説明

放射強度分布配置装置、放射強度分布配置プログラム、放射強度分布配置方法、放射計幾何用目印システムおよび放射計幾何用目印方法

【課題】マイクロ波放射計により得られた観測データの幾何情報の精度を向上させることを目的とする。
【解決手段】マイクロ波放射装置130は座標を特定された地点に設置され、自発的にマイクロ波を放射する。観測衛星110に搭載されたマイクロ波放射計111は地上から放射されるマイクロ波の強度を計測し、計測したマイクロ波の強度分布を示す観測データを生成する。観測衛星110はマイクロ波放射計111により生成された観測データをダウンリンクする。地上センタ120の観測データ分析装置200は観測データにより示されるマイクロ波の強度分布からマイクロ波放射装置130の設置地点に対応する目印点を特定し、マイクロ波放射装置130の座標に基づいて観測地域の強度分布を位置決めし、位置決めした強度分布を示す強度分布地図を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、マイクロ波放射計を用いて衛星から地上を観測する放射強度分布配置装置、放射強度分布配置プログラム、放射強度分布配置方法、放射計幾何用目印システムおよび放射計幾何用目印方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波放射計を搭載した衛星により地球観測が行われている。マイクロ波放射計は、地上から放射される数GHz帯の電磁波の強度を観測し、地上の状態を観測する。
【0003】
マイクロ波放射計の観測値は陸(島や半島など)と海とで大きく異なるため、陸および海の地形情報(陸海情報または陸海フラグという)と比較して観測データに誤り(位置ずれ)がないか確認し、誤りを校正して観測データにより表される観測地域の位置が決定されている。
【0004】
しかし、マイクロ波放射計の分解能が低いため、観測データの幾何情報の精度を向上させることは容易でない。従来の方法では、観測データにより表される海と陸との境界が分解能が低いため不明確であり、観測データと陸海フラグとの相関が悪い傾向が見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−083197号公報
【特許文献2】特開平10−160774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、例えば、マイクロ波放射計により得られた観測データの幾何情報の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の放射強度分布配置装置は、
所定の強度で電磁波を放射する放射装置を設置された地点であって座標を特定された地点を特定地点として含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて、前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて特定する目印点特定部と、
前記目印点特定部により特定された目印点を所定の地図内で前記特定地点の座標に対応する地点にCPUを用いて配置することにより、前記特定地域に対応する部分に前記強度分布を配置した前記地図を表す強度分布地図データを生成する強度分布配置部とを備える。
【0008】
本発明の放射強度分布配置プログラムは、
所定の強度で電磁波を放射する放射装置を設置された地点であって座標を特定された地点を特定地点として含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて、前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPUを用いて特定する目印点特定処理と、
前記目印点特定処理により特定された目印点を所定の地図内で前記特定地点の座標に対応する地点にCPUを用いて配置することにより、前記特定地域に対応する部分に前記強度分布を配置した前記地図を表す強度分布地図データを生成する強度分布配置処理とをコンピュータに実行させる。
【0009】
本発明の放射強度分布配置方法は、
目印点特定部が、所定の強度で電磁波を放射する放射装置を設置された地点であって座標を特定された地点を特定地点として含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて、前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPUを用いて特定し、
強度分布配置部が、前記目印点特定部により特定された目印点を所定の地図内で前記特定地点の座標に対応する地点にCPUを用いて配置することにより、前記特定地域に対応する部分に前記強度分布を配置した前記地図を表す強度分布地図データを生成する。
【0010】
本発明の放射強度分布配置装置は、
所定の強度で電磁波を放射する放射装置を設置された地点であって座標を特定された地点を特定地点として含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて、前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPUを用いて特定する目印点特定部と、
