説明

改善された外鼻拡張器

本発明は、外鼻拡張器に関し、より詳細には、第1および第2の鼻道の外壁組織に対して集中的かつ効率的なスプリング力を提供する改善された外鼻拡張器に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2009年12月23日に出願された米国特許仮出願第61/289,465号の優先権の利益を主張し、この出願全体は本明細書において参照することにより援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は外鼻拡張器に関し、より詳細には、第1および第2の鼻道の外壁組織に対して集中的かつ効率的なスプリング力を提供する改善された外鼻拡張器に関する。
【背景技術】
【0003】
鼻拡張器(内鼻および外鼻の両方)は鼻道の外壁組織に作用するものであり、周知のものである。例えば、外鼻拡張器はJohnsonによる特許文献1、特許文献2、および特許文献3に開示されている。これらの鼻拡張器は、第1の鼻道の外壁組織に係合するように適合された第1の端部領域と、第2の鼻道の外壁組織に係合するように適合された第2の端部領域とを有するトラス部材を備える。第1および第2の端部領域は中間セグメントにより互いに連結される。中間セグメントは第1および第2の鼻道の間に位置する鼻の一部を横断するように構成される。弾性要素またはスプリング部材はトラス部材の長さに沿って延びる。スプリング部材は、トラスが適所で固定された場合、外壁組織を安定化させ、それにより、第1および第2の鼻道の外壁組織が呼吸中に引き込まれないようにする。
【0004】
1つの公知の鼻拡張器の実施形態において、例えば特許文献3に開示されるように、弾性要素は一対の弾性バンドからなり得る。第1の弾性バンドは鼻拡張器のトラス部材の長さに沿って延びて固定される。第2の弾性バンドは、第1の弾性バンドから離間されておりかつ鼻拡張器のトラス部材の長さに沿って延びて固定されている。第1および第2のバンドは相対的に堅く、互いに略平行に向けられ、かつ鼻拡張器の長手方向の範囲に対して実質的に平行に向けられている。第1および第2のバンドの弾力性によって、第1および第2の鼻道の外壁組織が呼吸中に引き込まれないようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,533,499号
【特許文献2】米国特許第5,533,503号
【特許文献3】米国特許第6,318,362号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基本的な外鼻拡張の理解は非常に進んでいるが、さらなる改善が必要とされている。少ない力で同様の拡張を得ること、より効果的な接着要素、あるいは新たな拡張力が、改善のための機会の潜在的な領域である。現時点では、殆どの鼻拡張器は、鼻の側壁に直交する方向、または鼻梁に対して平行する方向のいずれかに力を働かせている。本発明においては、新たな方向に有意な力を鼻拡張のために規定し、鼻への新たな力の分配を提供して拡張を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の外鼻拡張器は、基材の可撓性ストリップおよび弾性バンドを含むトラス部材を備える。トラスは、第1の鼻道の外壁組織に係合するように適合された第1の端部領域および第2の鼻道の外壁組織に係合するように適合された第2の端部領域を規定する。第1および第2の端部領域は中間セグメントによって互いに連結される。中間セグメントは第1の鼻道と第2の鼻道との間に配置される鼻の一部を横断するように構成される。弾性バンドはトラス部材の全長に沿って延びる。トラスは両側端から内側に向かってスロットが形成され、中間セグメントの手前で終端する。スロットはトラスを4つのセグメントまたは枝部に分ける。上側枝部および下側枝部は互いに実質的に平行しており、上側枝部は下側枝部よりも短くてよい。これらの4つの弾性枝部は独立して使用者の鼻上に置かれてよく、その結果、使用者は効果および快適さを最大限にするように、力の配置を調節することができる。