説明

改質顔料の調製方法

少なくとも1つの有機基を結合した改質顔料の調製方法について記載する。この方法は、有色顔料と、芳香族アミンと、塩基と、水性媒体とを、混合物を作るために、任意の順序で組み合わせ、その後、その混合物と、ジアゾ化剤とを、その改質顔料を作るために、組み合わせるステップを含む。芳香族アミンは、少なくとも2つのカルボン酸基を含み、それらのカルボン酸基は、好ましくはビシナルである。得られる改質有色顔料は、良好な全体的特性を有する印刷画像を作り出すために、インクジェット用インク組成物に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの有機基を結合した顔料を含む改質顔料の調製方法、ならびに得られる改質顔料に関する。インクジェット用インク組成物もまた開示される。
【背景技術】
【0002】
顔料の表面は、種々の異なる官能基を含み、存在する基の種類は特定の種類の顔料に依存する。これらの顔料の表面に材料をグラフトするために、いくつかの方法が開発された。例えば、ポリマーを、フェノールおよびカルボキシル基などの表面基を含むカーボンブラックに結合することができることが示された。しかしながら、全ての顔料が同じ特定の官能基を有するわけではないため、顔料表面の固有官能性による方法は、一般的には適用できない。
【0003】
また、種々の異なる結合官能基を有する顔料を提供することができる、改質顔料製品の調製方法も開発された。例えば、米国特許第5,851,280号は、有機基の顔料への結合(例えば、ジアゾニウム反応を介した結合(この際、有機基はジアゾニウム塩の一部となる)を含む)方法を開示している。得られる表面改質顔料は、種々の用途、例えば、インク、インクジェット用インク、コーティング、トナー、プラスチック、ゴムなどに使用することができる。また、米国特許第6,328,894号、同第6,398,858号、同第6,214,100号、および同第6,221,142号は、少なくとも2つのカルボン酸塩基を含む基を含む有機基を結合した改質顔料を記載している。
【0004】
改質顔料を調製する他の方法もまた、記載されている。例えば、PCT公開番号WO 01/51566は、第1の化学基と第2の化学基を反応させて、第3の化学基を結合した顔料を形成することにより改質顔料を作製する方法を開示している。これらの顔料を含有するインク組成物も記載されている。
【0005】
これらの方法によれば結合基を有する改質顔料が提供されるが、基、特に、少なくとも2つのカルボン酸基またはそれらの塩を含む有機基を顔料に結合するための改善された方法が依然として必要である。これらの追加的な方法によれば、改質顔料を形成するだけでなく、インクジェット用インクなどの用途において全体的に良好な性能を有する改質顔料を提供する有利な代替法を提供することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、改質顔料の調製方法に関する。一実施形態では、該方法は、a)顔料と、芳香族アミンと、塩基と、水性媒体とを、混合物を作るために、任意の順序で組み合わせるステップと、b)該混合物と、ジアゾ化剤とを、該改質顔料を作るために、組み合わせるステップとを含む。第2の実施形態では、該方法は、a)顔料と、ジアゾ化剤と、塩基と、水性媒体とを、混合物を作るために、任意の順序で組み合わせるステップと、b)該混合物と、芳香族アミンとを、該改質顔料を作るために、組み合わせるステップとを含む。両方の実施形態で、芳香族アミンは、少なくとも2つのカルボン酸基、好ましくは、少なくとも1つのビシナルジカルボン酸基を含む。
【0007】
本発明はさらに、本明細書に記載の方法によって作り出される改質顔料、ならびに液体ビヒクルと、該改質顔料とを含むインクジェット用インク組成物に関する。本発明のインクジェット用インク組成物を用いて基材(被印刷物)上に作成される画像は、改善された全体的性能特性を有することが分かった。
【0008】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明は両方とも、典型的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載されている本発明についてさらに説明することを目的としているということを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、少なくとも1つの有機基を結合した改質顔料の調製方法、ならびにインクジェット用インク組成物に関する。
【0010】
一実施形態では、本発明の方法は、顔料と、芳香族アミンと、塩基と、水性媒体とを、混合物を作るために、組み合わせるステップを含む。これらの成分は、任意の順序で組み合わせることができる。その後、改質顔料を作るために、得られた混合物と、ジアゾ化剤とを組み合わせる。各成分については、以下でさらに詳細に記載する。
【0011】
本発明の方法において用いられる顔料は、当業者により通常用いられているいずれの種類の顔料であってもよく、例えば、黒色顔料および他の有色顔料であってよい。好ましくは、顔料が黒色顔料である場合には、この顔料はカーボンブラックである。異なる顔料の混合物も用いることができる。これらの顔料は、種々の異なる種類の分散剤と組み合わせて用いて、安定した分散液およびインクを形成することもできる。
【0012】
黒色顔料の代表的な例としては、様々なカーボンブラック(Pigment Black 7)、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、およびランプブラック、が挙げられ、例えば、Cabot Corporationから入手可能なRegal(登録商標)、Black Pearls(登録商標)、Elftex(登録商標)、Monarch(登録商標)、Mogul(登録商標)、およびVulcan(登録商標)という商標で販売されているカーボンブラック(例えば、Black Pearls(登録商標)2000、Black Pearls(登録商標)1400、Black Pearls(登録商標)1300、Black Pearls(登録商標)1100、Black Pearls(登録商標)1000、Black Pearls(登録商標)900、Black Pearls(登録商標)880、Black Pearls(登録商標)800、Black Pearls(登録商標)700、Black Pearls(登録商標)L、Elftex(登録商標)8、Monarch(登録商標)1400、Monarch(登録商標)1300、Monarch(登録商標)1100、Monarch(登録商標)1000、Monarch(登録商標)900、Monarch(登録商標)880、Monarch(登録商標)800、Monarch(登録商標)700、Mogul(登録商標)L、Regal(登録商標)330、Regal(登録商標)400、Vulcan(登録商標)P)が含まれる。
【0013】
また、顔料は、広範な通常の有色顔料から選択してもよい。有色顔料は、青色顔料、黒色顔料、褐色顔料、シアン顔料、緑色顔料、白色顔料、バイオレット顔料、マゼンタ顔料、赤色顔料、橙色顔料、黄色顔料だけでなく、それらの混合物でもあり得る。好適な種類の有色顔料としては、例えば、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、ヘテロサイクリックイエロー、キナクリドン、および(チオ)インジゴイドが挙げられる。このような顔料は、BASF Corporation、Engelhard Corporation、およびSun Chemical Corporationなどの数多くの供給源から粉末またはプレスケーキの形態で市販されている。他の好適な有色顔料の例は、カラーインデックス(the Colour Index)、第3版(The Society of Dyers and Colourists, 1982)に記載されている。
