説明

放射線断層撮影装置

【課題】脳・膀胱の影響を受けず、病変部を強調された診断に好適な放射線断層画像を取得できる放射線断層撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、MIP画像M0,アキシャル画像A0の検出値をスケーリングするスケーリング部24と、これにリセット信号を送出するリセット部26が設けられている。スケーリング部24は、リセット信号が送出されると、その時点で認定していた最大値を破棄して、両値を新たに認定する。したがって、スケーリング部24は、脳・膀胱が写りこんでいない領域の中で最大値と最小値を求めてスケーリングを行うことができるので、脳・膀胱の検出値の影響が調整MIP画像M1全体に及ばず、病変部を強調された診断に好適な調整MIP画像M1を取得できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体から放射される放射線をイメージングする放射線断層撮影装置に関し、特に、被検体の全身を一度に撮影することができる放射線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、放射性薬剤の分布をイメージングすることができる放射線断層撮影装置が設けられている。このような放射線断層撮影装置は、被検体Mに投与されて関心部位に局在した放射性薬剤から放出された消滅放射線(例えばγ線)を検出し、被検体Mの関心部位における放射線薬剤分布の断層画像を得る構成となっている。この様な構成となっている放射線断層撮影装置は、例えば特許文献1のようなものがある。
【0003】
この様な放射線断層撮影装置の構成について説明する。従来構成による放射線断層撮影装置51は、図16に示すように、被検体を載置する天板52と、天板52が挿入される検出器リング62とを備えている。被検体Mのうち、検出器リング62の内壁に囲まれる部分が放射線断層撮影装置によって断層画像を得ることができる視野範囲となっている。画像生成部63は、被検体の放射性薬剤の分布を示すマップ(アキシャル画像)を生成する。
【0004】
検出器リング62から出力された検出信号は画像生成部63に送られ、被検体の放射性薬剤分布を示す画像(例えば放射線断層画像=アキシャル画像)が生成される。生成された画像は、スケーリング部64にて例えば65536(16ビット)階調にスケーリングされ、それが表示部65に表示される構成となっている。
【0005】
この様にすることで、生成された画像は、確実に所定の階調値ウィンドウに収まり、診断に好適な放射線断層画像が表示できるようになっている。
【0006】
放射性薬剤のひとつであるFDG(Fluoro deoxy glucose)は、正常な組織に比べてガン細胞などの腫瘍に多く取り込まれる。そのため被検体にFDGを投与することで放射される消滅放射線をイメージングすれば、それらの局在を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−155432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来構成の放射線断層撮影装置には次の様な問題点がある。すなわち、FDGは生理的に被検体の脳や膀胱といった臓器に多く集積するため、従来の構成では、スケーリング部64は、これら脳や膀胱に高い階調値を割り当ててしまう。つまりスケーリング部64は、脳や膀胱の画素値を用いてスケーリング動作を実行してしまう。
【0009】
被検体の病変部から放射される放射線が脳や膀胱から放射される放射線よりも弱いことが多いため、病変部の検出値は、スケーリング部64によりスケーリングされることで目立たない階調値が割り当てられる。スケーリング部64は、脳や膀胱の検出値を基に動作するのであり、病変部の検出値を参照することがないからである。
【0010】
すると、得られる放射線断層画像は、病変部が目立たなくなってしまい、代わりに、脳や膀胱が強調されたものとなる。なお、脳や膀胱には、放射性薬剤が生理的に集積するので、全身を対象としたFDG検査においては、脳や膀胱を検査対象とすることが難しい。
【0011】
脳や膀胱に生理的に集積する薬剤の量は、被検体におけるそれ以外の部位に腫瘍などがある場合における集積量とは異なっており、脳や膀胱と腫瘍部(腫瘍と見込まれる部分)とを同一様式でスケーリングすると、必ずしも腫瘍部が強調されずに、脳や膀胱が強調されてしまうことが起こりうる。
【0012】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、脳・膀胱の影響を受けず、それ以外の体幹部に多くの場合に見られる病変部を強調された診断に好適な放射線断層画像を取得できる放射線断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述の課題を解決するために次の様な構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線断層撮影装置は、被検体から放射される放射線を検出する放射線検出器がリング状に配列されて構成され、消滅放射線対を検出する検出器リングと、検出器リングから出力された消滅放射線対の検出頻度を示す検出値を空間的に配列して、検体内の薬剤分布が写りこんだアキシャル画像を生成するアキシャル画像生成手段と、アキシャル画像の検出値における最大値と最小値を認定し、両値が所定の階調範囲に収まるよう、アキシャル画像を構成する検出値の各々にスケーリングを行って調整アキシャル画像を生成するスケーリング手段と、スケーリング手段にリセット信号を送出するリセット手段とを備え、スケーリング手段は、順番に生成されたアキシャル画像における最大値と最小値を逐次認定して両値が更新される毎にアキシャル画像に対しスケーリングを再実行し、リセット信号が送出されると、スケーリング手段は、その時点で認定していた最大値と最小値を破棄して、両値を新たに認定することを特徴とするものである。
【0014】
[作用・効果]本発明によれば、アキシャル画像の検出値をスケーリングするスケーリング手段を備えている。スケーリング手段は、順番に生成されたアキシャル画像における最大値と最小値を逐次認定して両値が更新される毎に調整アキシャル画像を更新する。
【0015】
本発明には、スケーリング手段にリセット信号を送出するリセット手段が設けられている。スケーリング手段は、リセット信号が送出されると、その時点で認定していた最大値と最小値を破棄して、両値の認定を新たに行う。この様に、スケーリング手段の認定する最大値と最小値は、リセットされることができる。アキシャル画像において、極めて検出値が高い部分があったとする。従来の構成によれば、この検出値を最大値と認め、調整アキシャル画像の生成を行うのである。しかしながら、極めて検出値が高い部分は、被検体の脳・膀胱である場合が多く、この様なスケーリングを行うと、脳・膀胱が強調されるばかりで被検体の病変部が目立たなくなってしまう。本発明は、この様な不具合を防止することができる。
【0016】
また、上述のアキシャル画像を所定の平面に投影したときの被検体内の薬剤分布が写りこんだMIP画像を生成する投影画像生成手段を更に備え、スケーリング手段は、MIP画像を構成する検出値の各々にスケーリングを行って調整MIP画像を生成し、順番に生成されたアキシャル画像における最大値と最小値を逐次認定して両値が更新される毎におよびMIP画像に対しのスケーリングを再実行すればより望ましい。
【0017】
[作用・効果]本発明によれば、脳・膀胱の検出値を最大値と認定した後でも、最大値をリセットすることができる。したがって、スケーリング手段は、脳・膀胱が写りこんでいない領域の中で最大値と最小値を求めてスケーリングを行うことができるので、脳・膀胱の検出値の影響がMIP画像全体に及ばず、病変部を強調された診断に好適なMIP画像を取得できるのである。
【0018】
また、上述のリセット信号が送出されると、スケーリング手段は、その時点からアキシャル画像生成手段に生成されるアキシャル画像についてスケーリングを行い、その時点以前に生成されたアキシャル画像についてスケーリングを行わなければより望ましい。
【0019】
[作用・効果]上述の構成は、スケーリング手段の具体的な態様を示すものである。すなわち、スケーリング手段は、リセット信号が送出されると、スケーリングをやり直す構成となっている。しかも、スケーリング手段は、リセット信号の送出時点からアキシャル画像生成手段に生成されるアキシャル画像についてのみスケーリングをやり直す構成となっているのである。これにより、リセット信号が送出される以前に生成されたアキシャル画像は、最大値の再認定の影響を受けない。したがって、リセット信号が送出される以前のアキシャル画像、およびリセット信号が送出された後のアキシャル画像は、いずれもその部分における高い検出値が強調された薬剤分布画像に変換されるのである。
【0020】
また、上述の術者の輝度調節の指示を入力させる輝度調節入力手段を更に備え、アキシャル画像が検出器リングの伸びる方向に順番に配列したものをアキシャル画像群としたとき、リセット手段は、リセット信号が送信される度にアキシャル画像群を分割し、スケーリング手段は、調整入力手段の指示に従ってアキシャル画像の輝度調節を分割されたアキシャル画像群の領域毎に行えばより望ましい。
【0021】
[作用・効果]上述の構成によれば、スケーリングを手動でやり直すことができる。すなわち、上述の構成は、術者の輝度調節の指示を入力させる輝度調節入力手段を備えている。術者は、これを介して、スケーリング手段に輝度調節をやり直させることができる。すなわち術者は、スケーリング手段が認定する最大値と最小値を手動で設定するのである。ところで、この手動の操作についても、リセット手段の動作が関係する。すなわち、リセット手段は、リセット信号が送信される度にアキシャル画像群を分割しており、スケーリング手段は、調整入力手段の指示に従って薬剤分布画像の輝度調節を分割されたアキシャル画像群の領域毎に行うのである。アキシャル画像群は、リセット信号が送出された前後で別々の独立した領域と考えて輝度調節を行ったほうが良い。これにより、アキシャル画像群は、リセット信号が送出された前後で被検体の脳・膀胱が写りこんでいない領域と写りこんでいる領域に分けられる。スケーリング手段は、自動でアキシャル画像群の輝度調節を行うが、これで不足の場合は、手動でアキシャル画像群の輝度調節をやり直すことができるのである。
【0022】
また、上述の術者のリセットの指示を入力させるリセット指示入力手段を更に備え、リセット手段は、指示入力手段よりリセットの指示がなされた時点でリセット信号を送出すればより望ましい。
【0023】
[作用・効果]上述の構成は、リセット信号の送出されるタイミングについての具体的な構成を示している。すなわち、上述の構成は、術者のリセットの指示を入力させるリセット指示入力手段を更に備えている。このリセットの指示にしたがって、スケーリング手段の最大値、最小値の破棄が行われる。これにより、術者の望んだ位置でリセットの指示を行うことができる。
【0024】
また、上述のアキシャル画像に現れる所定値以上の階調値が集合した塊を監視する監視手段を更に備え、監視手段は、アキシャル画像群が生成されるにつれ、伸長していく塊を監視し、リセット手段は、塊の伸長が停止した時点でリセット信号を送出すればより望ましい。
【0025】
[作用・効果]上述の構成は、リセット信号の送出されるタイミングについての具体的な構成を示している。すなわち、薬剤分布画像に現れる所定値以上の階調値が集合した塊を監視する監視手段を更に備えている。監視手段は、被検体の脳・膀胱が薬剤分布画像に現れなくなった時点でスケーリング手段の最大値、最小値の破棄を行わせる。これにより、薬剤分布画像における膀胱の位置でリセットの指示を行うことができる。
【0026】
また、上述の検出器リングの伸びる方向に垂直なスライス面で被検体をスライスしたときの断面積を取得する断面積取得手段を更に備え、リセット手段は、アキシャル画像生成手段がアキシャル画像を生成している位置におけるスライス面での断面積を断面積取得手段より逐次取得し、被検体の断面積の減少が所定変化量以上となった時点でリセット信号を送出すればより望ましい。
【0027】
[作用・効果]上述の構成は、リセット信号の送出されるタイミングについての具体的な構成を示している。すなわち、検出器リングの伸びる方向に垂直なスライス面で被検体をスライスしたときの断面積を取得する断面積取得手段を更に備えている。リセット手段は、アキシャル画像の生成が被検体の頚部に差し掛かった時点で最大値、最小値の破棄を行う。これにより、薬剤分布画像における脳の位置でリセットの指示を行うことができる。
【0028】
また、(α)天板に対し中心軸周りに回転可能な放射線源と、(β)天板に対し中心軸周りに回転可能な放射線検出手段と、(γ)放射線源と放射線検出手段とを支持する支持手段と、(δ)支持手段を回転させる回転手段と、(ε)回転手段を制御する回転制御手段を備えた画像生成装置が中心軸を検出器リングの中心軸を共有して中心軸方向から隣接して設けられればより望ましい。
【0029】
[作用・効果]上述の構成によれば、被検体の内部構造と、薬剤分布との両方を取得できる放射線断層撮影装置が提供できる。PET装置は、一般的に薬剤分布に係る情報を得ることができる。しかしながら、被検体の臓器や組織を写しこんだ断層画像を参照しながら診断を行う必要がある場合がある。上述の構成によれば、被検体の内部構造と、薬剤分布との両方を取得できるので、例えば両画像を重ね合わせることで、診断に好適な合成画像を生成させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、アキシャル画像の検出値をスケーリングするスケーリング手段と、これにリセット信号を送出するリセット手段が設けられている。スケーリング手段は、リセット信号が送出されると、その時点で認定していた最大値と最小値を破棄して、両値を新たに認定する。この様に、本発明によれば、脳・膀胱の検出値を最大値と認定した後でも、最大値をリセットすることができる。したがって、スケーリング手段は、脳・膀胱が写りこんでいない領域の中で最大値と最小値を求めてスケーリングを行うことができるので、脳・膀胱の検出値の影響がMIP画像全体に及ばず、病変部を強調された診断に好適な放射線断層画像を取得できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。
【図3】実施例1に係るアキシャル画像群およびMIP画像の構成を説明する模式図である。
【図4】実施例1に係る表示部の構成を説明する平面図である。
【図5】実施例1に係る表示部の構成を説明する模式図である。
【図6】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図7】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図8】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図9】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図10】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図11】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図12】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図13】実施例2に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図14】実施例2に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図15】実施例3に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図16】従来構成に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【実施例1】
【0032】
<放射線断層撮影装置の構成>
以下、本発明に係る放射線断層撮影装置の各実施例を図面を参照しながら説明する。実施例1におけるγ線は、本発明の放射線の一例である。図1は、実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。実施例1に係る放射線断層撮影装置9は、被検体Mを載置する天板10と、天板10をその長手方向(z方向)から導入させる開口を有するガントリ11と、ガントリ11の内部に設けられた天板10をz方向に導入させるリング状の検出器リング12とを備えている。検出器リング12に設けられた開口は、z方向(天板10の長手方向、被検体Mの体軸方向)に伸びた円筒形となっている。したがって、検出器リング12自身もz方向に延伸している。
【0033】
天板10は、ガントリ11(検出器リング12)の開口をz方向から貫通するように設けられているとともに、z方向に沿って進退自在となっている。この様な天板10の摺動は、天板移動機構15によって実現される。天板移動機構15は、天板移動制御部16によって制御される。天板移動制御部16は、天板移動機構15を制御する天板移動制御手段である。天板10は、その全域が検出器リング12の外側に位置している位置から摺動して、検出器リング12の開口にその一方側から導入されるとともに、検出器リング12の内部を貫通して、検出器リング12の開口のもう一方側から突き出ることができる。
【0034】
ガントリ11の内部には、被検体Mから放射される消滅γ線対を検出する検出器リング12が備えられている。この検出器リング12は、被検体Mの体軸方向に伸びた筒状であり、そのz方向の長さは、26cm程度である。クロック19は、検出器リング12にシリアルナンバーとなっている時刻情報を送出する。検出器リング12から出力される検出データは、γ線をどの時点で検出されたかという時刻情報が付与され、後述のフィルタ部20に入力されることになる。
【0035】
検出器リング12の構成について説明する。実施例1によれば、100個前後の放射線検出器1がz方向に垂直な平面上の仮想円に配列することで1つの単位リングが形成される。この単位リングがz方向に配列されて検出器リング12が構成される。
【0036】
放射線検出器1の構成について簡単に説明する。図2は、実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。放射線検出器1は、図2に示すように放射線を蛍光に変換するシンチレータ2と、蛍光を検出する光検出器3とを備えている。そして、シンチレータ2と光検出器3との介在する位置には、蛍光を授受するライトガイド4が備えられている。
【0037】
シンチレータ2は、シンチレータ結晶が二次元的に配列されて構成されている。シンチレータ結晶は、Ceが拡散したLu2(1−X)2XSiO(以下、LYSOとよぶ)によって構成されている。そして、光検出器3は、どのシンチレータ結晶が蛍光を発したかという蛍光発生位置を特定することができるようになっているとともに、蛍光の強度や、蛍光の発生した時刻をも特定することができる。また、実施例1の構成のシンチレータ2は、採用しうる態様の例示にすぎない。したがって、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0038】
同時計数部21(図1参照)には、フィルタ部20を経由して検出器リング12から出力された検出データが送られてきている。検出器リング12に同時に入射した2つのγ線は、被検体内の放射性薬剤に起因する消滅放射線対である。同時計数部21は、検出器リング12を構成するシンチレータ結晶のうちの2つの組み合わせ毎に消滅放射線対が検出された回数をカウントし、この結果をアキシャル画像生成部22に送出する。同時計数におけるシンチレータ結晶の位置関係は、消滅放射線対が検出器リング12に入射した位置と入射した方向を示すものであり、放射性薬剤のマッピングに必要な情報である。シンチレータ結晶の組合せ毎に記憶される消滅放射線対検出の回数および消滅放射線のエネルギー強度は、被検体内における消滅放射線対の発生のバラツキを示すものであり、放射性薬剤のマッピングに必要な情報である。なお、同時計数部21による検出データの同時性の判断は、クロック19によって検出データに付与された時刻情報が用いられる。アキシャル画像生成部22は、本発明のアキシャル画像生成手段に相当する。
【0039】
フィルタ部20は、検出器リング12における無用なデータを同時計数部21に送出させない目的で設けられている。同時計数部21は、膨大なデータを扱わなければならないので、負荷がかかりやすい。フィルタ部20は、同時計数部21の負荷を軽減するように検出データを間引くことができる。例えば、被検体Mが検出器リング12の内部に挿入されていないときの検出データは、全てフィルタ部20が破棄して、同時計数部21に入力されない。
【0040】
同時計数データは、アキシャル画像生成部22に送出される。そこで、同時計数データは、二次元的にマッピングされ、被検体Mのアキシャル面における放射線の分布を示すアキシャル画像を生成する。このとき生成されるアキシャル画像A0は、輝度補正(スケーリング)がされる前のものである。複数のアキシャル画像A0は、z方向に沿って順番に生成される。z方向に沿って並んだ複数のアキシャル画像A0をまとめてアキシャル画像群Gとすると、これは、消滅放射線対が検出された量を表す検出値を三次元空間座標に配列したものとなっている。なお、このアキシャル画像群Gの生成には膨大な計算を要する。アキシャル画像生成部22は、被検体Mの足先からアキシャル画像A0を生成し始めて、被検体Mの頭部に向けて検出値を配列していく。すなわち、アキシャル画像生成部22は、z方向に沿って順番にアキシャル画像A0を生成するのである。この様に、アキシャル画像生成部22は、アキシャル画像A0を生成する。
【0041】
アキシャル画像生成部22は、アキシャル画像A0を随時、スケーリング部24に送出する(図1参照)。つまりアキシャル画像A0が出来上がり次第、随時、スケーリング部24に送られる。スケーリング部24は、アキシャル画像A0を構成する検出値のうちの最大値と最小値を認定する。このスケーリング部24に新たなアキシャル画像A0が送出されたとする。新たなアキシャル画像A0を構成する検出値に今までのアキシャル画像A0のうちから認定された最大値を越える検出値がある場合、または今まのアキシャル画像A0のうちから認定された最小値を下回る検出値がある場合、最大値、最小値を新たに発見されたものに更新する。一方、新たなアキシャル画像A0を構成する検出値のすべてが上述の最大値と最小値の範囲内に収まっていた場合、スケーリング部24は、上述の最大値と最小値を更新しない。このように、スケーリング部24は、現在までに取得されているアキシャル画像群Gの全てに亘って検出値が最大のものと最小のものを検索するようになっている。ただし、後述のように、アキシャル画像群Gが複数の領域に分割している場合は、現在生成中の領域の範囲内に亘って検出値が最大のものと最小のものを検索する。スケーリング部24は、本発明のスケーリング手段に相当する。
【0042】
スケーリング部24は、検出値と階調値とが関連したルックアップテーブルを生成する。このルックアップテーブルにおいて、最低の階調値を0とし、最高の階調値を65536とする。スケーリング部24は、検出値の最低値が0の階調値に対応し、検出値の最高値が65536と対応するように、検出値と階調値とを関連付ける。スケーリング部24は、中間的な検出値についても階調値を割り当てる。具体的には、スケーリング部24は、検出値の増加に比例して階調値が増加するように検出値と階調値を関連付ける。この関連付けは、上述のような線形的な関連付けに限られない。既存の単調増加関数にフィッテングさせながら中間的な検出値についての関連付けを行っても良い。
【0043】
スケーリング部24は、ルックアップテーブルを参照してアキシャル画像A0を構成する検出値を階調値に変換して調整アキシャル画像A1を生成する。調整アキシャル画像A1は、アキシャル画像A0に輝度補正が施されたものとなっている。
【0044】
なお、スケーリング部24が新たに送出されたアキシャル画像A0の中から最大値、最小値を発見した場合、新たに発見された最大値、最小値を参照してルックアップテーブルの再生成を行う。これに伴って、スケーリング部24は、新たなルックアップテーブルに基づいてアキシャル画像群Gを構成する検出値を再び階調値に変換する。これにより、アキシャル画像A0の輝度補正のやり直しが一括に行われる。ただし、後述のように、アキシャル画像群Gが複数の領域に分割している場合は、現在生成中の領域の範囲内に亘って変換が行われる。アキシャル画像生成部22は、本発明の画像生成手段に相当する。
【0045】
アキシャル画像A0は、MIP画像生成部23にも送られる。MIP画像生成部23は、アキシャル画像A0の検出値をもとに、MIP(maximum intensity projection)画像を生成する。MIP画像とは、三次元的なアキシャル画像群Gの検出値をある平面に投影した二次元画像である。簡単のため、天板10に平行な平面におけるMIP画像を生成するものとし、この平面に垂直な方向をxとする。MIP画像生成部23は、アキシャル画像群Gのうちx方向に沿って配列された検出値アレイの各々について検出値を検索する。つまり、図3に示すアキシャル画像群Gを構成する検出値アレイaのいずれかの検出値が選択されて、それが二次元的に配列されてMIP画像が生成されるのである。具体的には、MIP画像生成部23は、検出値アレイのうち最高の検出値検出値を選択してMIP画像を生成するのである。MIP画像は、病変部の大まかな位置を知るのに便利である。このとき生成されるMIP画像は、輝度補正(スケーリング)がされていないものであり、これがMIP画像M0である。なお、このMIP画像M0もアキシャル画像A0が出来上がり次第、随時生成される。MIP画像生成部23は、本発明の投影画像生成手段に相当する。
【0046】
リセット部26は、スケーリング部24にリセット信号を送出する。このリセット部26の動作については、後述のものとする。リセット部26は、本発明のリセット手段に相当する。
【0047】
なお、放射線断層撮影装置9は、各部を統括的に制御する主制御部41と、放射線断層画像を表示する表示部36とを備えている。この主制御部41は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部16,19,20,21,22,23,24,26を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。
【0048】
記憶部37は、スケーリング部24が認定した最大値、最小値を格納するほか、後述の減少許容範囲等の各種パラメータ、各部が出力するデータ、MIP画像M0、アキシャル画像A0、その他画像の一切を記憶する記憶手段となっている。また、操作卓35は、術者の各種指示を入力させる入力部となっている。操作卓35は、本発明のリセット指示入力手段・輝度調節入力手段に相当する。
【0049】
表示部36は、図4に示すように輝度補正済みの調整アキシャル画像A1および調整MIP画像M1を表示する。調整MIP画像M1は、アキシャル画像A0が出来上がり次第、随時表示部36に出力される。したがって、表示部36には、まず被検体の足先の部分が写りこんだ画像が現れ、それが時間の経過とともに次第に被検体の体軸方向(z方向)に沿って被検体の頭部に向けて拡張していき、最後に被検体の全身が写りこんだ調整MIP画像M1が表示部36に表示される。
【0050】
表示部36の具体的な構成について説明する。表示部36は、図4に示すように、調整アキシャル画像A1を表示するアキシャル画像表示部36aと、調整MIP画像M1を表示するMIP画像表示部36bと、操作アイコンであるスライダー36d,36f,36gと、操作ボタン36p〜36sを備えている。
【0051】
MIP画像表示部36bには、調整アキシャル画像A1が表示される部分から見て被検体の体側方向の両端に、体軸方向に伸びた2つの領域表示部36cが設けられている。領域表示部36cは、分割された領域毎にボックスが表示され、ボックスの内部には、各領域を区別する領域番号が付与されている。この領域は、リセット部26の動作によって決定される。その詳細は、後述の動作説明において説明する。
【0052】
第1スライダー36dは、アキシャル画像表示部36aの表示を切り替えるものである。アキシャル画像生成部22は、最終的には、例えば239枚のアキシャル画像を生成する。術者は、第1スライダー36dのツマミを操作することで、239枚のアキシャル画像のうちのいずれをアキシャル画像表示部36aに表示させるかを選択することができる。
【0053】
第2スライダー36f,第3スライダー36gは、調整アキシャル画像A1,調整MIP画像M1の階調の調節(輝度調節)を手動で行うものである。第2スライダー36fは、明るい側の階調を調節するものであり、第3スライダー36gは、暗い側の階調を調節するものである。この調節は、次の様によって行われる。図5は、アキシャル画像群Gにおける検出値のヒストグラムである。図中のr1は、ルックアップテーブルにおいて、階調が0に相当する検出値の位置を表しており、r2は、階調がに65536相当する検出値の位置を表している。したがって、検出値r1〜検出値r2までの検出値が所定の階調値ウインドウの範囲内にスケーリングされて調整アキシャル画像A1が生成されていることになる。なお、図5は、手動の輝度調節の構成を説明するものであり、本発明において、必ずしも検出値のヒストグラムを生成する必要はない。
【0054】
術者が第2スライダー36fを操作すると、図5におけるr2が変更され、術者が第3スライダー36gを操作すると、図5におけるr1が変更される。スケーリング部24は、最大値を術者が指定のr2に更新し、最小値を術者が指定のr1に変更する。スケーリング部24は、新たにルックアップテーブルを生成して、調整アキシャル画像A1を生成し直す。こうして、術者により、調整アキシャル画像A1,調整MIP画像M1の階調値の調節がなされる。スケーリング部24は、調整アキシャル画像A1の階調値の調整に連動して同様の階調値の調節を調整MIP画像M1に対しても行う。
【0055】
階調値の調節は、調整MIP画像M1における各領域毎に行われる。すなわち、術者は、メニューアイコン36eを操作して、いずれの領域の階調値を調整するかを選択することができる。図4において、選択された領域は2となっているので、領域表示部36cにおける2番目の領域、すなわち、アキシャル画像群Gにおける被検体Mの頭部を除く上半身部分を写しこんだ領域について階調値の調整が行われることになる。この様な調整は、スケーリング部24が行う。
【0056】
第1ボタン36pは、モード切替ボタンであり、アキシャル画像生成部22によるアキシャル画像A0の生成を一時的に停止することができる。第2ボタン36qは、MIP切替ボタンであり、選択すると、プルダウンメニューが表示される。術者は、プルダウンメニューの中から、調整MIP画像M1を生成するときの投影面を選択することができる。図4においては、被検体Mを正面から見るような調整MIP画像M1となっているが、術者は選択により、これを、被検体Mを横方向から見るような調整MIP画像M1に切り替えることができる。術者が調整MIP画像M1の切替を指示すると、そのたびに、MIP画像生成部23は、投影方向の違う新たな調整MIP画像M1を生成するのである。
【0057】
第3ボタン36rは、新規領域設定ボタンであり、調整MIP画像M1の生成中に術者がこれを押すと、ボタンが押される前に生成された調整MIP画像M1の部分と、ボタンが押される後に生成される調整MIP画像M1の部分とが別領域となる。この領域の区切り位置は、記憶部37によって記憶される。また、第3ボタン36rが押されると、リセット部26がリセット信号をスケーリング部24に送出する構成となっている。
【0058】
第4ボタン36sは、終了ボタンであり、表示を終了するときに押されるものである。
【0059】
<放射線断層撮影装置の動作>
次に、実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作について説明する。実施例1に係る放射線断層撮影装置にて被検体の薬剤分布を取得するには、次の各ステップに従う。各ステップとは、図6に示すように、アキシャル画像A0の生成を開始するアキシャル画像生成開始ステップS1と、アキシャル画像A0,MIP画像M0のスケーリングを開始するスケーリング開始ステップS2と、画像を表示部36に表示させることを開始する画像表示開始ステップS3と、術者の入力を待機する待機ステップS4と、リセット信号をスケーリング部24に送出し、スケーリングをやり直す再スケーリングステップS5と、再スケーリングに伴って表示部36に表示される画像の表示を再開する表示再開ステップS6を備えている。以降、これらの各ステップを図面を用いて時系列順に説明する。
【0060】
<アキシャル画像生成開始ステップS1>
まず、被検体Mに放射性薬剤が注射される。それから所定の時間をおいて、放射性薬剤被検体Mの体内に十分に行き渡った時点で、被検体Mは、天板10(図1参照)に載置される。天板10に載置された被検体Mは、天板移動機構15によって、検出器リング12(ガントリ11)の内部に導入される。被検体Mから放射される消滅放射線は、検出器リング12によって検出される。検査中、天板10がz方向に移動することにより、被検体Mと検出器リング12との相対位置が変更される。具体的には、検出器リング12の撮影視野にまず、被検体Mの足先が導入され、以降、被検体Mの各部が頭部から遠い順に撮影視野に導入される。この様にして、被検体Mの各部を順番に検出器リング12の撮影視野に導入しながら、被検体M全身の放射線検出が行なわれるのである。同時計数部21は、同時計数を行い、生成された同時計数データは、記憶部37に記憶される。アキシャル画像生成部22は、記憶部37に記憶されたデータを用いて、アキシャル画像A0の生成を開始する。アキシャル画像生成部22におけるアキシャル画像A0の生成は、z方向に沿って順番に行われる。すなわち、調整アキシャル画像A1の生成は、天板10の移動に合わせて被検体Mの足先から頭部にかけて順次行われる。
【0061】
<スケーリング開始ステップS2>
アキシャル画像生成部22は、生成された順番にアキシャル画像A0をスケーリング部24に送出する。スケーリング部24が受信するアキシャル画像A0は、まず始めに被検体Mの足先に係るものであり、その後、被検体の胴体側、頭部側の各部に係るものが逐一受信されるのである。スケーリング部24は、最初のアキシャル画像A0を取得し次第、動作を開始する。すなわち、スケーリング部24は、得られた各アキシャル画像A0を通して検出値を検索し、最大値と最小値を認定し、これを基に調整アキシャル画像A1の生成を開始する(図3参照)。したがって、調整アキシャル画像A1は、被検体Mの足先から頭部にかけて順次生成されることになる。もし仮にスケーリング部24が最大値、最小値を更新することがあれば、調整アキシャル画像A1および調整MIP画像M1の階調値も合わせて更新される。この様に、スケーリング部24は、調整アキシャル画像A1の階調値の調整に連動して同様の階調値の調節を調整MIP画像M1に対しても行う。
【0062】
<画像表示開始ステップS3,待機ステップS4>
スケーリング部24で生成された調整アキシャル画像A1,調整MIP画像M1は、生成された順番に表示部36に送出され、調整アキシャル画像A1,調整MIP画像M1は、表示部36で被検体Mの足先から頭部方向に段々と表示される(図7参照)。この時点から放射線断層撮影装置9は、操作卓35を通じて術者のリセットの指示を受け付ける。リセット部26は、リセットの指示があるまで待機する。
【0063】
調整MIP画像M1の表示は、図8に示すように、被検体Mの膀胱部にさしかかる。膀胱部は、放射性薬剤が高濃度に局在している部位であるので、調整MIP画像M1の中で明るく写りこむ。この時点でスケーリング部24は、最大値を更新するので、この膀胱部は、視認に好適な階調で調整MIP画像M1に写りこむ。
【0064】
<再スケーリングステップS5,表示再開ステップS6>
術者は、膀胱部の画像表示が完了した時点で操作卓35を通じ、スケーリング部24の動作をリセットする旨の指示を行う。リセット部26は、スケーリング部24にリセット信号を送出する。すると、スケーリング部24は、保持していた検出値の最大値、最小値を破棄して、リセット信号が送出された時点から新たに最大値、最小値の認定を開始する。調整MIP画像M1においてリセット信号が送出される前に生成された部分を第1領域R1とし、送出された後に生成される部分を第2領域R2とすると、スケーリング部24は、第1領域R1の再スケーリングをこれ以上行わず、第2領域R2で認定された最大値、最小値に基づいて第2領域R2のスケーリングを行う(図9参照)。そして、調整アキシャル画像A1,調整MIP画像M1の表示部36に対する表示動作が再開される。
【0065】
調整MIP画像M1と同様に、アキシャル画像群Gにおけるリセット信号が送出される前に生成された部分を第1領域とし、送出された後に生成される部分を第2領域とすると、スケーリング部24は、第1領域に属する調整アキシャル画像A1の再スケーリングをこれ以上行わず、第2領域で認定された最大値、最小値に基づいて第2領域に属する調整アキシャル画像A1のスケーリングを行う。この様に、リセット信号が送出されるとリセット部26は、アキシャル画像群Gの分割を行う。すなわち、リセット部26は、アキシャル画像群Gをリセット信号を送出した時点以降から作成される部分と、リセット信号を送出した時点以前に作成された部分とに分割する。こうしてアキシャル画像群Gは、第1領域R1,第2領域R2に分割されることになる。この領域が、既述の手動による輝度調節が実行される範囲となる。
【0066】
やがて、調整MIP画像M1の表示は、図10に示すように、被検体Mの頭部にさしかかる。頭部は、放射性薬剤が高濃度に局在している部位であるので、調整MIP画像M1の中で、明るく写りこむことが予め分かっている。術者は、操作卓35を通じ、頭部がイメージングされる前にスケーリング部24の動作をリセットする旨の指示を行う。リセット部26は、スケーリング部24にリセット信号を送出し、スケーリング部24は、最大値、最小値を再び破棄する。調整MIP画像M1において新たなリセット信号が送出された後に生成される部分を第3領域R3とすると、スケーリング部24は、第1領域R1,第2領域R2の再スケーリングをこれ以上行わず、第3領域R3で認定された最大値、最小値に基づいて第3部分R3のスケーリングを行う(図11参照)。
【0067】
この様にリセット部26は、リセット信号を送出するたびにアキシャル画像群Gの分割を行う。実施例1の動作説明においては、リセット信号の送出は、2回行われたので、アキシャル画像群Gは、3つの領域(第1領域R1,第2領域R2,第3領域R3)に分割されることになる。それぞれの領域について、最大値、最小値が認定されている。
【0068】
図11を参照すると、各領域R1〜R3にはそれぞれ明るい円形の領域が写りこんでいる。しかし、この3つの領域における検出値を比較すると、胴体部分のものが他の部分のものよりも低くなっている。にもかかわらず、実施例1の構成によれば、これが同一の階調で調整MIP画像M1に写りこんでいる。スケーリング部24は、調整MIP画像M1を複数の領域に分割して、領域の中で独立に階調の調整を行うからである。もし仮に、従来の構成のように術者がリセットの指示を行わないものとすると、3つの円形の領域は、同じ様式で階調の調整がされ、被検体Mの胴体部に現れるはずの領域が、調整MIP画像M1には表れない(図12参照)。被検体Mの膀胱部、頭部における円形の領域の検出値が、胴体部におけるそれよりも高く、膀胱部、頭部が強調されてしまったからである。
【0069】
胴体部分に現れた明るい領域は、予想されないものであり、術者は、これが病変部ではないかと予想することができる。この様にして、実施例1に係る放射線断層撮影装置9の動作は、終了となる。なお、調整MIP画像M1の終了後、術者は、操作卓35を通じ、3つの領域の輝度調節を個別に行うこともできる。
【0070】
以上のように、実施例1の構成によれば、アキシャル画像A0がz方向に連なったアキシャル画像群Gの検出値をスケーリングして調整MIP画像M1を生成させるスケーリング部24を備えている。アキシャル画像生成部22が出力したデータは、ここでスケーリングされ、階調値で構成される調整MIP画像M1に変換されるのである。スケーリング部24は、順番に生成されたアキシャル画像群Gにおける最大値と最小値を逐次認定して両値が更新される毎に調整MIP画像M1を更新する。
【0071】
実施例1の構成には、スケーリング部24にリセット信号を送出するリセット部26が設けられている。スケーリング部24は、リセット信号が送出されると、その時点で認定していた最大値と最小値を破棄して、両値を新たに認定する。この様に、スケーリング部24の認定する最大値と最小値は、リセットされることができる。アキシャル画像群Gにおいて、極めて検出値が高い部分があったとする。従来の構成によれば、この検出値を最大値と認め、アキシャル画像群Gのスケーリングを行うのである。しかしながら、極めて検出値が高い部分は、被検体の脳・膀胱である場合が多く、この様なスケーリングを行うと、脳・脳・膀胱が強調されるばかりで被検体の病変部が目立たなくなってしまう。
【0072】
実施例1の構成によれば、脳・膀胱の検出値を最大値と認定した後でも、最大値をリセットすることができる。したがって、スケーリング部24は、脳・膀胱が写りこんでいない領域の中で最大値と最小値を求めてスケーリングを行うことができるので、脳・膀胱の検出値の影響がMIP画像全体に及ばず、病変部を強調された診断に好適な調整MIP画像M1を取得できるのである。
【0073】
また、上述の構成は、スケーリング部24は、リセット信号が送出されると、調整MIP画像M1,調整アキシャル画像A1のスケーリングをやり直す構成となっている。しかも、スケーリング部24は、リセット信号の送出時点からアキシャル画像生成部22に生成されるアキシャル画像群Gの部分についてのみスケーリングをやり直す構成となっているのである。これにより、リセット信号が送出される以前のアキシャル画像群Gの部分は、最大値の再認定の影響を受けない。したがって、リセット信号が送出される以前のアキシャル画像群Gの部分、およびリセット信号が送出された後のアキシャル画像群Gの部分は、いずれもその部分における高い検出値が強調された調整MIP画像M1に変換されるのである。
【0074】
上述の構成によれば、スケーリングを手動でやり直すことができる。すなわち、上述の構成は、術者の輝度調節の指示を入力させる操作卓35を備えている。術者は、これを介して、スケーリング部24に輝度調節をやり直させることができる。すなわち術者は、スケーリング部24が認定する最大値と最小値を手動で設定するのである。ところで、この手動の操作についても、リセット部26の動作が関係する。すなわち、リセット部26は、リセット信号が送信される度にアキシャル画像群Gを分割しており、スケーリング部24は、調整入力手段の指示に従って調整MIP画像M1の輝度調節を分割されたアキシャル画像群Gの領域毎に行うのである。アキシャル画像群Gは、リセット信号が送出された前後で別々の独立した領域と考えて輝度調節を行ったほうが良い。これにより、アキシャル画像群Gは、リセット信号が送出された前後で被検体の脳・膀胱が写りこんでいない領域と写りこんでいる領域に分けられる。スケーリング部24は、自動で調整MIP画像M1,調整アキシャル画像A1の輝度調節を行うが、これで不足の場合は、手動で調整MIP画像M1,調整アキシャル画像A1の輝度調節をやり直すこともできる。
