説明

放射線不透過性の補綴椎間円板核

【課題】人体、又は脊椎動物の椎間円板のための、材料の均一性を有しながら一体的に見ることができる補綴核、又はヒドロゲル材料で製造された人工円核を提供する。
【解決手段】(a)共有結合したヨウ素または臭素を含む少なくとも1つのモノマーと、(b)少なくとも1つの親水性モノマーとを含むコポリマーで、完全に水和されたときに37℃において0.01〜100MPaの間の弾性率を有するヒドロゲル、及びこのヒドロゲルを含む補綴核5。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、椎間円板のための補綴核に関する。より詳細には、ヒドロゲル材料で製造された人工円板核に関する。
【0002】
人体、あるいはより一般的には脊椎動物の椎間円板(IVD)は、機能的としての解剖学的の両方で複雑な関節である。髄核(核)、線維輪(輪)、および椎骨終板の3つの成分構造で構成される。これらの成分構造内の生化学的組成および解剖学的配置は、円板の生体力学的機能に関連する。
【0003】
IVDの変性または損傷は、背痛の最も一般的な原因である。西洋諸国では、背痛は、45歳よりも若い人々の間で労働損失日数および活動制限の最大の原因である。
【0004】
鎮痛薬および理学療法のような保存治療が十分でない場合、外科的介入(椎間板切除および癒合など)は、痛みを軽減するための選択肢である。しかしながら、これらの方法はいくつかの欠点を有する。椎間板切除は通常、輪のリング上に増大した圧縮負荷を生じるので、生体力学的な観点から望ましくない。これは、長期の間に椎間腔を狭くし、その結果、椎間関節への負荷が増大する。癒合は癒合セグメントの動きを制限し、それにより、癒合部分における動きの損失を補わなければならないので、患者の脊椎の移動性が制限され、隣接している椎骨円板の変性の危険が増大される。
【0005】
もう1つの選択肢は補綴関節デバイスを用いることであり、これは、損傷または変性した椎間円板を置換することができるだけでなく、置換される円板の生理学的および生体力学的機能を模倣することもでき、周囲の組織のさらなる変性を防止する。しかしながら、このような置換は非常に複雑であり、自然の設計と一致させるのは困難である。
【0006】
いくつかの場合には、IVDの輪は、髄核のヘルニア形成が生じるという形で変性または破裂される。そして適切な処置は、脱出した核を除去して補綴核で置換した後、輪の欠陥を修繕することであろう。この処置は、例えば輪の外傷性破裂の場合、あるいは初期の円板変性の場合には適切であり得る。
【0007】
核だけの置換は侵襲性がより低く、残りの組織、すなわち輪および終板が保存され、従ってその機能も保存されるので、上記のような介入よりもいくつかの利点を有する。
【0008】
国際公開第94/23671号パンフレットは、ヒドロゲル材料で製造された椎骨円板のための補綴核を開示する。この補綴核の欠点は、手術中および手術後に、移植された補綴核を視覚化できないことである。核置換の成功は、移植片の正確な位置決めに大きく依存する。手術中および手術後に移植片の位置を適切に判断するためには、X線透視を実時間で用いて監視可能であることが便利である。そうすれば、外科医は、核の空洞内の移植片を完璧に位置決めすることができる。また、後で起こる合併症の場合には、移植片を容易に追跡することができる。
【0009】
本明細書においてマーカーとして使用される放射線不透過性材料を含む補綴核は、米国特許出願公開第2004−0054413A1号明細書に開示されている。放射線不透過性マーカーは、金属(金、タングステン、チタン、タンタルまたは白金など)であり、ヒドロゲルに結合されることなくヒドロゲル内に配置される。
【0010】
このような放射線不透過性マーカーを使用する欠点は、マーカーだけは目に見えるが、補綴自体は見えないことである。放射線不透過性マーカーの層の場合、補綴の外周が目に見えず、それにより、その正確な所在についての十分な情報が与えられない。放射線不透過性マーカーが粉末形態で分散される場合には、ヒドロゲルから外への拡散の危険が増大し、それによりやはり補綴の正確な位置を探すことができない。金属の放射線不透過性マーカーのもう1つの欠点は、特に高い磁場強度で、核磁気共鳴画像法(MRI)においてアーチファクトを生じ、画像を混乱させ得ることである。
