説明

改装サッシユニット

【課題】既設枠の上枠と改装枠の上枠との接合部が高い水密性を有し、施工しやすい改装サッシユニットを提供する。
【解決手段】新たに設けられる改装サッシ、及び、既設枠が有する既設上枠の下方を覆い改装サッシが有する改装枠の改装上枠が固定される上枠固定板部と、上枠固定板部の室外側の端部側にて上方に突出させて設けられ既設上枠に室内側から当接される既設上枠当接部と、上枠固定板部の室外側の縁から下方に突出させて設けられ改装上枠が室内側から当接される改装上枠当接部と、を備えた上枠接合部材、を有し、既設上枠と改装上枠とは、上枠接合部材を介して接合されており、既設上枠当接部は、改装上枠当接部より室内側に設けられるとともに、既設上枠の最も室外側に垂設された既設壁部に当接され、改装上枠当接部は、改装上枠の最も室外側に垂設された改装壁部に当接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設サッシの既設枠に設けられる改装サッシユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
既設サッシの既設枠に設けられる改装サッシユニットとしては、建物の開口部に設けられた既設の旧窓枠の中に新設枠を嵌め込んで両者を互いに固着して成る改装窓が知られている。このような改装窓は、断面がL型をなす基準部材と、基準部材の下面に取り付けられる位置設定部材と、を用いて旧窓枠と接合されている。具体的には、基準部材が有する平板状の案内基準壁が水平となるように、旧窓枠が有する旧上枠の障子案内片等の下端に案内基準壁を当て付けて基準部材が旧窓枠に固定され、位置設定部材の位置設定壁が案内基準壁に対して直角となるように、位置設定部材が基準部材の下面に取り付けられ、位置設定壁の室外側に新上枠が固定されている。
【0003】
新上枠の外周側枠片の上側の端部は、室内側に向けて突出するような段部が形成されており、その先端に段部と直角をなして上方に延びるように設けられた取付壁が位置設定壁に固定されている。また、基準部材の案内基準壁とともにL字型をなす閉鎖壁は、案内基準壁の室外側の端部から上方に延び、旧上枠の室外側枠片と間隔をあけて対向するように配置されている。このとき、取付壁は位置設定壁より室内側にて、その上端が案内基準壁の下面に当接されて、室外側の基準部材と新上枠との間には、閉鎖壁と室外側枠片との間の空隙と繋がった空間をなし、室内側に窪み室外側に開放された凹部が形成されている。閉鎖壁と室外側枠片との間の空隙及び凹部には、コーキング材が充填されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63−63715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような改装窓は、コーキング材が外周側枠片より室内側に窪み室外側に開放された凹部と、凹部と繋がった閉鎖壁と室外側枠片との間の空隙に充填されているので、コーキング材に劣化や亀裂が生じた場合には、雨水等が室内側に浸入しやすい。特に、旧上枠に取り付けられた基準部材は、L字状をなす閉鎖壁が、コーキング材が充填される空隙を形成しており、閉鎖壁を繋がった案内基準壁が水平をなして室内側に繋がっているので、雨水等が室内側に浸入しやすい。また、コーキング材は、新窓枠を旧窓枠に取り付ける施工現場にて充填するので、現場での工程が増え施工性が悪いという課題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、既設枠の上枠と改装枠の上枠との接合部が高い水密性を有し、施工しやすい改装サッシユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために本発明の改装サッシユニットは、室内外を連通する開口に設けられている、既設サッシの既設枠の内周側に設けられる改装サッシユニットであって、新たに設けられる改装サッシ、及び、前記既設枠が有する既設上枠の下方を覆い前記改装サッシが有する改装枠の改装上枠が固定される上枠固定板部と、前記上枠固定板部の室外側の端部側にて上方に突出させて設けられ前記既設上枠に室内側から当接される既設上枠当接部と、前記上枠固定板部の室外側の縁から下方に突出させて設けられ前記改装上枠が室内側から当接される改装上枠当接部と、を備えた上枠接合部材、を有し、前記既設上枠と前記改装上枠とは、前記上枠接合部材を介して接合されており、前記既設上枠当接部は、前記改装上枠当接部より室内側に設けられるとともに、前記既設上枠の最も室外側に垂設された既設壁部に当接され、前記改装上枠当接部は、前記改装上枠の最も室外側に垂設された改装壁部に当接されていることを特徴とする改装サッシユニットである。
