説明

改良型ニトリルヒドラターゼ

【課題】野生型ニトリルヒドラターゼの改良により、耐熱性及び/又はアミド化合物耐性がより一層向上したニトリルヒドラターゼ活性を有するタンパク質を提供する。
【解決手段】以下の(A)又は(B)のタンパク質。
(A) 野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において特定のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
(B) 上記(A)のタンパク質のアミノ酸配列において、上記特定のアミノ酸残基を除き、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良型(変異型)のニトリルヒドラターゼ、及びその製造方法に関する。さらには、当該酵素をコードする遺伝子DNA、当該遺伝子DNAを含む組換えベクター、及び当該組換えベクターを有する形質転換体、並びにアミド化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ニトリル基を水和しアミド基に変換するニトリル水和活性を有する酵素であるニトリルヒドラターゼが発見され、当該酵素又は当該酵素を含有する微生物菌体等を用いてニトリル化合物より対応するアミド化合物を製造する方法が開示されている。この製造方法は、従来の化学合成法と比較し、ニトリル化合物から対応するアミド化合物への転化率及び選択率が高いことで知られている。
ニトリルヒドラターゼを生産する微生物としては、例えば、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、リゾビウム(Rhizobium)属、クレビシエラ(Klebsiella)属、シュードノカルディア(Pseudonocardia)属等に属する微生物を挙げることができる。中でもロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1株はアクリルアミドの工業的生産に使用されており、有用性が実証されている。また、その菌株が産生するニトリルヒドラターゼをコードする遺伝子も明らかとなっている(特許文献1参照)。さらに耐熱性の向上した酵素の取得は、反応時の酵素量の削減及びコスト削減等の観点から開発が望まれていた。
一方、自然界に存在する微生物から単離したニトリルヒドラターゼやその遺伝子を利用するのみならず、ニトリルヒドラターゼに対して、活性、基質特異性、Vmax、Km、熱安定性、基質に対する安定性、生成物に対する安定性等を変化させる目的でニトリルヒドラターゼに変異を導入することが試みられている(特許文献2及び3参照)。
しかしながら、野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列中の特定のアミノ酸残基に変異を導入することで、耐熱性又はアミド化合物耐性を向上させた具体的な例は少なく、さらには、耐熱性及びアミド化合物耐性を共に向上させた例は知られていない。これら、耐熱性及び/又はアミド化合物耐性の向上したニトリルヒドラターゼを開発し、アミド化合物の製造に用いることは、触媒コスト等の生産コストの観点などから非常に有用である。
【0003】
【特許文献1】特許第3162091号公報
【特許文献2】特願2004−156593号公報
【特許文献3】国際公開第2004/056990号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、野生型ニトリルヒドラターゼの改良により、耐熱性及び/又はアミド化合物耐性が向上したニトリルヒドラターゼ活性を有するタンパク質を提供すること、さらには当該タンパク質をコードする遺伝子DNA、当該遺伝子DNAを含む組換えベクター、当該組換えベクターを含む形質転換体、当該形質転換体の培養物から採取されるニトリルヒドラターゼ及びその製造方法、並びに当該培養物又は当該培養物の処理物を用いたアミド化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) 以下の(A)又は(B)のタンパク質。
(A) 野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において下記(a)〜(i)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
(a)αサブユニットのアミノ酸配列のうち補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より44残基上流のアミノ酸残基
(b)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より42残基上流のアミノ酸残基
(c)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より26残基上流のアミノ酸残基
(d)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より10残基上流のアミノ酸残基
(e)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より41残基下流のアミノ酸残基
(f)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より43残基下流のアミノ酸残基
(g)βサブユニットのアミノ酸配列のうちC末端のアミノ酸残基から数えて3残基上流のアミノ酸残基
(h)上記C末端のアミノ酸残基から数えて118残基上流のアミノ酸残基
(i)上記C末端のアミノ酸残基から数えて173残基上流のアミノ酸残基
(B) (A)のタンパク質のアミノ酸配列において、前記置換後のアミノ酸残基を除き、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
【0006】
(2) 以下の(A)又は(B)のタンパク質。
(A) 野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において下記(a)及び(b)のアミノ酸残基と下記(c)〜(e)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基とが他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
(a)βサブユニットのアミノ酸配列のうちC末端のアミノ酸残基から数えて63残基上流のアミノ酸残基
(b)上記C末端のアミノ酸残基から数えて11残基上流のアミノ酸残基
(c)上記C末端のアミノ酸残基から数えて3残基上流のアミノ酸残基
(d)αサブユニットのアミノ酸配列のうち補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より10残基上流のアミノ酸残基
(e)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より41残基下流のアミノ酸残基
(B) (A)のタンパク質のアミノ酸配列において、前記置換後のアミノ酸残基を除き、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
【0007】
(3) 以下の(A)又は(B)のタンパク質。
(A) 野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において下記(a)及び(b)のアミノ酸残基と下記(c)〜(e)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基とが他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
(a)βサブユニットのアミノ酸配列のうちC末端のアミノ酸残基から数えて63残基上流のアミノ酸残基
(b)上記C末端のアミノ酸残基から数えて11残基上流のアミノ酸残基
(c)上記C末端のアミノ酸残基から数えて118残基上流のアミノ酸残基
(d)αサブユニットのアミノ酸配列のうち補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より44残基上流のアミノ酸残基
(e)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より42残基上流のアミノ酸残基
(B) (A)のタンパク質のアミノ酸配列において、前記置換後のアミノ酸残基を除き、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
【0008】
(4) 以下の(A)又は(B)のタンパク質。
(A) 野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において下記(a)及び(b)のアミノ酸残基と下記(c)及び/又は(d)のアミノ酸残基とが他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
(a)βサブユニットのアミノ酸配列のうちC末端のアミノ酸残基から数えて63残基上流のアミノ酸残基
(b)上記C末端のアミノ酸残基から数えて11残基上流のアミノ酸残基
(c)αサブユニットのアミノ酸配列のうち補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より26残基上流のアミノ酸残基
(d)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より43残基下流のアミノ酸残基
(B) (A)のタンパク質のアミノ酸配列において、前記置換後のアミノ酸残基を除き、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
【0009】
(5) 以下の(A)又は(B)のタンパク質。
(A) 野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において下記(a)、(b)及び(c)のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
(a)βサブユニットのアミノ酸配列のうちC末端のアミノ酸残基から数えて63残基上流のアミノ酸残基
(b)上記C末端のアミノ酸残基から数えて11残基上流のアミノ酸残基
(c)上記C末端のアミノ酸残基から数えて173残基上流のアミノ酸残基
(B) (A)のタンパク質のアミノ酸配列において、前記置換後のアミノ酸残基を除き、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
【0010】
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子DNA。
(7) 上記(6)に記載の遺伝子DNAを含む組換えベクター。
(8) 上記(7)に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
(9) 上記(8)に記載の形質転換体を培養して得られる培養物から採取されるニトリルヒドラターゼ。
(10) 上記(8)に記載の形質転換体を培養し、得られる培養物からニトリルヒドラターゼを採取することを特徴とする、ニトリルヒドラターゼの製造方法。
(11) 上記(8)に記載の形質転換体を培養して得られる培養物又は当該培養物の処理物をニトリル化合物に接触させ、当該接触により生成されるアミド化合物を採取することを特徴とする、アミド化合物の製造方法。
【0011】
なお本明細書においては、特記した場合を除き、「上流」及び「上流側」とは、アミノ酸配列に関しては「N末端側」を意味し、塩基配列に関しては「5'末端側」を意味する。また、「下流」及び「下流側」とは、アミノ酸配列に関しては「C末端側」を意味し、塩基配列に関しては「3'末端側」を意味する。
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子DNA。
(7) 上記(6)に記載の遺伝子DNAを含む組換えベクター。
(8) 上記(7)に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
