説明

放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法

【課題】多量に存在する放射性物質で汚染された土壌、放射性廃棄物を、放射線を遮蔽した状態にして処分するとともに、これを利用して社会資産を構築する。
【解決手段】 放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥もしくは放射性物質を含むゴミ焼却灰に固化材を添加してブロック状に成形した汚染土成型ブロック1、又は前記土壌、汚泥又は焼却灰をコンクリート函体に収容して密閉した汚染土収容ブロックを形成し、上記汚染土成型ブロックの外周面を放射線の遮蔽性を有する金属層を含む放射線遮蔽シート2で被覆したもの又は汚染土収容ブロックを地盤上に複数を配列する。そして、複数層を積み上げた後に土39を被せて転圧し、提体1又は盛土を形成する。この提体又は盛土は、海岸等に沿って対向する2つの地下連続壁体32a,32bを形成し、これらの間に形成するのが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥もしくは放射性物質を含むゴミ焼却灰の最終処分方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の事故により放射性物質が大量に環境中に放出され、周辺地域における土壌を汚染している。また、放出された放射性物質は津波による被害を受けた地域にも降下して破壊された家屋、構造物等を汚染している。
一方、広い範囲に拡散された放射性物質は、雨水や下水に流されて下水処理場にあつまり、下水処理後の汚泥から高濃度の放射性物質が検出される事態となっている。また、ゴミの焼却場でも多くのゴミを焼却した後に残る焼却灰は放射性物質が濃縮され、高い濃度の放射線を放出するものとなっている。
このような放射性物質を含む土壌や廃棄物の処理については、長期間にわたって放射線を放出することを考慮し、周辺環境に及ぼす影響が無いように処分される必要がある。
【0003】
このような放射性廃棄物の最終処分として、地中に深く埋め込むことが望ましいと考えられているが、埋め込む土地の確保が難しく、従来は特許文献1に記載されているように、仮処分として放射線を遮蔽する容器に収容するとともに、建屋を構築して上記容器をこの建屋内で管理することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59―43398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、原子力発電所の事故によって生じた汚染土壌や放射性廃棄物の量は膨大となり、処分場とする土地の確保や処分のために必要となる膨大な費用の捻出がますます困難となっている。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、多量に存在する放射性物質で汚染された土壌、放射性廃棄物を、放射線を遮蔽した状態にして処分するとともに、これを利用して社会資産を構築することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥もしくは放射性物質を含むゴミ焼却灰に固化材を添加してブロック状に成形した汚染土成型ブロック、又は前記土壌、汚泥又は焼却灰をコンクリート函体に収容して密閉した汚染土収容ブロックを形成し、 前記汚染土成型ブロックの外周面を放射線の遮蔽性を有する金属層を含む放射線遮蔽シートで被覆したもの又は前記汚染土収容ブロックを地盤上に複数を配列し、 複数層を積み上げた後に土を被せて転圧し、提体又は盛土を形成する放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法を提供する。
【0007】
上記方法では、汚染土壌や、汚泥・焼却灰等の放射性廃棄物がブロック状に成型され、放射線遮蔽シート又はコンクリートで被覆されて地中に埋め込まれるので、放射線が遮蔽されて周辺の放射線量を低く抑えることができる。そして、固化された汚染土成型ブロック、汚染土収容ブロックが積層されていることによって埋め込まれた堤体や盛土は、圧密等による沈下が生じにくく、安定したものとなる。したがって、これらの堤体や盛土は、河川の堤防、海岸部における防潮堤、津波減衰堤、津波避難用高台、道路・鉄道用の盛土等として有効に利用することができる。
なお、本発明における土壌には、放射性物質で汚染された田畑、森林、道路、グランド、宅地等における地表面付近の土壌の他、津波や地震で破壊された建物や構造物の材料等、いわゆる瓦礫を粉砕したもの等も含むものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の「放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法」において、 前記放射線遮蔽シートは、放射線の遮蔽性を有する金属を板状又はシート状にした遮蔽層と、柔軟なアスファルト系材料を前記遮蔽層の両面に積層した緩衝層と、を有するものを用い、 該放射線遮蔽シートを前記汚染土成型ブロックに押し付け、前記アスファルト系材料が有する粘着力によって前記汚染土成型ブロックの表面に貼り付けて被覆するものとする。
