説明

放射性核種製造装置

【課題】荷電粒子ビームの照射準備と照射、及び製造した放射性核種の移送と回収を行うことのできる放射性核種製造装置を提供する。
【解決手段】ターゲット物質を収めるための容器Cを着脱自在に固定できる固定部21aを有する容器固定手段2と、容器固定手段2に向けて加速器から輸送されてきた荷電粒子ビームを照射するビーム照射手段3と、容器固定手段2を保持してビーム照射手段3と着脱自在に進退させる進退手段4と、進退手段4と離間した位置に設けられ、容器Cを格納して当該容器C内の放射性核種を回収する回収手段5と、進退手段4と回収手段5との間に設けられ、進退手段4が進出してビーム照射手段3から脱離した容器固定手段2の固定部21aに対して容器Cの着脱を行い、固定部21aから脱離した容器Cを固定部21aと回収手段5との間で移送する着脱移送手段6と、回収手段5を加熱する加熱手段7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速器から輸送されてきた荷電粒子ビームを照射して放射性医薬品の標識に用いる短〜中寿命の放射性核種を製造する放射性核種製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射性核種の製造は、非特許文献1に説明されているようにして製造されていた。この非特許文献1には要するに、図6に示すように、照射室100内に設置された小型のサイクロトロン(小型サイクロトロン)などの加速器101から輸送されてきた荷電粒子ビームをビームダクト102から固定手段103に固定されているターゲット物質T1に向けて照射して放射性核種RNを生成した後、当該放射性核種RNを直下に用意された移送手段104に移した後、当該移送手段104によりホットセル105まで移送し、移送された放射性核種RNを外部の作業者Hが操作するマニピュレータ106によって回収し、回収用の容器(不図示)に移すといった作業が行われている旨が説明されている。
【0003】
放射性核種の製造で汎用されている加速器は、設置スペースの関係からその殆どが荷電粒子ビームの回転が横方向(水平方向)となるように設置されている。そのため、放射性核種を製造する場合、当該加速器から輸送されてきた荷電粒子ビームはその回転方向と同じ水平方向に照射されるようになっている。したがって、荷電粒子ビームが照射されるターゲット物質は、その照射面がこの荷電粒子ビームに対して垂直(すなわち、加速器の設置面に対して垂直)となるように設置されている。
【0004】
この場合、重力による放射性核種とターゲット物質の落下防止機構を必要とするほか、低融点かつ熱伝導性の良くない固体のターゲット物質を用いる場合には次の(1)および(2)のような問題がある。
(1)照射をする際、荷電粒子ビームの運動エネルギーはターゲット物質に衝突しながら運動エネルギーを失うことで最終的に熱に変換され、極小面積(1cm2程度)に数百Wを超える熱量が発生する。特に、低融点かつ熱伝導性の良くない固体のターゲット物質では、照射野の局所においてターゲット物質の融解が起こり、十分な核反応を起こすための厚みが維持できなくなる。その結果、安定した収量を得ることが難しいという問題がある。
(2)目的とする核反応に最適なエネルギー範囲は限定的かつ系によって一定であるため、高収量を得るためには電流値(ビーム強度)を上げる必要がある。ビーム強度の上昇に比例して発熱量も上昇する(発熱量は荷電粒子ビームのエネルギーと電流値の積で表される。)。通常、照射装置には除熱のための冷却系が設けられているが、例えば数W/(m・K)程度の熱伝導性の良くないターゲット物質に荷電粒子ビームを照射して放射性核種を製造するような場合、冷却効率は著しく低下する。その結果、照射野の局所が著しく高温になることがあり、ターゲット物質の安定性だけでなく、照射装置の耐熱性も深刻な問題になってくる。したがって、放射性核種製造の現場では、実用上、ビーム強度の上限値が限定される。その上限値で得られる量(放射能)が、必要とする製造量を満足すればよいが、そうでない場合は照射時間の延長といった非効率的な製造を強いられる場合も少なくない。
【0005】
従来、前記(1)および(2)に示した問題に対してターゲット物質の調製法や設置方法などを工夫することにより対処してきた。
例えば図7(a)のように、従来厚い厚みLで設けられていたターゲット物質T2と容器203を図7(b)のようにターゲット物質T3と容器203’が薄い厚みL’となるように調製し、正味のエネルギー損失量を下げつつ、正味の発熱量Q(Q’)はL>L’からQ>Q’となるので見かけの熱伝導度を上昇させ、冷媒による効果的な冷却を期待する方法があった(非特許文献2,3参照)。
【0006】
また、従来、図8(a)のように薄層のターゲット物質T4に対して荷電粒子ビームが直角に照射されていた(正面衝突)のを、図8(b)のように、薄層のターゲット物質T4を若干斜めに保持し、荷電粒子ビームの照射角度が若干斜めとなるようにすることで(斜め衝突)、荷電粒子ビームの投影面積d(図8(a)参照)を投影面積d’(図8(b)参照)のように増大させ(d’>d)、単位面積あたりの発熱量を減少させることにより局所の融解を防ぐ方法(非特許文献2〜6参照)があった。
さらには、ターゲット物質の成分組成を、耐熱性を有するように調製したり、熱伝導性の向上を期待して添加物を加えたりする方法(非特許文献7〜9参照)、冷却効率を上げるため、ターゲット物質に冷却媒体を直接接触させる方法(非特許文献8〜13参照)などがあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Gelbart, W. Z., Proceedings of the 7th international workshop on targetry and target chemistry. (1997) p.190-194.
【非特許文献2】Lambrecht, R. M., J. Radioanal. Nucl. Chem. Lett., (1988) 127(2), p.143-150.
【非特許文献3】Lambrecht, R. M., Nucl. Inst. Met. Phys. Res. (1989) A282, p.296-300.
【非特許文献4】Finn, R. D., Nucl. Inst. Meth. Phys. Res. (1995) B99, p.814-816.
【非特許文献5】Weinreich, R., J. Radioanal. Nucl. Chem. Lett., (1996) 213(4), p.253-261.
【非特許文献6】Nye, J. A., Radiochim. Acta (2006) 94, p.213-216.
【非特許文献7】Van den Bosch, R., Int. J. Appl. Radiat. Isot. (1977) 28, p.255-261.
【非特許文献8】Sheh, Y., Radiochim. Acta (2000) 88, p.169-173.
【非特許文献9】Nye, J. A., Appl. Radiat. Isot. (2007) 65, p.407-412.
【非特許文献10】Michael, H., Int. J. Appl. Radiat. Isot. (1981) 32, p.581-587.
【非特許文献11】Scholten, B., Appl. Radiat. Isot. (1989) 40(2), p.127-132.
【非特許文献12】Zaidi, J. H., Int. J. Appl. Radiat. Isot. (1983) 34(10), p.1425-1430.