【0075】
また、上述の構成は、術者のリセットの指示を入力させる操作卓35を更に備えている。このリセットの指示にしたがって、スケーリング部24の最大値、最小値の破棄が行われる。これにより、術者の望んだ位置でリセットの指示を行うことができる。
【実施例2】
【0076】
次に、実施例2に係る放射線断層撮影装置9について説明する。実施例2の構成は実施例1の構成と同様であるが、図13に示すように、実施例1の構成に加えて、断面積取得部28と監視部29とを備えている。また、リセット部26は、記憶部37に記憶されている所定変化量を読み出す構成となっている。断面積取得部28は、本発明の断面積取得手段に相当し、監視部29は、本発明の監視手段に相当する。
【0077】
監視部29には、MIP画像生成部23より生成中の調整MIP画像M1が段々と送出されている。監視部29は、記憶部37に記憶されている所定値を読み出して、調整MIP画像M1において所定値以上の階調値が集合した塊を検出する。この塊は、被検体Mの膀胱を写しこんだものである。調整MIP画像M1は段々と監視部29に送出されているのであるから、膀胱を示す塊も段々と調整MIP画像M1の中で伸長する。監視部29は、塊の伸長が停止した時点で、リセット部26にリセット信号を送出する指示を行う。生成されつつある調整MIP画像M1において、塊の伸長が停止したということは、図8に示すように、膀胱のような明るい階調値からなる領域が調整MIP画像M1において生成され尽くしたことを意味している。リセット部26がこの時点でリセット信号を送出すれば、図9で説明したような調整MIP画像M1の領域の分割を自動で行うことができる。
【0078】
一方、断面積取得部28には、アキシャル画像生成部22よりアキシャル画像A0が次々と送出されている。断面積取得部28は、アキシャル画像A0における被検体Mの断面積を算出し、これを逐一リセット部26に送出する。リセット部26は、一連の調整アキシャル画像A1における被検体の断面積の減少を示す変化量を算出する。リセット部26は、図14に示すように、断面積の減少が読み出された所定の変化量よりも大きくなった時点で、スケーリング部24にリセット信号を送出し、アキシャル画像群Gを分割する。逐一生成される一連のアキシャル画像において、断面積が急激に変化したということは、アキシャル画像生成部22は、被検体における頚部のアキシャル画像A0の生成に差し掛かったことを意味しており、これより後に、被検体の脳を写しこんだ調整アキシャル画像A1,調整MIP画像M1がが生成されることを意味する。リセット部26がこの時点でリセット信号を送出すれば、図10で説明したような調整MIP画像M1の領域の分割を自動で行うことができる。断面積取得部28は、アキシャル画像A0の代わりに、調整アキシャル画像A1を使用してもよい。
【0079】
なお、実施例2においては、リセット部26がリセット信号を送出した時点が調整MIP画像M1を分割する分割点となる。この分割点を領域表示部36cが表示することになる。
【0080】
以上のように、実施例2の構成は、調整MIP画像M1に現れる所定値以上の階調値が集合した塊を監視する監視部29を更に備えている。監視部29は、被検体の脳・膀胱が調整MIP画像M1に現れなくなった時点でスケーリング部24の最大値、最小値の破棄を行わせる。これにより、調整MIP画像M1における膀胱の位置でリセットの指示を行うことができる。
【0081】
また、上述の構成は、検出器リング12の伸びる方向(検出器リング12の中心軸方向)に垂直なスライス面で被検体をスライスしたときの断面積を取得する断面積取得部28を更に備えている。リセット部26は、MIP画像M0,アキシャル画像A0の生成が被検体の頚部に差し掛かった時点で最大値、最小値の破棄を行う。これにより、調整MIP画像M1における脳の位置でリセットの指示を行うことができる。
【実施例3】
【0082】
次に、実施例3に係るPET/CT装置について説明する。PET/CT装置とは、実施例1,実施例2で説明した放射線断層撮影装置(PET装置)9と、X線を用いた断層画像を生成するCT装置8とを有する構成で、両者で得られた断層画像を重ね合わせた合成画像を生成することができる医用装置である。
【0083】
実施例3に係るPET/CT装置の構成について説明する。実施例3に係るPET/CT装置におけるPET装置においては、実施例1で説明した放射線断層撮影装置(PET装置)9を用いることができる。したがって、実施例3における特徴的な部分であるCT装置について説明する。図15に示すように、CT装置8は、ガントリ45を有している。ガントリ45には、z方向に伸びた開口が設けられており、この開口に天板10が挿入されている。なお、CT装置8は、放射線断層撮影装置9にz方向から隣接する。z軸は、本発明の中心軸に相当する。
【0084】
ガントリ45の内部には、X線を被検体に向けて照射するX線管43と、被検体を透過してきたFPD(フラット・パネル・ディテクタ)44と、X線管43とFPD44とを支持する支持体47とが備えられている。支持体47は、リング形状となっており、z軸周りに回転自在となっている。この支持体47の回転は、例えばモータのような動力発生手段と、例えば歯車のような動力伝達手段とから構成される回転機構39が実行する。また、回転制御部40は、この回転機構39を制御するものである。X線管43は、本発明の放射線源に相当する。FPD44は、本発明の放射線検出手段に相当し、支持体47は、本発明の支持手段に相当する。回転機構39は、本発明の回転手段に相当し、回転制御部40は、本発明の回転制御手段に相当する。支持体47(X線管43とFPD44)の回転における中心軸は、検出器リング12の中心軸と一致している。すなわち、CT装置8は、その中心軸を検出器リングの中心軸を共有してz方向からPET装置に隣接して設けられている。
【0085】
CT画像生成部48は、FPD44から出力されたX線検出データを基に、被検体MのX線断層画像を生成するものである。また、重ね合わせ部49は、放射線断層撮影装置(PET装置)9から出力された被検体内の薬剤分布を示すPET画像と、上述のX線断層画像とを重ね合わせることで重合画像を生成する構成となっている。
【0086】
主制御部41は、各種のプログラムを実行することにより、実施例1に係る各部の他、回転制御部40,CT画像生成部48,重ね合わせ部49,およびX線管制御部46とを実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。
【0087】
X線透視画像の取得方法について説明する。X線管43とFPD44とは、互いの相対位置を保った状態でz軸周りに回転する。このときX線管43は間歇的にX線を被検体Mに向けて照射し、その度ごとに、CT画像生成部48は、X線透視画像を生成する。この複数枚のX線透視画像は、CT画像生成部48において例えば、既存のバック・プロジェクション法を用いて単一の断層画像に組み立てられる。
【0088】
次に、合成画像の生成方法について説明する。PET/CT装置にて合成画像を取得するには、被検体Mの関心部位をCT装置に導入して、被検体Mとガントリ45との位置を変更しながらX線断層画像を取得する。そして、被検体Mの関心部位を放射線断層撮影装置(PET装置)9に導入してPET画像(調整アキシャル画像A1,調整MIP画像M1)を取得する。重ね合わせ部49によって両画像が重ね合わせられ、完成した合成画像は、表示部36にて表示される。これにより、薬剤分布と被検体の内部構造とを同時に認識することができるので診断に好適な断層画像が提供できる。
