説明

改善された薬剤被覆医療製品,その製造及び使用方法

本発明は、バルーンカテーテルとバルーン膜の表面に付着している活性物質との新規な組合せに関するものである。また、本発明は、バルーンカテーテルを製造する方法及び管路疾患の処理及び予防のためにバルーンカテーテルを使用する方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された薬剤被覆医療製品,その製造及び使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの病気は、生体全体に同時に影響を及ぼすものではないが、特定種類の組織に限定的に影響し、組織の或る限定された領域又は器官の或る部位に限定的に影響を及ぼす。例えば、腫瘍性疾患,関節の疾患,脈管の疾患及び特に固体腫瘍性疾患並びに動脈血管の疾患がある。これらの病気の薬物療法は、一般に、薬剤の経口投与又は静脈注射投与によって実施され、その薬剤は、体全体に行き渡って、多くの場合に、健康な組織及び健康な器官に、望ましくない影響を齎し、特に深刻な病気を齎す。このような望ましくない影響はその治療法の適用を制約することとなる。病んでいる組織の選択的な処置は、その選択された適用方法の最中に、又は、選択的な投与、例えば、病んでいる組織への直接的な投与又は病に冒された血管内に挿入されたカテーテルよる供給よって、病に冒された組織(例えば、抗体)に結合する特定の薬剤によって達成される。選択的な薬剤の投与の場合には、薬剤物質の効果の持続期間が専ら短いために生ずる問題と、体内への器具の挿入を伴うことから反復的な投与は論外であるということから生ずる問題がある。
【0003】
薬物療法の問題が、特別な適用方法によって及び一回の適用においてかなりの予防又は治療効果を達成するという必要性によって生じる。過去10年間、特に、動脈硬化による血管変化の治療においてかなりの成功を収めることができている。そのような血管の変化は局所的な領域において頻繁に起こる。その血管の変化は、血管の特定部分の狭窄又は閉塞を引き起こして、その狭窄部又は閉塞部の他方の側に位置する組織への血液の供給を阻害し又は阻止することとなる。これは、専ら、心臓,脚,脳,腎臓、及び、透析シャント(dialysis shunt)のような外科手術によって変えられた管路に影響を及ぼす。管路の狭窄は、体内に経皮的に挿入されて、直径が小さいので血管に大きな損傷を齎すことなく関連の血管内に導入させることができるカテーテルによって処置することができる。カテーテルの殆どは、カテーテルシャフトの遠位部の回りに窄められた状態で設けられ且つ使用時に流体によって膨脹させることの可能なバルーンを有している。バルーンは、窄められたままの状態で、血管の狭められた部分に圧入されて、(数秒から数分の範囲内の)短時間膨脹させられるので、当初の管路ルーメンが復元させられて、血液がその閉塞されていた領域を再び通過することができる。同時に、開成された管路ルーメンを支持するために、金属メッシュの筒状ピース(血管サポート、ステント)を導入させることができる。この筒状ピースは、萎められたバルーンに取り付けるか、又は、特別なカテーテルによって解放可能な可撓性自己膨脹型ステントとして設けることができる。
【0004】
多くの患者に関して、閉塞が現れる前のサイズに近付けるために管路ルーメンを広げることにより測定された当初の成功率は90%を越えるが、処置後の数カ月で閉塞が再発しまうこと(再狭窄)がある。その最も重大な原因は、管路の強烈な膨脹中に齎される損傷によって誘発される管路壁における細胞の過剰な増殖である。これは、初期の損傷の治癒後に機能停止(standstill)にならない特に平滑筋細胞に影響を及ぼす。このプロセスは、増殖抑制薬剤をステントにコーティングすることにより、冠状動脈において全く完全に抑制することができた。必要条件は、その薬剤をポリマーマトリックスからゆっくりと(即ち、数日及び数週間に亘って)放出させることである。ステントをコーティングすることの不都合な点は、治療が阻害されることである。ステントのストラット(strut)が血液に直接的に接している限り、そのストラット上に血栓が形成される可能性がある。血栓は、突発性全閉塞,梗塞及び死を齎す。従って、ストラットは、内皮層によって迅速且つ永久的にはびこるようになる。これは、細胞増殖を抑制する活性物質の放出を持続させることにより抑制される。
【0005】
ステントを薬剤でコーティングすることによる再狭窄の効果的な予防を実証する、末梢動脈のための利用可能な照査された研究は存在しない。然しながら、或る自己膨脹型ニチノールステントが、薬剤によるコーティングを必要とすることなく、再狭窄の割合を或る程度低減させるようである(非特許文献1)。
【0006】
バルーンをコーティングすることについて、特許文献1に大体開示されている。活性物質は、例えば、バルーンを活性物質の溶液中に浸すことによりバルーンに適用されている。特許文献2には、バルーンのプレフォーミングをも含んだ、萎んだ様々なステージにおけるバルーンに関するコーティングの実現性が開示されている。
【0007】
固体石灰化に屡々関連する閉塞動脈は、高圧力(8〜20気圧)を用いることによってのみ専ら本来のルーメンまで拡張させることができる。これは、内圧の増加によって直径があまり変化しない耐圧性バルーンを用いることにより達成することができる。そのバルーンは、バルーンが膨脹する前における管路ルーメンの直径がバルーンの直径よりも小さい限り、管路壁に対して横たわる剛直な筒体を形成する。バルーンの外側に適用された活性物質が、拡張させられた管路壁に適切な高圧力で押し付けられる。
【0008】
薬剤を用いた局所的処置は、管路ルーメンを伸ばしてしまうことなく行うことが必要とされる場合がある。その実例は、例えば、機械的プロセス(例えば、アテレクトミーカテーテル(atherectomy catheter))又は熱的プロセス(例えば、レーザー)によるプラーク(plaque)の除去後に実施される動脈の処置、又は、流れを阻止する狭窄症(例えば、血栓上に横たわっている傷つきやすいプラーク)に至らない、管路壁に加えられる変更処置がある。そのような場合には、管路に対する過度な引き伸ばし及びダメージは望ましくない。管路の何らかの引き伸ばしに至らない直径を有する通常の血管形成バルーンを選択した場合には、その膜だけが、不規則な形状の管路壁と数か所で接触し、その場所で薬剤を転送させる。
【0009】
[技術の現状]
特許文献3には、傷んだ管路壁を数秒続けて曝露することが、再狭窄が数週間に亘って発生することを阻止するのに十分であることが開示されている。そのことが、管路壁と接触した時に瞬時に生物学的に利用可能な態様で活性物質を放出する、薬剤でコーティングされたバルーンカテーテルと共に開示されている。
【0010】
相前後して手続された多くの特許出願には、バルーンカテーテルを薬剤でコーティングすることが記載されており、そこにおいては、血管形成バルーンが管路壁と接触するのが短い時間であるにも拘わらず、持続した活性物質のレベルを達成するための連続した試みが実際になされている。概ね開示されたコーティング方法によって製造された製品は、かなり品質に欠け及び又は高価で、製造するのに時間が掛った。
【0011】
水に若干溶ける親油性活性物質は、高揮発性有機溶媒を用いて適用し易いので、親水性活性物質よりも好ましい。カテーテルの取り扱い中に及びカテーテルが血流中にある時に、バルーンの表面からその親油性活性物質を早期に洗い流すことは容易ではない。親油性活性物質は細胞によって素早く吸収されて長い間そこに留まる。個々のケースにおいて、メトトレキサート又は三酸化ヒ素のような親水性活性物質が、新生内膜増殖による再狭窄症を阻止するためにステントに用いられている(特許文献4及び非特許文献2)。その活性物質は、非水溶性ポリマー内に埋め込まれて、そのポリマーからゆっくりと放出される。こうして、活性物質の早期の喪失が抑制される。そのことは、留置カテーテル及びその他のインプラントの抗菌性コーティングのために、親水性細胞増殖抑制剤を使用する場合にも当てはまる(特許文献5)。
【0012】
実際には、特許文献2及び特許文献3に開示のカテーテルコーティングだけが、管路を拡張させた後に、再狭窄症の程度及び頻度を低減させる効果的な製品を生み出した(非特許文献3及び4)。
【0013】
最新技術に関連する文献には、コーティングを実施する多くの活性物質とマトリックス物質とが挙げられている。記載された物質の中で好ましいものは、細胞増殖を抑制する物質と、抗炎症性又は抗凝固性の特性を有する物質である。
【0014】
記載されている添加剤は下記のような添加剤である。造影剤,マトリックス,ゲル形成添加剤、例えば、脂質又は薬学で通常用いられているポリマー,ヘパリン,ヒマシ油(特許文献3)、5000Daまでのマトリックス物質,インドシアニングリーン,フルオレセイン及びメチレンブルーの如き親水性染料,糖類,糖類誘導体,低分子量PEG,有機塩類,無機塩類,安息香酸塩、サリチル酸塩(特許文献2)、医薬製品のコーティング用のポリマー(特許文献6及び7)、スターチ,ゼラチン,PEG,アルブミン,キトサン,β−シクロデキストリン,ヒドロキシエチルセルロース,脂質,両親媒性リン脂質,及び、両親媒性ヨードキサム酸を含むX線コントラスト媒体の如き、ポリマー(特許文献8)、リノール酸,リノレン酸,オレイン酸,ステアリン酸,サリチル酸フェニル,ビタミンEの如き抗酸化物質,トコトリエノール,トコフェロール,同様にニトロフェニル オクチル エーテル,ビス(エチルヘキシル)セバシン酸,フタル酸ジイソドデシル(diisododecyl phthalate),N‐メチルピロリドン,ブチルヒドロキシアニソール,ブチルヒドロキシトルエン,ホスホリルコリン及びポリマー(特許文献9);油,脂肪酸,脂肪酸エステル,造影剤誘導体,アミノ酸,ペプチド,ビタミン,o‐ホスホセリン,中性又は荷電両親媒性物質,塩の如き、細胞透過性を高める物質(特許文献10),ポリエチレン グリコール エステル,糖の脂肪酸エステル,ポリグリセリル‐6‐脂肪酸エステル,ポリグリセリル‐10‐脂肪酸エステル,スクロースモノパルミテート,脂質膜に組み込む脂質鎖を含む界面活性剤,イオン及び非イオン溶媒,4ヒドロキシル基,カルボキシル基又はアミノ基を超える基を含む物質,ソルビタン脂肪酸エステル,フェノール環を備えた物質,コール酸ナトリウム,タウロコール酸ナトリウム、更にビタミン及び誘導体,製剤粒子懸濁剤への添加剤としてのポリエチレングリコール:有機酸,塩,無水物,アミノ酸,フィブリノゲンを含むペプチド,機能的に定義される多くの物質及びコーティングの如き、両親媒性物質(特許文献11)。これら添加剤の幾つかだけが、実際に有用であり、或る活性物質及びそのコーティングのためにのみ有用である。上述した添加剤の多くは、細胞膜を損なう作用を有し(溶媒、両親媒性物質)、細胞への活性物質の迅速な吸収を妨げ、また、それら自体不安定な物質である。当業者にとっては、如何なる量でどの添加剤を活性物質と共に用いるべきかについては専ら予測できない。
【0015】
活性物質の放出を持続させるための可能性について詳細に記載されている。このことは、再現可能に製造することの可能な製品のための必要条件を満足させるために及び数秒〜最長数分までの時間内に目標の組織に活性物質を効果的な量堆積させるために、非常に重要であるが、バルーンをコーティングする方法においては、事前に殆ど注意が払われていない。
【0016】
バルーンをコーティングするための下記の方法が開示されている。
【0017】
特許文献12は、薬製品のキャリアとして、活性物質の持続した放出を確実にさせるマイクロカプセルを用いることを開示している。そのマイクロカプセルは、バルーンの表面又はバルーン膜に形成された窪み部に接合剤によって又は溶解によって保持されている。適用は、浸漬又はスプレーによって実施される。バルーン膜に形成された窪み部に関する記述を除けば、バルーンが挿入シース及び血液を通る過程で特定の活性物質が確りとバルーンに付着し及びバルーンが膨脹させられた時に完全に解放されるように、その活性物質をどのようにバルーンに適用するかについての記載は全く存在しない。
【0018】
特許文献13によれば、バルーンを膨脹させた状態で、浸漬,吸収又はスプレーによって、荒い又はざらざらしたバルーン表面上に活性物質を付加する。バルーン膜と親油性薬製品との間の親水性層が、活性物質の離脱を助長する。
【0019】
特許文献14には、水に溶けない薬製品を浸漬又はスプレーによって又はピペットによる滴りによってバルーンに適用することが記載されている。バルーンは、活性物質を吸収するポリマーによってコーティングされている。活性物質の放出は、数分〜数時間続けた観察中に完了しなかった。
【0020】
バルーンカテーテルの長さ方向の折目部の下にコーティングを好ましくは配置することが、多くの実施形態を開示している特許文献10に詳細に記載されている。活性物質を含有した混合物が、ピペットを使用したプロセス,スプレーによるプロセス又はインジェクションによるプロセスによって折目部の下に適用されている。正確なコーティング方法が特許付与の対象として請求されているが、実施形態は、量の点で広範囲に及ぶ変更があることを示している。
