説明

改良された病原体耐性を有する植物の生成方法

本開示は、NMR核酸の発現の変化に起因して病原体耐性表現型の改変(たとえば、線虫耐性の増大)を示す植物に関する。本発明はさらに、病原体耐性表現型の改変を有する植物を生成する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2006年6月13日出願の米国特許仮出願第60/813,662号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
果実、種子、葉および花の生産を阻害し、収穫作物の質および量の低下を生じさせるおそれのある植物病原体による感染の抑制は有意な経済的重要性を有する。病原体は、毎年、世界中で何十億ドルもの損害を作物に与えている(Baker et al. 1997, Science 276:726-733(非特許文献1))。その結果、ますます多くの研究が、植物の病気を抑制する新規な方法の開発に充てられている。そのような研究は、病原体の攻撃に対抗するための植物自身の防衛能力を補強しようとする、病原体侵入に抵抗する植物本来の能力に焦点を当てたものであった(Staskawicz et al. 1995, Science 268:661-667(非特許文献2); Baker et al. 前記)。
【0003】
大部分の作物は農薬、たとえば抗真菌剤および抗菌剤で処理されるが、病原体感染による損害はなお、農業に対して規則的に歳入損失を生じさせている。さらには、そのような感染または外寄生を抑制するために使用される薬剤の多くは植物および/または環境に対して悪影響を生じさせる。病原体による感染に対して高められた耐性を有する植物は、殺虫剤、抗真菌剤および抗菌剤の適用の必要性を減らす、または除くであろう。広い範囲の病原体に対して増大した耐性を示すトランスジェニック植物を開発することに有意な関心が寄せられている(Atkinson et al., 2003, Annu. Rev. Phytopathol. 41:615-639(非特許文献3); Williamson and Gleason, 2003, Curr. Opin. Plant Biol., 6:327-333(非特許文献4); Stuiver and Custers, 2001, Nature 411:865-8(非特許文献5); Melchers and Stuiver, 2000, Curr. Opin. Plant Biol. 3:147-152(非特許文献6); Rommens and Kishore, 2000, Curr. Opin. Biotechnol. 11:120-125(非特許文献7); Williamson, 1999, Curr. Opin. Plant Biol. 2:327-331(非特許文献8); Mourgues et al. 1998, Trends Biotechnol. 16:203-210(非特許文献9))。
【0004】
植物病原性線虫は、作物の根を食べてその植物に損傷を与え、作物の収量を減少させる小さな無脊椎動物である。シストセンチュウ(Heteroderidae)科の線虫が植物寄生性線虫の中でもっとも多大な経済的損害を生じさせる(Williamson, 1999, Curr. Opin. Plant Biol. 2:327-331)。この科の寄生性線虫は二つのグループ、すなわち根瘤線虫(ネコブセンチュウ(Meloidogyne)属)および被嚢線虫(シストセンチュウ(Heterodera)属およびグロボデラ(Globodera)属)に分類することができる。根瘤線虫による宿主植物の感染は通常、根のこぶ、すなわち「根瘤」の形成をもたらし、多くの作物で収量の深刻な損失を生じさせる。対照的に、被嚢線虫は、多くの場合、宿主の範囲が狭めである。分子遺伝子学実験に敏感に反応するシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)は、根瘤線虫および被嚢線虫のいくつかの種の宿主であるため、植物・線虫相互作用への洞察を提供するための重要なモデルである(Sijmons et al., 1991, Plant J., 1:245-254(非特許文献10))。
【0005】
異所性発現が線虫に対する耐性の変化に関連する多数の遺伝子が、いくつかの作物種で同定されている。たとえば、トマトのMi遺伝子は、いくつかの根瘤線虫種に対する耐性を付与する(Williamson, 1998, Annu. Rev. Phytopathol. 36:277-293(非特許文献11))。Miタンパク質はNBS (ヌクレオチド結合部位)およびLRR (ロイシンリッチリピート)ドメインを含む(Kaloshian et al., 1998, Mol. Gen. Genet., 257:376-385(非特許文献12); Milligan et al., 1998, Plant Cell 10:1307-1319(非特許文献13))。サトウダイコンの近縁野生種のHs1pro-1遺伝子は被嚢線虫テンサイシストセンチュウ(Heterodera schachtii)に対する耐性を付与する(Cai et al., 1997, Science, 275:832-834(非特許文献14))。Hs1pro-1タンパク質は、予測されたシグナル配列、予測されたトランス膜貫通領域およびロイシンリッチな領域を含む。ジャガイモのGpa2遺伝子は、被嚢線虫ジャガイモシロシストセンチュウ(Globodera pallida)のいくつかの隔離集団に対する耐性を付与する(van der Voort et al., 1999, Mol. Plant-Microbe Int., 12:187-206(非特許文献15); van der Vossen, 2000, Plant J., 23:567-576(非特許文献16))。トマトのHero遺伝子は、ジャガイモ被嚢線虫、たとえばジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochiensis)およびジャガイモシロシストセンチュウに対する耐性を付与する(Ernst et al., 2002, Plant J., 31:127-136(非特許文献17))。Gpa2およびHeroタンパク質は、Miタンパク質と同様、NBSおよびLRRドメインを含む。最後に、コムギのCre1遺伝子は、大部分のヨーロッパの線虫および唯一のオーストラリア病原型に対する耐性を付与し、コムギのCre3遺伝子は、オーストラリアの線虫に対する耐性を付与する(de Majnik J et al., 2003, Mol. Plant Microbe Interact. 16:1129-1134(非特許文献18))。Cre1およびCre3遺伝子はクローニングされていない。
【0006】
植物における病原体耐性の重要性のため、増大した病原体耐性を有する植物を生産する方法が望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Baker et al. 1997, Science 276:726-733
【非特許文献2】Staskawicz et al. 1995, Science 268:661-667
【非特許文献3】Atkinson et al., 2003, Annu. Rev. Phytopathol. 41:615-639
【非特許文献4】Williamson and Gleason, 2003, Curr. Opin. Plant Biol., 6:327-333
【非特許文献5】Stuiver and Custers, 2001, Nature 411:865-8
【非特許文献6】Melchers and Stuiver, 2000, Curr. Opin. Plant Biol. 3:147-152
【非特許文献7】Rommens and Kishore, 2000, Curr. Opin. Biotechnol. 11:120-125
【非特許文献8】Williamson, 1999, Curr. Opin. Plant Biol. 2:327-331
【非特許文献9】Mourgues et al. 1998, Trends Biotechnol. 16:203-210
【非特許文献10】Sijmons et al., 1991, Plant J., 1:245-254
【非特許文献11】Williamson, 1998, Annu. Rev. Phytopathol. 36:277-293
【非特許文献12】Kaloshian et al., 1998, Mol. Gen. Genet., 257:376-385
【非特許文献13】Milligan et al., 1998, Plant Cell 10:1307-1319
【非特許文献14】Cai et al., 1997, Science, 275:832-834
【非特許文献15】van der Voort et al., 1999, Mol. Plant-Microbe Int., 12:187-206
【非特許文献16】van der Vossen, 2000, Plant J., 23:567-576
【非特許文献17】Ernst et al., 2002, Plant J., 31:127-136
【非特許文献18】de Majnik J et al., 2003, Mol. Plant Microbe Interact. 16:1129-1134
【発明の概要】
【0008】
本開示の概要
本開示は、線虫のような病原体に対して、対照植物と比べて増大した耐性を有するトランスジェニック植物を提供する。トランスジェニック植物は、病原体耐性作用活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物をそのゲノムの中に組み込んで(たとえば安定的に組み込んで)いる。ヌクレオチド配列は、表3および4の3列目で同定されたヌクレオチド配列もしくはその補体;表3および4の3列目で同定されたヌクレオチド配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列もしくはその補体;表3および4の4列目で同定されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;または表3および4の4列目で同定されたアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であることができる。ヌクレオチド配列は、植物細胞におけるコード配列の発現を駆動するプロモーターに機能的に連結されている。いくつかの態様では、トランスジェニック植物は、ナタネ、ダイズ、トウモロコシ、ヒマワリ、ワタ、ココア、ベニバナ、アブラヤシ、ココヤシ、アマ、ヒマおよびピーナッツ、トマト、ニンジン、レタス、マメ、アスパラガス、カリフラワー、コショウ、ビート、キャベツ、ナス、エンダイブ、ニラネギ、長キュウリ、メロン、エンドウ、ダイコン、根茎、ミニキュウリ(Beit alpha)、カボチャ、スイカ、白タマネギ、チコリー、黄タマネギ、ブロッコリ、芽キャベツ、ネギ、セロリ、ノヂシャ、キュウリ、ウイキョウ、ウリ、パンプキン、スイートコーンおよびズッキーニからなる群より選択される。
【0009】
トランスジェニック植物は、表3および4の4列目で同定されたNMRポリペプチドまたはその変種をコードするヌクレオチド配列またはそれらをコードする配列に相補的であるヌクレオチド配列を含む少なくとも一つの植物形質転換ベクターをその植物またはその細胞に導入することによって、および形質転換した植物または細胞を成長させて、少なくとも一つの病原体に対して増大した耐性を示すトランスジェニック植物を生産することによって、生産することができる。一つの態様では、NMRポリペプチドは、表3および4の4列目で参照されるアミノ酸に対して少なくとも約70%の配列同一性を有する。他の態様では、NMRポリペプチドは、表3および4の4列目で参照されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%または90%の配列同一性(またはそれを超える)を有する、またはそのアミノ酸配列を有する。
【0010】
増大した線虫耐性をはじめとする増大した病原体耐性を有する植物を生産する方法であって、NMR遺伝子の変化を有する植物を同定する段階、およびその植物の後代を生成する段階を含み、該後代が増大した病原体耐性を有し、該NMR遺伝子が、表3および4の4列目で同定された遺伝子である方法が提供される。また、増大した病原体耐性を有する植物を同定する方法であって、該植物由来の少なくとも一つのNMR遺伝子を解析する段階、および増大した病原体耐性を有する、NMR遺伝子の変化を有する植物を同定する段階を含む方法が提供される。本発明はさらに、本明細書に記載された方法によって得られる植物および植物部分を提供する。
【0011】
配列表
添付の配列表に列記する核酸および/またはアミノ酸配列は、37 C.F.R. 1.822で規定されている、ヌクレオチド塩基のための標準略号およびアミノ酸のための3文字コードを使用して示す。各核酸配列の一方の鎖しか示されていないが、表記された方の鎖の任意の参照によって相補鎖が含まれるものと理解される。添付の配列表中、
配列番号: 1および2は、シロイヌナズナATCHX10;一価カチオン:プロトン対向輸送体(ATCHX10)のmRNA (GI 18407880|ref|NM_114362.1|)およびタンパク質(gi|15230551|ref|NP_190079.1)配列である。
配列番号: 3および4は、シロイヌナズナ未知タンパク質(AT3G44935)のmRNA (GI|22331603|ref|NM_148843.1|)およびタンパク質(gi|22331604|ref|NP_680096.1)配列である。
配列番号: 5および6は、シロイヌナズナ未知タンパク質(AT3G44940)のmRNA (GI|30692415|ref|NM_114363.2|)およびタンパク質(gi|30692416|ref|NP_190080.2)配列である。
配列番号: 7および8は、シロイヌナズナ未知タンパク質(AT3G44950)のmRNA (GI|18407884|ref|NM_114364.1|)およびタンパク質(gi|15230556|ref|NP_190081.1)配列である。
配列番号: 9および10は、シロイヌナズナ未知タンパク質(AT5G23340)のmRNA (GI|30688921|ref|NM_122240.2|)およびタンパク質(gi|15237286|ref|NP_197725.1)配列である。
配列番号: 11および12は、シロイヌナズナ未知タンパク質(AT5G23350)のmRNA (GI|22327006|ref|NM_122241.2|)およびタンパク質(gi|15237287|ref|NP_197726.1)配列である。
配列番号: 13および14は、シロイヌナズナ未知タンパク質(AT5G23360)のmRNA (GI|42568032|ref|NM_122242.3|およびタンパク質(gi|15237288|ref|NP_197727.1)配列である。
配列番号: 15および16は、シロイヌナズナ未知タンパク質(AT5G23370)のmRNA (GI|22327007|ref|NM_122243.2|)およびタンパク質(gi|15237301|ref|NP_197728.1)配列である。
配列番号: 17および18は、シロイヌナズナ未知タンパク質(AT5G23380)のmRNA (GI|30688942|ref|NM_122244.2|)およびタンパク質(gi|15237306|ref|NP_197729.1)配列である。
配列番号: 19および20は、シロイヌナズナ未知タンパク質(AT5G23390)のmRNA (GI|30688951|ref|NM_122245.3|)およびタンパク質(gi|15237309|ref|NP_197730.1)配列である。
配列番号: 21および22は、シロイヌナズナ未知タンパク質(AT5G23395)のmRNA (GI|42570036|ref|NM_147906.3|)およびタンパク質(gi|22327010|ref|NP_680211.1)配列である。
配列番号: 23および24は、シロイヌナズナATMKK7; キナーゼ(ATMKK7)のmRNA (GI|18394598|ref|NM_101693.1|)およびタンパク質(gi|15221060|ref|NP_173271.1)配列である。
配列番号: 25および26は、シロイヌナズナ触媒/ヒドロラーゼ(AT1G18360)のmRNA (GI|30685820|ref|NM_101694.3|)およびタンパク質(gi|22329651|ref|NP_173272.2)配列である。
配列番号: 27および28は、シロイヌナズナHIK (HINKEL); ATP結合/微小管モータ(HIK)のmRNA (GI|30685823|ref|NM_101695.3|)およびタンパク質(gi|22329653|ref|NP_173273.2)配列である。
配列番号: 29および30は、シロイヌナズナ未知タンパク質(AT1G18380)のmRNA (GI|18394601|ref|NM_101696.1|)およびタンパク質(gi|15221762|ref|NP_173274.1)配列である。
配列番号: 31および32は、シロイヌナズナATP結合/キナーゼ/タンパク質キナーゼ/タンパク質セリン/トレオニンキナーゼ/タンパク質・チロシンキナーゼ(AT1G18390)のmRNA (GI|18394602|ref|NM_101697.1|)およびタンパク質(gi|15221764|ref|NP_173275.1)配列である。
配列番号: 33および34は、シロイヌナズナ転写因子(AT1G18400)のmRNA (GI|30685839|ref|NM_101698.2|)およびタンパク質(gi|30685840|ref|NP_173276.2)配列である。