【0089】
実施例3の構成によれば、被検体Mの内部構造と、薬剤分布との両方を取得できる放射線断層撮影装置9が提供できる。PET装置は、一般的に薬剤分布に係る情報を得ることができる。しかしながら、被検体Mの臓器や組織を写しこんだ断層画像を参照しながら診断を行う必要がある場合がある。上述の構成によれば、被検体Mの内部構造と、薬剤分布との両方を取得できるので、例えば両画像を重ね合わせることで、診断に好適な合成画像を生成させることができる
【0090】
本発明は、上述の構成に限られることなく、下記のように変形実施をすることができる。
【0091】
(1)上述した各実施例のいうシンチレータ結晶は、LYSOで構成されていたが、本発明においては、その代わりに、GSO(GdSiO)などのほかの材料でシンチレータ結晶を構成してもよい。本変形例によれば、より安価な放射線検出器が提供できる放射線検出器の製造方法が提供できる。
【0092】
(2)上述した各実施例において、光検出器は、光電子増倍管で構成されていたが、本発明はこれに限らない。光電子増倍管に代わって、フォトダイオードやアバランシェフォトダイオードや半導体検出器などを用いていもよい。
【0093】
(3)上述した各実施例において、調整MIP画像M1,調整アキシャル画像A1は、被検体Mの足先から生成される構成となっていたが、これに代えて、被検体Mの頭部から生成される構成としてもよい。
【0094】
(4)上述した各実施例において、検出値の高い側が高階調に、検出値の低い側が低階調にそれぞれ対応していたが、本発明は、これに限られない。検出値の高い側を低階調に、検出値の低い側を高階調にそれぞれ対応させて、実施例1,実施例2における調整アキシャル画像A1,および調整MIP画像M1の階調を反転した画像を表示部36に表示させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0095】
A0 アキシャル画像
A1 調整アキシャル画像
G アキシャル画像群
M0 MIP画像
M1 調整MIP画像
1 放射線断層撮影装置
12 検出器リング
22 アキシャル画像生成部(アキシャル画像生成手段)
23 MIP画像生成部(投影画像生成手段)
24 スケーリング部(スケーリング手段)
26 リセット部(リセット手段)
27 監視部(監視手段)
28 断面積取得部(断面積取得手段)
35 操作卓(リセット指示入力手段)
35 操作卓(輝度調節入力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から放射される放射線を検出する放射線検出器がリング状に配列されて構成され、消滅放射線対を検出する検出器リングと、
前記検出器リングから出力された消滅放射線対の検出頻度を示す検出値を空間的に配列して、検体内の薬剤分布が写りこんだアキシャル画像を生成するアキシャル画像生成手段と、
前記アキシャル画像の検出値における最大値と最小値を認定し、両値が所定の階調範囲に収まるよう、前記アキシャル画像を構成する検出値の各々にスケーリングを行って調整アキシャル画像を生成するスケーリング手段と、
前記スケーリング手段にリセット信号を送出するリセット手段とを備え、
前記スケーリング手段は、順番に生成された前記アキシャル画像における最大値と最小値を逐次認定して前記両値が更新される毎に前記アキシャル画像に対しスケーリングを再実行し、
前記リセット信号が送出されると、前記スケーリング手段は、その時点で認定していた最大値と最小値を破棄して、前記両値を新たに認定することを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線断層撮影装置において、
前記アキシャル画像を所定の平面に投影したときの被検体内の薬剤分布が写りこんだMIP画像を生成する投影画像生成手段を更に備え、
前記スケーリング手段は、前記MIP画像を構成する検出値の各々にスケーリングを行って調整MIP画像を生成し、順番に生成された前記アキシャル画像における最大値と最小値を逐次認定して前記両値が更新される毎におよび前記MIP画像に対し前記のスケーリングを再実行することを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線断層撮影装置において、
前記リセット信号が送出されると、前記スケーリング手段は、その時点から前記アキシャル画像生成手段に生成されるアキシャル画像についてスケーリングを行い、その時点以前に生成されたアキシャル画像についてスケーリングを行わないことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項4】
請求項3に記載の放射線断層撮影装置において、
術者の輝度調節の指示を入力させる輝度調節入力手段を更に備え、
前記アキシャル画像が前記検出器リングの伸びる方向に順番に配列したものをアキシャル画像群としたとき、
前記リセット手段は、前記リセット信号が送信される度にアキシャル画像群を分割し、
前記スケーリング手段は、調整入力手段の指示に従って前記アキシャル画像の輝度調節を分割されたアキシャル画像群の領域毎に行うことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
術者のリセットの指示を入力させるリセット指示入力手段を更に備え、
前記リセット手段は、前記指示入力手段よりリセットの指示がなされた時点で前記リセット信号を送出することを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項6】
請求項4に記載の放射線断層撮影装置において、
前記アキシャル画像に現れる所定値以上の階調値が集合した塊を監視する監視手段を更に備え、
前記監視手段は、前記アキシャル画像群が生成されるにつれ、伸長していく前記塊を監視し、
前記リセット手段は、前記塊の伸長が停止した時点で前記リセット信号を送出することを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記検出器リングの伸びる方向に垂直なスライス面で被検体をスライスしたときの断面積を取得する断面積取得手段を更に備え、
前記リセット手段は、前記アキシャル画像生成手段が前記アキシャル画像を生成している位置におけるスライス面での断面積を前記断面積取得手段より逐次取得し、被検体の断面積の減少が所定変化量以上となった時点で前記リセット信号を送出することを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
(α)前記天板に対し中心軸周りに回転可能な放射線源と、
(β)前記天板に対し中心軸周りに回転可能な放射線検出手段と、
(γ)前記放射線源と前記放射線検出手段とを支持する支持手段と、
(δ)前記支持手段を回転させる回転手段と、
(ε)前記回転手段を制御する回転制御手段を備えた画像生成装置が
前記中心軸を前記検出器リングの中心軸を共有して前記中心軸方向から隣接して設けられることを特徴とする放射線断層撮影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate