ、チタニア及びジルコニアを含む混合物が含まれる。例えば第1のコーティング16は、シリカ及びチタニアと、アルミナ、ジルコニア及び酸化リンから選択される少なくとも1つの他の酸化物との混合物を含むことができる。他の実例では、第1のコーティング16は、シリカ及び酸化スズと、アルミナ、ジルコニア及び酸化リンから選択される少なくとも1つの他の酸化物との混合物を含むことができる。酸化物の相対的な割合は、1つの材料が0.1重量%〜99.9重量%、第2の材料が99.9重量%〜0.1重量%、第3の材料が0.1重量%〜99.9重量%など、任意の所望の量とすることができる。
【0019】
本発明のある特定の第1のコーティング16は、シリカ、チタニア及び酸化リンの混合物を含む。シリカは、30体積パーセント(体積%)〜80体積%の範囲で存在することができる。チタニアは、5体積%〜69体積%の範囲で存在することができる。酸化リンは、1体積%〜15体積%の範囲で存在することができる。
【0020】
他の非限定的な実施例において、第1の層16は、アナターゼ型チタニアを含むことができる。アナターゼ型チタニアの第1の層16を使用することによって、第2の層18のヘイズを増大させることが可能であることが見出されている。これは、チタニアのアンダーコーティング層16と、アンダーコーティング層16の上に形成された第2の層18との間の結晶の不整合によるものと考えられる。
【0021】
第1のコーティング16は、それだけに限らないが、30nm〜100nm、30nm〜90nm、40nm〜90nm、50nm〜90nm、70nm〜90nm、80nm〜90nmなど、10nm〜120nmの任意の所望の厚さを有することができる。
【0022】
非限定的な一実施例において、第2のコーティング18は、ドープされた酸化物層など、少なくとも1つの導電性酸化物層を含む。例えば第2のコーティング18は、それだけに限らないが、Zn、Fe、Mn、Al、Ce、Sn、Sb、Hf、Zr、Ni、Zn、Bi、Ti、Co、Cr、Si若しくはInの1つ又は複数の酸化物、或いはスズ酸亜鉛などこれらの材料の2つ以上の合金の酸化物の1つ又は複数など、1つ又は複数の酸化物材料を含むことができる。第2のコーティング18は、それだけに限らないが、F、In、Al、P及び/又はSbなど、1つ又は複数のドーパント材料を含むこともできる。非限定的な一実施例において、第2のコーティング18は、フッ素がコーティング前駆体材料中に、前駆体材料の全重量に対して15重量%未満、13重量%未満、10重量%未満、5重量%未満など、20重量%未満の量で存在するフッ素ドープ酸化スズ・コーティングである。第2のコーティング18は、非晶質、結晶質又は少なくとも部分的に結晶質とすることができる。
【0023】
第2のコーティング18は、250nm超、350nm超、380nm超、400nm超、420nm超、500nm超、600nm超など、200nm超の厚さを有することができる。非限定的な一実施例において、第2のコーティング18はフッ素ドープ酸化スズを含み、400nm〜800nm、500nm〜700nm、600nm〜700nm、650nmなどの350nm〜1,000nmの範囲など、前述の厚さを有する。
【0024】
第2のコーティング18(例えばフッ素ドープ酸化スズ)は、14オーム/スクエア(Ω/□)未満、13.5Ω/□未満、13Ω/□未満、12Ω/□未満、11Ω/□未満、10Ω/□未満など、15Ω/□未満の表面抵抗率を有することができる。
【0025】
第2のコーティング18は、5nm〜40nm、5nm〜30nm、10nm〜30nm、10nm〜20nm、10nm〜15nm、11nm〜15nmなど、5nm〜60nmの範囲の表面粗さ(RMS)を有することができる。第1のコーティング16の表面粗さは、第2のコーティング18の表面粗さより小さい。
【0026】
アモルファス・シリコン層20は、200nm〜800nm、300nm〜500nm、300nm〜400nm、350nmなど、200nm〜1,000nmの範囲の厚さを有することができる。
【0027】
金属を含有する層22は、金属とすること、或いは1つ又は複数の金属酸化物材料を含むことができる。適切な金属酸化物材料の実例には、それだけに限らないが、Zn、Fe、Mn、Al、Ce、Sn、Sb、Hf、Zr、Ni、Zn、Bi、Ti、Co、Cr、Si若しくはInの1つ又は複数の酸化物、或いはスズ酸亜鉛などこれらの材料の2つ以上の合金の酸化物が含まれる。金属を含有する層22は、50nm〜300nm、50nm〜200nm、100nm〜200nm、150nmなど、50nm〜500nmの範囲の厚さを有することができる。
【0028】
