説明

放射線検出器カード

【課題】半導体素子と電子部品との間の配線本数を低減できる放射線検出器カードを提供する。
【解決手段】放射線検出器カード1は、第1の電極と、第2の電極と、第2の電極に対向する第1の電極と第2の電極との間のピクセル領域10bとを有する半導体素子10と、第1の電極用配線とカードエッジ部29とを有する基板20とを備え、第2の電極の第2の電極用識別子と第1の電極の第1の電極用識別子とに基づいて、放射線200が入射したピクセル領域10bが特定され、第1の電極用配線が、一の半導体素子10の一のピクセル領域10bに対応する一の第1の電極用識別子に対応する一の第1の電極と、他の半導体素子10の他のピクセル領域10bに対応し、一の第1の電極用識別子と同一の第1の電極用識別子に対応する他の第1の電極とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器カードに関する。特に、本発明は、γ線、X線等の放射線を検出する放射線検出器カードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子と、半導体素子の一方の面に取り付けられたアノード電極と、半導体素子の他方の面に取り付けられたカソード電極と、一端側がアノード電極及びカソード電極のうち少なくとも一方の電極に接続され、他端側が電極からストレートに延びて当該電極からの信号を出力する信号線とを備える半導体放射線検出器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−109269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に係る半導体放射線検出器は、半導体素子が搭載される実装基板の半導体素子の反対側に半導体素子からの信号を読み出す電子部品が設けられる。したがって、電子部品をより半導体素子の近傍に設け、かつ、半導体素子と電子部品との間の配線本数、及び電子部品点数を低減することについて、工夫の余地がある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、半導体素子と電子部品との間の配線本数を低減できる放射線検出器カードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、一の面に設けられる複数の第1の電極と、一の面の反対側の面に設けられる第2の電極とを有し、第2の電極に対向する複数の第1の電極それぞれと第2の電極との間で放射線を検出可能な複数のピクセル領域を有する複数の半導体素子と、複数の第1の電極に電気的に接続する第1の電極用配線と、複数の半導体素子からの信号を外部の電気回路に供給するカードエッジ部とを有する基板とを備え、第2の電極が、複数の半導体素子ごとに第2の電極を識別する第2の電極用識別子に対応づけられ、複数の第1の電極が、複数の第1の電極のそれぞれを識別する第1の電極用識別子に対応づけられ、第1の電極用配線が、一の半導体素子の一のピクセル領域に対応する一の第1の電極用識別子に対応する一の第1の電極と、他の半導体素子の他のピクセル領域に対応し、一の第1の電極用識別子と同一の第1の電極用識別子に対応する他の第1の電極とを電気的に接続する放射線検出器カードが提供される。
【0007】
また、上記放射線検出器カードにおいて、基板が、複数の第1の電極のそれぞれに電気的に接続する複数の素子接続部を含み、複数の半導体素子を搭載する素子搭載領域と、第2の電極に電気的に接続される第2の電極側電子部品が搭載される第2の電極側電子部品搭載部と、第2の電極側電子部品搭載部から離れた位置に設けられ、第1の電極に電気的に接続される第1の電極側電子部品が搭載される第1の電極側電子部品搭載部とを有し、第1の電極用配線が、複数の素子接続部と第1の電極側電子部品とを電気的に接続し、カードエッジ部が、第2の電極側電子部品、及び第1の電極側電子部品からの信号を外部の電気回路に供給するエッジパターンを含むこともできる。
【0008】
また、上記放射線検出器カードにおいて、複数の半導体素子が、基板の一方の面及び他方の面に、基板を対称面として設けられ、第1の電極用配線が、基板の一方の面に設けられる一の第1の電極用配線と、正面視にて一の第1の電極用配線に重ならない部分を含んで他方の面に設けられる他の第1の電極用配線とを含むこともできる。
【0009】
また、上記放射線検出器カードにおいて、エッジパターンが、高電圧がかかる高電圧用端子と、高電圧用端子より低い電圧がかかる複数の低電圧用端子とを含み、高電圧用端子と低電圧用端子との間の距離が、複数の低電圧用端子間の距離より大きくてもよい。
【0010】
また、上記放射線検出器カードにおいて、基板の一方の面に設けられる一方の半導体素子の複数の第1の電極と、基板の他方の面の一方の半導体素子の対称の位置に設けられる他方の半導体素子の複数の第1の電極とが、基板に設けられるビアホールを介して電気的に接続されてもよい。
【0011】
また、上記放射線検出器カードにおいて、外部の電気回路が、第2の電極からの信号と、複数の第1の電極の内の一の第1の電極からの信号とに基づいて、放射線が入射したピクセル領域を特定することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る放射線検出器カードによれば、半導体素子と電子部品との間の配線本数を低減できる放射線検出器カードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードの斜視図である。
【図1B】本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードが備える半導体素子の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る基板の正面図である。
【図3】(a)は本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードのアノード用配線の基板正面からの配置の概要図であり、(b)はアノード用配線の基板断面における配置の概要図であり、(c)は基板に設けられるビアホール周辺部分の断面拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードからの信号の読み出しの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態]
図1Aは、本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードの斜視図の一例を示す。
【0015】
(放射線検出器カード1の構成の概要)
本実施の形態に係る放射線検出器カード1は、カード型の形状を呈し、γ線、X線等の放射線200を検出する放射線検出器カードである。図1Aにおいて放射線200は、紙面の上方から下方に沿って伝搬してくる。すなわち、放射線200は、放射線検出器カード1の半導体素子10からカードホルダ30及びカードホルダ31に向かう方向に沿って伝搬して放射線検出器カード1に入射する。そして、放射線検出器カード1は、半導体素子10の側面(つまり、図1Aの上方に面している面)において放射線200が入射する。したがって、半導体素子10の側面が放射線200の入射面となっている。このように、半導体素子10の側面を放射線200の入射面とする放射線検出器カードを、本実施の形態ではエッジオン型の放射線検出器カードと称する。なお、放射線検出器カード1は、特定の方向(例えば、放射線検出器カード1に向かう方向)に沿って伝搬してくる放射線200が通過する複数の開口を有するコリメータを介して放射線200を検出する複数の放射線検出器カード1が並べられて構成される放射線検出装置用の放射線検出器カード1として用いることができる。
【0016】
具体的に、放射線検出器カード1は、放射線200を検出可能な一対の半導体素子10と、複数の半導体素子10を搭載する薄い基板20と、一対の半導体素子10の端から距離をおいた位置にて基板20を挟み込むことにより基板20を支持するカードホルダ30及びカードホルダ31とを備える。そして、一例として、一対の半導体素子10が4組、基板20を挟み込む位置において基板20に固定される。すなわち、各組の一対の半導体素子10は、基板20の一方の面と他方の面とのそれぞれに基板20を対称面として対称の位置に固定される。
【0017】
また、基板20はカードホルダ30とカードホルダ31とに挟み込まれて支持される。カードホルダ30とカードホルダ31とはそれぞれ同一形状を有して形成され、カードホルダ30が有する溝付穴34にカードホルダ31が有する突起部36が嵌め合うと共に、カードホルダ31が有する溝付穴34(図示しない)にカードホルダ30が有する突起部36(図示しない)が嵌め合うことにより基板20を支持する。
【0018】
また、弾性部材実装部32aは、複数の放射線検出器カード1を支持する放射線検出器立てに放射線検出器カード1が挿入された場合に、放射線検出器カード1を放射線検出器立てに押し付けて固定する板ばね等の弾性部材32が設けられる部分である。なお、放射線検出器立てはカードエッジ部29が挿入されるコネクタを有しており、放射線検出器カード1は、カードエッジ部29がコネクタに挿入され、コネクタとカードエッジ部29に設けられるエッジパターン29aとが電気的に接続することにより外部の電子部品(例えば、アンプICやField Programmable Gate Array(FPGA))等に接続される。
