説明

改良された毛管力蒸発装置

【課題】様々な環境における使用のための改良された毛管力蒸発装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、毛管力蒸発装置における液体の蒸発及び蒸気の加圧に関する。本発明は、毛管力蒸発装置の組立体及び構造に加え、これらの特徴を組み込んだ装置及び方法を提供し、操作性及び操作中の信頼性を改善する毛管力蒸発装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛管力蒸発装置における液体の蒸発及び蒸気の加圧に関する。より詳細には、本発明は、毛管力蒸発装置の組立体及び構造における新たな開発に加え、これらの新規な特徴を組み込んだ装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの用途において、液体源から発生させた気体を利用する。蒸発装置は、液体を蒸発させ、かつ、これにより生じた蒸気を圧力下で放出するように設計されている。加圧された蒸気の流れを必要とする用途において、従来の装置は、一般に、液体が圧力下で前記装置に供給されること又は蒸気が外部手段により加圧されることを要する。例えば、加圧ボイラーでは、一般に、液体が、少なくとも、発生させた蒸気の圧力と等しい圧力の下で供給されなければならない。加圧された液体源は、通常、使用しにくく、移動させるのが難しく、爆発する恐れがあり、漏れやすい。多くの用途において、大気圧又は大気圧に近い圧力の下にある液体から直接、加圧された蒸気の流れを生じさせることが望まれている。
【0003】
従来、前記した目的を達成するいくつかの装置が、毛管ポンプ、毛管蒸発モジュール又は毛管力蒸発装置として知られている。これらの装置は、いずれも、毛管部材の中で液体を沸騰させるために熱を利用すること及び圧力を増加させるために蒸気を少なくとも部分的に拘束することにより、加圧されていない液体から直接、加圧された蒸気を発生させる。蒸気は1又は2以上のオリフィスを経て前記装置から高速噴射される。これらの装置が共通して有する他の特徴は、前記装置が、いずれも、熱により作動し、小型であり、一般に可動部品を有しないことであり、液体の蒸発及び蒸気の加圧に用いる他の技術に対して利点を有する。毛管ポンプ、毛管蒸発モジュール及び毛管力蒸発装置に加え、これらが組み込まれた装置がヤング(Young)他による特許文献1ないし5並びにラビン(Rabin)他による特許文献6及び7に記載されている。
【特許文献1】米国特許第6、162、046号明細書
【特許文献2】米国特許第6、347、936号明細書
【特許文献3】米国特許第6、585、509号明細書
【特許文献4】米国特許第6、634、864号明細書
【特許文献5】米国出願第10/6981、067号明細書
【特許文献6】米国出願第11/355、461号明細書
【特許文献7】PCT/US2006/018696号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した多くの装置は他の液体蒸発技術に対して利点を有するが、前記装置の多くは、長時間の又は様々な作動状況下の操作を可能にするのに十分な強さを有しない。例えば、ある装置は、数分間又は数時間操作されたとき、良好な性能特性を示した。しかし、より長い時間、すなわち数日又は数週間の操作の間に材料の性能にいくつかの異常が見られた。これらの装置は、いずれも、加圧された環境における使用に適しない又は適合しない。すなわち、前記した装置は、いずれも、加圧された蒸気の流れ又は加圧された液体供給源とともに使用されるために構成されたものではない。前記した装置は、主に、加圧されていない液体を蒸気に変換するときの使用を対象としており、前記装置により発生させた前記蒸気は、大気圧に近い圧力で放出される。大気圧より高い圧力で蒸気を発生させることができる能力が多くの理由のために望まれている。本発明は、様々な操作パラメーターの下で様々な環境における使用のための改良された毛管力蒸発装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、液体の蒸発及び加圧された蒸気の発生のための従来の毛管力蒸発装置(CFV)の限界を克服し、該毛管力蒸発装置より優れた、改良された特徴を提供する。前記CFVは様々な操作パラメーターの下での使用に適する。これらの操作パラメーターは、以下のものに限定されないが、CFVが断続的に使用される場合における長時間の信頼性、CFVの作動時の時間間隔の増加、前記CFVへの出力密度の変動、異なる液体の供給又は供給の組合せの使用、周囲の操作状況の変化等を含む。本発明に係る毛管力蒸発装置は、以下に詳細に説明するように、従来の装置に対する他の利点を提供することに加え、入力熱及び出力の変化に対するより良い信頼性及び改善された応答を提供する新規な操作パラメーターを特徴付ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
毛管装置を使用する初期の用途では、大気圧又は大気圧とほぼ等しい圧力で装置の中に液体が供給され又は配置される。前記液体は、一般に、燃料又は可燃物であり、毛管ポンプ又は毛管蒸発の目的は、調理用又は照明用の炎を発生させることである。このため、前記装置は、通常、炎の温度が約1090℃(2000°F)以下であって前記装置の表面の温度が約350℃(660°F)を越える状態で操作される。しかし、このような従来の装置は、該装置が蒸発させかつ燃焼させる材料の燃焼により故障することがある。前記装置は、しばしば、使用された前記液体で詰まる。さらに、多くの装置は、該装置を密封しかつ加圧するために使用される周辺グレーズにより装置の構成要素に加えられた拘束によってクラックが生じることがある。
