説明

放射体および当該放射体を備えた装置

本発明の放射体1は、熱を電磁波に変換して表面から放射する放射体であって、表面の少なくとも一部の領域には複数のマイクロキャビティが形成されており、マイクロキャビティ2の表面が、炭素と結合したタングステンを含有する層から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定波長域の放射効率を向上させるマイクロキャビティ構造を有する放射体に関している。
【背景技術】
【0002】
照明光源として広く普及している白熱電球は、熱放射体(thermal radiator)として機能するフィラメントを有している、熱放射体は、熱放射(thermal radiation)によって電磁波を放出する放射源であり、熱放射は、物体の原子または分子に熱を加えることによって生じる放射(電磁波の輻射)である。熱放射エネルギーは、物体の温度で決まり、連続したスペクトル分布を持つ。以下、簡単のため、熱放射体を「放射体」と呼ぶことにする。
【0003】
白熱電球は、演色性に優れ、簡単な使用器具によって点灯されるが、フィラメントの発熱による放射を利用するため、可視波長域の放射が全体の10%程度と少ない(動作温度が例えば2600Kの場合)。より具体的には、放射の全エネルギー密度に対する赤外放射のエネルギー密度の比率が70%程度を占め、支配的である。また、白熱電球内の封入ガスによる熱伝導や対流による熱損失が20%程度もある。このため、白熱電球の可視放射効率は15lm/W程度と低い。そこで、放射体から放射される電磁波全体の約70%を占めている赤外放射を抑制することにより、可視光放射の効率向上をことが検討されている。
【0004】
特許文献1は、表面に微細な導波管(以下、「キャビティ」と称する)のアレイを形成した放射体を開示している。この放射体は、キャビティの形状およびサイズによって規定される所定の波長よりも短い波長の電磁線のみを伝播し、赤外放射を抑制することができる。この特許文献1の記載によれば、キャビティは、その内径の倍以上の波長を有する電磁線を伝播しない、このため、キャビティの内径が350nm、キャビティどうしの間に存在する壁部分の厚さが150nmの場合、700nmよりも長い波長のフォトンは、壁部分からのみ放射されうるが、キャビティアレイからは、波長700nm以上の赤外域電磁線は伝播されないことになる。
【0005】
上記の設計寸法による場合、キャビティのアレイが占める総面積は、キャビティが形成されない場合における表面積の50%になる。特許文献1によると、700nmより長い波長の全放射光束は、同一温度におけるタングステンに比べて約10分の一に抑制され、2100Kの動作温度では、可視放射効率が従来の約6倍に向上する。
【特許文献1】米国特許第5,079,473号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱平衡状態における熱放射のスペクトルは、プランクの放射則に従い、温度に依存する。図1は、黒体放射の温度依存性を示すグラフである。グラフの縦軸は、黒体の分光放射輝度BλΔλ[単位:W・cm−2str−1](Δλ=10nm)であり、横軸は放射の波長[単位:μm]である。白熱電球の動作温度が例えば1600Kの場合、そのフィラメントから放射される光の分光輝度分布は、グラフ中の「1600K」が付された曲線で示される。この曲線によれば、ピークは波長2μm程度にあり、赤外の放射比率が高いことがわかる。
【0007】
図1から明らかなように、放射体の温度が1200Kから2000Kに上昇すると、可視域での放射が3桁以上向上するが、赤外域での放射はあまり変化しない。このことからわかるように、効率良く可視放射を得るためには、動作温度を2000K以上に設定することが好ましい。特に放射体を照明光源として利用する場合は、動作温度が2000Kより低いと赤みが強くなり、好ましくない。このため、放射体は、2000K以上の高温動作に耐えられるタングステンなどの高融点材料から形成されている。
【0008】
本発明者らが、キャビティアレイをタングステンの表面に形成し、種々の実験を行ったところ、個々のサイズが1μm以下となる微細なキャビティのアレイが形成されたタングステンでは、1200K程度の温度で短時間にキャビティアレイが破壊するという興味深い現象が観察された。前述のように白熱電球のフィラメントは2000K以上の高温で動作する必要があり、また、白熱電球の寿命は長期であることが要求される。赤外域の放射を抑制するために、キャビティアレイの構造をサブミクロンのサイズに微細化した場合に、表面構造が消失するのでは、そのような放射体を白熱電球その他の高温で動作する装置に応用することはできない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表面に配列したキャビティが1μm以下の微細構造を有する場合において、高温で安定に動作する放射体を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、上記の放射体を備え、可視光を効率的に放射する白熱電球を提供することにある。
【0011】
