説明

改質装置及び後処理装置及び画像形成装置

【課題】電極ローラとして太いローラを用いることなく、確実にプラズマ放電長さを制御することが可能な改質装置、この改質装置を備えた画像形成装置、画像形成装置の後処理装置を提供する。
【解決手段】被加工物Sを所定の方向に搬送する搬送手段11と、搬送手段11により所定の方向に搬送されている被加工物Sの被加工面に向けてプラズマを生成する放電電極ローラ51と、搬送手段11を介して放電電極ローラ51と対向配置され放電電極ローラ51との間でプラズマを発生させるカウンタ電極52とを有し、プラズマにより被加工面の改質を行う改質装置100であって、放電電極ローラ51はその太さが均一であると共にその長さが被加工物Sの搬送方向と直交する長さよりも長く、カウンタ電極52の長さによって被加工物Sに対するプラズマ放電長さを制御する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置において、画像形成が施されること等によって形成されたシート状被加工物の被加工面にプラズマを接触させて同面の改質を行う改質装置、この改質装置を備えた画像形成装置、画像形成装置の後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂フィルム等の被加工物の被加工面にプラズマを接触させて同面の改質を行う技術が種々提案(たとえば、「特許文献1」ないし「特許文献5」参照)されており、本願出願人も特願2008−132446において、インクジェット印刷前の記録用メディアの表面をプラズマにより改質する技術を提案している。また、インク画像定着のためにプラズマを用いる技術も種々提案されている(たとえば、「特許文献6」ないし「特許文献8」参照)。
【0003】
プラズマを用いるこれらのような技術において、被加工物を移動させながらプラズマを接触させる構成が知られており(たとえば、「特許文献3」ないし「特許文献8」参照)、このような構成ではプラズマの接触の均一性を向上することが可能である。均一性をさらに向上するためには、プラズマを発生させる電極を被加工物の移動方向に複数配置すると共に、電極をローラ状として被加工物の移動方向に沿って回転するように構成することが望ましい。これにより、プラズマを発生させることに起因する電極の表面部位における劣化が電極の周面において分散されると共に、特に電極が被加工物に接触配置されている場合、被加工物に付着している汚れが電極に転移しても電極の周面に汚れが分散されることから、電極によるプラズマの発生性能が経時的に維持されるという利点もある。
【0004】
上述した被加工物を移動させながらプラズマを接触させる構成の一例を図10に示す。同図において被加工物としてのシートは、電極と搬送ベルトとの間を図の矢印方向に搬送される。電極には高圧電源が接続されており、搬送ベルトはその基体がポリイミド等からなる絶縁体を使用し、搬送ベルトの下方にはガラス板、カウンタ電極、絶縁体が順に配設されている。この構成において高圧電源から電極に高電圧が印加されることによりカウンタ電極との間での放電(大気圧プラズマ放電、誘電体バリア放電)が生じ、沿面放電によるプラズマが形成される。この沿面放電によるプラズマはシートの被加工面に対する接触面積が大きいため、被加工面改質時におけるムラの発生が抑制されて改質の均一性が高い精度で確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3897863号公報
【特許文献2】特開平10−78682号公報
【特許文献3】特許第3870605号公報
【特許文献4】特開2001−64421号公報
【特許文献5】特開2008−12919号公報
【特許文献6】特開2007−106105号公報
【特許文献7】特開2008−296526号公報
【特許文献8】特開2008−297506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複写機等により画像形成がなされた画像形成物に対し、その表面を保護したり艶出しや艶消し等の視覚的効果を与えて付加価値を高めたりするためにニス等のコート材を後処理で塗布する場合がある。この場合には、画像形成物をたとえばニスコータと呼ばれるニス塗布装置に投入してその表面にコート材を塗布することとなるが、画像形成物の画像形成面には撥水性を有する部分が多々存在しており、結果的にニスを弾いてしまい一面均一にコート材を塗布することができなかった。この原因は、画像形成に用いられるトナー粒子に含有されたワックスや複写機の定着装置に用いられるシリコンオイル等の影響によるものと考えられる。
【0007】
上述の問題点を解決すべく本発明者等は数々の実験を行った結果、上述したプラズマを用いた表面改質により、空気中の成分や画像形成物自体に含まれている成分等によって形成された種々の親水性官能基等の基が被加工面に形成されて表面エネルギが高くなり、撥水性を有する部分が親水化されてコート材の塗布が可能となることを見出した。この表面改質は、上述した沿面放電によるプラズマ処理によって好適に達成され、良好な沿面放電が行われないとプラズマが画像形成面に均一に付与されずに放電ムラが発生し、画像形成面に撥水性を有する部分が残存してコート材が均一に塗布されず、良好な画像形成物を得ることができないことが判明した。
【0008】
上述したプラズマを発生させる装置の一例を図11に示す。この装置では、高圧電源に接続された電極ローラ、アース接続されたカウンタ電極、両電極間を走行する誘電体ベルトを有し、プラズマ放電の放電長さを制御するため電極ローラに段差部を設け、誘電体ベルトと接触しない電極ローラの小径部において放電が発生しないように構成し、カウンタ電極の幅よりも短い範囲でプラズマ放電を発生させるべく、プラズマ放電長さを制御していた。
【0009】
しかし上述の構成とするためには、電極ローラに十分な段差を設ける必要があることから電極ローラとして太いローラを使用しなければならず、これにより負荷となるリアクタンスが高くなり高圧電源の負荷容量を大きくしなければならないことからコストアップしてしまうという問題点がある。これを解決すべく電極ローラの太さを細くすると、段差部を大きく確保することができずにプラズマ放電長さを制御することができない。また誘電体ベルト上に段差部が存在すると、段差部の角部と接触することにより誘電体ベルトが早期に劣化してしまうという問題点がある。
