説明

改良されたマッサージ装置および使用方法

本発明は、治療的および/または予防的マッサージ、特に、哺乳動物の瞼のマッサージのためのデバイスに関し、デバイスは、マッサージボビンと熱連結するヒータを収容する本体を有し、ボビンは、それから延在する複数のマッサージ素子を有する。使用時に、ボビンが瞼を加熱し、瞼にマッサージ力を睫毛ラインに垂直に与えるように回転する。この力は、哺乳類の瞼の閉塞した皮脂腺から物質を圧出するために使用することができる。そのため、本発明のデバイスを使用して、炎症などの哺乳類の瞼の疾患を治療するための方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療的および/または予防的マッサージのための改良された装置およびその装置の使用法に関する。特に、本発明は、哺乳動物の瞼の治療的および/または予防的マッサージのためのデバイスおよびそのデバイスを使用するための方法に関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
「眼瞼炎」という眼の疾患は、眼の赤み、炎症および/または痒みが特徴である瞼の炎症である。細菌感染により引き起こされることが多いが、酒さおよび頭皮のふけなどの皮膚疾患とも関連する。この症状には同時に起こりうる2つの異なる型がある。それは睫毛の根元における瞼の炎症が特徴である前部眼瞼炎、および瞼の修飾皮脂腺(modified sebaceous glands)の炎症である後部眼瞼炎である。
【0003】
修飾皮脂腺は、眼の涙液膜に寄与する油性化合物を分泌する。この分泌は以下を含む多様な機能を有する。
1)涙液の溢流を防止する
2)瞼が閉じたとき水密のシールを形成する
3)涙液による眼瞼縁皮膚の浸軟を防止する
4)涙液膜の蒸発を遅らせる
5)未修飾の皮脂腺からの分泌物による涙液膜の汚染を防止する
6)涙液の表面張力を低減することにより水性相を厚化する
7)光の屈折のために滑らかな表面を提供する
【0004】
修飾皮脂腺の炎症は、脂質含量の変化または腺の中央管の過角化(hyperkeratinisation)に関連する。このような変化は、加齢または食事やホルモンレベルの変化といった要因によって引き起こされうる。この二つの潜在的病変は、管からの流出を阻害する。腺が詰まると、腺は腫れ、瞼に無痛性のしこりを生じさせるか、またはこの腫れた腺が感染し、瞼に有痛性の膿胞性の赤い塊状物質を生じる。腺は最終的に繊維形成し、恒久的に破壊される。繊維形成した腺は、瞼の通常の生体構造を失うことが多く、その結果、涙液の不安定性が増大し、睫毛が誤った方向を向き、角膜に向かって伸びて、患者にとって大きな刺激を引き起こしうる。機能の喪失および腺の数の最終的な減少により、涙液膜の油性成分が減少する。これはドライアイ症候群の主な原因である。
【0005】
修飾皮脂腺の炎症の周知の治療法は、温湿布の塗布、それに続く瞼への手技を含む。温湿布は、腺内に溜まった修飾皮脂(modified sebum)を「溶かす」、すなわち、その粘性を実質的に減少させ、それに続くマッサージは、粘性が減少した修飾皮脂を腺から圧出(express)することに効果的でありうる。この方法に関連する明らかな欠点には、以下のものがある。
1)未滅菌の物が眼に触れることによる汚染および既に発症している炎症の悪化の可能性
2)損傷および不快感を引き起こす眼の過熱の可能性
3)この病気を治療するために十分な加熱を行わないことによる高い再発性および低コンプライアンス
4)マッサージ時間が不十分、または非効率なマッサージ作用の使用
【0006】
瞼における使用のために設計された従来技術のデバイスは、熱またはマッサージのいずれか、もしくは熱およびマッサージの組合せを瞼に適用するデバイスを含む。これらの限定されたステップは、閉塞した皮脂腺のみを効果的に対処する。しかしながら、睫毛からデブリを洗浄し取り除くための追加的な治療が必要となることが多い。さらに、前部眼瞼炎を後部眼瞼炎と同時に治療すると、後部眼瞼炎の再発を減少させることが知られている。
【0007】
睫毛のスクラビングの既知の方法は、脱脂綿または織布様の素材の使用である。患者は非薬剤の石鹸液の濃縮混合物を自ら作ることを要求されることが多い。
【0008】
温湿布の塗布、瞼のマッサージおよび睫毛の洗浄の複合的な療法は、患者コンプライアンスが低いことが多い。各機能を正しく実行するには時間がかかり、また十分な器用さも必要となる。眼瞼炎は、年配の患者によく発症するので、この技術的な難関により、患者コンプライアンス率がさらに低くなりうる。
