説明

改良された電気化学キャパシタ

本発明は、キャパシタの分野に関し、特に、ポリマーナノファイバーの多孔質層と酸化防止剤とを含むセパレータを含む電気化学二重層キャパシタに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタの分野に関し、特にポリマーナノファイバーの多孔質層と酸化防止剤とを含むセパレータを含む電気化学二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
ウルトラキャパシタ、スーパーキャパシタ、電気化学二重層キャパシタ(Electrochemical Double Layer Capacitor)(EDLC)、擬似キャパシタ、およびハイブリッドキャパシタとしても知られる、電気化学キャパシタは、従来型キャパシタよりかなり大きい比容量を有するエネルギー蓄積装置である。電気化学キャパシタでの電荷蓄積は、電極、典型的にはカーボンと、電解質との界面で起こる表面現象である。セパレータは電解質を吸収しそして保持し、それによって電解質と電極との密接な接触を維持する。セパレータの役割は、充電および放電の間ずっと、正極を負極から電気的に隔離することおよび電解質中のイオンの移動を容易にすることである。
【0003】
それらの電極の構造およびそれらの電解質の性質に依存して3つの異なるタイプの電気化学キャパシタ:(a)有機電解質と1000m2/g〜3000m2/gの範囲にある大きい比表面積の活性カーボン電極とを有し、かつ、静電的に動作するキャパシタ;(b)本質的に表面電気化学反応に基づいて動作する、使用される酸化物の比表面積が100m2/gである、水性電解質と遷移金属酸化物電極とを有するキャパシタ;および(c)ポリピロールまたはポリアニリンなどの導電性ポリマーの電極を有するキャパシタが存在する。
【0004】
全ての対称型電気化学キャパシタは高表面積カーボン電極を使用するが、非対称型電気化学キャパシタは通常1つの高表面積電極を有し、他の電極は次の電極−LiCoO2、NiOOH、黒鉛カーボン、RuO2などからのものである。電気化学キャパシタに使用される典型的な電解質は、水性キャパシタ向けの30〜35%KOH;非水性キャパシタ向けのアセトニトリル中1Mのテトラエチルアンモニウムフルオロボレート(TEABF4)またはプロピレンカーボネート中1MのTEABF4;および非対称型キャパシタ向けの電解質としてのカーボネート溶媒中1MのLiPF6である。電気化学キャパシタに使用される典型的なセパレータは、紙(セルロース系)またはポリエチレン、ポリプロピレン、PET、PTFE、ポリアミドなどでできたポリマーセパレータのどちらかである。
【0005】
電気化学二重層キャパシタは、電力のバーストおよび迅速な充電を必要とする用途に一般に使用され;それ故、キャパシタ内のイオン抵抗を下げること、かつ、単位容積当たりの電気容量を上げることが望ましい。セパレータのイオン抵抗が余りにも高い場合、高電流充電および放電中に、電圧降下が顕著であり、不十分な電力およびエネルギー出力をもたらすであろう。高い気孔率および低い抵抗と共に減少した厚さを有するが、依然として正極および負極を離して保つことによってその絶縁特性を維持し、こうして、自己放電に究極的につながり得る、短絡の進行を回避することができるセパレータを所有することが望ましいであろう。キャパシタセパレータは、「ソフト短絡」または「ソフトショート」と言われる、電極の1つから放出された帯電カーボン粒子の他の電極への電気泳動を妨げて自己放電の可能性を低減するべきである。かかる妨害はまた本明細書では「ソフトショートバリア」とも言われる。電気化学二重層キャパシタは、2つのカーボン電極とセパレータとが一緒に巻かれている、円筒状に巻かれたデザインで典型的には製造されるので、2つの電極間の短絡を回避するために高強度を有するセパレータが望ましい。さらに、キャパシタの電気容量はキャパシタの容積内に存在する活性物質の量に依存するので、より薄いセパレータが望ましい。
【0006】
従来型二重層キャパシタセパレータは、高温(すなわち、140℃超)または高電圧(すなわち、3V超)で安定ではない、かつ、受け入れることができない吸湿を有するウェットレイドセルロース系紙を含む。セパレータ中に存在する不純物は、より高い電圧で問題を引き起こす。微孔性ポリエチレンおよびポリプロピレンフィルムもまた使用されてきたが、望ましくもなく高いイオン抵抗と不十分な高温安定性とを有する。高い温度および電圧での安定性、一電極から他の電極への粒子の電気泳動に対する障壁、より低いイオン抵抗およびより高い強度の改善された組み合わせを持ったキャパシタセパレータを所有することが望ましいであろう。
【0007】
