説明

改質無機粒子およびその作製方法

【課題】改質無機粒子およびその作製方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る改質無機粒子は、ヒドロキシル基を備える無機粒子と、無機粒子にウレタン結合によって連結する、エチレン性不飽和末端基を備える表面改質剤とを含む。また、本発明に係る改質無機粒子の作製方法は、ヒドロキシル基を備える無機粒子を準備する工程、一端にイソシアネート基を、他端にエチレン性不飽和基を備える表面改質剤を準備する工程および無機粒子を表面改質剤と混合して反応させ、表面改質剤を無機粒子に連結させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子の表面改質に関し、より詳細には難燃剤として用いるのに適した表面改質無機粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックとその複合材料は、運動機材、内装材、建築材、工業・土木材料、エレクトロニクス製品、自動車など、様々な分野において広く利用されている。しかし、プラスチックは燃え易い材料であるため、毎年プラスチックを原因とする火災が膨大な死傷者と経済的損失を出している。故に、プラスチック材料が原因の火災による死傷者と経済的損失を有効に減らすことができると同時に、生態を汚染しない、環境にやさしい耐火ポリマー材料または複合材料の開発が重要な研究テーマとなっている。
【0003】
環境への関心の高まりによって、ハロゲンフリー難燃系の開発がますます盛んになされ、そのニーズも高まっている。ハロゲンフリー難燃剤には、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどがある。水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムの難燃効果は、金属酸化物と水に吸熱分解することによって達成されるものである。これにより、プラスチックが急速な熱分解から守られると共に、可燃性かつ易然性の分解生成物の生成が阻止される。形成された水蒸気は、酸素を移動させ、保護ガスとして作用する。プラスチックの表面には炭化生成物と金属酸化物を含んでなる耐熱性の皮膜ができるため、さらなる燃焼が阻害され、この皮膜が燃焼生成物を吸収することで煙濃度も低減する。ハロゲンフリーの難燃剤として最もよく用いられている金属水酸化物は、単独でまたは他の難燃剤と組み合わせて、耐火熱硬化性または熱可塑性複合材料の製造に供されている。
【0004】
例えば水酸化アルミニウム(ATH)などの金属水酸化物は、−OH基を多く含むと共に、通常その表面には水分が付着しており、極性が非常に高い。よって、金属水酸化物を、一般に極性の低いポリマー樹脂とブレンドすると、界面相容性が悪いために凝集が生じてしまう。さらに、ポリマーと金属水酸化物とは、反応によって化学結合の形成による、充分に組織化された複合材料を形成しないので、得られる生成物は火炎暴露下で容易に熔融、発火または燃焼滴下を生じるものとなる。また、金属水酸化物を混入すると材料の脆性が大いに高まるため、応用範囲が狭くなってしまう。
【0005】
したがって、より優れた難燃性と低い脆性を実現するべく、ポリマー相容性が改善された無機粒子が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改質無機粒子および無機粒子の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、ヒドロキシル基を備える無機粒子と、無機粒子にウレタン結合によって連結する、エチレン性不飽和末端基を備える表面改質剤とを含む改質無機粒子を提供する。
【0008】
別の実施形態によれば、本発明の実施形態は、ヒドロキシル基を備える無機粒子を準備する工程、一端にイソシアネート基を、他端にエチレン性不飽和基を備える表面改質剤を準備する工程および無機粒子を表面改質剤と混合して反応させ、無機粒子のヒドロキシル基と表面改質剤のイソシアネート基との反応により表面改質剤を無機粒子に連結させる工程を含む改質無機粒子の作製方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るエチレン性不飽和基で改質された無機粒子は、エチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーと架橋反応することができるため、有機樹脂基質中に均一に分散され、三次元有機/無機構造を形成する。こうして得られる有機/無機複合材料は、その改質無機粒子と有機成分との化学結合のために、従来の物理的にブレンドされたものとは異なり、炎または発火源暴露下で溶融、発火または燃焼滴下を生じることがない。さらに、熱せられた部分は短時間のうち炭化して充分に組織化された炭化層を形成するため、剥離または亀裂なく優れた構造的完全性が保たれ、内部への直接的な熱の伝達を効果的に阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、添付の図面を参照しながら、本発明を実施形態により詳細に説明する。
【0011】
特に示すことのない限り、本発明の実施形態では当該分野のスキルの範囲内である合成有機化学、無機化学、材料科学およびこれらに類似の技術を用いる。これらの技術は文献中に充分に説明がされているものである。
【0012】
下記の実施例は、本明細書および特許請求の範囲に記載された方法をどのように実施し、組成物をどのように使用するかについての完全な開示と説明を、当業者に提供するべく提示したものである。数字(例えば量、温度など)に関してはできるだけ正確さを確保するようにしたが、多少の誤差と偏差は考慮に入れなければならない。特に示すことのない限り、割合は重量部、温度は摂氏、圧力は大気圧または大気圧近傍の圧力である。標準温度および圧力はそれぞれ20℃および1気圧とする。
【0013】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、特に示すことのない限り本発明は特定の物質、試薬、反応物質、製造および試験過程などに限定されることはなく、よってこれらは変更し得るものであるということが理解されなければならない。本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を説明する目的で用いているに過ぎず、限定を意図するものではないことも理解されなければならない。また、論理的に可能であれば、本発明における工程を異なる順番で行うこともできる。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられている単数形の語(“a”、“an”および“the”に相当する語)は、文言により明示されていない限り、複数の対象を含むものとする。つまり、例えば“支持材(a support)”と言った場合、複数の支持材が含まれる。以下の本明細書および特許請求の範囲では多くの用語に言及するが、これらは、そうではないと明示する場合を除き、下記に定義された意味を持つものとする。
【0015】
以下の記載は本発明を実施するための最良の形態である。この記載は本発明の主要な原理を説明することを目的としたものであり、限定の意味で解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照に判断されなくてはならない。
【0016】
図1に示されるように、一実施形態では、一端にイソシアネート基を、他端にエチレン性不飽和基を備える表面改質剤200を無機粒子100の改質に用いる。表面改質剤200はモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーとすることができる。表面改質剤200は、無機粒子100のヒドロキシル基と表面改質剤200のイソシアネート基(−N=C=O)との反応により、ウレタン結合(−NH(CO)O−)で無機粒子100に連結する。図に示されるように、改質された無機粒子300にはエチレン性不飽和基が備わるため、他の反応性モノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはポリマーの官能基とさらに反応を生じることができるようになる。よって改質無機粒子300が有機(ポリマー)基質に充分に分散し、化学結合の形成による、よく組織された耐火性複合材料が得られることとなる。
【0017】
本発明において、“ポリマー”という用語は、数平均分子量が1500〜100000ダルトンをこえる化合物のことをいい、“オリゴマー”という用語は、数平均分子量が200〜1499ダルトンの化合物のことをいう。また、“プレポリマー”という用語は、in−situ重合によりポリマーを形成する物質であって、これには重合されるポリマーに通常組み込まれ得るモノマー、オリゴマー、短鎖の擬安定ポリマー鎖(short chain pseudo-stable polymeric chains)などが含まれる。
【0018】
本発明で用いる無機粒子100は、特に限定はされないが、例えば水酸化アルミニウム(Al(OH)3)または水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)などの金属水酸化物とするのが好ましい。また、例えば酸化物などの表面にヒドロキシル基を備える無機粒子も使用に適しており、特に限定はされないが、例としてSiO2、TiO2またはZnOを挙げることができる。ヒドロキシル基は粒子に元々存在している、または表面改質後に備わるものであってもよい。無機粒子は、粒径約1〜50μmのマイクロサイズ粒子、または粒径約10〜500nmのナノサイズ粒子とすることができる。
【0019】
表面改質を進行する前に、無機粒子を約100〜130℃のオーブンで乾燥させて粒子に付着している水分を除去しておくことが好ましい。かかる水分が表面改質剤のイソシアネート基と反応して、表面改質剤のグラフトの程度を下げてしまう恐れがあるからである。
【0020】
本発明で用いる表面改質剤200は、例えばイソシアネート含有アクリレートモノマーまたはオリゴマーであり、脂肪族または芳香族であってもよい。表面改質剤の量は、無機粒子100重量部に対して通常約2〜10重量部、好ましくは約3〜6重量部とする。
【0021】
“脂肪族”という用語には、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基などの不飽和および飽和脂肪族基が含まれる。“アルキル”という用語は、直鎖または分岐鎖炭化水素基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルおよびこれらに類似のもののことをいう。“シクロアルキル”という用語は、その環構造に約3〜10の炭素原子を、あるいはその環構造に約5、6または7の炭素を有するものであり得る。また“アルキル”という用語は、ハロ置換(例えばCl、Br、FおよびI)アルキルおよびヘテロ原子置換アルキルを含むものとしても定義される。
【0022】
脂肪族基の置換基としては、これらに限定はされないが、ヒドロキシル、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素およびヨウ素)、カルボニル(例えばカルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルもしくはアシル)、チオカルボニル(例えばチオエステル、チオ酢酸もしくはチオギ酸)、アルコキシ、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、硫酸、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、複素環、アラルキル、または芳香族もしくは複素芳香族部分を挙げることができる。なお、そうすることが適当である場合、炭化水素鎖上で置換されるこれらの部分は、それ自体が置換されてもよいことを、当業者であれば理解できるはずである。例えば、置換アルキルの置換基としては、置換されたおよび置換されていない形のアミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートなど)、スルホニル(硫酸、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートなど)、ならびにシリル基を挙げることができ、さらに、エーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレートおよびエステルなど)、−CNならびにこれらに類似のものを挙げることもできる。
【0023】
“芳香族”という用語には、0〜4のヘテロ原子を含み得る5−、6−および7−員単環の芳香族基が含まれ、例としてベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジン、ならびにこれらに同類のものを挙げることができる。環構造にヘテロ原子を有するそれらアリール基は“アリール複素環化合物”または“複素環式芳香族化合物”とも称される。
【0024】
芳香環は、その1つまたは複数の環の位置が、上述したような置換基、例えばハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、複素環、芳香族もしくは複素環式芳香族部分、−CF3、−CN、またはこれらに類似のものによって置換されていてもよい。
【0025】
表面改質は反応性溶媒中で行うことができる。本明細書において“反応性溶媒”という用語は、表面改質後に無機粒子のエチレン性不飽和基と反応することができる低粘度のモノマーまたはオリゴマーのことをいう。従来の湿式改質(wet modification)の手法では、表面改質の反応系に追加の成分をさらに添加して、in−situで所望の耐火材料を得るが、反応系中には溶媒および酸性またはアルカリ性触媒が含まれていることから、耐火材料は硬化し難くなり、かつ外観と物理特性の制御が容易にできないものとなってしまう。反応性溶媒を使用すると、硬化を行う前に反応系から大部分の溶媒を除去する、ということを行う必要がなくなる。反応性溶媒が改質反応の邪魔をするのを防ぐため、−SH、−OH、−COOH、−NH2および−NHR(Rはアルキルまたはアリール基を表す。)といった官能基を備えない反応性モノマーまたはオリゴマーを使用するのが望ましい。これら官能基は改質剤のイソシアネート基と反応して改質反応に悪影響をもたらす恐れがあるからである。好ましい反応性溶媒としては、これらに限定はされないが、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジルまたはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0026】
また、非反応性溶媒中で表面改質を行うことも可能である。この場合もイソシアネートとの副反応を回避するため、−SH、−OH、−COOH、−NH2および−NHR(Rはアルキルまたはアリール基を表す。)といった官能基を備えない非反応性溶媒を用いるのが望ましい。好ましい非反応性溶媒としては、これらに限定はされないが、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、シクロアルカンまたはこれらの組み合わせを挙げることができる。ケトン溶媒の例としては、これらに限定はされないが、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンおよびメチルt−ブチルケトンが挙げられる。エーテル溶媒の例としては、これらに限定はされないが、エチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)およびエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。エステル溶媒の例としては、これらに限定はされないが、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、2−エトキシエタノールアセテート(2-ethoxy ethanol acetate)、3−エトキシプロピオン酸エチル(ethyl-3-ethoxypropionate)、および酢酸イソアミル(isoamyl acetate)が挙げられる。脂肪族炭化水素溶媒の例としては、これらに限定はされないが、n−ヘキサン、ヘプタンおよびペンタンが挙げられる。芳香族炭化水素溶媒の例としては、これらに限定はされないが、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが挙げられる。シクロアルカン溶媒の例としては、これらに限定はされないが、シクロヘキサン、およびメチルシクロヘキサンが挙げられる。非反応性溶媒は、改質反応に用いるに先立ち、乾燥させて含水量を可能な限り減らしておくことが望ましい。
【0027】
表面改質には、イソシアネート基とヒドロキシル基との反応を促進する任意の触媒を用いることができる。かかる触媒の例として、これらに限定はされないが、ジブチル錫ジラウレート(dibutyltin dilaurate)(T−12)およびオクタン酸錫(stannous octoate)(T−9)が挙げられる。表面改質の反応は通常約20〜80℃、好ましくは約40〜70℃、より好ましくは約45〜65℃の温度で行われる。
【0028】
エチレン性不飽和基を備える改質無機粒子は、エチレン性不飽和基を備えるモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーと架橋反応することができるため、該改質無機粒子が有機樹脂基質中に均一に分散されて三次元有機/無機構造が形成される。
【0029】
これらモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーがさらにヒドロキシル、無水物、カルボキシルまたはエポキシ基を含んでいてもよい。表面改質を反応性溶媒中で行う場合、フリーラジカル開始剤を添加して反応性溶媒の重合を進行させることにより、in−situで有機/無機複合材料を作製することができる。必要であれば、1種または複数種の追加の反応性モノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはポリマーを反応系に加えることによって各種タイプの耐火複合材料を作製することもできる。また、表面改質を非反応性溶媒中で行う場合は、反応性モノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはポリマーと架橋させる前に、反応系から改質無機粒子を分離する、あるいは非反応性溶媒の大部分を除去する必要がある。
【0030】
上記有機/無機複合材料は、その改質無機粒子と有機成分との化学結合のため(従来の物理的にブレンドされたものと比べると)、炎または発火源暴露下で熔融、発火または燃焼滴下(flame dripping)を生じることがない。さらに、熱せられた部分は短時間のうち炭化して充分に組織化された炭化層を形成し、これによって剥離または亀裂なく優れた構造的完全性が保たれ得るので、内部への直接的な熱の伝達が効果的に阻止される。
【0031】
また、上記有機/無機複合材料は耐火材料としてそのまま用いることができるが、粒子に粉砕し、難燃剤として用いることも可能である。かかる粉砕粒子は、ポリマー表面コーティングで覆われた改質無機粒子である。例えば、この粉砕粒子を高温で熱可塑性ポリマー、可塑剤および追加の無機フィラーと混練してから押し出すと、耐火熱可塑性複合材料が形成される。
【0032】
いかなる形によっても本発明を限定することなく、以下に実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0033】
実施例1
市販のイソシアネート含有アクリレートオリゴマー10g、スチレン50g、および触媒であるジブチル錫ジラウレート0.4gを500ml反応槽中で完全に混合した。その反応槽に、アルミナ三水和物(Beaming Company社製、平均粒径:8μm、事前に130℃で2時間乾燥させておいたもの)180gをゆっくり加え、50〜55℃で3時間攪拌した。室温まで冷却したら、その反応混合物からアルミナ水酸化物分散液を20g取り出し、これにトルエン60mlを加えて超音波振動、遠心分離、およびろ過処理を行った。このプロセスを3回繰り返した。得られたアルミナ水酸化物粒子を60℃のオーブンで2時間乾燥した。赤外スペクトルには、1500〜1750cm-1にアクリレートおよび−O−C=Oの特性吸収帯が現れ、2850〜2950cm-1に脂肪族水素の伸縮の特性吸収帯が現れた。このことは、改質剤がアルミナ水酸化物粒子上にグラフトされたことを表している。
【0034】
実施例2
市販のイソシアネート含有アクリレートオリゴマー10g、スチレン50g、および触媒であるジブチル錫ジラウレート0.4gを500ml反応槽中で完全に混合した。その反応槽に、アルミナ三水和物(Beaming Company社製、平均粒径:8μm、事前に130℃で2時間乾燥させておいたもの)180gをゆっくり加え、50〜55℃で3時間攪拌した。室温まで冷却したら、反応槽にポリスチレン粉末10gおよび過酸化ベンゾイル1.0gを加えて30分間機械攪拌した。次いで、その混合物を3本ロールミルで混合してから、厚さ0.3mmの型に仕込み、100℃で60分間プレス成形を行った。成形された試験片を型から外し、オーブンに入れて120℃で60分間硬化させた。硬化した試験片は表面が滑らかであると共に成膜性に優れ、かつUL94V−0難燃性規格を満たすものであった。
【0035】
実施例3
市販のイソシアネート含有アクリレートオリゴマー2.4g、スチレン40g、および触媒であるジブチル錫ジラウレート0.13gを300ml反応槽中で完全に混合した。その反応槽に、水酸化マグネシウム(ICL Industrial Products社製FR20/100、平均粒径:1μm、事前に130℃で2時間乾燥させておいたもの)60gをゆっくり加え、50〜55℃で3時間攪拌した。室温まで冷却したら、反応槽にBYK110分散剤1.2gおよびt−ブチルパーオキシベンゾエート(TBPB)0.6gを加えて30分間機械攪拌した。続いて、その混合物にガラス繊維チョップドストランド(1/8インチ、Taiwan Glass Corp社製)12gをブレンドしてから、厚さ0.3mmの型に仕込み、120℃で60分間プレス成形を行った。成形された試験片を型から外し、オーブンに入れて130℃で60分間硬化させた。硬化した試験片は成膜性に優れ、かつUL94V−0難燃性規格を満たすものであった。
【0036】
調製例1
ポリプロピレングリコール(PPG−1000、Mw=1000)160.0gおよび1,6−ヘキサンジオール9.4gをガラス容器に入れ、105℃で少なくとも4時間真空乾燥を行って含水量を400ppm以下まで減らした。
【0037】
窒素雰囲気下、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート100.8gを四つ口の反応容器に入れて120℃に予熱した。その反応容器に、乾燥したポリプロピレングリコールおよび1,6−ヘキサンジオールをゆっくり添加した。添加が完了した後、その反応混合物を120〜130℃で5時間攪拌してから、フリーイソシアネート(−NCO)の残留量をモニターした。イソシアネートの残留量が約11.5%まで減少したところで、冷却して第1段階の反応を停止させた。
【0038】
そして50℃まで冷却したら、上述の混合物にジブチル錫ジラウレート1.5gを加えることにより第2段階の反応を開始させた。50℃の温度下、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(2−HPA)20.8gをゆっくり添加し、添加が完了した後、得られた混合物を50℃で3時間攪拌してから、イソシアネートの残留量をモニターした。イソシアネートの残留量が約8.5%まで減少したところで第2段階の反応を終了とした。これにより、室温で固態を呈する高粘度のイソシアネート含有アクリレートオリゴマーを得た。そのイソシアネート残留量は6.5%であった。
【0039】
調製例2
ポリプロピレングリコール(PPG−1000、Mw=1000)200.0gおよび1,6−ヘキサンジオール4.1gをガラス容器に入れ、105℃で少なくとも4時間真空乾燥を行って含水量を400ppm以下まで減らした。
【0040】
窒素雰囲気下、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート126.0gを四つ口の反応容器に入れて120℃に予熱した。その反応容器に乾燥したポリプロピレングリコールおよび1,6−ヘキサンジオールをゆっくり添加し、添加が完了した後、その反応混合物を120〜130℃で6時間攪拌してから、フリーイソシアネート(−NCO)の残留量をモニターした。イソシアネートの残留量が約13.1%まで減少したところで、冷却して第1段階の反応を停止させた。
【0041】
そして50℃まで冷却したら、上述の混合物にジブチル錫ジラウレート1.8gを加えることにより第2段階の反応を開始させた。50℃の温度下、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(2−HPA)26.0gを30分間のうちに数回に分けて段階的に添加し、添加が完了した後、得られた混合物を50℃で5時間攪拌してから、イソシアネートの残留量をモニターした。イソシアネートの残留量が約9.7%まで減少したところで第2段階の反応を終了とした。これにより、低粘度(25℃で1425cps)の液態を呈するイソシアネート含有アクリレートオリゴマーを得た。そのイソシアネート残留量は8.3%であった。
【0042】
比較例1
スチレン40gを200mlプラスチックジャーに入れ、そこに未改質アルミナ三水和物(Beaming Company社製、平均粒径:8μm)75gをゆっくり加えて完全に混合した。続いて、ポリスチレン粉末10gおよび過酸化ベンゾイル0.75gを加え、30分間機械攪拌した。その混合物にガラス繊維チョップドストランド(1/8インチ、Taiwan Glass Corp製)41.7gをブレンドしてから、厚さ0.3mmの型に仕込み、120℃で60分間プレス成形を行った。成形された試料を型から外し、オーブンに入れて130℃で60分間硬化させた。硬化した試料を12.7mm×127mmの5本の試験片にカットし、これら試験片に対してUL94燃焼試験を行った。結果、これら試験片には滴下現象が見られ、UL94V−0難燃性規格を満たしていなかった。
【0043】
実施例4
スチレン40gを200mlプラスチックジャーに入れ、そこに、調製例1のイソシアネート含有アクリレートオリゴマーで改質したアルミナ三水和物75gをゆっくり加えて完全に混合した。続いて、ポリスチレン粉末10gおよび過酸化ベンゾイル0.75gを加え、30分間機械攪拌した。その混合物にガラス繊維チョップドストランド(1/8インチ、Taiwan Glass Corp社製)41.7gを混合してから、厚さ0.3mmの型に仕込み、120℃で60分間プレス成形を行った。成形された試料を型から外し、オーブンに入れて130℃で60分間硬化させた。硬化した試料を12.7mm×127mmの5本の試験片にカットし、これら試験片に対してUL94燃焼試験を行った。結果、これら試験片はUL94V−0難燃性規格を満たしていた。
【0044】
実施例5
調製例1のイソシアネート含有アクリレートオリゴマー3g、スチレン40g、および触媒であるジブチル錫ジラウレート0.15gを500ml反応槽中で完全に混合してから、アルミナ三水和物(Beaming Company社製、平均粒径:8μm、事前に130℃で2時間乾燥させておいたもの)75gをゆっくり加え、その混合物を50〜55℃で3時間攪拌した。室温まで冷却したら、ポリスチレン粉末10gおよびt−ブチルパーオキシベンゾエート0.75gを加え、30分間機械攪拌した。その混合物にガラス繊維チョップドストランド(1/8インチ、Taiwan Glass Corp社製)42.7gをブレンドしてから、厚さ0.3mmの型に仕込み、120℃で60分間プレス成形を行った。成形された試料を型から外し、オーブンに入れて130℃で60分間硬化させた。硬化した試料を12.7mm×127mmの5本の試験片にカットし、これら試験片に対してUL94燃焼試験を行った。結果、これら試験片はUL94V−0難燃性規格を満たしていた。
【0045】
比較例2
エチレンエステル樹脂50gおよびコバルト塩0.3gを200mlプラスチックジャー中で混合し、そこに未改質アルミナ三水和物65gをゆっくり加えた。30分間攪拌したのち、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)0.75gを加え、次いでその混合物にガラス繊維チョップドストランド(1/8インチ、Taiwan Glass Corp社製)38.3gをブレンドしてから、厚さ0.3mmの型に仕込み、室温下6時間放置した。成形された試料を型から外し、オーブンに入れて130℃で60分間硬化させた。硬化した試料を12.7mm×127mmの5本の試験片にカットし、これら試験片に対してUL94燃焼試験を行った。結果、これら試験片はUL94V−0難燃性規格を満たしていなかった。
【0046】
実施例6
エチレンエステル樹脂50gおよびコバルト塩0.3gを200mlプラスチックジャー中で混合し、そこにアルミナ三水和物65gをゆっくり加えた。30分間攪拌したのち、調製例2のイソシアネート含有アクリレートオリゴマー2gを加え完全に混合してから、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)0.75gを加えた。次いでその混合物にガラス繊維チョップドストランド(1/8インチ、Taiwan Glass Corp社製)39.3gをブレンドしてから、厚さ0.3mmの型に仕込み、室温下6時間放置した。成形された試料を型から外し、オーブンに入れて130℃で60分間硬化させた。硬化した試料を12.7mm×127mmの5本の試験片にカットし、これら試験片に対してUL94燃焼試験を行った。結果、これら試験片はUL94V−0難燃性規格を満たしていた。
【0047】
実施例7
エチレンエステル樹脂50gおよびコバルト塩0.3gを200mlプラスチックジャー中で混合し、そこに調製例2のイソシアネート含有アクリレートオリゴマーで改質したアルミナ三水和物65gをゆっくり加えた。30分間攪拌したのち、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)0.75gを加え、次いでその混合物にガラス繊維チョップドストランド(1/8インチ、Taiwan Glass Corp社製)38.3gをブレンドしてから、厚さ0.3mmの型に仕込み、室温下6時間放置した。成形された試料を型から外し、オーブンに入れて130℃で60分間硬化させた。硬化した試料を12.7mm×127mmの5本の試験片に切断し、これら試験片に対してUL94燃焼試験を行った。結果、これら試験片はUL94V−0難燃性規格を満たしていた。
【0048】
本明細書において、割合、濃度、量およびその他の数字データは範囲の形式で表されている場合があることに留意されたい。かかる範囲の形式は便宜および簡潔とするために用いたと解されるべきであり、すなわち、範囲の上下限として明示的に挙げられた数値が含まれるのみならず、その範囲の中の個々の数値または下位の範囲も、それら各数値または下位の範囲があたかも明示的に挙げられたものとして含まれるというように、柔軟に解釈されなければならない。例えば、濃度範囲“約0.1%〜約5%”には、明示的に挙げられた濃度約0.1wt%〜約5wt%が含まれるのみならず、示された範囲の中の個々の濃度(例えば1%、2%、3%および4%)ならびに下位の範囲(例えば0.5%、1.1%、2.2%、3.3%および4.4%)も含まれる。“約”という用語は、変更する±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±6%、±7%、±8%、±9%もしくは±10%またはこれより大きい数値を含み得る。さらに、“約‘x’から‘y’”という表現には、“約‘x’から約‘y’”が含まれる。
【0049】
以上、好適な実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定はされないと解されるべきであり、つまり本発明は、(当業者であれば明らかであるように)添付の特許請求の範囲は、かかる各種変更および均等なアレンジがすべて包含されるように、最も広い意味に解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の改質無機粒子の一実施形態にかかる無機粒子の表面改質を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル基を備える無機粒子と、
前記無機粒子に、ウレタン結合を介して連結され、エチレン性不飽和末端基を備える表面改質剤と、
を含む改質無機粒子。
【請求項2】
前記無機粒子が、金属水酸化物または酸化物から選ばれたものである請求項1記載の改質無機粒子。
【請求項3】
前記金属水酸化物がAl(OH)3またはMg(OH)2から選ばれたものである請求項2記載の改質無機粒子。
【請求項4】
前記酸化物がSiO2、TiO2またはZnOから選ばれたものである請求項2記載の改質無機粒子。
【請求項5】
前記表面改質剤が、一端にイソシアネート基を、他端にエチレン性不飽和基を含むモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーから選ばれたものである請求項1記載の改質無機粒子。
【請求項6】
非反応性溶媒中に分散されてなる請求項1記載の改質無機粒子。
【請求項7】
前記非反応性溶媒が、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、シクロアルカンまたはこれらの組み合わせから選ばれたものである請求項6記載の改質無機粒子。
【請求項8】
反応性溶媒中に分散される請求項1記載の改質無機粒子。
【請求項9】
前記反応性溶媒が、反応性モノマーまたはオリゴマーから選ばれたものであり、
該モノマーおよびオリゴマーが、官能基を備えず、
該官能基は、−SH、−OH、−COOH、−NH2および−NHR(Rはアルキルまたはアリール基を表す)から選ばれたものである請求項8記載の改質無機粒子。
【請求項10】
前記反応性溶媒が、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジルまたはこれらの組み合わせから選ばれたものである請求項9記載の改質無機粒子。
【請求項11】
前記無機粒子を被覆するポリマー表面コーティング(polymer surface coating)が、さらに含まれてなる請求項1記載の改質無機粒子。
【請求項12】
ヒドロキシル基を備える無機粒子を準備する工程、
一端にイソシアネート基を、他端にエチレン性不飽和基を備える表面改質剤を準備する工程および
前記無機粒子を前記表面改質剤と混合して反応させ、前記無機粒子の前記ヒドロキシル基と前記表面改質剤の前記イソシアネート基との反応により前記表面改質剤を前記無機粒子に連結させる工程、
を含む改質無機粒子の作製方法。
【請求項13】
前記無機粒子を前記表面改質剤と混合する前に、前記無機粒子を乾燥させる工程がさらに含まれてなる請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記無機粒子が、金属水酸化物または酸化物から選ばれたものである請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記金属水酸化物が、Al(OH)3またはMg(OH)2から選ばれたものである請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記酸化物が、SiO2、TiO2またはZnOから選ばれたものである請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記表面改質剤が、モノマー、オリゴマーまたはプレポリマーから選ばれたものである請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記ヒドロキシル基と前記イソシアネート基との前記反応を促進させる触媒を添加する工程がさらに含まれてなる請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記触媒が、ジブチル錫ジラウレートまたはオクタン酸錫から選ばれたものである請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記反応が官能基を備えない非反応性溶媒中で行われ、
該官能基が、−SH、−OH、−COOH、−NH2および−NHR(Rはアルキルまたはアリール基を表す)から選ばれたものである請求項12記載の方法。
【請求項21】
前記非反応性溶媒が、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、シクロアルカンまたはこれらの組み合わせから選ばれたものである請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記反応が、反応性溶媒中で行われる請求項12記載の方法。
【請求項23】
前記反応性溶媒が、反応性モノマーまたはオリゴマーから選ばれたものであり、
該モノマーおよび該オリゴマーが、官能基を備えず、
該官能基が、−SH、−OH、−COOH、−NH2および−NHR(Rはアルキルまたはアリール基を表す)から選ばれたものである請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記反応性溶媒が、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジルまたはこれらの組み合わせから選ばれたものである請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記改質無機粒子をモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーから選ばれた反応性化合物と混合して架橋反応を進行させることにより有機/無機複合材料を形成する工程および
前記有機/無機複合材料を粉砕してポリマー表面コーティングによって覆われた無機粒子を形成する工程が、さらに含まれてなる請求項12記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−138178(P2009−138178A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201899(P2008−201899)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】