放射線検出器
【課題】装置の小型化を図りつつ、消費電力と信号処理時間との増大を抑制することが可能な放射線検出装置を提供すること。
【解決手段】放射線検出器RDは、入射した放射線が有するエネルギーに応じた信号を生成する複数の放射線検出部1と、複数の放射線検出部1毎に設けられ、複数の放射線検出部1からの信号のうち、所定の閾値以上である信号を計数して計数信号を出力する複数の計数部21と、複数の放射線検出部1からの信号を選択して出力する信号選択部31と、複数の放射線検出部1からの信号のうち信号選択部31により選択された信号を加算して加算信号を出力する加算部41と、加算部41からの加算信号の波高値を計測して波高値計測信号を出力する波高値計測部51と、複数の計数部21からの計数信号に基づいて、信号選択部31を制御する制御部CRと、を備えている。
【解決手段】放射線検出器RDは、入射した放射線が有するエネルギーに応じた信号を生成する複数の放射線検出部1と、複数の放射線検出部1毎に設けられ、複数の放射線検出部1からの信号のうち、所定の閾値以上である信号を計数して計数信号を出力する複数の計数部21と、複数の放射線検出部1からの信号を選択して出力する信号選択部31と、複数の放射線検出部1からの信号のうち信号選択部31により選択された信号を加算して加算信号を出力する加算部41と、加算部41からの加算信号の波高値を計測して波高値計測信号を出力する波高値計測部51と、複数の計数部21からの計数信号に基づいて、信号選択部31を制御する制御部CRと、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物からの放射線を検出する放射線検出器として、複数の放射線検出手段が配置されたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された放射線検出器によれば、被測定物からの放射線を複数の方向から検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2563341号公報(特開昭63−308590号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の放射線検出手段を備えている放射線検出器では、各放射線検出手段から出力された信号を処理する信号処理回路が放射線検出手段毎に必要とされる。したがって、放射線検出手段の数が増加するに伴い、信号処理回路の数も増加してしまい、装置の大型化が避けられない。信号処理回路には、たとえば、測定対象となる所定のエネルギーを有する放射線を選別するための波高分析器、及び、波高分析器から出力されたパルス信号を計数する計数器などが含まれる。また、信号処理回路による消費電力の増大や、処理する信号量の増加に伴う信号処理時間の増大といった問題点も生じてしまう。
【0005】
本発明は、装置の小型化を図りつつ、消費電力と信号処理時間との増大を抑制することが可能な放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る放射線検出器は、入射した放射線が有するエネルギーに応じた信号を生成する複数の放射線検出手段と、複数の放射線検出手段毎に設けられ、所定の閾値以上である信号を計数して計数信号を出力する複数の計数手段と、複数の放射線検出手段からの信号を選択して出力する信号選択手段と、複数の放射線検出手段からの信号のうち信号選択手段により選択された信号を加算して加算信号を出力する加算手段と、加算手段からの加算信号の波高値を計測して波高値計測信号を出力する波高値計測手段と、複数の計数手段からの計数信号に基づいて、信号選択手段を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る放射線検出器では、計数手段は、対応する放射線検出手段からの信号に基づいて所定の閾値以上である信号を計数し、計数信号を出力する。制御手段は、複数の計数手段からの計数信号に基づいて、信号選択手段を制御し、信号選択手段は、出力する信号を選択する。加算手段は、複数の放射線検出手段からの信号のうち信号選択手段により選択された信号を加算し、加算信号を出力する。波高値計測手段は、加算手段からの加算信号を受け、当該加算信号の波高値を計測し、波高値計測信号を出力する。これにより、計数手段からの出力に基づいて計数値が得られ、波高値計測信号からの出力に基づいて波高値が得られることとなる。
【0008】
一般に、波高値を計測する処理には、十分なSN比と精度とが要求されるため、波高値計測手段は、消費電力も大きく、また、信号処理時間も長くなってしまう。本発明では、複数の放射線検出手段からの信号すべての波高値を常に計測する必要がないことから、消費電力と信号処理時間との増大を抑制することができる。計数処理は、SN比への要求が比較的高くないため、計数手段は、簡易で且つ高速処理可能な構成を採用できる。したがって、複数の計数手段が備えられていても、消費電力と信号処理時間との増大は抑制される。
【0009】
制御手段は、計数値の合算値が所定の閾値よりも少ない場合、複数の放射線検出手段からの信号すべてを出力するように信号選択手段を制御してもよい。波高値を計測する処理は、計数値が所定値以上の計数/秒になると、計測精度が悪化するが、計数値が上記所定値よりも少ない場合、計測精度が悪化することはない。したがって、計測精度が悪化することなく、すべての放射線検出手段からの信号の波高値を計測することができる。
【0010】
制御手段は、計数値の合算値が所定の閾値以上である場合、計数値の合算値が所定の閾値よりも少なくなるように複数の放射線検出手段からの信号を選択して出力するように信号選択手段を制御してもよい。この場合、計測精度が悪化することなく、複数の放射線検出手段からの信号の波高値を計測することができる。
【0011】
制御手段は、最も少ない計数値が所定の閾値以上である場合、最も少ない計数値に対応する放射線検出手段からの信号を選択して出力するように信号選択手段を制御してもよい。この場合、計測精度の悪化を抑制することができる。
【0012】
制御手段は、波高値計測信号に基づいて、放射線のエネルギーを算出してもよい。この場合、放射線のエネルギーを適切に算出することかできる。
【0013】
複数の放射線検出手段は、シンチレータと、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、それぞれのアバランシェフォトダイオードに対して直列に接続されたクエンチング抵抗と、を含んでいるフォトダイオードアレイと、をそれぞれ有していてもよい。この場合、装置の小型化を図りつつ、フォトンカウンティング測定が可能となる。
【0014】
複数の計数手段、信号選択手段、加算手段、及び波高値計測手段を含む信号処理回路が搭載され、信号処理回路と制御手段との間を電気的に接続するフレキシブル基板を更に備え、複数の放射線検出手段が、フレキシブル基板に実装されていてもよい。この場合、装置の小型化をより一層図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置の小型化を図りつつ、消費電力と信号処理時間との増大を抑制することが可能な放射線検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る放射線検出器の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る放射線検出器の構成を示す分解斜視図である。
【図3】本実施形態に係る放射線検出器の信号処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】フォトダイオードアレイの平面図である。
【図5】フォトダイオードアレイの拡大平面図である。
【図6】図4に示したフォトダイオードアレイのVI−VI矢印線断面図である。
【図7】図4に示したフォトダイオードアレイのVII−VII矢印線断面図である。
【図8】図4に示したフォトダイオードアレイの回路図である。
【図9】本実施形態の変形例に係る放射線検出器の構成を示す斜視図である。
【図10】半導体光検出素子の平面図である。
【図11】計数部の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
図1及び図2を参照して、本実施形態に係る放射線検出器の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る放射線検出器の構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態に係る放射線検出器の構成を示す分解斜視図である。図3は、本実施形態に係る放射線検出器の信号処理動作を説明するためのフローチャートである。
