説明

改良されたペッパー植物

本発明は、種無しペッパー(SLP)全般に関し;より詳細には、食用に適する種無し果実を成長する能力を含む独特の特性を有する、雄性不稔性ペッパー植物に関し、ここで、この「種無し」形質は、外来因子と独立した遺伝的決定因子によって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種無しペッパー(SLP)全般に関し;より詳細には、下記の独特の特性を有する雄性不稔性種無しペッパーに関する。
【0002】
果実は、子房の発育の結果である。通常の果実の発育では、実止まりの開始は、受粉及び受精プロセスが正しく完了することに依存する。果実の発育の開始は、一般に、受精が発生するまで抑制される。
【0003】
一般に、果実の発育の全体は、受粉及び受精に続いて発生し、同時に種子が成熟する。果実は、種子の発育に適切な環境を提供している。
【0004】
外部又は内部要因が、果実の発育の通常のプロセスを時に妨げる場合があり、そうなると、単為結実性の実止まり等におけるように、果実の発育は受粉及び受精と無関係になり得る。単為結実性の植物では、果実の発育及び開始は受精と分離されている。単為結実特性は、受粉及び受精を伴わない、種子が無いか又はその数が減少した果実の発育をもたらすことができる。単為結実は、従って、受粉及び/又は受精のプロセスとは無関係に子房が種無し果実へと発育することを意味する。
【0005】
単為結実特性は、多くの植物種において公知であり、自然に発生する場合もあり、又は、例えば、異なるホルモンの適用等、種々の外部刺激によって人工的に誘発することも可能である。そのような種のほとんどにおいて、種子が無いか又はその数が減少した果実が作り出される結果となる単為結実現象の源は、遺伝的及び/又は後成的な基礎を有し得る。植物の単為結実は、植物の生存及び増殖の機会を減少させる突然変異として見ることができる。論理的に推定すると、植物は、自身の増殖の可能性を上昇させる果実のためにのみエネルギーを蓄えておくことを「必要」としていると考えられ、従って、種無しの果実を作り出す植物の排除が進化の過程で求められるか、又は受精が行われなかった場合は開始した果実が落果する場合があるであろうと考えられる。恐らくは、このことが、単為結実現象が非常に稀であることの理由である。作物の栽培では:A)種子が望ましくないものと見られる場合の種無し果実の栽培(スイカ、キュウリ)、及びB)受精条件が有害である場合の収穫量の向上(トマト、ナス)、という実質的に2つの理由でこれが利用される。
【0006】
単為結実は、スイカの場合のように不稔性を伴うことが多いが、例えばキュウリ及びトマトの場合のように、この特性は独立した形質としても見られる。
【0007】
単為結実は、自然に発生する場合もあり、又は人工的に誘発することもできる。自然の単為結実は、遺伝的な基礎を有し得、従って、遺伝的決定因子によって制御され得る。「種無し」形質は、絶対的なもの又は任意のものであり得、すなわち、常に発現されるか、又は環境条件に依存し得る。
【0008】
人工的に誘発された単為結実は、植物及び/又は花及び/又は子房を死花粉抽出物(dead pollen extract)等の外的な剤で処理した結果、又は天然若しくは合成の成長調節物質を適用した結果であり得る。実際、成長調節剤の外的な適用は、例えば温室内等の保護栽培では、収穫量及び果実品質の向上の目的で種無し果実の形成を誘発するために頻繁に用いられているが、露地栽培においても、有害な条件下での生産量の減少を防ぐために用いられている。しかし、このような方策はコスト及び手間がかかるものであり、しかも、単為結実が部分的にしか誘発されない場合も多い。さらに、化学処理は、果実上及び土壌中への残留化学物質の増加を引き起こす場合もあり、また、果実の奇形も多く観察される。
【0009】
自然の単為結実に基づく種無しスイートペッパーの栽培品種はまだ存在せず;従って、化学的な操作を用いて人工的に単為結実が誘発された。オーキシン、ジベレリン、及びサイトカイニン(Sjut and Bangerth, 1982/83; Kim et al., 1992)、並びにオーキシン輸送阻害剤(Beyer and Quebe‐deaux, 1974; Kim et al., 1992)はすべて、いくつかの果実野菜作物への適用に成功している。
【0010】
果実の品質及び収穫量は、一般に果実内に存在する種子の数に依存する。種子の数が多いと、通常は果実の大きさ及び品質が向上する。ペッパー果実の収穫量及び品質が種子の数に大きく依存していることは特に公知である。さらに、ペッパーは、通常、実止まりに対する感受性が非常に高い。植物がこのプロセスを一旦開始させると、そのエネルギーの大部分が実止まりに向けられる。限界のあるエネルギー及び同化した資源に対するこの競争の結果、続いての果実の実止まり及び発育、並びに葉、枝、及び根の成長が阻害される。種子の数の増加が、さらなる植物の成長を低下させる。
【0011】
ペッパー植物の実止まりへの感受性は、「フラッシング(flushing)」現象の原因の一つであり、これが実止まりの循環的な変動、従って、ペッパー果実の収穫量が高い数週間と収穫量が低い数週間とを交互に引き起こす。この不規則な収穫のパターンは、栽培者が成長季中の市場の需要に合わせることを難しくし、さらには、温室での労働力需要の変動も引き起こすことから、ペッパーの栽培者にとって重要な問題である。
【0012】
他の種、例えばトマトでは、実止まりに対する感受性がかなり低い。トマトは、種子がほとんどない場合でも比較的良好な収穫量及び果実品質を得ることでき、又は果実が数多くの種子を有する場合でも成長を続けることができる。受精条件が有害であるいくつかの種においては、人工のツールによって実止まりを確実にすることができる。トマトでは、特定のホルモン(オーキシン)を散布することによって、種無しの状態であっても、実止まりを誘発することができる。
【0013】
Heuvelink及びKorner(2001)は、単為結実性の果実をペッパー植物上で成長させることが、ペッパーの成長におけるフラッシングの問題を少なくとも低減させ、さらに高品質のペッパー果実を収穫し得るという作業仮説を試験した。
【0014】
Heuvelink及びKorner(2001)は、自己受粉を阻害し、柱頭へオーキシンを適用することによって、ペッパーでの単為結実性果実の成長を誘発した。単為結実性果実の成長は、より規則的な実止まり及び収穫量をもたらし、従ってこれがフラッシングの問題を低減させる可能性を有することを彼らは確認することができた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、植物ホルモン又はその他の誘発剤を外的に適用して単為結実性の成長を誘発することはコスト及び手間がかかり、果実又は土壌の上や内部の残留化学物質の量が増加することから、環境問題を起こし得る。この手法は、従って、商業用のペッパーの生産に対しては実用的ではない。従って、ペッパーの収穫量の循環的変動を避け、しかしその代わりに、高品質のペッパー果実の継続的な供給を保証する遺伝的な解決法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、種無し果実を成長する単為結実性のペッパー植物を提供することによって、商業用の使用に適するそのような解決法を提供し、ここで、種無し果実の実止まりは、受粉及び受精プロセス並びに/又は外的な剤による処理とは関係がなく、安定であるために子孫植物に安定的に受け継ぐことができ、商業用ペッパーの変種へ遺伝子移入することができる遺伝的決定因子によって制御される。
【0017】
本発明は、害虫及び疾病の制御に対する改善された選択肢という利点も提供する。ペッパーのウイルス性疾病は、一般にアブラムシによって伝染する。このような害虫は、薄織物ネット(tissue net)等の機械的な手段を用いて制御することができる。しかし、このような害虫の制御方法には、益虫がペッパー植物へ接近することも防いでしまい、従って昆虫が媒介する受粉を起こすことができないという欠点がある。本発明は、通常の実止まり及び果実の収穫を妨げることなく、及び化学農薬を必要とせず、従って病虫害制御のコストを低減して、アブラムシによる加害から、従ってアブラムシが伝染させるウイルス感染からペッパー植物を保護することを可能とする。
【0018】
特に、本発明は、種無し果実を成長するペッパー植物を提供し、ここで「種無し」形質は、受粉及び受精のプロセスに関係なく、オーキシン、ジベレリン、及びサイトカイン、オーキシン輸送阻害剤、若しくはその他を含む単為結実を誘発する植物ホルモン、並びに/又は、その他の単為結実を誘発する外的因子、並びに/又は、天然若しくは合成の成長調節物質、又は例えば死花粉抽出物等の植物抽出物、等の外的に投与された単為結実を誘発する剤、による処理にも関係なく、遺伝的決定因子によって制御される。
【0019】
本発明の一つの態様では、種無し果実を成長するペッパー植物が提供され、ここで「種無し」形質は、遺伝的決定因子によって制御され、単為結実を誘発する植物ホルモンによる外部処理に無関係である。
【0020】
一つの態様では、本発明に従う前記のペッパー植物は、オーキシン、ジベレリン、及びサイトカイン、オーキシン輸送阻害剤、並びにその他から成る群より選択される植物ホルモンによる処理と無関係に種無し果実を成長する。
【0021】
本発明の一つの態様では、種無し果実を成長するペッパー植物が提供され、ここで「種無し」形質は、受粉及び受精のプロセスに無関係である。
【0022】
一つの態様では、本発明に従う前記のペッパー植物は種無し果実を成長させ、これは、少なくとも95%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%の種無しである。
【0023】
一つの態様では、本発明に従う前記のペッパー植物は種無し果実を成長させ、これは、100%の種無しである。
【0024】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の少なくとも40%、特に少なくとも50%、特に少なくとも60%、特に少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に少なくとも90%、しかし特には100%が種無しである。
【0025】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の少なくとも40%、特に少なくとも50%、特に少なくとも60%、特に少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に少なくとも90%、しかし特には100%が種無し果実であり、これらは、少なくとも95%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%の種無しである。
【0026】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の少なくとも40%が種無し果実であり、これらは、少なくとも95%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%の種無しである。
【0027】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の少なくとも60%が種無し果実であり、これらは、少なくとも95%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%の種無しである。
【0028】
一つの態様では、本発明に従い、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の少なくとも70%が種無し果実であり、これらは、少なくとも95%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%の種無しである。
【0029】
一つの態様では、本発明に従い、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の少なくとも80%が種無し果実であり、これらは、少なくとも95%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%の種無しである。