【0007】
本明細書に記載した発明及び調査の過程において、毛管力蒸発装置(以下「CFV」という。)は様々な応用分野における使用に適する。その多くは、従来の毛管装置よりかなり低い温度、すなわち250℃、好ましくは200℃以下、多くの場合、約150℃以下の温度での操作を伴う。例えば、CFVは非燃料供給材料とともに使用される。前記非燃料供給材料には、例えば、トリエチレングリコールと、アレスリン及びトランスフルトリンのような殺虫剤と、ユーカリ油、メントール及び樟脳油のような吸入健康化合物と、水と、香水、香料、香料混合物及び芳香剤と、イソプロピルアルコール、トルエン及びアセトンのような溶剤と、メタノール水溶液のような燃料電池材料のための混合物と、食塩水とがある。本発明に係るCFVとともに用いられる他の非燃料供給材料には、以下のものに限定されないが、禁煙及びたばこ代替品のために用いられるニコチン製剤と、モルヒネ、テトラヒドロカンナビノール又はTHCを含む製剤及び他の疼痛管理化合物と、喫煙により吸入され又は取り込まれる物質を含む製剤と、例えば目の湿潤及び潤滑のために用いられる様々なグリコールエーテル製剤と、例えばアレルギー性鼻炎、結膜炎及びはやり目に役立つロラタジンを含む抗ヒスタミン剤と、これらのいずれかの混合物とがある。上記の材料に加え、供給材料が、本発明に係るCFVとともに用いられてもよい。上記のリストは、CFV供給材料の代表例を示すものであり、全てを示すものではない。
【0008】
本発明の第1実施例によれば、CFVは、多孔質部材と、ヒーターのような熱源とを有する。前記多孔質部材は、絶縁部分と、任意の蒸発部分とを有する。前記ヒーターは、蒸気を放出する1又は2以上のオリフィスと、蒸気を収集し、これと同時に蒸気圧力を増加させる、前記多孔質部材に熱交換可能に接する溝付きの表面とを有する。CFVは、任意に、前記多孔質材料及び前記ヒーターを互いに熱交換可能に接した状態に保持する機械力発生器又は保持手段を有する。
【0009】
前記保持手段には、スプリングクリップ、クランプ及びクランプ装置のような緊張装置と、摩擦嵌めと、スナップ留め具と、差込み留め具と、ねじ留め具と、ツイスト留め具と、コニカルワッシャー、波ワッシャー、板ばね及びコイルばねを有する、当業者に知られた様々なスプリング装置と、溶接と、化学的、物理的又は機械的な結合と、焼結と、化学反応と、これらのいずれかの組合せとがある。ねじ留め具又はツイスト留め具は、前記ヒーター及び多孔質部材の構成要素からなるものとすることができ、追加の部品、金具等を要しない。以下に詳細を説明するように、地球の重力が、本発明に係るCFVとともに用いることができる保持手段の1つの態様を構成することができる。機械力を提供する又は前記ヒーターを前記多孔質部材に接近させた状態に保持するために用いられる手段の種類に拘わらず、本発明に係るCFVと従来の毛管蒸発装置との間の重要な差異は、従来の装置が、該装置の構成要素を覆う又は包むシール部材を特徴とすることである。これに対して、本発明の前記保持手段はCFVの構成要素に圧縮力を加える。
【0010】
さらに、CFVは任意にハウジングを有する。多くの用途において、ハウジングは、前記CFVを大きな機器、器具、エンジン又は装置の中に又はその一部として配置すること、CFVをヒーター制御装置に近接して配置するのを容易にすること、CFVを部屋の中の特定の位置に配置するのを便利にすること等に役立つ。特にインライン加湿に関する、CFVを組み込んだ様々な種類の装置が、インライン蒸発装置に関して2006年11月30日に提出されたウェインステイン(Weinstein)他による米国出願第00/000、000号明細書に記載されている。
【0011】
CFVの操作中に毛管力が液体を熱源へ運ぶ。前記熱源は前記液体を蒸発させ、該液体は大気圧又は大気圧より僅かに高い圧力で前記CFVから放出される。液体は、制御された状態で蒸発が生じるように前記熱源へ運ばれなければならない。同時に、前記CFVの故障を防ぐため、熱及び過剰な蒸気が前記熱源から前記液体へ移動するのを防止しなければならない。加熱、照明及び調理のために可燃性液体とともに用いられる従来の毛管装置は、芯材と、熱源とを有する。前記芯材は燃料を前記熱源へ運ぶが、前記毛管装置は、対象とする用途にとって不十分な燃料蒸発を生じさせる。前記芯材は、過剰な熱及び加圧された蒸気がヒーターから、流入する液体の方向へ移動するのを防止することができず、燃焼目的のために生じさせる蒸発の量が少ない。
【0012】
従来の毛管装置において、前記芯材は、小さい孔を有する材料から作られている。前記小さい孔は、前記芯材に高い毛管圧力を生じさせ、過剰な蒸気が前記ヒーターから前記液体へ移動するのを防止する。しかし、前記小さい孔は、非常に小さく、許容できない高い毛管力を生じさせる。前記芯材を組み込んだ前記毛管装置は、実質的に不十分な流量の燃料を移動させる。
【0013】
近年の毛管装置は上記の事項を組み合せて組み込んでいる。すなわち、小さい孔を有する芯材に加えて、大きい孔を有する芯材が用いられている。小さい孔を有する領域は、蒸発層又は蒸発部分と呼ばれ、大きい孔を有する領域は、絶縁層又は絶縁部分と呼ばれている。前記蒸発部分及び前記絶縁部分は多孔質部材からなる。前記絶縁部分は、前記ヒーターから、進行する液体へ過剰な熱が流れるのを許すことなく、液体の蒸発のために毛管力により前記ヒーター又は前記熱源へ液体供給を行う。以下に詳細に説明するように、全体寸法、毛管孔寸法及び液体供給は、いずれも、絶縁部分を特定の用途に適合させるときに考慮される要素である。