本発明の更に他の目的は、上記の放射体を有する照明装置以外の装置や、放射体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の放射体は、熱を電磁波に変換して表面から放射する放射体であって、前記表面の少なくとも一部の領域には複数のマイクロキャビティが形成されており、前記領域は、タングステンおよび炭素を含む層を有している。
【0013】
好ましい実施形態において、タングステンおよび炭素を含む前記層は、炭素と結合したタングステンを含有している。
【0014】
好ましい実施形態において、前記複数のマイクロキャビティは、前記少なくとも一部の領域において、アレイを形成している。
【0015】
好ましい実施形態において、前記複数のマイクロキャビティの各々は、内径が1μm以下、深さが内径よりも大きい凹部から形成されている。
【0016】
好ましい実施形態において、前記複数のマイクロキャビティは、2μm以下のピッチで周期的に配列されている。
【0017】
好ましい実施形態において、前記複数のマイクロキャビティは、配列された複数の柱状部材の隙間から構成されている。
【0018】
好ましい実施形態において、前記放射体は、主としてタングステンから形成された本体を有している。
【0019】
好ましい実施形態において、前記放射体は、主としてタングステンカーバイドから形成されている。
【0020】
好ましい実施形態において、前記放射体の動作温度は2000K以上である。
【0021】
本発明の装置は、上記いずれかの放射体と、前記放射体を大気から遮断する容器と、前記放射体にエネルギーを供給し、前記放射体から電磁波を放射させるエネルギー供給手段とを備えている。
【0022】
本発明の熱電変換装置は、上記いずれかの放射体と、前記放射体を大気から遮断する容器と、前記放射体から放射される電磁波を受け取り、電気エネルギーに変化する変換器とを備え、前記放射体にエネルギーを供給し、前記放射体から電磁波を放射させる。
【0023】
本発明による放射体の製造方法は、熱を電磁波に変換して表面から放射する放射体の製造方法であって、タングステン部材を用意する工程と、前記タングステン部材の表面の少なくとも一部の領域に複数のマイクロキャビティを形成する工程と、前記タングステン部材の前記表面における前記領域の少なくとも一部を炭化する工程とを含む。
【0024】
本発明による放射体の製造方法は、熱を電磁波に変換して表面から放射する放射体の製造方法であって、タングステンおよび炭素を含む層を表面の少なくとも一部に有する部材を用意する工程と、前記部材の表面における少なくとも一部の領域に複数のマイクロキャビティを形成する工程とを含む。
【0025】
好ましい実施形態において、タングステンおよび炭素を含む前記層は、炭素と結合したタングステンを含有している。
【0026】
好ましい実施形態において、前記複数のマイクロキャビティを形成する工程は、レーザ照射またはサンドブラストによって行なう。
【0027】
本発明による放射体の製造方法は、熱を電磁波に変換して表面から放射する放射体の製造方法であって、タングステンおよび炭素を含む層を表面の少なくとも一部に有する複数の線材を用意する工程と、前記複数の線材を束ねることによって、前記複数の線材の隙間に複数のマイクロキャビティを形成する工程とを含む。
【0028】
好ましい実施形態において、タングステンおよび炭素を含む前記層は、炭素と結合したタングステンを含有している。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、タングステンの表面領域に炭素を導入することによりマイクロキャビティ構造の熱的安定性を高めることができるため、表面の微細構造が高温でも壊れず保持され、所定波長以上の波長を有する放射を抑えた高放射効率の放射体を実現することができる。また、このような放射体を備えた本発明の白熱電球によれば、熱エネルギーを効率よく可視光に変化して放射する照明器具が実現する。
【0030】
また、本発明によれば、特定の波長域における放射効率を高めることができるため、照明光源以外の装置に適用しても優れた効果を発揮し得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
[図1]黒体放射の分光放射輝度を示すグラフである。
[図2]本発明による放射体の第1の実施形態を示す図面である。
[図3](a)から(e)は、マイクロキャビティとタングステン化合物層との種々の関係を模式的に示す断面図である。
[図4]浸炭処理後のタングステン表面を示す走査電子顕微鏡写真である。
[図5]XPS(X線光電子分光法)による測定の結果を示すグラフである。
[図6](a)および(b)は、それぞれ、比較例の加熱前における表面SEM写真および加熱後における表面SEM写真であり、(c)および(d)は、それぞれ、本実施形態に係る放射体1の加熱前における表面SEM写真および加熱後における表面SEM写真である。
[図7]タングステンの酸化反応に関する飽和酸素の濃度(分圧)を示すグラフである。
[図8]高融点材料の酸化反応におけるギブズ自由エネルギーを示すグラフである。