配列番号: 35および36は、シロイヌナズナATP結合/タンパク質キナーゼ/タンパク質セリン/トレオニンキナーゼ/タンパク質・チロシンキナーゼ(AT3G53590)のmRNA (GI|18409867|ref|NM_115219.1|)およびタンパク質(gi|15231843|ref|NP_190927.1)配列である。
配列番号: 37および38は、シロイヌナズナ核酸結合/転写因子/亜鉛イオン結合(AT3G53600)のmRNA (GI|18409871|ref|NM_115220.1|)およびタンパク質(gi|15231845|ref|NP_190928.1)配列である。
配列番号: 39および40は、シロイヌナズナATRAB8、GTP結合(ATRAB8)のmRNA (GI|42570491|ref|NM_180365.2|)およびタンパク質(gi|30693873|ref|NP_850696.1)配列である。
配列番号: 41および42は、シロイヌナズナATRAB8、GTP結合(ATRAB8)のmRNA (GI|30693869|ref|NM_115221.2|)およびタンパク質(gi|15231847|ref|NP_190929.1)配列である。
配列番号: 43および44は、シロイヌナズナ無機ジホスファターゼ/マグネシウムイオン結合/ピロホスファターゼ(AT3G53620)のmRNA (GI|18409875|ref|NM_115222.1|)およびタンパク質(gi|15231849|ref|NP_190930.1)配列である。
配列番号: 45および46は、シロイヌナズナ未知タンパク質(AT3G53630)のmRNA (GI|42565899|ref|NM_115223.4|)およびタンパク質(gi|22331772|ref|NP_190931.2)配列である。
配列番号: 47および48は、シロイヌナズナATP結合/キナーゼ/タンパク質キナーゼ/タンパク質セリン/トレオニンキナーゼ/タンパク質・チロシンキナーゼ(AT3G53640)のmRNA (GI|18409886|ref|NM_115224.1|)およびタンパク質(gi|15231853|ref|NP_190932.1)配列である。
配列番号: 49および50は、シロイヌナズナDNA結合(AT3G53650)のmRNA (GI|18409888|ref|NM_115225.1|)およびタンパク質(gi|15231854|ref|NP_190933.1)配列である。
配列番号: 51および52は、シロイヌナズナATOPT2;オリゴペプチド輸送体(ATOPT2)のmRNA (GI|18391089|ref|NM_100867.1|)およびタンパク質(gi|15218331|ref|NP_172464.1)配列である。
配列番号: 53および54は、シロイヌナズナ触媒(AT1G09932)のmRNA (GI|30681449|ref|NM_179297.1|)およびタンパク質(gi|30681450|ref|NP_849628.1)配列である。
配列番号: 55および56は、シロイヌナズナ触媒(AT1G09935)のmRNA (GI|42570079|ref|NM_148453.2|)およびタンパク質(gi|42570080|ref|NP_683294.2)配列である。
配列番号: 57および58は、シロイヌナズナHEMA2;グルタミル−tRNAレダクターゼ(HEMA2)のmRNA (GI|30681461|ref|NM_100868.2|)およびタンパク質(gi|15218333|ref|NP_172465.1)配列である。
配列番号: 59および60は、シロイヌナズナ未知タンパク質(AT1G09950)のmRNA (GI|30681468|ref|NM_100869.2|)およびタンパク質(gi|15218335|ref|NP_172466.1)配列である。
配列番号: 61および62は、シロイヌナズナSUT4(ショ糖輸送体4);炭水化物輸送体/ショ糖:水素共輸送体/糖輸送体(SUT4)のmRNA (GI|30681472|ref|NM_100870.2|)およびタンパク質(gi|15218362|ref|NP_172467.1)配列である。
配列番号: 63および64は、シロイヌナズナ転写因子(AT1G75250)のmRNA (GI|18410812|ref|NM_106181.1|)およびタンパク質(gi|15222161|ref|NP_177661.1)配列である。
配列番号: 65および66は、シロイヌナズナカルモジュリン結合/翻訳伸長因子(AT1G07930)のmRNA (GI|30680419|ref|NM_100667.2|)およびタンパク質(gi|18390829|ref|NP_563800.1)配列である。
配列番号: 67および68は、シロイヌナズナ転写因子(AT1G17880)のmRNA (GI|30685575|ref|NM_101651.2|)およびタンパク質(gi|15220876|ref|NP_173230.1)配列である。
配列番号: 69および70は、シロイヌナズナ未知タンパク質(AT1G15270)のmRNA (GI|30684274|ref|NM_101396.2|)およびタンパク質(gi|18394220|ref|NP_563969.1)配列である。
配列番号: 71および72は、シロイヌナズナRNA結合/核酸結合(AT2G37220)のmRNA (GI|30687074|ref|NM_129278.2|)およびタンパク質(gi|15228102|ref|NP_181259.1)配列である。
配列番号: 73および74は、シロイヌナズナCSD2 (銅/亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ2);銅、亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ(CSD2)のmRNA (GI|30683800|ref|NM_128379.2|)およびタンパク質(gi|18401659|ref|NP_565666.1)配列である。
配列番号: 75および76は、シロイヌナズナリンゴ酸デヒドロゲナーゼ/オキシドレダクターゼ(AT5G58330)のmRNA (GI|42573723|ref|NM_203229.1|)およびタンパク質(gi|42573724|ref|NP_974958.1)配列である。
配列番号: 77および78は、シロイヌナズナリンゴ酸デヒドロゲナーゼ/オキシドレダクターゼ(AT5G58330)のmRNA (GI|42568623|ref|NM_125218.3|)およびタンパク質(gi|30697051|ref|NP_568875.2)配列である。
配列番号: 79および80は、シロイヌナズナリンゴ酸デヒドロゲナーゼ/オキシドレダクターゼ(AT5G58330)のmRNA (GI|42570606|ref|NM_180883.2|)およびタンパク質(gi|30697049|ref|NP_851214.1)配列である。
配列番号: 81および82は、シロイヌナズナLHCB5(光化学系II 5の集光性複合体);クロロフィル結合(LHCB5)のmRNA (GI|42566395|ref|NM_117102.3|)およびタンパク質(gi|15235029|ref|NP_192772.1)配列である。
配列番号: 83および84は、シロイヌナズナHOG1(相同性依存遺伝子サイレンシング1); アデノシルホモシステイナーゼ(HOG1)のmRNA (GI|30682653|ref|NM_117468.2|)およびタンパク質(gi|15236376|ref|NP_193130.1)配列である。
配列番号: 85および86は、シロイヌナズナAHUS5;ユビキチン結合酵素/ユビキチン様活性化酵素(AHUS5)のmRNA (GI|18410828|ref|NM_115649.1|)およびタンパク質(gi|15230881|ref|NP_191346.1)配列である。
配列番号: 87および88は、シロイヌナズナDNA結合/転写因子(AT5G54680)のmRNA (GI|30696503|ref|NM_124849.2|)およびタンパク質(gi|15239706|ref|NP_200279.1)配列である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
定義
断りのない限り、本明細書で使用するすべての技術・科学用語は、本発明の技術分野の当業者にとっての意味と同じ意味を有する。実施者は、当技術分野における定義および用語に関して特にSambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Second Edition)、Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y.およびAusubel FM et al., 1993, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y.を参照。本発明は、記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬を変化させてもよく、これらに限定されないということが理解されよう。
【0013】
本明細書で使用する「ベクター」または「形質転換ベクター」という用語は、異なる宿主細胞の間で移行するように設計された核酸構築物をいう。「発現ベクター」とは、異種DNAフラグメントを異物細胞に組み込み、その中で発現させる能力を有するベクターをいう。例示的発現ベクターをはじめとする多くの原核生物および真核生物ベクターが市販されている。適切なベクターの選択は当業者の知識の範囲内である。
【0014】
「異種」核酸構築物または配列は、配列のうち、それが発現するところの植物細胞にとって固有ではない少なくとも一部分を有する。対照配列に関していう異種とは、対照配列(たとえばプロモーターまたはエンハンサー)が、現在それが発現を調節しているものと同じ遺伝子を調節するように本質的に機能しないことをいう。一般に、異種核酸配列は、それが存在するところの細胞または固有ゲノムの部分にとって内在性ではなく、感染、形質移入、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等によって細胞に加えられたものである。「異種」核酸構築物は、天然植物中に見られる制御配列/DNAコード配列の組み合わせと同じ、または異なる制御配列/DNAコード配列の組み合わせを含むことができる。
【0015】
本明細書で使用する「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖の生産に関与するDNAのセグメントを意味し、コード領域の前後の領域、たとえば5'非翻訳(5' UTR)または「リーダ」配列および3' UTRまたは「トレーラ」配列ならびに個々のコードセグメント(エキソン)の間の介在配列(イントロン)および非転写調節配列を含んでもよいし含まなくてもよいセグメントをいう。
【0016】
本明細書で使用する「核酸分子」という用語は、DNA分子(たとえばcDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(たとえばmRNA)ならびにヌクレオチド類似体を使用して生成されるDNAまたはRNAの類似体を含むことを意図する。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であることができるが、好ましくは二本鎖DNAである。「補体」とは、所与のヌクレオチド配列に対して十分に相補的であり、その所与のヌクレオチド配列にハイブリダイズすることによって安定な二重鎖を形成することができるヌクレオチド配列を意図する。
【0017】
本明細書で使用する「組換え」とは、細胞もしくはベクターが異種核酸配列の導入によって改変されていることまたは細胞がそのように改変された細胞に由来することをいう。したがって、たとえば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態内では同一形態で見られない遺伝子を発現する、あるいは、人間の意図的な介入の結果として他のやり方で異常に発現した、不十分に発現した、または全く発現しない天然遺伝子を発現する。
【0018】
本明細書で使用する「遺伝子発現」という用語は、遺伝子の核酸配列に基づいてポリペプチドが生産されるプロセスをいう。プロセスは転写および翻訳を含む。したがって、「発現」は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列のいずれかまたは両方を指すことができる。ときには、ポリヌクレオチド配列の発現はタンパク質翻訳につながらない。「過剰発現」とは、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド配列の、野生型(または他の参照(たとえば非トランスジェニック))植物におけるその発現と比べて増大した発現をいい、天然の配列または非天然の配列に関することができる。「異所性発現」とは、非変性または野生型植物では自然には起こらない時間、場所および/または増大したレベルにおける発現をいう。「発現不足」とは、一般には内在性遺伝子のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド配列の、野生型植物におけるその発現と比べて低下した発現をいう。「ミス発現」および「発現の変化」という用語は、過剰発現、発現不足および異所性発現を包含する。
【0019】
核酸配列を細胞に挿入することに関していう「導入」という用語は、たとえば、「形質移入」または「形質転換」または「形質導入」を含み、核酸配列を細胞(たとえば、染色体、プラスミド、プラスチドまたはミトコンドリアDNA)のゲノムに組み込む、自律レプリコンに転換する、または一過的に発現させる(たとえば形質移入mRNA)ことができる真核生物または原核生物細胞への核酸配列の組み込みをいう場合を含む。
【0020】
本明細書で使用する「植物細胞」とは、非分化組織(たとえばカルス)ならびに植物種子、花粉、栄養繁殖体および胚からの細胞を含む、植物に由来する任意の細胞をいう。
【0021】
本明細書で使用する、所与の植物形質または表現型に対する「天然」および「野生型」という用語は、その形質または表現型が自然界の同じ植物種で見られるところの形態をいう。
【0022】
本明細書で使用する、植物形質に関する「改変」という用語は、同様な非トランスジェニック植物に対するトランスジェニック植物の表現型の変化をいう。トランスジェニック植物を参照していう「興味深い表現型(形質)」とは、T1および/または後世代植物によって示されるが、対応する非トランスジェニック植物(たとえば、同様な条件下で育成またはアッセイされた遺伝子型的に類似した植物)によっては示されない、認識可能または計測可能な表現型をいう。興味深い表現型は、植物における改良を表すことができる、または他の植物に改良を加えるための手段を提供することができる。「改良」とは、植物に独自および/または新規な性質を提供することによってその植物種の有用性もしくは多様性を高めることができる特徴である。
【0023】
「病原体耐性表現型の変化」または「病原体耐性の変化」とは、遺伝子的に改変された植物の、病原体感染に対する応答における、同種の非改変植物の応答に比較した場合の検出可能な変化をいう。表現型は、植物そのもの(たとえば植物の成長、生存力または特定の組織形態)で明らかになることもできるし、あるいは病原体がその植物で繁殖する、および/またはその植物に感染する能力で明らかになることもできる。本明細書で使用する「病原体耐性の改良」とは、病原体に対する耐性の増大をいう。病原体耐性を計測する方法は当技術分野で周知である。たとえば、Epple et al., Plant Cell, 1997, 9:509-520、Jach et al., Plant J., 1995, 8:97-109, Lorito et al., Proc Natl Acad Sci USA, 1998, 95:7860-7865, McDowell et al., Plant J., 2000, 22:523-529, McDowell et al., Mol Plant Microbe Interact., 2005, 18:1226-1234, Schweizer et al., Plant Physiol., 1993, 102:503-511, Simons et al., Plant Cell, 1998, 10:1055-1068、Stein et al., Plant Cell, 2006, 18:731-746, Epub 2006 Feb 2006, Thomma et al., Curr Opin Immunol., 2001, 13:63-68を参照。したがって、「病原体耐性作用活性」または「病原体耐性」とは、病原体感染中に成長または生存するための能力をいう。
【0024】
「線虫耐性表現型の変化」または「線虫耐性の変化」とは、遺伝子的に改変された植物の、線虫感染に対する応答における、同種の非改変植物の応答に比較した場合の検出可能な変化をいう。表現型は、植物そのもの(たとえば植物の成長、生存力または特定の組織形態)で明らかになることもできるし、あるいは病原体がその植物で繁殖する、および/もしくはその植物に感染する、または両方の能力で明らかになることもできる。本明細書で使用する「線虫耐性の改良」とは、線虫に対する耐性の増大をいう。線虫耐性を計測する方法は当技術分野で周知である。たとえば、Cai et al., Science, 1997, 275:832-834, Kaloshian et al., Mol Gen Genet., 1998, 257:376-385, Milligan et al., Plant Cell, 1998, 10:1307-1319を参照。したがって、「線虫耐性作用活性」または「線虫耐性」とは、線虫感染中に成長または生存するための能力をいう。
【0025】
本明細書で使用する「変異体」ポリヌクレオチド配列または遺伝子は、配列または発現のいずれかの点で、対応する野生型ポリヌクレオチド配列または遺伝子とは異なり、その違いが、植物の表現型または形質の改変に寄与する。植物または植物系統に関して「変異体」とは、植物表現型または形質の改変を有する植物または植物系統をいい、その表現型または形質の改変が、野生型ポリヌクレオチド配列または遺伝子の発現の改変に関連する。
