説明

改質ポリエステル樹脂及びそれを用いた成形品

【課題】改質が容易であって、伸長性が改良されて柔軟性に優れ、安価である改質ポリエステル樹脂及びそれを用いた成形品を提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレート樹脂を原料として用い、改質剤として、分子内にカルボキシル基末端と反応するアミノ基又は/及びイミノ基を有するアミン含有化合物を用いて、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂のカルボキシル基末端と、前記アミン含有化合物とを反応させて、酸アミド結合を形成して改質ポリエステル樹脂とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂を改質した改質ポリエステル樹脂、及び該改質ポリエステル樹脂を所定の形状に成形してなる成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PET樹脂ということもある)は、優れた物性を有し、生産量が安定していることから、比較的安価であり、PETボトル等の飲食品用容器として広く利用されている。また使用済みPETボトル等は、分別回収されて、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、再生PET樹脂ということもある)として再利用されている。再生PET樹脂は、PETボトル等のリサイクル技術が確立されており、安定した原料として利用可能である。
【0003】
PET樹脂は上記の利点がある一方でガラス転移点が高く、冷却時の結晶化速度が遅いため、射出成形や押出し成形に適さず、更に得られた成形品も十分な性能を発揮できないという問題点を持っている。
【0004】
また、PET樹脂は一般的に堅く、伸張性については乏しい。PET樹脂を用いたボトルや繊維等は、延伸加工により改良されているものの、射出成形や押出し成形品では延伸加工を行うことは不可能である。
【0005】
また、PET樹脂を所定の形状に成形した成形品をPET樹脂のガラス転移点以上に加熱すると、低温結晶化を起こし、更に伸張性に乏しく、脆い物性に変化してしまう。
【0006】
特に再生PET樹脂は、再生時に加熱溶融されるため、分子鎖が切断され重合度が低下している。そのため伸張性はより低下しており、信頼性が必要な成形品等には利用されていないのが現状である。
【0007】
そのため、再生品を含むPET樹脂に様々な異種ポリマーを混合して、物性を改良する試みが公知である(例えば特許文献1〜5参照)。また、ポリエステルの一種であるポリ乳酸とポリプロピレンのアロイ化による物性向上を目的として、新規な樹脂改質剤が公知である(例えば特許文献6参照)。更には、金属触媒の存在下、エラストマー等とブロック共重合体を形成させて耐衝撃性を改善する方法が公知である(例えば特許文献7、8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−143988号公報
【特許文献2】特開2005−343971号公報
【特許文献3】特開2005−41964号公報
【特許文献4】特開2003−342458号公報
【特許文献5】特開2003−335931号公報
【特許文献6】特表2005−097840号公報
【特許文献7】特開2004−250711号公報
【特許文献8】特開2004−231929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜5等に記載のポリマーは、PET分子鎖の架橋により、耐衝撃性、加工性、外観が改善されているものの、全ての物性について未だ満足なものではなく、特に伸張性向上については改善されていないという問題があった。その理由として、単に分子量を増大させるのみでは、伸張性に対しての効果が得られないばかりでは無く、エポキシ基等の反応性基は反応速度が遅いため、架橋剤を中心としたゲル化を引き起こし、その結果、樹脂構造が不均一になって反対に伸張性が劣る結果となってしまうと考えられる。
【0010】
また、ポリマーの伸張性を向上させるには、柔軟性の高いポリマーとアロイ化させる方法が一般的であり、効率を高めるために特許文献6に記載された様な相溶化剤が用いられている。しかしながら上記の手段では、両ポリマーが完全に反応している訳ではなく、結晶化や引っ張り負荷によって異種ポリマー同士に界面が生じてしまうために、伸張性には限界があった。
【0011】
また、特許文献7、8に記載の方法では、ブロック共重合体を形成させる必要があり、共重合させるエラストマー等が多量に必要で、操作も複雑化するため、PET樹脂本来の引張り強度が失われてしまう上、コストが上昇してしまうという問題があった。
【0012】
よって、単純な方法で、柔軟性を持つ化合物をPET分子の末端基と速やかに反応させ、ゲル化の原因となる副反応を起こさない方法で改質する事が可能であることが望ましい。
【0013】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明は、改質が容易であって、伸長性が改良されて柔軟性に優れ、安価である改質ポリエステル樹脂及びそれを用いた成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明の改質ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基と、カルボキシル基と反応性を有するアミノ基又は/及びイミノ基を持つアミン含有化合物が反応せしめられて、前記末端カルボキシル基に酸アミド結合が形成されていることを要旨とするものである。
【0015】
また本発明のポリエステル樹脂成形品は、上記の改質ポリエステル樹脂が所定の形状に成形されたものであることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の改質ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基に、カルボキシル基と反応性を有するアミノ基又は/及びイミノ基を持つアミン含有化合物が反応せしめられて、前記末端カルボキシル基に酸アミド結合が形成されていることにより、単純な方法で改質が可能であり、伸長性の良好な改質ポリエステル樹脂を容易かつ安価に得ることができる。
【0017】
本発明の成形品は、上記改質ポリエステル樹脂を所定の形状に成形したものであるから、加熱される用途に使用されるPET樹脂成形品や再生PET樹脂の成形品の場合であっても、伸長性が良好な優れた物性のPET樹脂成形品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の改質ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)を原料として用い、改質剤として、分子内にカルボキシル基末端と反応するアミノ基又は/及びイミノ基を有するアミン含有化合物を用いて、前記PET樹脂のカルボキシル基末端と、前記アミン含有化合物とを反応させて、酸アミド結合が形成されているものである。
【0019】
PET樹脂分子には、末端反応基として水酸基とカルボキシル基が残存していると考えられる。しかし加熱成型工程や再生工程で、水酸基末端を持つ分解物は揮発する傾向にあり、熱履歴を持つPET樹脂中には相対的にカルボキシル基を多く含有していることが判明した。PET樹脂にアミン含有化合物を反応させることで、PET樹脂の末端カルボキシル基とアミン含有化合物とが反応して酸アミド結合が形成されると、PET樹脂に柔軟性が付与され伸長性が改良される。
【0020】
PET樹脂に対するアミン含有化合物の添加量は、特に限定されるものではないが、アミン含有化合物の添加量が多過ぎると、PET樹脂本来の物性が損なわれてしまう虞がある。またアミン含有化合物のPET樹脂に対する相溶性が低い場合には、アミン含有化合物の添加量が多くなると分離を引き起こしてしまう虞がある。一方、PET樹脂に対するアミン含有化合物の添加量が少なすぎると、柔軟性又は伸張性付与の効果を十分に発揮できなくなる虞がある。PET樹脂に対するアミン含有化合物の添加量は、上記の不具合のない範囲で適宜決定することができる。
【0021】
具体的なアミン含有化合物の添加量としては、PET樹脂100質量部に対し、0.01〜50質量部であることが好ましい。更に好ましいアミン含有化合物の添加量は、PET樹脂100質量部に対し、0.1〜30質量部である。
【0022】
アミン含有化合物の添加量は、該アミン含有化合物に含まれるアミノ基(及び/又はイミノ基)とPET樹脂に含まれる末端カルボキシル基のモル比が、アミノ基:末端カルボキシル基=0.01:1〜1:1の範囲になるように、添加量を調整することが好ましい。更に好ましいアミノ基:末端カルボキシル基は、0.05:1〜1:1の範囲である。PET樹脂中の末端カルボキシル基の含有量は、数平均分子量(Mn)から換算する事ができる。
【0023】
上記PET樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)のバージン樹脂や再生ポリエチレンテレフタレート(再生PET)が用いられる。再生PETは、例えば使用済みのPET容器(PETボトル)等の廃棄PET製品を回収して粉砕して得られるPET樹脂粉砕品を用いることができる。
【0024】
上記アミン含有化合物としては、PET樹脂のカルボキシル基と反応性を有するアミノ基(一級アミン)又は、イミノ基(二級アミン)、或いはアミノ基及びイミノ基の両方を備える化合物を用いることができる。アミン含有化合物のアミノ基が、PET樹脂のカルボキシル基と反応すると、第二アミドが形成される。アミン含有化合物のイミノ基がPET樹脂のカルボキシル基と反応すると、第三アミドが形成される。アミン含有化合物は、アミノ基及び/又はイミノ基を少なくとも一分子中に一つ持っていればよいが、物性改良効果がより向上する点から、一分子中にアミノ基及び/又はイミノ基を二つ以上有していることが好ましい。
【0025】
上記アミン含有化合物は、主鎖がポリマーであって、分子中にアミノ基又は/及びイミノ基を有するアミン含有ポリマー、或いは分子中にアミノ基又は/及びイミノ基を有するアミン含有長鎖アルキル化合物等を用いることが好ましい。これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもいずれでもよい。上記アミン含有長鎖アルキル化合物は、主鎖がC18以上の脂肪族が好ましい。アミン含有長鎖アルキル化合物を用いると、長鎖アルキル分子同士の絡まりにより、適度な柔軟性を付与できるという利点がある。またアミン含有ポリマーを用いると、そのポリマーの持つ特性を活かし、柔軟性をコントロールできるという利点がある。
【0026】
上記アミン含有ポリマーは、例えば、アミノ基及び/又はイミノ基を有する、ポリアミド樹脂、ポリアミド系エラストマー、アミン変性エラストマーを用いることができる。
【0027】
上記ポリアミド樹脂としては、例えば熱可塑性ポリアミドが挙げられる。熱可塑性ポリアミドとしては、ε−カプロラクタムの開環重合により得られるポリアミド6(PA6)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合により得られるポリアミド66(PA66)、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の反応により得られるポリアミド610(PA610)、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の重縮合により得られるポリアミド6T(PA6T)、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の重縮合により得られるポリアミド6I(PA6I)、ノナンジアミンとテレフタル酸の重縮合により得られるポリアミド9T(PA9T)、メチルペンタジアミンとテレフタル酸の重縮合により得られるポリアミドM5T(PAM5T)、11−アミノウンデカン酸の縮重合により得られるポリアミド11(PA11)、ω−ラウリルラクタムの開環重合又は12アミノドデカン酸の重縮合により得られるポリアミド12(PA12)、ヘキサメチレンジアミンとドデカン二酸塩との重縮合により得られるポリアミド612(PA612)、カプロラクタムとAH塩〔ヘキサメチレンジアミン(H)とアジピン酸(A)〕との共重合により得られるポリアミド共重合体(PA6/66共重合体)、メタキシリレンジアミン(MXDA)とアジピン酸の重縮合により得られるポリアミドMXD6(PAMXD6)、1,4−ジアミノブタンとアジピン酸との反応から得られるポリアミド46(PA46)、ポリアミド6/12共重合体(PA6/12共重合)、ポリアミド6/11共重合体(PA6/11共重合)等が挙げられる。
【0028】
上記ポリアミド樹脂は1種単独で使用しても2種以上を混合して用いてもいずれでも良い。
【0029】
上記ポリアミド系エラストマーは、ナイロン(ポリアミド)をハードセグメントとし、これにポリエステル又はポリオール(PTMG又はPPG)をソフトセグメントとしたブロックコポリマーなどのポリアミド系熱可塑性エラストマーが挙げられる。ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、市販品では、アルケマ社製商品名「RILSAN(PA11、PA12)」、富士化成工業社製商品名「TPAE」シリーズ、ヘンケル社製商品名「マクロメルト」シリーズ等がある。
【0030】
アミン変性エラストマーは、例えば、市販品では旭化成工業社製商品名「タフテック」シリーズ等のアミン変性スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることができる。
【0031】
またアミン変性エラストマーは、2−(1−シクロヘキセニル)エチルアミン等の不飽和結合を持つアミン化合物と市販の熱可塑性エラストマーを過酸化物存在下でグラフト反応させて得られるアミン変性熱可塑性エラストマーを用いることもできる。アミン変性熱可塑性エラストマーは、例えば、2個以上のアミノ基を持つポリアミン化合物と無水マレイン酸変性ポリマーとを反応させて作成したものが挙げられる。
【0032】
アミン含有ポリマーは、分子量が、1,000〜1,000,000の範囲が、反応時の溶融粘度がPET樹脂と混合し易いという理由から好ましい。
【0033】
PET樹脂の末端カルボキシル基にアミン含有化合物を反応させて酸アミド結合を形成する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、(1)脱水縮合剤の存在下で、PET樹脂とアミン含有化合物を反応させる方法や、(2)PET樹脂の末端カルボキシル基をハロゲン化してカルボン酸ハロゲン化物とした後、アミン含有化合物を反応させる方法等が挙げられる。上記(2)の方法は具体的には、PET樹脂を溶媒に溶解し、塩化チオニル、塩化オキサリル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リンなどの求電子的ハロゲン化剤を加え、カルボキシル基を塩素化した後、アミン含有化合物を加えて反応させる方法である。
【0034】
酸アミド結合を形成する方法としては、上記(1)の脱水縮合剤の存在下で反応を行う方法が好ましい。PET樹脂とアミン含有化合物を反応させる場合、脱水縮合剤が存在すると、PET樹脂のカルボキシル基末端とアミン含有化合物とを容易に反応させることができ、酸アミド結合の形成を確実に且つ簡便に行うことができる。
【0035】
通常アミン化合物は塩基性を持つため、PET樹脂に単にアミン化合物を加えると、分子鎖のエステル結合を切断し物性を低下させる事が知られている。これに対し、PET樹脂とアミン含有化合物を反応させる際に脱水縮合剤が存在すると、アミン含有化合物がPET樹脂の分子鎖を切断する反応よりも、アミン含有化合物が末端カルボキシル基と反応してアミド結合を形成する反応が優先的に起こる。その結果、アミン含有化合物が、PET樹脂を低分子化して物性低下を引き起こす虞がない。
【0036】
上記脱水縮合剤としては、種々の脱水縮合剤を使用することができるが、1,1−カルボニルジイミダゾール(CDI)、或いはジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、カルボジイミド含有樹脂等のカルボジイミド系化合物が挙げられる。上記カルボジイミド含有樹脂としては、例えば市販品では、日東紡社製商品名「カルボジライト」が挙げられる。脱水縮合剤として、カルボジイミド系化合物を用いると、より確実にアミド結合の形成する反応を行うことができる。以下、カルボジイミド系脱水縮合剤を用いた場合の反応機構を示す。
【0037】
脱水縮合剤を用いた場合のアミン含有化合物とPET樹脂末端のカルボキシル基の反応は、下記の化1式に示す通りである。化1式において[1]はPET樹脂の末端カルボキシル基、[2]はカルボジイミド系脱水縮合剤、[4]はアミン含有化合物〔アミンがアミノ基(一級アミン)の場合、R5は水素原子〕、[5]はPETがアミン含有化合物とアミド結合によって結合した状態を示す。また化1においてR1はPET樹脂分子鎖、R4はポリマー主鎖又は長鎖アルキル鎖等を示す
【0038】
【化1】

【0039】
化1式に示すように、先ず、PET樹脂分子[1]は末端カルボキシル基が脱水縮合剤[2]と反応し、反応活性な中間体[3]を生じる。そこにアミン含有化合物[4]が存在すると、速やかに中間体とアミノ基又はイミノ基が反応してウレア化合物を生じながら、第2アミド又は第3アミドからなるアミド結合体[5]を生成する。
【0040】
PET樹脂に対する脱水縮合剤の添加量は、脱水縮合剤の量が多すぎると、PET樹脂自体がアグリゲーションを引き起こしてしまい、少なすぎると脱水縮合によるアミド結合を十分形成できなくなる虞があることから、上記の不具合のない範囲で選択することができる。脱水縮合剤の添加量は、活性基のモル当量で、アミン含有化合物のアミノ基に対して、0.01〜2モル当量となるように調製することが好ましい。更に好ましい脱水縮合剤の添加量は、アミン含有化合物のアミノ基に対して、0.05〜1.5モル当量である。
【0041】
例えばアミン含有化合物としてアミン含有ポリマーを用いて、脱水縮合剤としてカルボジイミド系脱水縮合剤の下でPET樹脂と反応を行う場合、PET樹脂100質量部に対し、アミン含有ポリマーを0.01〜50質量部添加し、カルボジイミド系脱水縮合剤を0.001〜10質量部添加することが好ましい。更に好ましくは、PET樹脂100質量部に対し、アミン含有ポリマーを0.1〜30質量部、脱水縮合剤を0.01〜5質量部添加することである。
【0042】
PET樹脂とアミン含有化合物との反応は、PET樹脂、アミン含有化合物、脱水縮合剤を加え、加熱、混合することで行うことができる。上記混合方法は、特に限定されるものではなく、破砕状、粉砕状、ペレット状その他の形状のPET樹脂、アミン含有化合物、脱水縮合剤をドライ状態で混合しても、或いはこれらを溶融混合機に投入し溶融混合するようにしても良いし、また成形機のホッパーにこれらを直接投入して溶融混合するなどしてもいずれでもよい。
【0043】
またPET樹脂には、PET樹脂の用途等に応じて一般的な酸化防止剤や安定剤、滑剤、ゴム成分等の改質剤以外の添加剤を必要に応じ添加することもできる。
【0044】
本発明の改質ポリエステル樹脂(改質されたPET樹脂)は、成形品(押出成形品、射出成形品、フィルムシート成形品、ブロー成形品、発泡成形品)や紡糸加工品等の用途に利用できる。押出成形品としては、例えば、各種チューブ、各種ホース、被覆材、絶縁材、各種管材、各種ベルト、コンテナー等の大型成形製品等が挙げられる。射出成形品としては、例えば、自動車部品、電気・電子部品、日用品、家電外装品、各種レンズ・ディスク等が挙げられる。フィルムシート成形品としては、例えば、各種フィルム・各種シート、各種テープ、マスキング材、建材・床材等が挙げられる。ブロー成形品としては、例えば、各種ボトル、各種タンク等が挙げられる。発泡成形品としては、例えば、各種トレー容器、吸音材、断熱材、衝撃吸収材等が挙げられる。紡糸加工品としては、例えば、各種繊維、衣服、腐食布、フィルター、工業資材等が挙げられる。
【0045】
本発明の成形品は、上記の改質されたPET樹脂が所定の形状に成形されたものである。成形方法としては、特に限定されず、各種の成形方法を用いることができる。特に本発明は、従来の再生PET樹脂が不向きであった押出成形や射出成形等の成形品に好適に利用することができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。
表1(実施例1〜15)、表2(実施例16〜29)、表3(比較例1〜3)に記載の成分組成(質量部)となるように、PET材料(PET樹脂、再生PET樹脂)、アミン含有ポリマー、長鎖アルキル化合物或いは改質ポリマー、脱水縮合剤等を、二軸混練機を用いて任意の温度で混合した後、ペレタイザーにてペレット状に成形して樹脂組成物のペレットを得た。その後、ペレットをプレス成形(プレス成形機:東洋精機製作所社製)
して、JIS K−7113に準拠した2号試験片を作製した(プレス温度:255℃、10MPaで1分間加圧後、20MPaで2分間加圧。その後、冷却プレスにて3分間冷却。)。
【0048】
作成した試験片を用いて、引張試験機(島津製作所社製)で破断伸び(%)と引張最大強度(MPa)を測定した。また120℃オーブン中で24時間放置して低温結晶化させた試験片についても同様に破断伸び(%)を測定した。試験結果を表1〜3に示した。
【0049】
表1〜表3中に記載した材料の詳細は下記の通りである。
〔PET材料〕
・V−PET:バージンPET(帝人化成社製)〔極限粘度(IV):0.70プラスマイナス0.05〕
・R−PET:再生PET(ウツミリサイクルシステムズ社製)〔極限粘度(IV):0.67プラスマイナス0.03〕
【0050】
〔アミン含有ポリマー(又は長鎖アルキル化合物)〕
・PA6:6ナイロン(アルドリッチ社製)
・PA66:66ナイロン(アルドリッチ社製)
・PA11:ポリアミド11(アルケマ社製)
・PA12:ポリアミド12(アルケマ社製)
・PA−E:熱可塑性ポリアミド(マクロメルト6202、ヘンケル社製)
・St−NH2:ステアリルアミン(東京化成製)
・SEBS−A:アミン変性エラストマー(MP−10、旭化成社製)
・化合物A:アミノ基導入変性SEBS(下記の方法で合成)
【0051】
[化合物A:アミノ基導入変性SEBSの合成方法]
無水マレイン酸変性SEBS(旭化成社製)50gとトリエチレンテトラミン15g(東京化成社製)を2Lの三口フラスコ中1Lのキシレンに投入し、攪拌しながら120℃に加熱溶解し反応させる。2時間攪拌反応させた後、40℃まで冷却して、2Lの冷メタノールに攪拌しながら少しずつ加え、固化させる。固化物を吸引濾取し、更に1Lのメタノールで洗浄して未反応トリエチレンテトラミンを除去する。その後24時間真空乾燥して化合物Aを得た。
【0052】
〔改質ポリマー〕
・PE:高密度ポリエチレン(アルドリッチ社製)
【0053】
〔脱水縮合剤〕
・LA−1:カルボジイミド含有樹脂(カルボジライト、日東紡社製)
・DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド(和光純薬製)
【0054】
表1及び表2の実施例1〜29に示すように、PET樹脂がアミン含有化合物により改質されていることで、比較例1、2の改質前のものと比較して、引張最大強度の向上と共に破断伸び率が格段に向上していることが判る。また、実施例1〜29の改質PET樹脂は、120℃24時間保存後も高い破断伸びを維持していることが確認できた。
【0055】
表3に示すように、比較例1〜2のようにアミン含有ポリマーが配合されていない改質前のものについては、何れも破断伸びが30%を下回り、120℃24時間保存後については、ほとんど伸びが無くなる事が判る。また、比較例3のように、柔軟性をもつポリマーを単に配合しただけでは、アミノ基含有ポリマーを配合した場合と比較して破断伸びの向上効果があまり大きくなく、しかも120℃24時間保存後については伸びの向上効果は全く得られなかった。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基に、カルボキシル基と反応性を有するアミノ基又は/及びイミノ基を持つアミン含有化合物が反応せしめられて、前記末端カルボキシル基に酸アミド結合が形成されていることを特徴とする改質ポリエステル樹脂。
【請求項2】
前記アミン含有化合物と前記末端カルボキシル基の反応による酸アミド結合の形成が、脱水縮合剤の存在下で行われたものであることを特徴とする請求項1に記載の改質ポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記脱水縮合剤が、カルボジイミド系化合物であることを特徴とする請求項2に記載の改質ポリエステル樹脂。
【請求項4】
前記アミン含有化合物が、主鎖がポリマーから成るアミン含有ポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の改質ポリエステル樹脂。
【請求項5】
前記アミン含有ポリマーが、ポリアミド、ポリアミド系エラストマー、アミン変性エラストマーから選択された1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項4記載の改質ポリエステル樹脂。
【請求項6】
前記アミン含有ポリマーの分子量が、1,000〜1,000,000であることを特徴とする請求項4又は5に記載の改質ポリエステル樹脂。
【請求項7】
前記アミン含有化合物が、主鎖がC18以上の長鎖アルキルからなるアミン含有長鎖アルキル化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の改質ポリエステル樹脂。
【請求項8】
前記アミン含有化合物が、一分子中に二つ以上のアミノ基又は/及びイミノ基を有するものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の改質ポリエステル樹脂。
【請求項9】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、前記アミン含有化合物が0.01〜50質量部、前記脱水縮合剤が0.001〜10質量部配合され、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基と前記アミン含有化合物のアミノ基又は/及びイミノ基が反応せしめられて酸アミド結合が形成されていることを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の改質ポリエステル樹脂。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の改質ポリエステル樹脂が所定の形状に成形されたものであることを特徴とするポリエステル樹脂成形品。

【公開番号】特開2011−157522(P2011−157522A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22031(P2010−22031)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】