説明

放射線検出用素子

【課題】外力や湿度による特性の劣化を抑制できる放射線検出用素子を提供する。
【解決手段】本発明に係る放射線検出用素子10は、直方体状若しくは平板状に形成され、放射線を検出可能な放射線検出用素子10であって、第1電極を有する表面10aと、第2電極を有する裏面10bと、放射線が入射する放射線入射面140を含む複数の側面10cと、複数の側面10cに設けられる側面被覆層100と、裏面10bの縁部分に設けられ、側面被覆層100より厚い厚さを有する裏面被覆層120とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出用素子に関する。特に、本発明は、ガンマカメラ等の放射線検出装置に用いる放射線検出用素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線検出用素子として、直方体状の化合物半導体結晶の相対する2面に形成された電極のうち少なくとも一面の電極は複数個であり、化合物半導体の電極形成面ではない端面部分にECRプラズマCVD法で気相成長させた絶縁保護薄膜を形成した放射線検出素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の放射線検出用素子は、電極を形成していない端面部分に絶縁保護薄膜を形成しているので、端面部に酸化膜が形成されることや、電極部のハンダバンプを加熱溶融する際のハンダの成分であるSnやPb、フラックス中の不純物等が結晶内へ侵入することなどを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−36410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に係る放射線検出用素子は、素子を構成する化合物半導体に加わる力により化合物半導体に発生し得る損傷、及び外部環境の水分による特性の劣化を考慮していないので、外力や湿度等により素子の特性が劣化する場合がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、外力や湿度による特性の劣化を抑制できる放射線検出用素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、直方体状若しくは平板状に形成され、放射線を検出可能な放射線検出用素子であって、第1電極を有する表面と、第2電極を有する裏面と、放射線が入射する放射線入射面を含む複数の側面と、複数の側面に設けられる側面被覆層と、裏面の縁部分に設けられ、側面被覆層より厚い厚さを有する裏面被覆層と備える放射線検出用素子が提供される。
【0008】
また、上記放射線検出用素子は、側面被覆層と裏面被覆層とは一体に設けられてもよい。
【0009】
また、上記放射線検出用素子は、放射線検出用素子が基板に固定される場合に、第2電極は導電性部材により基板に固定され、裏面被覆層は、導電性部材の厚さ以下の厚さを有することが好ましい。
【0010】
また、上記放射線検出用素子は、表面の縁部分に設けられる表面被覆層を更に備えることもできる。
【0011】
また、上記放射線検出用素子は、側面被覆層は、1μm以上2μm以下の厚さを有し、裏面被覆層は、5μm以上10μm以下の厚さを有することができる。
【0012】
また、上記放射線検出用素子は、側面被覆層及び裏面被覆層は、絶縁材料から形成されることが好ましい。
【0013】
また、上記放射線検出用素子は、基板と、放射線検出用素子の隣接部分にて基板を支持する支持部材とを備える放射線検出器に用いてもよい。
【0014】
また、上記放射線検出用素子は、基板は、放射線検出用素子を基板の第一の端部側に有し、支持部材は、第一の端部の反対側の第二の端部側において基板を支持してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る放射線検出器によれば、外力や湿度による特性の劣化を抑制できる放射線検出用素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】本発明の実施の形態に係る放射線検出用素子の斜視図である。
【図1B】(a)は本実施の形態に係る放射線検出用素子の表面図であり、(b)は本実施の形態に係る放射線検出用素子の裏面図である。