第1のコーティング16及び/又は第2のコーティング18は、基板12の少なくとも一部の上に、それだけに限らないが、噴霧熱分解、化学気相成長(CVD)又はマグネトロンスパッタ真空蒸着(MSVD)など、任意の従来の方法によって形成することができる。噴霧熱分解法では、有機体又は金属を含有する前駆体組成物であって、1つ又は複数の酸化物前駆体材料(例えばチタニア、及び/又はシリカ、及び/又はアルミナ、及び/又は酸化リン、及び/又はジルコニアのための前駆体材料)を含む前駆体組成物が、例えば水溶液又は非水溶液などの懸濁液中を運ばれ、そして基板の表面に向かって導かれ、このとき基板は前駆体組成物を分解して基板上にコーティングを形成するのに十分な高い温度である。組成物は、1つ又は複数のドーパント材料を含むことができる。CVD法では、前駆体組成物が窒素ガスなどのキャリア・ガス中を運ばれ、加熱された基板に向かって導かれる。MSVD法では、1つ又は複数の金属を含有するカソード・ターゲットが、不活性雰囲気又は酸素を含有する雰囲気において減圧下でスパッタされ、基板の上にスパッタ・コーティングを堆積させる。コーティングの間又はコーティングの後に基板を加熱し、スパッタされたコーティングを結晶化させてコーティングを形成することができる。
【0029】
本発明のある非限定的な実施においては、1つ又は複数のCVDコーティング装置が、従来のフロート・ガラス・リボンの製造プロセスの1つ又は複数の位置で使用されることが可能である。例えばフロート・ガラス・リボンがスズ浴を通って移動するとき、スズ浴を出た後、焼きなまし炉に入る前、焼きなまし炉を通って移動するとき、又は焼きなまし炉を出た後に、CVDコーティング装置を使用することができる。CVD法は移動するフロート・ガラス・リボンをコートすることができ、さらにフロート・ガラス・リボンの製造に伴う過酷な環境に耐えることができるため、CVD法は、溶融スズ浴中でフロート・ガラス・リボン上にコーティングを堆積させるのに特に適している。米国特許第4,853,257号、第4,971,843号、第5,536,718号、第5,464,657号、第5,714,199号及び第5,599,387号は、本発明の実施において溶融スズ浴中でフロート・ガラス・リボンをコートするのに用いることができる、CVDコーティングの装置及び方法について記載している。
【0030】
非限定的な一実施例において、スズ浴中の溶融スズのプールより上に、1つ又は複数のCVDコータを配置することができる。フロート・ガラス・リボンがスズ浴を通って移動するとき、蒸発した前駆体組成物をキャリア・ガスに加え、リボンの最上位面上に導くことができる。前駆体組成物が分解して、リボン上にコーティング(例えば、第1のコーティング16及び/又は第2のコーティング18)を形成する。コーティング組成物は、リボン上の、リボンの温度が677℃(1250°F)未満、649℃(1200°F)未満、643℃(1190°F)未満、621℃(1150°F)未満、610℃(1130°F)未満、643℃〜649℃(1190°F〜1200°F)の範囲など、704℃(1300°F)未満である場所に堆積させることができる。堆積温度が低いほど結果として得られる表面抵抗率が低くなるため、これは、低減された表面抵抗率を有する第2のコーティング18(例えばフッ素ドープ酸化スズ)を堆積させるのに特に有用である。
【0031】
例えばシリカ及びチタニアを含む第1のコーティング16を形成するには、組成物がシリカ前駆体とチタニア前駆体の両方を含むようにする。シリカ前駆体の非限定的な実例の1つは、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)である。
【0032】
チタニア前駆体の実例には、それだけに限らないが、チタンの酸化物、亜酸化物又は超酸化物が含まれる。一実施例において、チタニア前駆体材料は、それだけに限らないが、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンブトキシドなど、1つ又は複数のチタンアルコキシド、又は例えばチタンイソプロポキシド、チタンテトラエトキシドなどのそれらの異性体などを含むことができる。本発明の実施に適した例示的な前駆体材料には、それだけに限らないが、テトライソプロピルチタネート(TPT)が含まれる。或いは、チタニア前駆体材料は四塩化チタンとすることができる。アルミナ前駆体の実例には、それだけに限らないが、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド(DMAP)及びアルミニウムトリsec−ブトキシド(ATSB)が含まれる。ジメチルアルミニウムイソプロポキシドは、トリメチルアルミニウム及びアルミニウムイソプロポキシドを室温の不活性雰囲気中で2:1のモル比で混合することによって製造することができる。酸化リン前駆体の実例には、それだけに限らないが、トリエチルホスファイトが含まれる。ジルコニア前駆体の実例には、それだけに限らないが、ジルコニウムアルコキシドが含まれる。
【0033】
シリカとチタニアの組み合わせを有する第1のコーティング16は、これまでの酸化物の組み合わせに勝る利点をもたらす。例えば、シリカ(550nmで屈折率1.5)などの低屈折率材料とチタニア(アナターゼ型チタニアの場合、550nmで屈折率2.48)などの高低屈折率材料を組み合わせると、シリカとチタニアの量を変えることによって第1のコーティング16の屈折率をこれらの2つの極値の間で変えることが可能になる。これは、色又は虹色の抑制特性を有する第1のコーティング16を提供するのに特に有用である。
【0034】
しかしながら、チタニアの堆積速度は通常、シリカの堆積速度より非常に速い。このため、典型的な堆積条件の下ではシリカの量が約50重量%以下に制限され、それによって、結果として得られるシリカ/チタニア・コーティングの屈折率の低い側の範囲が制限される。したがって、シリカの堆積速度を加速するために、シリカ及びチタニアの前駆体組成物にドーパント材料を加えることができる。ドーパントは、結果として得られる酸化物の混合物の一部を形成し、したがって、結果として得られるコーティングに高められた性能特性を与えるように選択することができる。本発明の実施に有用なドーパントの実例には、それだけに限らないが、リン、アルミニウム及びジルコニウムの1つ又は複数を含有する材料が含まれ、結果として得られるコーティング中にこれらの材料の酸化物を形成する。酸化リン前駆体材料の実例には、トリエチルホスファイトが含まれる。アルミナ前駆体材料の実例には、アルミニウムトリsec−ブトキシド(ATSB)及びジメチルアルミニウムイソプロポキシド(DMAP)が含まれる。ジルコニア前駆体の実例には、ジルコニウムアルコキシドが含まれる。
【0035】
特定の非限定的な一実施例において、第1のコーティング及び/又は第2のコーティングは、化学気相成長コーティング・プロセスを用いて塗布される。CVDコーティング・プロセスのパラメータを用いて、堆積させるコーティング層のヘイズを調節すること可能であることが確認されている。例えば特定のコーティングのヘイズを増大させるために、以下のパラメータの1つ又は複数を以下のように変えることができる。すなわち、(1)前駆体組成物の流速を高める、(2)キャリア・ガスの流速を低減させる、(3)基板の温度を高める、(4)水の流速を高める、(5)排気の流速を低減させる、及び(6)コーティング層、特にトップ層の厚さを増大させる。
【0036】
本発明の様々な非限定的な態様を説明するために、以下の実例を示す。しかしながら、本発明はこうした特定の実例に限定されないことを理解されたい。
【0037】
「実例1」
この実例は、結果として得られるコーティングのヘイズに対する排気流の低減の影響を説明するものである。
【0038】
この実例では、ガラスの製造中、従来の化学気相成長コータを用いてフッ素ドープ酸化スズ・コーティング(標準)を堆積させた。標準サンプルは、0.5%未満のヘイズを有する。次に化学気相成長コータを用い、ただし排気送風機は完全に停止させ、換気システムからの排気流のみを残して、フッ素ドープ酸化スズ・コーティングを堆積させた。このサンプルから測定された16.6%のヘイズについて、表1に示す。理解することができるように、化学気相成長コータの排気流を低減すると、サンプル1のヘイズは著しく増大する。
【0039】
【表1】

【0040】
「実例2」
この実例では、化学気相成長システムの様々な堆積パラメータを調節し、結果として得られるコーティングのヘイズに対する影響を決定した。表2は、様々な堆積のパラメータ及び測定された特性を示している。
【0041】
【表2】

【0042】
表2に示すように、送風機の速度を低減することが、水の流速を高めることよりもヘイズに対して大きい影響を有すると考えられた。
【0043】
「実例3」
この実例は、結果として得られるコーティングのヘイズに対する入口キャリア・ガスの流速の影響を説明するものである。表3に示すように、サンプル番号5及び6は、異なる入口キャリア・ガスの流速を用いて調製した。サンプル5及び6は、同じ化学物質の流速、12.7cm(5インチ)/分の同じベルト速度、同じ排気送風機の速度、及び同じ水/MBTCの比を用いて堆積させた。変更した唯一のパラメータは、入口キャリア・ガスの流速であった。表3に示すように、高いキャリア・ガスの流速を有するサンプル5は、低い流速を有するサンプルより低いヘイズ(3.21%)を有していた。入口の流速をほぼ半分だけ低減することによって、コーティングの厚さは約25%増大しただけであり、表面抵抗率は約6.6%だけ低下したが、ヘイズは3倍増大した。
【0044】
【表3】

【0045】
サンプル5及び6の原子間力顕微鏡の画像を調査したところ、サンプル6はサンプル5よりずっと粗い表面を有していた。表4に示すように、サンプル6はサンプル5より約29%〜40%粗い。サンプル5及び6の走査電子顕微鏡の画像は、サンプル5がサンプル6より小さい結晶粒のサイズを有することを示している。またX線回折の結果によれば、サンプル5からサンプル6までに(101)ピークの著しい変化が存在し、より高いヘイズのサンプル6での(101)空間の著しい成長を示唆している。
【0046】
【表4】

【0047】
これまでの記述において開示した概念から逸脱することなく、本発明に変更を加えることが可能であることが当業者には容易に理解されるであろう。例えばこれまでの議論は、主にコーティング層のヘイズを増大させることに焦点を当ててきた。前述の手順を反対にすることによって、ヘイズを低減させることも可能であることが理解されるであろう。したがって、本明細書において詳しく記述した特定の実施例は、説明のためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の全範囲及びそのすべての等価物に与えられるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップ層及びアンダーコーティング層を有するコーティング・スタックのヘイズを増大させる方法であって、