【0021】
特許文献15は、バルーンカテーテルからの調剤薬の迅速な放出について特許付与の対象として請求しており、その調剤薬自体、制御された(即ち、持続した)態様で放出することが確実にされている。この目的のために、活性物質は、例えば、リポソーム,コロイド,極微粒子,アグリゲート(aggregate)又は凝集された懸濁物質のようなカプセルの形態で使用される。マトリックスとして使用されるものとして提案されている物質は、フィブリンゲル,ヒドロゲル及びグルコースである。多孔質層によってコーティングを保護すべきである。特許文献16には、コーティング上に配置された保護チューブが開示されている。調剤薬が、スプレー,浸漬,ローリング又はブラッシングによってバルーン膜に適用され、又は、溶媒の作用による又は接着剤を用いることによるバルーン膜への結合によって、バルーン膜に適用されている。
【0022】
更に、コーティングプロセスとして、真空中でのスプレー及び懸濁液又はエマルジョンの使用(特許文献17)、脂肪及びオイルの使用(特許文献18及び19)、薬製品を放出させる物質の使用及び条件(特許文献20)、親油性水化抑制剤の使用(特許文献21)、プレアセンブルされたステントを備えたバルーンをコーティングすること(例えば、特許文献22及び23)、及び、バルーンが膨脹させられる直前に単に引っ込められるカバーによって、コーティングされたバルーンを保護することが閧示されている。
【0023】
特許文献1及び2には、バルーンが膨脹させられた時に直ちに生物学的に利用可能になる親油性活性物質でバルーンカテーテルをコーティングするプロセスがとりわけ開示されている。そのコーティングは、浸漬,ブラシング又はスプレー、又は、ボリュームを測定するためのデバイスを用いて行われる。特許文献13では、バルーンの全ての表面に外側から等しく接近できるように膨脹された状態のバルーンにコーティングを施すことにより、表面コーティングに関する均一性の重要性について考慮が図られている。特許文献24では、この問題は、コーティングプロセス中にバイブレータを使用することにより、様々な種類の製品について取り組まれている。
【0024】
特許文献1及び2に記載のコーティングされたバルーンを除いては、上述したバルーンカテーテルの何れもが、それ自体、達成される臨床的な成果に関する、又は、アニマル試験のみから達成される所望の生物学的及び治療上のターゲットの点に関する改善を考慮すると、効果的であることを示していない。コーティングの方法は漠然と開示されているに過ぎず、それら開示された方法は、かなりの欠点を有する製品を産出させることとなる。
【0025】
非常に高レベルの効能を発揮するにも拘わらず、特許文献1及び2に記載のバルーンカテーテルは、薬製品において望ましくない欠点を露呈している。上述した全ての特許文献に詳細に記載された活性物質の多くは、薬学的作用のサイトにおいて何らの収量(yield)を生じさせず、即ち、開示された方法に従ってコーティングされたカテーテルを用いても全く不十分な収量しか生じさせず、当業者が、技術の現状に対応する使用可能な製品に想到することを可能にさせるような方法は開示されていない。上述した、バルーンカテーテルに薬剤物質をコーティングする方法は、とりわけ、薬剤物質が不均一に分布し過ぎているため、薬剤物質がバルーン膜に過剰に強く付着しているか或いはバルーン膜に対して十分強固に付着していないため、薬剤物質が必要以上に素早く又は必要以上にゆっくりと溶けるため、薬剤物資が管路壁を傷つけてしまう添加剤を含有しているため、製造,再現性,安定性及び適用の点において不都合になる構造の点において不必要に複雑すぎるため、有効性及び信頼性の双方において不十分である。
【0026】
管路壁を過剰に引き伸ばしてしまうことがないばかりでなく、傷つけてしまうことのない、活性物質を管路壁に転送するためのバルーンカテーテルは、未だ提案されていない。管路を引き伸ばしてしまうことのない直径を備えた通常の血管形成バルーンを選択した場合には、バルーン膜だけが、不規則な形をした管路壁に幾つかの場所で接触し、その場所で薬剤物質を転送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】EP1372737A公報
【特許文献2】WO2004/028582公報
【特許文献3】WO2002/076509公報
【特許文献4】US2006/0348947公報
【特許文献5】WO2003/099346公報
【特許文献6】EP0519063公報
【特許文献7】US5102402公報
【特許文献8】DE102004046244公報
【特許文献9】WO2004/022124公報
【特許文献10】WO2007/090385公報
【特許文献11】US2008/0118544公報
【特許文献12】WO1992/11890公報
【特許文献13】WO2004/006976公報
【特許文献14】WO2000/21584公報
【特許文献15】US2003/064965公報
【特許文献16】US2006/002973公報
【特許文献17】DE102004048265公報
【特許文献18】US2004/224003公報
【特許文献19】WO2003/039612公報
【特許文献20】WO1996/39949公報
【特許文献21】WO2005/089855公報
【特許文献22】DE102004046244公報
【特許文献23】US2005/0033417公報
【特許文献24】WO2001/052772公報
【特許文献25】US6,306,166公報
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】Schillinger M,Sabeti S,Loewe C et al.,Balloon angioplasty versus implantation of nitinol stentsin the superficial femoral artery NEngl J Med 2006;354:1879−88
【非特許文献2】Yang W,Ge J,Liu H et al.,Cardiovascular Research 2006;72:483−493
【非特許文献3】Scheller B,Hehriein C,Bocksch W,Rutsch W,Haghi D,Dietz U,Bohm M,Speck U,Treatment of Coronary In−stent Restenosis with a Paclitaxel−coated Balloon Catheter,N Engl J Med 2006;255:2113−2124
【非特許文献4】Tepe G,Zeller T,Albrecht T,Heller S,Schwarzwalder U,Beregi J−P,Claussen CD,Oldenburg A,Scheller B,Speck U,Local delivery of paclitaxel to inhibit restenoisis during angioplasty of the leg,N Engl J Med 2008;358:689−699
【非特許文献5】Scheller B,Speck U,Bohm M.,Prevention of restenosis−is angioplasty the answer?Hert 2007;93:539−541
【非特許文献6】Scheller B,Speck U,Abramjuk C,Bernhardt U,Bohm M,Nickenig G:Paclitaxel balloon coating−a novel method for prevention and therapy of restenosis,Circulation 2004;110:810−814
【非特許文献7】Cremers B,Biedermann M,Mahnkopf D,Bohm M,Scheller B,Paclitaxel−beschichtete PTCA−Katheter:Gibt es Unterschiede?Einfluss von PACCOCATH(商標)−und DIOR(商標)−Ballonkathetern auf die Neointimaproliferation an Schweinekoronarien(Paclitaxel coated PTCA catheters:are thereany differences?The effect of PACCOCATH(商標)and DIOR(商標)balloon catheters on neointimal proliferation in coronary arteries in pigs)Clin ResCardiol 2008;97−Suppl 1:V1742)
【非特許文献8】Levin AD,Vukmirovic N,Hwang C−W,Edelman ER,Specific binding to intracellular proteins determinesarterial transport properties for rapamycin and paclitaxel,PNAS 2004;101:9463−9467
【非特許文献9】Muni Nl et al、Am Heart J 2005;149:415−433
【非特許文献10】Kiesz RS et al、Circulation 2001;103:26−31
【非特許文献11】Kutryk MJB et al、J Am Coll Cardiol 2002;39:281−7)
【非特許文献12】Hayakawa E,Furuya K,Kuroda T,Moriyama M,Kondo A,Viscosity study on the self−association of doxorubicin in aqueous solution,Chem.Pharm Bull 1991;39:1282−1286
【非特許文献13】Scheller B,Speck U,Abramjuk C,Bernhardt U,Bohm M,Nickenig G:Paclitaxel balloon coating−anovel method for prevention and therapy of restenosis,Circulation 2004;110:810−4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は、病んだ組織を確実に局所的処理することを可能にさせ、新たな適用を進展させることを可能にし、水に簡単に溶ける親水性活性物質の利用を推進させる、例えば、バルーンカテーテルの如き改善された有用な治療力のある製品を提供することを課題とする。
【0030】
特に、本発明は、管路を引き伸ばすことがない又は引き伸ばし過ぎることがなく、管路壁の疾患を処置又は予防するために十分な量の活性物質を放出し続けるバルーンカテーテルを用意することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
この課題は、本願の特許請求の範囲に記載の独立請求項に係る発明によって達成される。本発明の有益な実施形態については、後述すると共に、特許請求の範囲に記載の従属項に記載されている。特別な製造方法を用いて製造される新規なバルーンカテーテルについて、バルーンカテーテルをコーティングする方法と共に以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、シリンジコーティングによってバルーン上にコーティングされたパクリタキセルの割合を報告したグラフである。
【図2】図2は、浸漬コーティングによってバルーン上にコーティングされたパクリタキセルの割合を報告したグラフである。
【図3】図3は、シリンジコーティング装置の詳細を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[定義]
本明細書中で用いられる用語について以下に説明する。
「治療効果のある製品」とは、疾患の処置又は予防のための器具で、必要な場合には、薬効のある物質の使用によって支援される器具を意味する。
【0034】
「バルーンカテーテル」とは、伸長可能な遠位セグメントを備えたカテーテルを意味する。
【0035】
「バルーン膜」とは、カテーテルバルーンに取り付けられて管路壁と接触する外側カバーによって特徴付けられる膜を意味し、好ましいバルーン膜は平滑な膜と、萎んだ状態でコーティングされた膜である。通常用いられるバルーンカテーテルは平滑なバルーン膜を呈している。ざらざらした又は荒い表面のバルーン膜は、製造中に採用される特別な処置を必要とする。
【0036】
「ステント」とは、腔又は組織内に留置される筒状体(管路サポート)を意味する。