【0014】
顔料は、その顔料に所望の特性に応じて、窒素吸着により測定される広範なBET表面積を有し得る。当業者に知られているように、より高い表面積はより小さな粒径に対応する。所望の目的に、より高い表面積が容易に利用できない場合には、必要に応じて、顔料をボールミル粉砕またはジェットミル粉砕などの通常のサイズリダクションまたは粉砕技術に供して、顔料をより小さな粒径にし得ることも当業者にはよく認識されている。
【0015】
本発明の方法において用いられる芳香族アミンは、アミン基で置換されているいずれの芳香族または複素芳香族化合物であってもよく、例えば、アニリン誘導体(すなわち、置換ベンゼンアミン)が含まれる。芳香族アミンは、少なくとも2つのカルボン酸基をさらに含む。好ましくは、カルボン酸基はビシナルであり、それらの基が互いに隣接していることを意味する。よって、本発明の方法において用いられる芳香族アミンは、一般構造(HOOC)−C−C−(COOH)を有する2つの隣接するカルボン酸基(すなわち、隣接または近接炭素原子に結合されたカルボン酸基)(ビシナルジカルボン酸または1,2−ジカルボン酸と呼ばれることもある)を含む少なくとも1つの基で置換されている。そのような2つのカルボン酸基を含む基は、芳香族基またはアルキル基であり得るため、ビシナルジカルボン酸基は、ビシナルアルキルジカルボン酸基またはビシナルアリールジカルボン酸基であり得る。好ましくは、そのようなビシナルジカルボン酸基を含む基は芳香族基である。よって、芳香族アミンは、好ましくは、−C63−(COOH)2基を含み、この際、カルボン酸基は互いにオルト位にある。より好ましくは、芳香族アミンはそのような2つのカルボン酸基を含む基である。よって、例えば、芳香族アミンは、より好ましくは、互いにオルト位にある少なくとも2つのカルボン酸基で置換されているベンゼンアミン、例えば、4−アミノベンゼン−1,2−ジカルボン酸(4−アミノフタル酸とも呼ばれる)である。他の置換パターンも考えられるが、これは、当業者の知るところであろう。加えて、芳香族アミンには、カルボン酸基以外に他の置換基も、これらの置換基が改質顔料の形成を妨げない限り存在してよい。
【0016】
芳香族アミンは、3つ以上のカルボン酸基を含んでよい。よって、芳香族アミンは、3つ以上のカルボン酸基を有する基を含んでよく、この際、カルボン酸基の少なくとも2つは互いに隣接しており、ビシナルジカルボン酸基を形成している。例えば、芳香族アミンは、1,2,3−もしくは1,2,4−トリカルボン酸基、例えば、−C62−(COOH)3基を含んでよく、または1,2,3,4−もしくは1,2,4,5−テトラカルボン酸基、例えば、−C6H−(COOH)4基を含んでよい。他の置換パターンも考えられるが、これは、当業者の知るところであろう。より好ましくは、芳香族アミンは、5−アミノベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸または5−アミノベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸である。
【0017】
本発明の方法において用いられる塩基は、水性媒体中でOH−イオンを発生させ、それにより、該媒体のpHを上昇させるいずれの水溶性アルカリ性試薬であってもよい。例としては、炭酸塩(炭酸ナトリウムなど)、重炭酸塩(重炭酸ナトリウムなど)、およびアルコキシド(ナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシドなど)が挙げられる。好ましくは、塩基は水酸化物試薬であり、この水酸化物試薬はOH−イオンを含む任意の試薬、例えば、水酸化物対イオンを有する塩である。例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、および水酸化アンモニウムが挙げられる。他の水酸化物塩、ならびに水酸化物試薬の混合物も用いることができる。
【0018】
本発明の方法において用いられる水性媒体は、水含有量が50%より多いいずれの媒体であってもよい。よって、水性媒体は、例えば、水、または水と水混和性溶媒(アルコールなど)との混合物であり得る。好ましくは、水性ビヒクルは水である。
【0019】
本発明の方法のこの実施形態では、混合物を作るために、顔料と、芳香族アミンと、塩基と、水性媒体とが組み合わせられる。この混合物は、用いられる水性媒体の量に応じて、湿潤ペースト形態であり得るし、または分散液であり得る。好ましくは、この混合物は分散液であり、より好ましくは、得られる改質顔料もまた分散液形態である。さらに、例えば、分散剤または界面活性剤のような追加成分は、ここに開示される改質顔料を作るのに特に必要ではないが、本発明の方法のいずれのステップにおいても追加することができる。そのような追加成分は、混合物または改質顔料が分散液形態である場合には安定性の改善などのさらなる利益を提供する場合がある。
【0020】
本発明の方法において用いられる塩基の量は、そのレベルが改質顔料の調製に悪影響を及ぼさない限り、いずれの量であってもよい。好ましくは、用いられる塩基の量は、用いられる芳香族アミンの種類に関連して、さらに詳しくは、存在するカルボン酸基のモル量に基づいて選択される。例えば、芳香族アミンのカルボン酸基に対する塩基のモル比は、1に対して1未満であることが好ましい。好ましくは、芳香族アミンのカルボン酸基に対する塩基のモル比は、1に対して0.33〜0.67、より好ましくは、1に対して0.37〜0.6、最も好ましくは、1に対して0.4〜0.5である。例えば、芳香族アミンがトリカルボン酸基を含む場合には、カルボン酸基に対する塩基のモル比は、好ましくは、1に対して1〜2、より好ましくは、1に対して1.1〜1.8、最も好ましくは、1に対して1.2〜1.5である。
【0021】
顔料と、芳香族アミンと、塩基と、水性媒体とは、改質顔料を調製するのに用いられる混合物を作るために、任意の順序で組み合わせることができる。例えば、芳香族アミンと、塩基とは、任意に水性媒体中で組み合わせることができる。すでに詳細に説明したように、塩基の量は、存在するカルボン酸基の総量より少ないこと(すなわち、カルボン酸基に対する塩基のモル比は1に対し1未満)が好ましいため、芳香族アミンと、塩基とを組み合わせると、一般に、芳香族アミンの混合物が生じる。この混合物は、少なくとも1つのカルボン酸基と、少なくとも1つのカルボン酸塩基とを有する芳香族アミンを含む。要するに、少なくとも2つのカルボン酸基を含む芳香族アミンと、塩基とを組み合わせると、1つのカルボン酸基が脱プロトン化されていない芳香族アミンを含む芳香族アミン生成物の混合物が生じる。その後、得られた芳香族アミン混合物と、顔料とを、任意に、さらにまた水性媒体中で組み合わせて、所望の改質顔料を調製するのに用いられる混合物を作ることができる。
【0022】
もう1つの例として、顔料混合物を作るために、顔料と、芳香族アミンとを、任意に水性媒体と組み合わせることもできる。その後、塩基と、この混合物とを、任意に、さらにまた水性媒体中で組み合わせて、所望の改質顔料を調製するのに用いられる混合物を作ることができる。
【0023】
