説明

改善された光学的増白組成物

本発明は、式(1)[式中、MはMg2+と他のカチオンとの混合物を表す]の光学的光沢剤の混合塩であって、紙の表面に適用したときに優れた光学的増白効果を付与する混合塩に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMg2+を含む光学的光沢剤の混合塩であって、紙の表面に適用したときに優れた光学的増白効果を付与する混合塩に関する。
【背景技術】
【0002】
高レベルの白色度は、紙製品のエンドユーザーにとって重要なパラメーターである。製紙産業の最も重要な原材料はセルロース、パルプおよびリグニンであり、これは青色光を自然に吸収するため、黄色がかった色であって、紙にくすんだ外観を与えてしまう。350〜360nmの最大波長を有するUV光を吸収し、それを440nmの最大波長を有する可視の青色光に変換することによって、青色光の吸収を埋め合わせるために、光学的光沢剤(optical brightners)が製紙産業においては使用される。
【0003】
紙の製造において、光学的光沢剤は抄紙機のウェットエンドにおいて添加されるか、または紙の表面に添加されるか、または両方において添加されるかのいずれでもよい。概して、ウェットエンドのみでの添加によっては上質紙に要求される白色度レベルを達成することはできない。
【0004】
光学的光沢剤を紙の表面に添加する一般的な方法は、サイズプレスにおいて光学的光沢剤の水溶液をサイズ剤、典型的には天然デンプンまたは酵素的にもしくは化学的に加工されたデンプンと一緒に適用することによる。予め形成させた紙シートが2ロールニップを通過し、入口ニップはサイジング溶液で浸される。紙が該溶液の一部を吸収し、残りはニップにおいて除去される。
【0005】
デンプンおよび光学的光沢剤に加えて、サイジング溶液は特定の特性を付与するために設計された他の化学物質を含むこともできる。これらには、消泡剤、ワックスエマルジョン、染料、顔料および無機塩類が含まれる。
【0006】
より高い白色度レベルに到達するために、新規の光学的光沢剤の開発へ相当な努力が向けられてきた。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4を参照されたい。
【0007】
特許文献5にはトリアジニルアミノスチルベン類から誘導されたヘキサスルホン化光学的光沢剤が開示されている。実施例1〜6には、それらのナトリウム塩が開示されている。マグネシウムは、ヘキサスルホン化された光学的光沢剤のための可能な対イオンのリストにおいてのみ言及されており、表面サイジング組成物中の成分としてのデンプンもまた、可能な結合剤のリストにおいてのみ言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−106965号公報
【特許文献2】国際公開第98/42685号
【特許文献3】米国特許第5,873,913号
【特許文献4】欧州特許第1,763,519号
【特許文献5】英国特許第1 239 818号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
紙における高度な白色度レベルを達成する、より有効な手段に対する要求が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、我々は、式(1)の光学的光沢剤を、デンプンサイジング組成物において場合によりマグネシウム塩類と組み合わせて紙の表面に適用した場合に、増強された白色化効果が付与されることを見出した。
【0011】
本発明の対象は式(1)
【0012】
【化1】