【0008】
このような改装サッシユニットによれば、上枠接合部材を介して既設上枠と接合される改装上枠は、既設上枠の下方を覆う上枠固定板部の室外側の縁から下方に突出させて設けられた改装上枠当接部に室内側から当接される。改装上枠当接部は、上枠固定板部の室外側の端部側にて上方に突出させて設けられ、既設上枠に室内側から当接される既設上枠当接部より室外側に位置している。このため、室外側において既設上枠と改装上枠との間では、例えば既設上枠の室外側に降った雨水等は、既設上枠の室外側の面から既設上枠当接部の室外側の面に伝い、改装上枠当接部の室外側の面を伝う。すなわち、室外側における既設上枠と改装上枠と接合部では、雨水等は既設上枠当接部に沿って上昇しない限り室内側に浸入する経路はない。このため、室内側に水分が浸入しにくい、水密性の高い改装サッシユニットを提供することが可能である。また既設上枠の最も室外側と改装上枠の最も室外側にて、改装上枠を、上枠接合部材を介して既設上枠と接合するので、より室内側に水分が浸入し難い改装サッシユニットを提供することが可能である。
また、既設上枠当接部を既設上枠の既設壁部に当接させ、改装上枠当接部に改装上枠の改装壁部に当接させるだけで、高い水密性を備えることが可能である。
【0009】
かかる改装サッシユニットであって、前記既設上枠当接部と前記改装上枠当接部とは、室内側に水密材を有していることが望ましい。
このような改装サッシユニットによれば、既設上枠当接部が室外側に有している水密材に既設上枠の既設壁部が当接され、改装上枠当接部が室内側に有している水密材に改装上枠の改装壁部が当接されるので、より水密性を向上させることが可能である。
【0010】
かかる改装サッシユニットであって、前記既設上枠当接部は、前記上枠固定板部と一体をなす既設上枠当接片を有し、前記改装上枠当接部は、前記上枠固定板部と一体をなす改装上枠当接片を有し、前記既設上枠当接片と前記改装上枠当接片との室内側に、前記水密材が嵌合される水密材嵌合部が設けられていることが望ましい。
このような改装サッシユニットによれば、水密材は、上枠固定板部と一体をなす既設上枠当接片と、上枠固定板部と一体をなす改装上枠当接片とに設けられた水密材嵌合部に嵌合されて設けられるので、予め既設上枠当接片と改装上枠当接片とに嵌合しておくことにより、既設枠の内周側に改装枠を取り付けるだけで、既設上枠当接部と既設壁部との間、及び、改装上枠当接部と改装壁部との間に水密材を備えることが可能である。このため、施工性が高い改装サッシユニットを提供することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、既設枠の上枠と改装枠の上枠との接合部が高い水密性を有し、施工しやすい改装サッシユニットを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る改装サッシユニットを説明するための縦断面図である。
【図2】本実施形態に係る改装サッシユニットを説明するための水平断面図である。
【図3】本実施形態に係る改装サッシユニットの取付方法を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る改装サッシユニットついて図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態の改装サッシユニット1は、例えば、新たに設けられる改装サッシ10と、建物の室内外を連通する開口2に設けられている既設サッシの既設枠50に前記改装サッシ10を取り付けるための接合部材35、36、37と、既設枠50及び躯体3に取り付けるための固定部材40、41、42と、を有している。本実施形態では、図1に示すように、室内外を連通する開口2に設けられた半外付けタイプの既設枠50の内周側に設けられる改装サッシユニットについて説明する。
【0015】
以下の説明においては、建物等に取り付けられた状態の既設枠50及び改装サッシ10を室内側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向または見付け方向、室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。また、改装サッシユニットが備える各部材は、単体として説明する場合であっても開口2に取り付けられた状態で上下方向、見付け方向、見込み方向等となる方向にて方向を特定して説明する。また、開口の上部に取り付けられる枠部材の下側、開口2の下部に取り付けられる枠部材の上側、開口2の左側に取り付けられる枠部材の右側、開口2の右側に取り付けられる枠部材の左側を、開口2及び枠部材の中央側又は内側として説明する。
