説明

改良されたボールケージを備えたツインボールジョイント

ツインボールジョイントの形の等速ジョイントであって、ジョイント外側部分(12)が設けられており、該ジョイント外側部分は、第1の長手方向軸線L12と、軸方向で互いに向かい合って位置する接続側と開放側とを有していて、かつ外側ボールトラック(22)を有しており、ジョイント内側部分(13)が設けられており、該ジョイント内側部分は、第2の長手方向軸線L13と、ジョイント外側部分(12)の開放側に向いた軸のための接続手段を有していて、かつ内側ボールトラック(23)を有しており、外側ボールトラック(22)と内側ボールトラック(23)とが一緒に、それぞれボール(14,15)を収容するトラック対偶(22,23)を形成しており、周面にわたって隣接するトラック対偶(22,23)がそれぞれ、外側ボールトラックと内側ボールトラックの中心線を有しており、該中心線は前記両長手方向軸線が一致した状態で互いに平行で、長手方向軸線に関して対称的な各平面E,E′に位置しており、ボールケージ(16)が、ジョイント外側部分(12)とジョイント内側部分(13)との間に装着されており、周方向に分配されたケージ窓(18,19)を有しており、該ケージ窓は、互いに平行な平面に隣接して位置するトラック対偶によってそれぞれボール対(14,15)を収容しており、第2ボール対(14)のための第2ケージ窓(18)の周方向長さ(X2)は、第1ボール対(15)のための第1ケージ窓(19)の周方向長さ(X1)よりも短いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツインボールジョイントの形の等速ジョイントに関する。このようなジョイントは以下の特徴を有している。即ち、
ジョイント外側部分が設けられており、該ジョイント外側部分は、第1の長手方向軸線L12と、軸方向で互いに向かい合って位置する接続側と開放側とを有していて、かつ外側ボールトラックを有しており、
ジョイント内側部分が設けられており、該ジョイント内側部分は、第2の長手方向軸線L13と、ジョイント外側部分の開放側に向いた軸のための接続手段を有していて、かつ内側ボールトラックを有しており、
外側ボールトラックと内側ボールトラックとが一緒に、それぞれボールを収容するトラック対偶を形成しており、
周面にわたって隣接するトラック対偶がそれぞれ、外側ボールトラックと内側ボールトラックの中心線を有しており、該中心線は前記両長手方向軸線L12,L13が一致した状態で互いに平行で、長手方向軸線に関して対称的な各平面E,E′に位置しており、
ボールケージが、ジョイント外側部分とジョイント内側部分との間に装着されており、周方向に分配されたケージ窓を有しており、該ケージ窓は、互いに平行な平面に隣接して位置するトラック対偶によってそれぞれボール対を収容している。
【0002】
固定式ジョイントの組み付けの際には通常、最初にジョイント外側部分、ボールケージ、ジョイント内側部分を互いに嵌め込んで装着し、次いでジョイントをいわゆる過剰屈曲させながら、即ちジョイント内側部分とジョイント外側部分とを互いに、ジョイント内側部分とジョイント外側部分との間に半分の屈曲角度で案内されたケージのその都度1つのケージ窓が、ジョイント外側部分から出るような寸法で屈曲させながらボールを装着する。このような過剰屈曲された状態では、屈曲平面にはなく、屈曲平面に対して垂直に位置するボールケージの軸線を通る平面にない既に組み付けられたボールが、ケージ窓において周方向で摺動する。この場合、屈曲角度が大きいほど、対応するケージ窓の周方向長さは長くなければならない。ケージ窓を延長することにより、ケージ窓間のウエブの幅が減少する。このことはケージの強度を減じる結果となる。これは望ましくない。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許第4234488号明細書により、そのトラック対偶がラジアル平面に位置していて、ジョイント外側部分の開口に向かって同様に拡大する等速ジョイントのために、次のようなケージを設けることが提案されている。即ちこのケージは、1つの半径方向平面で向かい合って位置するケージ窓が、第1の短い周方向長さを有していて、その中心点がこの半径方向平面の外側に位置していて、これに対して垂直な平面に位置する、第2の長い周方向長さを有するケージ窓を備えている。
【0004】
本発明の根底を成す課題は、高い強度のケージを有するツインボールジョイントの形の等速ジョイントを提供することである。この課題を解決するために本発明の構成では、ボールケージが周方向で分配配置されたケージ窓を有しており、これらのケージ窓は、平行な平面E,E′において隣接して位置するトラック対偶によってそれぞれボール対を収容しており、第2ボール対のための第2ケージ窓の周方向長さX2が、第1ボール対のための第1ケージ窓の周方向長さX1よりも小さいようになっている。これにより、最初に第1ケージ窓に第1ボール対を次々に組み付け、次いで第2ケージ窓に第2ボール対を次々に組み付けることができる。この第2ボール対を第2ケージ窓に組み付けるためには、第2ボール対をこのように組み付ける間に第1ケージ窓において第1ボール対が動くために必要な第1ケージ窓の周方向長さよりも、第2ケージ窓の周方向長さは小さくて良い。これにより、また半分のボール数に合わせて窓数が半減されることにより、また隣接するトラック対偶が互いに平行な平面E,E′に方向付けられていることにより、ケージ窓の間のウエブは広くなり、ひいてはケージ強度が高まる。