【0010】
本発明は上述した問題点を解決し、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置において画像形成が施されること等により形成されたシート状の被加工物の被加工面にプラズマを接触させて同面の改質を行う、被加工物の移動方向に沿って回転するローラ状の電極を備えた改質装置であって、電極ローラとして太いローラを用いることなく、確実にプラズマ放電長さを制御することが可能な改質装置、この改質装置を備えた画像形成装置、画像形成装置の後処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、シート状の被加工物を所定の方向に搬送する搬送手段と、前記搬送手段により前記所定の方向に搬送されている前記被加工物の被加工面と接触配置され前記被加工面に向けてプラズマを生成する放電電極ローラと、前記搬送手段を介して前記放電電極ローラと対向配置され前記放電電極ローラとの間で前記プラズマを発生させるカウンタ電極とを有し、前記プラズマにより前記被加工面の改質を行う改質装置であって、前記放電電極ローラはその太さが均一であると共にその長さが前記被加工物の搬送方向と直交する長さよりも長く、前記カウンタ電極の長さによって前記被加工物に対するプラズマ放電長さを制御することを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の改質装置において、さらに前記カウンタ電極はその両端に絶縁部材を有することを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の改質装置において、さらに前記カウンタ電極はその両端が徐々に前記搬送手段より離間すべく傾斜していることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の改質装置において、さらに前記プラズマによって改質された前記被加工面に、改質によって可能となった加工を施す加工手段を有することを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載の改質装置を有し、画像形成装置に着脱可能であり、前記画像形成装置において画像形成済みの前記被加工物の後処理を行う後処理装置であって、前記改質装置において前記画像形成済みの前記被加工物の被加工面を改質することを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載の改質装置を有し、画像形成済みの前記被加工物の被加工面を前記改質装置により改質する画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、太さが均一な放電電極ローラを用いても確実にプラズマ放電長さを制御することができ、高圧電源として負荷容量の比較的小さなものを使用できることからコストアップを防止できると共に、段差部を設ける必要がないことから搬送手段の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を適用可能な改質装置の概略正面図である。
【図2】本発明の一実施形態を採用した改質装置に備えられる各放電電極ローラから沿面放電によるプラズマが被加工物に接触し改質を行っている様子を示した概略拡大正面図である。
【図3】本発明の一実施形態を採用した改質装置において改質が行われる被加工物を出力する装置の一例である画像形成装置の概略正面図である。
【図4】図3に示した画像形成装置から出力された被加工物を図1に示した改質装置で改質するときの様子を示した概略正面図である。
【図5】図3に示した画像形成装置と同様の構成の画像形成装置及びこの画像形成装置に装着された本発明の一実施形態を採用した改質装置を備えた後処理装置の概略正面図である。
【図6】本発明の一実施形態を採用した改質装置を備えた画像形成装置の構成を示す概略正面図である。
【図7】加工手段を備えた改質装置の一部を拡大した概略正面図である。
【図8】本発明の一実施形態を示す改質装置の部分概略側面図である。
【図9】本発明の一実施形態の変形例を示す改質装置の部分概略側面図である。
【図10】本発明の改質処理に用いられる沿面放電により出力されるプラズマを説明するための概略図である。
【図11】従来の改質装置の部分概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施形態を適用可能なスタンドアロン型の改質装置の概略図である。改質装置100は、一般にコピーや印刷等に用いられる普通紙やコート紙の他、OHPシートを含む樹脂フィルム、カード、ハガキ等の厚紙、封筒等の何れをもシート状、換言すると枚葉状の被加工物Sとし、その表面である被加工面の改質を行うことが可能である。改質装置100によって改質を行う被加工面はその少なくとも一部が撥水性であり、この撥水性の被加工面を改質により親水化することが改質装置100による改質の主目的である。また改質装置100は、改質された被加工物Sが改質によって可能となった加工、例えばニスの塗工に供されるべく改質を行う。
【0020】
改質装置100は、上述した改質を行う改質部10、改質部10を収容した本体99、本体99内に備えられ本体99内の空気を本体99外に排出する排気手段としての排気装置である排気部20、本体99外から改質部10に向けて被加工物Sを供給する給送手段としての給送装置である給送部30、本体99外に設けられ改質部10において改質された被加工物Sを積載する積載手段としての積載装置である積載部40、給送部30から被加工物Sを改質部10に供給して改質を開始するための指示等を行う図示しない操作パネル等を有している。
【0021】
改質部10は、給送部30から給送されてきた被加工物Sを改質しつつ積載部40に向けて搬送する搬送手段11、搬送手段11によって搬送されている被加工物Sの被加工面に改質を施す改質手段50等を有している。
【0022】
搬送手段11は、給送部30から給送されてきた被加工物Sを改質しつつ積載部40に向けて搬送すべく同図において反時計回り方向に回転する被加工物搬送部材としての無端ベルトである搬送ベルト12、搬送ベルト12が巻き掛けられた駆動部材である駆動ローラ13、駆動ローラ13と共に搬送ベルト12を張架する張架ローラ14、15、駆動ローラ13を回転駆動する駆動源としてのモータ16を備えた駆動手段17等を有している。
【0023】
搬送ベルト12は、図1における紙面方向である幅方向において改質装置100で改質を行う最大サイズ(本形態ではA4横サイズ)の被加工物Sの幅よりも大きな幅を有しており、たとえばポリイミド等の絶縁体で構成されている。表面層は実質的に絶縁性の抵抗値を有している。
【0024】
駆動ローラ13は、駆動手段17によって回転駆動されることにより搬送ベルト12を同図において反時計回り方向に回転駆動する。モータ16は回転速度可変であり、これに応じて搬送ベルト12の回転速度も可変に構成されている。搬送ベルト12は最大時において線速500mm/sec程度の速度で回転する。張架ローラ14、15は、駆動ローラ13によって回転駆動される搬送ベルト12に従動回転する。
【0025】
張架ローラ14は、搬送ベルト12に被加工物Sの搬送に適した所定の張力を与える加圧部材としてのテンションローラとしての機能を有しており、搬送ベルト12が撓むことを防止して搬送ベルト12を滑らかに移動させ改質ムラを抑制していると共に搬送ベルト12の移動による偏向を抑制しているが、張架ローラ15等の搬送ベルト12を巻き掛けた他のローラをテンションローラとしてもよい。ただしテンションローラは必須ではない。
【0026】
搬送ベルト12は、張架ローラ15と駆動ローラ13との間で張架されている部分においてほぼ水平方向を向いており、この部分の上面上において被加工物Sを搬送する。搬送ベルト12を巻き掛けた駆動ローラ13及び張架ローラ14、15は接地されており、これによって絶縁体であるベルトの静電気帯電を抑制することができる。
【0027】
改質手段50は、搬送ベルト12によって搬送されている被加工物Sの被加工面に対向すべく、張架ローラ15と駆動ローラ13との間で張架されている部分における搬送ベルト12に対向して配置されており、被加工面に接触して被加工面の改質を行うためのプラズマを被加工面に向けて形成するためのローラ状の放電電極である放電電極ローラ51と、放電電極ローラ51との間でプラズマを発生させるための対向電極としてのカウンタ電極52を備えた対向電極部53とを有している。
【0028】
さらに改質手段50は、放電電極ローラ51を回転自在に支持する支持部材54、放電電極ローラ51を搬送ベルト12及び対向電極部53に向けて付勢する押圧ばね55、プラズマを形成するための電圧を放電電極ローラ51に印加する高圧電源56を有している。
【0029】
放電電極ローラ51はそれぞれ同一形状の金属ローラであり、張架ローラ15と駆動ローラ13との間で張架されている部分における搬送ベルト12の移動方向に沿って複数設けられている。各放電電極ローラ51は搬送ベルト12の幅方向に延在しており、それぞれの回転中心軸が搬送ベルト12の移動面と平行な同一直線上に位置するように配設されている。各放電電極ローラ51は、搬送ベルト12の幅とほぼ同じ長さを有しており、図示の例では金属部分が露出しているが誘電体あるいは絶縁体で被覆するように構成してもよい。
【0030】
対向電極部53は、図2に示すようにカウンタ電極52の他、カウンタ電極52の上面を覆うと共に搬送ベルト12の下面を支持するように配設されカウンタ電極52の絶縁層として機能するガラス板57、カウンタ電極52及びガラス板57を下方から支持する絶縁体58を有している。アルミニウム製の平板により構成されたカウンタ電極52はアースされており、搬送ベルト12の移動方向及びこれに垂直な方向において複数の放電電極ローラ51が配設されている領域を含むように配設されている。
【0031】
ここで、対向電極部53の詳細な構成について説明する。図8(ガラス板57は図示を省略)に示すように、放電電極ローラ51はその太さが均一であり、その長さは最大サイズ(本形態ではA4横サイズ)の被加工物Sの幅よりも大きな幅を有する搬送ベルト12よりもさらに長く形成され、その両端を導電性の軸受25によって回転自在に支持されている。カウンタ電極52は搬送手段11を構成する搬送ベルト12を介して放電電極ローラ51と対向配置されており、その長さ(用紙幅方向長さ)によって後述する放電により発生するプラズマの領域、すなわちプラズマ放電長さが制御される。本形態では、A4横サイズの用紙全面に対してプラズマ放電が行われる長さに設定されている。
【0032】
またカウンタ電極52の両側部には、例えばポリアセタール樹脂等からなる比較的高硬度の絶縁部材26が配設されている。この絶縁部材26を設けることにより、図8において符号Aで示すカウンタ電極52の両端上部における放電が防止され、用紙に対する悪影響及びカウンタ電極52の劣化等が防止される。なお、図8において符号27は搬送ベルト12が偏倚することを防止するためのベルト寄り防止部材を示している。
【0033】
支持部材54は、各放電電極ローラ51に備えられ放電電極ローラ51の回転中心をなす軸部を回転自在に支持した軸受25と、各軸受を上下方向すなわち搬送ベルト12、対向電極部53と接離する方向に摺動自在に支持する同方向に延在した図示しない長孔を備えた導電性の図示しない軸受支持部材とを有している。軸受25と軸受支持部材との間には導電性グリスが塗布され、軸受25が長孔により軸受支持部材に対して摺動しても、軸受支持部材と放電電極ローラ51とが軸受25を介して導通が良好に保たれるように構成されている。
【0034】
押圧ばね55は、軸受25を介して放電電極ローラ51を搬送ベルト12、対向電極部53に向けて付勢し、放電電極ローラ51を搬送ベルト12またはこれによって搬送されている被加工物Sの被加工面に当接させる。これにより各放電電極ローラ51は、搬送ベルト12またはこれによって搬送されている被加工物Sの被加工面の移動に連れ回りする。この連れ回りにより、各放電電極ローラ51は放電による偏磨耗が低減される。
【0035】
高圧電源56は、交流電源からのパルスをトランスで昇圧して高圧パルスの出力を行うものであり、軸受支持部材に電気的に接続され、軸受支持部材、各軸受25を介して各放電電極ローラ51に500W出力相当のパルス状の高電圧を印加する。なお、各押圧ばね55も軸受支持部材、各軸受25、各放電電極ローラ51と同電位に保たれる。
【0036】
上述した構成の改質手段50においては、高圧電源56によって各放電電極ローラ51に高電圧が印加されることによりカウンタ電極52との間で放電が生じ、カウンタ電極52に向けてプラズマが形成される。この放電は、大気圧プラズマ放電、誘電体バリア放電といわれるものである。放電が行われてプラズマが形成されるにあたり、搬送ベルト12の導電性の基体も対向電極、換言するとカウンタ電極として機能する。この点、搬送ベルト12も対向電極部53を構成しているといえる。
【0037】
搬送ベルト12を金属と絶縁物の2層構造とした場合はカウンタ電極として機能することにより、図2に示すように放電電極ローラ51から搬送ベルト12、あるいはこれによって搬送されている被加工物Sに向けて沿面放電によるプラズマが形成される。搬送ベルト12がカウンタ電極として機能することは、沿面放電を良好に発生させるという利点、放電電極と対向電極との距離が近づくためエネルギの損失が減少し、放電及びプラズマが生じ易くなるという利点がある。上述した沿面放電を生じさせるには、対向電極側が誘電体あるいは絶縁体によって被覆されていることを必要とする。さらに被加工物Sが導電性物質を含む場合には、局所的な放電集中を回避するために放電電極ローラ51を絶縁体で被覆してもよい。
【0038】
放電電極ローラ51が搬送ベルト12の移動方向に沿って複数配置されていること、及び各放電電極ローラ51が搬送ベルト12またはこれによって搬送されている被加工物Sの被加工面に連れ回りすることで沿面放電やプラズマを形成する部位が変化することも被加工面の改質の均一性を向上している。なお、放電電極ローラ51の数は図示した4個に限られず、被加工面の改質の均一性を担保しつつエネルギの損失が抑制されるように適宜設定される。また、張架ローラ15と駆動ローラ13との間で張架されている部分における搬送ベルト12の移動方向における長さは、同方向における被加工物Sの長さにかかわらず、放電電極ローラ51からの沿面放電やプラズマによる改質作用が働く領域の同方向における長さ以上であればよい。
【0039】
高圧電源56による各放電電極ローラ51への印加電圧は、上述の沿面放電によるプラズマを生じさせるに十分な大きさに設定されている。また、印加電圧によって生じるプラズマにより被加工面に与えられるエネルギの密度は、被加工物Sが搬送ベルト12によって搬送されその被加工面が全ての放電電極ローラ51との対向領域、すなわち沿面放電によるプラズマの影響を受ける範囲を通過したときに被加工面の改質が完了する大きさであって、かつ改質に必要な大きさよりも過大となることのない大きさとされている。
【0040】
改質手段50を通過する際に被加工物Sは、上述した放電及びプラズマによって空気中の成分や被加工物S自体に含まれている成分により形成された種々の親水性官能基等の基が被加工面に形成されて表面エネルギが高くなり、例えば被加工面に撥水性を有する部分を含んでいる場合にはこの部分が親水化されることによって被加工面の改質が行われる。
【0041】
高圧電源56による各放電電極ローラ51への電圧印加から放電開始あるいはプラズマの形成までの応答性は数msecと極めて高いことから、各放電電極ローラ51と搬送ベルト12との間に被加工物Sが存在せず搬送ベルト12が露出した状態となる場合には、搬送ベルト12が露出した範囲に沿面放電あるいはプラズマが作用することがないように、適切なタイミングで高圧電源56による各放電電極ローラ51への電圧印加を停止するように構成してもよい。これにより消費エネルギの抑制及び搬送ベルト12の劣化抑制という利点がある。この場合、各放電電極ローラ51に対して個別に電圧の印加及び停止を行い得るように構成することが望ましい。
【0042】
上述の構成により、太さが均一な放電電極ローラ51を用いても確実にプラズマ放電長さを制御することができ、高圧電源56として負荷容量の比較的小さなものを使用できることからコストアップを防止できると共に、段差部を設ける必要がないことから搬送ベルト12の劣化を抑制することができる。また、カウンタ電極52の両端に絶縁部材26を設けたことにより余分な放電を防止でき、用紙に対する悪影響及びカウンタ電極52の劣化を防止することができる。
【0043】
また、被加工物Sとして様々な種類の厚みを有するものが搬送される場合であっても、押圧ばね55の付勢力により放電電極ローラ51がカウンタ電極52に接触する方向に付勢されていることにより放電電極ローラ51と被加工物Sとの接触が良好に行われるので、良好な沿面放電によるプラズマが形成されて被加工物Sの被加工面が均一に表面改質処理され、その後にコート材等を被覆しても良好な画像形成物を得ることができる。
【0044】
排気部20は、本体99内の空気を本体99外に排出し換気を行うことで、沿面放電によるプラズマによって生じたオゾン等の気体生成物や熱を排出する。排気部20は、このような排気を行うための空気流を形成する空気流形成手段としてのファン21を備えた空気流形成部22と、ファン21によって形成された本体99内の空気流により本体99内の空気が空気流形成部22に至るまでに、空気中のオゾン等の本体99外にそのまま排気すると環境に与え得る成分を除去するための浄化部23とを有している。
【0045】
浄化部23は、空気の流路に沿って、MgO触媒を用いた第1のフィルタとしての複数のオゾンフィルタ24と、活性炭繊維触媒を用いた第2のフィルタとしての複数のオゾンフィルタ25とを有している。浄化部23は、本体99内で発生する気体生成物に応じて、オゾン以外の成分を除去する他のフィルタ等を備えていてもよい。
【0046】
給送部30は、本体99外に配設され複数枚の被加工物Sを積載したトレイ31と、トレイ31上に積載された被加工物Sを改質部10に向けて1枚ずつ送り出す図示しない給送手段と、本体99内に配設され給送手段によって送り出された被加工物Sの先端位置を揃えるように自重で搬送ベルト12に当接し搬送ベルト12に従動回転する先端揃えローラ32とを有している。
【0047】
積載部40は、本体99外に配設され改質部10において改質された被加工物Sを多数枚積載可能な積載トレイ41を有している。積載トレイ41に積載された被加工物Sは、改質によって可能となった加工に供される。たとえば改質前に被加工面が撥水性である場合には、ニスの塗工を施してもニスが弾かれて光沢ムラが生じてしまうが、改質を行い撥水性の部分が親水化されるとニスが被加工面の全体になじみ、光沢ムラが防止ないし抑制され質感が向上すると共に耐久性も向上する。
【0048】
このように、改質装置100によって被加工物Sの改質を行うことにより、被加工物Sの加工が良好に行われることとなり、被加工物Sの市場における価値が向上する。改質装置100は、被加工物Sを搬送しつつ改質することで、多量の被加工物Sを一括して改質可能に構成されている。ここでは、改質装置100により改質を行う被加工物Sを特に限定していないが、被加工物Sとして、例えば画像形成装置によって画像形成が行われた出力物を用いることが可能である。
【0049】
図9は、上述した実施形態の変形例を示している。この変形例は、図8に示した実施形態と比較すると、カウンタ電極52に代えてカウンタ電極28を用いる点、絶縁部材26を用いない点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
【0050】
カウンタ電極28はカウンタ電極52と同様の材質によって構成され、その両端に搬送ベルト12より徐々に離間すべく傾斜した傾斜部28aを有している。傾斜部28aは、その傾斜角度αが20度以下程度となるように形成されている。この構成によっても絶縁部材26を用いることなく余分な放電を防止することができ、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、傾斜角度αを大きくしすぎると余分な放電が生じ、不具合が発生する虞がある。
【0051】
画像形成装置には種々あるが、乾式トナー等を用いて画像形成を行う、例えば複写機、ファクシミリ、プリンタ、これらの複合機等の画像形成装置においては、この画像形成装置による画像形成を行う過程で普通紙等の記録媒体が撥水性を発揮することとなる加工が行われる。すなわち、トナーが固体パラフィン等のワックスを含むワックス含有トナーである場合には、このトナーによって形成されたトナー像を記録媒体に定着させるときにトナー中のワックス成分がトナー像表面に滲出し、トナー像部分が撥水性を発揮する出力物が形成される。また、トナーがワックス含有トナーでない場合であっても、画像形成装置が記録媒体に画像を定着させる定着装置を有している場合においては、定着装置側に記録媒体や画像が付着することを防止あるいは緩和するため、記録媒体や画像にシリコンオイル等の撥水性の離型剤が塗布される場合には、記録媒体表面が撥水性を発揮する出力物が形成される。その他、画像形成装置の出力物でなくともそれ自体が樹脂製である場合等は、製造により出力物となった時点で撥水性を有する場合がある。
【0052】
このような出力物は、表面の少なくとも一部が撥水性を発揮するため、親水性を要する加工を施す場合には、表面を改質して親水性を持たせる必要がある。すなわち出力物が改質装置100による改質の対象である被加工面を有する被加工物Sとなる。被加工面を有する被加工物Sを出力物とする装置の一例として、図3に示す画像形成装置を説明する。
【0053】
同図に示す画像形成装置200は、カラーレーザ複写機とプリンタとの複合機であるが、他のタイプの複写機、ファクシミリ、プリンタ、これらの複合機等、他の画像形成装置であってもよい。画像形成装置200は、この画像形成装置200で読み取った原稿の画像データ、または後述する通信部192により外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行う。画像形成装置200は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシート、カード、ハガキ等の厚紙や封筒等の何れをもシート状の記録媒体として画像形成を行い、画像形成後の記録媒体を表面改質が必要な被加工物Sとなり得る出力物とすることが可能である。
【0054】
画像形成装置200は、イエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体としての潜像担持体である円筒状の感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKを平行配設したタンデム方式を採用している。
【0055】
感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKは、画像形成装置200の本体199の図示しないフレームに回転自在に支持され、像担持体である転写媒体としての転写ベルト111の移動方向であるA1方向の上流側からこの順で並んでいる。各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロ、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【0056】
各感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKはそれぞれ、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するための作像ステーションである画像形成ユニット160Y、160M、160C、160BKに備えられている。感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKは、本体199の内部の中央部よりもやや上方に配設された無端のベルトである中間転写体としての転写ベルト111の外周面側すなわち作像面側に位置している。
【0057】
転写ベルト111は、各感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKに対峙しながら矢印A1方向に移動可能となっている。各感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKに形成された可視像すなわちトナー像は、矢印A1方向に移動する転写ベルト111に対しそれぞれ重畳転写され、その後、記録媒体であり転写媒体である転写紙に一括転写されるようになっている。転写紙の図示は省略している。
【0058】
転写ベルト111に対する重畳転写は、転写ベルト111がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKに形成されたトナー像が、転写ベルト111の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト111を挟んで各感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKに対向する位置に配設された1次転写ローラ112Y、112M、112C、112BKによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0059】
画像形成装置200は、本体199内に、4つの画像形成ユニット160Y、160M、160C、160BKと、各感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKの下方に対向して配設され、転写ベルト111を備えた中間転写ユニットとしての転写ベルトユニット110と、転写ベルト111に対向して配設され転写ベルト111に当接し、転写ベルト111への当接位置において転写ベルト111と同方向に回転し無端移動する転写部材としての紙搬送ベルトである2次転写ベルト105を備え、転写ベルト111上のトナー像を転写紙に転写すると共に搬送する2次転写装置としての2次転写ユニット176と、画像形成ユニット160Y、160M、160C、160BKの上方に対向して配設された潜像形成手段としての露光装置たる光書込みユニットである光走査装置108とを有している。
【0060】
画像形成装置200はまた、本体199内に、感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKと転写ベルト111との間に向けて搬送される転写紙を多数枚積載可能な給紙カセットとしての給紙機構であるシート給送装置161と、シート給送装置161から搬送されてきた転写紙を、画像形成ユニット160Y、160M、160C、160BKによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、転写ベルト111と2次転写ベルト105との間に向けて繰り出すレジストローラ104とを有している。
【0061】
また画像形成装置200は、トナー像を転写された転写紙に同トナー像を定着させるためのベルト定着方式の定着ユニットとしての定着装置106と、定着済みの転写紙を本体199の外部に排出する排紙ローラ対としての排紙ローラ107と、排出ローラ107により本体199の外部に排出された転写紙を積載する排紙トレイ117とを本体199内に有している。
【0062】
本体199の上方には、原稿の画像を読み取るスキャナーである読取装置114、読取装置114の上方に配設され読取装置114に原稿を給送する自動原稿給送装置(いわゆるADF)115が配設されている。本体199内の最下方には、本体199内の空気を本体199外に排出する排気手段としての排気装置である排気部120が配設されており、光走査装置108の左方には種々の検知手段による検知結果等に基づき画像形成装置200の動作全般を制御するCPU、メモリ等を含む制御手段191、外部から画像形成を行うための画像情報を受信する通信部192が配設されている。
【0063】
シート給送装置161は、転写紙を複数枚重ねた転写紙束の状態で収容するものであり、本体199の下部において多段で配設されている。シート給送装置161は、所定のタイミングで転写紙をレジストローラ104に向けて給送するように構成されており、シート給送装置161から送り出された転写紙は給紙経路を経てレジストローラ104に至り、レジストローラ104のローラ間に挟まれる。
【0064】
定着装置106は、ベルトユニット162、ベルトユニット162に圧接された加圧ローラ163等を有している。ベルトユニット162は、無端状の定着ベルト164と、定着ベルト164を張架しながら無端移動させる定着ローラ165と、定着ローラ165とともに定着ベルト164を巻き掛け内部に図示しない熱源を有する加熱ローラ166とを有している。
【0065】
定着装置106は、トナー像を担持した転写紙をベルトユニット162と加圧ローラ163との圧接部である定着部に挟み込む態様で通すことで、熱と圧力との作用により担持したトナー像を転写紙の表面に定着する。定着装置106は、シリコンオイル等の離型剤を用いないオイルレス定着方式を採用している。
【0066】
排気部120は、本体199内の空気を本体199外に排出し換気を行うことで、画像形成によって生じた、オゾン等の気体生成物や熱を排出するものである。排気部120は、このような排気を行うための空気流を形成する空気流形成手段としてのファン121を備えた空気流形成部122と、ファン121によって形成された本体199内の空気流により本体199内の空気が空気流形成部122に至るまでにかかる空気中のオゾンなど、本体199外にそのまま排気すると環境に与え得る成分を除去する浄化部123とを有している。
【0067】
通信部192は、画像形成を行うための画像情報を画像形成装置100に入力するPC、電話回線、インターネット等に接続可能な他、画像形成装置100に着脱可能な種々の後処理装置が画像形成装置100に装着された場合には、その後処理装置との間で種々の情報を授受する。
【0068】
画像形成ユニット160Y、160M、160C、160BKについて、そのうちの一つの、感光体ドラム70Yを備えた画像形成ユニット160Yの構成を代表して説明する。なお、他の画像形成ユニットの構成に関しても実質的に同一であるので、以下の説明においては、便宜上、画像形成ユニット160Yの構成に付した符号に対応する符号を、他の画像形成ユニットの構成に付すかこれを省略し、詳細な説明についても適宜省略することとする。
【0069】
感光体ドラム70Yを備えた画像形成ユニット160Yは、感光体ドラム70Yの周囲に、図中反時計方向であるその移動方向に沿って、1次転写ローラ112Yと、クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置であるクリーニング装置170Yと、図示しない除電手段としての除電ランプを備えた除電装置と、帯電手段としての帯電装置190Yと、現像手段としての現像ユニットである現像器たる現像装置180Yとを有している。
【0070】
光走査装置108は、感光体ドラム70Yに帯電装置190Yが対向した帯電領域と現像装置180Yが対向した現像領域との間の領域に、画像情報に応じて変換した光情報に基づいて光変調及び偏向されたレーザ光Lを走査しながら照射し、帯電装置190Yにより帯電された後の感光体ドラム70Yの表面の被走査面をスポット照射によって露光し、現像装置180Yによってイエロトナー像として可視像化される静電潜像を画像情報に応じて書き込む。
【0071】
現像装置180Yは、感光体ドラム70Yに近接対向して配設された現像ローラ181Yと、現像ローラ181Y上の現像剤を一定の高さに規制する図示しないドクターブレードと、現像剤を攪拌すると共に現像ローラ181Yに現像剤を供給するための図示しない搬送スクリュと、乾式でワックス含有のトナーであるイエロトナーを収容した図示しないトナーボトルと、これらを収容した図示しない現像ケースと、直流成分の現像バイアスを現像ローラに印加する図示しないバイアス印加手段等とを有している。
【0072】
現像ケース内の現像剤は、磁性キャリアと、イエロトナーとを含む二成分現像剤であって、この現像剤には、トナーボトルからイエロトナーが補給、供給され、搬送スクリュによって、供給されたイエロトナーと現像剤とが攪拌搬送されながら攪拌混合され、摩擦帯電されて現像ローラ181Yに供給され担持される。
【0073】
以上のような構成の画像形成装置200の動作等について説明する。
感光体ドラム70Yは、回転に伴い、帯電装置190Yにより表面を一様にマイナス帯電される。光走査装置108からのレーザ光Lの露光走査によりイエロ色に対応した静電潜像を形成される。この静電潜像は現像装置180Yにより現像剤中のイエロ色のトナーにより現像され、現像により得られたイエロ色のトナー像を1次転写ローラ112YによりA1方向に移動する転写ベルト111に1次転写され、転写後に残留した残留トナーをクリーニング装置170Yにより除去される。次いで、除電装置により残留電荷が除去されて帯電装置190Yによる次の除電及び帯電に供される。
【0074】
他の感光体ドラム70M、70C、70BKにおいても同様に各色のトナー像が形成等され、形成された各色のトナー像は1次転写ローラ112M、112C、112BKにより、矢印A1方向に移動する転写ベルト111上の同じ位置に順次1次転写される。転写ベルト111上に重ね合わされたトナー像は、転写ベルト111のA1方向の回転に伴い2次転写ベルト105との対向位置である2次転写ニップまで移動して転写紙に密着し、2次転写バイアスやニップ圧の作用によって転写紙に2次転写され、転写紙上にフルカラー画像が形成される。
【0075】
転写ベルト111と2次転写ベルト105との間に搬送されてきた転写紙はシート給送装置161から繰り出されてフィードされ、レジストローラ104によって転写ベルト111上のトナー像の先端部が2次転写ベルト105に対向するタイミングで送り出される。
【0076】
転写紙は、すべての色のトナー像を一括転写されて担持すると、2次転写ユニット176によって、具体的には2次転写ベルト105の回転によって搬送されて定着装置106に進入し、加圧ローラ163とベルトユニット162との間の定着部を通過する際に熱と圧力との作用により担持したトナー像を定着され、転写紙上にフルカラー画像が定着される。
【0077】
この定着の際、トナー像を構成しているトナー粒子中に含有されているワックスがトナー像表面に染み出し、トナー像表面が離型性を有する撥水性の膜でコーティングされ、トナー像が定着ベルト164に付着することを防止あるいは抑制する。定着装置106を通過した定着済みの転写紙は、排紙ローラ107を経て排紙トレイ117上にスタックされる。
【0078】
このようにして排紙トレイ117上にスタックされた、画像形成装置200によって画像形成が行われた転写紙は、画像形成装置200の出力物となる。この出力物は、主にトナー像が形成されている領域において表面に撥水性を有している。この出力物に親水性を要する加工を良好に行うためには、加工に先立ってこの出力物表面を被加工面としてその撥水性の部分を親水化する改質を行う必要がある。
【0079】
なお定着装置106が、定着ベルト164にシリコンオイル等の撥水性を有する離型剤を塗布するオイル塗布タイプである場合にも、定着ベルト164に塗布された離型剤が転写紙に転移することから出力物の表面は撥水性を有することとなり、離型性を含む同表面を被改質面として親水化する改質を行う必要がある。
【0080】
そこで、上述したスタンドアロン型の改質装置100を用いて出力物の表面の改質を行うには、出力物をトナー像の表面を含むその表面を被加工面として有する被加工物Sとし、図4に示すように排紙トレイ117上にスタックされた出力物を被加工物Sとして給送部30にセットし、操作パネルを操作して給送部30から改質部10への被加工物Sの給送を開始することとなる。
【0081】
図5に示すように改質装置は、スタンドアロン型でなく画像形成装置200において画像形成済みの出力物を被加工物としこの被加工物の後処理を行う、画像形成装置200に着脱可能な後処理装置195に備えられているものであってもよい。この後処理装置195に備えられた改質装置は、上述の改質装置100と比べて先端揃えローラ32を除く給送部30を省略されている一方で通信部192との間で通信を行う通信部92を備えており、操作パネルも省略可能である。画像形成装置200は、上述の構成に比して排紙トレイ117を省略されている。
【0082】
後処理装置195は、画像形成装置200に装着されると通信部92が通信部192との間で通信可能となる。後処理装置195は、画像形成装置200において画像形成装置が開始されると、その旨が通信部192から通信部92に入力され、改質部10及び排気部20が動作を開始し、また排紙ローラ107によって画像形成装置200から排出された出力物が被加工物として先端揃えローラ32と搬送ベルト12との間に進入して改質部10において改質が行われる。
【0083】
このとき、画像形成装置200における画像形成速度が通信部192から通信部92に入力され、搬送ベルト12の回転速度が画像形成速度と合致するようにモータ16の回転速度が調整される。これにより後処理装置195において被加工物のジャムが生じることなく、かつ速やかに被加工物の改質が行われる。その他の動作はすでに述べた通りである。
【0084】