本発明の方法のこの第1の実施形態では、該方法は、ジアゾ化剤と、上記のように、顔料と、芳香族アミンと、塩基と、水性媒体とを、任意の順序で組み合わせることによって得られた混合物とを、改質顔料を作るために、組み合わせるステップをさらに含む。本発明の方法において用いられるジアゾ化剤は、アミン基と反応して、ジアゾニウム塩を形成するいずれの試薬であってもよい。例としては、亜硝酸および亜硝酸塩が挙げられる。好ましくは、ジアゾ化剤は、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、または亜硝酸カルシウムのような亜硝酸塩対イオンを有する塩である。
【0024】
本発明の方法の第2の実施形態では、該方法は、顔料と、ジアゾ化剤と、塩基と、水性媒体とを、混合物を作るために、組み合わせるステップを含む。これらの成分は任意の順序で組み合わせることができる。改質顔料を作るために、その後、得られた混合物と、芳香族アミンとを組み合わせる。これらの成分は、すでに詳細に記載されるもののうちのいずれであってもよい。
【0025】
本発明の方法の両方の実施形態では、上記した成分は、当技術分野で公知のいずれの方法を用いても組み合わせることができる。例えば、これらの成分は、高剪断条件下で組み合わせることができる。本発明の目的において、「高剪断」とは、混合ステップを通じて顔料粒径分布をもたらし、かつ/または維持するのに十分なエネルギーを意味し、高剪断によって、顔料の新しい表面が追加成分に絶えず曝され、結果として、結合の分布およびレベルだけでなく、全生成物収率も向上する。混合は、任意の好適な容器内で高剪断条件下で行ってよく、連続的な粒径減少を提供することができる装置を利用してよい。例としては、限定されるものではないが、破砕、衝撃、または同様の衝突作用を提供することができる装置、例えば、水平媒体ミル、垂直媒体ミル(磨砕機など)、ボールミル、ハンマーミル、ピンディスクミル、流体エネルギーミル、ジェットミル、流体ジェットミル、衝突ジェットミル、ロートステーター、ペレタイザー、ホモジナイザー、ソニケーター、キャビテーターなどが挙げられる。
【0026】
加えて、上記の容器には、加熱マントル、熱電対などのような加熱するのに適した手段が備わっていることが好ましい。混合は、広範囲にわたる温度下で、所望の改質顔料を作るのに適した任意の時間の間に行うことができる。例えば、上記の成分は、約−10〜約50℃、例えば、約0〜約25℃、または約0〜約10℃の温度で組み合わせることができる。上記の成分をこれらの温度範囲内で組み合わせることにより、効率的に、かつ、副生成物が最小限で、水性有色顔料分散液が生成することが分かった。また、混合は、好ましくは、高固体条件下−すなわち、顔料がその混合物中に、好ましくは、10重量%を上回るレベルで存在する下で行ってもよい。
【0027】
驚くべきことに、改質顔料は、顔料と、2つ以上のカルボン酸基を含む芳香族アミンと、水性媒体と、ジアゾ化剤とを、上記の順序で組み合わせ、塩基をさらに追加することにより調製することができるということが分かった。有機基を結合した改質顔料を作るための方法は知られており、それらの方法では、ジアゾ化剤と、芳香族アミンとを組み合わせて、改質顔料を作るために顔料と組み合わせることができるジアゾニウム塩を形成するが、これらの方法では、一般に、塩基を追加しない。酸は、ジアゾニウム塩の形成および結合プロセスを支援するのに必要である。これらの方法において塩基を用いる場合には、一般に、改質顔料が生成された後に塩基が加えられた。しかしながら、今回、処理の初期に、ジアゾ化剤を加える前に、塩基を加えることができ、カルボン酸塩基を結合した改質顔料の調製に悪影響を及ぼさないということが分かった。さらに、上述の塩基の好ましいレベルを用いた場合に、生成される改質顔料は、塩基を追加しない同様の方法により調製されるものと比べて、特にインクジェット用インク組成物において、改善された特性を有するということも分かった。
【0028】
本発明はさらに、少なくとも1つの有機基を結合した顔料を含む改質顔料であって、該有機基が少なくとも1つのカルボン酸塩基を含む改質顔料に関する。顔料は、上記で詳細に記載されるもののうちのいずれであってもよい。好ましくは、有機基は、少なくとも2つのカルボン酸塩基を含み、より好ましくは、少なくとも3つのカルボン酸塩基を含む。改質顔料は、当技術分野で公知のいずれの方法によっても作り出され得るが、本発明の方法により調製されることが好ましい。
【0029】
結合有機基の量は、改質顔料に所望の用途や結合基の種類に応じて変更し得る。好ましくは、有機基の総量は、窒素吸着により測定した場合(BET法)、顔料の表面積1m2当たり基約0.01〜約10.0マイクロモルである。例えば、求電子基の量は、約0.5〜約4.0マイクロモル/m2であり得、約1〜約3マイクロモル/m2または約2〜約2.5マイクロモル/m2などである。カルボン酸塩基を含まないさらなる結合有機基も存在してよい。
【0030】
改質顔料は、固体形態(粉末もしくはペーストなど)か、または分散液形態であり得る。例えば、改質顔料は、分散液として生成され、その分散液から固体として単離され得る。あるいは、固体形態の改質顔料が直接生成される場合もある。好ましくは、改質顔料は分散液形態である。改質顔料分散液は、濾過、遠心分離、またはそれらの2つの方法を組み合わせるなどにより洗浄して、未反応原料、副生成物塩、および他の反応不純物を除去することにより精製し得る。また、その生成物は、例えば、蒸発によって単離し得るし、または当業者に公知の技術を用いて濾過し、乾燥させることによって回収し得る。
【0031】
改質顔料分散液は、濾過、遠心分離、またはそれらの2つの方法を組み合わせるなどにより洗浄して、未反応原料、副生成物塩、および他の反応不純物を除去することにより精製し得る。また、改質顔料は、例えば、蒸発によって単離し得るし、または当業者に公知の技術を用いて濾過し、乾燥させることによって回収し得る。また、改質顔料は、液体媒体に分散させ得、得られた分散液は、製造プロセスの結果としてその分散液中に同時に存在する可能性のある不純物および他の望ましくない遊離種を除去するために、精製または分類し得る。例えば、その分散液を、限外濾過/ダイアフィルトレーション、逆浸透、またはイオン交換などの公知の技術を用いて精製して、望ましくないいずれもの遊離種(未反応処理剤など)を除去することができる。
【0032】
本発明の改質顔料は、種々の用途に有用であり得る。特に、有色顔料分散液は、驚くべきことに、実効的なインクジェット用インク組成物であることが分かった。よって、本発明はさらに、液体ビヒクルと、本発明の改質顔料とを含むインクジェット用インク組成物に関する。ビヒクルは、水性もしくは非水性の液体ビヒクルであり得るが、好ましくは、水を含有するビヒクルである。従って、ビヒクルは、好ましくは、水性ビヒクルであり、この水性ビヒクルは水含有量が50%より多い、例えば、水、または水と水混和性溶媒(アルコールなど)との混合物であり得るビヒクルである。好ましくは、水性ビヒクルは水であり、インクジェット用インク組成物は水性インクジェット用インク組成物である。
【0033】
改質顔料は、インクジェット用インク組成物中に、インクジェット用インクの性能に悪影響を及ぼすことなく、所望の画質(例えば、光学濃度)を提供するのに有効な量で存在し得る。例えば、一般に、改質顔料は、インクの重量に対して約0.1%〜約30%の量で存在し得る。結合有機基の量または存在するカルボン酸塩基の数に応じて、より多いまたはより少ない改質顔料を用いてよい。また、本明細書に記載の改質顔料と非改質顔料との混合物、および他の改質顔料、またはそれらの両方を用いることも本発明の範囲内である。