【0026】
本明細書で使用する「T1」という用語は、T0植物の種子からの植物の世代をいう。T1世代は、選択剤、たとえば抗生剤または除草剤の適用により、それに対してトランスジェニック植物が対応する耐性遺伝子を含むことによって選択することができる、形質転換植物の最初の群である。「T2」という用語は、トランスジェニック植物であるとして事前に選択されたT1植物の花の自家受粉による植物の世代をいう。
【0027】
本明細書で使用する「植物部分」は、種子、胚、分裂細胞領域、カルス組織、葉、根、苗条、配偶体、胞子体、花粉および小胞子を含みこれらに限定されない、植物の器官または組織を含む。植物細胞は、任意の植物器官または組織およびそれらから調製された培養物から得ることができる。本開示の方法で使用することができる植物のカテゴリーは、一般に、単子葉類および双子葉類植物の両方を含む、形質転換技術を適用しやすい高等植物のカテゴリーと同じくらい広い。
【0028】
本明細書で使用する「トランスジェニック植物」は、異種ポリヌクレオチドをゲノム中に含む植物をいう場合を含む。異種ポリヌクレオチドは、ゲノム中に安定に組み込まれることもできるし、または染色体の外にあることもできる。好ましくは、本開示のヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが後続世代に引き継がれるよう、ゲノム中に安定に組み込まれる。異種ポリヌクレオチドが導入された植物細胞、組織、器官または植物は、「形質転換」、「形質移入」または「遺伝子導入」されたものとみなされる。異種ポリヌクレオチドを同じく含む形質転換された植物または植物細胞の直接的および間接的後代もまた、遺伝子導入されたものとみなされる。
【0029】
「単離」または「精製」された核酸分子もしくはタンパク質または生物学的に活性なその部分は、組換え技術によって生産された場合には他の細胞質または培地を実質的に含まず、化学合成された場合には化学的前駆体または他の薬品を実質的に含まない。好ましくは、「単離」された核酸は、核酸が由来する生物のゲノムDNA中で核酸を自然にフランキングする配列(好ましくはタンパク質コード配列)(たとえば、核酸の5'および3'末端に位置する配列)を含まない。本開示に関して、核酸分子をいう場合に使用される「単離された」は、単離された染色体を除外する。たとえば、様々な態様で、単離されたNMR核酸分子は、核酸が由来する細胞のゲノムDNA中で核酸分子を自然にフランキングするヌクレオチド配列を約5kb未満、4kb未満、3kb未満、2kb未満、1kb未満、0.5kb未満または0.1kb未満しか含まないことができる。細胞質を実質的に含まないNMRタンパク質は、非NMRタンパク質(本明細書では「汚染性タンパク質」とも呼ぶ)を約30%未満、20%未満、10%未満または5%未満(乾燥重量)しか有しないタンパク質の調製物を含む。
【0030】
改良された病原体耐性表現型を有する植物の同定
植物における活性化標識とは、調節配列を含む異種核酸構築物(たとえばエンハンサー)を植物ゲノムに挿入することによってランダムな変異を発生させる方法をいう。調節配列は、一つまたは複数の天然植物遺伝子の転写を高めるように働くことができる。したがって、活性化標識は、機能獲得性で一般に優性の変異体を発生させるための成果の多い方法である(たとえば、Hayashi et al., Science, 1992, 258: 1350-1353; Weigel et al., Plant Physiology, 2000, 122:1003-1013を参照)。挿入された構築物は、そのミス発現が変異表現型を生じさせる天然植物の速やかな同定のための分子標識を提供する。活性化標識はまた、機能欠失型表現型を生じさせることができる。この挿入は、天然植物遺伝子の破壊をもたらすことができ、その場合、表現型は一般に劣性である。
【0031】
活性化標識は、タバコおよびシロイヌナズナをはじめとする様々な種で、多くの異なる種の変異表現型およびそれらの表現型に対応する遺伝子を同定するために使用されてきた(Wilson et al., Plant Cell, 1996, 8:659-671; Schaffer et al., Cell, 1998, 93: 1219-1229; Fridborg et al., Plant Cell, 1999, 11:1019-1032; Kardailsky et al., Science, 1999, 286:1962-1965; Christensen et al., 2000, Cell 100:469-478)。一例では、病気耐性の変化を有する変異体を同定するために活性化標識が使用された(前記、Weigel et al.)。
【0032】
シロイヌナズナ活性化標識(ACTTAG)変異体のスクリーニングを使用して、病原体耐性表現型(具体的には、線虫耐性表現型)の変化の原因である遺伝子(表3および4(以下)の1列目に列記した指定NMR#)を同定した。
【0033】
簡潔にいうと、実施例でさらに説明するように、多数のシロイヌナズナ植物を、アグロバクテリウムチュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のTiプラスミドからのT-DNA、ウイルスエンハンサー要素および選択可能なマーカ遺伝子を含むpSKI015ベクターで変異させた(Weigel et al., Plant Physiology, 2000, 122:1003-1013)。T-DNAが形質転換植物のゲノムに挿入されると、エンハンサー要素が、挿入部の近く、一般には約10kb以内の遺伝子の上方制御を生じさせることができる。選択可能なマーカ、ひいては宿らせたT-DNA挿入を発現した形質転換植物を特異的に回収するために、T1植物を選択剤に暴露した。T1植物を成熟状態まで成長させ、自家受粉させ、種子を生産させた。T2種子を収穫し、標識し、貯蔵した。線虫ジャワネコブセンチュウ(Meloidogyne javanica)に対して増大した耐性を示すACTTAG系統を「フォワードジェネティックス」または「リバースジェネティックス」スクリーニングで同定した。
【0034】
ジャワネコブセンチュウ感染ののち、ACTTAG実生の表現型と野生型実生の表現型とを比較することにより、ジャワネコブセンチュウに対して増大した耐性を示したACTTAG系統を同定した。同定された系統中のT-DNA挿入部をフランキングするゲノムDNA配列の解析により、NMR遺伝子と病原体耐性表現型との関係を見いだした。したがって、NMR遺伝子および/またはポリペプチドを、病原体(たとえば線虫)耐性表現型(「NMR表現型」)の改変を有する遺伝子的に改変された植物の開発に使用することができる。NMR遺伝子は、ジャワネコブセンチュウ、他の寄生性根瘤線虫および他の寄生性線虫(たとえば寄生性被嚢線虫)による感染に対する改良された耐性を有する作物および/または他の植物種の生成に使用することができ、また、真菌、細菌および/または他の病原体に対する改良された耐性を有する植物の生成に有用であることもできる。したがって、NMR遺伝子のミス発現は、殺真菌剤および/または殺虫剤の必要量を減らすことができる。病原体耐性表現型の改変はさらに、植物の全体的健康を高めることができる。
【0035】
NMR核酸およびポリペプチド
「フォワードジェネティックス」活性化標識スクリーニングおよび「リバースジェネティックス」活性化標識スクリーニングで発見されたNMR遺伝子が表3および4それぞれの1列目に列記されている。シロイヌナズナ情報リソース(TAIR)同定番号が2列目に提供されている。3〜4列目は、それぞれヌクレオチドおよびポリペプチド配列のためのGenBank識別番号(GI#)を提供する。参照される公開配列それぞれが2006年6月13日時点で参照により本明細書に組み入れられる。5列目は生化学的機能および/またはタンパク質名を列記する。6列目は、保存されたタンパク質ドメインを列記する。7列目は、他の植物種からのオルソログな遺伝子の核酸およびポリペプチド配列のGI#を提供する。参照される公開配列それぞれが本出願の出願日の時点で参照により本明細書に組み入れられる。
【0036】
本明細書で使用する「NMRポリペプチド」とは、表3および4の1列目に列記された完全長NMRタンパク質をいう。「機能的に活性」であるそれらのフラグメント、派生物(変種)またはオルソログ、すなわち、完全長NMRポリペプチドに関連する機能的活性の一つまたは複数を示すタンパク質フラグメント、派生物またはオルソログをまた、本明細書に開示する方法または組成で使用することもできる。「フラグメント」とは、NMRタンパク質をコードするヌクレオチド配列の一部分またはNMRタンパク質のアミノ酸配列の一部分をいう。ヌクレオチド配列のフラグメントが、NMRタンパク質の生物学的に活性な部分、生物学的に活性な核酸(たとえばアンチセンスまたは小さな抑制性核酸)コードすることができる、または、当技術分野で公知の方法を使用するハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーとして使用することができるフラグメントであることができる。NMRヌクレオチド配列のフラグメントである核酸分子は、使用目的に依存して、少なくとも約15、20、50、75、100、200、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1400、1500、2000、2500、3000の隣接するヌクレオチドまたは本明細書に開示された完全長NMRコードヌクレオチド配列中に存在する数のヌクレオチドを含む。「隣接する」ヌクレオチドまたはアミノ酸とは、互いに隣接しているヌクレオチドまたはアミノ酸残基をいう。
【0037】
一つの態様では、機能的に活性なNMRポリペプチドは、植物中でミス発現すると、病原体耐性表現型の変化を生じる。さらなる態様では、機能的に活性なNMRポリペプチドのミス発現は、ジャワネコブセンチュウおよび/または他の寄生性線虫に対する耐性の増大を生じさせる。もう一つの態様では、機能的に活性なNMRポリペプチドは、植物または植物細胞中で発現すると、欠損のある(欠乏を含む)内在性NMR活性を救出することができる。救出性ポリペプチドは、欠損のある活性を有する種と同じ種または異なる種からのものであることができる。もう一つの態様では、完全長NMRポリペプチド(たとえば、NMRポリペプチドの配列を有する天然ポリペプチドまたはその天然オルソログ)の機能的に活性なフラグメントは、完全長NMRポリペプチドに関連する生物学的性質、たとえばシグナル伝達活性、結合活性、触媒活性または細胞もしくは細胞外局在化活性の一つまたは複数を保持する。
【0038】
シグナル伝達活性という用語は、病原体による攻撃に対する植物の遺伝子的、生化学的または生理学的応答を誘発するシグナルを媒介するプロセスでタンパク質が機能する能力をいう。たとえば、Apel & Hirt, Annu Rev Plant Biol., 2004, 55:373-399、Beckers & Spoel, Plant Biol (Stuttg) 2006, 8:1-10、Chisholm et al., Cell, 2006, 124:803-814およびShah, Annu Rev Phytopathol., 2005, 43:229-260を参照。
【0039】
結合活性という用語は、タンパク質が別のタンパク質、DNAフラグメントまたは他の分子に結合する能力をいう(たとえば、Bogdanove, Plant Mol Biol., 2002, 50:981-989, Inohara et al., Annu Rev Biochem., 2005, 74:355-383およびTesterink & Munnik, Trends Plant Sci., 2005, 10:368-375を参照)。
【0040】
触媒活性という用語は、タンパク質が化学反応を触媒する能力をいう。たとえば、Bhatia et al., Crit Rev Biotechnol., 2002, 22:375-407, Pedley & Martin, Curr Opin Plant Biol., 2005, 8:541-547, Rosahl, Z Naturforsch [C], 1996, 51:123-138およびStone & Walker, Plant Physiol., 1995, 108:451-457を参照。
【0041】
細胞または細胞外局在化活性という用語は、細胞の部分が細胞の他の成分と相互作用してタンパク質を特定の細胞下または細胞外位置に局在化することをいう(Crofts et al., Plant Physiol., 2004, 136:3414-3419、Matsuoka & Bednarek, Curr Opin Plant Biol., 1998, 1:463-469, Rusch & Kendall, Mol Membr Biol., 1995, 12:295-307, Schnell & Hebert, Cell, 2003, 112:491-505)。
【0042】
NMRフラグメントは、好ましくは、NMRドメイン、たとえばとりわけC末端もしくはN末端または触媒ドメインを含み、NMRタンパク質の少なくとも約15、25、30、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400または450の隣接するアミノ酸または本明細書に開示された完全長NMRタンパク質中に存在するアミノ酸の全数までを含むことができる。NMR遺伝子の代表的な機能ドメインが表3および4の6列目に列記されており、これらは、INTERPROプログラム(Mulder et al., 2003 Nucleic Acids Res. 31, 315-318; Mulder et al., 2005 Nucleic Acids Res. 33:D201-D205)を使用して同定することができる。完全長NMRポリペプチドの機能的に活性な変種またはそのフラグメントは、完全長NMRポリペプチドに関連する生物学的活性の一つまたは複数を保持するアミノ酸挿入、欠失または置換を有するポリペプチドを含む。「生物学的活性を保持する」とは、変種が、天然タンパク質の生物学的活性、たとえば抗線虫活性の少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約80%を有することを意味する。場合によっては、NMRポリペプチドの翻訳後処理を変化させる変種が生成される。たとえば、変種は、天然のポリペプチドと比較して、タンパク質輸送もしくはタンパク質局在化特性の変化またはタンパク質半減期の変化を有するかもしれない。
【0043】
本明細書で使用する「NMR核酸」という用語は、表3および4の3列目で参照されるGenBankエントリで提供された配列を有する核酸を包含する。また、表3および4の3列目で参照されるGenBankエントリに対して相補的な核酸配列ならびにそれらの機能的に活性なフラグメント、派生物またはオルソログを、本明細書に開示された方法および組成物で使用することもできる。本開示のNMR核酸は、DNA、ゲノムDNAもしくはcDNAに由来するもの、またはRNAであることができる。
【0044】
一つの態様で、機能的に活性なNMR核酸は、機能的に活性なNMRポリペプチドをコードする核酸をコードする、またはそれに対して相補的である。この定義に含まれるものは、機能的に活性なNMRポリペプチドをコードする前にスプライシングのような処理を要する一次RNA転写産物(たとえばmRNA前駆体)のための鋳型として働くゲノムDNAである。NMR核酸は、転写されるかもしれないし、されないかもしれない他の非コード性配列を含むことができ、そのような配列は、とりわけ、当技術分野で公知であるように、5'および3' UTR、ポリアデニル化シグナルおよび遺伝子発現を制御する調節配列を含む。一部のポリペプチドは、完全に活性になるために、タンパク質分解的開裂、共有結合的修飾などのような処理事象を要する。したがって、機能的に活性な核酸は、熟成した、または前処理されたNMRポリペプチドまたは中間体形態をコードすることができる。NMRポリヌクレオチドはまた、異種コード配列、たとえば、融合ポリペプチドの精製を容易にするために含まれたマーカまたは形質転換マーカをコードする配列を含むことができる。
【0045】
もう一つの態様で、機能的に活性なNMR核酸は、たとえばアンチセンス抑制、共抑制等による機能欠失型病原体耐性表現型の生成に使用することができる。
【0046】
本開示の方法で使用されるNMR核酸は、表3および4の4列目で参照されるGenBankエントリのポリペプチド配列に対して少なくとも約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%の配列同一性を有するNMRポリペプチドをコードする核酸配列またはそれらをコードする配列に対して相補的である核酸配列を含むことができる。もう一つの態様で、開示のNMRポリペプチドは、NMRポリペプチドの保存されたタンパク質ドメイン、たとえば表3および4の6列目に列記されたタンパク質ドメインを含むことができる。もう一つの態様で、NMRポリペプチドは、表3および4の4列目で参照されるGenBankエントリのポリペプチドの機能的に活性なフラグメントに対して少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%または約95%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。さらに別の態様で、NMRポリペプチドは、表3および4の4列目で参照されるGenBankエントリのポリペプチド配列に対して少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%または約90%の同一性を有するポリペプチド配列をその全長にわたって含み、表3および4の6列目に列記された保存されたタンパク質ドメインを含む。
【0047】