【0037】
「活性物質」とは、生物学的又は医学的に効果的な物質を意味し、薬効のある物質、即ち、調合薬を含んだ承認済み活性物質が好ましい。
【0038】
「添加剤」とは、生物学的作用を何ら発揮しない物質を意味する。
【0039】
「マトリックス物質」とは、活性物質を取り囲み又はその他の態様で活性物質を確りと保持する物質を意味し、このマトリックス物質自体は、生物学的作用を発揮するものであってもよい。
【0040】
「親油性物質」とは、脂肪を溶かしている溶媒と溶媒水との間の分配係数として測定される、脂肪に対する親和力を有する物質を意味する。
【0041】
「親水性物質」とは、脂肪を溶かしている溶媒と溶媒水との間の分配係数として測定される、水に対する親和力を有する物質を意味する。
【0042】
「水溶性及び又は親水性物質」とは、そのままで生物学的に有効な物質、或いは、水中に、又は、プラズマ又は血液のような水性媒体中に、少なくとも1mg/ml(好ましくは、5mg/ml、更に好ましくは20mg/ml)の割合で溶けた塩の形態で生物学的に有効な物質、又は、0.5より小さい、ブタノール/水分配係数を呈する生物学的に有効な物質を意味する。
【0043】
「若干溶ける」とは、関連する物質の水に対する溶解度が、5mg/mlより少ない、好ましくは、1mg/mlより少ないことを意味する。
【0044】
「親水性溶媒」とは、室温で、少なくとも1%ボリューム、好ましくは10%ボリュームの水が溶解している溶媒を意味する。
【0045】
「即時の生物学的利用性」とは、活性物質が溶解することなく、又は、カプセルで包むように何らかの特別な処置を施すことにより活性物質が組織へ放出されることが遅れることなく、バルーンの短時間の膨脹中に活性物質が組織へ転送されることを意味する。
【0046】
「即時の放出」とは、バルーンが膨脹させられた時に、最大1分内で効果的な量の活性物質がバルーンの周囲に放出されることを意味する。活性物質は、例えば、粒子の形態で放出されて、経時的に溶解することにより有効的になることができる。
【0047】
「低分子量物質」とは、5000Daより小さい、好ましくは2000Daより小さい、特に好ましくは1000Daより小さい分子量の物質を意味する。
【0048】
「親水性バルーン膜」とは、水又は親水性溶媒で湿ることの可能な材料から成る膜を意味し、「親水化バルーン膜」とは、水又はその他の親水性溶媒で湿ることができる状態になるように処理することにより表面が変えられた、例えば、ナイロンから作られた膜を意味する。親水性バルーン膜又は親水化バルーン膜は、付加的な親水性層を備えた膜とは区別される。
【0049】
「親水的にコーティングされたバルーン膜」とは、それ自体水で湿ることの可能な付加的に適用された層を有する膜を意味する。
【0050】
「表面上に剥き出しになっている」とは、薬剤又は添加剤がバルーン膜、又は、バルーン膜に確りと取り付けられた何らかの層内に合体されていないことを意味する。例えば、薬剤又は添加剤が、水に溶けない何らかの重合体コーティング、特に、分離することのない何らかのヒドロゲル中に合体されていないことである。「表面に剥き出しになっている」ということには、バルーン膜が縮められた状態でバルーン膜の折目部によってカバーされるコーティングを含む。
【0051】
「良好な付着」:バルーンカテーテル(Orbus IX,Bavaria Medizin Technologie,Oberpfaffenhofen,Germany,SeQent,BBraun,Melsungen,Germany balloon size 3.5mm diameter,20mm length or comparable products from other manufactures)が、縮められた状態で、後述するドージングプロセスに従って、3μg活性物質mmでコーティングされる。バルーンは乾いた状態で膨脹させて、ガラス容器中で5秒間振る。75%を越えるドーズ(dose)がバルーン上に留まっている。
【0052】
「高い揮発性溶媒」とは、300℃よりも低い、好ましくは160℃よりも低い、特に好ましくは100℃よりも低い沸点を有する溶媒を意味する。
【0053】
[活性物質と添加剤]
活性物質としては、細胞増殖抑制物質,炎症抑制物質,消炎性物質,細胞過形成抑制物質,抗新生物性物質,抗有糸分裂性物質,細胞分裂抑制物質,細胞毒性(cytotoxic)物質,抗血管形成性物質,抗再狭窄性物質,微小管作用抑制物質,抗移動性(antimigrative)物質又は抗血栓性物質が好ましい。
【0054】
細胞増殖抑制物質,炎症抑制物質,消炎性物質,細胞過形成抑制物質,抗新生物性物質,抗有糸分裂性物質,細胞分裂抑制物質,細胞毒性物質,抗血管形成性物質,抗再狭窄性物質,微小管作用抑制物質,抗移動性物質又は抗血栓性物質の例としては、下記の物質がある。
アブシキシマブ、アセメタシン、アセチルビスミオンB、アクラルビシン、アデメチオニン、アドリアマイシン、エシン、アフロモソン、アカゲリン、アルデスロイキン、アミドロン(amidorone)、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナキンラ、アナストロゾール、アネモニン、アノプテリン、抗真菌薬(antimycotics)、抗血栓剤(antithrombotics)、アポシマリン、アルガトロバン、アリストラクタムAII、アリストロキン酸、三酸化ヒ素及びヒ素を含む他の化合物、アスコマイシン、アスパラギナーゼ、アスピリン、アトルバスタチン、オウラノフィン、アザチオプリン、アジスロマイシン、バッカチン、バフィロマイシン、バシリキシマブ、ベンダムスチン、ベンゾカイン、ベルベリン、ベツリン、ベツリン酸、ビオボル(biobol)、ビオリムス、ビスパルテノリジン(bisparthenolidine)、ブレオマイシン、ボムブレスタチン、ボスウェル酸及びその誘導体(derivatives)、ブルセアノール(bruceanoles)A、B及びC、ブリオフィリンA、ブスルファン、アンチストロビン、ビバリルジン、カドヘリン、カンプトテシン、カペシタビン、o−カルバモイルフェノキシ酢酸(o−carbamoylphenoxyacetic)、カルボプラチン、カルマスティン、セレコキシブ、セファランチン、セリバスタチン、CETP阻害剤、クロラムブシル、リン酸クロロキン、シクトキシン、シプロフロキサシン、シスプラチン、クラドリビン、クラリスロマイシン、コルキシン、コンカナマイシン、コーマディン、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、クドライソフラボンA、クルクミン、シクロホスファミド、シクロスポリンA、シタラビン、ダカルバジン、ダクリズマブ、ダクチノマイシン、ダプソン、ダウノルビシン、ジクロフェナク、1,11−ジメトキシカンチン−6−オン(1,11−dimethoxycanthin−6−one)、ドセタキセル、ドキソルビシン、ズナイマイシン、エピルビシン、エポチロンA及びB、エリスロマイシン、エストラムスチン、エトポシド、エベロリムス、フィルグラスチム、フルロブラスチン、フルバスタチン、フルダラビン、フルダラビン−5’−リン酸二水素(fludarabin−5´−dihydrogenphosphate)、フルオロウラシル、ホリミシン、ホスフェストロール、ゲムシタビン、グハラキノシド、ギンコール、ギンコール酸、グリコシド1a、4−ヒドロキシオキシシクロホスファミド(Hydroxyoxysyclophosphamide)、イダルビシン、イホスファミド、ジョサマイシン、ラパコール、ロムスチン、ロバスタチン、メルファラン、ミデカマイシン、ミトキサントロン、ニムスチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、プロカルバジン、マイトマイシン、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、オキサリプラチン、ビスマス及びビスマス化合物又はキレート、イリノテカン、トポテカン、ヒドロキシカルバミド、ミルテホシン、ペントスタチン、ペガスパルガーゼ、エキセメスタン、レトロゾール、ホルメスタン、SMC増殖阻害剤−2w(proliferation inhibitor)、ミトキサントロン、ミコフェノール酸モフェチル、c−mycアンチセンス、b−mycアンチセンス、B−ラパコン、ポドフィロトキシン、ポドフィリン酸2−エチルヒドラジド、モルグラモスチム(rhuGM−CSF)、ペグインターフェロンα−2b、レノグラスチム、(r−HuG−CSF)、マクロゴール、セレクチン(サイトカイン拮抗薬(antagonist))、サイトカイン阻害剤(inhibitors)、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤(cox−2 inhibitor)、NFkB、アンギオペプチン、筋細胞増殖を抑制するモノクローナル抗体、bFGFアンタゴニスト、プロブコール、プロスタグランジン、1−ヒドロキシ−11−メトキシカンチン−6−オン、一酸化窒素ドナー、ペンタエリスリトール、テトラニトラート、シンドノエイマイン(syndnoeimine)、S−ニトロソ基誘導体、タモキシフェン、スタウロスポリン、Bエストラジオール、aエストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、メドロキシプロゲステロン、エストラジールシピオナート、エストラジオール安息香酸エステル、トラニラスト、カメバカウリン及び他の癌治療に使用されるテルペノイド、ベラパミル、チロシンキナーゼ阻害剤(inhibitors)(チルフォスチン)、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体、6−a−ヒドロキシパクリタキセル、2´−スクシニルパクリタキセル、2´−スクシニルパクリタキセルトリエタノールアミン、2´−グルタリルパクリタキセル、2´−グルタリルパクリタキセルトリエタノールアミン、N‐(ジメチルアミノエチル)グルタミドを含むパクリタキセルの2´‐O‐エステル、N‐(ジメチルアミノエチル)グルタミド塩酸塩入りパクリタキセルの2´‐O‐エステル、タキソテール、亜鉛化炭素(MCS)、亜鉛化炭素の大環状オリゴマー、モフェブタゾン、ロナゾラク、リドカイン、ケトプロフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、メロキシカム、ペニシラミン、ヒドロキシクロロキン、アウロチオマレイン酸ナトリウム、オキサセプロール、β‐シトステリン、ミルテカイン、ポリドカノール、ノニバミド、レボメントール、エリプチシン、D‐24851(カルビオケム)、コルセミド、サイトカラシンA‐E、インダノシン、ノコダゾール、S100タンパク質、バシトラシン、ビドロネクチン レセプター アンタゴニスト、アゼラスチン、メタル プロテイナーゼ1及び2のグアニジル シクラーゼ刺激組織阻害剤、遊離核酸、ウイルス伝達物質に組み込まれた核酸、DNA及びRNA断片、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤‐1、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤‐2、アンチセンス オリゴヌクレオチド、VEGF阻害剤、IGF‐1、セファドロキシルといった抗生物質群から成る活性物質、セファゾリン、セファクロル、セフォキシチン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、ジクロキサシリンといったペニシリン、オキサシリン、スルホンアミド、メトロニダゾール、エノキサパリン、脱硫酸化及びN‐再アセチル化ヘパリン、組織プラスミノーゲン活性化因子、血小板膜糖蛋白受容体、ファクターXa阻害抗体、ヘパリン、ヒルジン、r‐ヒルジン、PPACK、プロタミン、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ワルファリン、ウロキナーゼ、ジピラミドールといった血管拡張薬、トラピジル、ニトロプルシド、トリアゾロピリミジン及びセラミンといったPDGFアンタゴニスト、カプトプリルといったACE阻害剤、シラザプリル、リシノプリル、エナラプリル、ロサルタン、チオプロテアーゼ阻害剤、プロスタサイクリン、バピプロスト、インターフェロンa,β及びy、ヒスタミンアンタゴニスト、セロトニンブロッカー、アポトーシス阻害剤、p65といったアポトーシス調節因子、NF‐kB又はBcl‐xLアンチセンス オリゴヌクレオチド、ハロフギノン、ニフェジピン、トコフェロール トラニラスト、モルシドミン、茶ポリフェノール、エピカテキン ガレート、エピガロカテキン