【図1C】本実施の形態に係る放射線検出用素子の断面図である。
【図2A】放射線検出器の斜視図である。
【図2B】放射線検出器からフレキシブル基板を除いた場合の斜視図である。
【図3A】放射線検出器が備える基板の正面図である。
【図3B】放射線検出器が備える基板に本実施の形態に係る複数の放射線検出用素子を搭載した場合の斜視図である。
【図4A】本実施の形態に係る放射線検出用素子を基板に搭載した場合における断面図である。
【図4B】本実施の形態に係る放射線検出用素子を基板に搭載した場合に放射線検出用素子が傾いた場合における断面図である。
【図5A】カードホルダの表面側からの斜視図である。
【図5B】カードホルダの裏面側からの斜視図である。
【図6A】本実施の形態に係る半導体素子に被覆層を形成する場合に用いるマスキング冶具の図である。
【図6B】半導体素子とマスクとの位置関係の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態の要約]
直方体状若しくは平板状に形成され、放射線を検出可能な放射線検出用素子において、第1電極を有する表面と、第2電極を有する裏面と、前記放射線が入射する放射線入射面を含む複数の側面と、前記複数の側面に設けられる側面被覆層と、前記裏面の縁部分に設けられ、前記側面被覆層より厚い厚さを有する裏面被覆層とを備える放射線検出用素子が提供される。
【0018】
[実施の形態]
図1Aは、本発明の実施の形態に係る放射線検出用素子の斜視図であり、図1B(a)は、本実施の形態に係る放射線検出用素子の表面を示し、図1B(b)は、本実施の形態に係る放射線検出用素子の裏面を示す。更に、図1Cは、本実施の形態に係る放射線検出用素子の模式的な断面を示す。
【0019】
(放射線検出用素子10の構成の概要)
本実施の形態に係る放射線検出用素子10は、γ線、X線等の放射線を検出することができる半導体素子150を用いて構成される。図1Aに示すように、放射線検出用素子10は直方体状若しくは平板状に形成され、複数の側面10cの中で面積が最大の2つの側面のうちの一方を、放射線が入射する放射線入射面140にすることができる。放射線検出用素子10は、一例として、縦×横×厚さが、11.1mm×5mm×1.2mmの大きさを有する。
【0020】
本実施の形態において、放射線検出用素子10は、化合物半導体から主として構成される半導体素子150を用いて構成することができる。半導体素子150は、一例として、CdTeから主として構成することができる。また、γ線等の放射線を検出できる限り、半導体素子150はCdTeから構成することに限られない。例えば、CdZnTe(CZT)、HgI等の化合物半導体を用いて半導体素子150を構成することもできる。
【0021】
そして、放射線検出用素子10は、第1電極としてのカソード電極130を有する表面10aと、第2電極としてのアノード電極135を有する裏面10bと、放射線入射面140を含む複数の側面10cと、複数の側面10cに設けられる側面被覆層100と、表面10aの縁部分に設けられる表面被覆層110とを備える。更に、放射線検出用素子10は、裏面10bの縁部分に設けられ、側面被覆層100より厚い厚さを有する裏面被覆層120を備える。本実施の形態において、側面被覆層100と表面被覆層110とは一体に設けられる。また、側面被覆層100と裏面被覆層120とは一体に設けられる。
【0022】
また、図1B(b)及び図1Cに示すように、放射線検出用素子10の裏面10bには複数の溝部10dが形成される。複数の溝部10dは、裏面10bに略等間隔に設けられる。溝部10dにより分離される放射線検出用素子10の部分のそれぞれが、放射線を検出する1つの画素(ピクセル)に対応する。これにより、一の放射線検出用素子10は、複数の画素を有することになる。そして、一の溝部10dと当該一の溝部10dに隣接する他の溝部10dとの間に形成される凸状部分の表面(すなわち、裏面10bの表面)に、アノード電極135が形成される。したがって、本実施の形態に係る放射線検出用素子10の裏面10bは、裏面10bの平面視にて短手方向に沿って延びる線状の複数のアノード電極135が形成される。なお、溝部10dの数を増減させることにより、一の放射線検出用素子10のピクセル数を増減させることができる。