【0034】
本発明のインクジェット用インク組成物は、最小限の追加成分(添加剤および/または補助溶媒)とプロセスステップで形成することができる。しかしながら、インク組成物の安定性を維持しながら数多くの所望の特性を与えるために、好適な添加剤を利用してよい。例えば、界面活性剤および/または分散剤、保湿剤、乾燥促進剤、浸透剤、殺生物剤、結合剤、およびpH調整剤、ならびに当技術分野で公知の他の添加剤を加えてよい。特定の添加剤の量は種々の因子によって異なるが、一般に0%〜40%に及ぶ。
【0035】
分散剤(界面活性剤および/または分散剤)は、組成物のコロイド安定性をさらに高めるために、またはインクと、印刷基材(被印刷物;印刷用紙など)との相互作用、もしくはインクプリントヘッドとの相互作用を変化させるために加えてよい。本発明のインク組成物とともに、様々なアニオン性分散剤、カチオン性分散剤、および非イオン性分散剤を用いることができ、これらのものは固体形態で、または水溶液として存在し得る。
【0036】
アニオン性分散剤または界面活性剤の代表的な例としては、限定されるものではないが、高級脂肪酸塩、高級アルキルジカルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩(Na、K、Li、Caなど)、ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフテン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、−オレフィンスルホン酸塩、N−アクリルメチルタウリン、アルキルエーテルスルホン酸塩、第二級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、モノグリシルサルフェート、アルキルエーテルリン酸塩、およびアルキルリン酸塩が挙げられる。例えば、スチレンスルホン酸塩、非置換および置換ナフタレンスルホン酸塩(例えば、アルキルまたはアルコキシ置換ナフタレン誘導体)、アルデヒド誘導体(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒドなどを含む非置換アルキルアルデヒド誘導体)、マレイン酸塩、ならびにそれらの混合物のポリマーおよびコポリマーをアニオン性分散助剤として用いてよい。塩としては、例えば、Na+、Li+、K+、Cs+、Rb+、ならびに置換および非置換アンモニウムカチオンが挙げられる。具体的な例としては、限定されるものではないが、Versa(登録商標)4、Versa(登録商標)7、およびVersa(登録商標)77(National Starch and Chemical Co.);Lomar(登録商標)D(Diamond Shamrock Chemicals Co.);Daxad(登録商標)19およびDaxad(登録商標)K(W. R. Grace Co.);ならびにTamol(登録商標)SN(Rohm & Haas)などの市販製品が挙げられる。陽イオン性界面活性剤の代表的な例としては、脂肪族アミン、第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などが挙げられる。
【0037】
本発明のインクジェット用インクに用いることができる非イオン性分散剤または界面活性剤の代表的な例としては、フッ素誘導体、シリコン誘導体、アクリル酸コポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン第二級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物のエチレンオキシド誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル、ポリエチレンオキシド縮合型エチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、カンショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、およびポリオキシエチレンアルキルアミンオキシドが挙げられる。例えば、エトキシル化モノアルキルフェノールまたはエトキシル化ジアルキルフェノールを用いてよく、例えば、Igepal(登録商標)CAおよびCOシリーズの材料(Rhone-Poulenc Co.) Briji(登録商標)シリーズの材料(ICI Americas, Inc.)、ならびにTriton(登録商標)シリーズの材料(Union Carbide Company)がある。これらの非イオン性界面活性剤または分散剤は、単独で用いることができるし、または上述のアニオン性分散剤やカチオン性分散剤と組み合わせて用いることもできる。
【0038】
また、分散剤は、天然ポリマー分散剤または合成ポリマー分散剤でもあってよい。天然ポリマー分散剤の具体的な例としては、タンパク質(ニカワ、ゼラチン、カゼイン、およびアルブミンなど);天然ゴム(アラビアガムおよびトラガカントガムなど);グルコシド(サポニンなど);アルギン酸、およびアルギン酸誘導体(アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸トリエタノールアミン、およびアルギン酸アンモニウムなど);ならびにセルロース誘導体(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびエチルヒドロキシセルロースなど)が挙げられる。合成ポリマー分散剤を含むポリマー分散剤の具体的な例としては、ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;アクリル樹脂またはメタクリル樹脂(「(メタ)アクリル」と書かれることが多い)(ポリ(メタ)アクリル酸、アクリル酸−(メタ)アクリロニトリルコポリマー、(メタ)アクリル酸カリウム−(メタ)アクリロニトリルコポリマー、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、および(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステルコポリマーなど);スチレン−アクリル樹脂またはメタクリル樹脂(スチレン−(メタ)アクリル酸コポリマー、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、スチレン−−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸コポリマー、スチレン−−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステルコポリマーなど);スチレン−マレイン酸コポリマー;スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ビニルナフタレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマー;ビニルナフタレン−マレイン酸コポリマー;ならびに酢酸ビニルコポリマー(酢酸ビニル−エチレンコポリマー、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレンコポリマー、酢酸ビニル−マレイン酸エステルコポリマー、酢酸ビニル−クロトン酸コポリマー、および酢酸ビニル−アクリル酸コポリマーなど);ならびにそれらの塩が挙げられる。