【0013】
[式中、
は水素またはSOであり、
は水素またはSOであり、
は水素,C1−4 アルキル、C2−3 ヒドロキシアルキル、CHCO、CHCHCONHまたはCHCHCNであり、
はC1−4 アルキル、C2−3 ヒドロキシアルキル、CHCO、CH(CO)CHCOまたはCH(CO)CHCHCO、ベンジルであるか、または、
およびRは、隣接した窒素原子と一緒にモルホリン環を示し、そして
Mは、式(1)におけるアニオン電荷と釣り合わせるために必要な化学量論のカチオン等価物を表し、Mg2+と、少なくとも1つ、好ましくは1、2、3、4、5もしくは6つ、より好ましくは1、2もしくは3つ、さらに好ましくは1または2つの別のカチオンとの組み合わせであって、該別のカチオンはH、アルカリ金属カチオン、Mg2+以外のアルカリ土類金属カチオン、アンモニウム、モノ−C−C−アルキル−ジ−C−C−ヒドロキシアルキルアンモニウム、ジ−C−C−アルキル−モノ−C−C−ヒドロキシアルキルアンモニウム、C−Cヒドロキシアルキル基によってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される]
で表される化合物である。
【0014】
Mg2+の、Mにおける前記別のカチオンに対するモル比は、好ましくは0.01:99.99〜99.99:0.01であり、より好ましくは20:80〜99.99:0.01、さらに好ましくは50:50〜99.99:0.01である。
【0015】
アルカリ金属カチオンは好ましくはLi、NaまたはKである。
【0016】
Mg2+以外のアルカリ土類金属カチオンは好ましくはCa2+である。
【0017】
好ましくはMにおける前記別のカチオンは、H、Li、Na、K、Ca2+、N−メチル−N,N−ジエタノールアンモニウム、 N,N−ジメチル−N−エタノールアンモニウム, トリ−エタノールアンモニウム, トリ−イソプロパノールアンモニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
式(1)の好ましい化合物は、Rが水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、β−ヒドロキシエチル、β−ヒドロキシプロピル、CHCO、CHCHCONHまたは CHCHCNを表し、そしてRがメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−ブチル、β−ヒドロキシエチル、β−ヒドロキシプロピル、CHCO、CH(CO)CHCO、CH(CO)CHCHCOまたはベンジルを表す化合物である。
【0019】
上記のような(その全ての好ましい実施態様においても記載される)定義を有するMを有する式(2)および(3)の化合物は、式(1)の化合物の具体的な例であり、Mg2+とNaおよび/またはKの混合物であるMを有する式(2)および(3)の化合物はさらなる具体例であるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0020】
【化2】

【0021】
本発明のさらなる対象は、反応A、反応Aに続く反応B、反応Bに続く反応Cを特徴とする、式(1)の化合物の製造方法であって、
反応Aにおいて、式(10)の化合物を式(11)の化合物と反応させて式(12)の化合物とし、
【0022】
【化3】