[図9]タングステン(W)およびタングステンカーバイド(WC)の放射率を示すグラフである。
[図10]マイクロキャビティが崩壊する温度と融点を、タングステンおよびタングステンカーバイトの各々について模式的に示す図面である。
[図11]本発明の実施形態に係る放射体1を備える白熱電球の構成例を示す図面である。
[図12]浸炭処理を利用した形成された電極を示す図である。
[図13]本発明による熱電変換装置の実施形態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 放射体
2 キャビティ構造
12 バルブ
13 ステム
14 口金
21 タングステン
22 タングステン化合物層
30 電極
40 放射体
42 フィルタ
44変換器(太陽電池など)
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の放射体の好ましい実施形態を説明する。
【0034】
(実施形態1)
まず、図2を参照する。図2は、本実施形態における放射体1の表面を構成的に示す平面図である。図2において点線で囲まれた矩形部分は、放射体1の一部表面を拡大した模式図である。
【0035】
本実施形態の放射体1は、全体として幅0.1mm、長さ10mm、厚さ0.05mmのリボン形状を有しており、主にタングステンから形成されている。放射体1の表面には、直径0.7μm、深さ1.2μmの円柱形状を有するキャビティ2のアレイが形成されている。これらのキャビティ2は、それぞれ、放射面に平行な面内において1μm以下の寸法を有しているため、本明細書では「マイクロキャビティ」と称することとする。
【0036】
本実施形態では、このようなマイクロキャビティ2が放射体1の表面において略周期的に配列されており、その配列のピッチ(隣接する2つのキャビティの中心軸間の距離)は1.4μmに設定されている。
【0037】
このようなマイクロキャビティ2は、種々の微細加工技術を用いて形成可能であるが、本実施形態では、パルスレーザの照射によって作製している。このようにパルスレーザを用いて被処理物の表面に微細な凹部を形成する方法は、例えば特開2001−314989号公報などに記載されている。本実施形態では、例えば0.1mJのパルスエネルギーを有するパルス幅100フェムト秒のレーザ光を照射して微細加工を行う。このようなレーザパルスの照射は、一つのマイクロキャビティ2を形成するために数十から数千回繰り返して実行される。
【0038】
レーザ加工されるべき放射体1はX−Yステージ上に搭載される。このX−Yステージの動作と同期してレーザの照射を行なうことにより、図2に示すようなマイクロキャビティのアレイを形成することができる。X−Yステージの動作を高い精度で制御することにより、アレイの配列パターンを任意に設定することが可能になる。本実施形態では、マイクロキャビティ2を略一定のピッチで周期的に配列しているが、マイクロキャビティ2の密度に粗密を設け、放射体1の位置に応じて異なる放射特性を付与しても良い。マイクロキャビティ2の内径および深さは、レーザパルスの照射エネルギー密度、ビームスポット径、照射回数などを調節することにより任意の大きさを付与できる。
【0039】
なお、多数のマイクロキャビティを同時に形成するためには、半導体製造分野やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)で広く利用されているフォトリソグラフィおよびエッチング技術を用いてもよい。
【0040】
本実施形態の放射体1において最も特徴的な点は、放射体1の放射面において表面から深さ約2μmまでの領域(表面領域)が、タングステンと炭素とを含む層から形成されている点にある。後に詳しく説明するように、このタングステンと炭素とを含む層では、タングステンの少なくとも一部が他の元素(炭素など)と化学的に結合しているため、本明細書においては、この層を「タングステン化合物層」と称することとする。
【0041】
本実施形態では、上記のタングステン化合物層を形成するために、タングステンの表面に対して浸炭処理を行なっている。浸炭処理は、金属などの表面を炭化する処理であり、種々の方法が開発されている。例えば、プラズマ浸炭は、炉体・断熱材を陽極、被処理物を陰極とし、アルゴン・水素を含むメタンやプロパンなどの炭化水素系ガスを含む希ガス雰囲気中で、両極間に高圧の直流電圧を印加し、グロー放電を発生させる。グロー放電で生じたプラズマ中での種種の電気化学的作用により、炭化水素系ガス等のイオンが被処理物表面に作用し、浸炭が行われる。他の浸炭技術と比べて、被処理物表面の活性化やクリーニング・還元といった効果がある。好ましい実施形態において、浸炭処理温度は、500〜2000°C(例えば1100℃)、浸炭処理時間は4〜48時間(例えば8時間)に設定される。浸炭処理の条件を調節することにより、形成されるタングステン化合物層の厚さを制御することができる。熱的な安定性を高めるには、おそらく数nm程度以上の厚さを有するタングステン化合物層があれば充分であると考えられる。
【0042】
上記のタングステン化合物層を形成する方法は、浸炭処理に限定されず、炭素のイオン注入や固相拡散によってタングステン中に炭素などの化合物構成元素を導入することによって行なっても良い。