【非特許文献13】Qaim, S. M., Appl. Radiat. Isot. (2003) 58, p.69-78.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載の技術では照射室およびホットセルという遮蔽空間で荷電粒子ビームの照射と生成核種の回収を行っているが、高線量の線源を作業者の近辺へ移送させた場合の被ばくはゼロではなく無視できる量ではない上、マニピュレータによる作業が煩雑であるという問題がある。
また、流動性のある気体や液体のターゲット物質を用いて放射性核種を製造する場合、製造した放射性核種をターゲット物質とともに圧力をかけて配管中を移送させることが可能であるが、流動性のない固体のターゲット物質を用いて放射性核種を製造する場合は非特許文献1(図6)のように移送手段により放射性核種RNおよび固体のターゲット物質T1を移送させたり、前記したマニピュレータで回収したりする必要がある。したがって、流動性のない固体のターゲット物質を用いた放射性核種を製造する際には、移送手段による移送中の誤動作や容器の転倒、マニピュレータによる作業の誤操作や故障等によって放射性核種の紛失や取り出し不能等が生じるおそれもある。
【0009】
また、非特許文献2〜6の方法には、めっきや溶融・再結晶などの手法によって厚さ数十から数百μm程度の薄いターゲット層を調製しなければならず、その調製が困難であり、厳密なエネルギー範囲が求められる製造現場において再現性を得ることが難しいという問題がある。
【0010】
また、非特許文献7〜9の方法には、得られる効果は大きいものの、目的とする放射性核種以外の不純物の混入があるという問題や収率が低下するという問題がある。
【0011】
非特許文献8〜13の方法には、保持しているターゲット物質や生成した放射性核種が冷却系配管などへ逸脱するおそれがある。逸脱したターゲット物質や放射性核種は基本的に回収不能であり、広範囲に渡って放射能汚染を引き起こすおそれがある。事実、ビーム強度の上昇によって失われる放射能が上昇していくことが確かめられている。
【0012】
本発明は前記問題を解決するためになされたものであり、荷電粒子ビームの照射準備と照射、および製造した放射性核種の移送と回収を容易かつ安全に行うことのできる放射性核種製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
〔1〕前記課題を解決した本発明に係る放射性核種製造装置は、加速器から輸送されてきた荷電粒子ビームをターゲット物質に照射して放射性核種を製造する放射性核種製造装置であって、前記ターゲット物質を収めるための容器を着脱自在に固定できる固定部を有する容器固定手段と、前記容器固定手段に向けて前記加速器から輸送されてきた荷電粒子ビームを照射するビーム照射手段と、前記容器固定手段を保持して前記ビーム照射手段と着脱自在に進退させる進退手段と、前記進退手段と離間した位置に設けられ、前記容器を格納して当該容器内の放射性核種を回収する回収手段と、前記進退手段と前記回収手段との間に設けられ、前記進退手段が進出または退縮して前記ビーム照射手段から脱離した容器固定手段の固定部に対して前記容器の着脱を行い、前記固定部から脱離した容器を前記固定部と前記回収手段との間で移送させる着脱移送手段と、前記回収手段を加熱する加熱手段と、を備えたことを特徴としている。
〔2〕なお、本発明に係る放射性核種製造装置は、さらに、前記ターゲット物質を収めた容器を有するのが好ましい。
【0014】
このように、本発明に係る放射性核種製造装置においては、容器固定手段の固定部に固定される容器内にターゲット物質を収めておくことができるので、当該容器内にターゲット物質を収めてビーム照射手段から容器固定手段に向けて荷電粒子ビームを照射することにより、ターゲット物質から放射性核種を生成することができる。また、保持した容器固定手段を進退手段で進退させるだけで当該容器固定手段とビーム照射手段の取り付けと取り外し(着脱)を行うことができる。そして、本発明においては前記した着脱移送手段を備えているので、ビーム照射手段から取り外された容器固定手段からの容器の回収と、ターゲット物質を収めた容器の容器固定手段への固定(つまり、荷電粒子ビームの照射開始前に行う照射準備)と、を容易に行うことができる。またさらに、この着脱移送手段によって、容器固定手段から取り外した(脱離した)容器を前記した容器固定手段と、容器を格納することのできる回収手段と、の間で移送させることができる。そして、加熱手段を備えているので、容器を格納した回収手段を当該加熱手段によって加熱することで容器を加熱することができる。このように、回収手段ごと容器を加熱して容器内の放射性核種を加熱し、これを揮発させることによって放射性核種の回収を行うことができる。
【0015】
〔3〕本発明における前記ビーム照射手段は、前記荷電粒子ビームを鉛直方向から導入し、鉛直方向に照射するものであるのが好ましい。
このようにすれば、ターゲット物質が気体、液体、固体のいずれであっても、これを容器内に収めて荷電粒子ビームを鉛直方向に照射することにより放射性核種を製造することができる。これは例えば、低融点かつ熱伝導性が良くない固体のターゲット物質に荷電粒子ビームを照射し、照射した荷電粒子ビームによって当該ターゲット物質が溶融した場合であっても、溶融したターゲット物質を容器の底部に(略均一の厚さで)貯留することが可能となるため、重力によって放射性核種やターゲット物質が落下してしまうのを防止するための落下防止機構が不要となり、溶融後のターゲット物質を用いて放射線核種を製造する場合であっても十分な核反応を起こすための厚みを維持することができる結果、安定した収量を得ることが可能となる。
【0016】
〔4〕本発明における前記進退手段は、前記ビーム照射手段近傍に設けられ、その退縮力または押圧力により前記容器固定手段を前記ビーム照射手段に密着させるのが好ましい。
このようにすれば、ビーム照射手段に対して退縮力または押圧力を付与するだけで容易かつ速やかに容器固定手段をビーム照射手段と密着させることができる。
【0017】
〔5〕本発明における前記容器固定手段は、前記容器を冷却する冷媒を通流させる冷媒通流手段を有しているのが好ましい。
このように冷媒通流手段を有していれば、荷電粒子ビームを照射してターゲット物質や容器、容器固定手段の温度上昇を防ぐことができる。そのため、装置の負担が軽くなり、安全性も向上するので装置全体の防熱対策等の簡略化とこれによる装置の小型化を図ることが可能となる。
【0018】
〔6〕本発明における前記着脱移送手段は、前記進退手段が進出または退縮して前記ビーム照射手段から脱離した容器固定手段および前記容器固定手段から脱離した容器のうちの少なくとも一方を水平方向に移送させる水平移送手段と、前記水平移送手段によって移送された容器固定手段から前記容器を保持して鉛直方向に移送させ、または前記水平移送手段によって移送された容器を鉛直方向に移送させて前記回収手段に格納する鉛直移送手段と、を有するのが好ましい。
【0019】
着脱移送手段をこのような水平移送手段および鉛直移送手段とすれば、ビーム照射手段と、着脱移送手段と、回収手段とを立体的に配置することが可能となるので、装置の専有面積を小さくすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0020】
〔7〕本発明における前記着脱移送手段は、前記容器固定手段を着脱自在に保持し、かつ保持した前記容器固定手段を、前記容器固定手段と前記ビーム照射手段とを着脱する第1の所定の位置と、前記第1の所定の位置とは異なる第2の所定の位置と、の間で水平方向に移送させる第1着脱移送手段と、前記容器を着脱自在に保持し、かつ保持した前記容器を、前記第2の所定の位置と、前記第1の所定の位置および前記第2の所定の位置とは異なる第3の所定の位置と、の間で水平方向に移送させる第2着脱移送手段と、前記容器を着脱自在に保持し、かつ保持した前記容器を、前記第3の所定の位置と、前記第1の所定の位置、前記第2の所定の位置および前記第3の所定の位置とは異なる位置であって前記回収手段内となる第4の所定の位置と、の間で鉛直方向に移送させる第3着脱移送手段と、を有するのが好ましい。
【0021】
着脱移送手段をこのような第1着脱移送手段、第2着脱移送手段および第3着脱移送手段とすれば、容器固定手段の第1の所定の位置と第2の所定の位置の間の移送と、容器固定手段と容器の着脱および容器固定手段から取り外して(脱離させて)保持した容器の第2の所定の位置と第4の所定の位置との間の移送とを確実に行うことができる。つまり、荷電粒子ビームが照射されて生成された放射性核種を収める容器を第1の所定の位置から第4の所定の位置の回収手段まで確実に移送させることができ、また、回収手段で放射性核種を回収した後の容器を第4の所定の位置から再び第1の所定の位置まで確実に移送させることができる。また、ビーム照射手段と、前記した第1着脱移送手段、第2着脱移送手段および第3着脱移送手段を有する着脱移送手段と、回収手段とを立体的に配置することが可能となるので、装置の専有面積を小さくすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0022】
〔8〕本発明における前記第1着脱移送手段は、前記容器を係合して保持する係合保持手段を1つ以上有しているのが好ましい。
第1着脱移送手段がこのような係合保持手段を有していれば容器を確実に保持することができるので容器の転倒等を防ぐことができる。したがって、安全かつ確実に容器を第1の所定の位置と第2の所定の位置との間を移送させることができる。また、かかる係合保持手段を2つ以上有している場合は、異なる種類のターゲット物質を保持させることができるので、生成したい放射性核種に応じてターゲット物質を使い分けることができる。
【0023】
〔9〕本発明における前記第1着脱移送手段は、水平方向に回転するターンテーブルであるのが好ましい。
このようにすれば、ターンテーブルが定位置にて自転したり、停止したりするだけで、保持した容器固定手段を第1の所定の位置と第2の所定の位置との間で移送させることができる。また、ターンテーブルを小さくすれば装置の簡易化と小型化を図ることができ、ターンテーブルを大きくすれば、前記した係合保持手段を数多く設けることができるのでより多くの種類のターゲット物質を保持させることができる。
【0024】