低抵抗電気化学キャパシタは理想的には高出力用途に適している。最終使用用途向けに高出力を提供するためにキャパシタがキャパシタの耐用期間の間ずっと低い抵抗を維持することは非常に重要である。継続的なキャパシタ性能を測定するまたは追跡する一方法は、受け入れることができないほどに高いレベルへの経時の抵抗の上昇である、抵抗上昇率である。抵抗上昇率は、時間と装置サイクル毎の回数とに対するシステムの総合安定性の関数である。この試験はDC寿命試験としても知られ、正確な操作条件(温度、セル電圧など)は、セル設計電圧およびターゲット用途に依存する。典型的には、この試験は2.5Vおよび65℃で行われるが、キャパシタが発達し、より高いレベルの性能へと押し進められつつあるので、それらの性能についての測定基準もまたより厳しくなりつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、電気化学キャパシタの領域が発達するにつれて、より良好な安定性および操作特性を示し、かつ、浸食条件での長期間使用の間ずっと抵抗のいかなる有意な上昇も示さないより良好なセパレータおよび電気化学キャパシタが絶えず必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、約50nm〜約1000nmの範囲の平均直径を有するナノファイバーの多孔質層を含むセパレータを有するキャパシタであって、前記ナノファイバーがポリアミドと酸化防止剤とを含むキャパシタを指向する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】セルロースセパレータと酸化防止剤が存在するおよび存在しないポリアミド6,6セパレータとを使った電気化学キャパシタのDC寿命試験中のセル抵抗データの比較である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に記載されるそのポリマー繊維中に酸化防止剤を含有するセパレータおよび電気化学キャパシタは、長期使用中に著しくより低い抵抗の増加を示す。
【0012】
本発明の電気化学キャパシタは、減少した厚さ、低下したイオン抵抗、および短絡に対する高い抵抗を提供する良好なソフトショートバリア性の改善された組み合わせを有するキャパシタセパレータを含む。本発明のキャパシタに有用なセパレータは、電解質溶液で飽和したときでさえもセパレータがそれらのソフトショートバリア性を失わないように、使用中に優れた構造的完全性ならびに化学および寸法安定性を維持しながら、電解質を吸収する高い容量を有する。セパレータが薄ければ薄いほど、キャパシタに使用される材料の総厚さも薄くなるので、厚さの減少は、増加した容量を有するキャパシタの製造を可能にし;それ故より多くの電気化学的に活性な材料が所与の容積中に存在することができる。本発明のキャパシタに有用なセパレータは、低いイオン抵抗を有し、それ故イオンは陽極と陰極との間を容易に流れる。
【0013】
本発明の電気化学キャパシタは、有機または非水性電解質、例えば、アセトニトリルもしくはプロピレンカーボネートおよび1MのTEABF4塩の溶液、または水性電解質、例えば、30〜40%水酸化カリウム(KOH)溶液と共にカーボンベースの電極を利用する二重層キャパシタであることができる。
【0014】
あるいはまた、本発明の電気化学キャパシタは、少なくとも1つの電極上での誘導電流反応を当てにするキャパシタであることができる。かかるキャパシタは、「擬似キャパシタ」または「レドックスキャパシタ」と言われる。擬似キャパシタは、カーボン、貴金属水和酸化物;変性遷移金属酸化物および導電性ポリマーベースの電極、ならびに水性および有機電解質を利用する。
【0015】
電気化学二重層キャパシタは、高温での安定性と、ソフトショートに対する良好なバリア性とより低いイオン抵抗との改善された組み合わせを有するポリマーナノファイバーセパレータを使用して製造できることが分かった。本発明に従って製造されたセパレータは、カレンダー掛けして小さい細孔径、薄い厚さ、良好な表面安定性および高い強度を得ることができる。本セパレータは高温で安定であり、こうして高温乾燥プロセスに耐えることができる。
【0016】
本発明のキャパシタは約50nm〜約1000nm、さらには約50nm〜約500nmの範囲の平均直径を有するポリマーナノファイバーの少なくとも1つの多孔質層を含むセパレータを含む。用語「ナノファイバー」は、1,000ナノメートル未満の直径を有する繊維を意味する。これらの範囲の直径を有する繊維は、高い表面積のセパレータ構造を提供し、それは、増加した電解質接触のために良好な電解質吸収および保持をもたらす。本セパレータは約0.01μm〜約10μm、さらには約0.01μm〜約5μm、さらには約0.01μm〜約1μmの平均流細孔径を有する。本セパレータは約20%〜約90%、さらには約40%〜約70%の気孔率を有する。セパレータの高い気孔率はまた、本発明のキャパシタにおいて良好な電解質吸収および保持を提供する。