【0016】
本実施形態においては、建物に既に設けられている既存の既設枠50と、既設枠50を開口2の内側から覆うように取り付けられる改装サッシ10とが登場するが、同じ名称を有する部位、部材には、各名称の前に「既設」または「改装」を付して説明する。例えば、既設枠が有する下枠や縦枠等は、既設下枠、既設縦枠等とし、改装サッシ10が有する縦枠や障子等は、改装縦枠、改装障子等として説明する。
【0017】
既設サッシの既設枠50は、引き違い障子用の枠体であり、既設サッシの既設障子(不図示)が案内される既設レール51a、51b、52a、52bを有する既設上枠51及び既設下枠52と、既設障子の既設戸先框(不図示)と係合する既設係合片53aを有する左右の既設縦枠53とが矩形状に枠組みされて開口2に設けられている。尚、既設上枠51、既設下枠52、及び、左右の既設縦枠53は押出成形部材であり、左右の既設縦枠53は、既設障子と係合する既設係合片53aの形状及び位置は異なるものの、互いにほぼ左右対称の形状をなしている。
【0018】
既設枠50は、既設上枠51が躯体3をなす窓まぐさ3aに、既設下枠52が躯体3をなす窓台3bに、左右の既設縦枠53が躯体3をなす柱(方立)3cにそれぞれ固定されている。既設上枠51、既設下枠52、既設縦枠53は、いずれも、見込み方向において、窓まぐさ3a、窓台3b、柱3cの見込み方向におけるほぼ中央から室外側に設けられている。
【0019】
既設上枠51は、既設内障子(不図示)を案内するための既設内上レール51aと、既設外障子(不図示)を案内するための既設外上レール51bと、既設網戸(不図示)を案内するための既設網戸上レール51cと、既設額縁30と対向する既設上額縁対向部51dとを有している。既設内上レール51a、既設外上レール51b、既設網戸上レール51c、既設上額縁対向部51dは、上端側にて繋がるとともに、上部に設けられ上方に向かって突出された固定フィン51eにて窓まぐさ3aに固定されている。既設内上レール51a、既設外上レール51b、既設網戸上レール51c、既設上額縁対向部51dとは、いずれも見付け方向の全域に渡って鉛直方向に垂設された板状の部位であり、室内側から既設上額縁対向部51d、既設内上レール51a、既設外上レール51b、既設網戸上レール51c、の順で配置され、見込み方向に互いに間隔を隔てて対面するように設けられている。また、既設内上レール51aと既設外上レール51bとの下端は、ほぼ同じ位置まで延びている。ここで、既設網戸上レール51cが既設上枠の最も室外側に垂設された既設壁部に相当する。
【0020】
既設下枠52は、既設内障子(不図示)を案内するための既設内下レール52aと、既設外障子(不図示)を案内するための既設外下レール52bと、既設網戸(不図示)を案内するための既設網戸下レール52cと、既設額縁30に当接される既設下額縁対向部52dとが、見込み方向に互いに間隔を隔てて設けられている。既設内下レール52a、既設外下レール52b、既設網戸下レール52c、既設下額縁対向部52dは、いずれも見付け方向の全域に渡って上方に突出させて設けられた板状の部位である。そして、室内側から既設下額縁対向部52d、既設内下レール52a、既設外下レール52b、既設網戸下レール52c、の順で、見込み方向に互いに間隔を隔てて配置されている。また、既設下額縁対向部52d及び既設内下レール52aと、既設外下レール52bと、既設網戸下レール52cとは、室内側から室外側に向かって順次低くなるように階段状に形成されている。
【0021】
既設下枠52は、室内側の部位が窓台3b上に載置されるとともに下方に向かって突出された固定フィン52eにて窓台3bに固定されている。
【0022】
既設縦枠53は、見込み方向に沿う平面でなる既設縦枠本体部53bと、既設縦枠本体部53bから開口2の中央側に突出され既設障子の既設戸先框が係合される既設係合片53aと、既設枠50の室外側にて配置され既設縦枠本体部53bから開口2の中央側に突出され既設網戸の既設縦框に挿入される既設挿入片53dと、既設挿入片53dと見付け方向において反対側に既設縦枠本体部53bから突出された固定フィン53eと、を有している。
【0023】