(9) 上記(8)に記載の形質転換体を培養して得られる培養物から採取されるニトリルヒドラターゼ。
(10) 上記(8)に記載の形質転換体を培養し、得られる培養物からニトリルヒドラターゼを採取することを特徴とする、ニトリルヒドラターゼの製造方法。
(11) 上記(8)に記載の形質転換体を培養して得られる培養物又は当該培養物の処理物をニトリル化合物に接触させ、当該接触により生成されるアミド化合物を採取することを特徴とする、アミド化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐熱性及び/又はアミド化合物耐性が向上した新規な改良型(変異型)ニトリルヒドラターゼを提供することができる。中でも、耐熱性及びアミド化合物耐性がいずれも向上した改良型ニトリルヒドラターゼはアミド化合物の製造上非常に有用である。
本発明によれば、さらに、上記改良型ニトリルヒドラターゼをコードする遺伝子DNA、当該遺伝子DNAを含む組換えベクター、当該組換えベクターを含む形質転換体、当該形質転換体の培養物から採取されるニトリルヒドラターゼ及びその製造、並びに当該培養物又は当該培養物の処理物を用いたアミド化合物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.改良型ニトリルヒドラターゼ
(a)野生型ニトリルヒドラターゼ
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼは、野生型ニトリルヒドラターゼの改良型(変異型)であり、その由来は特に限定されるものではない。ここで、「野生型ニトリルヒドラターゼ」とは、自然界の生物(例えば、土壌細菌等の微生物)より分離され得るニトリルヒドラターゼを指し、当該酵素を構成するアミノ酸配列、及び当該酵素をコードする遺伝子の塩基配列が、人為的に欠失、挿入若しくは他のアミノ酸あるいは塩基で置換されておらず、天然由来の特性を保持したままのニトリルヒドラターゼを意味する。既知の微生物由来のニトリルヒドラターゼのみならず、未知の生物由来のニトリルヒドラターゼをも含む。
【0014】
「野生型ニトリルヒドラターゼ」の構造は、αサブユニット及びβサブユニットのドメインが集合してなる高次構造をとり、補欠分子として非ヘム鉄原子、又は非コリン核コバルト原子を有している。これらのニトリルヒドラターゼは、それぞれ鉄型ニトリルヒドラターゼ及びコバルト型ニトリルヒドラターゼという呼称で区別されている。
鉄型ニトリルヒドラターゼとしては、ロドコッカス属N-771株由来のものをその代表例として挙げることができる。この鉄型ニトリルヒドラターゼは、X線結晶構造解析がなされ、その立体構造が明らかになっている。その結果、当該酵素は、活性中心を形成するαサブユニットのシステインクラスター(Cys-Ser-Leu-Cys-Ser-Cys(配列番号32))中の4つのアミノ酸残基を介して非へム鉄と結合している。
コバルト型ニトリルヒドラターゼとしては、ロドコッカス・ロドクロウスJ1株(以下「J1菌」と称する場合がある)由来のもの、又はシュードノカルディア・サーモフィラ(Pseudonocardia thermophila)由来のものを代表例として挙げることができる。J1菌由来のコバルト型ニトリルヒドラターゼは、活性中心を形成するαサブユニットのシステインクラスター(Cys-Thr-Leu-Cys-Ser-Cys(配列番号33))で示される領域を介してコバルト原子と結合している。なお、シュードノカルディア・サーモフィラ由来のコバルト型ニトリルヒドラターゼのシステインクラスターは、上記J1菌由来のシステインクラスターにおける上流側(N末端側)から第4番目のシステイン(Cys)がシステインスルフィン酸(Csi)であり、最も下流側(C末端側)の第6番目のシステイン(Cys)がシステインスルフェン酸(Cse)である。
【0015】
上述の通り、補欠分子は、αサブユニット中のシステインクラスター「C(S/T)LCSC(配列番号32又は33(以下同様))」で表される領域と結合している。このような補欠分子結合領域を含むニトリルヒドラターゼとしては、例えば、ロドコッカス・ロドクロウスJ1(FERM BP-1478)、ロドコッカス・ロドクロウスM8(SU1731814)、ロドコッカス・ロドクロウスM33(VKM Ac-1515D)、ロドコッカス・ロドクロウスATCC39484(特開平2001-292772)、バチルス・スミシ(Bacillus smithii)(特開平9-248188)、シュードノカルディア・サーモフィラ(特開平9-275978) 又はジオバチルス・サーモグルコシダシアス(Geobacillus thermoglucosidasius)由来のアミノ酸配列を有するニトリルヒドラターゼ及び遺伝子配列でコードされるニトリルヒドラターゼが挙げられる。補欠分子結合領域「C(S/T)LCSC」を含む、各種微生物由来の野生型ニトリルヒドラターゼのαサブユニットのアミノ酸(一文字表記)の配列を、図5-1、5-2及び5-3に示した。なお、各アミノ酸配列は、図5-1、5-2及び5-3に示す順に繋がっているものとする(図5-1〜5-3のそれぞれにおいて、上のアミノ酸配列から順に、配列番号34〜56)。
【0016】
(b)改良型ニトリルヒドラターゼ
本発明は、野生型ニトリルヒドラターゼにアミノ酸置換を施した改良型(変異型)ニトリルヒドラターゼである。置換を施す対象となる野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列はGenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)等のNCBIのデータベースに公表されている。
例えば、ロドコッカス・ロドクロウスJ1(FERM BP-1478)由来のαサブユニット(配列番号2、4)のアクセッション番号(Accession No.)は「P21219」であり、βサブユニット(配列番号1、3)のアクセッション番号は「P21220」である。また、ロドコッカス・ロドクロウスM8(SU1731814) 由来のαサブユニットのアクセッション番号は「ATT79340」であり、βサブユニットのアクセッション番号は「AAT79339」である。さらに、シュードモナス・サーモフィラ(Pseudomonas thermophila)JCM3095由来のαサブユニットのアクセッション番号は「1IRE A」であり、βサブユニットのアクセッション番号は「1IREB」である。
また、特定のアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列において、1個又は数個(例えば1個〜10個程度、好ましくは1個〜5個程度)のアミノ酸残基(但し、上記置換後のアミノ酸残基を除く。)が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有する改良型ニトリルヒドラターゼも本発明の範囲である。
【0017】
本発明における「改良型ニトリルヒドラターゼ」としては、野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において下記(a)〜(k)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質が挙げられる。なお、下記(g)、(h)、(i)、(j)及び(k)のアミノ酸残基は、それぞれ、各種野生型ニトリルヒドラターゼの中でもロドコッカス・ロドクロウス種に属する細菌由来の野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列中のアミノ酸残基であることが好ましい。
(a)αサブユニットのアミノ酸配列のうち補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側(N末端側)のC残基より(当該C残基を含めずに数えて)44残基上流(N末端側)のアミノ酸残基
(b)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より42残基上流のアミノ酸残基
(c)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より26残基上流のアミノ酸残基
(d)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より10残基上流のアミノ酸残基
(e)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側(C末端側)のC残基より(当該C残基を含めずに数えて)41残基下流(C末端側)のアミノ酸残基
(f)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より43残基下流のアミノ酸残基
(g)βサブユニットのアミノ酸配列のうちC末端のアミノ酸残基から数えて(当該C末端のアミノ酸残基を含めて数えて)3残基上流(N末端側)のアミノ酸残基
(h)上記C末端のアミノ酸残基から数えて118残基上流のアミノ酸残基
(i)上記C末端のアミノ酸残基から数えて173残基上流のアミノ酸残基
(j)上記C末端のアミノ酸残基から数えて63残基上流のアミノ酸残基
(k)上記C末端のアミノ酸残基から数えて11残基上流のアミノ酸残基
【0018】
また、本発明の改良型ニトリルヒドラターゼとしては、上記タンパク質の中でも、置換されるアミノ酸残基が以下に列挙するアミノ酸残基であるものが好ましく挙げられる。
・上記(a)〜(i)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基
・上記(j)及び(k)のアミノ酸残基と、上記(g)、(d)及び(e)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基
・上記(j)及び(k)のアミノ酸残基と、上記(h)、(a)及び(b)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基
・上記(j)及び(k)のアミノ酸残基と、上記(c)及び(f)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基
・上記(j)、(k)及び(i)のアミノ酸残基
【0019】
さらに、本発明の改良型ニトリルヒドラターゼとしては、上記タンパク質の中でも、置換されるアミノ酸残基が以下に列挙するアミノ酸残基であるものがより好ましく挙げられる。
・上記(a)のアミノ酸残基
・上記(b)のアミノ酸残基
・上記(c)のアミノ酸残基
・上記(d)のアミノ酸残基
・上記(e)のアミノ酸残基
・上記(f)のアミノ酸残基
・上記(g)のアミノ酸残基
・上記(h)のアミノ酸残基
・上記(i)のアミノ酸残基
・上記(f)及び(h)のアミノ酸残基
・上記(f)及び(i)のアミノ酸残基
・上記(h)及び(i)のアミノ酸残基
・上記(f)、(h)及び(i)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)及び(d)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)及び(e)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)及び(g)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)、(d)及び(e)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)、(e)及び(g)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)、(d)及び(g)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)、(d)、(e)及び(g)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)及び(a)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)及び(b)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)及び(h)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)、(a)及び(b)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)、(b)及び(h)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)、(a)及び(h)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)、(a)、(b)及び(h)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)及び(c)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)及び(f)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)、(c)及び(f)のアミノ酸残基
・上記(j)、(k)及び(i)のアミノ酸残基
【0020】
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの一例としては、J1菌由来の野生型ニトリルヒドラターゼにおいて、
当該ニトリルヒドラターゼのβサブユニットのアミノ酸配列におけるC末端のアミノ酸残基から数えて63残基上流のアミノ酸残基(アスパラギン)、及び上記C末端のアミノ酸残基から数えて11残基上流のアミノ酸残基(バリン)が他のアミノ酸(例えばセリンなど)に置換されるとともに、
当該ニトリルヒドラターゼのαサブユニットのアミノ酸配列における補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より26残基上流のアミノ酸残基(セリン)、及び/又は上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より43残基下流のアミノ酸残基(グルタミン酸)が他のアミノ酸(例えばリジンやアラニン等)に置換された
アミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有する酵素タンパク質が好ましく挙げられる。このようなアミノ酸置換の態様の表記例としては、「Nβ←63S,Vβ←11A,Sα↑26A、Eα43↓K」等が挙げられる。また、上記一例としての改良型ニトリルヒドラターゼは、J1菌由来の野生型ニトリルヒドラターゼのβサブユニットのアミノ酸配列においてN末端側から第167番目のアミノ酸残基(アスパラギン)、及びβサブユニットのアミノ酸配列においてN末端側から第219番目のアミノ酸(バリン)が他のアミノ酸に置換されるとともに、αサブユニットのアミノ酸配列においてN末端側から第76番目のアミノ酸残基(セリン)、及び/又はαサブユニットのアミノ酸配列においてN末端側から第150番目のアミノ酸残基(グルタミン酸)が他のアミノ酸に置換され、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有する酵素タンパク質である、と言うこともできる。
なお、アミノ酸のアルファベット表記は通常の1文字で表すことができ、置換箇所までのアミノ酸残基数を表す数字(例えば「26」)の左側に表示したアルファベットは、置換前のアミノ酸の1文字表記を示し、右側に表示したアルファベットは置換後のアミノ酸の1文字表記を示している。
【0021】
具体的には、例えば「Sα↑26A」と表記した場合は、「αサブユニット(配列番号2)の塩基配列のうち、CTLCSC領域の最も上流側のC残基より26残基上流のセリン(S)がアラニン(A)に置換された改良型ニトリルヒドラターゼにおけるアミノ酸置換の態様」を意味する。ここで、「α↑」という表記は、置換位置がCTLCSCの最も上流側のC残基よりも上流にある(当該C残基を含めずに数えてN末端側にある)ことを意味し、反対に「α↓」という表記であれば、置換位置がCTLCSC領域の最も下流側のC残基よりも下流にある(当該C残基を含めずに数えてC末端側にある)ことを意味する。
【0022】
加えて、例えば「Nβ←63S」と表記した場合は、「βサブユニット(配列番号1)の塩基配列のうちC末端のアミノ酸残基から数えて(当該C末端のアミノ酸残基を含めて数えて)63番目のアスパラギン(N)がセリン(S)に置換された改良型ニトリルヒドラターゼにおけるアミノ酸置換の態様」を意味する。ここで、「β←」という表記は、置換位置が上記C末端のアミノ酸残基からみて上流にある(当該C末端のアミノ酸残基を含めて数えてN末端側にある)ことを意味する。
【0023】
前述した本発明のより好ましい改良型ニトリルヒドラターゼにおけるアミノ酸置換の態様は、以下の1〜31の表記で表すことができる。
1.Vα↑44A
2.Pα↑42L
3.Sα↑26A
4.Nα↑10H
5.Eα↓41G
6.Eα↓43K
7.Sβ←3T
8.Iβ←118T
9.Sβ←173K
10.Iβ←118T,Eα↓43K
11.Iβ←118T,Sβ←173K
12.Eα↓43K,Sβ←173K
13.Iβ←118T,Eα↓43K,Sβ←173K
14.Nβ←63S,Vβ←11A,Nα↑10H
15.Nβ←63S,Vβ←11A,Eα↓41G
16.Nβ←63S,Vβ←11A,Sβ←3T
17.Nβ←63S,Vβ←11A,Nα↑10H,Eα↓41G
18.Nβ←63S,Vβ←11A,Eα↓41G,Sβ←3T
19.Nβ←63S,Vβ←11A,Nα↑10H,Sβ←3T
20.Nβ←63S,Vβ←11A,Nα↑10H,Eα↓41G,Sβ←3T
21.Nβ←63S,Vβ←11A,Vα↑44A
22.Nβ←63S,Vβ←11A,Pα↑42L
23.Nβ←63S,Vβ←11A,Iβ←118T
24.Nβ←63S,Vβ←11A,Vα↑44A,Pα↑42L
25.Nβ←63S,Vβ←11A,Pα↑42L,Iβ←118T
26.Nβ←63S,Vβ←11A,Pα↑42L,Iβ←118T
27.Nβ←63S,Vβ←11A,Vα↑44A,Pα↑42L,Iβ←118T
28.Nβ←63S,Vβ←11A,Sα↑26A
29.Nβ←63S,Vβ←11A,Eα↓43K
30.Nβ←63S,Vβ←11A,Sα↑26A,Eα↓43K
31.Nβ←63S,Vβ←11A,Sβ←173K
これらの中でも、上記19、23、27、28、30、及び31の態様でアミノ酸置換が施された改良型ニトリルヒドラターゼがさらに好ましく、上記27、30、及び31の態様でアミノ酸置換が施された改良型ニトリルヒドラターゼが特に好ましい。
【0024】
上記アミノ酸置換を生じさせるための塩基置換としては、以下の態様が好ましく挙げられる。
Vα↑44A:塩基配列TGCACTCTGTGTTCGTGC(配列番号4における304〜321番目)の先頭のTより、130〜132塩基上流(5'末端側)に位置するコドン「GTG」をGCA、GCC、GCG又はGCTに置換させる。特に、131塩基上流に位置するTをCに置換させること(GTG→GCG)が好ましい。
Pα↑42L:塩基配列TGCACTCTGTGTTCGTGC(配列番号4における304〜321番目)の先頭のTより、124〜126塩基上流に位置するコドン「CCT」をCTA、CTC、CTG,CTT、TTA又はTTGに置換させる。特に、125塩基上流に位置するCをTに置換させること(CCT→CTT)が好ましい。
Sα↑26A:塩基配列TGCACTCTGTGTTCGTGC(配列番号4における304〜321番目)の先頭のTより、76〜78塩基上流に位置するコドン「TCA」をGCA、GCC、GCG又はGCTに置換させる。特に、78塩基上流に位置するTをGに置換させること(TCA→GCA)が好ましい。
【0025】
Nα↑10H:塩基配列TGCACTCTGTGTTCGTGC(配列番号4における304〜321番目)の先頭のTより、28〜30塩基上流に位置するコドン「AAC」をCAC又はCATに置換させる。特に、30塩基上流に位置するAをCに置換させること(AAC→CAC)が好ましい。
Eα↓41G:塩基配列TGCACTCTGTGTTCGTGC(配列番号4における304〜321番目)の最後のCより、121〜123塩基下流(3'末端側)に位置するコドン「GAG」を、GGA、GGC、GGG又はGGTに置換させる。特に、122塩基下流に位置するAをGに置換させること(GAG→GGG)が好ましい。
Eα↓43K:塩基配列TGCACTCTGTGTTCGTGC(配列番号4における304〜321番目)の最後のCより、127〜129塩基下流に位置するコドン「GAG」を、AAA又はAAGに置換させる。特に、127塩基下流に位置するGをAに置換させること(GAG→AAG)が好ましい。
【0026】
Sβ←3T:塩基配列GCG(配列番号3における685〜687番目(配列番号1のアミノ酸配列のC末端アミノ酸残基のコドン))の先頭のGより、4〜6塩基上流(5'末端側)に位置するコドン「ATC」をACA、ACC、ACG又はACTに置換させる。特に、5塩基上流に位置するTをCに置換させること(ATC→ACC)が好ましい。
Iβ←118T:塩基配列GCG(配列番号3における685〜687番目(配列番号1のアミノ酸配列のC末端アミノ酸残基のコドン))の先頭のGより、349〜351塩基上流に位置するコドン「TCG」をACA、ACC、ACG又はACTに置換させる。特に、351塩基上流に位置するTをAに置換させること(TCG→ACG)が好ましい。
Sβ←173K:塩基配列GCG(配列番号3における685〜687番目(配列番号1のアミノ酸配列のC末端アミノ酸残基のコドン))の先頭のGより、514〜516塩基上流に位置するコドン「TCG」をAAA又はAAGに置換させる。特に、516塩基上流に位置するTをAに置換させ、515塩基上流に位置するCをAに置換させること(TCG→AAG)が好ましい。
【0027】
Nβ←63S:塩基配列GCG(配列番号3における685〜687番目(配列番号1のアミノ酸配列のC末端アミノ酸残基のコドン))の先頭のGより、184〜186塩基上流に位置するコドン「AAC」をAGC、AGT、TCA、TCC、TCG、又はTCTに置換させる。特に、185塩基上流に位置するAをGに置換させること(AAC→AGC)が好ましい。
Vβ←11A:塩基配列GCG(配列番号3における685〜687番目(配列番号1のアミノ酸配列のC末端アミノ酸残基のコドン))の先頭のGより、28〜30塩基上流に位置するコドン「GTC」をGCA、GCC、GCG又はGCTに置換させる。特に、29塩基上流に位置するTをCに置換させること(GTC→GCC)が好ましい。
【0028】
例えば、野生型ニトリルヒドラターゼのα↑44、α↑42、α↑26、α↑10、α↓41及びα↓43の置換部位は、それぞれ順に、J1菌のαサブユニット(配列番号2)における、58番目、60番目、76番目、92番目、148番目及び150番目のアミノ酸残基に相当する。また、β←3、β←118、β←173、β←63及びβ←11の変異部位は、それぞれ、J1菌のβサブユニット(配列番号1)においては、227番目、112番目、57番目、167番目及び219番目のアミノ酸残基に相当する。
【0029】
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの活性は、天然由来の特性を保持したままの野生型ニトリルヒドラターゼの活性に対して耐熱性及び/又はアミド化合物耐性が向上している。
ここで、「ニトリルヒドラターゼ活性」とは、ニトリル化合物を、対応するアミド化合物に変換する水和反応(RCN+HO→RCONH)を触媒する酵素である。活性測定は、基質であるニトリル化合物をニトリルヒドラターゼと接触させ、対応するアミド化合物に変換した後、当該アミド化合物を定量することにより算出することができる。基質としては、ニトリルヒドラターゼが反応すればいかなるニトリル化合物でも使用できるが、アクリロニトリルが好ましい。反応条件としては、基質濃度は2.5%、反応温度は10℃から30℃、反応時間は10分から30分の範囲で行う。酵素反応はリン酸を添加して停止させる。その後、HPLCにより、生成したアクリルアミドを分析することでアミド化合物の定量を行うことができる。