ガレート、レフルノミド、エタネルセプト、スルファサラジン、エトポシド、ジクロキサシリン、テトラサイクリン、トリアムシノロン、ムタマイシン、プロカインアミド、レチノイン酸、キニジン、ジソピラミド、フレカイニド、プロパフェノン、ソタロール、イノトジオールといった天然及び合成ステロイド、マキロサイドA、グハラキノシド、マンソニン、ストレブロシド、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フェノプロフェンといった非ステロイド性物質(NSAIDS)、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、アシクロビルといったフェニルブタゾン及びその他の抗ウイルス物質、ガンシクロビル及びジドブジン、クロトリマゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナイスタチン、テルビナフィン、クロロキンといった抗原虫薬、メフロキン、キニーネ、更にヒポカエスクリンといった天然テルペノイド、バリングトゲノール‐C21‐アンゲレート、14‐デヒドロアグロスチスタチン、アグロスケリン、アグロスチスタチン、17‐ヒドロキシアグロスチスタチン、オバトジオリド、4,7‐オキシシクロアニソメリン酸、バッカリノイドB1,B2,B3及びB7、ツベイモシド、ブルセアンチノシドC、ヤダンジオシドN及びP、イソデオキシエレファントピン、トメンファントピンA及びB、コロナリンA,B,C及びD、ウルソール酸、ヒプタチン酸A、イソイリドゲルマナール、メイテンホリオール、エフサンチンA、エクシサニンA及びB、ロンギカウリンB、スクルポネアチンC、カメバウニン、ロイカメニンA及びB、13,18‐デヒドロ‐6‐アルファ‐セネシオイロキシカパリン、タキサマイリンA及びB、レジェニロール、トリプトリド、シマリン、ヒドロキシアノプテリン、プロトアネモニン、塩化ケリブリン、シノコクリンA及びB、ジヒドロニチジン、塩化ニチジン、12‐β‐ヒドロキシプレグナジエン‐3,20‐ジオン、ヘレナリン、インジシン、インジシン‐N‐オキシド、ラシオカルピン、イノトジオール、ポドフィロトキシン、ジュスチシジンA及びB、ラレアチン、マロテリン、マロトクロマノール、イソブチリルマロトクロマノール、マキロサイドA、マルカンチンA、マイタンシン、ライコリディシン、マルゲチン、パンクラチスタチン、リリオデニン、ビスパルテノリジン、オキソウシンサニン、ペリプロコサイドA、ウルソール酸、デオキシプソロスペルミン、プシコルビン、リシンA、サンギナリン、マヌー小麦酸、メチルソルビフォリン、スファセリアクロメン、スチゾフィリン、マンソニン、ストレブロシド、ジヒドロウサンバレンシン、ヒドロキシウサンバリン、ストリクノペンタミン、ストリクノフィリン、ウサンバリン、ウサンバレンシン、リリオデニン、オキソウシンスニン、ダフノレチン、ラリシレシノール、メトキシラリシレシノール、シリンガレシノール、シロリムス(ラパマイシン)、ヒ素,ヒ素化合物又は複合体含有ヒ素と結合したラパマイシン、ソマトスタチン、タクロリムス、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、シンバスタチン、ロスバスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、サリドマイド、テニポシド、ビノレルビン、トロホスファミド、トレオスルファン、テモゾロマイド、チオテパ、トレチノイン、スピラマイシン、ウンベリフェロン、デスアセチルビスミオンA、ビスミオンA及びB、ゼオリン、ファスジル。
【0055】
カテーテルバルーンに適用することのできる好ましい活性物質は、パクリタキセル及びその他のタキサン,ラパマイシン及びその他のmTOR(哺乳類ラパマイシン標的たんぱく質(mammalian target of rapamycin)阻害剤,メトトレキサート酸,ヒ素又はヒ素化合物,ビスマス又はビスマス化合物又はサリドマイドである。
【0056】
本発明の好ましい実施形態においては、少なくとも一つの活性物質が、水に若干溶ける中性物質,水に若干溶ける塩又は水に若干溶ける酸として存在する。
【0057】
親水性添加剤としては、好ましくは、揮発性・親水性溶媒又は親水性溶媒混合物,糖類,糖アルコール,アミノ酸,脂肪,無機塩又は有機塩,及び又は血管内に適用するのに好適な造影剤又は染料の如き投与される形態で何ら生物学的作用を及ぼさない非揮発性物質が用いられる。
【0058】
好ましい添加剤は、アスコルビン酸,尿素,ポリエチレングリコール 8000、及び、水に対する溶解度が低いけれども、トリグリセリド、特に、トリミリスチンの如き室温で固体のトリグリセリドである。
【0059】
[コーティングのためのバルーンカテーテル]
上述した特許文献には、経皮経腔的血管形成用の普通の平滑な壁を有するバルーンカテーテルが開示されている。それらバルーンカテーテルは、特許文献8及びその他の特許文献で開示されているように、ナイロン,PEBAX,ポリエチレン及びその他の多くの材料のように、様々な材料から構成されている。また、活性物質が配置される溝又は孔を備えたバルーンカテーテルや特殊加工された或いは荒い膜を備えたバルーンカテーテルも存在する。表面領域を増大させることに関する構造的変更の意図するところは、活性物質の装填領域を増大させること又はバルーンに対する活性物質の接着力を向上させることにある。更に、特許文献13には、付加的な親水性層でコーティングされたバルーンが開示されている。これらカテーテルのバルーンは、所定の寸法まで膨脹可能で、狭窄した動脈を本来の直径に復元させることができるようにするために、好ましくは耐圧性のものである。
【0060】
然しながら、表面を特殊加工すると、バルーンが管路内で膨脹させられた時に活性物質の放出に遅れを生じさせるという欠点がある。バルーンが膨脹した状態で、バルーンは、処置される管路を介した血液の流れを完全に遮断する。血液の流れの遮断は、特に冠状動脈においては、非常に短時間だけ許容される。この時間内に効果的な量の活性物質が放出されなければならない。少なくとも一つの活性物質がバルーン膜から分離するのが遅れることは不利である。
【0061】
意外にも、親水性バルーン膜又は親水化バルーン膜が活性物質によって再現可能且つ均一にコーティングされるものであることが分かった。加えて、コーティングのために広範囲の溶媒が適していて且つ最小限の一つの活性物質がバルーン膜に完全に付着した。これは、バルーンが縮んだ準備状態においてコーティングされた場合に特に当てはまる。親水性バルーン膜は、既に知られており、バルーンが膨脹させられる前にスライドされるカテーテルの能力を向上させるために使用される。
【0062】
従って、本発明は、親水性又は親水化されたバルーン膜又は表面に親水性コーティングを備えたバルーン膜を有するカテーテルバルーンを含んだバルーンカテーテルに関するものである。この親水性コーティングは、バルーンの表面に強固に付着し、即ち、バルーンが膨脹させられた時に離脱しないようにバルーンの表面に確りと取り付けられているのが好ましい。
【0063】
更に、本発明は、少なくとも一つの活性物質でコーティングされた親水性又は親水化されたバルーン膜を備えたカテーテルバルーンを含むバルーンカテーテルに関するもので、その少なくとも一つの活性物質は、カテーテルバルーンが膨脹させられた時に直ちに放出されるようにバルーン膜の表面上に剥き出しになってバルーン膜を被覆している。更に、必要な場合には、カテーテルバルーンは、添加剤で付加的にコーティングすることができる。
【0064】
バルーンの親水性表面、又は、バルーンの親水的コーティングが施された表面、又は、確りと付着した親水性コーティングを備えたバルーン膜の表面は、少なくとも一つの親水性活性物質でコーティングされ、又は、少なくとも一つの親水性添加剤と共に少なくとも一つの親水性活性物質でコーティングされているのが好ましい。
【0065】
従って、本発明による好ましいカテーテルバルーンは、バルーンに確りと付着している下側の親水性コーティングと、一つの活性物質又は少なくとも一つの活性物質を含んだ混合物から作られた外側の分離可能なコーティングとの二つのコーティングを含んでいる。
【0066】
通常の親油性バルーン表面を活性酸素で処理してそれを親水性にさせた場合に更に好ましい。親水性膜、より詳しくは、バルーン膜の親水性表面(即ち、バルーンの親水性表面)は、親油性バルーン膜(又はバルーンの親油性表面)上に親水性コーティングを施すことにより、または、親油性膜を化学的に変化させること(例えば、活性酸素との反応)により作り出すことができる。コーティングするという目的のためには、化学的に変化させる方法が好ましい。
【0067】
親水性カテーテルバルーンは、浸漬のように、コーティング混合物を用いて、非常に再現可能なコーティングを作り出すという簡単なプロセスで被覆することができるので、少なくとも一つの活性物質で被覆されたカテーテルバルーン上の活性物質の容積は、20%未満、好ましくは15%未満、更に好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満の平均標準偏差を呈する。
【0068】
本発明の更に好ましい実施形態においては、バルーン膜、又は、親水性バルーン膜、又は、親水性にコーティング処理されたバルーン膜は、若干水に溶ける少なくとも一つの添加剤との混合物中に必要に応じて存在する少なくとも一つの親水性活性物質で被覆されている。この実施形態によれば、若干水に溶ける添加剤が活性物質の早期な分離を阻止するという利点が得られる。
【0069】
活性物質又は添加剤でコーティングすることにより、少なくとも、膨脹していないバルーンの外面上にコーティングが位置している時には、親水性バルーンがスライドするという改善された能力が失われる。親水性バルーンは、それが狭窄した動脈内で膨脹させられた時に、所望の位置から簡単にスリップしてしまうという欠点を有している。我々自身の観察によれば、この欠点は、薬剤及びマトリックス物質を用いてコーティングすることによりかなり解消される。その理由は、周囲の媒体内に放出されるコーティングがバルーンと動脈壁との間の摩擦を著しく増大させるからである。
【0070】
通常の血管形成用バルーンは、管路を過度に伸ばしてしまうようなものであってはならない。従って、圧力を増大させることによって著しく増大させられることのない或る直径が、低圧で達成される。
【0071】
バルーン膜に対する更に有用な修正は、バルーン膜の機械的特性に関係するものである。管路を過度に伸ばしてしまうことなく管路壁に活性物質を転送させるためには、柔軟又はしなやかなで低圧で膨脹可能な膜、又は、管路の直径を著しく越える膜が選択される。
【0072】
「著しく越える」とは、バルーンが約2000hPa未満の圧力で伸びて、バルーンの直径が、少なくとも20%程度まで、好ましくは30%を越える程度まで管路の標準直径を超過することを意味する。このバルーンは、管路壁に付加される圧力によって管路ルーメンを著しく広げることを意図しているものではない。管路ルーメンを著しく広げることは、特に、閉塞部又は高レベルの狭窄部を移動させることであり、又は、管路の標準直径の30%を越える程度までルーメンを拡大させる。膜の特性は、膜の組成及び又は膜の壁及び襞の強度に関する当業者からの情報に基づいて選択することにより達成することができる。バルーンは、高圧力で膨脹することができないので、例えば、10,000hPa(9.87気圧(1気圧=1013hPa))に等しいか或いは低い、好ましくは5,000hPa(4.93気圧)に等しいか或いは低い比較的低い破裂圧に対する耐性を有している。好ましい膨脹圧力は、好ましくは4,000hPa(3.95気圧)未満、更に好ましくは2,000hPa(1.97気圧)未満、更に好ましくは通常の圧力より高い1,000hPa(0.97気圧)である。2,000hPa(1.97気圧)と通常の圧力より高い200hPa(0.20気圧)との間の圧力が特に好ましい。動脈及び静脈を処置するためのカテーテル又は透析バイパス形成用カテーテルは、0.2未満、好ましくは0.1未満の長さ係数までの直径を有しているのが好ましい。
【0073】
上述したバルーンは、例えば、シリコン又はラテックスから作られた、略球状の形状を有して、カテーテルを嚢のような腔内に完全に充填させることなく固定するために用いられるものと混同してはならない。
【0074】
本発明によれば、低圧で膨脹させられた状態で既に最大の直径を確保し、でこぼこな管路壁に適用するために或る程度の柔軟性を有するバルーンカテーテルが好ましい。従って、バルーン内の圧力を増加させてバルーンが完全に膨脹させられた後に、カテーテルバルーンの半径が、15%を越える程度まで、好ましくは30%を越える程度まで、更に好ましくは60%を越える程度まで、増大することが好ましい。圧力の増加は、ガス(例えば、二酸化炭素)又は流体(例えば、造影剤)を通常の方法でカテーテルバルーン内に導入させることにより実施される。
【0075】