【0030】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の少なくとも90%が種無し果実であり、これらは、少なくとも95%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%の種無しである。
【0031】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の少なくとも95%が種無し果実であり、これらは、少なくとも95%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%の種無しである。
【0032】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の少なくとも99%が種無し果実であり、これらは、少なくとも95%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%の種無しである。
【0033】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の100%が種無し果実であり、これらは、少なくとも95%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%の種無しである。
【0034】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の40%が種無し果実であり、これらは、100%の種無しである。
【0035】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の60%が種無し果実であり、これらは、100%の種無しである。
【0036】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の80%が種無し果実であり、これらは、100%の種無しである。
【0037】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の90%が種無し果実であり、これらは、100%の種無しである。
【0038】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の95%が種無し果実であり、これらは、100%の種無しである。
【0039】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の98%が種無し果実であり、これらは、100%の種無しである。
【0040】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の植物が提供され、ここで、該植物上で成長した果実の100%が種無し果実であり、これらは、100%の種無しである。
【0041】
特に、本発明は、本発明に従う、本明細書で述べるペッパー植物を提供し、これは、食用に適し、高品質である種無し果実を成長する。
【0042】
一つの態様では、本発明は、食用に適し、高品質であり、生鮮カット産物等の生鮮産物としての使用に適するか、又は例えば缶詰め等の加工での使用に適する種無し果実を成長する、ペッパー植物を提供する。
【0043】
一つの態様では、本発明に従う前記のペッパー植物は、植物全体に種無し果実を実止まりする能力を有する。特に、実止まりは、枝の第一節から開始し、枝全体の長さ方向に沿って進行する。一つの態様では、前記の植物は、節の約20%、特に約40%、特に約60%にて、節あたり特に2個の果実を成長させる。
【0044】
一つの態様では、本発明に従う前記のペッパー植物は、すべての季節において、すなわち、イスラエルの気候条件又は同等の気候という意味での不都合な条件下においても実止まりを示す。
【0045】
一つの態様では、本発明に従う前記のペッパー植物は、正常な外観の果実を成長させ、これは、例えば、ペッパーの等級に関する米国標準規格(United States Standards for Grades of Peppers)(USDA,Agricultural Marketing Service, Fruit and Vegetable Programs, Fresh Products Branch)に定められるもの等の商業用品質基準を満たしている。
【0046】
本発明のさらに別の局面では、本発明に従い、本明細書で前述の植物は、該植物が、露地栽培若しくは保護栽培で、通常の栽培手法において一般的に栽培者が用いる栽培条件下にて栽培される場合、成熟期の重さが2グラム超であるか又は長さが1cm超であり、直径が0.5cm超である果実を付ける。
【0047】
本発明に従う、本明細書で前述のペッパー植物は、ドルチェタイプペッパー(dolce‐type pepper)、ベルペッパー(bell pepper)、ビッグレクタンギュラーペッパー(big rectangular pepper)、コニカルペッパー(conical pepper)、ロングコニカルペッパー(long conical pepper)、又はブロッキータイプペッパー(blocky‐type pepper)を含むスィートペッパーを成長させるものであってよい。該植物の果実は成熟期において、常緑色、黄色、オレンジ色、象牙色、茶色、紫色、又は赤色の果実であってよい。
【0048】
本発明に従う植物は、ホットペッパー植物であってよく、例えば、長くハート型で薄肉厚のアンチョウタイプ及び長く端部が丸みを帯びた薄肉厚のトスカナタイプのペッパーを含む生鮮市場及び加工に使用される辛味の少ないペッパー、もう少し辛味の強い中肉厚のチリペッパー果実、並びに長く円筒状で肉厚のハラペノ、小さくて細長く先細であるセラノ、及び不規則な形状で薄肉厚のカイエンペッパーを含む生鮮市場及び加工のいずれにも使用される辛味の強いペッパーである。
【0049】
本発明に従う、本明細書で前述の植物は、同系交配、二ゲノム性半数体若しくはハイブリッド、及び/又は雄性不稔性であってよい。
【0050】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述の前記ペッパー植物は、雄性不稔性である。
【0051】
一つの態様では、ペッパー植物、特に本発明に従う、本明細書で前述の種無しペッパー植物が提供され、これは、成熟期では赤く色づき、未成熟(熟していない)期では暗緑色に色づくペッパー果実を成長させる。
【0052】
本発明の一つの態様では、成熟期の前記ペッパー果実は、ブリックス度が約7°〜約14°の間、特に約7.5°〜約12°の間、特に約8°〜約11°の間である、非常に甘い味を有する。
【0053】
本発明の一つの態様では、前記のペッパー果実は、円錐様の形状を有し、すなわち、ベル型と典型的な円錐型との間であり、サイズは、約2〜4cm掛ける直径約3〜4cmである。
【0054】
一つの態様では、ペッパー植物、特に本発明に従う、本明細書で前述の種無しペッパー植物が提供され、これは、成熟期では赤く色づき、未熟(熟していない)期では暗緑色に色づくペッパー果実を成長させ;果実は、ブリックス度が約7°〜約14°の間、特に約7.5°〜約12°の間、特に約8°〜約11°の間である非常に甘い味を有し;円錐様の形状、すなわち、ベル型と典型的な円錐型との間の形状を有し、サイズは、約2〜4cm掛ける直径約3〜4cmである。
【0055】
一つの態様では、本発明に従う、本明細書で前述のペッパー植物は、「種無し」形質を有し、これは、トウガラシ(Capsicum annuum)AR07‐F1‐56‐b;トウガラシAR07‐F1‐87‐b;トウガラシAR07‐F1‐166‐b;トウガラシAR07‐F1‐171‐X;及び、トウガラシAR07‐F1‐172‐Xから成るハイブリッドの群より選択されるハイブリッドペッパー植物から得ることができる。このようなハイブリッド植物を成長させるための種子は、2008年5月26日、アバディーン、AB21 9YA、スコットランド、英国のNCIMBに、それぞれNCIMB41558、NCIMB41559、NCIMB41560、NCIMB41561、及びNCIMB41562の受託番号で寄託された。
【0056】
本発明の一つの態様では、「種無し」形質又は該形質を有する植物は、寄託された種子から成長させたハイブリッド系のいずれかより、該ハイブリッドのF2子孫を成長させることによって得ることができる。特に、「種無し」形質又は該形質を有する植物は、寄託されたハイブリッド系のいずれかより、i)該系の種子を発芽させてそこから成熟した稔性の植物を成長させること;ii)(i)の下で成長させた該植物の自己受粉を誘発し、果実を成長させてそこから稔性の種子を収穫すること;及びiii)ii)の下で収穫した種子から植物を成長させ、種無し果実を成長する植物を選別すること、によって得ることができる。
【0057】
一つの態様では、本発明は、本発明に従う本明細書で前述の植物から得ることができる植物物質に関し、これらに限定されないが、葉、茎、根、花若しくは花の部分、果実、花粉、卵細胞、接合体、種子、切り枝、細胞若しくは組織培養物、又は本発明に従う種無し表現型を、特に植物へと成長させた場合に依然として示す植物のその他のいずれかの部分若しくは産物を含む。
【0058】
本発明は、さらに、本発明に従う本明細書で前述の植物から得ることができる植物の部分に関し、これらに限定されないが、植物種子、例えば根、茎、葉、花蕾、若しくは胚等の植物器官、胚珠、花粉ミクロスフェア、植物細胞、植物組織、例えばプロトプラスト、細胞培養物細胞(cell culture cells)、植物組織中の細胞、花粉、花粉管、胚珠、胚嚢、接合体、及び種々の成長段階の胚等の植物細胞培養物、を含み;これらは、本発明に従う種無し表現型を、特に植物へと成長させた場合に依然として示す。
【0059】
本発明はさらに、種無しペッパー果実を生産する農学的方法に関し、この方法は、
i)本発明に従う本明細書の前記で特性決定されるペッパー植物を提供する工程;
ii)該ペッパー植物を増殖/繁殖させる工程;
iii)例えば、雄性稔性ペッパー植物、機能的雄性不稔性ペッパー植物、又は除雄を用いて該ペッパー植物の受粉を任意に防止する工程;
iv)この植物に種無しペッパー果実を成長させる工程;及び
v)該ペッパー果実を収穫する工程、
を含む。
【0060】
本発明の一つの態様では、ペッパー植物の増殖又は繁殖は、種子を通して又は栄養繁殖によって行われる。
【0061】
本発明はさらに、種無しペッパー植物を作出する方法に関し、この方法は、
i)雌性系としての種無しペッパー植物及び雄性系としての雄性稔性(種あり)ペッパー植物を交雑させることによって作り出されたF1ハイブリッドの種子を提供する工程;
ii)該種子を発芽させてそこから成熟稔性植物を成長させる工程;
iii)(ii)の下で成長させた該植物の自己受粉を誘発し、果実を成長させてそこから稔性の種子を収穫する工程;及び
iv)iii)の下で収穫した種子から植物を成長させ、種無し果実を成長する植物を選別する工程、
を含む。
【0062】
一つの態様では、本発明に従う前記の方法で用いたハイブリッド種子は、アバディーン、AB21 9YA、スコットランド、英国のNCIMBに、それぞれNCIMB41558、NCIMB41559、NCIMB41560、NCIMB41561、及びNCIMB41562の受託番号で2008年5月26日に寄託された種子から成長させた、トウガラシAR07‐F1‐56‐b;トウガラシAR07‐F1‐87‐b;トウガラシAR07‐F1‐166‐b;トウガラシAR07‐F1‐171‐X;及び、トウガラシAR07‐F1‐172‐Xから成るハイブリッドの群より選択されるハイブリッドペッパー植物から得ることができるハイブリッド種子である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】イスラエル、ネティフハアサラ村(Netiv Haasara village)のネットハウス内のSLP植物。「一口」タイプの変種「AR06‐F3‐255‐1」。この変種は、寄託されたハイブリッドのSLP源として用いた。
