説明

改良された抗CD19抗体

本発明は、ヒトB細胞マーカーと結合するヒト化、キメラおよびヒト抗CD19抗体、抗CD19抗体融合タンパク質ならびにそれらのフラグメントを提供する。このような抗体、融合タンパク質およびそれらのフラグメントは、B細胞悪性腫瘍および自己免疫疾患を含めた様々なB細胞障害の治療および診断に有用である。より具体的な実施形態では、ヒト化抗CD19抗体は、タンパク質の安定性、抗体結合および/または発現レベルを向上させるように設計された、フレームワーク領域のアミノ酸置換を1つまたは複数含み得る。特に好適な実施形態では、置換はhA19VH配列におけるSer91Phe置換を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本願は、EFS−Webを介して提出されその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、配列表を含む。2009年10月21日に作成された上記ASCIIコピーは、IMM167WO3.txtという名称で、24,166バイトのサイズである。
【0002】
関連出願
本願は、2003年7月31日に出願された米国特許仮出願第60/491,282号に対する優先権を主張する、2004年8月22日に出願された米国特許出願第10/903,858号(現在、米国特許第7,109,304号として発行)の分割出願であった、2006年6月1日に出願された米国特許出願第11/445,410号(現在、米国特許第7,462,352号として発行)の一部継続出願である、2008年11月7日に出願された米国特許出願第12/266,999号に対する優先権を主張するものであり、上記各明細書はその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、裸のまたは少なくとも1つの治療薬および/もしくは診断薬とコンジュゲートされた、抗CD19抗体、特にヒト化、キメラおよびヒト抗CD19抗体、特にモノクローナル抗体(MAb)およびそのフラグメントならびにそれらの使用法に関する。具体的には、抗CD19抗体を、例えば悪性腫瘍、炎症性の疾患もしくは障害または自己免疫疾患のようなB細胞疾患の治療に使用することができる。より具体的な実施形態では、抗CD19抗体は、抗体の物理的および/または生理的特性を最適化するために設計された、1つまたは複数の置換アミノ酸を含み得る。
【背景技術】
【0004】
脊椎動物の免疫系は、外来抗原を正確に認識して、そのような外来抗原と特異的に結合し、それを排除/破壊するように進化した数多くの器官および細胞種からなる。細胞種の中でも、リンパ細胞は免疫系にとって重要である。リンパ細胞はT細胞およびB細胞という2つの大きな亜群に分類される。これらは相互依存的であるが、T細胞は主として細胞性免疫に関与し、B細胞は主として抗体産生(体液性免疫)に関与する。
【0005】
ヒトでは、各B細胞が膨大な数の抗体分子を産生することができる。通常このような抗体産生は、外来抗原が中和されたときに終わる(または大幅に減少する)。しかし時には、特定のB細胞の増殖が衰えることなく継続し、その結果、B細胞リンパ腫または白血病として知られる癌を生じ得る。B細胞サブタイプの非ホジキンリンパ腫のようなB細胞リンパ腫は癌死亡率の大きな要因である。
【0006】
種々の形態の治療に対するB細胞悪性腫瘍の応答は様々である。例えば、適切な非ホジキンリンパ腫の臨床病期分類が可能な場合、領域照射療法が十分な治療をもたらし得る。それでも患者の約半数はこの疾患により死亡する。Devesaら,J.Nat'l Cancer Inst.79:701(1987)。
【0007】
慢性リンパ球性白血病の大部分はB細胞系である。Freedman,Hematol.Oncol.Clin.North Am.4:405(1990)。このタイプのB細胞悪性腫瘍は、西欧諸国で最も一般的な白血病である。Goodmanら,Leukemia and Lymphoma 22:1(1996)。慢性リンパ球性白血病の自然経過はいくつかの段階に区分される。初期段階では、慢性リンパ球性白血病は緩徐進行型の疾患であり、寿命の長い、小型の、成熟した機能不全の悪性B細胞の蓄積を特徴とする。最終的には、悪性B細胞の倍増時間が短くなり、患者は次第に症状を現すようになる。治療により症状緩和をもたらすことができるが、患者の全生存期間への影響はごくわずかである。慢性リンパ球性白血病の後期は、重篤な貧血症および/または血小板減少症を特徴とする。この時点での平均生存期間は2年未満である。Foonら,Annals Int.Medicine 113:525(1990)。細胞増殖速度が非常に低速なため、慢性リンパ球性白血病は細胞傷害性薬剤の治療に対して耐性である。化学療法および放射線療法を含めた従来のB細胞悪性腫瘍の治療法には、有害な副作用により有用性に限界がある。
【0008】
B細胞は、区別および同定のためのマーカーとして利用可能な細胞表面タンパク質を含む。このようなヒトB細胞マーカーの1つがCD19抗原であり、これは成熟B細胞上には見られるが、形質細胞上には見られない。CD19は初期プレB細胞発生中に発現され、形質細胞分化まで残る。CD19は、正常B細胞上およびその異常な増殖がB細胞リンパ腫を引き起こし得る悪性B細胞上の両方で発現される。例えば、CD19は、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および急性リンパ芽球性白血病を非限定的に含めたB細胞系悪性腫瘍上で発現される。
【0009】
非ヒトモノクローナル抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体)の使用による潜在的問題は、典型的にはヒトエフェクター機能の欠如である。つまり、このような抗体は、補体依存性溶解の仲介または抗体依存性細胞傷害性もしくはFc受容体介在性食作用によるヒト標的細胞の溶解が不可能であり得る。さらに、非ヒトモノクローナル抗体は外来タンパク質としてヒト宿主に認識され得るため、このような抗体を繰り返し注入すれば、有害な過敏性反応を引き起こす免疫応答を誘発し得る。マウスベースのモノクローナル抗体では、これはヒト抗マウス抗体(HAMA)応答と呼ばれることが多い。
【0010】
キメラ抗体の使用は、それがマウス抗体ほど強いHAMA応答を誘発しないため好ましい。キメラ抗体は2つ以上の異なる種由来の部分を含む抗体である。例えば、Liu,A.Y.ら,“Production of a Mouse−Human Chimeric Monoclonal Antibody to CD20 with Potent Fc−Dependent Biologic Activity” J.Immun.139/10:3521−3526(1987)は、CD20抗原に対するマウス/ヒトキメラ抗体を記載している。またPCT出願国際公開第88/04936号も参照されたい。しかし、参照文献には、B細胞障害の治療でのこのようなキメラ抗体使用の効力、有効性または実用性に関する情報は提供されていない。インビトロ機能アッセイ(例えば、補体依存性溶解(CDC);抗体依存性細胞傷害(ADCC)など)では、特異的抗原を発現する標的細胞をキメラ抗体が破壊するまたは枯渇させるインビボでの能力は、本質的に予測不可能であることが注目される。例えば、Robinson,R.D.ら,“Chimeric mouse−human anti−carcinoma antibodies that mediate different anti−tumor cell biological activities,” Hum.Antibod.Hybridomas 2:84−93(1991)(検出不可能なADCC活性を有するマウス−ヒトキメラ抗体)を参照されたい。したがって、キメラ抗体の潜在的な治療効果は、好ましくは特定の治療法が対象とする種におけるインビボ実験によってのみ、正確に評価することができる。
【0011】
B細胞障害の治療において有効なマウスモノクローナル抗体の能力を改良してきた1つのアプローチは、放射性標識または化学療法薬を抗体とコンジュゲートして、標識または薬剤を腫瘍部位に局在させることである。例えば、90Y標識抗CD19抗体を用いてマウスにおけるリンパ腫を減少させ得ること(McDevittら,Leukemia 16:60,2002)、イダルビシンとコンジュゲートされた抗CD19抗体により実験モデルにおける腫瘍退縮が生じること(Rowlandら,Cancer Immunol.Immunother.,37:195,1993)ならびに125Iおよび111In放射標識抗CD19が腫瘍を有する器官に特異的に取り込まれること(Mitchellら,J.Nucl.Med.,44:1105,2003)が研究により示されている。また抗CD19抗体との併用療法も、Ekら,Leuk.Lymphoma 31:143(1998)およびUckunら,Blood,79:3116(1992)に開示されている。抗CD19抗体および抗CD3×抗CD19ダイアボディでのヒトB細胞リンパ腫治療が、Hekmanら,Cancer Immunol.Immunother.,32:364(1991)およびCochloviusら,J.Immunol.,165:888(2000)にそれぞれ開示されている。
【0012】
しかし、以前に積極的な細胞傷害性化学療法を受けた多くのリンパ腫罹患者では免疫が抑制されているため、強力な治療を前もって受けていないリンパ腫患者よりもHAMA率が低いという事実にもかかわらず、これらのアプローチでは、マウス抗体の使用に付随する障害は解消されていない。
【0013】
自己免疫疾患を含めた炎症性疾患もまた、B細胞障害に関連する疾患の一種である。最も一般的な治療法は、非常に有害となり得る副腎皮質ステロイド剤および細胞毒性薬剤である。これらの薬物は免疫系全体も抑制し、重篤な感染症を引き起こす可能性があり、さらに骨髄、肝臓および腎臓に対する副作用を有する。III型自己免疫疾患を治療するために使用されてきたその他の治療薬は、T細胞およびマクロファージに対するものであった。自己免疫疾患、特にIII型自己免疫疾患のより有効な治療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、ヒトおよびその他の哺乳動物におけるB細胞リンパ腫および白血病および自己免疫障害の治療のための、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD19モノクローナル抗体およびそれらのフラグメントならびに抗体融合タンパク質およびそのフラグメントを提供する。抗体、融合タンパク質およびそれらのフラグメントを、単独で、少なくとも1つの診断薬および/または治療薬とコンジュゲートして、あるいは他の治療法と組み合わせて使用することができる。
【0015】
特許請求される抗体の使用法は、1つまたは複数のヒト化、キメラまたはヒト抗CD19抗体を、単独で、抗体融合タンパク質として、治療用コンジュゲートとして単独で、あるいは他の抗体、他の治療薬または免疫調節薬と組み合わせて抗体融合タンパク質の一部として、あるいはこれらと共に集学的治療として、あるいは少なくとも1つの治療薬、治療用放射性核種または免疫調節薬と連結されたイムノコンジュゲートとして用いて、ヒトまたは家畜のような哺乳動物対象を治療することを含む。また、これらのヒト化、キメラおよびヒト抗CD19抗体を、診断造影剤として単独で、他の診断造影剤と組み合わせて、および/または治療への応用と共に使用することもできる。治療され得る病的状態としては、新生物、好ましくはB細胞関連のリンパ腫および白血病、例えば非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病または多発性骨髄腫などが挙げられる。治療され得るその他の病的状態としては、自己免疫疾患、例えば急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎(thromboangitis ubiterans)、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、乾癬および線維性肺胞炎などが挙げられる。これらは限定的なものではなく、CD19発現細胞が関与する任意の病的状態が、特許請求される抗CD19抗体を単独または組合せて用いることにより潜在的に治療され得ることを当業者は理解するであろう。
【0016】
様々な実施形態が、少なくとも2つの抗CD19MAbもしくはそのフラグメント、または少なくとも1つの抗CD19MAbもしくはそのフラグメントおよびその抗CD19MAbもしくはそのフラグメント以外の少なくとも1つの第二のMAbもしくはそのフラグメントを含む、抗体融合タンパク質およびそのフラグメントに関する。使用される第二の抗体は、他のB細胞関連またはB細胞特異的抗原、例えばCD20、CD22、CD23、CD80またはHLA−DRなどに対する抗体を含み得る。多重特異性および/または融合タンパク質は裸であるか、あるいは少なくとも1つの治療薬および/または診断薬とコンジュゲートされ得る。
【0017】
ヒト化、キメラおよびヒト抗CD19MAbおよびそれらのフラグメントならびに抗体融合タンパク質およびそのフラグメントを、裸でまたは治療薬もしくは診断薬とコンジュゲートして単独で、あるいは別の裸の抗体、フラグメントまたはイムノコンジュゲートと組み合わせて投与し得る。また、裸のまたはコンジュゲートされた抗CD19抗体およびそのフラグメントならびに抗体融合タンパク質およびそのフラグメントを、抗CD19抗体もしくはそのフラグメントまたは融合タンパク質もしくはそのフラグメントとコンジュゲートされていない、少なくとも1つの治療薬または診断薬と組み合わせて投与し得る。
【0018】
他の実施形態は、ヒト化、キメラまたはヒト抗CD19抗体およびそのフラグメントならびに抗体融合タンパク質およびそのフラグメントをコードするDNA配列に関する。同様に、そのDNA配列を含むベクターおよび宿主細胞も意図される。また特許請求される方法は、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD19抗体およびそれらのフラグメントならびに融合タンパク質およびそのフラグメントの作製法も含む。
【0019】
特定の実施形態は、CD19特異性を有する特定のマウスCDRを含む、抗CD19MAbまたはそのフラグメントに関する。このMAbは、ヒト化、キメラまたはヒト抗CD19MAbであり得る。好適な実施形態では、抗体は1つまたは複数の置換されたアミノ酸残基、例えば、ヒト化抗体のヒトフレームワーク領域配列における対応するマウスフレームワーク領域アミノ酸残基の置換などを含み得る。置換の候補である好適なフレームワーク領域アミノ酸としては、1つまたは複数のCDRアミノ酸側鎖と近接したまたは隣接した位置にあるアミノ酸あるいは別の方法でコードされたタンパク質の安定性および/または発現レベルに影響を与えるアミノ酸が挙げられる。最も好適な実施形態では、置換は、ヒト化A19(hA19)抗体のVH配列のKabat残基91においてセリン残基をフェニルアラニン残基と置換することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】キメラ抗CD19抗体であるcA19の可変軽鎖Vkおよび可変重鎖VH配列を開示する図である。CDR領域配列を太字および下線で示す。ヌクレオチドには通し番号が付してある。アミノ酸残基に対してKabatのIg分子ナンバリングを使用し、これをアミノ酸残基上方に番号を付して示す。文字で番号を付したアミノ酸残基は、Kabatナンバリング法により定義される挿入残基である。挿入残基は前の残基と前番号が同じである。例えば、図1Bの残基82、82A、82Bおよび82Cは、それぞれ82、A、BおよびCで表される。軽鎖可変領域を図1Aに示し(配列番号:1および配列番号:2)、重鎖可変領域を図1Bに示す(配列番号:3および配列番号:4)。
【図2】cA19抗体の結合特異性を他の抗CD19抗体BU12およびB4と比較するための細胞表面競合結合アッセイの結果を示す図である。cA19の濃度増加により、非標識BU12およびB4と同様に標識BU12とRaji細胞との結合が阻害されたが、このことは、これらの抗体がCD19分子の同様のまたは重複するエピトープを認識することを示している。
【図3】ヒト抗体、キメラおよびヒト化抗CD19抗体の可変軽鎖(Vk)および可変重鎖(VH)のアミノ酸配列を比較した図である。図3Aは、ヒト抗体(REIVk、配列番号:5)、キメラ抗体(cA19Vk、配列番号:6)およびヒト化抗体(hA19Vk、配列番号:7)の可変軽鎖(Vk)のアミノ酸配列を比較したものであり、図3Bは、ヒト抗体EU(配列番号:8)およびNEWM(FR4のみ、配列番号:11)、キメラ抗体(cA19VH、配列番号:9)およびヒト化抗体(hA19VH、配列番号:10)の可変重鎖(VH)のアミノ酸配列を比較したものである。
【図4】ヒト化抗CD19抗体hA19の軽鎖V遺伝子(hA19Vk)(図4A、配列番号:12および配列番号:13)および重鎖V遺伝子hA19VH(図4B、配列番号:14および配列番号:15)のアミノ酸配列を開示する図である。ヌクレオチド配列を小字で示す。VkおよびVHアミノ酸残基のナンバリングは図1のものと同じである。
【図5】ヒト化A19抗体hA19の結合特異性および活性をcA19のものと比較するための細胞表面競合結合アッセイの結果を示す図である。図5Aは、非コンジュゲートhA19(黒三角)およびcA19(黒丸)が共に125I−hA19とRaji細胞との結合を阻害したことを示す。図5Bは、hA19(黒三角)およびcl9(黒四角)が125I−cA19とRaji細胞との結合に関して同様によく競合したことを示す。cA19またはhA19の濃度増加により、それぞれ標識hA19またはcA19とRaji細胞との結合が阻害された。
【図6】直接的細胞表面結合およびスキャッチャードプロット解析による抗CD19AbのAg結合親和性(結合力)の測定を示す図である。様々な濃度の125I−hA19(菱形)または112In−cA19(四角)をRaji細胞と4℃で1時間インキュベートした。総放射活性および結合放射活性をカウントし、スキャッチャードプロットにより解析したものを挿入図に示す。hA19はcA19と実質的に同じ結合親和性を示した。図のように、hA19およびcA19の見かけの解離定数値は、それぞれ1.1および1.2nMと算出された。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
別途明記されない限り、本明細書で使用される「1つの」(「a」または「an」)は、「1つまたは複数の」という意味である。
【0022】
別途明記されない限り、用語はその平易で一般的な意味に基づいて使用される。
【0023】
本明細書に記載の「抗体」は、完全長の(すなわち、天然に存在するか、または正常な免疫グロブリン遺伝子フラグメントの組換えプロセスにより形成される)免疫グロブリン分子(例えば、IgG抗体)または抗体フラグメントのような免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な(すなわち、特異的に結合する)部分を指す。
【0024】
「抗体フラグメント」は抗体の一部分、例えばF(ab)、F(ab')、Fab、Fab'、Fv、sFvなどである。構造に関係なく、抗体フラグメントはインタクトな抗体により認識される抗原と同じ抗原とに結合する。例えば、抗CD19モノクローナル抗体フラグメントはCD19のエピトープと結合する。抗体フラグメントとしては、重および軽鎖の可変領域を含む「Fv」フラグメントまたは軽および重可変領域がペプチドリンカーにより結合している組換え一本鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)のような、可変領域を含む単離フラグメントが挙げられる。
【0025】
「裸の抗体」は、一般に治療薬とコンジュゲートされていない完全抗体である。これは、抗体分子のFc部分が、細胞溶解を生じ得る機構を作動させる補体結合およびADCC(抗体依存性細胞傷害)のようなエフェクター機能を提供するからである。しかし、治療作用にFc部分を必要とせず、アポトーシスのような他の機構が関与する可能性がある。「裸の抗体」は、ポリクローナルおよびモノクローナル両抗体のみならず、キメラ、ヒト化またはヒト抗体のような特定の組換え抗体を包含する。
【0026】
「キメラ抗体」は、1つの種に由来する抗体、好ましくはげっ歯類抗体の相補性決定領域(CDR)を含んだ可変ドメインを含む組換えタンパク質であり、一方、抗体分子の定常ドメインはヒト抗体の定常ドメインに由来する。獣医学上の適用に関しては、キメラ抗体の定常ドメインは、ネコまたはイヌのような他の種の定常ドメインに由来し得る。
【0027】
「ヒト化抗体」は、1種由来の抗体、例えば、げっ歯類抗体由来のCDRが、げっ歯類抗体の重および軽可変鎖からヒト重および軽可変ドメイン内に導入された組換えタンパク質である。抗体分子の定常ドメインはヒト抗体の定常ドメイン由来である。
【0028】
