説明

放射線検出器及び放射線検出装置

【課題】エネルギー分解能に優れた放射線検出器及び放射線検出装置を提供する。
【解決手段】実施の形態に係る放射線検出器1は、放射線4を検出する複数のピクセルを放射線4が入射する入射面に有するCdTe素子10と、放射線4が入射したピクセルの位置情報、及び入射した時刻の時刻情報をイベント情報として格納する記憶部306bと、CdTe素子10の第1のピクセルに放射線が入射する第1のイベント、及びCdTe素子10の第2のピクセルに放射線が入射する第2のイベントにおいて、第1のイベントと第2のイベントとの時間間隔が予め定められた時間間隔より短いとき、第1のイベント及び第2のイベントを同時イベントと判定する判定部306aと、同時イベントと判定された第1のイベントの第1のイベント情報及び第2のイベントの第2のイベント情報を記憶部306bから破棄する破棄部306cと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器及び放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、放射線を検出する検出器の2つ以上の半導体セルから出力された2つ以上の信号に基づいて同時イベントを判定する核医学診断装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の核医学診断装置は、時間差が所定のしきい値より小さく、かつ、上記2つ以上の信号のエネルギーの合計が所定のエネルギーウインドウ内に収まるとき、これらのイベントを同時イベントと判定する。判定された同時イベントは、イベントとして計数されないので、散乱に起因する入射位置誤認の確率を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−321357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の核医学診断装置では、放射線検出器の出力信号が信号処理回路に供給され、信号処理回路において同時イベントの判定が行われる。この構成では、信号処理回路に接続される放射線検出器の数が多い場合や、入射する放射線の数が多い場合、放射線検出器から信号処理回路に供給される出力信号の数が多くなるとともに、信号処理回路における同時イベントの判定の負荷が大きくなるため、計数率の特性が劣化する可能性がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、同時イベントの判定を効率的に行い、計数率の特性を向上させた放射線検出器及び放射線検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、放射線を検出する複数の検出領域を放射線が入射する入射面に有する半導体素子と、放射線が入射した検出領域の位置情報、及び入射した時刻の時刻情報をイベント情報として格納する第1の格納部と、半導体素子の第1の検出領域に放射線が入射する第1のイベント、及び半導体素子の第2の検出領域に放射線が入射する第2のイベントにおいて、第1のイベントと第2のイベントとの時間間隔が予め定められた時間間隔より短いとき、第1のイベント及び第2のイベントを同時イベントと判定する第1の判定部と、同時イベントと判定された第1のイベントの第1のイベント情報及び第2のイベントの第2のイベント情報を第1の格納部から破棄する第1の破棄部と、を備えた放射線検出器を提供する。
【0008】
また、放射線検出器は、第1の判定部が、第1のイベントと第2のイベントとの時間間隔が予め定められた時間間隔より短く、かつ、第1の検出領域から第2の検出領域までの距離が予め定められた範囲内のとき、第1のイベント及び第2のイベントを同時イベントと判定することが好ましい。
【0009】
また、放射線検出器は、予め定められた範囲が、放射線が入射した検出領域を基準とした8連結の検出領域、又は、8連結の検出領域及び8連結の検出領域の周囲の検出領域、であることが好ましい。
【0010】
また、放射線検出装置は、上記に記載の複数の放射線検出器を有し、複数の放射線検出器の一の放射線検出器が第1の検出領域を有し、他の放射線検出器が第2の検出領域を有し、一の放射線検出器及び他の放射線検出器から出力されるイベント情報に基づいて同時イベントを判定する第2の判定部と、を備えることが好ましい。
【0011】
また、放射線検出装置は、第1のイベント情報及び第2のイベント情報を格納する第2の格納部と、第2の判定部により同時イベントと判定された第1のイベント及び第2のイベントの第1のイベント情報及び第2のイベント情報を第2の格納部から破棄する第2の破棄部と、を備えることが好ましい。
【0012】
また、放射線検出装置は、上記に記載の複数の放射線検出器が、それぞれ相互通信部を有して相互に接続され、複数の放射線検出器の一の放射線検出器に第3のイベントが発生し、複数の放射線検出器の他の放射線検出器に第4のイベント、が発生したとき、一の放射線検出器の第1の判定部が、第1の放射線検出器の相互通信部を介して他の放射線検出器より第4のイベントのイベント情報を取得し、取得した第4のイベントのイベント情報に基づいて同時イベントを判定することが好ましい。
【0013】
また、放射線検出装置は、一の放射線検出器の第1の破棄部が、同時イベントと判定された第3のイベントのイベント情報を破棄し、さらに、第4のイベントのイベント情報を破棄させる破棄情報を生成し、相互通信部を介して他の放射線検出器に出力することが好ましい。
【0014】
また、放射線検出装置は、一の放射線検出器の第1の破棄部が、同時イベントと判定された第3のイベントのイベント情報の出力を停止させることが好ましい。
【0015】