【図2】「AR06‐F3‐255‐1」とイエローブロッキーペッパー変種(yellow blocky pepper variety)のF2植物との間から作り出されたハイブリッドから得られたイエローブロッキーSLP変種「SD07‐3‐5」からの果実。
【図3】「AR06‐F3‐255‐1」とレッドカピャタイプペッパー変種(red Kapya type pepper variety)のF2植物との間から作り出されたハイブリッドから得られたレッドコニックSLP変種(Red conic SLP variety)「SD07‐2‐77」からの果実。
【発明を実施するための形態】
【0064】
定義
本願の範囲内で用いられる専門用語及び表現は、一般に、本明細書にて以下で特に断りのない限り、植物繁殖及び栽培に関連する技術分野で一般的にそれらに適用される意味が与えられるべきである。
【0065】
本明細書及び添付の請求項で用いられる単数形「1の(a)」、「1の(an)」、及び「その(the)」は、文脈によってそれ以外のものが求められない限りにおいて、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「1の植物(a plant)」という言及は、1若しくは2以上の植物を含み、「1の細胞(a cell)」という言及は、細胞の混合物、組織等を含む。
【0066】
本明細書で用いる「単為結実」とは、受精なしでの果実の産出を意味し、これによって種無し果実を得ることが可能となる。単為結実は、高い若しくは低い日中温度又は夜間温度、低レベルの光、及び高湿度等の特定の環境条件が好都合である。単為結実は、自然に発生する場合もあり、又は人工的に誘発することもできる。自然の単為結実は、遺伝的(後成的)な原因で発生し、絶対的なもの、又は任意のもの、すなわち環境条件に依存するもの、であり得る。
【0067】
本明細書で用いる「種無しペッパー果実」とは、受粉及び/若しくは受精のプロセス、並びに/又は単為結実を誘発する植物ホルモン、及び/若しくはその他の単為結実を誘発する外的因子、及び/若しくは外的に投与された単為結実を誘発する剤による処理、に関係なく得られたペッパー果実を意味する。
【0068】
「XX%」の種無しである種無しペッパー果実とは、該果実中に存在する子房のうちの「100−XX%」のみが種子へと発育する果実を意味する。例えば、「95%」の種無しである種無しペッパー果実とは、該果実中に存在する子房のうちの「100−95%」のみ、すなわち子房の5%、が種子へと発育する果実を意味する。
【0069】
本明細書で用いる「種無しペッパー植物」とは、本明細書で定義する種無しペッパー果実を成長させるペッパー植物を意味し、該ペッパー植物上に存在する果実のうちの「100−XX%」のみが種無しであり、特に95%及び最大100%の種無しであるペッパー植物を含む。
【0070】
本明細書で用いる「食用に適する果実」及び「食用に適する生鮮果実」とは、植物から摘果した人間の体内摂取に適する果実を意味する。
【0071】
本明細書で用いる「外的因子又は剤」とは、植物への、特に、例えば柱頭等の植物の繁殖に関わる部分への外的な適用により、処理植物へ人工的な単為結実を誘発する能力を有する因子又は剤を意味する。このような「外的因子又は剤」は、例えば、死花粉抽出物、天然若しくは合成の成長調節物質であってオーキシン、ジベレリン、及びサイトカイン、オーキシン輸送阻害剤、若しくはその他を含む植物ホルモン等、であってよい。
【0072】
本明細書で用いる「形質」という用語は、成熟果実の色若しくはTSWV耐性等の疾病耐性を例とする特性又は表現型を意味する。形質は、優性若しくは劣勢の形で、又は部分的若しくは不完全な優性の形で受け継がれたものであってよい。形質は、一遺伝子性(すなわち、単一の遺伝子座によって決定される)若しくは多遺伝子性(すなわち、2個以上の遺伝子座によって決定される)であってよく、又は遺伝子間の相互作用若しくは1個以上の遺伝子と環境との相互作用の結果によるものであってもよい。優性である形質は、ヘテロ接合若しくはホモ接合の状態において完全な表現型の出現をもたらし;劣勢である形質は、ホモ接合の状態で存在する場合のみそれが出現する。
【0073】
本技術分野で公知の「果皮」という用語は、成熟した子房壁を意味する。詳細には、ペッパー果実の果皮とは、ペッパー果実の着色した食用に適する部分である果実壁を意味する。本明細書で用いる「厚い果皮」という用語は、幅が少なくとも5mm、好ましくは少なくとも8mmである果皮を意味する。本明細書で用いる「自殖(selfing)」という用語は、植物の制御された自己受粉を意味し、すなわち、同一の植物から産出された花粉と胚珠とを接触させることである。「交雑」という用語は、制御された他家受粉を意味し、すなわち、それぞれ異なる植物から産出された花粉と胚珠とを接触させることである。
【0074】
「草勢」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で用いられ、全般的な植物の強さを意味する。
【0075】
本明細書で用いる「果実作物」とは、単一の植物の作物を意味し、又は、好ましくは、商業的なスケールで栽培されたペッパー植物から得られた果実作物を意味する。
【0076】
本明細書で用いる「商業用ペッパー系又は変種」という用語は、例えば、果皮が厚くて甘く食用に適する果実を持つペッパー変種等、市販されているペッパー植物を意味する。典型的には、商業用ペッパー変種は、塊状でカリフォルニアタイプ(Californian‐type)の果実形状を有する果実を持ち得る。商業用ペッパー変種の例としては、これらに限定されないが、例えば、Cannon(Zeraim Gedera);Vergasa(Syngenta Seeds);Bardenas(Syngenta Seeds)、Roxy(Syngenta Seeds)、Yolo Wonder(Syngenta Seeds)等の「ベル」タイプのスィートペッパー商業用栽培品種が挙げられる。
【0077】
本発明に従うペッパー植物の成長に関する「低い温度」とは、10℃〜12℃及びこれより低い温度の範囲を意味し、用いられる変種に応じて異なる。
【0078】
本明細書で用いる「対立遺伝子」という用語は、遺伝子若しくはいずれかの種類の識別可能な遺伝子要素の異なる形態と同一であるか又はこれと関連する種々の遺伝子単位の、1個以上の代替の形態若しくは変異形態のいずれかを意味し、対立遺伝子はすべて少なくとも一つの形質又は特性に関連している。二倍体細胞では、任意の遺伝子の2個の対立遺伝子が相同染色体対上の対応する遺伝子座を占有し、従って、遺伝においていずれか一つが選ばれる。
【0079】
このような代替又は変異の形態は、単一のヌクレオチドの多型、挿入、逆位、転座、若しくは欠失の結果、又は、例えば、化学的若しくは構造的修飾、転写制御、又は翻訳後修飾/制御に起因する遺伝子制御の結果であり得る。
【0080】
場合によっては、「対立遺伝子」ではなく「ハプロタイプ」(すなわち、ハプロタイプとは、一緒に伝達される、いくつかの若しくは複数の連結した遺伝子座(同一の染色体上)の対立遺伝子の組み合わせである)と称することがより正確であり得るが、しかし、このような場合は、「対立遺伝子」という用語は、「ハプロタイプ」の用語を含むと理解されるべきである。対立遺伝子は、類似の表現型を発現する場合は同一であると考えられるが、場合によっては、異なる対立遺伝子が類似の表現型を発現するということも起こり得る。配列が異なる可能性はあるが、それらが表現型に影響を与えない限りはそれほど重要ではない。
【0081】
定量的な形質と関連する対立遺伝子は、種々の遺伝子単位の代替若しくは変異の形態を含むことができ、単一の遺伝子若しくは複数の遺伝子、又はこれらの産物、又はさらには該QTLによって表される表現型に寄与する遺伝子因子を破壊するか若しくはこれによって制御される遺伝子、と同一であるか、又はこれらと関連するものが含まれる。
【0082】
「遺伝的決定因子」とは、本明細書において、遺伝子及び制御要素領域等、種々のゲノム機能を有する配列を含み得るヌクレオチド配列、好ましくはDNA配列として定義される。遺伝的決定因子は、ヌクレオチドコンストラクトを意味する場合もあり、ベクター中に含まれる場合がある。別の選択肢として、遺伝的決定因子は、一つの植物から別の植物へ、該植物を交雑させた後に染色体組換えによって転移させることができる。遺伝的決定因子は、原理上、1若しくは2種類以上の種を起源とする遺伝子物質を含み得る。
【0083】
特に、本明細書で用いる遺伝的決定因子は、ペッパー植物の種無し表現型の発現を決定する単一の遺伝子、複数の遺伝子、QTL、又はハプロタイプを意味する。
【0084】
「遺伝子」は、本明細書において、染色体上の特定の位置を占有し、生物の特定の特性又は形質に対する遺伝的命令を含むDNAの配列から成る遺伝的単位として定義される。
【0085】
「遺伝子座」は、本明細書において、形質に寄与する任意の遺伝子、又はその他のいずれかの遺伝子要素若しくは因子が任意の種の染色体上で占有する遺伝子マップ上の位置として定義される。
【0086】
本明細書で用いる「二倍体個体」という表現は、2セットの染色体、通常は2体のその親の各々由来のものを1つずつ有する個体を意味する。しかし、ある態様では、二倍体個体が、染色体のその「母系」及び「父系」のセットを同じ単一の生物から受け継ぐ場合があることは理解され、植物の続いての世代を生み出すように植物を自殖させる場合等である。
【0087】
「染色体」という用語は、「連鎖群」及び/又は「連鎖群と同等の染色体」という用語をそれぞれ含むことを意図しており、従って、本明細書においてこれらの用語と同義で用いられる。
【0088】
本明細書で用いる「ヘテロ接合性」という用語は、異なる対立遺伝子が相同染色体上の対応する遺伝子座に位置する場合に存在する遺伝子状態を意味する。
【0089】
本明細書で用いる「ホモ接合性」という用語は、同一の対立遺伝子が相同染色体上の対応する遺伝子座に位置する場合に存在する遺伝子状態を意味する。ホモ接合性は、個々の植物を自殖させた後の分離の非存在、又は、交雑させた場合はF1における分離の非存在として定義される。
【0090】
本明細書で用いる「ハイブリッド」、「ハイブリッド植物」、及び「ハイブリッド子孫」という用語は、遺伝的に異なる又は類似しない親から作出された個体を意味する(例:遺伝的にヘテロ接合性である又はほとんどヘテロ接合性である個体)(Rieger et al, 1968)。
【0091】
本明細書で用いる「単交雑F1ハイブリッド」という表現は、2種類の同系交配系間の交雑から作出されたF1ハイブリッドを意味する。
【0092】
本明細書で用いる「同系交配系」という表現は、遺伝的にホモ接合性であるか又はほぼホモ接合性である集団を意味する。同系交配系は、例えば、数サイクルの兄妹繁殖(brother/sister breedings)又は自殖又は二ゲノム性半数体作出を通して誘導することができる。ある態様では、同系交配系は、対象とする1若しくは2種類以上の表現型の形質に対する純種を生み出す。「同系交配」、「同系交配個体」、又は「同系交配子孫」は、同系交配系からサンプリングされた個体である。
【0093】
本明細書で用いる「二ゲノム性半数体系(dihaploid line)」という用語は、葯培養から生み出された安定な同系交配系を意味する。特定の培地及び条件で培養されたある花粉粒(半数体)は、n個の染色体を含有する小植物を発育させることができる。このような小植物は、次に「倍加」され、2n個の染色体を含有する。このような小植物の子孫は、「二ゲノム性半数体」と称され、実質的にこれ以上は分離しない(安定)。
【0094】
本明細書で用いる「子孫」という用語は、特定の交雑の子孫を意味する。通常は、子孫は2つの個体の繁殖の結果であるが、自殖が可能である(すなわち、同一の植物が雄性及び雌性配偶子の両方のドナーとして働く)種もある(特にある種の植物及び雌雄同体動物)。このような子孫は、例えば、F1、F2、又は続くいずれかの世代のものであってよい。
【0095】
