改良地盤、改良地盤の造成方法、地下付建築物及び地下付建築物の建築方法
【課題】より高強度の改良地盤および改良地盤の造成方法を提供してより高品質の居住地域開発を可能にすること。
【解決手段】造成地内の所定位置に構築された地盤構造体と、当該地盤構造体の周囲の土質の地盤である土質地盤部とを有する改良地盤であり、地盤構造体は、所定位置に設けられた底盤と、当該底盤の上に立設された構造の壁体とを有し、当該壁体は、その上端に、土質地盤部の地表面よりも上方に突出する地盤突出部を備え、壁体のうちの少なくとも一部の壁体は、底盤が壁体の両側に広がる状態になる位置に配置された強化型壁体であり、底盤の、当該強化型壁体の基部からの広がり幅は、当該強化型壁体の高さ以上の長さであり、地盤構造体は、上方に開口を有する複数の地下空間を備え、各地下空間は、壁体で構成された囲み構造に囲まれており、各囲み構造は、一部が強化型壁体で構成されている改良地盤である。
【解決手段】造成地内の所定位置に構築された地盤構造体と、当該地盤構造体の周囲の土質の地盤である土質地盤部とを有する改良地盤であり、地盤構造体は、所定位置に設けられた底盤と、当該底盤の上に立設された構造の壁体とを有し、当該壁体は、その上端に、土質地盤部の地表面よりも上方に突出する地盤突出部を備え、壁体のうちの少なくとも一部の壁体は、底盤が壁体の両側に広がる状態になる位置に配置された強化型壁体であり、底盤の、当該強化型壁体の基部からの広がり幅は、当該強化型壁体の高さ以上の長さであり、地盤構造体は、上方に開口を有する複数の地下空間を備え、各地下空間は、壁体で構成された囲み構造に囲まれており、各囲み構造は、一部が強化型壁体で構成されている改良地盤である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良地盤、改良地盤の造成方法、地下付建築物及び地下付建築物の建築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地下室付きの住宅を建てる際、地下室の壁と基礎とが一体になった基礎構造がある(特許文献1参照)。
そして、敷地に複数の基礎を独立させて構築し、各基礎にそれぞれ住宅を建築する構造が知られている(特許文献2参照)。
【0003】
また、一部が地中に埋設された居住用のコンクリート製布基礎が所定空間を囲む状態で配置され、所定空間内が地表面から下方に掘削され、掘削された底面にプレキャストコンクリート版が設置された住宅の基礎を兼用する地下工作物がある(特許文献3参照)
さらに、耐震壁構造のボックス型ユニットの複数個を住宅建設現場で地下を含めて縦方向に積み重ね、その積み重ねユニット同士を相互に固定接合して建設された地下室付きの鉄骨造りユニット式住宅がある(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−32320号公報
【特許文献2】特開2010−047907号公報
【特許文献3】特開平6−272264号公報
【特許文献4】特開2002−356930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の住宅等の建築物を建築する場合は、通常、各建築物毎に建築計画が立てられ、それぞれ基礎工事から始まる建築工事が進められる。もっとも、いわゆる長屋やアパートのような集合住宅の建築は、複数の住宅を一度に建築することになるが、この場合、集合住宅全体が一つと建築物である。従って、建築物毎に建築が進められる点では、先に説明した場合と同様である。
ところで、建築物の基礎については、基礎工事着工前に地盤調査を行い、必要に応じて地盤改良等が行われることがある。ところが、各建築物の建築は、個々に進められるものであり、地盤改良できる範囲は限られる。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、複数の住宅等の建築物を建築する場合に、より高強度の改良地盤および改良地盤の造成方法を提供してより高品質の居住地域開発を可能にすることを目的とするものである。また、より高品質の居住地域開発を可能にするという共通の目的で、このような改良地盤に建築された地下付建築物及びその建築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係る発明は、造成地内の所定位置に構築された地盤構造体と、当該地盤構造体の周囲の土質の地盤である土質地盤部とを有する改良地盤であり、前記地盤構造体は、前記所定位置に設けられた底盤と、当該底盤の上に立設された構造の壁体とを有するものであり、当該壁体は、その上端に、前記土質地盤部の地表面よりも上方に突出する地盤突出部を備えているものであり、前記壁体のうちの少なくとも一部の壁体は、前記底盤が壁体の両側に広がる状態になる位置に配置された強化型壁体であり、前記底盤の、当該強化型壁体の基部からの広がり幅は、当該強化型壁体の高さ以上の長さであり、前記地盤構造体は、上方に開口を有する複数の地下空間を備えており、各地下空間は、前記壁体で構成された囲み構造に囲まれており、各囲み構造は、少なくとも一部が前記強化型壁体で構成されていることを特徴とする改良地盤である。
【0008】
本発明に係る改良地盤は、上方に開口した地下空間を備えた地盤である。従って、地下空間の上に建築物を建築する際、地下無しの建築物と同様の工程で、容易に地下空間利用可能な建築物を建築することができる。この改良地盤は、多様な建築物を建築できる汎用性に優れた地盤である。
また、地盤構造体は、一部の壁体が強化型壁体で構成されており、高強度化が図られている。従って、建築物を建築するための地盤として好適である。
さらに、地盤構造体は、各地下空間を囲む複数の囲み構造を備えており、囲み構造は、それ自体強固な構造である。そして、コンクリート構造であればより強固な構造になる。しかも、囲み構造を構成する壁体は、少なくとも一部が強化型壁体になっている。このような地盤構造体が用いられた改良地盤は、極めて強固な地盤である。なお、建築物が建築された状態で地盤構造体を含む改良地盤に加わる力の状態からすると、囲み構造の数は、2つではなく、直接隣り併せにならない囲み構造が生じる3つ以上がより好ましいと考えられる。
【0009】
地表面から突出した前記囲み構造の地盤突出部は、建築物の土台の設置場所として使用可能なものであり、前記地盤構造体は、複数の囲み構造を備え、各囲み構造に囲まれた地下空間の上方に位置するように建築物の建築が可能になっている。
【0010】
地盤構造体の囲み構造は、建築物の土台を設置可能な、例えばコンクリート構造の地盤突出部を備えている。従って、本発明に係る改良地盤に建築物を建築するのであれば、基礎工事を行う必要がない。つまり、基礎工事なしで、例えば、地盤突出部の上に土台を設置するところから建築工事を開始することができる。基礎工事を省くことができれば、短工期かつ低コストで建築を行うことができる。また、強固な地盤構造体の地盤突出部に直接土台を固定できれば、堅牢な支持状態の建築物を建築することができる。
【0011】
前記底盤は、各囲み構造で囲まれた範囲の面積である囲み面積のうちで最も広い最大囲み面積よりも、前記底盤の総面積から当該最大囲み面積を除いた外側面積の方が広くなる大きさである。
【0012】
一般的な建築方法では、まず基礎を設置してその上に建築物を建築する。この場合、設置可能な基礎の大き(面積)には限界がある。この点、本発明に係る改良地盤であれば、建築する建築物の占有面積の外側に広く広がった大型かつ強固な地盤構造体の上に、建築物を建築することができる。
【0013】
前記強化型壁体は、延在方向が直線である。直線に延在する強化型壁体は、その上端の地盤突出部も直線に延在しており、土台の設置場所として好適である。
【0014】
前記囲み構造は、4つの壁体で構成されており、当該囲み形状を構成する壁体の少なくとも一つは前記強化型壁体である。4つの壁体で構成された四角形の囲み構造、特に平面視で長方形や正方形の囲み構造は、高強度である。また、囲み構造の上端の地盤突出部に土台を設置することで、四角形の土台を容易に設けることができ、建築物の土台設置場所として好適である。
【0015】
前記壁体は、前記土質地盤部に接する外壁体と、当該外壁体に囲まれた領域に配置された中壁体とを含み、当該中壁体を介して2つの地下空間が隣接配置されており、前記中壁体は、相互に隣接する地下空間のうちの一方の囲み構造の一部であると共に他方の地下空間の囲み構造の一部であり、当該中壁体は、前記強化型壁体である。
【0016】
このように、中壁体を介して2つの地下空間を隣接させて、1つの中壁体を隣接する2つの地下空間の囲み構造の両方で用いるようにすれば、建築物の土台の設置場所として好適な地盤突出部を備える囲み構造を一定の敷地内に効率よく配置することができる。従って、宅地等の土地を効率よく利用することができ、造成地全体の価値を高めることができる。
また、2つの囲み構造で用いられる中壁体が高強度な強化型壁体であることは、地盤構造体の高強度化につながり好適な構造である。
また、中壁体を設けたり壁体の一部を強化型壁体にしたりするなどして、地盤構造体の強度を高めると、地震の際など、改良地盤に予想外の大きな力が加わった場合でも地盤構造体が受けるダメージを最小限にすることができるようになり好ましい。
【0017】
前記強化型壁体は、その両端部で別の壁体に固定されており、当該別の壁体は、前記強化型壁体の両側に広がっており、当該別の壁体の、前記強化型壁体の基端部からの広がり幅は、前記強化型壁体の高さ以上の長さである。このような構造の強化型壁体は、さらに高強度であり、地盤構造体の構造としてより好適である。
【0018】
前記改良地盤は、改良地盤内部から造成地外に水を排出させる排水構造を設置する排水構造を備えており、当該排水構造は、前記地盤構造体の地下空間内の水の排出に用いられる排水部と、当該排水部を経て地盤構造体の外に流出した水を、排水先に流動させる導水路とを備えており、前記排水部は、前記各地下空間に対応して前記地盤構造体に複数形成されており、前記導水路は、前記土質地盤部に埋設されている。
【0019】
このような排水構造があれば、造成完了から建築着工までの待機期間中に地下空間に降り込んだ雨水などの水を地盤構造体の外に確実に排出できるので、地盤管理が容易である。また、長期的に見れば、地盤の強度維持に貢献するものである。改良地盤内部とは。土質地盤部表面より下の地中内部のことである。
【0020】
前記排水構造は、さらに、前記地盤構造体の周辺の土に含まれる水の取り込みを可能にする貫通孔を備えた集水管を備えており、当該集水管は、前記土質地盤部に埋設されており、前記土質地盤部は、前記集水管の上側を覆う透水層と、当該透水層の上側を覆う盛土部とを有しており、前記導水管は、前記集水管に取り込まれた水を、前記排水先に流動させるものである。
【0021】
このような排水構造があれば、地中すわなち土質地盤部の中の水を効率的に排出することができるので、地下水位の上昇がより確実に抑制され、地下水位上昇に起因する浮力が発生することをより確実に防止することができる。浮力が影響しない地盤は建築物の地盤として好適である。特に、集水管の周囲に砕石層などの透水層を配置した構成にすると、より効率的に集水することができ、しかも集水管の貫通孔の目詰まりをより確実に防止することができ、浮力の発生がより確実に防止される。
【0022】
前記排水部は、前記排水に用いられる排水路を確保するためのものであり、当該排水路を閉塞状態にすることによって水の排出が阻止される止水状態にすることが可能になっており、排水部を止水状態にして地下空間に貯水することが可能である。
【0023】
上述したように、本発明に係る改良地盤は、地下水位上昇に起因する浮力の発生をより確実に防止できる構造であるが、例えば多量の降水があった場合など、一時的に地下水位が上昇する可能性がある。特に、本発明のように、建築物の基礎ではない改良地盤の場合、地盤造成完了から建築着工までの待機期間が長期かするおそれがあり、降水などの影響を受ける確率が高まる。この点、排水部が止水状態にできるものであれば、排水部を止水状態にして地下空間に貯水しておけば、浮力に対抗するための重力方向の荷重を地盤構造体に付与することができ、仮に浮力を受ける状況になったとしても、浮力が地盤構造体に及ぶことがない。また、貯水による荷重付与であれば、排水部を通水状態にして排水することで、容易に荷重付与状態を解除することができるという利点がある。また、排水作業が容易であれば、建築着工が決まった後、着工するまでに煩雑な作業を行う必要もないので、迅速に建築に着工できる。
また、地盤構造体はコンクリート構造であるが、コンクリート構造はダムの擁壁などとしても用いられている材料であり、耐水圧性や保水性に優れている。従って、本発明に係る改良地盤の地盤構造体は貯水するための構成としても好適である。
【0024】
前記各地下空間は、直方体形状であり、高さが1.5メートル以上である。
改良地盤の造成が完了し、最終的に地盤構造体上に建築物が建築されると、地盤構造体は建築物の重量に起因する重力を受ける状態になる。このようなことからすれば、地盤構造体の地下空間の容量としては、地盤構造体の囲み構造の上に建築される建築物の重量に相当する重量の水を貯水可能な容量が好ましい。例えば、本発明に係る改良地盤は、木造建築物の地盤として好適であると考えられ、そのような検討をする中で、二階建て木造住宅が一つの基準となるとの知見を得た。二階建て木造住宅の標準的な接地圧に基づいて算出した二階建て木造住宅の1平方メートル当たりの重量は、約1.3トンであり、建築された住宅が支える家具や住人の1平方メートル当たりの重量(積載荷重)は、約0.2トン程度である。この合計値である1.5トンを基準にすると、地下空間の高さは、1.5m以上が好ましい。また、壁体上端の地盤突出部を地表面から0.3m突出させる場合に貯水した水の水面が地表面以下になるようにするためには、壁体すなわち地下空間の高さは、1.8m以上がより好ましい。
地下空間の高さが上記高さ以上であれば、二階建て住宅を建築した状態に相当する重量の水を地下空間に貯水でき、地盤構造体ひいては改良地盤に加わる接地圧を、二階建住宅を建築した状態と同等の状態にして地盤管理をすることができる。
【0025】
前記各地下空間に面する前記壁体の内面は、合成樹脂材によって被覆されたものである。側壁の内面を合成樹脂製の部材で被覆しておけば、排水後の清掃等が容易である。
【0026】
本願に係る別の発明は、上述した改良地盤に建築された建築物であって、当該建築物は、前記地盤構造体の囲み構造に囲まれた地下空間の上方に建築されており、前記囲み構造の地盤突出部に設置された土台と、当該土台を基礎として建築された床構造とを備えており、当該床構造は、建築物の一階と前記地下空間との行き来に用いられる地下出入構造を備えていることを特徴とする地下付建築物である。
【0027】
改良地盤を構成する地盤構造体の地盤突出部に直接設置された土台を用いて建築された建築物は、地盤に強固に支持されており、地盤に建築された建築物として安定性に優れている。また、囲み構造の上に建築された建築物であるので、床構造の部分に地下出入構造を備えるだけで、地下利用可能になる。通常、地下室を設けるためには、地下室を設けることを前提とした基礎を作る必要があるところ、本発明に係る改良地盤に建築した建築物は、そのような基礎工事をすることなく建築されるものであり、短工期かつ低コストで建築できる地下利用可能な建築物という点で極めて優れている。
【0028】
前記地下付建築物は、複数の囲み構造のうちの一つの囲み構造の上に建築されたものであると共に、他の囲み構造の上に建築された他の建築物と同じ地盤構造体上に建築されたものである。
【0029】
本発明に係る地下付建築物は、当該建築物の土台が設置される囲み構造の部分よりも広い面積に広がった地盤構造体の上に建築されたものである。この場合、ある地下付建築物に着目すると、当該建築物の下の囲み構造が立設された底盤には、当該建築物の重量以外に、他の建築物の重量がかかっており、しかも当該他の建築物の重量がかかる位置は、先に着目した建築物の下の囲み構造に囲まれた範囲の外側である。このような構造であれば、同じ地盤構造体上に建築された他の建築物の重量で、地盤構造体がより安定化する。このように、一つの地盤構造体の上に建築された建築物相互で、他の構造物の重量を利用することができることとなり、この点でも本発明に係る改良地盤は強固な地盤構造である。
【0030】
前記地下付建築物の下の囲み構造の地下空間と前記他の囲み構造の地下空間は隣接しており、前記地下付建築物及び前記他の建築物の相互に隣接する外壁は、前記地盤突出部又は前記基礎梁の上方に隙間を空け、且つ、地盤突出部又は基礎梁の延在方向と同じ方向に延在する状態で立設されている。
【0031】
このように、隣接する建築物の外壁が間隔を空けて立設されていれば、隣接した住宅内からの互いの騒音や振動が伝わりにくく、優れた住環境を提供できる。
【0032】
前記地盤突出部又は前記基礎梁の上方に相対向する状態で配置された前記外壁の間の隙間は閉塞されている。
【0033】
相対向して配置された外壁の間の隙間が閉塞されていれば、騒音や振動が伝わりにくい状態を維持しつつ、隙間への雨水、泥又は埃などの浸入を確実に防止することができる。
【0034】
また、本願に係るさらに別の発明は、造成地内に確保した所定位置に地盤構造体を構築する構造体構築工程と、前記地盤構造体の周囲に土質の地盤である土質地盤部を形成し、当該土質地盤部と前記地盤構造体とで構成される改良地盤を造成する地盤造成工程とを有し、前記構造体構築工程は、前記所定位置にコンクリート構造の底盤を設ける工程と、当該底盤の上にコンクリート構造の壁体を立設する工程とを有しており、前記地盤構造体は、上方に開口を有する複数の地下空間を備え、且つ当該地下空間が前記壁体で構成された囲み構造に囲まれた構造になっており、前記地盤造成工程は、前記壁体の上端が土質地盤部の地表面よりも上方に突出する状態になるように土の量を調整(供給又は排除)して土質地盤部を形成する工程であることを特徴とする改良地盤の造成方法である。
【0035】
本発明によれば、構造体構築工程によって複数の囲み構造を有する地盤構造体を構築する。つまり、囲み構造を備えた強固な地盤構造体が構築される。また、囲み構造はその内側に上方に開口を有する地下空間を有するものであるので、囲み構造の上端の地盤突起部に土台を設置することにより、地下空間の上に建築物を容易に構築できる。そして、複数の囲み構造を備えた地盤構造体上には複数の建築物を容易に建築可能である。また、通常の地下無し建築物を囲み構造に囲まれた地下空間上に建築することによって、地下空間利用可能な建築物を容易に建築することができる。このように、本発明によれば、必要に応じて地下利用可能な建築物を容易に建築できる。
【0036】
前記壁体を立設する工程は、少なくとも、前記土質地盤部に接することになる外壁体と、当該外壁体に囲まれた領域に配置された中壁体とを設ける工程であり、前記壁体のうちの少なくとも一部の壁体は、前記底盤が壁体の両側に広がる状態になる位置に配置された強化型壁体であり、前記底盤の、当該強化型壁体の基部からの広がり幅は、当該強化型壁体の高さ以上の長さであり、前記構造体構築工程は、前記複数の地下空間のいずれもが、少なくとも一部で前記強化型壁体に隣接する状態になるように、前記底盤及び壁体を設ける工程である。
【0037】
壁体を立設する際、外壁体だけでなく中壁体も設ければ、より強固な地盤構造体が構築される。さらに、一部の壁体が強化型壁体であればさらに強固な地盤構造体が構築される。このように強固な地盤は建築物建築用の地盤として好適である。
【0038】
前記壁体を立設する工程は、少なくとも、直線状に延在する前記強化型壁体を立設する工程である。直線に延在する壁体の上端の地盤突出部は、土台の設置場所として好適である。従って、改良地盤造成後、壁体の地盤突出部を利用して、迅速且つ容易に建築物を建築することができる。
【0039】
前記構造体構築工程は、各囲み構造で囲まれた範囲の面積である囲み面積のうちで最も広い最大囲み面積よりも、前記底盤の総面積から当該最大囲み面積を除いた外側面積の方が広くなるように前記底盤及び壁体を設ける工程である。
【0040】
このような地盤構造体を構築すれば、その後、囲み構造を利用して地下空間の上に位置するように建築物を建築したとき、建築物の占有面積の外側に広く広がった大型かつ強固な地盤構造体によって建築物を支持することができる。
【0041】
前記構造体構築工程は、前記囲み構造に囲まれた前記地下空間が略直方体形状になり、且つ前記囲み構造を構成する壁体の少なくとも一つが前記強化型壁体になるように、前記底盤及び壁体を設ける工程である。
【0042】
4つの壁体で構成された四角形の囲み構造、特に平面視で長方形や正方形の囲み構造を備える地盤構造体を構築すれば、より高強度なものが構築されることになる。また、このような形状の囲み構造であれば、囲み構造の上端の地盤突出部に土台を設置することで、四角形の土台を容易に設けることができ、建築物の土台設置場所として好適である。さらに、囲み形状を構成する壁体の少なくとも一つが強化型壁体であれば、囲み構造がより高強度になる。
【0043】
前記構造体構築工程は、前記中壁体を介して2つの地下空間が隣接し、且つ当該中壁体が強化型壁体になるように、前記底盤及び壁体を設ける工程である。
【0044】
中壁体を介して2つの地下空間を隣接させて、当該中壁体を隣接する2つの地下空間の囲み構造の両方で用いるようにすれば、土台設置場所として好適な地盤突出部を備えた囲み構造を一定の敷地内に効率よく確保できる。従って、宅地等の土地を効率よく利用することができ、敷地価値を高めることができる。また、2つの囲み構造で用いられる中壁体が強化型壁体とすれば、地盤として好適なより高強度の地盤構造体な構築できる。
【0045】
前記構造体構築工程で形成される強化型壁体は、両端部で別の壁体に固定されているものであり、当該別の壁体は、前記強化型壁体の両側に広がっており、当該別の壁体の、前記強化型壁体の基端部からの広がり幅は、前記強化型壁体の高さより長い。このような構造の強化型壁体は、より高強度であり、地盤構造体の構造としてより好適である。
【0046】
前記構造体構築工程は、建築物の土台を上端に設置可能な前記地盤突出部を備えた前記囲み部を複数備えた前記地盤構造体を構築する工程であり、当該地盤構造体は、各囲み構造に囲まれた地下空間の上に建築物の建築が可能なものである。
【0047】
建築物の土台を設置可能な地盤突出部を備えた地盤構造体を構築すれば、建築物を建築する際、地盤の一部である地盤突出部に、直接、土台を設置すればよく。基礎工事が不要になる。つまり、地盤突出部に土台を設置するところから建築工事を開始できる。そして、基礎工事を省くことができれば、短工期かつ低コストで建築を行うことができる。また、強固な地盤構造体の地盤突出部に直接土台を固定した構造の建築物は、堅牢な支持状態になる。
【0048】
前記地盤造成工程の前に行われる工程として、さらに、造成後の改良地盤内部から造成地外に水を排出させる排水構造を設置する排水構造設置工程を有しており、当該排水構造設置工程は、前記地盤構造体の地下空間内の水の排出に用いられる排水部を前記地盤構造体に形成する工程と、前記排水部を経て地盤構造体の外に流出した水を、排水先に流動させる導水路を設置する工程とを有しており、前記地盤構造体は、前記各地下空間に対応して形成された複数の前記排水部を備えているものである。
【0049】
排水構造を設ければ、造成完了から建築着工までの待機期間中に地下空間に降り込んだ雨水などの水を地盤構造体の外に確実に排出でき、地盤管理が容易である。また、長期的に見れば、地盤の強度維持に貢献するものである。
【0050】
前記排水構造設置工程は、前記地盤構造体の周囲の少なくとも一部に、当該地盤構造体の周辺の土に含まれる水の取り込みを可能にする貫通孔を備えた集水管を設置する工程と、当該集水管と前記導水路を構成する導水管とを接続する工程とを、さらに有しており、前記導水管は、前記集水管から流れ込んだ水を前記排水先に流動させるものである。
【0051】
このような排水構造を設ければ、地中すわなち土質地盤部の中の水を効率的に排出することができ、地下水位の上昇がより確実に抑制され、地下水位上昇に起因する浮力の発生がより確実に防止される。特に、集水管の周囲に砕石層などの透水層を配置した構成にすると、より効率的に集水でき、しかも集水管の貫通孔の目詰まりを防止できるので、排水効率が向上し浮力の発生がより確実に防止される。また、集水管は、地盤構造体を取り囲むように配置した方が排水効率が良く好ましい。
【0052】
前記排水構造設置工程で設置される前記排水部は、前記排水に用いられる排水路を確保するためのものであり、当該排水路を閉塞状態にすることによって水の排出が阻止される止水状態にすることが可能になっている。
【0053】
止水状態にすることができる排水構造を設置すれば、地下空間への貯水が可能になる。建築物の基礎と異なり、改良地盤の場合、地盤造成完了から建築着工までの待機期間が長期化することがあり、降水などの影響を受ける機会が多い。上述したように、本発明に係る改良地盤は、地下水位上昇を防止できる構造であるが、例えば多量の降水があった場合など、一時的に地下水位が上昇する可能性がないとは言えない。この点、地下空間に貯水しておけば、浮力に対抗するための重力方向の荷重を地盤構造体に付与した状態にすることができ、仮に浮力を受ける状況になったとしても、浮力が地盤構造体に及ぶことがない。また、排水部を通水状態することで容易に排水でき、容易に荷重付与状態を解除できる。排水作業が容易であれば、建築着工時期が決まり次第、迅速に排水して建築着工できる。
【0054】
前記構造体構築工程で構築される地盤構造体の各地下空間は直方体形状であり、前記地盤造成工程は、地盤構造体の底面から土質地盤部の地表面までの高さが1.5m以上になるように土の量を調整して土質地盤部を形成する工程である。木造二階建ての住宅の標準的な接地圧および住宅内の重量(積載荷重)に基づくと、1平方メートル当たりの住宅及び積載物の総重量は、約1.5トンである。これを基準にすると、地下空間の高さは、1.5m以上が好ましい。また、壁体上端の地盤突出部を地表面から0.3m突出させた場合に貯水面が地表面以下になるようにするためには、壁体すなわち地下空間の高さは、1.8m以上がより好ましい。
【0055】
前記構造体構築工程の後に行う工程として、さらに荷重付与工程を有しており、当該荷重付与工程は、貯水対象の地下空間に対応する前記排水部を止水状態にする工程と、貯水対象の地下空間に貯水する工程とを有する。
【0056】
貯水することによって、地盤構造体に、建築物が建築された状態と同様の荷重を付与することができる。例えば、地盤造成完了から建築着工までの期間が長期化する場合、貯水しておくことで、地盤構造体の状態ひいては改良地盤の状態を安定させることができる。
また、上述したように、複数の住宅等の建築物を建築する場合は、各建築物毎に建築計画が立てられるので、通常、建築工事の時期や日程はズレることになる。建築時期にズレがあると、最初の建築物の建築位置によっては、地盤構造体の底盤全体に均等に重力が加わる状態を確保することが難しい場合がある。この点、中壁体が形成されており、各囲み構造毎に貯水するか否かを選択できれば、建築時期にズレが生じたとしても、適宜の地下空間に貯水することで、改良地盤の状態をより安定な状態にすることができる。つまり、各建築物の建築時期を選択の自由度を向上させることができる。
【0057】
前記造成工程の後に行う工程として、さらに、前記土質地盤部の地表面を外気に晒した状態で改良地盤を養生する改良地盤養生工程を有する。
【0058】
改良地盤の造成では、盛土を用いることが少なくない。このような場合、地盤についても養生が必要な場合がある。この点、本発明に係る造成方法は、造成完了から建築着工までの期間が長期化しても対応できるものであり、地盤養生期間を容易に確保できる。つまり、高強度の改良地盤をより確実に提供することができる。
【0059】
前記構造体構築工程の前に行われる工程として、造成地の少なくとも一部を削る掘削工程を、さらに有しており、前記造成工程で土質地盤部を形成する際に用いられる盛土の少なくとも一部は前記掘削工程で生じた切土である。
【0060】
掘削工程で生じた切土を造成工程で必要な盛土として使用すれば、切土の廃棄や盛土の搬入出の手間が軽減され、造成工事の工期の短縮をも図ることができる。
【0061】
また本願に係るさらに別の発明は、上述した改良地盤の前記地盤構造体又は上述した造成方法によって造成された改良地盤の前記地盤構造体の上に建築物を建築する地下付建築物の建築方法であって、少なくとも、前記改良地盤に前記土台を設置する土台工程と、当該土台の上に柱を立設する柱工程と、前記土台に支持された床構造を設ける床工程と、前記地下空間の上方に居住空間を建築する工程と、前記地下空間を利用可能にするための地下空間工事工程とを有しており、前記土台が設置される位置は、前記改良地盤の一部である前記地盤構造体の前記地盤突出部であり、前記地下空間工事工程は、建築物の一階と前記地下空間との行き来に用いられる地下出入構造を前記床構造に設ける工程を有する、地下付建築物の建築方法である。
【0062】
本発明の建築方法では、改良地盤を構成する地盤構造体の地盤突出部の上に柱を立設できるので、迅速に建築着工することができ、改良地盤に強固に支持された建築物を建築できる。また、地盤構造体の地下空間との入出に用いる入出部を設けるので、地盤構造体の地下空間を地下室等の地下空間として有効活用することができる。
【0063】
前記土台工程は、前記地盤構造体の複数の地下空間のうちの少なくともいずれか一つの地下空間の上に建築済み又は建築中の先行建築物が存在する状態で行われる工程であり、前記地下付建築物を建築する際、前記改良地盤に対して前記土台工程が行われる。
【0064】
複数の建築物の建築が可能な地盤構造体上に建築物を建築する場合、建築物毎に建築時期がズレることがある。この場合、建築する順番によって建築条件が異なってくる。例えば二番目以降の建築物を建築する場合は、近隣の地下空間の上に、先に建築着工された建築中又は建築済みの建築物が存在する場合がある。このような場合、先に着工された建築物の状態を考慮して、基礎工事のスケジュール等を決めなければならなくなる場合がある。この点、本発明に係る建築方法では、地盤構造体の地盤突出部の上に土台を設置でき、基礎工事が不要であるので、迅速に建築着工することができ、しかも改良地盤の地盤構造体に強固に支持された建築物を建築できる。
【0065】
前記地下付建築物の建築の着工の際に行う工程として、さらに建築準備工程を有しており、当該建築準備工程は、前記地下空間の貯留水の有無を確認する工程と、確認された貯留水のうちの排出対象の貯留水が貯留された地下空間に対応する前記排水部を止水状態から通水状態にして当該排出対象の貯留水を排出させる工程とを有する。
【0066】
建築着工する際、地盤構造体の地下空間に貯留水があれば、排出対象の貯留水が貯留された地下空間に対応する排水部を通水状態にすることで、迅速に排出対象の貯留水を排出させることができ、容易に建築着工可能な状態にすることができる。つまり、建築着工時期を自由に決定することができる。
【発明の効果】
【0067】
本願の発明に係る改良地盤および別の発明に係る造成方法により造成された改良地盤によれば、上述したように、容易に地下空間利用可能な建築物を建築することができる高品質の改良地盤である。また、地盤構造体は、一部の壁体が強化型壁体で構成されており高強度である。このように、本発明によれば、高品質の改良地盤を造成することができる。
また、本願の別の発明に係る地下付建築物および別の発明に係る建築方法によって建築された地下付建築物は、改良地盤の地盤構造体に直接支持されており、支持状態安定性が優れた高品質の建築物である。
また、本願発明に係る建築物の建築方法によれば、改良地盤を構成する地盤構造体の地盤突出部の上に直接土台を設置でき、迅速に建築着工することができる。
このように、本願に係る発明によれば、より高品質の居住地域開発を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る造成方法で造成された造成地を示す平面図である。
【図2】図1に示される造成地の改良地盤の地盤構造体Dを含む部分を示す拡大平面図である。
【図3】図2に示される改良地盤X1-X1断面を示す部分拡大断面図である。
【図4】図2に示される改良地盤のY1-Y1断面を示す部分拡大断面図である。
【図5】(A)は改良地盤の造成方法の要部のフローチャートであり、(B)は建築方法の要部のフローチャートである。
【図6】図1に示される改良地盤の造成手順を説明するための説明図である。
【図7】図2に示される地盤構造体Dに住宅を建築した状態を示す説明図である。
【図8】図7に示される造成地のZ-Z断面を示す拡大部分断面図である。
【図9】図8に示されるX2-X2断面を示す断面図である。
【図10】図8に示されるY2-Y2断面を示す断面図である。
【図11】隣接する住宅の外壁の状態を示す水平断面部分拡大図である。
【符号の説明】
【0069】
10,1 0a,10b…二階建て木造戸建て住宅(建築物)、20,20a,20b…地下空間(内部空間)、
21…底盤(連続底盤)、21a〜21d…地下空間(内部空間)、
22…壁体(地下壁)、23…外壁体、23a〜23d…外壁体、24…中壁体、24a〜24c…中壁体、
221〜224…外壁体(地下壁)、225〜227…中壁体(地下壁)。
25a〜25d…囲み構造、26…地盤突出部、26a…モルタル層、27…表面部材、
28…排水部、28a…貫通穴、28b…排水筒部、
30,30a,30b…住宅本体、301…土台、302…大引き、303…根太、304…床材、
305…壁材、306…外壁材、Mb…土台、
40…排水構造、41…導水管(導水路)、42…中継管、44…透水層、
A〜D…地盤構造体、E…土質地盤部、Em…盛土部、G…改良地盤、H…壁体の高さ、
U1a,U1b…底盤の広がり幅、U2a,U2b…外壁体の広がり幅
V1…測定方向、R…線路、S…造成地
【発明を実施するための形態】
【0070】
次に、本願発明に係る改良地盤、その造成方法、造成された改良地盤に建築される建築物およびその建築方法の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0071】
図1に示されるように、造成地Sには、4戸の戸建住宅が並ぶA群と、5戸の戸建住宅が並ぶB群と、7戸の戸建住宅が並ぶC群と、4戸の戸建住宅を並べて建築可能なD群とがある。なお、図1に示すA群〜D群は、各群周辺の改良地盤を構成する地盤構造体の底盤の輪郭を示す線によって示されている。A群およびB群の戸建住宅は、線路Rに沿った造成地Sの斜辺との間に無駄な隙間が空かないように、少しずつ玄関の位置がずれるようにして配置されている。また、C群の戸建住宅10は、隣接する戸建住宅10の玄関の位置を合わせて配置されている。他方、D群は、戸建て住宅建築前の状態である。
ここでは、D群周辺の改良地盤Gおよびその造成方法と、D群に建築される2戸の住宅10a,10b(図7参照)およびその建築方法について、図1から図11に基づいて詳細に説明する。
【0072】
まず、改良地盤について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示されるように、D群周辺の改良地盤Gは、所定位置に構築された地盤構造体Dと、当該地盤構造体Dの周囲の土質の地盤である土質地盤部E(図3参照)とで構成されている。
【0073】
図2及び図3に示されるように、地盤構造体Dは、所定位置に設けられた鉄筋コンクリート(コンクリート構造)の底盤21と、底盤上に立設された鉄筋コンクリート(コンクリート構造)の壁体22とで構成されている。
地盤構造体Dは、上方に開口を有する複数の内部空間(以下、地下空間と称する)21a〜21dを備えている。各地下空間21a〜21dは、後述の囲み構造25a〜25dに囲まれている。
【0074】
底盤21はコンクリート構造であり、排水構造の一部を構成する後述の排水部28を備えている。また、壁体22は、その上端に、土質地盤部Eの地表面よりも上方に突出する地盤突出部26を備えている。
【0075】
地盤突出部26は、建築物10aの土台301を設置する場所として使用可能なコンクリート構造物である。地盤突出部26の上端面にはモルタル層26aが形成されている。モルタル層26aは例えば地盤突出部26の上端部分の劣化防止や上端面の平坦化等の目的で形成されている。これにより、地盤突出部26上面は水平に広がる平面になっている。なお、壁体22の両表面は合成樹脂製の表面部材27に被覆されている。
【0076】
図2に示されるように、壁体22には、土質地盤部Eに接する外壁体23と、外壁体23に囲まれた内部領域に配置された中壁体24とがある。外壁体23は、地盤構造体Dの外周部を構成する壁体であり、地盤構造体Dは4つの外壁体23a〜23dを有する。また、中壁体24、隣接する2つの地下空間21a〜21dを仕切るように配置された壁体であり、地盤構造体Dは3つの中壁体24a〜24cを有する。つまり、中壁体24を介して隣同士の地下空間21a〜21dが隣接している。なお、本実施形態の中壁体24は全て、次に説明する強化型壁体である。
【0077】
強化型壁体とは、壁体(ここでは中壁体24)の両側に底盤21が広がる状態になる位置に配置された壁体のことである。なお、ここで言う底盤21の広がり幅U1a,U1bとは、中壁体24の基部から測定方向に離間して設置された壁体の基部までの距離である。この距離の測定方向は、中壁体24の壁芯面(又は壁芯面についての法線方向)に直交する方向V1である。例えば中壁体24aであれば、当該中壁体24aの壁芯位置から隣の壁体23a,24bの壁芯までの測定方向の距離のことである。広がり幅U1a,U1bは、中壁体24の延在方向の左右両側について測定可能である。
強化型壁体としては、底盤21の広がり幅U1a,U1bが、壁体24の延在方向の左右いずれの側についても、壁体24の高さH(図3参照)以上の長さであり、当該高さHより長い方が好ましい。さらに、本実施形態のように、隣あう壁体23a,24bが同じまたは同等の高さであるような場合、広がり幅U1a,U1bは壁体24の高さの2倍以上、そして2倍より長い方が好ましい(図3参照)。このような幅広の底盤21の上に立設された中壁体24は、底盤21によって安定的に支持される。これにより、高強度の地盤構造体Dが構築される。
なお、壁体22は、必ずしも直線状に延在するものでなくても良いが、本実施形態の壁体22は、いずれも直線状に延在する状態で形成されている。
【0078】
本実施形態の強化型壁体は、さらに、その両端部で外壁体(別の壁体)23に固定されている。そして、外壁体23は、強化型壁体の両側に広がった状態になっている。なお、ここで言う外壁体23の広がり幅U2a,U2bとは、中壁体24の端部から測定方向V1に離間して設置された壁体の基部までの距離である。この距離の測定方向は、壁延の壁芯面に直交する方向で且つ外壁体延在方向である。例えば中壁体24aであれば、当該中壁体24aの壁芯位置から隣の壁体23a,24bの壁芯までの測定方向の距離である。広がり幅U2a,U2bも、中壁体24の左右両側について測定可能である。
従って、強化型壁体としては、外壁体の広がり幅U2a,U2bが、中壁体24の左右いずれの側についても、中壁体24の高さH以上の長さであり、当該高さより長い方が好ましい。さらに、本実施形態のように、隣あう壁体23a,24bが同じまたは同等の高さである場合、広がり幅U2a,U2bは壁体24の高さの2倍以上であり、2倍より長い方が好ましい。このような幅広の外影体23に両端部が固定された中壁体24は、外壁体23によって安定的に支持される。これにより、高強度の地盤構造体Dが構築される。
【0079】
図2に示されるように、地盤構造体Dには囲み構造25a〜25dが複数存在する。各囲み構造25a〜25dは4つの壁体で構成されている。例えば、図2の紙面上左端の地下空間21a〜21dを囲む囲み構造25aは、外壁体23aと外壁体23bと、中壁体24aと外壁体23dであって前記地下空間21a〜21dを囲む部分の構造である。他の囲み構造25b〜25dも同様に特定される。従って、囲み構造25a〜25dを構成する壁体の少なくとも一つは中壁体(強化型壁体)24である。また、中壁体24は、相互に隣接する地下空間21a〜21dのうちの一方の囲み構造25a〜25dの一部であると共に他方の地下空間21a〜21dの囲み構造の一部である。つまり、囲み構造25a〜25dは、隣接配置された囲み構造のいずれの構成要素でもある。
【0080】