【0009】
上記方法では、ブロック状となった汚染土成型ブロックを放射線遮蔽シートで容易に被覆することができる。特に放射線遮蔽シートが有する緩衝層のアスファルト系材料が粘着力を有し、この粘着力を利用して汚染土成型ブロックに貼り付けることによって作業性が向上する。また、放射線遮蔽シートの遮蔽層によって周辺に放出される放射線量が低減されるとともに、緩衝層によって遮蔽層が被覆され、遮蔽層に鉛等の重金属が用いられていても溶出を防止することができる。また、鉛等の遮蔽層は柔軟な緩衝層によって保護され、土中に埋め込まれても傷つけられたり破れたりするのが抑制される。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の「放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法」において、 前記汚染土収容ブロックは、コンクリート函体の外周面に前記放射線遮蔽シートを貼り付けて被覆するものとする。
【0011】
上記方法では、汚染している土壌等をコンクリートの函体に収容することによって放射線が遮蔽されるが、汚染濃度が高い場合にはコンクリート函体の外側まで放射線が及ぶ場合が考えられる。上記方法では、このような場合にコンクリート函体の外側に被覆した放射線遮蔽シートによって放射線を遮蔽し、周辺に放出される放射線量を抑制することができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の「放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法」において、 所定の範囲の土地を囲んで平面視が閉じた形状となるように地下連続壁体を形成し、又は所定の範囲の土地の両側で対向するように地下連続壁体を形成し、閉じた形状となった地下連続壁体の内側又は対向する地下連続壁体の間に前記汚染土成型ブロック又は前記汚染土収容ブロックを配列し、積み上げるものとする。
【0013】
この方法では、汚染土成型ブロック等を積み上げた範囲の地盤を地下連続壁体によって拘束し、土が水平方向へ大きく流動するのを抑制することができる。したがって、堤体又は盛土の沈下が抑制される。また、堤体や盛土のすべり破壊を拘束することができる。これらによって、堤体又は盛土を安定したものとすることができる。さらに、放射性物質が汚染土成型ブロックから漏出するようなことがあっても、地下連続壁体によって広範囲に拡がるのが抑制することができる。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の「放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法」において、 平面視が閉じた形状となった前記地下連続壁体の内側又は対向する地下連続壁体の間に、複数のワイヤを敷き並べ、 該ワイヤの両端部は前記地下連続壁体の上部に連結し、 該ワイヤの上に前記汚染成型ブロック又は汚染土収容ブロックを配列し、複数層を積み上げるものとする。
【0015】
この方法で形成された堤体又は盛土では、地下連続壁体を連結するワイヤ上に提体又は盛土があり、2つの地下連続壁体と提体又は盛土との間の相対的な変位が抑制される。また、ワイヤによって提体又は盛土の両側にある提体の相互間の水平方向への変位が過大となるのが抑制される。これにより、地震時において堤体又は盛土は大きな変形が拘束された状態で揺動し、堤体又は盛土の破壊が抑制される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法では、大量の汚染土壌、汚泥、焼却灰等を放射線が遮蔽された状態で堤体又は盛土内に埋め込んで処分することができる。そして、形成された堤体又は盛土を社会の資産として有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態である、放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法を示すフロー図である。
【図2】図1に示す方法で形成される汚染土成型ブロックを放射線遮蔽シートで被覆した状態を示す概略斜視図である。
【図3】図1に示す方法で形成される汚染土成型ブロックの配筋及び吊金具の配置を示す概略斜視図である。
【図4】図2に示す汚染土成型ブロックを被覆する放射線遮蔽シートの概略断面図である。
【図5】図1に示す方法で形成される汚染土収容ブロックの概略断面図である。
【図6】本発明の方法で形成される堤体の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の方法で形成される堤体の他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の方法で形成される堤体の他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の方法で形成される堤体の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である方法の概略を示すフロー図である。
この方法では、放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥もしくは放射性物質を含むゴミ焼却灰をブロック状に固化する(ST1〜ST5)。そして、形成された汚染土成型ブロック1は、図2に示すように放射線遮蔽シート2で被覆し(ST6)、周辺で計測される放射線量を低減した後、最終処分として提体や盛土に埋め込むものである(ST12)。
【0019】
上記汚染土成型ブロック1の形成は次のようにして行うことができる。
仮置場や中間処理施設において仮に貯蔵されている汚染土壌や汚泥等の放射性廃棄物(ST1)を加工場に搬入して粒度を調整する(ST2)。原子力発電所から放出された放射性物質で汚染された地表面付近の土壌や下水の処理汚泥、焼却灰等は、粒径がほぼ80mm以下となっており、これらはそのまま固化処理を行うことができる。この他、汚染土には、地震や津波で破壊された建物や構造物の残骸を含むものであり、木材等の可燃物、鉄骨等の再利用が可能なものを除いて、コンクリート片等をクラッシャー等で破砕し、粒径を80mm以下とする。
【0020】
上記のように粒度が調整された汚染土等をミキサーに投入し、セメント又はセメント系の固化材を加えて攪拌する(ST3)。そして、セメント又はセメント系固化材の水和反応に必要な水分を霧状にして供給し、土粒子をセメント又はセメント系固化材で被覆する。固化材が混合された汚染土等は金型に投入する。金型は、コンククリートを打設するときに組み立てられる型枠と同様に汚染土を成型するものであるが、後に説明するように加圧するために型枠より強固に製作されたものである。
【0021】
この金型3内には、図3に示すように、予め鉄筋4を組み立てておき、成型されたブロックを吊り上げるための吊金具5も配置する(ST4)。このように鉄筋4が組み立てられている金型3内にセメント又はセメント系固化材を混合した汚染土を投入し、振動を加えて締め固める。振動は金型3に固定した加振機の駆動によって発生させ、金型3を介して汚染土を振動させる。また、これとともに金型3内の汚染土に加圧部材を上方から押し付けて汚染土を加圧し、締め固めて容積を低減する(ST5)。加圧力は、例えば50N/cm2から100N/cm2程度とすることができる。このように締め固めた後、養生してセメント又はセメント系の固化材を硬化させ、汚染土成型ブロック1を形成する。
なお、上記汚染土成型ブロック1は、汚染土が硬化した時の強度が、例えば500N/cm2から1000N/cm2程度となるようにセメント又はセメント系の固化材を添加するものとする。また、汚染土成型ブロック1の形状は直方体とし、大きさは例えば1m×1m×6mとすることができる。寸法は、この値に限定されるものではないが、水平方向の一辺の長さが水平方向の他の辺の2倍よりおおきくして、積層して配列するときに、井桁状に積み上げることができる寸法とするのが望ましい。
【0022】
硬化した汚染土成型ブロック1は、図2に示すように、放射線遮蔽シート1で被覆して放出される放射線を低減する(ST6)。放射線遮蔽シート2は、例えば図4に示すような断面構成を有するものを用いることができる。
この放射線遮蔽シート2は、鉛をシート状に形成した遮蔽層11と、この遮蔽層11の両面に積層される緩衝層12と、緩衝層12の一方を被覆する表面被覆層13と、緩衝層12の他方の表面に積層される剥離紙14とからなるものである。
【0023】
上記遮蔽層11には、放射線の遮蔽性能が高く、安価であるとともに薄く形成することが容易である鉛を用いている。この鉛シートの厚さは、被覆する土壌等の汚染濃度に応じて適宜決定されるが、0.1mm以上で5mm以下であることが望ましい。
この他、遮蔽層としては、比重の大きい金属としてタングステン等を採用することもできる。また、要求される放射線の遮蔽性能によっては、アルミニウム 鋼等の金属を用いることもできる。
【0024】
上記緩衝層12は、アスファルトに合成ゴムを混合したゴム化アスファルトを合成繊維からなる不織布に含浸させ、さらに両面にゴム化アスファルトを塗布して不織布をゴム化アスファルト内に埋め込んだものであり、厚さが0.5mm〜5mm程度となっている。この緩衝層12は表面に沿った方向及び厚さ方向に柔軟に変形するものであり、石片等が押し付けられたり、擦られたりしても、遮蔽層11が破損しないように保護するものとなっている。また、不織布によって引張力に対しても抵抗し得るように補強されている。
なお、上記緩衝層12は、厚さを調整することができるとともに、不織布等を含まずにゴム化アスファルト層のみで使用することもできるし、不織布、織布、金属メッシュ等をゴム化アスファルトに埋め込むように形成したものを用いることもできる。
【0025】