【0017】
本発明のキャパシタに有用なセパレータは約0.1ミル(0.0025mm)〜約5ミル(0.127mm)、さらには約0.1ミル(0.0025mm)〜約3ミル(0.0762mm)の厚さを有する。本セパレータは、陰極と陽極との間でイオンの良好な流れを可能にしながら正極と負極とのソフト短絡を防ぐのに十分に厚い。薄いセパレータは、セル内側に電極のためのより多くの空間を生み出し、こうして本発明のキャパシタの改善された性能および寿命を提供する。
【0018】
本セパレータは約1g/m2〜約30g/m2、さらには約5g/m2〜約20g/m2の坪量を有する。セパレータの坪量が余りにも高い、すなわち、約30g/m2より上である場合、イオン抵抗は高すぎる可能性がある。坪量が余りにも低い、すなわち、約1g/m2より下である場合、セパレータは正極と負極との短絡を低減することができない可能性がある。
【0019】
本セパレータは約80cfm/ft2(24m3/分/m2)未満、さらには約25cfm/ft2(7.6m3/分/m2)未満、さらには5cfm/ft2(1.5m3/分/m2)未満のFrazier通気度を有する。セパレータは、メタノール中2Mの塩化リチウム電解質溶液において約5オーム−cm2未満、さらには2オーム−cm2未満、さらには1オーム−cm2未満のイオン抵抗を有する。
【0020】
本発明のキャパシタに使用するためのエレクトロブローイングナノファイバー用に有用なポリマーは、ポリアミド(PA)、好ましくはポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリフタルアミド(高温ポリアミド)およびそれらの任意の組み合わせまたはブレンドからなる群から選択されるポリアミドである。
【0021】
電気化学キャパシタ性能の所望の改善を達成するために、酸化防止添加剤がポリアミドに対して約0.01〜約5重量%、特に好ましくは約0.05〜約3重量%の濃度でナノファイバーポリマー用の安定剤として使用される。特に良好な結果は、酸化防止剤の濃度が使用されるポリアミドに対して約0.1〜約2.5重量%にある場合に達成される。
【0022】
本発明のキャパシタに使用するためのセパレータのナノファイバー層の製造方法が、参照により本明細書によって援用される、国際公開第2003/080905号パンフレット(米国特許出願第10/822,325号明細書)に開示されている。酸化防止安定剤は好ましくは、紡糸されるポリマーと一緒に紡糸液中へ組み込まれるが、溶解前にポリマー中へ前もってまた組み込まれてもよい。
【0023】
本発明のために有用である酸化防止剤には、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)(Irganox 1098)などのフェノール系アミド;様々な変性ベンゼンアミン(例えば、Irganox 5057)などのアミン;エチレンビス(オキシエチレン)ビス−(3−(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)−プロピオネート(Irganox 245)などのフェノール系エステル(全てがCiba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,NY)から入手可能である);Polyad 201(Ciba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,NY)から)として入手可能な、ヨウ化第一銅、ヨウ化カリウム、およびオクタデカン酸の亜鉛塩の混合物、ならびにPolyad 1932−41(Polyad Services Inc.(Earth City,MO)から)として入手可能な、酢酸第二銅、臭化カリウム、およびオクタデカン酸のカルシウム塩の混合物などの有機または無機塩;1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、N,N’’’−[1,2−エタン−ジイル−ビス[[[4,6−ビス−[ブチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]イミノ]−3,1−プロパンジイル]]ビス[N’,N’’−ジブチル−N’,N’’−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)(Chimassorb 119 