【0039】
また、特に、ノズル詰まりを防ぐ目的で、さらに、紙浸透性(浸透剤)、向上した乾燥性(乾燥促進剤)、およびコックリング防止特性を与えるために、本発明のインクジェット用インク組成物に保湿剤および水溶性有機化合物を加えてもよい。用いてよい保湿剤および他の水溶性化合物の具体的な例としては、低分子量グリコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、およびジプロピレングリコールなど);約2〜約40個の炭素原子を含有するジオール(例えば、1,3−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−l,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)グリコールなど)、ならびにアルキレンオキシド(エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含む)とのそれらの反応生成物;約3〜約40個の炭素原子を含有するトリオール誘導体(グリセリン、トリメチルプロパン、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどを含む)、ならびにアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびそれらの混合物を含む)とのそれらの反応生成物;ネオペンチルグリコール、(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)など、ならびにアルキレンオキシド(広範囲の分子量を有する材料を作るのに望ましい任意のモル比においてエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含む)とのそれらの反応生成物;チオジグリコール;ペンタエリトリトール、および低級アルコール(エタノール、プロパノール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、およびtert−ブチルアルコール、2−プロピン−1−オール(プロパルギルアルコール)、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−ブチン−2−オール、ならびにシクロプロパノールなど);アミド(ジメチルホルムアルデヒドおよびジメチルアセトアミドなど);ケトンまたはケトアルコール(アセトンおよびジアセトンアルコールなど);エーテル(テトラヒドロフランおよびジオキサンなど);セロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノエチルエーテルなど)、トリエチレングリコールモノメチル(またはモノエチル)エーテル;カルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルなど);ラクタム(2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、および−カプロラクタムなど);尿素および尿素誘導体;内塩(例えば、ベタインなど);上述の材料のチオ(硫黄)誘導体(1−ブタンチオール;t−ブタンチオール 1−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール;2−メチル−2−プロパンチオール;チオシクロプロパノール、チオエチレングリコール、チオジエチレングリコール、トリチオ−またはジチオ−ジエチレングリコールなどを含む);ヒドロキシアミド誘導体(アセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、プロピルカルボキシプロパノールアミンなどを含む);上述の材料とアルキレンオキシドとの反応生成物;ならびにそれらの混合物が挙げられる。さらなる例としては、糖類(マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、およびマルトースなど);多価アルコール(トリメチロールプロパンおよびトリメチロールエタンなど);N−メチル−2−ピロリデン;l,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;約2〜約40個の炭素原子を含有するスルホキシド誘導体(ジアルキルスルフィドを含む)(対称および非対称のスルホキシド)(例えば、ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、アルキルフェニルスルホキシドなど);ならびに約2〜約40個の炭素原子を含有するスルホン誘導体(対称および非対称のスルホン)(例えば、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホン、環状スルホン)、ジアルキルスルホン、アルキルフェニルスルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルスルホラン、ジメチルスルホランなど)が挙げられる。このような材料は、単独で用いてよく、または組み合わせて用いてもよい。
【0040】
また、殺生物剤および/または殺真菌薬も本発明のインクジェット用インク組成物に加えてよい。細菌は、多くの場合、インクノズルより大きく、目詰まりだけでなく、他の印刷問題も引き起こす可能性があるため、殺生物剤は、細菌増殖を防ぐのに重要である。有用な殺生物剤の例としては、限定されるものではないが、安息香酸塩またはソルビン酸 塩、およびイソチアゾリノンが挙げられる。
【0041】
様々なポリマー結合剤も、組成物の粘度を調整するためだけでなく、他の所望の特性を与えるためにも、本発明のインクジェット用インク組成物とともに用いることができる。好適なポリマー結合剤としては、限定されるものではないが、水溶性ポリマーおよびコポリマー、例えば、アラビアガム、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピレンセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリジノン、ポリビニルエーテル、デンプン、多糖、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドで誘導体化されているまたは誘導体化されていないポリエチレンイミン(Discole(登録商標)シリーズ(DKS International);Jeffamine(登録商標)シリーズ(Texaco)を含む);などが挙げられる。水溶性ポリマー化合物のさらなる例としては、上記の様々な分散剤または界面活性剤(例えば、スチレン−アクリル酸コポリマー、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルターポリマー、スチレン−メタクリル酸コポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマー、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルターポリマー、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルターポリマー、スチレン−マレイン酸ハーフエステルコポリマー、ビニルナフタレン−アクリル酸コポリマー、アルギン酸、ポリアクリル酸、またはそれらの塩、およびそれらの誘導体を含む)が挙げられる。加えて、結合剤は、分散液もしくはラテックス形態で加えてよく、または存在してよい。例えば、ポリマー結合剤は、アクリル酸コポリマーもしくはメタクリル酸コポリマーのラテックスであってよく、または水分散性ポリウレタンであってよい。