【0023】
(側面被覆層100、表面被覆層110、及び裏面被覆層120)
側面被覆層100は、放射線検出用素子10の側面を被覆するように設けられる。一方、表面被覆層110は、表面10aの縁部分に設けられ、短手方向に沿った縁部分に設けられる短手側表面被覆層110aと、長手方向に沿った縁部分に設けられる長手側表面被覆層110bとを有して構成される。すなわち、表面10aにおいてカソード電極130の表面が露出するように、略矩形状の開口を有して表面被覆層110は形成される。なお、カソード電極130の縁部分は、短手側表面被覆層110a及び長手側表面被覆層110bに覆われる。更に、本実施の形態においては、図1B(a)に示すように、一例として、短手側表面被覆層110aの幅tは長手側表面被覆層110bの幅tより狭く形成される。例えば、短手側表面被覆層110aの幅tは0.3mm、長手側表面被覆層110bの幅tは0.5mmに形成される。
【0024】
また、裏面被覆層120は、裏面10bの縁部分に設けられ、短手方向に沿った縁部分に設けられる短手側裏面被覆層120aと、長手方向に沿った縁部分に設けられる長手側裏面被覆層120bとを有して構成される。すなわち、裏面10bにおいて複数のアノード電極135の表面のそれぞれが露出するように、略矩形状の開口を有して裏面被覆層120は形成される。また、表面被覆層110と同様に、裏面被覆層120は、長手側裏面被覆層120bの幅より狭く形成した短手側裏面被覆層120aを有して構成できる。
【0025】
ここで、図1Cを参照する。本実施の形態において、裏面被覆層120は、放射線検出用素子10の側面に形成される側面被覆層100より厚く形成される。すなわち、側面被覆層100の厚さ「a」、裏面被覆層120の厚さを「b」とした場合、「a<b」の関係を満たすように側面被覆層100と裏面被覆層120とは形成される。一例として、側面被覆層100は、1μm以上2μm以下の厚さを有して形成され、裏面被覆層120は、5μm以上10μm以下の厚さを有して形成される。なお、表面被覆層110の厚さを側面被覆層100の厚さより厚く形成することもできる。
【0026】
また、本実施の形態において、側面被覆層100、表面被覆層110、及び裏面被覆層は、絶縁材料から主として形成される。絶縁材料としては、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、その他の絶縁性の樹脂を用いることができる。
【0027】
(放射線検出器1の構成の概要)
図2Aは、本実施の形態に係る放射線検出用素子10を備える放射線検出器の斜視図であり、図2Bは、放射線検出器からフレキシブル基板を除いた場合の斜視図である。
【0028】
放射線検出器1は、複数個の放射線検出用素子10を備える。ここで、図2Aに示すように、放射線300が紙面の上方から下方に沿って伝搬すると仮定する。この場合、放射線300は、放射線検出器1が備える放射線検出用素子10の側からカードホルダ30及びカードホルダ31の側に向かう方向に沿って伝搬する。そして、放射線検出器1は、放射線検出用素子10の側面10cの1つである放射線入射面140(つまり、図2Aの上方に面している側面)において放射線300を検出する。このように、放射線検出用素子10の側面の一部を放射線入射面140とする放射線検出器をエッジオン型の放射線検出器と称する。なお、放射線検出器1は、特定の方向(例えば、被検体から放射線検出器1に向かう方向)に沿って伝搬してくる放射線300が通過する複数の開口を有するコリメータを介して放射線300を検出する複数の放射線検出器1が配列されて構成されるエッジオン型の放射線検出装置用の放射線検出器1として構成することができる。また、放射線検出器1は、カード型の形状を呈する。
【0029】
なお、放射線検出器1は、コリメータを備えることができる。また、放射線検出器1は、コリメータを備えずに用いることもできる。コリメータを用いる場合、多孔平行コリメータ、ピンホールコリメータ等を用いることができる。以下の説明においては、一例として、多孔平行コリメータを用いる場合について説明する。
【0030】