FL)、1,6−ヘキサンジアミン、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとのN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−ポリマー、N−ブチル−1−ブタンアミンとN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物(Chimassorb 2020)、ならびにポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]−1,6−ヘキサンジイル[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]])(Chimassorb 944)などのヒンダードアミン(全てがCiba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,NY)から入手可能である);2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキシキノリン(Chemtura Corporation(Middlebury,CT,06749)の子会社であるCrompton CorporationのUltranox 254)などの高分子ヒンダードフェノール;ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Chemtura Corporation(Middlebury,CT,06749)の子会社であるCrompton CorporationのUltranox 626);およびトリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスファイト(Ciba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,NY)のIrgafos 168)などのヒンダードホスファイト;3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(Ciba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,NY)から入手可能な、Fiberstab PA6)、ならびにそれらの組み合わせおよびブレンドが含まれる。
【0024】
本発明の一実施形態では、キャパシタセパレータは、プロセスを通して移動収集手段のワンパスによって、すなわち、紡糸パック下の移動収集手段のワンパスで製造されたナノファイバー単層を含む。繊維ウェブが、同じ移動収集手段一面に同時に走る1つ以上の紡糸ビームによって形成できることはよく理解されるであろう。
【0025】
本発明の紡糸したままのナノウェブは、本明細書と同日付け出願の、その全体を参照により本明細書に援用される、同時係属米国特許出願第 号明細書(「Solvent Stripping Process Utilizing an Antioxidant」という表題の、代理人整理番号TK4635)に開示されている方法に従って、熱風および赤外放射線を使った溶剤ストリッピングゾーンを通してウェブを運ぶことによって乾燥させることができる。
【0026】
本発明の紡糸したままのナノウェブは、2006年9月20日出願の、その全体を参照により本明細書に援用される、同時係属米国特許出願第11/523,827号明細書に開示されているように、所望の物理的特性を本発明の布に付与するためにカレンダー掛けすることができる。
【0027】
本発明のキャパシタに有用なセパレータは、ポリマーナノファイバーの単層または多層のどちらかを含むことができる。セパレータが多層を含むとき、多層は、同じプロセス内で紡糸パック真下の移動収集ベルトの多数回パスによって形成される同じポリマーの微細繊維の層であることができる。あるいはまた多層は、異なるポリマー微細繊維の層であることができる。多層は、厚さ、坪量、細孔径、繊維サイズ、気孔率、通気度、イオン抵抗および引張強度を含むが、それらに限定されない、異なる特性を有することができる。
【0028】
試験方法
以下に続く非限定的な実施例において、次の試験方法が、様々な報告される特性および性質を測定するために用いられた。「ASTM」は、米国材料試験協会(American Society of Testing Materials)を意味する。「ISO」は、国際標準化機構(International Standards Organization)を意味する。「TAPPI」は、パルプ製紙業界技術協会(Technical Association of Pulp and Paper Industry)を意味する。
【0029】
ウェブの坪量は、参照により本明細書によって援用される、ASTM D−3776によって測定し、g/m2単位で報告した。
【0030】