図6に示すように、改質装置100は画像形成装置200自体に備えられていてもよい。この場合、同図に示しているように定着装置106に改質部10を組み込み、定着ベルト164を搬送ベルト12と共用し、また排気部120を排気部20と共用し、シート給送装置161を給送部30と共用し、排紙トレイ117を積載部40と共用する。このように画像形成装置200が改質装置100を備え、画像形成済みの出力物を改質装置100における被加工物としその被加工面の改質を改質装置100で行うようにすれば部品の共用を行うことで部品点数が削減され、低コスト化及び小型化において利点がある。
【0085】
これら各種の改質装置100は、被加工物を改質することで改質された被加工面に、その改質によって可能となった加工を施す加工手段を有していてもよい。改質装置100は、撥水性を有する被加工面を親水性に改質する機能を有するため、この加工手段としては、撥水性の面には塗工性が低く親水性の面には塗工性が高いニスを塗工するニスコータが挙げられる。改質装置100がこの加工手段としてのニスコータを有する例として、図7に、図1または図6に示した改質装置100が加工手段としての加工装置であるニスコータ60を有する構成例を示す。
【0086】
ニスコータ60は、液状のニスを貯容した貯容部61、貯容部61に一部が浸漬された第1のローラ62、第1のローラ62に当接し第1のローラ62からニスを塗布される第2のローラ63、第2のローラ63に当接し第2のローラ63からニスを塗布されると共に、第2のローラ63から塗布されたニスを搬送ベルト12によって搬送されている被加工物に塗布する第3のローラ64、被加工物に塗布されたニスを乾かすための乾燥手段としてのファン65、紫外線硬化型のUVニスであれば紫外線照射光源等を有している。第3のローラ64は搬送ベルト12あるいはこれによって搬送されている被加工物に連れ回りし、第2のローラ63は第3のローラに連れ回りし、第1のローラ62は第2のローラ63に連れ回りする。なお、ニスの塗布方法はローラによる塗工とは限られず、インクジェット方式等のバリアブルにパターンニング可能な塗工手段を用いてもよい。
【0087】
このような構成の改質装置100によれば、改質と共に改質によって可能となった加工を施す一連の処理が連続して行われる。また、ファン65でニスを乾かすことで、積載トレイ41上に積載された被加工物にニスの裏移りが生じることが防止ないし抑制されると共に、ニスによる被加工面のつやが早期に現れる。
【0088】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0089】
本発明を適用した改質装置を有する画像形成装置あるいは本発明を適用した改質装置の被加工物となる出力物を形成する画像形成装置は、図3に示して説明したようないわゆるタンデム方式の画像形成装置ではなく、1つの感光体ドラム上に順次各色のトナー像を形成して各色トナー像を順次重ね合わせてカラー画像を得るいわゆる1ドラム方式の画像形成装置であってもよい。また、カラー画像形成装置でなく、モノクロ画像形成装置にも本発明を適用可能である。いずれのタイプの画像形成装置でも、中間転写体を用いず、各色のトナー像を転写紙等に直接転写してもよい。ただし、ワックス含有トナーを用いる画像形成装置においては、カラー画像を得る等のためにトナー像を重ね合わせた方が撥水性は高くなるため、改質を行うことによる効用は高い。
【0090】
本発明を適用した改質装置を有する後処理装置は、改質され出力される被加工物の揃え機能を有していてもよい。ステープル機能は、上述のような加工手段を有し加工手段による加工を経た被加工物をステープルするように備えられていることが好ましい。
【0091】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0092】
11 搬送手段
26 絶縁部材
28,52 カウンタ電極
51 放電電極ローラ
100 改質装置
195 後処理装置
200 画像形成装置
S 被加工物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被加工物を所定の方向に搬送する搬送手段と、前記搬送手段により前記所定の方向に搬送されている前記被加工物の被加工面と接触配置され前記被加工面に向けてプラズマを生成する放電電極ローラと、前記搬送手段を介して前記放電電極ローラと対向配置され前記放電電極ローラとの間で前記プラズマを発生させるカウンタ電極とを有し、前記プラズマにより前記被加工面の改質を行う改質装置であって、
前記放電電極ローラはその太さが均一であると共にその長さが前記被加工物の搬送方向と直交する長さよりも長く、前記カウンタ電極の長さによって前記被加工物に対するプラズマ放電長さを制御することを特徴とする改質装置。
【請求項2】
請求項1記載の改質装置において、
前記カウンタ電極はその両端に絶縁部材を有することを特徴とする改質装置。
【請求項3】
請求項1記載の改質装置において、
前記カウンタ電極はその両端が徐々に前記搬送手段より離間すべく傾斜していることを特徴とする改質装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の改質装置において、
前記プラズマによって改質された前記被加工面に、改質によって可能となった加工を施す加工手段を有することを特徴とする改質装置。
【請求項5】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の改質装置を有し、画像形成装置に着脱可能であり、前記画像形成装置において画像形成済みの前記被加工物の後処理を行う後処理装置であって、前記改質装置において前記画像形成済みの前記被加工物の被加工面を改質することを特徴とする後処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の改質装置を有し、画像形成済みの前記被加工物の被加工面を前記改質装置により改質することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−99360(P2012−99360A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246590(P2010−246590)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】