また、放射線検出装置は、他の放射線検出器の第1の判定部が、他の放射線検出器の相互通信部を介して一の放射線検出器より第3のイベントのイベント情報を取得し、取得した第3のイベントのイベント情報に基づいて同時イベントを判定し、他の放射線検出器の第1の破棄部が、同時イベントと判定された第4のイベントのイベント情報の出力を停止させることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る放射線検出器及び放射線検出装置によれば、同時イベントの判定を効率的に行い、計数率の特性を向上させた放射線検出器及び放射線検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、第1の実施の形態に係る放射線検出器の斜視図である。
【図2】図2は、第1の実施の形態に係る複数の放射線検出器が並べられて構成されるエッジオン型の放射線検出装置の斜視図である。
【図3】図3は、第1の実施の形態に係る放射線検出回路とその周辺回路のブロック図である。
【図4】図4は、第1の実施の形態に係る放射線検出器を入射面側から見た概略図である。
【図5】図5は、第1の実施の形態に係る放射線検出装置に並べられた放射線検出器を入射面側から見た概略図である。
【図6】図6は、第1の実施の形態に係る放射線検出器に関するフローチャートである。
【図7】図7は、第1の実施の形態に係る放射線検出装置に関するフローチャートである。
【図8】図8は、第2の実施の形態に係る放射線検出回路とその周辺回路のブロック図である。
【図9】図9は、第2の実施の形態に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態の要約]
実施の形態に係る放射線検出器は、放射線を検出する複数の検出領域を放射線が入射する入射面に有する半導体素子と、放射線が入射した検出領域の位置情報、及び入射した時刻の時刻情報をイベント情報として格納する第1の格納部と、半導体素子の第1の検出領域に放射線が入射する第1のイベント、及び半導体素子の第2の検出領域に放射線が入射する第2のイベントにおいて、第1のイベントと第2のイベントとの時間間隔が予め定められた時間間隔より短いとき、第1のイベント及び第2のイベントを同時イベントと判定する第1の判定部と、同時イベントと判定された第1のイベントの第1のイベント情報及び第2のイベントの第2のイベント情報を第1の格納部から破棄する第1の破棄部と、を備える。
【0019】
[第1の実施の形態]
(放射線検出器1の構成の概要)
図1は、第1の実施の形態に係る放射線検出器の斜視図である。図2は、第1の実施の形態に係る複数の放射線検出器が並べられて構成されるエッジオン型の放射線検出装置の斜視図である。本実施の形態に係る放射線検出器1は、γ線、X線等の放射線を検出する放射線検出器である。図1において放射線4は、紙面の上方から下方に沿って入射してくる。すなわち、放射線4は、放射線検出器1の半導体素子としてのCdTe素子10からカードホルダ13に向かう方向に沿って伝搬して放射線検出器1に入射する。
【0020】
そして、放射線検出器1は、CdTe素子10のそれぞれの側面(つまり、図1の上方に面している面)に放射線4が入射する。したがって、CdTe素子10のそれぞれの側面が放射線4の入射面となっている。このように、半導体素子の側面を放射線4の入射面とする放射線検出器を、エッジオン型の放射線検出器と称する。
【0021】
なお、放射線検出器1は、特定の方向(例えば、被検体から放射線検出器1に向かう方向)に沿って入射してくる放射線4が通過する複数の開口を有するコリメータを介して放射線4を検出する複数の放射線検出器1が並べられて構成されるエッジオン型の放射線検出装置用の放射線検出器1として構成することができる。なお、コリメータを用いる場合、多孔平行コリメータ、ピンホールコリメータ等を用いることができる。また、本実施の形態は、エッジオン型でない放射線検出器にも適用することができる。また、本実施の形態に係る放射線検出器1は、カード型の形状を呈する。
【0022】
また、放射線検出器1の基板11はカードホルダ13とカードホルダ14とに挟み込まれて支持される。カードホルダ13とカードホルダ14とはそれぞれ同一形状を有して形成され、カードホルダ13が有する溝付穴18にカードホルダ14が有する突起部17が嵌め合わされると共に、カードホルダ14が有する溝付穴(図示しない)にカードホルダ13が有する突起部19が嵌め合わされることにより基板11を支持する。
【0023】
また、弾性部材実装部15は、複数の放射線検出器1を支持する放射線検出器立て5aに放射線検出器1が挿入された場合に、放射線検出器1を放射線検出器立て5aに押し付けて固定する弾性部材16が設けられる部分である。なお、放射線検出器立て5aはカードエッジ部29が挿入されるコネクタ52を有しており、放射線検出器1は、カードエッジ部29がコネクタ52に挿入され、カードエッジ部29に形成されたパターン29aとコネクタ52とが電気的に接続することにより、後述する総合放射線検出回路と電気的に接続される。
【0024】
放射線検出器1は、例えば、基板11の片側に4つのCdTe素子10が一定の間隔で配置され、他方側に4つのCdTe素子10が一定の間隔で配置されている。
【0025】
フレキシブル基板12は、例えば、フィルム状の樹脂(例えば、ポリイミド)を用いて形成された基板である。
【0026】
フレキシブル基板12は、図1の紙面に対して下部に、略半円形状の接続部120〜接続部123を有する。接続部120〜接続部123は、導電性材料を用いて形成されたパターンであり、例えば、Cu等を用いて形成される。接続部120は、図1に示すように、基板端子20と電気的に接続するように構成されている。同様に、接続部121は基板端子21と、接続部122は基板端子22と、接続部123は基板端子23と、電気的に接続するように構成されている。なお、図1では、フレキシブル基板12の反対側のフレキシブル基板と電気的に接続する基板端子及び反対側のフレキシブル基板の図示を省略している。
【0027】
また、CdTe素子10に設けられた複数の溝部(図示せず)は、素子表面に略等間隔で設けられる。さらに、CdTe素子10は、一例として、7つの溝部を有する。
【0028】