〔10〕本発明における前記容器固定手段は前記容器を固定する本体部と、前記本体部の上に重ねる蓋部とからなり、前記第2着脱移送手段は、前記蓋部を保持する第1保持部と、前記容器を保持する第2保持部と、を有し、これらを水平方向に回転させるのが好ましい。
このように、容器固定手段の蓋部を第1保持部で保持し、容器固定手段の本体部に固定されている容器を第2保持部で保持すれば、容器固定手段から容器を確実に取り出すことができる。
【0025】
〔11〕また、前記第1保持部と前記第2保持部とを1つの支持部材に離間して設けるのがより好ましい。
このようにすれば、第2の所定の位置と第3の所定の位置を適切に設定することにより、第2の所定の位置で第1保持部による蓋部の保持と第2保持部による容器の保持とを行った後、少ない動作で容器を第2の所定の位置から第3の所定の位置まで移送させることができる。また、同じく少ない動作で容器を第3の所定の位置から第2の所定の位置まで移送させることができる。さらに、支持部材に離間して設けた第1保持部と第2保持部の距離を小さくすることにより、装置の小型化を図ることができる。
【0026】
〔12〕前記第1保持部と前記第2保持部とを同一円周上において45〜180°の開き角度で設けるのがさらに好ましい。
このようにすれば、第2の所定の位置と第3の所定の位置を適切に設定することにより、第2の所定の位置で第1保持部による蓋部の保持と第2保持部による容器の保持とを行った後、より少ない動作で容器を第2の所定の位置から第3の所定の位置まで移送させることができる。また、同じくより少ない動作で第3の所定の位置から第2の所定の位置まで移送させることができる。
【0027】
〔13〕本発明における前記第3着脱移送手段は、前記第3の所定の位置において前記第2着脱移送手段で脱離させた前記容器を載置する載置手段と、当該載置手段を、前記第3の所定の位置と前記第4の所定の位置との間を鉛直方向に往復動させる往復動手段と、を有しているのが好ましい。
このように第3着脱移送手段は、往復動手段によって載置手段を鉛直方向に往復動させるだけで載置手段上に載置した容器を回収手段の内部に収めて加熱手段で加熱することが可能となり、また、加熱して放射性核種の回収をした後の容器を回収手段の内部から取り出すことが可能となる。
【0028】
〔14〕本発明における前記回収手段は、一端部が開口した大径の本管部と、前記本管部よりも小径であって、開口した一端部が前記本管部内に収められており、開口した他端部が前記本管部外に延出している第1の枝管部と、前記本管部よりも小径であって、開口した一端部が前記本管部内に収められており、開口した他端部が前記本管部外に延出している第2の枝管部と、を有し、前記第1の枝管部は、前記他端部から前記本管部内に気体を導入し、前記第2の枝管部の前記一端部は、格納される前記容器を覆うように形成され、前記第2の枝管部の前記他端部には、加熱されて揮発した前記放射性核種を捕集する捕集溶液を保持する捕集溶液保持部と、当該捕集溶液保持部を経由して送出されてきた前記気体を排出する排出部と、が設けられているのが好ましい。
【0029】
このような回収手段とすれば、本管部の内外を連通する第1の枝管部から本管部内に気体を導入すると、導入された気体によって第2の枝管部の一端部から他端部に向けて本管部内の気体を送出することができる。本管部内の気体には加熱手段の加熱によって揮発した放射性核種が含まれているから、第2の枝管部の他端部に設けられた捕集溶液保持部の捕集溶液を経由させることにより、送出された気体に含まれる揮発した放射性核種を確実に捕集することができる。
【0030】
〔15〕本発明における前記回収手段は、石英製であるのが好ましい。
回収手段を石英製とすれば耐熱性に優れているため高い温度で加熱することができる。
【0031】
〔16〕本発明における前記加熱手段の加熱温度は100〜1200℃であるのが好ましい。
このようにすれば、固体のターゲット物質を用いて製造した放射性核種であっても揮発させることが可能となるので、気体や液体のターゲット物質を用いて製造した放射性核種のみならず、固体のターゲット物質を用いて製造した放射性核種も回収手段で確実に回収することができる。
【0032】
〔17〕本発明に係る放射性核種製造装置は、前記〔1〕から〔16〕のうちのいずれか1項に記載の放射性核種製造装置を密閉構造の筐体内に収めるのが好ましい。
このようにすれば、万一、放射線源である放射性核種が飛散するようなことがあっても汚染範囲を筐体内に止めることができるので、汚染範囲を大幅に小さく限定できる。
【0033】
〔18〕本発明における前記筐体は、内部の空気を清浄する空気清浄手段を備えているのが好ましい。
このようにすれば、万一、放射線源である放射性核種が飛散するようなことがあっても速やかにかつ効果的に内部の空気を清浄化することができる。
【0034】
〔19〕本発明における前記筐体は、前記筐体が内部の圧力を減圧する減圧手段を備えているのが好ましい。
このようにすれば、万一、放射線源である放射性核種が飛散するようなことがあっても汚染された内部の空気を装置外に散逸するのをより確実に防止することができる。
【0035】
〔20〕本発明における前記筐体に複数用いられるパネル材のうちの少なくとも1つが光透過性を有する材料で形成されているか、または、前記パネル材のうちの少なくとも1つに前記筐体の内部を観察するための観察窓を設けるのが好ましい。
このようにすれば、放射性核種を製造するにあたり、例えば監視カメラ等を設置することによって、光透過性を有するパネル材またはパネル材に設けられた観察窓から製造時の様子を観察することが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る放射性核種製造装置によれば、ターゲット物質の交換、荷電粒子ビームの照射および製造した放射性核種の回収を自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係る放射性核種製造装置の構成を説明する斜視図である。
【図2】回収手段の構成を説明する断面図である。
【図3】第1実施形態に係る放射性核種製造装置を密閉構造の筐体内に収めた様子を説明する斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る放射性核種製造装置の構成を説明する斜視図である。
【図5】本発明の放射性核種製造装置の変形例を説明する斜視図である。
【図6】従来の放射性核種を製造する様子を説明する概略図である。
【図7】(a)および(b)は、従来のターゲット物質の溶融を防止するための対処法の一例を説明する説明図である。
【図8】(a)および(b)は、従来のターゲット物質の溶融を防止するための対処法の他の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明に係る放射性核種製造装置について詳細に説明する。
はじめに、図1および図2を参照して本発明の第1実施形態に係る放射性核種製造装置1Aの構成について説明する。
【0039】
図1に示すように、第1実施形態に係る放射性核種製造装置1Aは、装置外に設けられた加速器から輸送されてきた荷電粒子ビーム(以下、単にビームという。)をターゲット物質に照射して放射性核種を製造する放射性核種製造装置であって、容器固定手段2と、ビーム照射手段3と、進退手段4と、この進退手段4と離間した位置に設けられた回収手段5(図2参照)と、進退手段4と回収手段5との間に設けられた着脱移送手段6と、加熱手段7とを備えている。
【0040】
ここで、ターゲット物質としては、常温で気体、液体および固体(粉体を含む)のものを用いることができる。気体のターゲット物質としては、例えば窒素、アルゴンなどを挙げることができ、これらを用いるとビームの照射によって例えば炭素11、カリウム38などの放射性核種を製造することができる。
また、液体のターゲット物質としては、例えば水(H216O)あるいは(H218O)などを挙げることができ、これらを用いるとビームの照射によって例えば窒素13、フッ素18などの放射性核種を製造することができる。
そして、固体のターゲット物質としては、例えばテルル124、ニッケル64などを挙げることができ、これらを用いるとビームの照射によって、例えばヨウ素124、銅64などの放射性核種を製造することができる。なお、低融点かつ熱伝導性が良くない固体のターゲット物質としては、例えばテルル、セレンおよびこれらの酸化物などを挙げることができ、これらを用いるとビームの照射によって例えばヨウ素124、臭素76などの放射性核種を製造することができる。なお、低融点かつ熱伝導性が良くない固体のターゲット物質を用いた場合であって、発熱が除熱を上回った場合、ターゲット物質の変形や融解といった熱損傷が起きる。
【0041】
これらのターゲット物質は、ビームを照射して放射性核種を製造してもその含有量は殆ど減少しないため長期間にわたって繰り返し使用することができる。したがって、かかるターゲット物質を容器C内に収めて、一旦、容器固定手段2に固定しておけば、ターゲット物質の残量がある限り、ターゲット物質を容器C内に入れ直すことなくビームの照射準備、すなわちターゲット物質の収められた容器Cの容器固定手段2への固定と、容器Cを固定した容器固定手段2のビーム照射手段3への固定とを継続して何回でも繰り返し行うことができる。そして、これを電子制御により自動的に繰り返して行うようにすれば作業者の被ばくを最小限に抑えることができる。
【0042】
加速器は、荷電粒子を加速してビームを取り出すことのできるものであればどのようなものでもよい。例えば10〜30MeVに加速したプロトンあるいはデューテロンのビームを生成できる加速器を用いることができる。このような加速器としては、例えば病院の照射室内に設置されている小型の医療用サイクロトロン(小型サイクロトロン)を挙げることができる。小型サイクロトロンは、サイクロトロンの設置面に対して水平方向に荷電粒子を加速させてビームを取り出すものでもよく、サイクロトロンの設置面に対して鉛直方向に荷電粒子を加速させてビームを取り出すものでもよいが、本発明においてはビームの照射態様から、鉛直方向にビームを取り出す後者を用いるのが好ましい。ビームの取り出しは、ビームの取り出し位置を変更することで行うことができる。具体的には荷電変換装置の取り付け場所を例えば45〜135°の間で目的の角度分ずらすことで実現することが可能である。なお、水平方向に取り出されたビームに対してカーボン製の膜を近接させることで鉛直方向に曲折させることが可能であるので、前者のサイクロトロンであっても後記するビーム照射手段3にビームを導入することができることはいうまでもない。なお、ビームの入射方向は、鉛直方向および水平方向に限定されないことはいうまでもなく、斜め方向からの入射も可能である。