【0019】
放射線検出器RDは、図1に示されるように、複数の放射線検出部(本実施形態では、4つの放射線検出部)1と、信号処理回路SPと、制御部CRと、を備えている。信号処理回路SPは、複数の計数部(本実施形態では、4つの計数部)21と、信号選択部31と、加算部41と、波高値計測部51と、を有している。
【0020】
各放射線検出部1は、入射した放射線が有するエネルギーに応じた信号を生成して、出力する。放射線検出部1は、図2にも示されるように、シンチレータ3と、半導体光検出素子5と、を有している。半導体光検出素子5は、光学接着剤によりシンチレータ3に光学的に接続されており、シンチレータ3からのシンチレーション光を検出する。半導体光検出素子5は、フレキシブル基板FSに実装されている。放射線検出部1からは、半導体光検出素子5の出力信号が、フレキシブル基板FSに形成された配線(図示省略)を通して、入射した放射線が有するエネルギーに応じた信号として信号処理回路SPへ出力される。
【0021】
シンチレータ3は、結晶性を有するシンチレータ、セラミックシンチレータ、又はプラスチックシンチレータからなる。シンチレータ3が結晶性を有するシンチレータである場合、シンチレータ3は、CsI又はNaIなどの結晶性材料からなる。シンチレータ3がセラミックシンチレータである場合、シンチレータ3は、無機蛍光体の焼結体などからなる。シンチレータ3がプラスチックシンチレータである場合、シンチレータ3は、PETなどからなる。
【0022】
ここで、図4〜図8を参照して、半導体光検出素子5の構成について説明する。図4は、フォトダイオードアレイの平面図である。図5は、フォトダイオードアレイの拡大平面図である。図6は、図5に示したフォトダイオードアレイのVI−VI矢印線断面図である。図7は、図5に示したフォトダイオードアレイのVII−VII矢印線断面図である。図8は、図4に示したフォトダイオードアレイの回路図である。
【0023】
半導体光検出素子5は、フォトダイオードアレイPDAからなる。フォトダイオードアレイPDAは、矩形形状を呈する半導体基板SSを備えている。
【0024】
フォトダイオードアレイPDAは、半導体基板SSに形成された複数のアバランシェフォトダイオードAPDを備えている。それぞれのアバランシェフォトダイオードAPDには、クエンチング抵抗(抵抗層)17が直列に接続されている。複数のアバランシェフォトダイオードAPDが形成された領域は、外周配線WLによって囲まれている。外周配線WLの外側には遮光層SLなどを設けることができる。遮光層SLは、たとえば金属などからなる。
【0025】
外周配線WLの外形は、矩形環状であって、各辺がX軸又はY軸に沿って延びている。外周配線WLは、X軸に沿って延びた電極パッドPに接続されている。外周配線WLには、複数の中継配線18が電気的に接続されている。複数の中継配線18は、それぞれがY軸に沿って延びており、外周配線WLの少なくとも2箇所(Y軸に沿った両端に位置する部位)間をそれぞれが接続している。
【0026】
個々のアバランシェフォトダイオードAPDのアノード及びカソードの一方は、クエンチング抵抗17を介して、中継配線18のいずれかに電気的に接続されている。個々のアバランシェフォトダイオードAPDのアノード及びカソードの他方は、半導体基板SSに設けられた別の電極16(図6参照:本例では裏面電極)に電気的に接続されている。電極16は、アノード及びカソードの他方に電気的に接続できる構成であれば、半導体基板SSの表面側に設けることとしてもよい。
【0027】
フォトダイオードアレイPDAでは、半導体基板SSは、第一半導体層11と、第一半導体層11上に形成された第二半導体層12と、第二半導体層12内に形成された第三半導体層13と、を備えている。第一半導体層11、第二半導体層12、及び第三半導体層13の導電型は、それぞれ、第1導電型(N型)、第2導電型(P型)、第2導電型(P型)である。この場合、第一半導体層11と第二半導体層12との間にPN接合が形成される。各リング状電極15の直下のPN接合から広がる空乏層内で発生したキャリアが、第三半導体層13を介して、各リング状電極15において収集される。このPN接合からなるアバランシェフォトダイオードAPDには、逆バイアスが印加される。空乏層内では、光Lの入射に応じてキャリアが発生する。
【0028】
第二半導体層12は、良好な結晶性のものを得るという観点から、第一半導体層(基板)11の表面へのエピタキシャル成長によって形成することが好ましい。第三半導体層13は、第二半導体層12への不純物のイオン注入又は拡散により形成することができる。第三半導体層13の不純物濃度は、第二半導体層12の不純物濃度よりも高い。半導体基板SSは、好適にはSiから構成されており、N型の不純物としては5価のアンチモンやリン、P型の不純物としては3価のボロンを用いることができる。
【0029】
フォトダイオードアレイPDAでは、第一半導体層11、第二半導体層12、及び第三半導体層13の導電型は、それぞれ、第1導電型(N型)、第1導電型(N型)、第2導電型(P型)とすることも可能である。この場合には、第二半導体層12と第三半導体層13との間にPN接合が形成される。各リング状電極15の直下のPN接合から広がる空乏層内で発生したキャリアが、第三半導体層13を介して、各リング状電極15において収集される。このPN接合からなるアバランシェフォトダイオードAPDには、逆バイアスが印加される。
【0030】
もちろん、第1導電型をP型とし、第2導電型をN型とすることも可能である。この場合には、バイアスの印加方向が、上記とは逆になる。
【0031】
第三半導体層13上には、SiO2からなる絶縁層14が形成されており、絶縁層14にはリング状電極15が形成されている。リング状電極15は、絶縁層14に設けられた開口を介して、第三半導体層13に接続されている。リング状電極15の平面形状は、矩形環状であり、リング状電極15の一端は、必要に応じて適当な導電層を介して、クエンチング抵抗(層)17の一端に接続されている。
【0032】
クエンチング抵抗17は、ポリシリコンから形成され、リング状電極15、中継配線18及び外周配線WLはアルミニウムから形成される。ポリシリコンの体積抵抗率は、アルミニウムの体積抵抗率よりも高い。クエンチング抵抗17は、絶縁層14上に形成されており、クエンチング抵抗17の他端は、中継配線18に電気的に接続されている。クエンチング抵抗17は、図8に示されるように、アバランシェフォトダイオードAPDに対して直列に接続されている。
【0033】
半導体基板SSの裏面には、電極16が設けられているが、第一半導体層11がN型である場合には、この電極16はカソード電極となり、リング状電極15はアノード電極となる。これらの電極15,16に挟まれた領域が、それぞれアバランシェフォトダイオードAPDを構成している。
【0034】
フォトダイオードアレイPDAにおいては、個々のアバランシェフォトダイオードAPDをガイガーモードで動作させる。ガイガーモードでは、アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧よりも大きな逆方向電圧(逆バイアス電圧)をアバランシェフォトダイオードAPDのアノード電極/カソード電極間に印加する。すなわち、アノード電極には(−)電位V1を、カソード電極には(+)電位V2を印加する。これらの電位の極性は相対的なものであり、一方の電位をグランド電位とすることも可能である。
【0035】
アバランシェフォトダイオードAPDに光(フォトン)が入射すると、基板内部で光電変換が行われて光電子が発生する。そして、PN接合界面の近傍領域において、アバランシェ増倍が行われ、増幅された電子群は電極16に向けて流れる。
【0036】
個々のアバランシェフォトダイオードAPDに接続されたクエンチング抵抗17は、中継配線18に電気的に接続されている。複数のアバランシェフォトダイオードAPDは、ガイガーモードで動作しており、各アバランシェフォトダイオードAPDは、共通の中継配線18に接続されている。このため、複数のアバランシェフォトダイオードAPDに同時にフォトンが入射した場合、複数のアバランシェフォトダイオードAPDの出力は全て共通の中継配線18に入力され、全体としては入射フォトン数に応じた高強度の信号として計測される。中継配線18には、信号読み出し用の電圧降下が生じる負荷抵抗を接続してもよい。
【0037】
上述の構造は、表面入射型のフォトダイオードアレイの構造であるが、裏面入射型のフォトダイオードアレイの構造を採用してもよい。この場合には、半導体基板SSの厚みを薄くして、電極16を透明電極とすればよい。
【0038】
再び、図1を参照する。各計数部21は、アンプ22、電圧比較器23、閾値設定部24、及び計数器25を有している。計数部21は、放射線検出部1(半導体光検出素子5)毎に設けられており、計数部21には、対応する放射線検出部1(半導体光検出素子5)からの信号が入力される。
【0039】
アンプ22は、放射線検出部1からの信号を増幅及び波形整形した後、当該信号を電圧比較器23に入力する。電圧比較器23は、放射線検出部1からの信号と、閾値設定部24から入力されている基準電圧(所定の第一閾値)とをそれぞれ比較する。電圧比較器23は、放射線検出部1からの信号が基準電圧よりも大きい場合、パルス信号を計数器25に出力する。
【0040】
計数器25は、パルス信号を計数して、計数結果を計数信号として制御部CRに出力する。すなわち、計数部21は、放射線検出部1からの信号のうち、基準電圧よりも大きい信号を計数し、計数信号を制御部CRに出力する。計数信号は、パルス信号の計数値を情報として含んでいる。
【0041】
信号選択部31は、4つの放射線検出部1からの信号を選択して出力する。信号選択部31は、放射線検出部1(計数部21)毎に設けられた複数のスイッチ素子(本実施形態では、4つのスイッチ素子)32を有している。スイッチ素子32の一方の端子には、アンプ22からの出力が接続されている。スイッチ素子32は、制御部CRからの選択制御信号により、その開閉が制御される。
【0042】
加算部41は、4つの放射線検出部1からの信号のうち信号選択部31により選択された信号を加算し、加算信号を出力する。加算部41は、複数の抵抗器(本実施形態では、4つの抵抗器)33と、アンプ42と、抵抗器43と、を有している。抵抗器33は、スイッチ素子32の他方の端子に直列接続されている。アンプ42の入力端子は、抵抗器33を介して、スイッチ素子32の他方の端子と接続され、抵抗器43を介して自己の出力端子と接続されている。
【0043】
波高値計測部51は、加算部41からの加算信号が入力される。波高値計測部51は、入力された加算信号の波高値を計測し、波高値計測信号を制御部CRに出力する。具体的には、波高値計測部51は、入力された加算信号のピーク値を波高値として検出するピーク検出器と、A/Dコンバータと、を有し、検出したピーク値を記録する。波高値計測信号は、入力された加算信号のピーク値を情報として含んでいる。
【0044】
制御部CRは、4つの計数部21からそれぞれ出力された計数信号に基づいて、信号選択部31(スイッチ素子32)の開閉を制御する。また、制御部CRは、波高値計測部51から出力された波高値計測信号に基づいて、放射線検出器RDに入射した放射線のエネルギーを算出する。制御部CRには、モニタが接続されており、制御部CRは、算出結果をモニタ(図示省略)に表示する。
【0045】
制御部CRは、たとえばCPU、記憶部、A/Dコンバータ、及びD/Aコンバータなどを有して構成されている。記憶部は、CPUによる信号処理回路SPの制御及びエネルギー算出に必要なプログラム及びデータを格納して記憶している。制御部CRは、外部からの駆動電圧の印加によって起動される。起動後、CPUは、記憶部に格納されたプログラムを実行して、信号処理回路SPを制御し、また、放射線検出器RDに入射した放射線のエネルギーを算出する。A/Dコンバータは、アナログ信号である計数信号及び波高値計測信号などをディジタル信号に変換し、CPUに転送する。D/Aコンバータは、CPUによって生成されたディジタル制御信号をアナログ制御信号に変換し、信号選択部31などに供給する。
【0046】
続いて、図3に基づいて、放射線検出器RDの信号処理動作を説明する。
【0047】
まず、各計数部21が、放射線検出部1からの信号のうち、基準電圧よりも大きい信号を計数し、計数信号を制御部CRに出力する(S101)。放射線は、放射線検出器RDに常時入射している。したがって、計数数を可能な限り増やすために、各計数部21は、並列で計数を行う。
【0048】
次に、制御部CRは、各計数部21から出力された計数信号それぞれに基づいて、各計数信号に含まれるパルス信号の計数値のうち最小の計数値が所定の第二閾値以上であるか否かを判定する(S103)。最小の計数値が上記第二閾値以上である場合、制御部CRは、最小の計数値の情報を含む計数信号を出力した計数部21に対応するスイッチ素子32を閉じるように選択制御信号を出力する(S105)。これにより、最小の計数値の情報を含む計数信号を出力した計数部21に対応する放射線検出部1からの信号のみが、アンプ22を介して加算部41に入力されることとなる。
【0049】
次に、最小の計数値を情報として含む計数信号を出力した計数部21に対応する放射線検出部1からの信号が、加算部41を介して波高値計測部51に入力され、波高値(ピーク値)が計測される(S107)。そして、波高値計測部51は、波高値計測信号を制御部CRに出力する。この間、各計数部21は、計数を継続している。
【0050】
次に、制御部CRは、入力された波高値計測信号に情報として含まれるピーク値に基づいて、各放射線検出器RDに入射した放射線のエネルギーを算出し、加算する(S109)。そして、制御部CRは、算出結果をモニタに表示する。このとき、制御部CRは、モニタに、計測値が正確でない可能性がある旨を表示する。
【0051】
S103にて、最小の計数値が上記第二閾値よりも小さい場合、制御部CRは、各計数信号に含まれるパルス信号の計数値を合算し、単位時間当たりの計数値の合算値を求め、当該合算値を第二閾値と比較し、第二閾値よりも合算値が少ないか否かを判定する(S111)。単位時間当たりの計数値の合算値が第二閾値よりも少ない場合、制御部CRは、すべてのスイッチ素子32を閉じるように選択制御信号を出力する(S113)。これにより、すべての放射線検出部1からの信号が、アンプ22を介して加算部41に入力されることとなる。
【0052】
次に、すべての放射線検出部1からの信号が、加算部41を介して波高値計測部51に入力され、波高値(ピーク値)が計測される(S115)。そして、波高値計測部51は、波高値計測信号を制御部CRに出力する。この間も、各計数部21は、計数を継続している。
【0053】
S111にて、単位時間当たりの計数値の合算値が第二閾値以上である場合、制御部CRは、単位時間当たりの計数値の合算値が第二閾値よりも少なくなる、計数信号の組み合わせを求める。制御部CRは、求めた計数信号の組み合わせに基づいて、当該計数信号を出力した計数部21に対応するスイッチ素子32を閉じるように選択制御信号を出力する(S117)。これにより、単位時間当たりの計数値の合算値が第二閾値よりも少なくなる組み合わせの計数信号を出力した計数部21に対応する放射線検出部1からの信号のみが、アンプ22を介して加算部41に入力されることとなる。
【0054】
次に、すべての放射線検出部1からの信号のうち信号選択部31(スイッチ素子32)にて選択された信号が、加算部41を介して波高値計測部51に入力され、波高値(ピーク値)が計測される(S119)。そして、波高値計測部51は、波高値計測信号を制御部CRに出力する。この間も、各計数部21は、計数を継続している。
【0055】
次に、制御部CRは、入力された波高値計測信号に情報として含まれるピーク値に基づいて、各放射線検出器RDに入射した放射線のエネルギーを算出し、加算する(S121)。
【0056】
そして、制御部CRは、連続計測が否かを判定し(S123)、連続計測である場合、S103に戻り、処理を継続する。制御部CRは、連続計測ではない場合、処理を終える。
【0057】
制御部CRは、マニュアルモードにより、放射線検出部1が選択されている場合、選択された放射線検出部1に対応するスイッチ素子32を閉じるように選択制御信号を出力する。これにより、選択された放射線検出部1からの信号のみが、アンプ22及び加算部41を介して波高値計測部51に入力され、波高値(ピーク値)が計測される。
【0058】
以上のように、本実施形態では、計数部21は、対応する放射線検出部1からの信号に基づいて基準電圧以上である信号を計数し、計数信号を出力する。制御部CRは、各計数部21からの計数信号に基づいて、信号選択部31(スイッチ素子32)を制御し、信号選択部31は、出力する信号を選択する。加算部41は、各放射線検出部1からの信号のうち信号選択部31により選択された信号を加算し、加算信号を出力する。波高値計測部51は、加算部41からの加算信号を受け、当該加算信号の波高値(ピーク値)を計測し、波高値計測信号を出力する。これにより、計数部21からの出力に基づいて計数値が得られ、波高値計測部51からの出力に基づいて波高値が得られることとなる。
【0059】
一般に、波高値を計測する処理には、十分なSN比と精度とが要求されるため、波高値計測手段は、消費電力も大きく、また、信号処理時間も長くなってしまう。放射線検出器RDでは、各放射線検出部1からの信号すべての波高値を常に計測する必要がないことから、消費電力と信号処理時間との増大を抑制することができる。計数処理は、SN比への要求が比較的高くないため、計数部21は、簡易で且つ高速処理可能な構成を採用できる。したがって、放射線検出器RDが複数の計数部21を備えていても、消費電力と信号処理時間との増大は抑制される。
【0060】
制御部CRは、計数値の合算値が第二閾値よりも少ない場合、各放射線検出部1からの信号すべてを出力するように信号選択部31(スイッチ素子32)を制御している。波高値を計測する処理は、計数値が所定値以上の計数/秒になると、計測精度が悪化するが、計数値が上記所定値よりも少ない場合、計測精度が悪化することはない。したがって、放射線検出器RDでは、計測精度が悪化することなく、すべての放射線検出部1からの信号の波高値を計測することができる。
【0061】
制御部CRは、計数値の合算値が第二閾値以上である場合、計数値の合算値が第二閾値よりも少なくなるように放射線検出部1からの信号を選択して出力するように信号選択部31を制御している。この場合でも、上述したように、放射線検出器RDでは、計測精度が悪化することなく、放射線検出部1からの信号の波高値を計測することができる。
【0062】
制御部CRは、最も少ない計数値が第二閾値以上である場合、最も少ない計数値を情報として含む計数信号を出力した計数部21に対応する放射線検出部1からの信号を選択して出力するように信号選択部31を制御している。この場合にも、上述したように、計測精度の悪化を抑制することができる。
【0063】
制御部CRは、波高値計測信号に基づいて、放射線のエネルギーを算出している。これにより、放射線検出器RDでは、放射線のエネルギーを適切に算出することかできる。
【0064】
各放射線検出部1は、シンチレータ3と、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードAPDと、それぞれのアバランシェフォトダイオードAPDに対して直列に接続されたクエンチング抵抗17と、を含んでいるフォトダイオードアレイPDAと、をそれぞれ有している。これにより、放射線検出器RDでは、装置の小型化を図りつつ、フォトンカウンティング測定が可能となる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0066】
図9に示されるように、シンチレータとして、複数に分割されたシンチレータ71を用いてもよい。本例では、シンチレータ71は、4分割されている。シンチレータ71に光学的に接続される半導体光検出素子73は、図10に示されるように、一つの基板SS1に複数のフォトダイオードアレイPDAが形成されている。これにより、半導体光検出素子73は、光感応領域がフォトダイオードアレイPDAと同数だけ分割されることとなる。本例では、光感応領域が4分割されている。一つのフォトダイオードアレイPDAが、シンチレータ71における分割された一つの部分に対応して配置されている。
【0067】
フレキシブル基板FSに、信号処理回路SPが搭載されていてもよい。フレキシブル基板FSは、信号処理回路SPと制御部CRとを電気的に接続する。この場合、半導体光検出素子73と信号処理回路SPとは、同一基板上に形成されていてもよい。もちろん、半導体光検出素子73と信号処理回路SPとをそれぞれ異なるチップで形成してもよい。この場合、半導体光検出素子73と信号処理回路SPとは、チップオンチップにより電気的に接続されていてもよく、また、配線基板上にそれぞれが実装されることにより電気的に接続されていてもよい。更には、半導体光検出素子73と信号処理回路SPとは、フレキシブル基板FS上に形成された配線を介して電気的に接続されていてもよい。
【0068】
4分割されたシンチレータ71の分割中心(中心軸)と、光感応領域が4分割された半導体光検出素子73の分割中心(中心軸)とが一致した状態で、シンチレータ71と半導体光検出素子73とは、光学接着剤により光学的に接続されている。これにより、放射線の到来方向を識別することが可能となる。すなわち、各計数部21からの計数信号に基づいて、どのシンチレータ71(半導体光検出素子73)におけるどの分割部分に放射線が入射したのかを識別することができ、この識別結果により、放射線の方向性を検出することが可能となる。
【0069】
続いて、図11を参照して、計数部21の変形例を説明する。図11は、計数部の変形例を示すブロック図である。
【0070】
計数部21は、図11に示されるように、電圧比較器26と閾値設定部27とを更に有していてもよい。閾値設定部27は、閾値設定部24から入力される基準電圧(下限基準電圧)よりも高い基準電圧(上限基準電圧)を電圧比較器26に出力する。電圧比較器26は、放射線検出部1からの信号が上限基準電圧よりも低い場合、パルス信号を計数器25に出力する。計数器25は、電圧比較器23と電圧比較器26とからパルス信号が出力された際に、当該パルス信号を一つのパルス信号として計数して、計数結果を計数信号として制御部CRに出力する。すなわち、計数器25は、放射線検出部1からの信号のうち、上限基準電圧よりも低く且つ下限基準電圧よりも大きい信号を計数する。
【0071】
放射線検出部1の数、及び、計数部21の数は、上述した実施形態の数に限られない。シンチレータ71の分割数も、上述した数に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、食品などからの放射線を検出する放射線検出装置に利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1…放射線検出部、3,71…シンチレータ、5,73…半導体光検出素子、21…計数部、31…信号選択部、41…加算部、51…波高値計測部、APD…アバランシェフォトダイオード、CR…制御部、FS…フレキシブル基板、PDA…フォトダイオードアレイ、RD…放射線検出器、SP…信号処理回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物からの放射線を検出する放射線検出器として、複数の放射線検出手段が配置されたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された放射線検出器によれば、被測定物からの放射線を複数の方向から検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2563341号公報(特開昭63−308590号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の放射線検出手段を備えている放射線検出器では、各放射線検出手段から出力された信号を処理する信号処理回路が放射線検出手段毎に必要とされる。したがって、放射線検出手段の数が増加するに伴い、信号処理回路の数も増加してしまい、装置の大型化が避けられない。信号処理回路には、たとえば、測定対象となる所定のエネルギーを有する放射線を選別するための波高分析器、及び、波高分析器から出力されたパルス信号を計数する計数器などが含まれる。また、信号処理回路による消費電力の増大や、処理する信号量の増加に伴う信号処理時間の増大といった問題点も生じてしまう。
【0005】
本発明は、装置の小型化を図りつつ、消費電力と信号処理時間との増大を抑制することが可能な放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る放射線検出器は、入射した放射線が有するエネルギーに応じた信号を生成する複数の放射線検出手段と、複数の放射線検出手段毎に設けられ、所定の閾値以上である信号を計数して計数信号を出力する複数の計数手段と、複数の放射線検出手段からの信号を選択して出力する信号選択手段と、複数の放射線検出手段からの信号のうち信号選択手段により選択された信号を加算して加算信号を出力する加算手段と、加算手段からの加算信号の波高値を計測して波高値計測信号を出力する波高値計測手段と、複数の計数手段からの計数信号に基づいて、信号選択手段を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る放射線検出器では、計数手段は、対応する放射線検出手段からの信号に基づいて所定の閾値以上である信号を計数し、計数信号を出力する。制御手段は、複数の計数手段からの計数信号に基づいて、信号選択手段を制御し、信号選択手段は、出力する信号を選択する。加算手段は、複数の放射線検出手段からの信号のうち信号選択手段により選択された信号を加算し、加算信号を出力する。波高値計測手段は、加算手段からの加算信号を受け、当該加算信号の波高値を計測し、波高値計測信号を出力する。これにより、計数手段からの出力に基づいて計数値が得られ、波高値計測信号からの出力に基づいて波高値が得られることとなる。
【0008】
一般に、波高値を計測する処理には、十分なSN比と精度とが要求されるため、波高値計測手段は、消費電力も大きく、また、信号処理時間も長くなってしまう。本発明では、複数の放射線検出手段からの信号すべての波高値を常に計測する必要がないことから、消費電力と信号処理時間との増大を抑制することができる。計数処理は、SN比への要求が比較的高くないため、計数手段は、簡易で且つ高速処理可能な構成を採用できる。したがって、複数の計数手段が備えられていても、消費電力と信号処理時間との増大は抑制される。
【0009】
制御手段は、計数値の合算値が所定の閾値よりも少ない場合、複数の放射線検出手段からの信号すべてを出力するように信号選択手段を制御してもよい。波高値を計測する処理は、計数値が所定値以上の計数/秒になると、計測精度が悪化するが、計数値が上記所定値よりも少ない場合、計測精度が悪化することはない。したがって、計測精度が悪化することなく、すべての放射線検出手段からの信号の波高値を計測することができる。
【0010】
制御手段は、計数値の合算値が所定の閾値以上である場合、計数値の合算値が所定の閾値よりも少なくなるように複数の放射線検出手段からの信号を選択して出力するように信号選択手段を制御してもよい。この場合、計測精度が悪化することなく、複数の放射線検出手段からの信号の波高値を計測することができる。
【0011】
制御手段は、最も少ない計数値が所定の閾値以上である場合、最も少ない計数値に対応する放射線検出手段からの信号を選択して出力するように信号選択手段を制御してもよい。この場合、計測精度の悪化を抑制することができる。
【0012】
制御手段は、波高値計測信号に基づいて、放射線のエネルギーを算出してもよい。この場合、放射線のエネルギーを適切に算出することかできる。
【0013】
複数の放射線検出手段は、シンチレータと、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、それぞれのアバランシェフォトダイオードに対して直列に接続されたクエンチング抵抗と、を含んでいるフォトダイオードアレイと、をそれぞれ有していてもよい。この場合、装置の小型化を図りつつ、フォトンカウンティング測定が可能となる。
【0014】
複数の計数手段、信号選択手段、加算手段、及び波高値計測手段を含む信号処理回路が搭載され、信号処理回路と制御手段との間を電気的に接続するフレキシブル基板を更に備え、複数の放射線検出手段が、フレキシブル基板に実装されていてもよい。この場合、装置の小型化をより一層図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置の小型化を図りつつ、消費電力と信号処理時間との増大を抑制することが可能な放射線検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る放射線検出器の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る放射線検出器の構成を示す分解斜視図である。
【図3】本実施形態に係る放射線検出器の信号処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】フォトダイオードアレイの平面図である。
【図5】フォトダイオードアレイの拡大平面図である。
【図6】図4に示したフォトダイオードアレイのVI−VI矢印線断面図である。
【図7】図4に示したフォトダイオードアレイのVII−VII矢印線断面図である。
【図8】図4に示したフォトダイオードアレイの回路図である。
【図9】本実施形態の変形例に係る放射線検出器の構成を示す斜視図である。
【図10】半導体光検出素子の平面図である。
【図11】計数部の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
図1及び図2を参照して、本実施形態に係る放射線検出器の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る放射線検出器の構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態に係る放射線検出器の構成を示す分解斜視図である。図3は、本実施形態に係る放射線検出器の信号処理動作を説明するためのフローチャートである。
【0019】
放射線検出器RDは、図1に示されるように、複数の放射線検出部(本実施形態では、4つの放射線検出部)1と、信号処理回路SPと、制御部CRと、を備えている。信号処理回路SPは、複数の計数部(本実施形態では、4つの計数部)21と、信号選択部31と、加算部41と、波高値計測部51と、を有している。
【0020】
各放射線検出部1は、入射した放射線が有するエネルギーに応じた信号を生成して、出力する。放射線検出部1は、図2にも示されるように、シンチレータ3と、半導体光検出素子5と、を有している。半導体光検出素子5は、光学接着剤によりシンチレータ3に光学的に接続されており、シンチレータ3からのシンチレーション光を検出する。半導体光検出素子5は、フレキシブル基板FSに実装されている。放射線検出部1からは、半導体光検出素子5の出力信号が、フレキシブル基板FSに形成された配線(図示省略)を通して、入射した放射線が有するエネルギーに応じた信号として信号処理回路SPへ出力される。
【0021】
シンチレータ3は、結晶性を有するシンチレータ、セラミックシンチレータ、又はプラスチックシンチレータからなる。シンチレータ3が結晶性を有するシンチレータである場合、シンチレータ3は、CsI又はNaIなどの結晶性材料からなる。シンチレータ3がセラミックシンチレータである場合、シンチレータ3は、無機蛍光体の焼結体などからなる。シンチレータ3がプラスチックシンチレータである場合、シンチレータ3は、PETなどからなる。
【0022】
ここで、図4〜図8を参照して、半導体光検出素子5の構成について説明する。図4は、フォトダイオードアレイの平面図である。図5は、フォトダイオードアレイの拡大平面図である。図6は、図5に示したフォトダイオードアレイのVI−VI矢印線断面図である。図7は、図5に示したフォトダイオードアレイのVII−VII矢印線断面図である。図8は、図4に示したフォトダイオードアレイの回路図である。
【0023】
半導体光検出素子5は、フォトダイオードアレイPDAからなる。フォトダイオードアレイPDAは、矩形形状を呈する半導体基板SSを備えている。
【0024】
フォトダイオードアレイPDAは、半導体基板SSに形成された複数のアバランシェフォトダイオードAPDを備えている。それぞれのアバランシェフォトダイオードAPDには、クエンチング抵抗(抵抗層)17が直列に接続されている。複数のアバランシェフォトダイオードAPDが形成された領域は、外周配線WLによって囲まれている。外周配線WLの外側には遮光層SLなどを設けることができる。遮光層SLは、たとえば金属などからなる。
【0025】
外周配線WLの外形は、矩形環状であって、各辺がX軸又はY軸に沿って延びている。外周配線WLは、X軸に沿って延びた電極パッドPに接続されている。外周配線WLには、複数の中継配線18が電気的に接続されている。複数の中継配線18は、それぞれがY軸に沿って延びており、外周配線WLの少なくとも2箇所(Y軸に沿った両端に位置する部位)間をそれぞれが接続している。
【0026】
個々のアバランシェフォトダイオードAPDのアノード及びカソードの一方は、クエンチング抵抗17を介して、中継配線18のいずれかに電気的に接続されている。個々のアバランシェフォトダイオードAPDのアノード及びカソードの他方は、半導体基板SSに設けられた別の電極16(図6参照:本例では裏面電極)に電気的に接続されている。電極16は、アノード及びカソードの他方に電気的に接続できる構成であれば、半導体基板SSの表面側に設けることとしてもよい。
【0027】
フォトダイオードアレイPDAでは、半導体基板SSは、第一半導体層11と、第一半導体層11上に形成された第二半導体層12と、第二半導体層12内に形成された第三半導体層13と、を備えている。第一半導体層11、第二半導体層12、及び第三半導体層13の導電型は、それぞれ、第1導電型(N型)、第2導電型(P型)、第2導電型(P型)である。この場合、第一半導体層11と第二半導体層12との間にPN接合が形成される。各リング状電極15の直下のPN接合から広がる空乏層内で発生したキャリアが、第三半導体層13を介して、各リング状電極15において収集される。このPN接合からなるアバランシェフォトダイオードAPDには、逆バイアスが印加される。空乏層内では、光Lの入射に応じてキャリアが発生する。
【0028】
第二半導体層12は、良好な結晶性のものを得るという観点から、第一半導体層(基板)11の表面へのエピタキシャル成長によって形成することが好ましい。第三半導体層13は、第二半導体層12への不純物のイオン注入又は拡散により形成することができる。第三半導体層13の不純物濃度は、第二半導体層12の不純物濃度よりも高い。半導体基板SSは、好適にはSiから構成されており、N型の不純物としては5価のアンチモンやリン、P型の不純物としては3価のボロンを用いることができる。
【0029】
フォトダイオードアレイPDAでは、第一半導体層11、第二半導体層12、及び第三半導体層13の導電型は、それぞれ、第1導電型(N型)、第1導電型(N型)、第2導電型(P型)とすることも可能である。この場合には、第二半導体層12と第三半導体層13との間にPN接合が形成される。各リング状電極15の直下のPN接合から広がる空乏層内で発生したキャリアが、第三半導体層13を介して、各リング状電極15において収集される。このPN接合からなるアバランシェフォトダイオードAPDには、逆バイアスが印加される。
【0030】
もちろん、第1導電型をP型とし、第2導電型をN型とすることも可能である。この場合には、バイアスの印加方向が、上記とは逆になる。
【0031】
第三半導体層13上には、SiO2からなる絶縁層14が形成されており、絶縁層14にはリング状電極15が形成されている。リング状電極15は、絶縁層14に設けられた開口を介して、第三半導体層13に接続されている。リング状電極15の平面形状は、矩形環状であり、リング状電極15の一端は、必要に応じて適当な導電層を介して、クエンチング抵抗(層)17の一端に接続されている。
【0032】
クエンチング抵抗17は、ポリシリコンから形成され、リング状電極15、中継配線18及び外周配線WLはアルミニウムから形成される。ポリシリコンの体積抵抗率は、アルミニウムの体積抵抗率よりも高い。クエンチング抵抗17は、絶縁層14上に形成されており、クエンチング抵抗17の他端は、中継配線18に電気的に接続されている。クエンチング抵抗17は、図8に示されるように、アバランシェフォトダイオードAPDに対して直列に接続されている。
【0033】
半導体基板SSの裏面には、電極16が設けられているが、第一半導体層11がN型である場合には、この電極16はカソード電極となり、リング状電極15はアノード電極となる。これらの電極15,16に挟まれた領域が、それぞれアバランシェフォトダイオードAPDを構成している。
【0034】
フォトダイオードアレイPDAにおいては、個々のアバランシェフォトダイオードAPDをガイガーモードで動作させる。ガイガーモードでは、アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧よりも大きな逆方向電圧(逆バイアス電圧)をアバランシェフォトダイオードAPDのアノード電極/カソード電極間に印加する。すなわち、アノード電極には(−)電位V1を、カソード電極には(+)電位V2を印加する。これらの電位の極性は相対的なものであり、一方の電位をグランド電位とすることも可能である。
【0035】
アバランシェフォトダイオードAPDに光(フォトン)が入射すると、基板内部で光電変換が行われて光電子が発生する。そして、PN接合界面の近傍領域において、アバランシェ増倍が行われ、増幅された電子群は電極16に向けて流れる。
【0036】
個々のアバランシェフォトダイオードAPDに接続されたクエンチング抵抗17は、中継配線18に電気的に接続されている。複数のアバランシェフォトダイオードAPDは、ガイガーモードで動作しており、各アバランシェフォトダイオードAPDは、共通の中継配線18に接続されている。このため、複数のアバランシェフォトダイオードAPDに同時にフォトンが入射した場合、複数のアバランシェフォトダイオードAPDの出力は全て共通の中継配線18に入力され、全体としては入射フォトン数に応じた高強度の信号として計測される。中継配線18には、信号読み出し用の電圧降下が生じる負荷抵抗を接続してもよい。
【0037】
上述の構造は、表面入射型のフォトダイオードアレイの構造であるが、裏面入射型のフォトダイオードアレイの構造を採用してもよい。この場合には、半導体基板SSの厚みを薄くして、電極16を透明電極とすればよい。
【0038】
再び、図1を参照する。各計数部21は、アンプ22、電圧比較器23、閾値設定部24、及び計数器25を有している。計数部21は、放射線検出部1(半導体光検出素子5)毎に設けられており、計数部21には、対応する放射線検出部1(半導体光検出素子5)からの信号が入力される。
【0039】
アンプ22は、放射線検出部1からの信号を増幅及び波形整形した後、当該信号を電圧比較器23に入力する。電圧比較器23は、放射線検出部1からの信号と、閾値設定部24から入力されている基準電圧(所定の第一閾値)とをそれぞれ比較する。電圧比較器23は、放射線検出部1からの信号が基準電圧よりも大きい場合、パルス信号を計数器25に出力する。
【0040】
計数器25は、パルス信号を計数して、計数結果を計数信号として制御部CRに出力する。すなわち、計数部21は、放射線検出部1からの信号のうち、基準電圧よりも大きい信号を計数し、計数信号を制御部CRに出力する。計数信号は、パルス信号の計数値を情報として含んでいる。
【0041】
信号選択部31は、4つの放射線検出部1からの信号を選択して出力する。信号選択部31は、放射線検出部1(計数部21)毎に設けられた複数のスイッチ素子(本実施形態では、4つのスイッチ素子)32を有している。スイッチ素子32の一方の端子には、アンプ22からの出力が接続されている。スイッチ素子32は、制御部CRからの選択制御信号により、その開閉が制御される。
【0042】
加算部41は、4つの放射線検出部1からの信号のうち信号選択部31により選択された信号を加算し、加算信号を出力する。加算部41は、複数の抵抗器(本実施形態では、4つの抵抗器)33と、アンプ42と、抵抗器43と、を有している。抵抗器33は、スイッチ素子32の他方の端子に直列接続されている。アンプ42の入力端子は、抵抗器33を介して、スイッチ素子32の他方の端子と接続され、抵抗器43を介して自己の出力端子と接続されている。
【0043】
波高値計測部51は、加算部41からの加算信号が入力される。波高値計測部51は、入力された加算信号の波高値を計測し、波高値計測信号を制御部CRに出力する。具体的には、波高値計測部51は、入力された加算信号のピーク値を波高値として検出するピーク検出器と、A/Dコンバータと、を有し、検出したピーク値を記録する。波高値計測信号は、入力された加算信号のピーク値を情報として含んでいる。
【0044】
制御部CRは、4つの計数部21からそれぞれ出力された計数信号に基づいて、信号選択部31(スイッチ素子32)の開閉を制御する。また、制御部CRは、波高値計測部51から出力された波高値計測信号に基づいて、放射線検出器RDに入射した放射線のエネルギーを算出する。制御部CRには、モニタが接続されており、制御部CRは、算出結果をモニタ(図示省略)に表示する。
【0045】
制御部CRは、たとえばCPU、記憶部、A/Dコンバータ、及びD/Aコンバータなどを有して構成されている。記憶部は、CPUによる信号処理回路SPの制御及びエネルギー算出に必要なプログラム及びデータを格納して記憶している。制御部CRは、外部からの駆動電圧の印加によって起動される。起動後、CPUは、記憶部に格納されたプログラムを実行して、信号処理回路SPを制御し、また、放射線検出器RDに入射した放射線のエネルギーを算出する。A/Dコンバータは、アナログ信号である計数信号及び波高値計測信号などをディジタル信号に変換し、CPUに転送する。D/Aコンバータは、CPUによって生成されたディジタル制御信号をアナログ制御信号に変換し、信号選択部31などに供給する。
【0046】
続いて、図3に基づいて、放射線検出器RDの信号処理動作を説明する。
【0047】
まず、各計数部21が、放射線検出部1からの信号のうち、基準電圧よりも大きい信号を計数し、計数信号を制御部CRに出力する(S101)。放射線は、放射線検出器RDに常時入射している。したがって、計数数を可能な限り増やすために、各計数部21は、並列で計数を行う。
【0048】
次に、制御部CRは、各計数部21から出力された計数信号それぞれに基づいて、各計数信号に含まれるパルス信号の計数値のうち最小の計数値が所定の第二閾値以上であるか否かを判定する(S103)。最小の計数値が上記第二閾値以上である場合、制御部CRは、最小の計数値の情報を含む計数信号を出力した計数部21に対応するスイッチ素子32を閉じるように選択制御信号を出力する(S105)。これにより、最小の計数値の情報を含む計数信号を出力した計数部21に対応する放射線検出部1からの信号のみが、アンプ22を介して加算部41に入力されることとなる。
【0049】
次に、最小の計数値を情報として含む計数信号を出力した計数部21に対応する放射線検出部1からの信号が、加算部41を介して波高値計測部51に入力され、波高値(ピーク値)が計測される(S107)。そして、波高値計測部51は、波高値計測信号を制御部CRに出力する。この間、各計数部21は、計数を継続している。
【0050】
次に、制御部CRは、入力された波高値計測信号に情報として含まれるピーク値に基づいて、各放射線検出器RDに入射した放射線のエネルギーを算出し、加算する(S109)。そして、制御部CRは、算出結果をモニタに表示する。このとき、制御部CRは、モニタに、計測値が正確でない可能性がある旨を表示する。
【0051】
S103にて、最小の計数値が上記第二閾値よりも小さい場合、制御部CRは、各計数信号に含まれるパルス信号の計数値を合算し、単位時間当たりの計数値の合算値を求め、当該合算値を第二閾値と比較し、第二閾値よりも合算値が少ないか否かを判定する(S111)。単位時間当たりの計数値の合算値が第二閾値よりも少ない場合、制御部CRは、すべてのスイッチ素子32を閉じるように選択制御信号を出力する(S113)。これにより、すべての放射線検出部1からの信号が、アンプ22を介して加算部41に入力されることとなる。
【0052】
次に、すべての放射線検出部1からの信号が、加算部41を介して波高値計測部51に入力され、波高値(ピーク値)が計測される(S115)。そして、波高値計測部51は、波高値計測信号を制御部CRに出力する。この間も、各計数部21は、計数を継続している。
【0053】
S111にて、単位時間当たりの計数値の合算値が第二閾値以上である場合、制御部CRは、単位時間当たりの計数値の合算値が第二閾値よりも少なくなる、計数信号の組み合わせを求める。制御部CRは、求めた計数信号の組み合わせに基づいて、当該計数信号を出力した計数部21に対応するスイッチ素子32を閉じるように選択制御信号を出力する(S117)。これにより、単位時間当たりの計数値の合算値が第二閾値よりも少なくなる組み合わせの計数信号を出力した計数部21に対応する放射線検出部1からの信号のみが、アンプ22を介して加算部41に入力されることとなる。
【0054】
次に、すべての放射線検出部1からの信号のうち信号選択部31(スイッチ素子32)にて選択された信号が、加算部41を介して波高値計測部51に入力され、波高値(ピーク値)が計測される(S119)。そして、波高値計測部51は、波高値計測信号を制御部CRに出力する。この間も、各計数部21は、計数を継続している。
【0055】
次に、制御部CRは、入力された波高値計測信号に情報として含まれるピーク値に基づいて、各放射線検出器RDに入射した放射線のエネルギーを算出し、加算する(S121)。
【0056】
そして、制御部CRは、連続計測が否かを判定し(S123)、連続計測である場合、S103に戻り、処理を継続する。制御部CRは、連続計測ではない場合、処理を終える。
【0057】
制御部CRは、マニュアルモードにより、放射線検出部1が選択されている場合、選択された放射線検出部1に対応するスイッチ素子32を閉じるように選択制御信号を出力する。これにより、選択された放射線検出部1からの信号のみが、アンプ22及び加算部41を介して波高値計測部51に入力され、波高値(ピーク値)が計測される。
【0058】
以上のように、本実施形態では、計数部21は、対応する放射線検出部1からの信号に基づいて基準電圧以上である信号を計数し、計数信号を出力する。制御部CRは、各計数部21からの計数信号に基づいて、信号選択部31(スイッチ素子32)を制御し、信号選択部31は、出力する信号を選択する。加算部41は、各放射線検出部1からの信号のうち信号選択部31により選択された信号を加算し、加算信号を出力する。波高値計測部51は、加算部41からの加算信号を受け、当該加算信号の波高値(ピーク値)を計測し、波高値計測信号を出力する。これにより、計数部21からの出力に基づいて計数値が得られ、波高値計測部51からの出力に基づいて波高値が得られることとなる。
【0059】
一般に、波高値を計測する処理には、十分なSN比と精度とが要求されるため、波高値計測手段は、消費電力も大きく、また、信号処理時間も長くなってしまう。放射線検出器RDでは、各放射線検出部1からの信号すべての波高値を常に計測する必要がないことから、消費電力と信号処理時間との増大を抑制することができる。計数処理は、SN比への要求が比較的高くないため、計数部21は、簡易で且つ高速処理可能な構成を採用できる。したがって、放射線検出器RDが複数の計数部21を備えていても、消費電力と信号処理時間との増大は抑制される。
【0060】
制御部CRは、計数値の合算値が第二閾値よりも少ない場合、各放射線検出部1からの信号すべてを出力するように信号選択部31(スイッチ素子32)を制御している。波高値を計測する処理は、計数値が所定値以上の計数/秒になると、計測精度が悪化するが、計数値が上記所定値よりも少ない場合、計測精度が悪化することはない。したがって、放射線検出器RDでは、計測精度が悪化することなく、すべての放射線検出部1からの信号の波高値を計測することができる。
【0061】
制御部CRは、計数値の合算値が第二閾値以上である場合、計数値の合算値が第二閾値よりも少なくなるように放射線検出部1からの信号を選択して出力するように信号選択部31を制御している。この場合でも、上述したように、放射線検出器RDでは、計測精度が悪化することなく、放射線検出部1からの信号の波高値を計測することができる。
【0062】
制御部CRは、最も少ない計数値が第二閾値以上である場合、最も少ない計数値を情報として含む計数信号を出力した計数部21に対応する放射線検出部1からの信号を選択して出力するように信号選択部31を制御している。この場合にも、上述したように、計測精度の悪化を抑制することができる。
【0063】
制御部CRは、波高値計測信号に基づいて、放射線のエネルギーを算出している。これにより、放射線検出器RDでは、放射線のエネルギーを適切に算出することかできる。
【0064】
各放射線検出部1は、シンチレータ3と、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードAPDと、それぞれのアバランシェフォトダイオードAPDに対して直列に接続されたクエンチング抵抗17と、を含んでいるフォトダイオードアレイPDAと、をそれぞれ有している。これにより、放射線検出器RDでは、装置の小型化を図りつつ、フォトンカウンティング測定が可能となる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0066】
図9に示されるように、シンチレータとして、複数に分割されたシンチレータ71を用いてもよい。本例では、シンチレータ71は、4分割されている。シンチレータ71に光学的に接続される半導体光検出素子73は、図10に示されるように、一つの基板SS1に複数のフォトダイオードアレイPDAが形成されている。これにより、半導体光検出素子73は、光感応領域がフォトダイオードアレイPDAと同数だけ分割されることとなる。本例では、光感応領域が4分割されている。一つのフォトダイオードアレイPDAが、シンチレータ71における分割された一つの部分に対応して配置されている。
【0067】
フレキシブル基板FSに、信号処理回路SPが搭載されていてもよい。フレキシブル基板FSは、信号処理回路SPと制御部CRとを電気的に接続する。この場合、半導体光検出素子73と信号処理回路SPとは、同一基板上に形成されていてもよい。もちろん、半導体光検出素子73と信号処理回路SPとをそれぞれ異なるチップで形成してもよい。この場合、半導体光検出素子73と信号処理回路SPとは、チップオンチップにより電気的に接続されていてもよく、また、配線基板上にそれぞれが実装されることにより電気的に接続されていてもよい。更には、半導体光検出素子73と信号処理回路SPとは、フレキシブル基板FS上に形成された配線を介して電気的に接続されていてもよい。
【0068】
4分割されたシンチレータ71の分割中心(中心軸)と、光感応領域が4分割された半導体光検出素子73の分割中心(中心軸)とが一致した状態で、シンチレータ71と半導体光検出素子73とは、光学接着剤により光学的に接続されている。これにより、放射線の到来方向を識別することが可能となる。すなわち、各計数部21からの計数信号に基づいて、どのシンチレータ71(半導体光検出素子73)におけるどの分割部分に放射線が入射したのかを識別することができ、この識別結果により、放射線の方向性を検出することが可能となる。
【0069】
続いて、図11を参照して、計数部21の変形例を説明する。図11は、計数部の変形例を示すブロック図である。
【0070】
計数部21は、図11に示されるように、電圧比較器26と閾値設定部27とを更に有していてもよい。閾値設定部27は、閾値設定部24から入力される基準電圧(下限基準電圧)よりも高い基準電圧(上限基準電圧)を電圧比較器26に出力する。電圧比較器26は、放射線検出部1からの信号が上限基準電圧よりも低い場合、パルス信号を計数器25に出力する。計数器25は、電圧比較器23と電圧比較器26とからパルス信号が出力された際に、当該パルス信号を一つのパルス信号として計数して、計数結果を計数信号として制御部CRに出力する。すなわち、計数器25は、放射線検出部1からの信号のうち、上限基準電圧よりも低く且つ下限基準電圧よりも大きい信号を計数する。
【0071】
放射線検出部1の数、及び、計数部21の数は、上述した実施形態の数に限られない。シンチレータ71の分割数も、上述した数に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、食品などからの放射線を検出する放射線検出装置に利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1…放射線検出部、3,71…シンチレータ、5,73…半導体光検出素子、21…計数部、31…信号選択部、41…加算部、51…波高値計測部、APD…アバランシェフォトダイオード、CR…制御部、FS…フレキシブル基板、PDA…フォトダイオードアレイ、RD…放射線検出器、SP…信号処理回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した放射線が有するエネルギーに応じた信号を生成する複数の放射線検出手段と、
前記複数の放射線検出手段毎に設けられ、所定の閾値以上である前記信号を計数して計数信号を出力する複数の計数手段と、
前記複数の放射線検出手段からの前記信号を選択して出力する信号選択手段と、
前記複数の放射線検出手段からの前記信号のうち前記信号選択手段により選択された信号を加算して加算信号を出力する加算手段と、
前記加算手段からの前記加算信号の波高値を計測して波高値計測信号を出力する波高値計測手段と、
前記複数の計数手段からの前記計数信号に基づいて、前記信号選択手段を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記制御手段は、計数値の合算値が所定の閾値よりも少ない場合、前記複数の放射線検出手段からの前記信号すべてを出力するように前記信号選択手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記制御手段は、計数値の合算値が所定の閾値以上である場合、計数値の合算値が所定の閾値よりも少なくなるように前記複数の放射線検出手段からの前記信号を選択して出力するように前記信号選択手段を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記制御手段は、最も少ない計数値が所定の閾値以上である場合、最も少ない計数値に対応する前記放射線検出手段からの前記信号を選択して出力するように前記信号選択手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記波高値計測信号に基づいて、放射線のエネルギーを算出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記複数の放射線検出手段は、
シンチレータと、
ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、それぞれの前記アバランシェフォトダイオードに対して直列に接続されたクエンチング抵抗と、を含んでいるフォトダイオードアレイと、をそれぞれ有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記複数の計数手段、前記信号選択手段、前記加算手段、及び前記波高値計測手段を含む信号処理回路が搭載され、前記信号処理回路と前記制御手段との間を電気的に接続するフレキシブル基板を更に備え、
前記複数の放射線検出手段が、前記フレキシブル基板に実装されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項1】
入射した放射線が有するエネルギーに応じた信号を生成する複数の放射線検出手段と、
前記複数の放射線検出手段毎に設けられ、所定の閾値以上である前記信号を計数して計数信号を出力する複数の計数手段と、
前記複数の放射線検出手段からの前記信号を選択して出力する信号選択手段と、
前記複数の放射線検出手段からの前記信号のうち前記信号選択手段により選択された信号を加算して加算信号を出力する加算手段と、
前記加算手段からの前記加算信号の波高値を計測して波高値計測信号を出力する波高値計測手段と、
前記複数の計数手段からの前記計数信号に基づいて、前記信号選択手段を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記制御手段は、計数値の合算値が所定の閾値よりも少ない場合、前記複数の放射線検出手段からの前記信号すべてを出力するように前記信号選択手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記制御手段は、計数値の合算値が所定の閾値以上である場合、計数値の合算値が所定の閾値よりも少なくなるように前記複数の放射線検出手段からの前記信号を選択して出力するように前記信号選択手段を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記制御手段は、最も少ない計数値が所定の閾値以上である場合、最も少ない計数値に対応する前記放射線検出手段からの前記信号を選択して出力するように前記信号選択手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記波高値計測信号に基づいて、放射線のエネルギーを算出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記複数の放射線検出手段は、
シンチレータと、
ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、それぞれの前記アバランシェフォトダイオードに対して直列に接続されたクエンチング抵抗と、を含んでいるフォトダイオードアレイと、をそれぞれ有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記複数の計数手段、前記信号選択手段、前記加算手段、及び前記波高値計測手段を含む信号処理回路が搭載され、前記信号処理回路と前記制御手段との間を電気的に接続するフレキシブル基板を更に備え、
前記複数の放射線検出手段が、前記フレキシブル基板に実装されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−88317(P2013−88317A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229906(P2011−229906)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]