【0030】
「耐熱性の向上」とは、加熱処理した変異株の残存活性が、同じ処理を行った親株(野生型)の残存活性より10%以上高いことを意味する。加熱処理の方法としては、培養液、又は集菌・洗浄した培養菌体を容器に入れた後、当該容器をウォーターバスやインキュベーター等の加熱装置に入れ一定時間保温すればよい。この時、酵素の安定性を高める為のニトリル化合物やアミド化合物を添加して加熱処理を実施してもよい。加熱処理の条件としては処理温度と処理時間を適宜検討し、親株の活性が加熱処理前に対して50%以下に低下する条件を設定するのが好ましい。具体的には50℃から70℃の範囲で、5分から30分加熱処理を行う。残存活性とは、加熱処理した菌体を用いて活性測定したアミド化合物の生成量と、同量の無処理の菌体を用いて活性測定したアミド化合物の生成量との比を示す。無処理の菌体は、培養液、又は集菌・洗浄した培養菌体を4℃で保冷しておいたものを用いる。
【0031】
また、「アミド化合物耐性」とは、アミド化合物存在下でもニトリルヒドラターゼ活性を維持することができることを意味する。改良型ニトリルヒドラターゼを有する形質転換体の培養物又は当該形質転換体から単離した改良型ニトリルヒドラターゼを、アクリルアミド等のアミド化合物(例えば、30〜50%の高濃度)の存在下で、基質であるアクリロニトリル等のニトリル化合物の消費量又は消費速度を分析することによって、親株(野生型)由来のニトリルヒドラターゼと比較して、消費量又は消費速度が1.1倍を超えたニトリルヒドラターゼをアミド化合物耐性であると評価することができる。
【0032】
アミド化合物としては、例えば、下記一般式(1):
R−CONH (1)
(ここで、Rは、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基、置換されていてもよい炭素数3〜18のシクロアルキル基又はアリール基、あるいは、置換されていてもよい飽和又は不飽和複素環基である。)
で表されるアミド化合物が挙げられる。特に、式中、Rが「CH=CH−」であるアクリルアミドが好ましい。
【0033】
上記の改良型ニトリルヒドラターゼは、野生型ニトリルヒドラターゼをアミノ酸置換することで得られるものであり、例えば、ロドコッカス・ロドクロウスJ1株由来のニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列(配列番号1、2)を改変し、耐熱性及び/又はアミド化合物耐性の向上したニトリルヒドラターゼを選択することにより得られる。なお、ロドコッカス・ロドクロウスJ1株は、FERM BP-1478として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に昭和62(1987)年9月18日付けで国際寄託されている。
【0034】
J1菌以外のニトリルヒドラターゼにおいても上述の変異の位置、変異するアミノ酸種、DNA配列によって耐熱性及び/又はアミド化合物耐性が向上すると考えられる。その様な菌としては、好ましくは、ロドコッカス・ロドクロウスM8(SU1731814)、ロドコッカス・ロドクロウスM33(VKM Ac-1515D)又はロドコッカス・ロドクロウスATCC39484(特開平2001-292772)、バチルス・スミシ(Bacillus smithii)(特開平09-248188)、シュードノカルディア・サーモフィラ(特開平09-275978)、ジオバチルス・サーモグルコシダシアス等が挙げられる。なお、ロドコッカス・ロドクロウスM33(VKM Ac-1515D)は、上記M8菌(SU1731814)から自然突然変異によって構成的にニトリルヒドラターゼを発現する株として選抜された菌株である。そのニトリルヒドラターゼ自体のアミノ酸配列及び遺伝子配列に変異はない(米国特許第5,827,699号)。
【0035】
野生型ニトリルヒドラターゼをアミノ酸置換する方法としては、ニトリルヒドラターゼ活性を有する微生物にハイドロキシルアミンや亜硝酸等の変異源となる薬剤を接触・作用させる方法、紫外線照射により変異を誘発する方法、ニトリルヒドラターゼをコードする遺伝子にPCRを用いてランダムに変異を導入するError prone PCR方法等を採用することができる。
【0036】
(b-1)Error prone PCR
変異体を用いたタンパク質の機能、性質を研究する方法の一つに、ランダム変異導入法がある。ランダム変異導入法とは、特定のタンパク質をコードする遺伝子に対してランダムな変異を導入し、変異体を作製する方法である。PCRによるランダム変異導入法では、DNA増幅時に厳密度の低い条件を設定して、塩基の変異を導入する(Error prone PCR)ことができる。このError prone PCRでは、増幅されるDNAの全域に対して任意の部位に変異が導入される。そうすると、得られた任意の部位に変異が導入された変異体の機能を検討することによって、タンパク質固有の機能に重要なアミノ酸やドメインの情報を得ることができる。
【0037】
本発明において、例えば、βサブユニットのアミノ酸配列においてC末端のアミノ酸残基から数えて63残基上流のアミノ酸残基、及び上記C末端のアミノ酸残基から数えて11残基上流のアミノ酸残基を置換するとともに、αサブユニットの補欠分子結合領域を構成するC(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より26残基上流のアミノ酸残基、及び/又は上記C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より43残基下流のアミノ酸残基を置換した改良型ニトリルヒドラターゼは、野生型ニトリルヒドラターゼよりも耐熱性及び/又はアミド化合物耐性が向上しており、高い活性を示す。
当該変異は、野生型ニトリルヒドラターゼ遺伝子へのError prone PCRによるランダム変異の導入によって得ることができる。本発明は、Error prone PCR法により得られる改良型ニトリルヒドラターゼであって、宿主において野生型ニトリルヒドラターゼよりも耐熱性及び/又はアミド化合物耐性が向上しており、ニトリルヒドラターゼ活性の高いものをも含む。
Error prone PCRの鋳型となるニトリルヒドラターゼは、野生株由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子、Error prone PCRによる増幅産物であるDNAを用いることができる。
Error prone PCRの反応条件としては、例えば、反応液中のdNTP(dGTP、dCTP、dATP又はdTTP)のいずれか1種、2種又は3種の配合割合を他のdNTPに比べて減らした組成とする条件が挙げられる。これにより、DNA合成の際、配合割合を減らしたdNTPが必要な箇所においては、誤って他のdNTPが用いられる可能性が高くなり、変異が導入される。また、他の反応条件としては、反応液中のMgCl2及び/又はMnCl2量を増やした組成とする条件も好ましく挙げられる。
【0038】
(b-2)ロドコッカス・ロドクロウスJ1株由来改良型ニトリルヒドラターゼ及びその遺伝子
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼには、例えば、配列番号3及び4の塩基配列で表される野生型であるロドコッカス・ロドクロウスJ1株由来の遺伝子に、βサブユニットのアミノ酸配列においてC末端のアミノ酸残基から数えて63残基上流のアミノ酸置換、及び上記C末端のアミノ酸残基から数えて11残基上流のアミノ酸置換に相当する変異を導入するとともに、αサブユニットの補欠分子結合領域を構成するC(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より26残基上流のアミノ酸置換、及び/又は上記C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より43残基下流のアミノ酸置換に相当する変異を導入した遺伝子によりコードされるものも含まれる。
このような改良型ニトリルヒドラターゼをコードするDNAは、野生型ニトリルヒドラターゼ遺伝子を基に、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)等に記載の部位特異的変位誘発法に従って調製することができる。DNAに変異を導入するには、Kunkel法や Gapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。
【0039】
また、本発明の遺伝子としては、当該遺伝子の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAも含まれる。
このような改良型ニトリルヒドラターゼ遺伝子は、当該遺伝子配列若しくはその相補配列、又はこれらの断片をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、cDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから得ることができる。ライブラリーは、公知の方法で作製されたものを利用することが可能であり、市販のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーを利用することも可能である。
「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄時の条件であって塩濃度が300〜2000mM、温度が40〜75℃、好ましくは塩濃度が600〜900mM、温度が65℃の条件を意味する。例えば、2×SSCで50℃等の条件を挙げることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、本発明のニトリルヒドラターゼをコードするDNAを得るための条件を適宜設定することができる。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))等を参照することができる。ハイブリダイズするDNAとしては、本発明の遺伝子DNAに対して少なくとも40%以上、好ましくは60%、さらに好ましくは90%以上の同一性を有する塩基配列を含むDNA又はその部分断片が挙げられる。
野性型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列のうちの特定のアミノ酸残基を置換するアミノ酸(置換後のアミノ酸)の種類は、いずれも、置換後のアミノ酸を含むポリペプチド(タンパク質)がニトリルヒドラターゼ活性を有する範囲で適宜選択することができ、限定はされない。
【0040】
(c)組換えベクター、形質転換体
ニトリルヒドラターゼ遺伝子は、形質転換される宿主生物において発現可能なように、ベクターに組み込むことが必要である。例えば、ベクターとしてはプラスミドDNA、バクテリオファージDNA、レトロトランスポゾンDNA、人工染色体DNAなどが挙げられる。
また、本発明において使用し得る宿主は、上記組換えベクターが導入された後、目的のニトリルヒドラターゼを発現することができる限り特に限定されるものではない。例えば、大腸菌及び枯草菌等の細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等を用いることができる。大腸菌を宿主とする場合、発現効率の高い発現ベクター、例えばtrcプロモーターを有する発現ベクターpkk233-2(アマシャムバイオサイエンス社製)又はpTrc99A(アマシャムバイオサイエンス社製)などを用いることが好ましい。
ベクターには、ニトリルヒドラターゼ遺伝子のほか、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)等を連結することができる。なお、選択マーカーとしては、例えばカナマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
【0041】