さらに別の態様では、本開示の方法で使用されるNMR核酸配列は、表3および4の3列目で参照されるGenBankエントリの核酸配列に対して少なくとも約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%の配列同一性を有する核酸配列またはそのようなNMR配列もしくは機能的に活性なそのフラグメントに対して相補的である核酸配列を含む。
【0048】
本明細書で使用する、指定された対象配列またはその指定された部分に対する「%の配列同一性」とは、プログラムWU-BLAST-2.0al9 (Altschul et al., J. Mol. Biol., 215:403-410, 1990)により、サーチパラメータをデフォルト値にセットした状態で生成されるような、配列を整列させ、必要ならばギャップを導入して最大%配列同一性を達成したのちの、対象配列(またはその指定された部分)中のヌクレオチドまたはアミノ酸と同一である、候補派生配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の割合と定義される。HSP SおよびHSP S2パラメータは動的な値であり、プログラムそのものにより、特定の配列の構成および対象の配列を検索するときに照らされる特定のデータベースの構成に依存して確立される。「%同一性値」は、適合する同一のヌクレオチドまたはアミノ酸の数を、%同一性が報告される配列長で割ることによって決定される。「%アミノ酸配列類似性」は、%アミノ酸配列同一性を決定するための計算と同じ計算を、同一のアミノ酸に加えて保存的アミノ酸置換を計算に含めて行うことによって決定される。
【0049】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられている置換である。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で決定されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(たとえばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(たとえばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(たとえばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(たとえばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(たとえばトレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(たとえばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)がある。
【0050】
NMRコードヌクレオチド配列の「変種」は、本明細書に開示されたNMRタンパク質をコードするが、遺伝子コードの縮退に起因して保存的には異なる配列および上述した特定の配列同一性を有する配列を含む。たとえば、好ましくは、保存的アミノ酸置換は、一つまたは複数の予測された、好ましくは非必須アミノ酸残基で実施されることができる。「非必須」アミノ酸残基とは、生物学的活性を変化させることなくNMRタンパク質の野生型配列から変化させることができる残基であり、他方、「必須」アミノ酸残基は生物学的活性のために必要である。アミノ酸置換は、機能を保持する非保存領域で実施することができる。一般に、そのような置換は、保存されたアミノ酸残基の場合またはそのような残基がタンパク質活性にとって不可欠である保存されたモチーフ内に存在するアミノ酸残基の場合には実施されないであろう。
【0051】
対象核酸分子の派生核酸分子は、表3および4の3列目で参照されるGenBankエントリの核酸配列に選択的にハイブリダイズする配列を含む。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーションおよび洗浄中の温度、イオン強度、pHおよび変性剤、たとえばホルムアミドの存在によって制御することができる。慣例的に使用される条件は周知である(たとえば、前記、Current Protocol in Molecular Biology, Vol. 1, Chap. 2.10, John Wiley & Sons, Publishers (1994); Sambrook et al.を参照)。いくつかの態様では、核酸を含有するフィルタを、6×1倍濃度クエン酸塩(SSC)(1×SSCは0.15M NaCl、0.015Mクエン酸Naである。pH7.0)、5×デンハート液、0.05%ピロリン酸ナトリウムおよび100μg/mlニシン精子DNAを含む溶液中65℃で8時間ないし一夜プレハイブリダイズさせ;6×SSC、1×デンハート液、100μg/ml酵母tRNAおよび0.05%ピロリン酸ナトリウムを含む溶液中65℃で18〜20時間ハイブリダイズさせ;フィルタを、0.2×SSCおよび0.1% SDS (ドデシル硫酸ナトリウム)を含有する溶液中、65℃で1時間洗浄することを含む、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、開示の核酸分子を、表3および4の3列目で参照されるGenBankエントリのヌクレオチド配列を含有する核酸分子にハイブリダイズさせることができる。他の態様では、核酸を含有するフィルタを、35%ホルムアミド、5×SSC、50mMトリスHCl (pH7.5)、5mM EDTA、0.1% PVP、0.1% Ficoll、1% BSAおよび500μg/ml変性サケ精子DNAを含む溶液中40℃で6時間前処理し;35%ホルムアミド、5×SSC、50mMトリスHCl (pH7.5)、5mM EDTA、0.02% PVP、0.02% Ficoll、0.2% BSA、100μg/mlサケ精子DNAおよび10% (wt/vol)硫酸デキストランを含有する溶液中40℃で18〜20時間ハイブリダイズさせたのち;2×SSCおよび0.1%SDSを含有する溶液中55℃で1時間2回洗浄することを含む、適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が使用される。または、20%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストランおよび20μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中37℃で8時間ないし一夜インキュベーションし;同じバッファ中で18〜20時間ハイブリダイゼーションさせ;フィルタを1×SSC中約37℃で1時間洗浄することを含む、低ストリンジェンシー条件を使用することもできる。
【0052】
遺伝子コードの縮退の結果として、NMRポリペプチドをコードする多数のポリヌクレオチド配列を生産することができる。たとえば、特定の宿主種中でポリペプチドの発現が起こる速度を増すために、特定の宿主生物によって指図される最適なコドン使用にしたがってコドンを選択することができる(たとえば、Nakamura et al., 1999, Nucleic Acids Res., 27:292を参照)。このような配列変異体を本開示の方法で使用することができる。
【0053】
本開示の方法は、シロイヌナズナNMR遺伝子のオルソログを使用することができる。シロイヌナズナNMR遺伝子それぞれのオルソログの例が表3および4の7列目で同定されている。他の植物種におけるオルソログを同定する方法は当技術分野で公知である。通常、異なる種におけるオルソログは、一つまたは複数のタンパク質モチーフおよび/または三次元構造の存在のおかげで同じ機能を保持する。進化において、種分化に続いて遺伝子複製事象が起こるとき、一つの種、たとえばシロイヌナズナにおける一つの遺伝子が別の種における多数の遺伝子(パラログ)に対応することができる。本明細で使用する「オルソログ」はパラログを包含する。特定の植物種に関して配列データが利用可能である場合、オルソログは一般に、通常はタンパク質ベイト配列を使用する、BLAST解析のような配列相同性解析によって同定される。フォワードBLAST結果からのベストヒット配列がリバースBLASTで元のクエリー配列を検索するならば、配列は潜在的オルソログとして割り当てられる(MA and Bork P, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 95:5849-5856; Huynen MA et al., Genome Research (2000) 10:1204-1210)。CLUSTALのような多配列アライメントのためのプログラム(Thompson JD et al., 1994, Nucleic Acids Res. 22:4673-4680)を使用して、保存領域および/またはオルソロガスなタンパク質の残基をハイライトし、系統樹を生成することができる。様々な種からの多数の相同配列(たとえばBLAST解析を介して検索)を表す系統樹では、二つの種からのオルソロガスな配列は一般に、その系統樹では、これら二つの種からの他すべての配列に関してもっとも近く現れる。また、構造スレッディングまたは他のタンパク質折り畳み解析(たとえば、ProCeryon, Biosciences, Salzburg, Austriaによるソフトウェアを使用)が潜在的なオルソログを同定することもできる。また、核酸ハイブリダイゼーション法を使用してオルソロガスな遺伝子を見いだすこともでき、配列データが利用できない場合には好ましい。cDNAまたはゲノムDNAライブラリの縮重PCRおよびスクリーニングが、関連遺伝子配列を見つけるための一般的な方法であり、当技術分野で周知である(たとえば、前記、Sambrook; Dieffenbach and Dveksler (Eds.) PCR Primer: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, 1989を参照)。たとえば、対象の植物種からcDNAライブラリを生成し、そのライブラリを部分的に相同な遺伝子プローブでプロービングする方法が上記Sambrookらに記載されている。シロイヌナズナNMRコード配列の高度に保存された部分をプローブとして使用することができる。NMRオルソログ核酸が、高、中または低ストリンジェンシー条件下、表3および4の3列目で参照されるGenBankエントリの核酸にハイブリダイズすることができる。推定上のオルソログのセグメントの増幅または単離ののち、該セグメントをクローニングし、標準技術によって配列決定し、プローブとして使用して、完全なcDNAまたはゲノムクローンを単離することができる。または、ESTプロジェクトを開始して対象植物種のための配列情報のデータベースを生成することも可能である。もう一つの手法では、公知のNMRポリペプチドを特異的に拘束する抗体がオルソログ単離に使用される。ウェスタンブロット解析が、特定の植物種の粗抽出物中にNMRオルソログ(たとえばオルソロガスなタンパク質)が存在することを決定することができる。反応性が認められる場合、特定の植物種を表す発現ライブラリをスクリーニングすることにより、候補オルソログをコードする配列を単離することができる。発現ライブラリは、上記Sambrookらで記載されているように、ラムダgt11をはじめとする多様な市販ベクターで構築することができる。これらの手段のいずれかによってひとたび候補オルソログが同定されるならば、候補オルソロガスな配列を、NMR核酸および/またはポリペプチド配列が同定されているシロイヌナズナまたは他の種からの配列に対するリバースBLASTのためのベイト(「クエリー」)として使用する。
【0054】
NMR核酸およびポリペプチドは、利用可能な方法を使用して得ることができる。たとえば、すでに記載されているように、DNAライブラリをスクリーニングする、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することによって対象のcDNAまたはゲノムDNA配列を単離する技術が当技術分野で周知である。または、核酸配列を合成することもできる。公知の方法、たとえば部位特異的変異誘発(Kunkel TA et al., 1991, Methods Enzymol., 204:125-39)またはPCR媒介変異誘発を使用して、クローニングした核酸に所望の変化を導入することもできる。
【0055】
一般に、本開示の方法は、植物細胞の形質転換のためにNMR核酸の所望の形態を植物発現ベクターに組み込む段階を含み、NMRポリペプチドが宿主植物の中で発現する。
【0056】
病原体耐性表現型を有する、遺伝子的に改変された植物の生成
病原体耐性表現型の改変を有する遺伝子的に改変された植物の生成にはNMR核酸およびポリペプチドを使用することができる。一般に、耐性表現型の改良が対象である。一つの態様では、植物中のNMR遺伝子の発現の変化を使用して、ジャワネコブセンチュウに対する増大した耐性を有する植物を生成する。さらなる態様では、NMRをミス発現する植物もまた、ネコブセンチュウ種、シストセンチュウ種、グロボデラ種、ナコッブス種(Nacobbus spp.)、ベロノライムス種(Belonolaimus spp.)、クリコネモイデス種(Criconemoides spp.)、ヘリコチレンカス種(Helicotylenchus spp.)、キシフィネマ種(Xiphinema spp.)、ロンギドラス種(Longidorus spp.)、ネグサレセンチュウ種(Pratylenchus spp.)、パラトリコドラス種(Paratrichodorus spp.)、チレンコリンカス種(Tylenchorhynchus spp.)、ジチレンカス種(Ditylenchus spp.)、ホプロライマス種(Hoplolaimus spp.)およびニセフクロセンチュウ類/種(Rotylenchulus spp.)を含むが、これらに限定されない寄生性線虫病原体に対して耐性の変化を示すことができる。また、真菌病原体に対する耐性の増大が対象である。真菌病原体としては、黒すす病菌(Alternaria brassicicola)、灰色かび病菌(Botrytis cinerea)、クコうどんこ病菌(Erysiphe cichoracearum)、フザリウムオキシスポラム(Fusarium oxysporum)、根こぶ病菌(Plasmodiophora brassica)、シバ類葉腐病菌(Rhizoctonia solani)、ナス科炭疽病菌(Colletotrichum coccode)、スクレオチニア種(Sclerotinia spp.)、アスペルギルス種(Aspergillus spp.)、アオカビ種(Penicillium spp.)、クロボキン種(Ustilago spp.)およびチレチア種(Tilletia spp.)を含むが、これらに限定されない。対象の細菌病原体としては、アグロバクテリウムチュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、エルウィニアトラケイフィラ(Erwinia tracheiphila)、とうもろこし萎ちよう細菌病菌(Erwinia stewartii)、インゲン葉焼病菌(Xanthomonas phaseoli)、ナシ火傷病(Erwinia amylovora)、エルウィニアカロトボラ(Erwinia carotovora)、シュードモナスシリンゲ(Pseudomonas syringae)、ペラルゴニウム種(Pelargonium spp)、レタス腐敗病細菌(Pseudomonas cichorii)、イチゴ角斑細菌病(Xanthomonas fragariae)、シュードモナスモルスプルノルム(Pseudomonas morsprunorum)、キサントモナスカンペストリス(Xanthomonas campestris)を含むが、これらに限定されない。病原体感染は、種子、果実、花、葉、茎、塊茎、根等に影響することができる。したがって、耐性は、植物のいかなる部分においても認めることができる。
【0057】
本明細書で記載する方法は、NMR遺伝子(またはそのオルソログ、変種またはフラグメント)がいかなるタイプの植物においても発現することができるため、一般に、すべての植物に適用可能である。いくつかの態様では、本開示は、トウモロコシ、ダイズ、ワタ、コメ、コムギ、オオムギ、トマト、キャノーラ、柴草およびアマのような作物に関連する。他の作物としては、アルファルファ、タバコおよび他の飼料作物がある。本開示はまた、果実および野菜を実らせる植物、たとえば、とりわけトマト、ニンジン、レタス、マメ、アスパラガス、カリフラワー、コショウ、ビート、キャベツ、ナス、エンダイブ、ニラネギ、長キュウリ、メロン、エンドウ、ダイコン、根茎、ミニキュウリ(Beit alpha)、カボチャ、スイカ、白タマネギ、チコリーおよび黄タマネギ、ネギ、ブロッコリ、芽キャベツ、セロリ、ノヂシャ、キュウリ、ウイキョウ、パンプキン、スイートコーンおよびズッキーニ、切り花産業で使用される植物、穀粒生産植物、油生産植物および堅果生産植物に関することもできる。
【0058】
当業者は、広く多様な形質転換技術が当技術分野に存在し、新たな技術が絶えず利用可能になっていることを認識するであろう。標的宿主植物に適した任意の技術を本開示の範囲内で使用することができる。たとえば、構築物を、DNAの鎖としての形態、プラスミド中の形態または人工染色体中の形態を含むが、これらに限定されない多様な形態で導入することができる。標的植物細胞への構築物の導入は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、微粒子銃リン酸カルシウムDNA共沈または異種核酸のリポソーム媒介形質転換を含むが、これらに限定されない多様な技術によって達成することができる。植物の形質転換は、すなわち導入される発現構築物を宿主植物ゲノムに組み込むことにより、導入された構築物が後続の植物世代に引き継がれるよう、好ましくは永久的である。使用目的に依存して、NMRポリヌクレオチドを含む異種核酸構築物がタンパク質全体またはその生物学的に活性な部分をコードすることができる。