【0043】
本実施形態では、タングステンの表面にマイクロキャビティ2のアレイを形成した後に浸炭処理を行っているため、被処理体の表面積が大きく、タングステンを効率的に炭化できる。ただし、タングステンに浸炭処理を行なってからマイクロキャビティ2のアレイを形成しても良い。その場合、形成するマイクロキャビティ2の深さよりも小さな厚さを有する化合物層を形成してもよい。表面部分に薄く化合物層が形成されるだけでも、マイクロキャビティ2のアレイ構造は熱的に安定化されるからである。
【0044】
図3(a)から(e)は、マイクロキャビティ2とタングステン化合物層22との種々の関係を模式的に示す断面図である。図3(a)は、マイクロキャビティの深さに比べて厚さが小さいタングステン化合物層22がタングステン21の表面に形成されている。図3(b)の例では、図3(a)に示す場合よりも更に薄いタングステン化合物層22が形成されている。図3(c)は、タンクグステン22の表面にタングステン化合物層22を形成した後に、マイクロキャビティを形成した場合に相当する構成を示している。マイクロキャビティ2の底面や側面には、タングステン化合物層22が存在していないが、このような場合でもマイクロキャビティの構造は熱的に安定化される。タングステンの表面に形成したマイクロキャビティ構造が比較的低い温度で崩壊する原因は、通電加熱時におけるタングステン原子のマイグレーションが活発なことに起因している可能性がある。このような原子のマイグレーションを抑制するには、マイクロキャビティ構造の全表面にマイグレーションの生じにくい化合物層を形成することが好ましいが、最も構造の安定性が損なわれやすいエッジ部のみにタングステン化合物層を形成しても良い。
【0045】
図3(d)は、マイクロキャビティ2の側面部のみにタングステン化合物層22が形成されている構造を示している。このような構造は、例えば図3(b)の構造の表面に対して物理的なエッチングを行い、主面に平行な面を薄く除去することによって得られる。このタングステン化合物層22は、マイクロキャビティのエッジ部23にも存在しているため、全体として化合物層の形成面積が少ないにもかかわらず、マイクロキャビティの構造安定には充分に寄与する可能性がある。
【0046】
なお、図3(e)は、マイクロキャビティを含む広い領域の全体がタングステン化合物22から構成されている例を示している。このような構造は、浸炭処理をタングステンの表面に対して長時間行なう代わりに、焼結などによって作製されたタングステンカーバイドなどのタングステン化合物をそのまま放射体1の材料として用いても得られる。この場合、適切な大きさおよび形状に加工されたタングステンカーバイド部材を用意した後、その表面にマイクロキャビティのアレイを形成することになる。
【0047】
図4は、前述した浸炭処理後におけるタングステン表面近傍における断面を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図4では、断面の層構成が明確になるように、試料表面にPt−Pd層を介して炭素層(Cデポ)を堆積している。
【0048】
図4から明らかなように、浸炭処理によって形成された層は、タングステンのように多結晶構造を明確に示しておらず、非晶質相または微結晶相から構成されていると考えられる。図4の試料では、浸炭処理によって形成された層の厚さは1.8μm程度である。
【0049】
図5は、XPS(X線光電子分光法)による測定の結果を示すグラフである。グラフの縦軸は真空中に試料にX線を照射することによって試料表面から放出された光電子(タングステンの4f電子)の強度(カウント数)であり、横軸は結合エネルギー(Binding Energy)を示している。測定には、Physical Electronics社製の分析装置(ESCA5400HC)を用いた。X線のアノードとしては、Monochromated−A1Kα(14Kev:200W)を使用し、分析領域は直径0.6mmの円であった。
【0050】
上記の測定結果からわかるように、浸炭処理によって形成された層(浸炭処理層)におけるタングステンの4f電子結合エネルギーは、タングステン単体の結晶中における値に比べて化学シフトを示している。また、他の測定結果から、浸炭処理層中の炭素がタングステン内部における炭素よりも高い濃度を有していることが確認できている。以上のことから、浸炭処理層中のタングステンの少なくとも一部は、他の元素(炭素)と化学的に結合して化合物を形成していると考えられる。
【0051】
以上の測定結果に基づき、本明細書では、浸炭処理によってタングステンの表面に形成される層を「タングステン化合物層」と称しているが、このことは、その層に含まれるタングステン原子の全てが炭素と結合して化合物の層を形成していることを意味するものではなく、炭素およびタングステンを含有する層の少なくとも一部が化学的に結合した状態にあることを広く意味するものとする。
【0052】