改装サッシユニット1は、新たに取り付けられる改装サッシ10と、既設枠50に改装サッシ10を取り付けるための上枠接合部材35、下枠接合部材36、縦枠接合部材37と、上枠接合部材35を既設枠50に固定するための上枠接合部材固定金具40と、下枠接合部材36を既設枠50に固定するための固定部材としての下枠接合部材固定金具41と、縦枠接合部材37を既設枠50に固定するための固定部材としての縦枠接合部材固定金具42と、既設縦枠53と改装縦枠23とを室外側から覆う縦枠カバー部材45と、室外側にて改装枠20の下端側の左右の角部を覆うキャップ部材46と、を有している。
【0024】
改装サッシ10は、建物等の開口に直接新設可能な一般的なサッシである。すなわち、改装専用のサッシではない。改装サッシ10の改装枠20も引き違い障子用の枠体であり、改装サッシ10の改装障子12が案内される改装レール21a、21b、22a、22bを有する改装上枠21及び改装下枠22と、左右の改装縦枠23が矩形状に枠組みされている。改装上枠21、改装下枠22、及び、左右の改装縦枠23は押出成形部材であり、左右の改装縦枠23は改装障子12a、12bとの改装係合片23aを除いて互いに左右対称の形状をなしている。
【0025】
改装上枠21は、改装内障子12aを案内するための改装内上レール21aと、改装外障子12bを案内するための改装外上レール21bと、改装網戸14を案内するための改装網戸上レール21cとが、見込み方向に互いに間隔を隔てて設けられている。改装内上レール21aと、改装外上レール21bと、改装網戸上レール21cとは、改装上枠21の見付け方向の全域に渡って鉛直方向に垂設されている。ここで、改装網戸上レール21cは、改装上枠21の最も室外側に設けられており、改装上枠の最も室外側に垂設された改装壁部に相当する。また、改装上枠21の室内側の端部には、改装額縁60と対向する改装額縁対向部21dが設けられている。
【0026】
また、改装上枠21は改装内上レール21aと改装外上レール21bとの間にて分断されており、室外側の部位と室内側の部位とが断熱材24を介して接合されて断熱性が確保されている。
【0027】
改装上枠21の、断熱材24より室外側の部位の上面は、見込み方向の中央より室内側がほぼ水平面をなし、中央より室外側は室外側に向かって低くなるように僅かな傾斜が設けられた滑らかな面をなしている。また、断熱材24より室内側は、室外側の部位より低く窪みが形成されている。このため、改装上枠21は、水平面をなす部位より上方に突出しないように形成されている。
【0028】
改装下枠22は、改装内障子12aを案内するための改装内下レール22aと、改装外障子12bを案内するための改装外下レール22bと、改装網戸14を案内するための改装網戸下レール22cとが、見込み方向に互いに間隔を隔てて設けられている。改装下枠22の室内側の端部には、改装サッシ10の室内側に設けられた改装額縁60と対向する平面を有する額縁対向部22dが設けられている。額縁対向部22dの下端は、後述する下枠接合部材36に設けられた固定部材としての下枠接合部材固定金具41に当接されるとともに、下枠接合部材固定金具41に設けられた取付片41cが皿ビス68にて固定される。
【0029】
額縁対向部22dと改装内下レール22aとを繋ぐ部位のほぼ中央には、下方に延出されて下枠接合部材固定金具41に支持される室内側脚部22eと、改装内下レール22aの下方に延出されて下枠接合部材36に支持される中央脚部22fと、改装外下レール22bの下方に延出されて下枠接合部材36に支持される室外側脚部22gと、を有し、中央脚部22fと室外側脚部22gとが下端側にて連結された連結部22hを有している。また、連結部22hから室外側に、改装網戸下レール22cとほぼ同じ位置まで延出された延出部22iが形成され、延出部22iの先端には、下枠接合部材36と係合する下枠係合部22kが設けられている。
【0030】
改装縦枠23は、見込み方向に沿う平面を有する改装縦枠本体部23bと、改装縦枠本体部23bから開口2の中央側に突出され改装障子12a、12bの改装戸先框12cが係合される改装係合片23aと、改装縦枠本体部23bの最も室内側にて改装額縁60と対向する額縁対向部23cと、改装枠20の最も室外側に配置され改装縦枠本体部23bから開口2の中央側に突出され改装網戸14の改装縦框14aに挿入される改装挿入片23dと、改装枠20の最も室外側に配置され改装挿入片23dと見付け方向において反対側に突出された縁部23eと、を有している。ここで、額縁対向部23cは、後述する縦枠接合部材37に設けられた固定部材としての縦枠接合部材固定金具42に当接される部位である。
【0031】
上枠接合部材35は、アルミニウム製の押し出し成形部材である。
【0032】
上枠接合部材35は、既設上枠51の下方を覆い平坦な下面をなして改装上枠21が固定される上枠固定板部35aと、上枠固定板部35aの室外側の端部側にて上方に突出させて設けられ既設上枠51に室内側から当接される既設上枠当接部35bと、上枠固定板部35aの室外側の縁から下方に突出させて設けられ改装上枠21が室内側から当接される改装上枠当接部35cとを有している。上枠固定板部35aは、ほぼ平坦な板状をなし、取り付けられた際に既設上枠51の既設上額縁対向部51dより室内側に突出し、突出した部位が既設額縁30の下面と対向するように形成されている。
【0033】
既設上枠当接部35bは、上枠固定板部35aと一体をなす既設上枠当接片35dと、既設上枠当接片35dの上端側に設けられた水密材34とを有し、改装上枠当接部35cは、上枠固定板部35aと一体をなす改装上枠当接片35eと、改装上枠当接片35eの下端側に設けられた水密材34と、を有している。また、既設上枠当接片35dの上端側には室内側に窪む水密材嵌合部としての既設側凹部35fが、また、改装上枠当接片35eの下端側には室外側に窪む水密材嵌合部としての改装側凹部35gが設けられており、水密材34は既設側凹部35fと改装側凹部35gとに嵌合されている。
【0034】
固定部材としての上枠接合部材固定金具40は、既設内上レール51a及び既設外上レール51bの下縁に当接され、既設内上レール51aの室内側及び既設外上レール51bの室外側に延び下面が平坦な2つのレール当接部40aと、2つのレール当接部40a間を繋ぎ上方に窪む連結部40bと、を備えたアルミニウム製の押出成形部材である。連結部40bは、2つのレール当接部40aのうちの室外側のレール当接部40aの室内側の縁から室内側に向かって順次上昇する方向に延出された室外側延出部40cと、2つのレール当接部40aのうちの室内側のレール当接部40aの室外側の縁から室外側に向かって順次上昇する方向に延出された室内側延出部40d、室外側のレール当接部40aの室外側の縁から上方に延出された位置決め片40eとを有している。
【0035】
室外側延出部40cは室内側延出部40dの下面側と繋がり、室内側延出部40dは室外側延出部40cと繋がっている部位より更に延出されている。また、室外側延出部40cの傾斜角度は室内側延出部40dの傾斜角度より大きく、室外側延出部40cと室内側延出部40dとがなす角度は約90度である。
【0036】
室外側のレール当接部40aの見込み方向の幅は室外側のレール当接部40aより狭く、室外側延出部40c、室外側のレール当接部40a、位置決め片40eとは、上方に開放された溝状をなしている。そして、既設外上レール51bの下縁が室外側のレール当接部40aの上面に当接するように、溝状をなす部位の内側に既設外上レール51bを挿入することにより上枠接合部材固定金具40が位置決めされる。
【0037】
下枠接合部材36、左右の縦枠接合部材37はいずれも、室外側に配置される金属部分としてのアルミニウム製のアルミ枠部36a、37aと、室内側に配置される非金属部分としての木製の木枠部36b、37bとを有し、アルミ枠部36a、37aと木枠部36b、37bとが皿ビス64にて固定されている。下枠接合部材36の木枠部36bの室外側に面は、木枠部36bがアルミ枠部36aに固定されて、改装サッシが配置された際に、額縁対向部22dとほぼ同一平面を形成するように構成されている。
【0038】
下枠接合部材36のアルミ枠部36aは、直方体状をなす木枠部36bの室外側の面と対面する外対面部36cと、木枠部36bの下面と対面する下対面部36dとがほぼL字状に形成された木枠対面部36eと、下対面部36dが室外側に延出された延出部36fと、延出部36fの室外側の端部に設けられ、改装下枠22の下枠係合部22kと係合する係合凹部36hと、係合凹部36hから下方に垂設され、既設網戸下レール52cに下枠ブラケット39を介して固定される室外側固定部36gとを有している。
【0039】
下枠ブラケット39は、既設下枠52の既設外下レール52aの室外側に当接されてビス止めされるレール固定部39aと、レール固定部39aがビス止めされた状態で既設網戸下レール52cの室内側に配置される網戸レール室内壁部39bとが上方で繋がったアルミニウム製の押出成形部材である。室外側固定部36gは、レール固定部39aがビス止めされた下枠ブラケット39の網戸レール室内壁部39bとの間に既設網戸下レール52cを挟み、室外側固定部36gを貫通するビスが網戸レール室内壁部39bに螺合されて固定される。