【0011】
本発明の目的は、材料の均一性を有しながら一体的に見ることができる補綴核を提供することである。
【0012】
これは、意外なことに、
(a)共有結合したヨウ素または臭素を含む少なくとも1つのモノマーと、
(b)少なくとも1つの親水性モノマーと、
を含むコポリマーに基づくヒドロゲルの使用によって達成され、該ヒドロゲルは、完全に水和されたときに37℃において0.01〜100MPaの間の弾性率を有する。
【0013】
(a)共有結合したヨウ素または臭素を含むモノマーと、
(b)少なくとも1つの親水性モノマーと、
を少なくとも含むコポリマーは、例えば、国際公開第96/05872号パンフレットから知られている。しかしながら、国際公開第96/05872号パンフレットは、少なくとも1つの共有結合したヨウ素または臭素基を含む、ヒドロゲルを形成しない放射線不透過性ポリマーを開示している。開示されるポリマーは多過ぎる量の疎水性モノマーMMAを含み、それによりヒドロゲルの形成を不可能にする。国際公開第96/05872号パンフレットに開示されるコポリマー中の親水性モノマーの量は、20モル%以下である。
【0014】
さらに、これらの種類の材料の弾性率はGPaの範囲であるが、本発明による材料は、少なくとも因数10だけ低い。国際公開第96/05872号パンフレットに開示されるようなポリマーは、生物医学的な構成材料として、あるいは骨セメントまたは歯科用充填剤のための放射線不透過剤(radiopacifier)として適切であるが、髄核の置換には適切でない。
【0015】
本発明によるヒドロゲルは本質的に放射線不透過性であり、その結果として、移植片の輪郭をX線により目で見えるようにすることができる。さらに、ヒドロゲルの放射線不透過性は、時間内に安定であることが分かった。さらに、材料の体内への漏出が起こらない。
【0016】
コポリマーは、少なくとも2つのモノマーの混合物を重合させることによって作られる材料である。適切な組み合わせは、例えば、2つのモノマー、3つのモノマー(いわゆるターポリマー)、4つのモノマーなどで存在し得る。
【0017】
ヒドロゲルという用語は、ここで、そして以下においては、水または生体液を吸収することができる三次元の親水性高分子網目のために使用される。網目は化学的または物理的な架橋の存在のために不溶性であり、従って、他で明確に示されない限り、このような高分子網目に関しては流体が既に吸収されていてもいなくてもよい(ペパス(Peppas)NAら、薬剤処方におけるヒドロゲル(Hydrogels in pharmaceutical formulations)、Eur J Pharm Biopharm 2000(50)、27−46頁も参照)。ヒドロゲルは、平衡含水率(EWC)が到達されたときに十分に水和される。EWCは、20℃で測定される湿潤サンプルの質量が一週間以内に大きく変化しない(±2%)時点で到達される。EWCは、以下の式を用いて計算される。
【数1】


式中、mは、平衡状態の水和サンプルの質量であり、そしてmは、乾燥サンプルの質量である。
【0018】
共有結合したヨウ素または臭素を含むどのモノマーも、本発明によるヒドロゲルにおいて使用するのに適する。適切なモノマーは、ビニルモノマー、アクリルモノマーおよびメタクリルモノマーである。このタイプのモノマーには、式1:
【化1】


で表される構造の基が含まれるが、これらに限定されない。式中、R=Hもしくは1個または2個のC原子を有するアルキル基であり、R=I、Brまたは
【化2】


であり、式中、R=O、NH、O−[CH−CH−O]−C(O)−、O−[CH−O−C(O)−、O−[CH−、NH−[CH−CH−O]−C(O)−、NH−[CH−O−C(O)−またはNH−[CH−であり、ここでm>1およびp≧1、R=IまたはBrであり、そしてnは1、2または3である。
【0019】