気孔率は、g/m2単位のサンプルの坪量をg/cm3単位のポリマー密度でおよびマイクロメートル単位のサンプル厚さで割り、100を掛け、次に100%から差し引くことによって計算した、すなわち、パーセント気孔率=100−坪量/(密度・厚さ)×100である。
【0031】
繊維径は次の通り測定した。10の走査型電子顕微鏡(SEM)は5,000回画像形成する。各ナノファイバー層サンプルが拡大された。11個の明らかに識別できるナノファイバーの直径を写真から測定し、記録した。欠陥(すなわち、ナノファイバーの塊、ポリマー滴、ナノファイバーの交差点)は含めなかった。各サンプルについての平均(中間)繊維径を計算した。
【0032】
厚さは、参照により本明細書によって援用される、ASTM D1777によって測定し、ミル単位で報告し、マイクロメートルに変換する。
【0033】
有機電解質におけるイオン抵抗は、イオンの流れに対するセパレータの抵抗の尺度であり、次の通り測定した。サンプルを小さい試験片(1.5cm直径)にカットし、メタノール中LiCl電解質の2M溶液に浸漬した。セパレータ抵抗は、Solartron 1252 Frequency Response Analyzer(周波数応答分析装置)およびZplotソフトウェアと一緒にSolartron 1287 Electrochmical Interface(電気化学インターフェース)を用いて測定した。測定は、10mVのAC振幅および10Hz〜500,000Hzの周波数範囲で行った。Nyquistプロットにおける高周波切片がスペーサー抵抗(オーム単位)であった。セパレータ抵抗(オーム)に電極面積(0.3165平方cm)を掛けてオーム−cm2単位でのイオン抵抗を測定した。
【0034】
MacMullin数(Nm)は無次元数であり、セパレータのイオン抵抗の尺度であり、電解質で満たしたセパレータサンプルの固有抵抗対等体積の電解質単独の固有抵抗の比と定義される。それは、
Nm=(Rセパレータ×A電極)/(ρ電解質×tセパレータ
によって表され、
式中、Rセパレータはオーム単位でのセパレータの抵抗であり、A電極はcm2単位での電極の面積であり、ρ電解質はオーム単位−cmでの電解質の固有抵抗であり、tセパレータはcm単位でのセパレータの厚さである。25℃でのメタノール中2MのLiClの固有抵抗は50.5オーム−cmである。
【0035】
Frazier通気度は多孔質材料の通気性の尺度であり、ft3/分/ft2の単位で報告する。それは、水の0.5インチ(12.7mm)の差圧で材料を通リ抜ける空気流れの体積を測定する。オリフィスを真空システムに取り付けてサンプルを通り抜ける空気の流れを測定可能な量に制限する。オリフィスのサイズは材料の気孔率に依存する。Frazier透過度は、較正オリフィスのSherman W.Frazier Co.の二重マノメータを用いてft3/分/ft2の単位で測定し、m3/分/m2の単位に換算する。
【0036】
平均流細孔径は、毛管流ポロシメータ(モデル番号CFP−34RTF8A−3−6−L4、Porous Materials,Inc.(PMI)(Ithaca、N.Y.))を用いてASTM Designation F316からの自動化バブルポイント法を用いることによって0.05m〜300μmの細孔径直径を持った膜の細孔径特性を近似的に測定するASTM Designation E1294−89、「Standard Test Method for Pore Size Characteristics of Membrane Filters Using Automated Liquid Porosimeter」に従って測定した。個々のサンプル(8、20または30mm直径)を低表面張力流体(16ダイン/cmの表面張力を有する1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロペン、すなわち「Galwick」)で湿らせた。各サンプルをホルダに入れ、空気の差圧をかけ、流体をサンプルから除去した。湿潤流れが乾燥流れ(湿潤溶剤なしの流れ)の半分に等しくなる差圧を用いて、提供されたソフトウェアを使用して平均流細孔径を計算する。
【実施例】
【0037】
サンプル調製
本発明のキャパシタに有用なキャパシタセパレータを以下の実施例においてより詳細に説明する。国際公開第2003/080905号パンフレットに記載されているようなエレクトロブローイング装置を用いて以下の実施例に記載されるような微細繊維セパレータを製造した。
【0038】
ナノファイバーの層を、ギ酸(Kemira Oyj(Helsinki,Finland)から入手可能な)中の24重量パーセントでの1.14g/cm3の密度を有するDuPontポリアミド66−FE 3218ポリマー(E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,Del)から入手可能な)の溶液をエレクトロブローイングすることによって製造した。ナノファイバー層サンプルを、紡糸パック下の移動収集ベルトのワンパス(ナノファイバー単層を形成する)または多数回パス(ナノファイバー多層を形成する)のどちらかで、移動収集ベルト上へ繊維を直接堆積させることによって形成した。
【0039】
紡糸したままのナノウェブを、熱風および赤外放射線を使った溶剤ストリッピングゾーンを通してウェブを運ぶことによって乾燥させ、所望の物理的特性を本発明の布に付与するためにカレンダー掛けする。
【0040】
2032コイン電池組立
2032コイン電池部品(ケース、キャップ、ガスケット、波形バネ、スペーサディスク)は、日本のHohsenによって製造され、Pred Materials(New York,USA)から購入した。部品は全て、それらをきれいにするために超高純水中で超音波処理し、次に、アルゴン雰囲気で操作される不活性グローブボックス(Vacuum Atmosphere Company(Hawthorne,CA))の副室中で乾燥させた。カーボン電極は、アルミニウム電流コレクタ上にコートされた商用グレード電極であった。特に明記しない限り、電極を直径0.625インチのパンチで打ち抜き、次に真空中90℃で18時間乾燥させた。電極試験片を乾燥後に天秤で秤量した。セパレータ試験片を直径0.75インチのパンチで打ち抜き、次に真空中90℃で18時間乾燥させた。グローブボックス中の大きい副室を、電極およびセパレータを乾燥させるために使用した。セパレータ電解質(アセトニトリル中のDigirena 1M TEABF4)はHoneywell(Morristown,NJ)から入手し、電解質中の含水率は10ppm未満であった。
【0041】
コイン電池組立を、グローブボックス内でHohsenクリンパーを使って行った。ガスケットをキャップに押し込むことによってPPガスケットを最上部キャップに取り付ける。カーボン電極の一試験片をコイン電池ケースの中に入れ、プラスチックピペットを用いて4滴の電解質を加える。セパレータの2層を次に湿った電極の最上部上に置き、これに他のカーボン電極が続く。電極およびセパレータが両方とも完全に湿るのを確実にするためにさらに4滴の電解質を加える。当業者は、材料とセパレータの厚さとが両方ともコイン電池装置の全体機能性に影響を及ぼすことなくかなり変わり得ることを認めるであろう。スペーサディスクをカーボン電極の上に置き、これに波形バネおよびガスケット付きキャップが続く。全体コイン電池サンドイッチを、Hohsen製の手動コイン電池クリンパーを用いて波形にする。波形にしたコイン電池を次に取り出し、過剰の電解質を拭き取り、電池を、さらなる順化および電気化学試験のためにグローブボックスから取り出した。
【0042】
DC寿命試験
DC寿命試験は、電気化学キャパシタおよびその構成要素の長期性能および安定性を測定するための促進試験である。この試験では、電池を環境室(ESPEC(Hudsonville,MI)製の)中に65℃で保管し、電池を長期間2.5Vで維持し、抵抗、電気容量およびガス発生を時間に対して監視する。時間の関数としての抵抗上昇率を、電気化学キャパシタの寿命を特徴づけるために用いる。抵抗のより小さい増加は、より長い寿命のキャパシタに相当し、逆もまた同様である。サイクリング試験、抵抗測定およびDC寿命試験は全て、MITS PROソフトウェアで作動するArbin(College Station,TX)8チャネルMSTATポテンシオスタットを用いて行った。
【0043】
2032コイン電池を、10mA電流で0.75V〜2.5Vの間で5サイクルそれらを循環させることによって順化させる。初期セル抵抗を、電池を順化させた後に測定する。完全に充電した電池を、10msec間高電流パルス(約100mA)でそれをスパイクする前に15分間そのままの状態にした。セル抵抗を、オームの法則を用いて電圧降下とパルス電流とから計算する。DC寿命試験の間ずっと、電池をESPEC(Hudsonville,MI)環境室中に65℃で保管し、セル電圧を2.5Vに維持した。セル抵抗を、上記の電流遮断法を用いて8時間毎に測定した。
【0044】
比較例A
比較例Aは、ニッポン高度紙工業株式会社(NKK)(日本)によって製造された市販品である。この紙セパレータは14.5gsmの坪量を有し、典型的には電気化学二重層キャパシタ用のセパレータとして使用される。NKKセパレータの特性を表1に挙げる。
【0045】
比較例B
比較例Bは、上述のように、しかし酸化防止剤を添加しないで製造されたマスター不織ウェブに由来した。生じたマスター不織ウェブは、繊維が267ナノメートルの平均繊維径を有して、17g/m2の坪量を有した。このナノファイバーセパレータの特性を表1に挙げる。