【0043】
容器固定手段2は、例えば、前記したターゲット物質を収めるための容器Cを着脱自在に固定できる固定部21aを有する本体部21と、本体部21の上に重ねる蓋部22とで構成することができる。なお、容器固定手段2は容器Cを固定することができればよく、その構造は限定されるものではない。また、本体部21と蓋部22にはそれぞれ、互いに対向する面において予め設定された対応する位置に、これらを位置決めする位置決め用凸部21bと位置決め用穴部22bを設けておくとよい。このようにすれば、本体部21に蓋部22を重ねたときに蓋部22がずれてしまうなどの不具合を防止することができるだけでなく、蓋部22の重量を用いて蓋部22を本体部21に組み付けられるので、蓋部22の固定に螺子やクランプなどの手作業の要因となるものを省くことができる。また、容器固定手段2をこのような構成とすれば、本体部21と蓋部22とによって容器Cを確実に固定することができるだけでなく、蓋部22を持ち上げて取り外すだけで、容器固定手段2の固定部21aから容器Cを他の所定の位置に移送することが可能となる。
【0044】
また、かかる容器固定手段2は、容器Cを冷却する冷媒を通流させる冷媒通流手段21cを有しているのが好ましい。冷媒は、水やヘリウムなどを用いることができる。冷媒の温度は例えば水であれば5〜40℃程度、気体であれば−40〜30℃程度とするとよい。冷媒通流手段21cは例えば、前記した位置決め用凸部21bに連通穴21dを設けることにより具現することができる。この連通穴21dは、ビーム照射手段3に付設された配管によって冷媒循環装置(いずれも不図示)と接続可能であり、配管と連通穴21dを接続することによって容器固定手段2内に冷媒を循環させることができる。また、容器固定手段2は、後記する進退手段4のチャック41によって係合される係合部21eを設けるのが好ましい。このようにすれば、進退手段4による固定をより確実に行うことができる。
【0045】
ビーム照射手段3は、ターゲット物質を収めるための容器Cを固定する容器固定手段2に向けて加速器から輸送されてきたビームを照射する手段である。ビーム照射手段3としては、ビームの射出端となる所謂ビームダクトが挙げられる。
【0046】
このビーム照射手段3は、放射性核種製造装置1Aの設置面に対してビームを鉛直方向から導入し、鉛直方向に照射するのが好ましい。このようにすれば、ターゲット物質が気体、液体、固体のいずれであっても使用することができるだけでなく、例えば低融点かつ熱伝導性が良くない固体のターゲット物質を用いる場合であっても、ビームの照射によって溶融したターゲット物質を重力により容器Cの底部に集め、略均一の厚さで貯留することが可能となる。そのため、重力によって放射性核種やターゲット物質が落下してしまうのを防止するための落下防止機構が不要となり、溶融後のターゲット物質を用いて放射性核種を製造する場合であっても十分な核反応を起こすための厚みを維持することができる結果、安定した収量を得ることが可能となる。
【0047】
したがって、溶融したターゲット物質を貯留することができるようにビームの照射方向を放射性核種製造装置1Aの設置面に対して鉛直方向となるようにするのが好ましい。そのため前記したようにサイクロトロンの設置面に対して鉛直方向に荷電粒子を加速させてビームを取り出すものを用いるのが好ましい。
【0048】
なお、図1においてはビームを照射するビーム照射手段3を容器固定手段2の上方に設け、ビームが下向きとなるようにしているがこれに限定されるものではない。前記したようにビームの照射は鉛直方向であればよいので容器固定手段2の下方にビーム照射手段3を設け、ビームが上向きとなるようにしてもよい。このようにビームの向きが変わっても、ビームの照射によって溶融したターゲット物質を重力により容器Cの底部に集め、略均一の厚さで貯留することが可能だからである。
【0049】
なお、ビーム照射手段3によるターゲット物質へのビームの照射角度は、ターゲット物質に対して垂直(90°)となるようにしてもよいが、若干斜めに照射するようにしてもよい。このようにすると、ビーム衝突面積を増大させ、単位面積あたりの発熱量を減少させることができる。ターゲット物質へのビームの照射角度は、例えば90°(垂直)〜30°とすることができる。
【0050】
進退手段4は、容器固定手段2を保持してビーム照射手段3に対し着脱自在に進退させる手段である。進退手段4による容器固定手段2の保持は、図1に示すように複数(例えば2つから5つ程度)の係止部(係止爪)や把持部を有するチャック41により行うことができる。また、容器固定手段2を進退させる手段としては、例えばエアシリンダや油圧シリンダなどのアクチュエータを用いることができる。かかる構成の進退手段4はビーム照射手段3近傍に設けることができる。例えば、進退手段4をビーム照射手段3に付設し、アクチュエータを退縮させたときの退縮力により容器固定手段2を引き寄せてビーム照射手段3に密着固定させるようにし、アクチュエータを進出(伸長)させることにより容器固定手段2をビーム照射手段3から脱離させるようにするのが好ましい。したがって、前記したビーム照射手段3はアクチュエータの退縮力によって破壊されない程度の強度を有するようにする必要がある。このような構成とすれば、アクチュエータをビーム照射手段3と対向する位置に設ける場合と比較してアクチュエータの設置スペースを確保したりアクチュエータ自体を高強度化させたりする措置を図らなくてもよいので装置の簡素化、小型化、軽量化を図ることができる。
【0051】
説明の便宜上、回収手段5の説明の前に着脱移送手段6について説明する。
着脱移送手段6は、前記したように、進退手段4と後記する回収手段5との間に設けられ、進退手段4が進出してビーム照射手段3から脱離し、第1の所定の位置P1に位置した容器固定手段2の固定部21aに対して容器Cの着脱を行い、固定部21aから脱離した容器Cを、当該固定部21aと、後記するように放射性核種の回収を行う第4の所定の位置P4を含む回収手段5との間で移送させる手段である。
【0052】
着脱移送手段6は、進退手段4が進出または退縮してビーム照射手段3から脱離した容器固定手段2および容器固定手段2から脱離した容器Cのうちの少なくとも一方を水平方向に移送させる水平移送手段と、この水平移送手段によって移送された容器固定手段2から容器Cを保持して鉛直方向に移送させ、または水平移送手段によって移送された容器Cを鉛直方向に移送させて回収手段5に格納する鉛直移送手段とを有するようにするのが好ましい。このようにすれば、ビーム照射手段3と、着脱移送手段6と、回収手段5とを立体的に配置することが可能となるので、装置の専有面積を小さくすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0053】
着脱移送手段6について具体例を挙げて説明すると、図1に示すように、第1着脱移送手段6Aと、第2着脱移送手段6Bと、第3着脱移送手段6Cとを有して構成されている。
なお、図1中の第1着脱移送手段6Aと第2着脱移送手段6Bが前記した水平移送手段に相当し、第3着脱移送手段6Cが前記した鉛直移送手段に相当する。
【0054】
図1に示す第1着脱移送手段6Aは、容器固定手段2を着脱自在に保持し、かつ保持した容器固定手段2を、容器固定手段2とビーム照射手段3とを着脱する第1の所定の位置P1と、第1の所定の位置P1とは異なる第2の所定の位置P2との間で水平方向に移送させるものである。
【0055】
このような第1着脱移送手段6Aとしては、容器Cを係合して保持することのできる係合保持手段61aを1つ以上有した(図1ではかかる係合保持手段61aを4つ有している様子を示している)、水平方向において左右回転自在なターンテーブル61などを用いることができる。なお、図1に示すターンテーブル61の4つの係合保持手段61aのそれぞれに係合保持された容器固定手段2に異種のターゲット物質を収めた容器Cを固定すれば必要に応じて異なる種類の放射性核種を製造することが可能となる。なお、複数ある係合保持手段61aに同種のターゲット物質を収めた容器Cを固定してもよい。
【0056】
係合保持手段61aは、容器固定手段2の外形、例えば容器固定手段2の平面視の形状の少なくとも一部と合致する形状に形成された凹部などとすれば容器固定手段2を好適に係合して保持することができる。
【0057】
第2着脱移送手段6Bは、容器Cを着脱自在に保持し、かつ保持した容器Cを、第2の所定の位置P2と、第1の所定の位置P1および第2の所定の位置P2とは異なる第3の所定の位置P3との間で水平方向に移送させるものである。
【0058】
ここで、前記したように容器固定手段2が容器Cを固定する本体部21と、本体部21の上に重ねる蓋部22とからなる場合、当該第2着脱移送手段6Bは、蓋部22を保持する第1保持部62aと、容器Cを保持する第2保持部62bとを有するとよい。第1保持部62aは保持する対象である蓋部22を保持することができ、第2保持部62bは保持する対象である容器Cの保持と水平方向の回転を自在に行うことができればよい。したがって、このような第1保持部62aおよび第2保持部62bとしては、例えば2〜5つ程度の係止部や把持部を有するチャックを例示することができる。また、第2保持部62bが水平方向に自転することにより、容器Cの水平方向における角度を自在に制御することができる。
【0059】
かかる第1保持部62aと第2保持部62bは離間して設けておくのが好ましい。このようにすれば、第1保持部62aで保持した蓋部22と第2保持部62bで保持した容器Cとの干渉を防ぐことが可能となる。また、第1保持部62aと第2保持部62bを同一円周上において45〜180°の開き角度、具体的には90°の開き角度で設けておくのがより好ましい。このようにすれば、保持した蓋部22と容器Cとの干渉をより確実に防ぐことができる。
【0060】
このような開き角度で第1保持部62aと第2保持部62bを設けるには、例えば前記開き角度で形成された、同じ長さのアーム部を2つ有する略L字状のアーム部材(L字型アーム部材62c)を用い、2つの先端のそれぞれに第1保持部62aと第2保持部62bを設ければよい。
L字型アーム部材62cは、軸回りに左右回転自在であり昇降自在な軸部材62dの先端部に、L字型アーム部材62cの屈曲部62fを着設すれば前記したように第1保持部62aと第2保持部62bを同一円周上で移動させることができる。
