説明

放射性物質吸着材

【課題】機械的強度に優れ、微粉等のリークの問題がなく、水処理材として取扱性に優れた放射性物質吸着材を提供する。
【解決手段】粒径100μm未満の粉末状のチタン酸アルカリ金属塩を粒径200μm以上3mm未満の大きさの粒状体に成形してなる基体と、該基体表面を被覆する高分子材料の被膜とを有する放射性物質吸着材。チタン酸アルカリ金属塩としては、チタン酸ナトリウム及び/又はチタン酸カリウムが好ましく、放射性ストロンチウムの吸着除去に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質吸着材と、この放射性物質吸着材を充填してなる吸着容器及び吸着塔と、この吸着容器又は吸着塔を適用した水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射性ストロンチウム90Srは、放射性セシウムと同様に、半減期が長く、また、水への拡散性が高い核分裂生成物であり、放射性セシウムと同様、放射性ストロンチウムにより汚染された水についても、その水処理システムの改良が望まれている。
【0003】
水中の放射性ストロンチウムは、オルトチタン酸で吸着して除去できることが知られている(非特許文献1)。
また、放射性ストロンチウムを吸着するチタン酸ナトリウムイオン交換体の製造方法として、含水酸化チタンをアルコールと水酸化ナトリウムからなる液でスラリー化させて加熱し、濾過・乾燥した後に破砕・分級して顆粒状のチタン酸ナトリウムを製造する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4428541号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】久保田益光ほか“群分離法の開発:無機イオン交換体カラム法による90Sr及び134Csを含む廃液の処理法の開発”JAERI−M82−144(1982)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載される方法で製造される顆粒状のチタン酸ナトリウムは、一次粒子の凝集体であるため、強度が弱く、輸送中等に加えられる振動や衝撃等で粉砕されて微粉化したり、水中に投入すると凝集体の崩壊で一次粒子が脱落してしまう。このため、この微粉化した粒子や一次粒子が、吸着塔のストレーナーを閉塞させたり、吸着塔ストレーナーを通過して、放射線を帯びた微粉が吸着塔からリークしてしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、機械的強度に優れ、微粉等のリークの問題がなく、水処理材として取扱性に優れた放射性物質吸着材を提供することを課題とする。
本発明はまた、この放射性物質吸着材を充填してなる吸着容器及び吸着塔と、この吸着容器又は吸着塔を適用した水処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、チタン酸アルカリ金属塩の粉末を所定の大きさの粒状体に成形し、その表面を高分子材料で被覆することにより、機械的強度に優れ、微粉等のリークの問題がなく、水処理材として取扱性に優れた放射性物質吸着材を実現することができることを見出した。
【0009】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0010】
[1] 粒径100μm未満の粉末状のチタン酸アルカリ金属塩を粒径200μm以上3mm未満の大きさの粒状体に成形してなる基体と、該基体表面に設けられた高分子材料よりなる被膜とを有することを特徴とする放射性物質吸着材。
【0011】
[2] 前記チタン酸アルカリ金属塩がチタン酸ナトリウム及び/又はチタン酸カリウムであることを特徴とする[1]に記載の放射性物質吸着材。
【0012】
[3] 前記放射性物質が放射性ストロンチウムであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の放射性物質吸着材。
【0013】
[4] 前記高分子材料が難水溶性材料であることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載の放射性物質吸着材。
【0014】
[5] 前記難水溶性材料が、エチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、及びアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする[4]に記載の放射性物質吸着材。
【0015】
[6] [1]ないし[5]のいずれかに記載の放射性物質吸着材を充填したことを特徴とする吸着容器。
【0016】
[7] [1]ないし[5]のいずれかに記載の放射性物質吸着材を充填したことを特徴とする吸着塔。
【0017】
[8] [6]に記載の吸着容器又は[7]に記載の吸着塔を備えることを特徴とする水処理システム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、チタン酸アルカリ金属塩の粉末を成形してなる粒状体の表面を高分子材料で被覆することによって、機械的強度が向上し、輸送中等に加えられる振動や衝撃等による破砕や、水に投入したときの一次粒子の脱落を抑制することができる。このため、微粉粒子による吸着塔ストレーナーの閉塞や、放射線を帯びた微粉のリークを防止することができる。