所定の表面粗さを有するアンダーコーティング層を堆積させるステップと、
化学気相成長によって前記アンダーコーティング層の上にトップ層を堆積させるステップであって、前記トップ層が前記アンダーコーティング層より大きい表面粗さを有するようするステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記トップ層が、5%〜30%の範囲のヘイズ・レベルを有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アンダーコーティング層が、シリコン、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、リン及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数の材料の酸化物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記チタンの酸化物が、20nm〜25nmの範囲の厚さを有するアナターゼ型チタニアである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
化学気相成長コーティング・プロセスを用いて、トップ層及びアンダーコーティング層を有するコーティング・スタックのヘイズを増大させる方法であって、
前駆体の流速を高めるステップと、
キャリア・ガスの流速を低減させるステップと、
基板の温度を高めるステップと、
水の流速を高めるステップと、
排気の流速を低減させるステップと、
前記トップ層又は前記アンダーコーティング層の少なくとも一方の厚さを増大させるステップと
のうちの少なくとも1つを含む方法。
【請求項6】
コートされた物品が、80%超の可視光透過率、及び15Ω/□未満の表面抵抗率を有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記表面抵抗率が10Ω/□未満である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記表面抵抗率が5Ω/□〜9Ω/□の範囲である請求項6に記載の方法。
【請求項9】
粒状膜の堆積を生じさせるように、前記排気の流速を低減させるステップを含む請求項5に記載の方法。
【請求項10】
トップ層及びアンダーコーティング層を有するコーティング・スタックのヘイズを増大させる方法であって、
アナターゼ型チタニアのアンダーコーティング層を設けるステップと、
前記アンダーコーティング層の少なくとも一部の上に、フッ素ドープ酸化スズ層を堆積させるステップと
を含む方法。
【請求項11】
少なくとも1つの主面を有する透明基板と、
前記主面の少なくとも一部の上に形成された第1のコーティングであって、シリコン、チタン、アルミニウム、スズ、ジルコニウム及び/又はリンの酸化物から選択される1つ又は複数の酸化物を含む第1のコーティングと、
前記第1のコーティングの少なくとも一部の上に形成された第2のコーティングであって、Zn、Fe、Mn、Al、Ce、Sn、Sb、Hf、Zr、Ni、Zn、Bi、Ti、Co、Cr、Si若しくはInの1つ又は複数の酸化物、或いはこれらの材料の2つ以上の合金の酸化物から選択される1つ又は複数の酸化物材料を含む第2のコーティングと
を有する薄膜太陽電池。
【請求項12】
前記第1のコーティングがシリカを含む請求項11に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記第1のコーティングが、シリコン、チタン、アルミニウム、スズ、ジルコニウム及びリンの少なくとも2つの酸化物を含む請求項11に記載の太陽電池。
【請求項14】
前記第2のコーティングが、F、In、Al、P及びSbから選択される1つ又は複数のドーパント材料をさらに含む請求項11に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記第2のコーティングがフッ素ドープ酸化スズを含む請求項11に記載の太陽電池。

【図1】
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【公表番号】特表2013−515373(P2013−515373A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545991(P2012−545991)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/059037
【国際公開番号】WO2011/084292
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(399074983)ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド (60)
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
【Fターム(参考)】