【0059】
一つの態様では、バイナリTiベースのベクター系を使用してポリヌクレオチドを移すこともできる。標準的なアグロバクテリウムバイナリベクターは当業者に公知であり、多くは市販されている(たとえば、pBI121 Clontech Laboratories, Palo Alto, CA)。
【0060】
アグロバクテリウムベクターを用いる植物の形質転換のための最適な手法は、形質転換される植物のタイプとともに異なる。アグロバクテリウム媒介形質転換の例示的な方法は、生殖不能実生および/または小植物に由来する胚軸、苗条先端、茎または葉組織の外植片の形質転換を含む。このような形質転換植物は、生殖的または細胞もしくは組織培養によって繁殖させることができる。アグロバクテリウム形質転換は、多数の異なるタイプの植物に関してすでに記載されており、そのような形質転換の方法は科学文献に見いだすことができる。特に適切なものは、商業的に重要な作物、たとえばトウモロコシ(Fromm et al., Biotechnology, 1990, 8:833-839; Ishida et al., 1996, Nature Biotechnology 14:745-750)、キャノーラ(De Block et al., 1989, Plant Physiol., 91:694-701)、ヒマワリ(Everett et al., 1987, Bio/Technology, 5:1201)およびダイズ(Christou et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 86:7500-7504; 1989; Kline et al., 1987, Nature, 327:70)を形質転換するための方法である。
【0061】
NMR遺伝子の発現(転写および翻訳を含む)は、発現レベル、発現が起こるところの組織のタイプおよび/または発現の発展段階に関して調節することができる。NMR核酸の発現を制御するためには多数の異種調節配列(たとえばプロモーターおよびエンハンサー)が利用可能である。これらとしては、構成的、誘導性および調節可能なプロモーターならびに組織または時間特異的に発現を制御するエンハンサーがある。例示的な構成的プロモーターとしては、ラズベリーE4プロモーター(米国特許第5,783,393号および第5,783,394号)、35S CaMV (Jones JD et al., 1992, Transgenic Res., 1:285-297)、CsVMVプロモーター(Verdaguer B et al., 1998, Plant Mol. Biol., 37:1055-1067)およびメロンアクチンプロモーター(PCT出願公開公報WO00/56863)がある。例示的な組織特異的プロモーターとしては、トマトE4およびE8プロモーター(米国特許第5,859,330号)およびトマト2AII遺伝子プロモーター(Van Haaren MJJ et al., 1993, Plant Mol. Biol., 21:625-640)がある。一つの態様では、NMR遺伝子発現は病原体誘発性プロモーターによって制御される(Rushton et al., 2002, The Plant Cell, 14:749-762)。一つの態様では、NMR遺伝子の発現は、その発現がCsVMVプロモーターに関連する遺伝子からの調節配列によって制御される。
【0062】
さらに別の局面では、宿主細胞中での内在性NMR遺伝子の発現を抑制することが望ましいかもしれない。開示のこの局面を実施するための例示的な方法としては、アンチセンス抑制(Smith, et al., 1988, Nature, 334:724-726、van der Krol et al., 1988, Biotechniques, 6:958-976)、共抑制(Napoli, et al., 1990, Plant Cell, 2:279-289)、リボザイム(PCT出願公開公報WO97/10328)およびセンスとアンチセンスとの組み合わせ(Waterhouse, et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 95:13959-13964)を含むが、これらに限定されない。宿主細胞中の内在性配列の抑制のための方法は、典型的には、抑制する配列の少なくとも一部分の転写または転写・翻訳を用いる。そのような配列は、内在性配列のコードおよび非コード領域と相同であることができる。アンチセンス抑制は、cDNA配列全体(Sheehy et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85:8805-8809)、5'コード配列のフラグメントを含む部分的cDNA配列(Cannon et al., 1990, Plant Mol. Biol., 15:39-47)または3'非コード配列のフラグメントを含む部分的cDNA配列(Ch'ng et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 86:10006-10010)を使用することができる。共抑制技術は、cDNA配列全体(Napoli et al., 前記、van der Krol et al., 1990, The Plant Cell, 2:291-299)または部分的cDNA配列 (Smith et al., 1990, Mol. Gen. Genetics, 224:477-481)を使用することができる。
【0063】
標準的な分子および遺伝子試験を実施して、遺伝子と観察される表現型との関係をさらに解析することもできる。例示的な技術を以下に説明する。
【0064】
1. DNA/RNA解析
野生型系統に対する変異体における発生期および組織特異性遺伝子発現パターンは、たとえば、インサイチューハイブリダイゼーションによって決定することができる。遺伝子、特にフランキング調節領域のメチル化状態の解析を実施することもできる。他の適当な技術としては、過剰発現、異所性発現、他の植物種における発現および遺伝子ノックアウト(リバースジェネティックス、標的化ノックアウト、ウイルス誘発遺伝子サイレンシング(VIGS)がある(Baulcombe, 1999, Arch. Virol. Suppl. 15:189-201を参照)。
【0065】
代表的な用途では、一般にはマイクロアレイ解析による発現プロファイリングを使用して、多くの異なる遺伝子の発現における差違または誘発された変化を同時に計測する。マイクロアレイ解析のための技術は当技術分野で周知である(たとえば、Schena et al., 1995, Science, 270:467-470; Baldwin et al., 1999, Cur. Opin. Plant Biol., 2(2):96-103; Dangond, 2000, Physiol. Genomics, 2:53-58; van Hal NL et al., 2000, J. Biotechnol., 78:271-280; Richmond and Somerville, 2000, Cur. Opin. Plant Biol., 3:108-116を参照)。個々の標識された系統の発現プロファイリングを実施することもできる。このような解析は、対象の遺伝子の過剰発現の結果として同調的に調節される他の遺伝子を同定することができ、それが、未知の遺伝子を特定の経路に配置するのに役立つことができる。
【0066】
2. 遺伝子産物の解析
遺伝子産物の解析は、組換えタンパク質発現、抗血清生産、免疫局在化、触媒または他の活性の生化学的アッセイ、リン酸化状態の解析および酵母ツーハイブリッドアッセイによる他のタンパク質との相互作用の解析を含むことができる。
【0067】
3. 経路解析
経路解析は、遺伝子または遺伝子産物を、そのミス発現表現型に基づき、または関連遺伝子との配列相同性により、特定の生化学的、代謝的またはシグナル伝達経路の中に配置することを含むことができる。または、解析は、野生型系統および他の変異体系統との遺伝子交雑を実施して(二重変異体を創製する)経路中の遺伝子に命令すること、または経路中の下流の「レポーター」遺伝子の発現に対する変異の影響を決定することを含むことができる。
【0068】
病原体耐性表現型を有する変異植物の生成
本開示はさらに、増大した病原体耐性を有する植物、特に、そのような耐性を付与する内在性NMR遺伝子に変異を有する植物を同定する方法を提供する。この方法は、植物の集団からの少なくとも一つのNMR遺伝子を解析し、NMR遺伝子の変化(たとえば変異)を有する植物を同定する段階を含む。NMR遺伝子は、病原体耐性を付与する変異を有することもできるし、または野生型植物と比較して発現の変化を有することもできる。遺伝子的に改変されているこれらの植物の病原体耐性後代を生成することができる。病原体耐性を付与する変異を有する植物を生産し、同定する方法は当技術分野で公知である。「TILLING」と呼ばれる一つの方法(ゲノム中の誘発された局所的病変を標的化するため)では、たとえばEMS処理を使用して、対象の植物の種子中に変異を誘発する。得られた植物を成長させ、自家受粉させ、その後代を使用してDNAサンプルを調製する。NMR遺伝子のPCR増幅および配列決定を使用して、変異植物がNMR遺伝子中に変異を有するかどうかを識別する。そして、NMR変異を有する植物を病原体耐性に関して試験することもできるし、または、植物を病原体耐性に関して試験したのち、NMR遺伝子のPCR増幅および配列決定を使用して、増大した病原体耐性を有する植物が変異NMR遺伝子を有するかどうかを決定する。TILLINGは、特定の遺伝子の発現またはそれらの遺伝子によってコードされたタンパク質の活性を変化させるかもしれない変異を同定することができる(Colbert et al., 2001, Plant Physiol. 126:480-484; McCallum et al., 2000, Nature Biotechnology 18:455-457を参照)。
【0069】
もう一つの方法では、候補遺伝子/量的形質遺伝子座(QTL)手法をマーカ支援育種プログラム中で使用して、病原体に対する耐性を付与するNMR遺伝子またはNMR遺伝子のオルソログ中の変異を同定することができる(Foolad et al., Theor. Appl. Genet., 2002, 104(6-7):945-958; Rothan et al., 2002, Theor. Appl. Genet., 105(1):145-159; Dekkers and Hospital, 2002, Nat. Rev. Genet., 3:22-32を参照)。したがって、本開示のさらなる局面では、NMR核酸を使用して、病原体耐性植物が内在性NMR遺伝子中に変異を有するのか、病原体耐性表現型を生じさせる特定のアレルを有するのかを識別する。
【0070】
具体的な方法および態様を参照して本発明を説明したが、本発明を逸することなく様々な改変および変更を加えることができることが理解されよう。本明細書で引用するすべての刊行物は、本発明に関連して使用される組成物および方法を説明し、開示する目的のために参照により明示的に本明細書に組み入れられる。引用されるすべての特許、特許出願および参照される公共データベース中の配列情報(本出願の出願日の時点)もまた、参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0071】
実施例1
活性化標識構築物を用いる形質転換による、病原体耐性表現型を有する植物の生成
活性化標識(ACTTAG)ベクターpSKI015 (前記、GI6537289、Weigel D et al.) を使用して変異体を生成した。標準的な方法がシロイヌナズナ遺伝子移入植物の生成のために使用され、本質的に、PCT公開公報WO01/83697に記載されたとおりであった。簡潔にいうと、T0シロイヌナズナ(Col-0)植物を、アグロバクテリウム Tiプラスミドに由来するT-DNA、除草剤耐性選択可能マーカ遺伝子および4×CaMV 35Sエンハンサー要素を含むアグロバクテリウム担持pSKI015ベクターで形質転換した。除草剤耐性に基づいて遺伝子移入植物をT1世代で選択した。T2種子をT1植物から収集し、インデックス付きコレクションに貯蔵し、T2種子の一部分をフォワードジェネティックススクリーニングに関して評価した。T3種子をリバースジェネティックススクリーニングで使用した。T2種子を土に播き、植物を除草剤に暴露して、ACTTAGベクターを欠く植物を死滅させた。T2植物を熟成状態まで成長させ、自家受粉させ、結実させた。系統ごとにT3種子(T2植物から)を多量に収穫し、T3種子の一部分をリバースジェネティックススクリーニングに関して評価した(以下参照)。
【0072】
T3種子を使用してリバースPCRによって各系統中のゲノム中のACTTAG要素の位置を決定した。PCR産物を配列解析に付し、ベーシックBLASTN検索および/またはシロイヌナズナ情報リソース(TAIR)データベース(arabiodopsis.org websiteで入手可能)の検索を使用してゲノム上に配置した。フランキング配列が回収された38,090の系統をリバースジェネティックススクリーニングで考察した。
【0073】
実施例2
線虫ジャワネコブセンチュウに対して耐性の系統のフォワードジェネティックススクリーニング
一次および二次スクリーニングとしてフォワードジェネティックススクリーニングを実施した。一次スクリーニングでは、シロイヌナズナACTTAGコレクションからの系統からの約8個のT2種子および野生型Col-0からの2個の種子を土に植えた。種子を4℃で2日間、層別化し、成長チャンバ中、25℃、相対湿度60〜70%で、光10時間、暗闇14時間の短日光サイクルで8日間成長させた。各実生の周囲の土にジャワネコブセンチュウの卵5000個を接種し、植物をさらに20〜25日成長させた。そして、各植物を土から取り出し、線虫によって生じたストレスに関して評価した。ストレスを示さない植物を有する系統をさらなる分析に提供した。
【0074】
二次スクリーニングでは、約40個のT2種子を野生型Col-0種子とともに植えた。植物を成長させ、一次スクリーニングと同じく、線虫の卵を接種した。接種後20〜25日でストレスに関して植物を評価した。ストレスを示さない少なくとも一つの植物を有するすべての系統をさらに5週間成長させた。その後、植物を土から取り出し、根系を洗浄し、根系に見られる根瘤に関して植物を評価した。根系の瘤が20個未満の場合、その植物を耐性と格付けした。
【0075】
これらの分析の結果として、48のACTTAG系統を線虫ジャワネコブセンチュウに対して耐性と同定した。
【0076】
実施例3
線虫耐性表現型を示す植物におけるT-DNA挿入の特性決定:ACTTAG座数の決定およびACTTAGコピー数の決定
ACTTAG系統は一つより多い遺伝子座にインサートを有することがあるため、実施例2で同定した各系統でACTTAGインサートを含む遺伝子座の数を推定した。T1植物中、ACTTAGインサートはヘミ接合状態で存在する(すなわち、複相植物のゲノムの二つのコピーの一方に挿入された状態で存在する)。遺伝子分離のため、T2植物では、ACTTAGインサートを含む各遺伝子座は3:1の比で存在し、T2植物の75%はその座にACTTAGインサートを有するが、25%はそうではない。T1植物が独立して分離する座に二つのACTTAG要素を含むならば、ACTTAG要素を含むT2植物の数は87.5%であり、植物の12.5%はインサートを含まない。各ACTTAG要素は、除草剤BASTAに対する耐性を付与する遺伝子を含むため、ACTTAG要素を含有する遺伝子座の数は、BASTAに対して耐性であるT2植物の割合を決定することによって推定することができる。
【0077】
各系統中でACTTAGインサートを担持する遺伝子座の数、選択剤に対して耐性のT2植物の割合を決定するため、50〜100個のT2種子を土に播き、発芽させ、発芽したT2実生の数を記録した。T2実生に除草剤BASTA 60mg/Lを2週間で6回散布して、ACTTAGインサートを欠く植物を死滅させた。BASTA耐性T2実生の数を決定し、BASTA耐性植物の割合を計算した。60〜80%のBASTA耐性T2実生を有する系統が単一の遺伝子座でACTTAGインサートを担持するものと推定した。80%を超えるBASTA耐性T2実生を有する系統が一つより多い遺伝子座でACTTAGインサートを担持するものと推定した。
【0078】
各遺伝子座が一つより多いインサートを含むことができるため、実施例2で同定した各系統でACTTAG要素の数を推定した。各系統中に存在するACTTAGインサートの数を決定するため、TaqMan(登録商標)ユニバーサルPCRマスタミックス(Applied Biosystems)およびABI PRISM7700配列検出システム(Applied Biosystems)を使用して、TaqMan(登録商標)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの方法を使用した。簡潔にいうと、少なくとも18個のT2実生のプールからゲノムDNAを単離した。ACTTAG系統のDNAを鋳型として使用して、反応混合物中、二つのPCR反応を同時に実施した。一方のPCR反応が、BAR遺伝子に特異的なPCRプライマーを使用して、除草剤グルホシネートアンモニウムに対する耐性を付与するBAR遺伝子の存在を検出した。他方のPCR反応は、ELF3遺伝子に特異的なPCRプライマーを使用して、シロイヌナズナ中のELF3遺伝子の存在を検出した。反応の過程で蓄積した二つのPCR産物の相対量を使用してACTTAGコピー数を決定した。
【0079】
これらの分析に基づき、5種のACTTAG系統をさらなる分析のために選択した(実施例4を参照)。これらの系統のACTTAG座数推定値およびACTTAGコピー数推定値を以下の表1に示す。
【0080】
(表1) 5種の線虫耐性系統のACTTAG座数の推定値およびACTTAGコピー数の推定値

