説明

改良されたプリーツ付きナノウェブ構造体

プリーツ付き構造体を有する濾過媒体を含んでいるフィルター。その媒体は、ナノウェブ層とスクリムとを含み、ナノウェブ層は、数平均直径が1ミクロン未満の繊維を含み、層の厚さが50ミクロン未満である。プリーツ間隔に対する媒体の全厚さの比率は0.15未満であり、ナノウェブ層は坪量が約0.6gsmを超える。不織布スクリムは、スパンボンドウェブ、乾式ウェブ、湿式ウェブ、セルロース繊維ウェブ、メルトブローンウェブおよびガラス繊維ウェブであってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空掃除機、集塵器、ガスタービン吸気口の空気フィルターシステム、暖房・換気・空調のフィルターシステムを含む濾過用途、または気体流または汚染空気流から塵、ごみ、および他の微粒子を除去するためのさまざまな他の用途に一般的に使用できる、濾過媒体およびフィルター構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス流は粒状物質を運ぶことが多い。多くの場合、ガス流から粒状物質の一部または全部を除去するのが望ましい。例えば、発動機付き乗り物のエンジンまたは発電装置へ向かう空気取入れ口の流れ、ガスタービンへ向けられるガス流、およびさまざまな燃焼炉への空気流は、同伴粒状物質を含んでいることが多い。粒状物質は、関係するさまざまな機械の内部の仕組みに達すると、かなりの損傷を引き起こしうる。関係するエンジン、タービン、炉、またはその他の装置の上流のガス流から粒状物質を除去することが、多くの場合に必要とされる。別の例は、商業用および住宅用の暖房、換気、および空調(HVAC)のフィルターシステムである。HVACシステムに向かう空気流は、花粉、胞子、大気粉塵、および他のサブミクロン粒子などの粒状物質を運ぶことが多い。アレルギー反応ならびに生じうる健康上のリスクを減らすために、粒状物質を除去することが望ましい。
【0003】
濾過用途では、流体が衝突するのに利用できる有効表面積を増大させるために、濾過媒体にプリーツを付けることが一般に知られている。メルトブローン合成媒体の製造業者は、静電気帯電マイクロファイバーウェブをスクリム支持層と組み合わせて、許容できる濾過効率およびフィルター抵抗を実現している。マイクロファイバーウェブがメルトブローされている場合、メルトブローン層は典型的には、直径が1〜5ミクロンの15〜40gsmの繊維で構成され、層の厚さは約0.2〜0.4mmである。この種の製品には欠陥がある。媒体の全厚さが典型的には0.6mmより厚く、いったんプリーツが付けられると、その厚さは流動抵抗の一因となる。メルトブローン層が比較的厚くなるにつれて、層を通過する流れパターンは層に対して完全には垂直でなく、接線方向の流れによって抵抗が大きくなりうる。最初帯電していた媒体は、典型的には、熱、湿気、および塵の蓄積のせいで静電荷を失い、濾過効率が低下する結果になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、プリーツ付きメルトブローン構造体での流動抵抗に関連した限界、および帯電媒体に関連した使用での効率の低下を克服するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ナノウェブ層とスクリムとを含むプリーツ付き構造体を有する濾過媒体を含むフィルターであって、ナノウェブ層は、数平均直径が1ミクロン未満である繊維を含んでおりかつ層の厚さが50ミクロン未満であり、プリーツ間隔に対する媒体の全厚さの比率が0.15未満であり、ナノウェブ層は坪量が約0.6gsmを超えており、さらにスクリムが、スパンボンド繊維、乾式(dry−laid)繊維、湿式(wet−laid)繊維、セルロース繊維、メルトブローン繊維、ガラス繊維、およびそれらのブレンドよりなる群から選択される繊維から作られた不織布である、フィルターに関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】比較例1および実施例1、2および3のフィルター抵抗とフラットシート抵抗の関係をプロットしたものを示す。
【図2】本発明のフィルターおよびある特定の市販の帯電媒体について、効率と時間の関係をプロットしたものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で使用される「ナノウェブ」および「ナノ繊維ウェブ」は同義語である。同様に、「スクリム」および「支持体」も同義語である。
【0008】
本明細書で使用される「不織ウェブ」または「不織材(nonwoven material)」という用語は、フィブリル化された薄膜または編地におけるものなど、(規則的でも識別可能でもない仕方で)間に入れられた個別の繊維、フィラメント、または糸の構造を有するウェブを意味する。不織ウェブまたは不織材は、多くの方法、例えば、メルトブローイング(meltblowing)法、スパンボンディング法、および接着カードウェブ法(bonded carded web processes)などによって形成されてきた。不織ウェブまたは不織材の坪量は、普通は、1平方ヤード当たりの材料のオンス(osy)または1平方メートル当たりのグラム(gsm)で表わされ、用いられる繊維直径は、普通はミクロンで表わされる。
【0009】
「スクリム」は支持層であり、ナノウェブを接着、付着、または積層することができる任意の平面構造であってよい。有利には、本発明に有用なスクリム層はスパンボンド不織層であるが、カーディングされた不織繊維ウェブなどから作ることができる。一部のフィルター用途に有用なスクリム層では、プリーツおよび永久折り目を保持するのに十分なこわさが必要である。
【0010】
本明細書で使用される「ナノ繊維」という用語は、数平均直径(number average diameter)または断面が、約1000nm未満、さらには約800nm未満、さらには約50nmから500nmまでの間、さらには約100から400nmまでの間である繊維を指す。本明細書で使用される直径という用語は、丸くない形状の最大断面を含む。
【0011】
「ナノウェブ」という用語は、ナノ繊維を含んでいる不織ウェブを指す。
【0012】
「プリーツ間隔」とは、プリーツが付けられた構造体の突出部から突出部または凹部から凹部までの距離である。
【0013】
本発明は、プリーツ付き構造体を有する媒体を含むフィルターに関する。プリーツ付き構造体はナノウェブ層を含み、ナノウェブ層は数平均直径が1ミクロン未満である繊維を含んでおりかつ層の厚さが50ミクロン未満であり、この構造体では、プリーツ間隔に対する媒体の全厚さの比率が0.15未満である。
【0014】
更なる実施態様では、フィルターは、ナノウェブ層に接着されたスクリムをさらに含む。スクリムは、スパンボンド繊維、乾式または湿式繊維、セルロース繊維、メルトブローン繊維、ガラス繊維、またはそれらのブレンドを含んでいる不織布をさらに含むことができる。
【0015】
紡糸されたままの状態の不織ウェブは、伝統的な電気紡糸(electrospinning)または電気ブロー加工(electroblowing)などの電気紡糸法で、またある特定の状況ではメルトブローイング法で製造され得るナノ繊維を主に含むか、またはそのナノ繊維のみを含む。伝統的な電気紡糸は、高電圧を溶液中のポリマーに加えてナノ繊維と不織マットを作り出す、米国特許第4,127,706号明細書(その全体を本明細書に援用する)に示されている技術である。しかし、電気紡糸法における全押出量は、もっと重い坪量のウェブを形成する際に商業的に実現可能であるためには、あまりに少なすぎる。
【0016】
「電気ブロー加工」法は、電気紡糸法の処理量の限界を克服するものであり、国際公開第03/080905号パンフレット(その全体を本願明細書に援用する)に開示されている。電気ブロー加工法では、比較的短時間の間に、約1gsmを超える、さらには約40gsm以上もの坪量の、商業用サイズおよび量のナノウェブを形成できる。
【0017】
支持体またはスクリムは、コレクター上に配置して、支持体上に紡糸されるナノ繊維ウェブを回収しかつ一緒にすることができ、一緒にされた繊維ウェブは高性能のフィルター、ふき取り布(wiper)などに使用される。支持体の例としては、さまざまな不織布(メルトブローン不織布、ニードルパンチまたは紡糸編上げ(spunlaced)不織布など)、織布、メリヤス生地、紙などを挙げることができ、またそれらはナノ繊維層を支持体上に設けることができる限り、限定されずに使用できる。不織布は、スパンボンド繊維、乾式(dry−laid)または湿式繊維、セルロース繊維、メルトブローン繊維、ガラス繊維、またはそれらのブレンドを含むことができる。
【0018】
本発明に用いられるナノ繊維としては、ポリマーメルトから作られる繊維を挙げることができる。ポリマーメルトからナノ繊維を製造する方法は、例えば、the University of Akronに付与された米国特許第6,520,425号明細書;米国特許第6,695,992号明細書;および米国特許第6,382,526号明細書、Torobinらに付与された米国特許第6,183,670号明細書;米国特許第6,315,806号明細書;および米国特許第4,536,361号明細書、ならびに米国特許出願公開第2006/0084340号明細書に記載されている。
【0019】
本発明のナノウェブを形成するのに使用できるポリマー材料は、特に限定されず、付加重合体および縮合重合体の両方が含まれ、それには、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、セルロースエーテル、セルロースエステル、ポリアルキレンスルフィド、ポリアリーレンオキシド、ポリスルホン、変性ポリスルホンポリマー、およびそれらの混合物がある。こうした一般的種類に含まれる好ましい重合体として、ポリ(塩化ビニル)、ポリメタクリル酸メチル(および他のアクリル樹脂)、ポリスチレン、およびそれらのコポリマー(ABA型ブロックコポリマーを含む)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリビニルアルコール(さまざまな加水分解度(87%〜99.5%)のもの)で架橋形態および非架橋形態のものがある。好ましい付加重合体はガラス質(室温より高いTg)である傾向がある。ポリ塩化ビニルおよびポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンポリマーの組成物または合金の場合にそうであり、あるいはポリフッ化ビニリデンおよびポリビニルアルコール材料の場合には結晶性が低い。ポリアミド縮合重合体の1つの好ましい種類は、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン6,6−6,10などのナイロン材料である。本発明のポリマーナノウェブをメルトブローイングで形成する場合、メルトブローしてナノ繊維にすることが可能な任意の熱可塑性ポリマーを使用でき、それには、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレンなど)、ポリエステル(ポリ(エチレンテレフタレート)など)およびポリアミド(上に挙げたナイロンポリマーなど)が含まれる。
【0020】
繊維ポリマーのTgを下げるために、上述のさまざまなポリマーに当該技術分野において周知の可塑剤を添加するのが有利でありうる。好適な可塑剤は、電気紡糸または電気ブローされるポリマー、ならびにナノウェブを採用する特定の最終用途によって異なるであろう。例えば、ナイロンポリマーは、水で可塑化するか、または電気紡糸または電気ブロー加工の工程で残る残留溶剤で可塑化することさえもできる。ポリマーのTgを下げるのに有用でありうる当該技術分野において周知の他の可塑剤として、脂肪族グリコール類、芳香族のスルファノミド(sulphanomides)、フタル酸エステル(限定されないが、フタル酸ジブチル、ジヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジドデカニルフタレート(didodecanyl phthalate)、およびジフェニルフタレートよりなる群から選択されるものを含む)などが含まれるが、これらに限定されない。Handbook of Plasticizers,edited by George Wypych,2004 Chemtec Publishing(本明細書に援用する)は、本発明に使用できる他のポリマー/可塑剤の組合わせを開示している。
【0021】
本発明は、さまざまな濾過方法の用途において平面パネルまたは円柱形ユニット(cylindrical unit)の形態で用いることができる。そのような用途としては、気体と液体の両方の流れの濾過、除塵、自動車、および他の輸送手段の用途(車両および航空機装置の濾過用途の両方を含む)、発電所のガスタービン吸気流の濾過、軍事、住宅、工業、および健康管理のための室内空気の濾過、健康、効率的製造、清潔、安全、または他の重要な目的のために小粒子の低減が重要である半導体製造および他の用途、生物学的災害物質または化学災害(chemhazard)物質を局所環境から除去する目的のための軍事利用における空気流の濾過、閉鎖式換気装置での濾過(例えば、スペースシャトル、航空機の空気再循環、潜水艦、クリーンルームにおいて使用)、および、吸入する空気から高い効率で小粒子を除去する必要のある公務員/安全要員(safety personnel)(警察官や消防隊員(fire)など)、軍関係者、一般市民、入院患者、産業労働者、および他の人々が使用する呼吸装置(respirator devices)における高効率フィルターなどの他の閉鎖式用途(closed applications)がある。
【0022】
さまざまなフィルター設計が、濾過材料と一緒に使用される1つおよび複数のフィルター構造のさまざまな態様を開示および特許請求している特許に示されている。Engelら(米国特許第4,720,292号明細書)は、略円筒形のフィルターエレメント設計を有するフィルターアセンブリ用のラジアル・シール設計を開示しており、そのフィルターエレメントは、円筒形の放射状に内側に面した表面を有する比較的軟らかいゴム状のエンドキャップで密封されている。Kahlbaughら(米国特許第5,082,476号明細書)は、本発明のマイクロファイバー材料と組み合わせるプリーツ付き構成要素を有するフォーム支持体を含む縦型媒体(depth media)を使用したフィルター設計を開示している。Gillinghamら(米国特許第5,820,646号明細書)は、適度な濾過性能を得るために、流体の流れが「Z」形状経路内の濾過媒体の少なくとも1つの層を通過することが必要なふさがれた通路を含んでいる特定のプリーツ付きフィルター設計を使用している、Zフィルター構造を開示している。プリーツが付けられたZ形状構成に形成された濾過媒体は、本発明の細繊維媒体を含むことができる。最後に、Gillingham(米国意匠特許第425,189号明細書)は、Zフィルター設計を用いたパネルフィルターを開示している。
【0023】
プリーツ加工は、当業者に知られている任意の方法で実施できる。例えば、型打ち隆起部を有するプリーツ付き濾過媒体を製造する方法が米国特許第3,531,920号明細書に記載されている。この方法によれば、ロールから、反対方向に回転する2つの加熱シリンダーを含むプレスへ濾過材料が渡される。シリンダーには、かみ合い隆起部とそれに対応する溝が備わっており、シリンダー間を通過する濾過材料は、深絞りによって耐久的に成形される。成形過程は濾過材料の構造の深絞り部分に影響を及ぼし、それによって濾過にとって重要な部分の元の濾過特性が変化する。
【0024】
上述の方法の改良が、欧州特許出願公開第0429805号明細書に記載の方法によって成し遂げられている。この方法では、平らな濾過媒体が、ロールによって進行方向に対して横方向に集められ、その後、集められた材料に、成形装置の金型によって細長い隆起部が型押しされる。こうして集めることにより、型押し隆起部が必要とする追加の材料は、材料の張力が生じないようにされ、構造は濾過媒体の深絞り部分の変化が起きないようにされる。
【0025】
独国特許出願公開第19630522号明細書は、延伸および未延伸合成繊維で作られた形成布帛をプロファイルカレンダーロール(profiled calender rolls)間で刻みを付けて接着することを記載している。この方法により、不織布の外観の一様性が変化することなく、不織布から濾過材料を製造できるであろう。
【0026】
プリーツ形成装置(pleaters)には、ブレードとロータリーの2つの一般的な型がある。ブレード型プリーツ形成装置の操作は、ウェブを予熱し、その後、2つのブレードの上下動によりプリーツを作ることを伴う。プリーツを安定化するために、圧力下での後熱ゾーンが使用される。ロータリー型プリーツ形成装置の操作は、回転ナイフで媒体に刻みを付けること、および刻み線を折り、圧力をかけてプリーツを形成することを伴う。
【0027】
本発明は、ここで以下の実施例によって最もよく理解することができる。
【0028】
試験方法
坪量(BW)はASTM D−3776(本明細書に援用する)で測定した。これはg/m2(gsm)で報告してある。
【0029】
繊維直径は以下のようにして測定した。それぞれの細繊維層の試料について、5,000×の倍率の走査型電子顕微鏡(SEM)の画像を10枚撮った。11本の明確に区別できる細繊維の直径を写真から測定し、記録した。欠陥(すなわち、細繊維の塊、ポリマー滴、細繊維の交差部分)は含めなかった。それぞれの試料の平均(average)(平均(mean))繊維直径を計算した。
【0030】
ウェブの通気度(air flow permeability)は一般に、フラジール測定(ASTM D737)で測定する。この測定では、124.5N/m2(0.5インチ(水柱))の圧力差を、適切に固定された布帛試料にかけて、結果として生じる空気流量をフラジール通気度(またはもっと簡単に「フラジール」)として測定する。本明細書では、フラジール通気度は、m3/m2/分の単位で記録してある。大きいフラジールは通気度が大きいことに対応し、小さいフラジールは通気度が小さいことに対応する。
【0031】
ウェブの厚さは、走査型電子顕微鏡またはデジタル式光学顕微鏡(digital optical microscope)を用いて測定する。試料を切断して鮮明な横断面を得て、5つの厚さの測定値を用いて平均値を計算した。平均値はmmまたはミクロン単位で記録してある。
【0032】
フラットシート抵抗は、Fractional Efficiency Filter Tester(TSI Model No.3160または8130)で測定した。流動抵抗は、5.3cm/sの空気流量で測定し、mm水位計(W.G.)の単位で記録してある。抵抗が大きいことは、一定流量でのフラットシート媒体の圧力降下が大きいことに対応する。
【0033】
フィルター抵抗は、2種類の異なる方法で測定した。キャビンエアフィルター(cabin air filters)を、ISO Test Specification 11155−1(2001),”Road Vehicles−Air Filters for Passenger Compartments−Part 1:Test for Particulate Filtration”に従って試験した。フィルターを垂直ダクト内に装着し、フィルターの流動抵抗を170m3/時の空気流量で測定する。HVACフィルターは、ASHRAE Standard 52.2−1999,”Method of Testing General Ventilation Air−Cleaning Devices for Removal Efficiency by Particle Size”に従って試験した。ASHRAEは、American Society of Heating,Refrigerating and Air−conditioning Engineers,Inc.の略称である。名目上は610mm(長さ)×610mm(幅)×305mm(深さ)であるフィルターを、ASHRAE 52.2試験基準に準拠した水平ダクト内に装着する。フィルターの流動抵抗は3344m3/時の空気流量で測定し、インチ単位(水位計)で記録し、パスカル単位に変換する。
【0034】
HVACフィルターの効率は、実際の使用時に一部のフィルターに生じる濾過効率の低下を明らかにするため、塩化カリウム(KCl)粒子による状態調整ステップの前後に測定した。これは、Proposed”Addenda a”to ASHRAE Standard 52.2−2007,Public Review Drafts,March 1,2007(本願明細書に援用する)に従って実施した。フィルターの状態調整は、最高72時間まで、直径が0.02ミクロンの塩化カリウム粒子を3.6×105〜3.8×105個(粒子)/cm3の密度でフィルターを通して循環させることによって行う。分別濾過効率を周期的に測定し、百分率の単位で記録する。
【0035】
ナノウェブの調製
すべての実施例で、ポリマーのギ酸溶液を、WIPO公開の国際公開第03/080905号パンフレットに記載されているようにして電気ブロー加工で紡糸した。特に記載のない限り、24重量%のポリマーのギ酸溶液を電気ブロー加工に用いた。使用したポリマーは、ポリアミド−6,6(PA66)(Zytel 3218,Du Pont(Wilmington,DE))であった。特に記載のない限り、ウェブを横たえた後、ウェブは熱風中、80℃で乾燥させた。紡糸口金に加えた電圧は85kVであった。更なる工程の条件は具体例に記載されている。
【0036】
プリーツ付け
ウェブには、ブレード式プリーツ加工機(blade pleating machine)または回転式プリーツ加工機のいずれかを用いてプリーツを付けた。プリーツ加工機は典型的には、温度および圧力下においてプリーツを安定化させるための加熱ゾーンを含む。具体的な工程条件は、実施例に記載されている。
【実施例】
【0037】
本発明を例示するために、以下の実施例を用意した。
【0038】
実施例1
ナノウェブ構造体は、電気ブロー加工法を用いて調製し、真空下で75gsmのスパンボンデッドのポリエステルスクリム(Kolon)上に回収した。坪量が0.9gsmのナノウェブが製造された。
【0039】
細繊維は、平均繊維直径が0.3ミクロンであり、細繊維層の厚さがおよそ5ミクロン(0.005mm)であった。複合層の厚さは0.25mmであった。フラットシート抵抗は、5.3cm/sの気流速度で測定した場合に1.1mmW.G.であった。
【0040】
媒体の複合層は、ブレードプリーター(blade pleater)を用いてプリーツを付け、パネル式キャビンエアフィルターに組み込んだ。プリーツの高さは28mmであり、プリーツ間隔は5mmであった。フィルターの大きさは、長さが22.5cm、幅が10.8cmであった。フィルターの抵抗は、ISO Test Specification 11155−1に従ってエアダクト中で測定した。その結果は、170m3/時の流量で32Paであった。
【0041】
比較例1
比較例1では、スクリム−メルトブローン−スクリム(SMS)構成のメルトブローン媒体を使用した。メルトブローン繊維は、平均繊維直径が7ミクロンであり、層の厚さは0.44mmであった。上流のスクリム層は110gsmのスパンボンデッドのポリエステルスクリムであり、下流のスクリム層はスパンボンデッドのポリプロピレンスクリムであった。媒体の全厚さは0.80mmであった。フラットシート抵抗は、5.3cm/sの気流速度で測定した場合に0.7mmW.G.であった。媒体にプリーツを付け、実施例1に記載したのと同じ構成のフィルターに組み込み、しかるべく試験した。フィルターの抵抗は、170m3/時の流量で37Paであった。
【0042】
実施例1でのフィルター抵抗は、比較例1よりも14%小さかった。フラットシート抵抗が57%大きかったにもかかわらずそのようになった。
【0043】
実施例2〜3
実施例2および3のウェブ構造体は、実施例1に記載したのと同様の手順に従って調製した。ポリマー押出量およびライン速度(line speed)を調節して、ウェブの細繊維のサイズおよび坪量を変えた。どちらの実施例においても、2種類のスクリム−ナノ繊維(SN)ウェブ構造体を作製した。第1ウェブではスクリムは75gsmのスパンボンデッドのポリエステル(Kolon)であり、第2ウェブでは30gsmのスパンボンデッドのポリエステル(Kolon)である。この2種類のウェブ構造体を超音波接着してSN−NS構成の複合層にした。実施例2および3の詳細な特性の要約を表1に示す。
【0044】
表1

【0045】
図1は、実施例1〜3および比較例1のフィルター抵抗とフラットシート抵抗の関係をプロットしたものを示す。この図は、所与のフィルター抵抗の場合、その構成のフラットシート抵抗が、本発明のウェブでは比較例のメルトブローンウェブの場合より大きくなりうることを示す。これには二重の意味が含まれる:(1)抵抗の大きな(したがって、効率の高い)本発明の濾過媒体を用いれば、フィルター抵抗の達成目標以内で、フィルター効率を高くすることができる。または(2)本発明のウェブでは、フィルター効率を犠牲にすることなく、フィルター抵抗を小さくすることができる。
【0046】
実施例4
ナノウェブ構造体は電気ブロー加工法を用いて調製し、65gsmの乾式の樹脂接着(resin−bonded)ポリエステルスクリム(Ok Soo)上に回収した。製造されたナノウェブの坪量は3.8gsmであった。
【0047】
ナノウェブの細繊維は、平均繊維直径が0.3ミクロンであり、細繊維層の厚さはおよそ23ミクロンであった。複合層の厚さは0.55mmであった。フラットシート抵抗は、5.3cm/sの気流速度で測定した場合に3.6mmW.G.であった。
【0048】
複合媒体に、回転式プリーターを用いてプリーツを付け、それを支持ポリエステル側壁に接着して、プリーツ付きフィルターパックを形成した。プリーツの高さは29mmであり、プリーツ間隔は5mmであった。プリーツ間隔に対する媒体の厚さの比率は0.11であった。フィルターパックの大きさは、長さが550mm、幅が275mmであった。8個のフィルターパックをプラスチックフレームにはめ込み、名目上の大きさが610mm(長さ)×610mm(幅)×305mm(深さ)であるHVAC 4V形バンクフィルター(4V−bank filter)に組み込んだ。HVACフィルターの抵抗は、ASHRAE 52.2 Test Standardに従って水平ダクト内で測定した。その結果は、3344m3/時(1968 ft3/分)の流量で80Pa(0.32インチWG)であった。
【0049】
比較例2
比較の目的で、従来のメルトブローン媒体を使用した。メルトブローン繊維は、平均繊維直径が約3ミクロンであった。メルトブローン層の厚さは0.32mm(320ミクロン)であり、媒体の全厚さは0.78mmであった。フラットシート抵抗は、5.3cm/sの気流速度で測定した場合に2.7mmW.G.であった。
【0050】
媒体にプリーツを付けて、プリーツ間隔が5mmのフィルターパックにした。プリーツ間隔に対する媒体の厚さの比率は0.16であった。パックをV形バンクフィルターに組み込み、ASHRAE 52.2 Test Methodに従って試験した。フィルター抵抗は、3344m3/時(1968ft3/分)の流量で80Pa(0.32インチWG)であった。
【0051】
実施例4のフィルターは、比較例2のフィルターと同じ抵抗を有していた。フラットシート抵抗が33%大きかったにもかかわらずそうであった(3.6mm対2.7mm(W.G.))。
【0052】
実施例5
本発明のフィルターの有効性に関する更なる実施例として、実施例4に記載した手順に従って実施例5を調製した。異なっていたのは以下の点だけである:試料を100gsmの乾式樹脂接着ポリエステルスクリム(Ok Soo(Korea))上に回収したこと、および製造されたナノウェブの坪量が4.5gsmであったことである。組み立てられたHVAC V形バンクフィルターの濾過性能を、前の部分で述べたKClエアロゾル状態調整ステップを用いて、帯電媒体で作られた市販のフィルターと比較した。試験した市販の試料は、メルトブローン媒体で作られた堅いセルボックスフィルター(cell box filter)(Purolator Model DC95−4412K)とHVAC V形バンクフィルター(Viledon MV95フィルター)であった。
【0053】
図2は、使用時における保持効率(retaining efficiency)の点での本発明のフィルターの有効性を示す。本発明のフィルターは、微細塩化カリウムエアロゾルを送り込むという加速条件下で、少なくとも20時間にわたってその効率を維持することが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノウェブ層とスクリムとを含むプリーツ付き構造体を有する濾過媒体を含むフィルターであって、前記ナノウェブ層は、数平均直径が1ミクロン未満の繊維を含んでおりかつ層の厚さが50ミクロン未満であり、プリーツ間隔に対する媒体の全厚さの比率が0.15未満であり、前記ナノウェブ層は坪量が約0.6gsmを超えており、さらに前記スクリムが、スパンボンド繊維、乾式繊維、湿式繊維、セルロース繊維、メルトブローン繊維、ガラス繊維、およびそれらのブレンドよりなる群から選択される繊維から作られた不織布である、フィルター。
【請求項2】
前記プリーツ間隔に対する媒体の全厚さの比率が0.12未満である、請求項1に記載のフィルター。
【請求項3】
前記プリーツ間隔に対する媒体の全厚さの比率が0.08未満である、請求項1に記載のフィルター。
【請求項4】
前記スクリムが前記ナノウェブ層に接着されている、請求項1に記載のフィルター。
【請求項5】
フラットシート抵抗を5.3cm/sの空気流量で測定してmm水位計の単位で記録し、フィルター抵抗を3344m3/時の空気流量で測定してインチ水位計の単位で記録してパスカル単位に変換した場合、前記媒体の前記フラットシート抵抗に対するフィルター抵抗の比率が約35Pa/mm未満である、請求項1に記載のフィルター。
【請求項6】
3344m3/時の空気流量で3.6×105〜3.8×105個(粒子)/cm3の密度の0.02ミクロンの塩化カリウムエアロゾルを送り込んでも、前記フィルター効率が20時間の処理の間低下しない、請求項1に記載のフィルター媒体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−538813(P2010−538813A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524222(P2010−524222)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/075571
【国際公開番号】WO2009/033143
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】