「ヒト抗体」は、ヒト可変および定常領域配列を含む抗体である。例えば、ヒト抗体は、抗原投与に応答してヒト抗体を産生するよう操作されたトランスジェニックマウスから入手し得る。この技術では、マウス内在性の重鎖および軽鎖遺伝子座の標的破壊を含む胚性幹細胞系列由来のマウス株内に、ヒト重および軽鎖遺伝子座のエレメントを導入する。トランスジェニックマウスはヒト抗原に対して特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスを用いてヒト抗体分泌ハイブリドーマを作製することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を入手するための方法は、Greenら,Nature Genet.7:13(1994)、Lonbergら,Nature 368:856(1994)およびTaylorら,Int.Immun.6:579(1994)に記載されている。完全ヒト抗体はまた、遺伝子または染色体トランスフェクション法の他、ファージディスプレイ技術によっても構築することができ、これらはすべて当該分野で公知である。例えば、未免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからのヒト抗体およびそのフラグメントのインビトロ産生に関しては、McCaffertyら,Nature 348:552−553(1990)を参照されたい。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子が糸状バクテリオファージのメジャーまたはマイナーコートタンパク質遺伝子内にインフレームでクローニングされ、ファージ粒子表面上の機能的抗体フラグメントとしてディスプレイされる。糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むため、抗体の機能的特性に基づく選択により、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択も生じる。このようにして、ファージがB細胞の特性の一部を模倣する。ファージディスプレイは様々なフォーマットで行うことが可能であり、その概説に関しては、例えばJohnsonおよびChiswell,Current Opinion in Structural Biology 3:5564−571(1993)を参照されたい。ヒト抗体は、インビトロで活性化されたB細胞によっても作製し得る。その内容全体が参照により組み込まれる米国特許第5,567,610号および第5,229,275号を参照されたい。
【0029】
「治療薬」は、単独で、抗体部分と共に同時または順次に、あるいは抗体部分、すなわち抗体または抗体フラグメントもしくはサブフラグメントとコンジュゲートされて投与され、かつ疾患の治療に有用である分子または原子である。治療薬の例としては、抗体、抗体フラグメント、薬物、毒素、酵素、オリゴヌクレオチド、アンチセンスおよびRNAiオリゴヌクレオチド、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節薬、キレート剤、ホウ素化合物、光活性化剤または色素ならびに放射性同位元素が挙げられる。
【0030】
「診断薬」は、抗体部分、すなわち抗体または抗体フラグメントもしくはサブフラグメントとコンジュゲートして投与してもよく、かつ標的抗原を含む細胞の所在特定による疾患診断に有用な分子または原子である。有用な診断薬としては、放射性同位元素、色素、造影剤、超音波造影剤、光学的造影剤、蛍光化合物もしくは分子および磁気共鳴映像法(MRI)のための造影剤(例えば、常磁性イオン)が挙げられるが、これらに限定されない。米国特許第6,331,175号では、MRI技術およびMRI造影剤とコンジュゲートされた抗体の調製が記載されており、その内容全体が参照により組み込まれる。好ましくは、診断薬は、放射性同位元素、磁気共鳴映像法および超音波に使用するための造影剤、並びに蛍光化合物からなる群より選択される。抗体成分に放射性金属または常磁性イオンを付加するために、イオンと結合するためのキレート基が多数結合した長い尾部を有する試薬と抗体成分を反応させる必要があり得る。このような尾部はポリマー、例えば、ポリリジン、多糖または例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、DOTA、NOTA、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス−チオセミカルバゾン、ポリオキシムなど、この目的に有用であることが知られているキレート基が結合可能なペンダント基を有するその他の誘導体化されたもしくは誘導体化可能な鎖などであり得る。キレートは、標準的な化学作用を用いてペプチドまたはタンパク質と結合させる。キレートは通常、最小限の免疫反応性喪失ならびに最小限の凝集および/または内部架橋で分子との結合形成を可能にする基により、抗体と連結させる。キレートを抗体とコンジュゲートさせる他のより特殊な方法および試薬は、1989年4月25日に発行された「抗体コンジュゲート」と題する、Hawthorneに対する米国特許第4,824,659号に開示されており、この開示はその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に有用な金属−キレートの組合せとしては、一般的エネルギー範囲が60〜4000keVの診断用アイソトープ、例えば125I、131I、123I、124I、62Cu、18F、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、11C、13N、150、76Brなどと共に放射性イメージングに使用される、2−ベンジル−DTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体が挙げられる。本発明の抗体と共に使用する場合、同じキレートをマンガン、鉄およびガドリニウムのような非放射性金属と錯体化すればMRIに有用である。NOTA、DOTAおよびTETAのような大環状キレートは、様々な金属および放射性金属と共に、最も具体的には、それぞれガリウム、イットリウムおよび銅の放射性核種と共に使用される。このような金属キレート化合物は、対象とする金属に環のサイズを合わせることにより、非常に安定させることができる。RAITに対する223Raのような安定に結合する核種を対象とする、大環状ポリエーテルのような他の環型キレートが包含される。
【0031】
「イムノコンジュゲート」は、抗体成分と治療薬または診断薬とのコンジュゲートである。
【0032】
「発現ベクター」は、宿主細胞内で発現される遺伝子を含む核酸分子、好ましくは二本鎖DNA分子である。通常、遺伝子発現は、構成的または誘導性プロモーター、組織特異的調節エレメントおよびエンハンサーを含めた特定の調節エレメントの制御下に置かれている。このような遺伝子は、調節エレメントと「作動可能に連結されている」という。
【0033】
「組換え宿主細胞」は、クローニングベクターまたは発現ベクターを含む任意の原核または真核細胞であり得る。この用語はまた、原核または真核細胞のみならず、宿主細胞または宿主動物細胞の染色体またはゲノム中にクローン遺伝子(1つまたは複数)を含むように遺伝子操作されたトランスジェニック動物も包含する。適切な哺乳動物宿主細胞としては、SP2/0細胞およびNSO細胞のようなミエローマ細胞の他、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ハイブリドーマ細胞系およびその他の抗体発現に有用な哺乳動物宿主細胞が挙げられる。国際公開第0063403(A2)号に開示されているヒト細胞系PER.C6もMAbおよびその他の融合タンパク質を発現するのに有用である。最も好適な宿主細胞は、無血清または低血清培地での増殖およびトランスフェクションに前適応させた、Bcl−EEE遺伝子またはその他のアポトーシスインヒビターを含むように操作された細胞である。このような宿主細胞の例は、2005年7月25日に出願された米国特許出願第11/187,863号および2006年7月14日に出願された同第11/487,215号に開示されており、これらの各本文は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。完全ヒト抗体の作製には、改変された免疫系を有する特殊なトランスジェニック動物が特に有用である。
【0034】
本明細書で使用される「抗体融合タンパク質」という用語は、同じまたは異なる特異性を有する同じまたは異なる一本鎖の抗体または抗体フラグメントのセグメントを1つまたは複数含む、組換えにより作製された抗原結合分子を指す。抗体融合タンパク質は、別のタンパク質またはペプチド、例えば治療薬、毒素、サイトカイン、ホルモンまたはその他のタンパク質もしくはペプチドと結合した、抗体またはそのフラグメントを含み得る。他の実施形態では、抗体融合タンパク質は、少なくとも第一と第二の抗体または抗体フラグメントを含み得る。融合タンパク質が2つ以上の抗体またはフラグメントを含む場合、その融合タンパク質の結合価は、単一の抗原またはエピトープに対してその融合タンパク質が有する、結合アームまたは部位の数;すなわち、一価、二価、三価または多価を示す。特異性は、抗体融合タンパク質が結合できる抗原またはエピトープの数;すなわち単一特異性、二重特異性、三重特異性、多重特異性を示す。これらの定義を用いれば、天然の抗体、例えばIgGは、結合アームが2つなので二価であるが、1つのエプトープと結合するので単一特異性である。
【0035】
多重特異性抗体は、構造が異なる少なくとも2つの標的、例えば、2つの異なる抗原、同じ抗原上の2つの異なるエピトープあるいはハプテンおよび/または抗原もしくはエピトープと同時に結合することができる抗体である。1つの特異性は、B細胞、T細胞、骨髄性細胞、形質細胞およびマスト細胞の抗原またはエピトープに対するものであり得る。別の特異性は、同じ細胞種上の異なる抗原、例えば、B細胞上のCD20、CD19、CD20、CD21、CD23、CD46、CD80、HLA−DR、CD74およびCD22などであり得る。多重特異性の多価抗体は、2つ以上の結合部位を有する構築物であり、それらの結合部位は特異性が異なる。例えば、二重特異性抗体の場合、一方の結合部位が1つの抗原と反応し、もう一方の結合部位が別の抗原と反応する。
【0036】
二重特異性抗体は、構造が異なる2つの標的と同時に結合することができる抗体である。二重特異性抗体(bsAb)および二重特異性抗体フラグメント(bsFab)は、例えば、B細胞、T細胞、骨髄性細胞、形質細胞およびマスト細胞の抗原またはエピトープと結合する少なくとも1つのアームならびに治療薬または診断薬を有する標的化可能なコンジュゲートと特異的に結合する少なくとも1つの別のアームを有する。分子工学を用いて様々な二重特異性融合タンパク質を作製することができる。
【0037】
家畜は、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、アルパカおよびブタの他、伴侶動物も包含する。好適な一実施形態では、家畜はウマである。伴侶動物はペットとして飼育される動物を包含する。これらは主としてイヌおよびネコであるが、モルモット、ハムスター、ラットおよびフェレットのような小型のげっ歯類も包含され、同様にサルのような類人霊長類も包含される。好適な一実施形態では、伴侶動物はイヌまたはネコである。
【0038】
概要
上述のように、コンジュゲートされていないまたは治療用放射性核種で標識された抗CD19抗体では、中悪性度または高悪性度の形態のB細胞リンパ腫を有する患者において、高率の客観的かつ持続的な応答をもたらすことができなかった。本発明は、単独で、コンジュゲートとして、または他の裸の抗体および抗体治療用コンジュゲートを含めた他の治療薬との併用投与で哺乳動物対象、ヒトおよび家畜の治療に有用な、ヒト化、キメラまたはヒト抗CD19抗体および抗体融合タンパク質を提供する。
【0039】
抗CD19MAbは、好ましくは、CD19抗原に対して特異性を有する1つまたは複数のマウスまたはキメラ抗CD19MAb由来の特定のマウスCDRを含む。抗CD19MAbは、ヒト化、キメラまたはヒトMAbである。抗CD19MAbの軽鎖可変領域のCDRは、好ましくは、アミノ酸KASQSVDYDGDSYLN(配列番号:16)を含むCDR1;アミノ酸DASNLVS(配列番号:17)を含むCDR2;およびアミノ酸QQSTEDPWT(配列番号:18)を含むCDR3;ならびにアミノ酸SYWMN(配列番号:19)を含む重鎖可変領域CDR1;アミノ酸QIWPGDGDTNYNGKFKG(配列番号:20)を含むCDR2およびアミノ酸RETTTVGRYYYAMDY(配列番号:21)を含むCDR3を含む。
【0040】
好適な一実施形態では、ヒト化抗CD19MAbまたはそのフラグメントは、マウス抗CD19MAbのCDRならびにヒト抗体の軽および重鎖可変領域のフレームワーク(FR)領域ならびにヒト抗体の軽および重鎖定常領域を含むと同時に、実質的に親マウス抗CD19MAbのB細胞およびB細胞リンパ腫および白血病細胞標的性を保持し、ここで、抗CD19MAbの軽鎖可変領域のCDRは、アミノ酸KASQSVDYDGDSYLN(配列番号:16)を含むCDR1;アミノ酸DASNLVS(配列番号:17)を含むCDR2;およびアミノ酸QQSTEDPWT(配列番号:18)を含むCDR3を含み;かつ抗CD19MAbの重鎖可変領域のCDRは、アミノ酸SYWMN(配列番号:19)を含むCDR1;アミノ酸QIWPGDGDTNYNGKFKG(配列番号:20)を含むCDR2およびアミノ酸RETTTVGRYYYAMDY(配列番号:21)を含むCDR3を含む。ヒト化抗CD19MAbまたはそのフラグメントは、抗体の軽および重鎖可変領域のFR内に、マウスMAbの対応するFR由来の少なくとも1つのアミノ酸をさらに含み得る。具体的には、ヒト化抗CD19MAbまたはそのフラグメントは、図4Aのマウス重鎖可変領域のアミノ酸残基5、27、28、40、48、91、94、107および108から選択される少なくとも1つの残基ならびに図4Bのマウス軽鎖可変領域のアミノ酸残基4、39、58、60、87、100および107から選択される少なくとも1つの残基を含み得る。より好適な実施形態では、ヒト化A19抗体(hA19)は、置換された上記各マウスFRアミノ酸残基を含む。CD19抗原との適切な結合の維持または結合の増強が必要であれば、1つまたは複数のマウスアミノ酸配列をヒト軽および重可変鎖のFR領域内に維持してもよい。より好ましくは、ヒト化抗CD19MAbまたはそのフラグメントは、図3AのhA19Vk(配列番号:7)および図3BのhA19VH(配列番号:10)を含む。最も好ましくは、ヒト化抗CD19MAbは、hA19VH(配列番号:10)配列のKabat残基91におけるセリン残基のフェニルアラニン残基とのFR置換をさらに含む。
【0041】
好適なキメラ抗CD19(cA19)MAbまたはそのフラグメントは、マウス抗CD19MAbのCDRならびにマウス抗CD19MAbの軽および重鎖可変領域のFR領域(すなわち親マウスMAbのFv)ならびにヒト抗体の軽および重鎖定常領域を含み、ここで、キメラ抗CD19MAbまたはそのフラグメントは、実質的にマウス抗CD19MAbのB細胞およびB細胞リンパ腫および白血病細胞標的性を保持し、抗CD19MAbの軽鎖可変領域のCDRは、アミノ酸KASQSVDYDGDSYLN(配列番号:16)を含むCDR1;アミノ酸DASNLVS(配列番号:17)を含むCDR2;およびアミノ酸QQSTEDPWT(配列番号:18)を含むCDR3を含み;かつ抗CD19MAbの重鎖可変領域のCDRは、アミノ酸SYWMN(配列番号:19)を含むCDR1;アミノ酸QIWPGDGDTNYNGKFKG(配列番号:20)を含むCDR2およびアミノ酸RETTTVGRYYYAMDY(配列番号:21)を含むCDR3を含む。より好ましくは、キメラ抗CD19MAbまたはそのフラグメントは、図1Aおよび1Bで示される、それぞれcA19Vk(配列番号:6)およびcA19VH(配列番号:9)と称されるキメラ抗CD19MAbの軽および重鎖可変領域配列を含む。
【0042】
様々な実施形態では、ヒト抗体の軽および重鎖可変ならびに定常領域を含むヒト抗CD19MAbまたはそのフラグメントも包含され、ここで、上記ヒト抗CD19MAbは、実質的にマウス抗CD19MAbのB細胞およびB細胞リンパ腫および白血病細胞標的性ならびにマウス抗CD19MAbの細胞結合特性を保持し、ヒト抗CD19MAbの軽鎖可変領域のCDRは、キメラおよびヒト化抗CD19MAbに関して上述したものならびにそれぞれ図1Aと1Bおよび3Aと3Bで示されるものと同じCDR(配列番号:16〜21)を含む。
【0043】
特定の実施形態では、上記の抗CD19MAbまたはそのフラグメントを少なくとも2つ含む抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを包含することも意図される。この抗体融合タンパク質またはそのフラグメントは、少なくとも1つの第一の上記抗CD19MAbまたはそのフラグメントならびに上記抗CD19MAbもしくはフラグメント以外の少なくとも1つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含む、抗体融合タンパク質またはそのフラグメントも包含することが意図される。より好ましくは、この第二のMAbは、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、CD138、B7、MUC−1、Ia、HM1.24、HLA−DR、テネイシン、血管新生因子、VEGF、PlGF、ED−Bフィブロネクチン、癌遺伝子、癌遺伝子産物、CD66a〜d、壊死抗原、Ii、IL−2、T101、TAC、IL−6、TRAIL−R1(DR4)およびTRAIL−R2(DR5)またはそれらの組合せと反応するMAb、そして本明細書に記載の抗CD19MAbと異なるエピトープに対する抗CD19MAbでさえある。抗体融合タンパク質は、異なる抗原に対する特異性をもたらすために1つの抗CD19MAbおよび1つまたは複数の第二のMAbから構成されていてもよく、以下でより詳細に説明される。
【0044】
ヒト化、キメラおよびヒト抗CD19抗体は、B細胞リンパ腫および白血病および自己免疫疾患を含めたB細胞障害治療の優れた治療薬を得るための、可変領域におけるアミノ酸変異および配列操作の結果として、増強されたエピトープ親和性結合だけでなく、抗腫瘍および抗B細胞活性をも有し得る。抗体の結合特異性、親和性または結合力に対する改変は既知であり、親和性成熟として国際公開第98/44001号に記載されており、この出願は改変方法を要約し、かつその内容全体が参照により組み込まれる。
【0045】
例えば、抗体を改変してエフェクター機能を向上させ、アンタゴニストの抗原依存性細胞性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を増強することが望ましい場合もある。Fc領域内で1つまたは複数のアミノ酸置換またはシステイン導入を行ってもよく、これにより、内部移行能が向上し、ならびに/または補体仲介細胞傷害作用およびADCCが増加する。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Caronら,J.Ex.Med.176:1191−1195(1991)およびShopes,Brit.J.Immunol.148:2918−2022(1992)を参照されたい。増強された補体溶解およびADCC能の両方をもつ、二重のFc領域を有する抗体融合タンパク質を調製してもよい。
【0046】
特定の実施形態は、以下のものからなる群より選択されるMAbまたはそのフラグメントをコードする核酸を含む、DNA配列にも関する:(a)本明細書に記載の抗CD19MAbまたはそのフラグメント、(b)少なくとも2つの抗CD19MAbまたはそのフラグメントを含む、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント、(c)本明細書に記載の抗CD19MAbもしくはそのフラグメントを含む少なくとも1つの第一のMAbまたはそのフラグメントおよび抗CD19MAbもしくはそのフラグメント以外の少なくとも1つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含む抗体融合タンパク質またはそのフラグメントならびに(d)抗CD19MAbもしくはそのフラグメントを含む少なくとも1つの第一のMAbまたはそのフラグメントおよび少なくとも1つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含み、ここで、第二のMAbがCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、CD138、B7、MUC1、Ia、HM1.24、HLA−DR、テネイシン、ED−Bフィブロネクチン、IL−6、VEGF、PlGF、TRAIL−R1(DR4)およびTRAIL−R2(DR5)またはそれらの組合せと反応するMAbである、融合タンパク質またはそのフラグメント。
【0047】
また当該DNA配列を含む発現ベクターも包含される。これらのベクターは、ヒト化、キメラおよびヒト抗CD19MAbまたはそれらの抗体融合タンパク質またはそれらのフラグメントの調製に用いるベクターの場合、ヒト免疫グロブリンの軽および重鎖定常領域ならびにヒンジ領域を含む。これらのベクターは、必要であれば、選択された宿主細胞内でMAbを発現するプロモーター、免疫グロブリンエンハンサーおよびシグナルもしくはリーダー配列をさらに含む。本発明において特に有用なベクターは、特にIgGのようなキメラ、ヒト化またはヒト抗体を発現するために使用する場合、pdHL2またはGSであり、この場合、ベクターはIgG1の重および軽鎖定常領域ならびにヒンジ領域をコードする。より好ましくは、軽および重鎖定常領域ならびにヒンジ領域は、ヒトED骨髄腫免疫グロブリン由来であり、この場合、任意でアロタイプ位置の少なくとも1つのアミノ酸が、異なるIgG1アロタイプに見られるアミノ酸に変化しており、EU番号システムに基づくEUの重鎖のアミノ酸253が、任意でアラニンと置換されていてもよい。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Edelmanら,Proc.Natl.Acad.ScI USA 63:78−85(1969)を参照されたい。
【0048】
本発明は、抗CD19MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントをコードするDNA配列を含む宿主細胞あるいはこれらのDNA配列を含むベクターを含む宿主細胞を包含する。特に有用な細胞は、哺乳動物細胞、より具体的には、以下でより詳細に述べる骨髄腫細胞のようなリンパ球細胞である。
【0049】
抗CD19MAbまたはそのフラグメントあるいは抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを発現するための、以下のものを含む方法も包含される:(a)抗CD19MAbまたはそのフラグメントあるいは抗体融合タンパク質またはそのフラグメントをコードするDNA配列を哺乳動物細胞にトランスフェクトすること、および(b)このDNA配列をトランスフェクトされた、抗CD19またはそのフラグメントあるいは抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを分泌する細胞を培養すること。MAbおよびマーカーを発現する宿主細胞を容易に選択できるようにベクター上に選択可能なマーカーを含む、既知の技術を使用してもよい。
【0050】
本発明は、具体的には、Bリンパ腫細胞、白血病細胞および/または自己免疫細胞を標的とした診断用または治療用コンジュゲートを包含し、このコンジュゲートは、少なくとも1つの診断薬または少なくとも1つの治療薬とコンジュゲートされているかまたは結合している、標的細胞と結合する抗CD19MAbまたはそのフラグメントあるいは抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを含む抗体成分を含む。
【0051】
診断用コンジュゲートは、抗CD19MAbまたはそのフラグメントあるいは抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを含む抗体成分を含み、ここで、診断薬は少なくとも1つの光活性診断薬を含み、より好ましくは、標識が60〜4,000keVの間のエネルギーを有する放射性標識または非放射性標識である。放射性標識は、好ましくはガンマ、ベータまたは陽電子放出アイソトープであり、かつ125I、131I、123I、124I、86Y、186Re、188Re、62Cu、64Cu、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15O、76Brおよびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0052】
診断用コンジュゲートは、例えばマンガン、鉄またはガドリニウムなどの造影剤のようなあるいは超音波造影剤を含めた、診断薬を用いてもよい。一実施形態では、超音波造影剤は、キメラ化もしくはヒト化抗CD19抗体またはそのフラグメントを含むリポソームである。また好ましくは、超音波造影剤は、ガスが封入されたリポソームである。同様に、二重特異性抗体を造影剤とコンジュゲートさせることができる。例えば、二重特異性抗体は、超音波造影法で使用する画像造影剤を2つ以上含んでもよい。超音波造影剤はリポソームであってもよく、好ましくは、リポソームはリポソーム外表面に共有結合した二価DTPAペプチドを含む。また好ましくは、リポソームにはガスが封入されている。
【0053】
治療用コンジュゲートは、抗体融合タンパク質またはそのフラグメントのような抗体成分を含み、ここで、各上記MAbまたはそのフラグメントは、少なくとも1つの治療薬と結合している。治療用コンジュゲートは、好ましくは、放射性標識、免疫調節薬、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療薬、薬物もしくは毒素であってよい細胞毒性薬およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。有用な薬物としては、抗有糸分裂薬、アルキル化剤、抗代謝薬、抗生物質、アルカロイド、抗血管新生薬、アポトーシス薬およびそれらの組合せからなる群より選択される、薬学的特性を有する薬物の他、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびRNA干渉経路を活性化する低分子二本鎖RNA分子のようなRNA分子が挙げられる。より具体的には、薬物は、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、白金配位錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、サリドマイドおよびその誘導体、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトセシン、アントラサイクリン、タキサンおよびその類似体、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。毒素は、リシン、アブリン、アルファ毒素、サポリン、オンコナーゼ(すなわち、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ))、DNアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシンおよびシュードモナスエンドトキシンからなる群より選択され得る。
【0054】
使用に適したその他の治療薬としては、抗血管新生薬(または血管新生阻害剤)が挙げられる。これらの薬剤は、併用療法での使用または例えば、アンジオスタチン、エンドスタチン、バスキュロスタチン、カンスタチンおよびマスピンと抗体とのコンジュゲーションの他、血管内皮増殖因子(VEGF)、胎盤増殖因子(PlGF)、ED−Bフィブロネクチンのような血管新生因子に対するおよびその他の血管増殖因子に対する抗体の使用にも適する。一本鎖および二本鎖オリゴヌクレオチドは新しい種類の治療薬であり、例えば、RNA干渉経路を活性化して、bcl−2阻害のような極めて特異的な遺伝子発現阻害を引き起こす、アンチセンスbcl−2のようなアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび二本鎖RNA分子のような分子が挙げられる。細胞内でのbcl−2(および関連するbclファミリー分子)の阻害は、bcl−2の抗アポトーシス活性を阻害して細胞のアポトーシスを促進する。Zangemeister−Wittke,Ann NY Acad Sci.1002:90−4(2003)を参照されたい。
【0055】
有用な治療用コンジュゲートは、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポエチン、トロンボポエチンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される免疫調節薬である。特に有用なのは、腫瘍壊死因子(TNF)のようなリンホトキシン、インターロイキン(IL)のような造血因子、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)のようなコロニー刺激因子、インターフェロン−アルファ、−ベータまたは−ガンマのようなインターフェロンおよび「S1因子」のような幹細胞増殖因子である。より具体的には、IL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21、インターフェロン、TNF−アルファもしくは−ベータまたはそれらの組み合わせが有用であり得る。
【0056】
特に有用な治療用コンジュゲートは、60〜700keVの間のエネルギーを有する1つまたは複数の放射性標識を含む。このような放射性標識は、225Ac、67Ga、90Y、111In、131I、125I、186Re、188Re、177Lu、32P、64Cu、67Cu、212Bi、213Bi、211Atおよびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。他の有用な治療用コンジュゲートは、色素原または色素のような光活性治療薬である。
【0057】
特許請求される方法は、ヒトを含めた哺乳動物、家畜あるいはイヌおよびネコのような伴侶ペットなどの対象におけるB細胞疾患の治療法を包含する。この方法により治療可能なB細胞疾患としては、不必要なまたは望ましくないB細胞増殖または活性を伴い、リンパ腫または白血病のような悪性腫瘍あるいは自己免疫疾患を含む、任意の疾患が挙げられる。この方法は、薬学的に許容される媒体中で製剤化された治療有効量の抗CD19MAbまたはそのフラグメントを対象に投与することを含む。この治療法では、治療薬が結合していない「裸の抗体」を用いてもよい。「裸の抗CD19抗体」の投与は、治療有効量の別の治療薬、例えば、標的細胞表面上の別の抗原と結合または反応するか、またはMAbのFc部分のエフェクター機能のような他の機能を有する、本明細書で述べられる治療用の第二の「裸の抗体」などを対象に同時または順次投与することにより補完することができる。好適な追加のMAbは、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、CD138、B7、HM1.24、HLA−DR、血管新生因子、テネイシン、VEGF、PlGF、ED−Bフィブロネクチン、癌遺伝子、癌遺伝子産物、CD66a〜d、壊死抗原、Ii、IL−2、MUC−1、TO1、TAC、IL−6、TRAIL−R1(DR4)およびTRAIL−R2(DR5)と反応するMAbからなる群より選択される、薬学的に許容される媒体中で製剤化された少なくとも1つのヒト化、キメラ、ヒトまたはマウス(非ヒト動物の場合)MAbである。他の実施形態では、抗CD19抗体を1つまたは複数の治療薬または診断薬とコンジュゲートし得る。
【0058】
上述した裸の抗CD19単独でのまたは他の裸のMAbとの併用での治療法は共に、薬学的に許容される媒体中で製剤化された、少なくとも1つの治療有効量の治療薬の同時または順次投与によりさらに補完することができる。本明細書で述べられているように、治療薬は、薬学的に許容される媒体中で製剤化された細胞毒性薬、放射性標識、免疫調節薬、ホルモン、オリゴヌクレオチド(アンチセンスまたはRNAiオリゴヌクレオチドなど)、酵素、光活性治療薬またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0059】
別の治療法では、上述した裸の抗CD19単独でのまたは他の裸のMAbとの併用での治療法は共に、本明細書に記載され薬学的に許容される媒体中で製剤化された、少なくとも1つの治療有効量の治療用コンジュゲートの同時または順次投与によりさらに補完することができる。治療用コンジュゲートの抗体成分は、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、CD138、B7、HM1.24、HLA−DR、血管新生因子、テネイシン、VEGF、PlGF、ED−Bフィブロネクチン、癌遺伝子、癌遺伝子産物、CD66a〜d、壊死抗原、Ii、IL−2、T101、TAC、IL−6、MUC−1、TRAIL−R1(DR4)およびTRAIL−R2(DR5)と反応するMAbからなる群より選択される、薬学的に許容される媒体中で製剤化された少なくとも1つのヒト化、キメラ、ヒトまたはマウス(非ヒト動物対象に対して)MAbを含む。本明細書で述べられているように、治療薬は、薬学的に許容される媒体中で製剤化された細胞毒性薬、放射性標識、免疫調節薬、ホルモン、光活性治療薬またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0060】
他の実施形態は、対象におけるB細胞リンパ腫または白血病または自己免疫疾患の治療法に関するものであり、少なくとも2つの抗CD19MAbまたはそのフラグメントを含むか、あるいは少なくとも1つの抗CD19MAbまたはそのフラグメントと、好ましくはCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、CD138、B7、HM1.24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、ED−Bフィブロネクチン、癌遺伝子、癌遺伝子産物、CD66a〜d、壊死抗原、Ii、IL−2、T101、TAC、IL−6、TRAIL−R1(DR4)およびTRAIL−R2(DR5)と反応するMAbからなる群より選択される、薬学的に許容される媒体中で製剤化された少なくとも1つの追加のMAbとを含む、治療有効量の抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを対象に投与することを含む。
【0061】
プレターゲティング技術に基づく他の方法では、多重特異性抗体または融合タンパク質は、HSGハプテンのようなハプテンと結合する少なくとも1つの他の抗体またはフラグメントと結合した、本明細書に記載の抗CD19抗体を含み得る。ハプテンは、1つまたは複数の治療薬および/または診断薬を含む標的化可能なコンジュゲートに組み込まれ得る。多重特異性抗体または融合タンパク質を対象に投与し、B細胞のような標的細胞上で発現されたCD19のような標的抗原と結合させ得る。十分な時間をかけて血中の未結合抗体が血流から除去された後、標的化可能なコンジュゲートを投与してもよく、次いで、これが標的細胞または組織に局在する多重特異性抗体または融合タンパク質と結合する。このようなプレターゲティング法は、治療薬を標的細胞または組織に、正常な細胞または組織よりも優先的に送達させることにより、治療指数を向上させる。プレターゲティングの方法は当該分野で公知である(例えば、それぞれその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,361,774号;第6,962,702号;第7,074,403号;第7,201,890号;第7,230,084号;第7,230,085号および第7,429,381号を参照されたい。)
【0062】
この治療法は、薬学的に許容される媒体中で製剤化された少なくとも1つの治療有効量の治療薬を、対象に同時または順次投与することによりさらに補完することができ、ここで、治療薬は、好ましくは、薬学的に許容される媒体中で製剤化された細胞毒性薬、放射性標識、免疫調節薬、ホルモン、光活性治療薬またはそれらの組み合わせである。
【0063】
さらに、抗体融合タンパク質を、少なくとも1つの治療薬と結合した少なくとも1つのMAbを含む治療有効量の治療用コンジュゲートと共に、対象に同時または順次投与することができ、ここで、上記コンジュゲートのMAb成分は、好ましくはCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、CD138、B7、MUC1、Ia、HM1.24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、ED−Bフィブロネクチン、癌遺伝子、癌遺伝子産物、CD66a〜d、壊死抗原、Ii、IL−2、IL−6、T101、TAC、IL−6、TRAIL−R1(DR4)およびTRAIL−R2(DR5)と反応するMAbからなる群より選択される、薬学的に許容される媒体中で製剤化された少なくとも1つのヒト化、キメラ、ヒトまたはマウス(非ヒト対象に対して)MAbを含む。抗体融合タンパク質自体を治療薬とコンジュゲートさせることができため、2つ以上の治療薬を抗体成分と結合させるための媒体が提供され、これらの治療薬は異なる上記薬剤の組合せまたは同じ薬剤の組合せ、例えば、異なる2つの治療用放射性標識などであり得る。
【0064】
対象におけるB細胞リンパ腫または白血病または自己免疫疾患の診断法または検出法も包含され、この方法は、リンパ腫、白血病または自己免疫細胞と結合する抗CD19MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含む診断用コンジュゲートを、ヒトを含めた哺乳動物および家畜およびイヌ、ネコ、ウサギ、モルモットのような伴侶ペットなどの対象に投与することを含み、ここで、抗CD19MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントは、薬学的に許容される媒体中で製剤化された少なくとも1つの診断薬と結合している。有用な診断薬は本明細書に記載されている。
【0065】
抗体の調製
モノクローナル抗体(MAb)は、特定抗原に対する均一な抗体の集団であり、抗体は1種のみの抗原結合部位を含み、抗原決定基上の1つのエピトープのみと結合する。特定抗原に対するげっ歯類モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法により入手し得る。例えば、KohlerおよびMilstein,Nature 256:495(1975)ならびにColiganら(編),CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,VOL.1,p.2.5.1−2.6.7(John Wiley & Sons 1991)[以下「Coligan」]を参照されたい。簡潔に述べれば、抗原を含む組成物をマウスに注射し、血清試料を採取して抗体産生の存在を確認し、脾臓を取り出してBリンパ球を得、このBリンパ球をミエローマ細胞と融合してハイブリドーマを作製し、このハイブリドーマをクローニングし、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択して、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、このハイブリドーマ培養液から抗体を単離することにより、モノクローナル抗体を得ることができる。
【0066】
MAbは、十分に確立された様々な技術によりハイブリドーマ培養液から単離および精製することができる。このような単離技術としては、プロテインAセファロースを用いたアフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Coliganのp.2.7.1−2.7.12およびp.2.9.1−2.9.3を参照されたい。また、Bainesら,「Purification of Immunoglobulin G(IgG)」,in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,VOL.10,p.79−104(The Humana Press,Inc.1992)も参照されたい。
【0067】
免疫原に対する抗体の初回産生の後、抗体の配列を決定し、次いで組換え技術により調製することができる。マウス抗体および抗体フラグメントのヒト化およびキメラ化は、当業者に公知である。例えば、マウス免疫グロブリンの重および軽可変鎖由来のマウス相補性決定領域を、ヒト定常領域配列と結合したヒト可変ドメイン内に移し、次いで、フレームワーク領域内の選択されたヒト残基をそのマウス対応物と置換することにより、ヒト化モノクローナル抗体を作製する。置換に好適なFR残基としては、CDR残基と近接または隣接しているFR残基の他、抗体の安定性および/または発現レベルに影響を与える残基が挙げられる。ヒト化モノクローナル抗体に由来する抗体成分の使用により、マウス定常領域の免疫原性に関連した潜在的問題が未然に防止される。
【0068】
マウス免疫グロブリン可変ドメインの一般的なクローニング技術は、例えば、その内容全体が参照により組み込まれる、Orlandiらの刊行物、Proc.Nat'l Acad.Sci.USA,86:3833(1989)により開示されている。キメラ抗体の構築技術は当業者に公知である。一例として、Leungら,Hybridoma,13:469(1994)では、抗CD22抗体であるLL2モノクローナル抗体のVkおよびVHドメインをコードするDNA配列を、それぞれヒトおよびIgG1定常領域ドメインと組み合わせることにより、LL2キメラが作製された。この刊行物では、それぞれVkおよびVHである、LL2軽および重鎖可変領域のヌクレオチド配列も提供されている。ヒト化MAbの作製技術は、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、Jonesら,Nature 321:522(1986),Riechmannら,Nature 332:323(1988),Verhoeyenら,Science 239:1534(1988),Carterら,Proc.Nat'l Acad.Sci.USA 89:4285(1992),Sandhu,Crit.Rev.Biotech.12:437(1992)およびSingerら,J.Immun.150:2844(1993)により記載されている。
【0069】
キメラ抗体は、げっ歯類の抗体のような1種類の動物に由来するCDRを含む可変領域を含むと同時に、抗体分子の残りの部分、すなわち定常領域はヒト抗体に由来する組換えタンパク質である。したがって、キメラMAbの可変ドメイン内のマウスFR配列を1つまたは複数の異なるヒトFRで置換することにより、キメラモノクローナル抗体をヒト化することもできる。具体的には、マウスCDRを、マウス免疫グロブリンの重および軽可変鎖からヒト抗体の対応する可変ドメイン内に移す。単にマウスCDRをヒトFR内に移すだけでは抗体親和性の減少または喪失さえも生じることが多いため、マウス抗体の元の親和性を復元するためにさらなる改変が必要とされる場合がある。これは、FR領域内の1つまたは複数のヒト残基をそのマウス対応物で置換して、そのエピトープに対する良好な結合親和性を有する抗体を得ることにより達成される。例えば、Tempestら,Biotechnology 9:266(1991)およびVerhoeyenら,Science 239:1534(1988)を参照されたい。