したがって、4つの弾性枝部は調和して、または独立して作用することができ、上側枝部は左右の外側軟骨に作用し、下側枝部は左右の鼻翼軟骨に作用して、鼻拡張をもたらす。4つの弾性枝部の各々は、一端上の延長タブによって固定される(上側枝部上で上方に固定され、かつ下側枝部上で下方に固定される)。弾性枝部のスロット側上の端部は、延長タブ設計によって固定されていないので、鼻から離れる方向に有意につり上がる。このように、弾性バンドをトラスの端部まで延ばすこと、トラスを4つの弾性枝部に分けること、および4つの枝部の各々の1つの端部のみを鼻の外壁に(延長タブで)固定することの組み合わせにより、スプリング力を、鼻梁に対して上側方向、および外側方向(すなわち、鼻の側壁の表面に対して直交する方向)の両方の方向に向ける。外側方向および上側方向の力のこの組み合わせによりさらに効果的な鼻拡張器をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明に従った鼻拡張器の構成要素を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、図1の鼻拡張器の上面図である。
【図3】図3は、外鼻拡張器のつり上げ力を規定するために用いられることができる3次元座標系を示す鼻の側面図である。
【図4】図4は、図示した長手方向部分を有する典型的な外鼻拡張器である。
【図5】図5は、鼻に取り付けられた鼻拡張器であるが、リリースされる前の鼻拡張器の側面図である。
【図6】図6は、リリース後の鼻に取り付けられた鼻拡張器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の鼻拡張器は、基材の可撓性ストリップおよび弾性バンドを含むトラス部材を備える。トラスは第1の端部領域と、中間セグメントで第1の端部領域に連結される第2の端部領域を規定する。基材の可撓性ストリップは任意の適切な素材または可塑性フィルム材料から形成されてもよい。
【0010】
接着材料をトラス部材の片側に配置してよく、その結果、鼻拡張器は使用者の鼻に取外し可能に取り付けられてよい。本発明の一実施形態において、接着剤がトラスの第1の面に取り付けられて、弾性バンドはトラスの第2の面に取り付けられ、その結果、基材の可撓性ストリップは皮膚に直接接触する。接着材料は感圧の生体適合性の接着剤であり、使用者の皮膚と相性がよく、それでいて十分に強いので、使用中、正しい位置に鼻拡張器を維持することができる。本発明における使用のための適切な接着剤は、アクリル酸系接着剤、熱可塑性の「熱溶解性」接着剤、両面接着テープ、エラストマーベースの接着剤、およびアクリル接着剤等の溶剤または水性の感圧接着剤を含むがそれらに限定されない。必要に応じて、リリースライナーが、輸送中および使用前の感圧接着剤を保護するために用いられてよく、この感圧接着剤は接着材料から容易に取り除かれることができる。
【0011】
トラス部材はさらに、裏当て材の可撓性ストリップを含んでよく、その結果、弾性バンドは裏当て材の層と基材の可撓性ストリップとの間に配置される。裏当て材の可撓性ストリップは、ゴム、ビニル、布、軟性のプラスチック、あるいは、鼻拡張器が用いられる状況下で柔軟性を有する、当該技術分野において公知の任意の他の材料から作製されてもよい。裏当て材は基材と同じ大きさおよび形状であってもよい。
【0012】
当業者は、トラス部材を作製するために用いられるあらゆる材料はその上に付与される力に耐える必要があり、かつ鼻拡張器が水、汗、皮脂等に接触するなどの潜在的に有害な状況、対象、および物質にも耐えることを認識する。
【0013】
弾性バンドはトラス部材に固定的に取り付けられるか、またはトラス部材内に一体化される。弾性バンドは鼻拡張器のトラス部材の全長に沿って延びて固定される。弾性バンドは、外部の曲げ力がなくなった後、通常の平面の状態に戻る傾向を有する、様々なポリマー材料および他の材料で形成されてもよい。例えば、厚さ約0.33ミリメートル(mm)の工業グレードの二軸配向ポリエステルが本発明における使用に適している。厚さ0.25mm(0.010インチ、すなわち10ミル)および0.33mm(0.013インチ、すなわち13ミル)が現在市販で入手可能である。0.13mm(0.005インチ、すなわち5ミル)から0.46mm(0.018インチ、すなわち18ミル)の範囲の厚さが本発明品に用いられることができる。
【0014】
本発明の鼻拡張器における使用のために適切な材料は任意の成形可能な材料を含む。そのような材料としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)等の熱可塑性ポリマー材料、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および高分子量ポリエチレン(HMWPE)を含むポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびグリコリシド(glycolised)ポリエチレンテレフタレート(PETG)を含むポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル、リノリウム、ゴム化合物、アクリル、ナイロン化合物、コーン誘導体、または、ポリ乳酸およびポリヒドロキシアルカノエートなどの他の生分解性樹脂、前述の任意の組み合わせ等が挙げられるが、それらに限定されない。
【0015】
トラスは、両側端から内側に向かってスロットが形成され、このスロットは中間セグメントの手前で終端している。2つのスロットは等しい長さであり、中間セグメントから延びる4つの枝部にトラスを分ける。このようにして、鼻拡張器は2つの上側弾性枝部および2つの下側弾性枝部を有する。上側および下側の枝部は互いに実質的に平行している。トラスの隣接する中間セグメントと共に2つの上側弾性枝部は上側弾性要素を形成する。トラスの隣接する中間セグメントと共に2つの下側弾性枝部は下側弾性要素を形成する。下側弾性要素の長さは、35mm〜65mmの長さであり、好ましくは45mm〜60mmの長さである。上側および下側の弾性要素は同じまたは異なる長さであってよく、上側弾性要素は下側弾性要素よりも最大30%短くてもよい。一実施形態において、上側弾性要素は下側弾性要素と同じ長さであってもよい。別の実施形態において、上側弾性要素は下側弾性要素よりも15%短くてもよい。このように、上側弾性要素と下側弾性要素との長さの比の範囲は70%〜100%である。本発明の鼻拡張器の弾性バンドのスプリング力全体は5g〜50gの力である。別の実施形態において、スプリング力全体は18g〜28gの力である。
【0016】
図1および図2は本発明の一実施形態を示す。図1および図2に見られ得るように、鼻拡張器10は、第1の端部領域16と、中間セグメント20を介して第1の端部領域16に連結される第2の端部領域18とを有する、基材の可撓性ストリップ14を含むトラス部材12を備える。中間セグメント20の幅は第1の端部領域16および第2の端部領域18の幅より狭い。トラス部材12は、基材のストリップ14の第1の面24に固定された弾性バンド22をさらに含む。第1の端部領域16および第2の端部領域18はスロット26aおよび26bによって分けられ、4つの弾性枝部28a〜28dを形成し、スロット26aおよび26bは等しい長さおよび幅である。弾性枝部28aおよび28cは弾性枝部28bおよび28dと平行する。弾性枝部28a〜28dはスロット側端36a〜36dおよび外側端38a〜38dを有する。弾性バンド22はスロット側端36a〜36dの端部まで延びる。弾性バンド22は外側端38a〜38dの端部までは延びない。しかしながら、基材14は、外側端上で、弾性バンド22を越えて延びて、延長タブ40a〜40dを形成する。
【0017】
図1に見られ得るように、基材のストリップ14の第2の面30は、第1および第2の端部領域ならびに中間セグメントに亘って延びる粘着性物質の層を含む。粘着性物質は鼻の皮膚と生体適合する。容易に取外しできる第1および第2のリリースライナー32および34は、第1の端部領域16および第2の端部領域18ならびに中間セグメント20を覆う。第1のリリースライナー32および第2のリリースライナー34は粘着性物質を覆い、かつ、鼻拡張器10が用いられるまで、基材のストリップ14上に適切に置かれたままである。
【0018】
吸気という必須条件のために乱流が生じるので、呼吸中、鼻によりもたらされる通気抵抗は必然的なものである。鼻道内の乱流が引き起こす加温、フィルタリング、および加湿は健康的な肺機能を促進するために必要である。正常な個体においては、総気道抵抗の最大2/3が鼻道に起因し得る。こうした抵抗の殆どは鼻弁として知られている領域において生じ、鼻弁は典型的には鼻の前方の開口部から2〜3cmである。正常な健康な人の集団における肺の作用の殆どが、鼻呼吸中のこの抵抗を克服することに費やされる。鼻呼吸は呼吸の好ましい方法である。
【0019】
鼻弁は通常、鼻の最も狭い部分であり、鼻中隔、上方外側軟骨の下縁、下鼻甲介の頭部、ならびに梨状口とそれを囲む組織によって形成される鼻気道の前方部分における概ね三角形の開口部である。外鼻拡張器は鼻弁の断面積を増加させ、気道抵抗を低減させ、かつ肺の作用を正常化または改善するために利用可能である。
【0020】
音響鼻腔計測法(acoustic rhinometry)は鼻孔を介して導入された音波パルスの反射の強さおよびタイミングの分析により内鼻組織を評価するために用いられる診断技術である。この技術は、迅速で、再現可能、非侵襲的であり、被験者からの最小限の協力しか必要としない。この技術を介して、鼻孔からの距離に応じた鼻の断面積のグラフが生成され、ここからMCA2および鼻腔の鼻容積が導き出され得る。最小の断面積(MCA2)は鼻気道の前方0〜3cmの部分に見出される鼻道の最も狭い狭窄、すなわち鼻弁である。前方の鼻腔の鼻容積(鼻容積)は、鼻道の前方0〜3cmの部分からの二次元面積測定の合計である。MCA2と併せて、鼻容積は、鼻弁領域内の通路のさらなる測定を提供し、三次元測定である。
【0021】
(プロトタイプ)
本発明の鼻拡張器のプロトタイプを構築した。これは、基材および弾性バンドの可撓性の部分を含んだ2層の鼻拡張器であった。上側の皮膚接触しない弾性層はアクリル酸系接着剤を有する厚さ13ミルのポリエステル材料からできている。弾性バンドは両側端から内側に向かってスロットが形成され、このスロットは中間セグメントの手前で終端し、4つの弾性枝部を形成する。スプリングの2つの枝部の間のスロットは典型的には、幅0.068インチ、長さ0.631インチである。上側弾性要素は、上側弾性枝部および隣接する中間セグメントの両方を含み、長さ1.963インチ、典型的には幅0.196インチである。下側弾性要素は下側弾性枝部および隣接する中間セグメントの両方を含み、長さ2.286インチ、典型的には幅0.196インチである。下側の皮膚接触層は、アクリル酸系接着剤を有する厚さ3ミルのポリエチレン材料、および63ポンドのクラフト紙のライナーでできている。このライナーは取り付けるために接着剤を露出させるように取り除かれる。2つの層は共に押されて、次いで、連続フローの打抜積層工程を用いて適切な形状に切り分けられる。
【0022】
(鼻開通性調査)
鼻開通性調査を15人の正常な健常人において行った。この研究の主たる目的は、音響鼻腔計測法を用いた最小断面積(MCA2すなわち鼻弁領域)および鼻の鼻容積について、市販のデュアルバンド型のBreatheRight(登録商標)鼻拡張器製品に対して、4つの弾性枝部を有する本発明の鼻拡張器の効果を比較することであった。結果を表1に示す。
【0023】
これは、本発明のプロトタイプの鼻拡張器対市販のBreatheRight(登録商標)鼻拡張器(Tan)の、単一中心、任意抽出、単純盲検、クロスオーバーの調査であった。市販のBreatheRight(登録商標)(Tan)およびプロトタイプの両方は、拡張器のない基準値と比較した統計的に有意な方法で、鼻弁領域(MCA2)を拡張した。鼻弁断面積の増加は、鼻腔抵抗の低下に等しいので、鼻呼吸を容易にする。市販のTanストリップは45%(0.95cmから1.38cm)、拡張を増加したが、プロトタイプは69%(0.81cmから1.37cm)、拡張を増加した。2つのストリップの直接の比較により、プロトタイプが、市販のTanストリップよりも、鼻弁断面積を30%多く生じたことが示された[(0.56−0.43)/0.43100=30%]。さらに、市販のTanストリップおよびプロトタイプの両方は、各々31%および29%の同様の量だけ、前方鼻孔の容積を増加させた。
【0024】
【表1】

【0025】
驚くべきことに、両方のストリップが鼻孔の容積を同様に増加させたが、プロトタイプの鼻ストリップは鼻弁の断面積がより増加したことが見出された。理論に拘束されないのであれば、プロトタイプおよび本発明の他の実施形態は、デュアルバンド型のBreatheRight(登録商標)鼻拡張器よりも、鼻弁の断面積がより増加したと考えられる。その理由は、プロトタイプおよび本発明の他の実施形態が、外側方向および上側方向の両方に、鼻道の外壁組織を引っ張ったからである。当該技術分野において公知である鼻拡張器は外側方向(すなわち鼻の側壁に直交する方向)にのみ引っ張る傾向がある。
【0026】
外側および上側への力の方向を図3に示す。図3は、公知の鼻拡張器の設計および本発明の鼻拡張器のつり上げ力を規定するために用いられることができる三次元座標系を与える。
・X軸は鼻の外側の側壁の表面に対して平行し、かつ鼻梁に対して直角する。正の方向は、頬から鼻梁への方向にある。
・Y軸は鼻の外側の側壁の表面に対して平行し、かつ鼻梁に対して平行する。正の方向は、鼻孔の開口部から目への方向にある。
・Z軸は、鼻の外側の側壁の表面に対して直交する。正の方向は、鼻の表面から外側に向かっている。
【0027】
本発明の鼻拡張器は、外側方向(正のZ軸に沿って)および上側方向(正のX軸に沿って)の両方に、鼻道の外壁組織を引っ張る。
【0028】
力のベクトルは3つの軸、X、Y、およびZへ任意の所定の力を割り当てるように記載できる。図4は、中心として指定された長手方向のセクション(長さ約10mm)および15mm〜25mmの間で可変の長さを有する2つの端部領域を有する典型的な拡張器を示す。中心部分は通常、鼻梁の平坦な部分の上に位置するが、端部領域は鼻の外側の側壁に取り付く。
【0029】
図5は、鼻に取り付けられたままの状態であるが、「リリースされる」前の鼻拡張器の側面図である。「リリースされる」とは、鼻拡張器のスプリング力が鼻の組織に作用し得る時を意味する。なお、紙の平面はX−Z平面であり、Y軸は紙から上方に上がっていることに留意されたい。
【0030】
鼻の組織にスプリングが与える力は、梁の形態で、長さLに亘って連続して分配される。この分配された力は、3つの軸、X(Fx)、Y(Fy)、およびZ(Fz)の各々における力ベクトルへと分けられることができる単一のベクトル力(合力=Ft)として表すことができる。合力Ftは任意の単位において、1.0の値を有する。まず、「リリース」前に、合力ベクトルFtは、正のZ軸の方向で1.0の値を有する。それゆえ、Fz=1.0、Fx=0およびFy=0である。
【0031】
図6は、鼻拡張器が「リリースされた」後の位置を示し、すなわち鼻拡張器が外側に動いて、この鼻拡張器で鼻の壁組織を引っ張って鼻を拡張することを示す。長さLは、角度αで旋回し、位置L1から位置L2へと移動するように見ることができる。長さ「a」は、Z軸方向に拡張器の端部が動いた距離を示す。合力ベクトルFtは拡張器にまだ直角であるが、L2はここで、Z軸に対して角度αである。結果として以下の関係が生じる:
・X軸の方向においてZ軸から角度αにてFt=1.0、
・Fy=0、
・Fz=Ftcos(α)、
・Fx=Ftsin(α)
【0032】
正のX方向に有意な力を加えることは、正のZ軸(またはY軸)方向における力で達成される拡張を有意に増加させると想定される。
【0033】
正のZ軸方向における有意な力(正のXまたはY軸方向における僅かな力と共に)は、鼻道を拡張することが示されている(例えば2バンド型のBreatheRight(登録商標)鼻ストリップ)。Johnsonの米国特許第5,476,091号(カラム8、1〜14行)に記載されているように、(Z軸方向における)5グラムの最小の力は、5〜50グラムの有用な力の範囲で拡張を生じることができる。全50グラムの力のうちの5グラム、すなわち10%が、鼻拡張の目的にとって有意であるとみなされる。それゆえ、力、Ftが図4に示されるように角度αで、その力の少なくとも10%がX軸方向にある場合、有意であるとみなされる。X軸方向における力の一部が10%未満である場合、有意とはみなされない。
【0034】
表2は、Ft力の少なくとも10%がFx(X軸)方向に存在するように、鼻拡張器スプリングの端部をつり上げる必要がある距離(長さ「a」)を示す。例えば、50mmのスプリングの長さは、その力の10%をFx(X軸)方向に向け変えるためには、端部において少なくとも2mmをつり上げる必要がある。2バンド型のBreatheRight(登録商標)鼻ストリップは、「a」寸法において2mmをつり上げておらず、それゆえ、X軸方向には、有意でない量の力(10%未満)しか向けていない。これは、スプリングがその長手方向距離に亘って略連結されて、ZおよびX軸方向への動きを抑えているという事実に起因している。
【0035】
【表2】

【0036】
本発明の、4つの弾性枝部を有した、スロットが形成されたスプリング設計により、個々のスプリングは十分に持ち上がることができ(距離「a」)、全体の力の少なくとも10%をX軸方向に向け変えるように提供できる。試験は、この設計の利点を有する鼻拡張器が、力を向け変えることができなかった比較対象のストリップから予期されていたものよりも、驚くべきことにさらなる鼻拡張を証明していることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラスを備える外鼻拡張器であって、前記トラスは、
第1の鼻道の外壁組織に係合するように適合された第1の端部領域および第2の鼻道の外壁組織に係合するように適合された第2の端部領域と、
前記第1の端部領域と前記第2の端部領域とを連結し、かつ、前記第1の鼻道と前記第2の鼻道との間に位置する鼻梁を横断するように構成された、中間セグメントと、
前記第1および第2の端部領域ならびに前記中間セグメントを規定する基材の可撓性ストリップと、
前記基材の可撓性ストリップの第1の面の全長を横断する弾性バンドと、
前記拡張器を着用者の鼻に取外し可能に係合するための、前記基材の可撓性ストリップの第2の面全体を覆う接着手段と
を備え、前記基材の可撓性ストリップ、弾性バンド、および接着剤を含む前記トラスは、両側端から内側に向かってスロットが形成され、前記中間セグメントの手前で終端しており、それにより、前記トラスを4つの弾性枝部に分け、各々の弾性枝部は延長タブを有する、外鼻拡張器。
【請求項2】
前記4つの弾性枝部は2つの下側枝部および2つの上側枝部を含んでなる、請求項1に記載の外鼻拡張器。
【請求項3】
前記上側枝部および前記下側枝部は互いに実質的に平行する、請求項2に記載の外鼻拡張器。
【請求項4】
前記上側枝部は前記下側枝部よりも短い、請求項2に記載の外鼻拡張器。
【請求項5】
前記弾性バンドのスプリング力は約5g〜約50gの間の力である、請求項1に記載の外鼻拡張器。
【請求項6】
前記弾性バンドのスプリング力は約18g〜約28gの間の力である、請求項2に記載の外鼻拡張器。
【請求項7】
裏当て材をさらに備え、前記弾性バンドは、前記裏当て材と前記基材との間に配置される、請求項1に記載の外鼻拡張器。
【請求項8】
前記裏当て材は、前記基材と同じ大きさおよび形状を有する、請求項7に記載の外鼻拡張器。
【請求項9】
前記鼻道の外壁組織は、外側方向および上側方向の両方に、前記拡張器によって引っ張られる、請求項1に記載の外鼻拡張器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−515570(P2013−515570A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546128(P2012−546128)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061399
【国際公開番号】WO2011/079088
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(591002957)グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (341)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
【Fターム(参考)】