本発明の別の実施形態は、カテーテルバルーン内の圧力を増加させることによりバルーンが完全に膨脹させられた後に、カテーテルバルーンの半径が、15%を越える程度まで、好ましくは30%を越える程度まで、更に好ましくは60%を越える程度まで増大するようにバルーンが膨脹した時に、直ちに放出される、バルーンの表面上に剥き出しになった少なくとも一つの活性物質を備えたカテーテルバルーンに関するものである。
【0076】
活性物質と、必要とされる場合の添加剤は、バルーン膜に付着していて、意外なことに、剛性に欠けるにも拘わらず、バルーン膜の構造又はバルーンの使用準備状態の襞に起因して、早期に分離してしまうことが十分に防止されている。バルーン膜は可撓性及び伸縮性を有しているので、萎んでいる状態又は非作動状態、即ち、膨脹していない状態におけるバルーン膜の構造は、低圧下での膨脹中に平らにさせられる窪み部,凹み部,隆起部又は襞を含んでいる。このようなバルーンを使用することは、血液の流れを著しく制限していない、即ち、50%未満程度まで自由な管路ルーメンを狭窄させている管路に変化させる処置をするのに特に有益である。バルーンは、でこぼこしている管路壁に対して低圧で位置決めさせることができるので、より耐圧性に劣る管路の処置を可能にさせる。本発明によるバルーンカテーテルは、管路疾患の処置及び予防のために好適で、特に、炎症性の管路変化,罹り易いプラーク,手術的に或いは機械的に既に処理された管路部分及び(回復)ストレッチングの必要性のない広範囲の病巣に対処するのに好適である。また、このバルーンカテーテルは、ステントが到達し難い狭まった管路にも適している。本発明によるバルーンカテーテルは、血液の流れを阻害することのない、管路壁の変更のための処置のために著しく適している。
【0077】
[コーティング]
今まで解決されなかった問題の一つは、満足のいく正確な量の活性物質をバルーンの表面上に十分均一に分布させるという点にある。薬剤の投与に関しては、薬剤の投薬量の正確性に関する厳格な条件が存在し、本願発明の場合には、バルーンのコーティングに関する厳格な条件が存在する。正確な投与手続は薬学において公知であるが、殆どの薬剤応用においては、活性物質を表面上に一様に分布させなければならない必要性は存在しない。加えて、薬学及び生物化学において用いられている通常の投与装置は、ドーズ(dose)の発散圧力が何らかの困難性を著しく齎していない水溶液を用いて主として動作する。
【0078】
後述する特許文献には、この問題をどのように解決することができるかについての幾つかの漠然とした記載が存在する。然しながら、この問題の重大性については全く認識されていない。特に、薬理学的作用のサイトにおける薬の迅速且つ完全な解放について確実に効果があるように経済的且つ再現可能な態様で当業者がバルーンをコーティングすることを可能にさせるプロセスについては何ら記載されていない。
【0079】
(縮まった)通常のすぐに使用できるバルーンを親油性薬剤と適切な添加剤との、粘度の低い溶液中に繰り返し浸漬させることを含んだ、特許文献1及び2に記載のコーティングプロセスは、第一に、医療的使用のために十分に再現可能な投与量をバルーン上に生じさせる。一つの重要な見識は、バルーンの収縮によって齎される、バルーン上の活性物質の径方向の不均一な分布にも拘わらず、バルーンの膨脹時に少なくとも一つの活性物質の均一な分布がバルーン上に生じさせられるということであった(非特許文献5)。然しながら、製造のためにそれらの定められた一連のステップを用いるのに一連の欠点があることが明らかであった。
【0080】
上記プロセスは、浸漬の間に乾燥処理が実施される、繰り返しの浸漬を必要とするため、面倒で且つ時間がかかる。バルーンに付着している活性物質の量は、必ずしも制御可能ではない多数のファクターによって決定される。一回のバッチ(batch)から略同一のバルーンコーティングが満足のいく標準まで十分に再現可能であったが、これは、様々な生産工程(production runs)からのバッチについては必ずしも当てはまらない。浸漬プロセスにおいて解決し難い更なる問題は、活性物質の長手方向での分布である。特に、バルーンの基部が十分にコーティングされないという可能性がある。更に、上述したプロセスにおいては、粘度の低い溶液がカテーテルの中央ルーメン内に浸透することを防止するための対策が必要とされる。残りの公知のコーティングプロセスは、更に好ましくない結果を齎す。膨脹させられたバルーンのコーティングは、コーティングが適切に付加されたバルーンを縮めさせなければならないという帰結を有している。このことは、バルーンに付加された活性物質の投与量を考慮して、コーティングが確りと付着している時にロスがないという何らかの態様でのみ実現可能である。バルーに確りと付着しているコーティングは、バルーン膜と管路壁とが接触している短時間の内に十分に解放されない。縮められたバルーンをスプレーでコーティングした場合には、活性物質はバルーンの表面上にのみ位置し、これは、バルーンカテーテルが挿入シース,ガイドカテーテル及び直前の血管に導入された時にロスを増大させる結果に至る。活性物質の噴霧,ブラッシング及びピペットによる付加は、正確に予め定めることのできる再現可能な量の活性物質の付加のみならず、バルーン上の活性物質の均一な分布をも確実にさせるものではない。普通のピペットを用いた場合に、好ましい高揮発性溶媒から必要とされる非常に少ないボリュームを正確に測定することは、バルーン上の溶液の均一な分布を達成することと同じ程度に難しい。特許文献10に記載されたプロセスの利点は、バルーンの襞(folds)の下に活性物質を配置させるという点にある。
【0081】
治療効果のある製品又はその一部(例えば、カテーテルの遠位端に配置されたバルーン)をコーティングするための本発明によるプロセスは、a)カテーテルバルーンを用意する工程と、b)気相と接触していないコーティング用混合物を含んだマイクロドージングユニット(micro−dosing unit)を用意する工程と、c)マイクロドージングユニットを用いてコーティング用混合物で何らのロスを齎すことなくカテーテルバルーンを均一にコーティングする工程を含んでいる。
【0082】
コーティング用混合物としては、通常、コーティング用溶液又はコーティング用流体があるが、ゲル,懸濁液,エマルジョン,分散液又はスラリーをも用いることができる。
【0083】
コーティング用溶液をバルーンに適用する前に溶媒が溶液から気化することができないことが重要である。溶媒は、ボリュームが活性物質の投与量に影響を及ぼす何らかの気相に接触させてはならない。
【0084】
カテーテルバルーンは、コーティング工程において水平に配置されて、萎んだ又は完全に膨脹していないバルーンの完全なコーティングを達成するために、マイクロドージングユニットをカテーテルバルーンの長手方向軸線に沿って前後に移動させつつ、長手方向軸線を中心として回転させるのが好ましい。
【0085】
シリンジ,カニューレ,チューブ又はその他のドージング装置(図3参照)を、必要な少量の溶液をカテーテルバルーン上に付加するのに十分正確なマイクロドージングユニットとして用いることができ、コーティング中にカテーテルバルーンを損傷させることのない態様で、好ましくはカテーテルバルーンに全く接触させない態様で用いられる。
【0086】
300℃より低い沸点、好ましくは100℃より低い沸点を有する高揮発性溶媒,塩素化合物又はフッ素化合物をコーティング用混合物の溶媒として用いるのが好ましい。更に、親水性溶媒、又は、少なくとも一つの溶媒又は親水性溶媒と水との混合物を使用することができる。
【0087】
バルーンは萎ませた状態でコーティングするのが好ましいが、適切に適合された何らかの装置を用いて何らかの別の状態でコーティングすることができる。
【0088】
均一なコーティングを達成するためには、全ての襞を含む基部端から遠位端に及ぶ膜全体を、コーティングプロセス中にコーティング用混合液で同時に湿らせるべきである。然しながら、これは、コーティング用混合液を滴り落とすことなく実施すべきである。
【0089】
コーティング用混合物としてゲルを使用することもできる。この場合には、活性物質の少なくとも一つは、それ自体、ゲル化剤として機能することができ、又は、ゲル形成に関与することができるものである。活性物質自体は、ゲル状のコーティング用混合物が得られるならば、活性物質以外に余分なゲル形成物質を存在させることなく、ゲル化剤として機能することができる。
【0090】
更に、少なくとも一つの活性物質を若干水に溶ける態様でカテーテルバルーンに適用するのが好ましい。
【0091】
それに代えて、容易に水に溶ける、即ち、親水性の少なくとも一つの活性物質を、それがバルーンに適用された後に若干溶ける形態に変化させることができる。これは、例えば、シクロデキストリンでキレートさせること(complexing)により又は塩形成によって達成させることができる。水に若干溶ける塩の製造と、対イオン又は錯形成剤の選択は、当業者が有している標準的な認識の一部であり、簡単な溶解度試験によって決定することができる。
【0092】
本発明によるコーティングプロセスの好ましい実施形態は、次のような工程を含んでいる。
【0093】
A)下記のような物を用意する工程
1)バルーンを含んだ、精選したバルーンカテーテル又は適切な構成要素。そのバルーンは、縮められた状態又は緊密に一体となっていない予め形成された襞を備えた状態のものであることが好ましい。
2)バルーンを好ましくは水平状態に保持するための装置。好ましい実施形態におけるバルーンは、それの長手方向軸線を中心として回転させることができる。
3)好ましくは高揮発性有機溶媒を含有している溶液の適用のためにマイクロボリュームを測定するための装置。その溶液においては、適用されるボリュームが投与される量に影響を及ぼす何らかの気相と接触していない。
4)ボリュームを測定するための装置からバルーンへ溶液を転送するよう設計された構成要素。
5)少なくとも一つの活性物質及び一つ又はそれ以上の任意の添加剤を含有した溶液。
【0094】
B)下記のような工程を含んだ作業工程
1)mmでのバルーンの予め定めた表面を用いて、バルーンを所望の量でコーティングするために必要なボリュームと、その表面における活性物質の濃度を計算する工程。
2)バルーンを保持しているカテーテル又はカテーテルの一部を保持装置に導入する工程。
3)用いられる溶媒の計算されたボリュームのためにボリューム測定装置を較正する工程。
4)ガスの何らかのバブルを存在させることなく、ボリューム測定装置にコーティング用溶液を充填する工程。
5)バルーンを長手方向軸線を中心として断続的にゆっくりと回転させる工程。
6)溶液が出る開口を備えた、溶液を転送するための構成要素をバルーン上、又はバルーンの真上、又はバルーンの真下、又はバルーの片側に位置決めさせる工程。
7)溶液を転送するための構成要素を一様の速度でバルーンの長手方向軸線に沿って前後動させつつ、所定量のコーティング用溶液をバルーン上に転送する工程。溶液の転送速度は、溶液をバルーンから滴り落ちらせることなく、バルーンの全ての部分を同時に溶液で湿らせるように調節するのが好ましい。
【0095】
バルーンの材質及び(平滑又はざらざらした)バルーンの表面構造に関係なく、又は、バルーンが緊密に縮められているかゆったりと縮められているかに関係なく、又は、バルーンが部分的に膨脹されているか完全に膨脹されているかに関係なく、又は、バルーンの寸法及び種類に関係なく、又は、使用されるバルーンの個々のバッチに関係なく、ボリューム測定装置は、バルーン上に正確な量の溶液が転送されることを確実にさせる。コーティング用溶液を用いてバルーンを完全に湿らせることと組み合わせて、溶液を転送するための構成要素とバルーンとの双方を移動させると、長尺なバルーン上に意外なほどに均一な溶液の分布が生じる。
【0096】
コーティング後に、バルーンを、好適な状態下で、簡単に縮めること及び又は乾燥させることができ、ステントを組み立てて、カテーテルを包装して、通常の方法で滅菌させることができる。
【0097】
コーティングについて上述した原理は、コーティングが必要とされる物体の要請にマッチすることのできる様々な態様で、様々な装備及び装置を当業者が使用することにより実現することができる。そのような様々な態様は、襞及び容易にアクセスすることのできないその他の構造内に混合物が浸透することに加えて、薬剤の投与量の正確性,薬剤の配合,被覆された領域の表面上におけるコーティングの分布の均一性によって特徴付けられる。必要とされる材料の量及び必要とされる時間量の双方が最小であるので、このプロセスは、操作が簡単で且つ費用効果がある。このプロセスは、簡単にコントロールすることができ、自動化させることもできる。特に、治療効果のある製品又はその周囲上の混合物の望ましくない分布の結果としての容器内のコーティング用混合物の喪失が回避される。治療効果のある製品に適用する前にコーティング用混合物の、早期気化溶媒による何らかの変化は不可能である。
【0098】
[親油性活性物質の加速された溶解及び分離]