細菌を宿主とする場合、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が挙げられ、ロドコッカス菌としては、例えばロドコッカス・ロドクロウスATCC12674、ロドコッカス・ロドクロウスATCC17895、ロドコッカス・ロドクロウスATCC19140等が挙げられる。これらのATCC株はアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手できる。
細菌への組換えベクターの導入方法としては、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)等が用いられる。酵母への組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS-7、Vero、CHO細胞、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞等が用いられる。動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞、Sf21細胞等が用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法等が用いられる。
植物細胞を宿主とする場合は、タバコBY-2細胞等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。植物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばアグロバクテリウム法、パーティクルガン法、PEG法、エレクトロポレーション法等が用いられる。
【0042】
(d)培養物及び改良型ニトリルヒドラターゼの製造方法
本発明において、改良型ニトリルヒドラターゼは、上記形質転換体を培養し、得られる培養物から採取することにより製造することができる。
本発明は当該培養物から改良型ニトリルヒドラターゼを採取することを特徴とする、改良型ニトリルヒドラターゼの製造方法をも含む。
本発明において、「培養物」とは、培養上清、培養細胞、培養菌体、又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。目的の改良型ニトリルヒドラターゼは、上記培養物中に蓄積される。
本発明の形質転換体を培養する培地は、宿主菌が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、ガラクトース、フラクトース、スクロース、ラフィノース及びデンプン等の炭水化物、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸、エタノール及びプロパノール等のアルコール類が挙げられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸、若しくは有機酸のアンモニウム塩、又はその他の含窒素化合物が挙げられる。その他、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカー、各種アミノ酸等を用いてもよい。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、必要に応じ、培養中の発泡を防ぐために消泡剤を添加してもよい。さらに、培地にはニトリルヒドラターゼの補欠分子であるコバルトイオンや鉄イオンを添加し、酵素の誘導剤となるニトリル類やアミド類を添加してもよい。
【0043】
培養中、ベクター及び目的遺伝子の脱落を防ぐために選択圧を掛けた状態で培養してもよい。すなわち、選択マーカーが薬剤耐性遺伝子である場合に相当する薬剤を培地に添加したり、選択マーカーが栄養要求性相補遺伝子である場合に相当する栄養因子を培地から除いたりしてもよい。また、選択マーカーが資化性付与遺伝子である場合は、相当する資化因子を必要に応じて唯一因子として添加することができる。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を含むベクターで形質転換した大腸菌を培養する場合、培養中、必要に応じてアンピシリンを添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)で誘導可能なプロモーターを有する発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときには、IPTG等を培地に添加することができる。また、インドール酢酸(IAA)で誘導可能なtrpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときには、IAA等を培地に添加することができる。
【0044】
形質転換体の培養条件は、目的の改良型ニトリルヒドラターゼの生産性及び宿主の生育が妨げられない条件であれば特段限定されるものではないが、通常、10℃〜40℃、好ましくは20℃〜37℃で5〜100時間行う。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行い、例えば大腸菌であれば6〜9に調整する。培養方法としては、固体培養、静置培養、振盪培養、通気攪拌培養などが挙げられるが、特に大腸菌形質転換体を培養する場合には、振盪培養又は通気攪拌培養(ジャーファーメンター)により好気的条件下で培養することが好ましい。
上記培養条件で培養すると、高収率で本発明の改良型ニトリルヒドラターゼを上記培養物中、すなわち、培養上清、培養細胞、培養菌体、又は細胞若しくは菌体の破砕物の少なくともいずれかに蓄積することができる。
【0045】
培養後、改良型ニトリルヒドラターゼが菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することにより、目的の改良型ニトリルヒドラターゼを採取することができる。菌体又は細胞の破砕方法としては、フレンチプレス又はホモジナイザーによる高圧処理、超音波処理、ガラスビーズ等による磨砕処理、リゾチーム、セルラーゼ又はペクチナーゼ等を用いる酵素処理、凍結融解処理、低張液処理、ファージによる溶菌誘導処理等を利用することができる。破砕後、必要に応じて菌体又は細胞の破砕残渣(細胞抽出液不溶性画分を含む)を除くことができる。残渣を除去する方法としては、例えば、遠心分離やろ過などが挙げられ、必要に応じて、凝集剤やろ過助剤等を使用して残渣除去効率を上げることもできる。残渣を除去した後に得られた上清は、細胞抽出液可溶性画分であり、粗精製した改良型ニトリルヒドラターゼ溶液とすることができる。
また、改良型ニトリルヒドラターゼが菌体内又は細胞内に生産される場合、菌体や細胞そのものを遠心分離、膜分離等で回収して、未破砕のまま使用することも可能である。
改良型ニトリルヒドラターゼが菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離やろ過等により菌体又は細胞を除去する。その後、必要に応じて硫安沈澱による抽出等により前記培養物中から改良型ニトリルヒドラターゼを採取し、さらに必要に応じて透析、各種クロマトグラフィー(ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等)を用いて単離精製することもできる。
【0046】
形質転換体を培養して得られたニトリルヒドラターゼの生産収率は、例えば、培養液あたり、菌体湿重量又は乾燥重量あたり、粗酵素液タンパク質あたりなどの単位で、SDS-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)やニトリルヒドラターゼ活性測定などにより確認することができるが、特段限定されるものではない。SDS-PAGEは当業者であれば公知の方法を用いて行うことができる。また、ニトリルヒドラターゼ活性は、上述した活性の値を適用することができる。
また、本発明においては、生細胞を全く使用することなく、無細胞タンパク質合成系を採用して改良型ニトリルヒドラターゼを産生することが可能である。
無細胞タンパク質合成系とは、細胞抽出液を用いて試験管等の人工容器内でタンパク質を合成する系である。なお、本発明において使用される無細胞タンパク質合成系には、DNAを鋳型としてRNAを合成する無細胞転写系も含まれる。
この場合、上記の宿主に対応する生物は、下記の細胞抽出液の由来する生物に相当する。ここで、上記細胞抽出液は、真核細胞由来又は原核細胞由来の抽出液、例えば、小麦胚芽、大腸菌などの抽出液を使用することができる。なお、これらの細胞抽出液は濃縮されたものであっても濃縮されていないものであってもよい。
細胞抽出液は、例えば限外濾過、透析、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿等によって得ることができる。さらに本発明において、無細胞タンパク質合成は、市販のキットを用いて行うこともできる。そのようなキットとしては、例えば試薬キットPROTEIOSTM(東洋紡)、TNTTMSystem(プロメガ)、合成装置のPG-MateTM(東洋紡)、RTS(ロシュ・ダイアグノスティクス)などが挙げられる。
上記のように無細胞タンパク質合成によって得られる改良型ニトリルヒドラターゼは、前述のように適宜クロマトグラフィーを選択して、精製することができる。
【0047】
2.アミド化合物の製造方法
上述のように製造された改良型ニトリルヒドラターゼは、酵素触媒として物質生産に利用することができる。例えば、ニトリル化合物に、上記改良型ニトリルヒドラターゼを接触させることにより、アミド化合物を製造することができる。
酵素触媒としては、前述のように適当な宿主内で改良型ニトリルヒドラターゼ遺伝子が発現するように遺伝子導入を行い、宿主を培養した後の培養物、又は当該培養物の処理物を利用することができる。処理物としては、例えば、培養後の細胞をアクリルアミド等のゲルで包含したもの、グルタルアルデヒドで処理したもの、アルミナ、シリカ、ゼオライト及び珪藻土等の無機担体に担持したもの等が挙げられる。
【0048】
基質として使用されるニトリル化合物は、酵素の基質特異性、酵素の基質に対する安定性等を考慮して選択される。ニトリル化合物としては、アクリロニトリルが好ましい。
反応方法、及び反応終了後のアミド化合物の採取方法は、基質及び酵素触媒の特性により適宜選択される。酵素触媒は、その活性が失活しない限り、リサイクル使用することが好ましい。失活の防止やリサイクルを容易にすることに鑑み、酵素触媒は処理物の形態で使用されることが好ましい。

以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0049】
改良型ニトリルヒドラターゼ遺伝子の取得
(1) 変異遺伝子ライブラリーの構築
鋳型となるプラスミドとしては、βサブユニットのアミノ酸配列(配列番号3)のC末端のアミノ酸残基から数えて63残基上流のアミノ酸残基がアスパラギン(N)からセリン(S)に変異し、かつ、上記C末端のアミノ酸残基から数えて11残基上流のアミノ酸残基がバリン(V)からアラニン(A)に変異したプラスミドpAB002(図1)を用いた。
ここで、プラスミドpAB002の作製方法は、部位特異的変異導入法を用い、市販のキット:QuikChange XL Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社)を使用した。変異を導入する鋳型として、プラスミドpJH601(図2)を使用した。
プラスミドpJH601は野生型ニトリルヒドラターゼの発現プラスミドであり、受託番号FERM BP-10314として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に平成14(2002)年12月26日付けで国際寄託されている。
【0050】
変異を導入するための2種のプライマーを合成した。下線部は変異導入部位を示す。
β←63−F: ccgaaatatgtgcggAGCaagatcggggaaatc (配列番号5)
β←63−R: gatttccccgatcttGCTccgcacatatttcgg (配列番号6)
変異を導入するためのPCRは、GeneAmp9700(PEバイオサイエンス社)を用いて以下の条件で行った。
【0051】
<PCR反応液組成>
鋳型プラスミドpHJ601(10ng) 2μl
10× 反応Buffer 5μl
プライマーβ←63-F(100ng/μl) 1μl
プライマーβ←63-R(100ng/μl) 1μl
2.5mM dNTPmix 1μl
滅菌水 36μl
QuickSolution 3μl
Pfu Turbo DNA Polymerase 1μl
<反応条件>
95℃で1分
(95℃で50秒、60℃で50秒、68℃で14分)×18サイクル
68℃で7分
【0052】
PCR終了後、反応液10μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、約11kbの増幅断片の検出を行った。増幅断片を確認した後、1μl のDpn I(キットに付属)をPCR反応液に添加して37℃で1時間反応させ、鋳型プラスミドの除去を行った。次に、XL10-GOLD ultracompetent cell(キットに付属)を用いて形質転換を行った。DpnI処理済みのPCR反応液2μlと45μlのコンピテントセルを混ぜ4℃で30分保温した。次いで、42℃で30秒ヒートショックを行い、これに0.5mlのNZY培地(1% NZアミン、0.5% 酵母エキス、0.5% NaCl、12.5mM MgCl2、12.5mM MgSO4、0.4% グルコース、pH7.5)を添加した。添加後、37℃で1時間これを培養した。この培養液250μlをLBプレート(1% NaCl、1% トリプトン、0.5% 酵母エキス、2% 寒天、50mg/L アンピシリン)にプレーティングし、37℃で1日間培養した。
【0053】
培養後、プレート上に生育した数個のコロニーをLB培地(50mg/L アンピシリン)1.5mlで各々培養してからFlexiPrep Kit(アマシャムバイオサイエンス社)を使用してプラスミドを抽出した。抽出後、得られたプラスミドの塩基配列の決定を行い、目的の変異が導入されていることを確認した。このようにして、Nβ←63Sのアミノ酸置換を生じさせる塩基置換が導入された変異導入プラスミド:p52を得た。
続いて、さらに変異を導入するための2種のプライマーを合成した。下線部は変異導入部位を示す。
β←11−F: gaaagacgtagtgtgcGCCgatctctgggaaccg (配列番号7)
β←11−R: cggttcccagagatcGGCgcacactacgtctttc (配列番号8)
上記と同様の方法で変異を導入するPCRおよびプラスミドの抽出を行い、得られたプラスミドの塩基配列の決定を行い、目的の変異が導入されていることを確認した。このようにして、Nβ←63S及びVβ←11Aのアミノ酸置換を生じさせる塩基置換が導入された変異導入プラスミド:pAB002を得た。
次に、ニトリルヒドラターゼ遺伝子へのランダム変異導入を行った。
ランダム変異導入は、PCRにおけるヌクレオチドの誤取り込みによる塩基置換(Error prone PCR)を利用した。
ニトリルヒドラターゼ遺伝子へのError prone PCRは、GeneAmp9700(PEバイオサイエンス社)を用いて以下の条件で行った。
【0054】
<PCR反応液組成>
鋳型プラスミド(pAB002)(10ng) 1μl
10× PCR Buffer(GIBCO社製) 10μl
50mM MgCl2(GIBCO社製) 3μl
プライマーTrc-02(100ng/μl) 1μl
プライマーTrc-03(100ng/μl) 1μl
2.5mM dNTPmix 8μl
10mM dITP 2μl
10mM dBraUTP 2μl
滅菌水 71μl
Taq DNAポリメラーゼ(GIBCO社製) 1μl
<プライマー>
TRC-02: ggaattcgtataatgtgtggaattgtgagc (配列番号9)
TRC-03: ggctgaaaatcttctctcatccgcc (配列番号10)
<反応条件>
(94℃で30秒、65℃で30秒、72℃で3分)×30サイクル
【0055】
PCR終了後、反応液5μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、3kbのPCR増幅産物の検出を行った。PCR産物を含む反応終了液をGFX column(アマシャムバイオサイエンス)で精製し、制限酵素NcoIとHindIIIで切断を行った。制限酵素処理済みのPCR産物を0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、3 Kb付近のバンドを回収した。回収したPCR産物は、Ligation Kit(宝酒造)を用いてベクターpTrc99A(NcoI-HindIII部位)と結合した。この結合生成物を用いて大腸菌JM109を形質転換した。結合生成物と100μlの大腸菌JM109コンピテントセルを混ぜ4℃で30分保温し、42℃で40秒ヒートショックを行った。その後、これに0.5mlのSOC培地(2% トリプトン、0.5% 酵母エキス、10mM NaCl、2.5mM KCl、20mM MgCl2、20mM MgSO4、0.2% グルコース、pH7.0)を添加し、37℃で1時間培養した。この培養液250μlをLBプレート(1% NaCl、1% トリプトン、0.5% 酵母エキス、2% 寒天、50mg/L アンピシリン)にプレーティングし、37℃で1日培養した。ニトリルヒドラターゼ遺伝子を含む大腸菌JM109形質転換体が得られた。
【0056】
(2)改良型ニトリルヒドラターゼのスクリーニング及び置換箇所の同定
スクリーニングには、上記(1)で得られたニトリルヒドラターゼ遺伝子を含む大腸菌JM109形質転換体、及び野生型ニトリルヒドラターゼを産生する大腸菌JM 109/ pJH601を使用した。LB-Amp培地(1mM IPTG、5μg/ml CoCl2含有)を1mlずつ入れた96穴ディープウェルプレートに上記菌株を各々接種し、37℃で12時間液体培養した。次いで、培養液を60℃の温度下、20分間の熱処理に供した後、残存ニトリルヒドラターゼ活性の測定を下記の方法で行った。ランダムに変異導入したニトリルヒドラターゼ遺伝子を有する数万個の形質転換体についてスクリーニングを行った。
【0057】
活性測定は、5% アクリロニトリル/50mMリン酸緩衝液pH 7.7を菌液に対して等量加え、30℃で30分反応させた。反応終了後、0.1Mリン酸を反応液と等量加え遠心分離した。遠心分離後の上清を適宜希釈してHPLCに供し、生成したアクリルアミド濃度を分析した(WAKOSIL 5C8(和光純薬社)250mm、5mMリン酸を含んだ10%アセトニトリル、移動相の流速1ml/min及び紫外吸収検出器波長260nm)。比較対照として、熱処理を行わずに4℃で保冷した各々の無処理菌を用いて活性測定を行い、得られた活性値を基準として、熱処理後の残存活性(%)を求めた。
【0058】
野生型(wt)ニトリルヒドラターゼ(pJH601)を産生する菌体と比較して残存活性が高かった改良型ニトリルヒドラターゼを産生する形質転換体を培養してプラスミドを回収した。回収されたプラスミドは、pE113、pE132、pE154及びpE205と命名した。残存活性の結果を表1に示した。各プラスミドの塩基配列は、BeckmanCEQ-2000XLによって決定した。
【0059】
各プラスミドの変異遺伝子配列によってコードされるアミノ酸配列中のアミノ酸残基の置換態様を以下に示す。
pE113: Nβ←63S,Vβ←11A,Nα↑10H,Eα↓41G,Sβ←3T
pE132: Nβ←63S,Vβ←11A,Vα↑44A,Pα↑42L,Iβ←118T
pE154: Nβ←63S,Vβ←11A,Sα↑26A,Eα↓43K
pE205: Nβ←63S,Vβ←11A,Sβ←173K
【0060】
【表1】

【実施例2】
【0061】
ロドコッカス菌形質転換体の作製と評価
(1)プラスミドの構築
以下の方法でαサブユニットのアミノ酸配列において、補欠分子結合領域を構成するCTLCSC領域の最も上流側のC残基より、60残基上流の残基に変異(Nα↑60D)を有するロドコッカス菌用プラスミドを作製した。変異の導入は部位特異的変異導入法を用い、市販キット:QuikChange XL Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社)を使用した。実験は操作マニュアルに従った。変異を導入する鋳型プラスミドとしてpSJ034を使用した。pSJ034はロドコッカス菌においてニトリルヒドラターゼを発現するプラスミドである。pSJ034は、pSJ023より特開平10-337185号公報に示す方法で作製した。
なお、pSJ023は形質転換体「R. rhodochrous ATCC12674/pSJ023」であり、受託番号FERM BP-6232として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に平成9(1997)年3月4日付けで国際寄託されている。
変異を導入するための2種のプライマーを合成した。下線部は変異導入部位を示す。
β←63−F: ccgaaatatgtgcggAGCaagatcggggaaatc (配列番号5)
β←63−R: gatttccccgatcttGCTccgcacatatttcgg (配列番号6)
位置特異的変異導入PCRは、GeneAmp9700(PEバイオサイエンス社)を用いて以下の条件で行った。
【0062】
<PCR反応液組成>
鋳型プラスミドpSJ034(10ng) 2μl
10× 反応Buffer 5μl
プライマーβ←63−F(100ng/μl) 1μl
プライマーβ←63−R(100ng/μl) 1μl
2.5mM dNTPmix 1μl
滅菌水 36μl
QuickSolution 3μl
Pfu Turbo DNA Polymerase 1μl
<反応条件>
95℃で1分
(95℃で50秒、60℃で50秒、68℃で14分)×18サイクル
68℃で7分
【0063】
PCR終了後、反応液10μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、約11 kbの増幅断片の検出を行った。増幅断片を確認した後、1μl のDpn I(キットに付属)をPCR反応液に添加して37℃で1時間反応させ、鋳型プラスミドの除去を行った。
次に、XL10-GOLD ultracompetent cell(キットに付属)を用いて形質転換を行った。2μlのDpnI処理済みのPCR反応液と45μlのコンピテントセルを混ぜ4℃で30分保温し、42℃で30秒ヒートショックを行った。その後、当該菌液に0.5mlのNZY培地(1% NZアミン、0.5% 酵母エキス、0.5% NaCl、12.5mM MgCl2、12.5mM MgSO4、0.4% グルコース、pH7.5)を添加し、37℃で1時間培養した。この培養液250μlをLBプレート(1% NaCl、1% トリプトン、0.5% 酵母エキス、2% 寒天、50mg/Lアンピシリン)にプレーティングし、37℃で1日培養した。
【0064】
得られたコロニー数個をLB培地(50mg/Lアンピシリン)1.5mlで培養し、FlexiPrep Kit(アマシャムバイオサイエンス)を使用しプラスミドを調製した。最後に、得られたプラスミドの塩基配列の決定を行い、目的の変異が導入されていることを確認した。このようにして、Nβ←63Sのアミノ酸置換を生じさせる塩基置換が導入された変異導入プラスミド:p52Rを得た。
次に、p52Rを鋳型プラスミドとして上記と同様に以下の2種類のプライマーを用いて位置特異的に変異導入を行った。
β←11−F: gaaagacgtagtgtgcGCCgatctctgggaaccg (配列番号7)
β←11−R: cggttcccagagatcGGCgcacactacgtctttc (配列番号8)
このようにして、Nβ←63S及びVβ←11Aのアミノ酸置換を生じさせる塩基置換が導入された変異導入プラスミド:pAR002(図3)を得た。