本明細書で用いる「遺伝子移入」、「遺伝子移入された」、及び「遺伝子移入する」という用語は、1つの種、変種、又は栽培品種の遺伝子、QTL、又はハプロタイプを別の種、変種、又は栽培品種のゲノム内へこれらの種の交雑によって移動させるプロセスを意味する。この交雑は、自然のものであっても人工的なものであってもよい。このプロセスは、任意に、反復親への戻し交雑によって完了してもよく、この場合、遺伝子移入は、種間ハイブリッドをその親の一方と繰り返し戻し交雑することによる、1つの種の遺伝子の別の種の遺伝子プールへの侵入を意味する。遺伝子移入は、受ける側の植物のゲノムへ安定に組み込まれた異種遺伝子物質として説明することもできる。
【0096】
「遺伝子操作」、「形質転換」、及び「遺伝子修飾」はすべて、本明細書において、いずれかの種類の遺伝情報を、これらに限定されないが通常は別の生物の染色体DNA又はゲノムである標的植物のDNAへ転移させることの同義語として用いられる。遺伝子操作は、異種遺伝子物質を、受ける側の植物のゲノムへ安定に組み込む一つの方法であり、遺伝子又はその対立遺伝子変異体、並びに異種DNAの植物細胞若しくは組織中への安定な組み込みを引き起こす能力があって、植物細胞若しくは植物組織中の外来性ヌクレオチド配列の発現を可能とする能力を持つものから選択される制御要素、をコードする外来性ヌクレオチド配列を持つ異種DNAを含有するDNA組換え体により、植物の細胞又は組織を形質転換することを含むプロセスを含み得る。
【0097】
本明細書で用いる「遺伝又は分子マーカー」という表現は、対象とする1若しくは2個以上の遺伝子座に関連する個体のゲノムの特徴を意味する(例:個体のゲノム中に存在するヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列)。ある態様では、遺伝マーカーは、対象とする集団内の多型性であり、又は多型によって占有された遺伝子座であり、状況に応じて異なる。遺伝マーカーとしては、他の多くの例の中でも、例えば、一塩基多型(SNP)、インデル(すなわち、挿入/欠失)、単純反復配列(SSR)、制限断片長多型(RFLP)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、開裂増幅多型配列(cleaved amplified polymorphic sequence)(CAPS)マーカー、ダイバーシティアレイズテクノロジー(Diversity Arrays Technology)(DArT)マーカー、及び増幅断片長多型(AFLP)が挙げられる。例えば、遺伝マーカーを用いて、表現型の形質の変動に寄与する染色体上の対立遺伝子を含む遺伝子座を見つけ出すことができる。「遺伝マーカー」の表現は、プローブとして用いられる核酸の配列等、ゲノム配列と相補的であるポリヌクレオチド配列を意味する場合もある。
【0098】
遺伝又は分子マーカーは、それが関連する遺伝子座の内部又は外部(すなわち、それぞれ、遺伝子内又は遺伝子外)である染色体上の位置に物理的に位置することができる。言い換えると、遺伝マーカーは、対象とする遺伝子座に対応する遺伝子又は機能変異体の染色体上の位置、例えば遺伝子の外部の制御要素内、が識別されておらず、遺伝マーカーと対象とする遺伝子座との間の組換え比率が非常に低い場合に通常用いられるが、本開示の主題は、遺伝子座の境界内に物理的に存在する遺伝マーカー(例:これらに限定されないが、遺伝子のイントロン又はエクソン内の多型等の遺伝子に対応するゲノム配列)も用いることができる。本開示の主題のある態様では、1若しくは2個以上の遺伝マーカーは、1及び10個の間のマーカーを含み、ある態様では、1若しくは2個以上の遺伝マーカーは、11個以上の遺伝マーカーを含む。
【0099】
本明細書で用いる「制限断片長多型」又は「RFLP」という用語は、特定の制限酵素によって切断されたDNA断片の大きさの個体間の変動を意味する。RFLPをもたらす多型配列は、遺伝子連鎖マップ上のマーカーとして用いられる。
【0100】
「マーカーに基づく選別」とは、本発明の範囲内において、例えば、遺伝マーカーを用いることによる1若しくは2個以上の核酸の植物からの検出を意味するものと理解され、ここで、核酸は、所望の(又は所望されない)形質に対する遺伝子、QTL、又はハプロタイプを有する植物を識別するための所望の形質と関連しており、それによって、選択的育種プログラムにおいてこれらの植物を用いる(避ける)ことができる。
【0101】
「マイクロサテライト又はSSR(単純反復配列)マーカー」は、本発明の範囲内において、DNA塩基の短配列の数多くの反復から成る遺伝マーカーの一種を意味すると理解され、これは、植物のゲノム全体にわたる遺伝子座で見られ、高い多型性を有する傾向にある。
【0102】
「一塩基多型(SNP)」は、ゲノム(又はミトコンドリアDNAのようなその他の共通する配列)内の単一のヌクレオチドA、C、G、Tが、個体の一式(一対)の染色体間で異なるか、又は種のメンバー間で異なる場合に発生するDNA配列の変動である。
【0103】
「PCR(ポリメラーゼ連鎖反応法)」は、本発明の範囲内において、DNA又はゲノムの1若しくは複数のサブセットの特定の領域を比較的大量に作製し、それによって、このような領域に基づく種々の分析を可能とする方法を意味すると理解される。
【0104】
「PCRプライマー」とは、本発明の範囲内において、DNAの特定の領域のPCR増幅に用いられる一本鎖DNAの比較的短い断片を意味すると理解される。
【0105】
「多型」とは、本発明の範囲内において、遺伝子、遺伝マーカー、若しくは受け継がれた形質、又は、例えば、可変スプライシング、DNAメチル化等によって得ることができる遺伝子産物、の2若しくは3種類以上の異なる形態が集団中に存在することを意味すると理解される。
【0106】
「選択的育種」とは、本発明の範囲内において、所望の形質を持つか又は示す植物を親植物として用いる育種のプログラムを意味すると理解される。
【0107】
「テスター」植物とは、本発明の範囲内において、試験対象である植物の形質を遺伝的に特性決定するために用いられるトウガラシ属の植物を意味すると理解される。通常、試験対象である植物を「テスター」植物と交雑させ、交雑の子孫における形質の分離比率が点数化される。
【0108】
本明細書で用いる「プローブ」とは、特定の標的分子又は細胞構造を認識してこれと結合する能力を有し、従って、標的分子又は構造の検出を可能とする原子又は分子の群を意味する。特に、「プローブ」は、分子ハイブリダイゼーションによって相補的配列の存在を検出しこれを定量するために用いることができる標識されたDNA又はRNA配列を意味する。
【0109】
本明細書で用いる「集団」という用語は、共通の遺伝的由来を共有する、遺伝的に同種又は異種である植物の集まりを意味する。
【0110】
本明細書で用いる「変種」又は「栽培品種」という用語は、構造的な特徴及び生産力によって同一の種内の他の変種から識別することが可能である類似の植物の群を意味する。本明細書で用いる「変種」という用語は、1961年12月2日に作成され、1972年11月10日、1978年10月23日、及び1991年3月19日にジュネーブにて改定された、植物の新品種の保護に関する国際条約(International Convention for the Protection of New Varieties of Plants)(UPOV条約)の対応する定義と同一の意味を有する。従って、「変種」とは、既知の最下位にあたる単一の植物分類単位内での植物の分類を意味し、この分類は、栽培者の権利を認可するための条件が完全に満たされているかどうかに関係なく、i)任意の遺伝子型又は遺伝子型の組み合わせから得られる特性の発現によって定義することができ、ii) 該特性の少なくとも1つの発現によって他のいかなる植物の分類からも区別することができ、及び、iii)変化なく繁殖することへの適応性に関する一単位と考えることができる。
【0111】
本明細書で用いる「ペッパー」又は「トウガラシ」という用語は、トウガラシ属のいずれの種、変種、栽培品種、又は集団をも意味する。
【0112】
「栽培されたトウガラシ」植物とは、本発明の範囲内において、もはや自然の状態ではなく、人間の管理によって人間の使用及び/又は体内摂取のために発育された植物を意味すると理解される。
【0113】
本明細書で用いる「育種」という用語、及びその文法的な変形は、子孫の個体を生み出すいかなるプロセスをも意味する。育種は、有性的若しくは無性的、又はこれらのいずれの組み合わせであってもよい。典型的な限定されない育種の種類としては、交雑、自殖、倍加された半数体の誘導体の作出、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0114】
本明細書で用いる「確立された育種集団」という表現は、商業的な育種プログラムを例とする育種プログラムにおいて、親によって産出され、及び/又は親として用いられた潜在的な育種相手の集まりを意味する。確立された育種集団のメンバーは、通常、遺伝子的に及び/又は表現型的に十分に特性決定されている。例えば、対象とするいくつかの表現型的形質は、例えば異なる環境条件下にて、複数の場所及び/又は異なる時間にて、評価が行われている場合がある。別の選択肢として、又はこれに追加して、表現型的形質の発現と関連する1若しくは2個以上の遺伝子座が識別されている場合があり、及び育種集団の1若しくは2個以上のメンバーについて、1若しくは2個以上の遺伝子座に関する、並びにこの1若しくは2個以上の遺伝子座と関連する1若しくは2個以上の遺伝マーカーに関する遺伝子型の同定が行われている場合がある。
【0115】
「戻し交雑」とは、本発明の範囲内において、ハイブリッド子孫がその親の一方へ戻って繰り返し交雑されるプロセスを意味すると理解される。続いての戻し交雑に異なる反復親を用いてよい。
【0116】
本発明のすべての章と並行して、いかなる当業者も該発明を利用することができるように、以下の説明を提供する。しかし、本発明の一般的な原理が、以下に示す特有の特性を有する雄性不稔性種無しペッパーを提供するように特に定められることから、種々の変形が当業者にとって明らかであることに変わりはないであろう。
【0117】
ハイブリッド種子の作出プロセスでは、ハイブリッド作出の効率を上げるために、雌性の親系として雄性不稔性同系交配が通常用いられる。不稔性ペッパー植物は、高くそして非常に早く成長する。植物の最上部にて、非常に小さい変形した種無し果実を実止まりさせる。そのような植物にホルモンを散布しても、「正常な」実止まりの誘発には成功しない。しかし、多くのペッパーの形質のように、この現象には遺伝的な変異が存在する。雄性不稔性系は、その種無しペッパーの数及び品質が様々に異なっている。
【0118】
本発明の範囲内において、定性的で収穫量の高い種無し果実、特に変形を示さない果実を実止まりさせる能力を有するペッパー系が見出された。ここで言う変形とは、例えば、果実が均一でない、対称でない、若しくは不規則である等、果実が不規則で異常な形状をしていること、又は果実が分節されていないことを意味する。
【0119】
SLP果実のサイズは、それ以外は同一である遺伝的背景に基づいて比較すると、正常の種有り果実よりも小さい場合がある。種有りの同胞種は、同族のSLPに比べて最大で5倍大きい場合がある。しかし、異なる遺伝的背景への交雑により、このサイズが小さくなることを相殺し、市販のサイズのスィートペッパー果実と同じか又は実質的に同じサイズを有する種無しペッパー果実を得ることが可能である。
【0120】
特に、成熟期のSLP果実は、2グラムと10グラムの間、特には2.5gと5gの間の重さであってよく、又は1cm〜4cmのサイズ、特には1.5cm〜3cm、掛ける0.5cm〜5cm、特には2cm〜4cmの直径を有する。
【0121】
「種無し」形質は、遺伝的決定因子の支配下であり、例えば、ペッパーに単為結実を人工的に誘発させるために温室でのペッパーの保護栽培に一般的に用いられる植物ホルモン又は植物抽出物等の誘発剤による人口的な処理とは無関係に、本発明に従うペッパー植物において永久に発現される。本発明に従う植物における「種無し」形質の発現は、受粉又は受精プロセス、気候条件又は季節的変動を含むその他の外的因子ともほとんど無関係である。