【0023】
反応Bにおいて、式(12)の化合物を式(13)の化合物と反応させて式(14)の化合物とし、
【0024】
【化4】

【0025】
そして、反応Cにおいて、式(14)の化合物を式(15)の化合物と反応させて式(1)の化合物とし、
【0026】
【化5】

【0027】
ここで、R、R、RおよびRは上記のような(これらの全ての好ましい実施態様においても記載される)定義を有し、
M1は、式(13)および(14)において同一であるかまたは異なっており、そしてこれらの式におけるアニオン電荷と釣り合わせるために必要な化学量論のカチオン等価物を表し、そして、H、アルカリ金属カチオン、マグネシウム以外のアルカリ土類金属カチオン、アンモニウム、モノ−C−C−アルキル−ジ−C−C−ヒドロキシアルキルアンモニウム、ジ−C−C−アルキル−モノ−C−C−ヒドロキシアルキルアンモニウム、C−Cヒドロキシアルキル基によってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのカチオンであり、
M2は式(10)および(12)において互いに独立して同一であるかまたは異なっており、そしてRもしくはRのいずれか、またはRおよびRの両方がSOである場合にはこれらの式におけるアニオン電荷と釣り合わせるために必要な化学量論のカチオン等価物を表し、そしてM1と同じ定義を有し、
ただし、反応A、BまたはCの少なくとも1つがカチオンCATの存在下で行われ、該カチオンCATがMg2+であることを条件とする、
製造方法である。
【0028】
前記カチオンCATは、Mg2+を含む式(13)のM1および/またはMg2+を含む式(10)のM2により、あるいはさらなる成分としてのマグネシウム塩MS1の反応A、Bおよび/またはCへの添加により導入することができる。前記マグネシウム塩MS1は好ましくは酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウムおよびこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはマグネシウム塩MS1は水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムまたはチオ硫酸マグネシウムである。さらに好ましくは、前記マグネシウム塩MS1は水酸化マグネシウム、塩化マグネシウムまたはチオ硫酸マグネシウムである。
【0029】
1つ、2つまたは全3つの反応A、BおよびCは、マグネシウム塩MS1の存在下で実施することができる。
【0030】
好ましくは、M1およびM2は互いに独立してH、 Li、 Na、 K、 Ca2+、 Mg2+、N−メチル−N,N−ジエタノールアンモニウム、 N,N−ジメチル−N−エタノールアンモニウム、トリ−エタノールアンモニウム、トリ−イソプロパノールアンモニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはM1およびM2は互いに独立してH、 Na、 Kおよび Mg2+からなる群から選択され、さらに好ましくはM1およびM2は互いに独立してNa、 KおよびMg2+からなる群から選択される。
【0031】
各反応A、BおよびCは好ましくは水中で、または水および非水系有機溶剤の混合物中で実施される。好ましくは、式(11)の化合物は水に懸濁するか、または式(11)の化合物は溶剤に溶解させる。
【0032】
好ましい溶剤はアセトンである。
【0033】
好ましくは、式(11)の化合物は水における懸濁液として使用される。
【0034】
式(10)、(13)および(15)の各化合物は希釈して、または希釈しないで使用することができ、希釈する場合には、式(10)、(13)または(15)の化合物は好ましくは水溶液または水系懸濁液の形態で使用される。
【0035】
好ましくは、式(10)の化合物を、式(11)の化合物に対して0〜10モル%過剰に反応させる。1モル当量の式(13)の化合物を2モル当量の式(12)の化合物と、好ましくは式(12)の化合物に対して0〜10モル%過剰に反応させる。2当量の式(15)の化合物を1モル当量の式(14)の化合物と反応させ、好ましくは式(15)の化合物を式(14)の化合物に対して0〜30モル%過剰に反応させる。
【0036】
好ましくは、反応A、BおよびCはいずれも大気圧〜10barで、より好ましくは大気圧下で行われる。
【0037】
反応Aにおいて、反応温度は好ましくは−10〜20℃である。
【0038】
反応Bにおいて、反応温度は好ましくは20〜60℃である。
反応Cにおいて、反応温度は好ましくは60〜102℃である。
【0039】
反応Aは好ましくは酸性〜中性pH条件下で行われ、より好ましくは前記pHは2〜7である。
【0040】
反応Bは好ましくは弱酸性〜弱アルカリ条件下で行われ、より好ましくは前記pHは4〜8である。
【0041】
反応Cは好ましくは弱酸性〜アルカリ条件下で行われ、より好ましくは前記pHは5〜11である。
【0042】
各反応A、BおよびCのpHは通常、適当な塩基の添加によって調節され、塩基の選択は所望の生成物の組成による。好ましい塩基は、脂肪族第三級アミン類、ならびにアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の水酸化物類、炭酸塩類および重炭酸塩類、およびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましいアルカリおよびアルカリ土類金属はリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムからなる群から選択される。好ましい脂肪族第三級アミン類は、N−メチル−N,N−ジ−エタノールアミン、N,N−ジメチル−N−エタノールアミン、トリ−エタノールアミンおよびトリ−イソプロパノールアミンである。2種または3種以上の異なる塩基の組み合わせを使用する場合には、塩基は任意の順番で、または同時に添加することができる。より好ましくは、pHを調節するために、塩基性マグネシウム塩が使用される。
【0043】
好ましくは、塩基性マグネシウム塩は水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、およびこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは塩基性マグネシウム塩は水酸化マグネシウムである。
【0044】
好ましくは、反応Aおよび/またはBの一方において塩基性マグネシウム塩がpHを調節するために使用される場合には、連続的な反応BおよびCにおいて、または連続的な反応Cにおいてそれぞれ、pH調節用の塩基はまた塩基性マグネシウム塩であり、より好ましくはそれは反応Aおよび/またはBにおいて最初に使用されるものと同一の塩基性マグネシウム塩である。
【0045】
酸を用いて反応pHを調節する必要がある場合には、好ましい酸は塩酸、硫酸、ギ酸および酢酸からなる群から選択される。
【0046】
一般式(1)の化合物を1種または2種以上含有する溶液は、場合によりメンブランフィルター法により脱塩することができる。
【0047】
メンブランフィルター法は好ましくは限外ろ過法である。好ましくは薄膜(thin−film membranes)が使用される。好ましくは前記膜はポリスルホン、ポリビニリデンフルオリドまたは酢酸セルロースからできている。
【0048】
本発明のさらなる対象は、式(20)
【0049】
【化6】