続いて、pAR002を鋳型プラスミドとして上記と同様に以下の2種類のプライマーを用いて位置特異的に変異導入を行った。具体的には、さらにVα↑44A、Pα↑42L、Sα↑26A、Nα↑10H、Eα↓41G、Eα↓43K、Sβ←3T、Iβ←118T、及びSβ←173Kのうちのいずれか又は複数のアミノ酸置換を生じさせる塩基置換が導入されたプラスミドを作製した。
【0065】
各塩基置換を導入するためのプライマーの配列は以下の通りである。
α↑44−F: gtggccaagtcctggGCGgaccctgagtaccgc (配列番号11)
α↑44−R: gcggtactcagggtcCGCccaggacttggccac (配列番号12)
【0066】
α↑42−F: caagtcctgggtggacCTTgagtaccgcaagtgg (配列番号13)
α↑42−R: ccacttgcggtactcAAGgtccacccaggacttg (配列番号14)
【0067】
α↑26−F: acggccgcgatggcgGCAttgggctatgccggtg (配列番号15)
α↑26−R: caccggcatagcccaaTGCcgccatcgcggccgt (配列番号16)
【0068】
α↑10−F: atttcggcggtcttcCACgactcccaaacgcatc (配列番号17)
α↑10−R: gatgcgtttgggagtcGTGgaagaccgccgaaat (配列番号18)
【0069】
α↓41−F: ttcgacatccccgatgaggtgGGGgtcagggtttg (配列番号19)
α↓41−R: caaaccctgacCCCcacctcatcggggatgtcgaa (配列番号20)
【0070】
α↓43−F: catccccgatgaggtgAAGgtcagggtttgggac (配列番号21)
α↓43−R: gtcccaaaccctgacCTTcacctcatcggggatg (配列番号22)
【0071】
β←3−F: ctgggaaccgtacctgACCtctgcgtga (配列番号23)
β←3−R: tcacgcagaGGTcaggtacggttcccag (配列番号24)
【0072】
β←118−F: cacggacaggaagccgACGcggaagttcgatccg (配列番号25)
β←118−R: cggatcgaacttccgCGTcggcttcctgtccgtg (配列番号26)
【0073】
β←173−F: cggttcttccgggagAAGatggggaacgaaaac (配列番号27)
β←173−R: gttttcgttccccatCTTctcccggaagaaccg (配列番号28)
【0074】
得られたプラスミドは、それぞれ、pER113、pER132、pER154及びpER205と命名した。
各プラスミドの変異遺伝子配列によってコードされるアミノ酸配列中のアミノ酸残基の置換態様を以下に示す。
pER113: Nβ←63S,Vβ←11A,Nα↑10H,Eα↓41G,Sβ←3T
pER132: Nβ←63S,Vβ←11A,Vα↑44A,Pα↑42L,Iβ←118T
pER154: Nβ←63S,Vβ←11A,Sα↑26A,Eα↓43K
pER205: Nβ←63S,Vβ←11A,Sβ←173K
【0075】
(2)ロドコッカス菌形質転換体の作製
ロドコッカス・ロドクロウス ATCC 12674 株の対数増殖期の細胞を遠心分離器により集菌し、氷冷した滅菌水にて3回洗浄し、滅菌水に懸濁した。上記(1)で調製したプラスミド 1μlと菌体懸濁液10μlを混合し、氷冷した。キュベットにDNAと菌体の懸濁液を入れ、遺伝子導入装置 Gene Pulser (BIO RAD)により2.0KV、200 OHMSで電気パルス処理を行った。電気パルス処理液の入ったキュベットを氷冷下10分間静置し、37℃で10分間ヒートショクを行った。その後、キュベットにMYK培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、0.2% K2HPO4 、0.2% KH2PO4 )500μl を加え、30℃、5時間静置した後、50μg/mlカナマイシン入りMYK寒天培地に塗布した。30℃、3日間培養後のコロニーを形質転換体とした。
【0076】
(3)ロドコッカス菌形質転換体の耐熱性評価
得られたロドコッカス菌形質転換体を用いて、熱処理後の残存ニトリルヒドラターゼ活性を調べた。比較対照として、野生型ニトリルヒドラターゼを有するロドコッカス・ロドクロウスATCC12674/pSJ034(以下、ATCC12674/pSJ034という)を使用した。
菌体懸濁液のニトリルヒドラターゼ活性の測定は、下記の方法で行った。
菌体液0.2mlと50mMリン酸緩衝液(pH7.7)4.8mlとを混合し、さらに5.0%(w/v)のアクリロニトリルを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.7)5mlを混合液に加えて、10℃で10分間振盪しながら反応させた。
次いで、菌体を濾別して、ガスクロマトグラフィーを用いて生成したアクリルアミドの量を定量した。
【0077】
<分析条件>
分析機器: ガスクロマトグラフGC-14B(島津製作所製)
検出器: FID(検出200℃)
カラム: ポラパックPS(ウォーターズ社製カラム充填剤)を充填した1mガラスカラム
カラム温度: 190℃
【0078】
アクリルアミドの量からニトリルヒドラターゼ活性を換算した。ここで、ニトリルヒドラターゼ活性は、1分間に1μmolのアクリルアミドを生成する酵素量を1Uと定義する。
【0079】
ATCC12674/pSJ034と、上記(2)の工程で得られた各形質転換体をMYK培地(50μg/mlカナマイシン)にそれぞれ接種し、30℃にて2日間振盪培養し、GGPK培地(1.5% グルコース、1% グルタミン酸ナトリウム、0.1% 酵母エキス、0.05% K2HPO4 、0.05% KH2PO4、0.05% MgSO4・7H2O、1% CoCl2、0.1% 尿素、50μg/mlカナマイシン、pH7.2)に1%植菌を行った。30℃で3日間振盪培養し、遠心分離により集菌した。その後、100mMリン酸緩衝液(pH8.0)で菌体を洗浄し、最後に少量の同緩衝液に懸濁した。
加熱処理は、適宜希釈した菌体懸濁液0.5mlを試験管に入れ、65℃の温度下の水浴中で30分間保温し、その後氷中で冷却した。比較対照として、熱処理を行わずに4℃で保冷した各々の無処理菌を用いて活性測定を行い、得られた活性値を基準として、熱処理後の残存活性(%)を求めた。残存活性の結果を表2に示した。
【0080】
【表2】

【0081】
野生型ニトリルヒドラターゼを含むATCC12674/pSJ034は、65℃、30分間の熱処理による残存活性が23%であった。これに対して、改良型ニトリルヒドラターゼを含むロドコッカス・ロドクロウスATCC 12674/pER113、ATCC 12674/pER132、ATCC 12674/pER154、及びATCC 12674/pER205は、すべて40%以上の残存活性を保持していた。よって、改良型ニトリルヒドラターゼは、耐熱性が向上していた。
【実施例3】
【0082】
アミド化合物耐性の評価
実施例2で得られた形質転換体を用いて、アミド化合物耐性を評価した。当該評価は、下記反応液組成及び反応条件で行った。なお、反応に用いる各菌体懸濁液の菌量は、実施例2の(3)の方法で測定した活性の測定結果に従い、同一の酵素活性単位(U)量となるように100mMリン酸緩衝液(pH8.0)で調製した。比較対照として、野生型ニトリルヒドラターゼを有するATCC12674/pSJ034を使用した。
【0083】
<反応液組成>
50%アクリルアミド溶液 95g
アクリロニトリル 3g
1Mリン酸緩衝液 1g
菌液(同一の酵素活性単位(U)量) 1g
<反応条件>
攪拌しながら20時間反応(30℃)
【0084】
反応開始前(0時間)、0.5時間後及び20時間後にそれぞれ反応液1mlをサンプリングし、0.22μmのフィルターを用いて濾過を行った。得られた濾液を、ガスクロマトグラフィーに供した。分析条件は、実施例2の(4)に示すアクリルアミド定量の分析条件と同様に行った。
残存するアクリロニトリルの割合(%)の分析結果を表3に示した。
【0085】
【表3】

【0086】
改良型ニトリルヒドラターゼは、野生型ニトリルヒドラターゼ(pSJ034)よりも、残存するアクリロニトリルが少なかった。よって、改良型ニトリルヒドラターゼは、高濃度のアクリルアミド存在下でもニトリルヒドラターゼ活性が維持され、アクリルアミドに対して耐性が向上していた。実施例2の結果を合わせると、上記改良型ニトリルヒドラターゼは、耐熱性及びアミド化合物耐性がいずれも向上したものであると言える。
【実施例4】
【0087】
ロドコッカス・ロドクロウスM8株由来ニトリルヒドラターゼへの変異導入、及び形質転換体の作製と評価
(1)ロドコッカス・ロドクロウスM8株(以下、M8株という。)由来ニトリルヒドラターゼ遺伝子を含むプラスミドの構築
M8株はロシア菌株センターIBFM(VKPM S-926)から入手することができる。
M8株を100mlのMYK(0.5%ポリペプトン、0.3% バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、1% グルコース、0.2% K2HPO4、0.2% KH2PO4)培地(pH7.0)中、30℃にて72時間振盪培養した。培養液を遠心分離し、集菌した菌体をSaline-EDTA溶液(0.1M EDTA、0.15M NaCl(pH8.0))4mlに懸濁した。懸濁液にリゾチーム8mgを加えて37℃で1〜2時間振盪した後、−20℃で凍結した。
【0088】
次に、当該懸濁液に10mlのTris-SDS液(1%SDS、0.1M NaCl、0.1M Tris-HCl(pH9.0))を穏やかに振盪しながら加えた。さらに、当該懸濁液にプロテイナーゼK(メルク社)(終濃度0.1mg)を加え37℃で1時間振盪した。次に、等量のTE飽和フェノールを加え攪拌後(TE:10mM Tris-HCl、1mM EDTA(pH8.0))遠心した。上層を採取し、2倍量のエタノールを加えて、ガラス棒でDNAを巻きとった。その後、これを順次90%、80%、70%のエタノールで遠心分離しフェノールを取り除いた。
次に、DNAを3mlのTE緩衝液に溶解させ、リボヌクレアーゼA溶液(100℃、15分間の加熱処理済)を10μg/mlになるよう加え37℃で30分間振盪した。さらに、プロテイナーゼK(メルク社)を加え37℃で30分間振盪した。これに等量のTE飽和フェノールを加えて遠心分離後、上層と下層に分離した。
【0089】
上層をさらに等量のTE飽和フェノールを加えて遠心分離後、上層と下層に分離した。この操作を再度繰り返した。その後、上層に同量のクロロホルム(4%イソアミルアルコール含有)を加えて遠心分離し、上層を回収した。次いで、上層に2倍量のエタノールを加えガラス棒でDNAを巻きとって回収し、染色体DNAを得た。
PCRは、Thermalcycler personal(宝酒造)を用いて以下の条件で行った。
【0090】
<PCR反応溶液組成>
鋳型DNA(染色体DNA) 1μl
10×ExTaq Buffer(宝酒造社製) 10μl
プライマーMH-01 1μl
プライマーMH-02 1μl
5mM dNTPmix 8μl
滅菌水 78μl
ExTaqDNAポリメラーゼ(宝酒造社製) 1μl
<プライマー>
MH-01: ccatggatggtatccacgacacaggcggcatgacc (配列番号30)
MH-02: aagcttcacgctggcctcgagcgcctttgtccag (配列番号31)
<反応条件>
(94℃で30秒、65℃で30秒、72℃で3分)×30サイクル
【0091】