【0122】
その結果、本発明に従う植物は、あらゆる季節において、すなわち、環境気温の平均が4℃と14℃の間、特には6℃と12℃の間の範囲であるイスラエルのアラバ地方(Arava region)(地中海性気候)の冬季に見られるような不都合な成長条件下においても、非常に優れた実止まりを示す。
【0123】
本発明の一つの態様では、植物全体にわたって種無し果実を実止まりさせる能力を特徴とする、雄性不稔性である種無しペッパー(SLP)植物が開発された。この果実のサイズは小さく、従って通常は一口で食べることができる。
【0124】
特に、隔離された雄性不稔性種無しペッパー植物系は、(i)あらゆる季節における非常に優れた実止まり;(ii)強く耐寒性のある植物;(iii)側枝及び細枝の枝分かれが多い結果となる、不稔性ではないペッパーと比較して弱い頂芽優勢;(iv)節の約20%にて、節あたり2個の果実を実止まりさせる傾向;(v)比較的均一であるサイズ及び形状;(vi)およそ10cmの長さである節間の短い間隔;(vii)不稔性ではない植物と同様に、第一節から始まり枝の長さ方向に沿って進行する果実の産出;並びに(viii)花粉を有さず小さい葯を持つ花、から成る群より選択されるものを含む特有の特徴を示す。
【0125】
さらに、前記の隔離された植物系上に成長するペッパー果実は、(i)種無し果実;(ii)成熟期には赤く色づき、未成熟期(熟していない)は緑色である果実;(iii)円錐様の形状、すなわちベル型と典型的な円錐型との間である形状;(iv)長さ約2〜4cm掛ける直径約3〜4cmであるサイズ;並びに(v)非常に甘い味(約8〜約11°のブリックス度)、から成る群より選択されるものを含む特有の特徴を示す。
【0126】
本発明は、本発明の植物によって示される「種無し」形質が遺伝的に制御されることを示唆する実験的な証拠を提供する。特に、「種無し」形質は、多重遺伝子性及び通性であると思われる。これらの植物及び変種は、昆虫又は手作業によって受粉すると、実止まり及び果実の発育が正常に発生する。しかし、受粉が困難であるか又は起こらない条件下において、これらの植物及び変種はそれでも正常に発育する果実の実止まりを起こすが、一方、先行技術の従来の植物及び変種は、全く実止まりを起こさない場合があり、又は果実は実止まりするが、多くの場合変形しているか及び/若しくは花が終わると直ちに腐敗が始まり、貧弱な果実の成長が限界であり、最後には花の終わりから進行する腐敗に追いつかれてしまう。
【0127】
「種無し」形質は、育種、単一形質転換(single trait conversion)、及び形質転換から成る群より選択される方法によって、トウガラシ属のその他のいかなる植物又は植物系にも遺伝子移入することができる。特に、「種無し」形質は、植物育種分野の当業者に公知の方法によって、商業用のペッパー系及び変種へ遺伝子移入することができる。
【0128】
商業用のペッパーは、一般的には、2種類の親系の交雑から作出されたハイブリッドである(同系交配)。ハイブリッドの開発には、一般に、ホモ接合性同系交配系の開発、これらの系の交雑、及びこの交雑体の評価が必要である。
【0129】
系統育種(Pedigree breeding)及び循環選抜育種(recurrent selection breeding)法を用いて同系交配系を育種集団から開発する。育種プログラムは、2若しくは3種類以上の同系交配系又は種々のその他の生殖質源からの遺伝的背景を育種プールと組み合わせ、そこから自殖及び所望の表現型の選別によって新規な同系交配系が開発される。新規な同系交配は、その他の同系交配系と交雑させ、これらの交雑からのハイブリッドを評価し、これらの中のどれが商業的な可能性を持つかを判断する。植物育種及びハイブリッドの開発は、コストが高く、労力及び時間のかかるプロセスである。
【0130】
系統育種は、2種類の遺伝子型の交雑から開始し、これらの各々は、他方に欠けているか又は他方を補完する1若しくは2個以上の所望の特性を有してよい。元の2種類の親によって所望される特性のすべてが提供されない場合は、特性源となるその他のものを育種集団へ含めることができる。系統育種法では、優勢である植物が自殖し、続いての世代で選択される。続いての世代では、自己受粉及び選択の結果としてヘテロ接合性の状態が同種系に取って代わられる。通常、系統育種法では、自殖及び選択の5若しくは6以上の世代:F1〜F2;F3〜F4;F4〜F5等、が実践される。各々がもう一方の遺伝子型を補完する遺伝子型を持つ2種類の同系交配系の交雑から、単交雑ハイブリッドが得られる。第一世代のハイブリッド子孫はF1で表される。商業用ハイブリッドの開発では、F1ハイブリッド植物のみが探求される。好ましいF1ハイブリッドは、その同系交配の親と比較してより草勢がある。このハイブリッドの生産力(雑種強勢又はヘテロシス)は、栄養成長の増加及び収穫量の増加を含む多くの多遺伝子形質(polygenic traits)に現れ得る。ペッパーにおける育種は、葯培養によって得られた倍加半数体を用いることで促進することができる。このような技術により、通常の系統育種プロセスよりも短い期間で純系を作出することによって、このプロセスを確保する可能性がもたらされる。トウガラシ属内の植物は、容易に他家受粉させることができる。形質の転移も、例えばさらに商業用の系を得るために、異なる種類のペッパー植物を含め一つのペッパー植物から別のペッパー植物へ、従来の育種技術を用いて容易に行われる。優良系への形質の遺伝子移入は、例えば、循環選抜育種により、例えば戻し交雑によって達成される。この場合、優良系(反復親)を、形質、特に本発明に従う「種無し」形質を持つドナーである同系交配(非反復親)とまず交雑させる。次に、この交雑の子孫を反復親へ戻って交配させ、続いて得られた子孫を形質について選別する。3、好ましくは4、より好ましくは5若しくは6以上の世代にわたる反復親との戻し交雑、及び形質、特に本発明に従う「種無し」形質についての選別の後、子孫は耐性を有する遺伝子座に対してヘテロ接合性であるが、ほとんど、又はほとんどすべてのその他の遺伝子については反復親と同様である(例えば、参照することで本明細書に組み入れられる、Poehlman & Sleper (1995) Breeding Field Crops, 4th Ed., 172‐175; Fehr (1987) Principles of Cuitivar Development, Vol.1: Theory and Technique, 360‐376、参照)。形質についての選別は各交雑の後に実施する。ペッパーの雄性不稔性は入手可能である。特に遺伝的雄性不稔性は、スィートペッパー系を例とする商業用の系に広く用いられており(例えば、Daskatoff S. (1972)、参照)、一方、チリペッパーでは、細胞質雄性不稔性(Peterson, 1958)も用いられる(Male sterile pepper mutants and their utilization in heterosis breeding. Eucarpia, meetings on genetic and breeding. Turin 1971,205‐210)。
【0131】
従って、一つの態様では、本発明は、種無しペッパー植物を作出する方法に関し、その方法は、
i)雌性系としての雄性不稔性である種無しペッパー植物と雄性系としての雄性稔性(種あり)ペッパー植物とのF1ハイブリッドの同系交配系の種子を提供する工程;
ii)該種子を発芽させてそこから成熟稔性植物を成長させる工程;
iii)(ii)の下で成長させた該植物の自己受粉を誘発し、果実を成長させてそこから稔性の種子を収穫する工程;及び
iv)iii)の下で収穫した種子から植物を成長させ、任意に、種無し果実を成長する植物を選別する工程、
を含む。
【0132】
ペッパーは自己受粉する種であり、従って通常、植物は、これが不稔性でもある場合にのみ種無しとして容易に認識することができる。理論的には、この2つの現象は、遺伝的な繋がりという意味において互いに結びついていないが、実質的には、植物がこの2つの形質を併せ持つ場合に、単為結実を容易に識別することができる。稔性植物を使用する場合は、果実を切り開いて種子が存在するかどうかを判定することが必要となるであろう。
【0133】
本発明の一つの態様では、「種無し」形質を発現し、従って種無しペッパー果実を成長させる植物の識別及び選別は、単に花を目視で観察して雄性不稔性個体を識別することによって行うことができる。不稔性植物を区別した後、これらを再度植えつけ、これらの種無し果実の実止まり能力を推定する。これは、例えば、植物を以下の表現型的特性:
1.稔性植物と同様に、実止まりが第一節から開始されること
2.実止まりが、受粉及び/又は受精プロセスとは無関係に、稔性植物も通常実止まりを起こすすべての季節にて発生すること
3.実止まりが、受粉及び/又は受精プロセスとは無関係に、不都合な条件下にて発生すること
について検査することによって達成することができる。
【0134】
別の選択肢では、マーカー支援育種(marker‐assisted breeding)を用いて、本発明に関連する遺伝子座及び/又は隣接するマーカー遺伝子座若しくはそれと遺伝的に連結したマーカー遺伝子座が、有利な遺伝子型、特にホモ接合体に有利な遺伝子型を有する個体を識別することができる。
【0135】
従って、当業者に公知の方法によってマーカーを開発し、これを用いて本発明に従い本明細書で前記にて開示され、種無し形質を表す1若しくは複数の遺伝子座の対立遺伝子又は一式の対立遺伝子を持つ植物を識別し選別することができる。
【0136】
連鎖不平衡であるマーカー、及び/又は種無し形質に対する遺伝子、QTL、若しくはハプロタイプが存在するゲノム領域と連結する及び/又はその中に位置するマーカー、並びに、種無し形質の基礎となる実際の因果関係のある変異を表すマーカー、の識別及び/又は開発に用いることができる当業者に公知のいくつかの方法又は手法が利用可能である。これらに限定されないが、当業者に公知のいくつかの手法としては以下のものが挙げられる:
‐候補遺伝子手法;候補遺伝子配列又は候補遺伝子と連結する配列を、対象とする形質と関連する及び/又は遺伝的に連結する多型について探索することができ、一旦関連付け及び/又は遺伝的な連結がなされると、これらの多型はマーカー支援育種の用途に用いることができる。
‐バルク分離解析(Bulk segregant analysis)(BSA)(Michelmore et al., 1991);集団の表現型決定に続いて、対象とする形質の対照的な表現型を持つ植物(通常は5〜40株)をグループ化し、この群はその集団の表現型の両極端を表すバルクを形成する。次に、バルクを分子マーカー対立遺伝子の存在又は非存在について試験する。バルクは、表現型の両極端に寄与する対立遺伝子について対照的であるはずであることから、バルク間のいかなるマーカー多型も、対象とする形質との連結を例とする遺伝的に連結する候補マーカーであり、これはマーカー支援育種の用途に用いることができ、又は、別の選択肢として、これを用いて対象とする形質を遺伝的にマッピングすることができる。
‐QTLマッピング又は関連マッピング手法;植物の一群の集団に対する対象とする形質の特性決定(表現型決定)及び遺伝子型決定を、好ましくはゲノム全体にわたって都合よく分布したマーカーを用いて行うことができる。遺伝子型データ及び表現型データを得た後、一般的なQTLマッピング及び/又は関連マッピングソフトウェアツールを用いた遺伝子型及び表現型データのジョイント解析により、遺伝子型データと表現型データとの間の関連性のパターンについての探索を行う。続いて、対象とする形質と関連するマーカーを、マーカー支援育種の用途に用いることができる。
【0137】
QTL及び/若しくは関連マッピングに続いて、又は対象とする形質と連結したマーカーの遺伝的マッピングに続いて、同一のゲノム領域内に位置する(従って、遺伝的に連結している)ことが既知であるその他のマーカー又は遺伝子を識別し、これを用いて対象とする領域内のさらなるマーカーを開発することができ、並びに/又は、これをマーカー支援育種の用途に用いることができる。