【0042】
また、本発明のインクジェット用インク組成物のpHを制御または調節するための様々な添加剤も用いてよい。好適なpH調節剤の例としては、様々なアミン(ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンなど)、ならびに様々な水酸化物試薬が挙げられる。水酸化物試薬は、上記されるもののうちのいずれであってもよい(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、および水酸化テトラメチルアンモニウムを含む)。他の水酸化物塩も、水酸化物試薬の混合物も用いることができる。さらに、水性媒体中でOH−イオンを発生させる他のアルカリ性試薬も用いてよい。例としては、炭酸塩(炭酸ナトリウムなど)、重炭酸塩(重炭酸ナトリウムなど)、およびアルコキシド(ナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシドなど)が挙げられる。また、緩衝剤も加えてよい。
【0043】
加えて、カラーバランスを変更し、光学濃度を調整するために、本発明のインクジェット用インク組成物に色素をさらに加えてもよい。このような色素としては、食用色素、FD&C色素、酸性色素、直接色素、反応色素、フタロシアニンスルホン酸誘導体(銅フタロシアニン誘導体を含む)、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられる。
【0044】
インクジェット用インク組成物は、本発明の改質顔料についての上記の方法などの方法を用いて精製および/または分類することができる。任意の対イオン交換ステップも用いることができる。このようにして、不要な不純物または望ましくない大きな粒子を除去して、良好な全体的特性を有するインクを作り出すことができる。
【0045】
本発明はさらに、様々なインクジェット用インク組成物を含み、かつ本発明のインクジェット用インク組成物を含むインクジェット用インクセットに関する。このセットのインクジェット用インク組成物は、当技術分野で公知の何らかの方法によって異なってよい。例えば、インクジェット用インクセットは、異なる種類および/または色の顔料を含むインクジェット用インク組成物(例えば、シアン顔料を含むインクジェット用インク組成物、マゼンタ顔料を含むインクジェット用インク組成物、および/または黒色顔料を含むインクジェット用インク組成物を含む)を含んでよい。また、他の種類のインクジェット用インク組成物(例えば、インクジェット用インク組成物を基材上に定着させるように設計された薬剤を含む組成物を含む)も用いてよい。他の組合せについては、当技術分野では公知であろう。
【0046】
次の実施例により本発明をさらに説明するが、これらの実施例は典型的なものを記載したにすぎない。
【実施例】
【0047】
実施例1〜21
次の基本手順は、本発明の方法の一実施形態であり、この基本手順を本発明の改質顔料を調製するために用いた。
【0048】
Black Pearls(登録商標)700 カーボンブラック(Cabot Corporationから入手可能)、5−アミノベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸(ABTA)、および水をProcessAll 4HVミキサー(4l)内で組み合わせた後、密閉し、混合を開始した。10%NaOH溶液を調製し、反応装置に1〜2分かけて加えた。用いた水の総量は850mLであった。得られた混合物をProcessAll内で設定温度で1時間混合した。この後、その混合物におよそ15分かけて20%亜硝酸ナトリウム水溶液(用いた芳香族アミンの量に対して1当量)を加え、さらに2時間混合を続けた。改質顔料が形成されたら、その改質顔料を反応装置から高粘度のペースト(およそ35%固体)として取り出した。Process Allに1容量の希釈水(およそ850mL)と2容量の洗浄液を加えて、残渣をすべて洗い流し、これを上記ペーストと組み合わせて、改質顔料の分散液を作った。次いで、この分散液のpHを2M NaOH溶液で8.5に調整し、そのサンプルを水で10%固体までさらに希釈した。次いで、これをCarr社製Powerfugeを用いて300mL/分および15KG’sで遠心分離した。この遠心分離は連続式であり、サンプルを遠心分離して清浄なバケツに入れ、その後、およそ5分間再循環させた。この遠心分離した分散液を、Spectrum Diafiltration Membranesを用いて、補給として脱イオン水を用いて透析濾過した。5容量の補給水を用い、透過物の最終導電率は250μS未満であった。ダイアフィルトレーションプロセスの終わりに、サンプルを濃縮し、最終固体がおよそ15%となるようにした。次いで、Proxel 殺生物剤(0.2重量%)を加え、そのサンプルを、0.5μmフィルターを備えたPall社製セットアップを用いて濾過して、カルボン酸塩基を結合した改質顔料を含む分散液を作った。
【0049】
これらの実施例に用いた各成分の量および条件を以下の第1表に示す。塩基の量は、ABTAのカルボン酸基に対する塩基のモル比として示している。
【0050】
【表1】

【0051】
得られた改質顔料分散液の特性を以下の第2表に示す。実施例21の改質顔料は、安定した分散液形態で生成されなかったため、第2表には含めていない。これらの実施例各々では、粒径をMicrotrac(登録商標)粒径アナライザーを用いて測定し、報告した値は体積平均粒径(mV)である。Na+濃度は、イオン選択電極(20ppm〜6000ppmナトリウムイオンを含有する溶液について較正されたThermo Orion Sure-flow Ross ナトリウムプローブ)を用いて測定した。また、Na+濃度は、同様の結果を用いた燃焼分析によっても決定することができた。滴定レベルは、顔料1g当たりの滴定基のミリモルを単位とし、Titrino 736自動滴定装置を用いた滴定によりpH範囲4〜10で測定した。粘度は、Brookfield社製IV II+プログラマブル粘度計を用いて測定した。
【0052】
【表2】

【0053】
第2表のデータが示すとおり、本発明の方法は、精製後のNa+レベル、そして滴定結果により明らかなように、カルボン酸塩基を結合した改質顔料を提供する。加えて、これらの改質顔料により、粒径が小さく、粘度が低い分散液が作り出され、それらの改質顔料がインクジェット用インク組成物に有用であるということを示している。
【0054】
実施例22〜24
Black Pearls(登録商標)700 カーボンブラックの代わりに、Pigment Blue 15:4(実施例22の場合)、Pigment Red 122(実施例23の場合)、およびPigment Yellow 74(実施例24の場合)(プレスケーキ、Sun Chemicalから入手可能)を用いたこと以外、上記の手順と同様の手順を用いて、カルボン酸塩基を結合した改質顔料を調製した。処理温度は50〜55℃であった。ABTAのカルボン酸基に対する塩基のモル比は1.2であり、ABTAの量は顔料1g当たり1.0ミリモルであった。
【0055】
得られた改質顔料分散液の特性を以下の第3表に示す。
【0056】
【表3】

【0057】
第3表のデータが示すとおり、本発明の方法は、精製後のNa+レベル、そして滴定結果により明らかなように、カルボン酸塩基を結合した改質有色顔料を提供する。加えて、これらの改質顔料により、粒径が小さく、粘度が低い分散液が作り出され、それらの改質顔料がインクジェット用インク組成物に有用であるということを示している。
【0058】
実施例25
上記実施例11〜15のものと同様のモル比1.50のNaOHと顔料1g当たり0.40ミリモルのABTAレベルを用いて、上記実施例1〜21に記載されている手順に従って調製された本発明の改質顔料を含むインクジェット用インク組成物を調製した。用いた処方を以下の第5表に示す。
【0059】
【表4】

【0060】
インクジェット用インク組成物の調製前に、改質顔料分散液のpHを8.5に調整した。結合基の重量を考慮して、顔料の目標値を4.0%とした。処方の残りの部分は水とした。
【0061】
印刷性能試験を、HP Photosmart P1000プリンターを用いて、テスト画像を3種類の普通紙:Great White Ink Jet(GWIJ)、Hammermill Copy Plus(HCP)、およびHewlett Packard Bright White(HPBW)に印刷することにより行った。テスト画像の光学濃度(ODまたは視覚濃度)を、MacBeth社製デンシトメーターを用いて測定し、紙セットで平均した。得られた平均ODは、1.23であることが分かった。
【0062】
これは、本発明の改質顔料を用いて、優れた特性を有する画像を作り出すジェット可能なインクジェット用インク組成物を調製することができるということを示す。当業者ならば、改善されたまたは場合に合わせた性能特性(ブリード、耐水性、耐スミア性などを含む)を有する画像を作り出すために、処方に変更を加えることができることが予想されるであろう。
【0063】
実施例26〜28
実施例22〜24の改質顔料を用いたこと以外、実施例25と同様に、インクジェット用インク組成物を調製した。実施例26では、実施例22の改質シアン顔料を用い、実施例27では、実施例23の改質マゼンタ顔料を用い、そして、実施例28では、実施例24の改質黄色顔料を用いた。印刷性能試験を、HP Photosmart P1000プリンターを用いて、テスト画像を3種類の普通紙:Hammermill Copy Plus(HCP)、Hewlett Packard Bright White(HPBW)、およびXerox 4024(X4024)に印刷することにより行った。テスト画像のL、a、およびbをImage X−Pertを用いて測定した。結果を以下の第6表に示す。
【0064】
【表5】

【0065】
上記の表は、本発明の改質有色顔料を用いて、優れた特性を有する画像を作り出すジェット可能なインクジェット用インク組成物を調製することができるということを示す。当業者ならば、改善されたまたは場合に合わせた性能特性(ブリード、耐水性、耐スミア性などを含む)を有する画像を作り出すために、処方に変更を加えることができることが予想されるであろう。
【0066】
比較例1
塩基を用いなかったこと以外、上記の手順と同様の手順を用いて、カルボン酸塩基を結合した改質顔料を調製した。この実施例では、ABTAの量を顔料1g当たり0.4ミリモルとした。得られた改質顔料分散液の特性を以下の第4表に示す。
【0067】
【表6】

【0068】
上記のデータが示すとおり、塩基を加えずに調製した改質顔料分散液は、本発明の方法を用いて作り出されたものと同様の全体的特性を有する。
【0069】
顔料が比較例1の改質顔料であること以外、実施例25〜28に示された同じ処方を用いて、インクジェット用インク組成物を調製した。平均光学濃度は、上記のように測定し、1.17であることが分かった。
【0070】
以上のように、本発明の方法を用いて調製しなかった改質顔料を含む比較例1のインクジェット用インク組成物は、本発明のインクジェット用インク組成物である実施例25のインクジェット用インク組成物を用いて作り出された画像の平均光学濃度値よりも低い平均光学濃度値を示した。加えて、本発明のインクジェット用インク組成物を用いて作り出された画像の斑点(グレーバリアンス)やエッジの鋭さが、比較インクジェット用インク組成物を用いて作成された画像より優れていることが明白に観察された。上述したように、実施例25および比較例1の改質顔料は同様の方法を用いて調製されたものであるが、塩基を処理に加えた後に結合を行うことで、同じインクジェット用インク処方で塩基なしで調製されたものとは異なる改質顔料が生まれ、本発明のこの改質顔料を含むインクジェット用インク組成物が改善された特性を有することが分かった。加えて、当業者ならば、改善されたまたは場合に合わせた性能特性(ブリード、耐水性、耐スミア性などを含む)を有する画像を作り出すために、処方をさらに最適化することができることが予想されるであろう。
【0071】
本発明の好ましい実施形態の前述の説明は、例示および説明を目的として示してきたが、網羅的なものとするためのものではなく、また、開示された正確な形に本発明を限定するためのものではない。修正および変更は、上述の教示に照らして可能であり、また、本発明の実施からも得られ得る。それらの実施形態は、当業者が様々な実施形態において、そして意図される特定の用途に適合するように様々な改変を加えて本発明を利用できるように、本発明の原理およびその実際の適用を説明するために選択され、記載されたものである。本発明の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲、およびそれらの等価物によって規定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質顔料の調製方法であって、
a)顔料と、芳香族アミンと、塩基と、水性媒体とを、混合物を作るために、任意の順序で組み合わせるステップと、
b)該混合物と、ジアゾ化剤とを、該改質顔料を作るために、組み合わせるステップと
を含み、ここで、該芳香族アミンが少なくとも2つのカルボン酸基を含むことを特徴とする、改質顔料の調製方法。
【請求項2】
前記カルボン酸基の少なくとも2つがビシナルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記芳香族アミンが少なくとも3つのカルボン酸基を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基と前記カルボン酸基とが、前記混合物中に0.33〜0.67対1のモル比で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記塩基と前記カルボン酸基とが、前記混合物中に0.37〜0.60対1のモル比で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基と前記カルボン酸基とが、前記混合物中に0.4〜0.6対1のモル比で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記改質顔料の水性分散液がステップb)において作られることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記顔料が、青色顔料、黒色顔料、褐色顔料、シアン顔料、緑色顔料、白色顔料、バイオレット顔料、マゼンタ顔料、赤色顔料、橙色顔料、黄色顔料、またはそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記顔料がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記芳香族アミンが少なくとも1つの−C63−(COOH)2基または−C62−(COOH)3基を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記芳香族アミンが、5−アミノベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸、5−アミノベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、または4−アミノベンゼン−1,2−ジカルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記塩基が水酸化物試薬であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記水酸化物試薬が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記水性媒体が水であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ジアゾ化剤が亜硝酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ステップa)において、前記芳香族アミンと前記塩基とが、芳香族アミンの混合物を作るために、任意に水性媒体中で組み合わせられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
芳香族アミンの前記混合物が、少なくとも1つのカルボン酸基と、少なくとも1つのカルボン酸塩基とを含む少なくとも1つの芳香族アミンを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップa)において、前記顔料と前記芳香族アミンとが、顔料混合物を作るために、任意に水性媒体中で組み合わせられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記改質顔料が少なくとも1つの有機基を結合した前記顔料を含み、該有機基が少なくとも1つのカルボン酸塩基を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記有機基が少なくとも2つのカルボン酸塩基を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記有機基が少なくとも3つのカルボン酸塩基を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
改質顔料の調製方法であって、
a)顔料と、ジアゾ化剤と、塩基と、水性媒体とを、混合物を作るために、任意の順序で組み合わせるステップと、
b)該混合物と、芳香族アミンとを、該改質顔料を作るために、組み合わせるステップと
を含み、ここで、該芳香族アミンが少なくとも2つのカルボン酸基を含むことを特徴とする、改質顔料の調製方法。
【請求項23】
少なくとも1つの有機基を結合した顔料を含む改質顔料であって、該改質顔料が、
a)顔料と、芳香族アミンと、塩基と、水性媒体とを、混合物を作るために、任意の順序で組み合わせるステップと、
b)該混合物と、ジアゾ化剤とを、該改質顔料を作るために、組み合わせるステップとを含む方法により調製され、
該芳香族アミンが少なくとも2つのカルボン酸基を含み、かつ該有機基が少なくとも1つのカルボン酸塩基を含むことを特徴とする、改質顔料。
【請求項24】
前記カルボン酸基の少なくとも2つがビシナルであることを特徴とする請求項23に記載の改質顔料。
【請求項25】
前記芳香族アミンが少なくとも3つのカルボン酸基を含むことを特徴とする請求項23に記載の改質顔料。
【請求項26】
前記有機基が少なくとも2つのカルボン酸塩基を含むことを特徴とする請求項23に記載の改質顔料。
【請求項27】
前記有機基が少なくとも3つのカルボン酸塩基を含むことを特徴とする請求項23に記載の改質顔料。
【請求項28】
少なくとも1つの有機基を結合した顔料を含む改質顔料であって、該改質顔料が、
a)顔料と、ジアゾ化剤と、塩基と、水性媒体とを、混合物を作るために、任意の順序で組み合わせるステップと、
b)該混合物と、芳香族アミンとを、該改質顔料を作るために、組み合わせるステップとを含む方法により調製され、
該芳香族アミンが少なくとも2つのカルボン酸基を含み、かつ該有機基が少なくとも1つのカルボン酸塩基を含むことを特徴とする、改質顔料。
【請求項29】
液体ビヒクルと、少なくとも1つの有機基を結合した顔料を含む改質顔料とを含むインクジェット用インク組成物であって、該改質顔料が、
a)顔料と、芳香族アミンと、塩基と、水性媒体とを、混合物を作るために、任意の順序で組み合わせるステップと、
b)該混合物と、ジアゾ化剤とを、該改質顔料を作るために、組み合わせるステップとを含む方法により調製され、
該芳香族アミンが少なくとも2つのカルボン酸基を含み、かつ該有機基が少なくとも1つのカルボン酸塩基を含むことを特徴とするインクジェット用インク組成物。
【請求項30】
前記カルボン酸基の少なくとも2つがビシナルであることを特徴とする請求項29に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項31】
前記芳香族アミンが少なくとも3つのカルボン酸基を含むことを特徴とする請求項29に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項32】
前記有機基が少なくとも2つのカルボン酸塩基を含むことを特徴とする請求項29に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項33】
前記有機基が少なくとも3つのカルボン酸塩基を含むことを特徴とする請求項29に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項34】
前記液体ビヒクルが水性ビヒクルあることを特徴とする請求項29に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項35】
前記インクジェット用インク組成物を用いて基材上に作成される画像が光学濃度1.5もしくはそれ以上であることを特徴とする請求項29に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項36】
液体ビヒクルと、少なくとも1つの有機基を結合した顔料を含む改質顔料とを含むインクジェット用インク組成物であって、該改質顔料が、
a)顔料と、ジアゾ化剤と、塩基と、水性媒体とを、混合物を作るために、任意の順序で組み合わせるステップと、
b)該混合物と、芳香族アミンとを、該改質顔料を作るために、組み合わせるステップとを含む方法により調製され、
該芳香族アミンが少なくとも2つのカルボン酸基を含み、かつ該有機基が少なくとも1つのカルボン酸塩基を含むことを特徴とするインクジェット用インク組成物。

【公表番号】特表2009−506196(P2009−506196A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529170(P2008−529170)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/033557
【国際公開番号】WO2007/027625
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】