【0050】
[式中、
、R、RおよびRは上記のような(これらの全ての好ましい実施態様においても記載される)定義を有し、
そして、Tはアニオン電荷を釣り合わせ、そして必要とされる化学量論当量のカチオンであって、H、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、モノ−C−C−アルキル−ジ−C−C−ヒドロキシアルキルアンモニウム、ジ−C−C−アルキル−モノ−C−C−ヒドロキシアルキルアンモニウム、C−Cヒドロキシアルキル基によってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウム、およびこれらの混合物からなる群から選択されるカチオンを表す]
で表される化合物を、マグネシウム塩MS2である成分b)と、水系媒体で混合することを特徴とする、式(1)の化合物の製造方法である。
【0051】
好ましくは混合は水溶液中で行われる。
【0052】
好ましくは、Tはアニオン電荷を釣り合わせ、そしてH、Na、K、アンモニウム、N−メチル−N,N−ジ−エタノールアンモニウム、N,N−ジメチル−N−エタノールアンモニウム、トリ−エタノールアンモニウム、トリ−イソプロパノールアンモニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択されるカチオンである。
【0053】
式(21)および(22)の化合物は式(20)の化合物の具体例であるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0054】
【化7】

【0055】
マグネシウム塩MS2は酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウムおよびチオ硫酸マグネシウムからなる群から選択される。好ましくは、マグネシウム塩は塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムまたはチオ硫酸マグネシウムである。最も好ましくはマグネシウム塩は塩化マグネシウムまたはチオ硫酸マグネシウムである。
【0056】
好ましくは、混合温度は0〜100℃である。
【0057】
好ましくは、混合は大気圧で行われる。
【0058】
好ましくは、混合時間は5秒〜24時間である。
【0059】
好ましくは、水に加えて別の有機溶剤が存在していてもよく、より好ましくは有機溶剤はC−Cアルコール類およびアセトンからなる群から選択される。
【0060】
好ましくは、式(20)の化合物は0.01 g/l〜20 g/lの濃度で混合のために使用される。
【0061】
好ましくは0.1〜50、 より好ましくは0.1〜45、さらに好ましくは0.1〜40、特に0.1〜15、殊に0.15〜10部の成分(b)が、式(20)の化合物1部あたりにつき水系媒体に存在する。
【0062】
本発明のさらなる対象は、式(1)の化合物の製造のための式(20)の化合物の使用である。
【0063】
本発明のさらなる対象は、式(1)の化合物の、紙を増白するための(好ましくはサイズプレスにおいて)サイジング組成物における使用である。
【0064】
好ましくは、前記サイジング組成物は水性組成物である。
【0065】
サイズプレスにおける紙の処理のために、1リットルあたり0.2〜30、好ましくは1〜15グラムの式(1)の化合物を含有するサイジング組成物を使用することができる。
【0066】
前記サイジング組成物はまた、1種または2種以上の結合剤、好ましくは1、2、3、4または5種の結合剤、より好ましくは1、2または3種、さらに好ましくは1または2種の結合剤を含有する。
【0067】
前記サイジング組成物は、サイジング組成物の全重量を基準として、好ましくは2〜15重量%の濃度にある結合剤を含む。pHは通常、5〜9、好ましくは6〜8の範囲である。
【0068】
結合剤は好ましくはデンプン、ゼラチン、アルカリ金属アルギネート類、カゼイン、ハイドにかわ、タンパク質、セルロース誘導体類、例えば、ヒドロキシエチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニリデンクロリド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート類、ビニルアセテートおよびマレイン酸無水物の鹸化コポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0069】
より好ましくは、結合剤はデンプン、ポリビニルアルコール、カルボメチルセルロースまたはこれらの混合物である。