【0138】
遺伝的に連結したマーカー又はマーカー配列を用い、ハイブリダイゼーション、PCR、及び/又はコンピュータを用いた手法により、これらのマーカーに隣接するその他の核酸配列を単離することもできる。このような隣接核酸配列を用いて、これもマーカー支援育種の集団に用いることができる、対象とする形質と関連する及び/若しくは遺伝的に連結した新規な並びに/又はさらなる多型を探索することができる。
【0139】
対象とする形質と関連する及び/若しくは遺伝的に連結した核酸配列を比較ゲノム及び/又はシンテニーマッピング(syntheny mapping)の手法に用いて、相同領域、並びに相同及び/若しくはオルソロガス配列、並びに/又は候補遺伝子を識別することもできる。
【0140】
一つの態様では、従って、本発明は、本発明に従うペッパー植物、特に、アバディーン、AB21 9YA、スコットランド、英国のNCIMBに、それぞれNCIMB41558、NCIMB41559、NCIMB41560、NCIMB41561、及びNCIMB41562の受託番号で2008年5月26日に寄託された種子から成長された、トウガラシAR07‐F1‐56‐b;トウガラシAR07‐F1‐87‐b;トウガラシAR07‐F1‐166‐b;トウガラシAR07‐F1‐171‐X;及び、トウガラシAR07‐F1‐172‐Xと称するハイブリッドペッパー植物、又はこれらのF2子孫、の「種無し」形質を制御する遺伝的決定因子と遺伝的に連結した遺伝マーカーに関する。この遺伝マーカーとしては、これらに限定されないが、制限断片長多型(RFLP)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、増幅断片長多型(AFLP)、単純反復配列(SSR)、及び一塩基多型、SNP、又は「種無し」形質と関連する及び/若しくは遺伝的に連結したいずれかの核酸配列、から成る群より選択されるいずれのマーカーであってもよい。
【0141】
本発明は、本明細書にて上述のものを含むこのようなマーカー、特に、アバディーン、AB21 9YA、スコットランド、英国のNCIMBに、それぞれNCIMB41558、NCIMB41559、NCIMB41560、NCIMB41561、及びNCIMB41562の受託番号で2008年5月26日に寄託された種子から成長された、トウガラシAR07‐F1‐56‐b;トウガラシAR07‐F1‐87‐b;トウガラシAR07‐F1‐166‐b;トウガラシAR07‐F1‐171‐X;及び、トウガラシAR07‐F1‐172‐Xと称するハイブリッドペッパー植物、又はこれらのF2子孫の「種無し」形質を制御する遺伝的決定因子と遺伝的に連結したマーカー、を開発する方法にも関する。
【0142】
さらに本発明によって包含されるものは、同一のゲノム領域内に位置する(従って、遺伝的に連結している)ことが既知であるその他のマーカー若しくは遺伝子を識別し、対象とする領域内の及び/又はマーカー支援育種の用途におけるさらなるマーカーを開発するための、本発明に従うこのようなマーカーの使用である。
【0143】
さらなる態様では、本発明は、種無しペッパー植物であって、該ペッパー植物の「種無し」形質を制御する遺伝的決定因子と遺伝的に連結した本発明に従うマーカー、特に、アバディーン、AB21 9YA、スコットランド、英国のNCIMBに、それぞれNCIMB41558、NCIMB41559、NCIMB41560、NCIMB41561、及びNCIMB41562の受託番号で2008年5月26日に寄託された種子から成長された、トウガラシAR07‐F1‐56‐b;トウガラシAR07‐F1‐87‐b;トウガラシAR07‐F1‐166‐b;トウガラシAR07‐F1‐171‐X;及び、トウガラシAR07‐F1‐172‐Xと称するハイブリッドペッパー植物、又はこれらのF2子孫から、特に本明細書で開示の方法を適用することによって得ることができるマーカー、を有する種無しペッパー植物に関する。
【0144】
マーカーに基づく選別は、視覚的に判断することができ、対象とする形質、すなわち「種無し」形質に関連し、さらには、例えば、草勢、節間長さ、分枝、害虫耐性、TMV(タバコモザイクウイルス)及びTSWV(トマト黄化萎縮ウイルス)等のウイルス耐性等、商業的なハイブリッド作出に用いられる植物の適性に関する重要な生産力の指標にも関連する、表現型的特性に大部分が基づいているスクリーニングの方法と多くの場合組み合わせて、同系交配開発の初期のフェーズで既に用いていてもよい。選別は、対象とする形質と連結していてもしていなくてもよい分子マーカーに基づいたものであってもよい。
【0145】
特に、マーカーに基づく選別は、表現型的選別と組み合わせて又はこれに続いて適用することで、本発明に関連する遺伝子座のすべてがヘテロ接合又はホモ接合に有利である遺伝子型を有する個体を識別することができる。
【0146】
マーカーに基づく選別に用いることができる分子マーカーにはいくつかの種類があり、これらに限定されないが、制限断片長多型(RFLP)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、増幅断片長多型(AFLP)、単純反復配列(SSR)、及び一塩基多型、SNP、が挙げられる。
【0147】
RFLPは、制限酵素を用いて特定の短い制限酵素部位にて染色体DNAを切断することを含み、多型は、この部位間の重複若しくは欠失、又は制限酵素部位における変異の結果である。
【0148】
RAPDは、任意配列の単一のプライマーによる低ストリンジェンシーポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を用いて、匿名DNA断片(anonymous DNA fragments)の系統特異的アレイを作製する。この方法は、極僅かのDNAサンプルしか必要とせず、非常に数多くの多型遺伝子座が分析される。
【0149】
AFLPでは、PCR及びプライマー内の選択的ヌクレオチドを用いて特定の断片を増幅する前に、細胞DNAの制限酵素による消化が必要である。この方法と共に電気泳動法を用い、得られた断片を視覚化することによってプライマーの組み合わせあたり最大100個の多型遺伝子座の測定が可能であり、各試験に対して少量のDNAサンプルしか必要としない。
【0150】
SSR分析は、真核生物のゲノム全体にわたって広く分散しているDNAマイクロサテライト(短鎖反復)配列に基づいており、これを選択的に増幅して単純反復配列内の変異を検出する。SSR分析は、極僅かのDNAサンプルしか必要としない。
【0151】
SNPは、点変異を効果的に取り上げるPCR伸長アッセイを用いる。この手順は、サンプルあたり少しのDNAしか必要としない。上記の方法の一つ又はその組み合わせを、典型的なマーカーに基づく選抜育種プログラムに用いることができる。
【0152】
現在、植物ゲノムの多型領域に広がるヌクレオチド断片の増幅を達成する最も好ましい方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)を用いるもので(Mullis et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51 :263 273 (1986))、その二本鎖形態の多型を定める近位配列へハイブリダイズする能力を有する順方向プライマー及び逆方向プライマーを含むプライマー対を用いる。
【0153】
基本的に、PCR増幅の方法は、増幅されるべきDNAセグメントに隣接する2本の単鎖オリゴヌクレオチドプライマー配列、又は該DNAセグメントに連結したアダプター配列を有するプライマー又は一対のプライマーの使用を含む。このDNAの加熱及び変性のサイクルを繰り返し、続いて、低温にてプライマーをその相補配列へアニーリングし、アニーリングされたプライマーをDNAポリメラーゼによって伸長させる。プライマーは、DNA標的配列の他方の鎖へハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションとは、相補DNA鎖のアニーリングを意味し、ここで、相補とは、一方の鎖のヌクレオチドが、他方の鎖のヌクレオチドと結合して二本鎖構造を形成することができるヌクレオチドの配列を意味する。プライマーは、ポリメラーゼによるDNA合成がプライマー間でヌクレオチド配列全体にわたって二方向に進むように整列される。この方法は、1サイクルでDNAセグメントの量を実質的に二倍に増加させる。PCR産物はプライマーと相補的でありこれと結合する能力を有することから、続く各々のサイクルは、前のサイクルで合成されたDNAの量を倍増させる。この方法の結果、特定の標的断片が指数関数的に蓄積され、すなわち、ここでnをサイクル数とすると、およそ2<n>倍となる。
【0154】
PCR増幅を通して、プライマーが隣接した何百万というDNAセグメントの複製が作製される。異なる対立遺伝子における、隣接するプライマー間に位置する反復配列、又は挿入、又は欠失の数の違いは、増幅されたDNA断片の長さの変動に反映される。このような変動は、例えば、増幅されたDNA断片を電気泳動によってゲル上で分離することにより、又はキャピラリーシークエンサーを用いることにより検出することができる。ゲル又はプロファイルを分析することにより、植物が所望の対立遺伝子をホモ接合若しくはヘテロ接合の状態で含むかどうか、又は所望の若しくは所望されない対立遺伝子が植物ゲノムに存在しないかどうか、を判定することができる。
【0155】
SNPのように、長さの変動をもたらさない異なる対立遺伝子間の配列の変動は、ハイブリダイゼーションに基づいても酵素に基づいてもよい多様な範囲の遺伝子型決定の方法により、又はDNAの物理的性質に基づくその他の増幅後の方法により、さらには配列決定により、測定(遺伝性型決定)することができる。
【0156】
「リガーゼ連鎖反応」(「LCR」)(Barany, Proc. Natl. Acad. Sci.(U.S.A) 88:189 193 (1991))等の別の選択肢としての方法を断片の増幅に用いてもよく、これは、2対のオリゴヌクレオチドプローブを用いて特定の標的を指数関数的に増幅するものである。オリゴヌクレオチドの各対の配列は、この対が標的の同一の鎖の隣接する配列へハイブリダイズできるように選択される。このようなハイブリダイゼーションにより、テンプレートに依存するリガーゼに対する基質が形成される。従って、PCRのように、得られた産物は続いてのサイクルにおけるテンプレートとして用いられ、所望の配列の指数関数的な増幅が得られる。
【0157】
LCRは、多型部位の同一の鎖の近位及び遠位配列を有するオリゴヌクレオチドで実施することができる。一つの態様では、いずれかのヌクレオチドが多型の実際の多型部位を含むように設計される。そのような態様では、反応条件は、オリゴヌクレオチド上に存在する多型部位に対して相補的である特定のヌクレオチドを標的分子が含むか又は含まないかのいずれかの場合にのみ、オリゴヌクレオチドが互いに連結することができるように選択される。別の選択肢として、オリゴヌクレオチドは、それが多型部位を含まないように選択してもよい(Segev,PCT出願国際公開第90/01069号参照)。
【0158】
別の選択肢として用いてもよいさらなる方法は、「オリゴヌクレオチド連結アッセイ」(「OLA」)である(Landegren et al., Science 241 :1077 1080 (1988))。OLAプロトコルは、標的の一本鎖の隣接する配列とハイブリダイズすることが可能であるように設計された2個のオリゴヌクレオチドを用いる。LCRのように、OLAは、点変異の検出に特に適している。しかし、LCRとは異なり、OLAは、標的配列の指数関数的な増幅ではなく、「直線的な」増幅をもたらす。
【0159】