本実施形態の放射体1と、表面に浸炭処理していない放射体(比較例)を用意し、約10−6torrの真空中、2000Kで10分加熱した。図6(a)および(b)は、それぞれ、比較例の加熱前における表面SEM写真および加熱後における表面SEM写真である。図6(c)および(d)は、それぞれ、本実施形態に係る放射体1の加熱前における表面SEM写真および加熱後における表面SEM写真である。図6(c)および(d)において示されている放射体1の表面は、前述したタングステン化合物層から形成されている。
【0053】
図6からわかるように、本実施形態に係る放射体1のマイクロキャビティ構造は加熱テスト後も全く変化しなかったが、比較例の放射体では、マイクロキャビティ構造が崩壊し、その痕跡が認められない状態に至った。
【0054】
タングステンの蒸発数流速は、雰囲気ガスの圧力に依存し、真空度が高くなるほど蒸発が起こりやすくなる。実際に、本実施形態に係る放射体1を白熱電球のフィラメントとして用いる場合、フィラメントは例えば1atmの不活性ガス雰囲気中に配置される。このような場合の寿命を見積もるため、拡散方程式に基づいて計算すると、マイクロキャビティアレイが約10−6torrの真空中において、2000Kで10分間、安定に維持されるということは、1atmの不活性ガス雰囲気中に置かれた場合、2000Kで約9700時間、安定に維持されることに相当していることがわかる。従って、本実施形態の放射体1を備える白熱電球によれば、従来のタングステンフィラメントを利用した場合の寿命1000時間に対して、その10倍である10000時間程度の長寿命を期待できる。
【0055】
なお、本発明者の検討によると、比較例のようにタングステンフィラメントの表面にマイクロキャビティ構造を形成した場合は、1200K程度の低温でもマイクロキャビティ構造が融解して消滅することがわかった。タングステンの融点は、金属データブック(改訂3版・日本金属学会編・発行:丸善(株))などに記されているように3653.15Kである。このため、1200K程度の温度では、タングステンのキャビティ構造が融解するとは考えがたい。
【0056】
本発明者は、1つの可能性として、タングステンの表面に形成された微細なマイクロキャビティのアレイ構造が薄く酸化され、それによって表面層の融点が大きく低下しているのではないかと考えた。
【0057】
図7は、タングステンの酸化反応に関わる飽和酸素濃度(分圧)の計算結果を示すグラフである。このグラフの縦軸は、圧力(分圧)であり、横軸は温度である。グラフにおいて、例えば、WO(s)やWO2(s)は、固体状態におけるタングステン酸化物の分圧温度依存性を示している。また、WO(g)やWO2(g)は、気体状態におけるタングステン酸化物の分圧温度依存性を示している。
【0058】
図7からわかるように、タングステンの酸化物のうち、室温程度の低い温度では微量の酸素によってタングステンの酸化反応が進行する。従って、タングステン表面から酸素を取り除くために水素還元などの処理を行っても、再びタングステン表面を大気にさらすと、表面は容易に酸化すると考えられる。
【0059】
従来、一般の白熱電球に利用されているタングステンフィラメントにおいても、製造段階で室温の大気に晒されたときに、その表面に薄い酸化層が形成されていたと考えられる。このような酸化層は、電球を点灯するとすぐに蒸発するが、下層のタングステンが表面に現れるため、特性に悪い影響を与えなかったと推察できる。
【0060】
しかし、本発明のように、表面に微細なマイクロキャビティアレイ構造が設けられていると、状況は大きく異なる。すなわち、タングステン表面のマイクロキャビティアレイが室温で大気に晒されて酸化した場合は、電球の点灯時にマイクロキャビティ構造自体が消滅してしまう。
【0061】
図8は、高融点材料の酸化反応におけるギブズの自由エネルギーを示すグラフである。図8は、各材料の耐酸化性を表している。
【0062】
図8に示す化学反応式から明らかなように、タングステンカーバイドが酸化タングステンになるには、最初にタングステンカーバイドを酸化することによってタングステンおよびCOに分解し、次にタングステンを酸化するという2段階の反応が連続して生じる必要がある。また、タングステンカーバイドが酸化によってタングステンおよびCOに分解する反応は、図8に示すようにタングステンから酸化タングステンが生成される反応に比べて生じにくい。
【0063】
以上のことから、モリブデンやニオブ、タングステンに比べ、タングステンカーバイドは酸化しにくいことがわかる。このような性質を持つ材料としては、タングステンカーバイド以外に炭化タンタルが考えられる。
【0064】
このようにタングステンカーバイドがタングステンに比べて酸化されにくいことを考慮すると、本発明における浸炭処理によって形成されたタングステン化合物層もタングステンに比較して酸化されにくい性質を持ち、そのことがマイクロキャビティの構造を熱的に安定化している可能性がある。
【0065】