【0070】
結合剤またはサイズは、より一層好ましくはデンプンである。より好ましくはデンプンは、天然デンプン、酵素的に加工されたデンプンおよび化学的に加工されたデンプンからなる群から選択される。加工デンプンは好ましくは酸化デンプン、ヒドロキシエチルデンプンまたはアセチル化デンプンである。天然デンプンは好ましくはアニオン性デンプン、カチオン性デンプンまたは両性デンプンである。デンプンの起源は任意であるが、好ましくはデンプンの起源はトウモロコシ、コムギ、ジャガイモ、米、メイズ(maize)、タピオカまたはサゴである。ポリビニルアルコールおよび/またはカルボキシメチルセルロースが好ましくは二次的結合剤として使用される。
【0071】
式(1)の化合物、結合剤および通常は水に加えて、前記サイジング組成物は、式(1)の化合物の製造の間に形成される副生成物、および他の慣用の紙用添加剤を含むことができる。このような紙用添加剤の例は、不凍剤、殺生物剤、消泡剤、ワックスエマルジョン、染料、無機塩類、可溶化助剤、防腐剤、錯化剤、増粘剤、表面サイズ剤、架橋剤、顔料、特殊樹脂等、およびこれらの混合物である。
【0072】
本発明の更なる対象は、以下の段階:
a)式(1)の化合物を含むサイジング組成物を紙に塗布すること、
b)処理した紙を乾燥すること、
を含む、紙の光学的増白(optical brightening)のための方法である。
【0073】
好ましくは、消泡剤、ワックスエマルジョン、染料および/または顔料は前記サイジング組成物に添加される。
【実施例】
【0074】
カチオン含有量はキャピラリー電気泳動によって測定した。
【0075】
以下の実施例により本発明をより詳細に説明するがこれは本発明の範囲を限定するものではない。特に言及しない限り、「%」および「部」は重量%および重量部を意味する。
【0076】
<実施例1>
式(21)の光学的光沢剤を、2.5〜12.5g/lの光学的光沢剤の最終濃度範囲が達成されるような量で、撹拌されている塩化マグネシウム(最終濃度は8g/lである)およびアニオン性酸化ジャガイモデンプン(AVEBE B.A.から市販されているPerfectamyl A4692)(最終濃度は50g/lである)の水溶液に60℃で添加することにより、サイジング組成物を調製する。
【0077】
該サイジング溶液を冷却し、その後、実験室のサイズプレスの動いているローラーの間に注ぎ、市販の75g/m のAKD(アルキルケテンダイマー)でサイズされ、漂白されている紙基材のシートに塗布する。処理された紙を平床式乾燥機において70℃で5分間乾燥する。乾燥した紙を適当な状態にし、校正したElrepho分光光度計でCIE白色度を測定する。
【0078】
実施例を、塩化マグネシウム非存在下、すなわち、光学的光沢剤のナトリウム塩のみが存在する場合と、塩化マグネシウムが当量の塩化カルシウムで置き換えられた場合の両方の場合において繰り返す。 結果は表1にまとめられ、これは塩化マグネシウムの使用が、塩化カルシウムの使用および光学的光沢剤のナトリウム塩のみの使用よりも、より高い白色度レベルを達成するために有利であることを明確に実証している。本発明の驚くべき性質はさらに、他の二価の第II族金属イオンの塩化物塩、例えば塩化カルシウムでさえも、光学的光沢剤の白色化効果に負の影響を有するという観察によって示される。
【0079】
【表1】

【0080】
<実施例2>
式(22)の光学的光沢剤を、2.0〜10.0g/lの光学的光沢剤の最終濃度範囲が達成されるような量で、撹拌されている塩化マグネシウム(最終濃度は8g/lである)およびアニオン性酸化ジャガイモデンプン(AVEBE B.A.から市販されているPerfectamyl A4692)(最終濃度50g/l)の水溶液に60℃で添加することにより、サイジング溶液を調製する。
【0081】
該サイジング溶液を冷却し、その後、実験室のサイズプレスの動いているローラーの間に注ぎ、市販の75g/m のAKD(アルキルケテンダイマー)でサイズされ、漂白されている紙基材のシートに塗布する。処理された紙を平床式乾燥機において70℃で5分間乾燥する。乾燥した紙を適当な状態にし、次いで、校正したElrepho分光光度計でCIE白色度を測定する。
【0082】
実施例を、塩化マグネシウム非存在下と、塩化マグネシウムが当量の塩化カルシウムで置き換えられた場合の両方の場合において繰り返す。
【0083】
結果は表2にまとめられ、これは塩化マグネシウムの使用が、光学的光沢剤がナトリウム塩としてのみ存在する場合と比較して、より高い白色度レベルを獲得するために有利であることを明確に実証している。
【0084】
【表2】