治療効果のある製品を薬剤でコーティングするための一組の溶媒が、特許文献1,2,25及びその他の特許文献に記載されている。親油性薬剤製品、例えば、パクリタキセル及びその他のタキサンのみならずラパマイシン及び関連の物質が、水性媒体,血液又は組織においてバルーン表面から特に簡単に分離するようになり、治療効果のある製品のコーティングをクロロホルム又はジクロロメタン又はその他の高揮発性塩素又はフッ素化合物の物質の溶液を用いて実施した場合に溶液になることが意外にも分かった。
【0099】
親油性活性物質及び又は若干水に溶ける活性物質の分離を促進させるための更に好適な対策は、揮発性親水性有機溶媒、特に、メタノール,プロパノール,ギ酸,酢酸,テトラヒドロフラン(THF),アセトン,3−ペンタノン,カルボキシル酸のエステル、特に、ギ酸メチル,ギ酸エチル,酢酸メチル,酢酸エチル等及びこれらの物質と水との混合物を使用することである。例えば、パクリタキセルを用いた一つのコーティングの形態は、ポリマー、ヒドロゲル、又は、薬剤製品,全ての添加剤及び溶媒の錯混合物ための他のキャリア層を備えた当初のバルーン膜に何らの付加的なコーティングをすることなく実施される。そのようなコーティングは、殆ど効果がないことが判明している(非特許文献6,特許文献2の実施例7及び非特許文献7)。
【0100】
意外なことに、例えば、イソプロパノール,テトラヒドロフラン,ジメチルホルムアミド又は酢酸、又はこれらの溶媒を含有する混合物中で、パクリタキセルの溶液に少量の水を加えることにより、結晶構造とパクリタキセルのバルーン膜に対する付着力を非常に正確にコントロールすることができる。好ましい溶媒は、(a)パクリタキセルのバルーン膜に対する非常に強力な付着力を生じさせる溶媒と、(b)室温で、ボリュームにして少なくとも1%水に溶ける溶媒である。これらの簡単な溶媒混合物から、活性物質の結晶が何ら技術的に経費を使うことなく形成される。或る特定の場合には、バルーンに強力に付着したパクリタキセルの結晶が形成される。バルーンが例えば収斂された動脈中で膨脹させられた場合に、パクリタキセルの結晶は殆ど完全にバルーンから分離し、非常に大きな範囲で組織に転送される。
【0101】
パクリタキセルの結晶は、薬学から知られているように、ゆっくりと組織に溶けて、或る期間に亘って、効果的な濃度の薬学的生成物が存在することを担保する。バルーンへの適用は、上述したドージングプロセスを用いることにより、かなり簡単に行える。それは、ドーセイジ(dosage)に関して、特許文献10に記載のものよりも正確である。マトリックス物質を有していないことは、活性物質とのマトリックスの融和性,それの長期間に亘る安定性,それのバルーン膜に及ぼす影響及びそれの生物学的耐性をテストしなくてもよいという大きな利点がある。添加剤は、例えば、予め組み立てられたステントの付着力が低減していてステントが早期に失われた場合に、又は付着力が増大していてバルーンの膨脹後にステントがバルーンから解放されない場合に、ステントの付着力に影響を及ぼす。付加的に適用される物質はバルーンの避けがたい緊密な収縮を難しくさせるので、添加剤を適用しないことによりバルーに対する負荷を低減させることは、同様に有益である。狭窄症に冒された狭い管路部分をバルーンが通過するために、バルーンは小さな外径を有していることが必要である。
【0102】
本発明による更に別の実施形態は、平滑な膜を備えたカテーテルバルーンに関するものである。その平滑な膜は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも10%の水を含有する有機溶媒中に溶けた活性物質でコーティングされて、次に乾燥され、滅菌される。その膜においては、活性物質は結晶の形態で存在する。ここでは、平滑なバルーン膜を備えたカテーテルバルーンは、バルーンを縮めた状態でコーティングするのが好ましい。
【0103】
本発明の更に別の実施形態は、バルーン膜が、少なくとも1%、好ましくは少なくとも10%の水を含んだ有機溶媒に溶けた活性物質で被覆されているバルーンカテーテルに関するものである。被覆後に、バルーン膜は乾燥され、滅菌される。この場合に、活性物質は結晶の形態で存在する。
【0104】
本発明に係る更に別の実施形態は、バルーン膜が、平滑な壁を有し、何らの添加剤を用いることなく、バルーン膜面上に剥き出しとなるように適用されたパクリタキセル結晶で被覆されたバルーンカテーテルに関するものである。この場合には、縮められたバルーンが動脈に導入された時に、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%のパクリタキセルがバルーンに付着したままとなり、カテーテルバルーンが狭められた動脈中で膨脹させられた時にパクリタキセルが直ちにバルーンから解放されるように、バルーン膜はパクリタキセルで被覆される。
【0105】
既に知られているように、溶けやすい、水に溶けやすい又は微小な特定のマトリックス物質を、コーティング用に調製された液状物に加えることができる。この場合には、その特定のマトリックス物質は、それ自体活性物質であってもよい。好適な添加剤の選択は、殆どの場合に、活性物質,溶媒及びバルーンの表面に左右される。コーティングの分離を促進させる好適な添加剤の例としては、アスコルビン酸,尿素及び好ましくは約5,000〜20,000Daの分子量範囲のポリエチレングリコールがある。バルーンに物質を適用することにより、被覆されたバルーンの直径及び可撓性に好ましくない結果を齎すので、バルーンに対する物質(活性物質及び添加剤)の総適用量、即ち、バルーン膜に適用される全ての非揮発性成分の総量は、好ましくは、膨脹させられた状態のバルーン表面の10μg/mmより少なく、更に好ましくは5μg/mmより少なくすべきであり、添加剤は、好ましくはバルーン表面の1μg/mmより少ない、より好ましくは0.3μg/mmより少ない割合で適用すべきである。
【0106】
更に、本発明は、バルーン膜が、バルーン膜面上に剥き出しになるように適用される少なくとも一つの活性物質と、アスコルビン酸、尿素、8,000〜20,000ドルトンの分子量範囲のトリミリスチン又はポリエチレングリコールのように常温で販売されているトリグリセリド、又は、これらの物質の何らかの好ましい混合物の何れかで被覆されているバルーンカテーテルに関するもので、このバルーンカテーテルにおいては、少なくとも一つの活性物質は、カテーテルバルーンが膨脹させられた時に直ちにバルーンから解放されるように適用されている。
【0107】
[水溶性及び又は親水性物質]
従来、動脈疾患の局所的処置及び予防のための二つの異なったクラスの化合物が存在し、それらは、組織内に保持されて劇的な影響を及ぼす疎水性薬と、直ちに離れて効果のない親水性薬である(非特許文献8)。
【0108】
特許文献25には、コーティング用に選択された、水に溶けない活性物質が明確に記載されている。例えば、ステントを不十分な親油性の物質で被覆した場合に、再狭窄症の予防に効果がないことが実証されている(非特許文献9,10及び11)。Huang Y等は、AM J Cardiolにおいて、活性物質をポリマーからゆっくりと解放させるメトトレキサートで被覆したステントを用いる新生内膜増殖の僅かな抑制について報告している。カテーテルバルーンをコーティングするためにメトトレキサートを用いることは不均化的により難しい。その理由は、バルーンが血管内の狭窄症部位に達する前においてさえ、水に溶ける活性物質が素早く溶けてしまうからである。三酸化二ヒ素についての、ポリマーマトリックスからのゆっくりとした解放後の効能についても非特許文献2に記載されている。親油性物質に対する薬剤製品の制限は、効能,活性及び有用性に関して、望ましくない制約を選択に負わせることにある。実際に、並はずれて効果的な活性物質を、水溶性の親油性に乏しい物質から見出すことができる。それらの全く異なった物理化学的及び薬理動力学的特性にも拘わらず、親油性薬剤製品と同様に、意外にも、水溶性及び又は親水性活性物質が、短時間だけ続けられる細胞の曝露から長く続いた効果を齎せることが分かった。意外なことに、長期間に亘る使用のためにインプラントされる容器(reservoir)からの持続した解放によるこれらの物質の迅速な希釈を補償する必要性がなかった。
【0109】
解決することが困難な問題は、被覆された治療効果のある製品、特に、バルーンカテーテルによって、投与のために、親水性、主として簡単に水に溶ける薬剤を使用することから生じている。パクリタキセル又はラパマイシン及びその誘導体の如き若干水に溶ける物質は、その治療効果のある製品が挿入シース、ガイドカテーテル及び血液内に置かれた時に、治療効果のある製品の表面に可なり引き続き付着する。それらの物質は、例えば、バルーンの膨脹及び管路壁に対する擦れのような機械的応力下においてバルーンから分離するようになる。必要な場合には、それらの物質は、プロテインの存在下において溶けることができ、他方、膜脂質の親水性物質は、水又は血液と初めて接触した時に溶け、バルーンが目標位置に達する前に可なりの程度失われてしまう。従って、滅菌された治療効果のある製品が目標位置に達する前に初めて液体(例えば、血液)と接触した時と実際に目標位置に達した時との間に経過する短時間の間に、親水性物質が解放されてしまうことを抑制するために保護対策を講じる必要性がある。
【0110】
この対策は、長時間に亘って効果が持続することを確実にするために、薬理学的活動のサイトにおいて活性物質の遅延した解放を齎す調合物と混同すべきではない。親水性・水溶性活性物質の解放は、活性物質が薬理学的活動のサイトに達した時に直ちに行われるべきであり、それより早く行われるべきではない。
【0111】
親水性特徴があるにも拘わらず、三酸化二ヒ素によって驚くべく例外が明らかにされた。それをバルーン表面に溶液として適用することができ、この場合には、乾燥後に膜に強力に付着し、バルーンが膨脹した時に殆ど完全に解放される。
【0112】
親水性及び又は水溶性活性物質による問題は、それを治療効果のある製品の表面に適用することによって始まる。そのような表面、特に一般に使用されるカテーテルの表面等の多くは、水性溶媒又はその他の親水性溶媒によって湿されないか或いは一様でなく湿される。更に重要な特性は、治療効果のある製品の表面、特にバルーン膜の表面に対するコーティングの付着力である。コーティングの分布の均一性とその付着特性は、表面に若干の変更を加えることにより、意外にも、明瞭に影響される。従って、活性酸素(プラズマ)で処理された表面は、コーティングの均一な分布のみならす、特に、縮められた膜に対する良好な付着とバルーンが膨脹させられた時にコーティングのバルーンからの良好な分離を生じさせる。同様な効果は、親水的に誘導体化された又は親水的にコーティングされた膜によって得られる。
【0113】
水は、親水性及び又は水溶性活性物質を制限された範囲で適用するための溶媒として使用する場合に好適である。メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール,ジメチルスルホキシド,アセトン,ギ酸,酢酸,アンモニア,テトラヒドロフラン,ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドのような比較的親水性の有機溶媒、これら溶媒の混合物、及び、それら溶媒と水との混合物における、溶媒のpHは酸及び塩基を用いて調節することができる。溶媒は治療効果のある製品の使用前に除去するのが好ましい。溶媒は、治療効果のある製品の使用前に可能な限り気化させ、必要ならば、高い温度及び減少された圧力を用いて、気化させる。
【0114】
親水性及び又は水溶性物質は、それだけで溶けることができ又は塩の形態で溶けることもできる。アントラサイクリン、及び、特にドキソルビシンの場合には、表面のコーティングに意外なほどよく適した粘性溶液を、濃度,イオン濃度、好ましくは、ナトリウムイオン濃度、及びpHを適切に選択することにより製造することができる(非特許文献12)。これらの溶液は水を唯一の溶媒として含んでいるが、通常のバルーンカテーテルで用いられているように膜がむしろ親油性である場合に、非常に均一なコーティングを得ることができる。
【0115】
上述したコーティングの全てが、通常のプロセスの一つに従って、浸漬、スプレー、ブラッシング、又は、ボリューム測定装置によって適用され、好ましくはボリューム測定装置を用いた上述のプロセスに従って適用される。バルーンカテーテルの場合には、バルーンは、膨脹させた状態で、又は、縮ませた状態で又は、中間状態で、コーティングされる。
【0116】
親水性及び又は水溶性物質でコーティングすることの更なる可能性は、その物質を溶液の形態で表面に適用しないことである。親水性及び又は水溶性物質を、例えば、液体中のミクロ粒子又はナノ粒子の形態で適用することができ、この場合には、それら物質は若干溶けて、又は、溶けている液体から沈殿している。これは、親油性有機溶媒の使用と、親水性及び又は水溶性物質と組み合わせた親油性添加剤の付加とを可能にさせる。コーティングの早期の分離は、プリフォームされた粒子で表面をコーティングすることにより、及び、必要に応じて親油性溶媒中に親油性添加剤を付加することにより阻止される。