このような化合物の製造方法は、例えば、国際公開第96/05872号パンフレットに開示されている。好ましくは、mまたはpは10より小さい。好ましくは、mは2である。好ましくは、pは1または2である。最も好ましくは、mは2、そしてpは1または2である。Rは、オルト、メタ、およびパラの全ての可能な位置にあることができる。n=1の場合、Rは、好ましくは、2位または4位に位置する。最も好ましくは、4位である。n=2の場合、Rは、2位および4位(それぞれオルトおよびパラ)、あるいは3位および5位(メタ)に位置し得る。n=3の場合、Rは好ましくは2位、3位および5位にある。
【0020】
共有結合したヨウ素または臭素を含む適切なモノマー(a)の例は、2−[2’−ヨードベンゾイル]−オキソ−エチルメタクリレート、2−(4’−ヨードベンゾイル)−オキソ−エチルメタクリレート(4IEMA)または2−[2’,3’,5’−トリヨードベンゾイル]−オキソ−エチルメタクリレートである。
【0021】
好ましくは、共有結合したヨウ素を含むモノマーが使用される。好ましい実施形態では、4IEMAが使用される。というのは、この結晶性材料は、ラジカル重合によって、純粋な形態で大量で容易に調製することができるからである。もう1つの好ましい実施形態では、2−[2’,3’,5’−トリヨードベンゾイル]−オキソ−エチルメタクリレートが使用され、これは、重合中にモノマーあたり3つのヨウ素原子が導入されるので、コポリマー中に高レベルのX線コントラストを導入するために有用である。
【0022】
親水性モノマーは、以下において、水に対して強い親和力を有するモノマーと定義され、水に溶解する、水と混合する、あるいは水で湿潤される傾向にある。適切な親水性モノマー(b)の例は、N−ビニル−2−ピロリジノン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メタクリル酸(MAA)、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEG−MA)、ビニルアルコール(VA)の前駆体としての酢酸ビニル、またはこれらの誘導体である。本発明では、コポリマー中に少なくとも1つの親水性モノマー(b)が使用されるが、親水性モノマーの混合物も使用可能であることが重要である。好ましくは、親水性モノマー(b)は、HEMAおよび/またはNVPである。
【0023】
本発明によるヒドロゲルにおけるコポリマーを作るために使用される親水性モノマー(b)の量は、ヒドロゲルを形成するのに十分でなければならない。平衡含水率、膨潤比、および平衡含水率に到達する時間に関する水和ヒドロゲルの特性は、親水性モノマーごとに異なる。言い換えると、同じ量の親水性モノマーの場合、これらの特性は、様々な親水性モノマーに対して実質的に異なり得る。しかしながら当業者は、正確な機械特性を得るために、ヒドロゲル中の親水性モノマーの所望の量を容易に決定することができる。
【0024】
一般に、本発明によるヒドロゲルは、少なくとも10重量%のEWCまで水を吸収することができる。好ましくは、ヒドロゲルのEWCは少なくとも15重量%である。さらにより好ましくは、ヒドロゲルのEWCは少なくとも20重量%であり、そして最も好ましくは少なくとも30重量%である。
【0025】
ヒドロゲルに正確な機械特性を与えるために、ヒドロゲルは通常、95重量%の最大EWCを有する。
【0026】
より好ましくは、ヒドロゲルは、20重量%と90重量%との間のEWCを有する。
【0027】
本発明のもう1つの実施形態では、コポリマーは、疎水性モノマー(c)も含む。疎水性モノマーは、以下において、水に対する親和力の欠如したモノマーと定義され、水をはじいて吸収しない傾向があり、水に溶解しない、水と混合しない、あるいは水で湿潤されない傾向がある。このようなモノマー(c)の例は、メチルメタクリレート(MMA)、ブチルメチルアクリレート(butylmethylacrylate)(BMA)、ポリ酢酸ビニル(VAp)の前駆体としての酢酸ビニルである。
【0028】
本発明のコポリマー中の適切なモノマーは、1つまたは複数の反応基を有することができる。本発明の1つの実施形態では、2つ以上の反応基を有する少なくとも1つのモノマーが使用される。この実施形態では、ポリマー網目は形成することができない。本発明に適した2つの反応基を有するモノマーの例は、ジメタクリレート、ジビニルベンゼン、またはアリルメタクリレートである。