別の選択肢として用いてもよいさらに別の方法は、「インベーダーアッセイ(Invader Assay)」であり、これは、構造特異的フラップエンドヌクレアーゼ(FEN)を用いて、対立遺伝子特異的オーバーラップオリゴヌクレオチドの一塩基多型(SNP)部位を含む標的DNAに対するハイブリダイゼーションによって形成された3次元複合体を開裂させるものである。標的分子内のSNP対立遺伝子に相補的であるオリゴヌクレオチドのアニーリングにより、熱安定性FENであるクリーバーゼ(cleavase)によるオリゴヌクレオチドの開裂が引き起こされる。開裂は、いくつかの異なる手法によって検出可能である。最も一般的には、開裂産物が蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)カセット上で二次開裂反応を引き起こし、蛍光シグナルを発する。別の選択肢として、開裂は、蛍光偏光(FP)プローブの使用により、又は質量分析により直接検出することもできる。侵入的開裂反応(invasive cleavage reaction)は、特異性が高く、失敗の率が低く、ゼプトモル単位の量の標的DNAを検出することができる。このアッセイは、従来から一つの反応あたり、一つのサンプル中の一つのSNPの識別に用いられてきたが、これを多重で高処理量であるSNP遺伝子型決定に適用することができる効率的で正確なアッセイとするよう、新規なチップ又はビーズに基づく手法が試験されている。
【0160】
Nickerson et al.は、PCR及びOLAの特質を組み合わせた核酸検出アッセイを報告した(Nickerson et al., Proc. Natl. Acad. Sci.(U.S.A) 87:8923 8927 (1990))。この方法では、PCRを用いて標的DNAの指数関数的な増幅を達成し、次にOLAを用いてこれを検出する。
【0161】
得られた「ジ‐オリゴヌクレオチド」の配列を有する核酸の存在下での2個(若しくは3個以上)のオリゴヌクレオチドの連結、及びそれによるジ‐オリゴヌクレオチドの増幅に基づくスキームも公知であり(Wu et al., Genomics 4:560 569 (1989))、本発明の目的に容易に適用することができる。
【0162】
分子マーカーは、従って、PCRによって増幅されたDNA断片であってよく、例えば、SSRマーカー又はRAPDマーカーである。増幅されたDNA断片の存在又は欠如は、形質自体の存在若しくは欠如、又は形質の特定の対立遺伝子の存在若しくは欠如を示すものであり得る。SSRマーカーを用いる場合は、増幅されたDNA断片の長さの違いが、形質の特定の対立遺伝子の存在を示すものであり得、従って、これによって形質の異なる対立遺伝子間の区別が可能となる。
【0163】
本発明の特定の態様では、単純反復配列(SSR)マーカーを用いて、親植物及び/又はその祖先、並びに該親植物の交雑から得られた子孫植物内の本発明に関連する対立遺伝子が識別される。単純反復配列は、短鎖反復DNA配列であり、すべての真核生物のゲノムに存在し、任意のヌクレオチドモチーフの数個〜100個を超す反復から成る。ゲノム内の特定の位置に存在する反復の数は植物間で異なる場合が多いことから、SSRを分析して特定の対立遺伝子の欠如又は存在を測定することができる。
【0164】
本発明の別の態様では、SNPマーカーを用いて、親植物及び/又はその祖先、並びに該親植物の交雑から得られた子孫植物内の本発明に関連する対立遺伝子が識別される。
【0165】
マーカー分析は、非常に若い植物の葉組織又は種子から抽出されたDNAサンプルを用いて、植物発育の初期に行ってよい。これにより、育種サイクルの初期に所望の遺伝子構造を有する植物を識別し、所望の本発明に関連する対立遺伝子を持たない植物を受粉の前に廃棄することが可能となり、従って、育種集団のサイズが減少し、表現型決定の要求事項が低減される。
【0166】
さらに、分子マーカーを用いることにより、本発明に関連する遺伝子座に所望の本発明に関連する対立遺伝子の複製を2個持つホモ接合性植物と、複製を1個しか持たないヘテロ接合性植物と、有利な対立遺伝子の複製を全く持たない植物とを区別することができる。
【0167】
分子マーカーは、マーカー支援選抜、及び/又は「種無し」形質を持つか若しくは持たない植物を追跡するその他のいかなる方法にも用いることができる。このマーカーは、トランスマーカー又はシスマーカーのいずれかであってよい。トランスマーカーは、受ける側の植物のゲノムへの外来性(ドナー)DNAの遺伝子移入から得られる多型を示し、この多型は、受ける側のゲノムとシスで連結、すなわち、反対の対立遺伝子と連結する。従って、シスマーカーは、対象とする対立遺伝子と連結し、一方、トランスマーカーは、反対の対立遺伝子と連結する(受ける側からの)。
【0168】
同系交配系の有用性、及びハイブリッド子孫へ遺伝的に寄与するその可能性を調べるために、別の同系交配系との試験交雑を行い、得られた子孫の表現型を評価する。記録され得る形質は、一般に、先端がとがった若しくはとがっていない果実、辛い若しくは辛くない、赤色、黄色、若しくはオレンジ色、等の果実形状及び果実特性に関連する形質が含まれる。節間の長さ、成長力、及び分枝等の植物特性も、TMV(タバコモザイクウイルス)及びTSWV(トマト黄化萎縮ウイルス)等の特定のウイルス耐性と共に考慮される。
【0169】
遺伝子型決定又は関連マッピングに対しては、DNAを、例えば葉組織等の適切な植物物質から抽出する。特に、複数の植物の大部分の葉を採取する。DNAサンプルは、複数の多型SSR、SNP、又はペッパーゲノム全体に適用されるその他のいずれかの種類のマーカーを用いて遺伝子型決定される。
【0170】
遺伝子型及び表現型のデータのジョイント解析は、標準的なソフトウェアを用いて実施することができる。
【実施例】
【0171】
以下の実施例は説明のための態様を提供する。本開示及び当業者の一般的なレベルを考慮すると、当業者であれば、以下の実施例が単なる代表例であることを意図するものであり、本発明で主張する主題の範囲から逸脱することなく、数多くの変形、改変、及び変更を用いることが可能であることは理解されるであろう。
【0172】
実施例1:種無しペッパー系の単離
1.1 成長及び栽培の条件: 本発明のSLPは、ネティフハハサラ及びゾファー(Zofar)(イスラエル)にて、2回の成長季にわたって、すなわち、2006年の春季及び夏季;並びに2006から2007年にかけての秋季及び冬季に成長させた。ほとんどの植物と同様に、特にペッパーでは、記載の特性は、成長の季節及び条件と関連している。他の条件下では、植物の特性が大きく異なったものになる場合があると推察することができる。以下に実施例を示す。
【0173】
ネティフハハサラでの条件: 加温なしのプラスチックカバーによる温室、遮光ネットによる覆い(40%、5月より);砂質土;2006年2月に播種;1000m2あたり2500株の植物;スペイン式の側部を支持する添え木;商業的な実践として確立されているように、果実の摘果及び植物の剪定は行わない。
【0174】
ゾファーでの条件: 加温なしのネットハウス、二重のネットを用い、白色ネット(25メッシュ、20%遮光)は成長季を通して、40%遮光の黒色ネットは成長季の最初の40日間、及び最後の2ヶ月間(すなわち2月及び3月)に使用、砂質土;2006年7月に播種;1000m2あたり3500株の植物;スペイン式の側部を支持する添え木;商業的な実践として確立されているように、果実の摘果及び植物の剪定は行わない。
【0175】
1.2 系統情報: このような種無し植物の一つの系統は、以下のスキームに示す通りである。
【0176】
【表1】

【0177】
P1及びP2の元となるのは、フィールドL3で成長させた商業用変種のF2種子である。P2の集団(プロットL3‐188)を不稔性によって分割した。P1及びP2は、その植物の強さ及び非常に良い質に従って選別した。P1は、プロット「L3‐161」の第4番の稔性植物の種子から作り、P2は、プロットL3‐188の多くの稔性植物の大量の種子からである。いずれも種類はレッドペッパーであった。ハイブリッド「B5‐F1‐217‐b」は、これらの2種類の植物から作出し、ここで、P1が雄性親、P2が雌性親であった。このハイブリッド(15株)はプロット122のフィールドPCで成長させ、全植物からF2種子を回収した。このF2種子をプロット155のフィールドL5に播種した。この集団を不稔性によって分割した。多くの他の不稔性植物の中でも、第1番の植物を、植物全体にわたって小サイズの種無し果実を実止まりさせる能力によって区別した。この植物を栄養成長によって繁殖させ、秋‐冬季に子孫を成長させた。この季節におけるこれらの植物の生産力は春‐夏季と非常に類似していた。
【0178】
1.3 植物及び果実の特性: 実験により、以下によって定められる果実及び植物が得られた(写真1及び2参照): 種無し果実は、(i)種が無いこと;(ii)成熟期には赤く色づき、未成熟期(熟していない)は暗緑色に色づく果実;(iii)円錐様の形状、すなわちベル型と典型的な円錐型との間である形状;(iv)長さ約2〜4cm掛ける直径約3〜4cmであるサイズ;並びに(v)非常に甘い味(約8〜約11°のブリックス度)、によって特徴付けられる。種無し植物は、特に、(i)あらゆる季節における非常に優れた実止まり;(ii)強く耐寒性のある植物;(iii)側枝及び細枝の枝分かれが多く、弱い頂芽優勢;(iii)節の約20%にて、節あたり2個の果実を実止まりさせる傾向;(iv)比較的均一であるサイズ及び形状;(v)およそ10cmの長さである節間の短い間隔;(vi)不稔性ではない植物と同様に、第一節から始まり枝の長さ方向に沿って進行する果実の産出;並びに(vii)花粉を有さず小さい葯を持つ花、を含む群より選択される特徴によって特徴付けられる。
【0179】
実施例2:「種無し」形質の遺伝学
「一口」ペッパーの種類で発見された「種無し」形質が、遺伝的決定因子によって制御される独立した形質であり、従って、多くの異なる種類のペッパーへ遺伝的に受け継ぐことが可能であることを実証するために、種無し植物を他の種類のペッパー植物と交雑することによって作出した集団の子孫にこの形質が存在することが示される。
【0180】
2.1 育種履歴: 2007年の春季にて、SLP変種255‐1を、異なる種類、ブロッキー、カピャ、及びコニックの8つの変種と交雑させた。これらのハイブリッドを2007から2008年にかけての秋/冬季に成長させ、10株のF1植物からF2種子を収穫した。
【0181】
【表2】

実施例3:ハイブリッドからの「種無し」形質の回復
3.1 実験計画: 寄託された5種類のハイブリッドを、各々につき10株の個体植物(合計50株の植物)にて、寄託された種子から成長させた。自己受粉により、これらの個体植物からF2種子を得た。F2種子を植物から収穫し、分離しておいた。各F1植物からのF2種子55個を播種した(合計2750個の種子、ハイブリッドファミリーあたり550個の種子)。各寄託されたハイブリッドファミリーから100〜130株の不稔性F2植物を得ることを目標とした(550個の約25%)。試験は、各F2子孫が別々に移植されるように設計した。さらに、コントロールとして、その子孫にSLP形質が発見された元のハイブリッドからのF2種子についても、3つのF1植物から600個の種子、各々から200個の種子を播種した。次に、F2植物を、雄性不稔性(MS)形質及び種無しペッパー(SLP)形質の発現について分析する。雌性系(SLP系)ではMS形質が同種劣勢(homogenous recessive)であるのに対し、F1ハイブリッドでは、異型遺伝子性(雄性系はすべて同種雄性稔性)である。
【0182】
バックアップとして、1週間後に追加の種子を播種した。この播種サイクルには、第一サイクルで播種したファミリー(発芽が不十分である場合に備えて)、及び可能性のある変異を豊富にするために他のハイブリッドからのF2ファミリーを含めた。
【0183】
約1〜2ヵ月後、苗をポットに移植し、苗床で継続して成長させる。種無し不稔性植物のスクリーニング及び選別は、簡便な花の観察によって行う。不稔性植物を区別した後、それらをネットハウス(昆虫による他家受粉を避けるための50メッシュの白色ネット)にて2500株/1000m2の密度で栽培する。単為結実性の表現型決定は2週間後に行う。
【0184】
3.2 結果: F2種子に含まれる雄性不稔性形質(MS)は、27%の平均比率で発現される(一遺伝子性劣勢形質(monogenic recessive trait)に期待される理論比率の25%から大きく離れていない)。SLP形質は、MSの背景では表現型的にのみ発現することができる。MS植物の集団中でSLP形質を発現する植物の平均比率は23%である。SLP形質は環境条件と無関係であるが、発現の度合いは雄性系の遺伝的背景によって影響され得る。SLP植物(AR06‐F3‐255‐1)をカピャ系と交雑させて作出したハイブリッドAR07‐F1‐56‐bでは、6%(元のハイブリッド)から36%までの範囲である。寄託された系に基づくすべての試験において、一貫してSLP形質を回復することができた。データは、SLP形質が、少なくとも2つの主要な遺伝的構成成分が関与する複雑な形質であることを示している。
【0185】
すべてのSLP植物において、果実の100%が種無しであり、これらの果実のすべてが100%の種無しであった(種有りとなるための胚珠の受精が起こらなかった)。稔性ネガティブコントロールでは、わずかに非常に時折、植物上のいくつかの個々の果実が種無しであることが発見されたが;しかし、これは気候の影響又は異常な受粉の結果であり、遺伝的な現象ではない。
【0186】
寄託:
以下のトウガラシ系の種子サンプルを、2008年5月26日、アバディーン AB21 9YA、スコットランド、英国のNCIMBに、ブタペスト条約の規定に基づいて寄託した。
【0187】
【表3】

【0188】
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PCT出願 WO90/01069

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種無し果実を成長させるペッパー植物であって、該「種無し」形質は、遺伝的決定因子によって制御され、そして単為結実を誘発する植物ホルモンによる外部処理に無関係である、ペッパー植物。
【請求項2】
受粉及び受精のプロセスに関係なく種無し果実を成長させる、請求項1に記載のペッパー植物。
【請求項3】
前記「種無し」形質が、単為結実を誘発する外的因子の適用、及び/又は外的に投与された単為結実誘発剤による処理に無関係である、請求項1又は2に記載のペッパー植物。
【請求項4】
前記種無し果実が、少なくとも95%の種無しであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペッパー植物。
【請求項5】
前記種無し果実が、100%の種無しであることを特徴とする、請求項4に記載のペッパー植物。
【請求項6】
前記植物において成長した果実の少なくとも60%が、少なくとも95%の種無しである、請求項4に記載のペッパー植物。
【請求項7】
前記植物において成長した果実の少なくとも40%が、少なくとも100%の種無しである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペッパー植物。
【請求項8】
前記植物において成長した果実の100%が、100%の種無しである、請求項7に記載のペッパー植物。
【請求項9】
前記植物が、該植物全体に種無し果実を実止まりさせる能力を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のペッパー植物。
【請求項10】
実止まりが、枝の第一節から開始し、枝全体の長さ方向に沿って進行する、請求項9に記載のペッパー植物。
【請求項11】
前記植物が、節の約20%において、節あたり2個の果実を成長させる、請求項10に記載のペッパー植物。
【請求項12】
加工又は保存食の生産のための、食用の生鮮産物又は生鮮カット産物としての使用に適する種無し果実を成長させる、請求項1〜11のいずれか1項に記載のペッパー植物。
【請求項13】
前記植物が、変形のない正常な外観の果実を成長させる、請求項1〜12のいずれか1項に記載のペッパー植物。
【請求項14】
前記植物が、ドルチェタイプペッパー(dolce‐type pepper)、ベルペッパー(bell pepper)、ビッグレクタンギュラーペッパー(big rectangular pepper)、コニカルペッパー(conical pepper)、ロングコニカルペッパー(long conical pepper)、及びブロッキータイプペッパー(blocky‐type pepper)を含むスィートペッパーから成る群より選択されるペッパーを成長させる、請求項12又は13のいずれか1項に記載の植物。
【請求項15】
前記植物の成熟した果実が、常緑色、黄色、オレンジ色、象牙色、茶色、紫色、又は赤色である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の植物。
【請求項16】
成熟期では赤く色づき、未成熟(熟していない)期では暗緑色に色づくペッパー果実を成長させる、請求項15に記載の植物。
【請求項17】
前記植物が、同系交配、二ゲノム性半数体、又はハイブリッドである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の植物。
【請求項18】
前記植物が、雄性不稔性である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の植物。
【請求項19】
前記「種無し」形質が、アバディーン AB21 9YA、スコットランド、英国のNCIMBに、それぞれNCIMB41558、NCIMB41559、NCIMB41560、NCIMB41561、及びNCIMB41562の受託番号で2008年5月26日に寄託された種子から成長させた、トウガラシ(Capsicum annuum)AR07‐F1‐56‐b;トウガラシAR07‐F1‐87‐b;トウガラシAR07‐F1‐166‐b;トウガラシAR07‐F1‐171‐X;及び、トウガラシAR07‐F1‐172‐Xから成るハイブリッドの群より選択される(ハイブリッド)ペッパー植物から得ることができる、請求項1〜18のいずれか1項に記載のペッパー植物。
【請求項20】
前記種無し形質が、前記の寄託された種子から成長させた前記のハイブリッドペッパー植物から、i)該ハイブリッド種子から成長させた該ハイブリッド植物を自殖させる工程と、ii)種無しペッパー果実を成長させる植物を選別する工程と、iii)任意に、さらに選択された種無しペッパー植物を無性的に繁殖させる工程と、を含む方法によって得ることができる、請求項19に記載のペッパー植物。
【請求項21】
「種無し形質」を含む請求項1〜20のいずれか1項に記載のペッパー植物であって、ここで該形質が、育種、単一形質転換(single trait conversion)、及び形質転換から成る群より選択される方法によって前記の植物へ導入される、ペッパー植物。
【請求項22】
前記ペッパー植物中の「種無し」形質を制御する遺伝的決定因子と遺伝的に連結した遺伝マーカーによって識別することができ、アバディーン AB21 9YA、スコットランド、英国のNCIMBに、それぞれNCIMB41558、NCIMB41559、NCIMB41560、NCIMB41561、及びNCIMB41562の受託番号で2008年5月26日に寄託された種子から成長させた、トウガラシAR07‐F1‐56‐b;トウガラシAR07‐F1‐87‐b;トウガラシAR07‐F1‐166‐b;トウガラシAR07‐F1‐171‐X;及び、トウガラシAR07‐F1‐172‐X、と称するハイブリッドペッパー植物、又はこれらのF2子孫から得ることができる、請求項1〜21のいずれか1項に記載のペッパー植物。
【請求項23】
NCIMB41558、NCIMB41559、NCIMB41560、NCIMB41561、及びNCIMB41562で寄託されたハイブリッドペッパー植物を成長させるための種子。
【請求項24】
アバディーン AB21 9YA、スコットランド、英国のNCIMBに、それぞれNCIMB41558、NCIMB41559、NCIMB41560、NCIMB41561、及びNCIMB41562の受託番号で2008年5月26日に寄託された種子から成長させた、トウガラシAR07‐F1‐56‐b;トウガラシAR07‐F1‐87‐b;トウガラシAR07‐F1‐166‐b;トウガラシAR07‐F1‐171‐X;及び、トウガラシAR07‐F1‐172‐X、と称するハイブリッドであるペッパー植物。
【請求項25】
請求項1〜22及び請求項24のいずれか1項に記載の植物の種子。
【請求項26】
請求項1〜22及び請求項24のいずれか1項に記載の植物から得ることができる植物物質。
【請求項27】
請求項1〜22及び請求項24のいずれか1項に記載の植物の植物部分。
【請求項28】
請求項1〜22及び請求項24のいずれか1項に記載の植物の果実。
【請求項29】
加工された果実である、請求項28に記載の果実。
【請求項30】
種無しペッパー果実を(食品産物として)生産する方法であって、
i)請求項1〜22及び請求項24のいずれか1項に記載のペッパー植物を提供する工程;
ii)該ペッパー植物を増殖/繁殖させる工程;
iii)例えば、雄性稔性ペッパー植物、又は除雄を用いて該ペッパー植物の受粉を任意に防止する工程;
iv)該植物に種無しペッパー果実を成長させる工程;及び
v)該ペッパー果実を収穫する工程、
により特徴付けられる、方法。
【請求項31】
種無しペッパー植物を生産する方法であって、
i)雌性系としての請求項1〜21のいずれか1項に記載の種無しペッパー植物、及び雄性系としての雄性稔性(種有り)ペッパー植物を交雑させることによって作出されたF1ハイブリッドの種子を提供する工程;
ii)該種子を発芽させてそこから成熟稔性植物を成長させる工程;
iii)(ii)の下で成長させた該植物の自己受粉を誘発し、果実を成長させてそこから稔性の種子を収穫する工程;及び
iv)iii)の下で収穫した種子から植物を成長させ、種無し果実を成長する植物を選別する工程、
により特徴付けられる、方法。
【請求項32】
前記ハイブリッド種子が、アバディーン AB21 9YA、スコットランド、英国のNCIMBに、NCIMB41558、NCIMB41559、NCIMB41560、NCIMB41561、及びNCIMB41562の受託番号で2008年5月26日に寄託されたハイブリッド種子である、請求項31に記載の方法。工程iv)において、種無し果実を成長する植物の選別は、遺伝マーカーの使用によって達成される、請求項31又は32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記マーカーが、アバディーン AB21 9YA、スコットランド、英国のNCIMBに、それぞれNCIMB41558、NCIMB41559、NCIMB41560、NCIMB41561、及びNCIMB41562の受託番号で2008年5月26日に寄託された種子から成長させた、トウガラシAR07‐F1‐56‐b;トウガラシAR07‐F1‐87‐b;トウガラシAR07‐F1‐166‐b;トウガラシAR07‐F1‐171‐X;及び、トウガラシAR07‐F1‐172‐X、と称するハイブリッドペッパー植物、又はこれらのF2子孫の「種無し」形質を制御する遺伝的決定因子と遺伝的に連結している、請求項33に記載の方法。
【請求項34】
NCIMB41558、NCIMB41559、NCIMB41560、NCIMB41561、及びNCIMB41562の受託番号で寄託された種子の単為結実性ペッパー果実の生産のための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−528670(P2010−528670A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511659(P2010−511659)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057486
【国際公開番号】WO2008/152134
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(509340090)ゼライム ゲデラ リミティド (1)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】