説明

改良された三次元プラスチックバッグ及びその製造

本発明は、少なくとも3つの顎部を有する星状プラスチック部材からなる、プラスチックフィルム製バッグの補強用インサートに関し、このインサートは、三次元バッグで少なくとも3枚のプラスチックフィルムが交わる接合部に配置されて、各顎部が2枚のフィルム間の方向に延びるように構成されている。また、本発明は、かかるインサートを組み込んだ三次元バッグ、及びかかるバッグの製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックバッグの補強用インサート、改良三次元プラスチックバッグ及びその製造方法に関する。改良点は、プラスチックバッグの取扱い又は包装に起因する疲労のリスクが低減したプラスチックインサートにある。このプラスチックバッグはあらゆる用途に使用できるが、好ましい用途はプラスチックバッグを使い捨て容器として使用するバイオプロセス産業又は病院である。
【背景技術】
【0002】
バイオプロセス産業では、伝統的に、発酵及び細胞培養のための生産プロセスにステンレス鋼製のシステム及び配管を用いている。これらの機器は、蒸気消毒して再利用するように設計されている。しかし、洗浄及び消毒は費用のかかる労働集約的な作業である。また、これらの伝統的なシステムに必要な配管及び設備を据え付けるコストは法外であることが多い。さらに、これらのシステムは通例特定のプロセス用に設計され、新たな用途のために変更するのは容易でない。こうした制約のため、この数十年間で、通常のステンレス鋼タンクに代えて、プラスチック製の単回使用の使い捨てバッグ及びチューブを使用するという新たなアプローチが採用されるに至っている。
【0003】
特に、従来ステンレス鋼で作られてきたバイオリアクターは、多くの用途で、使い捨てのバッグで代用されるようになっており、使い捨てバッグは細胞培養に必要な通気及び混合を与えるために揺動又は撹拌される。これらの単回使用のバッグは通例無菌であり、高価で時間のかかる洗浄及び消毒のステップが不要になる。これらのバッグは作業中無菌環境を維持することにより汚染のリスクを最小限にするように設計されている。
【0004】
バイオプロセス産業では製剤処方、貯蔵、移送、プロセシング及び輸送のため、無菌流体含有バッグが使用されている。これらの作業に際しては無菌状態を維持しなければならず、汚染を防ぐためにバッグは通常シールされる。広く用いられているバッグは「ピロー型」であり、その主な理由は、2枚の可撓性プラスチックシートを継ぎ合わせることによって低コストで製造できるからである。従って、最も常用されているバッグは二次元である。
【0005】
多くの用途では、バッグに収容される成分は使用前に混合しなければならない。例えば、ある製品は乾燥粉末を流体中に混合することによって製剤化される。他の状況では、バッグに収容される製品は輸送又は貯蔵の間は分離されていて、使用前に混合する必要がある。混合の際は、強度に関して追加の要件がバッグに課される。
【0006】
従来の三次元プラスチックバッグはその角部で3枚のフィルムが交わり、通常はヒートシールによって接合される。三次元バッグの角部は、不適切なシール法及びヒートシール領域の疲労という2つの理由のため、漏れの危険性がある。その根本的な原因は、3枚のフィルムが一緒にシールされた点での材料の不足である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4747703号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、取扱い及び包装中の疲労(及び漏れ)に耐性があり、製造の容易な改良三次元プラスチックバッグに対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、取扱い又は包装に起因する疲労のリスクを軽減するためプラスチックバッグのフィルム間のシール領域を補強することのできるプラスチック部材又はインサートを使用する。
【0010】
第1の態様では、本発明は、少なくとも3つの顎部を有する星状プラスチック部材を含む、プラスチックフィルム製バッグの補強用インサートであって、当該インサートが、少なくとも3枚のプラスチックフィルムが交わる三次元バッグの接合部に配置されて、各顎部が2枚のフィルム間の方向に延びるように構成されているインサートに関する。インサートは、例えば、接合部でヒートシール又は接着することができる。
【0011】
顎部間の半径は、好ましくは、フィルムの最小許容曲げ半径より小さくない。インサートは一次元、二次元又は三次元のいずれでもよい。
【0012】
一実施形態では、インサートは3つの顎部を含む。この実施形態では、1個のインサートを、プラスチックバッグのフィルムの三方接合部の各々に使用する。従って、この実施形態では、このプラスチック部材は3つの顎部をもつ星のようにみえる。この部材は、少なくとも3枚のフィルムが交わる接合部を補強し、その顎部に沿って各フィルムにヒートシール又は接着される。