上記表面被覆層13は、放射線遮蔽シート2の表面を形成するものであり、約0.1μm〜1mmの厚さのフィルム状となった合成樹脂を、上記緩衝層12に積層したものである。合成樹脂としては、例えばポリエステル、ポリエチレン又はポリプロピレン等を用いることができる。
【0026】
上記剥離紙14は、クラフト紙等の破れにくい紙の片面にシリコーン樹脂又はシリコーンオイルのコーティングを施したもので、ゴム化アスファルトとの接着力を抑制することができるものが用いられている。したがって、ゴム化アスファルトからなる緩衝層12に積層して接着することができるものであるが、容易に引き剥がすことができるものとなっている。
このような放射線遮蔽シート2は、ロール状に巻き回して又は積層して貯蔵及び搬送することができ、使用する直前に剥離紙14をはがして、ゴム化アスファルトが備える接着力を利用することができる。
【0027】
上記汚染土成型ブロック1は、上記放射線遮蔽シート2を用いて次のように被覆することができる。
上記放射線遮蔽シート2は、汚染土成型ブロック1が形成された現場において対応する大きさに切断し、剥離紙14を剥がして汚染土成型ブロック1の表面に押し付ける。ゴム化アスファルトからなる緩衝層12は粘着力を備えており、放射線遮蔽シート2が汚染土成型ブロック1に接着される。貼り付ける放射線遮蔽シート2の端縁付近は隣り合うように貼り付けられる放射線遮蔽シート2と互いに重ねあわせる。このように放射線遮蔽シート2を汚染土成型ブロック1の表面の全てに隙間なく貼り付けることにより、汚染土成型ブロック1に含まれる放射性物質からの放射線を遮蔽することができる。
【0028】
放射線遮蔽シート2で被覆した汚染土成型ブロック1について、放出する放射線量の測定を行い、測定結果に対応して汚染土成型ブロック1を次のように処理する。
放射線を計測して(ST7)、その値が予め規定されている値以下の場合には、放出される放射線量が低いものとして、B集積所に一旦貯蔵する(ST10)。一方、測定された放射線量が規定値を超える場合には、さらに放射線遮蔽シートで汚染土成型ブロックを被覆する。そして、再度放射線量を測定し(ST8)、規定されている値以下となったときにはB集積所に貯蔵する(ST10)。測定値が規定された値を超えるときには、放出される放射線量が高いものとして、A集積所に貯蔵する(ST9)。
【0029】
高濃度の放射性物質で汚染されている土壌、汚泥又は焼却灰は、以上に説明したように固化して放射線遮蔽シート2で被覆するのに代えて、コンクリートの函体に収容し、汚染土収容ブロックとして処分することもできる(ST11)。これは、図5(a)に示すように予め鉄筋コンクリートの函体21を形成しておき、この函体21の中に汚染土22等を収容する。そして、図5(b)に示すように汚染土22等を加圧して締め固めた後、図5(c)に示すように、その上に鉄筋コンクリートの蓋23を函体21と一体となるように形成して密閉するものである。この汚染土収容ブロック24の大きさは上記汚染土成型ブロック1とほぼ同じとするのが望ましい。
【0030】
このような汚染土収容ブロック24も、汚染土22等を収容して密閉した後、透過する放射線量を測定し、測定値が予め規定されている値以下の場合には、放出される放射線量が低いものとして、B集積所に一旦貯蔵する(ST10)。一方、測定された放射線量が規定値を超える場合には、汚染土成型ブロック1と同様に放射線遮蔽シート2で被覆する。そして、放射線量を測定し(ST8)、規定されている値以下となったときにはB集積所に貯蔵する(ST10)。測定値が規定された値を超えるときには、A集積所に貯蔵する(ST9)。なお、上記汚染土収容ブロックは、全てA集積所に搬入し、放射線量が高いものとして扱うものであってもよい。
【0031】
A集積所に搬入された汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24、及びB集積所に搬入された汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24は、いずれも提体又は盛土に埋め込むものであるが、測定された放射線量が高い汚染土成型ブロック等と測定された放射線量が低い汚染土成型ブロック等とでは、提体又は盛土を築造する位置によって使い分けるものとする。つまり、A集積所に搬入された放射線量が高い汚染土成型ブロック等は、居住者が近くにいない空港周辺部の防潮堤や、河川部の提体に埋め込む。一方、B集積所に搬入された放射線量が低い汚染土ブロック等は、近くに居住者がいる防潮堤、津波防潮堤、緊急避難用高台等に使用することができる。
【0032】
上記汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を埋め込む提体は、例えば図6に示すような構造とすることができる。