【0040】
また、下枠接合部材36の室内側は、固定部材としての下枠接合部材固定金具41にて固定されている。
【0041】
下枠接合部材固定金具41は、下枠接合部材36の木枠部36bの室内側の面と額縁対向部22dとに亘って当接される鉛直壁部41aと、鉛直壁部41aとほぼ直角をなし室外側に延出された水平板部41bと、鉛直壁部41aから室内側に延出された取付片41cとを有している。
【0042】
左右の縦枠接合部材37のアルミ枠部37aは、直方体状をなす木枠部37bの室外側の端が挿入される溝部37cと、溝部37cの室外側の壁部37dを共有して溝部37cの室外側に形成され、木枠部37bとは隔離された隔離空間としての中空部37eとを有している。縦枠接合部材37の中空部37eは、水平断面がほぼ長方形状をなしている。また、縦外面部37fは、開口の中央側に延出されるとともに、その先端に、改装縦枠23の縁部23eと係合する係合部37hが形成されている。
【0043】
左の縦枠接合部材37の左側面と右の縦枠接合部材37の右側面とは、室外側に位置するアルミ枠部37aの平坦な側面と、室内側に位置する木枠部37bの平坦な側面とで形成されている。すなわち、左の縦枠接合部材37はアルミ枠部37aの左側面より左側に突出する部位はなく、また、右の縦枠接合部材37はアルミ枠部37aの右側面より右側に突出する部位はないように形成されている。
【0044】
左右の縦枠接合部材37の室内側は、固定部材としての縦枠接合部材固定金具42にて固定されている。
【0045】
縦枠接合部材固定金具42は、縦枠接合部材37の木枠部37bの室内側の面と額縁対向部23cとに亘って当接される室内側壁部42aと、室内側壁部42aとほぼ直角をなし室外側に延出された鉛直片42bと、室内側壁部42aから室内側に延出された縦取付片42cとを有している。
【0046】
縦枠カバー部材45は、改装枠20が上枠接合部材35、下枠接合部材36、縦枠接合部材37を介して既設枠50に取り付けられた際に、既設縦枠53、縦枠接合部材37、改装縦枠23が隣接する境界部分が室外側に露出しないように既設縦枠53、縦枠接合部材37、改装縦枠23の室外側の面に亘って設けられるカバー部材である。縦枠カバー部材45は、上枠接合部材35、下枠接合部材36、縦枠接合部材37に跨って配置される幅を有する表面板部45aと表面板部45aの室内側に突出された突起部45bとを有している。縦枠カバー部材45は、突起部45bが縦枠接合部材37における、開口2の外側の面に沿わされて配置され、縦枠接合部材37の室外に臨む面と既設縦枠53の既設挿入片53dとにビス止めされる。
【0047】
本実施形態の改装サッシユニット1を既設枠50に取り付ける場合には、まず、改装枠20を矩形状に枠組みし、下枠接合部材36に下枠接合部材固定金具41を、また、縦枠接合部材37に縦枠接合部材固定金具42をそれぞれ取り付けておく。
【0048】
改装枠20に下枠接合部材36及び左右の縦枠接合部材37が取り付けられた状態では、改装上枠21の水平面をなす上面より上方に突出する部位はなく、また、左の縦枠接合部材37のアルミ枠部37aより左側及び右の縦枠接合部材37のアルミ枠部37aより右側に突出する部位はない。このため、下枠接合部材36及び左右の縦枠接合部材37が取り付けられた改装上枠21の見付け方向の最大幅は、左の縦枠接合部材37が有するアルミ枠部37aの左側面と右の縦枠接合部材37が有するアルミ枠部37aの右側面とのなす幅である。この左右のアルミ枠部37aがなす幅は、左右の既設縦枠53間における見付け方向の最も狭い部位の間隔より狭く形成されている。
【0049】
次に、既設上枠51に上枠接合部材固定金具40を取り付け、さらに上枠接合部材35を取り付ける。このとき、既設上枠当接部35bは、上枠固定板部35aと一体をなす既設上枠当接片35dの上端側に設けられた既設側凹部35fと、上枠固定板部35aと一体をなす改装上枠当接片35eの下端側に設けられた改装側凹部35gとに予め水密材34を嵌合しておく。そして、上枠接合部材固定金具40は、既設上枠51の下方から、位置決め片40eと室外側延出部40cとの間に既設外上レール51bを挿入し、室外側のレール当接部40aの上面に既設外上レール51bの下縁を当接させて配置する。この状態で、室内側延出部40dの先端が既設外上レール51bの室内側の面に当接され、室外側延出部40cが室内側に臨むように配置される。そして、室内側に臨む室外側延出部40cに皿ビス65を貫通させるとともに既設外上レール51bに螺合させる。既設外上レール51bにビス止めされた上枠接合部材固定金具40は、既設内上レール51aと既設外上レール51bとに押し当てられて安定した状態で既設上枠51に取り付けられる。