また、本実施形態の地盤構造体Dでは、各囲み構造25a〜25dの囲み面積(囲み構造で囲まれた範囲の面積)に対して底盤が大型である。より具体的には、上記囲み面積のうちで最も広い最大囲み面積(本実施例では全ての囲み構造が同面積)よりも、底盤21の総面積から当該最大囲み面積を除いた囲み構造外側面積の方が広くなる大きさの底盤が用いられている。なお、囲み面積とは、例えば壁芯の位置で取り囲まれた面積である。このような構成であれば、安定性に優れた地盤構造体を提供でき、ひいては、強固な改良地盤を提供できる。
【0081】
なお、地盤構造体の各地下空間21a〜21dは、いずれも、直方体形状である(図2及び図3参照)。そして、外壁体23に囲まれた地下空間全体の形状も直方体形状である。なお、本実施形態の各地下空間21a〜21dは、高さ(深さ)が2400mmであり、各地下空間21a〜21dの上に建築可能な二階建て木造住宅の重量に相当する重量の水を貯水可能な容積を有している。従って、貯水することによって、当該住宅を建築したときに地盤構造体Dに加わる重力状態と同等の状態を作り出すことができる。この観点では、壁体22の高さは1.5m以上が好ましく、1.8m以上がより好ましい。
【0082】
また、改良地盤G(図1参照)は、改良地盤内部から造成地外に水を排出させる排水構造40を備えている(図4参照)。
排水構造40は、地盤構造体Dの地下空間21a〜21d内の水を排出するための排水部28と、排水部28を経て地盤構造体Dの外に流出した水を、排水先である調整池(不図示)に流動させる導水管(導水路)41と、排水部28の排水を導水管に導く中継管42と、地盤構造体Dの周辺の土に含まれる水の取り込みを可能にする貫通孔を備えた集水管と、集水管の上側を覆う透水層44とを備えている。
【0083】
これらのうち、排水部28は、地盤構造体Dの底盤21に設けられている。具体的には、排水部28は、底盤21を上下方向に貫通した貫通穴28aと、貫通穴28aの下側に配置された貫通穴28aより大径の円筒形の排水筒部28bとを有するものであり、通常、排水可能な通水状態になっている。また、図示されているように、排水部28は、各地下空間21a〜21dに対応して複数設けられている。
この貫通穴28aは、壁体22に隣接する位置に配置されており、貫通穴28aに隣接する外壁体23dの地盤突出部26に立った状態で地下空間21a〜21d内を見たとき、貫通穴28aの開口を視認できる状態になるように形成されている。これにより、地下空間21a〜21d内に降りることなく、貫通穴28aの開閉状態を確認可能である。
また、排水部28は、貫通穴28aによって確保された排水路を閉塞させることで、地下空間21a〜21dに貯水可能な止水状態にすることができるものである。止水状態にする方法としては、例えば、貫通穴28aの上端開口に蓋体(不図示)を設置する方法などを挙げることができる。地盤突出部26に立った状態で視認可能な貫通穴28aにおいては、この開閉作業(止水状態と通水状態との切り替え)も、地下空間21a〜21dに降りることなく行うことが可能である。なお、切り替え作業については、後述の貯水工程および建築準備工程で説明する。
また、本実施形態の排水部28は、地盤構造体構築時(構造体構築工程中)に形成されたものであるが、構築後の地盤構造体に穴あけ加工を施して形成してもよい。
【0084】
導水管41は、土質地盤部E(Em)に埋設されている。導水管41は、排水部28からの排水を排水先である調整池(不図示)まで流動させるものである。なお、本実施形態では、導水管41に貫通孔(不図示)が形成されており、導水管41は集水管を兼用している。また、排水先である調整池の水位は、地盤構造体Dの底面よりも低い標高になっている。従って、貫通孔を通って管内に流入した水は、集水管兼用の導入管41によって排水先である調整池へと自然排水によって流れる。そして、集水管でもある導水管41の周囲に、透水層44として砕石層が設けられている。このような構成の排水構造40を土質地盤部Eにも備えると、土の中の水が効率的に排出され、土質地盤部Eの地下水位の上昇が未然に防止される。
なお、砕石層で用いる砕石は、できるだけ大きさが均等な物を用いることが好ましい。そして、砕石層内部の空間の率は40%から60%が好ましい。このような透水層を設けることによって、透水に必要ない砕石相互間の空隙が確保され、効率良く集水することができるようになる。そして、本実施形態では、排水先である調整池が底盤10より低い位置にあるため、自然排水可能であるが、自然排水できない場合は、排水ポンプ等を使用して排水しても良い。また、土質地盤部Eに設置された本実施形態の排水構造40は、造成地の内部、特に地盤構造体Dの周辺の土に含まれる水を効率的に排出させることができる点で、擁壁の外側面に設けられた排水用の穴とは構造及び効果が全く異なる。
なお、透水層44の上には、適量供給された盛土からなる盛土部Emがある。このように盛土を供給することで、地盤構造体Dの周囲に一定高さの一続きの地表面を造成している。
【0085】
このように、本実施形態の改良地盤Gでは、改良地盤を構成する地盤構造体Dの地下空間21a〜21dの排水部28を、必要に応じて通水状態にして排水したり、止水状態にして貯水したりすることができる。
例えば、造成完了から建築着工までの待機期間が長期になる場合に、排水部28を止水状態にして地下空間21a〜21dに貯水しておけば、住宅を建築した状態と同等の重力を地盤構造体Dに付与することができ、地盤構造体Dの状態ひいては改良地盤G全体をより安定した状態に維持することができる。なお、貯水先とする地下空間21a〜21dは、状況に応じて適宜選択可能である。全ての地下空間21a〜21dに貯水してもよいし、例えば一部の地下空間21a〜21dの上に既に住宅が建築されているような場合は、その住宅とのバランスがとりやすい地下空間21a〜21dにのみ貯水しても良い。
【0086】
次に、本実施形態の改良地盤の造成方法について説明する。
本実施形態の造成方法では、概略的には、図5に示されるような各工程を順に行う。
具体的には、造成方法は、少なくとも、掘削工程と、構造体構築工程と、排水構造設置工程と、土質地盤形成工程と、地盤養生工程と、重力付与工程とを有している。なお、ここでは、本実施形態の造成方法に関する内容について詳しく説明し、周知の内容については、その説明を省略しているところがある。
【0087】
これらの工程のうち、掘削工程では、例えば、穴掘りや平面などに整地された地面の造成が行われる。本実施形態では、この掘削工程で造成地Sの少なくとも一部を削る。後述する地盤構造体Dの設置面は、この掘削工程(設置面形成工程として機能)において整地されたものである。また、掘削工程では、掘削により切土が生じる。生じた切土は、造成工程で必要な盛土として使用するので、造成地内又は隣接した保管場所に移動させておく。
【0088】
構造体構築工程は、造成地Sの所定位置の地表面上に地盤構造体A〜Dを構築する工程であり、底盤21を設置する工程と、壁体22を形成する工程とを含む。具体的には、造成地S内に確保した所定位置(設置面)に鉄筋コンクリート構造の底盤21を打設する工程と、底盤21の上に壁体22を立設する工程とを有する。両工程は同時に行うことが可能である。
【0089】
そして、壁体形成工程は、底盤21上に直線状に延在する鉄筋コンクリート構造の壁体22を打設する工程である。直線状に延在する壁体22を形成すると、その上端の地盤突出部26も直線状に延在する状態になる。地盤突出部26が直線状であれば、地盤突出部26の上が土台301の設置場所として好適な場所になり好ましい。
【0090】
ここで立設される壁体22は、土質地盤部に接することになる外壁体23と、外壁体に囲まれた内部領域に配置された中壁体(強化型壁体)24である。そして、ここでは、この中壁体24を介して2つの地下空間21a〜21dが隣接する状態になるように中壁体24を形成する。このような構成にすると、一つの中壁体24は、二つの囲み構造25a〜25dの構成要素として用いられることになる。また、壁体形成工程では、土台301を設置可能な地盤突出部26を備えた囲み構造25a〜25dを複数備えた地盤構造体A〜Dが構築される。また、構造体構築工程では、最大囲み面積よりも、底盤21の総面積から当該最大囲み面積を除いた外側面積の方が広くなるように、底盤21及び壁体22を形成している。このような構造にすると、囲み構造25a〜25dの固定状態が安定する。なお、壁体21の詳細については、上述したので、ここでは説明を省略する。
【0091】
また、構造体構築工程では、各地下空間21a〜21dの上に建築することができる二階建て木造住宅に相当する重量の水を貯水可能な容積の地下空間21a〜21dが形成される。各地下空間21a〜21dは直方体形状であり、高さが2.4mである。なお、底盤21および壁体22を造る方法としては、公知の方法が種々あり、それらの方法を用いることが可能であるので、ここでは、底盤21および壁体22の構築方法に関する詳細な説明を省略する。
【0092】
次に排水構造設置工程を行う。
排水構造設置工程は、地下空間21a〜21d及び土質地盤部Eの内部から水を排水するため排水構造を設置する工程である。排水構造設置工程は、排水部形成工程と、導水路設置工程と、集水管設置工程と、透水層形成工程と、盛土工程とを含むものである。
【0093】
これらのうち排水部形成工程は、地盤構造体の地下空間21a〜21d内の水Wの排出に用いられる排水部28を地盤構造体Dに形成する工程である。排水部28は、各地下空間21a〜21dに対応して複数形成される。排水部28は、排水路確保のためのものである。また排水部28は、排水路を閉塞状態にすることによって水Wの排出が阻止される止水状態にすることが可能になっている。具体的には、排水部28の貫通穴28aを蓋体等で覆うことによって止水状態にすることが可能である。
【0094】
導水路設置工程(集水管設置工程)は、排水部28を経て地盤構造体Dの外に流出した水Wを、排水先である調整池(不図示)に流動させる導水管41を設置する工程である。なお、上述したように、導水管41は集水管を兼用しており、導水管41に集水用の貫通孔が形成されている。
透水層形成工程は、導水管41の周囲に砕石層などの透水層44を設ける工程である。
【0095】
土質地盤形成工程は、地盤構造体Dの周囲に盛土Emを供給し、地盤構造体Dの周囲に、土質である土質地盤部Eを構成する。このとき、地盤構造体D周辺の透水層44を土で覆うことで、土質地盤部Eの地表面全体が一定の高さに整地された改良地盤Gが造成される。また、壁体22の上端が土質地盤部Eの地表面よりも上方に突出する状態になるように土を調整(供給又は排除)する。ここでは、盛土を供給した。これにより、土台301の設置が可能な地盤突出部26の視認が容易であると共に地盤突出状態に土が被っておらず、その後の建築作業が行いやすい。このようにして造成された改良地盤Gは、地下付住宅建設用地盤として好適である。
なお、造成工程で用いられる盛土Emは、掘削工程で生じた切土である。
【0096】
また、改良地盤の造成工程が完了すると、必要に応じて、地盤養生工程を行う。
地盤養生工程は、土質地盤部Eの地表面の少なくとも一部を外気に晒した状態で、改良地盤Gの養生を行う工程である。これにより、造成された改良地盤G、特に盛土Emの部分の地固めが行われ、安定性が向上する。
【0097】
そして、改良地盤Gの造成工程が完了すると、必要に応じて、荷重付与工程を行う。
荷重付与工程は、貯水先として選択された地下空間21a〜21dに対応する前記排水部28を止水状態にする止水工程と、当該地下空間21a〜21dに貯水する貯水工程とを有する。止水工程では、選択された地下空間21a〜21d(例えば図7では、紙面に向かって右側2つの地下空間21c,21d)に対応した排水部28を通水状態から止水状態にする。本実施形態では、図示しない蓋体を排水部28に取り付けて止水状態にした。そして、貯水工程では、通水構造である排水部28が止水状態である地下空間21a〜21d内に貯水する。上記2つの地下空間21a〜21dに貯水することで、地盤構造体D全体にバランスの良い荷重が加わる状態になるので、地盤構造体Dひいては改良地盤G全体の安定性を長期間確保することができる。地盤の品質を長期間保持することができれば、建築着工時期の選択の自由度が高まる点で優れた改良地盤であるということができる。なお、荷重付与工程を行う時期は、構造体構築工程後であれば、いつでも可能である。
【0098】
次に、上記のような改良地盤D上に建築した建築物について説明する。
図7に示されるように、地盤構造体Dの上に建築された建築物は、木造二階建ての住宅10a,10bである。住宅10a,10bは、複数の囲み構造25a〜25dのうちの一つである対応する囲み構造25a,25bの上に建築されたものである。なお、各住宅10a,10bの配置は、対応する囲み構造25a,25bに囲まれた地下空間21a,21bの上方である。
【0099】
住宅10a,10bは、囲み構造25a,25bの地盤突出部26に設置された土台301と、当該土台301を基礎として建築された床構造とを備えている。これらのうち、床構造は、建築物の一階と前記地下空間21a〜21dとの行き来に用いられる地下出入構造を備えている。つまり、上記住宅は、地下室付住宅用の基礎工事を行って建築したものではないが、囲み構造の地盤突出部に土台301を設置し、地下空間21a〜21dの上に建築したものであるので、地下出入り構造を設けるだけで、住宅の下の地下空間21a〜21dを利用可能になる。この点で、住宅は、地下付住宅ということができる。また、地下空間を地下室のように利用できるという点で、地下室を有する戸建住宅ということもできる。
【0100】
図8から図10に示すように、戸建住宅10(10a,10b)は、地下空間20(20a〜20d)上に、2階建ての2×4工法による住宅本体30(30a,30b)が立設された木造建築物である。なお、図8および図9においては、屋根部分の一部を省略している。
【0101】
地下空間20a〜20dの底面は、コンクリートを打設して連続的に形成された底盤(連続底盤)21である。底盤21とは、隣接した複数戸分に相当する大きさの底盤を連続的に共通させて形成したものであるということができる。D群では4戸分の底盤21が一体的に形成されている。なお、A群では4戸分が、B群では5戸分が、C群では7戸分が一体的な底盤が形成されている。
【0102】
図9に示すように、底盤21は、輪郭が長方形状に形成されている。この底盤21には、コンクリートを打設して形成された壁体22が立設されている。この壁体(地下壁)22は、底盤21の周縁部の4つの外壁体221〜224と、当該4つの外壁体221〜224に囲まれた範囲に位置する中壁体225〜227である。中壁体225〜227は、隣接する地下空間20の間(建築後は戸建住宅10a,10bの間)に位置し、一方の面が一方の地下空間20の壁面、他方の面が他方の地下空間20の壁面となっている。中壁体225〜227は、他の壁体221〜224が約20cmなのに対して厚く形成されており、約25cmである。
【0103】
住宅本体30a,30bは、平面視して長方形状に形成されている。住宅本体30aは、平行に配置された壁体221,225により支持されている。また、住宅本体30bは、壁体223,225により支持されている。住宅本体30a,30bと壁体222との間には、空間が確保され、地下空間20a,20bの通気や採光に使用することができる。住宅本体30a,30bと壁体224との間には空間はなく、外壁が壁体224の頭頂面に繋がっているものの、壁体224は、多少、住宅本体30a,30bの外壁を支持するものとして機能するが、住宅本体30a,30b全体の支持体としていない。
【0104】
住宅本体30a,30bは、壁体221,223,225の頭頂面に沿って配置された土台301と、土台301上に配置され1階の床面を支持する横架材である大引き302と、壁体221と壁体225との間、壁体223と壁体225との間に跨るように配置され、大引き302と共に1階の床面を支持する根太303と、大引き302および根太303上に配置された床材304とを備えている。そして、住宅本体30a,30bの1階部分の居室の外壁となる壁材305が大引き302上に配置されている。
【0105】
住宅本体30a,30bは、地下空間20a,20bでそれぞれの壁面となる壁体225を共通した壁体とすることで、無駄な隙間を省くことができる。また、壁体222、224はコンクリートと土とが接する部分となるため、温度差によって内側に結露の発生が見られることが多い。このため、コンクリートと土とが直接接しないように断熱型枠を使用してコンクリートを打設するので、木製型枠を使用してコンクリートを打設後、断熱材を貼り付けるよりも手間を省くことができる。しかも壁体を形成するための資材を節約することができる。
【0106】
住宅本体30a,30bで向き合うと壁材305は、それぞれの土台301および大引き302上に設けられていることで、外壁同士の間に隙間が設けられている。住宅本体30a,30bで向き合うと壁材305の間に隙間を設けることで、隣接した住宅本体30a,30bからの互いの騒音や振動を伝わり難くすることができる。
【0107】
この隙間は、図11に示すように、遮断部材となる外壁材306により閉塞されている。また、図示していないが、隙間の上部についても住宅本体30a,30bの屋根が連続的に形成されていることで遮断部材として機能して隙間を閉塞している。住宅本体30a,30bの向き合う壁材305は、周囲が閉塞されているので、住宅本体30a,30bの居室からの騒音や振動を互いに伝え難くしつつ、この隙間に雨が浸入したり、泥埃が侵入したりすることを防止することができる。従って、外壁が黒ずんだり、劣化したりすることを防止することができる。
【0108】
このように、本実施の形態に係る戸建住宅10は、底盤21に立設された壁体22により地下空間20となる空間を確保することができる。底盤21が複数戸分の基礎の底盤を連続的に形成しているので、それぞれの底盤が独立した戸建住宅より、底盤の面積を広く確保することができる。従って、個々の戸建住宅10の安定性が増すので、地下室20を有していても耐震性を向上させることができる。また、底盤21は、地震による地盤の液状化に対しても強固な基礎の状況を維持することができる。
【0109】
また、底盤21により耐震性が向上することで、住宅本体30a,30bに大きな揺れが発生しにくく、位置関係が変動し難いので、住宅本体30a,30bが少しの隙間を介して接近していても、また住宅本体30a,30bが隙間を閉塞する外壁材306により繋がっていても、地震の揺れによる損傷を防止したり少ないものとしたりすることができる。
【0110】
例えば、地表面が軟弱地盤で、地上に基礎の底盤を施工する場合では、固い支持層まで地中深く杭を打つ必要があるが、底盤21は複数戸分の基礎の底盤を連続的に形成しているため、地表面が軟弱地盤でも、杭打ちが省略でき、支持層までの深さに関係なく構築することができる。
【0111】
以上、本実施の形態に係る地下空間を有する戸建住宅を説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本実施の形態では、住宅本体30aは壁体221,225に支持され、住宅本体30bは壁体223,225に支持されており、地下壁222と壁体224とには支持されていなかったが、住宅本体30がコ字状に形成された壁体22に支持されていたり、口字状に形成された壁体22に支持されていたりするように、壁体22と住宅本体30を設計してもよい。
【0112】
このような実施形態の地下空間を有する戸建住宅は、複数戸分の基礎の底盤が連続的に形成された連続底盤と、前記底盤に立設され、地下空間の壁面となる壁体と、前記壁体上に外壁が立設された住宅本体とを備えたことを特徴とする。
【0113】
このような構成の戸建て住宅によれば、底盤に立設された壁体により地下空間となる空間を確保することができる。底盤が複数戸分の基礎の底盤を連続的に形成したものであるので、それぞれの底盤が独立した戸建住宅より、底盤の面積を広く確保することができる。従って、連続させた戸建住宅の数が増えれば増えるほど底盤の面積が広くなり、底盤の面積が広くなればなるほど安定性が増すので、耐震性を向上させることができる。
【0114】