前記目印点特定部により特定された目印点の座標を前記特定地点の座標にして、前記強度分布に対応する座標をCPUを用いて特定する強度分布座標特定部と
を備える。
【0011】
本発明の放射強度分布配置プログラムは、
所定の強度で電磁波を放射する放射装置を設置された地点であって座標を特定された地点を特定地点として含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて、前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPUを用いて特定する目印点特定処理と、
前記目印点特定処理により特定された目印点の座標を前記特定地点の座標にして、前記強度分布に対応する座標をCPUを用いて特定する強度分布座標特定処理と
をコンピュータに実行させる。
【0012】
本発明の放射強度分布配置方法は、
目印点特定部が、所定の強度で電磁波を放射する放射装置を設置された地点であって座標を特定された地点を特定地点として含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて、前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPUを用いて特定し、
強度分布座標特定部が、前記目印点特定部により特定された目印点の座標を前記特定地点の座標にして、前記強度分布に対応する座標をCPUを用いて特定する。
【0013】
本発明の放射計幾何用目印システムは、
座標を特定された特定地点に設置され、所定の強度で電磁波を放射する放射装置と、
前記特定地点を含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を観測する放射計と、
前記放射計により計測された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPUを用いて特定し、特定した目印点を所定の地図内で前記特定地点の座標に対応する地点にCPUを用いて配置することにより前記特定地域に対応する部分に前記強度分布を配置した前記地図を表す強度分布地図データを生成する放射強度分布配置装置とを有する。
【0014】
本発明の放射計幾何用目印方法は、
放射装置が、座標を特定された特定地点から所定の強度で電磁波を放射し、
放射計が、前記特定地点を含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を観測し、
放射強度分布配置装置が、前記放射計により計測された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPUを用いて特定し、特定した目印点を所定の地図内で前記特定地点の座標に対応する地点にCPUを用いて配置することにより前記特定地域に対応する部分に前記強度分布を配置した前記地図を表す強度分布地図データを生成する。
【0015】
本発明の放射計幾何用目印システムは、
座標を特定された特定地点に設置され、所定の強度で電磁波を放射する放射装置と、
前記特定地点を含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を観測する放射計と、
前記放射計により計測された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPUを用いて特定し、特定した目印点の座標を前記特定地点の座標にして前記強度分布に対応する座標をCPUを用いて特定する放射強度分布配置装置とを有する。
【0016】
本発明の放射計幾何用目印方法は、
放射装置が、座標を特定された特定地点に設置され、所定の強度で電磁波を放射し、
放射計が、前記特定地点を含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を観測し、
放射強度分布配置装置が、前記放射計により計測された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPUを用いて特定し、特定した目印点の座標を前記特定地点の座標にして前記強度分布に対応する座標をCPUを用いて特定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、例えば、マイクロ波放射計により得られた観測データ(強度分布データ)の幾何情報の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1におけるマイクロ波放射計幾何用目印システム100の概要図。
【図2】実施の形態1における観測データ分析装置200の機能構成図。
【図3】実施の形態1における観測データ分析装置200のハードウェア資源の一例を示す図。
【図4】実施の形態1における観測データ分析装置200の観測データ分析方法を示すフローチャート。
【図5】実施の形態1における観測データ291により表される強度分布を示した図。