【0117】
多くの親水性及び又は水溶性物質は、電気的に帯電させることのできる官能基を含んでいる。これらの物質は、電気的に帯電させられていないで、その形態でコーティングのために用いられる場合に、有機溶媒に溶けることができる。また、これらの物質は、容易に溶ける又は若干溶ける塩を形成することができる。治療効果のある製品をコーティングするための一つの好ましい可能性は、親水性及び又は水溶性物質の若干溶ける塩を使用することである。こうして、例えば、カテーテルを湿らせるために用いられる生理溶液に接触し、又は、挿入シース又はガイドカテーテル内で血液と接触し、又は、血流中の血液と直接接触して、早期の分離が阻止される。薬剤製品の効能は、溶けない塩の形成によって相殺されない。治療効果のある製品からの放出に続いて、若干溶ける塩が、変化のない薬剤物質を再び放出する。これは、局所的に投与される場合に効果的であることが必要とされる薬剤製品の並はずれて少量であることの条件を満足させる。同様の原理を、親水性・水溶性添加剤についても用いることができる。若干溶ける塩に対して変化を加えることにより、若干水に溶けるマトリックス構造が生成される。このマトリックス構造は、親水性及び又は水溶性活性物質が、或る期間、例えば、管路の実際の拡張前及び物質の実際の分離前のバルーンカテーテルの操作中に、早期に分離することを阻止する。
【0118】
溶けない塩は、親水性及び又は水溶性物質を治療効果のある製品にコーティングのために使用する前に製造することができ、次に、適切なキャリア液中の懸濁液の形態で使用することができる。好ましい方法は、水溶液、水を含んだ有機溶媒、比較的水溶性の有機溶媒又は溶媒混合物中で、溶ける形態で、治療効果のある製品をコーティングすることである。次に、その溶媒が気化され、被覆された表面を親水性及び又は水溶性物質と共に用いるための沈殿剤で処理し、これにより溶けない塩又は溶けない電気的に中性形態への変化が続いて起こる。沈殿剤は、何らかの好ましい形態、例えば、浸漬、スプレー、ブラッシング又はボリューム測定装置によって適用することができる。
【0119】
生理学的に許容される若干溶ける塩の例としては、一方で、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄(II)又は鉄(III)の化合物があり、他方、ホスファート、サルファート、オキザラート、又は、ジアトリゾ酸のようなイオン化したX線造影剤の塩がある。
【0120】
従って、本発明は、管路疾病の処理及び予防のため、及び、迅速な生物学的有用性を持った一つの処理で長く続く効果を達成するために、若干水溶性の塩の形態、又は、若干水溶性の酸のような形態、又は、若干溶ける基のような形態の、少なくとも一つの低分子量の親水性活性物質を利用することに関する。
【0121】
本発明の更なる実施形態においては、カテーテルバルーンのバルーン膜がその表面上に剥き出しとなった少なくとも一つの活性物質を備えている。この表面は、カテーテルバルーンが膨脹させられた時に少なくとも一つの活性物質が直ちに解放されるようにその活性物質で被覆され、この場合には、少なくとも一つの水溶性活性物質が、水に若干溶ける塩として、又は、水に若干溶ける酸として、又は、水に若干溶ける基として、或いは、水に若干溶ける錯体(complex)として存在する。
【0122】
本発明の同様な実施形態は、表面上に剥き出しとなった少なくとも一つの活性物質を備えているカテーテルバルーンのバルーン膜に関する。この表面は、カテーテルバルーンが膨脹させられた時に少なくとも一つの活性物質が直ちに解放されるようにその活性物質で被覆され、この場合には、少なくとも一つの活性物質が、バルーン膜、又は、親水性バルーン膜、又は、親水的に被覆されたバルーン膜に適用された後に、若干水に溶ける形態、特に、水に若干溶ける塩、又は、若干水に溶ける酸、又は、水に若干溶ける錯体に変えられる。
【0123】
特に挿入シース又はガイドカエーテルを通って処置が行われる位置に達する途中での装置の操作中に治療効果のある製品からの親水性及び又は水溶性活性物質のロスは、ゆっくりと若干水に溶ける生理学的に許容可能な物質で続いてコーティングすることにより回避することができる。そのようにする場合には、そのような物質は、所望の薬理学的な効果を達成し、そうでなければ、添加剤として作用する。この付加的なコーティングは、固体であってもよく、そうでなければ、或る脂質を伴った場合のように液体であってもよい。固体である付加的なコーティングの例としては、糖類、糖アルコール、他の中性有機物質、親油性アミノ酸、無機酸及び有機酸の塩並びに基、医学で一般に用いられる造影剤又は染料、ヘパリンのような抗凝固剤、アセチルサリチル酸のような血小板凝集抑制剤、サルチル酸及びその他の多くの物質がある。何らかの特定のコーティングを保護する特別な種類の付加的コーティングの効果については、個別の基準に基づいて試験される。従って、付加的な保護コーティングは、保護コーティングが溶けない溶媒を用いて溶液が作られるように適用するのが好ましい。例えば、(付加的保護コーティングとして)アセチルサリチル酸は、多くの親水性及び又は水溶性活性物質が極若干溶ける酢酸エチルに簡単に溶けることができる。
【0124】
付加的保護コーティングは、可能な限り薄くすべきである。30μg/mmより小さい表面領域での適用が好ましい。
【0125】
一方、付加的保護コーティングは、様々な態様で適用することができ、その好ましい方法は、スプレー及び非常に簡単な浸漬である。
【0126】
本発明の更に好ましい実施形態は、少なくとも一つの親水性活性物質、又は、少なくとも一つの親水性活性物質を含有した調剤で被覆されたバルーンカテーテルに関するもので、この実施形態においては、若干又はゆっくりと水に溶ける生物適合性材料にて成る外側保護層がコーティングに適用されている。
【0127】
従って、バルーンカテーテルにおいては、少なくとも一つの活性物質又は少なくとも一つの親水性活性物質のコーティングが、若干又はゆっくりと水に溶ける材料層で被覆され又はそのような材料がコーティングに含浸されているのが好ましい。その保護層は、活性物質の層に浸透することができる。保護層は、例えば、生物学的に影響を及ぼさない物質から成るものであってもよいが、アセチルサリチル酸又はヘパリンから成るものであってもよい。
【実施例1】
【0128】
親水性バルーンカテーテルと非親水性バルーンカテーテルとをパクリタキセルでコーティングした(テスト番号102/103及び128/129)。
コーティング溶液:
アセトン89%,エタノール9%及びUltravist(商標)−370(シェーリング社(Schering AG),ベルリン)2%中に30mgパクリタキセル/mlを含んだ溶液に、バルーンを4回浸漬し、各浸漬の間に乾燥させた。

結論:親水性表面を備えたバルーンが、再現可能に被覆させることができる。
【実施例2】
【0129】
マイクロドージング(micro−dosing)装置でコーティングした(浸漬によるコーティングとの比較)。
一連の試験(テスト番号323及び326−329)において、それぞれで準備した三つの縮んだ状態のバルーンを、コーティング溶液Aに四回浸漬させて各浸漬の間に完全に乾燥させ、又は、12.5μlの同じ溶液とハミルトンCR−700コンスタントレートシリンジ(Hamilton VR−700constant rate syringe)を用いて活性物質を二度適用し、又は、三つの更なるコーティング溶液を、高揮発性有機溶媒を用いて適用した。

ハミルトンシリンジを用いたドセイジ(dosage)の適用は、バルーン上のかなり正確なドセイジを可能にさせる。
ドセイジの均一性は、異なるサイズのバルーン(テスト390/391)に関しても達成することができ、浸漬によるコーティング(392)よりもさらに正確であった。

【0130】
バルーンの長さ方向軸線に沿った活性物質の分布は、直径5mmの100mm長さの三つのPTAバルーンの夫々について調査した。ハミルトンシリンジを用いたドージング作業(dosing operation)で(図1参照)
又は浸漬(図2参照)でコーティングした後に、バルーンを長さ10mmのピースに切断した。そのピースにおける活性物質の量をHPLCを用いて測定した。図においては、Y軸の1の値は、全長に亘って分布する平均的な量、即ち完全に均一な分布量に相当する。
【0131】
ドージング作業による適用後のバルーンの長手方向軸線上における活性物質の分布は、浸漬を用いて活性物質を適用する場合よりも不均一であるということはなく、むしろ、実際にはバルーンを浸漬するよりも均一である。(図1及び2参照)。
【実施例3】
【0132】
バルーン上にコーティング溶液を塗布するための装置。
好ましくは、狭いルーメンを有する2〜10cmの長さの針を用い、その針は基部端でマイクロドージング装置に接続され、遠位端は閉塞されている。この針は、バルーンの曲率にフィットするように湾曲した窪み状に針の側部に形成された出口を有している(図3参照)
【実施例4】
【0133】
バルーンカテーテルをメトトレキサートでコーティングする。
[コーティング溶液]
30mgのメトトレキサート酸(methotrexate acid)+100μlの重炭酸ナトリウム(7.5%)+900μlのメタノール(2×16μlでコーティング、4μg/mmのバルーン表面に相当する)。
[バルーン]
3.5〜19mm
[付加的コート]
短時間で浸漬される、Ultravist(商標)−370+ヒドロキシエチルスターチ(HES)10%(ボリュームにして、1:1)+30mgメトトレキサート/ml
[ステント]
3.5〜18mmのバルーン拡張可能なステンレス鋼
[活性物質の量]
5.3μg/mmのバルーン表面
【実施例5】
【0134】
豚の過剰引き伸ばしされた冠状動脈内での実施例5による、コーティングされたバルーンカテーテルの効能及び耐性
方法は、非特許文献13に記載の方法を実施した。
ステントを、メトトレキサートでコーティングされたバルーンカテーテル又はコーティングされていない(コントロール)バルーンカテーテルで豚内に留置させた。4週間後に、ステントの一領域におけるルーメンの狭窄の程度を、定量的血管造影法を用いて測定した。
結果:

【0135】
後期ルーメン損失(the late lumen loss)とは、4週間以内の過剰な細胞増殖(growth)に起因して、元々の冠状動脈のルーメンが減少する量を意味する。元々の冠状動脈と後期ルーメン損失後の冠状動脈を血液が通っている状態における、冠状動脈のルーメンの直径は、夫々、2.64mmと2.41mmであった。コントロールグループ(メトトレキサートなし)では、後期ルーメン損失は1.1mmで、メトトレキサートで処理されたグループにおいては、後期ルーメン損失は0.67mmであった。メトトレキサートは、血管ルーメンを狭窄させる、動脈壁の望ましくない増殖を可なり減少させた(p<0.025)。
【実施例6】
【0136】
バルーンをサリドマイドでコーティングする。
イタリア,ロンカデレに所在のInvatec S.R.L.社のFalcon Bravo RX 3.5〜20mm、8製品
[コーティング溶液]
ジメチルホルムアミド+50mg/mlのサリドマイド
各バルーンを二度8μlの溶液でコーティングし、各コーティング後に、少なくとも12時間乾燥させるために放置する。その後、四つのバルーンを50mgのトリミリスチン(trimyristine)、3mlの暖かいエチルアセテートに短時間浸漬させる。
【0137】
挿入シース及びガイドカテーテルによる及び豚の冠状動脈(拡大されていない)中に1分留置させてから引っ込めることによる損失がある。HPLC、カラム(HPLC,columns)を用いた分析:ウォーターズ シンメトリー(Symmetry)、C18、5μm、25cm×4.6mm、移動相:ボリュームにして72%の0.01M酢酸アンモニウム緩衝剤pH5.5及びボリュームにして28%のアセトニトリル、0.8ml/min;検出:300nm。
【0138】
トリミリスタート(trimyristate)で処理されたバルーンは、冠状動脈に至る及び戻す途中で、平均28%の活性物質を失った。トリミリスタートで処理されていないバルーンは95%の活性物質を失った。即ち、トリミリスタートのコーティングは、バルーンに対するサリドマイドの付着力を著しく向上させた。
【実施例7】
【0139】
三酸化二ヒ素でバルーンカテーテルをコーティングする。
イタリア,ロンカデレに所在のInvatec S.R.L.社のFalcon Bravo RX 3.5〜20mm、12製品
[コーティング溶液]
50mgのAsが、インジェクションのために、1mlの水中に溶解している。その溶液を3mlのアセトン又はメタノールで希釈させる。
各バルーンを25μlの溶液で三回コーティングし、各コーティング後に、乾燥させるために少なくとも12時間放置する。