【0019】
また、放射線検出器カード1は、一対の半導体素子10の基板20の反対側に、各半導体素子10が有する電極と基板20が有する複数の基板端子22とのそれぞれを電気的に接続する配線パターンを有するフレキシブル基板(図示しない)を更に備える。フレキシブル基板は、一対の半導体素子10の一方の半導体素子10側、及び他方の半導体素子10側の双方に設けられる(例えば、4組の一対の半導体素子10の一方の半導体素子10側のそれぞれと、他方の半導体素子10側のそれぞれとの双方に、フレキシブル基板がそれぞれ設けられる)。そして、フレキシブル基板の複数の配線パターンの一端のそれぞれが、基板端子22に電気的に接続する。
【0020】
(半導体素子10の詳細)
図1Bは、本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードが備える半導体素子の側面図の概要を示す。
【0021】
半導体素子10は、化合物半導体から主として構成される。そして、半導体素子10は、略直方体状若しくは平板状に形成される。また、半導体素子10は、一の面に設けられる複数の第1の電極と、一の面の反対側の面に設けられる第2の電極とを有する。以下、本実施の形態では、第1の電極をアノード電極100とし、第2の電極をカソード電極110として説明する。なお、第1の電極をカソード電極にし、第2の電極をアノード電極にすることもできる。
【0022】
具体的に、半導体素子10の放射線が入射する面に垂直な一の表面である素子表面に、複数の溝10aが設けられる。溝10aは、例えば、断面視にてV字形状を有して形成される。そして、半導体素子10は、溝10aが設けられている面を基板20側に向け、基板20に固定される。この場合において、複数の溝10aの間の半導体素子10の表面に設けられている表面電極であるアノード電極100と、後述する基板20の表面に設けられる素子接続部26とが銀ペースト等の導電性接着材50を介して接続される。これにより、半導体素子10が基板20に電気的に接続されると共に、機械的に固定される。
【0023】
また、半導体素子10は、カソード電極110に対向する複数のアノード電極100のそれぞれとカソード電極110との間で放射線を検出可能な複数のピクセル領域10bを有する。具体的に、放射線が入射する半導体素子10の面であって、各溝10aから、溝10aが設けられている面の反対側の面への仮想的な垂線により区切られる領域、及び当該仮想的な垂線と半導体素子10の短辺の端部とで区切られる領域がピクセル領域10bである。半導体素子10が、(n−1)個の溝10aを有することによりn個のピクセル領域10bが構成される(ただし、nは正の整数である。)。また、複数の溝10a間の平坦な領域である複数の素子表面のそれぞれにアノード電極100が設けられ、アノード電極100が設けられている面の反対側の素子表面に裏面電極であるカソード電極110が設けられる。なお、複数のピクセル領域10bのそれぞれが、放射線を検出する1つの画素(ピクセル)に対応する。これにより、一の半導体素子10は、複数の画素を有することになる。
【0024】
一例として、1つの放射線検出器カード1が8つの半導体素子10(つまり、4組の一対の半導体素子10)を備え、1つの半導体素子10がそれぞれ8つのピクセル領域10bを有する場合、1つの放射線検出器カード1は、64ピクセルの解像度を有することになる。溝10aの数を増減させることにより、一の半導体素子10のピクセル数を増減させることができる。
【0025】
半導体素子10を構成する化合物半導体としては、例えば、CdTeを用いることができる。なお、γ線等の放射線を検出できる限り、半導体素子10はCdTe素子に限られない。例えば、半導体素子10として、CdZnTe(CZT)素子、HgI素子等の化合物半導体素子を用いることもできる。
【0026】
(基板20の詳細)
図2は、本発明の実施の形態に係る基板の正面の概要を示す。
【0027】
基板20は、半導体素子10を搭載する素子搭載領域28と、素子搭載領域28が設けられる基板20の一の辺側の対辺側に設けられ、外部の電気回路に接続可能なカードエッジ部29とを有する。また、基板20は、素子搭載領域28とカードエッジ部29との間に、半導体素子10のカソード電極110に電気的に接続される第2の電極側電子部品としてのカソード側電子部品が搭載される第2の電極側電子部品搭載部としてのカソード側電子部品搭載部25と、カソード側電子部品搭載部25から離れた位置に設けられ、半導体素子10のアノード電極100に電気的に接続される第1の電極側電子部品としてのアノード側電子部品が搭載される第1の電極側電子部品搭載部としてのアノード側電子部品搭載部27とを有する。カソード側電子部品、及びアノード側電子部品は、例えば、半導体素子10からの信号が入力される抵抗、コンデンサ等の電子部品(図示しない)である。
【0028】
素子搭載領域28は、半導体素子10が搭載される領域ごとに設定するか、あるいは複数の半導体素子10が搭載される領域に設定することができる。図2の例では、複数の半導体素子10ごとに正面視にて長方形状の素子搭載領域28を設定した例を示す。複数の素子搭載領域28を設定した場合、複数の素子搭載領域28はそれぞれ、それぞれの短辺同士が隣接されて設けられる。
【0029】
また、カードエッジ部29は、カソード側電子部品、及びアノード側電子部品からの信号を外部の電気回路に供給する。具体的に、カードエッジ部29は、素子搭載領域28が設けられている側の辺の対辺側に、カードエッジ部29の長手方向に沿って配列される複数のエッジパターン29a、及びカードエッジ部29の端部側に設けられるエッジパターン29bを含んで設けられる。複数のエッジパターン29a、及びエッジパターン29bにより、カソード側電子部品、及びアノード側電子部品からの信号が外部の電気回路に供給される。なお、複数のエッジパターン29a及びエッジパターン29bはそれぞれ、正面視にて長方形状を有する。そして、複数のエッジパターン29a及びエッジパターン29bのそれぞれは、長手方向をカードエッジ部29の長手方向に垂直な方向に向けて配列される。
【0030】
そして、素子搭載領域28には、半導体素子10の複数のアノード電極100のそれぞれに電気的に接続する複数の素子接続部26が設けられる。素子接続部26は、一例として、正面視にて長方形状を有する。そして、複数の素子接続部26は、予め定められた間隔をおいて素子搭載領域28の長手方向に沿って配列される。この場合において、複数の素子接続部26はそれぞれ、素子接続部26の長辺を素子搭載領域28の長手方向に垂直な方向に向けて配列される。なお、当該予め定められた間隔は、半導体素子10の基板20側に設けられる複数のアノード電極100の間隔に対応する。
【0031】
複数の素子接続部26のカードエッジ部29側の端部はそれぞれ、複数の第1の電極用配線としてのアノード用配線23のそれぞれに電気的に接続される。そして、複数のアノード用配線23はそれぞれ、アノード側電子部品搭載部27に搭載されているアノード側電子部品に電気的に接続される。これにより、半導体素子10のアノード電極100とアノード側電子部品搭載部27のアノード側電子部品とは、アノード用配線23により電気的に接続される。ここで、複数のアノード用配線23は、素子搭載領域28とアノード側電子部品搭載部27との間に主として設けられ、素子搭載領域28のカードエッジ部29側の基板20の表面を含む領域に配置される。一例として、複数のアノード用配線23の主要部分は、素子搭載領域28の長手方向に略平行な方向に伸びて形成される。
【0032】
複数のエッジパターン29aは、カソード用配線24を介し、アノード側電子部品搭載部27に搭載されているアノード側電子部品、又はカソード側電子部品搭載部25に搭載されているカソード側電子部品に電気的に接続される。アノード側電子部品に電気的に接続されるエッジパターン29aは、アノード電極からの電気信号を出力し、カソード側電子部品に電気的に接続されるエッジパターン29aは、カソード電極からの電気信号を出力する。なお、具体的に、カソード電極からの電気信号を出力するエッジパターン29aは、カソード側電子部品としてのコンデンサを介して基板端子22に電気的に接続される。
【0033】
また、エッジパターン29bは、半導体素子10に高電圧のバイアス電圧を加えるための高電圧用端子である。エッジパターン29bは、カソード用配線24を介し、カソード側電子部品搭載部25に搭載されているカソード側電子部品に電気的に接続される。具体的に、エッジパターン29bは、カソード側電子部品としての抵抗を介して基板端子22のそれぞれに電気的に接続される。
【0034】
ここで、基板20は、カソード側電子部品搭載部25の素子搭載領域28側に、基板20から突き出た形状(例えば、円柱状)を有する複数の基板端子22を有する。基板端子22と半導体素子10のカソード電極110とがフレキシブル基板が有する配線パターン(図示しない)により電気的に接続される。これにより、半導体素子10のカソード電極110とエッジパターン29aとが電気的に接続される。
【0035】
また、高電圧用端子としてのエッジパターン29bは、バイアス電圧より低い電圧の電気信号が流れる低電圧用端子としてのエッジパターン29aの端から離れた位置に設けられる。すなわち、エッジパターン29bとエッジパターン29bに最も近い位置のエッジパターン29aとの間の距離は、複数のエッジパターン29a間の距離より大きく設定される。
【0036】
更に、アノード側電子部品搭載部27は、基板20の長手方向に沿って、カソード側電子部品搭載部25を挟む領域に設けられる。一例として、基板20の正面視にて、カソード側電子部品搭載部25の左端とカソード側電子部品搭載部25の左方向に設けられるアノード側電子部品搭載部27の右端との距離は「L1」であり、カソード側電子部品搭載部25の右端とカソード側電子部品搭載部25の右方向に設けられるアノード側電子部品搭載部27の左端との距離は「L3」である。更に、カソード側電子部品搭載部25の素子搭載領域28側の端から、アノード用配線23のカードエッジ部29側の端までの距離は「L2」である。すなわち、高電圧がかかる電子部品が搭載されるカソード側電子部品搭載部25と、アノード用配線23及びアノード側電子部品搭載部27との間には予め定められた距離が設けられる。
【0037】
基板20は、金属導体等の導電性材料からなる導電性薄膜(例えば、銅箔)が表面に形成された薄肉基板(例えば、FR4等のガラスエポキシ基板)を、ソルダーレジスト等の絶縁材料からなる絶縁層で挟んで可撓性を有して形成される。また、複数の素子接続部26の表面には導電性を有する銀ペースト等の導電性接着材が設けられ、半導体素子10のアノード電極100が当該銀ペーストを介して素子接続部26に電気的に接続される。なお、貫通孔37は、カードホルダ30及びカードホルダ31がそれぞれ有する突起部36が通る孔である。
【0038】
(アノード用配線23の配置の詳細)
図3の(a)は、本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードのアノード用配線の基板正面からの配置の概要を示し、図3の(b)は、アノード用配線の基板断面における配置の概要を示す。また、図3の(c)は、基板に設けられるビアホール周辺部分の断面拡大図の一例を示す。
【0039】
図3の(a)に示すように、アノード用配線23は、基板20の一方の面に設けられる第1のアノード用配線としてのアノード用配線23aと、基板20の正面視にてアノード用配線23aに重ならない部分を含んで他方の面に設けられる第2のアノード用配線としてのアノード用配線23bを含む。すなわち、図3の(b)に示すように、アノード用配線23aの基板20を挟んだ反対側には、アノード用配線23bは配置されていない。これにより、アノード用配線23aとアノード用配線23bとが基板20を挟んで平行の位置に配置されないので、アノード用配線23aと基板20とアノード用配線23bとにより発生する静電容量を低減できる。
【0040】
ここで、基板20の一方の面に設けられる一方の半導体素子10の複数のアノード電極100と、基板20の他方の面であって、一方の半導体素子の対称の位置に設けられる他方の半導体素子10の複数のアノード電極100とは、基板20に設けられるビアホール210を介して電気的に接続される。例えば、図3の(c)に示すように、基板20は、基板20に設けられたビアホール210を介し、基板20の一方の面と他方の面とを導通させる導通部215と、導通部215と素子接続部26とを電気的に接続する接続部212とを有する。そして、導通部215とアノード用配線23とが電気的に接続される。
【0041】
(信号の読み出し方法)
図4は、本発明の実施の形態に係る放射線検出器カードからの信号の読み出しの概要を示す。
【0042】
まず、カソード電極110は、複数の半導体素子10ごとにカソード電極110を一意に識別する第2の電極用識別子としてのカソード用識別子に対応づけられる。例えば、基板20の一方の面に搭載されている複数の半導体素子10のうち、基板20の一端側に搭載されている半導体素子10のカソード電極110にカソード用識別子として「0」を対応づける。そして、当該半導体素子10の基板20の反対側に設けられる半導体素子10のカソード電極110にカソード用識別子として「1」を対応づける。同様に、全ての半導体素子10のカソード電極110にカソード用識別子を対応づける。一例として、放射線検出器カード1が8つの半導体素子10を備える場合、「0」から「7」のカソード用識別子が、各カソード電極110に対応づけられる。すなわち、半導体素子10に複数のピクセル領域10bが含まれている場合であっても、一の半導体素子10のカソード電極110には、一のカソード用識別子が対応づけられる。
【0043】
次に、半導体素子10の複数のアノード電極100は、複数のアノード電極100のそれぞれを識別する第1の電極用識別子としてのアノード用識別子に対応づけられる。例えば、一の半導体素子10が8つのピクセル領域10bを有する場合、半導体素子10の一端側のピクセル領域10bにアノード用識別子として「8」が対応づけられる。そして、当該ピクセル領域10bから離れる方向に沿って、各ピクセル領域10bのそれぞれに各ピクセル領域10bを一意に識別する「8」から「15」のアノード用識別子が対応づけられる。
【0044】
そして、カソード用識別子とアノード用識別子とに基づいて、放射線200が入射したピクセル領域10bが特定される。具体的には、外部の電気回路が、カソード電極110からの信号と、複数のアノード電極100の内の一のアノード電極100からの信号とに基づいて、放射線200が入射したピクセル領域10bを特定する。すなわち、あるピクセル領域10bに放射線200が入射した場合、放射線検出器カード1の外部の電気回路が当該ピクセル領域10bに対応するカソード用識別子とアノード用識別子とを読み取ることにより、いずれの半導体素子10のいずれのピクセル領域10bに放射線200が入射したかが特定される。例えば、外部の電気回路によりカソード用識別子として「0」が検出され、アノード用識別子として「14」が検出された場合、カソード用識別子「0」に対応するカソード電極110を有する半導体素子10のピクセル領域10bであって、アノード用識別子「14」に対応するアノード電極100が設けられているピクセル領域10bに放射線200が入射したと外部の電気回路により判断される。
【0045】
本実施の形態では、アノード用配線23により、一の半導体素子10の一のピクセル領域10bに対応する一のアノード用識別子に対応する一のアノード電極100と、他の半導体素子10の他のピクセル領域10bに対応し、一のアノード用識別子と同一のアノード用識別子に対応する他のアノード電極100とが電気的に接続される。これにより、各半導体素子10のピクセル領域10bごとに個別のアノード用配線23と個別のエッジパターン29aとを設けることを要しない。共通のアノード用識別子に対応づけられるアノード電極100については、共通のアノード用配線23で互いに電気的に接続され、共通のエッジパターン29aに電気的に接続されることになる。
【0046】
(実施の形態の効果)
本発明の実施の形態に係る放射線検出器カード1は、複数のピクセル領域10bのアノード電極100に対応づけられるアノード用識別子が各半導体素子10のピクセル領域10bごとに共通化され、共通のアノード用識別子に対応づけられたアノード電極100は、アノード用配線23で互いに電気的に接続される。これにより、アノード用配線23の本数を低減することができる。
【0047】
例えば、放射線検出器カード1が8つの半導体素子10を有し、各半導体素子10が8つのピクセル領域10bを含む場合、放射線検出器カード1は、64個のピクセル領域10bを有する。この場合、仮にピクセル領域10bごとに配線を設ける場合、64本のアノード用配線を設けることを要する。しかしながら、本実施の形態に係る放射線検出器カード1は、一つの半導体素子10には一つのカソード電極110が設けられ、基板20を介して対称に設けられる一対の半導体素子10のピクセル領域10bは、共通のアノード電極100を有する。そして、一の半導体素子10の一のピクセル領域10bに対応する一のアノード用識別子に対応する一のアノード電極100と、他の半導体素子10の他のピクセル領域10bに対応し、一のアノード用識別子と同一のアノード用識別子に対応する他のアノード電極100とは電気的に接続される。これにより、放射線検出器カード1が64個のピクセル領域10bを有している場合であっても、基板20には8本のカソード用配線24と8本のアノード用配線23を形成するだけでよく、形成する配線数を減らすことができる。
【0048】
また、本実施の形態に係る放射線検出器カード1は、アノード用配線23の本数を低減できるので、複数のピクセル領域10bごとにアノード用配線23を設け、それぞれにチップコンデンサ及びチップ抵抗等の電子部品を基板20上に搭載することを要さない。したがって、本実施の形態に係る放射線検出器カード1においては、基板20上に搭載する電子部品点数を低減することができることから基板20の面積を増大させることを要さないので、放射線検出器カード1を小型化することが容易になる。
【0049】