【0014】
加圧された多量の蒸気が前記ヒーターから、流入する液体の方向へ移動するのを妨げることは、別個の蒸発部分の使用を要することなくCFVにおいて実現されることが明らかになっている。従来の毛管装置では、前記蒸発部分は、多量の気体又は加圧された蒸気が前記ヒーターから前記液体へ流れる又は移動するのを妨げるのに必要な層と考えられていた。蒸発部分は、例えば、CFVが、長時間にかつ(又は)燃焼用途におけるように非常に高い操作温度で非常に多い量の液体を用いて操作される場合に必要と考えられていた。
【0015】
近年、より低い温度及び圧力でより長い時間CFVを操作したいという要望が、蒸発部分及び絶縁部分としての使用に適した材料の再評価を必要とした。前記絶縁部分は多孔質部材の本質的な特徴を維持するのに対して、蒸発部分又は蒸発層は、CFVがより低い温度で操作され、燃料のような液体の燃焼とともに経験される非常に高い内部圧力を生じさせない場合、又は非常に多い流量及び高い温度が必要とされる場合、任意であることが明らかになった。さらに、断続的な使用、すなわち、高い内部圧力の蓄積を要せずに少量の蒸気の爆発を要する用途のためのCFVが、蒸発部分を用いることなく開発されている。
【0016】
蒸発部分及び絶縁部分としての使用に適した材料を評価するために一連の研究がなされている。絶縁部分及び蒸発部分の材料の賢明な選択により、特定の用途に必要とされる絶縁部分に対する蒸発部分の相対量が、完全に排除されないとしても、大幅に修正されることが明らかになった。これにより、場合によっては、水及び香料の蒸発のためのCFVの使用におけるように、CFVは、連続的に作動し、多孔質部材の別個の蒸発部分を使用することなく液体を蒸発させることができることがわかった。この場合、理論に拘束されることなく、前記ヒーターに接する前記絶縁部分の領域は、前記絶縁部分の毛管孔の中で前記液体の蒸発が生じる領域としての機能を果たすことが理論付けされる。もちろん、蒸発層が存在しないことは、前記液体から生じさせた気体が前記ヒーターから前記絶縁部分を経て、流入する液体へ移動するのを妨げる最も効率的な技術ではない。蒸発層がない場合、CFVにより発生させた前記蒸気は、蒸気の形態及び水滴の大きさにおいて均一性を示さない。蒸発されない液体のスパッタリング及び放出が起きることもある。多くの少流量用途及び(又は)CFVが断続的にかつ高い沸点の液体を用いずに操作される用途に蒸発部分は不要である。CFVが、毎分数グラムの流量で供給される水とともに使用されるとき、蒸発部分が用いられない場合に水の多少の損失が観測されることがある。毎分1グラム又はそれ未満のより少ない水量では、多くの試験が、蒸発部分が必要ではないことを示した。本発明の1つの実施例によれば、加圧されていない液体から加圧された蒸気を発生させる装置は、(a)絶縁部分及び任意の蒸発部分を有する多孔質部材であって前記液体を受け入れる表面と、前記液体から生じさせた蒸気を加圧する領域とを有する多孔質部材と、(b)前記液体を蒸発させるために前記多孔質部材へ熱を伝えるヒーターであって蒸気を収集する領域と、零より大きい速度で前記蒸気を放出する少なくとも1つのオリフィスとを有するヒーターと、(c)前記ヒーターを前記多孔質部材に熱交換可能に接した状態に保持する保持手段と、(d)任意のハウジングとを含み、前記多孔質材料は毛管力により前記液体を前記ヒーターへ引き上げる。
【0017】
A.材料の選択
多くの材料が、CFVの前記多孔質部材により必要とされる液体の流れを提供するのに十分な浸透性を有するが、毛管力が十分であり、過剰な圧力が生じず、かつ熱及び質量の移動の要件が満たされるようにするため、材料特性の組合せが適している。換言すると、前記液体が前記CFVの蒸発領域へ移動されなければならず、前記CFVが高い出力レベルにおいても適当な温度及び圧力を維持できるように、前記CFVの操作中における前記多孔質部材の中の液体の流れが、これに付随して圧力を増加させることなく十分な冷却をもたらさなければならない。候補となる材料の小さい孔による毛管力は、これらの目的を達成するのに不可欠である。前記毛管力は、「沸点」計測を用いて定量化されかつ比較される。
【0018】
材料の沸点は、液体で飽和した多孔質材料に空気を通す特定の試験を参照する。飽和した材料の気体浸透により前記多孔質材料の表面に前記液体の泡が形成し始める圧力が沸点として知られている。一般的な多孔質材料には、簡易な濾紙と、気体拡散器と、れんがのような建材とがある。前記したものは、非常に大きい孔を有し、液体を通しやすい。これは、前記孔を通過する液体により前記孔が湿ることによって生じる表面張力が比較的容易に克服されるからである。この場合、気体が前記多孔質材料を経て流れ始めるのに必要な圧力は、非常に低いものとすることができる。
【0019】
材料の孔の直径が小さいほど、前記孔を経て液体を移動させるためにより高い圧力が必要とされる。技術上の多孔質材料、すなわち、孔サイズ分布が臨界である用途のために設計された材料は、しばしば、孔サイズの最大値により表され、該最大値は沸点から容易に計算される。蒸発用途のために、沸点は、前記孔からの液体の排出を妨げる程度に高いが、十分な量の液体が材料を経て流れる程度に低いものでなければならない。許容値は、前記流体の性質及び特定の用途に左右される。非常に低い沸点を有する材料は、非常に多い流量を提供することができ、これに対して、非常に高い沸点を有する材料は、非常に少ない流量を提供することしかできない。多くの用途のために、非常に少ない流量及び非常に高い沸点を有する材料は望ましくない。