前記壁体は、隣接する地下空間同士で共通して形成されているのが望ましい。地下空間の壁面となる壁体を隣接する地下空間同士で共通させることで、無駄な隙間を省くことができる。また、壁体を形成するための資材を節約することができる。
【0115】
前記壁体には、隣接する2戸の住宅本体の向き合う外壁が隙間を空けて立設されているのが望ましい。外壁が隙間を空けて立設されていると、隣接した住宅本体からの互いの騒音や振動が伝わり難くすることができる。
【0116】
前記隣接する2戸の住宅本体の向き合う外壁は、周囲が閉鎖されているのが望ましい。隣接する2戸の住宅本体の向き合う外壁が隙間を空けた状態で周囲が閉鎖されていることで、騒音や振動を伝え難くしつつ、この隙間に雨が浸入したり、泥埃が侵入したりすることを防止することができる。
【0117】
このような地下空間を有する戸建住宅は、面積を広く確保することができる底盤により安定性が増すので、耐震性を向上させることができる。よって、本発明の地下空間を有する戸建住宅は、更なる耐震性の向上を図ることができる
【0118】
次に、上記工程で造成方法で造成した改良地盤上に、地下付住宅を建築する建築方法の手順を説明する。なお、ここでは、本実施例の要部について詳細に説明し、それ以外の周知の事項にち手はその説明を省略しているところがある。
【0119】
地下付住宅の建築は、概略的には、建築着工に際して改良地盤について行う建築準備工程と、その後に行う建築工程とで構成されている。
【0120】
まず、必要に応じて、建築準備工程を行う。建築準備工程には、地下空間10a〜10d内の貯留水の有無を確認する工程と、確認した貯留水を排出させる工程とが含まれる。
【0121】
貯留水確認工程は、地盤構造体の各地下空間10a〜10dの貯水状態を確認する工程である。ここで、貯水された地下空間10a〜10dがなければ、次の貯留水排出工程は不要である。
他方、貯水された地下空間10a〜10dがあれば、次に、貯留水排出工程を行う。
貯留水排出工程は、止水状態の排水部を通水状態にする工程である。具体的には、貯水工程の際、排水部を止水状態にするために設置した蓋体(不図示)を取り外す。これにより、排水部が通水状態になり、排水が開始される。そして、排水の後、続く建築工程が行われる。
【0122】
建築工程は、少なくとも、改良地盤上に土台301を設置する土台工程と、土台301の上に柱を立設する柱工程と、土台301に支持された床構造を設ける床工程と、地下空間10a〜10dの上方に居住空間を建築する工程と、地下空間10a〜10dを利用可能にするための地下空間10a〜10d工事工程とを有している。
なお、本実施形態では、地下付住宅の建設であるにも拘わらず、基礎工事が不要である。従って、地下室付き住宅建築時の基礎工事では通常必要な穴掘り工程が不要である。従って、本実施形態に係る地下付住宅の建築方法を用いれば、短工期且つ低コストで地下付き住宅を建築することができる。
【0123】
土台工程は、改良地盤の一部である地盤構造体の地盤突出部の上端に土台301を設置する工程である。そして、柱工程は、地盤突出部に設置した土台301又は、地盤突出部に支持された基礎梁の上に柱を立設する工程である。
また、床工程は、土台301の上に住宅の一階部分の床構造を造る工程である。そして、居住空間を建築する工程は、住宅の床構造以外の一階部分を造る工程である。
【0124】
さらに、地下空間10a〜10d工事工程は、床構造に、建築物の一階と地下空間10a〜10dとの行き来に用いられる地下出入構造を設ける工程である。
【0125】
なお、上記各工程に関する内容のうち、公知の建築技術に関する内容については、ここでは詳細な説明を省略した。また、上記工程以外に必要な公知の工程についても説明を省略した。
【0126】
また、本実施形態の建築方法の特徴は、二軒目の住宅を建築する際にも顕著に表れる。
二軒目の住宅の建築とは、地盤構造体の一つの地下空間10a〜10dの上に、建築済み又は建築中の先行建築物が既に存在していることを前提としている。
本実施形態の建築方法によれば、このような住宅が既に存在していたとしても、一軒目と同様の建築方法で住宅を建築することができる。つまり、一軒目の住宅が仮に建築途中であったとしても、その建築中の住宅に隣接する位置に同時並行的に住宅を建築することができる。
従来の建築方法であれば、住宅を建築する場合はまず基礎工事が必要であるので、建築中の住宅に隣接する場所に、同時並行的に住宅の建築を行うことは容易でない。この点、本実施形態の建築方法であれば、改良地盤に対して基礎工事を行う必要がなく、改良地盤に対して行う工程は土台工程であるので、建築中の住宅の隣であっても、同時並行的に住宅を建築することができる。
【0127】
また、建築工程において、地盤構造体の上に、複数の建築物を建築することができる。この場合、異なる囲み構造に建築された両建築物は、同じ地盤構造体上に建築されたものである。
この場合、建築される複数の建築物のうち隣接して配置される建築物の外壁を、前記地盤突出部又は前記基礎梁の上方に隙間を空け、且つ、地盤突出部又は基礎梁の延在方向と同じ方向に延在する状態で立設する。さらに、地盤突出部又は前記基礎梁の上方に相対向する状態で配置された前記外壁の間の隙間を閉塞する外壁材を設置する。
【0128】
上述した本願発明に係る改良地盤、その造成方法及び建築物の建築方法には、上記実施形態の他、本発明の効果を奏する範囲で種々改変されたものが含まれる。
【0129】
地盤構造体を構築する位置は、特に限定されることはなく、例えば、地盤構造体の設置面の周囲の少なくとも一部が、垂直又は傾斜した面に隣接していてもよい。
この場合、地盤構造体と隣接した面との間に空間が生じるように、掘削工程で掘削しておく。
隣接面は、上り勾配の法面がより好ましい。そして、記排水構造を、先の空間の底面に設置する。この場合採石層は、採石を投入することで実行可能である。そして、その後、採石層の上に盛土を供給すれば良い。
【0130】
排水部を形成する工程は、地盤構造体を構築する構造体構築工程の一部として行ってもよい。
上記実施形態の改良地盤は、戸建て住宅の地盤として好適であり、木造住宅建築用の地盤として特に好適である。
【0131】
また、貯水状態の地下空間10a〜10dを閉じるために蓋体を用いても良い。中壁体を備えた地盤構造体は、平面視したときの上端面の形状が田字形状を含む格子形状になるような構造であってもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良地盤、改良地盤の造成方法、地下付建築物及び地下付建築物の建築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地下室付きの住宅を建てる際、地下室の壁と基礎とが一体になった基礎構造がある(特許文献1参照)。
そして、敷地に複数の基礎を独立させて構築し、各基礎にそれぞれ住宅を建築する構造が知られている(特許文献2参照)。
【0003】
また、一部が地中に埋設された居住用のコンクリート製布基礎が所定空間を囲む状態で配置され、所定空間内が地表面から下方に掘削され、掘削された底面にプレキャストコンクリート版が設置された住宅の基礎を兼用する地下工作物がある(特許文献3参照)
さらに、耐震壁構造のボックス型ユニットの複数個を住宅建設現場で地下を含めて縦方向に積み重ね、その積み重ねユニット同士を相互に固定接合して建設された地下室付きの鉄骨造りユニット式住宅がある(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−32320号公報
【特許文献2】特開2010−047907号公報
【特許文献3】特開平6−272264号公報
【特許文献4】特開2002−356930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の住宅等の建築物を建築する場合は、通常、各建築物毎に建築計画が立てられ、それぞれ基礎工事から始まる建築工事が進められる。もっとも、いわゆる長屋やアパートのような集合住宅の建築は、複数の住宅を一度に建築することになるが、この場合、集合住宅全体が一つと建築物である。従って、建築物毎に建築が進められる点では、先に説明した場合と同様である。
ところで、建築物の基礎については、基礎工事着工前に地盤調査を行い、必要に応じて地盤改良等が行われることがある。ところが、各建築物の建築は、個々に進められるものであり、地盤改良できる範囲は限られる。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、複数の住宅等の建築物を建築する場合に、より高強度の改良地盤および改良地盤の造成方法を提供してより高品質の居住地域開発を可能にすることを目的とするものである。また、より高品質の居住地域開発を可能にするという共通の目的で、このような改良地盤に建築された地下付建築物及びその建築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係る発明は、造成地内の所定位置に構築された地盤構造体と、当該地盤構造体の周囲の土質の地盤である土質地盤部とを有する改良地盤であり、前記地盤構造体は、前記所定位置に設けられた底盤と、当該底盤の上に立設された構造の壁体とを有するものであり、当該壁体は、その上端に、前記土質地盤部の地表面よりも上方に突出する地盤突出部を備えているものであり、前記壁体のうちの少なくとも一部の壁体は、前記底盤が壁体の両側に広がる状態になる位置に配置された強化型壁体であり、前記底盤の、当該強化型壁体の基部からの広がり幅は、当該強化型壁体の高さ以上の長さであり、前記地盤構造体は、上方に開口を有する複数の地下空間を備えており、各地下空間は、前記壁体で構成された囲み構造に囲まれており、各囲み構造は、少なくとも一部が前記強化型壁体で構成されていることを特徴とする改良地盤である。
【0008】
本発明に係る改良地盤は、上方に開口した地下空間を備えた地盤である。従って、地下空間の上に建築物を建築する際、地下無しの建築物と同様の工程で、容易に地下空間利用可能な建築物を建築することができる。この改良地盤は、多様な建築物を建築できる汎用性に優れた地盤である。
また、地盤構造体は、一部の壁体が強化型壁体で構成されており、高強度化が図られている。従って、建築物を建築するための地盤として好適である。
さらに、地盤構造体は、各地下空間を囲む複数の囲み構造を備えており、囲み構造は、それ自体強固な構造である。そして、コンクリート構造であればより強固な構造になる。しかも、囲み構造を構成する壁体は、少なくとも一部が強化型壁体になっている。このような地盤構造体が用いられた改良地盤は、極めて強固な地盤である。なお、建築物が建築された状態で地盤構造体を含む改良地盤に加わる力の状態からすると、囲み構造の数は、2つではなく、直接隣り併せにならない囲み構造が生じる3つ以上がより好ましいと考えられる。
【0009】
地表面から突出した前記囲み構造の地盤突出部は、建築物の土台の設置場所として使用可能なものであり、前記地盤構造体は、複数の囲み構造を備え、各囲み構造に囲まれた地下空間の上方に位置するように建築物の建築が可能になっている。
【0010】
地盤構造体の囲み構造は、建築物の土台を設置可能な、例えばコンクリート構造の地盤突出部を備えている。従って、本発明に係る改良地盤に建築物を建築するのであれば、基礎工事を行う必要がない。つまり、基礎工事なしで、例えば、地盤突出部の上に土台を設置するところから建築工事を開始することができる。基礎工事を省くことができれば、短工期かつ低コストで建築を行うことができる。また、強固な地盤構造体の地盤突出部に直接土台を固定できれば、堅牢な支持状態の建築物を建築することができる。
【0011】
前記底盤は、各囲み構造で囲まれた範囲の面積である囲み面積のうちで最も広い最大囲み面積よりも、前記底盤の総面積から当該最大囲み面積を除いた外側面積の方が広くなる大きさである。
【0012】
一般的な建築方法では、まず基礎を設置してその上に建築物を建築する。この場合、設置可能な基礎の大き(面積)には限界がある。この点、本発明に係る改良地盤であれば、建築する建築物の占有面積の外側に広く広がった大型かつ強固な地盤構造体の上に、建築物を建築することができる。
【0013】
前記強化型壁体は、延在方向が直線である。直線に延在する強化型壁体は、その上端の地盤突出部も直線に延在しており、土台の設置場所として好適である。
【0014】
前記囲み構造は、4つの壁体で構成されており、当該囲み形状を構成する壁体の少なくとも一つは前記強化型壁体である。4つの壁体で構成された四角形の囲み構造、特に平面視で長方形や正方形の囲み構造は、高強度である。また、囲み構造の上端の地盤突出部に土台を設置することで、四角形の土台を容易に設けることができ、建築物の土台設置場所として好適である。
【0015】
前記壁体は、前記土質地盤部に接する外壁体と、当該外壁体に囲まれた領域に配置された中壁体とを含み、当該中壁体を介して2つの地下空間が隣接配置されており、前記中壁体は、相互に隣接する地下空間のうちの一方の囲み構造の一部であると共に他方の地下空間の囲み構造の一部であり、当該中壁体は、前記強化型壁体である。
【0016】
このように、中壁体を介して2つの地下空間を隣接させて、1つの中壁体を隣接する2つの地下空間の囲み構造の両方で用いるようにすれば、建築物の土台の設置場所として好適な地盤突出部を備える囲み構造を一定の敷地内に効率よく配置することができる。従って、宅地等の土地を効率よく利用することができ、造成地全体の価値を高めることができる。
また、2つの囲み構造で用いられる中壁体が高強度な強化型壁体であることは、地盤構造体の高強度化につながり好適な構造である。
また、中壁体を設けたり壁体の一部を強化型壁体にしたりするなどして、地盤構造体の強度を高めると、地震の際など、改良地盤に予想外の大きな力が加わった場合でも地盤構造体が受けるダメージを最小限にすることができるようになり好ましい。
【0017】
前記強化型壁体は、その両端部で別の壁体に固定されており、当該別の壁体は、前記強化型壁体の両側に広がっており、当該別の壁体の、前記強化型壁体の基端部からの広がり幅は、前記強化型壁体の高さ以上の長さである。このような構造の強化型壁体は、さらに高強度であり、地盤構造体の構造としてより好適である。
【0018】
前記改良地盤は、改良地盤内部から造成地外に水を排出させる排水構造を設置する排水構造を備えており、当該排水構造は、前記地盤構造体の地下空間内の水の排出に用いられる排水部と、当該排水部を経て地盤構造体の外に流出した水を、排水先に流動させる導水路とを備えており、前記排水部は、前記各地下空間に対応して前記地盤構造体に複数形成されており、前記導水路は、前記土質地盤部に埋設されている。
【0019】
このような排水構造があれば、造成完了から建築着工までの待機期間中に地下空間に降り込んだ雨水などの水を地盤構造体の外に確実に排出できるので、地盤管理が容易である。また、長期的に見れば、地盤の強度維持に貢献するものである。改良地盤内部とは。土質地盤部表面より下の地中内部のことである。
【0020】
前記排水構造は、さらに、前記地盤構造体の周辺の土に含まれる水の取り込みを可能にする貫通孔を備えた集水管を備えており、当該集水管は、前記土質地盤部に埋設されており、前記土質地盤部は、前記集水管の上側を覆う透水層と、当該透水層の上側を覆う盛土部とを有しており、前記導水管は、前記集水管に取り込まれた水を、前記排水先に流動させるものである。
【0021】
このような排水構造があれば、地中すわなち土質地盤部の中の水を効率的に排出することができるので、地下水位の上昇がより確実に抑制され、地下水位上昇に起因する浮力が発生することをより確実に防止することができる。浮力が影響しない地盤は建築物の地盤として好適である。特に、集水管の周囲に砕石層などの透水層を配置した構成にすると、より効率的に集水することができ、しかも集水管の貫通孔の目詰まりをより確実に防止することができ、浮力の発生がより確実に防止される。
【0022】
前記排水部は、前記排水に用いられる排水路を確保するためのものであり、当該排水路を閉塞状態にすることによって水の排出が阻止される止水状態にすることが可能になっており、排水部を止水状態にして地下空間に貯水することが可能である。
【0023】
上述したように、本発明に係る改良地盤は、地下水位上昇に起因する浮力の発生をより確実に防止できる構造であるが、例えば多量の降水があった場合など、一時的に地下水位が上昇する可能性がある。特に、本発明のように、建築物の基礎ではない改良地盤の場合、地盤造成完了から建築着工までの待機期間が長期かするおそれがあり、降水などの影響を受ける確率が高まる。この点、排水部が止水状態にできるものであれば、排水部を止水状態にして地下空間に貯水しておけば、浮力に対抗するための重力方向の荷重を地盤構造体に付与することができ、仮に浮力を受ける状況になったとしても、浮力が地盤構造体に及ぶことがない。また、貯水による荷重付与であれば、排水部を通水状態にして排水することで、容易に荷重付与状態を解除することができるという利点がある。また、排水作業が容易であれば、建築着工が決まった後、着工するまでに煩雑な作業を行う必要もないので、迅速に建築に着工できる。
また、地盤構造体はコンクリート構造であるが、コンクリート構造はダムの擁壁などとしても用いられている材料であり、耐水圧性や保水性に優れている。従って、本発明に係る改良地盤の地盤構造体は貯水するための構成としても好適である。
【0024】
前記各地下空間は、直方体形状であり、高さが1.5メートル以上である。
改良地盤の造成が完了し、最終的に地盤構造体上に建築物が建築されると、地盤構造体は建築物の重量に起因する重力を受ける状態になる。このようなことからすれば、地盤構造体の地下空間の容量としては、地盤構造体の囲み構造の上に建築される建築物の重量に相当する重量の水を貯水可能な容量が好ましい。例えば、本発明に係る改良地盤は、木造建築物の地盤として好適であると考えられ、そのような検討をする中で、二階建て木造住宅が一つの基準となるとの知見を得た。二階建て木造住宅の標準的な接地圧に基づいて算出した二階建て木造住宅の1平方メートル当たりの重量は、約1.3トンであり、建築された住宅が支える家具や住人の1平方メートル当たりの重量(積載荷重)は、約0.2トン程度である。この合計値である1.5トンを基準にすると、地下空間の高さは、1.5m以上が好ましい。また、壁体上端の地盤突出部を地表面から0.3m突出させる場合に貯水した水の水面が地表面以下になるようにするためには、壁体すなわち地下空間の高さは、1.8m以上がより好ましい。
地下空間の高さが上記高さ以上であれば、二階建て住宅を建築した状態に相当する重量の水を地下空間に貯水でき、地盤構造体ひいては改良地盤に加わる接地圧を、二階建住宅を建築した状態と同等の状態にして地盤管理をすることができる。
【0025】
前記各地下空間に面する前記壁体の内面は、合成樹脂材によって被覆されたものである。側壁の内面を合成樹脂製の部材で被覆しておけば、排水後の清掃等が容易である。
【0026】
本願に係る別の発明は、上述した改良地盤に建築された建築物であって、当該建築物は、前記地盤構造体の囲み構造に囲まれた地下空間の上方に建築されており、前記囲み構造の地盤突出部に設置された土台と、当該土台を基礎として建築された床構造とを備えており、当該床構造は、建築物の一階と前記地下空間との行き来に用いられる地下出入構造を備えていることを特徴とする地下付建築物である。
【0027】
改良地盤を構成する地盤構造体の地盤突出部に直接設置された土台を用いて建築された建築物は、地盤に強固に支持されており、地盤に建築された建築物として安定性に優れている。また、囲み構造の上に建築された建築物であるので、床構造の部分に地下出入構造を備えるだけで、地下利用可能になる。通常、地下室を設けるためには、地下室を設けることを前提とした基礎を作る必要があるところ、本発明に係る改良地盤に建築した建築物は、そのような基礎工事をすることなく建築されるものであり、短工期かつ低コストで建築できる地下利用可能な建築物という点で極めて優れている。
【0028】
前記地下付建築物は、複数の囲み構造のうちの一つの囲み構造の上に建築されたものであると共に、他の囲み構造の上に建築された他の建築物と同じ地盤構造体上に建築されたものである。
【0029】