この溝部で分けられるCdTe素子の部分のそれぞれが、放射線4を検出する検出領域としての1つの画素(ピクセル)に対応する。これにより、1つのCdTe素子は、複数の画素を有することになる。そして、1つの放射線検出器1が8つのCdTe素子10を備え、1つのCdTe素子10が8つのピクセルを有する場合、1つの放射線検出器1は、64ピクセルの解像度を有することになる。溝部の数を増減させることにより、1つのCdTe素子10のピクセル数を増減させることができる。
【0029】
また、基板11は、複数のCdTe素子10のそれぞれが搭載される第1の端部側の幅が、複数のCdTe素子10が搭載される第1の端部側の反対側の第2の端部側よりも広く形成される。なお、第2の端部側において基板11はカードホルダ13及びカードホルダ14によって支持される。また、第2の端部側には、放射線検出器1と外部の制御回路とを電気的に接続可能である複数のパターン29aが設けられたカードエッジ部29が設けられる。また、CdTe素子10と電気的に接続する基板11に形成された素子接続部(図示せず)とカードエッジ部29との間には、複数のCdTe素子10のそれぞれと、素子接続部を介して電気的に接続する、後述する放射線検出回路を搭載する複数の電子部品搭載部3が設けられる。なお、電子部品搭載部3に、放射線検出回路以外のApplication Specific Integrated Circuit(ASIC)、Field Programmable Gate Array(FPGA)等を搭載することもできる。
【0030】
なお、基板11は、一例として、幅広の方向、すなわち長手方向は40mm程度の長さを有して形成される。そして、基板11は、幅広の部分の端部から幅が狭くなっている部分の端部まで、すなわち、素子接続部が設けられている部分の端からカードエッジ部29の端までの短手方向において、20mm程度の長さを有して形成される。
【0031】
本実施の形態において、半導体素子を構成する化合物半導体としては、例えば、CdTeを用いたがこれに限定されず、γ線等の放射線を検出するCdZnTe(CZT)素子、HgI素子等の化合物半導体素子を用いることもできる。
【0032】
本実施の形態に係る放射線検出装置5は、図2に示すように、複数の放射線検出器1を放射線検出器立て5aによって保持することにより構成される。具体的には、複数の放射線検出器1が並べられる間隔に応じて予め定められた距離をおいて並び、複数の放射線検出器1が挿入される複数の溝511が形成された複数の支持体51と、支持体51を搭載する支持板50と、複数の支持体51の間に設けられ、複数の放射線検出器1のカードエッジ部29のそれぞれが接続されて総合放射線検出回路と複数の放射線検出器1のそれぞれとを接続する複数のコネクタ52とを備える放射線検出器立て5aに複数の放射線検出器1が保持される。支持体51の複数の溝511のそれぞれに本実施の形態に係る複数の放射線検出器1が挿入され、固定されることにより図2に示すような放射線検出装置5が構成される。
【0033】
複数の支持体51は、支持板50上に放射線検出器1の幅に対応する間隔を有して設けられる。そして、複数の支持体51はそれぞれ、複数の壁部510を有しており、各壁部510の間に溝511が形成される。壁部510は、一方の表面にくぼみ部512が設けられ、他方の表面は平坦面513である。放射線検出器1の弾性部材実装部15には、例えば、板金を用いて形成される弾性部材16が組み込まれ、支持体51の溝511に放射線検出器1が挿入された場合に、この弾性部材16により放射線検出器1が壁部510の平坦面513に押さえ付けられることにより支持体51に放射線検出器1が固定される。なお、複数の支持体51はそれぞれ金属材料から切削等により形成できる。
【0034】
なお、図2に図示していないが、複数の放射線検出器1の上方、すなわち、放射線検出器1の支持板50の反対側には、複数の開口を有するコリメータが備え付けられる。コリメータを用いることにより、特定の方向からの放射線のみをCdTe素子において検出することができる。一例として、コリメータの複数の開口は略四角形状に形成される。そして、一例として、複数の開口の開口径のサイズは一辺が1.2mmに形成され、各開口が1.4mmピッチでマトリックス状に並べられて形成される。したがって、コリメータにおいて、一の開口と、この一の開口に隣接する他の開口とを隔てる壁部の厚さが0.2mmである。
【0035】
(放射線検出回路30の構成)
図3は、第1の実施の形態に係る放射線検出回路とその周辺回路のブロック図である。本実施の形態に係る放射線検出回路30は、電子部品搭載部3に搭載されている。また、本実施の形態に係る総合放射線検出回路100は、放射線検出装置5の放射検出器立て5aに搭載されている。以下では、放射線検出回路30の構成を説明する。
【0036】
放射線4がCdTe素子10に入射して相互作用(光電効果、コンプトン散乱、電子対生成のいずれか)を行うことにより、CdTe素子10内の原子が電離し、電子と正孔のペアが発生する。このペアの数は、入射する放射線4のエネルギーに比例するため、これを正確に読み出すことにより、優れたエネルギー決定精度(エネルギー分解能)を得ることができる。
【0037】
CdTe素子10に発生した電子と正孔は、ただCdTe素子10に入射しただけの場合、再結合して消滅する。そこで、CdTe素子10を挟んで設けられた陽電極及び陰電極間に高電圧(例えば、600V)のバイアス電圧を印加して電極間に電場を発生させることで、電子は陽電極に向けて移動し、正孔は陰電極に向けて移動する。放射線検出器1の放射線検出回路30は、この移動を信号として読み出し、出力する回路である。
【0038】
放射線検出回路30は、図3に示すように、CdTe素子10の1つのピクセルに、コンデンサ300、プリアンプ301、シェーピングアンプ302、ピークホールド303、A/D変換部304、及びトリガ生成部305からなる検出回路を備えている。つまり、放射線検出回路30は、例えば、CdTe素子10のピクセルの数と同じ数の検出回路を有する。
【0039】
また、放射線検出回路30は、イベント判定部306と、データバッファ307と、制御部308と、第1の通信部309と、を備えて概略構成されている。