【0070】
抗体を作製する別の方法は、トランスジェニック家畜の乳中での産生によるものである。例えば、共にその内容全体が参照により組み込まれる、Colman,A.,Biochem.Soc.Symp.,63:141−147,1998;米国特許第5,827,690号を参照されたい。対になった免疫グロブリンの重および軽鎖をコードするDNAセグメントをそれぞれ含む、2つのDNA構築物を調製する。DNAセグメントを、乳腺上皮細胞内で優先的に発現されるプロモーター配列を含む発現ベクター内にクローニングする。例としては、ウサギ、ウシおよびヒツジカゼイン遺伝子、ウシラクトグロブリン遺伝子、ヒツジラクトグロブリン遺伝子ならびにマウスホエイ酸タンパク質遺伝子由来のプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、挿入されたフラグメントの3'側に乳腺特異的遺伝子由来の同族ゲノム配列が隣接する。これにより、ポリアデニル化部位および転写物安定化配列が得られる。発現カセットを哺乳動物受精卵の前核内に同時注入し、次いで、これをレシピエント雌の子宮内に移植し、妊娠させる。出生後、仔をサザンブロット解析により両導入遺伝子の存在に関してスクリーニングする。抗体が存在するためには、重および軽鎖の両遺伝子が同一細胞内で同時に発現されなければならない。トランスジェニック雌由来の乳を、当該分野で公知の標準的な免疫学的方法を用いて抗体または抗体フラグメントの存在および機能性に関して解析する。当該分野で公知の標準的な方法を用いて、抗体を乳から精製することができる。
【0071】
完全ヒト抗体、すなわちヒト抗CD19MAbまたはその他のヒト抗体、例えば抗CD22、抗CD23、抗CD20、抗CD74もしくは抗CD21MAbなどをトランスジェニック非ヒト動物から得ることができる。例えば、その内容全体が参照により組み込まれる、Mendezら,Nature Genetics,15:146−156(1997);米国特許第5,633,425号を参照されたい。例えば、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックマウスから回収することができる。このマウス体液性免疫系は、内在性免疫グロブリン遺伝子を不活性化しヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することにより、ヒト化されている。ヒト免疫グロブリン遺伝子座は非常に複雑であり、全体でヒトゲノムのほぼ0.2%を占める多数の分離したセグメントを含む。トランスジェニックマウスが適切な抗体レパートリーを確実に産生できるように、ヒト重および軽鎖遺伝子座の大部分をマウスゲノム内に導入しなくてはならない。これは、生殖系列配置内ヒト重または軽鎖免疫グロブリン遺伝子座を含む酵母人工染色体(YAC)の形成から始まる段階的な工程において達成される。各挿入断片は約1Mbのサイズであるため、YAC構築物は免疫グロブリン遺伝子座の重複フラグメントの相同組換えを必要とする。1つが重鎖遺伝子座を含み、1つが軽鎖遺伝子座を含む2つのYACを、YAC含有酵母スフェロプラストとマウス胚性幹細胞とを融合させることにより、マウス内に別々に導入する。次いで、胚性幹細胞クローンをマウス胚盤胞内に微量注入する。得られたキメラ雄動物を、生殖系列を介したYAC伝達能に関してスクリーニングし、マウス抗体産生が欠損したマウスと交配させる。一方がヒト重鎖遺伝子座を含み、もう一方がヒト軽鎖遺伝子座を含む2つのトランスジェニック系統を交配することにより、免疫化に応答してヒト抗体を産生する子孫が作出される。
【0072】
二重特異性MAbを作製するさらなる最新の方法は、追加のシスチン残基を有するためより一般的な免疫グロブリンアイソタイプよりも強く架橋する、操作された組換えMAbを含む。例えば、FitzGeraldら,Protein Eng.10(10):1221−1225,1997を参照されたい。別のアプローチは、必要とされる二重特異性を有する2つ以上の異なる一本鎖抗体または抗体フラグメントセグメントを連結する組換え融合タンパク質の設計である。例えば、Colomaら,Nature Biotech.15:159−163,1997を参照されたい。分子工学を用いて様々な二重特異性融合タンパク質を作製することができる。例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Altら,FEBS Lett.454:90−4(1999)を参照されたい。一形態では、二重特異性融合タンパク質は、例えば、1つの抗原に対する単一の結合部位を有するscFvと、第二の抗原に対する単一の結合部位を有するFabフラグメントからなる。別の形態では、二重特異性融合タンパク質は、例えば、1つの抗原に対する2つの結合部位を有するIgGと、第二の抗原に対する2つの結合部位を有するscFvからなる。
【0073】
2つ以上の異なる一本鎖抗体または抗体フラグメントを連結する二重特異性融合タンパク質が同様の方法で作製される。組換え法を用いて様々な融合タンパク質を作製することができる。例えば、ヒト化モノクローナル抗CD19抗体由来のFabフラグメントとマウス抗diDTPA由来のscFvとを含む融合タンパク質を作製することができる。GGGS(配列番号:22)のような柔軟なリンカーは、scFvを抗CD19抗体の重鎖定常領域と連結させる。あるいは、scFvを別のヒト化抗体の軽鎖定常領域と連結させることができる。重鎖FdとscFvのインフレーム連結に必要な適当なリンカー配列を、PCR反応によりVLおよびVkドメイン内に導入する。次いで、scFvをコードするDNAフラグメントを、CH1ドメインをコードするDNA配列を含むステージングベクター内に連結する。得られたscFv−CH1構築物を切り出し、抗CD19抗体のVH領域をコードするDNA配列を含むベクター内に連結する。得られたベクターを用いて、二重特異性融合タンパク質発現のための哺乳動物細胞のような適当な宿主細胞をトランスフェクトすることができる。
【0074】
より最近では、ペプチドまたはタンパク質エフェクターの実質的に任意の組合せを含む非常に効率的な構築物形成を提供するために、ドック・アンド・ロック(dock−and−lock)(DNL)として知られる新規な技術が開発されている(例えば、それぞれその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20060228357号;第20060228300号;第20070086942号;第20070140966号および第20070264265号を参照されたい)。様々な組合せにより、構築物はタンパク質またはペプチドエフェクターに限定されず、タンパク質またはペプチドと結合させ得る化学療法薬のような他の種類のエフェクター物質を含み得る。この技術では、アンカリングドメインと呼ばれる相補的タンパク質結合ドメインおよび二量体化/ドッキングドメインを利用し、これらは互いに結合して、二量体から、三量体、四量体、五量体および六量体に及ぶ複合体構造を会合させる。これらは、大規模な精製を必要とせずに安定な複合体を高収率で形成する。DNL技術により、裸の抗体部分としてまたは様々な他のエフェクター分子、例えば免疫調節薬、酵素、化学療法薬、ケモカイン、サイトカイン、診断薬、治療薬、放射性核種、造影剤、抗血管新生薬、増殖因子、オリゴヌクレオチド、ホルモン、ペプチド、毒素、アポトーシス促進剤またはそれらの組み合わせなどと組み合わさった、単一特異性、二重特異性または多重特異性抗体の会合が可能となる。二重特異性または多重特異性抗体を作製するための当該分野で公知の任意の技術を、本願で特許請求される方法の実施において利用し得る。
【0075】
既知の抗体
特定の実施形態、例えば、異なる抗原標的に対する抗CD19抗体および別の抗体を組み込んだ二重特異性または多重特異性抗体を含む実施形態では、新たに抗体を作製するよりも、市販または公知の抗体を用いるほうが好ましい場合がある。様々な既知の販売元から有用な抗体を購入し得る。例えば、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA)から様々な抗体分泌ハイブリドーマ系が入手可能である。腫瘍関連抗原を非限定的に含めた様々な疾患標的に対する数多くの抗体がATCCに寄託され、および/または可変領域配列が公開されており、特許請求される方法および組成物での使用のために入手可能である。例えば、米国特許第7,312,318号;第7,282,567号;第7,151,164号;第7,074,403号;第7,060,802号;第7,056,509号;第7,049,060号;第7,045,132号;第7,041,803号;第7,041,802号;第7,041,293号;第7,038,018号;第7,037,498号;第7,012,133号;第7,001,598号;第6,998,468号;第6,994,976号;第6,994,852号;第6,989,241号;第6,974,863号;第6,965,018号;第6,964,854号;第6,962,981号;第6,962,813号;第6,956,107号;第6,951,924号;第6,949,244号;第6,946,129号;第6,943,020号;第6,939,547号;第6,921,645号;第6,921,645号;第6,921,533号;第6,919,433号;第6,919,078号;第6,916,475号;第6,905,681号;第6,899,879号;第6,893,625号;第6,887,468号;第6,887,466号;第6,884,594号;第6,881,405号;第6,878,812号;第6,875,580号;第6,872,568号;第6,867,006号;第6,864,062号;第6,861,511号;第6,861,227号;第6,861,226号;第6,838,282号;第6,835,549号;第6,835,370号;第6,824,780号;第6,824,778号;第6,812,206号;第6,793,924号;第6,783,758号;第6,770,450号;第6,767,711号;第6,764,688号;第6,764,681号;第6,764,679号;第6,743,898号;第6,733,981号;第6,730,307号;第6,720,15号;第6,716,966号;第6,709,653号;第6,693,176号;第6,692,908号;第6,689,607号;第6,689,362号;第6,689,355号;第6,682,737号;第6,682,736号;第6,682,734号;第6,673,344号;第6,653,104号;第6,652,852号;第6,635,482号;第6,630,144号;第6,610,833号;第6,610,294号;第6,605,441号;第6,605,279号;第6,596,852号;第6,592,868号;第6,576,745号;第6,572;856号;第6,566,076号;第6,562,618号;第6,545,130号;第6,544,749号;第6,534,058号;第6,528,625号;第6,528,269号;第6,521,227号;第6,518,404号;第6,511,665号;第6,491,915号;第6,488,930号;第6,482,598号;第6,482,408号;第6,479,247号;第6,468,531号;第6,468,529号;第6,465,173号;第6,461,823号;第6,458,356号;第6,455,044号;第6,455,040号;第6,451,310号;第6,444,206号;第6,441,143号;第6,432,404号;第6,432,402号;第6,419,928号;第6,413,726号;第6,406,694号;第6,403,770号;第6,403,091号;第6,395,276号;第6,395,274号;第6,387,350号;第6,383,759号;第6,383,484号;第6,376,654号;第6,372,215号;第6,359,126号;第6,355,481号;第6,355,444号;第6,355,245号;第6,355,244号;第6,346,246号;第6,344,198号;第6,340,571号;第6,340,459号;第6,331,175号;第6,306,393号;第6,254,868号;第6,187,287号;第6,183,744号;第6,129,914号;第6,120,767号;第6,096,289号;第6,077,499号;第5,922,302号;第5,874,540号;第5,814,440号;第5,798,229号;第5,789,554号;第5,776,456号;第5,736,119号;第5,716,595号;第5,677,136号;第5,587,459号;第5,443,953号;第5,525,338号(抗体可変領域および/またはCDR配列および/または抗体産生ハイブリドーマ細胞系のATCCアクセッション番号に関して、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。これらは単なる例に過ぎず、他にも様々な抗体およびそのハイブリドーマが当該分野で公知である。当業者は、目的とする選択された疾患関連標的に対する抗体をATCC、NCBIおよび/またはUSPTOデータベースで検索するだけで、ほぼあらゆる疾患関連抗原に対する抗体配列または抗体分泌ハイブリドーマも入手し得ることを理解するであろう。クローン抗体の抗原結合ドメインを当該分野で公知の標準的技術を用いて、増幅し、切り出して、発現ベクター内に連結し、適合する宿主細胞内にトランスフェクトして、タンパク質産生に使用し得る。
【0076】
抗体フラグメントの産生
特異的エピトープを認識する抗体フラグメントを既知の方法により作製することができる。抗体フラグメントとは、F(ab')、Fab'、F(ab)、Fab、Fv、sFvなどのような、抗体の抗原結合部分のことである。その他の抗体フラグメントとしては、抗体分子のペプシン消化により作製することができるF(ab')フラグメントおよびF(ab')フラグメントのジスルフィド架橋の還元により作製することができるFab’フラグメント挙げられるが、これらに限定されない。あるいはFab'発現ライブラリーを構築して(Huseら,1989,Science,246:1274−1281)、所望の特異性を有するモノクローナルFab'フラグメントを迅速かつ簡便に同定することが可能である。
【0077】
一本鎖Fv分子(scFv)は、VLドメインおよびVHドメインを含む。VLおよびVHドメインが会合して標的結合部位を形成する。これら2つのドメインは、ペプチドリンカー(L)によりさらに共有結合する。scFv分子は、VLドメインがscFv分子のN末端部分であればVL−L−VH、またはVHドメインがscFv分子のN末端部分であればVH−L−VLと表される。scFv分子の作製および適切なペプチドリンカーの設計方法は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,704,692号、米国特許第4,946,778号、R.RaagおよびM.Whitlow,“Single Chain Fv.” FASEB Vol9:73−80(1995)ならびにR.E.BirdおよびB.W.Walker,“Single Chain Antibody Variable Regions,” TIBTECH,Vol9:132−137(1991)に記載されている。
【0078】
抗体フラグメントは、完全長抗体のタンパク質分解性加水分解あるいはそのフラグメントをコードする大腸菌(E.coli)または別のDNA宿主により調製することができる。抗体フラグメントは、従来の方法により、完全長抗体のペプシンまたはパパイン消化により得ることができる。例えば、抗体をペプシンで酵素切断して、F(ab)と表される5Sフラグメントを得ることにより、抗体フラグメントを作製することができる。このフラグメントを、チオール還元剤および任意でジスルフィド結合の切断により生じるスルフィドリル基の保護基を用いてさらに切断し、一価の3.5SFabフラグメントを得ることができる。あるいは、パパインを用いた酵素切断により2つの一価Fabフラグメントおよび1つのFcフラグメントを直接得る。これらの方法は、例えば、Goldenbergにより、米国特許第4,036,945号および第4,331,647号およびそれらに含まれる参考文献(その内容全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。また、Nisonoffら,Arch Biochem.Biophys.89:230(1960);Porter,Biochem.J.73:119(1959),Edelmanら,in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL.1,p.422(Academic Press 1967)およびColiganのp.2.8.1−2.8.10および2.10.−2.10.4を参照されたい。
【0079】
抗体フラグメントの別の形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRは、抗体が結合するエピトープに対して構造的に相補的な抗体可変領域のセグメントであり、他の可変領域よりも変化が大きい。したがって、CDRは超可変領域と呼ばれることがある。可変領域は3つのCDRを含む。CDRペプチドは、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することにより得ることができる。このような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することにより調製される。例えば、Larrickら,Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106(1991);Courtenay−Luck,“Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies,” in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION,Ritterら(編),p.166−179(Cambridge University Press 1995);およびWardら,“Genetic Manipulation and Expression of Antibodies,” in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS,Birchら,(編),p.137−185(Wiley−Liss,Inc.1995)を参照されたい。
【0080】
フラグメントがインタクトな抗体により認識されるものと同じ抗体と結合する限り、抗体を切断するその他の方法、例えば、重鎖の分離による一価の軽−重鎖フラグメントの形成、フラグメントのさらなる切断あるいはその他の酵素的、化学的または遺伝的技術なども使用し得る。
【0081】
多重特異性抗体および多価抗体
抗CD19抗体の他、併用療法に使用するための異なる特異性を有するその他の抗体を、CD19エピトープもしくは抗原に対する少なくとも1つの結合部位およびCD19上の別のエピトープもしくは別の抗原に対する少なくとも1つの結合部位を含む多重特異性抗体、あるいは同じエピトープまたは抗原に対する複数の結合部位を含む多価抗体として作製することもできる。
【0082】
二重特異性の抗体または抗体フラグメントは、標的細胞マーカーと特異的に結合する少なくとも1つの結合領域および標的化可能なコンジュゲートと特異的に結合する少なくとも1つの他の結合領域を有し得る。標的化可能なコンジュゲートは、二重特異性の抗体または抗体フラグメントの少なくとも1つの結合領域により認識される少なくとも1つのエピトープを含むかまたはそれを有する担体部分を含む。様々な組換え法を用いて上述の二重特異性の抗体および抗体フラグメントを作製することができる。
【0083】
抗CD19多価抗体も意図される。この多価の標的結合タンパク質は、第一と第二のポリペプチドの会合により構築される。第一のポリペプチドは、好ましくは免疫グロブリン軽鎖可変領域ドメインである第一の免疫グロブリン様ドメインと共有結合した第一の一本鎖Fv分子を含む。第二のポリペプチドは、好ましくは免疫グロブリン重鎖可変領域ドメインである第二の免疫グロブリン様ドメインと共有結合した第二の一本鎖Fv分子を含む。第一および第二の各一本鎖Fv分子が標的結合部位を形成し、第一と第二の免疫グロブリン様ドメインが会合して第三の標的結合部位を形成する。
【0084】
LをリンカーとするVL−L−VH配置の一本鎖Fv分子は、VH−L−VL配置の別の一本鎖Fv分子と会合して二価二量体を形成し得る。この場合、第一scFvのVLドメインと第二scFvのVHドメインが会合して1つの標的結合部位を形成すると同時に、第一scFvのVHドメインと第二scFvのVLドメインが会合して別の標的結合部位を形成する。
【0085】