ただし、本発明における化合物層がバルク状態にあるタングステンカーバイドと同一の性質を有している必要はない。前述した分析結果によると、本発明の浸炭処理によってタングステンの表面に形成された層は、タングステンが他の元素と化学的に結合していることを示しており、しかも、その層には炭素がタンクグステン中よりも高い濃度で存在している。これらのことから、タングステンと炭素とが化学的に結合していることは明らかであるが、その組成比率は確認できていないため、この化合物層を「タングステンカーバイド」であると断定することはできない。ただし、タングステンカーバイドと同様の性質を有していると考えられ、少なくとも部分的にはタングステンカーバイドが形成されている可能性が高い。このため、上記のタングステン化合物は、典型的にはタングステンカーバイドであるが、タングステンカーバイドに限定されるものではない。
【0066】
前述したように酸化されにくい材料であるタングステンカーバイドは、しかしながら、白熱電球のフィラメントとしては用いられてこなかった。この理由の1つは、タングステンカーバイドの融点がタングステンの融点に比べ数百K程度も低い点にあり、更に他の理由は、タングステンとタングステンカーバイドの間に存在する放射率の差にある。
【0067】
以下、図9を参照しながら、放射率の差について説明する。
【0068】
図9は、タングステンおよびタングステンカーバイドの赤外域における放射率を測定した結果の一例を示すグラフである。図9からわかるように、タングステン(W)よりもタングステンカーバイド(WC)の方が赤外域での放射が強い。例えば波長2.5μmにおけるタングステンの放射率は20%であるのに対して、同一波長におけるタングステンカーバイドの放射率は70%である。その結果、タングステンカーバイドからの放射全体に占める可視域光の比率が低くなってしまう。このため、タングステンカーバイドからフィラメントを作製すると、タングステンフィラメントよりも可視域における発光効率が著しく低下し、電球としては到底利用できなくなる。
【0069】
白熱電球の開発史によれば、白熱電球が発明された初期の頃は、融点が低く、しかも赤外放射率の高い炭素フィラメントを使用する電球(エジソン電球)が使用されていたが、その後、炭素フィラメントはより融点の高いタングステンフィラメントに置き換えられてきた。このような歴史的経緯から、タングステンよりも融点が低く、また赤外放射率の高い材料であるタングステンカーバイドをフィラメントなどの放射体に使用するべきではないとの技術常識が生まれてきた。
【0070】
これに対し、本発明の放射体は、可視域における放射効率が相対的に低いタングステンカーバイドを敢えて用いているが、表面に微細なマイクロキャビティ構造を具備しているため、赤外放射を充分に抑制することができ、タングステンカーバイドが本来的に示す高い赤外放射率を充分に低いレベルに抑制することが可能となる。
【0071】
また、放射効率が高まるため、タングステンフィラメントを使用する場合に比べて動作温度を低くすることもできる。
【0072】
なお、タングステンカーバイドの融点がタングステンの融点よりも格段に低いことを考慮すると、タンクグステンの浸炭処理によってマイクロキャビティの高温崩壊を抑制できることは当業者に予測困難な意外な現象である。
【0073】
図10は、融点およびマイクロキャビティが崩壊する温度を、タングステンおよびタングステンカーバイドの各々について模式的に示す図面である。この図からわかるように、タングステンの融点(約3650K)に比べて、タングステンカーバイド(WC)の融点は3175K程度と低い(金属データブック、改訂3版・日本金属学会編・発行:丸善(株))。にもかかわらず、浸炭処理を行なったマイクロキャビティ構造の崩壊する温度は、2400K程度である。この温度は、タングステンのマイクロキャビティが崩壊する温度(1900K程度)に比べて極めて高く、タングステンカーバイドの融点からは到底予測できない高い値である。
【0074】
次に、図11を参照しながら、本発明の放射体を有する照明装置の実施形態を説明する。図11は、上記の放射体1を備える白熱電球の構成例を示す図面である。
【0075】
この白熱電球は、放射光を発する放射体(フィラメント)1と、放射体1を大気から遮蔽する透光性のバルブ12と、放射体1に接続された電極を支持するステム13と、電極を介して放射体1に電気的に接続され、放射体1に商用電源からの電力を供給するための口金14とを備えている。バルブ12の内部には、アルゴンガスなどを封入し、フィラメントの蒸発を抑制することが好ましい。
【0076】
図示される白熱電球によれば、放射体1が前述したように熱的に安定なマイクロキャビティ構造を有しているため、2000Kの動作温度でも赤外域放射の少ない分光分布を示す放射を長期間継続することが可能である。
【0077】
なお、従来、浸炭処理によって形成した層(浸炭層)を表面の一部に設けたタングステンの電極が知られている(例えば特開平9−111387号公報および特開平9−111388号公報)。図12は、このような電極の構成例を模式的に示す図である。図12に示すタングステン電極30は、0.2〜15mの丸棒状タングステンの一端を円錐状に尖らせた後、その先端部を0.2〜0.8mmだけカットした形状を有している。このタングステン電極30にはトリウムが含有されており、先端部からは電子が放射される。タングステン電極30における円錐状の部分のうち、電子が放射される先端部を除く領域には浸炭処理が行われている。浸炭処理を行う理由は、トリウムがタングステン電極の結晶粒界を拡散して電極の外部へ消失してしまうことを抑制することにある。この場合、浸炭処理によって形成される浸炭層は、融点がタングステンよりも低いW2Cであると考えられており、したがってタングステン電極30のうち温度の比較的低い部分(電子放出が生じる高温の先端部を除く領域)に形成されている。