本発明に係る地下付建築物は、当該建築物の土台が設置される囲み構造の部分よりも広い面積に広がった地盤構造体の上に建築されたものである。この場合、ある地下付建築物に着目すると、当該建築物の下の囲み構造が立設された底盤には、当該建築物の重量以外に、他の建築物の重量がかかっており、しかも当該他の建築物の重量がかかる位置は、先に着目した建築物の下の囲み構造に囲まれた範囲の外側である。このような構造であれば、同じ地盤構造体上に建築された他の建築物の重量で、地盤構造体がより安定化する。このように、一つの地盤構造体の上に建築された建築物相互で、他の構造物の重量を利用することができることとなり、この点でも本発明に係る改良地盤は強固な地盤構造である。
【0030】
前記地下付建築物の下の囲み構造の地下空間と前記他の囲み構造の地下空間は隣接しており、前記地下付建築物及び前記他の建築物の相互に隣接する外壁は、前記地盤突出部又は前記基礎梁の上方に隙間を空け、且つ、地盤突出部又は基礎梁の延在方向と同じ方向に延在する状態で立設されている。
【0031】
このように、隣接する建築物の外壁が間隔を空けて立設されていれば、隣接した住宅内からの互いの騒音や振動が伝わりにくく、優れた住環境を提供できる。
【0032】
前記地盤突出部又は前記基礎梁の上方に相対向する状態で配置された前記外壁の間の隙間は閉塞されている。
【0033】
相対向して配置された外壁の間の隙間が閉塞されていれば、騒音や振動が伝わりにくい状態を維持しつつ、隙間への雨水、泥又は埃などの浸入を確実に防止することができる。
【0034】
また、本願に係るさらに別の発明は、造成地内に確保した所定位置に地盤構造体を構築する構造体構築工程と、前記地盤構造体の周囲に土質の地盤である土質地盤部を形成し、当該土質地盤部と前記地盤構造体とで構成される改良地盤を造成する地盤造成工程とを有し、前記構造体構築工程は、前記所定位置にコンクリート構造の底盤を設ける工程と、当該底盤の上にコンクリート構造の壁体を立設する工程とを有しており、前記地盤構造体は、上方に開口を有する複数の地下空間を備え、且つ当該地下空間が前記壁体で構成された囲み構造に囲まれた構造になっており、前記地盤造成工程は、前記壁体の上端が土質地盤部の地表面よりも上方に突出する状態になるように土の量を調整(供給又は排除)して土質地盤部を形成する工程であることを特徴とする改良地盤の造成方法である。
【0035】
本発明によれば、構造体構築工程によって複数の囲み構造を有する地盤構造体を構築する。つまり、囲み構造を備えた強固な地盤構造体が構築される。また、囲み構造はその内側に上方に開口を有する地下空間を有するものであるので、囲み構造の上端の地盤突起部に土台を設置することにより、地下空間の上に建築物を容易に構築できる。そして、複数の囲み構造を備えた地盤構造体上には複数の建築物を容易に建築可能である。また、通常の地下無し建築物を囲み構造に囲まれた地下空間上に建築することによって、地下空間利用可能な建築物を容易に建築することができる。このように、本発明によれば、必要に応じて地下利用可能な建築物を容易に建築できる。
【0036】
前記壁体を立設する工程は、少なくとも、前記土質地盤部に接することになる外壁体と、当該外壁体に囲まれた領域に配置された中壁体とを設ける工程であり、前記壁体のうちの少なくとも一部の壁体は、前記底盤が壁体の両側に広がる状態になる位置に配置された強化型壁体であり、前記底盤の、当該強化型壁体の基部からの広がり幅は、当該強化型壁体の高さ以上の長さであり、前記構造体構築工程は、前記複数の地下空間のいずれもが、少なくとも一部で前記強化型壁体に隣接する状態になるように、前記底盤及び壁体を設ける工程である。
【0037】
壁体を立設する際、外壁体だけでなく中壁体も設ければ、より強固な地盤構造体が構築される。さらに、一部の壁体が強化型壁体であればさらに強固な地盤構造体が構築される。このように強固な地盤は建築物建築用の地盤として好適である。
【0038】
前記壁体を立設する工程は、少なくとも、直線状に延在する前記強化型壁体を立設する工程である。直線に延在する壁体の上端の地盤突出部は、土台の設置場所として好適である。従って、改良地盤造成後、壁体の地盤突出部を利用して、迅速且つ容易に建築物を建築することができる。
【0039】
前記構造体構築工程は、各囲み構造で囲まれた範囲の面積である囲み面積のうちで最も広い最大囲み面積よりも、前記底盤の総面積から当該最大囲み面積を除いた外側面積の方が広くなるように前記底盤及び壁体を設ける工程である。
【0040】
このような地盤構造体を構築すれば、その後、囲み構造を利用して地下空間の上に位置するように建築物を建築したとき、建築物の占有面積の外側に広く広がった大型かつ強固な地盤構造体によって建築物を支持することができる。
【0041】
前記構造体構築工程は、前記囲み構造に囲まれた前記地下空間が略直方体形状になり、且つ前記囲み構造を構成する壁体の少なくとも一つが前記強化型壁体になるように、前記底盤及び壁体を設ける工程である。
【0042】
4つの壁体で構成された四角形の囲み構造、特に平面視で長方形や正方形の囲み構造を備える地盤構造体を構築すれば、より高強度なものが構築されることになる。また、このような形状の囲み構造であれば、囲み構造の上端の地盤突出部に土台を設置することで、四角形の土台を容易に設けることができ、建築物の土台設置場所として好適である。さらに、囲み形状を構成する壁体の少なくとも一つが強化型壁体であれば、囲み構造がより高強度になる。
【0043】
前記構造体構築工程は、前記中壁体を介して2つの地下空間が隣接し、且つ当該中壁体が強化型壁体になるように、前記底盤及び壁体を設ける工程である。
【0044】
中壁体を介して2つの地下空間を隣接させて、当該中壁体を隣接する2つの地下空間の囲み構造の両方で用いるようにすれば、土台設置場所として好適な地盤突出部を備えた囲み構造を一定の敷地内に効率よく確保できる。従って、宅地等の土地を効率よく利用することができ、敷地価値を高めることができる。また、2つの囲み構造で用いられる中壁体が強化型壁体とすれば、地盤として好適なより高強度の地盤構造体な構築できる。
【0045】
前記構造体構築工程で形成される強化型壁体は、両端部で別の壁体に固定されているものであり、当該別の壁体は、前記強化型壁体の両側に広がっており、当該別の壁体の、前記強化型壁体の基端部からの広がり幅は、前記強化型壁体の高さより長い。このような構造の強化型壁体は、より高強度であり、地盤構造体の構造としてより好適である。
【0046】
前記構造体構築工程は、建築物の土台を上端に設置可能な前記地盤突出部を備えた前記囲み部を複数備えた前記地盤構造体を構築する工程であり、当該地盤構造体は、各囲み構造に囲まれた地下空間の上に建築物の建築が可能なものである。
【0047】
建築物の土台を設置可能な地盤突出部を備えた地盤構造体を構築すれば、建築物を建築する際、地盤の一部である地盤突出部に、直接、土台を設置すればよく。基礎工事が不要になる。つまり、地盤突出部に土台を設置するところから建築工事を開始できる。そして、基礎工事を省くことができれば、短工期かつ低コストで建築を行うことができる。また、強固な地盤構造体の地盤突出部に直接土台を固定した構造の建築物は、堅牢な支持状態になる。
【0048】
前記地盤造成工程の前に行われる工程として、さらに、造成後の改良地盤内部から造成地外に水を排出させる排水構造を設置する排水構造設置工程を有しており、当該排水構造設置工程は、前記地盤構造体の地下空間内の水の排出に用いられる排水部を前記地盤構造体に形成する工程と、前記排水部を経て地盤構造体の外に流出した水を、排水先に流動させる導水路を設置する工程とを有しており、前記地盤構造体は、前記各地下空間に対応して形成された複数の前記排水部を備えているものである。
【0049】
排水構造を設ければ、造成完了から建築着工までの待機期間中に地下空間に降り込んだ雨水などの水を地盤構造体の外に確実に排出でき、地盤管理が容易である。また、長期的に見れば、地盤の強度維持に貢献するものである。
【0050】
前記排水構造設置工程は、前記地盤構造体の周囲の少なくとも一部に、当該地盤構造体の周辺の土に含まれる水の取り込みを可能にする貫通孔を備えた集水管を設置する工程と、当該集水管と前記導水路を構成する導水管とを接続する工程とを、さらに有しており、前記導水管は、前記集水管から流れ込んだ水を前記排水先に流動させるものである。
【0051】
このような排水構造を設ければ、地中すわなち土質地盤部の中の水を効率的に排出することができ、地下水位の上昇がより確実に抑制され、地下水位上昇に起因する浮力の発生がより確実に防止される。特に、集水管の周囲に砕石層などの透水層を配置した構成にすると、より効率的に集水でき、しかも集水管の貫通孔の目詰まりを防止できるので、排水効率が向上し浮力の発生がより確実に防止される。また、集水管は、地盤構造体を取り囲むように配置した方が排水効率が良く好ましい。
【0052】
前記排水構造設置工程で設置される前記排水部は、前記排水に用いられる排水路を確保するためのものであり、当該排水路を閉塞状態にすることによって水の排出が阻止される止水状態にすることが可能になっている。
【0053】
止水状態にすることができる排水構造を設置すれば、地下空間への貯水が可能になる。建築物の基礎と異なり、改良地盤の場合、地盤造成完了から建築着工までの待機期間が長期化することがあり、降水などの影響を受ける機会が多い。上述したように、本発明に係る改良地盤は、地下水位上昇を防止できる構造であるが、例えば多量の降水があった場合など、一時的に地下水位が上昇する可能性がないとは言えない。この点、地下空間に貯水しておけば、浮力に対抗するための重力方向の荷重を地盤構造体に付与した状態にすることができ、仮に浮力を受ける状況になったとしても、浮力が地盤構造体に及ぶことがない。また、排水部を通水状態することで容易に排水でき、容易に荷重付与状態を解除できる。排水作業が容易であれば、建築着工時期が決まり次第、迅速に排水して建築着工できる。
【0054】
前記構造体構築工程で構築される地盤構造体の各地下空間は直方体形状であり、前記地盤造成工程は、地盤構造体の底面から土質地盤部の地表面までの高さが1.5m以上になるように土の量を調整して土質地盤部を形成する工程である。木造二階建ての住宅の標準的な接地圧および住宅内の重量(積載荷重)に基づくと、1平方メートル当たりの住宅及び積載物の総重量は、約1.5トンである。これを基準にすると、地下空間の高さは、1.5m以上が好ましい。また、壁体上端の地盤突出部を地表面から0.3m突出させた場合に貯水面が地表面以下になるようにするためには、壁体すなわち地下空間の高さは、1.8m以上がより好ましい。
【0055】
前記構造体構築工程の後に行う工程として、さらに荷重付与工程を有しており、当該荷重付与工程は、貯水対象の地下空間に対応する前記排水部を止水状態にする工程と、貯水対象の地下空間に貯水する工程とを有する。
【0056】
貯水することによって、地盤構造体に、建築物が建築された状態と同様の荷重を付与することができる。例えば、地盤造成完了から建築着工までの期間が長期化する場合、貯水しておくことで、地盤構造体の状態ひいては改良地盤の状態を安定させることができる。
また、上述したように、複数の住宅等の建築物を建築する場合は、各建築物毎に建築計画が立てられるので、通常、建築工事の時期や日程はズレることになる。建築時期にズレがあると、最初の建築物の建築位置によっては、地盤構造体の底盤全体に均等に重力が加わる状態を確保することが難しい場合がある。この点、中壁体が形成されており、各囲み構造毎に貯水するか否かを選択できれば、建築時期にズレが生じたとしても、適宜の地下空間に貯水することで、改良地盤の状態をより安定な状態にすることができる。つまり、各建築物の建築時期を選択の自由度を向上させることができる。
【0057】
前記造成工程の後に行う工程として、さらに、前記土質地盤部の地表面を外気に晒した状態で改良地盤を養生する改良地盤養生工程を有する。
【0058】
改良地盤の造成では、盛土を用いることが少なくない。このような場合、地盤についても養生が必要な場合がある。この点、本発明に係る造成方法は、造成完了から建築着工までの期間が長期化しても対応できるものであり、地盤養生期間を容易に確保できる。つまり、高強度の改良地盤をより確実に提供することができる。
【0059】
前記構造体構築工程の前に行われる工程として、造成地の少なくとも一部を削る掘削工程を、さらに有しており、前記造成工程で土質地盤部を形成する際に用いられる盛土の少なくとも一部は前記掘削工程で生じた切土である。
【0060】
掘削工程で生じた切土を造成工程で必要な盛土として使用すれば、切土の廃棄や盛土の搬入出の手間が軽減され、造成工事の工期の短縮をも図ることができる。
【0061】
また本願に係るさらに別の発明は、上述した改良地盤の前記地盤構造体又は上述した造成方法によって造成された改良地盤の前記地盤構造体の上に建築物を建築する地下付建築物の建築方法であって、少なくとも、前記改良地盤に前記土台を設置する土台工程と、当該土台の上に柱を立設する柱工程と、前記土台に支持された床構造を設ける床工程と、前記地下空間の上方に居住空間を建築する工程と、前記地下空間を利用可能にするための地下空間工事工程とを有しており、前記土台が設置される位置は、前記改良地盤の一部である前記地盤構造体の前記地盤突出部であり、前記地下空間工事工程は、建築物の一階と前記地下空間との行き来に用いられる地下出入構造を前記床構造に設ける工程を有する、地下付建築物の建築方法である。
【0062】
本発明の建築方法では、改良地盤を構成する地盤構造体の地盤突出部の上に柱を立設できるので、迅速に建築着工することができ、改良地盤に強固に支持された建築物を建築できる。また、地盤構造体の地下空間との入出に用いる入出部を設けるので、地盤構造体の地下空間を地下室等の地下空間として有効活用することができる。
【0063】
前記土台工程は、前記地盤構造体の複数の地下空間のうちの少なくともいずれか一つの地下空間の上に建築済み又は建築中の先行建築物が存在する状態で行われる工程であり、前記地下付建築物を建築する際、前記改良地盤に対して前記土台工程が行われる。
【0064】
複数の建築物の建築が可能な地盤構造体上に建築物を建築する場合、建築物毎に建築時期がズレることがある。この場合、建築する順番によって建築条件が異なってくる。例えば二番目以降の建築物を建築する場合は、近隣の地下空間の上に、先に建築着工された建築中又は建築済みの建築物が存在する場合がある。このような場合、先に着工された建築物の状態を考慮して、基礎工事のスケジュール等を決めなければならなくなる場合がある。この点、本発明に係る建築方法では、地盤構造体の地盤突出部の上に土台を設置でき、基礎工事が不要であるので、迅速に建築着工することができ、しかも改良地盤の地盤構造体に強固に支持された建築物を建築できる。
【0065】
前記地下付建築物の建築の着工の際に行う工程として、さらに建築準備工程を有しており、当該建築準備工程は、前記地下空間の貯留水の有無を確認する工程と、確認された貯留水のうちの排出対象の貯留水が貯留された地下空間に対応する前記排水部を止水状態から通水状態にして当該排出対象の貯留水を排出させる工程とを有する。
【0066】
建築着工する際、地盤構造体の地下空間に貯留水があれば、排出対象の貯留水が貯留された地下空間に対応する排水部を通水状態にすることで、迅速に排出対象の貯留水を排出させることができ、容易に建築着工可能な状態にすることができる。つまり、建築着工時期を自由に決定することができる。
【発明の効果】
【0067】
本願の発明に係る改良地盤および別の発明に係る造成方法により造成された改良地盤によれば、上述したように、容易に地下空間利用可能な建築物を建築することができる高品質の改良地盤である。また、地盤構造体は、一部の壁体が強化型壁体で構成されており高強度である。このように、本発明によれば、高品質の改良地盤を造成することができる。
また、本願の別の発明に係る地下付建築物および別の発明に係る建築方法によって建築された地下付建築物は、改良地盤の地盤構造体に直接支持されており、支持状態安定性が優れた高品質の建築物である。
また、本願発明に係る建築物の建築方法によれば、改良地盤を構成する地盤構造体の地盤突出部の上に直接土台を設置でき、迅速に建築着工することができる。
このように、本願に係る発明によれば、より高品質の居住地域開発を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る造成方法で造成された造成地を示す平面図である。
【図2】図1に示される造成地の改良地盤の地盤構造体Dを含む部分を示す拡大平面図である。
【図3】図2に示される改良地盤X1-X1断面を示す部分拡大断面図である。
【図4】図2に示される改良地盤のY1-Y1断面を示す部分拡大断面図である。
【図5】(A)は改良地盤の造成方法の要部のフローチャートであり、(B)は建築方法の要部のフローチャートである。
【図6】図1に示される改良地盤の造成手順を説明するための説明図である。
【図7】図2に示される地盤構造体Dに住宅を建築した状態を示す説明図である。
【図8】図7に示される造成地のZ-Z断面を示す拡大部分断面図である。
【図9】図8に示されるX2-X2断面を示す断面図である。
【図10】図8に示されるY2-Y2断面を示す断面図である。
【図11】隣接する住宅の外壁の状態を示す水平断面部分拡大図である。
【符号の説明】
【0069】
10,1 0a,10b…二階建て木造戸建て住宅(建築物)、20,20a,20b…地下空間(内部空間)、
21…底盤(連続底盤)、21a〜21d…地下空間(内部空間)、
22…壁体(地下壁)、23…外壁体、23a〜23d…外壁体、24…中壁体、24a〜24c…中壁体、
221〜224…外壁体(地下壁)、225〜227…中壁体(地下壁)。
25a〜25d…囲み構造、26…地盤突出部、26a…モルタル層、27…表面部材、
28…排水部、28a…貫通穴、28b…排水筒部、
30,30a,30b…住宅本体、301…土台、302…大引き、303…根太、304…床材、
305…壁材、306…外壁材、Mb…土台、
40…排水構造、41…導水管(導水路)、42…中継管、44…透水層、
A〜D…地盤構造体、E…土質地盤部、Em…盛土部、G…改良地盤、H…壁体の高さ、
U1a,U1b…底盤の広がり幅、U2a,U2b…外壁体の広がり幅
V1…測定方向、R…線路、S…造成地
【発明を実施するための形態】
【0070】
次に、本願発明に係る改良地盤、その造成方法、造成された改良地盤に建築される建築物およびその建築方法の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0071】
図1に示されるように、造成地Sには、4戸の戸建住宅が並ぶA群と、5戸の戸建住宅が並ぶB群と、7戸の戸建住宅が並ぶC群と、4戸の戸建住宅を並べて建築可能なD群とがある。なお、図1に示すA群〜D群は、各群周辺の改良地盤を構成する地盤構造体の底盤の輪郭を示す線によって示されている。A群およびB群の戸建住宅は、線路Rに沿った造成地Sの斜辺との間に無駄な隙間が空かないように、少しずつ玄関の位置がずれるようにして配置されている。また、C群の戸建住宅10は、隣接する戸建住宅10の玄関の位置を合わせて配置されている。他方、D群は、戸建て住宅建築前の状態である。
ここでは、D群周辺の改良地盤Gおよびその造成方法と、D群に建築される2戸の住宅10a,10b(図7参照)およびその建築方法について、図1から図11に基づいて詳細に説明する。
【0072】
まず、改良地盤について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示されるように、D群周辺の改良地盤Gは、所定位置に構築された地盤構造体Dと、当該地盤構造体Dの周囲の土質の地盤である土質地盤部E(図3参照)とで構成されている。
【0073】
図2及び図3に示されるように、地盤構造体Dは、所定位置に設けられた鉄筋コンクリート(コンクリート構造)の底盤21と、底盤上に立設された鉄筋コンクリート(コンクリート構造)の壁体22とで構成されている。
地盤構造体Dは、上方に開口を有する複数の内部空間(以下、地下空間と称する)21a〜21dを備えている。各地下空間21a〜21dは、後述の囲み構造25a〜25dに囲まれている。
【0074】
底盤21はコンクリート構造であり、排水構造の一部を構成する後述の排水部28を備えている。また、壁体22は、その上端に、土質地盤部Eの地表面よりも上方に突出する地盤突出部26を備えている。
【0075】
地盤突出部26は、建築物10aの土台301を設置する場所として使用可能なコンクリート構造物である。地盤突出部26の上端面にはモルタル層26aが形成されている。モルタル層26aは例えば地盤突出部26の上端部分の劣化防止や上端面の平坦化等の目的で形成されている。これにより、地盤突出部26上面は水平に広がる平面になっている。なお、壁体22の両表面は合成樹脂製の表面部材27に被覆されている。
【0076】
図2に示されるように、壁体22には、土質地盤部Eに接する外壁体23と、外壁体23に囲まれた内部領域に配置された中壁体24とがある。外壁体23は、地盤構造体Dの外周部を構成する壁体であり、地盤構造体Dは4つの外壁体23a〜23dを有する。また、中壁体24、隣接する2つの地下空間21a〜21dを仕切るように配置された壁体であり、地盤構造体Dは3つの中壁体24a〜24cを有する。つまり、中壁体24を介して隣同士の地下空間21a〜21dが隣接している。なお、本実施形態の中壁体24は全て、次に説明する強化型壁体である。
【0077】
強化型壁体とは、壁体(ここでは中壁体24)の両側に底盤21が広がる状態になる位置に配置された壁体のことである。なお、ここで言う底盤21の広がり幅U1a,U1bとは、中壁体24の基部から測定方向に離間して設置された壁体の基部までの距離である。この距離の測定方向は、中壁体24の壁芯面(又は壁芯面についての法線方向)に直交する方向V1である。例えば中壁体24aであれば、当該中壁体24aの壁芯位置から隣の壁体23a,24bの壁芯までの測定方向の距離のことである。広がり幅U1a,U1bは、中壁体24の延在方向の左右両側について測定可能である。
強化型壁体としては、底盤21の広がり幅U1a,U1bが、壁体24の延在方向の左右いずれの側についても、壁体24の高さH(図3参照)以上の長さであり、当該高さHより長い方が好ましい。さらに、本実施形態のように、隣あう壁体23a,24bが同じまたは同等の高さであるような場合、広がり幅U1a,U1bは壁体24の高さの2倍以上、そして2倍より長い方が好ましい(図3参照)。このような幅広の底盤21の上に立設された中壁体24は、底盤21によって安定的に支持される。これにより、高強度の地盤構造体Dが構築される。
なお、壁体22は、必ずしも直線状に延在するものでなくても良いが、本実施形態の壁体22は、いずれも直線状に延在する状態で形成されている。
【0078】
本実施形態の強化型壁体は、さらに、その両端部で外壁体(別の壁体)23に固定されている。そして、外壁体23は、強化型壁体の両側に広がった状態になっている。なお、ここで言う外壁体23の広がり幅U2a,U2bとは、中壁体24の端部から測定方向V1に離間して設置された壁体の基部までの距離である。この距離の測定方向は、壁延の壁芯面に直交する方向で且つ外壁体延在方向である。例えば中壁体24aであれば、当該中壁体24aの壁芯位置から隣の壁体23a,24bの壁芯までの測定方向の距離である。広がり幅U2a,U2bも、中壁体24の左右両側について測定可能である。
従って、強化型壁体としては、外壁体の広がり幅U2a,U2bが、中壁体24の左右いずれの側についても、中壁体24の高さH以上の長さであり、当該高さより長い方が好ましい。さらに、本実施形態のように、隣あう壁体23a,24bが同じまたは同等の高さである場合、広がり幅U2a,U2bは壁体24の高さの2倍以上であり、2倍より長い方が好ましい。このような幅広の外影体23に両端部が固定された中壁体24は、外壁体23によって安定的に支持される。これにより、高強度の地盤構造体Dが構築される。
【0079】
図2に示されるように、地盤構造体Dには囲み構造25a〜25dが複数存在する。各囲み構造25a〜25dは4つの壁体で構成されている。例えば、図2の紙面上左端の地下空間21a〜21dを囲む囲み構造25aは、外壁体23aと外壁体23bと、中壁体24aと外壁体23dであって前記地下空間21a〜21dを囲む部分の構造である。他の囲み構造25b〜25dも同様に特定される。従って、囲み構造25a〜25dを構成する壁体の少なくとも一つは中壁体(強化型壁体)24である。また、中壁体24は、相互に隣接する地下空間21a〜21dのうちの一方の囲み構造25a〜25dの一部であると共に他方の地下空間21a〜21dの囲み構造の一部である。つまり、囲み構造25a〜25dは、隣接配置された囲み構造のいずれの構成要素でもある。
【0080】
また、本実施形態の地盤構造体Dでは、各囲み構造25a〜25dの囲み面積(囲み構造で囲まれた範囲の面積)に対して底盤が大型である。より具体的には、上記囲み面積のうちで最も広い最大囲み面積(本実施例では全ての囲み構造が同面積)よりも、底盤21の総面積から当該最大囲み面積を除いた囲み構造外側面積の方が広くなる大きさの底盤が用いられている。なお、囲み面積とは、例えば壁芯の位置で取り囲まれた面積である。このような構成であれば、安定性に優れた地盤構造体を提供でき、ひいては、強固な改良地盤を提供できる。
【0081】
なお、地盤構造体の各地下空間21a〜21dは、いずれも、直方体形状である(図2及び図3参照)。そして、外壁体23に囲まれた地下空間全体の形状も直方体形状である。なお、本実施形態の各地下空間21a〜21dは、高さ(深さ)が2400mmであり、各地下空間21a〜21dの上に建築可能な二階建て木造住宅の重量に相当する重量の水を貯水可能な容積を有している。従って、貯水することによって、当該住宅を建築したときに地盤構造体Dに加わる重力状態と同等の状態を作り出すことができる。この観点では、壁体22の高さは1.5m以上が好ましく、1.8m以上がより好ましい。
【0082】
また、改良地盤G(図1参照)は、改良地盤内部から造成地外に水を排出させる排水構造40を備えている(図4参照)。
排水構造40は、地盤構造体Dの地下空間21a〜21d内の水を排出するための排水部28と、排水部28を経て地盤構造体Dの外に流出した水を、排水先である調整池(不図示)に流動させる導水管(導水路)41と、排水部28の排水を導水管に導く中継管42と、地盤構造体Dの周辺の土に含まれる水の取り込みを可能にする貫通孔を備えた集水管と、集水管の上側を覆う透水層44とを備えている。
【0083】
これらのうち、排水部28は、地盤構造体Dの底盤21に設けられている。具体的には、排水部28は、底盤21を上下方向に貫通した貫通穴28aと、貫通穴28aの下側に配置された貫通穴28aより大径の円筒形の排水筒部28bとを有するものであり、通常、排水可能な通水状態になっている。また、図示されているように、排水部28は、各地下空間21a〜21dに対応して複数設けられている。
この貫通穴28aは、壁体22に隣接する位置に配置されており、貫通穴28aに隣接する外壁体23dの地盤突出部26に立った状態で地下空間21a〜21d内を見たとき、貫通穴28aの開口を視認できる状態になるように形成されている。これにより、地下空間21a〜21d内に降りることなく、貫通穴28aの開閉状態を確認可能である。
また、排水部28は、貫通穴28aによって確保された排水路を閉塞させることで、地下空間21a〜21dに貯水可能な止水状態にすることができるものである。止水状態にする方法としては、例えば、貫通穴28aの上端開口に蓋体(不図示)を設置する方法などを挙げることができる。地盤突出部26に立った状態で視認可能な貫通穴28aにおいては、この開閉作業(止水状態と通水状態との切り替え)も、地下空間21a〜21dに降りることなく行うことが可能である。なお、切り替え作業については、後述の貯水工程および建築準備工程で説明する。
また、本実施形態の排水部28は、地盤構造体構築時(構造体構築工程中)に形成されたものであるが、構築後の地盤構造体に穴あけ加工を施して形成してもよい。
【0084】
導水管41は、土質地盤部E(Em)に埋設されている。導水管41は、排水部28からの排水を排水先である調整池(不図示)まで流動させるものである。なお、本実施形態では、導水管41に貫通孔(不図示)が形成されており、導水管41は集水管を兼用している。また、排水先である調整池の水位は、地盤構造体Dの底面よりも低い標高になっている。従って、貫通孔を通って管内に流入した水は、集水管兼用の導入管41によって排水先である調整池へと自然排水によって流れる。そして、集水管でもある導水管41の周囲に、透水層44として砕石層が設けられている。このような構成の排水構造40を土質地盤部Eにも備えると、土の中の水が効率的に排出され、土質地盤部Eの地下水位の上昇が未然に防止される。
なお、砕石層で用いる砕石は、できるだけ大きさが均等な物を用いることが好ましい。そして、砕石層内部の空間の率は40%から60%が好ましい。このような透水層を設けることによって、透水に必要ない砕石相互間の空隙が確保され、効率良く集水することができるようになる。そして、本実施形態では、排水先である調整池が底盤10より低い位置にあるため、自然排水可能であるが、自然排水できない場合は、排水ポンプ等を使用して排水しても良い。また、土質地盤部Eに設置された本実施形態の排水構造40は、造成地の内部、特に地盤構造体Dの周辺の土に含まれる水を効率的に排出させることができる点で、擁壁の外側面に設けられた排水用の穴とは構造及び効果が全く異なる。
なお、透水層44の上には、適量供給された盛土からなる盛土部Emがある。このように盛土を供給することで、地盤構造体Dの周囲に一定高さの一続きの地表面を造成している。
【0085】
このように、本実施形態の改良地盤Gでは、改良地盤を構成する地盤構造体Dの地下空間21a〜21dの排水部28を、必要に応じて通水状態にして排水したり、止水状態にして貯水したりすることができる。
例えば、造成完了から建築着工までの待機期間が長期になる場合に、排水部28を止水状態にして地下空間21a〜21dに貯水しておけば、住宅を建築した状態と同等の重力を地盤構造体Dに付与することができ、地盤構造体Dの状態ひいては改良地盤G全体をより安定した状態に維持することができる。なお、貯水先とする地下空間21a〜21dは、状況に応じて適宜選択可能である。全ての地下空間21a〜21dに貯水してもよいし、例えば一部の地下空間21a〜21dの上に既に住宅が建築されているような場合は、その住宅とのバランスがとりやすい地下空間21a〜21dにのみ貯水しても良い。
【0086】
次に、本実施形態の改良地盤の造成方法について説明する。
本実施形態の造成方法では、概略的には、図5に示されるような各工程を順に行う。
具体的には、造成方法は、少なくとも、掘削工程と、構造体構築工程と、排水構造設置工程と、土質地盤形成工程と、地盤養生工程と、重力付与工程とを有している。なお、ここでは、本実施形態の造成方法に関する内容について詳しく説明し、周知の内容については、その説明を省略しているところがある。
【0087】
これらの工程のうち、掘削工程では、例えば、穴掘りや平面などに整地された地面の造成が行われる。本実施形態では、この掘削工程で造成地Sの少なくとも一部を削る。後述する地盤構造体Dの設置面は、この掘削工程(設置面形成工程として機能)において整地されたものである。また、掘削工程では、掘削により切土が生じる。生じた切土は、造成工程で必要な盛土として使用するので、造成地内又は隣接した保管場所に移動させておく。
【0088】
構造体構築工程は、造成地Sの所定位置の地表面上に地盤構造体A〜Dを構築する工程であり、底盤21を設置する工程と、壁体22を形成する工程とを含む。具体的には、造成地S内に確保した所定位置(設置面)に鉄筋コンクリート構造の底盤21を打設する工程と、底盤21の上に壁体22を立設する工程とを有する。両工程は同時に行うことが可能である。
【0089】
そして、壁体形成工程は、底盤21上に直線状に延在する鉄筋コンクリート構造の壁体22を打設する工程である。直線状に延在する壁体22を形成すると、その上端の地盤突出部26も直線状に延在する状態になる。地盤突出部26が直線状であれば、地盤突出部26の上が土台301の設置場所として好適な場所になり好ましい。
【0090】
ここで立設される壁体22は、土質地盤部に接することになる外壁体23と、外壁体に囲まれた内部領域に配置された中壁体(強化型壁体)24である。そして、ここでは、この中壁体24を介して2つの地下空間21a〜21dが隣接する状態になるように中壁体24を形成する。このような構成にすると、一つの中壁体24は、二つの囲み構造25a〜25dの構成要素として用いられることになる。また、壁体形成工程では、土台301を設置可能な地盤突出部26を備えた囲み構造25a〜25dを複数備えた地盤構造体A〜Dが構築される。また、構造体構築工程では、最大囲み面積よりも、底盤21の総面積から当該最大囲み面積を除いた外側面積の方が広くなるように、底盤21及び壁体22を形成している。このような構造にすると、囲み構造25a〜25dの固定状態が安定する。なお、壁体21の詳細については、上述したので、ここでは説明を省略する。
【0091】
また、構造体構築工程では、各地下空間21a〜21dの上に建築することができる二階建て木造住宅に相当する重量の水を貯水可能な容積の地下空間21a〜21dが形成される。各地下空間21a〜21dは直方体形状であり、高さが2.4mである。なお、底盤21および壁体22を造る方法としては、公知の方法が種々あり、それらの方法を用いることが可能であるので、ここでは、底盤21および壁体22の構築方法に関する詳細な説明を省略する。
【0092】
次に排水構造設置工程を行う。
排水構造設置工程は、地下空間21a〜21d及び土質地盤部Eの内部から水を排水するため排水構造を設置する工程である。排水構造設置工程は、排水部形成工程と、導水路設置工程と、集水管設置工程と、透水層形成工程と、盛土工程とを含むものである。
【0093】
これらのうち排水部形成工程は、地盤構造体の地下空間21a〜21d内の水Wの排出に用いられる排水部28を地盤構造体Dに形成する工程である。排水部28は、各地下空間21a〜21dに対応して複数形成される。排水部28は、排水路確保のためのものである。また排水部28は、排水路を閉塞状態にすることによって水Wの排出が阻止される止水状態にすることが可能になっている。具体的には、排水部28の貫通穴28aを蓋体等で覆うことによって止水状態にすることが可能である。
【0094】
導水路設置工程(集水管設置工程)は、排水部28を経て地盤構造体Dの外に流出した水Wを、排水先である調整池(不図示)に流動させる導水管41を設置する工程である。なお、上述したように、導水管41は集水管を兼用しており、導水管41に集水用の貫通孔が形成されている。
透水層形成工程は、導水管41の周囲に砕石層などの透水層44を設ける工程である。
【0095】
土質地盤形成工程は、地盤構造体Dの周囲に盛土Emを供給し、地盤構造体Dの周囲に、土質である土質地盤部Eを構成する。このとき、地盤構造体D周辺の透水層44を土で覆うことで、土質地盤部Eの地表面全体が一定の高さに整地された改良地盤Gが造成される。また、壁体22の上端が土質地盤部Eの地表面よりも上方に突出する状態になるように土を調整(供給又は排除)する。ここでは、盛土を供給した。これにより、土台301の設置が可能な地盤突出部26の視認が容易であると共に地盤突出状態に土が被っておらず、その後の建築作業が行いやすい。このようにして造成された改良地盤Gは、地下付住宅建設用地盤として好適である。
なお、造成工程で用いられる盛土Emは、掘削工程で生じた切土である。
【0096】
また、改良地盤の造成工程が完了すると、必要に応じて、地盤養生工程を行う。
地盤養生工程は、土質地盤部Eの地表面の少なくとも一部を外気に晒した状態で、改良地盤Gの養生を行う工程である。これにより、造成された改良地盤G、特に盛土Emの部分の地固めが行われ、安定性が向上する。
【0097】
そして、改良地盤Gの造成工程が完了すると、必要に応じて、荷重付与工程を行う。
荷重付与工程は、貯水先として選択された地下空間21a〜21dに対応する前記排水部28を止水状態にする止水工程と、当該地下空間21a〜21dに貯水する貯水工程とを有する。止水工程では、選択された地下空間21a〜21d(例えば図7では、紙面に向かって右側2つの地下空間21c,21d)に対応した排水部28を通水状態から止水状態にする。本実施形態では、図示しない蓋体を排水部28に取り付けて止水状態にした。そして、貯水工程では、通水構造である排水部28が止水状態である地下空間21a〜21d内に貯水する。上記2つの地下空間21a〜21dに貯水することで、地盤構造体D全体にバランスの良い荷重が加わる状態になるので、地盤構造体Dひいては改良地盤G全体の安定性を長期間確保することができる。地盤の品質を長期間保持することができれば、建築着工時期の選択の自由度が高まる点で優れた改良地盤であるということができる。なお、荷重付与工程を行う時期は、構造体構築工程後であれば、いつでも可能である。
【0098】
次に、上記のような改良地盤D上に建築した建築物について説明する。
図7に示されるように、地盤構造体Dの上に建築された建築物は、木造二階建ての住宅10a,10bである。住宅10a,10bは、複数の囲み構造25a〜25dのうちの一つである対応する囲み構造25a,25bの上に建築されたものである。なお、各住宅10a,10bの配置は、対応する囲み構造25a,25bに囲まれた地下空間21a,21bの上方である。
【0099】
住宅10a,10bは、囲み構造25a,25bの地盤突出部26に設置された土台301と、当該土台301を基礎として建築された床構造とを備えている。これらのうち、床構造は、建築物の一階と前記地下空間21a〜21dとの行き来に用いられる地下出入構造を備えている。つまり、上記住宅は、地下室付住宅用の基礎工事を行って建築したものではないが、囲み構造の地盤突出部に土台301を設置し、地下空間21a〜21dの上に建築したものであるので、地下出入り構造を設けるだけで、住宅の下の地下空間21a〜21dを利用可能になる。この点で、住宅は、地下付住宅ということができる。また、地下空間を地下室のように利用できるという点で、地下室を有する戸建住宅ということもできる。
【0100】
図8から図10に示すように、戸建住宅10(10a,10b)は、地下空間20(20a〜20d)上に、2階建ての2×4工法による住宅本体30(30a,30b)が立設された木造建築物である。なお、図8および図9においては、屋根部分の一部を省略している。
【0101】
地下空間20a〜20dの底面は、コンクリートを打設して連続的に形成された底盤(連続底盤)21である。底盤21とは、隣接した複数戸分に相当する大きさの底盤を連続的に共通させて形成したものであるということができる。D群では4戸分の底盤21が一体的に形成されている。なお、A群では4戸分が、B群では5戸分が、C群では7戸分が一体的な底盤が形成されている。
【0102】
図9に示すように、底盤21は、輪郭が長方形状に形成されている。この底盤21には、コンクリートを打設して形成された壁体22が立設されている。この壁体(地下壁)22は、底盤21の周縁部の4つの外壁体221〜224と、当該4つの外壁体221〜224に囲まれた範囲に位置する中壁体225〜227である。中壁体225〜227は、隣接する地下空間20の間(建築後は戸建住宅10a,10bの間)に位置し、一方の面が一方の地下空間20の壁面、他方の面が他方の地下空間20の壁面となっている。中壁体225〜227は、他の壁体221〜224が約20cmなのに対して厚く形成されており、約25cmである。
【0103】
住宅本体30a,30bは、平面視して長方形状に形成されている。住宅本体30aは、平行に配置された壁体221,225により支持されている。また、住宅本体30bは、壁体223,225により支持されている。住宅本体30a,30bと壁体222との間には、空間が確保され、地下空間20a,20bの通気や採光に使用することができる。住宅本体30a,30bと壁体224との間には空間はなく、外壁が壁体224の頭頂面に繋がっているものの、壁体224は、多少、住宅本体30a,30bの外壁を支持するものとして機能するが、住宅本体30a,30b全体の支持体としていない。
【0104】