別の実施形態は、非共有結合で会合して3つの結合部位を形成する2つの異種ポリペプチド鎖を含む三価の抗CD19二重特異性標的化タンパク質であり、3つの結合部位うち2つが1つの標的に対する親和性を有し、第三の結合部位が、診断薬および/または治療薬の担体と結合するように作製することができるハプテンに対する親和性を有する。好ましくは、この結合タンパク質は、2つのCD19結合部位と1つのCD22結合部位を有する。この二重特異性三価標的化薬剤は2つの異なるscFvを有し、1つのscFvが、別の抗体のVLドメインと短いリンカーで連結された1つの抗体由来のVHドメインを2つ含み、かつ第二のscFvが、もう一方の抗体のVHドメインと短いリンカーで連結された第一抗体由来のVLドメインを2つ含む。VHおよびVLドメインから多重特異性多価薬剤を作製するための方法では、多価かつ多重特異性の任意の薬剤を1つのVH鎖と1つのVL鎖の会合により作製できるように、宿主内のDNAプラスミドから合成される各鎖がVHドメインだけからなる(VH鎖)か、またはVLドメインだけからなる(VL鎖)。例えば、三価の三重特異性薬剤を形成する場合、VH鎖は、可変長のペプチドリンカーにより連結された、それぞれ異なる特異性の抗体由来の3つのVHドメインのアミノ酸配列からなり、VL鎖は、VH鎖に使用されるものと同様のペプチドリンカーにより連結された相補的なVLドメインからなる。抗体のVHおよびVLドメインは逆平行型で会合するため、本発明の好適な方法では、VL鎖中のVLドメインはVH鎖中のVHドメインと逆の順序で配置されている。
【0086】
ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)およびテトラボディ(tetrabody)
抗CD19抗体を用いて機能的な二重特異性一本鎖抗体(bsAb)を調製することができ、これはダイアボディとも呼ばれ、組換え法を用いて哺乳動物細胞内で作製することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Mackら,Proc.Natl.Acad.Sci,92:7021−7025,1995を参照されたい。例えば、組換え法を用いて、グリシン−セリンリンカーにより2つの一本鎖Fvフラグメントを連結することによりbsAbを作製する。標準的なPCR法を用いて、目的の2つの抗体のV軽鎖(VL)およびV重鎖(VH)ドメインを単離する。次いで、各ハイブリドーマから得られたVLおよびVHのcDNAを二段階の融合PCRで連結して一本鎖フラグメントを形成する。第一のPCR段階では(Gly4−Serl)(配列番号:23)リンカーを導入し、第二の段階ではVLアンプリコンとVHアンプリコンを連結する。次いで、各一本鎖分子を細菌発現ベクター中にクローニングする。増幅後、一方の一本鎖分子を切り出して、目的の第二の一本鎖分子を含む別のベクター中にサブクローニングする。得られたbsAbフラグメントを真核発現ベクター中にサブクローニングする。このベクターをCHO細胞、Sp2/0細胞またはSp−EEE細胞内にトランスフェクトすることにより、機能性タンパク質の発現が得られる。同様の方法で二重特異性融合タンパク質を調製する。
【0087】
例えば、ヒト化、キメラまたはヒト抗CD19モノクローナル抗体を用いて、抗原特異的ダイアボディ、トリアボディおよびテトラボディを作製することができる。単一特異性ダイアボディ、トリアボディおよびテトラボディは、標的抗原と選択的に結合し、分子上の結合部位の数が増加するほど、所望の位置において標的細胞に対する親和性が増大し、より長い滞留時間が観測される。ダイアボディには、5つのアミノ酸残基リンカーによりヒト化抗CD19MAbのVKポリペプチドと連結されたヒト化抗CD19MAbのVHポリペプチドを含む2つの鎖が利用される。各鎖はヒト化抗CD19ダイアボディの半分を形成する。トリアボディの場合、リンカーを用いずにヒト化抗CD19MAbのVKポリペプチドと連結されたヒト化抗CD19MAbのVHポリペプチドを含む3つの鎖が利用される。各鎖はhCD19トリアボディの三分の一を形成する。
【0088】
本明細書に記載の二重特異性ダイアボディは、最終的には、後に続く診断薬または治療薬の特異的送達のためのCD19陽性腫瘍プレターゲティングに使用される。これらのダイアボディは、標的抗原と選択的に結合し、所望の位置での親和性増大および滞留時間増加を可能にする。さらに、非抗原結合ダイアボディが体内から迅速に除去され、正常組織の曝露が最小限となる。クリアランス速度を増大させるための二重特異性抗体点突然変異は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮出願第60/361,037号に見られる。親和性増大のための二重特異性ダイアボディは、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第10/270,071号、第10/270,073号および第10/328,190号に開示されている。
【0089】
診断薬および治療薬は、アイソトープ、薬物、毒素、サイトカイン、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、増殖因子、コンジュゲート、放射性核種および金属を含み得る。例えば、ガドリニウム金属は磁気共鳴映像法(MRI)に使用される。放射線核種の例は、225Ac、18F、68Ga、67Ga、90Y、86Y、111In、1311、1251、123I、99mTc、94mTc、186Re、188Re、177Lu、62Cu、64Cu、67Cu、212Bi、213Bi、32P、11C、13N、150、76Brおよび211Atである。他の放射性核種、特に60〜4,000keVのエネルギー範囲の放射性核種も診断薬および治療薬として利用可能である。
【0090】
ごく最近では、二重特異性を有する四価タンデムダイアボディ(tandabと呼ぶ)が報告されている(Cochloviusら,Cancer Research(2000)60:4336−4341)。二重特異性tandabは2つの同一ポリペプチドの二量体であり、それぞれが、自己会合の際に2つの異なる特異性それぞれに対する2つの潜在的な結合部位の形成を促進する配向で連結された、2つの異なる抗体の4つの可変ドメイン(VH1、VL1、VH2、VL2)を含む。
【0091】
コンジュゲートされた抗CD19抗体
別の実施形態は、コンジュゲートされた抗CD19抗体に関する。多価多重特異性薬剤のための組成物および方法は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2002年12月24日に出願された米国特許出願第60/436,359号および2003年4月23日に出願された米国特許出願第60/464,532号に記載されている。
【0092】
追加のアミノ酸残基をポリペプチドのNまたはC末端に付加し得る。追加のアミノ酸残基は、ペプチドタグ、シグナルペプチド、サイトカイン、酵素(例えば、プロドラッグ活性化酵素)、ホルモン、シュードモナスエキソトキシンのようなペプチド毒素、ペプチド薬物、細胞毒性タンパク質またはその他の機能性タンパク質を含み得る。本明細書で使用される場合、機能性タンパク質とは生物学的機能を有するタンパク質のことである。
【0093】
一実施形態では、薬物、毒素、放射性化合物、酵素、ホルモン、オリゴヌクレオチド、細胞毒性タンパク質、キレート、サイトカインおよびその他の機能性薬剤を、好ましくは標的結合タンパク質のアミノ酸残基の側鎖、例えば、アミン、カルボキシル、フェニル、チオールまたはヒドロキシル基との共有結合により、標的結合タンパク質とコンジュゲートし得る。従来の様々なリンカー、例えば、ジイソシアナート、ジイソチオシアナート、ビス(ヒドロキシスクシンイミド)エステル、カルボジイミド、マレイミド−ヒドロキシスクシンイミドエステル、グルタルアルデヒドなどをこの目的に使用し得る。薬剤と結合タンパク質とのコンジュゲーションは、好ましくは、タンパク質のその標的との結合特異性または親和性に大きな影響を与えない。本明細書で使用される場合、機能性薬剤とは生物学的機能を有する薬剤のことである。好適な機能性薬剤は細胞毒性薬である。
【0094】
上述のように、酵素も有用な治療薬である。例えば、リン酸含有プロドラッグと併用されるアルカリホスファターゼ(米国特許第4,975,278号);硫酸含有プロドラッグと併用されるアリールスルファターゼ(米国特許第5,270,196号);ペプチドベースのプロドラッグと併用されるペプチダーゼおよびプロテアーゼ、例えば、セラチアプロテアーゼ、サーモリシン、スブチリシン、カルボキシペプチダーゼ(米国特許第5,660,829号;第5,587,161号;第5,405,990号)およびカテプシン(カテプシンBおよびLを含む)など;D−アミノ酸修飾プロドラッグと併用されるD−アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化プロドラッグ(米国特許第5,561,119号;第5,646,298号)と併用されるβ−ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼのような炭水化物切断酵素;ベータラクタム含有プロドラッグと併用されるベータラクタマーゼ;アミノ窒素においてフェノキシアセトアミドまたはフェニルアセトアミド基で誘導体化された薬物と併用されるペニシリン−V−アミダーゼ(米国特許第4,975,278号)のようなペニシリンアミダーゼ;および5−フルオロシトシンベースのプロドラッグ(米国特許第4,975,278号)と併用されるシトシンデアミナーゼ(米国特許第5,338,678号;第5,545,548号)が適切な治療薬である。
【0095】
さらに他の実施形態では、治療薬またはプロドラッグポリマーのインビボ標的への二重特異性抗体介在性の送達を放射性核種の二重特異性抗体送達と組み合わせて、併用化学療法および放射免疫療法を達成することができる。各治療法を標的化可能なコンジュゲートとコンジュゲートして同時に投与することができ、または核種を第一の標的化可能なコンジュゲートの一部として投与し、薬物を第二の標的化可能なコンジュゲートの一部として後の段階で投与することができる。
【0096】
別の実施形態では、細胞毒性薬をポリマー担体とコンジュゲートしてもよく、次いで、ポリマー担体を多価標的結合タンパク質とコンジュゲートしてもよい。この方法に関しては、参照により本明細書に組み込まれる、Ryserら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75:3867−3870,1978、米国特許第4,699,784号および米国特許第4,046,722号を参照されたい。コンジュゲーションは、好ましくは、結合タンパク質の結合特異性または親和性に大きな影響を与えない。
【0097】
治療および診断のためのヒト化、キメラおよびヒト抗体
本明細書に記載のヒト化、キメラおよびヒトモノクローナル抗体、すなわち、抗CD19MAbおよびその他のMAbは、治療法および診断法での使用に適している。したがって、本発明では、裸の抗体として単独で、または投与計画に一時的に従うが治療薬とコンジュゲートせずに集学的治療として投与される、ヒト化、キメラおよびヒト抗体の投与が意図される。裸の抗CD19MAbの効力は、1つまたは複数の他の裸の抗体、すなわち特定抗原、例えばCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、CD138、B7、MUC1、Ia、HM1.24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、ED−Bフィブロネクチン、癌遺伝子、癌遺伝子産物、CD66a〜d、壊死抗原、Ii、IL−2、T101、TAC、IL−6、TRAIL−R1(DR4)およびTRAIL−R2(DR5)などに対するMabで、薬物、毒素、免疫調節薬、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、治療用放射性核種などを含めた治療薬とコンジュゲートされた、抗CD19または上記抗原に対する抗体の1つまたは複数のイムノコンジュゲートで、MAbと同時または順次または所定の投与計画に従って投与される、薬物、毒素、酵素、オリゴヌクレオチド、免疫調節薬、ホルモン、治療用放射性核種などを含めた1つまたは複数の治療薬で、裸の抗体を補完することにより増強することができる。
【0098】
好適なB細胞抗原としては、ヒトCD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD46、CD52、CD74、CD80およびCD5抗原と同等の抗原が挙げられる。好適なT細胞抗原としては、ヒトCD4、CD8およびCD25(IL−2受容体)抗原と同等の抗原が挙げられる。HLA−DR抗原の同等物は、B細胞およびT細胞両障害の治療に使用することができる。特に好適なB細胞抗原は、ヒトCD19、CD20、CD22、CD21、CD23、CD74、CD80およびHLA−DR抗原と同等の抗原である。特に好適なT細胞抗原は、ヒトCD4、CD8およびCD25抗原と同等の抗原である。CD46は、補体依存性溶解(CDC)を阻止する癌細胞表面上の抗原である。
【0099】
さらに本発明では、B細胞リンパ腫およびその他の疾患もしくは障害における診断的および治療的使用のためのイムノコンジュゲートの投与が意図される。本明細書に記載のイムノコンジュゲートは、抗体成分と、診断薬または治療薬を有し得るペプチドを含めた治療薬または診断薬とを含む分子である。イムノコンジュゲートは抗体成分の免疫応答性を保持している、すなわち、同種の抗原との抗体部分の結合能が、コンジュゲーション後にコンジュゲーション前と比べてほぼ同じかまたはわずかに減少している。
【0100】
様々な診断用および治療用試薬を特許請求される抗体と都合よくコンジュゲートさせることができる。ここで挙げられる治療薬は、上記裸の抗体と別々に投与するのにも有用な薬剤である。治療薬としては、例えば、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、エピドフィロトキシン、タキサン、抗代謝薬、アルキル化剤、抗生物質、COX−2阻害剤、抗有糸分裂薬、抗血管新生薬ならびにアポトーシス薬、具体的にはドキソルビシン、メトトレキサート、タキソール、CPT−11、カンプトテカン、プロテオソーム阻害剤およびこれらおよびその他の種類の抗癌剤由来のもの、サリドマイドおよび誘導体、オリゴヌクレオチド、具体的にはアンチセンスおよびRNAiオリゴヌクレオチド(例えば、bcl−2に対する)などが挙げられる。イムノコンジュゲートおよび抗体融合タンパク質の調製に有用なその他の癌化学療法薬剤としては、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホナート、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、白金配位錯体、酵素、ホルモンなどが挙げられる。適切な化学療法薬は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES,第19版,(Mack Publishing Co.1995)およびGOODMAN AND GILMAN’S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS,第7版,(MacMillan Publishing Co.1985)ならびにこれらの刊行物の改訂版に記載されている。実験薬のようなその他の適切な化学療法薬は当業者に公知である。
【0101】
さらに、DTPA、DOTA、TETAもしくはNOTAのようなキレート剤または適切なペプチドに対して蛍光分子または重金属もしくは放射性核種のような細胞毒性薬などの検出可能な標識を、特許請求される抗体とコンジュゲートすることができる。例えば、光活性剤または色素を抗体複合体とコンジュゲートすることにより、治療に有用なイムノコンジュゲートを得ることができる。蛍光色素のような蛍光組成物およびその他の色素原もしくは可視光に高感度なポルフィリンのような色素が、病変に適切な光を当てて病変を治療するために使用されてきた。治療では、これは光線照射法、光線療法または光線力学療法と呼ばれている(Joriら(編),PHOTODYNAMIC THERAPY OF TUMORS AND OTHER DISEASES(Libreria Progetto 1985);van den Bergh,Chem.Britain 22:430(1986)。
【0102】
さらに、光線療法を達成するためにモノクローナル抗体を光活性色素と結合させてきた。Mewら,J.Immunol.130:1473(1983);同,Cancer Res.45:4380(1985);Oseroffら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8744(1986);同,Photochem.Photobiol.46:83(1987);Hasanら,Prog.Clin.Biol.Res.288:471(1989);Tatsutaら,Lasers Surg Med.9:422(1989);Pelegrinら,Cancer 67:2529(1991)。しかし、こうした以前の研究には、特に抗体フラグメントまたはサブフラグメントを使用した内視鏡治療応用の使用が含まれていなかった。したがって、本発明では、光活性薬剤または色素を含むイムノコンジュゲートの治療的使用が意図される。
【0103】
また、診断薬として放射性および非放射性薬剤の使用も本発明により意図される。適切な非放射性診断薬は、磁気共鳴映像法、コンピュータ断層撮影法または超音波に適した造影剤である。磁気造影剤としては、本発明の抗体と共に使用する場合、例えば、2−ベンジル−DTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体を含めた金属キレート化合物と錯体化した、マンガン、鉄およびガドリニウムのような非放射性金属が挙げられる。その内容全体が参照により組み込まれる、2001年10月10日に出願された米国特許出願第09/921,290号を参照されたい。
【0104】
さらに、放射標識された抗体またはイムノコンジュゲートは、画像診断法に有用なガンマ放射する放射性同位元素または陽電子放射体を含み得る。特に60〜4,000keVのエネルギー範囲にある適切な放射性同位元素としては、131I、123I、124I、86Y、62Cu、64Cu、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15O、75Brなどが挙げられる。例えば、造影の目的で18F,68Ga,94mTcなどのような陽電子放射体を開示し、その内容全体が参照により組み込まれる、米国特許仮出願第60/342,104号を参照されたい。
【0105】
シュードモナスエキソトキシンのような毒素も、抗CD19抗体の抗体融合タンパク質と複合体形成するか、またはその治療薬部分を形成し得る。このようなコンジュゲートまたはその他の融合タンパク質の調製に適切に使用される他の毒素としては、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシンおよびシュードモナスエンドトキシンが挙げられる。例えば、Pastanら,Cell 47:641(1986)およびGoldenberg,C A−A CancerJournal for Clinicians 44:43(1994)を参照されたい。本発明での使用に適したさらなる毒素は当業者に既知であり、その内容全体が参照により組み込まれる、米国特許第6,077,499号に開示されている。
【0106】
サイトカインのような免疫調節薬も、抗体融合タンパク質とコンジュゲートされるか、またはその治療薬部分を形成するか、またはヒト化抗CD19抗体と共に投与され得る。本発明に適したサイトカインとしては、以下に記載されているインターフェロンおよびインターロイキンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
イムノコンジュゲートの調製
任意の抗体または抗体融合タンパク質を1つまたは複数の治療薬または診断薬とコンジュゲートすることができる。一般的には、1つの治療薬または診断薬を各抗体または抗体フラグメントと結合させるが、同じ抗体または抗体フラグメントに2つ以上の治療薬または診断薬を結合させることができる。抗体融合タンパク質は2つ以上の抗体またはそのフラグメントを含んでもよく、この融合タンパク質を構成する各抗体は治療薬または診断薬を含み得る。さらに、抗体融合タンパク質の1つまたは複数の抗体は、結合した治療薬または診断薬を2つ以上有し得る。さらに、これらの治療薬は同じである必要はなく、異なる治療薬であってもよい。例えば、同じ融合タンパク質に薬物と放射性同位元素を結合させることができる。具体的には、IgGを131Iで放射標識し、さらに薬物と結合させることができる。131IをIgGのチロシン内に組み込み、薬物をIgGリジンのイプシロンアミノ基と結合させることができる。治療薬および診断薬は共に、還元SH基および炭水化物側鎖と結合させることもできる。
【0108】
二重特異性抗体はプレターゲティング法に有用であり、対象に治療薬または診断薬を送達するための好適な方法を提供する。米国特許出願第09/382,186号では、二重特異性抗体を用いたプレターゲティングの方法が開示されており、ここでは、二重特異性抗体が125Iで標識されて対象に送達され、次いで、99mTcで標識された二価ペプチドが送達される。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第09/823,746号(Hansenら)および第10/150,654号(Goldenbergら)にもプレターゲティング法が記載されている。送達の結果、125Iおよび99mTcの優れた腫瘍/正常組織比が得られる。既知の治療薬または診断薬の任意の組合せを用いて、抗体および抗体融合タンパク質を標識することができる。MAbコンジュゲートの抗体成分の結合特異性、治療薬もしくは診断薬の効力および抗体Fc部分のエフェクター活性は、コンジュゲートの標準的な試験により測定することができる。
【0109】
治療薬または診断薬をジスルフィド結合形成により、還元抗体成分のヒンジ領域に結合させることができる。別の方法として、このようなペプチドをN−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロプリオナート(SPDP)のようなヘテロ二官能性架橋剤を用いて、抗体成分と結合させることができる。Yuら,Int.J.Cancer 56:244(1994)。このようなコンジュゲーションの一般的技術は当該分野で公知である。例えば、Wong,CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS−LINKING(CRC Press 1991);Upeslacisら,“Modification of Antibodies by Chemical Methods,” in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS,Birchら(編),p.187−230(Wiley−Liss,Inc.1995);Price,“Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies,” in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION,Ritterら(編),p.60−84(Cambridge University Press 1995)を参照されたい。
【0110】
あるいは、治療薬または診断薬を抗体Fc領域の炭水化物部分を介して結合させることができる。炭水化物基を用いて、チオール基と結合する同じペプチドの付加量を増加させることができ、または炭水化物部分を用いて異なるペプチドを結合させることができる。
【0111】
抗体の炭水化物部分を介してペプチドと抗体成分をコンジュゲートする方法は、当業者に公知である。例えば、すべてその内容全体が参照により組み込まれる、Shihら,Int.J.Cancer 41:832(1988);Shihら,Int.J.Cancer 46:1101(1990);およびShihら,米国特許第5,057,313号を参照されたい。一般的な方法では、酸化された炭水化物部分を有する抗体成分を、少なくとも1つの遊離アミン官能基を有し、かつ複数のペプチドが付加された担体ポリマーと反応させる。この反応により最初にSchiff塩基(イミン)結合が生じ、これが還元により第二級アミンに安定化されて、最終的なコンジュゲートを形成する。
【0112】
イムノコンジュゲートの抗体成分として使用される抗体が抗体フラグメントである場合、Fc領域が存在しない。しかし、完全長抗体または抗体フラグメントの軽鎖可変領域内に炭水化物部分を導入することが可能である。例えば、すべてその内容全体が参照により組み込まれる、Leungら,J.Immunol.154:5919(1995);Hansenら,米国特許第5,443,953号(1995),Leungら,米国特許第6,254,868号を参照されたい。設計された炭水化物部分を使用して治療薬または診断薬を結合させる。
【0113】
薬学的に許容される賦形剤
対象に送達されるヒト化、キメラおよびヒト抗CD19MAbは、MAbのみ、イムノコンジュゲート、融合タンパク質から構成され得るか、あるいは1つもしくは複数の薬学的に適切な賦形剤、1つもしくは複数の追加成分またはこれらの組合せを含み得る。
【0114】
イムノコンジュゲートまたは裸の抗体を既知の方法に従い製剤化して薬学的に有用な組成物を調製し、これにより、イムノコンジュゲートまたは裸の抗体を混合物中で薬学的に適切な賦形剤と組み合わせることができる。滅菌リン酸緩衝生理食塩水が薬学的に適切な賦形剤の一例である。その他の適切な賦形剤は当業者に公知である。例えば、Anselら,PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,第5版(Lea & Febiger 1990)およびGennaro(編),REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES,第18版(Mack Publishing Company 1990)ならびにこれらの改訂版を参照されたい。
【0115】
イムノコンジュゲートまたは裸の抗体を、例えば、ボーラス注入または持続注入による静脈内投与用に製剤化することができる。注入用の製剤は、単位投与剤形、例えば、保存剤を添加したアンプルまたは複数回投与容器で提供される。組成物は、油性または水性媒体中の懸濁剤、液剤または乳剤としての形態をとることができ、懸濁化、安定化および/または分散剤のような製剤化剤を含有し得る。あるいは、有効成分は、使用前に適切な媒体、例えば、滅菌無発熱物質水との組成のために粉末形態であり得る。
【0116】
さらなる薬学的方法を用いて、治療用もしくは診断用コンジュゲートまたは裸の抗体の作用持続時間を制御し得る。イムノコンジュゲートまたは裸の抗体と複合体形成するまたはこれを吸収するポリマーの使用により、放出制御製剤を調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エチレン−co−ビニル酢酸)のマトリックスおよびステアリン酸二量体とセバシン酸のポリ酸無水物コポリマーのマトリックスが挙げられる。Sherwoodら,Bio/Technology 10:1446(1992)。このようなマトリックスからのイムノコンジュゲートまたは抗体の放出速度は、イムノコンジュゲートまたは抗体の分子量、マトリックス内のイムノコンジュゲート、抗体の量および分散された粒子のサイズに依存する。Saltzmanら,Biophys.J.55:163(1989);Sherwoodら,上記。その他の固形剤形は、Anselら,PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,第5版,(Lea & Febiger 1990)およびGennaro(編),REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES,第18版,(Mack Publishing Company 1990)ならびにこれらの改訂版に記載されている。
【0117】
イムノコンジュゲート、抗体融合タンパク質または裸の抗体を哺乳動物の皮下にまたは他の非経口経路によっても投与し得る。さらに投与は、持続投与によるものでも、あるいは単回または複数回ボーラス投与によるものであり得る。一般に、ヒトに対して投与されるイムノコンジュゲート、融合タンパク質または裸の抗体の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身の健康状態および既往歴のような因子により異なる。通常、単回静脈内注入として約1mg/kg〜20mg/kgの範囲の投与量のイムノコンジュゲート、抗体融合タンパク質または裸の抗体を受容者に提供することが望ましいが、状況により、これよりも低いまたは高い用量も投与し得る。この投与量を必要に応じて、例えば、週1回で4〜10週間、好ましくは週1回で8週間、より好ましくは週1回で4週間繰り返し得る。隔週で数ヶ月間のような、より低頻度でも投与し得る。投与量および計画を適当に調節して様々な非経口経路で投薬を行い得る。
【0118】
治療目的で、イムノコンジュゲート、融合タンパク質または裸の抗体を哺乳動物に治療有効量投与する。適する対象は通常、ヒトであるが、非ヒトの動物対象も意図される。抗体製剤は、投与される量が生理学的に意味のある場合、「治療有効量」投与されるという。薬剤は、その存在が受容哺乳動物の生理に検出可能な変化をもたらす場合、生理学的に意味がある。具体的には、抗体製剤は、その存在が抗腫瘍応答を引き起こすか、あるいは自己免疫疾患状態の徴候または症状を軽減する場合、生理学的に意味がある。生理学的に意味のある作用は、受容哺乳動物における体液性および/または細胞性免疫応答の誘起でもあり得る。
【0119】
治療法
本発明では、B細胞障害および他の疾患治療用の主要組成物としての裸のまたはコンジュゲートされた抗CD19抗体の使用が意図される。具体的には、本発明に記載の組成物は、様々な自己免疫疾患のみならず、緩徐進行型のB細胞リンパ腫、高悪性度型のB細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症にも特に有用である。例えば、ヒト化抗CD19抗体成分およびイムノコンジュゲートを用いて、緩徐進行および高悪性度両型の非ホジキンリンパ腫を治療することができる。
【0120】
上述のように、抗体は様々な自己免疫疾患の診断および治療にも適する。このような疾患としては、急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎(thromboangitis ubiterans)、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、乾癬および線維性肺胞炎が挙げられる。このような疾患に対する最も一般的な治療法は、非常に有害となり得る副腎皮質ステロイド剤および細胞毒性薬剤である。これらの薬物は免疫系全体も抑制し、重篤な感染症を引き起こす可能性があり、さらに骨髄、肝臓および腎臓に対する副作用を有する。III型自己免疫疾患を治療するために使用されてきたその他の治療薬は、T細胞およびマクロファージに対するものであった。
【0121】
治療用組成物は、少なくとも1つのヒト化、キメラまたはヒトモノクローナル抗CD19抗体を単独で、あるいは他のヒト化、キメラもしくはヒト抗体のような他の抗体、治療薬または免疫調節薬と共に含有する。特に完全ヒト抗体との併用療法が意図される。
【0122】
同じまたは異なるエピトープまたは抗原に対する裸のまたはコンジュゲートされた抗体も組み合わせ得る。例えば、裸のヒト化、キメラまたはヒト抗CD19抗体を別の裸のヒト化、キメラもしくはヒト抗CD19と、または裸の抗CD20、抗CD22もしくは他のB細胞系列抗体と組み合わせ得る。裸のヒト化、キメラまたはヒト抗CD19抗体を抗CD19イムノコンジュゲートまたは抗CD22放射性コンジュゲートと組み合わせ得る。裸の抗CD22抗体を、アイソトープ、1つもしくは複数の化学療法薬、サイトカイン、毒素またはそれらの組み合わせとコンジュゲートされた、ヒト化、キメラまたはヒト抗CD19抗体と組み合わせ得る。ヒト化、キメラまたはヒト抗CD19抗体と毒素または免疫調節薬との融合タンパク質あるいは少なくとも2つの異なるB細胞抗体の融合タンパク質(例えば、抗CD19/抗CD22MAbまたは抗CD19/抗CD20MAb)も使用し得る。上に列挙したB細胞障害と関連する少なくとも2つの異なる抗原を標的とする、多くの異なる抗体の組み合わせを、裸の抗体として、あるいは治療薬または免疫調節薬とコンジュゲートして、あるいは細胞毒性薬剤、サイトカインまたは放射性核種のような別の治療薬と単に組み合わせて構築し得る。
【0123】
本明細書で使用される「免疫調節薬」という用語は、サイトカイン、幹細胞増殖因子、腫瘍壊死因子(TNF)のようなリンホトキシン、およびインターロイキン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−21およびIL−18)のような造血因子、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF))、インターフェロン(例えば、インターフェロン−アルファ、−ベータおよび−ガンマ)、「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子、エリスロポエチンおよびトロンボポエチンを包含する。適する免疫調節薬部分の例としては、IL−2、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21、インターフェロン、TNFなどが挙げられる。あるいは、対象は、裸の抗CD19抗体を受け、さらにサイトカインを別に投与され得るが、サイトカインは裸の抗CD19抗体投与の前、同時または後に投与され得る。上述のように、抗CD19抗体を免疫調節薬とコンジュゲートし得る。また免疫調節薬を異なる抗原と結合する1つまたは複数の抗体からなるハイブリッド抗体とコンジュゲートし得る。
【0124】
集学的治療は、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、CD138、B7、MUC1、Ia、HM1.24、HLA−DR(可変鎖を含む)、テネイシン、VEGF、PlGF、ED−Bフィブロネクチン、癌遺伝子、癌遺伝子産物、CD66a〜d、壊死抗原、Ii、IL−2、T101、TAC、IL−6、TRAIL−R1(DR4)およびTRAIL−R2(DR5)と結合する抗体を裸の抗体、融合タンパク質の形態であるいはイムノコンジュゲートとして投与することで補完される、裸の抗CD19抗体による免疫療法をさらに包含する。これらの抗体は、これら抗原決定基上の少なくとも1つのエピトープを認識するポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒトまたはヒト化抗体を包含する。抗CD19および抗CD22抗体は当業者に既知である。例えば、その内容全体が参照により組み込まれる、Ghetieら,Cancer Res.48:2610(1988);Hekmanら,Cancer Immunol.Immunother.32:364(1991);Longo,Curr.Opin.Oncol.8:353(1996)および米国特許第5,798,554号および第6,187,287号を参照されたい。B細胞抗体による自己免疫障害の免疫療法は当該技術分野において記載されている。例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第0074718A1号を参照されたい。
【0125】
別の形態の集学的治療では、対象は裸の抗CD19抗体および/またはイムノコンジュゲートを標準的な癌化学療法と併用して受ける。例えば、「CVB」(1.5g/mシクロホスファミド、200〜400mg/mエトポシドおよび150〜200mg/mカルムスチン)が非ホジキンリンパ腫の治療に使用されるレジメンである。Pattiら,Eur.J.Haematol.51:18(1993)。他の適切な併用化学療法レジメンは当業者に公知である。例えば、Freedmanら,“Non−Hodgkin's Lymphomas,” in CANCER MEDICINE,VOLUME2,第3版,Hollandら(編),p.2027−2068(Lea & Febiger 1993)を参照されたい。例として、中悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)治療の第一世代の化学療法レジメンは、C−MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジンおよびプレドニゾン)およびCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン)を含む。有用な第二世代の化学療法レジメンは、m−BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾンおよびロイコボリン)であり、一方、適切な第三世代レジメンは、MACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシンおよびロイコボリン)である。さらなる有用な薬剤としては、フェニルブチレートおよびブリオシタチン−1が挙げられる。B細胞腫瘍を含めた特定の悪性腫瘍に対する治療薬として、アンチセンスbcl−2オリゴヌクレオチドも臨床試験中である。好適な集学的治療では、化学療法薬とサイトカインの両方を抗体、イムノコンジュゲートまたは融合タンパク質と共投与する。サイトカイン、化学療法薬および抗体もしくはイムノコンジュゲートは、任意の順序でまたは同時に投与し得る。
【0126】
好適な一実施形態では、週に1回200〜400mg/mの用量で連続4週間のヒト化抗CD19抗体注入(2〜8時間にわたる静注)によりNHLを治療し、必要に応じて翌月/年も繰り返す。また、上記のように4週間の注入によりNHLを治療するが、同じ日にエピラツズマブ(抗−CD22ヒト化抗体)を360mg/mの用量で、抗CD19モノクローナル抗体注入の前、間または後に1時間にわたる静注投与により併用するのも好ましい。また、イットリウム90(数週間または数ヶ月間にわたる1回または複数回の注射として5〜35mCi/mの間のY90の用量で)のような治療用アイソトープで放射標識された抗−CD22MAbの1回または複数回の注射と併用して、上記のように4週間の抗CD19抗体注入によりNHLを治療するのもさらに好ましい。抗CD19MAbを同様のレジメンで、hA20ヒト化MAbのような抗CD20MAb(2003年2月14日に出願された米国特許出願第10/366,709号)と併用してもよく、これにより、1サイクル当たり週1回用量を4週、任意でサイクルを繰り返して、それぞれ250mg/mの用量の各抗体が静注で一緒に投与される。特に自己免疫疾患を有する患者の治療のために、抗体の一方または両方を皮下注射により投与することができ、これにより、同様の用量が隔週で投与される。
【0127】
さらに治療用組成物は、異なる非遮断CD19エピトープに対する裸のモノクローナル抗CD19抗体の混合物またはハイブリッド分子を含有し得る。したがって、本発明では、少なくとも2つのCD19エピトープと結合するモノクローナル抗CD19抗体の混合物を含む治療用組成物が意図される。
【0128】
抗CD19抗体はB細胞リンパ腫および自己免疫疾患治療のための主要な治療用組成物であるが、補助的薬剤、例えば、IFN−アルファ、IFN−ベータおよびIFN−ガンマを含めたインターフェロン、IL−1、IL−2、IL−6、IL−12、IL−15、IL−18、IL−21を含めたインターロイキンならびにG−CSFおよびGM−CSFを含めたサイトカインのような免疫調節薬などで裸の抗体を補完することにより、このような抗体療法の効力を増強することができる。したがって、抗CD19抗体は、(別々にまたは所定の投与計画で投与される)混合物としてまたは抗CD19抗体とのコンジュゲートもしくは融合タンパク質として、抗体およびサイトカインと組み合わせ得るだけでなく、薬物との組合わせとして投与することもできる。例えば、抗CD19抗体を4剤化学療法レジメンとしてCHOPと組み合わせ得る。さらに、裸の抗CD19抗体を、NHL治療のための合剤として、裸の抗CD22抗体および/または裸の抗CD20抗体ならびにCHOPまたはフルダラビンと組み合わせ得る。補完用の治療用組成物は、抗CD19抗体投与の前、同時または後に投与し得る。
【0129】
上述のように、抗体をB細胞リンパ腫および白血病およびその他のB細胞疾患もしくは障害の治療に使用することができる。抗体を不必要なまたは望ましくないB細胞活性または増殖を伴う任意の疾患または症候群の治療に使用し得る。例えば、抗CD19抗体を用いて、III型自己免疫疾患を含めたB細胞関連の自己免疫疾患を治療することができる。抗体を移植片対宿主病のようなB細胞疾患の治療または移植免疫抑制療法のために使用することもできる。
【0130】
抗CD19抗体はまた、CD19抗原を発現する細胞内でアポトーシスを誘導し得る。この誘導の証拠は文献において裏付けられている。例えば、架橋した抗CD19MAbのIgG1−Fcと反応するFc受容体を有するリンパ球細胞を用いて、アポトーシスが誘導され得ることが示された。Shanら,Cancer Immunol.Immunother.48(12):673−683(2000)を参照されたい。さらに、キメラ抗CD19MAbの凝集体、すなわちホモポリマーがアポトーシスを誘導することが報告された。Ghetieら,Blood 97(5):1392−1398(2000)およびGhetieら,Proc.Natl.Acad.Sci USA 94(14):7509−7514(1997)を参照されたい。抗アポトーシス遺伝子ファミリーbcl−2の1つまたは複数のメンバーの活性を阻害する薬剤のようなアポトーシス促進剤の同時使用により、抗体のアポトーシス促進活性の増強を達成し得る。アンチセンスおよびRNAi薬剤はこの点で特に有用であり、本明細書に記載の抗CD19抗体とのコンジュゲーションによりB細胞に向けることができる。
【0131】
B細胞のCD19表面抗原に特異的な抗体を哺乳動物対象に注射し、次いでこれを正常および悪性の両B細胞と結合させることができる。哺乳動物対象は、ヒトならびにイヌおよびネコのようなペットを含めた家畜を包含する。CD19抗原に対する種交差反応性が存在する場合、抗CD19MAb、すなわち、ヒト化、キメラ、ヒトさらにはマウスの抗CD19MAbを用いて、非ヒト哺乳動物対象を治療することができる。以下の実施例10および11を参照されたい。ヒトにおいて免疫原性であるマウスMAbは通常、非ヒト哺乳動物対象においては免疫原性が弱い。CD19表面抗原と結合する抗CD19抗体は、腫瘍性B細胞の破壊および枯渇をもたらす。正常および悪性B細胞は共にCD19抗原を発現し、抗CD19抗体がB細胞の死をもたらす。しかし、正常なB細胞のみが再増殖し、悪性B細胞は根絶されるかまたは著しく減少する。さらに、腫瘍を破壊する可能性のある化学薬剤または放射性標識を、薬剤が腫瘍性B細胞に特異的に標的化されるように抗CD19抗体とコンジュゲートすることができる。
【0132】
発現ベクター
ヒト化、キメラまたはヒト抗CD19MAbをコードするDNA配列を、核酸の複製をもたらす様々な既知の宿主ベクター内に組換え操作することができる。これらのベクターは、既知の方法を用いて、それが送達される細胞中の核酸の転写、翻訳またはその両方を指令するのに必要なエレメントを含むよう設計することができる。既知の方法論を用いて、適切な転写/翻訳制御シグナルと作動可能に連結されたタンパク質コード配列を有する発現構築物を作製することができる。これらの方法は、インビトロの組換えDNA技術および合成技術を含む。例えば、Sambrookら,1989,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratory(New York);Ausubelら,1997,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons(New York)を参照されたい。
【0133】
使用に適するベクターは、ウイルスまたは非ウイルスであり得る。ウイルスベクターの具体例としては、アデノウイルス、AAV、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルスおよびレトロウイルスのベクターが挙げられる。非ウイルスベクターの例はプラスミドである。好適な一実施形態では、ベクターはプラスミドである。
【0134】
本発明に記載の発現ベクターは、宿主細胞内で発現される遺伝子を含むポリヌクレオチドである。通常、遺伝子発現は、構成的または誘導性プロモーター、組織特異的調節エレメントおよびエンハンサーを含めた特定の調節エレメントの制御下に置かれている。このような遺伝子は、調節エレメントと「作動可能に連結されている」という。
【0135】
好ましくは、発現ベクターは、重および軽鎖の可変および定常領域を含むヒト化、キメラまたはヒト抗CD19MAbをコードするDNA配列を含む。しかし、一方が重鎖の可変および定常領域を含み、もう一方が軽鎖の可変および定常領域を含む、2つの発現ベクターを使用し得る。さらに好ましくは、発現ベクターは、プロモーター、分泌シグナルペプチドをコードするDNA配列、ヒトIgG1重鎖定常領域をコードする遺伝子配列、Igエンハンサーエレメントおよび選択可能なマーカーをコードする少なくとも1つのDNA配列をさらに含む。
【0136】
また、ヒト化抗CD19MAbを発現する方法も本明細書において意図され、この方法は、(i)ヒト化、キメラまたはヒト抗CD19MAbをコードするDNA配列を含む少なくとも1つの発現ベクターの直線化、(ii)少なくとも1つの上記直線化ベクターによる哺乳動物細胞のトランスフェクション、(iii)マーカー遺伝子を発現するトランスフェクト細胞の選択および(iv)ヒト化抗CD19MAbを分泌する細胞のトランスフェクト細胞からの同定を含む。
【0137】
抗CD19抗体の作製法
一般に、抗CD19MAbをコードするVkおよびVH配列は、RT−PCR、5'−RACEおよびcDNAライブラリースクリーニングのような様々な分子クローニング法により得ることができる。具体的には、マウスまたはキメラ抗CD19MAbを発現する細胞から、PCR増幅により抗CD19MAbのV遺伝子をクローニングし、次いで配列決定することができる。その信頼性を確認するために、クローニングされたVLおよびVH遺伝子を、参照により組み込まれるOrlandiら,(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86:3833(1989))による記載のようにキメラAbとして細胞培養中で発現させることができる。次いで、V遺伝子配列に基づき、ヒト化抗CD19MAbを、参照により本明細書に組み込まれるLeungら(Mol.Immunol.,32:1413(1995))による記載のように設計および構築することができる。一般的なクローニング技術(Sambrookら,Molecular Cloning,A laboratory manual,第2版(1989))により、マウスまたはキメラ抗CD19MAbを産生する任意の既知のハイブリドーマ系またはトランスフェクト細胞系からcDNAを調製することができる。プライマーVk1BACKおよびVk1FOR(Orlandiら,1989)または参照により本明細書に組み込まれるLeungら(BioTechniques,15:286(1993))により記載されている伸長プライマーセットを用いて、MAbのVK配列を増幅し得るのに対し、VH配列は、プライマーペアVH1BACK/VH1FOR(Orlandiら,1989)または参照により本明細書に組み込まれるLeungら(Hybridoma,13:469(1994))により記載されているマウスIgG定常領域とアニールするプライマーを用いて増幅し得る。
【0138】
第一鎖cDNA産物10μl、10×PCR緩衝液[500mM KCl、100mM Tris−HCl(pH8.3)、15mM MgClおよび0.01%(w/v)ゼラチン](Perkin Elmer Cetus,Norwalk,Conn.)10μl、dNTP各250μM、プライマー200nMおよびTaqDNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus)5単位を含むPCR反応混合物を30サイクルのPCRに供することができる。各PCRサイクルは、好ましくは、94℃で1分間の変性、50℃で1.5分間のアニーリングおよび72℃で1.5分間のポリメライゼーションからなる。増幅されたVKおよびVHフラグメントを2%アガロース(BioRad,Richmond,Calif.)で精製することができる。同様に、ヒト化V遺伝子を、Leungら(Mol.Immunol.,32:1413(1995))による記載のように、長いオリゴヌクレオチド鋳型合成とPCR増幅の組み合わせにより構築することができる。ヒト化V遺伝子構築で使用する自動RNA/DNA合成装置(Applied Biosystems,Foster City,Calif.)でのオリゴAおよびオリゴBの合成に関しては、実施例3を参照されたい。
【0139】
VKに対するPCR産物を、Igプロモーター、シグナルペプチド配列およびVKのPCR産物のインフレーム連結促進に好都合な制限部位を含む、pBR327ベースのステージングベクターであるVkpBRのようなステージングベクター中にサブクローニングすることができる。VHに対するPCR産物を、pBluescriptベースのVHpBSのような同様のステージングベクター中にサブクローニングすることができる。各PCR産物を含むそれぞれのクローンを、例えば、Sangerら(Proc.Natl.Acad.ScL,USA,74:5463(1977))の方法により配列決定し得る。
【0140】
プロモーターおよびシグナルペプチド配列と共にVKおよびVHを含む発現カセットをそれぞれVKpBRおよびVHpBSから、二重制限消化によりHindIII−BamHIフラグメントとして切り出すことができる。次いで、VKおよびVH発現カセットをそれぞれpKhおよびpGlgのような適当な発現ベクター内に連結することができる(Leungら,Hybridoma,13:469(1994))。発現ベクターを適当な細胞、例えば、骨髄腫Sp2/0−Ag14またはSp−EEE内にコトランスフェクトし、ハイグロマイシン耐性のコロニーを選択し、上清液を、例えばELISAアッセイにより、キメラまたはヒト化抗CD19MAb産生に関して測定することができる。あるいは、VKおよびVH発現カセットを改変ステージングベクターであるYKpBR2およびVHpBS2内に構築し、それぞれXbaI/BamHIおよびXhoI/BamHIフラグメントとして切り出し、Gillesら(J.Immunol.Methods 125:191(1989))により記載され、また細胞内での発現に関してLosmanら(Cancer,80:2660(1997))でも示されている、pdHL2のような単一発現ベクター中にサブクローニングする。有用な別のベクターは、Barnesら,Cytotechnology 32:109−123(2000)に記載されているGSベクターであり、好ましくはNSO細胞系およびCHO細胞で発現される。その他の適当な哺乳動物発現系が、Wernerら,Arzneim.−Forsch./Drug Res.48(II),Nr.8,870−880(1998)に記載されている。
【0141】
コトランスフェクションおよびELISAによる抗体分泌クローンのアッセイを以下のように行うことができる。Coら,J.Immunol.,148:1149(1992)に従い、約10μgのVkpKh(軽鎖発現ベクター)および約20μgのVHpG1g(重鎖発現ベクター)を用いて、エレクトロポレーション(BioRad,Richmond,Calif.)により5×10個のSP2/0骨髄腫細胞のトランスフェクションを行うことができる。トランスフェクション後、細胞を96ウェルマイクロタイタープレート内でHSFM培地(Life Technologies,Inc.,Grand Island,N.Y.)中、37℃、5%COで増殖させ得る。2日後に、ハイグロマイシン選択培地(Calbiochem,San Diego,Calif.)をハイグロマイシンの最終濃度500単位/mlで添加することにより、選択工程を開始することができる。コロニーは通常、エレクトロポレーション後2〜3週間で出現する。次いで、さらなる分析のために培養を拡大することができる。
【0142】
キメラまたはヒト化重鎖分泌に関して陽性であるトランスフェクトーマをELISAアッセイにより同定することができる。簡潔には、トランスフェクトーマ培養上清試料(約100μl)を、ヤギ抗ヒト(GAH)−IgG、F(ab')2フラグメント特異的抗体(Jackson ImmunoResearch,West Grove,Pa.)でプレコートしたELISAマイクロタイタープレートに3連で添加する。プレートを室温で1時間インキュベートする。緩衝液(0.05%ポリソルベート20を含むPBS)で3回洗浄して未結合タンパク質を除去する。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)をコンジュゲートしたGAH−IgG、Fcフラグメント特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)をウェル(最終濃度1.0μg/mlまで非コンジュゲート抗体を補充した、10倍希釈の抗体ストック100μl)に添加する。1時間のインキュベーション後、プレートを通常は3回洗浄する。反応溶液[PBS中、オルトフェニレン−ジアミン(OPD)(Sigma,St.Louis,Mo.)167μg、過酸化水素0.025%を含む、100μl]をウェルに添加する。30分間暗所で発色させる。各ウェルに4N HCl 50μlを添加することにより反応を停止させた後、自動ELISAリーダー(Bio−Tek instruments,Winooski,Vt.)で490nmでの吸光度を測定する。次いで、結合したキメラ抗体を無関係キメラ抗体標準品(Scotgen,Ltd.,Edinburg,Scotlandから入手可能)と比較して判定する。
【0143】
抗体は、以下のように細胞培地から単離することができる。トランスフェクトーマ培養物を無血清培地に適応させる。キメラ抗体産生用に、HSFMを用いたローラーボトル中で500mlの培養物として細胞を増殖させる。培養物を遠心分離し、上清を0.2μm膜でろ過する。ろ過した培地を流速1ml/分でプロテインAカラム(1×3cm)に通す。次いで、樹脂を約10カラム容量のPBCで洗浄し、10mM EDTAを含む0.1Mグリシン緩衝液(pH3.5)でプロテインA結合抗体をカラムから溶出する。1.0mlの画分を3M Tris(pH8.6)10μlを含むチューブに回収し、280/260nmでの吸光度からタンパク質濃度を測定する。ピーク画分をプールし、PBSに対して透析し、抗体を、例えばCentricon30(Amicon,Beverly,Mass.)で濃縮する。抗体濃度を上記のようにELISAで測定し、その濃度をPBSを用いて約1mg/mlに調整する。0.01%(w/v)アジ化ナトリウムを保存剤として適宜添加する。
【0144】
抗CD19抗体を調製するために使用されるプライマーのヌクレオチド配列を以下に挙げる:
【0145】
hA19VkA 5'−ATCACTTGTA AGGCCAGCCA AAGTGTTGAT TATGATGGTG ATAGTTATTT GAACTGGTAC CAGCAGATTC CAGGGAAAGC ACCTAAATTG TTGATCTACG ATGCTTCGAA TCTAGTTTCT GGTATC−3’(配列番号:24)
【0146】
hA19VkB 5'−TGCTGACAGT GATATGTTGC AATGTCTTCT GGTTGAAGAG AGCTGATGGT GAAAGTGTAA TCTGTCCCAG ATCCGCTGCC AGAGAATCGA GGAGGGATAC CAGAAACTAG ATTCGAAGCA TCGTA−3'(配列番号:25)
【0147】
hA19VkBack 5'−TCCGACATCC AGCTGACCCA GTCTCCATCA TCTCTGAGCG CATCTGTTGG AGATAGGGTC ACTATCACTT GTAAGGCCAG CCAAAG−3'(配列番号:26)
【0148】
hA19VkFor 5'−GCTCCTTGAG ATCTGTAGCT TGGTCCCTCC ACCGAACGTC CACGGATCTT CAGTACTTTG CTGACAGTGA TATGTTGCAA T−3'(配列番号:27)
【0149】
hA19VHA 5'−CTGGCTACGC TTTCAGTAGC TACTGGATGA ACTGGGTGAG GCAGAGGCCT GGACAGGGTC TTGAGTGGAT TGGACAGATT TGGCCTGGAG ATGGTGATAC TAACTACAAT GGAAAGTTCA AGGGGCGCGC CACTATT−3'(配列番号:28)
【0150】
hA19VHB 5'−CGTAGTCTCC CGTCTTGCAC AAGAATAGAA CGCTGTGTCC TCAGATCGTA GGCTGCTGAG TTCCATGTAG GCTGTATTAG TGGATTCGTC GGCAGTAATA GTGGCGCGCC CCTTGAACTT TCCATTGTA−3'(配列番号:29)
【0151】
hA19VHBack 5'−CAGGTCCAAC TGCAGCAATC AGGGGCTGAA GTCAAGAAAC CTGGGTCATCG GTGAAGGTCTC CTGCAAGGCT TCTGGCTACG CTTTCAGTAG C−3’(配列番号:30)
【0152】
hA19VHFor 5'−TGAGGAGACG GTGACCGTGG TCCCTTGGCC CCAGTAGTCC ATAGCATAGT AATAACGGCC TACCGTCGTA GTCTCCCGTC TTGCACAAG−3'(配列番号:31)
【実施例】
【0153】
本発明は、例示のためのみに提供される以下の実施例を参照することにより、さらに説明される。本発明は実施例に限定されるのではなく、本明細書で提供される教示から明らかなすべての変更を包含する。
【0154】
実施例1.ヒト化抗CD19抗体の構築
キメラA19(cA19)抗体を作製し、Sp2/0細胞内で発現させた。cA19のVk(配列番号:1および配列番号:3)およびVH(配列番号:3および配列番号:4)配列を図1に示す。cA19抗体は、Raji、DaudiおよびRamosのようなCD19+ヒトリンパ腫細胞系と結合することが示された。他の抗CD19抗体、例えば、B4(Coulter)およびBU12(Chembiochem)に対する細胞表面競合結合アッセイにより、精製cA19のAg結合特異性を評価した。簡潔には、様々な濃度のcA19を、一定量のI−125放射標識抗CD19抗体の存在下でRaji細胞と1時間インキュベートした。洗浄して未結合抗体を除去した後、細胞表面に結合した放射標識抗体を、ガンマカウンターで細胞ペレットを計数することにより定量化した。図2に示されるように、cA19は細胞表面結合に関してBU12(Chembiochem)と競合したが、このことは、この抗体がCD19分子と同様のまたは重複するエピトープを共有することを示している。
【0155】
ヒト化抗hCD19抗体(hA19)をコードする軽鎖および重鎖可変領域配列を設計し構築した。cA19の可変(V)領域フレームワーク(FR)配列(図1Aおよび1B)をKabatデータベース内の登録ヒト抗体と比較したところ、cA19VKのFRがヒト抗体REI(VK)のFRと高度の配列相同性を示すのに対し、VH配列はヒト抗体EU(VH)のFRと最も密接に関連していることが示された。しかし、ヒト抗体NEWMのVH FR4配列はcA19のFRとよりよくアラインされ、A19重鎖ヒト化のためのEU FR4配列と置き換えるために使用した(図3B)。したがって、ヒトREIフレームワーク配列をVkのために使用し(図3A)、EUおよびNEWMフレームワーク配列の組合せをVHのために使用した(図3B)。最初のヒト抗体フレームワークと比べた場合、CDR領域外の各鎖には数多くのアミノ酸変化が存在する。これらの残基は、VKの4L、39I、58I、6OP、87H、10OGおよび107K(図3A)ならびにVHの108T(図3B)である。hA19VKおよびVHのDNAおよびアミノ酸配列をそれぞれ図4Aおよび4Bに示す。
【0156】
実施例2.hA19抗体の構築法
CDR結合hA19VHおよびVKの遺伝子を操作するために、Leungら(1995)の記載による方法の変法を用いて、長いオリゴヌクレオチド合成とPCRの組合せを使用して、hA19の設計されたVKおよびVH遺伝子を構築した。簡潔には、V配列の5'−(センス鎖、Aと称する)および3'−ハーフ(アンチセンス鎖、Bと称する)に相当する2つの長い合成オリゴヌクレオチド(長さ約130mer)をPCR反応の鋳型として使用する。長いオリゴヌクレオチドAおよびBの3'−末端配列を、互いが重複し、かつ相補的になるように設計する。AおよびBの3'−末端をアニーリングして、残りの長いオリゴヌクレオチド(一本鎖)が隣接する短い二本鎖DNAを形成することによりPCRを開始した。各アニール末端が一本鎖DNA複製のためのプライマーとして働く結果、AおよびBが伸長して二本鎖DNAを形成する。2つの短いオリゴヌクレオチドプライマーの存在下、二本鎖DNAのPCR増幅によりV遺伝子セグメントを生成する。
【0157】
重鎖
hA19VHドメイン構築のために、長いオリゴヌクレオチドhA19VHA(配列番号:28、126mer)およびhA19VHB(配列番号:29、128mer)を自動DNA合成装置(Applied Biosy stems)で合成した。hA19VHAはhA19VHドメインのヌクレオチド74〜126に相当し、hA19VHBはヌクレオチド178〜306に相補的なhA19VHドメインのマイナス鎖に相当する。hA19VHAとVHBの3'−末端配列(33ヌクレオチド残基)は互いに相補的である。最小量のhA19VHAおよびVHB(実験的に決定)を、10μLの10×PCR緩衝液(500mM KCl、100mM Tris−HCl緩衝液,pH8.3、15mM MgCl)、2μmolのhA19VHBack(5’−CAGGTCCAAC TGCAGCAATC AGGGGCTGAA GTCAAGAAAC CTGGGTCATCG GTGAAGGTCTC CTGCAAGGCT TCTGGCTACG CTTTCAGTAG C−3' 配列番号:30)およびhA19VHFor(5'−TGAGGAGACG GTGACCGTGG TCCCTTGGCC CCAGTAGTCC ATAGCATAGT AATAACGGCC TACCGTCGTA GTCTCCCGTC TTGCACAAG−3' 配列番号:31)ならびに2.5単位のTaqDNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus,Norwalk,Conn.)の存在下で増幅した。図4Bで示されるように、下線部はサブクローニングのための制限部位である。この反応混合物を、94℃で1分間の変性、45℃で1分間のアニーリングおよび72℃で1.5分間のポリメライゼーションからなるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)3サイクルに供した。この処置の後に、94℃で1分間の変性、55℃で1分間のアニーリングおよび72℃で1分間のポリメライゼーションからなるPCR反応を27サイクル行った。得られたDNAフラグメントは、予想された分子サイズをアガロースゲル電気泳動において示した。hA19VHの二本鎖PCR増幅産物をゲル精製し、PstIおよびBstEII制限酵素で制限消化し、重鎖ステージングベクターVHpBS2の相補的PstI/BstEII制限部位中にクローニングし、ここで翻訳開始コドンおよび分泌シグナルペプチドをコードするDNA配列が5'末端にインフレームで連結され、イントロン配列が3’末端で連結されて、VH配列が完全に組み立てられた。VHpBS2は、VHpBS(Leungら,Hybridoma,13:469(1994))の改変ステージングベクターであり、この中にXhoI制限部位を翻訳開始コドンの16塩基上流に導入して、次のサブクローニングの段階を容易にした。IgHエンハンサーおよびMT1プロモーターの制御下で、ヒトIgGの重および軽両鎖の発現カセットの他に選択および増幅のためのマーカーとしてマウスdhfr遺伝子を含む発現ベクターpdHL2中に、組み立てられたVH遺伝子をXhoI−BamHI制限酵素フラグメントとしてサブクローニングした(図4B)。pdHL2の重鎖領域はBamHI制限部位を欠くため、この連結には、可変鎖のBamHI部位とpdHL2ベクター内に存在するHindIII部位との間に架橋を施すためにリンカーを使用する必要がある。得られた発現ベクターをhAI9VHpdHL2と命名した。