この提体31は、防潮堤とするものであり、所定の間隔で構築された2つの地下連続壁体32a,32bの間に形成するもので、それぞれの地下連続壁体32a,32bは海岸線に沿った方向に連続するように構築する。地下連続壁体32は、鋼矢板又は鋼管矢板を打ち込むことによって形成するものであってもよいし、泥水等で壁面を安定させながら穴を掘削し、鉄筋又はH型鋼を配置して、これらを埋め込むようにコンクリートを打設して形成するものであってもよい。
本実施の形態では、提体31の海側の地下連続壁体32a及び陸側の地下連続壁体32bのそれぞれが、鋼管矢板を2列に打ち込んで形成されており、提体を形成する領域を2重に囲むものとしている。
【0033】
上記2つの地下連続壁体32a,32bの間の地盤33は、所定の深さまでの範囲を地盤改良し、不透水層34を形成する。地盤改良は土にセメント系の固化材を混合して固化させる工法を採用することができ、鉛直方向の回転中心を有する回転翼を鉛直下方に貫入し、土壌を攪拌しながら固化材を注入する深層混合工法を用いることができる。また、地表面から掘削しながら固化材を混合する浅層混合工法を採用することもできる。
【0034】
不透水層34の上には、放射線遮蔽シート35を敷設し、さらにその上にゴム系の材料で形成された防水シート36を敷設する。この上にワイヤ37を所定の間隔で敷き並べ、ワイヤ37の両端部は地下連続壁体32の頂部に連結する。海側及び陸側の地下連続壁体32のそれぞれの頂部には、2列が形成された鋼管矢板32c,32dを連結するようにコンクリートの擁壁38が設けられており、ワイヤ37の端部はこの擁壁38内で一方の鋼管矢板32cの頂部に連結する。そして、他方の鋼管矢板32dの頂部に設けられたサドル39の上に巻き回して、2つの地下連続壁体32の内側の地盤改良を行った層の表面まで垂れ下げる。そして、地盤改良を行った層つまり不透水層34の表面に沿って敷きならべる。2つの地下連続壁体32の頂部に両端部が連結された複数のワイヤ37は、地下連続壁体32の面とほぼ平行となる方向に配置する連結ワイヤ40によって互いに連結し、ワイヤ37と連結ワイヤ40をメッシュ状とする。
なお、地盤改良によって形成した不透水層34の上に敷設する上記放射線遮蔽シート35は、図4に示す放射線遮蔽シート2と同様にシート状に引き延ばした鉛の両面にゴム化アスファルトからなる緩衝層を形成し、されに表面被覆層を設けたものを用いることができる。ここで用いる放射線遮蔽シート35は、遮蔽層の両面に張り合わされた緩衝層の双方を表面被覆層で覆うものが望ましい。
また、防水シート36はゴム系の材料で形成されたものを用いることができ、ゴミ処分場等において汚染水が地下に浸透するのを防ぐために用いられるシート等を採用することができる。
【0035】
上記のようにメッシュ状となったワイヤ37及び連結ワイヤ40が敷設された上に放射線遮蔽シート2で被覆された汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を配列する。ブロックは水平方向の一方の辺の長さが他方の辺より大きくなっており、長辺を提体の幅方向つまり二つの地下連続壁体32a,32bを結ぶ方向にして配列する。そして、2層目は長辺の方向を地下連続壁体32a,32bに沿った方向つまり先に配列した層における長辺の方向とほぼ直角となる方向として配列する。したがって、複数の層が積み上げられるときに、一辺の長さが大きくなっている汚染土成型ブロック1等が井桁状に組み上げられ、安定した状態で積層される。また、それぞれの汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24は、配列されるときに、隣り合うブロックと間隔を開けて配列するのが望ましい。間隔は、例えば3cm〜5cm程度とすることができる。
なお、複数層に汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を積み上げるときに、一層毎に放射線遮蔽シートで層全体を被覆するのが望ましい。
【0036】
汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を複数層積み上げるときには、上層ほど数を少なくし、提体31の形状と対応するように、2つの地下連続壁体32a,32b間の中央部付近では高く積み上げ、地下連続壁体32a,32bに近づくにしたがって低く積層する。
配列された汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24の間隙には、積層されたブロックの最下層から最上層に至り、先端が提体の表面に達する管部材を配置して点検孔41を設ける。この管部材は、直径が100mm程度で周面がメッシュ状となったもの又は多数の小孔が設けられたものとする。点検孔41は、提体1の完成後の長期間にわたって、放射線の濃度の観測を可能とするものである。また、ブロックを被覆している放射線遮蔽シート2の破損等によって放射線が漏洩した時には、この点検孔41を介してセメントグラウトを注入することもできる。
なお、点検孔41は複数を設けるのが望ましく、例えば50m2〜100m2に一ヶ所を設けることがよい。
【0037】