なお、このように高分子材料で被膜を形成しても、被膜の厚さを十分に薄くすることにより、内部のチタン酸アルカリ金属塩よりなる粒状体と、被吸着物質である放射性物質との接触が阻害されることはなく、十分な放射性物質の吸着能を得ることができる。
【0019】
本発明の放射性物質吸着材のチタン酸アルカリ金属塩としてはチタン酸ナトリウム及び/又はチタン酸カリウムが好ましい(請求項2)。
即ち、層状結晶を有するチタン酸塩は、イオン交換能があることが知られているが、このチタン酸塩の層間に取り込まれた陽イオンがナトリウムイオンやカリウムイオンであれば、容易に他の陽イオンとイオン交換することができる。従って、層間イオンがナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンであるチタン酸アルカリ金属塩が放射性物質吸着材としては好適である。
【0020】
また、本発明の放射性物質吸着材で吸着する放射性物質は放射性ストロンチウムが好ましい。
即ち、ナトリウムイオンやカリウムイオンは1価及び2価陽イオンのイオン交換に有効であるが、放射性ストロンチウムに特に有効である。
【0021】
さらにまた、本発明の放射性物質吸着材の被膜を形成する高分子材料は、難水溶性材料であることが好ましく(請求項4)、難水溶性材料の被膜であれば、水中で溶解することなく、使用中の放射性物質吸着材の強度を十分に維持できると共に、一次粒子の脱落を抑制することができる。
なお、ここで、難水溶性材料とは、水に溶解しない、或いは水への溶解度が1g/100ml(20℃)以下であるものをさす。
この難水溶性高分子材料としては、エチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、又はアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーのいずれかであることが好ましい(請求項5)。これらエチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーは、水に不溶で、かつ造膜性も高く、粒状体の被覆に好適である。
【0022】
本発明の放射性物質吸着材は、下部又は上部にストレーナー構造を有した吸着容器又は吸着塔に充填して使用することが好ましく(請求項6,7)、放射性物質を含有した水を当該吸着容器又は吸着塔に通水して放射性物質を除去することを目的とする水処理システムに適用することが好ましい(請求項8)。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1及び比較例1の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであって、何ら本発明を限定するものではなく、本発明はその要旨を超えない範囲において、以下の実施形態に開示される各要素を種々変更して実施することができる。
【0025】
本発明の放射性物質吸着材は、粒径100μm未満の粉末状のチタン酸アルカリ金属塩を粒径200μm以上3mm未満の大きさの粒状体に成形してなる基体と、該基体表面に設けられた高分子材料の被膜とを有することを特徴とする。
【0026】
本発明においては、粉末状のチタン酸アルカリ金属塩を粒状体に成形する。チタン酸アルカリ金属塩が粉末状であれば、チタン酸アルカリ金属塩を一定の形状に成形しやすく、汎用性の面で好適である。粉末状のチタン酸アルカリ金属塩としては、市販品を用いることができ、市販のチタン酸アルカリ金属塩粉末の粒径は一般的に100μm未満、例えば200meshパス(75μm未満)であることから、本発明においては、このような粒径のチタン酸アルカリ金属塩粉末を用いる。
【0027】
本発明で用いるチタン酸アルカリ金属塩としては、陽イオン交換性に優れることから、チタン酸ナトリウム、チタン酸カリウムが好ましい。
なお、チタン酸アルカリ金属塩は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
本発明においては、高分子材料の被膜を容易に形成することができるように、チタン酸アルカリ金属塩粉末を所定の大きさに成形する。
チタン酸アルカリ金属塩の粉末を成形する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、バインダー等を用いてチタン酸アルカリ金属塩粉末を粒状体に成形する方法が挙げられる。
【0029】
上記バインダーとしては、例えば、デンプン、コーンスターチ、糖蜜、乳糖、セルロース、セルロース誘導体、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、アルギン酸、ポリアクリル酸、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、水、メタノール、エタノール等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
製造コストを考慮すると、使用するバインダーは水であることが好ましく、さらには、水と接触すると増粘する性質を有し、その粘化作用により粒子同士の結合に寄与する物質と水とを併用することが好ましい。この点を考慮すると、バインダーとして、水とセルロース誘導体やPVA等とを併用することが好ましい。
【0031】
バインダーとして水とセルロース誘導体及び/又はPVAとを併用する場合、バインダーにおける水とセルロース誘導体及び/又はPVAとの配合比(質量基準)は、1000:1〜10:1であることが好ましい。配合比がこの範囲内であれば、チタン酸アルカリ金属塩粉末を効果的に成形することができる。
【0032】
バインダーを用いてチタン酸アルカリ金属塩の粒状体を成形する方法としては、例えば、水とセルロース誘導体等とを混合した粘性流体をチタン酸アルカリ金属塩粉末に添加しながら造粒成形する方法、セルロース誘導体等を粉体のままチタン酸アルカリ金属塩粉末に混合し、水を添加しながら造粒成形する方法等が挙げられる。
【0033】
この造粒成形法としては、具体的には、ドラム型造粒機、皿型造粒機等を使用した転動造粒法;フレキソミックス、バーティカルグラニュレーター等を使用した混合撹拌造粒法;スクリュー型押出造粒機、ロール型押出造粒機、ブレード型押出造粒機、自己成形型押出造粒機等を使用した押出造粒法;打錠形造粒機、ブリケット形造粒機等を使用した圧縮造粒法;吹き上げる流体(主として空気)中にチタン酸アルカリ金属塩粉末を浮遊懸濁させた状態に保ちながらバインダーを噴霧して造粒する流動層造粒法等が挙げられるが、粒状体に成形すること、及びバインダーとして水を使用することを考慮すると、転動造粒法又は混合撹拌造粒法が好ましい。
【0034】
バインダーの使用量は、特に限定されるものではなく、チタン酸アルカリ金属塩粉末1質量部に対し、0.001〜5質量部であることが好ましい。バインダーの使用量が上記範囲内であれば、チタン酸アルカリ金属塩粉末を効果的に成形することができる。
【0035】
チタン酸アルカリ金属塩粉末を成形して得られる粒状体の形状や大きさは、吸着容器や吸着塔に充填して、放射性物質を含む水を通水するのに適応した形状であればよく、例えば、球状、立方体形状、長方体形状、円柱形状等の定形粒状体であってもよい。これらのうち、特に球状であることが好ましい。球状に成形することで、後述する高分子材料の被膜形成工程において、チタン酸アルカリ金属塩粉末を成形して得られたチタン酸アルカリ金属塩の粒状体の表面に均一な膜厚の被膜を形成することができ、このような均一な膜厚の被膜が形成された場合には、被膜の形成に用いたコーティング剤とチタン酸アルカリ金属塩の粒状体との量的関係から容易に被膜の膜厚を算出することができる点において好ましい。このように被膜の膜厚を算出することができることは、製品の品質管理の面において有利である。
【0036】
また、チタン酸アルカリ金属塩の粒状体の大きさは、粒径で200μm以上3mm未満、好ましくは0.5〜2mmである。この粒状体の大きさが上記範囲よりも大きいと、表面積が小さくなってしまう為、放射性物質吸着能が低下し、小さいと吸着塔のストレーナーからリークする恐れがある。
なお、ここで、粒状体の粒径とは、粒状体が球状であればその直径に該当し、その他の形状の場合、当該粒状体を2枚の平行な板で挟んだとき、その板の間隔が最も大きくなる部位の長さ(2枚の板の間隔)をさす。
【0037】
本発明では、このようにして得られるチタン酸アルカリ金属塩の粒状体よりなる基体の表面に、高分子材料の被膜を形成する。これにより、チタン酸アルカリ金属塩を造粒成形してなる粒状体の強度が向上して、輸送に伴う振動や通水による破砕、これに伴う微粉の発生を抑制することができ、水処理用途として好適な吸着材を製造することができる。
【0038】
チタン酸アルカリ金属塩の粒状体の表面に高分子材料の被膜を形成する方法としては、例えば、チタン酸アルカリ金属塩の粒状体とコーティング剤とを接触させる方法等が挙げられる。
【0039】
該コーティング剤としては、造膜作用を有する高分子材料が好ましく、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール(PVA)等の水溶性ポリマー;ポリビニルピロリドン(PVP)等の水・アルコール両溶性ポリマー;医薬品製剤用のアクリルポリマー製品のアミノアルキルメタクリレートコポリマー(エボニック社製:オイドラギットE、RL、RSシリーズ)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(エボニック社製:オイドラギットNEシリーズ)等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
これらのコーティング剤のうち、水中で溶解し難い難水溶性の高分子材料よりなるものが好ましく、特にエチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーを使用することが好ましく、特にエチルセルロースを使用することが好ましい。エチルセルロースは、セルロース誘導体の一種で、プラスチック、ラッカー、ワニス、接着剤、透明シートに使われるものであり、広い温度にわたって強度と可撓性を保持する熱可塑性プラスチックであり、チタン酸アルカリ金属塩の粒状体の被覆に好適である。
【0041】
これらのコーティング剤は、水、エタノール等の適当な溶剤に溶解させた1〜10質量%程度の濃度のコーティング液として、チタン酸アルカリ金属塩の粒状体の被覆に用いられる。
【0042】
チタン酸アルカリ金属塩の粒状体と上記コーティング液とを接触させて、チタン酸アルカリ金属塩の粒状体の表面に高分子材料の被膜を形成する方法としては、例えば、流動層コーティング法、転動流動複合コーティング法、ドラムコーティング法、パンコーティング法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、コーティング方式としては、フィルムコーティング、シュガーコーティング等が挙げられるが、形成される皮膜の膜厚を極力薄くして、チタン酸アルカリ金属塩の粒状体と放射性物質との接触阻害を防止するという観点からは、フィルムコーティングが好ましい。
【0043】