【0029】
本発明による完全に水和したヒドロゲルは、好ましくは、37℃において0.01〜100MPaの弾性率(ヤング率)を有する。好ましくは、ヒドロゲルの弾性率は、少なくとも0.1MPaであり、より好ましくは少なくとも0.2MPaであり、そして最も好ましくは少なくとも0.3MPaである。ヒドロゲルに正確な機械特性を与えるために、ヒドロゲルは通常、100MPaの最大弾性率を有する。好ましくは、ヒドロゲルの弾性率は、50MPa以下であり、より好ましくは20MPa以下であり、さらにより好ましくは10MPa以下であり、最も好ましくは5MPa以下である。好ましくは、ヒドロゲルは、0.1MPaと10MPaの間の弾性率を有し、より好ましくは0.3MPaと5MPaの間の弾性率を有する。
【0030】
本発明によるヒドロゲルは、補綴髄核において使用することができる。本発明によるヒドロゲルを用いて、関節内の自然の核の挙動にできるだけ近接して適合する補綴をもたらすことが可能であると分かった。
【0031】
補綴髄核において使用される場合の本発明によるヒドロゲルの利点は、ヒドロゲルが本質的に放射線不透過性であることである。本発明による補綴髄核のさらなる利点は、補綴が核の(完全な)除去の後に残っている空洞全体を充填することができ、それにより、移植片の移動が最小限にされることである。さらなる利点は、補綴が、比較的小さい脱水形態で移植されることが可能であり、次にその場で水和および膨潤されることである。補綴は、脱水形態では、膨潤状態の1〜5倍小さい。
【0032】
補綴において使用されるヒドロゲルの膨潤比を測定することによって、補綴の膨潤比を決定することが可能である。膨潤比の測定方法は、実験部分において与えられる。膨潤比を用い、核の空洞の寸法に基づいて、移植前の核補綴の大きさを計算することができる。それにより当業者は、その平衡まで膨潤した後に空洞を完全に充填し得る補綴を得るために、移植前の補綴の寸法を最適化することができる。
【0033】
本発明による補綴髄核は、補綴の挿入後に線維輪の治癒を改善するために、他の成分、例えば抗感染症薬および薬物も含むことができる。
【0034】
さらに、本発明は、上記の放射線不透過性の結合ヒドロゲル材料の塊を、自然のヒトの円板核にほぼ適合する形状に成形するステップを含む、補綴髄核を形成するための方法に関する。
【0035】
本発明の1つの実施形態では、本発明による補綴髄核は、移植の前に形成される。膨潤または(部分的に)脱水された形態で移植することができる。好ましくは、補綴髄核は脱水形態で移植され、この形態では比較的小さく、次にその場で膨潤される。この方法の非限定的な例は、図1、2および3に示される。図1は、椎間円板(1)を含む自然の脊椎を示しており、自然の髄核(2)は、椎骨(4)内に位置する線維輪(3)によって包囲されている。図2では、自然の髄核が除去され、脱水補綴髄核(5)によって置換されており、図3では、脱水補綴髄核が膨潤されて(5)、終板と輪との間の空洞全体を充填している。
【0036】
本発明のもう1つの実施形態では、補綴髄核は、その場で形成および成形される。この方法は、少なくとも、
(a)共有結合したヨウ素または臭素を含むモノマーと、
(b)少なくとも1つの親水性モノマーと、
(c)任意で、疎水性モノマーと、
の混合物を、結果として得られるヒドロゲルが膨張したときに輪のスペースが十分に満たされて健康な核を模倣するような量で輪の中に注入することによって、放射線不透過性ヒドロゲルの塊を形成することを含む。
【0037】
この方法の利点は、補綴を挿入するために大きな開口を作る必要がないことである。自然の核は通常、シリンジによる吸引によって除去することができ、その後上記の混合物を注入することができる。
【0038】
本発明は、以下の非限定的な実施例および比較例によって、以下において説明される。
【0039】
実施例1、2、3、4および比較例A
材料および方法
コポリマーの調製
NVPおよびHEMAをアクロス(Acros)(オランダ、ランドスメール(Landsmeer))から購入し、減圧下で蒸留して、阻害性の添加剤を除去した。4−ヨードベンゾイルクロリドおよび精製HEMAからモノマー4IEMAを合成した。全てのモノマーの純度および同一性は、1H−NMR分光法によって検査した。フリーラジカル源として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を用いた。この化合物は、アクロスから入手したままで使用した。モノマーおよび0.044モル%(モノマーの総量を基準として)のAIBNを混合して、テフロン(登録商標)(Teflon)管に移し、次にこれをサーモスタット付オイルバス中に浸漬した。表1に示される温度プロファイルを実行した。
【0040】
【表1】

【0041】
この結果、直径12mmの透明なガラス状の棒が得られた。調製したコポリマーの組成は表2に示される。
【0042】
【表2】

【0043】
弾性率(ヤング率)の測定
圧縮状態の静的実験において材料の機械特性を試験するために、±8mmの厚さおよび±15mmの直径の完全に膨潤した円筒型のサンプルを使用した。3・10−3−1のひずみ速度で500Nのロードセルを用い、ツヴィック(Zwick)1445圧縮試験機において、室温(20℃)および体温(37℃)の両方でそれぞれの材料の3つのサンプルを圧縮して水中に沈めた。ヤング率は、弾性変形(±2%〜8%の圧縮)の領域内で計算される。
【0044】
平衡含水率の測定
様々な材料の水の吸収を研究するために、直径12mmおよび厚さ2mmのサンプル円板(ガラス状の棒から切断)を用いて、室温(20℃)においてリン酸緩衝食塩水(PBS)中での膨潤実験を3重に実行した。膨潤の間のコポリマーの不変の組成を保証するために、実験の前に全てのサンプルを洗浄および空気乾燥させた。様々な時間間隔で円板の材料質量を測定した。一週間以内に湿潤サンプルの質量が大きく(±2%)変化しなかった時点で、サンプルは平衡状態にあると考えた。
【0045】
サンプルを秤量する前に表面からの過剰の水をティッシュで除去した。秤量後、サンプルを新しい十分なPBS中に戻した。以下の式を用いて平衡含水率(EWC)を計算した。
【数2】


は、平衡状態の膨潤サンプルの質量であり、そしてmは、乾燥サンプルの質量である。
【0046】
膨潤比の測定
平衡含水率の決定と同じ方法で、体積の増大(平衡状態にある膨潤サンプルの体積を、乾燥サンプルの体積で除する)によって定義される膨潤比を決定した。
【0047】
放射線不透過性
資格のある整形外科医によりブタの死体の腰部脊椎の核の空洞内に実施例3および4の膨潤サンプルを移植することによってX線視感度を検査し、続いて、66kVおよび自動露出でフィリップスBVパルセラ(Philips BV Pulsera)を用いて、標準的な病院の条件下でその場で材料のX線写真を撮った。
【0048】
結果
弾性率、膨潤比および平衡含水率(EWC)の測定の結果は、以下の表3に示される。
【0049】
【表3】

【0050】
実施例1、2、および5のNVPベースのヒドロゲルは、HEMAベースのヒドロゲルよりも高い平衡含水率を有する。また、疎水性4IEMAの存在がヒドロゲルの吸水を低下させることも示される。また、ヒドロゲルが水を吸収する速度は、ヒドロゲルの親水性特性に依存する。より親水性のヒドロゲル(1、2、5)では、平衡含水率(EWC)は約12時間で到達されるが、あまり親水性でないヒドロゲル(3、4)は、平衡膨潤に到達するために2日以上かかる。
【0051】
比較例Aは、疎水性モノマーMMAの取り込みがEWCを低下させ、そして材料がヒドロゲルと見なされるには大きすぎるほど弾性率を増大させ、従って本発明の目的のためには適切ではないことを明白に示す。
【0052】
放射線不透過性
図4は移植の結果のX線画像を示しており、ここで、実施例3(H95)および4(H90)のサンプルは、ブタの死体の2つの隣接する椎骨の間に移植した。3つの椎骨間の構造:底部の自然の円板(*)、中央の実施例4のサンプル、および上部の実施例3のサンプルが示される。自然の円板は非吸収(白色)帯として見えるが、実験3および4のサンプルはX線吸収帯としてはっきりと目に見える。
【0053】
図5および6はそれぞれ、ブタの死体内に移植された実施例5のサンプルのCTスキャンおよびMRIスキャンを示す。CTスキャンは東芝アクイリオン(Toshiba Aquilion)(120kV、20mAs)において行い、MRIスキャンは、フィリップス・ジャイロスキャンNTインテラ(Philips Gyroscan NT Intera)1.5Tにおいて行った。移植片は、空洞を完全に充填する腎臓型の形態で、はっきりと目に見える。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、椎間円板(1)を含む自然の脊椎を示す。
【図2】図2では、自然の髄核が除去され、脱水補綴髄核(5)によって置換されている。
【図3】図3では、脱水補綴髄核が膨潤されて(5)、終板と輪との間の空洞全体を充填している。
【図4】図4は、移植の結果のX線画像を示す。
【図5】図5は、ブタの死体内に移植された実施例5のサンプルのCTスキャンおよびMRIスキャンを示す。
【図6】6は、ブタの死体内に移植された実施例5のサンプルのCTスキャンおよびMRIスキャンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)共有結合したヨウ素または臭素を含む少なくとも1つのモノマーと、
(b)少なくとも1つの親水性モノマーと、
に基づくコポリマーを含み、補綴髄核に適したヒドロゲルであって、完全に水和されたときに37℃において0.01〜100MPaの間の弾性率を有するヒドロゲル。
【請求項2】
前記モノマー(b)が、N−ビニル−2−ピロリジノン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メタクリル酸(MAA)、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEG−MA)、ビニルアルコール(VA)の前駆体としての酢酸ビニル、またはこれらの誘導体からなる群から選択される請求項1に記載のヒドロゲル。
【請求項3】
前記コポリマーが、
(c)疎水性モノマー
をさらに含む請求項1または2に記載のヒドロゲル。
【請求項4】
前記ヒドロゲルが、20℃において、ヒドロゲルの湿潤重量に関して10〜95重量%の間の平衡吸水率を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒドロゲル。
【請求項5】
(a)共有結合したヨウ素または臭素を含む少なくとも1つのモノマーと、
(b)少なくとも1つの親水性モノマーと、
から誘導される単位を含むコポリマーに基づくヒドロゲルを含む補綴髄核。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のヒドロゲルを含む補綴髄核。
【請求項7】
(a)共有結合したヨウ素または臭素を含む少なくとも1つのモノマーと、
(b)少なくとも1つの親水性モノマーと、
に基づくコポリマーを含む放射線不透過性の結合ヒドロゲル材料の塊を、自然の円板核にほぼ適合する形状に形成するステップを含む補綴髄核の形成方法。
【請求項8】
(a)共有結合したヨウ素または臭素を含む少なくとも1つのモノマーと、
(b)少なくとも1つの親水性モノマーと、
の混合物を、結果として得られるヒドロゲルが膨張したときに輪のスペースが十分に満たされて健康な核を模倣するような量で輪の中に注入することによって、放射線不透過性ヒドロゲルの塊を形成することを含む補綴髄核の形成方法。
【請求項9】
脱水した形の補綴核を輪の中に挿入するステップを含む、請求項5または6に記載の補綴髄核、もしくは請求項7に記載の方法から得られる補綴髄核を移植するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−27719(P2013−27719A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−209791(P2012−209791)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2007−531095(P2007−531095)の分割
【原出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(505307806)スティッチング ダッチ ポリマー インスティテュート (18)
【Fターム(参考)】