【0009】
さらに、治療法が複数の機能からなることは、患者が、例えば、閉塞した皮脂腺といった病気の一要因だけを適切に処置する可能性を高める。病気の一要因だけを治療することは、再発率をかなり高め、それゆえ限られた数の眼の腺を長期的に喪失する可能性が高くなる。
【0010】
発明者らは、患者コンプライアンスの改善および病気の再発率を低減するために、眼瞼炎の複数の要因を同時に治療する必要性をこれまでに確認した。睫毛の根元の付随的なスクラビングを伴う瞼の加熱およびマッサージのためのデバイスが、特許出願番号WO2009/066077に開示されている。しかし、この特定の技術の周知のマッサージ装置は、その複雑性のため製造するのが高価であり、かつ本発明が改善しようとするいくつかの欠点を有する。
【0011】
従来技術のデバイスの欠点の一つは、加熱素子から瞼と接触する表面への非効率な熱伝達である。その結果、十分な熱を瞼に伝達するために装置を高温に加熱する必要がある。非効率な熱伝達はまた、要求された温度に達するまで使用前に数分を要することも意味し、これにより治療を行うために必要となる総時間が大きく増加する。さらに、この欠点は、マイクロチップコントローラおよびデバイスの準備が整ったことをエンドユーザに知らせるためのアラームシステムを必要とすることから、装置の製造費用を増大させる。
【0012】
さらに、従来技術のデバイスに電力供給するためには大量のエネルギが必要となる。これは、電池を極めて頻繁に取り替える必要があるか、または装置を使用時に電源に接続する必要があることのいずれかを意味する。これにより運転費用が高くなり、その結果潜在的に患者コンプライアンスが低くなるか、または電源コードを含むための費用が生じる。
【0013】
従来技術のデバイスは、円形軌道を描くマッサージノジュールを有し、それゆえマッサージ装置は、瞼の両半分を所望の方向で治療するために、1回の治療の間に時計回りの回転と反時計回りの回転とを交互に切り替える必要がある。これは、モータの方向を反転するためおよびマッサージノジュールの回転を交互に切り替えるための、手動または自動の切り替えのいずれかを必要とし、追加的な製造費用が生じる。
【0014】
本発明の目的は、従来技術のデバイスの欠点を克服するデバイスを提供することであり、特に、製造費用を削減し、患者にとって使い易くすることである。
【0015】
本発明の目的はまた、瞼の炎症をより効果的に治療し、再発率を低減する改良されたマッサージ作用を備えるデバイスを提供すること、または、少なくとも便利な代替品を世に提供することである。
【発明の概要】
【0016】
第一の態様では、本発明は、哺乳類の瞼の閉塞した腺から物質を溶かし、圧出するための装置であって、マッサージボビンと熱連結するヒータを収容する本体を有し、マッサージボビンは、マッサージボビンから延在する複数のマッサージ素子を有するため、使用時に、ボビンが瞼を加熱し、マッサージ素子が睫毛ラインに並行して瞼を横切って移動するようボビンが回転し、マッサージ素子が、腺から物質を圧出するために睫毛ラインに垂直にマッサージ力を与えるように形成され且つボビンに配置されることを特徴とする装置を提供する。
【0017】
本体は、本装置の構成要素を収容するのに適した任意の素材からなりうる。好ましい実施形態では、本体は、ゴムまたはプラスチックなどの断熱性の素材からなる。
【0018】
好ましい実施形態では、本体は、手のひらに収まるようなサイズのハンドルを備える。特に好ましい実施形態では、ハンドルは把持し易いようにグリップ部を有する。
【0019】
別の好ましい実施形態では、本体は、マッサージボビンの回転を駆動するためのモータを収容する。モータは、DCモータもしくはACモータまたは当技術分野で知られているその他のモータなどの、電流を機械エネルギに変換する任意の装置でありうる。特に好ましい実施形態では、電気モータは標準的なDCモータである。
【0020】
デバイスまたはデバイスが使用時の場合は配置のいずれかにつき、部品の構成に関して平行、垂直および水平という語が使用される場合、これらの語は、特定の目的を実行するのに十分に平行、十分に垂直、かつ十分に水平であると意味するよう解されるものとする。
【0021】
好ましい実施形態では、デバイスは、交流電流(AC)または直流電流(DC)を供給しうる電源も含む。本発明による装置は、1つ以上の電池によって電源供給されるか、または電源に接続されてもよい。電池によって電力供給される場合、電池は装置の本体に収容されることができ、使い捨てまたは充電式であってよい。充電式電池は、装置内部で充電されるか、または取出されて別途充電されてもよい。
【0022】
さらに別の好ましい実施形態では、デバイスは、設定された期間の後に電源をオフにするよう構成された時限スイッチを含む。
【0023】
ヒータは、マッサージボビンに熱を伝達することが可能な、電気抵抗素子または同様のデバイスなどの任意のデバイスでありうる。好ましい実施形態では、ヒータは電気抵抗ヒータである。
【0024】
好ましい実施形態では、ヒータは、本体内にマッサージボビンに近接して配置され、熱がボビンの外側表面に伝達される。特に好ましい実施形態では、熱は、金属などの熱伝導性の素材を介してヒータからマッサージボビンに伝達される。さらに別の実施形態では、ヒータは、マッサージボビンの内部に、かつ好ましくは、マッサージボビンの中央芯材を通って配置され、マッサージボビンを内部から加熱する。
【0025】
特に好ましい実施形態では、ヒータは、正の温度係数を有する電気抵抗ヒータである。これには、サーモスタットが必要ないため装置の費用を削減できるという追加的な利点がある。ヒータは、所定の温度に設定することもでき、それゆえ、デバイスおよび眼の偶発的な過熱を防止するのでより安全である。使用中にデバイスの設定を変更できるようにしてもよい。しかし、上述の加熱機構は、精巧な調整および複雑な制御システムの必要を解消する。これは、治療に立ち会う眼科の専門家といった第三者を要しないということを意味する。
【0026】
マッサージボビンは、瞼にマッサージ力を与えることが可能な任意の素材からなりうる。ある実施形態では、マッサージボビンは、瞼に対して押圧された時に瞼の輪郭に一致するかまたはこれに近似するような形に変形可能な素材からなる。特に好ましい実施形態では、マッサージボビンは、ゴム、合成ゴム、シリコーンゴムまたは同様の素材からなる。
【0027】
好ましい実施形態では、マッサージボビンは、熱吸収性素材からなる。より好ましくは、熱吸収性素材は、熱伝導性ゴムである。
【0028】
好ましい実施形態では、マッサージボビンは、実質的に円筒の形状であるか、または実質的に凹状の円筒形、つまり、胴くびれまたは減少した断面を有する円筒である。好ましい実施形態では、マッサージボビンは、高さ約3cm、直径約2cmの寸法である。好ましい凹状円筒形のマッサージボビンの垂直エッジは、瞼の輪郭に一致するかまたはこれに近似するよう凹状でありうる。
【0029】
マッサージ素子は、使用時に睫毛ラインに垂直にマッサージ力を与えるように配置された隆起した領域をマッサージボビンの表面上に含みうる。好ましい実施形態では、マッサージ素子は、マッサージボビンの外面の周りに延在する概してらせん状構造の複数の連続的な細いリッジを備える。別の好ましい実施形態では、マッサージ素子は、マッサージボビンの外面の周りに延在する概してらせん状構造の非連続的な突起を備える。特に好ましい実施形態では、マッサージ素子は、上下の瞼のそれぞれをマッサージするよう適合された上部リッジおよび下部リッジを備え、リッジは、マッサージボビンの下三分の一および中央三分の一の合うところで収束するかまたは重なる。
【0030】
使用時に、マッサージボビンは、一方向に回転することができるか、他方向に回転することができるか、または単一の治療中にどちらの方向への回転も交互に切り替えることができる。
【0031】
好ましい実施形態では、マッサージボビンは、単一の治療において単一の方向に回転する。マッサージボビンが回転すると、マッサージ素子は、睫毛ラインに垂直にマッサージ力を発生させながら瞼を横切って移動する。睫毛ラインから最も遠位の腺の端から睫毛ラインにおける腺の開口部までの圧力の伝達は、腺からの物質の圧出を促進する。
【0032】
マッサージボビンは、任意の速度で回転することができるが、5秒から15秒ごとに約1回の回転が好ましい。特に好ましい実施形態では、マッサージボビンは、10秒ごとに約1回転で回転する。単純化された設計のため、ボビンは、電池が完全に充電されているときに最初は好ましい範囲内でより早く回転し、電池が放電するに従って範囲の下限に向かう。やや高価だが特に好ましい実施形態では、電池の充電状況にかかわらず同じ速度でボビンが回転することを確実にする電子機器を備えうる。
【0033】
さらに別の好ましい実施形態では、マッサージボビンは、シリコーン潤滑剤などの液体でコーティングされている。
【0034】
ある実施形態では、マッサージボビンは、複数のスクラブ素子を含み、素子は使用時に、睫毛の根元からデブリを移動させる。好ましい実施形態では、スクラブ素子は、複数の指状突起を備える。特に好ましい実施形態では、突起は、マッサージボビンの下三分の一および中央三分の一の間の合うところ周りに配置され、ボビンの円周周りに同心円状に拡がる。使用時に、この配置にある指状突起は、睫毛に付着したデブリを取り除くために睫毛に係合する。
【0035】
さらに別の好ましい実施形態では、本体および/またはボビンは、マッサージボビンが本発明の装置の本体から取り外され、各治療セッションの後に廃棄されることができるように適合されている。
【0036】
第2の態様では、本発明は、瞼の腺の炎症の治療を必要とする患者における瞼の腺の炎症を治療する方法であって、本発明による装置を使用することを含む方法を提供する。
【0037】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、1日に2回、2週間にわたる瞼の治療によって実行される。特に好ましくは、方法はその後永続的な毎日の維持療法を含む。
【0038】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、1日に片目につき約1分から5分間実行される。より好ましくは、本発明の方法は、1日に片目につき約3分間実行される
【0039】
本発明の方法のある好ましい実施形態では、他方の眼が治療される前にボビンは取り外され、洗浄されるか、または廃棄されうる。この追加的なステップにより、眼への相互汚染が少なくとも制限されることが確実になる。
【0040】
第3の態様では、本発明は、本発明の装置における使用に適合したマッサージボビンを提供する。好ましい実施形態では、本発明は、本発明の装置における使用のための1つ以上のボビン、および選択的に、ボビンに塗布されているか、または別個の容器に供給される潤滑液を含む、好ましくは密封のパッケージにともに梱包された、キットを提供する。好ましくは、密封のパッケージ内のすべては滅菌されている。滅菌ステップは、パッケージが密封される前または後に実行することができ、放射線処理、化学処理、熱処理または当業者に知られたその他の滅菌処理を含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
これより本発明を、添付の図面に関して例示的に説明する。
【0042】
【図1】図1は、本発明の好ましい態様によるデバイスの側面図である。
【図2】図2は、本発明の好ましい態様によるデバイスの断面図である。
【図3】図3は、本発明の好ましい実施形態の装置における使用のためのマッサージボビンの好ましい実施形態を示す図である。
【図4】図4は、本発明の好ましい実施形態の装置における使用のためのマッサージボビンの好ましい実施形態の断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、本発明の好ましい態様による装置を示す。装置は、グリップ部(3)付きの人間工学的に設計されたハンドル(2)と、装置をオン/オフにするためのハンドルに組み込まれたスイッチ(4)とを有する本体(1)を備える。いくつかの実施形態(図示せず)では、スイッチは、所定の時間、例えば、3分または5分の後に自動的にオフになりうる。いくつかの実施形態では、例えば電池寿命を表示するための他の表示機器が存在しうる。
【0044】
図2は、図1に示すものと同様の好ましい実施形態による装置を示し、デバイスの断面図が示されている。ハンドル部は、直流電流(DC)モータの形式の電気モータ(6)に接続される非充電式または充電式の電池(5)を内蔵する。モータはマッサージボビン(7)に、一連のギア(8)を介して接続され、使用時にマッサージボビンが回転するので、マッサージボビンの表面における点が、水平面から見ると睫毛ラインに平行に移動する。図示されるデバイスのボビンは、使用時に、睫毛ライン、および瞳を横切る眼の水平軸のどちらにも垂直な軸を中心として回転する。
【0045】