【0040】
コンデンサ300は、例えば、CdTe素子10の陽電極側に接続されている。このコンデンサ300は、カップリングコンデンサであり、直流電圧成分を遮断し、CdTe素子10に生じた電荷の変化分のみがこのコンデンサ300を介してプリアンプ301に伝達する。
【0041】
プリアンプ301は、コンデンサ300の陽電極側の端子と反対の端子に接続されている。このプリアンプ301は、コンデンサ300を介して陽電極から出力された放射線検出信号を増幅する。
【0042】
シェーピングアンプ302は、プリアンプ301から出力された増幅信号の波形整形及び増幅を行う。
【0043】
ピークホールド303は、シェーピングアンプ302から出力された波形整形後の信号の波高を一定に保持する信号を出力するように構成されている。このピークホールド303から出力された信号は、A/D変換部304とトリガ生成部305に入力する。
【0044】
トリガ生成部305は、パルス形状のトリガ信号を生成し、A/D変換部304に出力する。また、トリガ生成部305は、ピークホールド303から出力された信号に基づいて、放射線が入射したピクセルの情報である位置情報、及びピークホールド303から出力された信号が入力した時刻の情報である時刻情報を生成し、位置情報及び時刻情報からなるイベント情報を生成する。トリガ生成部305は、生成したイベント情報をイベント判定部306に出力するように構成されている。
【0045】
A/D変換部304は、トリガ生成部305から出力されたトリガ信号が入力すると、ピークホールド303から出力された信号をデジタル信号に変換して出力するように構成されている。このデジタル信号は、データバッファ307に格納される。
【0046】
イベント判定部306は、第1の判定部としての判定部306aと、第1の格納部としての記憶部306bと、第1の破棄部としての破棄部306cと、を備えて概略構成されている。
【0047】
判定部306aは、後述する同時イベントを判定する。判定部306aは、トリガ生成部305から出力されるイベント情報に基づいて、予め定められた時間間隔よりも短い間に発生し、かつ、イベントが発生したピクセル間の距離が予め定められた範囲内であるとき、この条件を満たす少なくとも2つのイベントを同時イベントとして判定するように構成されている。なお、以下では、予め定められた時間間隔は、設定範囲と記載し、予め定められた範囲は、近接範囲と記載するものとする。
【0048】
記憶部306bは、例えば、判定を行う際に一時的に情報を格納するものであり、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリーを用いて構成されている。記憶部306bは、例えば、イベント情報を格納してから、予め定められた期間内に他のイベント情報が格納されないとき、格納したイベント情報をデータバッファ307に出力するように構成されている。
【0049】
破棄部306cは、同時イベントと判定されたイベント情報を記憶部306bから破棄する。
【0050】
制御部308は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等を備えたマイクロコンピュータであり、第1の通信部309等の制御を行う。
【0051】
第1の通信部309は、データバッファ307に格納されたデジタル信号及びイベント情報を総合放射線検出回路100に出力する。
【0052】
また、放射線検出装置5は、複数の放射線検出器1から出力された複数のイベント情報から、同時イベントを判定する総合放射線検出回路100を有する。
【0053】
この総合放射線検出回路100は、通信部101と、総合イベント判定部102と、データバッファ103と、を備えて概略構成されている。
【0054】
通信部101は、放射線検出器立て5aのコネクタ52を介して全ての放射線検出器1の第1の通信部309と接続されている。
【0055】
総合イベント判定部102は、第2の判定部としての判定部102aと、第2の格納部としての記憶部102bと、第2の破棄部としての破棄部102cと、を備えて概略構成されている。
【0056】
判定部102aは、通信部101を介して取得した放射線検出器1ごとのイベント情報に基づいて放射線検出器1を跨がる同時イベントを判定する。つまり、判定部102aは、取得した放射線検出器1ごとのイベント情報に基づいて、予め定められた時間間隔よりも短い間に発生し、かつ、予め定められた範囲内で発生した少なくとも2つのイベントを同時イベントとして判定するように構成されている。
【0057】
記憶部102bは、例えば、判定を行う際に一時的に情報を格納するものであり、RAM等の半導体メモリーを用いて構成されている。
【0058】
破棄部102cは、複数の放射線検出器1に跨る同時イベントと判定されたイベント情報を破棄する。
【0059】
データバッファ103は、総合イベント判定部102によって同時イベントと判定されなかったイベント情報を格納する。この格納されたイベント情報は、例えば、データバッファ103が出力された後、波高を補正する補正処理がなされて外部装置に出力され、外部装置によって視覚化されて表示装置に表示される。
【0060】
(同時イベントの判定について)
図4は、第1の実施の形態に係る放射線検出器を入射面側から見た概略図である。図4の縦軸及び横軸に示す数字と文字は、ピクセルの位置を示すために付したものであり、例えば、放射線4が入射した図4の紙面上方のピクセルは、縦軸の座標が11、横軸の座標がBなので、ピクセルB11と呼ぶものとする。つまり、1つの放射線検出器1は、図2に示すように、ピクセルA〜ピクセルA32及びピクセルB〜B32の計64個のピクセルを有する。
【0061】
以下に、イベント判定部306の判定部306aによる、同時イベントの判定について説明する。
【0062】
例えば、エネルギーが280keVの放射線4が放射線検出器1のピクセルB11に入射すると、ピクセルB11において、放射線4とCdTe素子10との相互作用(コンプトン散乱)が発生して140keVのエネルギーを失い、さらに、他のピクセルに入射して相互作用(光電効果)が発生し、140keVのエネルギーを失うことが考えられる。
【0063】
医学用に投与される薬剤から発生する放射線のエネルギーがおよそ140keVであることから、放射線検出器1は、2つのイベントを検出する。つまり、上記の場合、放射線検出器1は、実際には放射線が直接入射していない偽イベントを検出することとなる。なお、イベントとは、放射線が入射することを示す。
【0064】
この偽イベントが発生すると、外部装置により画像情報に変換され視覚化されたとき、視覚化された画像に偽イベントが表示されることとなり、画質の低下を招いてしまう。
【0065】
そこで、本実施の形態の判定部306aは、予め定められた時間間隔よりも短い間に発生し、かつ、予め定められた範囲内で発生した少なくとも2つのイベントを同時イベントとして判定し、さらに、破棄部306cによって、同時イベントとして判定されたイベント情報を破棄するので、偽イベントの排除が可能であり、エネルギー分解能が向上する。なお、第2のイベントが放射線検出器1のいずれのピクセルにおいても検出される可能性がある放射線検出器1の大きさが小さい場合、又は、放射線のエネルギーが大きい場合は、上記の予め定められた範囲(近接範囲)内という条件はなくても良い。
【0066】
なお、放射線は、半導体素子と相互作用し易いため、1つ目のピクセルでコンプトン散乱した放射線は、ピクセルをいくつも跨ぐような広範囲な散乱を起こし難い。つまり、第2のイベントが発生したピクセルは、第1のイベントが発生したピクセルの近傍に位置する。ここで、図4に示すように、ピクセルB11に入射した放射線は、散乱により、ピクセルA21に入射することは考え難い。例えば、2つのイベントの時間間隔が設定範囲内であっても、ピクセルB11とピクセルA21の距離は、近接範囲内ではないため、判定部306aは、この2つのイベント情報の位置情報に基づいて、2つのイベントは独立して発生したものであると判定する。
【0067】
そこで、本実施の形態に係る判定部306aは、一例として、1つの放射線検出器1内において、第1のイベントが発生したピクセルに隣り合うピクセルと斜めに位置するピクセル、すなわち、第1のイベントが発生したピクセルに8連結するピクセルと、その8連結するピクセルの周囲のピクセルまでを設定範囲として判定を行う。なお、隣り合うピクセルとは、例えば、図4に示すように、放射線4がピクセルB11に入射したとき、ピクセルA11、ピクセルB10及びピクセルB12に位置するピクセルである。また、斜めに位置するピクセルとは、例えば、図4に示すように、放射線4がピクセルB11に入射したとき、ピクセルA10及びピクセルA12に位置するピクセルである。さらに、8連結するピクセルの周囲のピクセルとは、例えば、図4に示すように、放射線4がピクセルB11に入射したとき、ピクセルA、ピクセルA13、ピクセルB及びピクセルB13に位置するピクセルである。なお、近接範囲は、上記の例に限定されず、放射線が入射したピクセルを基準として、8連結のピクセルであっても良いし、8連結のピクセルに隣り合うピクセルに隣り合うピクセルまでを範囲としても良い。近接範囲は、ピクセルの面積と、放射線のエネルギーと、に応じて変更可能である。
【0068】
また、判定部306aは、第1のイベントのイベント情報に含まれる時刻情報に基づいて得られる時刻と、第2のイベントのイベント情報に含まれる時刻情報に基づいて得られる時刻との時間間隔を求めるように構成されている。この時間間隔は、一例として、1μsecである。つまり、判定部306aは、第1のイベントの時刻と第2のイベントの時刻との時間間隔が予め定められた時間間隔より短く、かつ、第1のイベントの発生したピクセルと第2のイベントが発生したピクセルとが、予め定められた範囲内で発生した場合に同時イベントと判定する。なお、複数のイベントが上記の条件を満たす場合は、それらのイベントを同時イベントとみなすものとする。
【0069】
図5は、第1の実施の形態に係る放射線検出装置に並べられた放射線検出器を入射面側から見た概略図である。図5は、放射線検出装置5に並べられた放射線検出器1a〜放射線検出器1eの一部を図示したものである。また、図5は、紙面の左上を基準としてピクセルごとに縦に1〜12の数字、横にA〜Jの文字を割り付けている。よって、放射線4が入射した右上がりの斜線が付されたピクセルは、縦に7番目、横に6番目(F番目)のピクセルであることから、ピクセルFと示す。図5の紙面の右上がりの斜線は、放射線が入射したピクセルを示し、その周囲の左上がりの斜線は、入射したピクセルに対する近接範囲を示している。
【0070】
上記では、1つの放射線検出器1内における同時イベントの判定について説明したが、複数の放射線検出器1を狭い間隔で並べてなる放射線検出装置5では、第2のイベントが他の放射線検出器1で発生する場合も考えられる。
【0071】
例えば、図5に示すように、放射線4が、ピクセルFに入射したとき、ピクセルE〜ピクセルE、ピクセルF、ピクセルF、及びピクセルG〜ピクセルGは、8連結の領域である。また、ピクセルD〜ピクセルD、ピクセルE、ピクセルE、ピクセルF、ピクセルF、ピクセルG、ピクセルG、及びピクセルH〜ピクセルHは、8連結の周囲の領域となる。つまり、近接領域は、例えば、図5に示すように、放射線検出器1b〜放射線検出器1dまで及ぶ。
【0072】
総合イベント判定部102の判定部102aは、複数の放射線検出器1から取得した複数のイベント情報に基づいて同時イベントの判定を行う。以下に、本実施の形態に係る放射線検出装置5の動作について説明する。まず、図6のフローチャートに従って放射線検出器1の放射線検出回路30の動作について説明する。
【0073】
(第1の実施の形態の動作)
放射線4が、図5に示す放射線検出器1cのピクセルFに入射する第1のイベントが発生すると(S1)、放射線検出器1cのCdTe素子10から出力された放射線検出信号は、コンデンサ300、プリアンプ301、シェーピングアンプ302を介してピークホールド303に入力する。
【0074】
ピークホールド303は、入力した信号の波高を一定に保持する信号を生成し、A/D変換部304とトリガ生成部305に出力する。
【0075】
A/D変換部304は、トリガ生成部305から出力されたトリガ信号に基づいて、入力した信号を変換してデジタル信号を生成し、データバッファ307に格納する。
【0076】
トリガ生成部305は、入力した信号からトリガ信号を生成し、A/D変換部304に出力すると共に、イベント情報を生成してイベント判定部306に出力する。
【0077】
イベント判定部306は、入力したイベント情報を記憶部306bに格納する。
【0078】
続いて、第2のイベントが発生すると(S2)、トリガ生成部305は、CdTe素子10、コンデンサ300、プリアンプ301、シェーピングアンプ302及びピークホールド303を介して入力した信号に基づいてイベント情報を生成し、イベント判定部306に出力する。
【0079】
イベント判定部306の判定部306aは、イベント情報に基づいて第1のイベントと第2のイベントとが近接範囲内であるか否かを判定する。具体的には、判定部306aは、第1のイベントが発生したピクセルFを基準として、予め定められた範囲である、8連結となるピクセルと、8連結のピクセルの周囲のピクセルと、に第2のイベントが発生したか否かを判定する。
【0080】
ただし、判定部306aは、放射線検出器1c内の範囲についてのみ判定するので、範囲としては、ピクセルE〜ピクセルE、ピクセルF、ピクセルF、ピクセルF、ピクセルFである。他の範囲である放射線検出器1bのピクセルD〜ピクセルD、放射線検出器1dのピクセルG〜ピクセルG及びピクセルH〜ピクセルHにおけるイベント発生の有無は、後段の総合放射線検出回路100において行われる。
【0081】
判定部306aは、第2のイベントが近接範囲内で発生したとき(S3;Yes)、第1のイベントの発生から第2のイベントの発生までの時間間隔が設定範囲内であるか否かを判定する。
【0082】
判定部306aは、第1のイベントの発生から第2のイベントの発生までの時間間隔が設定範囲内であるとき(S4;Yes)、破棄部306cは、判定結果に基づいて第1のイベントと第2のイベントのイベント情報を記憶部306bから破棄する(S5)。
【0083】
ここで、ステップ3において、判定部306aは、第2のイベントが近接範囲より外のピクセルにおいて発生したとき(S3;No)、第1のイベント及び第2のイベントのイベント情報を記憶部306bから読み出してデータバッファ307にイベント情報を格納させる(S6)。なお、以下において、データバッファ307に格納されるイベント情報は、A/D変換部304から出力されたデジタル信号と関連付けられているものとする。
【0084】
続いて、制御部308は、データバッファ307からイベント情報を読み出して、第1の通信部309を介してイベント情報を出力する(S7)。
【0085】
また、ステップ4において、判定部306aは、第1のイベントの発生から第2のイベントの発生までの時間間隔が設定範囲よりも長いとき(S4;No)、ステップ6及びステップ7を実行する。
【0086】
以上までは、放射線検出器1の動作であったが、続いて、総合放射線検出回路100の動作について、図7のフローチャートに従って説明する。
【0087】
総合放射線検出回路100の総合イベント判定部102は、通信部101を介して各放射線検出器1のイベント情報を取得する(S10)。この取得したイベント情報は、一時的に総合イベント判定部102の記憶部102bに記憶される。
【0088】
総合イベント判定部102の判定部102aは、取得したイベント情報に基づいて第1のイベントの発生を判定すると、続いて、第1のイベントが発生したピクセルを基準とした近接範囲内に第2のイベントが発生しているか否かを判定する。この判定は、第1のイベントが発生した放射線検出器1cに隣り合う放射線検出器1b及び放射線検出器1dにおいて行われる。なお、放射線検出装置5内の放射線検出器1の並び方、及び放射線が入射したピクセルの位置によっては、図5の紙面において左右方向の放射線検出器だけでなく、上下方向に隣り合う放射線検出器に対しても判定が行われる。
【0089】
判定部102aは、隣り合う放射線検出器1b及び放射線検出器1dに第2のイベントが発生しているとき(S11;Yes)、第1のイベントと第2のイベントとが近接範囲内であるか否かを判定する。
【0090】
判定部102aは、第2のイベントが近接範囲内で発生したとき(S12;Yes)、第1のイベントの発生から第2のイベントの発生までの時間間隔が設定範囲内であるか否かを判定する。
【0091】
判定部102aは、第1のイベントの発生から第2のイベントの発生までの時間間隔が設定範囲内であるとき(S13;Yes)、破棄部102cは、判定結果に基づいて第1のイベントと第2のイベントのイベント情報を記憶部102bから破棄する(S14)。
【0092】
ここで、ステップ11において、判定部102aは、隣り合う放射線検出器1b及び放射線検出器1dに第2のイベントが発生していないとき(S11;No)、第1のイベント及び第2のイベントのイベント情報をデータバッファ103に格納させる(S15)。
【0093】
また、ステップ12において、判定部102aは、第2のイベントが近接範囲より外のピクセルにおいて発生したとき(S12;No)、第1のイベント及び第2のイベントのイベント情報を記憶部102bから読み出し、第1のイベント及び第2のイベントのイベント情報をデータバッファ103に格納させる(S15)。
【0094】
さらに、ステップ13において、判定部102aは、第1のイベントの発生から第2のイベントの発生までの時間間隔が予め定められた時間間隔よりも長いとき(S13;No)、第1のイベント及び第2のイベントのイベント情報をデータバッファ103に格納させる(S15)。
【0095】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る放射線検出器1によれば、総合放射線検出回路100にイベント情報を出力する前に、同時イベントと判定されたイベント情報を破棄するので、同時イベントの判定を行わない検出器と比べて、出力する情報量を少なくすることができる。
【0096】
また、本実施の形態に係る放射線検出装置5によれば、放射線検出器1において、総合放射線検出回路100にイベント情報を出力する前に、同時イベントと判定されたイベント情報を破棄し、総合放射線検出回路100において、放射線検出器を跨いで発生した同時イベントを破棄する。これにより、放射線検出器1から総合放射線検出回路100に出力する情報量を少なくすることができるとともに、総合放射線検出回路100における同時イベントの判定の負荷を小さくできる。よって、放射線検出装置5全体で、同時イベントの判定を効率的に行い、計数率の特性を向上させることができる。
【0097】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、隣り合う放射線検出器が相互に接続されている点で第1の実施の形態と異なっている。なお、以下に示す第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ構成及び機能を有する部分は、第1の実施の形態と同じ符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0098】
(放射線検出器1の構成)
図8は、第2の実施の形態に係る放射線検出回路とその周辺回路のブロック図である。
【0099】
本実施の形態に係る放射線検出器1は、図8に示すように、隣り合う放射線検出器と相互に通信する相互通信部としての第2の通信部310を有する。
【0100】
この第2の通信部310は、通信線311によって隣り合う放射線検出器の第2の通信部と接続されている。以下に、第2の実施の形態に係る放射線検出装置5の動作について、図9のフローチャートに従って説明する。なお、イベントが検出された放射線検出器内の同時イベントの判定は、第1の実施の形態と同じであるので、以下では、第1のイベントが発生した放射線検出器1cと図5に示す隣り合う放射線検出器1b又は放射線検出器1dに跨って発生する同時イベントの判定について説明する。
【0101】
なお、本実施の形態では、第2の通信部310は、隣り合う放射線検出器の第2の通信部と通信するとしたが、これに限定されず、例えば、上記に記載の近接範囲内という条件がない場合、又は、近接範囲が隣り合う放射線検出器より外側の放射線検出器に及ぶ場合は、設定された範囲にある他の放射線検出器と通信を行い、同時イベントを判定する構成としても良いし、通信可能な全ての放射線検出器と通信を行い、同時イベントを判定する構成であっても良い。
【0102】
(第2の実施の形態の動作)
まず、第1の実施の形態と同様に、図5に示すピクセルFに放射線が入射する第1のイベント(第3のイベント)が発生すると(S20)、イベント判定部306にイベント情報が入力し、イベント判定部306の判定部306aは、同じ放射線検出器1c(一の放射線検出器)の同時イベントの判定を行うと共に、隣り合う放射線検出器1b及び放射線検出器1dの同時イベントを判定するため、通信線311及び第2の通信部310を介してイベント情報を取得する(S21)。
【0103】
放射線検出器1cの判定部306aは、他の放射線検出器としての放射線検出器1b及び放射線検出器1dのイベント情報に基づいて第1のイベントの近接範囲内に第2のイベント(第4のイベント)が存在するか否かを判定する。
【0104】
放射線検出器1cの判定部306aは、第1のイベントの近接範囲内に第2のイベントが存在するとき(S22;Yes)、第1のイベントの発生から第2のイベントの発生までの時間間隔が設定範囲内であるか否かを判定する。
【0105】
放射線検出器1cの判定部306aは、第1のイベントの発生から第2のイベントの発生までの時間間隔が設定範囲内であるとき(S23;Yes)、放射線検出器1cの破棄部306cは、判定結果に基づいて第1のイベントのイベント情報を破棄し、第2のイベントを破棄するための破棄情報を生成し、第2の通信部310及び通信線311を介して第2のイベントが発生した放射線検出器に出力する(S24)。
【0106】
第2のイベントが発生した放射線検出器の破棄部306cは、破棄情報が入力すると、第2のイベントのイベント情報を破棄する(S25)。
【0107】
ここで、ステップ22において、放射線検出器1cの判定部306aは、第1のイベントの近接範囲内に第2のイベントが存在しないとき(S22;No)、データバッファ307、制御部308及び第1の通信部309を介して第1のイベントのイベント情報を総合放射線検出回路100に出力する(S26)。
【0108】
また、ステップ23において、放射線検出器1cの判定部306aは、第1のイベントの発生から第2のイベントの発生までの時間間隔が設定範囲よりも長いとき(S23;No)、ステップ26を実行する。
【0109】
なお、一の放射線検出器の破棄部306cが、同時イベントと判定された第1のイベント(第3のイベント)のイベント情報の出力を停止させても良い。つまり、イベント情報の出力を停止させることにより、一の放射線検出器から出力される情報量を抑制することができる。
【0110】
また、他の放射線検出器の判定部306aが、他の放射線検出器の第2の通信部310を介して一の放射線検出器より第1のイベントのイベント情報を取得し、取得した第1のイベントのイベント情報に基づいて同時イベントを判定し、他の放射線検出器の破棄部306cが、同時イベントと判定された第2のイベント(第4のイベント)のイベント情報の出力を停止させても良い。つまり、イベント情報の出力を停止させることにより、他の放射線検出器から出力される情報量を抑制することができる。
【0111】
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施の形態に係る放射線検出器1によれば、総合放射線検出回路100にイベント情報を出力する前に、放射線検出器間の同時イベントのイベント情報を破棄することができるので、検出器間で同時イベントを判定しない検出器と比べて、出力する情報量が少なくて済み、総合放射線検出回路100の処理速度が向上する。
【0112】
なお、上記の実施の形態において、イベント情報を破棄する方法として、破棄対象となるイベントのイベント情報を記憶部から破棄する方法を記載したが、これに限定されず、総合放射線検出回路100に破棄対象のイベント情報を出力しないようなフラグを付加する方法であっても良い。
【0113】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態及び変形例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0114】
1、1a〜1e…放射線検出器
3…電子部品搭載部
4…放射線
5…放射線検出装置
5a…放射線検出器立て
10…CdTe素子
11…基板
12…フレキシブル基板
13…カードホルダ
14…カードホルダ
15…弾性部材実装部
16…弾性部材
17…突起部
18…溝付穴
19…突起部
20〜23…基板端子
29…カードエッジ部
29a…パターン
30…放射線検出回路
50…支持板
51…支持体
52…コネクタ
100…総合放射線検出回路
101…通信部
102…総合イベント判定部
102a…判定部
102b…記憶部
102c…破棄部
103…データバッファ
120〜123…接続部
300…コンデンサ
301…プリアンプ
302…シェーピングアンプ
303…ピークホールド
304…A/D変換部
305…トリガ生成部
306…イベント判定部
306a…判定部
306b…記憶部
306c…破棄部
307…データバッファ
308…制御部
309…第1の通信部
310…第2の通信部
311…通信線
510…壁部
511…溝
512…くぼみ部
513…平坦面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出する複数の検出領域を前記放射線が入射する入射面に有する半導体素子と、
前記放射線が入射した検出領域の位置情報、及び入射した時刻の時刻情報をイベント情報として格納する第1の格納部と、
前記半導体素子の第1の検出領域に放射線が入射する第1のイベント、及び前記半導体素子の第2の検出領域に放射線が入射する第2のイベントにおいて、前記第1のイベントと前記第2のイベントとの時間間隔が予め定められた時間間隔より短いとき、前記第1のイベント及び前記第2のイベントを同時イベントと判定する第1の判定部と、
前記同時イベントと判定された前記第1のイベントの第1のイベント情報及び前記第2のイベントの第2のイベント情報を前記第1の格納部から破棄する第1の破棄部と、
を備えた放射線検出器。
【請求項2】
前記第1の判定部が、前記第1のイベントと前記第2のイベントとの時間間隔が予め定められた時間間隔より短く、かつ、前記第1の検出領域から前記第2の検出領域までの距離が予め定められた範囲内のとき、前記第1のイベント及び前記第2のイベントを同時イベントと判定する請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記予め定められた範囲が、前記放射線が入射した検出領域を基準とした8連結の検出領域、又は、前記8連結の検出領域及び前記8連結の検出領域の周囲の検出領域、である請求項2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の複数の放射線検出器を有し、
前記複数の放射線検出器の一の放射線検出器が前記第1の検出領域を有し、他の放射線検出器が前記第2の検出領域を有し、
前記一の放射線検出器及び前記他の放射線検出器から出力されるイベント情報に基づいて前記同時イベントを判定する第2の判定部と、
を備えた放射線検出装置。
【請求項5】
前記第1のイベント情報及び前記第2のイベント情報を格納する第2の格納部と、
前記第2の判定部により前記同時イベントと判定された前記第1のイベント及び前記第2のイベントの前記第1のイベント情報及び前記第2のイベント情報を前記第2の格納部から破棄する第2の破棄部と、
を備えた請求項4に記載の放射線検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の複数の放射線検出器が、それぞれ相互通信部を有して相互に接続され、
前記複数の放射線検出器の一の放射線検出器に第3のイベントが発生し、前記複数の放射線検出器の他の放射線検出器に第4のイベント、が発生したとき、
前記一の放射線検出器の第1の判定部が、前記第1の放射線検出器の相互通信部を介して前記他の放射線検出器より前記第4のイベントのイベント情報を取得し、取得した前記第4のイベントのイベント情報に基づいて前記同時イベントを判定する放射線検出装置。
【請求項7】
前記一の放射線検出器の第1の破棄部が、前記同時イベントと判定された前記第3のイベントのイベント情報を破棄し、さらに、前記第4のイベントのイベント情報を破棄させる破棄情報を生成し、前記相互通信部を介して前記他の放射線検出器に出力する請求項6に記載の放射線検出装置。
【請求項8】
前記一の放射線検出器の第1の破棄部が、前記同時イベントと判定された前記第3のイベントのイベント情報の出力を停止させる請求項6に記載の放射線検出装置。
【請求項9】
前記他の放射線検出器の第1の判定部が、前記他の放射線検出器の相互通信部を介して前記一の放射線検出器より前記第3のイベントのイベント情報を取得し、取得した前記第3のイベントのイベント情報に基づいて前記同時イベントを判定し、
前記他の放射線検出器の第1の破棄部が、前記同時イベントと判定された前記第4のイベントのイベント情報の出力を停止させる請求項6に記載の放射線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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