【0046】
実施例1
本実施例は、ポリマーの重量を基準にして、1重量パーセントの酸化防止剤、Irganox 1098(Ciba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,NY)から入手可能な)を紡糸液に添加した以外は、比較例Bのマスター不織ウェブと同じ方法で製造されたマスター不織ウェブに由来した。生じたマスター不織ウェブは、繊維が400ナノメートルの平均繊維径を有して、16g/m2の坪量を有した。このナノファイバーセパレータの特性を表1に挙げる。
【0047】
表1

【0048】
2032コイン電池を比較例A、Bおよび実施例1サンプルで製造した。全ての電池を順化させ、次にDC寿命試験で試験して電気化学キャパシタの長期性能を測定した。全3サンプルについての抵抗上昇率を図1に示されるように監視した。(DC寿命試験における240時間後の)結果を表2に報告する。
【0049】
表2

【0050】
比較例Bの非安定化ポリアミド6,6セパレータは、DC寿命試験中に比較例Aの35ミクロンNKK紙セパレータと比較したときに抵抗のより高い増加を示す。しかしながら、実施例1の1%酸化防止剤入りのポリアミド6,6セパレータは、両比較例よりも著しく低い、抵抗の非常に小さい増加を有した。これはまた図1にも明示される。セル抵抗のより低い増加は、長持ちする高出力電気化学キャパシタを示す。
【0051】
本発明は様々な具体的な実施形態に関して記載されてきたが、様々な修正が本開示から明らかであろうし、次のクレームの範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約50nm〜約1000nmの範囲の平均直径を有するナノファイバーの多孔質層を含むセパレータを有するキャパシタであって、前記ナノファイバーがポリアミドと酸化防止剤とを含むキャパシタ。
【請求項2】
前記セパレータが約0.01μm〜約10μmの平均流細孔径、約0.1ミル(0.0025mm)〜約5ミル(0.127mm)の厚さ、約1g/m2〜約30g/m2の坪量、約20%〜約90%の気孔率、約80cfm/ft2(24m3/分/m2)未満のFrazier通気度および約2〜約15のMacMullin数を有する請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記セパレータがメタノール中2モルのLiCl電解質溶液において約0.1オーム−cm2〜約5オーム−cm2のイオン抵抗を有する請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項4】
前記ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,12、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、半芳香族ポリアミドおよびそれらのブレンドまたは組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項5】
前記酸化防止剤が前記ポリアミドの約0.01重量%〜約5重量%のレベルで存在する請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項6】
前記酸化防止剤が、フェノール系アミド、ヒンダードフェノール、フェノール系エステル、銅の有機または無機塩、ヒンダードアミン、高分子ヒンダードフェノール、ヒンダードホスファイト、ならびにそれらの組み合わせおよびブレンドからなる群から選択される請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項7】
DC寿命試験中の抵抗上昇が50%未満である請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項8】
DC寿命試験中の抵抗上昇が20%未満である請求項1に記載のキャパシタ。

【図1】
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【公表番号】特表2011−503880(P2011−503880A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533270(P2010−533270)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082765
【国際公開番号】WO2009/062014
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】