正の温度係数抵抗性ヒータの形式であるヒータ(9)は、マッサージボビンと熱連結して装置の本体内部にある。選択的な熱伝導インサート(10)は、正の温度係数ヒータとマッサージボビンとの間に配置され、使用時にヒータからマッサージボビン、そして患者の瞼への熱伝導を生じさせる。この好ましい実施形態は、ヒータからマッサージボビンへの効率の良い熱伝導を促進し、それによりボビンがデバイスのスイッチがオンになる数秒間で、要求された温度に到達することを確実にするので特に有利である。この構成のエネルギ効率はまた、使用に必要な温度までマッサージボビンを加熱するために、最高温度がおよそ50〜60℃に達しさえすればよいことも意味している。熱は、必ずしもボビンを介して伝導する必要はないが、加熱された部分が回転し、使用時に連続的な態様で眼に接触する。
【0046】
図2に示す特定の実施形態では、本発明によるデバイスの内部構成要素を囲む本体のケーシングが、直径方向に対向して位置する2つのくぼみ(11)を有し、くぼみに対応するように配置された突起を有する使い捨て式のマッサージボビンが、使用のために嵌合し、使用後に取り外されることができる。図示される好ましい実施形態では、本体のケーシングは、旋回保持クリップ(12)を有し、示されている第1の位置ではボビンを保持し、第2の位置に移動して使い捨て式のマッサージボビンの開放を促進する。
【0047】
患者が密封された滅菌されたマッサージボビンを個別に、または潤滑剤付き、または無しのセットで購入し、それを本発明のデバイスに嵌合し、使用後に廃棄することが想定されている。廃棄されたボビンは、更なる使用のために回収され滅菌され、梱包され再販される。これにより、眼の相互汚染および患者間の相互汚染が防止される。
【0048】
図3は、眼の自然な輪郭に一致するための凹状垂直エッジを有する実質的に円筒の形状を有する本発明の好ましい実施形態によるマッサージボビンを示す。この好ましい実施形態による寸法は、高さ約30mmおよび直径が最も広い場所で約20mmである。図示される形式のマッサージボビンは、中央フレーム(13)、内部コア(14)および外部表層(15)の3層からなる。中央フレームは、堅固な構造コアをマッサージボビンに提供することが可能な任意の素材からなりうる。本発明の好ましい実施形態では、ギアコグが、ボビンの中央フレームと接触することでDCモータをマッサージボビンに連結する。内部コアは、中央フレームにぴったり合うような好適に柔軟な任意の素材からなりうる。内部コアは、瞼への熱伝導および効果的なマッサージ作用を促進するために、使用時にマッサージボビンが眼と最大限に接触することを達成するのに必要な変形性を提供する。外部表層は、瞼に所望のマッサージ力を与えるのに十分に堅固な任意の素材からなりうる。外部表層は、例えば、潤滑剤または例えば瞼に塗布されると症状の軽減を支援する抗炎症薬、鎮痛剤、抗感染薬およびその他の薬剤活性化合物を含有する薬剤調剤などの液体でコーティングされてもよい。この液体は、マッサージボビンによる熱の吸収を促進し、それにより瞼への熱伝達を向上させることもできる。
【0049】
外部表層は、使用時に、腺から物質を圧出するために睫毛ラインに垂直にマッサージ力を与えるよう形成され且つボビンに配置された複数のマッサージ素子(16)を備える。
【0050】
図3に示す好ましい実施形態では、マッサージ素子(16)は、マッサージボビンの外面の周りに横向きに延在する連続的な細いリッジを備え、マッサージ素子は、概してらせん状の構成をとる。図3は、マッサージボビンの下三分の一および中央三分の一の合うところで収束するように配置された1つの上部リッジと1つの下部リッジを有するマッサージ素子を示す。別の実施形態(図示せず)では、上部および下部マッサージ素子が、マッサージボビンの下三分の一および中央三分の一の合うところで重なりうる。その他のマッサージボビンの設計が、当業者には想到でき、それらは本発明の範囲内にある。
【0051】
図3に示す実施形態は、マッサージボビンが回転すると、マッサージ素子によって瞼に与えられた圧力が睫毛ラインから最も遠位の腺の端から睫毛ラインにおける腺の開口まで伝達されるため、特に有利である。この睫毛ラインに垂直なマッサージ力は、閉塞した腺内に溜まった修飾脂質が腺の開口へ向かって押されることを確実にし、それにより腺から物質を圧出することを促進する。もちろん、当業者は、マッサージ素子の形状および配置に関する他の構成も本発明の利点を達成することが可能であることをすぐに認識するだろう。そのような構成を本発明の範囲に含むよう意図する。