【0013】
別の実施形態では、インサートは4つの顎部を含む。この実施形態では、1つの同じインサートがプラスチックバッグのフィルムの四方接合部に使用される。この実施形態は、3つの顎部のインサートが2つ合体したものとみることもできる。この実施形態は、所望のバッグの大きさに適合できるように可変中心部を有する。すなわち、インサートは、様々なバッグのデザインに適合できるように長さを変えることのできる中心部を含んでいてもよい。任意には、インサートの中心部はポートを備える。
【0014】
第2の態様では、本発明は、少なくとも3枚のプラスチックフィルムが接合した接合部の各々に補強用インサートを含むプラスチックフィルム製三次元バッグであって、上記補強用インサートの各々が、少なくとも3つの顎部を有する星状プラスチック部材を含んでいて、上記インサートが、三次元バッグで少なくとも3枚のプラスチックフィルムが交わる接合部に挿入されシールされて、各顎部が2枚のフィルム間の方向に延びるように構成されている、バッグを提供する。補強用インサートは、一緒にヒートシールする前のプラスチックフィルムの一部であってもよいし、或いはこれらの部材を既製プラスチックバッグに追加してもよい。
【0015】
このバッグは、フィルムが互いに適合性でない(直接シールできない)場合にフィルム間に接着材を含んでいてもよい。
【0016】
第3の態様では、本発明は、プラスチックフィルム製三次元バッグを製造する方法であって、プラスチックフィルムをその縁部に沿ってシールして三次元バッグを形成し、少なくとも3枚のプラスチックフィルムが交わる内部フィルム接合部を、少なくとも3つの顎部を有する星状のプラスチックインサートで、各顎部が2枚のフィルム間の方向に延びるように補強することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1Aは、本発明に係る3つの顎部を有するプラスチックインサートの概略断面図である。
【図1B】図1Bは、本発明に係る4つの顎部を有するプラスチックインサートの概略断面図である。
【図2A】図2Aは、図1Aのプラスチックインサートと共に使用するのに適した4枚のフィルムのフィルム接合部の概略図である。
【図2B】図2Bは、図1Bのプラスチックインサートと共に使用するのに適した4枚のフィルムのフィルム接合部の概略図である。
【図3A】図3Aは、本発明の2つのプラスチックインサートを備えるプラスチックバッグのフィルム縁部の詳細図である。
【図3B】図3Bは、図3Aに細部を示した三次元プラスチックバッグの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
三次元バッグの角部は、不適切なシール法及びヒートシール領域の疲労という2つの理由のため漏れの危険性がある。その根本的原因は、3枚のフィルムが一緒にシールされた部分での材料及び剛性の不足であり、そのためフィルムの最小許容曲げ半径より小さい半径で曲がる。
【0019】
図1Aを参照すると、本発明は、顎先端3を有する3つの顎部2と中心体4とを備えるプラスチックインサート1を提供する。これらの顎先端はプラスチックインサートの残りの部分と同一の材料であってもよいし、同一の材料でなくてもよい。
【0020】
本発明では、プラスチックバッグの取扱い又は包装に起因する疲労のリスクを軽減するためにフィルム間の接合部を補強することのできるプラスチック部材又はインサート(図1A〜1B)を使用する。プラスチック部材/インサートは3つの顎部を有する星状の外観を有する(図1A)。この部材は、3枚のフィルムが交わる接合部を埋めて、その顎部に沿ってフィルムにヒートシールされる(図2A)。
【0021】
プラスチックインサートの重大な寸法は3つの顎部間の半径である。目的が曲げによる疲労のリスクの低減であるので、その半径はフィルムの最小許容曲げ半径より小さくてはいけない。図(図1A〜1B)に示す例の場合、最小許容曲げ半径は1/32インチ(0.8mm)である。最小曲げ半径はフィルムの材料に特有である。最小曲げ半径を決定するための判断基準はフィルムのしわ又はねじれを全く生じさせないことである。この例の場合、使用したフィルムはSolmed Infuflex 9101である。このフィルムは主に3層、つまり外側にPE(ポリエチレン)と、中央にEVOH(エチレンビニルアルコール)を有している。これらの層を結合させるため接着層が用いられる。他のフィルムでは、最小曲げ半径は異なる可能性がある。
【0022】
プラスチックインサートは、4つの顎部を有する単一部材として設計することもでき(図1B)、4枚のフィルムが交わる領域(図2B)に設けることができる。この場合、中心体4は長さが可変のものでもよい。中心体又は橋かけ顎部はインサートの残りの部分と同一の材料であっても、異なる材料であってもよい。中心体4にポート(図示せず)を設けてもよい。こうした図1Bに示す設計では、4枚のフィルムを互いにシールするのに1回のヒートシール工程しか必要としない。