最上層まで汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を積み上げた後は、これらの全体をゴム系の材料からなる防水シートで覆う。そして、この上を放線性物質で汚染されていない土42で覆い、転圧して提体31とする。提体31の法面の全部又は一部には、法面を保護するためのコンクリート層43を形成する。また、上記保護コンクリート層が設けられていない法面には、植栽を施して保護するのが望ましい。一方、提体31の頂部は、舗装を施して道路として利用することもできる。
【0038】
次に、本発明の処分方法によって形成される提体の他の例を、図7に基づいて説明する。
この提体51は、図6に示す提体31と同様に、2列の地下連続壁体52a,52bを形成し、これらの間に構築するものである。この提体51では、2つの地下連続壁体52a,52b間を掘削し、掘削した後の底部を地盤改良して不透水層53を形成する。不透水層53の形成は、図6に示す提体31と同様に行うことができる。不透水層53の上には、放射線遮蔽シート54及びゴム系の防水シート55を敷設し、その上にワイヤ56を敷き並べてメッシュ状とする。ワイヤ56は、地下連続壁体52と隣接する位置から連続して該地下連続壁体52の壁面に沿って上方へ引き上げ、端部は地下連続壁体52上に支持される擁壁57に連結する。ワイヤ56の擁壁57への連結は、図6に示す提体と同様に行うことができる。
【0039】
ワイヤ56が敷設された上には、掘削土58を敷き均し、その上に汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を配列する。そして、一層毎に配列した複数のブロックを覆うように放射線遮蔽シート(図示しない)を敷き、その上にさらに汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を配列する。ブロックは、隣り合うブロック間に隙間を設けて配列するともに、長辺の方向が先に配列した層における長辺の方向とほぼ直角となるように、各層は交互にほぼ90°方向を変更して順次に積層する。
また、配列された汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24の間隙には、積層されたブロックの最下層から最上層に至り、先端が提体の表面に達する管部材を点検孔59として配置する。
【0040】
上記のように配列される汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24は、地下連続壁体52の壁面との間に所定の間隔を設けて配列し、この間隔内には掘削土58を埋め戻し、締め固める。そして、地下連続壁体52の壁面に沿って鉛直方向に配置されたワイヤ56は、この埋め戻した掘削土58の中に埋め込む。
【0041】
汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24は、地下連続壁体52の上部に設けられた擁壁57の頂部より低い位置まで積層し、その上には掘削土58を埋め戻して締め固め、上面を擁壁57の頂部とほぼ同じ高さとする。この上には鉄筋を配置して天端コンクリート60を打設し、2つの地下連続壁体52間に埋め込んだ汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を封じ込めるように蓋をする。
このような提体51では、放射性物質で汚染された土壌、汚泥、焼却灰等を含む汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を、地下連続壁体52と、底部の地盤改良によって形成された不透水層53と、天端コンクリート60とで囲まれた内側に収容して放射線を遮蔽することができる。また、この提体51では、積層されたブロック群の重量の一部がワイヤ56によって地下連続壁体52の頂部で支持されており、地震等の大きな水平力が作用したときに、積層されたブロック群が両側に形成されている地下連続壁体52間で揺動することが許容される。したがって、提体に作用する水平力が緩和され、地震時においても安定した強固な提体51となる。そして、このような提体は、河川部の堤防、防潮堤等として長く利用することが可能となる。
【0042】
汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を埋め込む提体は、図6又は図7に示すように2つの地下連続壁体の頂部間にワイヤを配設するものに限定されるものではなく、提体を形成する地域の地盤の状態、土地利用の状態等に応じて、他の形態としてブロックを埋め込むこともできる。
例えば、図8に示すように地盤61上に防水シート62を敷設し、この上に汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を配列して、これらのブロック群を埋め込むように盛土63を施して提体64を形成することができる。また、図9に示すように、対向して形成された2つの地下連続壁体71又は所定の範囲を囲むように形成された地下連続壁体の内側を掘削し、掘削した範囲内に汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を配列し、これを掘削土72で埋め込んで提体73を形成することもできる。