【0052】
図3の好ましい実施形態は、スクラブ素子(17)が取付けられたマッサージボビンを示す。スクラブ素子は、マッサージボビンの下三分の一および中央三分の一の合うところ周りに配置された複数の変形可能な指状突起を備える。使用時に、スクラブ素子は、睫毛の根元に接触し、移動して蓄積したデブリを取り除く。スクラブ素子は、上瞼および下瞼の睫の根元に接触しうる。
【0053】
図4は、図3に示す本発明の好ましい実施形態による下三分の一および中央三分の一の合うところでのマッサージボビンの拡大図を示す。図示するとおり、スクラブ素子は、「指」(18)の形式であり、実質的に円形の断面を有し、使用時に睫毛の根元に係合するように延在するが、角膜の損傷の危険があるため瞼に突き刺さらないように延在する。サイズは、およそ数ミリメートルであり、好ましくはおよそ長さ2mmから4mmであり、直径およそ1mmから1.5mmである。もちろん、本発明の利点を達成する他の構成も本発明の範囲に含むよう意図する。
【0054】
本発明の方法は、本発明による装置の使用を含む。装置は、例えば毎日など定期的に、または例えば症状が現れ始めたときなど比較的に不定期に使用することができる。
【0055】
ある特定の方法では、装置は、最初の症状が現れた後、1日2回2週間にわたり使用され、その後は1日1回使用される。各治療の時間は、片目につき約3分間継続する。
【0056】
毎日の治療が、腺が閉塞されていない状態を確実にし、加齢によって引き起こされる過角化による損傷の早期発症を防止し、かつ患者のドライアイの発症を防止する、かまたは少なくとも発症を遅らせる。
【0057】
治療方法は、治療アプローチが、2週間継続する急性期および無期限に継続する維持期の2つのフェーズからなることを考慮に入れる。急性期においては、温湿布および腺の圧出を1日に2回行う必要がある。瞼のスクラブは、1日に何度も行うことができる。
【0058】
本明細書に記載される本発明の装置および方法の好ましい実施形態は、既知のデバイスおよび方法に対する以下のような多数の利点を示しうる。
・2つの炎症疾患を一度に治療することができ、使い易さのため患者コンプライアンスが高くなる
・瞼の過熱が発生しにくい
・腺の内容物を圧出するための適切なマッサージ方法を適用することによって、瞼または眼への物理的損傷が発生しにくい
・適切な組織に熱およびマッサージが適用されることを確実にし、眼の周りの顔の皮膚を不要に加熱することを防ぐ
・瞼および睫毛の根元をより効果的に洗浄する
・より速く症状を軽減する
【0059】
本明細書に記載するデバイスは、眼の炎症疾患を治療するために必要な複数の機能を同時に実行することによって、必要な治療計画の複雑さを低減する単一ユニットである。従来技術のデバイスとは対照的に、本発明の装置は、効果的なマッサージ作用と大幅に単純化した全体の設計とを組み合わせる。設計を単純化することにより、デバイスの製造費用が顕著に削減される。さらに、単純化したデバイスは、寿命が長くなる傾向にあり、その必要があればより容易に修理ができる。
【0060】
単純化した設計は、患者がデバイスを使用する際の容易さを向上させる。特に、本デバイスは、患者の自宅で快適に使用することができ、眼科の専門家といった医療の専門家の監督の下で使用する必要がない。これらの利点は、より良い患者コンプライアンスおよび症状の治療のより良い成功をもたらす。この改良されたマッサージ作用は、症状のより早い軽減にも寄与し、再発の可能性を低減する。長期的には、身体の自然な腺の生存および機能を改善し、この疾患の慢性型に関連する合併症から眼を保護する。さらに、使い捨て式のマッサージボビンは、汚染のリスクを低減し、これによって眼への更なる損傷が持続する可能性を低減する。
【0061】
本発明の最も好ましい実施形態では、ボビンの上部から三分の二の辺りのボビンの周囲の線に位置するスクラブ素子と、その線で収束するマッサージ素子とを有する凹状マッサージボビンは使用時に、特に効果的なマッサージおよびスクラブ作用を絶対最小な工学的複雑性で提供する。特に好ましいデバイスの使用は、常に睫毛ラインに向かいそれゆえ常に腺をその開口に向かって圧出するマッサージ作用を提供し、一方でマッサージ指状突起は、睫毛から排出物を掃き出し、圧出された物質を取り除くのにも役に立つ。
【0062】
本発明は特定の好ましい実施形態に関して記述されたが、以下の特許請求の範囲を制限するもとのは意図しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の瞼の閉塞した腺から物質を溶かし、圧出するための装置であって、マッサージボビンと熱連結するヒータを収容する本体を有し、前記マッサージボビンは、前記マッサージボビンから延在する複数のマッサージ素子を有し、使用時に、前記ボビンが瞼を加熱し、前記マッサージ素子が睫毛ラインに並行して瞼を横切って移動するよう前記ボビンが回転するよう適合され、前記マッサージ素子が、腺から物質を圧出するために睫毛ラインに垂直にマッサージ力を与えるように形成され且つ前記ボビンに配置されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記マッサージボビンは、実質的に円筒の形状であるか、または実質的に凹状の円筒形である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記マッサージボビンは、高さ約3cm、直径約2cmの寸法である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記凹状円筒形マッサージボビンは、瞼の輪郭に一致するか、またはこれに近似するよう凹状である、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記マッサージ素子は、前記マッサージボビンの周りに延在する概してらせん状構造の複数の連続的な細いリッジを備える、請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記マッサージ素子は、上部リッジおよび下部リッジを備え、該リッジは、前記マッサージボビンの下三分の一および中央三分の一の合うところで収束するかまたは重なる、請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記マッサージボビンは、複数のスクラブ素子を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記スクラブ素子は、複数の指状突起の形式である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記スクラブ素子は、前記マッサージボビンの下三分の一および中央三分の一の合うところに実質的に配置され、前記ボビン周りに同心円状に広がる、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
前記マッサージボビンは、熱吸収性素材からなる、請求項1〜9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記マッサージボビンは、前記本体から取り外すことができ、使い捨て式である、請求項1〜10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
瞼の炎症の治療を必要とする患者において瞼の炎症を治療する方法であって、請求項1〜11のいずれかに記載の前記装置の使用を含む、方法。
【請求項13】
前記装置は、最初の2週間にわたり1日2回使用され、その後、1日1回の治療が続く、請求項13に記載の方法。
【請求項14】
前記炎症は、後部および前部眼瞼炎による、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載の前記装置での使用に適合されたマッサージボビン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−530580(P2012−530580A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516844(P2012−516844)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001218
【国際公開番号】WO2010/149959
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511311875)イノベイティブ トリートメント ソリューションズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】