PCR終了後、反応液5μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、1.5kbの増幅断片の検出を行った。反応終了液をGFX column(アマシャムバイオサイエンス)で精製し、制限酵素NcoIとHindIIIで切断を行った。制限酵素処理を行ったPCR産物は0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、1.5kb付近のバンドを回収した。回収したPCR産物はLigation Kit(宝酒造)を用いてベクター(pTrc99AのNcoI-HindIII部位)に結合し、大腸菌JM109へ形質転換を行った。得られた形質転換体コロニーより数クローンをLB-Amp培地1.5mlに接種し、37℃で12時間振盪培養した。培養後、この培養物を遠心分離により集菌した。Flexi Prep(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いることにより、集菌した菌体からプラスミドDNAを抽出した。得られたプラスミドDNAを制限酵素NcoIとHindIIIで切断後、0.7%アガロースゲルにより電気泳動を行い、ニトリルヒドラターゼ遺伝子断片(1.5kb)が正しく連結されているクローンを選んでpMH301(図4)と命名した。
【0092】
(2)変異導入形質転換体の作製
M8株由来ニトリルヒドラターゼの塩基配列(配列番号29)に変異導入を行った。位置特異的変異導入は、使用したプラスミドがM8株由来ニトリルヒドラターゼ発現プラスミドのpMH301(図3)である以外は、実施例2の(1)と同様の方法で行った。
得られた変異導入プラスミドは、それぞれ、pMH058、pME113、pME132、pME154及びpME205と命名した。
各プラスミドの変異遺伝子配列によってコードされるアミノ酸配列中のアミノ酸残基の置換態様を以下に示す。
pMH058: Nβ←63S
pME113: Nβ←63S,Vβ←11A,Nα↑10H,Eα↓41G,Sβ←3T
pME132: Nβ←63S,Vβ←11A,Vα↑44A,Pα↑42L,Iβ←118T
pME154: Nβ←63S,Vβ←11A,Sα↑26A,Eα↓43K
pME205: Nβ←63S,Vβ←11A,Sβ←173K
当該プラスミドを大腸菌JM109に形質転換し、変異導入した形質転換体を作製した。得られた形質転換体は、LB-Amp培地(1mM IPTG、5μg/ml CoCl2含有)10mlに接種し、37℃で12時間液体培養した。
【0093】
(3)耐熱性評価
上記(2)の工程で得られた培養物を60℃の温度下、20分間の熱処理に供した。次いで、ニトリルヒドラターゼの残存活性の測定を行った。活性測定は、実施例1の(2)と同様の方法で行った。比較対照として、熱処理を行わずに4℃で保冷した各々の無処理菌を用いて活性測定を行い、得られた活性値を基準として、熱処理後の残存活性(%)を求めた。残存活性の結果を表4に示した。
【0094】
【表4】

【0095】
M8株由来のニトリルヒドラターゼにおいても、改良型ニトリルヒドラターゼは、野生型ニトリルヒドラターゼ(pMH301)より残存活性が高かった。よって、改良型ニトリルヒドラターゼは、耐熱性が向上していた。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】プラスミドpAB002の構成図である。
【図2】プラスミドpJH601の構成図である。
【図3】プラスミドpAR002の構成図である。
【図4】プラスミドpMH301の構成図である。
【図5−1】補欠分子結合領域「C(S/T)LCSC」を含む、各種微生物由来の野生型ニトリルヒドラターゼのαサブユニットのアミノ酸配列(N末端側の一部)を示す図である。
【図5−2】図5-1と同様のアミノ酸配列を示す図であり、図5-1のアミノ酸配列に続く配列を示している。
【図5−3】図5-1と同様のアミノ酸配列を示す図であり、図5-2のアミノ酸配列に続く配列(C末端側の一部)を示している。
【配列表フリーテキスト】
【0097】
配列番号5:合成DNA
配列番号6:合成DNA
配列番号7:合成DNA
配列番号8:合成DNA
配列番号9:合成DNA
配列番号10:合成DNA
配列番号11:合成DNA
配列番号12:合成DNA
配列番号13:合成DNA
配列番号14:合成DNA
配列番号15:合成DNA
配列番号16:合成DNA
配列番号17:合成DNA
配列番号18:合成DNA
配列番号19:合成DNA
配列番号20:合成DNA
配列番号21:合成DNA
配列番号22:合成DNA
配列番号23:合成DNA
配列番号24:合成DNA
配列番号25:合成DNA
配列番号26:合成DNA
配列番号27:合成DNA
配列番号28:合成DNA
配列番号30:合成DNA
配列番号31:合成DNA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)又は(B)のタンパク質。
(A) 野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において下記(a)〜(i)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
(a)αサブユニットのアミノ酸配列のうち補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より44残基上流のアミノ酸残基
(b)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より42残基上流のアミノ酸残基
(c)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より26残基上流のアミノ酸残基
(d)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より10残基上流のアミノ酸残基
(e)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より41残基下流のアミノ酸残基
(f)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より43残基下流のアミノ酸残基
(g)βサブユニットのアミノ酸配列のうちC末端のアミノ酸残基から数えて3残基上流のアミノ酸残基
(h)上記C末端のアミノ酸残基から数えて118残基上流のアミノ酸残基
(i)上記C末端のアミノ酸残基から数えて173残基上流のアミノ酸残基
(B) (A)のタンパク質のアミノ酸配列において、前記置換後のアミノ酸残基を除き、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
【請求項2】
以下の(A)又は(B)のタンパク質。
(A) 野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において下記(a)及び(b)のアミノ酸残基と下記(c)〜(e)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基とが他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
(a)βサブユニットのアミノ酸配列のうちC末端のアミノ酸残基から数えて63残基上流のアミノ酸残基
(b)上記C末端のアミノ酸残基から数えて11残基上流のアミノ酸残基
(c)上記C末端のアミノ酸残基から数えて3残基上流のアミノ酸残基
(d)αサブユニットのアミノ酸配列のうち補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より10残基上流のアミノ酸残基
(e)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より41残基下流のアミノ酸残基
(B) (A)のタンパク質のアミノ酸配列において、前記置換後のアミノ酸残基を除き、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
【請求項3】
以下の(A)又は(B)のタンパク質。
(A) 野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において下記(a)及び(b)のアミノ酸残基と下記(c)〜(e)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基とが他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
(a)βサブユニットのアミノ酸配列のうちC末端のアミノ酸残基から数えて63残基上流のアミノ酸残基
(b)上記C末端のアミノ酸残基から数えて11残基上流のアミノ酸残基
(c)上記C末端のアミノ酸残基から数えて118残基上流のアミノ酸残基
(d)αサブユニットのアミノ酸配列のうち補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より44残基上流のアミノ酸残基
(e)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より42残基上流のアミノ酸残基
(B) (A)のタンパク質のアミノ酸配列において、前記置換後のアミノ酸残基を除き、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
【請求項4】
以下の(A)又は(B)のタンパク質。
(A) 野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において下記(a)及び(b)のアミノ酸残基と下記(c)及び/又は(d)のアミノ酸残基とが他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
(a)βサブユニットのアミノ酸配列のうちC末端のアミノ酸残基から数えて63残基上流のアミノ酸残基
(b)上記C末端のアミノ酸残基から数えて11残基上流のアミノ酸残基
(c)αサブユニットのアミノ酸配列のうち補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も上流側のC残基より26残基上流のアミノ酸残基
(d)上記アミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より43残基下流のアミノ酸残基
(B) (A)のタンパク質のアミノ酸配列において、前記置換後のアミノ酸残基を除き、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
【請求項5】
以下の(A)又は(B)のタンパク質。
(A) 野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において下記(a)、(b)及び(c)のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
(a)βサブユニットのアミノ酸配列のうちC末端のアミノ酸残基から数えて63残基上流のアミノ酸残基
(b)上記C末端のアミノ酸残基から数えて11残基上流のアミノ酸残基
(c)上記C末端のアミノ酸残基から数えて173残基上流のアミノ酸残基
(B) (A)のタンパク質のアミノ酸配列において、前記置換後のアミノ酸残基を除き、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする遺伝子DNA。
【請求項7】
請求項6記載の遺伝子DNAを含む組換えベクター。
【請求項8】
請求項7記載の組換えベクターを含む形質転換体。
【請求項9】
請求項8記載の形質転換体を培養して得られる培養物から採取されるニトリルヒドラターゼ。
【請求項10】
請求項8記載の形質転換体を培養し、得られる培養物からニトリルヒドラターゼを採取することを特徴とする、ニトリルヒドラターゼの製造方法。
【請求項11】
請求項8記載の形質転換体を培養して得られる培養物又は当該培養物の処理物をニトリル化合物に接触させ、当該接触により生成されるアミド化合物を採取することを特徴とする、アミド化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【公開番号】特開2007−143409(P2007−143409A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338125(P2005−338125)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】