【0020】
様々な技術上の多孔質材料が使用のために評価されている。検討された材料は、以下の表1に記載したものを含む。
【0021】
【表1】



【0022】
前記した材料のいくつかの沸点検討の結果を図1に示す。図1に評価された材料のサンプル番号及び対応するデータを以下の表2に示す。評価は、液体として水を用いて約0.14kg-f/cm2 (2psi)の圧力で行われている。前記材料は、1cmの高さを有する、直径が2cmの一体構造の円盤の形状で評価されている。
【0023】
【表2】

【0024】
約0.数kg-f/cm2(数psi)の沸点が、水を用いる用途に使用するのに適していることが明らかになっている。このため、用途によっては、図1の比較的小さな領域がCFVの適当な操作特性を示すことができる。水の蒸発に用いられる、約3cm2の領域を有するサンプルでは、図1の関心領域は、0.01cm3/secと10cm3/secとの間、より好ましくは0.1cm3/secと5cm3/secとの間、さらに好ましくは0.5cm3/secと3cm3/secとの間に存在し、0.001ないし10kg-f/cm2、より好ましくは0.01ないし0.5kg-f/cm2、さらに好ましくは0.025ないし0.2kg-f/cm2の沸点を有する。
【0025】
他の流体及び操作状況のためにより高い沸点が適当であってもよい。CFVが、加圧された気体環境へ蒸気を提供するために用いられる場合、例えば、液体が蒸発される前に該液体が前記CFVから漏れない又は排出されないように十分な値の沸点が必要とされる。この場合、付随するより高い流量を伴うより高い沸点が一般に望ましい。蒸発を伴わない液体の排出は、液体の安定的な流れが前記熱源に隣接する前記蒸発領域に到達するのを妨げる。高い圧力環境において蒸発する液体は、以下に詳細に説明するように、前記CFVへの加圧された液体の流れを必要とすることができる。
【0026】
特定のCFV蒸発用途の要求に応じて、これらの2つのパラメーター、すなわち沸点及び流量の異なる組合せは、望ましいものとすることができる。例えば、ある加湿用途は、約0.01ないし0.15kg-f/cm2の沸点と、直径が2cmで厚さが1cmの円盤に1400kg/m2の圧力が加えられた場合における1cm3/secの流量又は浸透率とを要する。
【0027】
材料の沸点は、前記材料の孔構造により決定されるため、前記材料の厚さではなく、孔サイズの最大値に左右される。前記浸透率は、一般に、前記材料の厚さが増すにつれて低くなる。所望の出力レベル及び蒸気出力のための十分な流れを提供するため、材料の厚さは操作されることができる。これは、多孔質部材の中に過剰な背圧が生じるのを防止することが望ましい場合に、異なる蒸発部分厚さが用いられる1つの理由である。燃料及び可燃性液体を伴うCFVの使用について前記した説明が参考になる。
【0028】
絶縁部分の場合、選択された材料にかかわらず、前記絶縁部分を非常に薄いものとすることができないか又は前記CFVの温度が過剰になる。絶縁部分の適当な長さは、蒸発中に流体が前記絶縁部分を通過するときに、前記CFVが前記流体の沸点より遥かに低い温度に維持されるようにするため、前記絶縁部分が十分な冷却を提供することができる程度の長さである。蒸気は前記熱源の近傍にのみ生成され、前記CFVにより発生させた前記蒸気は殆どが前記オリフィスを経て放出される。特定の絶縁部分のために選択された適当な厚さは、蒸発される流体の性質、前記CFVの操作期間、必要とされる液体流量及び出力レベル並びに前記材料の熱伝導性のようなパラメーターに左右される。
【0029】
特定のCFV蒸発用途のための沸点及び浸透率が、一体構造の材料からなる多孔質部材により満足されない場合、CFVは、燃料及び可燃性液体のための前記した絶縁部分及び任意の蒸発部分の組合せのように、前記多孔質部材を構成する2以上の材料で作られたものとすることができる。絶縁部分及び蒸発部分のための材料の適当な組合せは、孔サイズ分布及び他の特性において異なる1又は2以上の部材を用いた様々な方法で実現される。
【0030】
絶縁部分及び任意の蒸発部分を有する多孔質部材のための材料の組合せは、以下の好適な構造により満足される。より細かい孔及びより高い沸点を有する材料は前記熱源に隣接して配置され、より大きい孔及びより高い浸透率を有する材料は前記熱源から隔てられて配置される。細かい孔の領域は、所定の直径において絶縁部分の厚さに比べて薄い場合でさえも、必要な毛管力を与え、十分な浸透率を提供することができる。十分な断熱性を提供するため、大きい孔の領域はより厚い。2以上の異なる孔サイズを有する層を有するCFVが検討されてもよい。多孔質部材は、一定の孔サイズを有する材料のみならず、第1表面から第2表面へ材料を横断したときに孔サイズが変わる勾配材料のような、様々な孔サイズを有する材料を有するものとすることができる。
【0031】
細かい孔及び大きい孔の領域の組合せを有する複合構造は、例えば、製造過程で導入される孔サイズの分布を有する1つの材料からなる。これは、前記材料を通過したときに孔サイズ分布に勾配が存在する「勾配」材料である。勾配材料は、細かい孔を有する材料が、大きい孔を有する材料に一体に結合される多くの工程において作られる。これに代え、同じ結果が、互いに密接する異なる2つの材料を用いて実現されてもよい。
【0032】