挿入シース及びガイドカテーテルによる及び豚の冠状動脈(拡大されていない)中に1分留置させて(膨脹させられていない)から引っ込めることによって、又は、冠状動脈中で1分間膨脹させることによる損失がある。灰化(ashing)後の原子吸光分析法による分析。
バルーンは、冠状動脈に至る及び戻される途中で、平均25%の活性物質を失った。動脈中で膨脹させた後に、平均13%のドーズがバルーン上に残っていた(各ケースにおいてn=4)。
【実施例8a】
【140】
溶媒を用いて付着力をコントロールする(シリーズ1)。
イタリア,ロンカデレに所在のInvatec S.R.L.社のFalcon Bravo RX 3.5〜20mm、12製品
各バルーンを、縮んだ状態で、3〜4μg/mmのパクリタキセルでコーティングし、下記に明らかにしたように、乾燥状態での膨脹中における活性物質の損失についてテストした。
アセトン 21%
ジオキサン 12%
ジメチルホルムアミド 24%
ジメチルスルホキシド 66%
酢酸 4%
イソプロパノール 19%
テトラヒドロフラン 4%
【実施例8b】
【0141】
室温でテトラヒドロフラン(THF)の水に対する溶解度の限界まで、水を追加するだけで付着力をコントロールする(シリーズ2)。
テトラヒドロフラン 3%
ボリュームにして10%の水とテトラヒドロフラン 3%
ボリュームにして20%の水とテトラヒドロフラン 16%
ボリュームにして37%の水とテトラヒドロフラン 37%
【実施例9】
【0142】
尿素の添加でバルーンカテーテルをコーティングする。
イタリア,ロンカデレに所在のInvatec S.R.L.社のFalcon Bravo RX 3.5〜20mm、8製品
[コーティング溶液]
1mlの水に溶けた70mgの尿素+9mlのテトラヒドロフラン+500mgのパクリタキセル。各バルーンを18μlの溶液で一回コーティングする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性又は親水性化されたバルーン膜を備えたカテーテルバルーンを有するバルーンカテーテルであって、前記バルーン膜が少なくとも一つの活性物質でコーティングされ、前記少なくとも一つの活性物質が、前記カテーテルバルーンが膨脹させられた時に直ちに放出されるように前記バルー膜の表面上に剥き出しになっていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記カテーテルバルーンの前記バルーン膜が、活性酸素で処理されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記カテーテルバルーンが、任意の添加剤で付加的にコーティングされている、請求項1又は2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記カテーテルバルーン内に付加される圧力の増加によって、前記カテーテルバルーンの半径が、15%より大きく、又は、30%よりも大きく、又は、60%よりも大きく増加して、前記カテーテルバルーンが完全に膨脹した状態となるように前記カテーテルバルーンが構成されている、請求項1〜3に記載のカテーテル。
【請求項5】
少なくとも一つの活性物質を備えたバルーンカテーテルであって、バルーンが膨脹させられた時に前記少なくとも一つの活性物質が直ちに放出されるように前記バルーンの表面上に前記少なくとも一つの活性物質が剥き出しになった状態で適用され、前記バルーン内に付加される圧力の増加によって、前記バルーンの半径が、15%より大きく、又は、30%よりも大きく、又は、60%よりも大きく増加して、前記バルーンが完全に膨脹した状態となるように前記バルーンが構成されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記バルーンが、10,000hPaより低い、又は、5,000hPaより低い、又は、4,000hPaより低い、又は、2,000hPaより低い破裂圧に対する耐性を有している、請求項1〜5の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記バルーンが、動脈の標準直径よりも少なくとも20大きい直径を有している、請求項1〜6の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
前記バルーンのバルーン膜、又は、前記バルーンの親水性バルーン膜、又は、前記バルーンの親水化コーティングされたバルーン膜が、少なくとも一つの親水性活性物質、又は、少なくとも一つの親水性添加剤と共に少なくとも一つの活性物質でコーティングされている、請求項1〜7の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項9】
前記バルーンのバルーン膜が、少なくとも一つの活性物質でコーティングされ、当該少なくとも一つの活性物質が、前記バルーンが膨脹させられた時に直ちに放出するように前記バルーン膜の表面上に剥き出しになった状態で適用され、少なくとも一つの水溶性活性物質が、若干水に溶ける塩、又は、若干水に溶ける酸、又は、若干水に溶ける基、又は、若干水に溶ける錯として存在する、請求項1〜8の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項10】
前記バルーンのバルーン膜が、少なくとも一つの活性物質でコーティングされ、当該少なくとも一つの活性物質が、前記バルーンが膨脹させられた時に直ちに放出するように前記バルーン膜の表面上に剥き出しになった状態で適用され、少なくとも一つの活性物質が、バルーン膜,親水性バルーン膜又は親水化コーティングされたバルーン膜に適用された後に、若干水に溶ける塩,若干水に溶ける酸,若干水に溶ける基又は若干水に溶ける錯のような若干水に溶ける形態に変えられている、請求項1〜9の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項11】
前記バルーンのバルーン膜,親水性バルーン膜又は親水化コーティングされたバルーン膜が、少なくとも一つの親水性活性物質と水に若干溶ける添加剤とを含んだ混合物でコーティングされている、請求項1〜10の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項12】
少なくとも一つの物質又は少なくとも一つの親水性物質が、若干又はゆっくりと水に溶ける生物適合性層によってコーティング又は含浸されている、請求項1〜11の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項13】
前記バルーンが、任意の付加的保護コーティングを含んでいる、請求項1〜12の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項14】
前記バルーンが、少なくとも一つの高揮発性溶媒、又は、300℃より低い沸点を有する、塩素又はフッ素と化合された少なくとも一つの化合物を含む調剤でコーティングされている、請求項1〜13の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項15】
前記バルーンが、少なくとも一つの活性物質がそれ自体ゲル化剤として機能し又はゲル形成に従事しているゲル物質でコーティングされている、請求項1〜14の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項16】
コーティング混合物が、少なくとも一つの親水性溶媒、又は、水中の少なくとも一つの親水性溶媒の混合物を含んでいる、請求項1〜16の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項17】
前記バルーンのバルーン膜が、少なくとも1%、又は、少なくとも10%の水を含んだ有機溶媒中に溶解した活性物質でコーティングされ、乾燥されて滅菌され、当該活性物質が、結晶の形態でバルーン膜上に存在している、請求項1〜16の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項18】
平滑なバルーン壁膜を備えた前記バルーンが、少なくとも1%、又は、少なくとも10%の水を含んだ有機溶媒中に溶解した活性物質でコーティングされ、乾燥されて滅菌され、当該活性物質が、結晶の形態でバルーン膜上に存在している、請求項1〜17の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項19】
平滑なバルーン壁膜を備えた前記バルーンが、縮められた状態でコーティングされている、請求項18に記載のバルーンカテーテル。
【請求項20】
前記バルーンのバルーン膜が、平滑で、パクリタキセルの結晶でコーティングされ、縮められた状態で前記バルーンが動脈内に導入された時に、少なくとも70%、又は、少なくとも80%、又は、少なくとも90%のパクリタキセルが前記バルーン膜に付着し続け、且つ、前記バルーンが狭窄した動脈内で膨脹させられた時に、パクリタキセルが直ちに放出されるように、パクリタキセルの前記結晶が前記バルーン膜の表面上に剥き出しにされている、請求項1〜19の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項21】
有機溶媒が、メタノール,エタノール,(イソ−)プロパノール,アセトン,テトラヒドロフラン,酢酸,ジオキサン又はジメチルホルムアミドを含んでいる、請求項16〜20の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項22】
前記カテーテルバルーンのバルーン膜が、少なくとも一つの活性物質と、アスコルビン酸,尿素,8,000〜20,000ドルトンの分子量範囲のトリミリスチン又はポリエチレングリコールのように常温で販売されているトリグリセリド、又は、これらの物質の何らかの混合物の何れかとで、前記バルーンが膨脹させられた時に少なくとも一つの活性物質が直ちに放出されるように、被覆されているバルーンカテーテル。
【請求項23】
前記バルーン膜に適用された非揮発性成分の全ての総適用量が、10μg/mmより少ない、又は、5μg/mmより少ない、又は、3μg/mmより少ない、請求項22に記載のバルーンカテーテル。
【請求項24】
メトトレキサート酸,ヒ素,ヒ素化合物,ビスマス,ビスマス化合物又はサリドマイドを含んでいる、請求項1〜23の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項25】
管路疾患の局所的処置及び予防に好適な、請求項1〜24の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項26】
狭窄した血管壁を、血管の流れを阻害しない管路壁に変えるための処置に好適な、請求項1〜25の何れか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項27】
カテーテルバルーンをコーティングするための方法であって、
a)カテーテルバルーンを用意する工程と、
b)気相に接触しないコーティング混合物を含んだマイクロドージングユニットを用意する工程と、
c)前記マイクロドージングユニットを用いて、前記混合物を損失なく且つ均一にカテーテルバルーンにコーティングする工程を含んでいる、カテーテルバルーンをコーティングするための方法。
【請求項28】
コーティング中に、前記カテーテルバルーンを該バルーンの長手方向軸線を中心として回転させると共に、前記マイクロドージングユニットを前記カテーテルバルーンの前記長手方向軸線に沿って前後動させる工程を含んでいる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
管路疾患の処置及び予防のために、若干水に溶ける塩、又は、若干水に溶ける酸、又は、若干水に溶ける基の形態の少なくとも一つの親水性・低分子量の活性物質を用いる方法。
【請求項30】
一度の投与後に、迅速な生物学的利用能と共に長期に持続する効能を達成するために、若干水に溶ける塩、又は、若干水に溶ける酸、又は、若干水に溶ける基の形態の少なくとも一つの親水性・低分子量の活性物質を用いる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−535074(P2010−535074A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519335(P2010−519335)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001285
【国際公開番号】WO2009/018816
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(509248659)インヴァテック テクノロジー センター ジーエムビーエイチ (3)
【Fターム(参考)】