【0078】
このように、電界/熱電子放出のためのタングステン電極の一部に浸炭処理を行なうこと自体は従来から知られているが、フィラメントのように高温での使用が必要になる部材に浸炭処理を行なうことは報告されていない。
【0079】
なお、所定波長以上の放射を抑制するために、前述した方法以外の方法で放射体表面に微細な凹凸構造を形成し、個々の微細な凹部(凹部の平均サイズ:1μm以下)がマイクロキャビティとして機能するようにしてもよい。例えば、サンドブラスト処理によって表面を加工することにより、マイクロキャビティとして機能する凹部を放射体の表面に形成することも可能である。そのような場合においても、本発明によれば、放射体表面の酸化による熱的安定性低下を抑制でき、高温で長時間の熱放射が可能となるため、白熱電球のフィラメントなどへ好適に適用できるようになる。
【0080】
このように本発明によれば、表面に形成した微細構造を2000K以上の高温でも安定に保つことができるが、このような効果は、放射体の表面に凹部を形成した場合に限られず、MEMSなどの微細加工技術を用いて、より複雑な微細構造を形成した場合にも適用可能である。例えば、微細なグリッド状部材を配列・積層することにより、光の波長程度の間隔で格子構造を形成し、フォトニック結晶構造を放射体の放射面上に実現してもよい。本発明では、このような微細構造を構成する部材の表面または全体をタングステンカーバイドから形成する。これにより、選択された波長域の放射効率を向上させる微細構造を高温でも長時間動作させることが可能となる。
【0081】
なお、本発明の放射体は、国際公開パンフレットWO 03/058676A2に開示されている三次元的なタングステン構造にも適用化できる。すなわち、従来、タングステンという融点の極めて高い材料を用いて耐熱性の向上が図られてきた部材が今後ますます微細化されていく場合に生じえる「微細構造の崩壊」という大きな問題を、本発明は広く解決することが可能である。
【0082】
(実施形態2)
次に、本発明による放射体を利用した照明装置以外の装置として、熱電変換装置の実施形態を説明する。
【0083】
図13は、このような熱電変換装置の構成を模式的に示している。図示されている装置は、太陽光(電磁波)を吸収し、特定波長の電磁波を放射する本発明の放射体40と、この放射体40を大気から遮断する容器(不図示)と、放射体40から放射される電磁波を受け取り、電気エネルギーに変化する変換器(例えば光起電力電池)44とを備えている。図13の例では、放射体40と変換器44との間に不要な波長域を遮断するフィルタ42がオプショナルに配置されている。
【0084】
放射体40は、主としてタングステンから形成された本体部分を有しているが、その表面には、マイクロキャビティまたはフォトニック結晶構造の微細構造が形成されている。放射体40の表面において、上記特定波長域の放射効率を高める微細構造(マイクロキャビティなど)が形成されている部分には、実施形態1と同様にタングステンおよび炭素を含む層が形成されている。このように放射体40は、その表面に形成された微細構造により、特定波長の電磁波が選択的に放射するが、この特定波長は変換器44が効率よく電磁波を吸収する波長に選択されている。
【0085】
太陽熱を集光するなどの方法によって放射体40を照射して放射体40にエネルギーを供給すると、高温(例えば2000K以上)に加熱された放射体40から特定波長域の電磁波が放射される。このような電磁波の放射を、フィルタ42を介して受けとった変換器44は、効率よく電気エネルギーに変換することができる。
【0086】
通常の太陽光には、変換器44による変換効率の低い波長域の電磁波が多く含まれているが、本発明の放射体40(およびフィルタ42)を用いることにより、変換効率の高い波長域の電磁波を変換器44に供給できるため、光−熱−電気変換システムにおける全体の変換効率が高められる。このような熱電変換装置は、光以外のエネルギーによって放射体40を加熱することによっても電気エネルギーを生成できるため、光−熱−電気変換システム以外の発電装置に利用できる。
【0087】
なお、このような波長選択性を有する放射体を用いる熱起電力発電システムは、特許第347283号明細書などに開示されているが、この特許明細書にはタングステン材料を用いた放射体しか開示されておらず、微細な構造が加熱によって崩壊することについては何も言及されていない。
【0088】
本実施形態によれば、放射体40の表面のマイクロキャビティまたはフォトニック結晶構造の熱的安定性が、タングステンおよび炭素を含む層によって高められているため、発電システムの信頼性を長時間にわたって高く維持することができるとともに、放射体40のより高温での動作が可能になるため、発電システムの高出力化にもフレキシブルに対応できる。この結果、本実施形態の装置は、太陽光を利用する発電システムとして地球環境保護に大いに貢献することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の放射体は、その表面に放射効率を向上させる微細加工構造物を有し、かつ、その微細加工構造物の表面が炭素およびタングステンを含有する層から形成されているため、高効率電球などの一般照明用の放射体として有用である。また、本発明による白熱電球は、高効率ランプが要求される店舗用などに好適に応用される。更に、高温で安定に動作することが求められる各種の装置のうち、特定波長域の放射を効率的に他のエネルギーに変換する装置に広く適用される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を電磁波に変換して表面から放射する放射体であって、
前記表面の少なくとも一部の領域には複数のマイクロキャビティが形成されており、
前記領域は、タングステンおよび炭素を含む層を有している、放射体。
【請求項2】
タングステンおよび炭素を含む前記層は、炭素と結合したタングステンを含有している請求項1に記載の放射体。
【請求項3】
前記複数のマイクロキャビティは、前記少なくとも一部の領域において、アレイを形成している請求項1に記載の放射体。
【請求項4】
前記複数のマイクロキャビティの各々は、内径が1μm以下、深さが内径よりも大きい凹部から形成されている請求項1に記載の放射体。
【請求項5】
前記複数のマイクロキャビティは、2μm以下のピッチで周期的に配列されている請求項1に記載の放射体。
【請求項6】
前記複数のマイクロキャビティは、配列された複数の柱状部材の隙間から構成されている請求項1に記載の放射体。
【請求項7】
前記放射体は、主としてタングステンから形成された本体を有している請求項1に記載の放射体。
【請求項8】
前記放射体は、主としてタングステンカーバイドから形成されている請求項1に記載の放射体。
【請求項9】
前記放射体の動作温度は2000K以上である請求項1から8のいずれかに記載の放射体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の放射体と、
前記放射体を大気から遮断する容器と、
前記放射体にエネルギーを供給し、前記放射体から電磁波を放射させるエネルギー供給手段と、
を備えた装置。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載の放射体と、
前記放射体を大気から遮断する容器と、
前記放射体から放射される電磁波を受け取り、電気エネルギーに変化する変換器と、
を備え、
前記放射体にエネルギーを供給し、前記放射体から電磁波を放射させる熱電変換装置。
【請求項12】
熱を電磁波に変換して表面から放射する放射体の製造方法であって、
タングステン部材を用意する工程と、
前記タングステン部材の表面の少なくとも一部の領域に複数のマイクロキャビティを形成する工程と、
前記タングステン部材の前記表面における前記領域の少なくとも一部を炭化する工程と、
を含む放射体の製造方法。
【請求項13】
熱を電磁波に変換して表面から放射する放射体の製造方法であって、
タングステンおよび炭素を含む層を表面の少なくとも一部に有する部材を用意する工程と、
前記部材の表面における少なくとも一部の領域に複数のマイクロキャビティを形成する工程と、
を含む放射体の製造方法。
【請求項14】
タングステンおよび炭素を含む前記層は、炭素と結合したタングステンを含有している請求項13に記載の放射体の製造方法。
【請求項15】
前記複数のマイクロキャビティを形成する工程は、レーザ照射またはサンドブラストによって行なう請求項12または13に記載の製造方法。
【請求項16】
熱を電磁波に変換して表面から放射する放射体の製造方法であって、
タングステンおよび炭素を含む層を表面の少なくとも一部に有する複数の線材を用意する工程と、
前記複数の線材を束ねることによって、前記複数の線材の隙間に複数のマイクロキャビティを形成する工程と、
を含む放射体の製造方法。
【請求項17】
タングステンおよび炭素を含む前記層は、炭素と結合したタングステンを含有している請求項16に記載の放射体の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/091335
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【発行日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516871(P2006−516871)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001130
【国際出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【特許番号】特許第3825466号(P3825466)
【特許公報発行日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)