【0005】
ジョイント外側部分は接続側で、接続ピンを備えたジョイント底面を有しているか、または第1の開口に向かい合って位置する別の第2の開口を備えたフランジ面を有していても良い。
【0006】
本発明の効果は、先行技術のジョイントではウエブ幅が特に減じられている、比較的多数のボール、即ち8個または10個のボールを備えたジョイントで特に発揮される。この場合、本発明は、4で割り切れる数のボールを備えたジョイントで有利に使用可能である。種々異なる数のボールを備えたジョイントのために第1トラック対偶と第2トラック対偶を配置するために、以下に図面につき詳しく説明する。
【0007】
本発明の有利な実施例を図面につき以下に詳しく説明する。
【0008】
図1には本発明によるジョイントの縦断面図が示されている。
【0009】
図2には、図1のジョイントのボールケージの横断面図が示されていて、
a)は本発明によるものであり、
b)は従来技術によるものである。
【0010】
図3には、種々異なる組み付け段階における本発明のジョイントが示されており、
a)は側方図、
b)はジョイント開口を軸方向から見た図、
c)はボールケージとジョイント内側部分を側方から見た図、
d)はボールケージとジョイント内側部分とを軸方向から見た図である。
【0011】
図1には本発明によるジョイント11が縦断面図で示されている。この図面には、底面20とジョイント開口21とを有したジョイント外側部分12と、内部に挿入すべきジャーナルのための内側開口28を有したジョイント内側部分13とが示されている。ジョイント外側部分12の底面20にはジャーナル27が取り付けられている。図示した断面は、後でさらに示すように、ジョイント外側部分12の長手方向軸線L12とジョイント内側部分13の長手方向軸線L13とに対して平行である。この断面図では、ジョイント外側部分12の外側ボールトラック22,22と、ジョイント内側部分13の内側ボールトラック23,23とが区別されている。これらはそれぞれトラック対偶22,23と22,23を形成していて、このトラック対偶内でボール14,14が転動する。トラック対偶は、各長手方向軸線L12,L13が重なった状態でボール中心点が位置しているジョイント中心平面EMにおいて、開口21から底面20へと拡大している。ここに図示したボールトラックとは異なり、ジョイント中心平面EMに関して鏡像対称的なボールトラックの構成も同様に考えられる。ボールはボールケージ16によって共通の一平面で保持される。この場合、この平面はジョイント中心平面EMと一致している。ボールはこの場合、ボールケージ16の窓から収容される。これらの窓のうちこの図では窓18,18が示されている。
【0012】
図2の両図について以下で共通に記載する。図a)には本発明のジョイントが、図b)には従来技術のジョイントが示されている。図示した横断面はそれぞれ図1のB−B線に沿った断面に相当する。
【0013】
この図でもジョイント11における外側ボールトラックを備えたジョイント外側部分12と、内側ボールトラックを備えたジョイント内側部分13とが示されている。両ジョイント構成部分の間には、ケージ窓を備えたボールケージ16が示されている。図面に記入した断面A−Aは同時に、第2ボール対偶のボール14,14′を収容するトラック対偶の中心線が延びている平面E1,E1′である。平面E1,E1′はそれぞれ、図平面に対して垂直に延びていて、即ち長手方向軸線L12,L13が一致した状態でこれらの長手方向軸線L12,L13に関して平行かつ対称的である。図b)に示した、全てのケージ窓18の周方向長さが互いに同じであり、ひいては個々のケージ窓18の間のウエブ17のウエブ幅A1も等しく、著しく減じられている従来技術のジョイントとは異なり、図a)に示した本発明のジョイントでは、周方向長さX1と第1のボール対偶14,14′を備えた第1ケージ窓18と、より小さい周方向長さX2と第2のボール対偶15,15′を備えた第2ケージ窓19とが示されている。後述するように、まず最初に、周方向長さX1を有した長い方のケージ窓19に第1のボール15が取り付けられ、次いで短い周方向長さX2を有した第2のケージ窓18に第2のボール14が取り付けられる。ケージ窓18の周方向長さが減じられていることにより、ウエブの各周方向長さは増大するので、ウエブ幅はA1>A2となる。この増大はそれぞれ、ここに示したウエブのそれぞれ片側で生じるので、ケージの強度は全体として均一に高まる。
【0014】