【0081】
実施例4
線虫耐性表現型を示す植物におけるT-DNA挿入の特性決定:シロイヌナズナゲノム中のACTTAG挿入部位の決定
プラスミドレスキュー(前記、Weigel et al.) および/またはリバースPCR (iPCR; Triglia et al., 1988, Nucleic Acid Res., 16:8186)を使用して、フォワードジェネティックススクリーニングで同定された系統のT-DNA挿入をフランキングするシロイヌナズナゲノムDNAを回収した。これらの分析の産物をDNA配列決定によって解析し、その配列を、Exelixisデータベースまたはシロイヌナズナ情報リソース(TAIR)データベース(arabidopsis.orgウェブサイトで入手可能)に収容されたシロイヌナズナゲノムのベーシックBLASTN検索に付した。NMR1、NMR2、NMR3、NMR4およびNMR5のACTTAGの位置を以下に記載する。
【0082】
NMR1:ACTTAGインサートの右境界は、シロイヌナズナDNA染色体3、BACクローンF14D17 (>gi|7671394|emb|AL353992.1|ATF14D17)のヌクレオチド〜5042のすぐ上流にある。このインサートの反対側フランクは、シロイヌナズナDNA染色体3、BACクローンF14D17 (>gi|7671394|)のヌクレオチド〜5042のすぐ下流の左境界であることがわかった。
【0083】
NMR2:ACTTAGインサートの左境界は、シロイヌナズナゲノムDNA、染色体5、BACクローン:T32G24 (>gi|4589451|dbj|AB025642.1|AB025642)のヌクレオチド〜931のすぐ上流にある。
【0084】
NMR3:ACTTAGインサートの左境界は、シロイヌナズナゲノムDNA、染色体1、BACクローン:F15H18 (>gi|6684172)のヌクレオチド〜51143のすぐ下流にある。左境界である反対側フランクは、シロイヌナズナDNA染色体1、BACクローン:F15H18 (>gi|6684172)のヌクレオチド〜51333のすぐ上流にある。
【0085】
NMR4:ACTTAGインサートの左境界は、シロイヌナズナゲノムDNA、染色体3、BACクローン:F4P12 (>gi|6434215)のヌクレオチド〜120310のすぐ上流にある。左境界である反対側フランクは、シロイヌナズナDNA染色体3、BACクローン:F4P12 (>gi|6434215)のヌクレオチド〜120307のすぐ下流にある。
【0086】
NMR5:ACTTAGインサートの右境界は、シロイヌナズナゲノムDNA、染色体1、BACクローン:F21M12 (>gi|2160155)のヌクレオチド〜126494のすぐ上流にある。右境界である反対側フランクは、シロイヌナズナDNA染色体1、BACクローン:F21M12 (>gi|2160155)のヌクレオチド〜126507のすぐ下流にある。
【0087】
実施例5
病原体耐性表現型の変化を示すACTTAG植物における、候補遺伝子の同定および発現解析
線虫耐性系統中のACTTAGインサートの約10kbp以内に翻訳開始コドンを有する遺伝子を「活性化空間」内にあるとみなす。これらの候補遺伝子の発現は、ACTTAGインサート中の4×CaMV 35Sエンハンサー要素のおかげで、線虫耐性系統中で上方制御される可能性が高い。ACTTAG系統NMR1、NMR2、NMR3、NMR4およびNMR5の候補遺伝子を表2の2列目に列記する。
【0088】
これらの候補遺伝子を、コンバイロン中、光10時間、暗闇14時間のサイクルの下で成長させた30日齢BASTA耐性T2植物の葉における発現の変化に関して分析した。同じフラット、ひいては同じ環境条件下で成長させた野生型植物を、SYBRグリーン染料リアルタイム定量RT-PCRアッセイのための対照として使用した。具体的には、病原体耐性表現型を示す植物および野生型COL-0植物に由来する組織からRNAを抽出した。表2の3列目に提示する配列IDを有する遺伝子および構成的に発現させたアクチン遺伝子(ACT2、正の対照)に特異的なプライマーを使用してSYBRグリーン染料リアルタイム定量RT-PCRを実施した。ACTTAG系統NMR1、NMR2、NMR3、NMR4およびNMR5の候補遺伝子の発現解析の結果を表2の5列目に示す。
【0089】
(表2) ACTTAG系統NMR1、NMR2、NMR3、NMR4およびNMR5の候補遺伝子の発現解析