【0050】
次に、既設上枠51に取り付けられた上枠接合部材固定金具40の下方から上枠接合部材35を配置して皿ビス65、67にて固定する。このとき、既設上枠当接部35bを既設上枠51の既設網戸レール51cの室内側の面に押圧し既設上枠当接片35dの上端側に設けられた水密材34を圧縮させる。そして、水密材34が圧縮された状態にて、上枠固定板部35aの下方から既設内上レール51aと既設外上レール51bとの間に、上枠固定板部35aを貫通する皿ビス65を進入させて上枠接合部材固定金具40の室内側延出部40dに螺合し、上枠固定板部35aの、既設上額縁対向部51dより室内側に突出して既設額縁30と対向する部位を窓まぐさ3aまで至る皿ビス67にて固定する。また、既設下枠52の既設外下レール52aには、図3に示すように、見付け方向に適宜間隔を隔てて例えば3カ所に下枠ブラケット39を取り付けておく。
【0051】
次に、下枠接合部材36及び縦枠接合部材37が取り付けられた改装枠20を、上枠接合部材35及び下枠ブラケット39が取り付けられた既設枠50の内側に室内側から配置する。
【0052】
そして、改装上枠21の改装網戸レール21cの室外側の面を改装上枠当接部35cに押圧し改装上枠当接片35eの下端側に設けられた水密材34を圧縮させた状態で、下枠接合部材固定金具41の取付片41cと縦枠接合部材固定金具42の縦取付片42cとを、窓台3b及び柱3cまで至る皿ビス68にて固定する。その後、改装上枠21の改装額縁対向部21dと改装内上レール21aとの間にて窓まぐさ3aまで至る皿ビス69で改装上枠21を固定し、改装網戸上レール21cと改装外上レール21bとの間にてビス66で改装上枠21を上枠固定板部35aに固定する。また、下枠ブラケット39の網戸レール室内壁部39bとの間に既設網戸下レール52cを挟むように配置されている下枠接合部材36の室外側固定部36gを、開口2を利用して室内側からの作業により網戸レール室内壁部39bにビス止めする。このとき、下枠接合部材36及び縦枠接合部材37が取り付けられる改装枠20と既設額縁30との間に空隙が生じる場合には適宜飼木70を備えた後にビス止めする。
【0053】
次に、縦枠カバー部材45を室外側から縦枠接合部材37及び改装縦枠23に当接させて縦枠接合部材37と既設縦枠53の既設挿入片53dにビス止めする。このとき、既設挿入片53dと縦枠カバー部材45の表面板部45aとの間にシール材33を充填しておく。ここで、縦枠カバー部材45は室外側から縦枠接合部材37及び改装縦枠23に当接させるが、作業者は、改装障子12a、12bの取り付けられていない改装枠20の内側の開口を利用して室内側から施工する。
【0054】
最後に、既設額縁30の内側に下地材62を備え、下地材62の内側に改装額縁60を配置して固定する。
【0055】
本実施形態の改装サッシユニット1によれば、上枠接合部材35を介して既設上枠51に取り付けられる改装上枠21は、既設上枠51の下方を覆う上枠固定板部35aの室外側の縁から下方に突出させて設けられた改装上枠当接部35cに室内側から当接される。改装上枠当接部35cは、上枠固定板部35aの室外側の端部側にて上方に突出させて設けられ、既設上枠51に室内側から当接される既設上枠当接部35bより室外側に位置しているので、室外側において既設上枠51と改装上枠21との間では、例えば既設上枠51の室外側に降った雨水等は、既設上枠51の室外側の面から既設上枠当接部35bの室外側の面に伝い、改装上枠当接部35cの室外側の面を伝う。このため、室外側における既設上枠51と改装上枠21と接合部では、雨水等は既設上枠当接部35bに沿って上昇しない限り室内側に浸入する経路はない。このため、室内側に水分が浸入しにくい、水密性の高い改装サッシユニット1を提供することにある。また既設上枠51の最も室外側となる既設網戸上レール51cと改装上枠21の最も室外側となる改装網戸上レール21cとにて、改装上枠21を、上枠接合部材35を介して既設上枠51と接合するので、より室内側に水分が浸入し難い改装サッシユニット1を提供することが可能である。
【0056】