【0158】
ヒト化VK配列の完全長DNA構築のために、hA19VkA(配列番号:24、126mer、hA19VKドメインのヌクレオチド61〜186に相当する)およびhA19VkB(配列番号:25、124mer、ヌクレオチド157〜281に相補的なhA19VKドメインのマイナス鎖に相当する)を上記のように合成した。hA19VkAおよびVkBを上記のように、2つの短いオリゴヌクレオチドhA19VkBack(5'−CAGGTCCAAC TGCAGCAATC AGGGGCTGAA GTCAAGAAAC CTGGGTCATCG GTGAAGGTCTC CTGCAAGGCT TCTGGCTACG CTTTCAGTAG C−3’ 配列番号:30)およびhA19VkFor(5'−TGAGGAGACG GTGACCGTGG TCCCTTGGCC CCAGTAGTCC ATAGCATAGT AATAACGGCC TACCGTCGTA GTCTCCCGTC TTGCACAAG−3' 配列番号:31)により増幅した。以下に記載のように、下線部はサブクローニングのための制限部位である。ゲル精製したhA19VKのPCR産物をPvuIIおよびBglIIで制限消化し、軽鎖ステージングベクターVkpBR2の相補的PvuII/BclI部位中にクローニングした。VkpBR2は、VkpBR(Leungら,Hybridoma,13:469(1994))の改変ステージングベクターであり、この中にXhoI制限部位を翻訳開始コドンの16塩基上流に導入した。組み立てられたVK遺伝子を、VH配列を含む発現ベクターhA19VHpdHL2中にXbaI−BamHI制限酵素フラグメントとしてサブクローニングした。得られた発現ベクターをhA19pdHL2と命名した。
【0159】
実施例3.トランスフェクションおよびhA19抗体発現
hA19用の発現ベクター約30μgをSalIでの消化により直線化し、エレクトロポレーション(450Vおよび25J−μF)によりSp2/0−Ag14細胞内にトランスフェクトした。トランスフェクト細胞を96ウェルプレート内に2日間播き、次いで、培地にMTXを最終濃度0.075μMで添加することにより薬剤耐性に関して選択した。2〜3週間後にMTX耐性コロニーがウェル内に出現した。選択で生き残ったコロニーの上清を、ヒトMAb分泌に関してELISAアッセイによりスクリーニングした。簡潔には、GAH−IgG、F(ab')フラグメント特異的Abをプレコートしたマイクロタイタープレートのウェルに上清100μlを添加し、室温で1時間インキュベートした。緩衝液(0.05%ポリソルベート20を含むPBS)で3回洗浄して未結合タンパク質を除去した。HRPとコンジュゲートしたGAH−IgG、Fcフラグメント特異的Abをウェルに添加した。1時間のインキュベーション後、プレートを洗浄した。4mM OPDおよび0.04%Hを含む基質溶液を添加した後、A490nmを読み取ることにより、結合したHRPコンジュゲートAbを明らかにした。陽性細胞クローンを拡張し、hB43をプロテインAカラムでのアフィニティクロマトグラフィーにより細胞培養上清から精製した。
【0160】
実施例4.抗CD19抗体の抗原結合特異性および親和性の測定
プロテインAカラムでのアフィニティクロマトグラフィーにより精製したcA19およびhA19のAg結合特異性を、細胞表面競合結合アッセイにより評価および比較した。簡潔には、一定量(100,000cpm、〜10μCi/μg)の125I標識cA19またはhA19を様々な濃度(0.2〜700nM)のcA19またはhA19の存在下、Raji細胞と4℃で1〜2時間インキュベートした。細胞をPBS中で洗浄することにより未結合Absを除去した。洗浄後、細胞に付随する放射活性を測定した。図2に示されるように、精製hA19は細胞表面結合に関して125I標識cA19と競合し、その逆も同じであったが、このことは、見かけの結合親和力がこれら2つのAb間で比較可能であることを示している。
【0161】
hA19の抗原結合親和性(結合力)定数を、放射標識Abの直接的細胞表面結合アッセイおよびスキャッチャードプロット解析により決定し、cA19のものと比較した。簡潔には、hA19およびcA19をクロラミンT法により125Iで標識した。様々な量の125I−hA19または125I−cA19を2×10個のRaji細胞と4℃で2時間インキュベートし、未結合抗体を洗浄により除去した。細胞付随の放射活性をカウントし、スキャッチャードプロットを行って、細胞当たりのhA19およびcA19結合部位の最大数および平衡結合の見かけの解離定数を測定した。図5に示されるように、hA19はcA19と実質的に同じ結合親和性を示した。これら2抗体の見かけの解離定数値はそれぞれ、1.1および1.2nMと算出された。
【0162】
実施例5.hA19の配列バリアント
上記実施例2に記載のヒト化抗CD19MAb(hA19)は、Sp2/0細胞内で発現されたが、得られたクローンの生産性は低かった。数多くのトランスフェクション(総数15)を行い、何百ものクローンをスクリーニングした。陽性クローンの生産性は、0.5〜3μg/mlにとどまり、メトトレキサートによる増幅は対象クローンの生産性を向上させなかった。
【0163】
AT含有量低下のためのVk遺伝子配列改変
より生産性の高いhA19クローンを作製するために2つのアプローチを用いた。第一のアプローチ(hA19VkpdHL2)は、Ab遺伝子発現に負の影響を及ぼすと推定されるAT含有量を低下させるために、hA19Vk遺伝子配列を再設計することであった。新たなhA19Vk遺伝子を合成し、組み立て、hA19用の発現ベクターの再構築に使用した。
【0164】
hA19VkpdHL2構築を完了し、DNA配列決定により配列が正しいことを確認した後、マキシプレップを行ってトランスフェクション用のプラスミドを調製した。3つのトランスフェクションを行った:#739(hA19VkpdHL2#1)、#740(hA19VkpdHL2#5)および#741(hB43pdHL2#l)。SP−E26細胞および10μgのSalI直線化DNAを用いた。MTX選択(0.075μM)をエレクトロポレーションの48時間後に開始した。ELISAを用いて陽性クローンに関してトランスフェクションをスクリーニングした。トランスフェクション#739により31個の陽性クローンが生じ(13個が選択された)、#740により49個の陽性クローンが生じ(13個が選択された)、#741により41個の陽性クローンが生じた(19個が選択された)。ELISAにより生産性の測定および観測を行い、生産性は0.5〜3μg/mlの範囲であったが、これは元のhA19構築物で見られたものと同じであった。
【0165】
2つの無血清トランスフェクションを行った:#746(hA19VkpdHL2#1)および#747(hB43pdHL2#1)。SP−ESF細胞および10μgのSalI直線化DNAを両トランスフェクションに使用した。MTX選択(0.075μM)をエレクトロポレーションの48時間後に開始した。トランスフェクション#746により9個の陽性クローンが生じ、#747により6個の陽性クローンが生じた。陽性クローンを48ウェルプレートに拡張し、0.2μM MTXまで増幅した。トランスフェクション#739、#740および#741由来の45個のクローンを12個にまで絞り(1.0μg/ml超のELISA読取りに基づく)、MTXを0.15μMまで増加させた。無血清クローンの初期pmaxを測定し、生産性は血清培地中のクローンと同様であった(0.5〜1.5μg/ml)。
【0166】
さらに2つの血清トランスフェクションを行った:#756(hA19VkpdHL2#5)および#757(hB43pdHL2#1)。トランスフェクションの条件は上記と同じであったが、増殖の遅いクローンでは、pmaxが上昇するか否かが明らかになるように時間を設けた。トランスフェクション#756では19個の陽性クローンが生じ、#757では8個の陽性クローンが生じた。トランスフェクション#756および#757のpmaxをトランスフェクション#739、#740、#741、#746および#747と比較した。生産性にはあまり差がなかった(約0.5〜3μg/ml)。最も生産性の高いものを選択し(739.1A9、740.1B1および756.2G7)、0.2μM MTXまで増幅した。表2に報告されている結果は、2〜3μg/mlの間の平均抗体生産性を示す。
【0167】
【表1】

【0168】
【表2】

【0169】
細胞ベースの抗体依存性細胞傷害性アッセイ
再設計されたベクターが活性な抗体を産生するか否かを判定するために、プロテインA精製により2リットルのクローン756.2G7を精製した。精製により7.3mgの抗CD19Abが得られた。HPLCおよびSDS−PAGEにより精製タンパク質が純粋であることが示された(未掲載)。この精製タンパク質を用いて、細胞の増殖および死に対する抗体治療の効果を調べた。細胞ベースの抗体依存性細胞傷害性アッセイを行い、hA19、hA20およびhLL2をGAH IgGおよびFcフラグメント有りおよび無しで比較した。Daudi D1−1およびSP−E26細胞を2つの48ウェルプレートに最終密度150,000細胞/mlで蒔いた。hA19、hA20およびhLL2をGAH有り(最終濃度40μg/ml)および無し両方の完全培地(D1−1ではRPMIおよびSP−E26ではSFM)で希釈した(最終濃度10μg/ml)。Ab混合物をプレートに添加し、振とう器上に数分間置き、次いで、インキュベーター内に置いた。3および4日目にMTTを行った。3日目の結果では、SP−E26細胞における細胞増殖の違いはなかった。D1−1細胞では、hA19+GAHおよびhA20+GAHにおいて細胞増殖の阻害が見られた。これらの結果は、再設計されたhA19が活性であることを示している。
【0170】
hA19FpdHL2
第二のアプローチ(hA19FpdHL2)は、hA19VH遺伝子を再設計して重鎖(VH)フレームワーク領域のアミノ酸残基セリン91をコンセンサスフェニルアラニン残基で置換することであった。hA19VHpdHL2中のS91に対するTCTコドンをhA19FVHpdHL2中のF91に対するTTCコドンに変えた。新たなhA19F遺伝子を合成し、組み立て、hA19用の発現ベクターの再構築に使用した。
【0171】
hA19FpdHL2構築を完了し、DNA配列決定により配列が正確であることを確認した後、マキシプレップを行ってトランスフェクション用のプラスミドを調製した。2つのトランスフェクションを行った:#762(hA19FpdHL2#2)および#763(hA19FpdHL2#3)。トランスフェクションの条件は、トランスフェクション#739、#740および#741と同じであった。両トランスフェクションを、ELISAを用いて陽性クローンに関してスクリーニングした。トランスフェクション#762により13個の陽性クローンが生じ(8個が選択された)、#743により18個の陽性クローンが生じた(16個が選択された)。初期生産性をELISAにより測定し、表3に示した。
【0172】
【表3】

【0173】
宿主細胞を新たなベクターでトランスフェクションすることにより、100個を超える陽性クローンが得られた。発明者らは評価用に30個のクローンを無作為に選択した。これらのクローンの大部分は、細胞培養中において5〜25mg/LのIgGの抗体産生量であると推定された。これは、先に作製されたクローンの1〜2mg/Lの範囲にあった細胞培養生産性とは対照的である。したがって、Ser91Pheの置換の結果、抗体産生が約10倍増加するというhA19抗体発現レベルの著しい増加が得られたと発明者らは結論する。この驚くべき予想外の結果により、哺乳動物細胞株での発現を用いて、実質的にかなり多量の抗体タンパク質の産生が細胞培養において可能となる。
【0174】
実施例6.非ホジキンリンパ腫の治療
緩徐進行性の濾胞細胞性NHLを有する患者は、デキサメタゾンを含めた化学療法後に再発し、胸部(大動脈傍リンパ節)疾患、腫大し侵襲された脾臓および腫大頸部リンパ節を有する。患者には、週1回で4週間、ヒト化抗CD20MAb(hA20)と組み合わせて、各300mg/mの治療単位のhA19MAbを連続して同一日に静脈内注入で投与し、毎回、注入に付随する反応抑制のためにTYLENOL(登録商標)およびBENADRYL(登録商標)を標準的な公表されている用量に従って前投与する。4週間後、患者は最初のフォローアップ検査のために戻り、触知可能なリンパ節が一部軟化していることが診察されるだけである。最初の治療サイクルの3ヵ月後に戻った際に、患者の胸部疾患が40%減少したことがCTスキャンで見てとれ、脾臓が治療前の約半分のサイズであり、頸部リンパ節はほとんどなくなっている。次いで、患者は再治療サイクルを受け、さらに3ヵ月後、膵臓サイズは正常、触知可能なまたはCTスキャンで測定可能な頸部リンパ節は無く、胸部には1.5cmの小さい病変のみであることが見てとれる。患者は、疾患がほぼ無いと見てとれるまでさらに4ヶ月続ける。
【0175】
上述のものは特定の好適な実施形態を述べたものであり、本発明はそのように限定されないことが理解されるであろう。本開示の実施形態に対して様々な改変が施され得ること、そしてそのような改変は、以下の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内にあるものとすることを、当業者は想起するであろう。
【0176】
本明細書に引用されているすべての刊行物および特許出願および特許は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト化抗CD19抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記ヒト化抗CD19抗体またはそのフラグメントが、CD19との結合に関して、軽鎖相補性決定領域CDR配列であるCDR1 KASQSVDYDGDSYLN(配列番号:16);CDR2 DASNLVS(配列番号:17);およびCDR3 QQSTEDPWT(配列番号:18)ならびに重鎖CDR配列であるCDR1 SYWMN(配列番号:19);CDR2 QIWPGDGDTNYNGKFKG(配列番号:20)およびCDR3 RETTTVGRYYYAMDY(配列番号:21)を含むキメラ抗CD19抗体と競合する、ヒト化抗CD19抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記ヒト化抗CD19抗体が、軽鎖相補性決定領域CDR配列であるCDR1 KASQSVDYDGDSYLN(配列番号:16);CDR2 DASNLVS(配列番号:17);およびCDR3 QQSTEDPWT(配列番号:18)ならびに重鎖CDR配列であるCDR1 SYWMN(配列番号:19);CDR2 QIWPGDGDTNYNGKFKG(配列番号:20)およびCDR3 RETTTVGRYYYAMDY(配列番号:21)を含む、請求項1に記載のヒト化抗CD19抗体またはそのフラグメント。
【請求項3】
前記抗体またはフラグメントが、hA19VK(配列番号:7)およびhA19VH(配列番号:10)の配列を含む、請求項1に記載のヒト化抗CD19抗体またはそのフラグメント。
【請求項4】
前記抗体またはフラグメントが、ヒト抗体フレームワーク(FR)および定常領域配列を含む、請求項2に記載のヒト化抗CD19抗体またはそのフラグメント。
【請求項5】
前記ヒト化抗体が、親マウス抗体の対応するフレームワーク領域配列から置換された1つまたは複数のフレームワーク領域アミノ酸残基を含む、請求項4に記載のヒト化抗CD19抗体またはそのフラグメント。
【請求項6】
前記置換FRアミノ酸残基が、重鎖可変領域のアミノ酸残基5、27、28、40、48、91、94、107および108ならびに軽鎖可変領域の残基4、39、58、60、87、100および107からなる群より選択される、請求項5に記載のヒト化抗CD19抗体またはそのフラグメント。
【請求項7】
前記置換FRアミノ酸残基がSer91Phe置換である、請求項5に記載のヒト化抗CD19抗体またはそのフラグメント。
【請求項8】
前記VH残基91におけるセリンのフェニルアラニンへの置換により、細胞培養中の抗CD19抗体の発現レベルが増加する、請求項7に記載のヒト化抗CD19抗体またはそのフラグメント。
【請求項9】
前記VH残基91におけるセリンのフェニルアラニンへの置換により、細胞培養中の抗CD19抗体の発現レベルが10倍増加する、請求項7に記載のヒト化抗CD19抗体またはそのフラグメント。
【請求項10】
B細胞リンパ腫、白血病および自己免疫疾患からなる群より選択されるB細胞疾患を有する対象に、請求項1に記載のヒト化抗CD19抗体またはそのフラグメントを投与することを含む、B細胞疾患の治療法。
【請求項11】
前記ヒト化抗CD19抗体またはそのフラグメントが、裸の抗体またはフラグメントである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD66(a〜d)、CD74、CD80、CD126、CD138、B7、MUC1、Ia、HM1.24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、ED−Bフィブロネクチン、癌遺伝子、癌遺伝子産物、CD66a〜d、壊死抗原、Ii、IL−2、T101、TAC、IL−6、TRAIL−R1(DR4)またはTRAIL−R2(DR5)と反応する少なくとも1つの治療有効量のヒト化、キメラ、ヒトまたはマウスMAbを、前記対象に同時または順次投与することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの治療有効量の治療薬を、前記対象に同時または順次投与することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒト化抗CD19抗体またはそのフラグメントが、少なくとも1つの治療薬または診断薬とコンジュゲートされている、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記治療薬または診断薬が、細胞毒性薬、放射性核種、免疫調節薬、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチドおよび光活性治療薬からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞毒性薬が薬物または毒素である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫調節薬が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、幹細胞増殖因子、エリスロポエチンおよびトロンボポエチンからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記リンホトキシンが腫瘍壊死因子(TNF)であり、前記造血因子がインターロイキン(IL)であり、前記コロニー刺激因子が顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)であり、前記インターフェロンがインターフェロン−アルファ、−ベータまたは−ガンマであり、かつ前記幹細胞増殖因子がS1因子である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒト化抗CD19MAbまたはそのフラグメントが、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD66(a〜d)、CD74、CD80、CD126、CD138、B7、MUC1、Ia、HM1.24、HLA−DR、テネイシン、VEGF、PlGF、ED−Bフィブロネクチン、癌遺伝子、癌遺伝子産物、CD66a〜d、壊死抗原、Ii、IL−2、T101、TAC、IL−6、TRAIL−R1(DR4)もしくはTRAIL−R2(DR5)と結合するその他の抗体またはそのフラグメントを少なくとも1つ含む、二重特異性もしくは多重特異性抗体またはそのフラグメントの一部として投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
対象におけるB細胞疾患の診断法であって、
a)前記抗体またはそのフラグメントが少なくとも1つの診断薬とコンジュゲートされている請求項1に記載の抗体またはそのフラグメントを、前記対象に投与することと、
b)前記抗体またはフラグメントと1つまたは複数のB細胞との結合を検出し、結合が前記対象におけるB細胞疾患の存在を示すことと
を含む診断法。
【請求項21】
前記疾患がリンパ腫または白血病または自己免疫疾患である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記診断薬が、放射性標識、光活性診断薬、超音波造影剤または非放射性標識である、請求項20に記載の方法。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−508169(P2012−508169A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534633(P2011−534633)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/061666
【国際公開番号】WO2010/053716
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】