図3には、ジョイント組み付けの最後の段階の種々異なる図が示されている。この図では、ジョイント内側部分13とボールケージ16が、ジョイント外側部分12に対して屈曲されており、いわゆる過剰屈曲の状態が示されている。この状態では、ボール14をケージ窓18と、内側ボール溝23に挿入できるように、ケージ窓がジョイント外側部分12から出ている。ここでジョイント外側部分12から出ているケージ窓は、短い周方向長さX2を有したケージ窓18である。図c)に示したように、ジョイントが過剰屈曲する際には、長い方のケージ窓19に既に組み付けられた第1のボール15は当接部にまで摺動する。この場合、このケージ窓19の長さX1は、ボール14を短い方のボール窓18に挿入するために必要な過剰屈曲の寸法によって規定される。図b)に示したように、屈曲平面近くに位置しているケージ窓18と内側のボール溝23とにボール14を直接的に挿入するためには、ケージ窓18の僅かな長さX2しか必要ではない。ここに図示した最終組み付けステップの前には、向かい合って位置するボール14がケージ窓18に同様に挿入される。前提として、最初の2つの組み付けステップは過剰屈曲させながら、第1のケージ窓19に同様にボール15を挿入する。この場合、この時点でまだ取り付けられない第2のケージ窓18の周方向長さはこの組み付けステップのためには重要ではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるジョイントの縦断面図である。
【図2】図1のジョイントのボールケージの横断面図であって、a)は本発明によるものであり、b)は従来技術によるものである。
【図3】異なる組み付け段階における本発明のジョイントを示す図であり、a)は側方図、b)はジョイント開口を軸方向から見た図、c)はボールケージとジョイント内側部分を側方から見た図、d)はボールケージとジョイント内側部分とを軸方向から見た図である。
【符号の説明】
【0016】
11 ジョイント、 12 ジョイント外側部分、 13 ジョイント内側部分、 14 ボール、 16 ケージ、 17 ウエブ、 18 窓、 19 窓、 20 底面、 21 開口、 22 外側ボールトラック、 23 内側ボールトラック、 27 ジャーナル、 28 内側開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツインボールジョイントの形の等速ジョイントであって、
ジョイント外側部分(12)が設けられており、該ジョイント外側部分(12)は、第1の長手方向軸線(L12)と、軸方向で互いに向かい合って位置する接続側と開放側とを有していて、かつ外側ボールトラック(22)を有しており、
ジョイント内側部分(13)が設けられており、該ジョイント内側部分(13)は、第2の長手方向軸線(L13)と、ジョイント外側部分(12)の開放側に向いた軸のための接続手段を有していて、かつ内側ボールトラック(23)を有しており、
外側ボールトラック(22)と内側ボールトラック(23)とが一緒に、それぞれボール(14,15)を収容するトラック対偶(22,23)を形成しており、
周面にわたって隣接するトラック対偶(22,23,22′,23′)がそれぞれ、外側ボールトラックと内側ボールトラックの中心線を有しており、該中心線は前記両長手方向軸線(L12,L13)が一致した状態で互いに平行で、長手方向軸線に関して対称的な各平面(E,E′)に位置しており、
ボールケージ(16)が、ジョイント外側部分(12)とジョイント内側部分(13)との間に装着されており、周方向に分配されたケージ窓(18,19)を有しており、該ケージ窓は、互いに平行な平面(E,E′)に隣接して位置するトラック対偶によってそれぞれボール対(14,14′,15,15′)を収容しており、
第2ボール対(14,14′)のための第2ケージ窓(18)の周方向長さ(X2)は、第1ボール対(15,15′)のための第1ケージ窓(19)の周方向長さ(X1)よりも短いことを特徴とする等速ジョイント。
【請求項2】
第1ケージ窓(19)の周方向長さ(X1)が、第2ボール(14,14′)の組み付けのために必要な寸法に制限されている、請求項1記載のジョイント。
【請求項3】
ジョイントが、少なくとも8つのボール(14,15)である偶数のボールを有している、請求項1又は2記載のジョイント。
【請求項4】
最初に第1のボール対(15,15′)を第1ケージ窓(19)から、過剰屈曲されたジョイントに次々に装着し、次いで第2ボール対(14,14′)を第2ケージ窓(18)から、それぞれ過剰屈曲されたジョイントに次々に装着することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のジョイントを組み付けるための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−502945(P2007−502945A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523534(P2006−523534)
【出願日】平成16年6月12日(2004.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006360
【国際公開番号】WO2005/026567
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(504414433)ゲー カー エヌ ドライブライン ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (13)