【図6】実施の形態1における陸海地図と強度分布と強度分布地図との関係図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
地上から放射されるマイクロ波の強度分布を観測する地球観測が行われている。
地球観測において、特定の地点からマイクロ波を自発的に放射し、観測されたマイクロ波の強度分布内で特定の地点に対応する箇所を特定し、特定の地点の座標に基づいて強度分布を位置決めするシステムについて説明する。
【0020】
図1は、実施の形態1におけるマイクロ波放射計幾何用目印システム100の概要図である。
実施の形態1におけるマイクロ波放射計幾何用目印システム100の概要について、図1に基づいて以下に説明する。
【0021】
マイクロ波放射計幾何用目印システム100は、マイクロ波放射計111を搭載された観測衛星110と、地上アンテナ121と観測データ分析装置200とを備えた地上センタ120と、マイクロ波放射装置130とを有する。
【0022】
マイクロ波放射装置130は、特定の地点に設置され、所定の強度でマイクロ波を放射する。マイクロ波放射装置130を設置された特定の地点は、実世界の三次元座標(x、y、z)(例えば、緯度、経度、高度)を計測済みである。実世界の三次元座標とは、画像内の二次元座標と異なることを意味する。以下、実世界の三次元座標を「座標」という。
【0023】
観測衛星110に搭載されたマイクロ波放射計111は、地上から放射されるマイクロ波の強度(「輝度温度」ともいう)を計測し、計測したマイクロ波の強度分布を示す観測データを生成する。
地上から放射されるマイクロ波の強度は温度、物質、水分量などによって異なり、マイクロ波の強度分布から各地域の特性(例えば、陸または海)や状態(例えば、天気や気温)を知ることができる。
【0024】
観測衛星110は、マイクロ波放射計111により生成された観測データを表す信号(電磁波)を発信する(地上センタ120へのダウンリンク)。
【0025】
地上センタ120の地上アンテナ121は、観測衛星110から発信された信号を受信し、受信した信号から観測データを取得する。
【0026】
地上センタ120の観測データ分析装置200は、観測データにより示されるマイクロ波の強度分布からマイクロ波放射装置130の設置地点に対応する箇所(u、v)を特定し、マイクロ波放射装置130の設置地点の座標(x、y、z)に基づいて観測地域の強度分布を位置決めし、位置決めした強度分布(強度分布地図)を表示する。(u,v)は強度分布地図を示す画像内での二次元座標である。
強度分布の位置決めにより、各地域の特性や状態を知ることができる。
【0027】
図2は、実施の形態1における観測データ分析装置200の機能構成図である。
実施の形態1における観測データ分析装置200の機能構成について、図2に基づいて以下に説明する。
【0028】
観測データ分析装置200は、観測データ受信部210、目印点特定部220、観測データ位置決定部230(強度分布配置部、強度分布座標特定部の一例)、観測データ出力部240および分析装置記憶部290を備える。
【0029】
観測データ受信部210は、観測衛星110から地上アンテナ121に到達した信号から観測データ291を取得する。
観測データ291は、所定の強度で電磁波を放射するマイクロ波放射計111(放射装置の一例)を設置された地点であって座標を特定された地点を特定地点として含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を表す強度分布データである。
以下、マイクロ波放射計111を設置された地点の座標を「放射装置座標299」という。
【0030】
目印点特定部220は、観測データ291に基づいて、強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて特定する。
【0031】
観測データ位置決定部230は、目印点特定部220により特定された目印点の座標を放射装置座標299(特定地点の座標の一例)にして、強度分布の座標をCPUを用いて特定する。
観測データ位置決定部230は、さらに、目印点特定部220により特定された目印点を陸海情報298により表される陸海地図(所定の地図の一例)内で放射装置座標299に対応する地点にCPUを用いて配置することにより、陸海地図内で特定地域に対応する地域に強度分布を配置した地図を表す強度分布地図データ294を生成する。
【0032】
観測データ出力部240は、観測データ位置決定部230により生成された強度分布地図データ294を表示装置に表示する。
【0033】
分析装置記憶部290は、観測データ分析装置200で用いられるデータを記憶する記憶装置である。観測データ291、目印点292、強度分布座標293、強度分布地図データ294、陸海情報298および放射装置座標299は分析装置記憶部290に記憶されるデータの一例である。
【0034】
図3は、実施の形態1における観測データ分析装置200のハードウェア資源の一例を示す図である。
図3において、観測データ分析装置200は、CPU911(Central・Processing・Unit)(マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、通信ボード915、表示装置901、キーボード902、マウス903、ドライブ装置904、プリンタ装置906、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。ドライブ装置904は、FD(Flexible・Disk・Drive)、CD(Compact Disc)、DVD(Digital・Versatile・Disc)などの記憶媒体を読み書きする装置である。
【0035】
通信ボード915は、有線または無線で、LAN(Local Area Network)、インターネット、電話回線などの通信網に接続している。
【0036】
磁気ディスク装置920には、OS921(オペレーティングシステム)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。
【0037】
プログラム群923には、実施の形態において「〜部」として説明する機能を実行するプログラムが含まれる。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。すなわち、プログラムは、「〜部」としてコンピュータを機能させるものであり、また「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0038】
ファイル群924には、実施の形態において説明する「〜部」で使用される各種データ(入力、出力、判定結果、計算結果、処理結果など)が含まれる。
【0039】
実施の形態において構成図およびフローチャートに含まれている矢印は主としてデータや信号の入出力を示す。
【0040】
実施の形態において「〜部」として説明するものは「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明するものは、ファームウェア、ソフトウェア、ハードウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで実装されても構わない。
【0041】
図4は、実施の形態1における観測データ分析装置200の観測データ分析方法を示すフローチャートである。
実施の形態1における観測データ分析装置200の観測データ分析方法(放射強度分布配置方法、放射計幾何用目印方法の一例)について、図4に基づいて以下に説明する。
観測データ分析装置200の各「〜部」は、以下に説明する処理をCPUを用いて実行する。
【0042】
まず、観測データ分析方法の概要について説明する。
【0043】
観測データ受信部210は、観測衛星110からマイクロ波放射計111の観測データ291を受信する(S110)。
目印点特定部220は、観測データ291により表されるマイクロ波の強度分布内で周囲より強度の強い箇所を目印点として特定する(S120)。
観測データ位置決定部230は、目印点の座標として放射装置座標299を設定し、強度分布の座標を決定する(S130)。
観測データ位置決定部230は、陸海地図内で強度分布の座標に対応する部分に強度分布を配置した強度分布地図データ294を生成する(S140)。
観測データ出力部240は、強度分布地図データ294を表示装置に表示する(S150)。
【0044】
次に、各処理(S110〜S150)の詳細について説明する。
【0045】
まず、観測衛星110に搭載されたマイクロ波放射計111により生成される観測データ291について説明する。
観測衛星110に搭載されたマイクロ波放射計111は、地上の特定地域(以下、「観測地域」という)から放射されるマイクロ波の強度を計測し、計測した強度の分布を表す観測データ291を生成する。以下、マイクロ波の強度を「強度」という。
【0046】
図5は、実施の形態1における観測データ291により表される強度分布を示した図である。
観測データ291は、例えば図5に示すように強度分布を表す。
【0047】
強度分布は、観測地域をメッシュ状(格子状)に構成する複数の小地域それぞれの強度を示す。例えば、観測地域を構成する各小地域は、強度分布を画像表示した場合の1画素(または複数画素)に相当する。図5において、白い小地域(斜線、塗りつぶし無し)は強度が小さい地域、黒い小地域は強度が大きい地域、斜線を引いた小地域は強度が中程度(白い小地域より大きく黒い小地域より小さい強度)の地域である。
【0048】
観測地域には、マイクロ波放射装置130を設置された地点が含まれるものとする。マイクロ波放射装置130は所定の強度で自発的にマイクロ波を放射するため、マイクロ波放射装置130を設置された地点を含んだ小地域は周辺の小地域よりマイクロ波の強度が大きい(図5の黒い小地域)。
【0049】
観測地域および観測地域内の各小地域は、予め決められた観測衛星110の位置(座標)と観測アンテナ112の向きとにより実世界における位置や大きさがおおよそ特定される。観測データ291はマイクロ波の強度分布の他に観測衛星110の位置と観測アンテナ112の向きとを観測情報として示すものとする。
観測衛星110は、マイクロ波放射計111により生成された観測データ291を表す信号を発信する。
【0050】
図4に戻り、観測データ分析方法の各処理(S110〜S150)の説明を始める。
【0051】
<S110:観測データ受信処理>
観測データ受信部210は、観測衛星110から地上アンテナ121に到達した信号から観測データ291を取得し、取得した観測データ291を分析装置記憶部290に記憶する。
S110の後、処理はS120に進む。
【0052】
<S120:目印点特定処理>
目印点特定部220は、観測データ291に示される各小地域のマイクロ波の強度を比較し、マイクロ波の強度が周囲の小地域より所定値(第1の閾値)以上大きい小地域を目印地域として特定する(図5の黒い小地域)。例えば、目印点特定部220は、小地域を1つずつ選択し、選択した小地域の強度と選択した小地域の周囲(8つ、5つまたは3つ)の小地域の強度の平均値との差を所定値と大小比較して目印地域を特定する。目印地域は、マイクロ波放射装置130を設置された地域に相当する。
目印点特定部220は、目印地域を示す情報を「目印点292」として分析装置記憶部290に記憶する。
例えば、目印点292は、観測データ291内でのデータの並び順や観測データ291に基づく画像として表される強度分布内での画素位置(u、v)である。
S120の後、処理はS130に進む。
【0053】
<S130:強度分布座標特定処理>
観測データ位置決定部230は、観測データ291により表される複数の小地域それぞれの座標を目印点292の座標(放射装置座標299)に基づいて算出し、算出した各小地域の座標を強度分布座標293として分析装置記憶部290に記憶する。例えば、小地域の座標とは小地域の中心地点の座標である。
強度分布座標293は、観測データ291に示される各小地域の強度も含むものとする。
【0054】
例えば、観測データ位置決定部230は、以下のようにして強度分布座標293を算出する。
観測データ位置決定部230は、観測データ291に示される観測情報に基づいて実世界における観測地域の座標および小地域の大きさを概算する。
陸海情報298は、各地点の座標を示す情報であって各地点が陸か海かを示す情報として、分析装置記憶部290に予め記憶されているものとする。
観測データ位置決定部230は、従来と同じく、観測地域の座標に基づいて陸海情報298から観測地域周辺(観測地域を含む)の陸海地図を取得し、強度分布の境界(図5の破線)の形状と取得した陸海地図の陸海の境界の形状とを比較して観測地域を特定し、陸海情報298に示される観測地域の座標に基づいて強度分布の各小地域の座標を算出する。強度分布の境界と陸海の境界とを完全に一致させることは難しいため、ここで算出される座標は概算値である。この従来の処理は、強度分布と陸海地図とを互いの境界を合わせて位置合わせすることに相当する。
観測データ位置決定部230は、目印点292の座標として放射装置座標299を設定する。マイクロ波放射装置130が地上に複数設置され放射装置座標299が複数ある場合、観測データ位置決定部230は、観測地域の座標に基づいて一つの放射装置座標299を選択する。放射装置座標299は、分析装置記憶部290に予め記憶されているものとする。
観測データ位置決定部230は、小地域の実世界での大きさに基づいて目印点292からの実世界での距離を小地域毎に算出し、目印点292の座標と目印点292からの距離とに基づいて目印点292から当該距離だけ離れた地点の座標を小地域の実世界での座標として算出する。例えば、目印点292の座標(放射装置座標299)が(x、y)であり、目印点292から小地域Aまでの距離が(Δx、Δy)であれば、小地域Aの座標は(x+Δx、y+Δy)である。
【0055】
S130の後、処理はS140に進む。
【0056】
<S140:強度分布配置処理>
観測データ位置決定部230は、陸海情報298に示される各地点の座標と強度分布座標293に示される各小地域の座標とに基づいて、陸海情報298により表される陸海地図に強度分布座標293により表される強度分布を重畳させた地図(以下、「強度分布地図」という)を表すデータを強度分布地図データ294として生成する。観測データ位置決定部230は、生成した強度分布地図データ294を分析装置記憶部290に記憶する。
【0057】
図6は、実施の形態1における陸海地図と強度分布と強度分布地図との関係図である。
観測データ位置決定部230は、図6に示すように、陸海情報298により表される陸海地図と強度分布座標293により表される強度分布とを重畳させて強度分布地図(強度分布地図データ294)を生成する。
【0058】
図6において、強度分布地図は、強度分布内の目印点(黒い小地域)を陸海地図内で放射装置座標299に対応する地点(「×」印)に配置することにより強度分布内の特定地域(斜線を引いた小地域)を陸海地図内の特定地域に対応する部分(太い線内の「陸」部分)に配置(マッピング)した地図に相当する。
【0059】
図4に戻り、観測データ分析方法の説明を続ける。
【0060】
S140の後、処理はS150に進む。
【0061】
<S150:強度分布地図出力処理>
観測データ出力部240は、強度分布地図データ294を出力装置に出力する。
例えば、観測データ出力部240は、強度分布地図データ294に基づいて強度分布地図を表示装置に表示する。
また例えば、観測データ出力部240は、強度分布地図データ294に基づいて強度分布地図をプリンタ装置から印刷する。
また例えば、観測データ出力部240は、強度分布地図データ294を通信装置を用いて他のコンピュータに配信する。
S150の後、観測データ分析方法は終了する。
【0062】
実施の形態1において、例えば、以下のようなシステムについて説明した。
本システムは、従来から行われてきた陸海フラグとの相関関係だけに基づいて観測位置を把握する方法とは異なり、自発的にマイクロ波を放射して観測データに目印をつけるという特徴を有する。
マイクロ波放射計により観測されるデータは、地上の自然現象の情報の他に、通信機器などから人工的に発生される電磁波による影響を示す。
この影響を与えられている位置(緯度・経度)を明確にすることができれば、マイクロ波放射計の観測データの位置関係を把握することができる。
そこで、位置が特定されている場所において、マイクロ波放射計を搭載した衛星に向け微弱な電磁波を発射し、衛星の観測データに位置を特定できる目印(周囲より大きな強度を示す観測値)をつける。この目印と電磁波を送信した基地(マイクロ波放射装置)の緯度経度から観測データに対応する正確な幾何情報を算出する。
これにより、マイクロ波放射計により観測された観測データについて幾何情報の精度向上及び校正検討の短縮を図ることができる。
【0063】
実施の形態1において、「マイクロ波」はマイクロ波と異なる周波数帯の電磁波であっても構わない。
【符号の説明】
【0064】
100 マイクロ波放射計幾何用目印システム、110 観測衛星、111 マイクロ波放射計、112 観測アンテナ、120 地上センタ、121 地上アンテナ、130 マイクロ波放射装置、200 観測データ分析装置、210 観測データ受信部、220 目印点特定部、230 観測データ位置決定部、240 観測データ出力部、290 分析装置記憶部、291 観測データ、292 目印点、293 強度分布座標、294 強度分布地図データ、298 陸海情報、299 放射装置座標、901 表示装置、902 キーボード、903 マウス、904 ドライブ装置、906 プリンタ装置、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信ボード、920 磁気ディスク装置、921 OS、922 ウィンドウシステム、923 プログラム群、924 ファイル群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の強度で電磁波を放射する放射装置を設置された地点であって座標を特定された地点を特定地点として含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて、前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて特定する目印点特定部と、
前記目印点特定部により特定された目印点を所定の地図内で前記特定地点の座標に対応する地点にCPUを用いて配置することにより、前記特定地域に対応する部分に前記強度分布を配置した前記地図を表す強度分布地図データを生成する強度分布配置部と
を備えたことを特徴とする放射強度分布配置装置。
【請求項2】
所定の強度で電磁波を放射する放射装置を設置された地点であって座標を特定された地点を特定地点として含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて、前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて特定する目印点特定処理と、
前記目印点特定処理により特定された目印点を所定の地図内で前記特定地点の座標に対応する地点にCPUを用いて配置することにより、前記特定地域に対応する部分に前記強度分布を配置した前記地図を表す強度分布地図データを生成する強度分布配置処理と
をコンピュータに実行させる放射強度分布配置プログラム。
【請求項3】
目印点特定部が、所定の強度で電磁波を放射する放射装置を設置された地点であって座標を特定された地点を特定地点として含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて、前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて特定し、
強度分布配置部が、前記目印点特定部により特定された目印点を所定の地図内で前記特定地点の座標に対応する地点にCPUを用いて配置することにより、前記特定地域に対応する部分に前記強度分布を配置した前記地図を表す強度分布地図データを生成する
ことを特徴とする放射強度分布配置方法。
【請求項4】
所定の強度で電磁波を放射する放射装置を設置された地点であって座標を特定された地点を特定地点として含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて、前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて特定する目印点特定部と、
前記目印点特定部により特定された目印点の座標を前記特定地点の座標にして、前記強度分布に対応する座標をCPUを用いて特定する強度分布座標特定部と
を備えたことを特徴とする放射強度分布配置装置。
【請求項5】
所定の強度で電磁波を放射する放射装置を設置された地点であって座標を特定された地点を特定地点として含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて、前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて特定する目印点特定処理と、
前記目印点特定処理により特定された目印点の座標を前記特定地点の座標にして、前記強度分布に対応する座標をCPUを用いて特定する強度分布座標特定処理と
をコンピュータに実行させる放射強度分布配置プログラム。
【請求項6】
目印点特定部が、所定の強度で電磁波を放射する放射装置を設置された地点であって座標を特定された地点を特定地点として含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて、前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて特定し、
強度分布座標特定部が、前記目印点特定部により特定された目印点の座標を前記特定地点の座標にして、前記強度分布に対応する座標をCPUを用いて特定する
ことを特徴とする放射強度分布配置方法。
【請求項7】
座標を特定された特定地点に設置され、所定の強度で電磁波を放射する放射装置と、
前記特定地点を含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を観測する放射計と、
前記放射計により計測された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて特定し、特定した目印点を所定の地図内で前記特定地点の座標に対応する地点にCPUを用いて配置することにより前記特定地域に対応する部分に前記強度分布を配置した前記地図を表す強度分布地図データを生成する放射強度分布配置装置と
を有することを特徴とする放射計幾何用目印システム。
【請求項8】
放射装置が、座標を特定された特定地点から所定の強度で電磁波を放射し、
放射計が、前記特定地点を含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を観測し、
放射強度分布配置装置が、前記放射計により計測された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて特定し、特定した目印点を所定の地図内で前記特定地点の座標に対応する地点にCPUを用いて配置することにより前記特定地域に対応する部分に前記強度分布を配置した前記地図を表す強度分布地図データを生成する
ことを特徴とする放射計幾何用目印方法。
【請求項9】
座標を特定された特定地点に設置され、所定の強度で電磁波を放射する放射装置と、
前記特定地点を含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を観測する放射計と、
前記放射計により計測された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて特定し、特定した目印点の座標を前記特定地点の座標にして前記強度分布に対応する座標をCPUを用いて特定する放射強度分布配置装置と
を有することを特徴とする放射計幾何用目印システム。
【請求項10】
放射装置が、座標を特定された特定地点に設置され、所定の強度で電磁波を放射し、
放射計が、前記特定地点を含んだ特定地域から放射された電磁波の強度分布を観測し、
放射強度分布配置装置が、前記放射計により計測された電磁波の強度分布を表す強度分布データに基づいて前記強度分布内で電磁波の強度が周囲より高い地点を目印点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて特定し、特定した目印点の座標を前記特定地点の座標にして前記強度分布に対応する座標をCPUを用いて特定する
ことを特徴とする放射計幾何用目印方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−230470(P2010−230470A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78106(P2009−78106)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(591102095)三菱スペース・ソフトウエア株式会社 (148)