浸透率及び沸点だけが、全てのCFVの部品に対する適性を予測するために十分なパラメーターではないが、これらを、新しい材料が開発されたときに材料を評価するために用いることができる。重要な要素とすることができる他のパラメーターは、例えば、材料が高性能のCFV用途のために提供することができるエネルギー密度の評価を含む。最大の持続可能な出力レベルのために評価されたいくつかの一体構造の材料を図2に示す。前記材料は、高さが10mmで直径が20mmである円盤の形状において評価されている。4及び8の番号が付されたサンプルのための繰り返された試験が図2に含まれている。
【0033】
図2の検討は、約100ワットの出力レベルを必要とする、水を用いる用途に使用される材料を評価するために行われている。サンプル番号は、表1に示したものである。多くのサンプルが約120ワットまで良好な信頼性を示したことは、より多くの強固な材料が存在することを示す。より高い出力レベルにおいて安定性を示した材料は、一般に、より好ましい。
【0034】
CFVへの使用に対する所定の材料の適性を評価するために用いられる他の変数は、反応時間、長時間の信頼性、蒸気の流れに汚染物質を与える可能性、製造の容易性、これに関連する費用等のような要素を含む。CFVの前記多孔質部材として使用可能と評価された様々な多孔質材料について得られた結果を以下の表3に示す。次の操作特性が評価されている。(1)最大主力、すなわち、好ましくはより高い値を有する、持続可能な最大操作出力、(2)ヒーター温度、換言すると、好ましくはより低い温度である、CFVが最大出力で操作されている状態における前記ヒーターの温度、(3)CFV温度、すなわち、好ましくはより低い温度である、前記CFVが最大出力の状態であるときにおける前記CFVの温度、(4)もろさ、換言すると、前記CFVの操作中に粒状物質を生じさせる又は「汚染物質」とも呼ばれる他の副産物を放出する前記多孔質材料の性質。
【0035】
【表3】

表3の説明:
「−」は、性能が悪いことを示す。
「○」は、性能が十分であることを示す。
「+」は、性能が良いことを示す。
「++」は、性能が非常に良いことを示す。
【0036】
表3において評価された材料は、ZAL-45AA、Mott Grade 5、AF6、AF 15、AF30、AF50及びMeAF3であり、これらの情報は表1に示したとおりである。表3における結果は、全ての多孔質材料が高性能のCFVの開発に同等に適しているわけではないことを示している。表3における最も好ましい特徴を示したサンプルは5及び8を含み、これらはそれぞれAF30及びMeAF3に対応する。本発明の1つの実施例によれば、加圧されていない液体から加圧された蒸気を発生させる毛管装置は、ZAL-45AA、Mott Grade 5、AF6、AF 15、AF30、AF50、MeAF3、Micromass、T-Cast、P-IO-C、P-16-C、P-40-C及びP-55-Cから選択され、より好ましくは、ZAL-45AA、Mott Grade 5、AFl 5、AF30、AF50、MeAF3、Micromass、T-Cast、P-40-C及びP-55-Cから選択され、さらに好ましくは、AF30及びMeAF3から選択された材料により特徴付けられた絶縁部分を有する。
【0037】
B.CFV構造
ある構造を有するCFVの操作中、該CFVの側部及び下部から気泡が発生する傾向があることが明らかになっている。理論に拘束されることなく、この気泡は、様々な方法で、すなわち、前記液体の内部に溶存する気体の蓄積、前記多孔質部材、すなわち絶縁部分の中の孔が飽和していないこと等により発生することが予測される。特に、前記CFVが加湿目的で使用される場合のように前記液体が水であるとき、気泡の蓄積が前記絶縁部分への液体の流れを妨げるため、前記気泡はCFVの操作を危険にさらすことがある。
【0038】
前記液体、前記CFVが操作される出力レベル及びCFV構造の詳細に応じて、このモードにおける故障が数分又は数時間のうちに起こることがある。過去に、数時間、数分間又は数秒間操作された多くの蒸発部分の使用中に気泡の発生が観察されている。これに対して、適当に通気性を有する場合、CFVを、高い出力設定においても、数日から数週間安定して確実に操作することができる。
【0039】
従来の多くの蒸発部分では、前記絶縁部分が、シース、チューブ又はこれらに類似する収容装置の中にしっかりと収容されている場合、又はコーティング若しくは他の一体的なハウジングにより、前記絶縁部分の周囲を密封する試みがなされている場合のように気泡が逃げる機会がない。前記蒸発部分の前記絶縁部分の多孔質構造の内部における気体の蓄積により、該気体により前記ヒーターへの液体の流れが妨害されてCFVの操作に重大な問題を起こすことがある。このことが、前記したように、前記CFVの過熱及びヒーター故障を引き起こし、前記CFVを操作不能にする。しかし、全ての従来の蒸発部分が故障するわけではない。微視的な粗さにより、前記蒸発部分を取り囲むに過ぎないハウジングは、空の領域又は蒸発される流体を収容する領域を偶然にも提供し、気泡発生の実質的な逃げ道を提供する。
【0040】
図3に、CFVが十分な逃げ道を有しない場合に何が起こり得るかを示す。図3に示すグラフは、100ワットで操作されるCFVの、時間に対するヒーター温度のプロットである。ヒーター温度の上昇は長時間の気泡の形成により実現される。前記気泡が逃げる機会を有するまで、前記ヒーター温度は、一定の出力レベルが維持されている間上昇する。その後、前記温度は急速に下降し、新しい気泡が蓄積し始める。この熱循環過程は、蒸発過程の良好な制御に害を与え、電力供給及び制御回路に不必要な負担をかけることがある。このことは、CFV部材に、望ましくない負担をかけ、前記CFVを過熱及び故障の危険に曝す。
【0041】
気泡が蓄積されるのを防ぐため又は気泡が形成した場合に簡単な逃げ道を提供するため、前記CFVに様々な変更がなされてもよい。ガス発生及び気泡形成の問題に精通する者は、前記多孔質部材とハウジングとを近付けることにより気泡を抑制できることを理解するであろう。前記CFVの局所環境を適当に設計することが望ましい。連続又は不連続である前記ハウジングと前記多孔質部材との間に領域が設けられていてもよく、これにより、発生した気泡は速やかに前記CFVの外へ向けられ又は導かれる。これは、例えば、装置の周囲における連続する又は選択された部分に通路又は隙間を設けることにより実現される。前記隙間は、流体で満たされたもの又は気体を収容するものとすることができる。気泡形成の状況を改善するために様々な構造を用いることができる。前記多孔質部材又は絶縁部分の下部に隣接する前記ハウジングに、形成された気泡を前記装置の周囲へ向ける特徴があり、これにより、前記気泡は排除されることができる。他の方法は、前記CFVの容器又はハウジングの高さを減らすことであり、これにより、前記CFVの周辺領域が完全に覆われず、気泡は前記CFVからその周囲環境へ分散されやすい。
【0042】
図4に、逃げ道を有しないCFVの例を符号400で示し、図5に、本発明の1つの実施例に係る、逃げ道を有するCFVを符号500で示す。図6に、本発明の他の実施例に係るCFVを符号600で示す。図面において、類似の部分又は特徴を示すため、類似の参照符号が用いられている。
【0043】
図4に示したように、装置400は、本発明に係る毛管力蒸発装置の1つの例である。毛管力により液体を搬送する多孔質部材は、絶縁部分404と、任意の蒸発部分402とを有する。前記多孔質部材はヒーターに接しており、該ヒーターは、発熱部材406と、熱交換器408とを有する。発熱部材406は熱交換器408に接しており、該熱交換器は、蒸気収集通路412に集められかつ該蒸気収集通路で加圧された蒸気を放出するオリフィス410を有する。オリフィス410は、前記多孔質部材と前記ヒーター(符号を付せず)との接触部分に位置する。導線414は発熱部材406を電源(図示せず)に接続する。
【0044】
図4に示したように、装置400は、ハウジング420の壁422の下部に沿って存在しかつ内方に向けられたハウジング420の張出し部分418の上に配置されている。外ハウジング416は、様々な形状及び構造を有するものとすることができ、導線414の取り付け、固定又は拘束の位置を提供するのに役立つ。本発明の1つの実施例によれば、導線414は、スプリングクリップを有するものとすることができる。本発明の他の実施例によれば、導線414は、外ハウジング416と噛み合う、ベッド、タブ、フック等のような特徴(図示せず)を有するものとすることができる。ハウジング420は、連続しており、壁422に沿って装置400の前記ヒーター及び前記多孔質部材に接している。
【0045】
図5に示した装置500は、ハウジング420の全体の構造が、図4に示した装置400と僅かに異なる。図5に示した例では、ハウジング420の壁422は装置500の前記多孔質部材及び前記ヒーターから間隔を置いて配置されており、壁422と前記多孔質部材及び前記ヒーターとの間に開口部又は隙間524がある。装置500の他の特徴は、前記した装置400に類似しているが、隙間524があることは、装置400及び従来の類似の毛管力蒸発装置に対して、装置500の操作性及び耐久性において大きな利点をもたらす。
【0046】
隙間524は、隙間を有しない装置に比べてCFVに大きな操作上の改善を与えるために非常に広いものである必要はない。CFVと壁422との間の、約3mm、好ましくは2mm、最も好ましくは1mmの全体の間隔を有する隙間は、ハウジングが必要とされ、使用され又は望まれる用途に適している。前記隙間が大き過ぎると、前記CFVから生じる気泡の表面張力が不十分になる。これにより、前記気泡は、前記CFVと壁422との間の隙間524を埋めることができない。このため、特に、流体が水であるとき、前記装置を反転させると、前記流体が前記装置から漏れることがある。
【0047】
図5に隙間524が示されているが、CFVと壁との間の間隔の特定の形状又は構造が検討されているわけではなく、図5に示した隙間524の形状、配置及び寸法は説明のみを目的としたものである。実際には、多くの異なる構造が試みられ、評価されている。前記CFVの上方から見て、すなわち、図5における上部から下部への紙面における想像線に沿って見て、前記構造は、同心円、3又は4枚の葉のクローバーに似た環状配列の3又は4の通路、多くの通路からなる環状配列等とすることができる。本発明の好ましい実施例では、ハウジング422及び隙間524は中央のCFV装置の周囲に同軸的に配置されている。
【0048】
図6に、CFVの他の実施例を符号600で示す。この装置は、図5における壁422と比べて、壁622が低く、前記CFVを十分に隠さない又は保護しないという点で、図5に示した装置500と異なる。この構造では、隙間が少なく、前記多孔質部材が多く、蒸発部分402及び絶縁部分404は大気に曝されている。このため、集められる気泡の量が少なく、該気泡は前記装置から自由に発散する。
【0049】