なお、図9中に示す符号73は不透水層を、符号74は地下連続壁体71上に支持される擁壁を示すものである。
【0043】
この他、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において様々な形態で実施することができる。
例えば、2つの地下連続壁体間に設ける不透水層は、地盤改良によって形成されるものに限定されず、コンクリートの打設によって形成されるもの、アスファルト層の敷設によって形成されるもの、防水シートによって遮水するもの等を採用することもできる。
また、ワイヤ37,56を擁壁38,57に連結する構造も、ワイヤの引張力が擁壁に伝達されるように連結されるものであれば、上記以外の構造を適宜に採用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1:汚染土成型ブロック, 2:放射線遮蔽シート, 3:金型, 4:鉄筋, 5:吊金具,
11:遮蔽層, 12:緩衝層, 13:表面被覆層, 14:剥離紙,
21:コンクリートの函体, 22:汚染土, 23:コンクリートの蓋, 24:汚染土収容ブロック,
31:提体, 32:地下連続壁体, 33:地下連続壁体間の地盤, 34:不透水層, 35:放射線遮蔽シート, 36:防水シート, 37:ワイヤ, 38:擁壁, 39:サドル, 40:連結ワイヤ, 41:点検孔, 42:放射性物質で汚染されていない土, 43:法面を保護するコンクリート層,
51:提体, 52:地下連続壁体, 53:不透水層, 54:放射線遮蔽シート,55:防水シート, ワイヤ:56, 57:擁壁, 58:掘削土, 59:点検孔, 60:天端コンクリート、
61:地盤, 62:防水シート, 63:盛土, 64:提体,
71:地下連続壁体, 72:掘削土, 73:提体, 74:不透水層, 75:擁壁


















【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥もしくは放射性物質を含むゴミ焼却灰に固化材を添加してブロック状に成形した汚染土成型ブロック、又は前記土壌、汚泥又は焼却灰をコンクリート函体に収容して密閉した汚染土収容ブロックを形成し、
前記汚染土成型ブロックの外周面を放射線の遮蔽性を有する金属層を含む放射線遮蔽シートで被覆したもの又は前記汚染土収容ブロックを地盤上に複数を配列し、
複数層を積み上げた後に土を被せて転圧し、提体又は盛土を形成することを特徴とする放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法。
【請求項2】
前記放射線遮蔽シートは、放射線の遮蔽性を有する金属を板状又はシート状にした遮蔽層と、柔軟なアスファルト系材料を前記遮蔽層の両面に積層した緩衝層と、を有するものを用い、
該放射線遮蔽シートを前記汚染土成型ブロックに押し付け、前記アスファルト系材料が有する粘着力によって前記汚染土成型ブロックの表面に貼り付けて被覆することを特徴とする請求項1に記載の放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法。
【請求項3】
前記汚染土収容ブロックは、コンクリート函体の外周面に前記放射線遮蔽シートを貼り付けて被覆することを特徴とする請求項1に記載の放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法
【請求項4】
所定の範囲の土地を囲んで平面視が閉じた形状となるように地下連続壁体を形成し、又は所定の範囲の土地の両側で対向するように地下連続壁体を形成し、閉じた形状となった地下連続壁体の内側又は対向する地下連続壁体の間に前記汚染土成型ブロック又は前記汚染土収容ブロックを配列し、積み上げることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法。
【請求項5】
平面視が閉じた形状となった前記地下連続壁体の内側又は対向する地下連続壁体の間に、複数のワイヤを敷き並べ、
該ワイヤの両端部は前記地下連続壁体の上部に連結し、
該ワイヤの上に前記汚染成型ブロック又は汚染土収容ブロックを配列し、複数層を積み上げることを特徴とする請求項4に記載の放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法。






【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−113667(P2013−113667A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259015(P2011−259015)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(511276747)