【0090】
実施例6
シロイヌナズナNMR配列の解析
BLAST (Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410)、PFAM (Bateman et al., 1999, Nucleic Acids Res. 27:260-262)および/またはINTERPRO (Mulder et al., 2003 Nucleic Acids Res. 31, 315-318; Mulder et al., 2005 Nucleic Acids Res. 33:D201-D205)によってNMR配列の解析を実施した。これらの解析の結果を表3に列記する。
【0091】
(表3) フォワードジェネティックススクリーニングで同定したシロイヌナズナNMR配列の解析





【0092】
実施例7
「リバースジェネティックス」スクリーニングを使用するシロイヌナズナ線虫耐性遺伝子の同定
「リバースジェネティックス」スクリーニングを使用してシロイヌナズナ線虫耐性(NMR)遺伝子を同定した。この手法では、シロイヌナズナ遺伝子を候補線虫耐性遺伝子とみなした。これらの遺伝子のミス発現が線虫耐性表現型を生じさせたのかどうかを決定するため、これらの遺伝子の翻訳開始コドンの9kbp内(「活性化空間」)に予測されるCaMV35Sエンハンサー要素を有するACTTAG系統を、実施例1に記載したFST配置によって38,090のACTTAG系統から同定した。実施例2に記載したようにして、候補遺伝子の近くにインサートを有するACTTAG系統を線虫(ジャワネコブセンチュウ)耐性表現型に関して評価した。11個の候補遺伝子の「活性化空間」内にACTTAGインサートを含むACTTAG系統を線虫に対して耐性であると判断した。これらの遺伝子を表4に列記する。
【0093】
PFAM (Bateman et al., 1999, Nucleic Acids Res. 27:260-262)および/またはINTERPRO (Mulder et al., 2003 Nucleic Acids Res. 31, 315-318; Mulder et al., 2005 Nucleic Acids Res. 33:D201-D205)解析の結果を表4に示す。
【0094】
(表4) リバースジェネティックススクリーニングで同定されたシロイヌナズナNMR配列の解析



【0095】
実施例8
線虫耐性表現型の反復発生
フォワードおよびリバースジェネティックススクリーニングで同定した遺伝子を試験して、直接的な過剰発現が線虫に対する耐性を付与することができるかどうかを同定した。これを行うため、表3および4の2列目に列記された遺伝子を構成的CsVMVプロモーターの背後で植物形質転換ベクター中にクローニングし、フローラルディップ法を使用してシロイヌナズナ植物に形質転換した。植物形質転換ベクターは、RE4プロモーターによって駆動される選択可能なマーカをコードする遺伝子を含有して、細胞毒性薬剤に対する耐性を提供し、選択可能なマーカとして働く。形質転換された植物からの種子を、細胞毒性薬剤を含有する寒天培地上で平板培養した。10日後、遺伝子移入植物を健康な緑色の植物として同定し、土に植え換えた。非遺伝子移入対照植物を寒天培地上で発芽させ、10日間成長させたのち、土に植え換えた。各構築物を含有する20の一次形質転換体からT2種子を集めた。
【0096】
T2植物を線虫に対する耐性に関して反復実験で試験した。各実験において、遺伝子移入事象からの約13個のT2種子を10列トレーに入れて土に植えた。各トレーは、8種の遺伝子移入系統を播種された8列(1列あたり1種)および野生型Col-0種子を播種された2列を含むものであった。Col-0を含有する列の一つに接種を施し、これが負の対照として働き、他方は接種を受けず、正の対照として働く。種子を4℃で2日間、層別化し、成長チャンバ中、25℃、相対湿度60〜70%で、光10時間、暗闇14時間の短日光サイクルで8日間成長させた。各遺伝子移入実生および負の対照として働くCol-0植物の周囲の土に線虫ジャワネコブセンチュウの卵5000個を接種し、植物をさらに40〜50日間成長させた。この時点で植物を土から取り出し、根系を洗浄し、植物あたりの根瘤の数を記録した。各植物の根瘤の数を比較するためのスコア付けシステムを開発した。根瘤0〜5個の植物にはスコア1を与え、根瘤6〜10個の植物にはスコア2を与え、根瘤11〜15個の植物にはスコア3を与え、根瘤16〜20個の植物にはスコア4を与え、根瘤が20個より多い植物にはスコア5を与えた。一般に、根瘤が20個未満の場合、その植物を耐性と格付けした。各耐性植物(根瘤20個未満)をその根系の瘤の数に関してスコア付けした。表5の遺伝子が正の反復発生結果を示した。
【0097】
(表5)

【0098】
実施例9
線虫耐性はAt1g18350の過剰発現によって付与される
上記のように、20の独立した形質転換事象からのAt1g18350の発現を駆動するCsVMVプロモーターを含むT2植物を成長させることにより、線虫耐性に対するAt1g18350 (NMR3-A)の過剰発現の効果を試験した。各構築物を4回の反復実験で試験し、各植物の根の瘤を数えた。上記のように、根瘤の数に関して各植物にスコアを与えた。形質転換事象の五つに関して、遺伝子移入植物は、接種を受けた野生型対照植物とは有意に異なるスコアを示し、2ウェイANOVA試験による決定で遺伝子移入植物よりも有意に少ない根瘤を有することを示し(p≦0.05)、線虫感染に対して耐性であることを示した。表6は、事象数、ANOVA p値、遺伝子移入植物(試料)の平均スコアおよび対照植物の平均スコアを示す。
【0099】
(表6)

【0100】
実施例10
線虫耐性はAt3g53620の過剰発現によって付与される
上記のように、20の独立した形質転換事象からのAt3g53620の発現を駆動するCsVMVプロモーターを含むT2植物を成長させることにより、線虫耐性に対するAt3g53620 (NMR4-D)の過剰発現の効果を試験した。各構築物を4回の反復実験で試験し、各植物の根の瘤を数えた。上記のように、根瘤の数に関して各植物にスコアを与えた。形質転換事象の七つに関して、遺伝子移入植物は、接種を受けた野生型対照植物とは有意に異なるスコアを示し、2ウェイANOVA試験による決定で遺伝子移入植物よりも有意に少ない根瘤を有することを示し(p≦0.05)、線虫感染に対して耐性であることを示した。表7は、事象数、ANOVA p値、遺伝子移入植物(試料)の平均スコアおよび対照植物の平均スコアを示す。
【0101】
(表7)

【0102】
実施例11
線虫耐性はAt1g09960の過剰発現によって付与される
上記のように、20の独立した形質転換事象からのAt1g09960の発現を駆動するCsVMVプロモーターを含むT2植物を成長させることにより、線虫耐性に対するAt1g09960 (NM5-F)の過剰発現の効果を試験した。各構築物を4回の反復実験で試験し、各植物の根の瘤を数えた。上記のように、根瘤の数に関して各植物にスコアを与えた。形質転換事象の十一に関して、遺伝子移入植物は、接種を受けた野生型対照植物とは有意に異なるスコアを示し、2ウェイANOVA試験による決定で遺伝子移入植物よりも有意に少ない根瘤を有することを示し(p≦0.05)、線虫感染に対して耐性であることを示した。表8は、事象数、ANOVA p値、遺伝子移入植物(試料)の平均スコアおよび対照植物の平均スコアを示す。
【0103】
(表8)

【0104】
実施例12
線虫耐性はAt1g07930の過剰発現によって付与される
上記のように、20の独立した形質転換事象からのAt1g07930の発現を駆動するCsVMVプロモーターを含むT2植物を成長させることにより、線虫耐性に対するAt1g07930 (NMR1002)の過剰発現の効果を試験した。各構築物を4回の反復実験で試験し、各植物の根の瘤を数えた。上記のように、根瘤の数に関して各植物にスコアを与えた。形質転換事象の六つに関して、遺伝子移入植物は、接種を受けた野生型対照植物とは有意に異なるスコアを示し、2ウェイANOVA試験による決定で遺伝子移入植物よりも有意に少ない根瘤を有することを示し(p≦0.05)、線虫感染に対して耐性であることを示した。表9は、事象数、ANOVA p値、遺伝子移入植物(試料)の平均スコアおよび対照植物の平均スコアを示す。
【0105】
(表9)

【0106】
実施例13
線虫耐性はAt1g15270の過剰発現によって付与される
上記のように、20の独立した形質転換事象からのAt1g15270の発現を駆動するCsVMVプロモーターを含むT2植物を成長させることにより、線虫耐性に対するAt1g15270 (NMR1004)の過剰発現の効果を試験した。各構築物を4回の反復実験で試験し、各植物の根の瘤を数えた。上記のように、根瘤の数に関して各植物にスコアを与えた。形質転換事象の十に関して、遺伝子移入植物は、接種を受けた野生型対照植物とは有意に異なるスコアを示し、2ウェイANOVA試験による決定で遺伝子移入植物よりも有意に少ない根瘤を有することを示し(p≦0.05)、線虫感染に対して耐性であることを示した。表10は、事象数、ANOVA p値、遺伝子移入植物(試料)の平均スコアおよび対照植物の平均スコアを示す。
【0107】
(表10)

【0108】
実施例14
線虫耐性はAt2g37220の過剰発現によって付与される
上記のように、20の独立した形質転換事象からのAt2g37220の発現を駆動するCsVMVプロモーターを含むT2植物を成長させることにより、線虫耐性に対するAt2g37220 (NMR1005)の過剰発現の効果を試験した。各構築物を4回の反復実験で試験し、各植物の根の瘤を数えた。上記のように、根瘤の数に関して各植物にスコアを与えた。形質転換事象の六つに関して、遺伝子移入植物は、接種を受けた野生型対照植物とは有意に異なるスコアを示し、2ウェイANOVA試験による決定で遺伝子移入植物よりも有意に少ない根瘤を有することを示し(p≦0.05)、線虫感染に対して耐性であることを示した。表11は、事象数、ANOVA p値、遺伝子移入植物(試料)の平均スコアおよび対照植物の平均スコアを示す。
【0109】
(表11)

【0110】
実施例15
線虫耐性はAt4g10340の過剰発現によって付与される
上記のように、20の独立した形質転換事象からのAt4g10340の発現を駆動するCsVMVプロモーターを含むT2植物を成長させることにより、線虫耐性に対するAt4g10340 (NMR1008)の過剰発現の効果を試験した。各構築物を4回の反復実験で試験し、各植物の根の瘤を数えた。上記のように、根瘤の数に関して各植物にスコアを与えた。形質転換事象の五つに関して、遺伝子移入植物は、接種を受けた野生型対照植物とは有意に異なるスコアを示し、2ウェイANOVA試験による決定で遺伝子移入植物よりも有意に少ない根瘤を有することを示し(p≦0.05)、線虫感染に対して耐性であることを示した。表12は、事象数、ANOVA p値、遺伝子移入植物(試料)の平均スコアおよび対照植物の平均スコアを示す。
【0111】
(表12)

【0112】
実施例16
線虫耐性はAt4g13940の過剰発現によって付与される
上記のように、20の独立した形質転換事象からのAt4g13940の発現を駆動するCsVMVプロモーターを含むT2植物を成長させることにより、線虫耐性に対するAt4g13940 (NMR1009)の過剰発現の効果を試験した。各構築物を4回の反復実験で試験し、各植物の根の瘤を数えた。上記のように、根瘤の数に関して各植物にスコアを与えた。形質転換事象の七つに関して、遺伝子移入植物は、接種を受けた野生型対照植物とは有意に異なるスコアを示し、2ウェイANOVA試験による決定で遺伝子移入植物よりも有意に少ない根瘤を有することを示し(p≦0.05)、線虫感染に対して耐性であることを示した。表13は、事象数、ANOVA p値、遺伝子移入植物(試料)の平均スコアおよび対照植物の平均スコアを示す。
【0113】
(表13)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体耐性作用活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物をそのゲノムの中に安定に組み込んで有するトランスジェニック植物であって、
該ヌクレオチド配列が、
(a) 表3および4の3列目で同定されたヌクレオチド配列またはその補体、
(b) 表3および4の3列目で同定されたヌクレオチド配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列またはその補体、
(c) 表3および4の4列目で同定されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、および
(d) 表3および4の4列目で同定されたアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列
からなる群より選択され、
該ヌクレオチド配列が、植物細胞におけるコード配列の発現を駆動するプロモーターに機能的に連結されている、
トランスジェニック植物。
【請求項2】
少なくとも一つの線虫に対して増大した耐性を有する、請求項1記載の植物。
【請求項3】
少なくとも一つの細菌に対して増大した耐性を有する、請求項1記載の植物。
【請求項4】
プロモーターが構成的プロモーターである、請求項1記載の植物。
【請求項5】
ナタネ、ダイズ、トウモロコシ、ヒマワリ、ワタ、ココア、ベニバナ、アブラヤシ、ココヤシ、アマ、ヒマおよびピーナッツ、トマト、ニンジン、レタス、マメ、アスパラガス、カリフラワー、コショウ、ビート、キャベツ、ナス、エンダイブ、ニラネギ、長キュウリ、メロン、エンドウ、ダイコン、根茎、ミニキュウリ(Beit alpha) 、カボチャ、スイカ、白タマネギ、チコリー、黄タマネギ、ブロッコリ、芽キャベツ、ネギ、セロリ、ノヂシャ、キュウリ、ウイキョウ、ウリ、パンプキン、スイートコーンおよびズッキーニからなる群より選択される、請求項1記載の植物。
【請求項6】
以下の段階を含む、増大した病原体耐性を有する植物を生産する方法:
(a) 表3および4の4列目で同定されたNMRポリペプチドもしくはその変種をコードするヌクレオチド配列またはそれらをコードする配列に相補的であるヌクレオチド配列を含む少なくとも一つの植物形質転換ベクターを植物またはその細胞に導入する段階、ならびに
(b) 形質転換した植物または細胞を成長させて、少なくとも一つの病原体に対して増大した耐性を示すトランスジェニック植物を生産する段階。
【請求項7】
請求項6記載の方法によって得られる植物。
【請求項8】
請求項7記載の植物から得られる植物部分。
【請求項9】
請求項7記載の植物の形質転換種子。
【請求項10】
NMR遺伝子の変化を有する植物を同定する段階、および該植物の後代を生成する段階を含む、増大した病原体耐性を有する植物を生産する方法であって、該後代が、増大した病原体耐性を有し、該NMR遺伝子が、表3および4の4列目で同定された遺伝子である、方法。
【請求項11】
植物が、増大した線虫耐性を有する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
NMR遺伝子の発現を変化させる、請求項10記載の方法。
【請求項13】
NMR遺伝子が変異を有する、請求項10記載の方法。
【請求項14】
候補遺伝子/QTL法を使用して植物を同定する、請求項10記載の方法。
【請求項15】
TILLING法を使用して植物を同定する、請求項10記載の方法。
【請求項16】
植物由来の少なくとも一つのNMR遺伝子を解析する段階、およびNMR遺伝子の変化を有する植物を同定する段階を含む、増大した病原体耐性を有する植物を同定する方法であって、該植物が、増大した病原体耐性を有する、方法。
【請求項17】
植物が、増大した線虫耐性を有する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
NMR遺伝子の発現を変化させる、請求項16記載の方法。
【請求項19】
NMR遺伝子が変異を有する、請求項16記載の方法。
【請求項20】
候補遺伝子/QTL法を使用して植物を同定する、請求項16記載の方法。

【公表番号】特表2009−539414(P2009−539414A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515634(P2009−515634)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/071144
【国際公開番号】WO2007/147016
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(508366400)アグリノミクス エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】