【0085】
<実施例3>
式(22)の光学的光沢剤を、0〜12.5g/lの光学的光沢剤の最終濃度範囲が達成されるような量で、撹拌されている塩化マグネシウム(最終濃度は6.25および12.5g/lである)およびアニオン性酸化トウモロコシデンプン(最終濃度50g/l)(Penford Starch 260)の水溶液に60℃で添加することにより、サイジング組成物を調製する。各サイジング溶液を冷却し、その後、実験室のサイズプレスの動いているローラーの間に注ぎ、市販の75g/m のAKD(アルキルケテンダイマー)でサイズされ、漂白されている紙基材のシートに塗布する。処理された紙を平床式乾燥機において70℃で5分間乾燥する。
【0086】
乾燥した紙を適当な状態にし、次いで、校正したAuto Elrepho分光光度計でCIE白色度を測定する。結果を表3に示す。
【0087】
<実施例4>
式(22)の光学的光沢剤を、0〜12.5g/lの光学的光沢剤の最終濃度範囲が達成されるような量で、撹拌されているチオ硫酸マグネシウム六水和物(最終濃度は10および20g/lである)およびアニオン性酸化トウモロコシデンプン(最終濃度50g/l)(Penford Starch 260)の水溶液に60℃で添加することにより、サイジング組成物を調製する。サイジング溶液を冷却し、その後、実験室のサイズプレスの動いているローラーの間に注ぎ、市販の75g/m のAKD(アルキルケテンダイマー)でサイズされ、漂白されている紙基材のシートに塗布する。処理された紙を平床式乾燥機において70℃で5分間乾燥する。
【0088】
乾燥した紙を適当な状態にし、次いで、校正したAuto Elrepho分光光度計でCIE白色度を測定する。結果を表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
この結果は、塩化マグネシウムまたはチオ硫酸マグネシウムの使用が、光学的光沢剤がナトリウム塩としてのみ存在する場合と比較して、より高い白色度レベルを獲得するために有利であることを明確に実証している。
【0091】
<実施例5>
115.6部のアニリン−2,5−ジスルホン酸一ナトリウム塩を400部の氷および300部の水における74.5部の塩化シアヌルに添加する。外付けの氷/水浴を用いて温度を10℃未満に保持しながら約30%のNaOH水溶液を滴加することにより、反応のpHを約4〜5に維持する。反応の完了後に、外付けの加熱装置を用いて温度を段階的に30℃まで増加させ、そして74.1部の4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸を添加する。得られた混合物を、約30%のNaOH水溶液を滴加することによりpHを約5〜7に維持しながら、反応の完了まで50〜60℃に加熱する。その後63.8部のアスパラギン酸を添加し、その後89.8部の水酸化マグネシウムを添加し、そして得られたスラリーを反応の完了まで90〜95℃に加熱する。温度を段階的に室温まで減少させ、不溶物質をろ過した。最終濃度を溶液1kgあたり0.125モルの式(3)化合物に調節し、この目的のために、水を添加するかまたは蒸留により除去した。この場合にMはナトリウムおよびマグネシウムカチオンの混合物からなる。
【0092】
<実施例6>