極端な例では、壁622は、ゼロの高さを有するものとすることができる。すなわち、ハウジング420は、CFVが配置された張出し部分418を有するディスクからなるものとすることができる。この場合、隙間はなく、前記CFVは、実質的に無限に開放された構造を有する。この場合における唯一の要件は、様々なCFV部材を一緒に保持するのに必要な機械力を与える何らかの取り付け手段又は固定手段があることである。前記したことから、本発明の1つの実施例によれば、加圧されていない液体から加圧された蒸気を発生させる装置は、(a)絶縁部分及び任意の蒸発部分を有する多孔質部材であって前記液体を受け入れる表面と、前記液体から生じさせた蒸気を加圧する領域とを有する多孔質部材と、(b)前記液体を蒸発させるために前記多孔質部材へ熱を伝えるヒーターであって蒸気を収集する領域と、零より大きい速度で前記蒸気を放出する少なくとも1つのオリフィスとを有するヒーターと、(c)前記ヒーターを前記多孔質部材に熱交換可能に接した状態に保持する保持手段と、(d)前記多孔質部材、前記ヒーター及び前記保持手段から3mm、好ましくは2mm、最も好ましくは1mmの間隔を置かれた壁を有する任意のハウジングとを有する。
【0050】
C.適当な機械力としての重力
最も単純な形態では、CFVは、多孔質部材と、ヒーターと、前記多孔質部材及び前記ヒーターを互いに熱交換可能に接触させた状態に保持する保持手段又は機械力発生器とを有する。前記多孔質部材は、絶縁部分と、任意の蒸発部分とを有し、前記ヒーターは、蒸気収集領域と、蒸気を放出する少なくとも1つのオリフィスとを有する。
【0051】
様々な機械力発生器又は機械力発生手段は、既に説明したとおりである。2006年5月15日にされた出願PCT/US2006/018,696に、クランプ、スプリング、クリップ等の機械力発生手段が開示されている。現在の調査の過程で、前記したものに加え、地球に存在する重力のような引力でさえ、状況によってはCFVの連続操作に適当な機械力を提供できることがわかっている。本発明の1つの実施例では、毛管力蒸発装置は、(a)絶縁部分及び任意の蒸発部分を有する多孔質部材と、(b)ヒーターと、(c)前記ヒーターを前記多孔質材料に熱交換可能に接した状態に保持する保持手段とを含み、前記保持手段は、重力と、スプリングクリップ、クランプ及びクランプ装置のような緊張装置と、摩擦嵌めと、スナップ留め具と、差込み留め具と、ねじ留め具と、ツイスト留め具と、コニカルワッシャー、波ワッシャー、板ばね及びコイルばねを有する、当業者に知られた様々なスプリング装置と、溶接と、化学的、物理的又は機械的な結合と、焼結と、嵌め込みと、化学反応と、これらのいずれかの組合せとから選択されたものとすることができる。
【0052】
D.より高い周囲圧力の下でのCFVの操作
通常のCFV操作中、毛管力が液体を熱源へ移動させ、該熱源は、液体を、該液体が大気圧又は大気圧より僅かに高い圧力で前記CFVから放出されるように蒸発させる。前記CFVが配置され、操作される空気又は他の周囲環境が大気圧又は大気圧に近い圧力の下にある場合、前記CFV装置は正常に機能する。しかし、前記CFVが高い大気圧の下で操作される場合、前記CFV装置の背圧が前記流体を最終的に前記装置へ戻し、蒸発された液体の連続的な放出を妨げる。
【0053】
状況に応じて、高圧力下であっても、前記CFV装置の氾濫又は故障を生じさせることなく、CFVを用いて、加圧された蒸気を発生させ、蒸気を蒸気流へ放出することが可能である。この目的を達成する鍵は、前記CFV装置の圧力降下がないことを確かめることである。しかし、この課題を解決することは容易ではない。
【0054】
加圧された環境でのCFVの操作において、高い背圧の発生は、蒸気の放出を妨げ、前記CFVの偶発的な氾濫を生じさせる。前記CFVの中で流体に作用する毛管力は、大気圧環境へ蒸発させる材料を搬送するのに十分であるが、蒸気が加圧環境で用いられる場合、非常に大きな圧力降下が生じる。前記流体の単なる加圧により背圧問題を克服しようとすると、前記CFV装置の前記オリフィスにおいて、大きい、目に見える前記流体の滴が滴る程度に非常に多くの流体が前記CFVを経て運ばれる。
【0055】
前記液体を周囲環境圧力の液体に極力近付けるように加圧することにより、搬送手段又は環境圧力によって抑圧されない蒸気を発生させるために前記CFVを操作することが可能である。本発明の実施例によれば、大気圧より高い第1圧力を有する環境で使用する、液体から蒸気流を発生させる装置は、(a)前記液体を受け入れる表面及び前記液体から生じさせた蒸気を加圧する領域を有する多孔質部材と、(b)前記液体を蒸発させるために前記多孔質部材へ熱を伝えるヒーターであって蒸気を収集する領域と、零より大きい速度で前記蒸気を放出する少なくとも1つの孔とを有するヒーターとを含み、前記液体は少なくとも前記第1圧力の下にある。
【0056】
大気圧より高い第1圧力を有する環境において、加圧された蒸気を発生させる方法は、(a)液体を第2圧力まで加圧すること、(b)加圧した液体を毛管力蒸発装置に供給することを含み、前記毛管力蒸発装置は、多孔質部材と、前記液体を蒸発させるために前記多孔質部材へ熱を伝えるヒーターと、零より大きい速度で蒸気を放出する少なくとも1つの孔とを有し、前記多孔質部材は、前記液体を受け入れる表面を有する絶縁部分と、前記液体から生じさせた蒸気を収集しかつ加圧する蒸発領域を有する任意の蒸発部分とを有し、前記第2圧力は少なくとも前記第1圧力と等しい。大気圧又は大気圧に近い圧力の下で操作されるCFVに供給された流体を加圧する必要はない。大気圧又は周囲圧力の小さい変化は、前記CFVの操作に害を及ぼすことなく、該CFVにより処理される。
【0057】
本発明は、特定の態様、図及び例に関して上記のとおり詳細に説明されている。これらの態様、図及び例は、本発明の範囲を狭めるものではなく、本発明及び本発明が実施される方法の理解を容易にし、かつ当業者が本発明を実施することができるようにするための説明用の例である。当然のことながら、本明細書において検討された本発明の広い範囲から逸脱することなく、説明された毛管力蒸発装置、モジュール及びシステムのみならず、材料、製造方法及び用途に様々な変更及び置換がなされてもよい。本発明は特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】約0.14 kg-f/cm2(2psi)の供給圧力における、本発明に係る、評価された様々な一体構造の材料を経て流れた水の流量に対する沸点のグラフ。
【図2】本発明に係る、評価された様々な一体構造の多孔質材料に対する最大出力試験の結果を示す棒グラフ。
【図3】100ワットで操作されている好適でないCFVについての時間に対するヒーター温度のプロット。
【図4】本発明の1つの実施例に係る毛管力蒸発装置の断面図。
【図5】本発明の第2実施例に係る毛管力蒸発装置の断面図。
【図6】本発明の第3実施例に係る毛管力蒸発装置の断面図。
【符号の説明】
【0059】
400、500、600 CFV
410 オリフィス
402 蒸発部分
404 絶縁部分
420 ハウジング
422 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧されていない液体から加圧された蒸気を発生させる装置であって、
絶縁部分及び蒸発部分を有する多孔質部材であって前記液体を受け入れる表面と、前記液体から生じさせた蒸気を加圧する領域とを有する多孔質部材と、
前記液体を蒸発させるために前記多孔質部材へ熱を伝えるヒーターであって蒸気を収集する領域と、零より大きい速度で前記蒸気を放出する少なくとも1つのオリフィスとを有するヒーターと、
前記ヒーターを前記多孔質部材に熱交換可能に接した状態に保持する保持手段と、
ハウジングとを含み、
前記多孔質部材は毛管力により前記液体を前記ヒーターへ引き上げる、装置。
【請求項2】
前記保持手段は、スプリングクリップ、クランプ及びクランプ装置のような緊張装置と、摩擦嵌めと、スナップ留め具と、差込み留め具と、ねじ留め具と、ツイスト留め具と、コニカルワッシャー、波ワッシャー、板ばね及びコイルばねを有するスプリング装置と、溶接と、化学的、物理的又は機械的な結合と、焼結と、化学反応と、重力と、これらのいずれかの組合せとから選択されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記多孔質材料、前記ヒーター及び前記保持手段から3mm、2mm又は1mmの間隔を置かれた壁を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記絶縁部分は、ZAL-45AA、Mott Grade 5、AF6、AF15、AF30、AF50、MeAF3、Micromass、T-Cast、P-10-C、P-16-C、P-40-C及びP-55-Cから選択されており、より好ましくはZAL-45AA、Mott Grade 5、AF15、AF30、AF50、MeAF3、Micromass、T-Cast、P-40-C及びP-55-Cから選択されており、最も好ましくはAF30及び MeAF3から選択されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記保持手段は、スプリングクリップ、クランプ及びクランプ装置のような緊張装置と、摩擦嵌めと、スナップ留め具と、差込み留め具と、ねじ留め具と、ツイスト留め具と、コニカルワッシャー、波ワッシャー、板ばね及びコイルばねを有するスプリング装置と、溶接と、化学的、物理的又は機械的な結合と、焼結と、嵌め込みと、化学反応と、重力と、これらのいずれかの組合せとから選択されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
大気圧より高い第1圧力を有する環境において、加圧された蒸気を発生させる装置であって、
多孔質部材と、液体を蒸発させるために前記多孔質部材へ熱を伝えるヒーターとを含み、
前記多孔質部材は、前記液体を受け入れる表面を有する絶縁部分と、前記液体から生じさせた蒸気を収集しかつ加圧する蒸発領域及び零より大きい速度で前記蒸気を放出する少なくとも1つの孔を有する蒸発部分とを有し、
前記液体は少なくとも前記第1圧力の下にある、装置。
【請求項7】
大気圧より高い第1圧力を有する環境において、加圧された蒸気を発生させる方法であって、
液体を第2圧力まで加圧すること、
加圧した液体を毛管力蒸発装置に供給することを含み、
前記毛管力蒸発装置は、多孔質部材と、前記液体を蒸発させるために前記多孔質部材へ熱を伝えるヒーターとを含み、
前記多孔質部材は、前記液体を受け入れる表面を有する絶縁部分と、前記液体から生じさせた蒸気を収集しかつ加圧する蒸発領域及び零より大きい速度で前記蒸気を放出する少なくとも1つの孔を有する蒸発部分とを有し、
前記第2圧力は少なくとも前記第1圧力と等しい、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−518612(P2009−518612A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543492(P2008−543492)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/046030
【国際公開番号】WO2007/064909
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(303041250)ヴェイポア インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】