また、共通のアノード用識別子に対応づけられたアノード電極100は、アノード用配線23で互いに電気的に接続され、共通のエッジパターン29aに接続されるので、カードエッジ部29に形成するエッジパターン29aの数を減らすことができる。したがって、放射線検出器カード1は、カードエッジ部29を介して電気的に接続される外部の電子部品に出力する電気信号の数を減らすことができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0051】
1 放射線検出器カード
10 半導体素子
10a 溝
10b ピクセル領域
20 基板
22 基板端子
23、23a、23b アノード用配線
24 カソード用配線
25 カソード側電子部品搭載部
26 素子接続部
27 アノード側電子部品搭載部
28 素子搭載領域
29 カードエッジ部
29a、29b エッジパターン
30、31 カードホルダ
32 弾性部材
32a 弾性部材実装部
34 溝付穴
36 突起部
37 貫通孔
100 アノード電極
110 カソード電極
200 放射線
210 ビアホール
212 接続部
215 導通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の面に設けられる複数の第1の電極と、前記一の面の反対側の面に設けられる第2の電極とを有し、前記第2の電極に対向する前記複数の第1の電極それぞれと前記第2の電極との間で放射線を検出可能な複数のピクセル領域を有する複数の半導体素子と、
前記複数の第1の電極に電気的に接続する第1の電極用配線と、前記複数の半導体素子からの信号を外部の電気回路に供給するカードエッジ部とを有する基板と
を備え、
前記第2の電極が、前記複数の半導体素子ごとに前記第2の電極を識別する第2の電極用識別子に対応づけられ、
前記複数の第1の電極が、前記複数の第1の電極のそれぞれを識別する第1の電極用識別子に対応づけられ、
前記第1の電極用配線が、一の半導体素子の一のピクセル領域に対応する一の第1の電極用識別子に対応する一の第1の電極と、他の半導体素子の他のピクセル領域に対応し、前記一の第1の電極用識別子と同一の第1の電極用識別子に対応する他の第1の電極とを電気的に接続する放射線検出器カード。
【請求項2】
前記基板が、前記複数の第1の電極のそれぞれに電気的に接続する複数の素子接続部を含み、前記複数の半導体素子を搭載する素子搭載領域と、前記第2の電極に電気的に接続される第2の電極側電子部品が搭載される第2の電極側電子部品搭載部と、前記第2の電極側電子部品搭載部から離れた位置に設けられ、前記第1の電極に電気的に接続される第1の電極側電子部品が搭載される第1の電極側電子部品搭載部とを有し、
前記第1の電極用配線が、前記複数の素子接続部と前記第1の電極側電子部品とを電気的に接続し、
前記カードエッジ部が、前記第2の電極側電子部品、及び前記第1の電極側電子部品からの信号を前記外部の電気回路に供給するエッジパターンを含む請求項1に記載の放射線検出器カード。
【請求項3】
前記複数の半導体素子が、前記基板の一方の面及び他方の面に、前記基板を対称面として設けられ、
前記第1の電極用配線が、前記基板の一方の面に設けられる一の第1の電極用配線と、正面視にて前記一の第1の電極用配線に重ならない部分を含んで他方の面に設けられる他の第1の電極用配線とを含む請求項2に記載の放射線検出器カード。
【請求項4】
前記エッジパターンが、高電圧がかかる高電圧用端子と、前記高電圧用端子より低い電圧がかかる複数の低電圧用端子とを含み、
前記高電圧用端子と前記低電圧用端子との間の距離が、前記複数の低電圧用端子間の距離より大きい請求項3に記載の放射線検出器カード。
【請求項5】
前記基板の一方の面に設けられる一方の半導体素子の複数の第1の電極と、前記基板の他方の面の前記一方の半導体素子の対称の位置に設けられる他方の半導体素子の複数の第1の電極とが、前記基板に設けられるビアホールを介して電気的に接続される請求項4に記載の放射線検出器カード。
【請求項6】
前記外部の電気回路が、前記第2の電極からの信号と、前記複数の第1の電極の内の一の第1の電極からの信号とに基づいて、放射線が入射したピクセル領域を特定する請求項5に記載の放射線検出器カード。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−32213(P2012−32213A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170370(P2010−170370)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】