115.6部のアニリン−2,5−ジスルホン酸一ナトリウム塩を400部の氷および300部の水における74.5部の塩化シアヌルに添加する。外付けの氷/水浴を用いて温度を10℃未満に保持しながら、26.8部の水酸化マグネシウムを添加する。反応の完了後に、外付けの加熱装置を用いて温度を段階的に30℃まで増加させる。25.7部の水酸化マグネシウムを添加し、引き続き74.1部の4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸を添加する。得られた混合物を反応の完了まで50〜60℃に加熱する。その後63.8部のアスパラギン酸および100部の水を添加し、その後89.8部の水酸化マグネシウムを添加し、そして得られたスラリーを反応の完了まで90〜95℃に加熱する。温度を段階的に室温まで減少させ、不溶物質をろ過する。UV分光法を用いて最終濃度を溶液1kgあたり0.125モルの式(3)化合物に調節し、この目的のために、水を添加するかまたは蒸留により除去した。この場合にMはナトリウムおよびマグネシウムカチオンの混合物からなる。
【0093】
<比較例7>
式(22)の化合物を0.125モル/kgの最終濃度で水に溶解することにより、比較用光学的増白溶液7を調整した。
【0094】
<実施例8>
実施例5に従って調製した光学的光沢剤の水溶液を、0〜80g/lの光学的光沢剤水溶液(実施例5に従って調製)の最終濃度範囲が達成されるような量で、撹拌されているアニオン性酸化ジャガイモデンプン(AVEBE B.A.から市販されているPerfectamyl A4692)(最終濃度50 g/l)の水溶液に60℃で添加することにより、サイジング組成物を調製する。各サイジング溶液を冷却し、その後、実験室のサイズプレスの動いているローラーの間に注ぎ、市販の75g/m のAKD(アルキルケテンダイマー)でサイズされ、漂白されている紙基材のシートに塗布する。処理された紙を平床式乾燥機において70℃で5分間乾燥する。
【0095】
乾燥した紙を適当な状態にし、次いで、校正したAuto Elrepho分光光度計でCIE白色度を測定する。結果を表4に示す。
【0096】
<実施例9>
実施例6に従って調製した光学的光沢剤の水溶液を、0〜80g/lの光学的光沢剤の水溶液(実施例6に従って調製)の最終濃度範囲が達成されるような量で、撹拌されているアニオン性酸化ジャガイモデンプン(AVEBE B.A.から市販されているPerfectamyl A4692)(最終濃度50 g/l)の水溶液に60℃で添加することにより、サイジング組成物を調製する。各サイジング溶液を冷却し、その後、実験室のサイズプレスの動いているローラーの間に注ぎ、市販の75g/m のAKD(アルキルケテンダイマー)でサイズされ、漂白されている紙基材のシートに塗布する。処理された紙を平床式乾燥機において70℃で5分間乾燥する。
【0097】
乾燥した紙を適当な状態にし、次いで、校正したAuto Elrepho分光光度計でCIE白色度を測定する。結果を表4に示す。
【0098】
<比較例10>
実施例7に従って調製した光学的光沢剤の水溶液を、0〜80g/lの光学的光沢剤の水溶液(実施例6に従って調製)の最終濃度範囲が達成されるような量で、撹拌されているアニオン性酸化ジャガイモデンプン(AVEBE B.A.から市販されているPerfectamyl A4692)(最終濃度50 g/l)の水溶液に60℃で添加することにより、サイジング組成物を調製する。各サイジング溶液を冷却し、その後、実験室のサイズプレスの動いているローラーの間に注ぎ、市販の75g/m のAKD(アルキルケテンダイマー)でサイズされ、漂白されている紙基材のシートに塗布する。処理された紙を平床式乾燥機において70℃で5分間乾燥する。
【0099】
乾燥した紙を適当な状態にし、次いで、校正したAuto Elrepho分光光度計でCIE白色度を測定する。結果を表4に示す。
【0100】
【表4】

