説明

放出の少ない軟質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】少ない放出と良好な耐老化性の両方を有するポリウレタンフォーム(特に軟質ポリウレタンフォーム)の製造を可能にする方法を提供する。
【解決手段】A1)イソシアネート基反応性水素原子を含有し、400〜15,000の分子量を有する化合物;A2)任意に、イソシアネート基反応性水素原子を含有し、62〜399の分子量を有する化合物;A3)水および/または物理的発泡剤;A4)任意に、少なくとも1種の助剤および/または添加剤;A5)少なくとも1種の、炭素数10〜16のカルボン酸の錫(II)塩;およびB)ジイソシアネートまたはポリイソシアネートからポリウレタンフォームを製造する方法であって、成分A1)および任意に成分A2)と成分B)とを、成分A3)および成分A5)並びに任意に成分A4)の存在下で反応させることを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム、特に軟質ポリウレタンフォームの製造方法であって、得られるポリウレタンフォームが低い放出値と良好な耐老化性とを有する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームが揮発性有機成分(VOC)を放出し得、この放出が一般に望ましくないことは、従来技術から知られている。該放出は、例えば、VDA 278に従った方法による測定で検出される。
【0003】
DE−A 1 121 802およびUS 3 397 158は、炭素数1〜18のカルボン酸の錫(II)塩、例えば、オクタン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、酢酸錫(II)または2−エチルヘキサン酸錫(II)を用いた、ポリウレタンフォームの製造方法を開示している。
【0004】
リシノール酸錫(II)塩Sn(C1833(例えば、ドイツ国45127エッセン在Evonik Goldschmidt GmbH製Kosmos(登録商標)EF)を用いた、ポリウレタンフォームの製造方法もまた知られている。
【0005】
従来技術から知られている錫触媒は、ポリウレタンフォームの製造において、例えば、高い放出値または曇り値(例えばVDA 278に従う)並びに老化後の低下した機械的性質のような複数の欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE−A 1 121 802
【特許文献2】US 3 397 158
【特許文献3】DE−A 1 694 142
【特許文献4】DE−A 1 694 215
【特許文献5】DE−A 1 720 768
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kunststoff-Handbuch 第7巻、Polyurethane, ViewegおよびHoechtlein編、Carl Hanser Verlag Munich 1966
【非特許文献2】非特許文献1の改訂版、G. Oertel編, Carl Hanser Verlag Munich, Vienna 1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
少ない放出と良好な耐老化性(特に、良好なレベルの圧縮永久歪値)の両方を有するポリウレタンフォームを提供する、多くの要求が存在する。従って、本発明の目的は、少ない放出と良好な耐老化性(特に、良好なレベルの圧縮永久歪値、並びに熱風老化後および蒸気オートクレーブ中での老化後の良好なレベルの圧縮永久歪値)の両方を有するポリウレタンフォーム(特に軟質ポリウレタンフォーム)の製造を可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、
A1)イソシアネート基反応性水素原子を含有し、400〜15,000の分子量を有する化合物;
A2)任意に、イソシアネート基反応性水素原子を含有し、62〜399の分子量を有する化合物;
A3)水および/または物理的発泡剤;
A4)任意に、少なくとも1種の助剤および/または添加剤;
A5)少なくとも1種の、炭素数10〜16のカルボン酸の錫(II)塩;および
B)ジイソシアネートまたはポリイソシアネート
からポリウレタンフォームを製造する方法であって、成分A1)と任意に成分A2)を、成分A3)および成分A5)並びに任意に成分A4)の存在下で成分B)と反応させることを含む方法である。
【0010】
本発明の別の態様は、前記した少なくとも1種の助剤および/または添加剤が、成分A5)とは異なる触媒、界面活性添加剤、顔料、および/または防炎加工剤である、前記方法である。
【0011】
本発明の別の態様は、
成分A1)を、成分A1)、A2)、A3)およびA4)の重量部の和に基づいて75〜99.5重量部の量で使用し;
成分A2)を、成分A1)、A2)、A3)およびA4)の重量部の和に基づいて0〜10重量部の量で使用し;
成分A3)を、成分A1)、A2)、A3)およびA4)の重量部の和に基づいて0.5〜25重量部の量で使用し;
成分A4)を、成分A1)、A2)、A3)およびA4)の重量部の和に基づいて0〜10重量部の量で使用し;
成分A5)を、成分A1)、A2)、A3)およびA4)の重量部の和に基づいて0.01〜5重量部の量で使用し、
50〜250の特性値で実施される、前記方法である。
【0012】
本発明の別の態様は、成分B)が、2,4−トリレン−ジイソシアネート、2,6−トリレン−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、およびポリフェニル−ポリメチレン−ポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、前記方法である。
【0013】
本発明の別の態様は、95〜125の特性値で実施される、前記方法である。
【0014】
本発明の別の態様は、10〜200kg/mの見掛密度を有する軟質ポリウレタンフォームを製造する、前記方法である。
【0015】
本発明の別の態様は、成分A5)が炭素数12〜16のカルボン酸の錫(II)塩を含む、前記方法である。
【0016】
本発明の別の態様は、成分A5)が式(I):
【化1】

[式中、xは9〜15の整数であり、C2x+1は分枝炭素鎖である。]
で示されるカルボン酸錫(II)塩を含む、前記方法である。
【0017】
本発明の別の態様は、xが11〜15の整数である、前記方法である。
【0018】
本発明の別の態様は、成分A5)が2−ブチルオクタン酸錫(II)塩を含む、前記方法である。
【0019】
本発明の別の態様は、成分A5)が2−ヘキシルデカン酸錫(II)塩を含む、前記方法である。
【0020】
本発明の別の態様は、成分A5)の他に別のカルボン酸錫(II)塩を使用しない、前記方法である。
【0021】
本発明の更に別の態様は、前記方法によって得られたポリウレタンフォームである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の目的は、
A1)イソシアネート反応性水素原子を含有し、400〜15,000の分子量を有する化合物;
A2)任意に、イソシアネート反応性水素原子を含有し、62〜399の分子量を有する化合物;
A3)水および/または物理的発泡剤;
A4)任意に、
a)成分A5)とは異なる触媒、
b)界面活性添加剤、
c)顔料または防炎加工剤
のような、助剤および添加剤;
A5)少なくとも1種の、炭素数10〜16のカルボン酸の錫(II)塩;および
B)ジイソシアネートまたはポリイソシアネート
からポリウレタンフォームを製造する方法、好ましくは軟質ポリウレタンフォームを製造する方法によって達成される。
【0023】
本発明は特に、
成分A):
A1)成分A1)〜A4)の重量部の和に基づいて75〜99.5重量部、好ましくは89〜97.8重量部の、イソシアネート反応性水素原子を含有し、400〜15,000の分子量を有する化合物、
A2)成分A1)〜A4)の重量部の和に基づいて0〜10重量部、好ましくは0〜2重量部の、イソシアネート反応性水素原子を含有し、62〜399の分子量を有する化合物、
A3)成分A1)〜A4)の重量部の和に基づいて0.5〜25重量部、好ましくは2〜5重量部の、水および/または物理的発泡剤、
A4)成分A1)〜A4)の重量部の和に基づいて0〜10重量部、好ましくは0.2〜4重量部の、
a)成分A4)とは異なる触媒、
b)界面活性添加剤、
c)顔料または防炎加工剤
のような、助剤および添加剤;
A5)成分A1)〜A4)の重量部の和に基づいて0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2重量部、特に好ましくは0.1〜1重量部の、少なくとも1種の、炭素数10〜16のカルボン酸の錫(II)塩と、
成分B):
B)ジイソシアネートまたはポリイソシアネート
とからポリウレタンフォームを製造する方法、好ましくは軟質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、50〜250、好ましくは70〜150、特に好ましくは95〜125の特性値で実施され、組成物中の成分A1)+A2)+A3)+A4)の重量部の和が100になるように本発明における成分A1)〜A4)について記載されている重量部の全てが標準化されている方法を提供する。
【0024】
イソシアネート系のフォームの製造方法はそれ自体知られており、例えば、DE−A 1 694 142、DE−A 1 694 215、DE−A 1 720 768、Kunststoff-Handbuch 第7巻、Polyurethane, ViewegおよびHoechtlein編、Carl Hanser Verlag Munich 1966、およびこの本の改訂版、G. Oertel編, Carl Hanser Verlag Munich, Vienna 1993に記載されている。
【0025】
これに関して、フォームは主に、ウレタン基および/またはウレトジオン基および/またはウレア基および/またはカルボジイミド基を含有するフォームである。本発明に従った使用は、好ましくは、ポリウレタンフォームおよびポリイソシアヌレートフォームの製造で行われる。
【0026】
以下により詳細に記載する成分を、イソシアネート系のフォームの製造に使用できる。
【0027】
成分A1)
成分A1)に従った出発成分は、少なくとも2個のイソシアネート反応性水素原子を含有し、概して400〜15,000の分子量を有する化合物である。これは、アミノ基、チオ基またはカルボキシル基を含有する化合物に加えて、好ましくはヒドロキシル基を含有する化合物、特に2〜8個のヒドロキシル基を含有する化合物、とりわけ、1000〜6000、好ましくは2000〜6000の分子量を有するもの、例えば、少なくとも2個、概して2〜8個、好ましくは2〜6個のヒドロキシル基を含有するポリエーテルおよびポリエステル並びにポリカーボネートおよびポリエステルアミドを意味すると理解され、その例は、均質ポリウレタンおよび気泡ポリウレタンの製造のためにそれ自体知られているもの、例えばEP−A 0 007 502の第8〜15頁に記載されているものである。少なくとも2個のヒドロキシル基を含有するポリエーテルが、本発明において好ましい。
【0028】
成分A2)
少なくとも2個のイソシアネート反応性水素原子を含有し、32〜399の分子量を有する化合物を、成分A2)として任意に使用する。これは、ヒドロキシル基および/またはアミノ基および/またはチオール基および/またはカルボキシル基を含有する化合物、好ましくはヒドロキシル基および/またはアミノ基を含有する化合物を意味すると理解され、連鎖延長剤または架橋剤として作用する。該化合物は、概して2〜8個、好ましくは2〜4個のイソシアネート反応性水素原子を含有する。例えば、成分A2)として、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ソルビトールおよび/またはグリセロールを使用できる。成分A2)に従った化合物の更なる例は、EP−A 0 007 502の第16〜17頁に記載されている。
【0029】
成分A3)
成分A3)として、水および/または物理的発泡剤を使用する。発泡剤として、例えば物理的発泡剤として、二酸化炭素および/または高揮発性有機物質を使用する。
【0030】
成分A4)
任意に、成分A4)として、以下のような助剤および添加剤を使用する:
a)成分A5)とは異なる触媒(活性剤)、
b)界面活性添加剤(界面活性剤)、例えば乳化剤および気泡安定剤、特に放出の少ないもの、例えばTegostab(登録商標)LFシリーズの製品、
c)添加剤、例えば、反応抑制剤(例えば、塩酸または有機酸ハライドのような酸性物質)、気泡調節剤(例えば、パラフィンまたは脂肪アルコールまたはジメチルポリシロキサン)、顔料、色素、防炎加工剤(例えばリン酸トリクレシル)、老化および屋外暴露の影響に対する安定剤、可塑剤、制カビ作用を有する物質および制菌作用を有する物質、充填剤(例えば、硫酸バリウム、珪藻土、ブラックまたは調製チョーク(prepared chalk))、および離型剤。
【0031】
任意に併用されてよいこれらの助剤および添加剤は、例えば、EP−A 0 000 389の第18〜21頁に記載されている。本発明に従って任意に併用されてよい助剤および添加剤の更なる例、それらの助剤および添加剤の使用方法および作用の詳細は、Kunststoff-Handbuch, 第7巻、G. Oertel編、Carl-Hanser-Verlag, Munich, 第3版、1993の例えば第104〜127頁に記載されている。
【0032】
好ましく使用される触媒は、脂肪族第三級アミン(例えば、トリメチルアミン、テトラメチルブタンジアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)−N−イソプロパノールアミン)、脂環式第三級アミン(例えば1,4−ジアザ(2,2,2)ビシクロオクタン)、脂肪族アミノエーテル(例えば、ビスジメチルアミノエチルエーテル、2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノールおよびN,N,N−トリメチル−N−ヒドロキシエチル−ビスアミノエチルエーテル)、脂環式アミノエーテル(例えばN−エチルモルホリン)、脂肪族アミジン、脂環式アミジン、尿素および尿素誘導体(例えばアミノアルキル尿素、例えばEP−A 0 176 013を参照、特に(3−ジメチルアミノプロピルアミン)−ウレア)である。
【0033】
成分A5)
成分A5)として、カルボン酸錫(II)塩、特に、10〜16個、好ましくは12〜16個の炭素原子を含有するカルボン酸の錫(II)塩を使用する。好適には、本発明に従った方法において、成分A5)の他に別のカルボン酸錫(II)塩を使用しない。
【0034】
本発明の好ましい態様では、成分A5)として、式(I):
【化2】

[式中、xは9〜15、好ましくは11〜15の整数を示す。]
で示される少なくとも1種の錫(II)塩を使用する。
【0035】
特に好ましくは、式(I)において、カルボキシレートのアルキル鎖C2x+1は分枝炭素鎖である。即ち、C2x+1はイソアルキル基である。
【0036】
2−ブチルオクタン酸の錫(II)塩、即ち2−ブチルオクタン酸錫(II)塩、2−ヘキシルデカン酸の錫(II)塩、即ち2−ヘキシルデカン酸錫(II)塩が特に好ましい。
【0037】
本発明に従った錫(II)塩は、成分A)およびB)からのポリウレタンフォームの製造において触媒として作用する。本発明に従った錫(II)塩は、従来技術から知られている錫(II)塩より技術的に優れている。本発明に従った錫(II)塩は、良好な加工性と共に、低い放出値(例えばVDA 278法によって測定されるVOC値)と良好な耐老化性(例えば圧縮永久歪)とを有するポリウレタンフォームをもたらす。
【0038】
成分B)
成分B)として、例えばW. SiefkenによってJustus Liebigs Annalen der Chemie, 562, 第75〜136頁に記載されているような、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族および複素環式のポリイソシアネートを使用し、その例は、式(II):
【化3】

[式中、nは2〜4、好ましくは2〜3であり、Qは、2〜18個、好ましくは6〜10個の炭素原子を含有する脂肪族炭化水素基、4〜15個、好ましくは6〜13個の炭素原子を含有する脂環式炭化水素基、または8〜15個、好ましくは8〜13個の炭素原子を含有する芳香脂肪族炭化水素基を示す。]
で示されるものである。
【0039】
例えば、これらは、EP−A 0 007 502の第7〜8頁に記載されているようなポリイソシアネートである。特に好ましい化合物は、概して、工業的に容易に入手可能なポリイソシアネート、例えば、2,4−トルイレン−ジイソシアネートおよび2,6−トルイレン−ジイソシアネート並びにこれら異性体(「TDI」)の所望の混合物;例えばアニリン−ホルムアルデヒド縮合および続くホスゲン化によって調製されるようなポリフェニル−ポリメチレン−ポリイソシアネート(「粗MDI」)、並びにカルボジイミド基、ウレタン基、アロファネート基、イソシアヌレート基、ウレア基またはビウレット基を含有するポリイソシアネート(「変性ポリイソシアネート」)、特に、2,4−トルイレン−ジイソシアネートおよび/または2,6−トルイレン−ジイソシアネート或いは4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネートおよび/または2,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートを変性したものである。好ましくは、2,4−トルイレン−ジイソシアネートおよび2,6−トルイレン−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネートおよび2,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、並びにポリフェニル−ポリメチレン−ポリイソシアネート(「多核MDI」)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、成分B)として使用する。
【0040】
ポリウレタンフォームの製造方法の手順
ポリウレタンフォームは、スラブ材フォーム製造の様々な方法によって、または型内で製造され得る。本発明に従った方法を実施するため、それ自体知られている一段階法、プレポリマー法、またはセミプレポリマー法によって反応成分を反応させる。US 2 764 565に記載されているような機械設備を好ましくは使用する。本発明においても可能である配合設備の詳細は、ViewegおよびHoechtlen(編):Kunststoff-Handbuch, 第7巻、Carl-Hanser-Verlag, Munich 1966, 第121〜205頁に記載されている。
【0041】
本発明によれば、フォームの製造において、閉じた型内で発泡を実施することもできる。これに関して、反応混合物を型に導入する。金属、例えばアルミニウム、またはプラスチック、例えばエポキシ樹脂が、型の材料として可能である。発泡性反応混合物は、型内で発泡し、成形物品を生じる。これに関して、発泡成形は、成形品がその表面に気泡構造を有するように実施され得る。しかしながら、成形品が密なスキンと気泡質コアを有するように発泡成形を実施することもできる。本発明によれば、これに関連して、生じるフォームが型をちょうど満たす量で発泡性反応混合物を型に導入する手順も可能である。しかしながら、型の内部をフォームで満たすのに必要な量より多い発泡性反応混合物を型に導入する手順もまた可能である。後者の場合、製造はいわゆる「過装入」で実施され、そのような手順は、例えばUS 3 178 490およびUS 3 182 104から知られている。
【0042】
それ自体知られている「外部離型剤」、例えばシリコーン油を、発泡成形にしばしば併用する。しかしながら、例えばDE−OS 21 21 670およびDE−OS 23 07 589から明らかであるような、いわゆる「内部離型剤」を、場合により外部離型剤と混合して、使用することもできる。
【0043】
ポリウレタンフォームは、好ましくは、それ自体知られている、スラブ材発泡法またはダブルコンベヤーベルト法によって製造される(例えば、"Kunststoffhandbuch", 第7巻、Carl Hanser Verlag, Munich Vienna, 第3版、1993, 第148頁参照)。
【0044】
本発明に従った方法は、好ましくは10〜200kg/m、特に好ましくは15〜80kg/mの(嵩密度とも称される)見掛密度を有する軟質ポリウレタンフォームの製造に使用される。
【0045】
前記した引用文献の全てを、有用な目的の全てのために、その全体を引用してここに組み込む。
【0046】
本発明を具体化するある特定の構成を示し記載したが、基本的な本発明の概念の意図および範囲から逸脱することなく一部の様々な変更および再設定が可能であり、その変更および再設定が本明細書で示し記載した特定のものに限定されないことは、当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0047】
成分A1):
A1−1):グリセロールを量比89/11のプロピレンオキシド/エチレンオキシド混合物でDMC触媒アルコキシル化することにより調製された、48mgKOH/gのOH価を有する三官能性ポリエーテルポリオール。
A1−2):グリセロールを量比99/1のプロピレンオキシド/エチレンオキシド混合物でDMC触媒アルコキシル化することにより調製された、56mgKOH/gのOH価を有する三官能性ポリエーテルポリオール。
A1−3):Additive VP.PU84WB78(136mgKOH/gのOH価を有するポリエーテルポリオール組成物、ドイツ国レーフエルクーゼン在Bayer MaterialScience AG)。
成分A3):水。
成分A4):
A4−1):ジプロピレングリコール(30重量%)中ビス[(2−ジメチルアミノ)エチル]エーテル(70重量%)(Niax(登録商標)Catalyst A-1、ドイツ国レーフエルクーゼン在Momentive Performance Chemicals)。
A4−2):ジプロピレングリコール(67重量%)中1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(33重量%)(Dabco(登録商標)33 LV、ドイツ国ハンブルク在Air Products)。
A4−3):ポリエーテル−シロキサン系の気泡安定剤Tegostab(登録商標)BF 2370(ドイツ国在Evonik Goldschmidt GmbH)。
A4−4):ポリエーテル−シロキサン系の気泡安定剤Tegostab(登録商標)B 8232(ドイツ国在Evonik Goldschmidt GmbH)。
成分A5):
A5−1):2−ブチルオクタン酸錫(II)塩。
A5−2):2−ヘキシルデカン酸錫(II)塩。
A5−3):2−エチルヘキサン酸錫(II)塩(Addocat(登録商標)SO、ドイツ国マンハイム在Rheinchemie)。
A5−4):ネオデカン酸錫(II)塩。
A5−5):オレイン酸錫(II)塩。
A5−6):リシノール酸錫(II)塩(Kosmos(登録商標)EF、ドイツ国在Evonik Goldschmidt GmbH)。
【0048】
錫(II)塩であるA5−1)、A5−2)、A5−4)およびA5−5)の調製のための一般的方法:
以下のカルボン酸を各々の場合に使用する:
A5−1)の調製のために:2−ブチルオクタン酸、
A5−2)の調製のために:2−ヘキシルデカン酸、
A5−4)の調製のために:ネオデカン酸、
A5−5)の調製のために:オレイン酸。
【0049】
ナトリウムメチラートのメタノール中30%濃度溶液36.0gを、特定のカルボン酸0.2molの無水メタノール50ml溶液に撹拌しながら滴加する。1時間後、100mlの無水トルエンを添加し、無水SnCl18.96g(0.1mol)のメタノール25ml溶液を滴加する。1時間後、反応混合物から減圧下(50mbar)で溶媒を除去し、次いで、100mlの無水トルエンを添加し、混合物を5分間撹拌する。続いて、得られた混合物を濾過する。得られた濾液から減圧下(50mbar)で溶媒を留去し、残留物として特定のSn(II)を得る。
【0050】
一般的方法に従って、以下のSn(II)塩を調製し、以下に示した収率および特性で得た。
A5−1):40.5gの2−ブチルオクタン酸から出発し、46.5gの2−ブチルオクタン酸錫(II)塩を液体として得た。分析:23.0%のSnを検出;計算値22.8%。
A5−2):51.4gの2−ヘキシルデカン酸から出発し、54.9gの2−ヘキシルデカン酸錫(II)塩を液体として得た。分析:18.5%のSnを検出;計算値18.8%。
A5−4):34.4gのネオデカン酸から出発し、36gのネオデカン酸錫(II)塩を液体として得た。分析:25.0%のSnを検出;計算値25.7%。
A5−5):54.4gのオレイン酸から出発し、60gのオレイン酸錫(II)塩を液体として得た。分析:18.0%のSnを検出;計算値17.9%。
【0051】
成分B):
B−1):48重量%のNCO含量を有する、重量比80:20の2,4−TDI/2,6−TDI混合物。
B−2):48重量%のNCO含量を有する、重量比65:35の2,4−TDI/2,6−TDI混合物。
【0052】
ポリウレタンフォームの製造
ポリウレタンフォームを製造するための常套の配合条件下、出発成分をスラブ材発泡によって一段階法で処理する。表1は、配合のための特性値を示す(成分Aに対して使用される成分Bの量を、これから得る)。特性値(イソシアネート指数)は、イソシアネート基(NCO)の化学量論量、即ち計算された量に対する、実際に使用されたイソシアネート量のパーセント比を示す。
【数1】

【0053】
DIN EN ISO 845に従って、嵩密度を測定した。
DIN EN ISO 3386−1−98に従って、40%変形、第4サイクルで、圧縮強さ(CLD40%)を測定した。
DIN EN ISO 1798に従って、引張強さおよび破断点伸びを測定した。
DIN EN ISO 1856−2000に従って、90%変形で、圧縮永久歪(CS90%)を測定した。
DIN EN 1856−2000(70℃、22時間)に従って、50%変形で、圧縮永久歪(CS50%)を測定した。
DIN EN 1856−2000(120℃、5時間で3サイクル、3日間)に従って、蒸気オートクレーブ中での老化後の機械的性質を測定した。
DIN EN 1856−2000(140℃、7日間)に従って、熱風老化後の機械的性質を測定した。
蒸気オートクレーブ中での老化後または熱風老化後の圧縮強さに関する相対的変化を、式(IV)に従って算出する。
【数2】

VDA 278法によって、放出値(VOCおよびFOG)を測定した。
【0054】
【表1】

【0055】
本発明に従った触媒A5−1(2−ブチルオクタン酸錫(II)塩)およびA5−2(2−ヘキシルデカン酸錫(II)塩)は、室温で液体であるといった利点を有し、ポリウレタンフォームの製造において触媒として良好な触媒活性を示す。得られる軟質ポリウレタンフォーム(本発明に従った実施例1および2)は、良好な機械的性質と、VDA 278に従った放出試験での極めて低いVOC値とを有する。
【0056】
従来技術から知られている錫(II)塩を触媒として使用すると、2−エチルヘキサン酸錫(II)塩(成分A5−3)の場合は、好ましくない高いVOC値が得られ(比較例3)、ネオデカン酸錫(II)塩(成分A5−4)の場合は、比較的高い圧縮永久歪値が得られる。
【0057】
オレイン酸錫(II)塩(成分A5−5)を表1の配合における成分A5として使用すると、反応混合物が製造中に硬化しないので、使用できないポリウレタンフォームが生じる。
【0058】
【表2】

【0059】
表2の結果は、本発明に従った触媒A5−1(2−ブチルオクタン酸錫(II)塩)およびA5−2(2−ヘキシルデカン酸錫(II)塩)を用いて製造された軟質ポリウレタンフォーム(本発明に従った実施例5および6)の老化後の機械的性質も示す。意外にも、本発明に従った酸錫(II)塩であるA5−1およびA5−2を用いて製造されたポリウレタンフォームが、2−エチルヘキサン酸錫(II)塩を用いて製造されたポリウレタンフォームの機械的特性値の水準に達することが見出された。しかしながら、表1に関する先の記載から分かるように、本発明に従った錫(II)塩を用いて製造されたポリウレタンフォームは、有意に低い放出値を有するといった付加的な利点を有する。
【0060】
一方、錫(II)塩であるA5−4およびA5−6を触媒として使用する場合、蒸気オートクレーブ中での老化後または熱風老化後に、比較的好ましくないレベルの値が得られる(比較例8および9)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A1)イソシアネート基反応性水素原子を含有し、400〜15,000の分子量を有する化合物;
A2)任意に、イソシアネート基反応性水素原子を含有し、62〜399の分子量を有する化合物;
A3)水および/または物理的発泡剤;
A4)任意に、少なくとも1種の助剤および/または添加剤;
A5)少なくとも1種の、炭素数10〜16のカルボン酸の錫(II)塩;および
B)ジイソシアネートまたはポリイソシアネート
からポリウレタンフォームを製造する方法であって、成分A1)と任意に成分A2)を、成分A3)および成分A5)並びに任意に成分A4)の存在下で成分B)と反応させることを含む方法。
【請求項2】
前記した少なくとも1種の助剤および/または添加剤が、成分A5)とは異なる触媒、界面活性添加剤、顔料、および/または防炎加工剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分A1)を、成分A1)、A2)、A3)およびA4)の重量部の和に基づいて75〜99.5重量部の量で使用し;
成分A2)を、成分A1)、A2)、A3)およびA4)の重量部の和に基づいて0〜10重量部の量で使用し;
成分A3)を、成分A1)、A2)、A3)およびA4)の重量部の和に基づいて0.5〜25重量部の量で使用し;
成分A4)を、成分A1)、A2)、A3)およびA4)の重量部の和に基づいて0〜10重量部の量で使用し;
成分A5)を、成分A1)、A2)、A3)およびA4)の重量部の和に基づいて0.01〜5重量部の量で使用し、
50〜250の特性値で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
成分B)が、2,4−トリレン−ジイソシアネート、2,6−トリレン−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、およびポリフェニル−ポリメチレン−ポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
95〜125の特性値で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
10〜200kg/mの見掛密度を有する軟質ポリウレタンフォームを製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
成分A5)が炭素数12〜16のカルボン酸の錫(II)塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
成分A5)が、式(I):
【化1】

[式中、xは9〜15の整数であり、C2x+1は分枝炭素鎖である。]
で示されるカルボン酸錫(II)塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
xが11〜15の整数である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
成分A5)が2−ブチルオクタン酸錫(II)塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
成分A5)が2−ヘキシルデカン酸錫(II)塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
成分A5)の他に別のカルボン酸錫(II)塩を使用しない、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法によって得られたポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2010−275551(P2010−275551A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−120086(P2010−120086)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】