また、既設上枠当接部35bを既設上枠51の既設網戸上レール51cに当接させ、改装上枠当接部35cに改装上枠21の改装網戸上レール21cに当接させるだけで、高い水密性を備えることが可能である。
【0057】
また、既設上枠当接部35bの室外側に設けられた水密材34に既設上枠51の既設網戸上レール51cが当接され、改装上枠当接部35cの室内側に設けられた水密材34に改装上枠21の改装網戸上レール21cが当接されるので、より水密性を向上させることが可能である。
【0058】
また、水密材34は、上枠固定板部35aと一体をなす既設上枠当接片35dに設けられた既設側凹部35fと、上枠固定板部35aと一体をなす改装上枠当接片35eに設けられた改装側凹部35gに嵌合されて設けられるので、予め既設側凹部35fと改装側凹部35gとに嵌合しておくことにより、既設上枠当接部35bと既設網戸上レール51cとの間、及び、改装上枠当接部35cと改装網戸上レール21cとの間に水密材34を備えることが可能である。このため、施工性が高い改装サッシユニット1を提供することが可能である。
【0059】
上記実施形態においては、半外付けタイプの既設枠50に取り付ける改装サッシユニット1について説明したが、内付けタイプの既設枠50に取り付ける改装サッシユニットであっても構わない。
【0060】
上記実施形態にて説明した下枠接合部材36、及び、上枠接合部材固定金具40は、見付け方向における全領域に設けられていても良いが、見付け方向の幅が短い下枠接合部材36、及び、上枠接合部材固定金具40を複数設けても良い。
【0061】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0062】
1 改装サッシユニット、2 開口、10 改装サッシ、
20 改装枠、21 改装上枠、22 改装下枠、23 改装縦枠、
34 水密材、35 上枠接合部材、35a 上枠固定板部、
35b 既設上枠当接部、35c 改装上枠当接部、35d 既設上枠当接片、
35e 改装上枠当接片、35f 既設側凹部、35g 改装側凹部、
36 下枠接合部材、37 縦枠接合部材、40 上枠接合部材固定金具、
40a レール当接部、40b 連結部、40c 室外側延出部、
40d 室内側延出部、50 既設枠、51 既設上枠、
51a 既設内上レール、51b 既設外上レール、
52 既設下枠、53 既設縦枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内外を連通する開口に設けられている、既設サッシの既設枠の内周側に設けられる改装サッシユニットであって、
新たに設けられる改装サッシ、及び、
前記既設枠が有する既設上枠の下方を覆い前記改装サッシが有する改装枠の改装上枠が固定される上枠固定板部と、前記上枠固定板部の室外側の端部側にて上方に突出させて設けられ前記既設上枠に室内側から当接される既設上枠当接部と、前記上枠固定板部の室外側の縁から下方に突出させて設けられ前記改装上枠が室内側から当接される改装上枠当接部と、を備えた上枠接合部材、を有し、
前記既設上枠と前記改装上枠とは、前記上枠接合部材を介して接合されており、
前記既設上枠当接部は、前記改装上枠当接部より室内側に設けられるとともに、前記既設上枠の最も室外側に垂設された既設壁部に当接され、
前記改装上枠当接部は、前記改装上枠の最も室外側に垂設された改装壁部に当接されていることを特徴とする改装サッシユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の改装サッシユニットであって、
前記既設上枠当接部と前記改装上枠当接部とは、室内側に水密材を有していることを特徴とする改装サッシユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の改装サッシユニットであって、
前記既設上枠当接部は、前記上枠固定板部と一体をなす既設上枠当接片を有し、
前記改装上枠当接部は、前記上枠固定板部と一体をなす改装上枠当接片を有し、
前記既設上枠当接片と前記改装上枠当接片との室内側に、前記水密材が嵌合される水密材嵌合部が設けられていることを特徴とする改装サッシユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−196100(P2011−196100A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64432(P2010−64432)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】