【0101】
こららの結果は、マグネシウムカチオンを含む光学的光沢剤の混合塩の使用が有利であることを明確に実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

[式中、
は水素またはSOであり、
は水素またはSOであり、
は水素,C1−4 アルキル、C2−3 ヒドロキシアルキル、CHCO、CHCHCONHまたはCHCHCNであり、
はC1−4 アルキル、C2−3 ヒドロキシアルキル、CHCO、CH(CO)CHCOまたはCH(CO)CHCHCO、ベンジルであるか、または、
およびRは、隣接した窒素原子と一緒にモルホリン環を示し、そして
Mは、式(1)におけるアニオン電荷と釣り合わせるために必要な化学量論のカチオン等価物を表し、そしてMg2+と、少なくとも1つ、好ましくは1、2、3、4、5もしくは6つ、より好ましくは1、2もしくは3つ、さらに好ましくは1または2つの別のカチオンとの組み合わせであって、該別のカチオンはH、アルカリ金属カチオン、Mg2+以外のアルカリ土類金属カチオン、アンモニウム、モノ−C−C−アルキル−ジ−C−C−ヒドロキシアルキルアンモニウム、ジ−C−C−アルキル−モノ−C−C−ヒドロキシアルキルアンモニウム、C−Cヒドロキシアルキル基によってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される]
で表される化合物。
【請求項2】
が水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、β−ヒドロキシエチル、β−ヒドロキシプロピル、CHCO、CHCHCONHまたは CHCHCNを表し、
がメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−ブチル、β−ヒドロキシエチル、β−ヒドロキシプロピル、CHCO、CH(CO)CHCO、CH(CO)CHCHCOまたはベンジルを表す、
請求項1記載の式(1)の化合物。
【請求項3】
請求項1記載の式(1)の化合物の製造方法であって、反応A、反応Aに続く反応B、反応Bに続く反応Cを特徴とし、
反応Aにおいて、式(10)の化合物を式(11)の化合物と反応させて式(12)の化合物とし、
【化2】

反応Bにおいて、式(12)の化合物を式(13)の化合物と反応させて式(14)の化合物とし、
【化3】

そして、反応Cにおいて、式(14)の化合物を式(15)の化合物と反応させて式(1)の化合物とし、
【化4】

ここで、R、R、RおよびRは請求項1に定義されるとおりであり、
M1は、式(13)および(14)において同一であるかまたは異なっており、そしてこれらの式におけるアニオン電荷と釣り合わせるために必要な化学量論のカチオン等価物を表し、そして、H、アルカリ金属カチオン、マグネシウム以外のアルカリ土類金属カチオン、アンモニウム、モノ−C−C−アルキル−ジ−C−C−ヒドロキシアルキルアンモニウム、ジ−C−C−アルキル−モノ−C−C−ヒドロキシアルキルアンモニウム、C−Cヒドロキシアルキル基によってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのカチオンであり、
M2は式(10)および(12)において互いに独立して同一であるかまたは異なっており、そしてRもしくはRのいずれか、またはRおよびRの両方がSOである場合にはこれらの式におけるアニオン電荷と釣り合わせるために必要な化学量論のカチオン等価物を表し、そしてM1と同じ定義を有し、
ただし、反応A、BまたはCの少なくとも1つがカチオンCATの存在下で行われ、該カチオンCATがMg2+であることを条件とする、
製造方法。
【請求項4】
式(20)
【化5】

[式中、
、R、RおよびRは請求項1におけるような定義を有し、
そして、Tはアニオン電荷を釣り合わせ、そして必要とされる化学量論当量のカチオンであって、H、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、モノ−C−C−アルキル−ジ−C−C−ヒドロキシアルキルアンモニウム、ジ−C−C−アルキル−モノ−C−C−ヒドロキシアルキルアンモニウム、C−Cヒドロキシアルキル基によってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウム、およびこれらの混合物からなる群から選択されるカチオンを表す]
で表される化合物を、マグネシウム塩MS2である成分b)と、水系媒体で混合することを特徴とする、請求項1記載の式(1)の化合物の製造方法。
【請求項5】
マグネシウム塩MS2が酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウムおよびチオ硫酸マグネシウムからなる群から選択される、請求項1記載の式(1)の化合物を製造するための請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記混合が水性溶液において行われる、請求項1記載の式(1)の化合物を製造するための請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1記載の式(1)の化合物の製造のための、請求項4記載の式(20)の化合物の使用。
【請求項8】
紙の増白用サイジング組成物における、請求項1記載の式(1)の化合物の使用。
【請求項9】
以下の段階:
a)請求項1記載の式(1)の化合物を含むサイジング組成物を紙に塗布すること、
b)処理した紙を乾燥すること、
を含む、紙の光学的増白(optical brightening)のための方法。

【公表番号】特表2011−515547(P2011−515547A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501168(P2011−501168)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/052919
【国際公開番号】WO2009/118247
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】