コーティング剤である高分子材料の使用量は、チタン酸アルカリ金属塩の粒状体1質量部に対して0.0001〜0.1質量部であることが好ましい。コーティング剤の使用量が上記範囲内であれば、チタン酸アルカリ金属塩粒状体の表面に所望の膜厚の被膜を効果的に形成することができる。コーティング剤の使用量が少な過ぎると、高分子材料の被膜を形成することによる強度の向上効果を十分に得ることができず、多過ぎると、厚さの厚い被膜で粒状体が被覆されることにより、放射性物質とチタン酸アルカリ金属塩粒状体との接触が妨げられ、放射性物質の吸着性能が低下する。
【0044】
本発明の放射性物質吸着材は、下部又は上部にストレーナー構造を有した吸着容器又は吸着塔に充填して使用するのが好ましく、放射性物質、特に放射性ストロンチウムを含有する汚染水を当該吸着容器又は吸着塔に通水して放射性物質を除去する水処理システムに有効に適用することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
なお、以下において比較例1の放射性物質吸着材としては、特許文献1に示される顆粒状のチタン酸ナトリウムの市販品 商品名「SrTreat」(Fortum社製)を用いた。
【0046】
[実施例1]
粒径75μm未満のチタン酸ナトリウム(三津和化学薬品社製)の粉末500gに、バインダーとして水85gとカルボキシメチルセルロース2gとを加え、混合撹拌造粒機(商品面「VG−01」、パウレック社製)により、平均粒径1mmの球状に造粒成形した。得られたチタン酸ナトリウム粒状体をドラム型錠剤コーティング機(商品名「DRC−200」、パウレック社製)に導入し、チタン酸ナトリウム粒状体の表面にコーティング液(エチルセルロース5gをエタノール100gに溶解させた溶液)100g(チタン酸ナトリウム1gに対するエチルセルロースの使用量は0.01g)を噴霧し、乾燥して薄膜を形成して実施例1の放射性物質吸着材とした。
【0047】
[耐一次粒子脱落性の評価]
実施例1の放射性物質吸着材と比較例1の放射性物質吸着材をそれぞれ1g計量し、コニカルビーカーに投入後、水道水(栃木県野木町水)99gを添加して軽く振り混ぜた後、JIS K0101(工業用水試験方法)に従い、上澄液の濁度を計測して耐一次粒子脱落性を評価した。
濁度を計測した結果、実施例1の放射性物質吸着材が濁度11であったのに対し、比較例1の放射性物質吸着材では濁度230であった。
この結果から、実施例1の放射性物質吸着材は、比較例1の放射性物質吸着材よりも、水中での一次粒子の脱落が大幅に低減されることが分かる。
【0048】
[放射性物質吸着性能の評価]
実施例1の放射性物質吸着材と比較例1の放射性物質吸着材をそれぞれ1g計量し、ポリ容器に投入した。各々のポリ容器に、安定同位体の塩化ストロンチウムをストロンチウム濃度が10mg/Lとなるように水道水(栃木県野木町水)に溶解させた水溶液100mLを加えた。30分、1時間、2時間、4時間、それぞれ振とうさせた後、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、濾液をICP−MSに導入して濾液中のストロンチウム濃度を定量した。結果を図1に示す。
図1より、ストロンチウム濃度は、振とう1時間の時点では比較例1の放射性物質吸着材の方が若干勝っているものの、振とう2時間程度で同等のレベルになった。平衡濃度に差異がないことから、実施例1の放射性物質吸着材の吸着性能は比較例1の放射性物質吸着材と同等であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径100μm未満の粉末状のチタン酸アルカリ金属塩を粒径200μm以上3mm未満の大きさの粒状体に成形してなる基体と、該基体表面に設けられた高分子材料よりなる被膜とを有することを特徴とする放射性物質吸着材。
【請求項2】
前記チタン酸アルカリ金属塩がチタン酸ナトリウム及び/又はチタン酸カリウムであることを特徴とする請求項1に記載の放射性物質吸着材。
【請求項3】
前記放射性物質が放射性ストロンチウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射性物質吸着材。
【請求項4】
前記高分子材料が難水溶性材料であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の放射性物質吸着材。
【請求項5】
前記難水溶性材料が、エチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、及びアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項4に記載の放射性物質吸着材。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の放射性物質吸着材を充填したことを特徴とする吸着容器。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の放射性物質吸着材を充填したことを特徴とする吸着塔。
【請求項8】
請求項6に記載の吸着容器又は請求項7に記載の吸着塔を備えることを特徴とする水処理システム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−76628(P2013−76628A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216443(P2011−216443)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】