【0061】
なお、蓋部22は平面視で容器固定手段2と略同じ大きさとなるため、第1保持部62aが蓋部22を保持したまま第2保持部62bが容器Cを移送させると安定性が悪くなるなどの理由がある場合は、第1保持部62aによって本体部21から取り外した蓋部22を一時的に載置しておく(退避させておく)載置台62eを第2の所定の位置P2の近傍に設けてもよい。このようにすれば、蓋部22を載置台62eに一時的に載置しておくことができるので、容器Cを安定して移送することができる。
【0062】
第3着脱移送手段6Cは、容器Cを着脱自在に保持し、かつ保持した容器Cを、第3の所定の位置P3と、第1の所定の位置P1、第2の所定の位置P2および第3の所定の位置P3とは異なる位置であって回収手段5内となる第4の所定の位置P4との間で鉛直方向に移送させるものである。
【0063】
第3着脱移送手段6Cは、容器Cを回収手段5内に格納するために、例えば第3の所定の位置P3において第2着脱移送手段6Bで脱離させた容器Cを載置する載置手段63と、当該載置手段63を第3の所定の位置P3と第4の所定の位置P4との間を往復動できる往復動手段64とを有するようにすることを例示することができる。
【0064】
載置手段63としては、例えば容器Cを載せることができる程度の面積を有する載置部63aと、当該載置部63aを支持する支持棒63bとで構成することができる。載置部63aおよび支持棒63bは加熱手段7の加熱によって変形や損壊等しないアルミナやセラミック、金属などを用いて作製するとよい。なお、載置部63aには、図示しない赤外線センサなどを用いて容器Cの有無の確認を行うようにするのが好適である。
【0065】
往復動手段64としては、前記した支持棒63bと連結され、当該支持棒63bを例えば上下に昇降可能なエアシリンダ、油圧シリンダ、電気モータなどのアクチュエータを用いることができる。また、このアクチュエータには載置部63aと後記する回収手段5とが接触する際の衝撃を緩和するためのショックアブソーバを設けておくのが好ましい。
【0066】
回収手段5は、前記したように進退手段4と離間した位置に設けられ、容器Cを格納して当該容器C内の放射性核種を回収する手段である。
回収手段5は、例えば図2に示すように、往復動手段64(図1参照)によって第4の所定の位置P4まで容器Cを載置して移送してきた載置部63aを挿入できるように一端部が開口した大径の本管部51と、この本管部51よりも小径であって、開口した一端部52aが本管部51内に収められており、開口した他端部52bが本管部51外に延出している第1の枝管部52と、開口した一端部53aが本管部51内に収められており、開口した他端部53bが本管部51外に延出している第2の枝管部53とを有している。本管部51の開口した部分にはフランジ部54を設けるのが好ましく、このフランジ部54に載置部63aとの密封性を向上させるための金属製のシール部材63cを取り付けておくのがより好ましい。また、このようにフランジ部54を設けておくと、前記した載置手段63にフランジ部54に係止する係止ストッパを設けておくことで本管部51と載置部63aの密封性をさらに向上させることができる。
【0067】
この第1の枝管部52は、前記した他端部52bから一端部52aを通って本管部51内に気体を導入できるように装置外のエアポンプやガスボンベなどの送気手段(不図示)と接続されている。第1の枝管部52は、好ましくは本管部51内の上方に設ける。このようにすれば、加熱して生ずる上昇気流によって導入する気体を予備的に加熱することができるので、導入された気体による回収手段5内の冷却防止を図ることができる。なお、当該気体としてはヘリウムガスや酸素ガスを用いることができる。気体は、例えば圧力を0.2〜0.3MPa程度、流速を5〜100cc/分などとすることができる。
【0068】
また、第2の枝管部53の一端部53aは、第4の所定の位置P4に移送された容器C、つまり回収手段5内に格納された容器Cと接触しない程度の大きさでこれを覆う形状で形成されている。
そして、この一端部53aから本管部51の中心軸に対して垂直となる方向に延出させ、さらにその一部を適宜曲折させてその開口部が下方を向くように第2の枝管部53の他端部53bが設けられている。そして、この他端部53bには、加熱手段7による加熱によって揮発し、第1の枝管部52から導入された気体によって搬送された放射性核種を捕集する捕集溶液保持部55が設けられている。このように、第2の枝管部53の他端部53bを本管部51の中心軸に対して垂直となる方向に延出させることにより、加熱手段7外に捕集溶液保持部55を配置することが可能となる。したがって、加熱手段7によって発せられた熱が捕集溶液に伝達するのを低減させることができる。
【0069】
この捕集溶液保持部55は、放射性核種の回収時には捕集溶液保持部55の下方に設けられた捕集溶液入出部55aから捕集溶液の導入と導出を行うことができるようになっているとともに、捕集溶液保持部55の上方に設けられた排気口部55bによって他端部53bからの気体を排出することができるようになっている。また、第2の枝管部53の他端部53bは、導入された捕集溶液中に浸るように設けられている。
【0070】
このようにすると、第1の枝管部52から導入された気体によって搬送された放射性核種を第2の枝管部53の他端部53bの開口部から送出させることにより捕集溶液と接触させることができ、当該捕集溶液に溶存させて回収することが可能となる。なお、第2の枝管部53の他端部53bは、先端にいく程縮径するテーパ状とし、その開口部を小さくするのが好ましい。このようにすると、開口部から送出される気体のサイズを小さくすることができるため、気体と捕集溶液との接触面積を大きくすることが可能となる。したがって、効率よく放射性核種を捕集溶液に溶存させることが可能となる。
【0071】
かかる回収手段5は、図2に示すように、例えばフランジ部54と、本管部51から延出した第2の枝管部53と、捕集溶液保持部55とを加熱手段7外とし、本管部51が加熱手段7内となるようにして設けるとよい。
なお、前記した回収手段5は石英製とすると、耐熱性に優れているので後記する加熱手段7により高温で加熱されても損壊し難いため好ましい。
【0072】
捕集溶液としては、例えば超純水、6mol/L以下の水酸化ナトリウム水溶液あるいは水酸化カリウム水溶液、塩酸、硫酸あるいは硝酸、過酸化水素水、メタノール、エタノール、2種の構造異性体を含むプロパノール、4種の構造異性体を含むブタノール、8種の構造異性体を含むペンチルアルコール、グリセロール、フェノール、ベンジルアルコール、アセトン、塩化メチレン(ジクロロメタン)、クロロホルム(トリクロロメタン)、四塩化炭素、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼンなどの中から生成した放射性各種を捕集するのに適したものを選択して用いることができる。
【0073】
加熱手段7は、回収手段5を加熱するものである。加熱手段7としては、例えば電気ヒーター、インダクションヒーター、マイクロウェーブなどを用いることができる。かかる加熱手段7の加熱温度は100〜1200℃とすれば、製造した放射性核種を揮発させることができる。加熱手段7による加熱は高温となるので、加熱手段7外に熱が伝わらないよう石綿やセラミックなどの断熱材で覆うのが好ましい。
【0074】
容器Cは、加熱手段7の加熱に耐えることができ、冷媒による冷却を効率よく行うことができ、ターゲット物質や放射性核種と化学反応を起こし難い物質で形成するのがよい。このような物質としては、例えば金、白金、イリジウム、ニッケル、銅、チタン、アルミニウム、銀、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、クロム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、コバルト、鉄、ニッケル合金、ステンレス鋼、セラミックスなどを挙げることができる。
【0075】
容器Cには、前記した第2着脱移送手段6Bによる保持を容易とするため容器Cの一部の肉厚を薄くした凹部や溝部を設けてもよい。
また、容器Cの壁部には、加熱手段7の加熱によって揮発させた放射性核種を回収手段5によって回収させるため、収められているターゲット物質が漏出しない十分高い位置に例えば直径1mmφ以下の大きさの貫通孔を設けるとよい。このようにすれば、かかる貫通孔を通じて容器C内から放射性核種を回収することが可能となる。
【0076】
さらに、この容器Cには周回りにその一部を突出させた係止爪(不図示)を設けておき、前記した容器固定手段2には当該係止爪が嵌入可能な係止穴(不図示)と、この係止穴から連続して設けられた係止溝(不図示)を適宜設けておくことができる。なお、係止溝は、係止爪の嵌入方向に対して垂直な方向に容器Cを90°程度回転できるように任意の長さで形成することができる。このようにすると、容器Cの係止爪を容器固定手段2の係止穴に嵌入し、さらに容器Cを係止溝に沿って回転させると、容器Cと容器固定手段2の固定を確実なものとすることができる。
このような、容器Cの係止爪と容器固定手段2の係止穴の係合(嵌入)、および容器Cの回転は、前記した第2保持部62bにより行うことができる。
【0077】
また、容器Cは、ターゲット物質を収めた後、開口している開口部を金属箔(いずれも不図示)で封止するのがよい。金属箔での封止は、EBW(Electronic Beam Welding)によって行うことができるが、例えば図示しない押さえリングを内挿または外挿させ、当該押さえリングと開口部とによって前記した金属箔を固定してもよい。金属箔は容器Cと同様の物質を用いて作製することができ、その厚さは例えば50μmなどとすることができる。かかる金属箔で開口部を封止することにより、生成した放射性核種が回収手段5にて回収する前に揮発して損失してしまうのを防ぐことができる。
【0078】
本発明に係る放射性核種製造装置1Aは、図3に示すように、前記した各構成要素を密閉構造の筐体10内に収めるのが好ましい。万一、放射線源である放射性核種が飛散するようなことがあっても汚染範囲を筐体10内に止めることができるからである。
【0079】
このような密閉構造の筐体10は、例えば、任意の箇所にネジ穴(不図示)を形成した支柱11と、当該支柱11のネジ穴と対応する位置にネジ穴(不図示)を形成した複数枚のパネル材12とを用い、これらのネジ穴が一致するように配置して当該ネジ穴にネジ(不図示)を螺入して固定することで形成することができる。かかるパネル材12により筐体10の内外を隔絶することができる。なお、支柱11およびパネル材12のいずれか一方に密閉性を高めるためのシール部材(不図示)を設けてもよい。
【0080】
支柱11は、例えばL型鋼、H型鋼、平鋼などの鉄鋼材を用いて形成することができ、前記したパネル材12は、鋼板、アルミニウム板、樹脂板、強化ガラス板などを用いて形成することができる。これらの中でも樹脂板は、軽量かつ高強度であるため取り扱いが容易であるため好ましく、さらに、アクリル板などの透過性を有するものを用いるとパネル材12を取り外さなくても筐体10内の確認、観察を行うことができるのでより好ましい。なお、透過性を有しないパネル材12であっても、放射性核種製造装置1Aの必要な箇所について内部を観察することができる観察窓12dを設けることで筐体10内の確認、観察を行うことが可能となる。
【0081】
なお、樹脂板や強化ガラス板などの金属以外の材質でできたパネル材12を用いるときは、その周囲をステンレス材やアルミニウム材などの金属製の枠部材12aで囲ってもよい。また、パネル材12には、当該パネル材12を持ち易いように例えばコ字状の把持部材12bを設けてもよい。さらに、パネル材12の一部に、筐体10内へのアクセスを容易とするための窓部12cを設けてもよい。
【0082】
また、筐体10には、筐体10内の空気を清浄する空気清浄手段13を備えるのが好ましい。
空気清浄手段13は、筐体10内で開口する吸入口13aと、例えば活性炭フィルタやHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)、ULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air Filter)などのろ過フィルタ13bと、このろ過フィルタ13bの下流に設けられ、このろ過フィルタ13bを介して筐体10内の空気を引き込むように送風するブロワやファンなどの送風機13cと、を備えた空気清浄機を用いることができる。なお、ブロワとは、圧縮比1.1〜2程度で送風することのできる送風機をいい、ファンとは、圧縮比1.1以下で送風することのできる送風機をいう。このようにすれば、効率的に空気の清浄を行うことができる。
【0083】
送風機13cによって引き込まれ、空気清浄手段13によって清浄化された空気は、筐体10内に設けられた排出口13dから再び筐体10内に戻されるようにするのが好ましい。このように、筐体10内で空気を循環させることにより、万一、放射線源である放射性核種が飛散するようなことがあっても速やかにかつ効果的に内部の空気を清浄化することができる。
【0084】
さらに、筐体10には、筐体10内の圧力を減圧する減圧手段14を備えるのが好ましい。減圧手段14は、市販されている排気ポンプを用いることができる。減圧手段14は、前記した空気清浄手段13、少なくともろ過フィルタ13bを介して接続されるのが好ましい。かかる減圧手段14による減圧は、筐体10内の圧力が大気圧より10Pa程度低くなるようにすればよい。このようにすれば、万一、放射線源である放射性核種が飛散するようなことがあっても汚染された内部の空気を装置外に散逸するのをより確実に防止することができる。
【0085】
その他、筐体10には、ビーム照射手段3へのビームの輸送を可能とさせるための接続部10aや、回収手段5によって回収された放射性核種の装置外(筐体10外)への輸送を可能とさせるための放射性核種輸送手段(不図示)や各手段等の制御、電力供給等を可能とするポート(不図示)などが適宜に設けられている。
【0086】
なお、放射性核種製造装置1Aの近傍にはさらに、当該装置から放出される放射線をより確実に遮蔽するための遮蔽体15を設けてもよい。遮蔽体15は床面に固設したものであっても構わないが、放射性核種製造装置1Aにアクセスしたいとき、作業場所近傍を遮蔽したいときなど、状況に応じて適宜移動させることができるように、床面に設けたレール15a上を設け、このレール15a上をスライドさせるようにするのが好ましい。このようにすれば遮蔽体15を容易に移動させることができる。
【0087】
引き続き、図1を参照して本発明の第1実施形態に係る放射性核種製造装置1Aの動作について説明する。
まず、ビームの照射準備からビームの照射、容器Cの移送、容器Cからの放射性核種の回収を経て次回のビームの照射準備を行う動作の概略を説明すると、以下のようになる。
【0088】
図1に示すように、進退手段4が、内部にターゲット物質が収められた容器Cを固定部21aに固定した容器固定手段2を保持し、これをビーム照射手段3に向けて退縮させ、密着固定する。この状態でビームの照射準備は完了するので、続いてビームの照射を行う。
ビームの照射後は、進退手段4を進出させてビーム照射手段3に密着させた容器固定手段2を脱離させ、着脱移送手段6に保持させる。そして、着脱移送手段6は容器固定手段2から容器Cを把持して取り出して移送し、加熱手段7内の回収手段5に格納する。
次に、回収手段5に格納した容器Cを加熱手段7によって加熱し、容器C内にある放射性核種を回収して装置外へ輸送する。
放射性核種を回収した容器Cは再び着脱移送手段6によって移送され、容器固定手段2の固定部21aに固定される。そして、進退手段4は、容器Cを固定した容器固定手段2を保持し、これをビーム照射手段3に向けて退縮させ、密着固定する。容器C内には、前回のビームの照射によって生成された放射性核種は既に回収されており、ターゲット物質が残存しているので、これにより次回のビームの照射準備を完了させることができる。
【0089】
前記した放射性核種製造装置1Aの動作について、ヨウ素124の製造を例にして、より具体的に説明する。
【0090】
まだビームを照射していない新規のターゲット物質を収めた容器Cを用いて行うビームの照射準備は次のようにして行う。
容器固定手段2の本体部21の中にターゲット物質(二酸化テルル(124TeO2))を収めた容器Cを置く。このとき、容器Cの係止爪を容器固定手段2の係止穴に係止させ、容器Cを90°回転させて固定する。その後、容器固定手段2の本体部21の上に蓋部22を重ねて自身の重量で固定し、ターンテーブル61の係合保持手段61aに係合保持させる。ここまでは被ばくのおそれはないので作業者の手作業により行っても構わない。
【0091】
次に、ターンテーブル61の係合保持手段61aに係合保持させた容器固定手段2を用いてビームの照射準備を行う。
ターンテーブル61の係合保持手段61aに係合されて保持された容器固定手段2を、ターンテーブル61を回転させて第1の所定の位置P1に移送する。容器固定手段2が第1の所定の位置P1まで移送されたら、アクチュエータ(進退手段4)でチャック41を進出させ、容器固定手段2の係合部21eに係合させる。チャック41が容器固定手段2の係合部21eを係合したらアクチュエータで当該チャック41を退縮させ、容器固定手段2をビーム照射手段3に密着固定させる。容器固定手段2とビーム照射手段3の密着固定が完了したら、図示しない冷媒循環装置と接続された配管と連結した連通穴21dから容器固定手段2内にターゲット物質を冷却するための冷媒を通流させる。
【0092】
容器固定手段2内に冷媒を通流させ、準備が整ったら加速器からビームを輸送させてビーム照射手段3により、容器固定手段2に固定された容器Cに向けてビームの照射を行う。これにより、ターゲット物質に核反応を起こさせ、放射性核種を生成させる。
【0093】
ビームの照射が終了した後は、ターゲット物質冷却用の冷媒を排出した後、アクチュエータを進出させてビーム照射手段3と容器固定手段2の密着固定を解き、当該容器固定手段2を下方に移送させて第1の所定の位置P1にあるターンテーブル61の係合保持手段61aに係合保持させる。次いでターンテーブル61を回転させて容器固定手段2を第2の所定の位置P2に移送する。
【0094】
容器固定手段2を第2の所定の位置P2に移送させたら、L字型アーム部材62cの第1保持部62aとして機能するチャックが容器固定手段2上に位置するようにL字型アーム部材62cを回転させる。しかる後、L字型アーム部材62cを降下させて当該チャック(第1保持部62a)により容器固定手段2の蓋部22を把持させる。そして、L字型アーム部材62cを上昇させて蓋部22を保持した第1保持部62aが載置台62e上に位置するように回転させ、載置台62e上に第1保持部62aが到着したらこれを降下し、第1保持部62aを開いて当該載置台62e上に蓋部22を載置する。
【0095】
第1保持部62aが蓋部22を載置台62eに載置すると、他方の第2保持部62bとして機能するチャックは蓋部22が取り外されて露出した容器Cを保持することのできる状態となっているので、第2保持部62bを閉じて容器Cを保持する。第2保持部62bが容器Cを保持したらL字型アーム部材62cを上昇させて回転させる。そして、第2保持部62bが第3の所定の位置P3の上方に到着したらL字型アーム部材62cを降下させ、第2保持部62bに保持された容器Cを第3の所定の位置P3に移送させる。
【0096】
第3の所定の位置P3には容器Cを回収手段5内に格納するための載置部63aがあるので、当該載置部63aに容器Cを載置して第2保持部62bを開いて容器Cを第2保持部62bから脱離させる。その後、L字型アーム部材62cを上昇させて回転させ、第2保持部62bが載置部63aと回収手段5の間において障害とならないよう退避させる。
【0097】
そして、アクチュエータ(往復動手段64)により載置部63aを上昇させ、図2に示すように、当該載置部63aに載置した容器Cを第4の所定の位置P4に移送する。この第4の所定の位置P4は回収手段5内にあるため、この位置に容器Cを移送することで容器Cを回収手段5内に格納することができる。容器Cが第4の所定の位置P4に移送されると、載置手段63のシール部材63cが回収手段5のフランジ部54と当接するため、本管部51内を密封することができる。
【0098】
次いで、密封した本管部51内に第1の枝管部52の他端部52bから、送気手段によって気体を導入する。本管部51は密封されているので、導入された気体は、第2の枝管部53の一端部53aから他端部53bを通り、捕集溶液保持部55を経由して排気口部55bから排出される。
【0099】
気体の流速が安定したら加熱手段7により回収手段5を加熱する。これにより、当該回収手段5内に格納されている容器Cの加熱を行うことができ、結果的に容器C内のターゲット物質表面から放射性核種を遊離することができる。遊離(揮発)した放射性核種は、第1の枝管部52から導入される気体によって第2の枝管部53の一端部53aから他端部53bを通り、捕集溶液保持部55に移送される。
【0100】
捕集溶液保持部55は、加熱に先立って生成した放射性核種を回収するのに適した(相溶性の良い)捕集溶液を捕集溶液入出部55aから導入しておくことにより、導入された気体によって移送された放射性核種を捕集溶液と接触させることができ、これを捕集することが可能となる。
【0101】
放射性核種を捕集した捕集溶液は捕集溶液入出部55aから導出される。このとき、前記した排気口部55bを図示しない開閉弁によって閉止すれば、第1の枝管部52から導入された気体は捕集溶液入出部55aから排出されようとするので、当該気体の圧力によって捕集溶液の排出を好適に行うことができる。捕集溶液入出部55aから導出された捕集溶液は気体により装置外に圧送される。
【0102】
放射性核種の回収を行った後の容器Cは、以上に説明した順序と逆の動作が行われることで次回のビームの照射準備を完了することができる。
【0103】
すなわち、加熱手段7による加熱を停止し、加熱手段7の温度が室温程度に下がったら載置手段63を降下させてフランジ部54と載置手段63を離し、容器Cを第4の所定の位置P4から第3の所定の位置P3に移送する。
【0104】
容器Cが第3の所定の位置P3に移送されたらチャック(第2保持部62b)を回転させて第3の所定の位置P3の上、すなわち容器Cの上に移動させ、降下させる。そして、第2保持部62bを閉じて容器Cを保持したらL字型アーム部材62cを上昇させてこれを回転させることにより第2保持部62bを第2の所定の位置P2の上方に移動させる。
【0105】
第2保持部62bを第2の所定の位置P2の上方に移動させたら、L字型アーム部材62cを降下させる。これにより容器Cを第2の所定の位置P2に移送することができる。この第2の所定の位置P2には、ターンテーブル61の係合保持手段61aに係合保持された容器固定手段2があるので、容器固定手段2の固定部21aに容器Cを嵌入して第2保持部62bを水平方向に90°回転させ、容器Cを固定した後、第2保持部62bを開いて容器Cを脱離させる。
また、このとき、一方の第1保持部62aは載置台62eの蓋部22を保持できる状態にあるので第1保持部62aを閉じてこれを保持する。
【0106】
しかる後、L字型アーム部材62cを上昇させて蓋部22を保持する第1保持部62aが容器固定手段2の上方に位置するように回転させ、蓋部22が当該位置に到着したらL字型アーム部材62cを降下させる。第1保持部62aの保持する蓋部22を本体部21に重ねたら第1保持部62aを開いて蓋部22を脱離させる。このとき、蓋部22の位置決め用穴部22bと、本体部21の位置決め用凸部21bとを一致させる。
【0107】
第1保持部62aが蓋部22を脱離させたら、L字型アーム部材62cを再び上昇させ、次いで行うターンテーブル61の回転の妨げとならないようにする。L字型アーム部材62cを上昇させたらターンテーブル61を回転させて第1の所定の位置P1に容器固定手段2を移送する。
【0108】
第1の所定の位置P1に容器固定手段2が移送されたら、進退手段4によりチャック41を進出させて容器固定手段2を保持して固定した後、進退手段4を退縮させて容器固定手段2をビーム照射手段3に密着固定する。これにより、次回のビームの照射準備を完了することができる。
【0109】
以上に説明したように、本発明に係る放射性核種製造装置1Aの構成および動作によれば、ビームの照射準備と照射、および製造した放射性核種の移送と回収を自動的に行うことができる。そのため、作業者の被ばくを最小限に抑えることができる。
また、本発明に係る放射性核種製造装置1Aによれば、ターゲット物質の厚さの調整を行わなくてよいため、厳密なエネルギー範囲が求められる製造現場においても再現性を得ることが容易であり、また、添加物等を添加しなくてもすむので目的とする放射性核種以外の不純物の混入もなく、保持しているターゲット物質や生成した放射性核種が冷却系配管などへ逸脱するおそれもないという利点がある。
また、本発明に係る放射性核種製造装置1Aが密封構造の筐体10を有する場合、さらに、万一、放射線源である放射性核種が飛散するようなことがあっても汚染範囲を大幅に小さく限定できるという利点がある。
【0110】
以上に説明した本発明に係る放射性核種製造装置1Aは、テルル124(124Te)を含む二酸化テルル(124TeO2)をターゲット物質として用い、これに約12MeVに加速したプロトンを照射して124Te(p,n)124I反応を行い、ヨウ素124(124I)を生成させ、これを放射性核種として回収させると、得られた124Iはビーム照射終了時換算で230μCi/μAhの収率を与えた。また、124Iの回収効率は93%以上であった。
【0111】
以上、図1および図2を参照して本発明の第1実施形態に係る放射性核種製造装置1Aについて説明したが、本発明の内容はこれに限定されるものではない。
以下に、図4を参照して本発明の第2実施形態に係る放射性核種製造装置1Bについて説明する。なお、既に詳述した第1実施形態に係る放射性核種製造装置1Aと同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略することとする。
【0112】
図4に示すように、第2実施形態に係る放射性核種製造装置1Bは、図1に示した第1実施形態に係る放射性核種製造装置1Aで説明した加熱手段7および回収手段5を、放射性核種製造装置1Aの第2の所定の位置P2の上方に位置するように配置するとともに、第2の所定の位置P2の下方に載置手段63を配置している。
【0113】
つまり、第2実施形態に係る放射性核種製造装置1Bの構成は、第1実施形態に係る放射性核種製造装置1Aの構成と比較して第2着脱移送手段6Bを省略し、第1着脱移送手段6Aに引き続いて第3着脱移送手段6Cが配置される構成となっており、放射性核種製造装置1Aの第2の所定の位置P2と、放射性核種製造装置1Bの第3の所定の位置P3とは同じ位置になる。そのため、第2実施形態に係る放射性核種製造装置1Bにおいては、第1の所定の位置P1の後に第3の所定の位置P3が続き、さらにその後に第4の所定の位置P4が続く構成となる。
第2実施形態に係る放射性核種製造装置1Bをこのように構成すると、よりいっそう装置の簡略化および小型化を図ることができるので好ましい。
なお、図4中の第1着脱移送手段6Aが前記した水平移送手段に相当し、第3着脱移送手段6Cが前記した鉛直移送手段に相当する。
【0114】
ここで、第2実施形態に係る放射性核種製造装置1Bの場合、第3の所定の位置P3(第1実施形態に係る放射性核種製造装置1Aの第2の所定の位置P2)において往復動手段64による載置手段63の往復動を可能とするために、ターンテーブル61に設けられる係合保持手段61aを2つ以上有するようにし、かつその中の少なくとも1つの係合保持手段61aには容器固定手段2を係合保持させないでブランクの状態とするか、または、ターンテーブル61の上面から下面にかけて貫通するようにその一部を切り欠くかする必要がある(図4は前者の構成を採用した様子を示している。)。このようにすれば、前記したブランクまたは切り欠いた部分を利用して往復動手段64による載置手段63の往復動を行うことができる。
【0115】
この第2実施形態に係る放射性核種製造装置1Bの場合、次のように動作することで、第1実施形態に係る放射性核種製造装置1Aと同様に照射準備と照射、および製造した放射性核種の移送と回収を経て次回のビームの照射準備を行うことができる。
【0116】
なお、ビームを照射していない新規のターゲット物質を収めた容器Cを用いて行うビームの照射準備、ターンテーブル61の係合保持手段61aに係合保持させた容器固定手段2を用いたビームの照射準備、容器固定手段2に固定された容器Cに向けたビームの照射、および、ビームの照射が終了した後、容器固定手段2を第3の所定の位置P3に移送し、第2保持部62bが容器Cを保持するまでの動作は、第1実施形態に係る放射性核種製造装置1Aと同様にして行うことができるので、詳細な説明を省略する。
【0117】
ビームの照射を終了した後、第1実施形態に係る放射性核種製造装置1Aと同様にして第2保持部62bが容器Cを保持したらL字型アーム部材62cを上昇させ、ターンテーブル61を回転させて前記したブランクまたは切り欠いた部分がターンテーブル61の下方であって第3の所定の位置P3の下方に配置された載置手段63をターンテーブル61と略同じ高さまで上昇させる。次いで、容器Cを保持した第2保持部62bを降下させ、容器Cが載置手段63の載置部63aに当接したら第2保持部62bを開いて当該載置部63a上に容器Cを載置する。その後、L字型アーム部材62cを上昇させて回転させ、第2保持部62bが載置部63aと回収手段5の間において障害とならないよう退避させる。
【0118】
そして、アクチュエータ(往復動手段64)により載置部63aを上昇させ、当該載置部63aに載置した容器Cを第4の所定の位置P4に移送し、第1実施形態に係る放射性核種製造装置1Aと同様にして放射性核種を回収する。放射性核種の回収後、加熱手段7による加熱を停止し、加熱手段7の温度が室温程度に下がったら、載置手段63を降下させてフランジ部54と載置手段63を離し、容器Cを第4の所定の位置P4から下方の第3の所定の位置P3に移送する。
【0119】
容器Cが第3の所定の位置P3に移送されたら第2保持部62bを回転させて第3の所定の位置P3の上、すなわち容器Cの上に移動させ、降下させる。そして、第2保持部62bを閉じて容器Cを保持したらL字型アーム部材62cを上昇させ、ターンテーブル61を回転させる。ターンテーブル61を回転させることによって容器Cを保持した第2保持部62bの下方に容器固定手段2が到着したらL字型アーム部材62cを下降させ、容器固定手段2の固定部21aに容器Cを嵌入して第2保持部62bを水平方向に90°回転させて容器Cを固定した後、第2保持部62bを開いて容器Cを脱離させる。
また、このとき、一方の第1保持部62aは載置台62eの蓋部22を保持できる状態にあるので第1保持部62aを閉じてこれを保持する。
【0120】
しかる後、L字型アーム部材62cを上昇させて蓋部22を保持する第1保持部62aが容器固定手段2の上方に位置するように回転させ、蓋部22が当該位置に到着したらL字型アーム部材62cを降下させる。第1保持部62aの保持する蓋部22を本体部21に重ねたら第1保持部62aを開いて蓋部22を脱離させる。このとき、蓋部22の位置決め用穴部22bと、本体部21の位置決め用凸部21bとを一致させる。
【0121】
第1保持部62aが蓋部22を脱離させたら、L字型アーム部材62cを再び上昇させ、次いで行うターンテーブル61の回転の妨げとならないようにする。L字型アーム部材62cを上昇させたらターンテーブル61を回転させて第1の所定の位置P1に容器固定手段2を移送する。
【0122】
第1の所定の位置P1に容器固定手段2が移送されたら、進退手段4によりチャック41を進出させて容器固定手段2を保持して固定した後、進退手段4を退縮させて容器固定手段2をビーム照射手段3に密着固定する。これにより、次回のビームの照射準備を完了することができる。
【0123】
また、第1実施形態に係る放射性核種製造装置1Aおよび第2実施形態に係る放射性核種製造装置1Bの変形例として次のものを挙げることができる。
例えば、図5に示すように、進退手段4をビーム照射手段3の下方に設けてもよい。このようにすると、第1の所定の位置P1で容器固定手段2を押し上げるように進退手段4を進出させれば、その押圧力により容器固定手段2をビーム照射手段3に密着固定させることができる。またこれとは反対に、進退手段4を退縮させれば密着固定を解くことができ、ビーム照射手段3と容器固定手段2を離間させることができる。この変形例における進退手段4は、放射性核種製造装置1A,1Bと同様にエアシリンダや油圧シリンダなどのアクチュエータを用いることができる。
【0124】
また、放射性核種製造装置1A,1Bでは、本体部21と蓋部22の着脱を第1保持部62aにて行ったが、チャック41を適宜動作させて蓋部22を保持させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0125】
1A,1B 放射性核種製造装置
2 容器固定手段
21 本体部
21a 固定部
21b 位置決め用凸部
21c 冷媒通流手段
21d 連通穴
21e 係合部
22 蓋部
22b 位置決め用穴部
3 ビーム照射手段
4 進退手段
41 チャック
5 回収手段
51 本管部
52 第1の枝管部
52a 一端部
52b 他端部
53 第2の枝管部
53a 一端部
53b 他端部
54 フランジ部
55 捕集溶液保持部
55a 捕集溶液入出部
55b 排気口部
6 着脱移送手段
6A 第1着脱移送手段
6B 第2着脱移送手段
6C 第3着脱移送手段
61 ターンテーブル
61a 係合保持手段
62a 第1保持部
62b 第2保持部
62c L字型アーム部材
62d 軸部材
62e 載置台
62f 屈曲部
63 載置手段
63a 載置部
63b 支持棒
63c シール部材
64 往復動手段
7 加熱手段
10 筐体
10a 接続部
11 支柱
12 パネル材
12a 枠部材
12b 把持部材
12c 窓部
12d 観察窓
13 空気清浄手段
13a 吸入口
13b ろ過フィルタ
13c 送風機
13d 排出口
14 減圧手段
15 遮蔽体
15a レール
C 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速器から輸送されてきた荷電粒子ビームをターゲット物質に照射して放射性核種を製造する放射性核種製造装置であって、
前記ターゲット物質を収めるための容器を着脱自在に固定できる固定部を有する容器固定手段と、
前記容器固定手段に向けて前記加速器から輸送されてきた荷電粒子ビームを照射するビーム照射手段と、
前記容器固定手段を保持して前記ビーム照射手段と着脱自在に進退させる進退手段と、
前記進退手段と離間した位置に設けられ、前記容器を格納して当該容器内の放射性核種を回収する回収手段と、
前記進退手段と前記回収手段との間に設けられ、前記進退手段が進出または退縮して前記ビーム照射手段から脱離した容器固定手段の固定部に対して前記容器の着脱を行い、前記固定部から脱離した容器を前記固定部と前記回収手段との間で移送させる着脱移送手段と、
前記回収手段を加熱する加熱手段と、
を備えたことを特徴とする放射性核種製造装置。
【請求項2】
さらに、前記ターゲット物質を収めた容器を有することを特徴とする請求項1に記載の放射性核種製造装置。
【請求項3】
前記ビーム照射手段が、前記荷電粒子ビームを鉛直方向から導入し、鉛直方向に照射することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射性核種製造装置。
【請求項4】
前記進退手段は、前記ビーム照射手段近傍に設けられ、その退縮力または押圧力により前記容器固定手段を前記ビーム照射手段に密着させることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の放射性核種製造装置。
【請求項5】
前記容器固定手段は、前記容器を冷却する冷媒を通流させる冷媒通流手段を有していることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の放射性核種製造装置。
【請求項6】
前記着脱移送手段が、
前記進退手段が進出または退縮して前記ビーム照射手段から脱離した容器固定手段および前記容器固定手段から脱離した容器のうちの少なくとも一方を水平方向に移送させる水平移送手段と、
前記水平移送手段によって移送された容器固定手段から前記容器を保持して鉛直方向に移送させ、または前記水平移送手段によって移送された容器を鉛直方向に移送させて前記回収手段に格納する鉛直移送手段と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の放射性核種製造装置。
【請求項7】
前記着脱移送手段が、
前記容器固定手段を着脱自在に保持し、かつ保持した前記容器固定手段を、前記容器固定手段と前記ビーム照射手段とを着脱する第1の所定の位置と、前記第1の所定の位置とは異なる第2の所定の位置と、の間で水平方向に移送させる第1着脱移送手段と、
前記容器を着脱自在に保持し、かつ保持した前記容器を、前記第2の所定の位置と、前記第1の所定の位置および前記第2の所定の位置とは異なる第3の所定の位置と、の間で水平方向に移送させる第2着脱移送手段と、
前記容器を着脱自在に保持し、かつ保持した前記容器を、前記第3の所定の位置と、前記第1の所定の位置、前記第2の所定の位置および前記第3の所定の位置とは異なる位置であって前記回収手段内となる第4の所定の位置と、の間で鉛直方向に移送させる第3着脱移送手段と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の放射性核種製造装置。
【請求項8】
前記第1着脱移送手段は、前記容器を係合して保持する係合保持手段を1つ以上有していることを特徴とする請求項7に記載の放射性核種製造装置。
【請求項9】
前記第1着脱移送手段が水平方向に回転するターンテーブルであることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の放射性核種製造装置。
【請求項10】
前記容器固定手段は前記容器を固定する本体部と、前記本体部の上に重ねる蓋部とからなり、
前記第2着脱移送手段は、前記蓋部を保持する第1保持部と、前記容器を保持する第2保持部と、を有し、これらを水平方向に回転させることを特徴とする請求項7から請求項9のうちのいずれか1項に記載の放射性核種製造装置。
【請求項11】
前記第1保持部と前記第2保持部とを1つの支持部材に離間して設けたことを特徴とする請求項10に記載の放射性核種製造装置。
【請求項12】
前記第1保持部と前記第2保持部とを同一円周上において45〜180°の開き角度で設けたことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の放射性核種製造装置。
【請求項13】
前記第3着脱移送手段は、
前記第3の所定の位置において前記第2着脱移送手段で脱離させた前記容器を載置する載置手段と、
当該載置手段を、前記第3の所定の位置と前記第4の所定の位置との間を鉛直方向に往復動させる往復動手段と、
を有していることを特徴とする請求項7から請求項12のうちのいずれか1項に記載の放射性核種製造装置。
【請求項14】
前記回収手段は、
一端部が開口した大径の本管部と、
前記本管部よりも小径であって、開口した一端部が前記本管部内に収められており、開口した他端部が前記本管部外に延出している第1の枝管部と、前記本管部よりも小径であって、開口した一端部が前記本管部内に収められており、開口した他端部が前記本管部外に延出している第2の枝管部と、を有し、
前記第1の枝管部は、前記他端部から前記本管部内に気体を導入し、
前記第2の枝管部の前記一端部は、格納される前記容器を覆うように形成され、
前記第2の枝管部の前記他端部には、加熱されて揮発した前記放射性核種を捕集する捕集溶液を保持する捕集溶液保持部と、当該捕集溶液保持部を経由して送出されてきた前記気体を排出する排出部と、が設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項13のうちのいずれか1項に記載の放射性核種製造装置。
【請求項15】
前記回収手段が石英製であることを特徴とする請求項1から請求項14のうちのいずれか1項に記載の放射性核種製造装置。
【請求項16】
前記加熱手段の加熱温度が100〜1200℃であることを特徴とする請求項1から請求項15のうちのいずれか1項に記載の放射性核種製造装置。
【請求項17】
請求項1から請求項16のうちのいずれか1項に記載の放射性核種製造装置を密閉構造の筐体内に収めたことを特徴とする放射性核種製造装置。
【請求項18】
前記筐体が内部の空気を清浄する空気清浄手段を備えていることを特徴とする請求項17に記載の放射性核種製造装置。
【請求項19】
前記筐体が内部の圧力を減圧する減圧手段を備えていることを特徴とする請求項17または請求項18に記載の放射性核種製造装置。
【請求項20】
前記筐体に複数用いられるパネル材のうちの少なくとも1つが光透過性を有する材料で形成されているか、または、前記パネル材のうちの少なくとも1つに前記筐体の内部を観察するための観察窓を設けたことを特徴とする請求項17から請求項19のうちのいずれか1項に記載の放射性核種製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate