説明

改良された膨張性能を有するタンポン用綿撒糸およびその製造方法

【課題】改良されたタンポン用綿撒糸のデザイン、および特にタンポンの引き出される側の端部において速く膨張しより大きな吸収性を有するタンポン用綿撒糸を提供する。
【解決手段】本発明により女性用衛生製品が提供される。当該女性用衛生製品は、圧縮された繊維性の材料の塊、挿入される側の端部、および引き出される側の端部を有する本体を備える。当該本体は、全長Lを有する。挿入される側の端部は直径Aを、引き出される側の端部は直径Bを有する。最初の状態において、直径Bは直径Aに対して少なくとも等しいか約10パーセントまで大きい。液体に晒された場合、直径Bは急速に膨張して直径Aに対する直径Bの比率が約1.25:1となる。一具体例において、女性用衛生製品はタンポンであり、液体に晒された場合、直径Bは直径Aよりも急速に膨張し、実質的に膣腔の底部を封印して迂回漏れを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、吸収性の生理用タンポン用綿撒糸およびそのようなタンポン用綿撒糸を作るための方法に関する。より狭くは、本発明は、引き出される側の端部における膨張性能および吸収特性の改良により漏れ防止能力の改良されたタンポン用綿撒糸に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の女性の膣は、下部骨盤腔に位置し、子宮、膀胱、および直腸等のような臓器に囲まれている。膣は、身体の内側の子宮から身体の外側の外陰部まで伸びている繊維筋性組織の層からなる、チューブを潰したような構造を有している。膣の入口、すなわち膣口は、比較的小さな直径を有し、膣の下側の3分の2における直径は入口と比較し、(もし大きいとしても)ただわずかに大きいだけである。そして、上側の3分の1(子宮の頸部に最も近い部分)においては、直径が最も広い。生物学的な観点からすると、膣は、月経サイクルにおける月経の状態の期間において流体が身体から出ていく通路を提供する。月経期間における女性の骨盤領域の画像データ(例えば、核磁気共鳴画像(MRI))は、女性が一般的にタンポン用綿撒糸を、膣円蓋のうちの一つ、頸管口の前側および右側の両方、すなわち月経血の源に配置するということを示している。重力は血液が身体の外側へ向かって膣腔の中を降りて行くことを促す傾向があるということと、月経血の源に対するタンポン用綿撒糸の配置が一般的には高いということの両方から、月経血は、一般的に、最初に綿撒糸の一つの側面、典型的には綿撒糸の引き出される側の端部に近い方の側面に接触する。従来の綿撒糸は、液体の漏れを防止するのに液体の吸収および膨張の速度が不十分である。さらに、一般的に高い位置に配置される結果、不均等な吸収がもたらされる。それは、迂回漏れをもたらす可能性がある。より均一な吸収を促進するために女性がタンポン用綿撒糸を膣腔における下側(例えば、頸管口より下)に挿入して配置することが好ましいという一方で、タンポンが膣の入口近くに配置されると装着者にとって不快感が伴うということが一般に信じられている。例えば、従来のタンポン用綿撒糸は、膣の入口がより小さい直径を有しているために、膣の入口の近くにある膣壁に対してより大きな力を及ぼすかもしれない。また、膣の入口の近くにおいてより多数の神経の末端が存在するため、当該神経の末端がタンポンから及ぼされる圧力により刺激を受け得る。最後に、膣の入口の近くにおいて、多くの女性の膣は、いわゆる「犬の骨」のような形状を示すことが観察されている。すなわち、中間において狭く、両端部においてより広いということである。タンポンをこの狭い中間の領域に挿入することは不快感を与え得る。おそらく、この身体構造上の特徴もまた、上述したように、女性たちがタンポンを一方の側、通常は右側かつ前側において高く配置することを促進してしまう。
【0003】
上述したように、膣腔の範囲内におけるタンポン用綿撒糸の配置によって、漏れ防止の性能の低下がもたらされる可能性がある。従来のタンポン用綿撒糸が高い吸収性を有する一方で、月経血はタンポン用綿撒糸の主要な部分を迂回する可能性があり、潜在的なタンポンの吸収性の一部分のみしか利用されず、迂回漏れが引き起こされる。例えば、図1Aおよび図1Bは、対象となる女性によって使用されたタンポン10および20を示している。ここで、一般的に参照番号32および34によって示される染みは、月経血の吸収を表している。図1Aおよび図1Bにおいて示されるように、タンポン10および20の各々の挿入される側の端部12および22の近くにおいていくらかの吸収が見られる一方で、吸収は、明らかに一方の側面(例えば、月経血の源に最も近い側面)において見られる。そして、最も顕著に、タンポン10および20の各々の引き出される側の端部14および24において見られる。図1Aおよび1Bは、また、タンポン10および20の各々の反対側の側面16および26においてほとんど液体が吸収されていないことを示している。本発明者たちは、従来のタンポンが非常に高い吸収性を有するとしても、月経血は典型的にはタンポンの主要な部分を迂回し、結果として漏れが生じ、タンポンの潜在的な吸収性のほんの一部分のみがその目的を果たしているという理解に達した。
【0004】
本発明者たちは、図1Aおよび図1Bにおいて見られる吸収のパターンが主として膣腔内におけるタンポン用綿撒糸の配置から来ているということを確認するために、調査を行った。図2Aおよび図2Bは、スキャンに先立ってタンポンを挿入した対象となる女性の画像データの一例としてのMRIスキャン画像を示している。図2Aおよび図2Bにおいて示されるように、女性たちは、膣円蓋のうちの一つ、例えば頸管口の前側かつ右側にタンポンを挿入する傾向がある。一つの調査において、例えば、15人のうちの12人の女性に関し、このようなやり方で挿入された状態のタンポンがスキャンされた。
【0005】
さらに、本発明者たちは、MRIデータに対する画像分析ソフトウェアの適用が、そこに挿入されているタンポン等の女性用衛生製品と相互に影響し合う女性の膣腔の身体上の構造を調査する手段を提供することを発見した。身体上の構造および当該製品の相互作用をモデル化し分析することは、発明者たちおよび同様な製品の設計者たちが身体の内側の活動を現実的に見ることを可能にする。例えば、図3A乃至図3Cは、膣腔30およびそこに配置されているタンポン40の描写を示している。図3A乃至3Cにおいて示されるように、タンポン40は、膣腔30を完全には満たさない。それゆえ、液体(例えば、月経血)のタンポン用綿撒糸40に対する迂回を許す流路50が形成される。膣腔は、従来のタンポン用綿撒糸よりも大きな弾性を有しているため、綿撒糸40は、膣腔30の幅を押し開き、もしくは引き伸ばして、流路50等の迂回漏れの流路の形成を助長してしまう傾向がある。本発明者たちは、分析を通じて、図2Aおよび図2Bにおいて示されるように例えば膣円蓋の範囲内のような膣腔の中においてタンポンが高く配置されると、流路がより大きくなることを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のことから、本発明者たちは、タンポン用綿撒糸のデザインの改良に対するニーズが存在すること、そして特にタンポンの引き出される側の端部の近くにおいて速く膨張し、より大きな吸収性を有するタンポン用綿撒糸に対するニーズが存在することを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、女性用衛生製品を対象にしている。女性用衛生製品は、圧縮された繊維状の材料の塊、挿入される側の端部、および引き出される側の端部を有する本体を備えている。当該本体は、全長Lを有する。挿入される側の端部は、直径Aを有しており、引き出される側の端部は、直径Bを有する。初期の状態において、直径Bは、直径Aに対して同じ大きさ乃至約110パーセントの大きさのうちのいずれかの大きさである。液体に晒されると、直径Bは半径方向に膨張し、直径Aに対する直径Bの比率が、約1.25:1となる。
【0008】
一具体例において、直径Aは、本体の全長Lにおける上側の5パーセント(%)の範囲内においてその直径が最小である。別の具体例において、直径Aは、本体の全長Lにおける上側の50パーセント(%)の範囲内においてその直径が最小である。
【0009】
一具体例において、直径Bは、本体の全長Lにおける下側の50パーセント(%)の範囲内においてその直径が最大である。一具体例において、直径Aに対する直径Bの比率は、約1.1:1から約3.0:1までの範囲内に入る。
【0010】
また別の具体例において、挿入される側の端部および引き出される側の端部は、互いに異なる繊維状の材料によって形成されている。一具体例において、異なる繊維状の材料は、異なる繊維組成、異なるウェブ密度、異なる繊維のデニール(グラム重量)、異なる繊維の仕上げを有する材料のうちの少なくとも一つから構成されており、および/もしくは不織布の中において異なる方法により繊維の結合が行われている。また、さらに別の具体例において、本体の引き出される側の端部における繊維状の材料は、本体の挿入される側の端部の材料と比較してより速い吸収速度およびより大きな吸収容量のうちの少なくとも一つを有する材料から構成されている。
【0011】
本発明の特徴および利点は、以下に与えられる好適な具体例の詳細な説明が、ここに示される図面と共に考慮されれば、よりよく理解されるだろう。
【0012】
これらの図面においては、同じ構造に対しては同じ参照番号が割り当てられているが、全ての図面において必ずしもそれらの参照番号が示されているとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1Aは、対象となる女性たちによって使用されたタンポンを表している。ここで、染みは、月経血の吸収を示している。
【図1B】図1Bは、対象となる女性たちによって使用されたタンポンを表している。ここで、染みは、月経血の吸収を示している。
【図2A】図2Aは、スキャンされるに先立ってタンポンを挿入した対象となる女性たちの画像データを表している。
【図2B】図2Bは、スキャンされるに先立ってタンポンを挿入した対象となる女性たちの画像データを表している。
【図3A】図3Aは、膣腔およびそこに配置されたタンポンの描写を表している。
【図3B】図3Bは、膣腔およびそこに配置されたタンポンの描写を表している。
【図3C】図3Cは、膣腔およびそこに配置されたタンポンの描写を表している。
【図4】図4は、使用に先立って、本発明に従って構成され機能する、タンポン用綿撒糸を表している。
【図5】図5は、本発明の一具体例にかかる使用後の図4にかかるタンポン用綿撒糸を表している。
【図6】図6は、本発明の他の具体例にかかる使用後の図4にかかるタンポン用綿撒糸を表している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者たちは、綿撒糸における引き出される側の端部の近くにおいて吸収性およびもしくは膨張特性を増加した綿撒糸は、漏れの防止に対して有効であるということを発見した。発明者たちは、また、実質的に円柱形状を有するタンポン用綿撒糸が、消費者たちが好む快適さを提供するということを発見した。
【0015】
図4は、使用される前のタンポン用綿撒糸200を表している。タンポン用綿撒糸200は、挿入される側の端部202、引き出される側の端部204、および引き出される側の端部に取り付けられた紐206を有する圧縮された繊維状の材料の塊から構成されている。図4において示されるように、タンポン用綿撒糸200は、一般的に参照番号220によって示されるその全長Lに渡って円筒状もしくは円柱状の形状を有している。挿入される側の端部202は、直径Aを有している。引き出される側の端部204は、直径Bを有している。一具体例において、使用および膨張に先立って、直径Bは少なくとも直径Aと同じ大きさ乃至直径Aに対し約10パーセント大きい大きさの範囲内である。一具体例において、直径Aは約13.9ミリメートルであり、直径Bは約15.3ミリメートルである。
【0016】
図5は、半径方向に膨張した後のタンポン用綿撒糸200の一具体例を示しており、膨張した形状がタンポン用綿撒糸200’として描写されている。図5において示されるように、タンポン200’の引き出される側の端部204’は、より速い液体吸収性を有し、そのために急速に膨張する。その結果として、引き出される側の端部204’は膣腔を封印し、もしくは塞ぎ、早い段階での迂回漏れを実質的に防止する。図5において示されるように、直径A’は、タンポン用綿撒糸200’の全長L’220’における上側の5パーセント(%)の範囲における直径である(例えば、挿入される側の端部202’)。直径B’は、綿撒糸200’の引き出される側の端部204’における最も広い部分において測られる直径である。一具体例において、引き出される側の端部204’は、タンポン用綿撒糸200’の全長L’220’における下側の25パーセント(%)である。一具体例において、直径の比率B’:A’は約1.25:1である。一具体例において、直径A’は、タンポン用綿撒糸200’の全長L’220’における上側の50パーセント(%)の中の最も小さい直径である。一方、直径B’は、タンポン用綿撒糸200’の全長L’220’における下側の50パーセント(%)の中の最も広い位置での寸法である。この具体例において、直径の比率B’:A’は、約1.1:1から約3.0:1までの範囲内に入る。
【0017】
図6は、半径方向に膨張した後のタンポン用綿撒糸200の一具体例を示しており、膨張した形状がタンポン用綿撒糸200”として描写されている。図6において示されるように、タンポン200”の引き出される側の端部204”は、液体の吸収のために急速に膨張している。図6において示されるように、直径A”は、タンポン用綿撒糸200”の全長L”220”における上側の5パーセント(%)の範囲内における直径として測られる。そして、直径B”は、タンポン用綿撒糸200”の全長L”220”における下側の50パーセント(%)において最も広い部分で測られる直径である。この具体例において、直径の比率B”:A”は約1.25:1である。また別の具体例においては、直径A”は、綿撒糸200”の全長L”220”における上側の50パーセント(%)において最も小さい直径として測られる。一方、直径B”は、綿撒糸200”の全長L”220”における下側の50パーセント(%)において最も広い位置での寸法である。そして、比率B”:A”は、1.1:1から3.0:1までの範囲内に入る。
【0018】
上述したように、直径B、B’、およびB”(以下、それらを全て直径Bとして言及する)は、女性の膣の湿った環境における速い液体吸収性により大きくなる。そのことは、初期段階での迂回漏れを防止するために十分に速く膣腔を封印もしくは塞ぐタンポンをもたらす。一具体例において、直径Bの膨張は、吸収速度および吸収容量の両方によりもたらされる。すなわち、タンポン用綿撒糸の引き出される側の端部204(例えば、直径Bの部分)は、より速い吸収性を有する材料から構成される。そして、一具体例においては、また、引き出される側の端部204は、タンポン用綿撒糸200の挿入される側の端部202(例えば、直径Aの部分)を構成する材料よりも大きな吸収容量を有する材料から構成される。図5および6において示されるように、一具体例において、タンポン用綿撒糸は、円もしくは楕円の断面形状を有する。しかしながら、タンポン用綿撒糸200の形状がより広い引き出される側の端部からより狭い挿入される側の端部までわずかに先細りになっていくものも、また、本発明の技術的思想の範囲内に含まれるということは、十分に理解されるべきである。一具体例において、当該形状は、例えば、女性の膣の自然な曲面に順応するように湾曲していてもよい。一般的に、本発明のタンポン用綿撒糸を含むアプリケータの全体的な形状は、円柱形状もしくは楕円柱形状である。
【0019】
発明者たちは、引き出される側の端部の近くにおいて急速な膨張および封印に適する形状を獲得する(例えば、直径Bを獲得する)ために、繊維性の材料、不織布、ウェブの製造、およびもしくはタンポンを形成するために採用される方法における変更が必要であるということを発見した。例えば、綿撒糸200の引き出される側の端部204は、綿撒糸200の中間部分および挿入される側の端部202よりも圧縮の程度が低くされる必要がある。一具体例において、綿撒糸の引き出される側の端部と挿入される側の端部の各々の形成において、異なる圧縮技術が採用される。例えば、下側の3分の1において(例えば、引き出される側の端部において)よりも、上側の3分の2において(例えば、挿入される側の端部において)より大きな圧縮を行うように設計された特殊な圧縮工具もしくは2つの部分を有する特殊なオーブンチューブが用いられる。さらに、圧縮工具もしくはオーブンチューブは望ましい形状をもたらすように、テーパー加工やスプライン加工が施されている。タンポンの挿入される側の端部および引き出される側の端部を形成する場合に、異なる熱および/もしくは圧力を適用することも、また、本発明の技術的思想の範囲内に入る。
【0020】
例えば、本発明にかかる綿撒糸を製造するために、内側の直径が中間および上側の近くにおいて13ミリーメートルで、そこから下側の部分もしくは引き出される側の端部の近くにおいて内側の直径が15ミリメートルとなるように、内側の直径が増加していくような形状を有するオーブンチューブが用いられてもよい。さらに、中間および上側の部分に対して適用するよりもわずかに少ない赤外線加熱を下側の部分もしくは引き出される側の端部に対して適用することによって、上側の部分の近くにおいてより大きな圧縮が行われて、引き出される側の端部の近くにおいてより急速により広い範囲で膨張する綿撒糸を得ることができる。そのような場所によって異なる膨張は、膣円蓋の下側の部分を塞ぎ、それゆえ迂回漏れを減少させることを助ける。その実現方法の一つとして、上側および中間の部分の近くにおいてオーブンチューブを例えば華氏約270度に加熱し、下側の部分においてオーブンチューブを例えば華氏約210度という比較的低い温度に保つような加熱手段を用いることがある。
【0021】
一具体例において、挿入される側の端部202は、引き出される側の端部204において用いられるものとは異なった繊維もしくは繊維状のウェブによって形成される。例えば、綿撒糸200の引き出される側の端部204においては、より高いデニールのレーヨンもしくはPETの繊維状のウェブが急速に水分を吸収し、それゆえ、より低いデニールの綿のウェブと比較してより急速な膨張を提供する。当該より低いデニールの綿のウェブは、発明者たちが綿撒糸200の挿入される側の端部202に対してより適切であると判断したものである。いくつかの不織布のウェブの断片を一緒に用いることにより、綿撒糸の下側の3分の1の部分において(例えば、引き出される側の端部において)より大きな厚さおよび/もしくはより大きな直径が得られる。繊維組成を変えること、ウェブの密度を変えること、不織布の中において繊維の結合方法を変えること、およびもしくは繊維のデニールもしくは繊維の仕上げを変えることによって、タンポン用綿撒糸200は当該綿撒糸の一部分、例えば引き出される側の端部204(例えば、全長の下側の3分の1の部分)において、挿入される側の端部202(例えば、全長の上側の3分の2の部分)におけるよりも速く流体の流入に対応することができる、ということは十分に理解されるべきである。
【0022】
本発明は、また、従来のタンポン用綿撒糸の設計において用いられている設計思想と統合されている、ということは十分に理解されるべきである。例えば、本発明にかかるタンポン用綿撒糸は、指で操作するもしくはアプリケータ型のタンポンであってもよい。さらに、本発明にかかるタンポン用綿撒糸は、例えば、レーヨン、綿、セルロールの表面、パルプ、および同様のものを、主たる吸収のための手段として有する。スーパーの吸収性および非吸収性の繊維を含む繊維の混合物を有することも、また、本発明の技術的思想の範囲内である。また、本発明にかかるタンポンは、必要に応じて、スムースで快適な感触を提供するとともに繊維の腐食を防ぐために、上包およびもしくはカバーストックを有してもよい。一具体例において、引き出される側の端部204に取り付けられる紐206は、表面加工された綿の繊維を有している。
【0023】
本発明者たちは、本発明にかかるタンポン用綿撒糸を製造するための数多くの有用な方法を見つけた。例えば、本発明者たちは、本発明に従って構成され機能するタンポン用綿撒糸としては、ジェントル・グライド(GENTLE GLIDE(登録商標))というブランドで本発明の譲渡人によって販売されているタンポン用綿撒糸においてタンポンを製造するために採用されている方法と類似する方法を用いて、折り畳まれて、半径方向に圧縮されて、クロスパッドにされた、不織布をベースとする綿撒糸が使用可能である、ということを発見した。製造方法が類似する一方で、本発明にかかるタンポン用綿撒糸を製造する場合に、圧縮に先立って用いられる吸収性のパッドの数および寸法が異なっている。例えば、タンポン用綿撒糸が折り畳まれた後に引き続いて圧縮されることにより形成される際に、当該綿撒糸が当該綿撒糸の引き出される側の端部においてわずかに大きな割合の質量(例えば、より高い吸収性)を有するように、本発明にかかるパッドの選択が行われる。一具体例において、2つのクロスパッドを生成するために用いられるウェブの断片の全長、幅、および厚さのうちの少なくとも一つが、従来の設計におけるそれらの寸法と異なるように本発明にかかる綿撒糸の設計が行われる。一具体例において、2つのウェブの断片に対して異なる密度が用いられることにより、吸収性および/もしくは吸収速度に変化が与えられる。このことは、異なる吸収性を示す繊維を用いること、および/もしくは当該パッドにおいて用いられる不織布を結合させるかもしくは圧縮する方法を変えること、の両方もしくはいずれか一方によって実現される。例えば、ウェブの結合が針による打ち抜きにより行われる場合、より高密度で針の打ち抜きを行うことにより、ウェブの密度を変化させることができる。
【0024】
例えば、異なる数のパッド、パッドの全長、パッドの幅、パッドの厚さ、パッドの標準的重量、およびパッドの材料の使用、並びにパッドを作り上げるために用いられる繊維の材料および混紡組成等のような上述した製造のパラメータを一緒に、もしくは個々に変えることも、また、本発明の技術的思想の範囲内であることは、十分に理解されるべきである。
【0025】
【表1】

【0026】
表1において示されるように、タンポン用綿撒糸の形状を作るために用いられる2つのパッド(例えば、内側および外側)に関するパッドの全長および幅において、変更が行われている。寸法の違いはパッドの重量の違いを生みだすが、しかし、表1において示されるように、両方のパッドの総重量は同じであり、例えば3.45グラムである。表1に示される綿撒糸の製造において、それらのパッドを作り上げるウェブの断片を作るために、同じ繊維(例えば、ギャラクシー(Galaxy(登録商標))ブランドの多葉性のレーヨン繊維、ドイツのケルハイムにあるケルハイムファイバーズ(Kelheim Fibers GmbH)から購入可能)を用いた。また、ウェブの標準的重量は実質的に同じとした。タンポン用綿撒糸は、例えば、米国のバージニア州のリッチモンドにあるハウニ・リッチモンド社(Hauni Richimond Inc.)から購入可能なHPシミュレーター・マシーンを用いた折り畳みにより形成した。円柱形状の綿撒糸を形成するために用いたオーブンチューブ、並びに当該綿撒糸を加熱して圧縮する温度および時間は、それらのタンポンの2つのセットに対して、ほとんど同一とした。一つの試験シナリオにおいて、表1において示される構成の各々に関し約40個のタンポンを作った。一具体例において、アプリケータ付きのタンポンを組み立てるためにジェントル・グライド(トレードマーク)ブランドのアプリケータを用た。
【0027】
発明者たちは、表1において示されるタンポン用綿撒糸の形状を評価するために試験を行った。例えば、食品用の切断具(例えば、米国のペンシルバニア州のアボンデール(Avondale)にあるエッジクラフト社(Edgecraft Corporation)から購入可能な、シェフズ・チョイス・インターナショナル・エレクトリック・フード・スライサー、モデル#662)等のような切断器具を用いて、タンポンの長手方向に中を走っている軸に沿って、各々のタンポンの形状を切断した。切断後、表1のタンポンの2つの形状における重量の分布を把握するために、タンポンの調査を行った。その後、4つの「四分位数」を構成するようにいくつかのスライスをグループ化した。食品用の切断具は切断によりほとんど完璧に均等なスライスを生成するため、これらの四分位数は長手方向の綿撒糸の軸に沿った長さがほとんど同一である。当該スライスの重量を測定し、これらのタンポンの2つのセットの各々に関し、四分位数の各々の重量比率を算定した。表2に、重量分布の比較を示す。表2の中において、四分位数の「1」は、引き出される側の端部もしくは紐が取り付けられる側の端部に最も近い部分であることを示す。
【0028】
【表2】

【0029】
表2に示されるように、例1は、比較例に対して紐もしくは引き出される側の端部に近い部分(四分位数の「1」)がより大きい質量の割合を示している(例えば、7.73%に対して10.33%)。例えば、表1および表2に示されるパッドの長さおよび幅における違いに加えて、パッドの厚さおよび繊維の材料における違いがあってもよい。
【0030】
発明者たちは、シンジナの吸収性を含むさらなる試験を行い、表1のタンポン用綿撒糸の2つの形状に関する吸収特性を測定した。その結果を表3に示す。
【0031】
【表3】

【0032】
表3に示されるように、綿撒糸の重量がわずかに異なっていた。そして、実際の重量は、目標とした3.45グラムよりも重かった。乾燥重量、湿潤重量、および吸収性は、わずかに異なった。しかし、単位グラム当たりの吸収性は、5.13(比較例)および5.19(例1)であった。それらは、ほぼ同等であり、統計的に実質的には異ならなかった(t検定においてP値=0.128)。
【0033】
以下の表4は、表1のタンポン用綿撒糸の2つの形状に関する紐が取り付けられる側の端部の近くにおいて測定された綿撒糸の直径の比較を示している。表4は、シンジナの試験による膨張の前の綿撒糸に関する結果と、シンジナの吸収性の試験の間に膨張した綿撒糸に関する結果との両方を示している。表4において示されるように、本発明にかかるタンポン用綿撒糸は、平均で、比較例にかかるもの(直径が55%増加)よりも高い程度で、紐が取り付けられる側の端部において膨張した(直径が70.7%増加)。表1にかかる2つの綿撒糸に対するデータを、両方のオリエンテーション(方向)における5つの全ての綿撒糸に関して比較した場合、膨張した直径に関する結果は、95パーセント(%)の信頼性を有する両側T検定に基づいて統計的に実質的に異なっている。なお、単位グラム当たりの吸収性はそれほど異なっていない。
【0034】
【表4】

【0035】
表4に示される結果は、本発明にかかるタンポン用綿撒糸が、紐が取り付けられる側の端部、すなわち引き出される側の端部の近くにおいてより大きな程度で膨張する、という望ましい結果を示している。既に述べた身体内における計算上の、もしくは実験による結果に基づき、発明者たちはそのようなタンポン用綿撒糸の構成が快適さおよび漏れ防止の両方の観点から好ましい、ということを確認した。
【0036】
以上、好ましい具体例に関し本発明の説明を行ってきたが、これらの教示に対する数多くの変形があり得るということが当業者によって理解されるべきである。したがって、形状および詳細における変形が本発明の技術的思想の範囲内において行われ売るということが当業者によって理解されるだろう。
【符号の説明】
【0037】
10…タンポン、12…挿入される側の端部、14…引き出される側の端部、16…反対側の側面、20…タンポン、22…挿入される側の端部、24…引き出される側の端部、26…反対側の側面、30…膣腔、32…染み、34…染み、40…タンポン用綿撒糸、50…流路、200…タンポン用綿撒糸、200’…タンポン用綿撒糸、200”…タンポン用綿撒糸、202…挿入される側の端部、202’…挿入される側の端部、202”…挿入される側の端部、204…引き出される側の端部、204’…引き出される側の端部、204”…引き出される側の端部、206…紐、206’…紐、206”…紐、220…全長L、220’…全長L’、220”…全長L”

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入される側の端部および引き出される側の端部を有する圧縮された繊維性の材料の塊を有する本体
を備え、
前記本体は全長Lを有し、
前記挿入される側の端部は直径Aを有し、
前記引き出される側の端部は直径Bを有し、
初期の状態において、前記直径Bは前記直径Aに対して同一乃至10パーセント増の範囲内の大きさであり、
液体に晒された場合、前記直径Bは前記直径Aに対する前記直径Bの比率が1.25:1になるように半径方向に膨張する
女性用衛生製品。
【請求項2】
前記直径Aは、前記本体の前記全長Lにおける上側の5パーセントの範囲内における最小直径である
請求項1に記載の女性用衛生製品。
【請求項3】
前記直径Bは、前記本体の前記全長Lにおける下側の50パーセントの範囲内における最大直径である
請求項1に記載の女性用衛生製品。
【請求項4】
前記直径Aは、前記本体の前記全長Lにおける上側の50パーセントの範囲内における最小直径である
請求項1に記載の女性用衛生製品。
【請求項5】
前記直径Bは、前記本体の前記全長Lにおける下側の50パーセントの範囲内における最大直径である
請求項4に記載の女性用衛生製品。
【請求項6】
前記直径Aに対する前記直径Bの比率が、1.1:1乃至3.0:1の範囲内である
請求項5に記載の女性用衛生製品。
【請求項7】
前記挿入される側の端部と前記引き出される側の端部とが、異なる繊維性の材料によって形成されている
請求項1に記載の女性用衛生製品。
【請求項8】
前記異なる繊維性の材料は、異なる繊維組成、異なるウェブの密度、異なる繊維のデニール、および異なる繊維の仕上げ加工を有する材料のうちの少なくとも一つを有しており、異なる方法により繊維の結合が行われた不織布を用いて形成されている
請求項7に記載の女性用衛生製品。
【請求項9】
前記異なる繊維のデニールは、前記挿入される側の端部におけるより低いデニールの繊維と比較して、より高いデニールの繊維性のウェブを有する前記本体の前記引き出される側の端部を有している
請求項8に記載の女性用衛生製品。
【請求項10】
前記繊維の結合に関する異なる方法は、前記本体の前記引き出される側の端部が前記本体の前記挿入される側の端部およびそれらの中間部分のいずれの位置よりも弱く圧縮されるように前記本体を圧縮するステップを有する
請求項8に記載の女性用衛生製品。
【請求項11】
前記本体の前記引き出される側の端部における前記繊維性の材料は、前記本体の前記挿入される側の端部よりも速い吸収速度および大きな吸収容量のうちの少なくとも一つを有する材料を有する
請求項7に記載の女性用衛生製品。
【請求項12】
挿入される側の端部および引き出される側の端部を有する圧縮された繊維性の材料の塊を有する本体
を備え、
前記本体は全長Lを有し、
前記挿入される側の端部は直径Aを有し、
前記引き出される側の端部は直径Bを有し、
液体に晒された場合、前記直径Bは前記直径Aよりも速く膨張し、膣腔の底部を封印して迂回漏れを防止する
タンポン。
【請求項13】
前記直径Aは、前記本体の前記全長Lにおける上側の5パーセントの範囲内における最小直径である
請求項12に記載のタンポン。
【請求項14】
前記直径Bは、前記本体の前記全長Lにおける下側の50パーセントの範囲内における最大直径である
請求項12に記載のタンポン。
【請求項15】
液体に晒される前の状態において、前記直径Bは前記直径Aに対して同一乃至10パーセント増の範囲内の大きさであり、液体に晒された後の状態において、前記直径Bは前記直径Aに対する前記直径Bの比率が1.25:1となるように膨張する
請求項12に記載のタンポン。
【請求項16】
前記本体が各々異なる長さおよび異なる幅寸法を有する複数のパッドから形成される請求項12に記載のタンポンを製造するための方法であって、
前記複数のパッドを、最初の状態において、前記直径Bが前記直径Aに対して同一乃至10パーセント増の範囲内の大きさとなるように、折り畳み圧縮して形成するステップを備える
タンポンを製造するための方法。
【請求項17】
前記形成の後、前記本体は、前記挿入される側の端部と比較して前記引き出される側の端部においてより大きな比率の質量を有する
請求項16に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−519688(P2011−519688A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508648(P2011−508648)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/043071
【国際公開番号】WO2009/137638
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(500365915)プレイテックス プロダクツ エルエルシー (56)
【Fターム(参考)】