住宅本体30a,30bは、壁体221,223,225の頭頂面に沿って配置された土台301と、土台301上に配置され1階の床面を支持する横架材である大引き302と、壁体221と壁体225との間、壁体223と壁体225との間に跨るように配置され、大引き302と共に1階の床面を支持する根太303と、大引き302および根太303上に配置された床材304とを備えている。そして、住宅本体30a,30bの1階部分の居室の外壁となる壁材305が大引き302上に配置されている。
【0105】
住宅本体30a,30bは、地下空間20a,20bでそれぞれの壁面となる壁体225を共通した壁体とすることで、無駄な隙間を省くことができる。また、壁体222、224はコンクリートと土とが接する部分となるため、温度差によって内側に結露の発生が見られることが多い。このため、コンクリートと土とが直接接しないように断熱型枠を使用してコンクリートを打設するので、木製型枠を使用してコンクリートを打設後、断熱材を貼り付けるよりも手間を省くことができる。しかも壁体を形成するための資材を節約することができる。
【0106】
住宅本体30a,30bで向き合うと壁材305は、それぞれの土台301および大引き302上に設けられていることで、外壁同士の間に隙間が設けられている。住宅本体30a,30bで向き合うと壁材305の間に隙間を設けることで、隣接した住宅本体30a,30bからの互いの騒音や振動を伝わり難くすることができる。
【0107】
この隙間は、図11に示すように、遮断部材となる外壁材306により閉塞されている。また、図示していないが、隙間の上部についても住宅本体30a,30bの屋根が連続的に形成されていることで遮断部材として機能して隙間を閉塞している。住宅本体30a,30bの向き合う壁材305は、周囲が閉塞されているので、住宅本体30a,30bの居室からの騒音や振動を互いに伝え難くしつつ、この隙間に雨が浸入したり、泥埃が侵入したりすることを防止することができる。従って、外壁が黒ずんだり、劣化したりすることを防止することができる。
【0108】
このように、本実施の形態に係る戸建住宅10は、底盤21に立設された壁体22により地下空間20となる空間を確保することができる。底盤21が複数戸分の基礎の底盤を連続的に形成しているので、それぞれの底盤が独立した戸建住宅より、底盤の面積を広く確保することができる。従って、個々の戸建住宅10の安定性が増すので、地下室20を有していても耐震性を向上させることができる。また、底盤21は、地震による地盤の液状化に対しても強固な基礎の状況を維持することができる。
【0109】
また、底盤21により耐震性が向上することで、住宅本体30a,30bに大きな揺れが発生しにくく、位置関係が変動し難いので、住宅本体30a,30bが少しの隙間を介して接近していても、また住宅本体30a,30bが隙間を閉塞する外壁材306により繋がっていても、地震の揺れによる損傷を防止したり少ないものとしたりすることができる。
【0110】
例えば、地表面が軟弱地盤で、地上に基礎の底盤を施工する場合では、固い支持層まで地中深く杭を打つ必要があるが、底盤21は複数戸分の基礎の底盤を連続的に形成しているため、地表面が軟弱地盤でも、杭打ちが省略でき、支持層までの深さに関係なく構築することができる。
【0111】
以上、本実施の形態に係る地下空間を有する戸建住宅を説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本実施の形態では、住宅本体30aは壁体221,225に支持され、住宅本体30bは壁体223,225に支持されており、地下壁222と壁体224とには支持されていなかったが、住宅本体30がコ字状に形成された壁体22に支持されていたり、口字状に形成された壁体22に支持されていたりするように、壁体22と住宅本体30を設計してもよい。
【0112】
このような実施形態の地下空間を有する戸建住宅は、複数戸分の基礎の底盤が連続的に形成された連続底盤と、前記底盤に立設され、地下空間の壁面となる壁体と、前記壁体上に外壁が立設された住宅本体とを備えたことを特徴とする。
【0113】
このような構成の戸建て住宅によれば、底盤に立設された壁体により地下空間となる空間を確保することができる。底盤が複数戸分の基礎の底盤を連続的に形成したものであるので、それぞれの底盤が独立した戸建住宅より、底盤の面積を広く確保することができる。従って、連続させた戸建住宅の数が増えれば増えるほど底盤の面積が広くなり、底盤の面積が広くなればなるほど安定性が増すので、耐震性を向上させることができる。
【0114】
前記壁体は、隣接する地下空間同士で共通して形成されているのが望ましい。地下空間の壁面となる壁体を隣接する地下空間同士で共通させることで、無駄な隙間を省くことができる。また、壁体を形成するための資材を節約することができる。
【0115】
前記壁体には、隣接する2戸の住宅本体の向き合う外壁が隙間を空けて立設されているのが望ましい。外壁が隙間を空けて立設されていると、隣接した住宅本体からの互いの騒音や振動が伝わり難くすることができる。
【0116】
前記隣接する2戸の住宅本体の向き合う外壁は、周囲が閉鎖されているのが望ましい。隣接する2戸の住宅本体の向き合う外壁が隙間を空けた状態で周囲が閉鎖されていることで、騒音や振動を伝え難くしつつ、この隙間に雨が浸入したり、泥埃が侵入したりすることを防止することができる。
【0117】
このような地下空間を有する戸建住宅は、面積を広く確保することができる底盤により安定性が増すので、耐震性を向上させることができる。よって、本発明の地下空間を有する戸建住宅は、更なる耐震性の向上を図ることができる
【0118】
次に、上記工程で造成方法で造成した改良地盤上に、地下付住宅を建築する建築方法の手順を説明する。なお、ここでは、本実施例の要部について詳細に説明し、それ以外の周知の事項にち手はその説明を省略しているところがある。
【0119】
地下付住宅の建築は、概略的には、建築着工に際して改良地盤について行う建築準備工程と、その後に行う建築工程とで構成されている。
【0120】
まず、必要に応じて、建築準備工程を行う。建築準備工程には、地下空間10a〜10d内の貯留水の有無を確認する工程と、確認した貯留水を排出させる工程とが含まれる。
【0121】
貯留水確認工程は、地盤構造体の各地下空間10a〜10dの貯水状態を確認する工程である。ここで、貯水された地下空間10a〜10dがなければ、次の貯留水排出工程は不要である。
他方、貯水された地下空間10a〜10dがあれば、次に、貯留水排出工程を行う。
貯留水排出工程は、止水状態の排水部を通水状態にする工程である。具体的には、貯水工程の際、排水部を止水状態にするために設置した蓋体(不図示)を取り外す。これにより、排水部が通水状態になり、排水が開始される。そして、排水の後、続く建築工程が行われる。
【0122】
建築工程は、少なくとも、改良地盤上に土台301を設置する土台工程と、土台301の上に柱を立設する柱工程と、土台301に支持された床構造を設ける床工程と、地下空間10a〜10dの上方に居住空間を建築する工程と、地下空間10a〜10dを利用可能にするための地下空間10a〜10d工事工程とを有している。
なお、本実施形態では、地下付住宅の建設であるにも拘わらず、基礎工事が不要である。従って、地下室付き住宅建築時の基礎工事では通常必要な穴掘り工程が不要である。従って、本実施形態に係る地下付住宅の建築方法を用いれば、短工期且つ低コストで地下付き住宅を建築することができる。
【0123】
土台工程は、改良地盤の一部である地盤構造体の地盤突出部の上端に土台301を設置する工程である。そして、柱工程は、地盤突出部に設置した土台301又は、地盤突出部に支持された基礎梁の上に柱を立設する工程である。
また、床工程は、土台301の上に住宅の一階部分の床構造を造る工程である。そして、居住空間を建築する工程は、住宅の床構造以外の一階部分を造る工程である。
【0124】
さらに、地下空間10a〜10d工事工程は、床構造に、建築物の一階と地下空間10a〜10dとの行き来に用いられる地下出入構造を設ける工程である。
【0125】
なお、上記各工程に関する内容のうち、公知の建築技術に関する内容については、ここでは詳細な説明を省略した。また、上記工程以外に必要な公知の工程についても説明を省略した。
【0126】
また、本実施形態の建築方法の特徴は、二軒目の住宅を建築する際にも顕著に表れる。
二軒目の住宅の建築とは、地盤構造体の一つの地下空間10a〜10dの上に、建築済み又は建築中の先行建築物が既に存在していることを前提としている。
本実施形態の建築方法によれば、このような住宅が既に存在していたとしても、一軒目と同様の建築方法で住宅を建築することができる。つまり、一軒目の住宅が仮に建築途中であったとしても、その建築中の住宅に隣接する位置に同時並行的に住宅を建築することができる。
従来の建築方法であれば、住宅を建築する場合はまず基礎工事が必要であるので、建築中の住宅に隣接する場所に、同時並行的に住宅の建築を行うことは容易でない。この点、本実施形態の建築方法であれば、改良地盤に対して基礎工事を行う必要がなく、改良地盤に対して行う工程は土台工程であるので、建築中の住宅の隣であっても、同時並行的に住宅を建築することができる。
【0127】
また、建築工程において、地盤構造体の上に、複数の建築物を建築することができる。この場合、異なる囲み構造に建築された両建築物は、同じ地盤構造体上に建築されたものである。
この場合、建築される複数の建築物のうち隣接して配置される建築物の外壁を、前記地盤突出部又は前記基礎梁の上方に隙間を空け、且つ、地盤突出部又は基礎梁の延在方向と同じ方向に延在する状態で立設する。さらに、地盤突出部又は前記基礎梁の上方に相対向する状態で配置された前記外壁の間の隙間を閉塞する外壁材を設置する。
【0128】
上述した本願発明に係る改良地盤、その造成方法及び建築物の建築方法には、上記実施形態の他、本発明の効果を奏する範囲で種々改変されたものが含まれる。
【0129】
地盤構造体を構築する位置は、特に限定されることはなく、例えば、地盤構造体の設置面の周囲の少なくとも一部が、垂直又は傾斜した面に隣接していてもよい。
この場合、地盤構造体と隣接した面との間に空間が生じるように、掘削工程で掘削しておく。
隣接面は、上り勾配の法面がより好ましい。そして、記排水構造を、先の空間の底面に設置する。この場合採石層は、採石を投入することで実行可能である。そして、その後、採石層の上に盛土を供給すれば良い。
【0130】
排水部を形成する工程は、地盤構造体を構築する構造体構築工程の一部として行ってもよい。
上記実施形態の改良地盤は、戸建て住宅の地盤として好適であり、木造住宅建築用の地盤として特に好適である。
【0131】
また、貯水状態の地下空間10a〜10dを閉じるために蓋体を用いても良い。中壁体を備えた地盤構造体は、平面視したときの上端面の形状が田字形状を含む格子形状になるような構造であってもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造成地内の所定位置に構築された地盤構造体と、当該地盤構造体の周囲の土質の地盤である土質地盤部とを有する改良地盤であり、
前記地盤構造体は、前記所定位置に設けられた底盤と、当該底盤の上に立設された壁体とを有するものであり、
当該壁体は、その上端に、前記土質地盤部の地表面よりも上方に突出する地盤突出部を備えているものであり、
前記壁体のうちの少なくとも一部の壁体は、前記底盤が壁体の両側に広がる状態になる位置に配置された強化型壁体であり、
前記底盤の、当該強化型壁体の基部からの広がり幅は、当該強化型壁体の高さ以上の長さであり、
前記地盤構造体は、上方に開口を有する複数の地下空間を備えており、
各地下空間は、前記壁体で構成された囲み構造に囲まれており、
各囲み構造は、少なくとも一部が前記強化型壁体で構成されていることを特徴とする改良地盤。
【請求項2】
地表面から突出した前記囲み構造の地盤突出部は、建築物の土台の設置場所として使用可能なものであり、
前記地盤構造体は、複数の囲み構造を備え、各囲み構造に囲まれた地下空間の上方に位置するように建築物の建築が可能になっている、請求項1に記載の改良地盤。
【請求項3】
前記底盤は、各囲み構造で囲まれた範囲の面積である囲み面積のうちで最も広い最大囲み面積よりも、前記底盤の総面積から当該最大囲み面積を除いた外側面積の方が広くなる大きさである、請求項1又は請求項2に記載の改良地盤。
【請求項4】
前記強化型壁体は、延在方向が直線である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の改良地盤。
【請求項5】
前記囲み構造は、4つの壁体で構成されており、
当該囲み形状を構成する壁体の少なくとも一つは前記強化型壁体である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の改良地盤。
【請求項6】
前記壁体は、前記土質地盤部に接する外壁体と、当該外壁体に囲まれた領域に配置された中壁体とを含み、
当該中壁体を介して2つの地下空間が隣接配置されており、
前記中壁体は、相互に隣接する地下空間のうちの一方の囲み構造の一部であると共に他方の地下空間の囲み構造の一部であり、
当該中壁体は、前記強化型壁体である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の改良地盤。
【請求項7】
前記強化型壁体は、その両端部で別の壁体に固定されており、
当該別の壁体は、前記強化型壁体の両側に広がっており、
当該別の壁体の、前記強化型壁体の基端部からの広がり幅は、前記強化型壁体の高さ以上の長さである、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の改良地盤。
【請求項8】
前記改良地盤は、改良地盤内部から造成地外に水を排出させる排水構造を設置する排水構造を備えており、
当該排水構造は、前記地盤構造体の地下空間内の水の排出に用いられる排水部と、当該排水部を経て地盤構造体の外に流出した水を、排水先に流動させる導水路とを備えており、
前記排水部は、前記各地下空間に対応して前記地盤構造体に複数形成されており、
前記導水路は、前記土質地盤部に埋設されている、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の改良地盤。
【請求項9】
前記排水構造は、さらに、前記地盤構造体の周辺の土に含まれる水の取り込みを可能にする貫通孔を備えた集水管を備えており、
当該集水管は、前記土質地盤部に埋設されており、
前記土質地盤部は、前記集水管の上側を覆う透水層と、当該透水層の上側を覆う盛土部とを有しており、
前記導水管は、前記集水管に取り込まれた水を、前記排水先に流動させるものである、請求項8に記載の改良地盤。
【請求項10】
前記排水部は、前記排水に用いられる排水路を確保するためのものであり、当該排水路を閉塞状態にすることによって水の排出が阻止される止水状態にすることが可能になっており、排水部を止水状態にして地下空間に貯水することが可能である、請求項8又は請求項9に記載の改良地盤。
【請求項11】
前記地盤構造体の各地下空間は、少なくとも、各地下空間の上に建築可能な二階建て木造住宅に相当する重量の水を貯水可能な容積を有するものである、請求項10に記載の改良地盤。
【請求項12】
前記各地下空間は、直方体形状であり、高さが1.5メートル以上である、請求項11に記載の改良地盤。
【請求項13】
前記各地下空間に面する前記壁体の内面は、合成樹脂材によって被覆されたものである、請求項10から請求項12のいずれか一項に記載の改良地盤。
【請求項14】
請求項2から請求項13のいずれか一項に記載の改良地盤に建築された建築物であって、
当該建築物は、前記地盤構造体の囲み構造に囲まれた地下空間の上方に建築されており、
前記囲み構造の地盤突出部に設置された土台と、当該土台を基礎として建築された床構造とを備えており、
当該床構造は、建築物の一階と前記地下空間との行き来に用いられる地下出入構造を備えていることを特徴とする地下付建築物。
【請求項15】
前記地下付建築物は、複数の囲み構造のうちの一つの囲み構造の上に建築されたものであると共に、他の囲み構造の上に建築された他の建築物と同じ地盤構造体上に建築されたものである、請求項14に記載の地下付建築物。
【請求項16】
前記地下付建築物の下の囲み構造の地下空間と前記他の囲み構造の地下空間は隣接しており、
前記地下付建築物及び前記他の建築物の相互に隣接する外壁は、前記地盤突出部又は前記基礎梁の上方に隙間を空け、且つ、地盤突出部又は基礎梁の延在方向と同じ方向に延在する状態で立設されている、請求項15に記載の地下付建築物。
【請求項17】
前記地盤突出部又は前記基礎梁の上方に相対向する状態で配置された前記外壁の間の隙間は閉塞されている、請求項12に記載の地下付建築物。
【請求項18】
造成地内に確保した所定位置に地盤構造体を構築する構造体構築工程と、
前記地盤構造体の周囲に土質の地盤である土質地盤部を形成し、当該土質地盤部と前記地盤構造体とで構成される改良地盤を造成する地盤造成工程とを有し、
前記構造体構築工程は、前記所定位置に、コンクリート構造の底盤を設ける工程と、
当該底盤の上にコンクリート構造の壁体を立設する工程とを有しており、
前記地盤構造体は、上方に開口を有する複数の地下空間を備え、且つ当該地下空間が前記壁体で構成された囲み構造に囲まれた構造になっており、
前記地盤造成工程は、前記壁体の上端が土質地盤部の地表面よりも上方に突出する状態になるように土の量を調整して土質地盤部を形成する工程であることを特徴とする改良地盤の造成方法。
【請求項19】
前記壁体を立設する工程は、少なくとも、前記土質地盤部に接することになる外壁体と、当該外壁体に囲まれた領域に配置された中壁体とを設ける工程であり、
前記壁体のうちの少なくとも一部の壁体は、前記底盤が壁体の両側に広がる状態になる位置に配置された強化型壁体であり、
前記底盤の、当該強化型壁体の基部からの広がり幅は、当該強化型壁体の高さ以上の長さであり、
前記構造体構築工程は、前記複数の地下空間のいずれもが、少なくとも一部で前記強化型壁体に隣接する状態になるように、前記底盤及び壁体を設ける工程である、請求項1に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項20】
前記壁体を立設する工程は、少なくとも、直線状に延在する前記強化型壁体を立設する工程である、請求項19に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項21】
前記構造体構築工程は、各囲み構造で囲まれた範囲の面積である囲み面積のうちで最も広い最大囲み面積よりも、前記底盤の総面積から当該最大囲み面積を除いた外側面積の方が広くなるように前記底盤及び壁体を設ける工程である、請求項19又は請求項20に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項22】
前記構造体構築工程は、前記囲み構造に囲まれた前記地下空間が略直方体形状になり、且つ前記囲み構造を構成する壁体の少なくとも一つが前記強化型壁体になるように、前記底盤及び壁体を設ける工程である、請求項19から請求項21のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項23】
前記構造体構築工程は、前記中壁体を介して2つの地下空間が隣接し、且つ当該中壁体が強化型壁体になるように、前記底盤及び壁体を設ける工程である、請求項19から請求項22のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項24】
前記構造体構築工程で形成される強化型壁体は、両端部で別の壁体に固定されているものであり、
当該別の壁体は、前記強化型壁体の両側に広がっており、
当該別の壁体の、前記強化型壁体の基端部からの広がり幅は、前記強化型壁体の高さより長い、請求項19から請求項23のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項25】
前記構造体構築工程は、建築物の土台を上端に設置可能な前記地盤突出部を備えた前記囲み部を複数備えた前記地盤構造体を構築する工程であり、
当該地盤構造体は、各囲み構造に囲まれた地下空間の上に建築物の建築が可能なものである、請求項19から請求項24のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項26】
前記地盤造成工程の前に行われる工程として、さらに、造成後の改良地盤内部から造成地外に水を排出させる排水構造を設置する排水構造設置工程を有しており、
当該排水構造設置工程は、前記地盤構造体の地下空間内の水の排出に用いられる排水部を前記地盤構造体に形成する工程と、前記排水部を経て地盤構造体の外に流出した水を排水先に流動させる導水路を設置する工程とを有しており、
前記地盤構造体は、前記各地下空間に対応して形成された複数の前記排水部を備えているものである請求項18から請求項25のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項27】
前記排水構造設置工程は、前記地盤構造体の周囲の少なくとも一部に、当該地盤構造体の周辺の土に含まれる水の取り込みを可能にする貫通孔を備えた集水管を設置する工程と、
当該集水管と前記導水路を構成する導水管とを接続する工程とを、さらに有しており、
前記導水管は、前記集水管から流れ込んだ水を前記排水先に流動させるものである、請求項26に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項28】
前記排水構造設置工程で設置される前記排水部は、前記排水に用いられる排水路を確保するためのものであり、当該排水路を閉塞状態にすることによって水の排出が阻止される止水状態にすることが可能になっている、請求項26又は請求項27に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項29】
前記構造体構築工程で構築される前記地盤構造体の各地下空間は、少なくとも、各地下空間の上に建築可能な二階建て木造住宅に相当する重量の水を貯水可能な容積を有するものである、請求項28に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項30】
前記構造体構築工程で構築される地盤構造体の各地下空間は直方体形状であり、
前記地盤造成工程は、地盤構造体の底面から土質地盤部の地表面までの高さが1.8m以上になるように土の量を調整して土質地盤部を形成する工程である、請求項29に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項31】
前記構造体構築工程の後に行う工程として、さらに荷重付与工程を有しており、
当該荷重付与工程は、貯水対象の地下空間に対応する前記排水部を止水状態にする工程と、
貯水対象の地下空間に貯水する工程とを有する、請求項28から請求項30のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項32】
前記造成工程の後に行う工程として、さらに、前記土質地盤部の地表面を外気に晒した状態で改良地盤を養生する改良地盤養生工程を有する、請求項28から請求項31のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項33】
前記構造体構築工程の前に行われる工程として、造成地の少なくとも一部を削る掘削工程を、さらに有しており、
前記造成工程で土質地盤部を形成する際に用いられる盛土の少なくとも一部は前記掘削工程で生じた切土である、請求項18から請求項32のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項34】
請求項2から請求項13のいずれか一項に記載された改良地盤の前記地盤構造体又は請求項18から請求項33のいずれか一項に記載の造成方法によって造成された改良地盤の前記地盤構造体の上に建築物を建築する地下付建築物の建築方法であって、
少なくとも、前記改良地盤に前記土台を設置する土台工程と、当該土台の上に柱を立設する柱工程と、前記土台に支持された床構造を設ける床工程と、前記地下空間の上方に居住空間を建築する工程と、前記地下空間を利用可能にするための地下空間工事工程とを有しており、
前記土台が設置される位置は、前記改良地盤の一部である前記地盤構造体の前記地盤突出部であり、
前記地下空間工事工程は、建築物の一階と前記地下空間との行き来に用いられる地下出入構造を前記床構造に設ける工程を有する、地下付建築物の建築方法。
【請求項35】
前記土台工程は、前記地盤構造体の複数の地下空間のうちの少なくともいずれか一つの地下空間の上に建築済み又は建築中の先行建築物が存在する状態で行われる工程であり、
前記地下付建築物を建築する際、前記改良地盤に対して前記土台工程が行われる、請求項34に記載の地下付建築物の建築方法。
【請求項36】
前記地下付建築物の建築の着工の際に行う工程として、さらに建築準備工程を有しており、
当該建築準備工程は、前記地下空間の貯留水の有無を確認する工程と、
確認された貯留水のうちの排出対象の貯留水が貯留された地下空間に対応する前記排水部を止水状態から通水状態にして当該排出対象の貯留水を排出させる工程とを有する、請求項34又は請求項35に記載の地下付建築物の建築方法。
【請求項1】
造成地内の所定位置に構築された地盤構造体と、当該地盤構造体の周囲の土質の地盤である土質地盤部とを有する改良地盤であり、
前記地盤構造体は、前記所定位置に設けられた底盤と、当該底盤の上に立設された壁体とを有するものであり、
当該壁体は、その上端に、前記土質地盤部の地表面よりも上方に突出する地盤突出部を備えているものであり、
前記壁体のうちの少なくとも一部の壁体は、前記底盤が壁体の両側に広がる状態になる位置に配置された強化型壁体であり、
前記底盤の、当該強化型壁体の基部からの広がり幅は、当該強化型壁体の高さ以上の長さであり、
前記地盤構造体は、上方に開口を有する複数の地下空間を備えており、
各地下空間は、前記壁体で構成された囲み構造に囲まれており、
各囲み構造は、少なくとも一部が前記強化型壁体で構成されていることを特徴とする改良地盤。
【請求項2】
地表面から突出した前記囲み構造の地盤突出部は、建築物の土台の設置場所として使用可能なものであり、
前記地盤構造体は、複数の囲み構造を備え、各囲み構造に囲まれた地下空間の上方に位置するように建築物の建築が可能になっている、請求項1に記載の改良地盤。
【請求項3】
前記底盤は、各囲み構造で囲まれた範囲の面積である囲み面積のうちで最も広い最大囲み面積よりも、前記底盤の総面積から当該最大囲み面積を除いた外側面積の方が広くなる大きさである、請求項1又は請求項2に記載の改良地盤。
【請求項4】
前記強化型壁体は、延在方向が直線である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の改良地盤。
【請求項5】
前記囲み構造は、4つの壁体で構成されており、
当該囲み形状を構成する壁体の少なくとも一つは前記強化型壁体である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の改良地盤。
【請求項6】
前記壁体は、前記土質地盤部に接する外壁体と、当該外壁体に囲まれた領域に配置された中壁体とを含み、
当該中壁体を介して2つの地下空間が隣接配置されており、
前記中壁体は、相互に隣接する地下空間のうちの一方の囲み構造の一部であると共に他方の地下空間の囲み構造の一部であり、
当該中壁体は、前記強化型壁体である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の改良地盤。
【請求項7】
前記強化型壁体は、その両端部で別の壁体に固定されており、
当該別の壁体は、前記強化型壁体の両側に広がっており、
当該別の壁体の、前記強化型壁体の基端部からの広がり幅は、前記強化型壁体の高さ以上の長さである、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の改良地盤。
【請求項8】
前記改良地盤は、改良地盤内部から造成地外に水を排出させる排水構造を設置する排水構造を備えており、
当該排水構造は、前記地盤構造体の地下空間内の水の排出に用いられる排水部と、当該排水部を経て地盤構造体の外に流出した水を、排水先に流動させる導水路とを備えており、
前記排水部は、前記各地下空間に対応して前記地盤構造体に複数形成されており、
前記導水路は、前記土質地盤部に埋設されている、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の改良地盤。
【請求項9】
前記排水構造は、さらに、前記地盤構造体の周辺の土に含まれる水の取り込みを可能にする貫通孔を備えた集水管を備えており、
当該集水管は、前記土質地盤部に埋設されており、
前記土質地盤部は、前記集水管の上側を覆う透水層と、当該透水層の上側を覆う盛土部とを有しており、
前記導水管は、前記集水管に取り込まれた水を、前記排水先に流動させるものである、請求項8に記載の改良地盤。
【請求項10】
前記排水部は、前記排水に用いられる排水路を確保するためのものであり、当該排水路を閉塞状態にすることによって水の排出が阻止される止水状態にすることが可能になっており、排水部を止水状態にして地下空間に貯水することが可能である、請求項8又は請求項9に記載の改良地盤。
【請求項11】
前記地盤構造体の各地下空間は、少なくとも、各地下空間の上に建築可能な二階建て木造住宅に相当する重量の水を貯水可能な容積を有するものである、請求項10に記載の改良地盤。
【請求項12】
前記各地下空間は、直方体形状であり、高さが1.5メートル以上である、請求項11に記載の改良地盤。
【請求項13】
前記各地下空間に面する前記壁体の内面は、合成樹脂材によって被覆されたものである、請求項10から請求項12のいずれか一項に記載の改良地盤。
【請求項14】
請求項2から請求項13のいずれか一項に記載の改良地盤に建築された建築物であって、
当該建築物は、前記地盤構造体の囲み構造に囲まれた地下空間の上方に建築されており、
前記囲み構造の地盤突出部に設置された土台と、当該土台を基礎として建築された床構造とを備えており、
当該床構造は、建築物の一階と前記地下空間との行き来に用いられる地下出入構造を備えていることを特徴とする地下付建築物。
【請求項15】
前記地下付建築物は、複数の囲み構造のうちの一つの囲み構造の上に建築されたものであると共に、他の囲み構造の上に建築された他の建築物と同じ地盤構造体上に建築されたものである、請求項14に記載の地下付建築物。
【請求項16】
前記地下付建築物の下の囲み構造の地下空間と前記他の囲み構造の地下空間は隣接しており、
前記地下付建築物及び前記他の建築物の相互に隣接する外壁は、前記地盤突出部又は前記基礎梁の上方に隙間を空け、且つ、地盤突出部又は基礎梁の延在方向と同じ方向に延在する状態で立設されている、請求項15に記載の地下付建築物。
【請求項17】
前記地盤突出部又は前記基礎梁の上方に相対向する状態で配置された前記外壁の間の隙間は閉塞されている、請求項12に記載の地下付建築物。
【請求項18】
造成地内に確保した所定位置に地盤構造体を構築する構造体構築工程と、
前記地盤構造体の周囲に土質の地盤である土質地盤部を形成し、当該土質地盤部と前記地盤構造体とで構成される改良地盤を造成する地盤造成工程とを有し、
前記構造体構築工程は、前記所定位置に、コンクリート構造の底盤を設ける工程と、
当該底盤の上にコンクリート構造の壁体を立設する工程とを有しており、
前記地盤構造体は、上方に開口を有する複数の地下空間を備え、且つ当該地下空間が前記壁体で構成された囲み構造に囲まれた構造になっており、
前記地盤造成工程は、前記壁体の上端が土質地盤部の地表面よりも上方に突出する状態になるように土の量を調整して土質地盤部を形成する工程であることを特徴とする改良地盤の造成方法。
【請求項19】
前記壁体を立設する工程は、少なくとも、前記土質地盤部に接することになる外壁体と、当該外壁体に囲まれた領域に配置された中壁体とを設ける工程であり、
前記壁体のうちの少なくとも一部の壁体は、前記底盤が壁体の両側に広がる状態になる位置に配置された強化型壁体であり、
前記底盤の、当該強化型壁体の基部からの広がり幅は、当該強化型壁体の高さ以上の長さであり、
前記構造体構築工程は、前記複数の地下空間のいずれもが、少なくとも一部で前記強化型壁体に隣接する状態になるように、前記底盤及び壁体を設ける工程である、請求項1に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項20】
前記壁体を立設する工程は、少なくとも、直線状に延在する前記強化型壁体を立設する工程である、請求項19に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項21】
前記構造体構築工程は、各囲み構造で囲まれた範囲の面積である囲み面積のうちで最も広い最大囲み面積よりも、前記底盤の総面積から当該最大囲み面積を除いた外側面積の方が広くなるように前記底盤及び壁体を設ける工程である、請求項19又は請求項20に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項22】
前記構造体構築工程は、前記囲み構造に囲まれた前記地下空間が略直方体形状になり、且つ前記囲み構造を構成する壁体の少なくとも一つが前記強化型壁体になるように、前記底盤及び壁体を設ける工程である、請求項19から請求項21のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項23】
前記構造体構築工程は、前記中壁体を介して2つの地下空間が隣接し、且つ当該中壁体が強化型壁体になるように、前記底盤及び壁体を設ける工程である、請求項19から請求項22のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項24】
前記構造体構築工程で形成される強化型壁体は、両端部で別の壁体に固定されているものであり、
当該別の壁体は、前記強化型壁体の両側に広がっており、
当該別の壁体の、前記強化型壁体の基端部からの広がり幅は、前記強化型壁体の高さより長い、請求項19から請求項23のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項25】
前記構造体構築工程は、建築物の土台を上端に設置可能な前記地盤突出部を備えた前記囲み部を複数備えた前記地盤構造体を構築する工程であり、
当該地盤構造体は、各囲み構造に囲まれた地下空間の上に建築物の建築が可能なものである、請求項19から請求項24のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項26】
前記地盤造成工程の前に行われる工程として、さらに、造成後の改良地盤内部から造成地外に水を排出させる排水構造を設置する排水構造設置工程を有しており、
当該排水構造設置工程は、前記地盤構造体の地下空間内の水の排出に用いられる排水部を前記地盤構造体に形成する工程と、前記排水部を経て地盤構造体の外に流出した水を排水先に流動させる導水路を設置する工程とを有しており、
前記地盤構造体は、前記各地下空間に対応して形成された複数の前記排水部を備えているものである請求項18から請求項25のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項27】
前記排水構造設置工程は、前記地盤構造体の周囲の少なくとも一部に、当該地盤構造体の周辺の土に含まれる水の取り込みを可能にする貫通孔を備えた集水管を設置する工程と、
当該集水管と前記導水路を構成する導水管とを接続する工程とを、さらに有しており、
前記導水管は、前記集水管から流れ込んだ水を前記排水先に流動させるものである、請求項26に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項28】
前記排水構造設置工程で設置される前記排水部は、前記排水に用いられる排水路を確保するためのものであり、当該排水路を閉塞状態にすることによって水の排出が阻止される止水状態にすることが可能になっている、請求項26又は請求項27に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項29】
前記構造体構築工程で構築される前記地盤構造体の各地下空間は、少なくとも、各地下空間の上に建築可能な二階建て木造住宅に相当する重量の水を貯水可能な容積を有するものである、請求項28に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項30】
前記構造体構築工程で構築される地盤構造体の各地下空間は直方体形状であり、
前記地盤造成工程は、地盤構造体の底面から土質地盤部の地表面までの高さが1.8m以上になるように土の量を調整して土質地盤部を形成する工程である、請求項29に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項31】
前記構造体構築工程の後に行う工程として、さらに荷重付与工程を有しており、
当該荷重付与工程は、貯水対象の地下空間に対応する前記排水部を止水状態にする工程と、
貯水対象の地下空間に貯水する工程とを有する、請求項28から請求項30のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項32】
前記造成工程の後に行う工程として、さらに、前記土質地盤部の地表面を外気に晒した状態で改良地盤を養生する改良地盤養生工程を有する、請求項28から請求項31のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項33】
前記構造体構築工程の前に行われる工程として、造成地の少なくとも一部を削る掘削工程を、さらに有しており、
前記造成工程で土質地盤部を形成する際に用いられる盛土の少なくとも一部は前記掘削工程で生じた切土である、請求項18から請求項32のいずれか一項に記載の改良地盤の造成方法。
【請求項34】
請求項2から請求項13のいずれか一項に記載された改良地盤の前記地盤構造体又は請求項18から請求項33のいずれか一項に記載の造成方法によって造成された改良地盤の前記地盤構造体の上に建築物を建築する地下付建築物の建築方法であって、
少なくとも、前記改良地盤に前記土台を設置する土台工程と、当該土台の上に柱を立設する柱工程と、前記土台に支持された床構造を設ける床工程と、前記地下空間の上方に居住空間を建築する工程と、前記地下空間を利用可能にするための地下空間工事工程とを有しており、
前記土台が設置される位置は、前記改良地盤の一部である前記地盤構造体の前記地盤突出部であり、
前記地下空間工事工程は、建築物の一階と前記地下空間との行き来に用いられる地下出入構造を前記床構造に設ける工程を有する、地下付建築物の建築方法。
【請求項35】
前記土台工程は、前記地盤構造体の複数の地下空間のうちの少なくともいずれか一つの地下空間の上に建築済み又は建築中の先行建築物が存在する状態で行われる工程であり、
前記地下付建築物を建築する際、前記改良地盤に対して前記土台工程が行われる、請求項34に記載の地下付建築物の建築方法。
【請求項36】
前記地下付建築物の建築の着工の際に行う工程として、さらに建築準備工程を有しており、
当該建築準備工程は、前記地下空間の貯留水の有無を確認する工程と、
確認された貯留水のうちの排出対象の貯留水が貯留された地下空間に対応する前記排水部を止水状態から通水状態にして当該排出対象の貯留水を排出させる工程とを有する、請求項34又は請求項35に記載の地下付建築物の建築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−47452(P2013−47452A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−169022(P2012−169022)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【出願人】(507214050)株式会社大建 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【出願人】(507214050)株式会社大建 (4)
【Fターム(参考)】
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