【0023】
別の実施形態では、プラスチックインサートに機能を追加してもよい。例えば、成型部材は、バッグをドラム又はタンク内の位置に動かすのに用いることができるハンドルを含んでいてもよい。別の可能性として、部材の中心を貫通する1以上のポートを追加して、薄いプラスチック翼をもつ舟形取付具(boat fitment)に幾分類似したものとすれば、3枚のフィルムのシールプロセスに役立てるという上述の機能を果たすことができる。
【0024】
図3A〜3Bは、本発明のプラスチックインサートを配置した様子を示す。図3Aは、3つの顎部をもつ2つのインサートの拡大図であり、図3Bは、これらのインサートをプラスチックバッグに配置した様子を示す。3つの顎部をもつ2つのインサートは、中心部が延びた4つの顎部をもつ単一インサートで置き換えることができる。
【0025】
本発明の実施形態では、インサートはプラスチックフィルムと同じ材料で作ることができる。他の実施形態では、インサートは、ラミネートフィルムのシール面の接着材と同じ材料からなるものであってもよい。最良のシール効果は、同一の材料同士を溶融したときに得られる。プラスチックの例は、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニルコポリマーなど)、PVC、パーフルオロポリマー(例えば FEP、ECTFEなど)、熱可塑性エラストマー並びにこれらのポリマーが表面層に存在するラミネートである。
【0026】
なお、いずれかの実施形態に関して説明した特徴については、単独で用いてもよいし、他の特徴と組合せて用いてもよく、他の実施形態の1以上の特徴と組合せて用いてもよく、或いは他の実施形態と組合せて用いてもよい。さらに、上記で記載していない均等物及び修正を、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的範囲から逸脱せずに、使用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの顎部を有する星状プラスチック部材を含む、プラスチックフィルム製バッグの補強用インサートであって、当該インサートが、三次元バッグで少なくとも3枚のプラスチックフィルムが交わる接合部に配置されて、各顎部が2枚のフィルム間の方向に延びるように構成されている、インサート。
【請求項2】
顎部間の半径がフィルムの最小許容曲げ半径より小さくない、請求項1記載のインサート。
【請求項3】
当該インサートが3つの顎部を含む、請求項1又は請求項2記載のインサート。
【請求項4】
当該インサートが4つの顎部を含む、請求項1又は請求項2記載のインサート。
【請求項5】
当該インサートの中心部の長さが可変である、請求項4記載のインサート。
【請求項6】
前記中心部がポートを備える、請求項4又は請求項5記載のインサート。
【請求項7】
当該インサートが前記接合部でヒートシール又は接着されている、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のインサート。
【請求項8】
少なくとも3枚のプラスチックフィルムが接合した接合部の各々に補強用インサートを含むプラスチックフィルム製三次元バッグであって、上記補強用インサートの各々が、少なくとも3つの顎部を有する星状プラスチック部材を含んでいて、上記インサートが、三次元バッグで少なくとも3枚のプラスチックフィルムが交わる接合部に挿入されシールされて、各顎部が2枚のフィルム間の方向に延びるように構成されている、バッグ。
【請求項9】
前記フィルムが互いに適合性でない(直接シールできない)場合にフィルム間に接着材を含む、請求項8記載のバッグ。
【請求項10】
プラスチックフィルム製三次元バッグを製造する方法であって、少なくとも3枚のプラスチックフィルムが交わるフィルム接合部を、少なくとも3つの顎部を有する星状のプラスチックインサートで、各顎部が2枚のフィルム間の方向に延びるように補強し、その縁部に沿ってプラスチックフィルムを継ぎ合わせて三次元バッグを形成することを含む方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate


【公表番号】特表2013−513530(P2013−513530A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543053(P2012−543053)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051363
【国際公開番号】WO2011/075049
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)
【Fターム(参考)】