具体的に、図2Aを参照すると、放射線検出器1は、コリメータの複数の開口を介して放射線300を検出可能な放射線検出用素子10と、コリメータの複数の開口を隔てる壁部と同程度又は当該壁部の厚さ以下の厚さを有する薄い基板20と、一対の放射線検出用素子10の隣接部分にて基板20を挟み込むことにより基板20を支持する支持部材としてのカードホルダ30及びカードホルダ31とを備える。そして、図2Aにおいては、一対の放射線検出用素子10が4組、基板20を挟み込む位置において基板20に固定される。すなわち、各組の一対の放射線検出用素子10は、基板20の一方の面と他方の面とのそれぞれに基板20を対称面として対称の位置に固定される。
【0031】
本実施の形態に係る放射線検出用素子10の側面10cはそれぞれ側面被覆層100により覆われているので、基板20に複数の放射線検出用素子10を配列させた場合に、複数の放射線検出用素子10の側面同士が接触したとしても、放射線検出用素子10の側面10cの損傷、すなわち、半導体素子150の損傷を抑制できる。
【0032】
また、基板20は第1の支持部としてのカードホルダ30と第2の支持部としてのカードホルダ31とに挟み込まれて支持される。カードホルダ30とカードホルダ31とはそれぞれ同一形状を有して形成され、カードホルダ30が有する溝付穴34にカードホルダ31が有する突起部36が嵌め合うと共に、カードホルダ31が有する溝付穴34(図示しない)にカードホルダ30が有する突起部36(図示しない)が嵌め合うことにより基板20が支持される。
【0033】
また、弾性部材実装部32及び凹部32aは、複数の放射線検出器1を支持する放射線検出器立てに放射線検出器1が挿入された場合に、放射線検出器1を放射線検出器立てに押し付けて固定する板ばね等の弾性部材が設けられる部分である。なお、放射線検出器立てはカードエッジ部29が挿入されるコネクタを有しており、放射線検出器1は、カードエッジ部29がコネクタに挿入され、コネクタとパターン29aとが電気的に接続することにより外部の電気回路としての制御回路、外部からの電源線、グランド線等に電気的に接続される。
【0034】
また、放射線検出器1は、一対の放射線検出用素子10の基板20の反対側に、各放射線検出用素子10のカソード電極130と複数の基板端子22とを電気的に接続する配線パターンを有するフレキシブル基板40を更に備える。
【0035】
フレキシブル基板40は、一対の放射線検出用素子10の一方の放射線検出用素子10側、及び他方の放射線検出用素子10側の双方に設けられる(図2A及び図2Bの例においては、4組の一対の放射線検出用素子10の一方の放射線検出用素子10側のそれぞれと、他方の放射線検出用素子10側のそれぞれとの双方に、フレキシブル基板40がそれぞれ設けられる)。そして、フレキシブル基板40の複数の配線パターンの一端はそれぞれ、カードホルダ30及びカードホルダ31の複数のフレキリード結合部としての接合部38のそれぞれにおいて基板端子22に電気的に接続する。具体的に、フレキシブル基板40の配線パターンの一方の端は、放射線検出用素子10のカソード電極130に導電性接着剤等で接続される。そして、当該配線パターンの他方の端は、基板端子22の端子表面に導電性接着剤等を用いて電気的に接続される。
【0036】
図3Aは、放射線検出器が備える基板の正面図であり、図3Bは、放射線検出器が備える基板に本実施の形態に係る複数の放射線検出用素子を搭載した場合の斜視図である。
【0037】
(基板20の詳細)
基板20は、金属導体等の導電性材料からなる導電性薄膜(例えば、銅箔)が表面に形成された薄肉基板(例えば、FR4等のガラスエポキシ基板)を、ソルダーレジスト等の絶縁材料からなる絶縁層20bで挟んで形成される。そして、基板20は、可撓性を有すると共に、コリメータの複数の開口を隔てる壁部と同程度又は当該壁部の厚さ以下の厚さを有する。一例として、コリメータの複数の開口は略四角形状に形成される。そして、複数の開口の開口径のサイズは一辺が1.2mmに形成され、各開口が1.4mmピッチでマトリックス状に並べられて形成される。したがって、コリメータは、一の開口と、この一の開口に隣接する他の開口とを隔てる壁の厚さが0.2mmである。本実施の形態では、例えば、基板20は、コリメータの各開口を隔てる壁の厚さと略同一の厚さ(一例として、0.2mm)、又はこの壁の厚さ以下の厚さを有して形成される。
【0038】
また、基板20は、複数の放射線検出用素子10のそれぞれが搭載される第一の端部側の幅が、複数の放射線検出用素子10が搭載される第一の端部側の反対側の第二の端部側よりも広く形成される。なお、第二の端部側において基板20はカードホルダ30及びカードホルダ31によって支持される。また、基板20の幅広に形成される領域の一部には、複数の放射線検出用素子10が備える複数のアノード電極135のそれぞれに電気的に接続する複数の素子接続部20aが設けられ、素子接続部20aが設けられる第一の端部に対向する第二の端部側には、放射線検出器1と外部の制御回路とを電気的に接続可能である複数のパターン29aが設けられたカードエッジ部29が設けられる。また、素子接続部20aとカードエッジ部29との間には、複数の放射線検出用素子10のそれぞれと電気的に接続する抵抗、コンデンサ等の電子部品を搭載する複数の電子部品搭載部26が設けられる。なお、電子部品搭載部26に、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、Field Programmable Gate Array(FPGA)等を搭載することもできる。
【0039】
基板20は、一例として、幅広の方向、すなわち長手方向は40mm程度の長さを有して形成される。そして、基板20は、幅広の部分の端部から幅が狭くなっている部分の端部まで、すなわち、素子接続部20aが設けられている部分の端からカードエッジ部29の端までの短手方向において、20mm程度の長さを有して形成される。
【0040】
更に、基板20は、素子接続部20aと電子部品搭載部26との間に、基板20の表面からこの表面の法線方向に沿って突き出て形成される柱状の複数の基板端子22を有する。一例として、基板20の一表面に4つの円柱状の基板端子22が形成される。なお、基板端子22は、断面が矩形の柱状にすることもできる。更に、基板20は、幅広の部分の角部にグランド28を有すると共に、グランド28が設けられる領域に、カードホルダ30及びカードホルダ31の突起部36が挿入される複数の貫通穴24が設けられる。
【0041】
また、素子接続部20aと、基板端子22と、電子部品搭載部26と、グランド28と、パターン29aとはそれぞれ、基板20の厚さ方向の中心に位置する導電性薄膜を対称面として、基板20の一方の表面と他方の表面とのそれぞれに設けられる。ここで、素子接続部20aと、電子部品搭載部26と、グランド28と、パターン29aとはそれぞれ、一方の表面と他方の表面とに基板を対称面として略対称の位置に設けられる。一方、複数の基板端子22は、一方の面と他方の面とで互い違いとなる位置に設けられる。更に、複数のグランド28はそれぞれ、導電性薄膜を被覆する絶縁層20bを除去することにより導電性薄膜を外部に露出させて形成される。
【0042】
(放射線検出用素子10の基板20への搭載)
図3Aに示した基板20の素子接続部20aのそれぞれに複数の放射線検出用素子10が備える複数のアノード電極135のそれぞれを接続することにより、図3Bに示すような、複数の放射線検出用素子10が搭載された基板20が形成される。具体的には、複数の素子接続部20aのそれぞれに、導電性接着剤200、例えば、Agペースト等を用いて複数の放射線検出用素子10がそれぞれ備えるアノード電極135が固定される。本実施の形態では、基板20の一方の面及び他方の面にそれぞれ4つの放射線検出用素子10が固定されるので、一の放射線検出器1は、8つの放射線検出用素子10を備えることになる。
【0043】
図4Aは、本実施の形態に係る放射線検出用素子を基板に搭載した場合における断面の概要を示し、図4Bは、本実施の形態に係る放射線検出用素子を基板に搭載した場合に放射線検出用素子が傾いた場合における断面の概要を示す。なお、図4A及び図4Bにおいては、説明を簡便にするため、アノード電極135、及び基板20が備える素子接続部20aの図示は省略する。
【0044】
放射線検出用素子10の複数のアノード電極135のそれぞれは、導電性部材としての導電性接着剤200を介して基板20に搭載される。仮に、導電性接着剤200の形状が変化しない場合、図4Aに示すように、放射線検出用素子10は基板20の表面に水平になるように基板20に搭載される。しかしながら、基板20への放射線検出用素子10の搭載時において導電性接着剤200が加熱により流動化した場合、図4Bに示すように、放射線検出用素子10が傾く場合がある。ここで、本実施の形態に係る放射線検出用素子10が備える裏面被覆層120は、導電性接着剤200の厚さ以下の厚さを有しており、放射線検出用素子10の端部のそれぞれを保護している。導電性接着材200は、10μm以上15μm以下の厚さを有して形成される。したがって、放射線検出用素子10が傾いた場合であっても、短手側裏面被覆層120a及び/又は長手側裏面被覆層120bがクッションとしての機能を発揮して、半導体素子150が基板20に直接に接触することを防止できる。
【0045】
(カードホルダ30及びカードホルダ31の詳細)
図5Aは、カードホルダの表面側からの斜視図であり、図5Bは、カードホルダの裏面側からの斜視図である。
【0046】
カードホルダ30とカードホルダ31とは同一形状を有するので、以下、カードホルダ30についてのみ説明する。
【0047】
図5Aを参照すると、カードホルダ30は、弾性部材が固定される弾性部材実装部32及び凹部32aと、カードホルダ30の対となるカードホルダ31の突起部36が嵌め合う複数の溝付穴34と、フレキシブル基板40の配線パターンが接続される複数の接合部38と、基板20の基板端子22が貫通する複数の端子用穴38aとを有して形成される。また、カードホルダ30は、放射線検出器1の複数の放射線検出用素子10が設けられている側を上側とした場合に、下側の両端部に突起部30a及び切り欠き部30bをそれぞれ有する。
【0048】
また、図5Bを参照すると、カードホルダ30はその裏面において、カードホルダ31が有する溝付穴34に嵌合する複数の突起部36を更に有する。また、カードホルダ30は、基板20の複数の電子部品搭載部26に対応する位置にくぼみ部39を更に有する。このくぼみ部39により、基板20の電子部品搭載部26上に搭載された電子部品はカードホルダ30及びカードホルダ31によって覆われ、一の放射線検出器1に隣接する他の放射線検出器1に接触することが防止される。
【0049】
弾性部材実装部32及び凹部32aは、カードホルダ30の長手方向の各端部にそれぞれ設けられる。また、複数の接合部38及び端子用穴38aは、基板20が有する基板端子22の位置に対応させて、カードホルダ30の中央付近の領域にそれぞれ設けられる。更に、複数の溝付穴34は、弾性部材実装部32と接合部38との間の領域であって、複数の溝付穴34のうち最も弾性部材実装部32に近い側の溝付穴34よりも弾性部材実装部32に近い位置に設けられる。なお、カードホルダ30及びカードホルダ31はそれぞれ、絶縁性の樹脂材料から形成することができる。
【0050】
(放射線検出用素子10の製造方法)
図6Aは、本実施の形態に係る半導体素子に被覆層を形成する場合に用いるマスキング冶具を示し、図6Bは、半導体素子とマスクとの位置関係の概要を示す断面図である。なお、図6A及び図6Bにおいては、説明の便宜上、カソード電極130及びアノード電極135の図示は省略する。
【0051】
まず、カソード電極130及びアノード電極135が形成された半導体素子150を準備する。そして、本実施の形態においては、凹部2aを備えるマスキング冶具2を用い、半導体素子150の所定の領域に被覆層を形成する。具体的には、まず、図6A及び図6Bに示すように、スペーサー5を介して半導体素子150をマスキング冶具2の凹部2aに搭載する。更に、半導体素子150の凹部2aの反対側の表面に、スペーサー5を介してマスク4を設置する。そして、マスク4の表面をおさえ3で固定する。なお、スペーサー5は、ゴム等の弾性材料から形成されるので、半導体素子150に損傷が生じることを抑制できる。
【0052】
この状態で、図6Bに示すように、所定の絶縁性材料を半導体素子150に吹き付ける(図6Bの吹き付け方向400を参照)。なお、半導体素子150の表面又は裏面はマスク4によりマスキングされ、裏面又は表面は凹部2a側に向いているので、カソード電極130又はアノード電極135には樹脂材料が付着しない。以上の工程を経ることにより、本実施の形態に係る放射線検出用素子10が製造される。
【0053】
(実施の形態の効果)
本発明の実施の形態に係る放射線検出用素子10は、側面10cのそれぞれに側面被覆層100を、表面10aの縁部に表面被覆層110を、そして、裏面10bの縁部に裏面被覆層120を備えているので、半導体素子150の端部に加わる力を低減でき、放射線検出用素子10に損傷が生じることを抑制できる。また、放射線検出用素子10の大部分を被覆することにより、大気中の水分により放射線検出用素子10の特性が劣化することを抑制できる。これにより、本実施の形態に係る放射線検出用素子10の耐湿性、耐久性を向上させることができるので、放射線検出用素子10の信頼性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施の形態に係る放射線検出用素子10は、側面10cのそれぞれに側面被覆層100を備えているので、放射線検出用素子10の厚さが薄い場合であっても、カソード電極130とアノード電極135との間に高電圧を印加した場合に発生し得る電圧、側面10cに流れる表面電流によるノイズを低減できる。
【0055】
そして、本実施の形態に係る放射線検出用素子10は、側面10cに比べて裏面10bの縁部、及び/又は表面10aの縁部に形成される被覆層の厚さを厚くしたので、導電性接着剤200を介して基板20等に放射線検出用素子10を搭載した場合であっても、放射線検出用素子10が傾くことに起因する半導体素子150への損傷の発生を防止できる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0057】
1 放射線検出器
2 マスキング冶具
2 凹部
3 おさえ
4 マスク
5 スペーサー
10 放射線検出用素子
10a 表面
10b 裏面
10c 側面
10d 溝部
20 基板
20a 素子接続部
20b 絶縁層
22 基板端子
24 貫通穴
26 電子部品搭載部
28 グランド
29 カードエッジ部
29a パターン
30、31 カードホルダ
32 弾性部材実装部
32a 凹部
34 溝付穴
36 突起部
38 結合部
40 フレキシブル基板
100 側面被覆層
110 表面被覆層
110a 短手側表面被覆層
110b 長手側表面被覆層
120 裏面被覆層
120a 短手側裏面被覆層
120b 長手側裏面被覆層
130 カソード電極
135 アノード電極
140 放射線入射面
150 半導体素子
200 導電性接着剤
300 放射線
400 吹き付け方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体状若しくは平板状に形成され、放射線を検出可能な放射線検出用素子であって、
第1電極を有する表面と、
第2電極を有する裏面と、
前記放射線が入射する放射線入射面を含む複数の側面と、
前記複数の側面に設けられる側面被覆層と、
前記裏面の縁部分に設けられ、前記側面被覆層より厚い厚さを有する裏面被覆層と
を備える放射線検出用素子。
【請求項2】
前記側面被覆層と前記裏面被覆層とは一体に設けられる請求項1に記載の放射線検出用素子。
【請求項3】
前記放射線検出用素子が基板に固定される場合に、前記第2電極は導電性部材により前記基板に固定され、
前記裏面被覆層は、前記導電性部材の厚さ以下の厚さを有する請求項2に記載の放射線検出用素子。
【請求項4】
前記表面の縁部分に設けられる表面被覆層
を更に備える請求項3に記載の放射線検出用素子。
【請求項5】
前記側面被覆層は、1μm以上2μm以下の厚さを有し、
前記裏面被覆層は、5μm以上10μm以下の厚さを有する
請求項4に記載の放射線検出用素子。
【請求項6】
前記側面被覆層及び前記裏面被覆層は、絶縁材料から形成される請求項5に記載の放射線検出用素子。
【請求項7】
前記基板と、前記放射線検出用素子の隣接部分にて前記基板を支持する支持部材とを備える放射線検出器に用いられる請求項6に記載の放射線検出用素子。
【請求項8】
前記基板は、前記放射線検出用素子を前記基板の第一の端部側に有し、
前記支持部材は、前記第一の端部の反対側の第二の端部側において前記基板を支持する請求項7に記載の放射線検出用素子。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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